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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140041
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】車両用シート駆動システム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20220915BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20220915BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20220915BHJP
   B60N 2/809 20180101ALI20220915BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20220915BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/22
B60N2/809
G10L15/00 200J
G06F3/16 650
G06F3/16 630
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040675
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
(72)【発明者】
【氏名】山田 光一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB02
3B087BD02
3B087DC06
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】乗員がシート装置を予め設定された所定距離だけ移動させるのが容易であり、低い製造コストで実現できるようにする。
【解決手段】車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置と、所定のコマンドを受けたときに、特定動作毎に設定された単位移動量だけ特定動作を実行するように、シート装置を作動させる作動制御部と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置と、
所定のコマンドを受けたときに、前記特定動作毎に設定された単位移動量だけ前記特定動作を実行するように、前記シート装置を作動させる作動制御部と、
を備える車両用シート駆動システム。
【請求項2】
前記車両の乗員が発した音声を取得する音声取得部と、
前記音声取得部が取得した音声に含まれた前記コマンドである音声コマンドを認識可能な音声認識部と、
少なくとも1つの音声コマンド例が記録された記録部と、
前記音声認識部が認識した前記音声コマンドが、前記音声コマンド例と一致したか否かを判定するコマンド判定部と、
を備え、
前記作動制御部が、前記音声認識部が認識した前記音声コマンドが前記音声コマンド例と一致したと前記コマンド判定部が判定したときに、前記単位移動量だけ前記特定動作を実行するように、前記シート装置を作動させる請求項1に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項3】
1つの前記特定動作が、前記シート装置が前記フロアに対して所定方向にスライドするスライド動作であり、
前記スライド動作の前記単位移動量が7.0~23.0mmである請求項1又は請求項2に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項4】
1つの前記特定動作が、前記シート装置が前記フロアに対して車両前方向にスライドする前方スライド動作であり、
別の1つの前記特定動作が、前記シート装置が前記フロアに対して車両後方向にスライドする後方スライド動作であり、
前記前方スライド動作の前記単位移動量が7.0~20.0mmであり、
前記後方スライド動作の前記単位移動量が7.0~23.0mmである請求項3に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項5】
前記シート装置が、
シートクッションと、
前記シートクッションに回転可能に接続されたシートバックと、
を備え、
1つの前記特定動作が、前記シートバックが前記シートクッションに対して回転するリクライニング動作であり、
前記リクライニング動作の回転方向の前記単位移動量に対応する回転角である単位回転角が、1.6~4.6°である請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用シート駆動システム。
【請求項6】
1つの前記特定動作が、前記シートバックが前記シートクッションに対して車両前方向へ回転する前方リクライニング動作であり、
別の1つの前記特定動作が、前記シートバックが前記シートクッションに対して車両後方向へ回転する後方リクライニング動作であり、
前記前方リクライニング動作の前記単位回転角が2.5~4.6°であり、
前記後方リクライニング動作の前記単位回転角が1.6~3.8°である請求項5に記載の車両用シート駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には車両用シート駆動システムが開示されている。この車両用シート駆動システムは、シート装置と、乗員が発した音声を取得する音声取得部と、音声取得部が取得した音声に含まれる音声コマンドを認識可能な音声認識部と、シート装置に駆動力を付与可能な駆動部と、駆動部を制御する駆動制御部と、を備える。
【0003】
例えば、シート装置に所定の動作を実行させるための音声コマンドを乗員が発すると、音声認識部がこの音声コマンドを認識する。さらに駆動制御部が駆動部をファジー制御する。これにより駆動部がシート装置に駆動力を付与し、シート装置が所定の動作を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-201745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記車両用シート駆動システムでは、駆動制御部が駆動部をファジー制御する。そのため、シート装置を所定距離だけ移動させたい乗員が、音声コマンドを1回発することにより、シート装置を当該距離だけ移動させるのは容易ではない。即ち、シート装置を当該距離だけ移動させるために、乗員が音声コマンドを複数回発しなければならない可能性がある。
【0006】
さらに駆動制御部がファジー制御を行うので、駆動制御部を実現するための製造コストが高くなるおそれがある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、乗員がシート装置を予め設定された所定距離だけ移動させるのが容易であり、低い製造コストで実現可能な車両用シート駆動システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能なシート装置と、所定のコマンドを受けたときに、前記特定動作毎に設定された単位移動量だけ前記特定動作を実行するように、前記シート装置を作動させる作動制御部と、を備える。
【0009】
請求項1に記載の車両用シート駆動システムのシート装置は、車両のフロアに支持され、少なくとも一つの特定動作を実行可能である。さらに車両用シート駆動システムは、所定のコマンドを受けたときに、特定動作毎に設定された単位移動量だけ特定動作を実行するように、シート装置を作動させる作動制御部を有する。このようにシート装置は、所定のコマンドを受けたときに、特定動作毎に設定された単位移動量だけ特定動作を実行する。そのため、請求項1に記載の車両用シート駆動システムは、シート装置を予め設定された所定距離(単位移動量)だけ移動させるのが容易である。
【0010】
さらに作動制御部が実行する制御は単純である。そのため、請求項1に記載の車両用シート駆動システムは低い製造コストで実現可能である。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項1に記載の車両用シート駆動システムにおいて、前記車両の乗員が発した音声を取得する音声取得部と、前記音声取得部が取得した音声に含まれた前記コマンドである音声コマンドを認識可能な音声認識部と、少なくとも1つの音声コマンド例が記録された記録部と、前記音声認識部が認識した前記音声コマンドが、前記音声コマンド例と一致したか否かを判定するコマンド判定部と、を備え、前記作動制御部が、前記音声認識部が認識した前記音声コマンドが前記音声コマンド例と一致した前記コマンド判定部が判定したときに、前記単位移動量だけ前記特定動作を実行するように、前記シート装置を作動させる。
【0012】
請求項2に記載の車両用シート駆動システムでは、車両の乗員が発した音声を音声取得部が取得する。さらに、音声取得部が取得した音声に含まれたコマンドである音声コマンドを音声認識部が認識可能である。さらに、音声認識部が認識した音声コマンドが音声コマンド例と一致したとコマンド判定部が判定したときに、作動制御部が、単位移動量だけ特定動作を実行するようにシート装置を作動させる。従って、請求項2に記載の車両用シート駆動システムは、シート装置を予め設定された所定距離(単位移動量)だけ移動させるのが容易である。
【0013】
請求項3に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シート駆動システムにおいて、1つの前記特定動作が、前記シート装置が前記フロアに対して所定方向にスライドするスライド動作であり、前記スライド動作の前記単位移動量が7.0~23.0mmである。
【0014】
請求項3に記載の車両用シート駆動システムでは、シート装置が特定動作として、フロアに対して所定方向にスライドするスライド動作を実行する。さらにスライド動作の単位移動量が7.0~23.0mmである。シート装置がこの数値の大きさだけスライド動作を実行すると、シート装置に着座した乗員(被験者)が不快感及び違和感を覚え難いことが官能評価試験によって判明した。そのため、請求項3に記載の車両用シート駆動システムによれば、シート装置がスライド動作によって単位移動量だけ移動したときに、乗員が不快感及び違和感を覚え難い。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項3に記載の車両用シート駆動システムにおいて、1つの前記特定動作が、前記シート装置が前記フロアに対して車両前方向にスライドする前方スライド動作であり、別の1つの前記特定動作が、前記シート装置が前記フロアに対して車両後方向にスライドする後方スライド動作であり、前記前方スライド動作の前記単位移動量が7.0~20.0mmであり、前記後方スライド動作の前記単位移動量が7.0~23.0mmである。
【0016】
請求項4に記載の車両用シート駆動システムでは、シート装置が特定動作として、フロアに対して車両前方向にスライドする前方スライド動作及びフロアに対して車両後方向にスライドする後方スライド動作を実行する。さらに前方スライド動作の単位移動量が7.0~20.0mmであり、後方スライド動作の前記単位移動量が7.0~23.0mmである。シート装置がこれらの数値の大きさだけ前方スライド動作及び後方スライド動作を実行すると、シート装置に着座した乗員(被験者)が不快感及び違和感を覚え難いことが官能評価試験によって判明した。そのため、請求項4に記載の車両用シート駆動システムによれば、シート装置が前方スライド動作及び後方スライド動作によって単位移動量だけ移動したときに、乗員が不快感及び違和感を覚え難い。
【0017】
請求項5に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用シート駆動システムにおいて、前記シート装置が、シートクッションと、前記シートクッションに回転可能に接続されたシートバックと、を備え、1つの前記特定動作が、前記シートバックが前記シートクッションに対して回転するリクライニング動作であり、前記リクライニング動作の回転方向の前記単位移動量に対応する回転角である単位回転角が、1.6~4.6°である。
【0018】
請求項5に記載の車両用シート駆動システムでは、シート装置が特定動作として、シートバックがシートクッションに対して回転するリクライニング動作を実行する。さらにリクライニング動作の回転方向の単位移動量に対応する回転角である単位回転角が1.6~4.6°である。シート装置がこの数値の大きさだけリクライニング動作を実行すると、シート装置に着座した乗員(被験者)が不快感及び違和感を覚え難いことが官能評価試験によって判明した。そのため、請求項5に記載の車両用シート駆動システムによれば、シート装置がリクライニング動作によって単位移動量だけ移動したときに、乗員が不快感及び違和感を覚え難い。
【0019】
請求項6に記載の発明に係る車両用シート駆動システムは、請求項5に記載の車両用シート駆動システムにおいて、1つの前記特定動作が、前記シートバックが前記シートクッションに対して車両前方向へ回転する前方リクライニング動作であり、別の1つの前記特定動作が、前記シートバックが前記シートクッションに対して車両後方向へ回転する後方リクライニング動作であり、前記前方リクライニング動作の前記単位回転角が2.5~4.6°であり、前記後方リクライニング動作の前記単位回転角が1.6~3.8°である。
【0020】
請求項6に記載の車両用シート駆動システムでは、シート装置が特定動作として、シートバックがシートクッションに対して車両前方向へ回転する前方リクライニング動作及びシートバックがシートクッションに対して車両後方向へ回転する後方リクライニング動作を実行する。さらに前方リクライニング動作の単位回転角が2.5~4.6°であり、後方リクライニング動作の単位回転角が1.6~3.8°である。シート装置がこれらの数値の大きさだけ前方リクライニング動作及び後方リクライニング動作を実行すると、シート装置に着座した乗員(被験者)が不快感及び違和感を覚え難いことが官能評価試験によって判明した。そのため、請求項6に記載の車両用シート駆動システムによれば、シート装置が前方リクライニング動作及び後方リクライニング動作によって単位移動量だけ移動したときに、乗員が不快感及び違和感を覚え難い。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る車両用シート駆動システムによれば、乗員がシート装置を予め設定された所定距離だけ移動させるのが容易であり、低い製造コストで実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る車両用シート駆動システムを備える車両のルーフを省略して示す模式的な平面図である。
図2図1に示される車両に設けられた運転席(助手席)の模式的な側面図である。
図3図2に示される運転席(助手席)のシートバック及びヘッドレストの模式的な正面図である。
図4】車両用シート駆動システムのブロック図である。
図5】シートECUの概略ブロック図である。
図6】スライド動作に関する官能評価試験の結果を表す図である。
図7】リクライニング動作に関する官能評価試験の結果を表す図である。
図8】シートECUのROMに記録された音声コマンドリストを示す図である。
図9】シートECUが行う処理を示すフローチャートである。
図10】シートECUが行う処理を示すフローチャートである。
図11】変形例のROMに記録された音声コマンドリストを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1図10を用いて本発明の実施形態に係る車両用シート駆動システム10(以下、駆動システム10)について説明する。なお、各図中に適宜示される矢印FRは車両前方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両左右方向(車両幅方向)の左側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示す。
【0024】
図1に示されるように、駆動システム10が搭載された車両12の車体14の車室14Aには、右側の前席(シート装置)16及び左側の前席(シート装置)18が設けられている。なお、車体14には車両ドアが含まれる。インストルメントパネル14Cの右側部にステアリングホイール14Dが設けられている。そのため以下の説明では、右側の前席16を運転席16と称し、左側の前席18を助手席18と称する。運転席16には乗員P1が着座し、助手席18には乗員P2が着座している。
【0025】
図2に示されるように、車室14Aのフロア14Bには、運転席16及び助手席18をそれぞれ前後方向にスライド可能に支持するスライドレール装置20が設けられている。各スライドレール装置20は、フロア14Bに固定された前後方向に延在する左右一対のロアレール21と、各ロアレール21に前後方向にスライド可能に支持された左右一対のアッパレール22と、を有する。スライドレール装置20は、電動モータからなる第1アクチュエータ(作動制御部)24と、動力伝達機構(図示省略)と、を有する。第1アクチュエータ24が正転しながら駆動力を発生すると、この駆動力が動力伝達機構からアッパレール22に伝わり、アッパレール22がロアレール21に対して前方へスライドする。第1アクチュエータ24が逆転しながら駆動力を発生すると、この駆動力が動力伝達機構からアッパレール22に伝わり、アッパレール22がロアレール21に対して後方へスライドする。
【0026】
各スライドレール装置20の各アッパレール22には支持部材26が設けられている。運転席16及び助手席18の支持部材26には、シート19がそれぞれ支持されている。シート19は、シートクッション19A、シートバック19B及びヘッドレスト19Cを有する。支持部材26の上端部にシートクッション19Aが固定されている。シートクッション19Aの後端部とシートバック19Bの下端部はリクライニング機構30を介して回転可能に接続されている。各リクライニング機構30には第2アクチュエータ(作動制御部)32が設けられている。第2アクチュエータ32が正転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリクライニング機構30が回転し、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して倒れる。換言すると、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して前方に相対回転する。第2アクチュエータ32が逆転しながら駆動力を発生すると、この駆動力によってリクライニング機構30が回転し、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して起きる。換言すると、シートバック19Bがシートクッション19Aに対して後方に相対回転する。
【0027】
図2及び図3に示されるように、ヘッドレスト19Cは、クッション部19C1と、上端部がクッション部19C1に固定された左右一対のステー19C2と、を有する。左右のステー19C2は、シートバック19Bの上端部に上下方向にスライド可能に支持されている。
【0028】
図1に示されるように、フロア14Bには運転席16及び助手席18より後方側に位置する後席(シート装置)34が設けられている。後席34は、単一のシートクッション34Aと、単一のシートバック34Bと、3個のヘッドレスト34Cと、を有する。シートクッション34A及びシートバック34Bの車両幅方向の寸法は、車室14Aの車両幅方向の寸法と略同一である。
【0029】
図4に示されるように駆動システム10は、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ32、シートECU(Electronic Control Unit)40、マイク(音声取得部)42、ピーカ44、メモリ位置設定スイッチ46、メモリ動作スイッチ48、第1操作ボタン50、第2操作ボタン52、第3操作ボタン54、第4操作ボタン56、車体ECU58及びカーナビゲーションシステム60を備える。第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ32、マイク42、スピーカ44、メモリ位置設定スイッチ46、メモリ動作スイッチ48、第1操作ボタン50、第2操作ボタン52、第3操作ボタン54及び第4操作ボタン56は、シートECU40に電気的に接続されている。運転席16及び助手席18は、第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ32に加えて、シートECU40、マイク42、スピーカ44、メモリ位置設定スイッチ46、メモリ動作スイッチ48、第1操作ボタン50、第2操作ボタン52、第3操作ボタン54及び第4操作ボタン56を備える。カーナビゲーションシステム60は車体14に設けられている。カーナビゲーションシステム60は、タッチパネル式のディスプレイ(図示省略)を有する。
【0030】
車体14には車体ECU58が設けられている。車体ECU58にカーナビゲーションシステム60が電気的に接続されている。シートECU40と車体ECU58は、車内ネットワーク(図示省略)を介して、互いにデータ交換可能(通信可能)に接続されている。
【0031】
図5に示されるようにシートECU40は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)40A、ROM(Read Only Memory)(記録部)40B、RAM(Random Access Memory)40C、ストレージ40D、通信I/F(Inter Face)40E及び入出力I/F40Fを含んで構成されている。CPU40A、ROM40B、RAM40C、ストレージ40D、通信I/F40E及び入出力I/F40Fは、バス40Zを介して相互に通信可能に接続されている。ECU40は、タイマー(図示省略)から日時に関する情報を取得可能である。なお、車体ECU58の基本構成はシートECU40と実質的に同一である。
【0032】
CPU40Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU40Aは、ROM40B又はストレージ40Dからプログラムを読み出し、RAM40Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU40Aは、ROM40B又はストレージ40Dに記録されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種の演算処理を行う。
【0033】
ROM40Bは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM40Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ40Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置により構成され、各種プログラム及び各種データを格納する。通信I/F40Eは、シートECU40が他の機器と通信するためのインタフェースである。入出力I/F40Fは、様々な装置と通信するためのインタフェースである。例えば、入出力I/F40Fには、第1アクチュエータ24、第2アクチュエータ32、マイク42、スピーカ44、メモリ位置設定スイッチ46、メモリ動作スイッチ48、第1操作ボタン50、第2操作ボタン52、第3操作ボタン54及び第4操作ボタン56が接続されている。
【0034】
マイク42は、乗員P1、P2が発した音声を電気信号に変換してシートECU40へ送信する。図3に示されるように、マイク42はクッション部19C1の下面に設けられている。そのため運転席16に着座した乗員P1の頭部P1aの近傍に運転席16のマイク42が位置し、且つ、助手席18に着座した乗員P2の頭部P2aの近傍に助手席18のマイク42が位置する。さらに各マイク42の指向性は狭い。具体的には、運転席16のマイク42は運転席16のシート19の直前領域の音声のみを収音し、助手席18のマイク42は助手席18のシート19の直前領域の音声のみを収音する。そのため、乗員P1が発した音声を助手席18のマイク42が集音するおそれは小さい。同様に、乗員P2が発した音声を運転席16のマイク42が集音するおそれは小さい。
【0035】
スピーカ44は音を出力可能である。スピーカ44は、例えばヘッドレスト19Cに設けられる。各スピーカ44の指向性は狭い。そのため、乗員P1が運転席16のスピーカ44が出力した音を聞き取るのは容易であり、乗員P2が運転席16のスピーカ44が出力した音を聞き取るのは困難である。同様に、乗員P2が助手席18のスピーカ44が出力した音を聞き取るのは容易であり、乗員P1が助手席18のスピーカ44が出力した音を聞き取るのは困難である。
【0036】
運転席16のシート19のフロア14Bに対するスライド位置が所定の位置にあり且つシートバック19Bのシートクッション19Aに対するリクライング位置が所定の位置にあるときに、乗員がメモリ位置設定スイッチ46を操作すると、これらの位置がROM40Bにメモリ位置として記録される。運転席16のROM40Bには複数のメモリ位置を記録可能である。同様に、助手席18のROM40Bにも複数のメモリ位置を記録可能である。
【0037】
例えば、運転席16のROM40Bに一つのメモリ位置のみが登録されている場合を想定する。運転席16のスライド位置及びリクライング位置がメモリ位置からずれている状態で乗員P1がメモリ動作スイッチ48を操作すると、シートECU40の後述する駆動制御部(作動制御部)415によって第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ32が制御される。これにより、運転席16のスライド位置及びリクライング位置がメモリ位置と一致するまで、スライドレール装置20及びリクライニング機構30が動作する。このような運転席16及び助手席18の動作を、以下の説明ではメモリ動作と称する。
【0038】
図4に示されるようにシートECU40は、機能構成として、ウェイクアップ判定部411、音声認識部412、コマンド判定部414、駆動制御部415及び返答制御部416を有する。ウェイクアップ判定部411、音声認識部412、コマンド判定部414、駆動制御部415及び返答制御部416は、CPU40AがROM40Bに記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。ウェイクアップ判定部411、音声認識部412、コマンド判定部414、駆動制御部415及び返答制御部416の機能については後述する。
【0039】
ROM40Bには、図8に示された音声コマンドリスト65が記録されている。音声コマンドリスト65は、第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ32の少なくとも一つの駆動力を用いて運転席16及び助手席18に少なくとも一つの特定動作を実行させるための音声コマンド例を規定する。本実施形態の運転席16及び助手席18は、4つの特定動作(前方スライド動作、後方スライド動作、前方リクライニング動作及び後方リクライニング動作)を実行可能である。音声コマンドリスト65に規定された音声コマンド例(文字列)には、第1例~第4例が含まれる。音声コマンドリスト65に規定された各音声コマンド例(第1例~第4例)は、4つの特定動作のそれぞれと対応する。第1例が表す文字列は「シート前」であり、第2例が表す文字列は「シート後ろ」であり、第3例が表す文字列は「シート倒す」であり、第4例が表す文字列は「シート起こす」である。
【0040】
図6は、運転席16及び助手席18と実質的に同一構成のシート装置(図示省略)がスライド動作を行ったときの官能評価試験の結果を表す箱ひげ図である。22人の被験者が、この官能評価試験に参加した。22人には男性及び女性が含まれる。最も身長が低い被験者の身長は150cmであり、最も身長が高い被験者の身長は190cmである。最も体重が少ない被験者の体重は46kgであり、最も体重が大きい被験者の体重は105kgである。図6の縦軸はスライド動作の単位移動量を表す。ここでスライド動作の単位移動量とは、音声コマンドリスト65に基づいて上記シート装置が実行する1回のスライド動作の移動量である。図6中の各〇(丸印)は、各被験者が不快感及び違和感を覚え難いと感じた単位移動量を表す。図6から明らかなように、前方スライド動作が実行される場合、多くの被験者にとっての好ましい単位移動量は7.0~20.0mmである。また、後方スライド動作が実行される場合、多くの被験者にとっての好ましい単位移動量は7.0~23.0mmである。
【0041】
音声コマンドリスト65が示すように、2つのスライド動作毎に単位移動量がそれぞれ設定されている。音声コマンドリスト65が示すように、第1例に基づいて実行される前方スライド動作の単位移動量は12.0mmである。第2例に基づいて実行される後方スライド動作の単位移動量は15.0mmである。
【0042】
図7は、上記シート装置がリクライニング動作を行ったときの官能評価試験の結果を表す箱ひげ図である。上記22人が、この官能評価試験に参加した。図7の縦軸は、リクライニング動作の単位回転角を表す。ここでリクライニング動作の単位回転角とは、音声コマンドリスト65に基づいて上記シート装置が実行する1回のリクライニング動作の回転方向の移動量(単位移動量)に対応する回転角である。図7中の各〇(丸印)は、各被験者が不快感及び違和感を覚え難いと感じた単位回転角を表す。図7から明らかなように、前方リクライニング動作が実行される場合、多くの被験者にとっての好ましい単位回転角は2.5~4.6°である。また、後方リクライニング動作が実行される場合、多くの被験者にとっての好ましい単位回転角は1.6~3.8°mmである。
【0043】
音声コマンドリスト65が示すように、2つのリクライニング動作毎に単位回転角がそれぞれ設定されている。音声コマンドリスト65が示すように、第3例に基づいて実行される前方リクライニング動作の単位回転角は2.7°である。第4例に基づいて実行される後方リクライニング動作の単位回転角は3.2°である。
【0044】
第1操作ボタン50は、シート19に前方スライド動作を実行させるためのスイッチである。即ち、第1操作ボタン50が操作されると、駆動制御部415の制御により第1アクチュエータ24が正転する。第2操作ボタン52は、シート19に後方スライド動作を実行させるためのスイッチである。即ち、第2操作ボタン52が操作されると、駆動制御部415の制御により第1アクチュエータ24が逆転する。
【0045】
さらに第1操作ボタン50が操作された時間が所定時間未満の場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位移動量(12.0mm)だけシート19が前方スライド動作を実行するように、駆動制御部415が第1アクチュエータ24を制御する。同様に、第2操作ボタン52が操作された時間が上記所定時間未満の場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位移動量(15.0mm)だけシート19が後方スライド動作を実行するように、駆動制御部415が第1アクチュエータ24を制御する。この所定時間は極めて短い時間であり、例えば1.0秒である。一方、第1操作ボタン50及び第2操作ボタン52が上記所定時間以上に渡って連続して操作される場合は、操作されている時間に渡って第1アクチュエータ24が動作し続ける。
【0046】
第3操作ボタン54は、シート19に前方リクライニング動作を実行させるためのスイッチである。即ち、第3操作ボタン54が操作されると、駆動制御部415の制御により第2アクチュエータ32が正転する。第4操作ボタン56は、シート19に後方リクライニング動作を実行させるためのスイッチである。即ち、第4操作ボタン56が操作されると、駆動制御部415の制御により第2アクチュエータ32が逆転する。
【0047】
さらに第3操作ボタン54が操作された時間が上記所定時間未満の場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位回転角(2.7°)だけシート19が前方リクライニング動作を実行するように、駆動制御部415が第2アクチュエータ32を制御する。同様に、第4操作ボタン56が操作された時間が上記所定時間未満の場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位回転角(3.2°)だけシート19が後方リクライニング動作を実行するように、駆動制御部415が第2アクチュエータ32を制御する。一方、第3操作ボタン54及び第4操作ボタン56が上記所定時間以上に渡って連続して操作される場合は、操作されている時間に渡って第2アクチュエータ32が動作し続ける。
【0048】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0049】
運転席16及び助手席18の駆動システム10のシートECU40は、図9のフローチャートの処理を繰り返し実行する。なお、以下の説明では、運転席16及び助手席18の中で当該処理が行われることにより動作させられるものを「前席16、18」と称する場合がある。
【0050】
まずステップS10においてシートECU40の駆動制御部415は、メモリ動作スイッチ48が操作されたか否かを判定する。
【0051】
ステップS10でYesと判定したシートECU40はステップS11へ進み、駆動制御部415が前席16、18にメモリ動作を開始させる。即ち、駆動制御部415が第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ32の少なくとも一方を始動させる。
【0052】
ステップS11の処理を終えたシートECU40はステップS12に進み、フラグを「1」に設定する。なお、フラグの初期値は「0」である。
【0053】
ステップS12の処理を終えたシートECU40はステップS13に進み、駆動制御部415が前席16、18のスライド位置及びリクライング位置がメモリ位置に到達したか否かを判定する。駆動制御部415はYesと判定するまで、ステップS13の処理を繰り返す。
【0054】
ステップS13でYesと判定したシートECU40はステップS14へ進む。第1アクチュエータ24が動作している場合は、駆動制御部415が第1アクチュエータ24へ停止信号を送信する。第2アクチュエータ32が動作している場合は、駆動制御部415が第2アクチュエータ32へ停止信号を送信する。
【0055】
ステップS14の処理を終えたシートECU40はステップS15に進み、フラグを「0」に設定する。
【0056】
ステップS15の処理を終えたとき、又は、ステップS10でNoと判定したとき、シートECU40は図9のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0057】
さらにシートECU40は、図10のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0058】
まずステップS20において、駆動制御部415はフラグが0か否かを判定する。
【0059】
ステップS20でYesと判定したシートECU40はステップS21へ進み、第1操作ボタン50、第2操作ボタン52、第3操作ボタン54及び第4操作ボタン56の少なくとも一つが操作されたか否かを判定する。換言すると、第1操作ボタン50、第2操作ボタン52、第3操作ボタン54及び第4操作ボタン56の少なくとも一つから操作コマンド(コマンド)を受けたか否かを、駆動制御部415が判定する。以下、第1操作ボタン50、第2操作ボタン52、第3操作ボタン54及び第4操作ボタン56の少なくとも一つを「操作ボタン」と称する場合がある。
【0060】
ステップS21でYesと判定したシートECU40はステップS22へ進み、駆動制御部415が、操作ボタンが操作された時間が上記所定時間未満か否かを判定する。即ち、駆動制御部415は、操作ボタンが操作されてから所定時間より短い時間内に、操作ボタンが操作されなくなったか否かを判定する。
【0061】
ステップS22でYesと判定したシートECU40はステップS23へ進む。例えば、第1操作ボタン50が操作された場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位移動量(12.0mm)だけ前席16、18が前方スライド動作を実行するように駆動制御部415が第1アクチュエータ24を制御する。第2操作ボタン52が操作された場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位移動量(15.0mm)だけ前席16、18が後方スライド動作を実行するように、駆動制御部415が第1アクチュエータ24を制御する。第3操作ボタン54が操作された場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位回転角(2.7°)だけ前席16、18が前方リクライニング動作を実行するように、駆動制御部415が第2アクチュエータ32を制御する。第4操作ボタン56が操作された場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位回転角(3.2°)だけ前席16、18が後方リクライニング動作を実行するように、駆動制御部415が第2アクチュエータ32を制御する。
【0062】
一方、ステップS22でNoと判定したシートECU40はステップS24へ進み、駆動制御部415が第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ32の少なくとも一方を始動させる。
【0063】
ステップS24の処理を終えたシートECU40はステップS25に進み、操作ボタンが操作されているか否かを判定する。駆動制御部415はNoと判定するまで、ステップS25の処理を繰り返す。
【0064】
ステップS25でNoと判定したシートECU40はステップS26へ進む。第1アクチュエータ24が動作している場合は、駆動制御部415が第1アクチュエータ24へ停止信号を送信する。第2アクチュエータ32が動作している場合は、駆動制御部415が第2アクチュエータ32へ停止信号を送信する。
【0065】
一方、ステップS21でNoと判定したシートECU40はステップS27へ進み、シートECU40のウェイクアップ判定部411が、マイク42から送信された音声データを音声認識処理し、当該音声データが表す文字列(テキストデータ)を生成する。さらにウェイクアップ判定部411は、この文字列に基づいて、乗員P1、P2が「ウェイクアップ」という音声を発したと判定した場合に、ステップS27でYesと判定する。なお、ウェイクアップ判定部411及び後述する音声認識部412が実行する音声認識処理は、例えば特開2019-090945号公報、特開2020-086203号公報、特開2020-101610号公報、及び特開2019-176431号公報に開示されているように周知であり、これら各公報に開示された内容で実行可能である。
【0066】
ステップS27でYesと判定したシートECU40はステップS28へ進む。シートECU40がステップS28へ進んだとき、音声認識部412が動作可能な状態に設定される。動作可能な状態に設定された音声認識部412は、マイク42から入力された音声データに基づいて、当該音声データが示す文字列(テキストデータ)を生成する。即ち、音声認識部412は、マイク42から入力された音声を認識する。
【0067】
ステップS28においてコマンド判定部414は、マイク42から送信された音声データから音声認識部412が生成した文字列(音声コマンド)(コマンド)に、音声コマンドリスト65の各音声コマンド例が含まれているか否かを判定する。シートECU40はYesと判定するまでステップS28の処理を繰り返す。
【0068】
ステップS28においてYesと判定したとき、シートECU40はステップS29へ進み、返答制御部416が「システム返答」を表す音声データをスピーカ44へ送信し、スピーカ44に当該システム返答を表す音声を出力させる。このシステム返答は、ステップS28で一致すると判定された音声コマンドリスト65の各音声コマンド例が表す音声である。例えば、ステップS28で、音声コマンドリスト65の第1例が表す文字列「シート前」と一致する文字列が含まれていると判定された場合は、スピーカ44は「シート前」という音声を出力する。例えば、ステップS28で、音声コマンドリスト65の第4例が表す文字列「シート起こす」と一致する文字列が含まれていると判定された場合は、スピーカ44は「シート起こす」という音声を出力する。
【0069】
但し、ステップS28においてスピーカ44が出力する「音声コマンドリスト65の各音声コマンド例が表す音声」は、ステップS28で一致すると判定された文字列が表す意味と同じ意味の音声(言葉)であれば、当該文字列と一致しなくてもよい。例えば、ステップS28で、音声コマンドリスト65の第1例が表す文字列「シート前」と一致する文字列が含まれていると判定された場合に、スピーカ44が「シートを前方の位置へ移動させます」という音声を出力してもよい。
【0070】
ステップS29の処理を終えたシートECU40はステップS23へ進み、ステップS29で行われたシステム返答が表す特定動作を前席16、18が実行するように、駆動制御部415が第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ32の少なくとも一つに作動信号を送信する。
【0071】
例えば、ステップS28において、マイク42から送信された音声データから音声認識部412が生成した文字列に、音声コマンドリスト65の第1例が表す文字列「シート前」と一致する文字列が含まれていると判定された場合を想定する。この場合は、音声コマンドリスト65が規定する単位移動量(12.0mm)だけシート19が前方スライド動作を実行するように、駆動制御部415が第1アクチュエータ24を制御する。
【0072】
シートECU40は、ステップS23、S26の処理を終えたとき、又は、ステップS20でNoと判定したとき、図10のフローチャートの処理を一旦終了する。
【0073】
以上説明した本実施形態の駆動システム10では、シートECU40が操作ボタン又は乗員P1、P2(音声認識部412)から所定のコマンドを受けたときに、前席16、18が特定動作毎に設定された単位移動量(単位回転角)だけ特定動作を実行する。そのため駆動システム10は、前席16、18を予め設定された所定距離だけ移動させるのが容易である。
【0074】
さらに駆動制御部415が実行する制御は単純である。そのため駆動システム10は低い製造コストで実現可能である。
【0075】
さらに駆動システム10では、操作ボタン又は乗員P1、P2(音声認識部412)から所定のコマンドを受けたときの前席16、18の単位移動量(単位回転角)が、官能評価試験の結果に基づいて設定されている。即ち、前席16、18の単位移動量(単位回転角)は、前席16、18に着座した乗員P1、P2(被験者)が不快感及び違和感を覚え難い大きさである。従って、前席16、18がスライド動作によって単位移動量だけ移動したときに、乗員P1、P2が不快感及び違和感を覚え難い。また、前席16、18がリクライニング動作によって単位回転角だけ回転したときに、乗員P1、P2が不快感及び違和感を覚え難い。
【0076】
さらに駆動システム10では、マイク42が運転席16及び助手席18に設けられている。そのため、例えば、乗員P1が運転席16に特定動作を実行させるための音声コマンドを発した場合に、助手席18のマイク42がこの音声コマンドを認識し、助手席18が特定動作を行うおそれが小さい。従って、このような場合に、助手席18が乗員P2の意に反して動作するおそれが小さい。
【0077】
さらに駆動システム10では、乗員P1、P2の音声コマンドに基づいて第1アクチュエータ24及び第2アクチュエータ32の少なくとも一つが前席16、18に駆動力を付与する前に、前席16、18が実行しようとしている特定動作を表す音声をスピーカ44が発する。そのため、この音声を聞いた乗員P1、P2は、これから前席16、18が所定の動作を実行することを認識する。そのため前席16、18が所定の動作を実行したときに、乗員P1、P2が不快感を覚えるおそれが小さい。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0079】
図11は変形例の音声コマンドリスト70を示す。この音声コマンドリスト70では、一つの特定動作について2つの音声コマンド例が設定されている。例えば、音声コマンドリスト70の前方スライド動作を表す音声コマンド例は、第1-1例と第1-2例の2つである。第1-1例が表す文字列は「シート前1」であり、第1-2例が表す文字列は「シート前2」である。さらに第1-1例の単位移動量は12.0mmであり、第1-2例の単位移動量は7.0mmである。音声コマンドリスト70の後方スライド動作を表す音声コマンド例は、第2-1例と第2-2例の2つである。第2-1例が表す文字列は「シート後ろ1」であり、第2-2例が表す文字列は「シート後ろ2」である。さらに第2-1例の単位移動量は15.0mmであり、第2-2例の単位移動量は23.0mmである。音声コマンドリスト70の前方リクライニング動作を表す音声コマンド例は、第3-1例と第3-2例の2つである。第3-1例が表す文字列は「シート倒す1」であり、第3-2例が表す文字列は「シート倒す2」である。第3-1例の単位回転角は2.7°であり、第3-2例の単位回転角は2.5°である。音声コマンドリスト70の後方リクライニング動作を表す音声コマンド例は、第4-1例と第4-2例の2つである。第4-1例が表す文字列は「シート起こす1」であり、第4-2例が表す文字列は「シート起こす2」である。第4-1例の単位回転角は3.2°であり、第4-2例の単位回転角は1.6°である。
【0080】
従って、前席16、18に前方スライド動作を実行させたい乗員P1、P2が「シート前1」という音声コマンドを含む音声を発すると、前席16、18は12.0mmだけ前方スライド動作を実行する。一方、前席16、18に前方スライド動作を実行させたい乗員P1、P2が「シート前2」という音声コマンドを含む音声を発すると、前席16、18は7.0mmだけ前方スライド動作を実行する。このように本変形例の駆動システム10では、乗員P1、P2は複数の単位移動量(単位回転角)から選択した一つの単位移動量(単位回転角)だけ移動するように、前席16、18に特定動作を実行させることが可能である。
【0081】
なお、音声コマンドリスト70において、各特定動作について3つ以上の音声コマンド例が設定されてもよい。
【0082】
前方スライド動作の単位移動量及び後方スライド動作の単位移動量は、7.0~23.0mmの範囲に含まれれば、如何なる値であってもよい。
【0083】
前方スライド動作の単位移動量及び後方スライド動作の単位移動量は、7.0~23.0mmの範囲に含まれない値であってもよい。
【0084】
前方スライド動作の単位移動量と、後方スライド動作の単位移動量と、が同じ値であってもよい。
【0085】
前方リクライニング動作の単位回転角及び後方リクライニング動作の単位回転角は、1.6~4.6°の範囲に含まれれば、如何なる値であってもよい。
【0086】
前方リクライニング動作の単位回転角及び後方リクライニング動作の単位回転角は、1.6~4.6°の範囲に含まれない値であってもよい。
【0087】
前方リクライニング動作の単位回転角と、後方リクライニング動作の単位回転角と、が同じ値であってもよい。
【0088】
乗員が各特定動作の単位移動量(単位回転角)を任意に設定できるようにしてもよい。例えば、カーナビゲーションシステム60のディスプレイ(タッチパネル)を用いて、乗員が各特定動作の単位移動量(単位回転角)を任意に設定できるようにしてもよい。
【0089】
駆動システム10が、第1操作ボタン50、第2操作ボタン52、第3操作ボタン54及び第4操作ボタン56を備えなくてもよい。
【0090】
マイク42及びスピーカ44の少なくとも一方を、運転席16及び助手席18のヘッドレスト19C以外の部位に設けてもよい。
【0091】
マイク42を車体14に設けてもよい。但し、この場合は、シート装置に設けられたマイク42より指向性が狭く且つ乗員P1が発した音声のみを取得し易いマイク42と、シート装置に設けられたマイク42より指向性が狭く且つ乗員P2が発した音声のみを取得し易いマイク42と、を車体14に設けるのが好ましい。
【0092】
車両12にウェイクアップ用スイッチ(図示省略)を設けてもよい。この場合は、ウェイクアップ用スイッチが操作されたときに、シートECU40がステップS27でYesと判定する。
【0093】
後席34に本発明を適用してもよい。この場合、後席34がアクチュエータによって駆動される可動部として、スライドレール装置及びリクライニング機構の少なくとも一つを備える。
【0094】
運転席16、助手席18及び後席34の少なくとも一つが、可動部として、スライドレール装置、リフタ機構、リクライニング機構及びオットマンの少なくとも一つを備え、且つ、シートECU40が所定のコマンドを受けたときに、各可動部が所定の単位移動量(単位回転角)だけ動作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 車両用シート駆動システム(駆動システム)
12 車両
14B フロア
16 前席(運転席)(シート装置)
18 前席(助手席)(シート装置)
19A シートクッション
19B シートバック
24 第1アクチュエータ(作動制御部)
32 第2アクチュエータ(作動制御部)
34 後席(シート装置)
34A シートクッション
34B シートバック
40B ROM(記録部)
412 音声認識部
414 コマンド判定部
415 駆動制御部(作動制御部)
42 マイク(音声取得部)
65 音声コマンドリスト(音声コマンド例)
70 音声コマンドリスト(音声コマンド例)
P1 乗員
P2 乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11