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特開2022-14008昇給額算出装置及び昇給額算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014008
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】昇給額算出装置及び昇給額算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/00 20120101AFI20220112BHJP
   G06Q 10/10 20120101ALI20220112BHJP
【FI】
G06Q40/00 420
G06Q10/10 320
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116117
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】507074915
【氏名又は名称】株式会社プライムコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100186831
【弁理士】
【氏名又は名称】梅澤 崇
(72)【発明者】
【氏名】菊谷寛之
(72)【発明者】
【氏名】津留慶幸
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049AA08
5L055BB65
(57)【要約】
【課題】昇給単位や基本給の加減額を自動調整したり、賃金表の水準を自動調整することが可能な人件費算出装置及び人件費算出プログラムを提供すること。
【解決手段】記憶部110は、組織内の複数の給与対象者に対して、それぞれ給与情報及び給与に関する等級を記憶する。設定部120は、等級別に対応付けた複数の給与ランクについてのそれぞれ給与の額の範囲及び等級別の昇給単位を設定する。昇給度テーブル130は、給与ランクと評価ランクに基づいて、昇給度を定める。入力部140は、給与対象者について、評価ランクを入力する。昇給部150は、給与対象者について、前記給与情報が属する給与ランクを特定する。昇給部150は、特定された給与ランクと入力部140によって入力された評価ランクから、昇給度テーブル130を参照して昇給度を求め、求めた昇給度と昇給単位から、昇給額を求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織内の複数の給与対象者に対して、それぞれ給与情報及び給与に関する等級を記憶する記憶部と、
給与ランクと評価ランクに基づいて、昇給度を定める昇給度テーブルと、
等級別に対応付けた複数の給与ランクについてのそれぞれ給与の額の範囲及び前記等級別の昇給単位を設定する設定部と、
前記給与対象者について、評価ランクを入力する入力部と、
前記給与対象者について、それぞれ前記給与情報が属する給与ランクを特定し、特定された給与ランクと前記入力部によって入力された前記評価ランクから、前記昇給度テーブルを参照して昇給度を求め、求められた昇給度と前記給与対象者の等級の昇給単位から、昇給額を求める昇給部と、
を備える昇給額算出装置。
【請求項2】
昇給原資を入力する原資入力部と、
算出対象となるすべての給与対象者について、前記昇給部によって求められる昇給額の合計と前記昇給原資を比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて、前記設定部に対して、前記給与ランクの属する給与の額及び前記昇給単位の一方又は両方を変更することにより、変更後の前記算出対象となるすべての給与対象者の昇給額の合計を、前記昇給原資に対応させる再設定部と、
をさらに備える請求項1に記載の昇給額算出装置。
【請求項3】
前記昇給度は、昇給倍率であり、
前記昇給部は、前記昇給倍率に前記給与対象者の昇給単位を乗ずることにより、前記昇給額を求める、
請求項1又は請求項2に記載の昇給額算出装置。
【請求項4】
前記比較部は、前記昇給額の合計と前記昇給原資の差分を求め、当該差分が許容範囲を超える場合に超過の旨を表示部に表示し、
前記再設定部は、前記給与ランクの属する給与の額及び前記昇給単位の一方又は両方の入力を受け付けることにより、前記設定部に対して変更する、
請求項1~請求項3のいずれかに記載の昇給額算出装置。
【請求項5】
前記再設定部は、前記昇給額の合計が前記昇給原資を上回る場合に、前記給与ランクの上限又は下限を引き下げ、前記昇給額の合計が前記昇給原資を下回る場合に、前記給与ランクの上限又は下限を引き上げる、
をさらに備える請求項1~請求項4のいずれかに記載の昇給額算出装置。
【請求項6】
前記再設定部は、前記設定部に対して、
前記昇給額の合計が前記昇給原資を上回る場合に、前記少なくとも1つの等級について、前記昇給単位を引き下げ、
前記昇給額の合計が前記昇給原資を下回る場合に、前記少なくとも1つの等級について、前記昇給単位を引き上げる、
請求項1~請求項4のいずれかに記載の昇給額算出装置。
【請求項7】
前記設定部は、等級ごとに基礎額及び加算情報を設定し、
前記昇給額算出装置は更に、
前記昇給額を求めた給与対象者に対して、該当する等級に対応する基礎額に当該等級に対応する加算情報に基づく金額を加算した手当金額を、前記給与情報に反映する手当加算部をさらに備えた、
請求項1~請求項6のいずれかに記載の昇給額算出装置。
【請求項8】
支給月数と賞与原資を設定する基礎設定部と、
前記給与対象者について、算定基礎給与に前記支給月数を乗じ、さらに査定率を乗じることにより求められる賃金比例賞与を取得し、等級別評価別配分点数に、前記賞与原資に基づいて求められる1点単価を乗じ、さらに出勤係数を乗じることにより、配分点比例賞与を取得する基礎賞与取得部と、
前記賞与原資の範囲内で、前記賃金比例賞与及び前記配分点比例賞与に基づき、支給賞与を求める賞与算出部と、をさらに備えた、
請求項1~請求項7のいずれかに記載の昇給額算出装置。
【請求項9】
前記賞与原資から、取得した前記賃金比例賞与の全給与対象者の合計を除いた残りを、前記賞与原資に置き換え、置き換えた賞与原資を、全員の配分点数で割ることにより、前記1点単価を求める、請求項8に記載の昇給額算出装置。
【請求項10】
前記賞与算出部は、前記賞与原資から、前記全員の前記配分点比例賞与を除いた残りに基づいて、支給月数を再計算し、再計算された支給月数に算定基礎給与及び査定率を乗じて賃金比例賞与を再計算し、前記支給賞与を求める、請求項8に記載の昇給額算出装置。
【請求項11】
組織内の複数の給与対象者に対して、それぞれ給与情報及び給与に関する等級を記憶する記憶部と給与ランクと評価ランクに基づいて、昇給度を定める昇給度テーブルを備える昇給額算出装置に、
等級別に対応付けた複数の給与ランクについてのそれぞれ給与の額の範囲及び前記等級別の昇給単位を設定する設定ステップと、
前記給与対象者について、評価ランクを入力する入力ステップと、
前記給与対象者について、前記給与情報が属する給与ランクを特定し、特定された給与ランクと前記入力された前記評価ランクから、前記昇給度テーブルを参照して昇給度を求め、求められた昇給度と前記給与対象者の等級の昇給単位から、昇給額を求める昇給ステップと、
を実行させる昇給額算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
昇給額算出装置及び昇給額算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、企業において、他の企業や個人と契約した業務に関する経費を、契約先ごとに配分する経費配分システムが開示されている。
ここで現状の賃金管理アプリは、大きく分けると次の3種類に分けられる。
(1)コンサルタントがクライアント企業に向けて開発・納品するもの(第三者に開発を委託するものを含む)
(2)クライアント企業が自社の必要性に合わせて開発・使用するもの(同上)
(3)ベンダーがある程度の汎用性がある賃金管理アプリを市場に提供するもの
【0003】
これまで、(1)の流れの中で、コンサルティングを行ったクライアントに自社制作のエクセルの賃金管理アプリが提供されてきたが、コンサルティングサービスそのものに費用と時間がかかり、コンサルタントも生産性が低かった。提供アプリは機能が限定され、クライアントが使用するときにはある程度のエクセルスキルが求められ、仕様変更もコンサルタントに頼むしかないため、使い勝手はよくなかった。
その他にも、本格的なケースではSAP等のデータベースシステムを活用したりして同様のアプリを提供しているものと思われるが、いずれにせよコンサルティングの付帯サービスとして実現するものであり、簡易に入手できるものではない。
【0004】
一方、(2)は個別企業の賃金管理のニーズに応じて各企業が自社開発するものであり、相応の開発費用もかけているものと思われるが、汎用性は極めて乏しい。(3)の賃金管理アプリも一部では市販されているが、賃金制度の理論が古かったり、機能に制約が多く汎用性に限界があったり、一度使い始めた賃金表は簡単に変えられないなどの問題を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-060502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(1)(2)(3)ともに共通して言えることは、一度作った賃金表や昇給基準は固定して使い続けることが前提となっている点である。実際は経営環境や組織状況が変化して、賃金制度を変更したくなるケースが少なくないが、多くのシステムは仕様を変更することを想定しておらず、柔軟に対応できない。経営基盤の弱い中小企業の経営者が賃金制度を導入したり、賃金管理アプリを開発したりすることをためらう原因となっていた。
【0007】
本発明の一形態は、柔軟に賃金表の水準を調整することが可能な人件費算出装置及び人件費算出プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、組織内の複数の給与対象者に対して、それぞれ給与情報及び給与に関する等級を記憶する記憶部と、給与ランクと評価ランクに基づいて、昇給度を定める昇給度テーブルと、等級別に対応付けた複数の給与ランクについてのそれぞれ給与の額の範囲及び前記等級別の昇給単位を設定する設定部と、前記給与対象者について、評価ランクを入力する入力部と、前記給与対象者について、それぞれ前記給与情報が属する給与ランクを特定し、特定された給与ランクと前記入力部によって入力された前記評価ランクから、前記昇給度テーブルを参照して昇給度を求め、求められた昇給度と前記給与対象者の等級の昇給単位から、昇給額を求める昇給部と、を備える昇給額算出装置である。
【0009】
本発明の一形態は、組織内の複数の給与対象者に対して、それぞれ給与情報及び給与に関する等級を記憶する記憶部と給与ランクと評価ランクに基づいて、昇給度を定める昇給度テーブルを備える昇給額算出装置に、等級別に対応付けた複数の給与ランクについてのそれぞれ給与の額の範囲及び前記等級別の昇給単位を設定する設定ステップと、前記給与対象者について、評価ランクを入力する入力ステップと、前記給与対象者について、前記給与情報が属する給与ランクを特定し、特定された給与ランクと前記入力された前記評価ランクから、前記昇給度テーブルを参照して昇給度を求め、求められた昇給度と前記給与対象者の等級の昇給単位から、昇給額を求める昇給ステップと、を実行させる昇給額算出プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】昇給額算出装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2】等級別の給与ランクの設定例を示す。
図3】昇給倍率の基準を示す。
図4】昇給額の計算を示す。
図5】基本給の昇給試算表を示す。
図6】昇給額の算出処理を示すフローチャートである。
図7】昇給原資の範囲内に昇給を管理する処理を示すフローチャートである。
図8】管理職手当を定額制で設定した場合の設定方法を示す。
図9】管理職手当を定率制で設定した場合の設定方法を示す。
図10】総原資と配分方法を設定することで、各人の賞与額を自動計算する機能を示すブロック図である。
図11】貢献賞与(配分点比例賞与)の配分点数表と賞与個人配分の計算の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態に係る昇給額算出装置では、賃金表や昇給基準をフレキシブルに変更が可能とし、経営判断により柔軟に賃金制度の内容を修正できるように工夫して、中小企業の経営者も安心して使えるものにした。特に、本実施の形態に係る昇給額算出装置の制御部は次の機能を有する。
【0012】
・会社が許容範囲と考える昇給原資を任意に設定し、その範囲内で全員の昇給が行えるように昇給単位や基本給の加減額を自動調整したり、賃金表の水準を自動調整する機能を持たせた。
・基本給以外の手当について、定額・定率で任意に手当の支給基準を設定し、リアルタイムで諸手当の支給額をシミュレーションできる機能を持たせた。定率の手当については、自動計算される算定基礎額を任意に選択できるようにした。
・会社が許容範囲と考える賞与原資を任意に設定し、賃金比例賞与(基礎給×支給月数)と配分点比例賞与(配分点×1点単価)を任意の比率で配分できる機能を持たせた。その場合、賞与の支給月数を優先して1点単価を自動調整したり、1点単価を優先して支給月数を自動調整したり、支給月数と1点単価の比率を固定して配分したりする自動調整機能を持たせた。
【0013】
本実施の形態に係る昇給額算出装置の制御部は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、画像処理部と、メモリを備えている。CPU、ROM、RAM、画像処理部及びメモリは、バスを介して相互に接続されている。
【0014】
CPUは、ROMに記録されているプログラム、又はメモリからRAMにロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAMには、CPUが各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0015】
画像処理部は、DSP(Digital Signal Processor)や、VRAM(Video Random Access Memory)等から構成されており、CPU31と協働して、画像のデータに対して各種画像処理を施す。
【0016】
メモリは、DRAMやキャッシュメモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等何らかの記憶媒体が挙げられる。メモリは、バスにより接続されるもののみならず、ドライブまたはインターネットを介して読み書きされるものも含まれる。本実施形態で記憶されたデータは、一時的記憶も不揮発性メモリによる長期記憶の場合も、このメモリにいったん記憶するものとして説明する。
【0017】
図1は、昇給額算出装置の機能的構成を示すブロック図である。図1に示す昇給額算出装置の制御部は、記憶部110と、設定部120と、昇給度テーブル130と、入力部140と、昇給部150と、原資入力部160と、比較部170と、再設定部180と、表示部190を備える。
【0018】
記憶部110は、組織内の複数の給与対象者に対して、それぞれ給与情報及び給与に関する等級を記憶する。給与情報は現在または過去の給与の額である。基本給のみとしてもよいし、基本給と諸手当を合算した給与総額としても良い。給与情報は月額または時給額の数字である。等級は例えば第1から第5までとし、第1が割り当てられた給与対象者は給与の算出額が低くなり、第5が割り当てられた給与対象者は給与の算出額が高くなる。
【0019】
設定部120は、等級別に対応付けた複数の給与ランクについてのそれぞれ給与の額の上限と下限を有する範囲及び前記等級別の昇給単位を設定する。給与ランクは例えばS、A、B、C、Dとし、各等級にそれぞれ設けられる。S、A、B、C、Dの記号は任意に表記することができ、例えばA、B、C、D、Eでもよいし、5、4、3、2、1でもよい。等級ごとに給与の範囲は異なるので、等級ごとに各給与ランクの給与の額の上限と下限は異なる。Dが最も低く、C、B、A、Sの順に給与の範囲は高くなっていく。昇給単位は等級別に設定される。等級が高くなるほどに昇給単位は高い。設定部120による設定は、事前に設定値を記憶しておいても良いし、各値を入力することにより設定しても良い。また、スタート金額、倍率、加算額、丸め桁数などの値を入力することにより、これらの値に基づいて自動設定しても良い。
【0020】
昇給度テーブル130は、給与ランクと評価ランクに基づいて、昇給度を定める。昇給度テーブル130は、給与ランクと評価ランクのマトリックスになっており、各欄にそれぞれ昇給度が用意されている。昇給度は、昇給率としても良いし、昇給額により用意しても良い。入力部140は、給与対象者について、評価ランクを入力する。
【0021】
昇給部150は、給与対象者について、前記給与情報が属する給与ランクを特定する。昇給部150は、特定された給与ランクと入力部140によって入力された評価ランクから、昇給度テーブル130を参照して昇給度を求め、求められた昇給度と給与対象者の等級の昇給単位から、昇給額を求める。昇給度が昇給倍率の場合、昇給倍率と昇給単位を乗ずることにより、昇給額を求める。
【0022】
例えば従業員Aについて、給与情報に基づいて給与ランクCを特定する。一方で評価ランクがCの場合、給与ランクCと評価ランクCの組み合わせから、昇給度を求める。昇給度は、昇給度テーブルを参照して、例えば+1となる。これに従業員Aの属する等級に対応した昇給単位を乗じて、昇給額となる。
【0023】
原資入力部160は、昇給原資を入力する。昇給対象となるすべての給与対象者について、割り当て可能な昇給の総額を入力する。例えば、原資入力部160は、給与原資総額を入力しても良い。ここから、前年度の給与原資総額を引くことにより、昇給原資を求めて入力とすることもできる。
【0024】
比較部170は、算出対象となるすべての給与対象者について、昇給部150によって求められる昇給額の合計と昇給原資を比較する。表示部190は、画像を表示する表示面を有するディスプレイであり、タッチ操作により入力操作が可能なタッチパネルとしても機能する。
【0025】
再設定部180は、比較部170の比較結果に基づいて、設定部120に対して、給与ランクの属する給与の額及び昇給単位の一方又は両方を変更することにより、変更後の算出対象となるすべての給与対象者の昇給額の合計を、昇給原資に対応させる。この対応させるというのは、変更後の算出対象となるすべての給与対象者の昇給額の合計が、昇給原資と一致する場合はもちろん含む。
【0026】
しかし、必ずしも一致するとは限らない。そこで許容範囲値をあらかじめ設定しておき、その範囲内に収まった場合、昇給原資に対応したとして再設定処理を完了することができる。例えば、昇給額の合計と昇給原資の差分の許容範囲として2万円と設定しておいた場合、差額が2万円以内の場合、昇給原資に対応したとすることができる。
【0027】
また、給与ランクの属する給与の額及び昇給単位の一方又は両方を変更する点については、昇給単位を増減することにより調整するのが一番単純で、昇給単位を減らせば昇給総額は減らすことができるし、増やすことにより昇給総額を増やすことができる。一方で、給与ランクの属する給与の額の上限下限を変更することによる調整も可能である。この上限下限の値を下げることにより、給与対象者の給与ランクは上がるので、同じ貢献度・実績の評価を得た場合でも、後述の図3に記載のように、昇給倍率は下がることになり、その結果として昇給総額を、昇給単位を変更することなく抑えることができる。逆に、上限下限の値を上げることにより、給与対象者の給与ランクを下げることができて、その結果として昇給総額を上げることも可能である。
【0028】
また、給与ランクの属する給与の額及び昇給単位の両方を変更することも可能であり、例えば、昇給総額の50%を給与ランクの調整により、昇給総額の残り50%を昇給単位の調整により、変更することも可能である。この場合、設定比率を決めておき、例えば50%ずつと設定しておく。昇給総額が8万円とした場合、給与ランクによるものは4万円、昇給単位によるものは4万円となる。まず、4万円を給与ランクの変更により配分し、それから、4万円を昇給単位の変更により配分する。なお、設定比率は決めておくことなく、両方共を変更するようにしても良い。
【0029】
図2は、等級別の給与ランクの設定例を示す。本実施の形態に係る昇給額算出装置では、「ブロードバンドの役割給」という基本給のしくみを用いる。いわゆる「号俸型の賃金表」ではなく、等級別に基本給の上限・下限を決めるだけの簡易な「ゾーン型範囲給(給与ランク)」の手法を用いている。
【0030】
本実施の形態に係る昇給額算出装置では、設定部120に等級及び給与ランクが記憶されている。この等級及び給与ランクについて、図2を参照して説明する。まず給与対象者全てに等級が設定されている。等級Iが最も低い給与体系であり、等級Vが最も高い給与体系である。この等級は役職に対応付けられている。そして、この等級の範囲内で給与ランク(範囲給)を同じくSABCDの5つの「ゾーン」に分けている(ゾーン名の記号も任意)。各人の基本給は、原則としてこの給与ランク(範囲給)のゾーンのどこかに位置づける。その上で、各給与対象者の貢献度を評価ランクSABCD(Bが標準、記号は任意)の5段階で評価する。
【0031】
各給与対象者はこの等級のいずれかに該当しており、過去に支給された給与(給与情報)はその給与ランクのSの上限からDの下限までのどこかに当てはまる。ここでは給与ランクはそれぞれ5段階であるが、各等級で給与は5段階という訳ではなく、各等級で各人別の金額そのものまたは細かな金額ステップが設けられており、そのどこかに該当するということになる。このどこかに該当するかを判定することにより、その給与対象者がどの給与ランクに該当するかを判定する。
【0032】
基本給の改定は、各人の基本給の高さ(給与ランク)SABCDと貢献度の評価ランクSABCDとを比較して、図3のルールを用いて両者のバランスをとるように昇給・昇給停止・マイナス昇給を行い、合理的に基本給の金額をコントロールする。給与ランク(範囲給)の他は「職能給」とか「年齢給」「勤続給」などの他の基本給項目は使わない。この給与ランク(範囲給)一本で基本給を決める。
【0033】
なお図2の例では、金額に規則性を持たせるため、次のようにI等級のスタート金額(E)17万円に対し順次1.07倍し、かつ8500円を加算して一つ上のゾーン別上限額を設定する計算手法をとった。
【0034】
ランク 金額
0(E) 170,000円(スタート金額)
1(D) 170,000円×1.071+8,500円×1=190,000円(20,000円の差)
2(C) 170,000円×1.072+8,500円×2=212,000円(22,000円の差)
3(B) 170,000円×1.073+8,500円×3=234,000円(22,000円の差)
4(A) 170,000円×1.074+8,500円×4=257,000円(23,000円の差)
5(S) 170,000円×1.075+8,500円×5=281,000円(24,000円の差)
【0035】
II等級以上も考え方は同じで、ランク別金額は順次1.07倍プラス8500円で設定した。本実施の形態に係る昇給額算出装置では、上記「スタート金額」(170,000)、「倍率」(1.07)、「加算額」(8,500)、「丸め桁数」(4)等のパラメータを入力すると自動的に等級別の給与ランク(範囲給)を設定する「自動設定」を使うことができる。
【0036】
図3は、昇給倍率の基準を示す。図3及び図4を用いて、役割給のゾーン別評価別昇給ルールについて説明する。昇給は、図2のI等級1600円~V等級4900円のように、等級別に「昇給単位」(昇給ピッチともいう)の金額を決めておき、これに図3の「昇給倍率」を乗じて毎年の昇給額を決定する。
【0037】
図3は、対象の従業員が
・どの基本給のゾーン(給与ランクSABCD)にいるか(縦軸)
・どの貢献度の評価(SABCD)になったか(横軸)
をみて、両者の交点にあたる昇給倍率を使う。
【0038】
図4は、昇給額の計算を示す。図4でI等級の昇給単位1600円を例にとると、一番賃金の低いDゾーン(基本給19万円未満)では、S評価の5倍8000円からD評価の1倍1600円まで昇給額が変わる。昇給と同時に役割等級を昇格させるときは、下位等級での評価に基づき昇給を行ってから役割等級を変えるようにする。昇格昇給はなくてもよいが、必要なときは昇給単位1~2倍程度をプラスする。また、昇給と同時に役割等級を降格させるときは、上位等級での評価に基づき昇給を行ってから役割等級を変えるようにする。降格降給はなくてもよいが、必要なときは昇給単位1~2倍程度をマイナスする。
【0039】
図5は、基本給の昇給試算表を示す。図5は従業員15人の小企業S社を例に、図2の給与ランク(範囲給)と図3及び図4の昇給ルールをあてはめた基本給の昇給試算表である。ちなみにこの会社では、部長がV等級、課長がIV等級、主任III等級、担当職II等級、一般職I等級という5段階の役割等級に区分した。表頭の合計は、15人の旧基本給の合計は402万2000円、15人の昇給額の合計は8万1200円となっている。表頭の平均は、15人の旧基本給の平均は26万8133円、平均昇給額は5413円、旧基本給に対する平均昇給率は2.0%となっている。なお、ゾーンの列の( )は、基本給がそのゾーンの上限額と一致していることを示す。例えば、13番THの旧基本給は、I等級のBゾーンの上限額と一致している。
【0040】
例えば、1番目のASさん(V等級部長)は、昇給前の旧基本給(給与情報)は39万5000円のCゾーンで、昇給はA評価であった。CゾーンでA評価の昇給倍率は3倍(図3)なので、これにV等級の昇給単位4900円を乗じた昇給額は1万4700円となり、新基本給は40万9700円、旧基本給に対する昇給率は3.7%となる。
【0041】
例えば、1番下のEMさん(I等級定型職)は、昇給前の旧基本給(給与情報)は17万円のDゾーンで、昇給はB評価であった。DゾーンでB評価の昇給倍率は3倍(図3)なので、これにI等級の昇給単位1600円を乗じた昇給額は4800円となり、新基本給は17万4800円、旧基本給に対する昇給率は2.8%となる。
【0042】
以下、同じように評価SABCDによって全員の昇給が決まり、これに管理職手当や住宅手当等の諸手当を付加すれば、各人の新賃金がルール通りシンプルに決まる。このデータを給与計算ソフトにCSVデータで移し、給与支払い実務を行うことになる。
【0043】
図6は、昇給額の算出処理を示すフローチャートである。まず設定部120は、等級ごとの各給与ランクの上限及び下限を設定する(S110)。この給与ランクの上限と下限は、図2に示した通りであり、例えば等級Iの場合だと、給与ランクDに対して上限17万円下限19万円を設定する。このように、各等級の各給与ランクについて、上限下限を設定していく。
【0044】
次に、設定部120は、等級ごとに昇給単位を設定する(S120)。昇給単位は図2に示したように、等級ごとに設定し、例えば等級Iで1600円、等級IIで2100円、等級IIIで2800円、等級IVで3700円、等級Vで4900円、と設定する。
【0045】
次に、各給与対象者に対する昇給処理に移行する。まず、最初の給与対象者を定めるか、2周目以降の場合は次の給与対象者を特定する(S130)。そして入力部140は、この給与対象者に対して、評価ランクを入力および参照する(S140)。評価ランクは、図3及び図4の、縦軸に記載した給与ランクに対して、横軸に並べた各評価である。
【0046】
次に昇給部150は、この給与対象者について、給与情報を参照する(S150)。例えば、図5に示した旧基本給がこの給与情報に該当する。そして昇給部150は、昇給額を算出する(S160)。上述のように、昇給部150は、昇給倍率に昇給単位をかけ合わせることにより、昇給額を給与対象者について算出する。そして、全給与対象者について昇給処理が終了したかどうかを判定し、終了していない場合にはステップS130に進んで次の給与対象者に移り、終了した場合は、一連の処理を終了する。
【0047】
図7は、昇給原資の範囲内に昇給を管理する処理を示すフローチャートである。まず入力部140は、昇給原資を入力する(S210)、次に、図6に示した昇給処理を行う(S130~S170)。そして、比較部170は、昇給原資と昇給総額を比較して、表示部190にて比較表示を行う(S220)。
【0048】
次に表示部190は給与ランク変更と昇給単位変更を入力するための入力画面を表示部190に表示する(S230)。次に、給与ランクを変更する場合は、給与ランクの上限下限を変更する(S240)。すなわち、再設定部180は、給与ランクを変更する等級を選択し、設定部120にて給与ランクの上限又は下限を引き下げるか、給与ランクの上限又は下限を引き上げる。
【0049】
昇給単位の場合は、昇給単位を変更する(S250)。すなわち、再設定部180は、昇給単位を変更する等級を選択し、設定部120にて選択された等級について、昇給単位を引き下げるか、または昇給単位を引き上げる。
【0050】
変更した後、再設定部180は、設定部120に再設定された給与ランク及び昇給単位にて、昇給部150で昇給額、及び昇給総額を再計算することにより、再設定処理を行う(S260)。再設定後、昇給総額が昇給原資に対して許容範囲内であるかどうかを判定する(S270)。許容範囲外の場合、ステップS230に戻って各値を再入力する。許容範囲内の場合、一連の処理を終了する。
【0051】
以上のステップS230~S270の処理を繰り返すことにより、再設定部180は、設定部120に対して、昇給額の合計が昇給原資を上回る場合に、給与ランクの上限又は下限を引き下げ、昇給額の合計が前記昇給原資を下回る場合に、給与ランクの上限又は下限を引き上げる。そして、再設定部180は、設定部120に対して、昇給額の合計が前記昇給原資を上回る場合に、少なくとも1つの等級について、昇給単位を引き下げ、昇給額の合計が前記昇給原資を下回る場合に、少なくとも1つの等級について、前記昇給単位を引き上げる。
【0052】
以上のように、本実施の形態では、図5の昇給原資(8万1200円)や平均昇給額(5413円)のいずれかに対して「目標額」を設定し、1.図表11の給与ランク(範囲給)の高さを調整したり、2.( )内の昇給単位を調整したり、あるいは3.定額または定率で基本給を加減調整したりして、目標とする昇給額の合計や平均昇給額に近づける処理を行うことができる。
【0053】
これまでは、3.定額または定率で各人の基本給を調整する賃金管理アプリは存在していたが、1.図2の範囲給の高さを調整したり、2.( )内の昇給単位を調整したりして昇給原資をコントロールできるものは存在しなかった。定額または定率で各人の基本給を直接調整する既存の方式に比べて、範囲給と昇給単位を設定したうえで範囲給の上限・下限を調整したり、昇給単位を調整したりする方法には次のようなメリットがある。
【0054】
本実施の形態では、変更するのは昇給単位及び給与ランクの上限下限であるので、各従業員の等級及び基礎となる過去の給与額に変更を加えることなく、また評価基準に変更を加えることなく、昇給額を昇給原資に基づいて適切に調節することができる。
【0055】
例えば昇給額の基礎算出額に、一律に係数をかけ合わせて増減させるやり方だと、昇給時期のたびに昇給額の幅が変更になり、従業員にとって分かりにくいという問題がある。本実施の形態の場合、昇給単位が変更になったことをアナウンスしておけば、自分の評価に対してどのように昇給したのかが客観的にも分かりやすくなる。給与ランクの上限下限の変更の場合、昇給単位の変更はないので、単に現在の給与ランクに対する実績評価に対して昇給がこの程度決まったのだという納得感も得られやすくなる。各立場の者にとってのメリットはさらに次の通りである。
【0056】
(ア)従業員にとってのメリット
1.昇給単位があることで、明示的な昇給のルールに沿って賃金が決められていることが分かりやすい
2.賃金の上限・下限(範囲給)があることで、役割・評価に対応して将来の賃金がどう決まるかが見通せる
【0057】
(イ)経営者にとってのメリット
1.役割・評価に対応して従業員の賃金をどのように決めたかが明確に分かる
2.経営の状況に応じて人件費原資を適切かつ迅速にコントロールしつつ、従業員に明快な説明ができる
【0058】
(ウ)賃金管理担当者にとってのメリット
1.従来型の号俸表のように賃金表と昇給単位とが分かちがたく結びついた固定的な賃金表とは異なり、昇給単位を任意に調整できるので、昇給原資に合わせた賃金管理がやりやすくなる
2.従来型の号俸表のように賃金表と各人の賃金が一対一で連動していた方式とは異なり、各人の賃金への影響を最小限に留めつつ賃金の上限・下限(範囲給)を改定できる(範囲給を改定しても直接には従業員の賃金に連動しないため)。
【0059】
特に(イ)は、リーマンショックや東日本大震災、コロナショックの時のような経済恐慌が起きたときに、合理的に従業員に説明できる方法で従業員の昇給を急遽抑制したり、緊急避難的に賃金を一時的にカットしたり、その後、景況が回復したときに昇給を増やしたり、賃金を元に戻したりすることで、経営環境の変化に迅速に対応して弾力的な賃金管理ができるようになる。
【0060】
(手当の計算について)
本実施の形態に係る昇給額算出装置では、図1に示した手当加算部200により、諸手当の加算処理を実行することもできる。すなわち、設定部120は、等級ごとに基礎額及び加算情報を設定する。そして、手当加算部200は、昇給額を求めた給与対象者に対して、該当する等級に対応する基礎額に当該等級に対応する加算情報に基づく金額を加算した手当金額を、給与情報に反映する。
【0061】
この場合、設定部120は、基本給を補完する諸手当の支給基準を10種類まで会社独自に設定し、対象従業員に一人ひとりの支給情報を設定すると、手当加算部200は、諸手当の金額を自動的に計算することができる。諸手当の支給基準には、図8に示す定額、図9に示す定率、そして個別入力の3通りを選択のうえ設定できる。
【0062】
図8は、管理職手当を定額制で設定した場合の設定方法を示す。図8に示す例は、手当の基礎額を任意に選択したうえで、定額の手当額を自動計算するものである。基礎額の選択とは、例えば管理職手当は基本給のみに連動して設定し、営業職のみなし残業手当は基本給、住宅手当、資格手当等を合計した割増賃金算定基礎額に連動して計算するなど、複数ある賃金項目のうちどれを対象に定額手当を計算するかを選択できる。
【0063】
図9は、管理職手当を定率制で設定した場合の設定方法を示す。図9に示す例は、定率手当の基礎額を任意に選択したうえで、手当の支給率(%)を乗じて手当額を自動計算するものである。定率手当の基礎額の選択とは、例えば管理職手当は基本給のみに連動して定率手当を計算し、営業職のみなし残業手当は基本給、住宅手当、資格手当等を合計した割増賃金算定基礎額に連動して定率手当を計算するなど、複数ある賃金項目のうちどれを対象に定率手当を計算するかを選択できる。
【0064】
定率手当の支給率(%)は、V等級30%、IV等級20%というように役割等級別に任意に設定したり、部長30%、課長20%、営業職15%というように役職・職種等の手当区分を任意に設定したりできる。この支給率(%)を設定する補助機能として、想定する残業時間数や会社の時間外割増率を入力し、それに見合う手当の支給率を計算させる補助機能もある。例えば、図9の例で、管理職の想定残業時間が20時間、月間所定労働時間が162時間、時間外割増率が125%の場合は、20時間×1.25÷162時間=15.4%の支給率を自動的に計算する。
【0065】
定率手当の機能を活用すれば、毎年の昇給の都度、手当額を一人ひとりマニュアルで計算することなく、自動的に対象従業員の管理職手当やみなし残業手当の金額を自動的に計算することができ、給与実務担当者の省力化につながる。2.の定額手当は、図8の例のほか、例えば配偶者2万円、第1子1万円、第2子5000円等の家族手当、世帯主2万円、単身世帯主1万円、親元通勤5000円等の住宅手当、あるいは1級建築士5万円、2級建築士1万円等の資格手当というように、さまざまな種類の定額手当の支給基準をあらかじめ設定しておく。対象従業員ごとに、例えば家族手当は配偶者と第1子、住宅手当は世帯主、資格手当は1級建築士などの支給情報を個別に登録することで、各人の手当額を自動的に計算する。
【0066】
定額手当の機能を活用して、所定の諸手当の支給基準に基づいて各人の支給情報のみ正確に管理すれば、正確に手当額を支給することができる。これまでのような金額を直接入力する方法で起きがちであったケアレスミスによる手当額の差異は起きず、給与実務担当者の省力化や安心につながる。
これまでの賃金管理アプリでは、基本給の昇給管理はできるが手当は対象外となっていたり、一部の手当だけを個別に手入力させるなどの機能はあったが、上記のように多様な諸手当の支給基準を網羅的・体系的に設定して、個別の手当額を計算できる機能はなく、会社ごとにエクセル等で手当額を別管理する必要があり、賃金管理が煩雑なものとなっていた。
【0067】
本実施の形態に係る昇給額算出装置では、基本給と一体的に、定額・定率で任意に諸手当の支給基準を設定できるようにし、リアルタイムで基本給・諸手当の支給額をシミュレーションできるようにしたことで、賃金管理全体の使い勝手が飛躍的に向上した。
【0068】
(賞与の計算)
本実施の形態に係る昇給額算出装置では、夏冬あるいは年度末に支給する賞与について、総原資と配分方法を設定することで、各人の賞与額を自動計算する機能もある。図10は、総原資と配分方法を設定することで、各人の賞与額を自動計算する機能を示すブロック図である。基礎設定部310は、支給月数と賞与原資を設定する。
【0069】
基礎賞与取得部320は、給与対象者について、算定基礎給与に支給月数を乗じ、さらに査定率を乗じることにより求められる賃金比例賞与を取得する。基礎賞与取得部320は、給与対象者について、等級別評価別配分点数に、前記賞与原資に基づいて求められる1点単価を乗じ、さらに出勤係数を乗じることにより、配分点比例賞与を取得する。1点単価は、全員の配分点比例賞与総額を求めたのち、全員の前記配分点比例賞与総額を、全員の配分点数で割ることで求める。すなわち、賞与原資から、取得した賃金比例賞与の全給与対象者の合計を除いた残りを、賞与原資に置き換え、置き換えた賞与原資を、全員の配分点数で割ることにより、1点単価を求める。
【0070】
賞与算出部330は、賞与原資の範囲内で、賃金比例賞与及び配分点比例賞与に基づき、支給賞与を求める。1)賃金比例賞与(X)の支給月数を優先する方式、2)配分点比例賞与(Y)の1点単価を優先する方式、3)賃金比例賞与(X)と配分点比例賞与(Y)の比率を優先する方式、の3つがあるので、後述する。賞与算出部330は、賞与原資から、全員の配分点比例賞与を除いた残りに基づいて、支給月数を再計算し、再計算された支給月数に算定基礎給与及び査定率を乗じて賃金比例賞与を再計算することで、支給賞与を求めてもよい。
【0071】
賞与の配分方法には、1.賃金比例賞与と、2.配分点比例賞与がある。
1.賃金比例賞与は、次のような各人の算定基礎給(基本給+役付手当など)に支給月数を掛け、これに査定率を掛ける方式である。
賃金比例賞与=算定基礎給×支給月数×査定率
(査定率の例)S=1.2、A=1.1、B=1.0、C=0.9、D=0.8
【0072】
2.配分点比例賞与は、図11に示すような役割等級と貢献度の評価を組み合わせた賞与の「配分点数表」を用意しておき、これに賞与原資に連動した1点単価を乗じて賞与を計算する。
配分点比例賞与=等級別・評価別配分点数×1点単価×出勤係数
・1点単価=全員の配分点比例賞与総額÷全員の配分点数の合計
配分点数の合計=対象者全員の(等級別・評価別配分点数×等級別・評価別人数)の合計
・出勤係数=(6カ月間の所定労働日数-欠勤日数)÷6カ月間の所定労働日数
ここで「6カ月」とは賞与支給対象期間であり、任意の期間を設定できる。
【0073】
図11は、貢献賞与(配分点比例賞与)の配分点数表と賞与個人配分の計算の例を示す。図11の例に示す配分点数表のような「標準型」のほかに等級・評価の差を大きくした「拡大型」、小さくした「抑制型」があり、任意に点数を調整できる。
さらに本実施の形態に係る昇給額算出装置では、賞与原資を設定し、配分点数表を選択すると図11の4番目の等級別・評価別の配分点比例賞与が瞬時に作成できる。
【0074】
本実施の形態に係る昇給額算出装置では、役割等級・評価別の配分点数表そのものを等級別・評価別に任意に設定・選択できる機能を持たせた。等級・評価が高くなるにしたがって、配分点数をどのように増加させるかを任意に設定し、複数の配分点数表を作成して、最も最適な配分点数表を選択できるようにした。
また、会社が許容範囲と考える賞与総原資(Z)を任意に設定し、(1)賃金比例賞与(X)と(2)配分点比例賞与(Y)を任意に組み合わせた併用方式で個人別賞与額(X+Y)を計算できる。その場合、次の3通りのやり方を選択し、賞与総原資(Z)に合わせて対象従業員の賞与額を自動計算できる機能を持たせた。
【0075】
1)賃金比例賞与(X)の支給月数を優先する方式・・・賞与の算定基礎給に乗じる支給月数(一律〇カ月)を任意に設定して賃金比例賞与の支給原資(X)を確定し、賞与総原資(Z)からこれを除いた残りから1点単価(一律〇円)を自動計算して配分点比例賞与(Y)を計算する。これにより、賞与総原資の変動にかかわらず各人の賃金比例賞与のバランスを一定に保ち、残りを等級別・評価別配分点数により配分することができる。
2)配分点比例賞与(Y)の1点単価を優先する方式・・・賞与の配分点数に乗じる1点単価(一律〇円)を任意に設定して配分点比例賞与の支給原資(Y)を確定し、賞与総原資(Z)からこれを除いた残りから支給月数(一律〇カ月)を自動計算して賃金比例賞与(X)を計算する。これにより、賞与総原資の変動にかかわらず各人の配分点比例賞与のバランスを一定に保ち、残りを賃金比例賞与により配分することができる。
3)賃金比例賞与(X)と配分点比例賞与(Y)の比率を優先する方式・・・例えば賃金比例賞与(X)と配分点比例賞与(Y)との総原資の配分比率を40対60というように任意に設定し、それぞれの賞与原資から賃金比例賞与(X)の支給月数(一律〇円)と配分点比例賞与(Y)の1点単価(一律〇円)を計算する。これにより、賞与総原資の変動にかかわらず、対象従業員の賞与配分バランスを一定に保つことができる。
【0076】
以上、本発明について実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施例に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0077】
記憶部110、設定部120、昇給度テーブル130、入力部140、昇給部150、原資入力部160、比較部170、再設定部180、表示部190、手当加算部200
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11