(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140082
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ガス検出計
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220915BHJP
G01N 27/27 20060101ALI20220915BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G01N27/416 371G
G01N27/27 A
G01N27/409 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040731
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 徳美
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB01
2G004BF20
2G004BJ02
(57)【要約】
【課題】 一酸化炭素ガスと酸素ガスとの両方を高感度で検知することができるガス検出計を提供する。
【解決手段】 ケーシング11内に、一酸化炭素及び酸素ガスセンサ10を備えるガス検出計であって、
前記一酸化炭素及び酸素ガスセンサ10が、
一端が閉塞端である管状構造体を形成する固体電解質基板1と、
前記固体電解質基板の外面に、前記固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3と、
前記固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極4と、前記固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極5と
前記固体電解質基板が形成する管状構造体に挿入されたヒータ7と
を備える、ガス検出計。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に、一酸化炭素及び酸素ガスセンサを備えるガス検出計であって、
前記一酸化炭素及び酸素ガスセンサが、
一端が閉塞端である管状構造体を形成する固体電解質基板と、
前記固体電解質基板の外面に、前記固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極と、
前記固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極と、前記固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極と、
前記固体電解質基板が形成する管状構造体に挿入されたヒータと
を備える、ガス検出計。
【請求項2】
前記ケーシング内壁面に断熱材を備える、請求項1に記載のガス検出計。
【請求項3】
前記ケーシング内壁面もしくは前記ケーシング内壁面に設けられた断熱材と、前記固体電解質基板の外面との間に、1.0~6.0mmのクリアランスが存在する、請求項1または2に記載のガス検出計。
【請求項4】
前記一酸化炭素検知作用極が、白金と金の合金粒子からなる金属粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であり、
前記一酸化炭素検知対極、酸素検知作用極、及び酸素検知対極が、白金粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス検出計。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のガス検出計を用いた一酸化炭素ガス及び酸素ガスの検出方法であって、
前記ヒータを駆動する工程であって、前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極上の測定対象ガスの流速を、6.35mm/s以上とする工程と、
前記一酸化炭素検知作用極と前記一酸化炭素検知対極との起電力を得る工程と、
前記酸素検知作用極と前記酸素検知対極との起電力を得る工程と
を含む方法。
【請求項6】
前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極の温度を約600℃~750℃とし、前記酸素検知作用極及び酸素検知対極の温度を約700℃~800℃とする工程をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出計に関する。特には、一酸化炭素と酸素の両方を、高感度で検出することができるガスセンサを備えるガス検出計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定ガス混合物中で一酸化炭素ガス成分の検出及び濃度の決定のために、固体電解質をベースとして構成され、かつ混成電位原理により運転されるセンサを使用することが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1は、本出願人によるガスセンサを開示している。当該ガスセンサは、固体電解質基板に一対の電極を形成し、それらの電極間に発生する起電力を測定することで、500℃を超える高温環境において、一酸化炭素ガスを選択的に、高出力で検出することができると同時に、酸素ガスも検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された一酸化炭素ガスセンサは、一対の電極が形成された固体電解質基板の周囲の構造によっては、十分な起電力が得られず、一酸化炭素ガスの検出が難しい場合があった。特には、固体電解質基板上に一対の電極が形成されたガスセンサを一方の端部が開放端であるケーシング中に収め、開放端から検出対象ガスが流入可能な状態とし、固体電解質基板の周囲を、ケーシング内壁に設けた環状ヒータにより加熱する形態で用いる場合に、十分な起電力が得られない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、一酸化炭素ガスの検知のための電極上での測定対象ガスの流速が起電力(ガス感度)に影響することを見出した。そして、所定のガス感度を得るために必要な測定対象ガスの流速と、これを実現するための構造に想到し、本発明を完成するに至った。より具体的には、ケーシング中に収めた固体電解質基板上の電極温度を所定の温度範囲に調節し、ケーシング内部において測定対象ガスの対流が可能な構造とすることにより、課題を解決するに至った。
【0007】
本発明は、一実施形態によれば、ケーシング内に、一酸化炭素及び酸素ガスセンサを備えるガス検出計であって、
前記一酸化炭素及び酸素ガスセンサが、
一端が閉塞端である管状構造体を形成する固体電解質基板と、
前記固体電解質基板の外面に、前記固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極と、
前記固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極と、前記固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極と、
前記固体電解質基板が形成する管状構造体に挿入されたヒータと
を備える、ガス検出計に関する。
【0008】
前記ガス検出計において、前記ケーシング内壁面に断熱材を備えることが好ましい。
【0009】
前記ガス検出計において、前記ケーシング内壁面もしくは前記ケーシング内壁面に設けられた断熱材と、前記固体電解質基板の外面との間に、1.0~6.0mmのクリアランスが存在することが好ましい。
【0010】
前記ガス検出計において、前記一酸化炭素検知作用極が、白金と金の合金粒子からなる金属粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であり、
前記一酸化炭素検知対極、酸素検知作用極、及び酸素検知対極が、白金粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であることが好ましい。
【0011】
本発明は、別の実施形態によれば、前述のいずれか1項に記載のガス検出計を用いた一酸化炭素ガス及び酸素ガスの検出方法であって、
前記ヒータを駆動する工程であって、前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極上の測定対象ガスの流速を、6.35mm/s以上とする工程と、
前記一酸化炭素検知作用極と前記一酸化炭素検知対極との起電力を得る工程と、
前記酸素検知作用極と前記酸素検知対極との起電力を得る工程と
を含む方法に関する。
【0012】
前記一酸化炭素ガス及び酸素ガスの検出方法において、前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極の温度を約600℃~750℃とし、前記酸素検知作用極及び酸素検知対極の温度を約700℃~800℃とする工程をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るガス検出計によれば、高い感度で一酸化炭素及び酸素の両者を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態によるガス検出計の部分構造を示す概念図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態によるガス検出計の部分断面構造を示す概念図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態によるガス検出計の使用態様における部分断面構造を示す概念図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態によるガス検出計の部分構造を示す概念図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2実施形態によるガス検出計の部分断面構造を示す概念図である。
【
図6】
図6は、2000ppmのCOガスの、一酸化炭素検知作用極及び対極上における流速と、一酸化炭素検知作用極と対極間の起電力-Ewc(mV)との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例1のガスセンサにおける、COガス濃度と一酸化炭素検知極と対極間の起電力-Ewc(mV)との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例2のガスセンサにおける、COガス濃度と一酸化炭素検知極と対極間の起電力-Ewc(mV)との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、比較例によるガス検出計の部分断面構造を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0016】
[第1実施形態]
本発明は、第1実施形態によれば、ガス検出計に関する。本実施形態において、ガス検出計は、一酸化炭素及び酸素ガスセンサを備える。一酸化炭素及び酸素ガスセンサは、検出対象ガスである一酸化炭素(CO)ガス及び酸素(O2)ガスを含み、非検出対象ガスを含む測定対象ガスから、概ね500℃以上、例えば、600~800℃の雰囲気において、2種の検出対象ガスを別個に検知することが可能なガスセンサである。以下、本明細書において、一酸化炭素ガスをCOガス、酸素ガスをO2ガスと指称する場合がある。また、一酸化炭素及び酸素ガスセンサを、単にガスセンサと省略して指称する場合がある。
【0017】
図1は、第1実施形態に係るガス検出計の部分概略図であり、
図2は部分概略断面図である。また、
図3は、当該ガス検出計を、測定対象ガスが流通する領域に、壁を介して挿入して用いる場合の概念図である。以下、第1実施形態に係るガス検出計を
図1、2及び3を参照して説明する。本明細書において、図面は各実施形態の説明の目的で、各部材間の相対的な寸法を正確に示していない場合がある。
図1~3を参照すると、ガス検出計20は、解放端11aを有する管状ケーシング11と、ケーシング内部に収められたガスセンサ10を備えている。
【0018】
ガスセンサ10は、一端が閉塞端である管状構造体を形成する固体電解質基板1と、前記固体電解質基板の外面に、前記固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3と、前記固体電解質基板1の外面に設けられた酸素検知作用極4と、前記固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極5と、前記固体電解質基板1が形成する管状構造体に挿入されたヒータ7とを備え、さらに一酸化炭素検出部及び酸素検出部を備える。本実施形態によるガスセンサ10は、共通の固体電解質基板1上に一酸化炭素ガスセンサ部と酸素ガスセンサ部が設けられたものということができる。以下、各ガスセンサ部について説明する。
【0019】
本実施形態による一酸化炭素ガスセンサ部は、固体電解質基板1と、一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3、並びにこれらの電極に接続される一酸化炭素検出部を含む。
【0020】
固体電解質基板1は、
図1、2に示すように、一端が閉塞した管状構造体である。より具体的には、固体電解質基板1は、一定径でもって所定長さで延びる細長い筒状体に形成されており、その長手方向の一方の端部である基端部が開口すると共に、長手方向の他方の端部である先端部が閉塞した試験管形状をなしている。先端部は、丸みを帯びた曲面状をなしている。本明細書において、固体電解質基板1を構成する一定径の筒状体部分を固体電解質基板1の側壁部と指称し、丸みを帯びた曲面状の部分を先端部と指称する。また、管状構造体の外側面を固体電解質基板1の外面、内側面を固体電解質基板1の内面と指称する。固体電解質基板1は、安定化ジルコニアが好ましく、例えば、イットリア、セリア等の希土類金属酸化物により安定化したジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア等が挙げられるが、これらには限定されない。イオン電導性の観点から、特にはイットリア安定化ジルコニアを用いることが好ましい。
【0021】
一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3は、固体電解質基板1の側壁部外面に形成される。
図1においては、一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3は、それぞれが固体電解質基板1に接触して形成され、かつ一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3とが離間して設けられる。また、固体電解質基板1の先端から一酸化炭素検知作用極2までの長さL
eは、固体電解質基板1の先端から一酸化炭素検知対極3までの長さは概ね同程度であってよい。一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3のそれぞれから、固体電解質基板1の先端までの長さL
eは特には限定されないが、後述するヒータ発熱体7aの設置位置との関係で、一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3の温度が同程度になる長さL
eとすることが好ましい。より具体的には、測定対象雰囲気に設置し、ヒータを駆動した場合に、一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3の両者の温度が、600~750℃となる位置に設けられるように、L
eを決定することができる。一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3はまた、同一の気相雰囲気と接触するように構成する。したがって、固体電解質基板1や他の部材により一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3の雰囲気が遮断されない態様にて、一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3を配置する。
【0022】
なお、一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3が、固体電解質基板1を介してイオン電導性に結合していればよく、例えば、一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3との間に、イオン電導性の他の部材を介していてもよい。また、一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3に加え、参照電極(図示せず)をさらに設けてもよい。または固体電解質基板上の異なる位置に2対以上の一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極を設けることもできる。
【0023】
一酸化炭素検知作用極2は、白金(Pt)と貴金属、例えば、Ptと、金(Au)やロジウム(Rh)との合金からなる金属粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であってよい。より具体的には、合金は、PtとAuとの合金であることが好ましい。以下、PtとAuの合金を、Pt-Au合金と指称することもある。このような焼結体は、Pt-Au合金からなる金属粒子と、固体電解質粒子とを含む混合物を、エチルセルロースを2,2,4トリメチル-3-ヒドロキシペンチイソブチレートに溶解させた有機溶剤等の適切な溶剤中に分散して得られたペーストを、固体電解質基板1上に、例えば薄層形状に塗布・成形して、大気中で、1200~1400℃で焼成することにより得ることができる。
【0024】
金属粒子として用いるPt-Au合金におけるPtとAuの質量比は任意であってよく、特には限定されない。PtとAuの質量比は、例えば99:1~1:99であってよく、98:2~90:10であることが好ましく、96:4~92:8であることがさらに好ましい。Pt-Au合金からなる金属粒子は、平均粒子径が、約0.5~2.5μmであることが好ましく、約1~2μmであることがより好ましい。本明細書において、平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定した平均粒子径をいうものとする。
【0025】
固体電解質粒子は、安定化ジルコニア粒子であってよく、固体電解質基板1の材料として挙げた任意の安定化ジルコニアから選択される1種以上であってよい。また、固体電解質基板1の主成分となる安定化ジルコニアと同一組成の安定化ジルコニアであってもよく、異なる組成の安定化ジルコニアであってもよい。固体電解質粒子は、特には、イットリア安定化ジルコニア粒子が好ましい。固体電解質粒子は、平均粒子径が、約0.1~1μmであることが好ましく、約0.2~0.5μmであることがより好ましい。また、Pt-Au合金からなる金属粒子と、イットリア安定化ジルコニア粒子との平均粒子径の関係は、同一であっても異なっていてもよく、ある実施形態においては、Pt-Au合金の粒径が、イットリア安定化ジルコニア粒子の粒径よりも大きい方が好ましい。
【0026】
一酸化炭素検知作用極2において、Pt-Au合金からなる金属粒子と、固体電解質粒子の質量比は任意であってよく、特には限定されないが、99:1~1:99であることが好ましく、85:15~15:85程度であることが好ましい。Pt-Au合金からなる金属粒子を含む一酸化炭素検知作用極2の膜厚は、例えば1~15μmであってよく、5~10μmであることが好ましい。ここでいう膜厚とは、焼成後の焼結体の膜厚をいうものとする。
【0027】
一酸化炭素検知対極3は、Pt粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であってよい。このときのPt粒子の平均粒子径は、上記Pt-Au合金からなる金属粒子の平均粒子径と同様であってよい。また、固体電解質粒子の種類および平均粒子径も、一酸化炭素検知作用極2を構成する固体電解質粒子の種類および平均粒子径と同様であってよく、好ましくはイットリア安定化ジルコニア粒子である。一酸化炭素検知対極3において、Pt粒子と、固体電解質粒子の質量比は任意であってよく、特には限定されないが、99:1~1:99であることが好ましく、85:15~15:85程度であることが好ましい。これらの粒子を含む焼結体の製造方法は、一酸化炭素検知作用極2を構成する焼結体の製造方法と同様であってよい。一酸化炭素検知対極3の膜厚は、特には限定されない。例えば8~60μm程度であってよく、この範囲であれば一酸化炭素検知特性に変化はない。ここでいう膜厚とは、焼成後の焼結体の膜厚をいうものとする。
【0028】
一酸化炭素検出部は、検出回路及び配線を含む。配線は、その一端が一酸化炭素検知対極3と接続され、他端が検出回路と接続される配線とを含む。検出回路は、一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3との間の起電力(電位差)を測定できる一般的な電位計であってよい。また、配線は導電性部材からなる配線であってよく、Pt線もしくは、配線が接続される電極材料と同一組成の焼結体で構成された配線であってよい。
【0029】
次に、本実施形態による酸素ガスセンサ部は、固体電解質基板1と、酸素検知作用極4及び酸素検知対極5、並びにこれらの電極に接続される図示しない酸素検出部を含む。
【0030】
酸素検知作用極4は、固体電解質基板1の外面に設けられ、好ましくは固体電解質基板1の先端部外面に設けられる。すなわち、酸素検知作用極4は、一酸化炭素検知作用極2及び一酸化炭素検知対極3と同じ雰囲気内に形成される。一方、酸素検知対極5は、固体電解質基板1の内面に設けられ、好ましくは固体電解質基板1の先端部内面に設けられる。図示する態様においては、酸素検知対極5は、固体電解質基板1を介して酸素検知作用極4とイオン電導性に接続され、酸素検知作用極4と概ね対向する位置関係にあって、酸素検出のために校正用ガスと接触する電極として機能する。したがって、酸素検知対極5は固体電解質基板1により、酸素検知作用極4が接する雰囲気、すなわち測定対象ガス雰囲気から遮断されるように構成される。
【0031】
酸素検知作用極4及び酸素検知対極5の材料及び製法は、一酸化炭素検知対極3について例示したのと同様の選択肢の中から選択することができ、好ましくは、一酸化炭素検知対極3の材料及び製法と同一である。酸素検知作用極4及び酸素検知対極5の膜厚は、10~60μmであってよく、酸素検知作用極4と酸素検知対極5は同一の膜厚であっても異なっていてもよい。
【0032】
酸素検知作用極4と酸素検知対極5との間には、酸素検出部が接続される。酸素検出部は、酸素検出回路(図示せず)、並びに、酸素検知作用極4と酸素検出回路との間を接続する配線と、酸素検知対極5と酸素検出回路との間を接続する配線とを含む。酸素検出回路並びに配線の構成は、一酸化炭素検出回路並びに配線の構成と同様であってよい。酸素検出部は、配線を介して、酸素検知作用極4が接する雰囲気の酸素濃度と、第酸素検知対極が接する雰囲気の酸素濃度の差に起因する起電力を測定し、酸素を検出することができる。
【0033】
ヒータ7は、固体電解質基板1の管状構造体の内側に形成される空間に挿入され、好ましくは固定されて、固体電解質基板1の内側から、固体電解質基板1及び少なくとも4つの電極を加熱する。ヒータ7は、発熱部7aと配線部(支持部)7bとから主として構成され、固体電解質基板1の内部空間に発熱部7aを挿入可能な形状のものであればよい。ヒータ7の一例として、円柱状の発熱部7aを備えるロッドヒータを挙げることができるが、特定の形状には限定されない。ヒータ7の仕様は、固体電解質基板1及びそれに接して設けられる少なくとも4つの電極を所定の温度に加熱することができ、かつ絶縁性を担保できるものであればよい。より具体的には、一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3を、600~750℃に加熱し、酸素検知作用極4と酸素検知対極5を、700~800℃に加熱することができればよい。
【0034】
このような温度に加熱するためのヒータ7の挿入位置は、発熱部7aが酸素検知対極5近傍にあって、発熱部7aが酸素検知対極5及び固体電解質基板1の内面に接触しない態様であることが好ましい。したがって、ヒータ7は、配線部7bの基端(図示せず)側にて固定することができる。発熱部7a先端の、固体電解質基板1の先端からの距離Lhは、特には限定されないが、例えば、4.0~6.0mmとすることができる。また、発熱部7aの側面と、固体電解質基板1の側壁部内面との距離は、特には限定されないが、例えば、0.5~1.0とすることができる。また、発熱部7aの固体電解質基板1の管状構造体の軸方向の長さは、1.0~10mmとすることができる。
【0035】
ケーシング11は、解放端11aを有し、一定径でもって所定長さで延びる筒状体である。開放端11aには、フィルタ(図示せず)が取り付けられ、測定対象ガスがケーシング11内部に侵入可能に構成される。ケーシング11は、ガスセンサ10の全体を内包し、ガスセンサ10は、ケーシング11と、固体電解質基板1との間に測定対象ガスの流路となる空間が形成されるように配置される。本実施形態において、ケーシング11内壁面と、固体電解質基板1外面との距離をクリアランスL1という。クリアランスL1を大きくすることで測定対象ガスの対流を促進することができ、一酸化炭素検知作用極2及び対極3の上方での測定対象ガスの速度を大きくすることができる。クリアランスL1は、固体電解質基板1の全長にわたって一定であることが好ましく、1.5~6.0mmであってよく、3.0~6.0mmであることが好ましい。
【0036】
ケーシング11は、解放端11aと反対側の端部である基端部において、ガスセンサ10を取り外し可能に固定することができる。これにより、ガス検出計において、ガスセンサ10部分のみを交換可能な構成とすることができる。ケーシング11にガスセンサ10が固定された状態においては、管状のケーシング11と、管状の固体電解質基板1とが、中心軸を略同一とし、かつ、ケーシング11の解放端11a近傍に、固体電解質基板1の先端が位置する。これにより、クリアランスL1を固体電解質基板1の全長にわたって一定とすることができる。解放端11aから、固体電解質基板1の先端までの距離は特には限定されないが、5~15mmであることが好ましい。
【0037】
図3は、ガス検出計を、測定対象ガスが流れる設備などの壁に挿入して用いる場合の概念図である。ガス検出計20は、ガスセンサ10と、ケーシング11に加え、さらに、取付フランジ13と、校正ガス入口14と、端子部15とを備える。そして、測定対象ガスが流れる設備などの壁30に直接挿入されている。ガス検出計20は、取付フランジ13にて壁30に固着される。
図3中、壁30を境界として、ガスセンサ10を内包したケーシング11が突出している側が、煙道などの測定対象ガス雰囲気であり、端子部15が配置される側が、大気雰囲気である。測定対象ガスの流路において、ケーシング11には、ガイドチューブ12が装着され、測定対象ガスがガスセンサ11に誘導されるように構成されている。
【0038】
次に、このような構成を備えるガス検出計の製造方法について説明する。本実施形態によるガス検出計の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)固体電解質基板1に、一酸化炭素検知作用極2、一酸化炭素検知対極3、酸素検知作用極4、及び酸素検知対極5を形成する工程、及び
(2)固体電解質基板1にヒータ7を挿入し、ケーシング11に固定する工程
【0039】
第1工程:電極及び配線形成工程
電極形成工程では、固体電解質基板1に、一酸化炭素検知作用極2、一酸化炭素検知対極3、酸素検知作用極4、及び酸素検知対極5を形成する。それぞれの電極の形成材料と方法については先に述べた通りである。一酸化炭素検知作用極2の材料からなるペースト、一酸化炭素検知対極3、酸素検知作用極4、及び酸素検知対極5の材料からなるペーストを調製し、これらを固体電解質基板1上の所定の位置に形成し、焼成する。一酸化炭素検知作用極2、一酸化炭素検知対極3は、電極の印刷パターンを固体電解質基板1の解放端の近傍まで形成することが好ましい。次いで、Pt線の配線を取り付ける。酸素検知作用極4、及び酸素検知対極5への配線の取り付けはPtペーストを使用し、950~1300℃で焼成することが好ましい。酸化炭素検知作用極2、一酸化炭素検知対極3への配線の取り付けは、前述の印刷パターンに解放端近傍にてPt線とPtペーストで接続し、950~1300℃で焼成することが好ましい。固体電解質基板1は、市販品を用いることもできるし、第1工程に先立って、固体電解質材料を所望の形状に成形して製造することもできる。第1工程により、固体電解質基板1、一酸化炭素検知作用極2、一酸化炭素検知対極3、酸素検知作用極4、及び酸素検知対極5及び配線を含むガスセンサを得ることができる。
【0040】
第2工程:組み立て工程
次に、第1工程で得られた、電極2、3、4、5を形成した固体電解質基板1に、ヒータ7を、発熱部7aが所定の位置となるように挿入、配置し、固定する。次いで、固体電解質基板1を、その基端部にてケーシング11に固定する。そして、さらに、取付フランジ13と、校正ガス入口14と、端子部15を組み立てて、ガス検出計とすることができる。
【0041】
次に、本実施形態によるガス検出計によるガス検出方法について説明する。ガス検出計20は、
図3に示すように、高温の測定対象ガスが流通する煙道などに直接挿入して一酸化炭素及び酸素濃度を測定することができる。この場合、一般的に、高温の測定対象ガスに最も近い固体電解質基板1の先端部、すなわち酸素検知作用極4が設けられる位置が最も高温となる。そして、基端部へ近づくほど温度が低くなり、その温度分布は概ね、先端部からの距離に依存する。測定対象ガスは、ガイドチューブ12に導入され、次いでケーシング11内の固体電解質基板1の外周に導入される。そして、ヒータ7を駆動することで、酸素検知作用極4と酸素検知対極5の温度を700~800℃とし、一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3の温度を600~750℃とする。ヒータ7は、固体電解質基板1の管状構造体の内部にあるため、固体電解質基板1の外周部にある測定対象ガス流路に均熱帯を形成することはなく、十分なクリアランスL
1を設けることで、測定対象ガスに少なくとも6.35mm/sの流速を与えることができる。そして、一酸化炭素検知作用極2と、一酸化炭素検知対極3の間には、混成電位に基づく起電力が発生し、測定対象ガス中の一酸化炭素濃度を得ることができる。
【0042】
一方、校正用のガス、例えば空気は固体電解質基板1の内周に導入される。測定対象ガスと、校正用のガスの雰囲気が混合することがないように、これらの導入経路は気密的に遮断されている。固体電解質基板1が500℃以上に加熱されることで、酸素検知作用極4に接する測定対象ガスと、酸素検知対極5に接する校正用のガスとの酸素分圧の差により、固体電解質基板1(安定化ジルコニア部材)に起電力が発生し、この起電力を測定することにより、測定対象ガス中の酸素濃度を得ることができる。
【0043】
本発明の第1実施形態によれば、ケーシング内において測定対象ガスに流速を与え、一酸化炭素ガスを十分な感度で検知することが可能であるとともに、酸素ガス濃度の検知も可能な、ガス検出計を得ることができる。
【0044】
[第2実施形態]
本発明は、第2実施形態によれば、ガス検出計に関する。第2実施形態によるガス検出計は、第1実施形態のガス検出計において、ケーシング内壁部にさらに断熱材を備えることを特徴とする。
図4は、第2実施形態に係るガス検出計の部分概略図であり、
図5は部分概略断面図である。
図4、5においては、
図1~3と同じ部材には同じ符号を付している。第2実施形態に係るガス検出計において、ガスセンサ10の構成及びこれらの相対的な位置関係は、第1実施形態と同様であってよい。
【0045】
ケーシング11の内壁面に設けられる断熱材9は、センサ運転温度にて使用可能な耐熱性をもつという特性を有する、電気機器において一般的に使用される断熱材であってよい。断熱材9はケーシング11の内壁面の、少なくとも固体電解質基板1に対向する位置に、固体電解質基板1を包囲する態様で設けることが好ましい。ある態様においては、解放端11aから基端部にわたるほぼ全域に、連続的に、同じ厚さで設けることができる。しかし、ケーシング11の内壁に断熱材が設けられていない領域があってもよく、また連続的でない部分や、厚さの異なる部分があってもよい。断熱材9を設ける本実施形態において、断熱材9と、固体電解質基板1外面との距離をクリアランスL2と定義する。クリアランスL2は、1.0~2.5mmとすることが好ましく、1.5~2.5mmとすることがさらに好ましい。
【0046】
第2実施形態によるガス検出計によれば、ケーシング11の内壁面に断熱材9を設けることで、第1実施形態による利点を全て保持しながら、省電力化を図るとともに、ケーシング11の加熱を防止し、ケーシング11の腐食や損傷を低減することができる。
【実施例0047】
(実施例1)
本発明の第1実施形態によるCO及びO
2ガスセンサを製造した。固体電解質基板1として、内径が4mm、外径が6mm、長さが97mmの試験管形状のイットリア安定化ジルコニア基板(日本化学陶業製、品番ZR-8Y)の外面に、一酸化炭素検知作用極2、一酸化炭素検知対極3、酸素検知作用極4を、内面に酸素検知対極5を、
図2に示すように形成した。一酸化炭素検知作用極2、一酸化炭素検知対極3は、固体電解質基板1の先端から、21mmとなる位置に、酸素検知作用極5は先端部の曲面上に形成した。酸素検知対極5は、固体電解質基板1を介して、酸素検作用極4と対向する、固体電解質基板1の先端部内面に形成した。一酸化炭素検知作用極2は、PtとAuの組成比が99:1の合金粒子(平均粒子径1.5μm)と、イットリア安定化ジルコニア粒子(平均粒子径0.5μm)の混合物(混合質量比80:19)を有機溶剤(エチルセルロースを2,2,4トリメチル-3-ヒドロキシペンチイソブチレートに溶解)中に分散したペーストを用いて成形した。一酸化炭素検知対極3、酸素検知作用極4、酸素検知対極5はPt粒子(平均粒子径1.5μm)とイットリア安定化ジルコニア粒子(平均粒子径0.5μm)の混合物(混合質量比80:19)を上記と同様の有機溶剤中に分散したペーストを用いて成形した。また、配線としてPt線を用い、それぞれの電極材料で電極上に固定した。次いで、これらを大気中1300℃で焼成することにより、各電極、並びに配線を備えるセンサ構造体を作製した。焼成後の一酸化炭素検知作用極の厚みは9.6μm、一酸化炭素検知対極の厚みは8.8μm、酸素検知作用極の厚みは25μm、酸素検知対極の厚みは30μmとした。その後、各電極に一酸化炭素及び酸素の検出回路を接続し、固体電解質基板1にヒータ7を固定した。ヒータ7は、円柱状の発熱部の直径が3mm、軸方向長さが100mmのロッドヒータを用い、発熱部7a先端が、固体電解質基板1の先端から、5mmに位置するように配置した。このようにして得られたガスセンサ10を、内径が18mmのステンレス製のケーシング11に固定し、ガス検出計を製造した。クリアランスL
1は、6mmとした。
【0048】
(実施例2)
ケーシング11内壁面を、厚さが3.5mmの断熱材で被覆した以外は実施例1と同様にして、
図4、5に示すガス検出計を製造した。クリアランスL
2は、2.5mmとした。
【0049】
(比較例)
実施例2において、ケーシング内壁面の断熱材の内部に環状ヒータを設けた構造とした以外は実施例2と同様の構成とし、比較例とした。
図9は、比較例のガス検出計の概念的な部分断面図である。比較例においては、ケーシング511内壁から、ケーシング511の半径方向内側に向かって、断熱材59、ヒータ57、断熱材59が同軸の管状に、かつ隣り合う部材を接触させて配置した。また、環状のヒータ57は、ケーシング511の解放端511aから、固体電解質基板51の先端部を完全に覆う位置まで設けられ、一酸化炭素検知作用極52及び一酸化炭素検知対極53に対向する位置までは設けられなかった。固体電解質基板51の内側の空間にはヒータは設けなかった。比較例のガス検出計において、断熱材59と、固体電解質基板51外面の距離であるクリアランスL
3は、0.65mmであった。
【0050】
(COガス流速による感度の評価)
イットリア安定化ジルコニアからなる固体電解質基板に、実施例1と同様にして、一酸化炭素検知作用極、一酸化炭素検知対極、配線を作成し、一酸化炭素検出用回路を接続して、COガス流速による感度評価用の一酸化炭素ガスセンサを製造した。製造した感度評価用ガスセンサの作用極及び対極に、COガスを、流速を変えて接触させ、作用極と対極との間の起電力-Ewc(mV)を測定した。COガス濃度は2000ppmとし、電極温度は620℃とした。また、ここでいう流速とは、COガスの、酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極上における流速であって、内径30mmの石英管内に評価用ガスセンサを設置し、電気炉で所定の温度加熱し、石英管内のガス流量から流速を求める方法により測定した。
図6は、COガス流速と、一酸化炭素検知作用極と対極間の起電力-Ewc(mV)との関係を示すグラフである。
図6から、一酸化炭素の検知に必要な感度である、起電力50mVを得るためには、一酸化炭素検知電極及び一酸化炭素検知対極上のCOガスの流速を、約6.35mm/s以上とする必要があることがわかった。
【0051】
(実施例1、2及び比較例の評価)
実施例1、実施例2、及び比較例のガス検出計を用い、酸素濃度を3%とし、CO濃度を0ppm~2000ppmまで上昇させて一酸化炭素検知作用極と一酸化炭素検知対極間の起電力-Ewcを測定した。実施例1、実施例2の一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3の温度は620℃、酸素検知作用極4の温度は750℃、酸素検知対極5の温度は750℃とした。比較例の検出計において、一酸化炭素検知作用極2と一酸化炭素検知対極3の温度は620℃、酸素検知作用極4の温度は750℃、酸素検知対極5の温度は750℃とした。
【0052】
図7は、実施例1及び比較例のガス検出計における、COガス濃度と、一酸化炭素検知作用極と一酸化炭素検知対極間の起電力-Ewcとの関係を示す。
図8は、実施例2及び比較例のガスセンサにおける、COガス濃度と、一酸化炭素検知作用極と一酸化炭素検知対極間の起電力-Ewcとの関係を示す。実施例1、2ともに、検知すべきCO濃度範囲内で、十分なCO感度が得られたのに対し、比較例のガスセンサではCO感度が得られなかった。また、図示はしないが、実施例1、2、及び比較例のいずれにおいても、酸素検知作用極と酸素検知対極間の起電力-Ewcの起電力は、40mV以上であり、大気中酸素濃度(21%)と被測定雰囲気の酸素濃度(3%)に応じたネルンストの式に従う濃淡電池として動作しており、酸素検知のための十分な感度が得られた。
【0053】
理論に拘束される意図はないが、比較例のガス検出計では以下のようなメカニズムにより、起電力が得られなかったと考察される。
図9に示す比較例のガス検出計においては、環状のヒータ57に対向する、測定対象ガスの流路が均熱帯となり、対流による測定対象ガスの流速がゼロになる。ゆえに、測定対象ガスの流入口511aからより遠位にある一酸化炭素検知作用極52及び対極53上での測定対象ガスの速度もゼロに近くなる。固体電解質をベースとして構成され、かつ混成電位型の一酸化炭素ガスセンサにおいては、下記式(1)で示す電極内で生じる気相CO酸化反応と、下記式(2)で示す3相(気相、電極、固体電解質基板)界面で生じるCO酸化反応が進行する。そして、約500℃以上の加熱雰囲気下の固体電解質基板上では、酸素イオンの伝導により、式(2)の反応に起因する起電力が得られる。
【化1】
比較例のガス検出計では、測定対象ガスの速度が小さいため、一酸化炭素検知作用極52及び対極53表面に供給されるCO量が少なく、CO供給と、気相CO酸化反応とが競争し、COが供給されても気相CO酸化反応で消費されてしまい、3相界面へ到達するCO量が低下する。ゆえに、3相界面での酸化・還元反応が生じにくくなり、十分な起電力が得られなかったと考えられる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明に係るガス検出計は、ボイラーなどの煙道に挿入し、燃焼排気中の一酸化炭素と酸素の濃度を同時に、かつ十分な感度でモニタリングすることが可能である。ゆえに、ボイラーなどの燃焼制御システムを構築することが可能となり、省エネルギーに貢献することができる。