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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140083
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20220915BHJP
G01N 27/27 20060101ALI20220915BHJP
G01N 27/409 20060101ALI20220915BHJP
【ＦＩ】
G01N27/416 371G
G01N27/27 A
G01N27/409 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2021040732
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 徳美
【テーマコード（参考）】
2G004
【Ｆターム（参考）】
2G004BB01
2G004BF20
2G004BJ01
(57)【要約】
【課題】 一酸化炭素ガスと酸素ガスとの両方を高感度で検出することができるガス検出計を提供する。
【解決手段】 一酸化炭素及び酸素ガスセンサであって、
（ａ）一端が閉塞端である管状構造体を形成する第１固体電解質基板６と、前記第１固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極４と、前記第１固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極５とを備える酸素ガスセンサ部と、
（ｂ）前記第１固体電解質基板の外面に設けられた、前記第１固体電解質基板を内包する環状ヒータ７と、
（ｃ）前記環状ヒータの外面の一部に設けられた第２固体電解質基板１と、前記第２固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３とを備える一酸化炭素ガスセンサ部と
を備えるガスセンサ。
【選択図】 図１
【解決手段】 一酸化炭素及び酸素ガスセンサであって、
（ａ）一端が閉塞端である管状構造体を形成する第１固体電解質基板６と、前記第１固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極４と、前記第１固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極５とを備える酸素ガスセンサ部と、
（ｂ）前記第１固体電解質基板の外面に設けられた、前記第１固体電解質基板を内包する環状ヒータ７と、
（ｃ）前記環状ヒータの外面の一部に設けられた第２固体電解質基板１と、前記第２固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３とを備える一酸化炭素ガスセンサ部と
を備えるガスセンサ。
【選択図】 図１
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素及び酸素ガスセンサであって、
（ａ）一端が閉塞端である管状構造体を形成する第１固体電解質基板と、前記第１固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極と、前記第１固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極とを備える酸素ガスセンサ部と、
（ｂ）前記第１固体電解質基板の外面に設けられた、前記第１固体電解質基板を内包する環状ヒータと、
（ｃ）前記環状ヒータの外面の一部に設けられた第２固体電解質基板と、前記第２固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極とを備える一酸化炭素ガスセンサ部と
を備えるガスセンサ。
（ａ）一端が閉塞端である管状構造体を形成する第１固体電解質基板と、前記第１固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極と、前記第１固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極とを備える酸素ガスセンサ部と、
（ｂ）前記第１固体電解質基板の外面に設けられた、前記第１固体電解質基板を内包する環状ヒータと、
（ｃ）前記環状ヒータの外面の一部に設けられた第２固体電解質基板と、前記第２固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極とを備える一酸化炭素ガスセンサ部と
を備えるガスセンサ。
【請求項2】
前記環状ヒータの外面の一部であって、前記第２固体電解質基板が設けられていない部位に断熱材を備える、請求項１に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記第２固体電解質基板が、前記酸素検知作用極及び酸素検知対極を内包する部位に、前記環状ヒータを周回しない態様で設けられる、請求項１または２に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記一酸化炭素検知作用極が、白金と金の合金粒子からなる金属粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であり、
前記一酸化炭素検知対極、酸素検知作用極、及び酸素検知対極が、白金粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体である、請求項１～３のいずれか１項に記載のガスセンサ。
前記一酸化炭素検知対極、酸素検知作用極、及び酸素検知対極が、白金粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体である、請求項１～３のいずれか１項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
請求項１～４のいずれか１項に記載のガスセンサを、ケーシング内に備えるガス検出計。
【請求項6】
請求項５に記載のガス検出計を用いた一酸化炭素ガス及び酸素ガスの検出方法であって、
前記環状ヒータを駆動する工程であって、前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極上の測定対象ガスの流速を、６．３５ｍｍ／ｓ以上とする工程と、
前記一酸化炭素検知作用極と前記一酸化炭素検知対極との起電力を得る工程と、
前記酸素検知作用極と、前記酸素検知対極との起電力を得る工程と
を含む方法。
前記環状ヒータを駆動する工程であって、前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極上の測定対象ガスの流速を、６．３５ｍｍ／ｓ以上とする工程と、
前記一酸化炭素検知作用極と前記一酸化炭素検知対極との起電力を得る工程と、
前記酸素検知作用極と、前記酸素検知対極との起電力を得る工程と
を含む方法。
【請求項7】
前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極の温度を約６００℃～７５０℃、前記酸素検知作用極及び酸素検知対極の温度を約７００℃～８００℃とする工程をさらに含む、請求項６に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。特には、一酸化炭素と酸素の両方を、高感度で検出することができるガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定ガス混合物中で一酸化炭素ガス成分の検出及び濃度の決定のために、固体電解質をベースとして構成され、かつ混成電位原理により運転されるセンサを使用することが知られている（例えば、特許文献１を参照）。
【0003】
特許文献１は、本出願人によるガスセンサを開示している。当該ガスセンサは、固体電解質基板に一対の電極を形成し、それらの電極間に発生する起電力を測定することで、５００℃を超える高温環境において、一酸化炭素ガスを選択的に、高出力で検出することができると同時に、酸素ガスも検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-095014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献１に開示された一酸化炭素ガスセンサは、一対の電極が形成された固体電解質基板の周囲の構造によっては、十分な起電力が得られず、一酸化炭素ガスの検出が難しい場合があった。特には、固体電解質基板上に一対の電極が形成されたガスセンサを一方の端部が開放端であるケーシング中に収め、開放端から検出対象ガスが流入可能な状態とし、固体電解質基板の周囲を、ケーシング内壁に設けた環状ヒータにより加熱する形態で用いる場合に、十分な起電力が得られない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、一酸化炭素ガスの検知電極上での測定対象ガスの流速が起電力（ガス感度）に影響することを見出した。そして、所定のガス感度を得るために必要な測定対象ガスの流速と、これを実現するための構造に想到し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、一実施形態によれば、一酸化炭素及び酸素ガスセンサであって、
（ａ）一端が閉塞端である管状構造体を形成する第１固体電解質基板と、前記第１固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極と、前記第１固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極とを備える酸素ガスセンサ部と、
（ｂ）前記第１固体電解質基板の外面に設けられた、前記第１固体電解質基板を内包する環状ヒータと、
（ｃ）前記環状ヒータの外面の一部に設けられた第２固体電解質基板と、前記第２固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極とを備える一酸化炭素ガスセンサ部と
を備えるガスセンサに関する。
（ａ）一端が閉塞端である管状構造体を形成する第１固体電解質基板と、前記第１固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極と、前記第１固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極とを備える酸素ガスセンサ部と、
（ｂ）前記第１固体電解質基板の外面に設けられた、前記第１固体電解質基板を内包する環状ヒータと、
（ｃ）前記環状ヒータの外面の一部に設けられた第２固体電解質基板と、前記第２固体電解質基板を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極とを備える一酸化炭素ガスセンサ部と
を備えるガスセンサに関する。
【0008】
前記ガスセンサにおいて、前記環状ヒータの外面の一部であって、前記第２固体電解質基板が設けられていない部位に断熱材を備えることが好ましい。
【0009】
前記ガスセンサにおいて、前記第２固体電解質基板が、前記酸素検知作用極及び酸素検知対極を内包する部位に、前記環状ヒータを周回しない態様で設けられることが好ましい。
【0010】
前記ガスセンサにおいて、前記一酸化炭素検知作用極が、白金と金の合金粒子からなる金属粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であり、
前記一酸化炭素検知対極、酸素検知作用極、及び酸素検知対極が、白金粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であることが好ましい。
前記一酸化炭素検知対極、酸素検知作用極、及び酸素検知対極が、白金粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であることが好ましい。
【0011】
本発明は、別の実施形態によれば、前述のいずれか１項に記載のガスセンサを、ケーシング内に備えるガス検出計に関する。
【0012】
本発明は、また別の実施形態によれば、前述のガス検出計を用いた一酸化炭素ガス及び酸素ガスの検出方法であって、
前記環状ヒータを駆動する工程であって、前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極上の測定対象ガスの流速を、６．３５ｍｍ／ｓ以上とする工程と、
前記一酸化炭素検知作用極と前記一酸化炭素検知対極との起電力を得る工程と、
前記酸素検知作用極と、前記酸素検知対極との起電力を得る工程と
を含む方法に関する。
前記環状ヒータを駆動する工程であって、前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極上の測定対象ガスの流速を、６．３５ｍｍ／ｓ以上とする工程と、
前記一酸化炭素検知作用極と前記一酸化炭素検知対極との起電力を得る工程と、
前記酸素検知作用極と、前記酸素検知対極との起電力を得る工程と
を含む方法に関する。
【0013】
一酸化炭素ガス及び酸素ガスの検出方法において、前記一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極の温度を約６００℃～７５０℃、前記酸素検知作用極及び酸素検知対極の温度を約７００℃～８００℃とする工程をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る一酸化炭素及び酸素ガスセンサによれば、ケーシング内に配置して使用した場合であっても、高い感度で一酸化炭素及び酸素の両者を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0017】
［第１実施形態］
本発明は、第１実施形態によれば、ガスセンサに関する。本実施形態において、ガスセンサは、一酸化炭素及び酸素ガスセンサである。一酸化炭素及び酸素ガスセンサは、検出対象ガスである一酸化炭素（ＣＯ）ガス及び酸素（Ｏ２）ガスを含み、非検出対象ガスを含む測定対象ガスから、概ね５００℃以上、例えば、６００～８００℃の雰囲気において、２種の検出対象ガスを別個に検知することが可能なガスセンサである。以下、本明細書において、一酸化炭素ガスをＣＯガス、酸素ガスをＯ２ガスと指称する場合がある。また、一酸化炭素及び酸素ガスセンサを、単にガスセンサと省略して指称する場合がある。
本発明は、第１実施形態によれば、ガスセンサに関する。本実施形態において、ガスセンサは、一酸化炭素及び酸素ガスセンサである。一酸化炭素及び酸素ガスセンサは、検出対象ガスである一酸化炭素（ＣＯ）ガス及び酸素（Ｏ２）ガスを含み、非検出対象ガスを含む測定対象ガスから、概ね５００℃以上、例えば、６００～８００℃の雰囲気において、２種の検出対象ガスを別個に検知することが可能なガスセンサである。以下、本明細書において、一酸化炭素ガスをＣＯガス、酸素ガスをＯ２ガスと指称する場合がある。また、一酸化炭素及び酸素ガスセンサを、単にガスセンサと省略して指称する場合がある。
【0018】
図１は、第１実施形態に係るガスセンサの概略図であり、図２は図１の断面図であり、図３は図２のＡ－Ａ線による断面図である。本明細書において、図面は各実施形態の説明の目的で、各部材間の相対的な寸法を正確に示していない場合がある。ガスセンサ１０は、酸素ガスセンサ部と、一酸化炭素ガスセンサ部とが、環状ヒータ７を介して一体となって構成される。以下、ガスセンサ１０を構成する各部分について説明する。
【0019】
酸素ガスセンサ部は、一端が閉塞端である管状構造体を形成する第１固体電解質基板６と、前記第１固体電解質基板の外面に設けられた酸素検知作用極４と、前記第１固体電解質基板の内面に設けられた酸素検知対極５とを備え、さらに図示しない配線及び酸素検出回路を含む。
【0020】
第１固体電解質基板６は、図１、２に示すように、一端が閉塞した管状構造体である。より具体的には、第１固体電解質基板６は、一定径でもって所定長さで延びる細長い筒状体に形成されており、その長手方向の一方の端部である基端部が開口すると共に、長手方向の他方の端部である先端部が閉塞した試験管形状をなしている。先端部は、丸みを帯びた曲面状をなしている。本明細書において、第１固体電解質基板６を構成する一定径の筒状体部分を第１固体電解質基板６の側壁部と指称し、丸みを帯びた曲面状の部分を第１固体電解質基板６の先端部と指称する。また、管状構造体の外側面を第１固体電解質基板６の外面、内側面を第１固体電解質基板６の内面と指称する。第１固体電解質基板６は、安定化ジルコニアが好ましく、例えば、イットリア、セリア等の希土類金属酸化物により安定化したジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア等が挙げられるが、これらには限定されない。イオン電導性の観点から、特にはイットリア安定化ジルコニアを用いることが好ましい。第１固体電解質基板６は、側壁部、先端部ともに、その厚みを０．５～２．０ｍｍとすることができる。
【0021】
酸素検知作用極４は、第１固体電解質基板６の外面に設けられ、好ましくは第１固体電解質基板６の先端部外面に設けられる。一方、酸素検知対極５は、第１固体電解質基板６の内面に設けられ、好ましくは第１固体電解質基板６の先端部の内面に設けられる。図示する態様においては、酸素検知対極５は、第１固体電解質基板６を介して酸素検知作用極４とイオン電導性に接続され、酸素検知作用極４と概ね対向する位置関係にあって、酸素検知のために校正用ガスと接触する電極として機能する。したがって、酸素検知対極５は第１固体電解質基板６により、酸素検知作用極４が接する雰囲気、すなわち測定対象ガス雰囲気から遮断されるように構成される。
【0022】
酸素検知作用極４及び酸素検知対極５は、いずれも、Ｐｔ粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であってよい。このような焼結体は、Ｐｔ粒子と、固体電解質粒子とを含む混合物を、エチルセルロースを２，２，４トリメチル－３－ヒドロキシペンチイソブチレートに溶解させた有機溶剤等の適切な溶剤中に分散して得られたペーストを、第１固体電解質基板６上に、例えば薄層形状に塗布・成形して、大気中で、１２００～１４００℃で焼成することにより得ることができる。
【0023】
Ｐｔ粒子は、平均粒子径が、約０．５～２．５μｍであることが好ましく、約１～２μｍであることがより好ましい。本明細書において、平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡（ＳＥＭ）を用いた観察により測定した平均粒子径をいうものとする。
【0024】
固体電解質粒子は、安定化ジルコニア粒子であってよく、第１固体電解質基板６の材料として挙げた任意の安定化ジルコニアから選択される１種以上であってよい。また、第１固体電解質基板６の主成分となる安定化ジルコニアと同一組成の安定化ジルコニアであってもよく、異なる組成の安定化ジルコニアであってもよい。固体電解質粒子は、特には、イットリア安定化ジルコニア粒子が好ましい。固体電解質粒子は、平均粒子径が、約０．１～１μｍであることが好ましく、約０．２～０．５μｍであることがより好ましい。また、Ｐｔ粒子と、イットリア安定化ジルコニア粒子との平均粒子径の関係は、同一であっても異なっていてもよく、ある実施形態においては、Ｐｔ粒子径が、イットリア安定化ジルコニア粒子径よりも大きい方が好ましい。
【0025】
酸素検知作用極４及び酸素検知対極５において、Ｐｔ粒子と、固体電解質粒子の質量比は任意であってよく、特には限定されないが、９９：１～１：９９であることが好ましく、８５：１５～１５：８５程度であることが好ましい。酸素検知作用極４及び酸素検知対極５の膜厚は、同一であっても異なっていてもよいが、例えば１０～６０ｍであってよく、１５～３５ｍであることが好ましい。ここでいう膜厚とは、焼成後の焼結体の膜厚をいうものとする。
【0026】
酸素検知作用極４と酸素検知対極５との間には、酸素検出部が接続される。酸素検出部は、酸素検出回路（図示せず）、並びに酸素検知作用極４と酸素検出回路との間を接続する配線と、酸素検知対極５と酸素検出回路との間を接続する配線とを含む。酸素検出部は、配線を介して、酸素検知作用極４が接する雰囲気の酸素濃度と、第酸素検知対極が接する雰囲気の酸素濃度の差に起因する起電力を測定し、酸素を検出することができる。
【0027】
環状ヒータ７は、第１固体電解質基板の外周に、第１固体電解質基板６を包囲する態様で設けられる。好ましくは、環状ヒータ７は、管状構造体である第１固体電解質基板６の全周を覆って、第１固体電解質基板６を内包する態様にて設けることができる。しかし、環状ヒータ７は、第１固体電解質基板６とは接触しないように設ける。熱膨張係数の異なる環状ヒータ７と第１固体電解質基板６の接触により、温度変化後に、応力発生の原因となるおそれがあるためである。環状ヒータ７は、発熱部７ａと配線部（支持部）７ｂを備えるセラミックヒータであってよい。発熱部７ａが、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５の近傍に位置するように配置することができる。環状ヒータ７の仕様は、第１固体電解質基板６とそれに接して設けられる酸素検知作用極４及び酸素検知対極５、並びに後述する第２固体電解質基板１とそれに接して設けられる一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３を所定の温度に加熱することができ、かつ絶縁性を担保できるものであればよい。より具体的には、酸素検知作用極４と酸素検知対極５を７００～８００℃に加熱し、一酸化炭素検知作用極２と一酸化炭素検知対極３を、６００～７５０℃に加熱することができればよい。
【0028】
環状ヒータ７と、第１固体電解質基板６とは、接着剤で固定することができる。あるいは、第１固体電解質基板６の基端部（図示せず）にて、ステンレス等のフランジに環状ヒータと第１固体電解質基板６を接着剤などの固定手段で固定することもできる。
【0029】
一酸化炭素ガスセンサ部は、環状ヒータ７の外面の一部に設けられた第２固体電解質基板１と、第２固体電解質基板１を介してイオン電導性に接続された一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３とを備え、さらに図示しない配線及び一酸化炭素検出回路を含む。
【0030】
第２固体電解質基板１は、図１～３に示すように、両端が解放端である部分管を形成する構造体である。より具体的には、第２固体電解質基板１は、一定径でもって所定長さで延びる筒状体を、筒状体の軸方向に平行に切断した形状であってよく、図３に示す実施形態においては、半管である。しかし、半管には限定されず、その外面に電極を形成することができれば、１／３管や２／３管であってよい。しかし、完全な管形状、すなわち環状ヒータ７を周回する構造ではないことが好ましい。完全な管形状とすると、接触する環状ヒータ７との密着性が確保されないおそれがあるためである。なお、部分管の外面とは、先に定義した切断前の筒状体の管を想定した場合に、管の外側にある面である。部分管の長さは、電極を形成することができる長さであればよく、特には限定されないが、第１固体電解質基板６の先端部の長さの２～３倍程度とすることができる。第２固体電解質基板１の材料は、第１固体電解質基板６について挙げた材料から選択することができ、第１固体電解質基板６の材料と同一であっても異なっていてもよい。特にはイットリア安定化ジルコニアを用いることが好ましい。また、第２固体電解質基板１を構成する半管の厚みは、０．５～２．０ｍｍ程度であってよい。薄いほうがクリアランスを得やすいためである。
【0031】
一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３は、第２固体電解質基板１の外面に形成される。図１、３においては、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３は、それぞれが第２固体電解質基板１に接触して形成され、かつ一酸化炭素検知作用極２と一酸化炭素検知対極３とが離間して設けられる。また、第２固体電解質基板１の一端から一酸化炭素検知作用極２までの長さは、第２固体電解質基板１の一端から一酸化炭素検知対極３までの長さと概ね同程度である。一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３はまた、同一の気相雰囲気と接触するように構成することが必要である。したがって、第２固体電解質基板１や他の部材により一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３の雰囲気が遮断されない態様にて、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３を配置する。
【0032】
なお、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３が、第２固体電解質基板１を介してイオン電導性に結合していればよく、例えば、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３との間に、イオン電導性の他の部材を介していてもよい。また、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３に加え、参照電極（図示せず）をさらに設けてもよい。または固体電解質基板上の異なる位置に２対以上の一酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極を設けることもできる。
【0033】
一酸化炭素検知作用極２は、白金（Ｐｔ）と貴金属、例えば、Ｐｔと、金（Ａｕ）やロジウム（Ｒｈ）との合金からなる金属粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であってよい。より具体的には、合金は、ＰｔとＡｕとの合金であることが好ましい。以下、ＰｔとＡｕの合金を、Ｐｔ－Ａｕ合金と指称することもある。
【0034】
Ｐｔ－Ａｕ合金におけるＰｔとＡｕの質量比は任意であってよく、特には限定されない。ＰｔとＡｕの質量比は、例えば９９：１～１：９９であってよく、９８：２～９０：１０であることが好ましく、９６：４～９２：８であることがさらに好ましい。また、Ｐｔ－Ａｕ合金の平均粒子径は、酸素検知作用極４を構成するＰｔ粒子の平均粒子径と同じ選択肢の範囲から選択することができる。
【0035】
固体電解質粒子は、安定化ジルコニア粒子であってよく、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５の材料及び粒子径としてとして挙げたものと同一の選択肢から選択することができる。特には、イットリア安定化ジルコニア粒子が好ましい。Ｐｔ－Ａｕ合金からなる金属粒子と、イットリア安定化ジルコニア粒子との平均粒子径の関係は、同一であっても異なっていてもよく、ある実施形態においては、Ｐｔ－Ａｕ合金の粒径が、イットリア安定化ジルコニア粒子の粒径よりも大きい方が好ましい。
【0036】
一酸化炭素検知作用極２において、Ｐｔ－Ａｕ合金からなる金属粒子と、固体電解質粒子の質量比は任意であってよく、特には限定されないが、９９：１～１：９９であることが好ましく、８５：１５～１５：８５程度であることが好ましい。Ｐｔ－Ａｕ合金からなる金属粒子を含む一酸化炭素検知作用極２の膜厚は、例えば１～１５μｍであってよく、５～１０μｍであることが好ましい。ここでいう膜厚とは、焼成後の焼結体の膜厚をいうものとする。
【0037】
一酸化炭素検知対極３は、Ｐｔ粒子と、固体電解質粒子とを含む焼結体であってよく、その構成も製造方法も、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５と同様であってよい。一酸化炭素検知対極３の膜厚は、特には限定されないが、例えば８～６０μｍ程度であってよい。ここでいう膜厚とは、焼成後の焼結体の膜厚をいうものとする。この暑さの範囲内であれば、一酸化炭素検知特性に変化はない。
【0038】
一酸化炭素検知作用極２と一酸化炭素検知対極３との間には、一酸化炭素検出部が接続される。一酸化炭素検出部は、検出回路及び配線を含む。配線は、その一端が一酸化炭素検知対極３と接続され、他端が検出回路と接続される配線とを含む。検出回路は、一酸化炭素検知作用極２と一酸化炭素検知対極３との間の起電力（電位差）を測定できる一般的な電位計であってよい。また、配線は導電性部材からなる配線であってよく、Ｐｔ線もしくは、配線が接続される電極材料と同一組成の焼結体で構成された配線であってよい。
【0039】
一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３を外面に形成した第２固体電解質基板１は、その内面が環状ヒータ７の外面に接触する態様で、環状ヒータ７に固定される。
図２、３のように第２固体電解質基板１が、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５の少なくとも一部を包囲する位置に固定することが好ましい。
図２、３のように第２固体電解質基板１が、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５の少なくとも一部を包囲する位置に固定することが好ましい。
【0040】
次に、このような構成を備えるガスセンサの製造方法について説明する。本実施形態によるガスセンサの製造方法は、以下の工程を含む。
（１）第１固体電解質基板６に、酸素検知作用極４、及び酸素検知対極５を形成し、酸素ガスセンサ部を得る工程、
（２）第２固体電解質基板１に、一酸化炭素検知作用極２、及び一酸化炭素検知対極３を形成し、一酸化炭素ガスセンサ部を得る工程、
（３）先の工程（１）で得られた酸素ガスセンサ部上に、環状ヒータ７を取り付ける工程、
（４）先の工程（３）で得られた構造体の環状ヒータ７上に、先の工程（２）で得られた一酸化炭素ガスセンサ部を取り付ける工程
（１）第１固体電解質基板６に、酸素検知作用極４、及び酸素検知対極５を形成し、酸素ガスセンサ部を得る工程、
（２）第２固体電解質基板１に、一酸化炭素検知作用極２、及び一酸化炭素検知対極３を形成し、一酸化炭素ガスセンサ部を得る工程、
（３）先の工程（１）で得られた酸素ガスセンサ部上に、環状ヒータ７を取り付ける工程、
（４）先の工程（３）で得られた構造体の環状ヒータ７上に、先の工程（２）で得られた一酸化炭素ガスセンサ部を取り付ける工程
【0041】
第１工程：酸素ガスセンサ部形成工程
第１工程では、第１固体電解質基板６に、酸素検知作用極４、及び酸素検知対極５を形成する。それぞれの電極の材料及び形成方法については先に述べた通りである。酸素検知作用極４、及び酸素検知対極５の材料からなるペーストを調製し、これらを第１固体電解質基板６の所定の位置に形成し、かつ、かつ、２つの電極のそれぞれと酸素検出回路との間を接続する配線を第１固体電解質基板６上に配設した後に、これらを焼成することが好ましい。第１固体電解質基板６は、市販品を用いることもできるし、第１工程に先立って、固体電解質材料を所望の形状に成形して製造することもできる。
第１工程では、第１固体電解質基板６に、酸素検知作用極４、及び酸素検知対極５を形成する。それぞれの電極の材料及び形成方法については先に述べた通りである。酸素検知作用極４、及び酸素検知対極５の材料からなるペーストを調製し、これらを第１固体電解質基板６の所定の位置に形成し、かつ、かつ、２つの電極のそれぞれと酸素検出回路との間を接続する配線を第１固体電解質基板６上に配設した後に、これらを焼成することが好ましい。第１固体電解質基板６は、市販品を用いることもできるし、第１工程に先立って、固体電解質材料を所望の形状に成形して製造することもできる。
【0042】
第２工程：一酸化炭素ガスセンサ部形成工程
第２工程では、第２固体電解質基板１に、一酸化炭素検知作用極２、及び一酸化炭素検知対極３を形成する。本工程は、第１工程と同様に実施することができる。なお、第１工程と第２工程は、いずれを先に行ってもよく、実質的に同時に行ってもよい。
第２工程では、第２固体電解質基板１に、一酸化炭素検知作用極２、及び一酸化炭素検知対極３を形成する。本工程は、第１工程と同様に実施することができる。なお、第１工程と第２工程は、いずれを先に行ってもよく、実質的に同時に行ってもよい。
【0043】
第３工程：環状ヒータ取り付け工程
第３工程では、酸素検知作用極４、及び酸素検知対極５を形成した第１固体電解質基板６に、環状ヒータ７を取り付け、固定する。固定方法は、ステンレスのフランジに環状ヒータの外面を接着剤を用いて気密を保つように固定する。
第３工程では、酸素検知作用極４、及び酸素検知対極５を形成した第１固体電解質基板６に、環状ヒータ７を取り付け、固定する。固定方法は、ステンレスのフランジに環状ヒータの外面を接着剤を用いて気密を保つように固定する。
【0044】
第４工程：一酸化炭素ガスセンサ部取り付け工程
第４工程では、第３工程で得られた構造体の環状ヒータ７上に、第２工程で得られた一酸化炭素ガスセンサ部を取り付け、固定する。固定方法は、例えば、無機系の耐熱性かつ絶縁性の接着剤を用いて、環状ヒータ７外面と、第２固体電解質基板１内面とが接触しない態様にて接着することが好ましい。
第４工程では、第３工程で得られた構造体の環状ヒータ７上に、第２工程で得られた一酸化炭素ガスセンサ部を取り付け、固定する。固定方法は、例えば、無機系の耐熱性かつ絶縁性の接着剤を用いて、環状ヒータ７外面と、第２固体電解質基板１内面とが接触しない態様にて接着することが好ましい。
【0045】
本発明の第１実施形態によるガスセンサは、酸素ガスセンサ部と、一酸化炭素ガスセンサ部との間に環状ヒータ７を設けた構造とすることで、一酸化炭素検知作用極２、一酸化炭素検知対極３、酸素検知作用極４、酸素検知対極５を所望の温度とし、かつ測定対象ガスが、一酸化炭素検知作用極２、一酸化炭素検知対極３に至る流路における、測定対象ガスの対流を促進することができる。これにより、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３上での測定対象ガスの流速を、検出に必要な起電力５０ｍＶ以上となる６．３５ｍｍ／ｓ以上とすることができ、一酸化炭素を高感度で検出することが可能となる。
【0046】
［第２実施形態：ガスセンサ］
本発明は、第２実施形態によれば、ガスセンサに関する。第２実施形態によるガスセンサは、第１実施形態のガスセンサにおいて、環状ヒータの外面の、第２固体電解質基板が形成されていない部位に、断熱材を備えることを特徴とする。図４は、第２実施形態に係るガスセンサの概略図であり、図５は概略断面図である。図４、５においては、図１～３と同じ部材には同じ符号を付している。第２実施形態に係るガスセンサ１０において、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５を形成した第１固体電解質基板６、環状ヒータ７、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３を形成した第２固体電解質基板１のそれぞれの構成、及びこれらの相対的な位置関係は、第１実施形態と同様であってよい。
本発明は、第２実施形態によれば、ガスセンサに関する。第２実施形態によるガスセンサは、第１実施形態のガスセンサにおいて、環状ヒータの外面の、第２固体電解質基板が形成されていない部位に、断熱材を備えることを特徴とする。図４は、第２実施形態に係るガスセンサの概略図であり、図５は概略断面図である。図４、５においては、図１～３と同じ部材には同じ符号を付している。第２実施形態に係るガスセンサ１０において、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５を形成した第１固体電解質基板６、環状ヒータ７、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３を形成した第２固体電解質基板１のそれぞれの構成、及びこれらの相対的な位置関係は、第１実施形態と同様であってよい。
【0047】
環状ヒータ７上に設けられる断熱材９は、センサ運転温度にて使用可能な耐熱性をもつという特性を有する、電気機器において一般的に使用される断熱材であってよい。断熱材９は環状ヒータ７上の、第２固体電解質基板１が設けられていない任意の位置に、環状ヒータ７に接触して、環状ヒータ７を包囲する態様で設けることが好ましい。ある態様においては、第２固体電解質基板１が設けられた位置を除き、環状ヒータ７外面の先端から基端部にわたるほぼ全てに、連続的に、同じ厚さで設けることができる。断熱材９と、第２固体電解質基板１とは、接触しないことが好ましい。しかし、環状ヒータ７の発熱部７ａ上に断熱材が設けられていない領域があってもよく、また断熱材の厚さや種類が異なる部分があってもよい。
【0048】
第２実施形態によるガスセンサの製造方法は、第1実施形態によるガスセンサの製造方法において、第４工程の後に、環状ヒータ７上に断熱材９を形成する工程を含む。環状ヒータ７上への断熱材９の固定方法は、シート状の断熱材を所定の厚さになるように巻き付け、接着剤にて固定する方法であってよい。
【0049】
第２実施形態によるガスセンサによれば、環状ヒータ７の周囲に断熱材を設けることで、第１実施形態による利点を全て保持しながら、省電力化を図ることができる。また、ガスセンサをケーシングに収めて用いる実施形態においては、ケーシングの加熱を防止し、ケーシングの腐食や損傷を低減することができる。
【0050】
[第３実施形態：ガス検出計]
本発明は、第３実施形態によれば、ガス検出計に関する。本実施形態によるガス検出計は、ケーシング内に、第１または第２実施形態によるガスセンサを備える。図６は、当該ガス検出計を、測定対象ガスが流通する領域に、壁を介して挿入して用いる場合の概念図である。図６を参照すると、ガス検出計２０は、解放端を有する管状ケーシング１１と、ケーシング内部に収められた第１実施形態によるガスセンサ１０とを備えている。より詳細には、ガス検出計２０は、ガスセンサ１０と、ケーシング１１に加え、さらに、取付フランジ１３と、校正ガス入口１４と、端子部１５とを備える。そして、測定対象ガスが流れる設備などの壁３０に直接挿入されている。ガス検出計２０は、取付フランジ１３にて壁３０に固着される。図６中、壁３０を境界として、ガスセンサ１０を内包したケーシング１１が突出している側が、煙道などの測定対象ガス雰囲気であり、端子部１５が配置される側が、大気雰囲気である。測定対象ガスの流路において、ケーシング１１には、ガイドチューブ１２が装着され、測定対象ガスｇがガスセンサ１１に誘導されるように構成されている。
本発明は、第３実施形態によれば、ガス検出計に関する。本実施形態によるガス検出計は、ケーシング内に、第１または第２実施形態によるガスセンサを備える。図６は、当該ガス検出計を、測定対象ガスが流通する領域に、壁を介して挿入して用いる場合の概念図である。図６を参照すると、ガス検出計２０は、解放端を有する管状ケーシング１１と、ケーシング内部に収められた第１実施形態によるガスセンサ１０とを備えている。より詳細には、ガス検出計２０は、ガスセンサ１０と、ケーシング１１に加え、さらに、取付フランジ１３と、校正ガス入口１４と、端子部１５とを備える。そして、測定対象ガスが流れる設備などの壁３０に直接挿入されている。ガス検出計２０は、取付フランジ１３にて壁３０に固着される。図６中、壁３０を境界として、ガスセンサ１０を内包したケーシング１１が突出している側が、煙道などの測定対象ガス雰囲気であり、端子部１５が配置される側が、大気雰囲気である。測定対象ガスの流路において、ケーシング１１には、ガイドチューブ１２が装着され、測定対象ガスｇがガスセンサ１１に誘導されるように構成されている。
【0051】
ケーシング１１は、解放端１１ａを有し、一定径でもって所定長さで延びる筒状体である。開放端１１ａには、フィルタ（図示せず）が取り付けられ、測定対象ガスがケーシング１１内部に侵入可能に構成される。ケーシング１１は、ガスセンサ１０の全体を内包し、ガスセンサ１０は、ケーシング１１と、第２固体電解質基板１との間に測定対象ガスの流路となる空間が形成されるように配置される。ガスセンサ１０は、ケーシング１１に取り付けられた状態において、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３が、鉛直方向上方に位置しても下方に位置してもよく、その位置は特には限定されない。
【0052】
第１実施形態によるガスセンサを備えるガス検出計において、ケーシング１１内壁面と、第２固体電解質基板１外面との距離をクリアランスＬ１という。クリアランスＬ１を大きくすることで測定対象ガスの対流を促進することができ、一酸化炭素検知作用極２及び対極３の上方での測定対象ガスの速度を大きくすることができる。クリアランスＬ１は、１．０～３．０ｍｍであってよく、１．５～３．０ｍｍであることが好ましい。
【0053】
また、第２実施形態によるガスセンサを備えるガス検出計においても、第２固体電解質基板１外面との距離をクリアランスＬ２という。
【0054】
ケーシング１１は、解放端１１ａと反対側の端部である基端部において、ガスセンサ１０を取り外し可能に固定することができる。これにより、ガス検出計において、ガスセンサ１０部分のみを交換可能な構成とすることができる。ケーシング１１にガスセンサ１０が固定された状態においては、管状のケーシング１１と、管状の第１固体電解質基板６とが、中心軸を略同一とし、かつ、ケーシング１１の解放端１１ａ近傍に、第１固体電解質基板６の先端が位置する。解放端１１ａから、第１固体電解質基板６の先端までの距離は特には限定されないが、５～３０ｍｍであることが好ましい。
【0055】
本実施形態によるガス検出計は、第１または第２実施形態によるガスセンサ１０を、固体電解質基板１の基端部（解放端部）にてケーシング１１に固定し、取付フランジ１３と、校正ガス入口１４と、端子部１５を組み立てることにより製造することができる。
【0056】
次に、本実施形態によるガス検出計によるガス検出方法について説明する。ガス検出計２０は、図６に示すように、高温の測定対象ガスが流通する煙道などに直接挿入して一酸化炭素及び酸素濃度を測定することができる。この場合、一般的に、高温の測定対象ガスに最も近い第１固体電解質基板６の先端部、すなわち酸素検知作用極４が設けられる位置が最も高温となる。そして、基端部へ近づくほど温度が低くなり、その温度分布は概ね、先端部からの距離に依存する。測定対象ガスは、ガイドチューブ１２に導入され、次いでケーシング１１内の第１固体電解質基板及び第２固体電解質基板１の周囲に導入される。そして、ヒータ７を駆動することで、酸素検知作用極４と酸素検知対極５の温度を７００～８００℃とし、一酸化炭素検知作用極２と一酸化炭素検知対極３の温度を６００～７５０℃とする。これにより、一酸化炭素検知作用極２及び一酸化炭素検知対極３上での測定対象ガスの速度を、６．３５ｍｍ／ｓ以上とすることができる。そして、一酸化炭素検知作用極２と、一酸化炭素検知対極３の間には、混成電位に基づく起電力が発生し、測定対象ガス中の一酸化炭素濃度を得ることができる。
【0057】
一方、校正用のガス、例えば空気は第１固体電解質基板６の内周に導入される。測定対象ガスと、校正用のガスの雰囲気が混合することがないように、これらの導入経路は気密的に遮断されている。第１固体電解質基板６が５００℃以上に加熱されることで、酸素検知作用極４に接する測定対象ガスと、酸素検知対極５に接する校正用のガスとの酸素分圧の差により、第１固体電解質基板６（安定化ジルコニア部材）に起電力が発生し、この起電力を測定することにより、測定対象ガス中の酸素濃度を得ることができる。
【0058】
本発明の第３実施形態によれば、第１実施形態または第２実施形態によるガスセンサを用い、ヒータを駆動することで、ケーシング内において測定対象ガスに流速を与え、一酸化炭素ガスを十分な感度で検出することが可能であるとともに、酸素ガス濃度の検出も可能な、ガス検出計を得ることができる。
【実施例0059】
（実施例１）
本発明の第１実施形態による一酸化炭素及び酸素ガスセンサを製造した。第１固体電解質基板６として、内径が４ｍｍ、外径が６ｍｍ、長さが９７ｍｍの試験管形状のイットリア安定化ジルコニア基板（日本化学陶業製、品番ＺＲ－８Ｙ）の先端部外面に、酸素検知作用極４を、内面に酸素検知対極５を、図２に示すように形成した。酸素検知作用極４、酸素検知対極５はＰｔ粒子（平均粒子径１．５μｍ）とイットリア安定化ジルコニア粒子（平均粒子径０．５μｍ）の混合物（混合質量比８７：１３）を上記と同様の有機溶剤中に分散したペーストを用いて成形した。また、配線としてＰｔ線を用い、それぞれの電極材料で電極上に固定した。次いで、これらを大気中１３００℃で焼成することにより、各電極、並びに配線を備えるセンサ構造体を作製した。焼成後の酸素検知作用極の厚みは２５μｍ、酸素検知対極の厚みは３０μｍとした。
本発明の第１実施形態による一酸化炭素及び酸素ガスセンサを製造した。第１固体電解質基板６として、内径が４ｍｍ、外径が６ｍｍ、長さが９７ｍｍの試験管形状のイットリア安定化ジルコニア基板（日本化学陶業製、品番ＺＲ－８Ｙ）の先端部外面に、酸素検知作用極４を、内面に酸素検知対極５を、図２に示すように形成した。酸素検知作用極４、酸素検知対極５はＰｔ粒子（平均粒子径１．５μｍ）とイットリア安定化ジルコニア粒子（平均粒子径０．５μｍ）の混合物（混合質量比８７：１３）を上記と同様の有機溶剤中に分散したペーストを用いて成形した。また、配線としてＰｔ線を用い、それぞれの電極材料で電極上に固定した。次いで、これらを大気中１３００℃で焼成することにより、各電極、並びに配線を備えるセンサ構造体を作製した。焼成後の酸素検知作用極の厚みは２５μｍ、酸素検知対極の厚みは３０μｍとした。
【0060】
次いで、内径が６．４ｍｍ、外径が１０．２ｍｍ環状ヒータ７を、第１固体電解質基板６の外面に配置されるようにフランジに接着剤により固定した。環状ヒータ７は、アルミナで構成された発熱部７ａの軸方向長さが２５ｍｍのものを用いた。環状ヒータ７の固定位置は、環状ヒータ７の発熱部７ａが、第１固体電解質基板６の先端部の周囲を覆い、発熱部７ａの先端から、約６．４ｍｍの位置に第１固体電解質基板６の先端が位置するようにした。
【0061】
第２固体電解質基板１として、内径が１１ｍｍ、外径が１３ｍｍ、長さが１２．５ｍｍの半管からなるイットリア安定化ジルコニア基板（日本化学陶業製、品番ＺＲ－８Ｙ）の外面に、一酸化炭素検知作用極２、一酸化炭素検知対極３を、図１に示すように形成した。一酸化炭素検知作用極２は、ＰｔとＡｕの組成比が９９：１の合金粒子（平均粒子径１．５μｍ）と、イットリア安定化ジルコニア粒子（平均粒子径０．５μｍ）の混合物（混合質量比８７：１３）を有機溶剤（エチルセルロースを２，２，４トリメチル－３－ヒドロキシペンチイソブチレートに溶解）中に分散したペーストを用いて成形した。一酸化炭素検知対極３は、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５と同じ組成のペーストを用いて成形した。焼成及び配線は、酸素検知作用極４及び酸素検知対極５と同様にして行った。焼成後の一酸化炭素検知作用極の厚みは９．６μｍ、一酸化炭素検知対極の厚みは８．８μｍとした。
【0062】
次いで、第２固体電解質基板１を、環状ヒータ７の外面に接着剤（東亜合成（株）製、品番アロンセラミックＤ）を用いて接着し、配線をして、第１実施形態によるガスセンサを製造した。
【0063】
ガスセンサ本体を、内径が１８ｍｍのステンレス製のケーシング１１に固定し、その他の部材を組み立てて、ガス検出計を製造した。クリアランスＬ１は、２．９６ｍｍとした。
【0064】
（実施例２）
実施例１のガスセンサにおいて、環状ヒータ７の発熱部７ａが露出している外面を、厚さが３．２５ｍｍのシリカ－マグネシア－カルシア系のアルカリアーズシレケートウールを抄造機により紙状にした断熱材で被覆した以外は実施例１と同様にして実施例２のガスセンサを製造し、次いで、ガス検出計を組み立てた。
実施例１のガスセンサにおいて、環状ヒータ７の発熱部７ａが露出している外面を、厚さが３．２５ｍｍのシリカ－マグネシア－カルシア系のアルカリアーズシレケートウールを抄造機により紙状にした断熱材で被覆した以外は実施例１と同様にして実施例２のガスセンサを製造し、次いで、ガス検出計を組み立てた。
【0065】
（比較例）
比較例として、単一の管状構造体からなる固体電解質基板の外面に、一酸化炭素検知作用極、一酸化炭素検知対極、酸素検知作用極を設け、内面に酸素検知対極を設けたガスセンサを、内壁面に断熱材を設けたケーシングに内包したガス検出計を製造した。比較例のガス検出計の断面図を図１０に示す。比較例においては、ケーシング５１１内壁から、ケーシング５１１の半径方向内側に向かって、断熱材５９、ヒータ５７、断熱材５９が同軸の管状に、かつ隣り合う部材を接触させて配置した。また、環状のヒータ５７は、ケーシング５１１の解放端５１１ａから、固体電解質基板５１の先端部を完全に覆う位置まで設けたが、一酸化炭素検知作用極５２及び一酸化炭素検知対極５３に対向する位置までは設けなかった。比較例のガス検出計において、断熱材５９と、固体電解質基板５１外面の距離であるクリアランスＬ３は、０．６５ｍｍであった。
比較例として、単一の管状構造体からなる固体電解質基板の外面に、一酸化炭素検知作用極、一酸化炭素検知対極、酸素検知作用極を設け、内面に酸素検知対極を設けたガスセンサを、内壁面に断熱材を設けたケーシングに内包したガス検出計を製造した。比較例のガス検出計の断面図を図１０に示す。比較例においては、ケーシング５１１内壁から、ケーシング５１１の半径方向内側に向かって、断熱材５９、ヒータ５７、断熱材５９が同軸の管状に、かつ隣り合う部材を接触させて配置した。また、環状のヒータ５７は、ケーシング５１１の解放端５１１ａから、固体電解質基板５１の先端部を完全に覆う位置まで設けたが、一酸化炭素検知作用極５２及び一酸化炭素検知対極５３に対向する位置までは設けなかった。比較例のガス検出計において、断熱材５９と、固体電解質基板５１外面の距離であるクリアランスＬ３は、０．６５ｍｍであった。
【0066】
（ＣＯガス流速による感度の評価）
イットリア安定化ジルコニアからなる固体電解質基板に、一酸化炭素検知作用極、一酸化炭素検知対極、配線を作成し、一酸化炭素検出用回路を接続して、ＣＯガス流速による感度評価用の一酸化炭素ガスセンサを製造した。製造した感度評価用ガスセンサの作用極及び対極に、ＣＯガスを、流速を変えて接触させ、作用極と対極との間の起電力－Ｅｗｃ（ｍＶ）を測定した。ＣＯガス濃度は２０００ｐｐｍとし、電極温度は６２０℃とした。また、ここでいう流速とは、ＣＯガスの、酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極の上方１ｍｍにおける流速であって、内径３０ｍｍの石英管内に評価用ガスセンサを設置し、電気炉で所定の温度加熱し、石英管内のガス流量から流速を求める方法により測定した。図７は、ＣＯガス流速と、一酸化炭素検知作用極と対極間の起電力－Ｅｗｃ（ｍＶ）との関係を示すグラフである。図７から、一酸化炭素の検知に必要な感度である、起電力５０ｍＶを得るためには、一酸化炭素検知電極及び一酸化炭素検知対極上のＣＯガスの流速を、約６．３５ｍｍ／ｓ以上とする必要があることがわかった。
イットリア安定化ジルコニアからなる固体電解質基板に、一酸化炭素検知作用極、一酸化炭素検知対極、配線を作成し、一酸化炭素検出用回路を接続して、ＣＯガス流速による感度評価用の一酸化炭素ガスセンサを製造した。製造した感度評価用ガスセンサの作用極及び対極に、ＣＯガスを、流速を変えて接触させ、作用極と対極との間の起電力－Ｅｗｃ（ｍＶ）を測定した。ＣＯガス濃度は２０００ｐｐｍとし、電極温度は６２０℃とした。また、ここでいう流速とは、ＣＯガスの、酸化炭素検知作用極及び一酸化炭素検知対極の上方１ｍｍにおける流速であって、内径３０ｍｍの石英管内に評価用ガスセンサを設置し、電気炉で所定の温度加熱し、石英管内のガス流量から流速を求める方法により測定した。図７は、ＣＯガス流速と、一酸化炭素検知作用極と対極間の起電力－Ｅｗｃ（ｍＶ）との関係を示すグラフである。図７から、一酸化炭素の検知に必要な感度である、起電力５０ｍＶを得るためには、一酸化炭素検知電極及び一酸化炭素検知対極上のＣＯガスの流速を、約６．３５ｍｍ／ｓ以上とする必要があることがわかった。
【0067】
（実施例１、２及び比較例の評価）
実施例１、実施例２、及び比較例のガス検出計を用い、酸素濃度を３％とし、ＣＯ濃度を０ｐｐｍ～２０００ｐｐｍまで上昇させて一酸化炭素検知作用極と一酸化炭素検知対極間の起電力－Ｅｗｃを測定した。実施例１、実施例２の一酸化炭素検知作用極２と一酸化炭素検知対極３の温度は６２０℃、酸素検知作用極４の温度は７５０℃、酸素検知対極５の温度は７５０℃とした。比較例の検出計において、一酸化炭素検知作用極５２と一酸化炭素検知対極５３の温度は６２０℃、酸素検知作用極の温度は７５０℃、酸素検知対極の温度は７５０℃とした。
実施例１、実施例２、及び比較例のガス検出計を用い、酸素濃度を３％とし、ＣＯ濃度を０ｐｐｍ～２０００ｐｐｍまで上昇させて一酸化炭素検知作用極と一酸化炭素検知対極間の起電力－Ｅｗｃを測定した。実施例１、実施例２の一酸化炭素検知作用極２と一酸化炭素検知対極３の温度は６２０℃、酸素検知作用極４の温度は７５０℃、酸素検知対極５の温度は７５０℃とした。比較例の検出計において、一酸化炭素検知作用極５２と一酸化炭素検知対極５３の温度は６２０℃、酸素検知作用極の温度は７５０℃、酸素検知対極の温度は７５０℃とした。
【0068】
図８は、実施例１及び比較例のガス検出計における、ＣＯガス濃度と、一酸化炭素検知作用極と一酸化炭素検知対極間の起電力－Ｅｗｃとの関係を示す。図９は、実施例２及び比較例のガスセンサにおける、ＣＯガス濃度と、一酸化炭素検知作用極２と一酸化炭素検知対極３間の起電力－Ｅｗｃとの関係を示す。実施例１、２ともに、検知すべきＣＯ濃度範囲内で、十分なＣＯ感度が得られたのに対し、比較例のガスセンサではＣＯ感度が得られなかった。図示はしないが、実施例１、２、及び比較例のいずれにおいても、酸素検知作用極と酸素検知対極間の起電力－Ｅｗｃの起電力は、４０ｍＶ以上であり、大気中酸素濃度（２１％）と被測定雰囲気の酸素濃度（３％）に応じたネルンストの式に従う濃淡電池として動作しており、酸素検知のための十分な感度が得られた。
【0069】
理論に拘束される意図はないが、比較例のガス検出計では以下のようなメカニズムにより、起電力が得られなかったと考察される。図１０に示す比較例のガス検出計においては、環状のヒータ５７に対向する、測定対象ガスの流路が均熱帯となり、対流による測定対象ガスの流速がゼロになる。ゆえに、測定対象ガスの流入口５１１ａからより遠位にある一酸化炭素検知作用極５２及び対極５３上での測定対象ガスの速度もゼロに近くなる。固体電解質をベースとして構成され、かつ混成電位型の一酸化炭素ガスセンサにおいては、下記式（１）で示す電極内で生じる気相ＣＯ酸化反応と、下記式（２）で示す３相（気相、電極、固体電解質基板）界面で生じるＣＯ酸化反応が進行する。そして、約５００℃以上の加熱雰囲気下の固体電解質基板上では、酸素イオンの伝導により、式（２）の反応に起因する起電力が得られる。
比較例のガス検出計では、測定対象ガスの速度が小さいため、一酸化炭素検知作用極５２及び対極５３表面に供給されるＣＯ量が少なく、ＣＯ供給と、気相ＣＯ酸化反応とが競争し、ＣＯが供給されても気相ＣＯ酸化反応で消費されてしまい、３相界面へ到達するＣＯ量が低下する。ゆえに、３相界面での酸化・還元反応が生じにくくなり、十分な起電力が得られなかったと考えられる。
【化1】
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係るガスセンサを備える検出計は、ボイラーなどの煙道に挿入し、燃焼排気中の一酸化炭素と酸素の濃度を同時に、かつ十分な感度でモニタリングすることが可能である。ゆえに、ボイラーなどの燃焼制御システムを構築することが可能となり、省エネルギーに貢献することができる。
【符号の説明】
【0072】
１ 第１固体電解質基板、２ 一酸化炭素検知作用極、３ 一酸化炭素検知対極
４ 酸素検知作用極、５ 酸素検知対極、６ 第２固体電解質基板、
７ 環状ヒータ、９ 断熱材
１０ ガスセンサ、１１ ケーシング、１１ａ ケーシング解放端
１２ ガイドチューブ、１３ 取付フランジ、１４ 校正ガス入口、１５ 端子部
２０ ガス検出計、３０ 壁、ｇ 測定対象ガス
４ 酸素検知作用極、５ 酸素検知対極、６ 第２固体電解質基板、
７ 環状ヒータ、９ 断熱材
１０ ガスセンサ、１１ ケーシング、１１ａ ケーシング解放端
１２ ガイドチューブ、１３ 取付フランジ、１４ 校正ガス入口、１５ 端子部
２０ ガス検出計、３０ 壁、ｇ 測定対象ガス
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
