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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140084
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】自動運転車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20220915BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20220915BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040733
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】501055145
【氏名又は名称】株式会社ZMP
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】上平 倫太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智広
(72)【発明者】
【氏名】アブダルラマン アラディン ムハンマド アブレラ
(72)【発明者】
【氏名】塩原 努
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 正樹
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA64
3D241BA65
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD12
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE09
3D241DA52Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB10Z
3D241DB12Z
3D241DB32Z
3D241DB46Z
3D241DC25Z
3D241DC33Z
3D241DC35Z
3D241DC46Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車速や操舵角に閾値を越える異常が発生したときに、安全に且つ確実に停止することができるようにした自動運転車両を提供する。
【解決手段】走行部11,操舵部12及び制動部13の駆動制御結果の実際値を検出し、各種制御指令の目標値と駆動制御結果とを比較する制御監視部18を備え、制御監視部が、正常走行時における加速,減速又は操舵に関する制御指令に関して、当該自動運転車両10の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデル17aを前もって備えており、制御指令の目標値と駆動制御結果の実際値とを比較する際にモデルを参照してそのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標値と駆動制御結果の実際値とを比較し、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断して、自動運転車両を停止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部,操舵部及び制動部と、前記走行部,操舵部及び制動部を駆動制御する駆動制御部と、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,操舵角センサ,三軸加速度センサ,周囲センサ等から成る検出部と、前記検出部からの検出信号に基づいて前記走行部,操舵部及び制動部への各種制御指令の目標値を含む走行指令を生成する制御部と、前記制御部からの走行指令に基づいて走行信号を生成して前記駆動制御部に送出する走行制御部と、を備える自動運転車両において、
さらに、前記走行部,操舵部及び制動部の駆動制御結果の実際値を検出し、該実際値と前記各種制御指令の目標値とを比較する制御監視部を備え、
前記制御監視部が、正常走行時における加速,減速を含む車速又は操舵角についての制御指令に関して、当該自動運転車両の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデルを前もって備えており、
前記制御指令の目標値と前記駆動制御結果の実際値とを比較する際に前記モデルを参照して、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標値と前記駆動制御結果の実際値とを比較して、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断してエラー発生信号を前記制御部に送出し、
前記制御部が、前記エラー発生信号を受け取ったとき停止指令を生成して前記走行制御部に送出し、
前記走行制御部が前記停止指令に基づいて停止信号を生成して、前記駆動制御部が停止信号により前記走行部、操舵部及び制動部を駆動制御して当該自動運転車両を停止させる、自動運転車両。
【請求項2】
走行部,操舵部及び制動部と、前記走行部,操舵部及び制動部を駆動制御する駆動制御部と、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,操舵角センサ,三軸加速度センサ,周囲センサ等から成る検出部と、前記検出部からの検出信号に基づいて加速,減速及び操舵を含む走行指令を生成する制御部と、前記制御部からの走行指令に基づいて走行信号を生成して前記駆動制御部に送出する走行制御部と、を備える自動運転車両において、
さらに、前記走行部,操舵部及び制動部の駆動制御結果としての加速,減速を含む車速及び操舵角の実際値を検出し、該車速及び操舵角の実際値と前記加速,減速及び操舵に関する制御指令の目標値とを比較する制御監視部を備え、
前記制御監視部が、正常走行時における加速,減速又は操舵に関する制御指令に関して、当該自動運転車両の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデルを前もって備えており、
前記制御指令の目標値と前記駆動制御結果の実際値とを比較する際に前記モデルを参照して、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標値と前記駆動制御結果の実際値とを比較して、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断してエラー発生信号を前記制御部に送出し、
前記制御部が前記エラー発生信号を受け取ったとき、停止指令を生成して前記走行制御部に送出し、
前記走行制御部は前記停止指令に基づいて停止信号を生成し、前記駆動制御部は停止信号により前記走行部、操舵部及び制動部を駆動制御して、当該自動運転車両を停止させる、自動運転車両。
【請求項3】
走行部,操舵部及び制動部と、前記走行部,操舵部及び制動部を駆動制御する駆動制御部と、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,操舵角センサ,三軸加速度センサ,周囲センサ等から成る検出部と、前記検出部からの検出信号に基づいて加速,減速及び操舵を含む走行指令を生成する制御部と、前記制御部からの走行指令に基づいて走行信号を生成して前記駆動制御部に送出する走行制御部と、を備える自動運転車両において、
さらに、前記走行部及び制動部の駆動制御結果としての車速の実際値を検出し、前記加速及び減速に関する制御指令の目標値と前記駆動制御結果としての実際の車速とを比較する制御監視部を備え、
前記制御監視部が、正常走行時における加速,減速又は操舵に係る制御指令に関して、当該自動運転車両の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデルを前もって備えており、
前記制御指令の目標値と前記駆動制御結果の実際値とを比較する際に前記モデルを参照して、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標値と前記駆動制御結果の実際値とを比較して、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断してエラー発生信号を前記制御部に送出し、
前記制御部が前記エラー発生信号を受け取ったとき、停止指令を生成して前記走行制御部に送出し、
前記走行制御部が前記停止指令に基づいて停止信号を生成して、前記駆動制御部が前記停止信号により前記走行部、操舵部及び制動部を駆動制御して、当該自動運転車両を停止させる、自動運転車両。
【請求項4】
前記制御監視部が、車速センサからの検出信号により当該自動運転車両の実際の車速を取得する、請求項2又は3に記載の自動運転車両。
【請求項5】
前記制御監視部が、位置センサからの検出信号に基づいて、当該自動運転車両の走行に伴う位置の差分により当該自動運転車両の実際の車速を取得する、請求項2又は3に記載の自動運転車両。
【請求項6】
前記制御監視部が周囲センサからの検出信号に基づいて、当該自動運転車両の走行に伴う位置の差分により当該自動運転車両の実際の車速を取得する、請求項2又は3に記載の自動運転車両。
【請求項7】
走行部,操舵部及び制動部と、前記走行部,操舵部及び制動部を駆動制御する駆動制御部と、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,操舵角センサ,三軸加速度センサ,周囲センサ等から成る検出部と、前記検出部からの検出信号に基づいて操舵を含む走行指令を生成する制御部と、前記制御部からの走行指令に基づいて走行信号を生成して前記駆動制御部に送出する走行制御部と、を備える自動運転車両において、
さらに、前記操舵部の駆動制御結果としての実際の操舵角を検出し、前記操舵に関する制御指令の目標値と前記駆動制御結果としての実際の操舵角とを比較する制御監視部を備え、
前記制御監視部が、正常走行時における加速,減速又は操舵に係る制御指令に関して、当該自動運転車両の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデルを前もって備えており、
前記制御指令の目標値と前記駆動制御結果の実際値とを比較する際に前記モデルを参照して、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標値と前記駆動制御結果の実際値とを比較して、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断してエラー発生信号を前記制御部に送出し、
前記制御部が前記エラー発生信号を受け取ったとき、停止指令を生成して前記走行制御部に送出し、
前記走行制御部が前記停止指令に基づいて停止信号を生成して、前記駆動制御部が停止信号により前記走行部、操舵部及び制動部を駆動制御して、当該自動運転車両を停止させる、自動運転車両。
【請求項8】
前記制御監視部が、操舵角センサからの検出信号により当該自動運転車両の実際の操舵角を取得する、請求項2又は7に記載の自動運転車両。
【請求項9】
前記制御監視部が、三軸加速度センサからの検出信号に基づいて当該自動運転車両の旋回角速度の差分により当該自動運転車両の実際の操舵角を取得する、請求項2又は7に記載の自動運転車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば加速、減速及び操舵等の制御を監視して、その異常を検出するようにした自動運転車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動運転車両は、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,三軸加速度センサや障害物センサ等から成る検出部からの検出信号に基づいて自動運転車両の走行を制御するメインの自動運転制御部(本出願では「自動運転制御部」を単に「制御部」と称し、走行制御部、駆動制御部などと区別して用いる。)が走行指令を生成し、制御部の走行指令を受けて、走行制御部で走行信号を生成し、この走行信号に基づいて駆動制御部が走行部,操舵部及び制動部を駆動制御して、自動走行を行なうようになっている。
【0003】
これに対して自動運転車両においては、どのような異常が起きても事故が発生しないようあるいは被害を低減するために異常発生をいち早く検出する必要がある。このため、制御部から出力側、例えばアクセル,ブレーキ,ステアリング等の異常については、当該装置にエラー検知機能を付加することにより異常を検出することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのアクセル,ブレーキ,ステアリング等の装置から先の装置の異常については検出することが困難である。
【0005】
本発明は以上の点に鑑み、簡単な構成により駆動制御すべき走行部,操舵部及び制動部等の各装置に異常が発生した場合に、確実に異常発生を検出して、安全に且つ確実に停止することができるようにした自動運転車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、走行部,操舵部及び制動部と、走行部,操舵部及び制動部を駆動制御する駆動制御部と、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,操舵角センサ,三軸加速度センサ,周囲センサ等から成る検出部と、検出部からの検出信号に基づいて前記走行部,操舵部及び制動部への各種制御指令の目標値を含む走行指令を生成する制御部と、制御部からの走行指令に基づいて走行信号を生成して駆動制御部に送出する走行制御部と、を備える自動運転車両において、
さらに、走行部,操舵部及び制動部の駆動制御結果の実際値を検出し該実際値と各種制御指令の目標値とを比較する制御監視部を備え、該制御監視部は、正常走行時における加速,減速を含む車速又は操舵角についての制御指令に関し、当該自動運転車両の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデルを前もって備えていて、制御指令の目標値と駆動制御結果の実際値とを比較する際にモデルを参照して、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標と駆動制御結果の実際値とを比較し、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断してエラー発生信号を制御部に送出し、
制御部はエラー発生信号を受け取ったとき停止指令を生成して走行制御部に送出し、
走行制御部は停止指令に基づいて停止信号を生成し駆動制御部がこの停止信号受けて走行部及び操舵部及び制動部を駆動制御することにより、当該自動運転車両を停止させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の第二の構成は、走行部,操舵部及び制動部と、走行部,操舵部及び制動部を駆動制御する駆動制御部と、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,操舵角センサ,三軸加速度センサ,周囲センサ等から成る検出部と、検出部からの検出信号に基づき加速,減速及び操舵を含む走行指令を生成する制御部と、制御部からの走行指令に基づき走行信号を生成して駆動制御部に送出する走行制御部と、を備える自動運転車両において、
さらに、走行部,操舵部及び制動部の駆動制御結果としての加速,減速を含む車速及び操舵角の実際値を検出し、該車速及び操舵角の実際値と加速,減速及び操舵に関する制御指令の目標値とを比較する制御監視部を備え、この制御監視部は、正常走行時における加速,減速又は操舵に関する制御指令について、当該自動運転車両の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデルを前もって備えていて、制御指令の目標値と駆動制御結果の実際値とを比較する際にモデルを参照し、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標値と駆動制御結果の実際値とを比較し、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断してエラー発生信号を制御部に送出し、制御部はエラー発生信号を受け取ったとき停止指令を生成して走行制御部に送出し、走行制御部は停止指令に基づいて停止信号を生成し駆動制御部がこの停止信号を受けて走行部及び操舵部及び制動部を駆動制御して、当該自動運転車両を停止させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第三の構成では、走行部,操舵部及び制動部と、走行部,操舵部及び制動部を駆動制御する駆動制御部と、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,操舵角センサ,三軸加速度センサ,周囲センサ等から成る検出部と、検出部からの検出信号に基づき加速,減速及び操舵を含む走行指令を生成する制御部と、制御部からの走行指令に基づき走行信号を生成して駆動制御部に送出する走行制御部と、を備える自動運転車両において、
さらに、走行部及び制動部の駆動制御結果としての車速の実際値を検出し、加速及び減速に関する制御指令の目標値と駆動制御結果としての実際の車速とを比較する制御監視部を備え、制御監視部が、正常走行時における加速,減速又は操舵に係る制御指令に関して、当該自動運転車両の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデルを前もって備えていて、制御指令の目標値と駆動制御結果の実際値とを比較する際にモデルを参照し、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標値と駆動制御結果の実際値とを比較し、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断してエラー発生信号を制御部に送出し、制御部がエラー発生信号を受け取ったとき、停止指令を生成して走行制御部に送出し、走行制御部が停止指令に基づいて停止信号を生成して、駆動制御部が停止信号により走行部及び操舵部及び制動部を駆動制御して、当該自動運転車両を停止させる構成とした。
【0009】
好ましくは、制御監視部は、車速センサからの検出信号により当該自動運転車両の実際の車速を取得するか、位置センサからの検出信号に基づいて、当該自動運転車両の走行に伴う位置の差分により当該自動運転車両の実際の車速を取得するか、或いは周囲センサからの検出信号に基づいて、当該自動運転車両の走行に伴う位置の差分により当該自動運転車両の実際の車速を取得する。
【0010】
さらに、本発明の第四の構成では、走行部,操舵部及び制動部と、走行部,操舵部及び制動部を駆動制御する駆動制御部と、走行状態を検出する位置センサ,車速センサ,操舵角センサ,三軸加速度センサ,周囲センサ等から成る検出部と、検出部からの検出信号に基づいて操舵を含む走行指令を生成する制御部と、制御部からの走行指令に基づいて走行信号を生成して駆動制御部に送出する走行制御部と、を備える自動運転車両において、
さらに、操舵部の駆動制御結果としての実際の操舵角を検出し、操舵に関する制御指令の目標値と駆動制御結果としての実際の操舵角とを比較する制御監視部を備えていて、制御監視部が、正常走行時における加速,減速又は操舵に関する制御指令に関して、当該自動運転車両の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデルを前もって備えており、制御指令の目標値と駆動制御結果の実際値とを比較する際にモデルを参照して、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標値と駆動制御結果の実際値とを比較し、その差が閾値を越えたときにエラー発生と判断してエラー発生信号を制御部に送出し、制御部がエラー発生信号を受け取ったとき停止指令を生成して走行制御部に送出し、走行制御部が停止指令に基づいて停止信号を生成して、駆動制御部が停止信号により走行部及び操舵部及び制動部を駆動制御して当該自動運転車両を停止させる構成とした。
【0011】
制御監視部は、操舵角センサからの検出信号により当該自動運転車両の実際の操舵角を取得するか、三軸加速度センサからの検出信号に基づいて当該自動運転車両の旋回角速度の差分により当該自動運転車両の実際の操舵角を取得してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構成で駆動制御すべき走行部,操舵部及び制動部等の各装置に異常が発生した場合に確実に異常発生を検出し、安全に且つ確実に停止させることができるようにした自動運転車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による自動運転車両の全体構成を示す概略図である。
図2図1の自動運転車両の制御系統を示すブロック図である。
図3図1の自動運転車両における制御監視部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明による自動運転車両の一実施形態の全体構成を示している。自動運転車両10は、図示しない車両本体の下部に設けられた走行部11と、操舵部12と、制動部13と、これら走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御する駆動制御部14と、走行制御部15と、制御部16と、記憶部17と、検出部20と、そして走行に必要な図示しない他の機器を含めて、公知の自動運転車両として構成されている。
本発明の自動運転車両10はさらに、後述する制御監視部18を備えており、駆動制御部14,走行制御部15,制御部16,記憶部17,制御監視部18と、検出部20の各センサ及び制御監視部18は、互いに所謂車内LAN(CANとも呼ばれている)により相互に接続されている。
【0015】
走行部11は、図示しないが例えば四つの車輪と、前輪及び/又は後輪を駆動輪として駆動する駆動源とから構成されている。この駆動源は公知の構成でなり、ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン等のエンジン、あるいは駆動モータ等から構成される。
【0016】
操舵部12は公知の構成で、例えば前輪を操舵輪として左右に揺動させることにより、自動運転車両10を直進,後進あるいは左転回又は右転回させ得る。なお、駆動輪と操舵輪は同じ車輪であってもよい。制動部13は、四つの車輪のうち少なくとも前輪のみ又は後輪のみ、あるいは全ての車輪の回転を制止する公知のブレーキ構造から構成される。
【0017】
駆動制御部14は、上記走行部11の駆動源、操舵部12及び制動部13のそれぞれを駆動制御する。駆動制御部14の駆動制御により、駆動輪が回転駆動され、また操舵輪が左右に揺動され、あるいは制動部13が車輪の回転を制止し、自動運転車両10が前進,後退又は左右に転回して所定の方向に走行又は停止することができる。
【0018】
駆動制御部14は、走行制御部15からの走行信号15aに基づき、この走行信号15aで設定された車速,前進,後退,左右転回等の走行又は停止を行なわせる。また、駆動制御部14は、走行制御部15からの停止信号15bに基づいて同様に走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御し、自動運転車両10を速やかに徐行し例えば路肩に寄せて停車させる。自動運転車両10を路肩に寄せて停車させる運転を縮退運転と呼ぶ。
【0019】
走行制御部15は、後述の制御部16から出力された走行指令16aに基づき走行信号15aを生成して駆動制御部14に送出すると共に、制御部16からの停止指令16bに基づき例えば速やかに徐行し且つ路肩に寄せて停車するための停止信号15bを生成して駆動制御部14に送出する。走行信号15aは、走行プログラムを含むものでもよい。
ここで、走行信号15aは、自動運転車両10の出発地から目的地までの走行ルートに沿って走行する際の走行速度,操舵角,加速,減速を指定するように作成されており、駆動制御部14が走行信号15aに従って走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御することにより、自動運転車両10は出発地から目的地まで走行ルートに沿って指定された走行速度で走行することができる。
【0020】
制御部16は例えばパーソナルコンピュータ等から構成され、検出部20から入力される後述の各種検出信号S1~S6を記憶部17に登録すると共に、これらの検出信号を参照しながら走行経路を走行するための走行指令16aを作成し、走行信号15aを走行制御部15に送出する。走行指令16aは、走行部11,操舵部12及び制動部13への走行速度,操舵角,加速,減速等の各種制御指令を含む。また、制御部16は、制御監視部18からエラー発生信号18aを受け取ったとき停止指令16bを生成し、この停止指令16bを走行制御部15に送出する。
【0021】
記憶部17は、制御部16で入力された走行指令16a、又は外部から入力された走行指令16aと、検出部20からの検出信号S1~S6を逐次記憶する。ここで、外部から入力される走行指令16aは、例えば、自動運転車両10を外部から監視する図示しない管理センターからネットワークを介して送出されるものである。さらに、記憶部17には、前もって作成された後述するモデル17aが登録されている。
【0022】
制御監視部18は、走行部11,操舵部12及び制動部13の駆動制御結果の実際値を検出し、この実際値と各種制御指令の修正制御目標値とを比較し、前もって設定された閾値を超えると、走行部11及び制動部13又は操舵部12の動作にエラー発生と判断してエラー発生信号18aを生成し、このエラー発生信号18aを制御部16に送出する機能を有している。駆動制御結果の実際値は、例えば車速や操舵角であり、検出部20の車速センサ23及び操舵角センサ26からの検出信号S3,S6により制御部16を介して制御監視部18に入力される。制御監視部18に入力される走行指令16aによる修正制御目標値は、加速,減速を含む車速及び操舵角に関する制御指令による車速及び操舵角の目標値を、さらに後述するモデル17aにより修正して取得される。
【0023】
ここで、走行指令16aに含まれる制御指令の制御目標、例えば走行速度,操舵角,加速,減速等の各種制御指令に対して、自動運転車両10における実際の駆動制御結果としての実際値は、当該自動運転車両10に固有の特性、例えば車両総重量,電装系,駆動源,油圧系及びタイヤ等、あるいは走行路の路面状況等、さらにはパワーステアリングの非線形のアシスト力の出力,ステアリングモータのトルク等の種々の条件によって、変動してしまう。
このため、当該自動運転車両10に関して、制御目標を入力とし駆動制御結果である実際値を出力として、当該自動運転車両10に関して、正常動作時において実環境でどのような加速,減速を含む車速又は操舵角が得られるかを測定した入出力の非線形の関係式を求めて、モデル17aとして記憶部17に登録しておく。制御監視部18は、記憶部17からモデル17aを読み出して、モデル17aを参照して制御目標値を修正して修正制御目標値を取得する。
これにより、制御監視部18は、制御目標と実際値を比較する際に、記憶部17からモデル17aを読み出して、モデル17aを参照して制御目標値を修正し、当該自動運転車両10で実際に実現される修正制御目標値と駆動制御結果である実際値とを比較する。これにより、制御目標値と実際値の比較をするよりも精度を向上させることができる。
【0024】
制御監視部18は、車速の実際値とモデルで修正した目標値との差D1、そして操舵角の実際値とモデルで修正した目標値との差D2がそれぞれ前もって設定された閾値D1’及びD2’以下である場合には、走行部11,操舵部12及び制動部13の動作が正常であると判断する。
これに対して、制御監視部18は、上記二つの差のうち、少なくとも一方D1又はD2が、それぞれ対応する閾値D1’又はD2’を越えた場合には、走行部11及び制動部13又は操舵部12の動作にエラー発生と判断してエラー発生信号18aを生成し、このエラー発生信号18aを制御部16に送出する。ここで、制御監視部18は、当該自動運転車両10の自動走行中には、上述した実際値及びモデルで修正した目標値の差を所定時間T毎に監視している。所定時間Tは、例えば数ms~20mSである。
【0025】
検出部20は、図示の場合、標識センサ21と位置センサ22と車速センサ23と三軸加速度センサ24と周囲センサ25と操舵角センサ26とから構成されている。
【0026】
標識センサ21は、例えばフロントガラス上部に設けられた単眼カメラであって、自動運転車両10の進行方向前方を撮像し、撮像した画像信号を検出信号S1として制御部16に送出する。制御部16は、検出信号S1に基づいて、自動運転車両10の前方の状況、特に前方の走行路の両側を示す白線やガードレールを画像認識して走行路内の現在位置を把握し、前もって設定された走行経路のマップデータと比較することで、自己位置推定を行なって当該走行路内の進路を保持するように走行指令16aを修正し、走行制御部15に送出する。なお、標識センサ21は、単眼カメラに限らず、双眼カメラ,ステレオカメラ等も使用され得る。
【0027】
位置センサ22は、GNSSセンサ、例えばGPSセンサによる経度及び緯度を検出する。これにより位置センサ22は、例えば所定時間ごとに自動運転車両10のそのときの測地データを検出し、検出信号S2として制御部16に送出する。制御部16は、検出信号S2と記憶部17から読み出した走行路のマップデータとを比較し、当該自動運転車両10の走行路内での走行位置を得て、当該走行路内での進路を保持するように走行指令16aを修正して走行制御部15に送出する。
【0028】
車速センサ23は、例えば走行部11の車輪の回転数を検出し、その回転数を検出信号S3として制御部16に送出する。三軸加速度センサ24は所謂ジャイロであって、車両本体の三軸方向の加速度により自動運転車両10の三次元の姿勢を検出し、その検出信号S4を制御部16に送出する。
【0029】
周囲センサ25は、例えば車両本体の前後のバンパー付近に設けられた複数個のライダーから構成されている。ライダー(LIDAR)は、レーザーレーダーとも呼ばれ、光検出と測距 (Light Detection and Ranging)又はレーザー画像検出と測距(Laser Imaging Detection and Ranging)を行なう。ライダーとして、二次元ライダーや三次元ライダーを用いてもよい。三次元ライダーは、曲線路11cのレーザー画像検出と検出した物体との測距を行なうことができる。なお、周囲センサ25は、ライダーの代わりにあるいはライダーに加えて、例えば車両本体の前後左右に取り付けたステレオカメラや車両本体の屋根に取り付けたライダーを備えていてもよい。ステレオカメラ以外のカメラとしては、単眼カメラ又は双眼カメラを使用できる。
【0030】
周囲センサ25は、自動運転車両10の周囲、即ち前後左右の障害物や他の車両等の走行路上の物体を検出することができる。走行路上の物体を検出した場合、その物体の方向及び距離を含む検出信号S5を走行制御部15に送出する。
【0031】
操舵角センサ26は、例えば走行部11の操舵輪から直接にあるいはステアリングの回転角度から間接的に、当該自動運転車両10の操舵角を検出して操舵角を検出信号S6として制御部16に送出する。
【0032】
制御部16は、検出部20の標識センサ21,位置センサ22,車速センサ23,三軸加速度センサ24,周囲センサ25及び操舵角センサ26からの検出信号S1~S6に基づき、自動運転車両10の走行位置,走行速度,姿勢,前方領域の物体、例えば障害物や他の走行車両等の物体の位置及び距離等の走行状態と操舵角を把握して自己位置を推定すると共に、そのときの走行信号走行プログラム15aの進行状況を判断する。
【0033】
ここで、制御監視部18による走行指令16aに含まれる制御指令と駆動制御結果との比較は以下のように行なわれる。図2は走行速度に関する制御監視の場合を示す。走行制御部15は、制御部16からの走行指令16aに基づいて走行信号15aを生成し、この走行信号15aにより駆動制御部14を制御して走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御する。そして、制御監視部18は、走行部11,操舵部12及び制動部13の駆動制御結果として、当該自動運転車両10の車速を検出部20の車速センサ23からの検出信号S3から直接的に取得する。
【0034】
他方、制御部16から制御監視部18に入力される走行指令16aの車速に関する制御指令、即ち制御目標は、モデル17aを介して当該自動運転車両10の各種特性に対応して修正され、車速の修正制御目標として制御監視部18に送出される。
【0035】
制御監視部18は、検出部20の車速センサ23からの検出信号S3による実際の走行速度と上述した車速の修正制御目標とを比較して、走行部11及び制動部13の動作が正常か否かを判断する。
【0036】
制御監視部18は、実際の走行速度と車速の修正制御目標との差が前もって設定された閾値D1’以下の場合には、走行部11及び制動部13の動作が正常であると判断する。これに対して、実際の走行速度と車速の修正制御目標との差が前もって設定された閾値D1’を越える場合には、制御監視部18は、走行部11及び制動部13の動作にエラーが発生したと判断してエラー発生信号18aを生成し、制御部16に送出する。
【0037】
本発明の自動運転車両10によれば、制御監視部18が、検出部20からの検出信号に基づいて実際の駆動制御結果を検出し、この駆動制御結果と走行指令16aに含まれる各種制御指令、即ち制御目標とを比較する。
走行部11,操舵部12及び制動部13が正常に動作しているときには、制御目標と実際の制御結果との差が前もって決められた閾値を越えないことから、制御監視部18は、走行部11,操舵部12及び制動部13の動作が正常であるとして、エラー発生信号18aを制御部16に送出しない。従って、制御部16は当該自動運転車両10の自動走行を継続する。
【0038】
これに対して、走行部11,操舵部12及び制動部13に異常が発生し、例えば加速又は減速により走行速度が目標値に調整され得ず、あるいは操舵により操舵角が目標値に調整され得ないときは、制御目標と実際の制御結果との差が前もって決められた閾値を越えることで、制御監視部18はエラー発生と判断し、エラー発生信号18aを生成して制御部16に送出する。これを受けて、制御部16は停止指令16bを生成して走行制御部15に送出し、走行制御部15は停止信号15bを生成し、駆動制御部14により走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御して当該自動運転車両10を停止させる。
従って、走行部11,操舵部12及び制動部13の動作に異常が発生したとしても、制御監視部18が、走行指令16aに含まれる各種制御指令と制御監視部18により検出された駆動制御結果とを比較し、その差が閾値を越えたときに制御部16が当該自動運転車両10を停止させることによって、自動運転車両10は、暴走したり走路外にはみ出してしまうことがなく安全に且つ確実に停止する。このようにして、制御監視部18において、走行部11、操舵部12及び制動部13の動作を直接監視しないで、制御目標に対してモデル17aで修正した修正制御目標値と、検出部20で検出される駆動制御結果との比較を行うことでエラー発生を検出することができる。
【0039】
本発明実施形態の自動運転車両10は以上のように構成され、次のように動作する。
図3のフローチャートにおいて、まずステップST1にて、走行前に制御部16にて走行プログラムとしての走行指令16aが作成され、あるいは外部から制御部16に走行指令16aが入力され、記憶部17に記憶される。ステップST2にて走行開始時に、自動運転車両10の制御部16は記憶部17から走行指令16aを読み出し、走行制御部15に送出する。走行制御部15は走行指令16aに基づいて走行信号15aを生成し、駆動制御部14を制御して走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御する。これにより、ステップST3にて、駆動制御部14は走行信号15aに従って走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御するので、自動運転車両10は走行信号15aに従って自動走行を行なう。
【0040】
制御監視部18には、ステップST4にて検出部20の車速センサ23からの検出信号S3が車速の実際値として入力されると共に、ステップST5にて検出部20の操舵角センサ26から検出信号S6が操舵角の実際値として入力される。
他方、ステップST6において、制御部16から走行指令16aがモデル17aに入力され、ステップST7にて走行指令16aに含まれる車速に関する制御指令がモデル17aを通して修正されて、車速の修正制御目標として制御監視部18に入力される。さらにステップST8にて、走行指令16aに含まれる操舵に関する制御指令がモデル17aを通して修正され、操舵角に関する修正制御目標として制御監視部18に入力される。
【0041】
これにより、制御監視部18は、ステップST9にて車速の実際値と修正制御目標である目標値とを比較する、即ち、その差D1を閾値D1’と比較する。
差D1>D1’の場合には、制御監視部18は、ステップST10にて走行部11及び制動部13の動作にエラー発生と判断してエラー発生信号18aを生成し、制御部16に送出する。これを受けて制御部16は、ステップST11にて走行指令16aに代えて停止指令16bを生成して走行制御部15に送出する。これにより、走行制御部15は、ステップST12にて走行信号15aに代えて停止信号15bを生成し、これを駆動制御部14に送出する。従って、駆動制御部14は、ステップST13にてこの停止信号15bに基づいて走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御し、自動運転車両10を停止させることにより自動運転が終了する。
【0042】
これに対してステップST9にて、差D1≦D1’の場合には、制御監視部18はエラー発生信号18aを生成せず、制御部16はそのまま自動運転車両10の自動走行を継続する。続いて、制御監視部18は、ステップST14にて操舵角の実際値と修正制御目標である目標値とを比較する、即ち、その差D2を閾値D2’と比較する。差D2>D2’の場合には、制御監視部18はステップST15にて操舵部12の動作にエラー発生と判断し、エラー発生信号18aを生成して制御部16に送出する。
【0043】
これを受けて、制御部16はステップST11に進み、同様に走行指令16aに代えて停止指令16bを生成し、走行制御部15に送出する。これにより、走行制御部15はステップST12にて走行信号15aに代えて停止信号15bを生成し、駆動制御部14に送出する。従って、駆動制御部14は、ステップST13にてこの停止信号15bに基づいて、走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御し、自動運転車両10を停止させることにより自動運転が終了する。
【0044】
これに対して差D2≦D2’の場合には、ステップST14にて、制御監視部18はエラー発生信号18aを生成せず、制御部16はそのまま自動運転車両10の自動走行を継続する。そして、ステップST16にて所定時間T経過後にステップST4に戻って、ステップST4~ST15を所定時間毎に繰り返す。
以上で、本実施形態の自動運転車両10における制御監視が完了する。
【0045】
図3に示すように走行速度及び操舵角を検出する場合、本発明の自動運転車両10によれば、制御監視部18が、検出部20からの検出信号に基づいて実際の駆動制御結果である走行速度及び操舵角を検出し、この駆動制御結果と走行指令16aに含まれる加速,減速及び操舵に関する制御指令、即ち制御目標である目標速度及び目標操舵角とを比較することができる。走行部11,操舵部12及び制動部13が正常に動作しているときには、制御監視部18は、制御目標と実際の制御結果との差が前もって決められた閾値を越えないことから、走行部11,操舵部12及び制動部13の動作が正常であると判断して、エラー発生信号18aを制御部16に送出しない。従って、制御部16は当該自動運転車両10の自動走行を継続する。
【0046】
これに対して、走行部11,操舵部12及び制動部13に異常が発生して、加速又は減速により走行速度が目標速度に調整され得ず、あるいは操舵により操舵角が目標操舵角に調整され得ない場合には、制御監視部18は、制御目標と実際の制御結果との差が前もって決められた閾値を越えることでエラー発生と判断し、エラー発生信号18aを生成して制御部16に送出する。これを受けて、制御部16は停止指令16bを生成して走行制御部15に送出し、走行制御部15は停止信号15bを生成して駆動制御部14により走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御して当該自動運転車両10を停止させる。従って、走行部11,操舵部12及び制動部13の動作に異常が発生したとしても、制御監視部18が、走行指令16aに含まれる加速,減速及び操舵に関する制御指令と制御監視部18により検出された駆動制御結果としての走行速度及び操舵角とを比較し、その差が閾値を越えたときに当該自動運転車両10を停止させることで、自動運転車両10は暴走したり走路外にはみ出してしまうようなことがなく、安全に且つ確実に停止する。
【0047】
上述した実施形態においては、制御監視部18が車速及び操舵角の動作を監視するようになっているが、これに限らず、制御監視部18が車速のみあるいは操舵角のみの動作を監視するようにしてもよい。
【0048】
(車速を検出する場合)
走行速度を検出する場合には、制御監視部18が、検出部20からの検出信号に基づいて実際の駆動制御結果である走行速度を検出し、この駆動制御結果と走行指令16aに含まれる加速及び減速に関する制御指令、即ち制御目標である目標速度とを比較する。走行部11及び制動部13が正常に動作しているときには、制御目標と実際の制御結果との差が前もって決められた閾値を越えないことから、制御監視部18は、走行部11及び制動部13の動作が正常であると判断してエラー発生信号18aを制御部16に送出しない。従って、制御部16は当該自動運転車両10の自動走行を継続する。
【0049】
これに対して、走行部11及び制動部13に異常が発生し、加速又は減速により走行速度が目標速度に調整され得ない場合には、制御目標と実際の制御結果との差が前もって決められた閾値を越えることにより、制御監視部18はエラー発生と判断してエラー発生信号18aを生成し、制御部16に送出する。これを受けて、制御部16は停止指令16bを生成して走行制御部15に送出し、走行制御部15は停止信号15bを生成して駆動制御部14により走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御し、当該自動運転車両10を停止させる。従って、走行部11及び制動部13の動作に異常が発生したとしても、制御監視部18によって、走行指令16aに含まれる加速及び減速に関する制御指令と制御監視部18により検出された駆動制御結果としての走行速度とが比較され、その差が閾値を越えたときに、制御部16が当該自動運転車両10を停止させることで、自動運転車両10は暴走するようなことがなく安全に且つ確実に停止する。
【0050】
(操舵角を検出する場合)
操舵角を検出する場合には、制御監視部18が検出部20からの検出信号に基づいて実際の駆動制御結果である操舵角を検出し、この駆動制御結果と走行指令16aに含まれる操舵に関する指令即ち制御目標である目標操舵角とを比較する。操舵部12が正常に動作しているときには、制御目標と実際の制御結果との差が前もって決められた閾値を越えないことから、制御監視部18は操舵部12の動作が正常であると判断し、エラー発生信号18aを制御部16に送出しない。従って、制御部16は当該自動運転車両10の自動走行を継続する。
【0051】
これに対して、操舵部12に異常が発生して操舵により操舵角が目標操舵角に調整され得ない場合には、制御目標と実際の制御結果との差が前もって決められた閾値を越えることにより、制御監視部18はエラー発生と判断してエラー発生信号18aを生成し、制御部16に送出する。これを受けて、制御部16は停止指令16bを生成して走行制御部15に送出し、走行制御部15は停止信号15bを生成して、駆動制御部14により走行部11,操舵部12及び制動部13を駆動制御して当該自動運転車両10を停止させる。従って、操舵部12の動作に異常が発生したとしても、制御監視部18によって、走行指令16aに含まれる操舵に関する制御指令と制御監視部18により検出された駆動制御結果としての操舵角とが比較され、その差が閾値を越えたときに、制御部16が当該自動運転車両10を停止させることにより、自動運転車両10は走路外にはみ出してしまうようなことなく安全に且つ確実に停止する。
【0052】
本発明による自動運転車両10によれば、制御監視部18が、正常走行時における走行指令16aに含まれる加速,減速又は操舵に関する制御指令に関して、当該自動運転車両10の固有の特性に対応した修正制御目標としての走行速度又は操舵角を表わすモデル17aを前もって備えており、制御部16が、制御指令と駆動制御結果とを比較する際にモデル17aを参照して、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標と駆動制御結果とを比較して、エラー発生か否かの判断を行なうことができる。
【0053】
上記構成によれば、モデル17aが、走行指令16aに含まれる各種制御指令、例えば加速,減速又は操舵に関する制御指令、例えば制御目標である目標速度,目標操舵角と、これらの制御目標に対応して当該自動運転車両10の実環境においてどのような走行速度又は操舵角が得られるかを測定した、所謂入出力の非線形関係式として、前もって設定されている。これにより自動運転車両10の自動走行中に、制御監視部18が制御指令からモデル17aを参照し、そのときの走行条件に応じて期待される修正制御目標を算出して、この修正制御目標と駆動制御結果とを比較してエラー発生の判断を行なうことで迅速に且つ精度良くエラー発生を検出することができる。
【0054】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な形態で実施することができる。例えば、上述した実施形態において、制御監視部18がエラー発生を検出した場合に、制御部16は自動運転車両10を速やかに徐行させ、路肩に寄せて停車するような縮退運転による停止指令16bを生成しているが、その場で非常停止させるようにしてもよい。
【0055】
上述した実施形態においては、制御監視部18は、自動運転車両10に設けられた検出部20の車速センサ23からの検出信号S3に基づいて直接に車速の実際値を取得するようになっているが、これに限らず、位置センサ22又は周囲センサ25からの検出信号S2,S5に基づいて、当該自動運転車両10の走行に伴う位置の変化量である距離を位置の差分として当該自動運転車両10の車速を演算し、車速の実際値を間接的に取得してもよいことは明らかである。
【0056】
これらの構成によれば、制御監視部18が、車速センサ23からの検出信号により直接的にあるいは位置センサ22からの検出信号,周囲センサ25からの検出信号に基づいて間接的に、実際の車速を取得することにより、駆動制御結果である車速を監視することができる。
【0057】
上述した実施形態においては、制御監視部18が、自動運転車両10に設けられた検出部20の操舵角センサ26からの検出信号S6に基づいて直接に車速の実際値を取得するようになっているが、これに限らず、三軸加速度センサ24からの検出信号S4に基づいて、当該自動運転車両10の走行に伴う旋回角速度の変化量である角度を操舵角の差分として当該自動運転車両10の操舵角を演算し、操舵角の実際値を間接的に取得してもよいことは明らかである。
【0058】
これらの構成によれば、制御監視部18が、操舵角センサ26から直接に操舵角を取得し、又は三軸加速度センサ24からの検出信号に基づいて間接的に操舵角を取得することにより、駆動制御結果である操舵角を監視することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 自動運転車両
11 走行部
12 操舵部
13 制動部
14 駆動制御部
15 走行制御部
15a 走行信号
15b 停止信号
16 制御部
16a 走行指令
16b 停止指令
17 記憶部
17a モデル
18 制御監視部
18a エラー発生信号
20 検出部
21 標識センサ
22 位置センサ
23 車速センサ
24 三軸加速度センサ
25 周囲センサ
26 操舵角センサ
S1~S7 検出信号
図1
図2
図3