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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140088
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】テンプレートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20220915BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040738
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】本川 剛治
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 典子
(72)【発明者】
【氏名】桜井 秀昭
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AJ06
4F209AJ09
4F209PA02
4F209PB01
4F209PQ11
5F146AA32
(57)【要約】
【課題】転写パターンのラフネスを低減することができるテンプレートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態によるテンプレートは、基材と、化合物含有層と、を備える。基材は、凹凸パターンが設けられる第1面を有し、第1元素を含む。化合物含有層は、第1面に設けられ、第1元素と、第1元素とは異なる第2元素と、を含む化合物の密度が基材よりも高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸パターンが設けられる第1面を有し、第1元素を含む基材と、
前記第1面に設けられ、前記第1元素と、前記第1元素とは異なる第2元素と、を含む化合物の密度が前記基材よりも高い化合物含有層と、を備える、テンプレート。
【請求項2】
前記化合物含有層は、前記化合物と、前記基材の材料と、の混合層である、請求項1に記載のテンプレート。
【請求項3】
前記第1元素は、シリコン(Si)であり、
前記第2元素は、炭素(C)であり、
前記化合物は、炭化ケイ素(SiC)である、請求項1または請求項2に記載のテンプレート。
【請求項4】
前記基材は、石英を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のテンプレート。
【請求項5】
凹凸パターンが設けられる第1面を有し、第1元素を含む基材の少なくとも前記凹凸パターンに前記第1元素とは異なる第2元素のイオンを注入することにより、前記第1面に設けられ、前記第1元素と前記第2元素とを含む化合物の密度が前記基材よりも高い化合物含有層を形成する、ことを具備する、テンプレートの製造方法。
【請求項6】
前記第2元素のイオンを注入するとともに、少なくとも前記凹凸パターンを覆うように前記第2元素を含む材料膜を形成することにより、前記基材と前記材料膜との間に前記化合物含有層を形成し、
前記化合物含有層を露出させるように前記材料膜を除去する、ことをさらに具備する、請求項5に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項7】
前記第2元素のイオンを注入するとともに、前記凹凸パターンの或る面から突出する第1凸部における成膜レートが前記或る面から窪む第1凹部における成膜レートよりも低くなるように前記材料膜を形成することにより、前記基材と前記材料膜との間に前記化合物含有層を形成し、
前記第1凸部を露出させるように前記材料膜の一部を除去するとともに、前記第1凸部の前記化合物含有層および前記第1凸部の前記基材の一部を除去し、
前記第2元素のイオンを注入するとともに、前記材料膜を形成することにより、前記第1凸部の前記基材と前記材料膜との間に前記化合物含有層を形成し、
前記化合物含有層を露出させるように前記材料膜を除去する、ことをさらに具備する、請求項6に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項8】
前記第2元素のイオンを注入するとともに、少なくとも前記第1凹部が埋まるまで前記材料膜を形成することにより、前記基材と前記材料膜との間に前記化合物含有層を形成する、ことをさらに具備する、請求項7に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項9】
前記第2元素のイオンを注入するとともに、少なくとも前記第1凸部が埋まるまで前記材料膜を形成することにより、前記基材と前記材料膜との間に前記化合物含有層を形成し、
前記第1凸部を露出させるように前記材料膜の一部を除去するとともに、前記第1凸部の前記化合物含有層および前記第1凸部の前記基材の一部を、前記材料膜のエッチングレートと略同じエッチングレートになるように除去する、ことをさらに具備する、請求項7に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項10】
前記第1凸部の前記化合物含有層および前記第1凸部の前記基材の一部を除去した後に、
前記化合物含有層が露出するように前記材料膜を除去し、前記第2元素のイオンを再び注入するとともに前記材料膜を再び形成し、前記材料膜の一部を再び除去するとともに前記第1凸部の前記前記化合物含有層および前記第1凸部の前記基材の一部を再び除去する、ことを1回以上繰り返し、
前記第2元素のイオンを注入するとともに、前記材料膜を形成することにより、前記第1凸部の前記基材と前記材料膜との間に前記化合物含有層を形成し、
前記化合物含有層を露出させるように前記材料膜を除去する、ことをさらに具備する、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項11】
前記或る面は、前記凹凸パターンの側壁部である、ことをさらに具備する、請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項12】
PBII&D(Plasma-Based Ion Implantation and Deposition)法により、前記第2元素のイオンを注入するとともに、前記材料膜を形成する、ことをさらに具備する、請求項6から請求項11のいずれか一項に記載のテンプレートの製造方法。
【請求項13】
前記第2元素のイオンを注入するとともに、前記凹凸パターンの第2凸部の上面および第2凹部の底面における成膜レートに対して、前記凹凸パターンの側壁部における成膜レートが低くなるように、前記材料膜を形成する、ことをさらに具備する、請求項6から請求項11のいずれか一項に記載のテンプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、テンプレートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に微細なパターンを形成できるナノインプリント法では、凹凸パターン領域を有するテンプレートを被加工膜上に塗布されたレジストに押し当てる。これにより、凹凸パターンがレジストに転写される。しかし、テンプレート上のパターンラフネスも、そのまま転写されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-172316号公報
【特許文献2】特開2014-72500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写パターンのラフネスを低減することができるテンプレートおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態によるテンプレートは、基材と、化合物含有層と、を備える。基材は、凹凸パターンが設けられる第1面を有し、第1元素を含む。化合物含有層は、第1面に設けられ、第1元素と、第1元素とは異なる第2元素と、を含む化合物の密度が基材よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態によるテンプレートの構成の一例を示す断面図。
図2】第1実施形態によるテンプレートの構成の一例を示す平面図。
図3A】第1実施形態によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図3B図3Aに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図4A】第1実施形態によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図
図4B図4Aに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図4C図4Bに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図5A】第2実施形態によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図5B図5Aに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図5C図5Bに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図5D図5Cに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図5E図5Dに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図5F図5Eに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図6】第3実施形態によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図7】第4実施形態によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図8A】第5実施形態によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図8B図8Aに続く、テンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
図9】比較例によるテンプレートの製造方法の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態によるテンプレート1の構成の一例を示す断面図である。テンプレート1は、例えば、ナノインプリント用テンプレートである。
【0009】
テンプレート1は、基材10と、化合物含有層20と、を備える。
【0010】
基材10は、面F1と、面F1とは反対側の面F2と、を有する。基材10の面F1には、凹凸パターン13が設けられる。ナノインプリント法では、テンプレート1を被加工膜上に塗布されたレジストに押し当てることにより、凹凸パターン13がレジストに転写される。
【0011】
凹凸パターン13は、パターン凸部11と、パターン凹部12と、を含む。パターン凸部11の上面部は、上面F11である。パターン凹部12の底面部は、底面F12である。パターン凸部11の側壁部は、側面F13である。尚、パターン凸部11の突出方向である+Z方向を上方向とし、パターン凹部12の窪み方向である-Z方向を下方向とする。
【0012】
基材10は、例えば、石英ガラス基板である。従って、基材10は、二酸化ケイ素(SiO)を含む。また、基材10は、第1元素を含む。この場合、第1元素は、例えば、シリコン(Si)である。
【0013】
化合物含有層20は、少なくとも凹凸パターン13に沿って面F1に設けられる。化合物含有層20は、基材10から露出するように凹凸パターン13の表層に設けられる。後で説明するように、化合物含有層20により、凹凸パターン13のラフネスを低減することができる。
【0014】
化合物含有層20は、第1元素と、第1元素とは異なる第2元素と、を含む化合物の密度が基材10よりも高い。第2元素は、基材10の主材料に含まれない元素である。第2元素は、例えば、炭素(C)である。化合物含有層20の化合物は、例えば、炭化ケイ素(SiC)等のシリコン化合物である。より詳細には、化合物含有層20は、化合物と、基材10の材料と、の混合層である。すなわち、基材10の面F1の表層では、炭化ケイ素と二酸化ケイ素とが混在している。尚、化合物含有層20は、化合物の単層であってもよい。
【0015】
以下では、一例として、基材10の材料は石英であり、第1元素はシリコンであり、第2元素は炭素であり、化合物含有層20の化合物は炭化ケイ素であるとして説明する。
【0016】
化合物含有層20の炭化ケイ素は、例えば、X線電子分光を用いて電子状態を確認することにより特定することができる。化合物含有層20の密度は、例えば、X線反射率法(X-ray reflectivity、XRR)により測定可能である。炭化ケイ素の密度は、例えば、約3.21g/cmである。石英の密度は、例えば、約2.21g/cmである。また、混合層の密度は、例えば、約2.25g/cmである。
【0017】
化合物含有層20内に、炭素イオンおよび二酸化ケイ素が存在してもよい。これは、全ての炭素イオンが基材10のシリコンと反応するとは限らないためである。従って、化合物含有層20では、炭素イオンの密度が基材10よりも高い場合がある。
【0018】
化合物含有層20は超薄膜である。化合物含有層20の膜厚は、例えば、3nm以下である。
【0019】
図2は、第1実施形態によるテンプレート1の構成の一例を示す平面図である。図2のB-B線は、断面図である図1に対応する断面を示す。
【0020】
図2に示す例では、凹凸パターン13は、ラインアンドスペースパターンである。パターン凸部11は、Y方向に延伸している。複数のパターン凸部11は、X方向に並べて配置される。パターン凹部12は、2つのパターン凸部11の間に対応する。凹凸パターン13のラフネスは、例えば、ラインエッジラフネスである。
【0021】
次に、テンプレート1の製造方法について説明する。
【0022】
図3Aおよび図3Bは、第1実施形態によるテンプレート1の製造方法の一例を示す断面図である。
【0023】
まず、図3Aに示すように、基材10に凹凸パターン13を形成する。例えば、平板状の基材10の表面にマスクを形成する。マスクは、例えば、クロムマスクであり、所望の形状にパターニングされている。その後、例えば、フッ素系プラズマによりマスクでマスキングされていない箇所を除去することで、凹凸パターン13が形成される。
【0024】
次に、図3Bに示すように、少なくとも凹凸パターン13に炭素イオンを注入することにより、化合物含有層20を形成する。より詳細には、炭素イオンを注入するとともに、少なくとも凹凸パターン13を覆うように炭素イオンを含む材料膜30を形成することにより、基材10と材料膜30との間に化合物含有層20を形成する。材料膜30は、例えば、DLC(Diamond-Like Carbon)膜等のカーボン膜である。
【0025】
材料膜30は、例えば、プラズマイオン注入・成膜(PBII&D、Plasma-Based Ion Implantation and Deposition)法により形成される。PBII&D法は、イオン注入と材料膜30の堆積とを行う。PBII&D法では、成膜用の反応ガスに応じて、例えば、炭素1イオン当たり約100Vのイオンエネルギーが付加される。イオンエネルギーは、イオン注入の強さに影響する。加速電圧が高いほど付加されるイオンエネルギーは高く、炭素イオンがより深く基材10に進入する。成膜用の反応ガスは、例えば、メタン(CH)、アセチレン(C)またはトルエン(C)等である。
【0026】
炭素イオンが基材10にイオン注入されると、石英の二酸化ケイ素におけるSi-O結合が切断され、シリコンと炭素とが結合して炭化ケイ素になる。このように、基材10の最表層には化合物含有層20が形成される。また、化合物含有層20は、例えば、材料膜30を形成するとほぼ同時に形成される。
【0027】
尚、PBII&D法に限られず、他の方法により化合物含有層20および材料膜30が形成されてもよい。例えば、化合物含有層20を効率的に形成するため、材料膜30の成膜時に存在する活性種を基材10の表層にイオン注入することができる他の方法が用いられてもよい。また、材料膜30を形成することなく、化合物含有層20を形成する他の方法が用いられてもよい。
【0028】
図3Bの工程の後、化合物含有層20を露出させるように材料膜30を除去する。全ての材料膜30を除去することにより、図1に示すテンプレート1が完成する。材料膜30は、例えば、酸素プラズマを用いたエッチングにより除去される。カーボン膜である材料膜30は、酸素プラズマに晒されると酸化されて二酸化炭素(CO)等の気体となり除去される。尚、炭化ケイ素および二酸化ケイ素は、酸素プラズマでは除去されない。従って、化合物含有層20および基材10は、ほぼ除去されずに残る。
【0029】
次に、製造フローに沿って、ラフネスについて説明する。
【0030】
図4A図4Cは、第1実施形態によるテンプレート1の製造方法の一例を示す断面図である。図4A図4Cは、それぞれ図3A図3B図1におけるA-A線である断面から見たパターン凸部11の断面図である。また、図4A図4Cは、図2における破線枠Cの領域をZ方向から見たパターン凸部11の側面F13付近の断面図である。従って、図4A図4Cは、ラインエッジラフネスを示す。
【0031】
まず、図4Aに示すように、基材10に凹凸パターン13を形成する。パターン凸部11の側面F13には、ラフネスが存在する。ラフネスは、微細な凹凸である。側面F13には、側面F13から突出するラフネス凸部131と、側面F13から窪むラフネス凹部132と、が存在する。ラフネス凸部131およびラフネス凹部132の振幅は、例えば、約1nm~約2nmである。例えば、ラフネス凸部131の上面とラフネス凹部132の底面との差が大きいほど、ラフネスは大きい。尚、ラフネス凸部131の突出方向である+X方向を上方向とし、ラフネス凹部132の窪み方向である-X方向を下方向とする。
【0032】
凹凸パターン13の上面F11、底面F12および側面F13は、理想的には平坦である。しかし、実際には、上面F11、底面F12および側面F13を拡大するほど、微細な凹凸(ラフネス)が無視できないほど拡大される。ラフネスは、例えば、原子サイズまで測定され得る。ラフネス凸部131およびラフネス凹部132の振幅は、例えば、凹凸パターン13の振幅の1割~2割以下である。凹凸パターン13が微細になるほど、凹凸パターン13に対するラフネスを小さくすることが困難になる。ナノインプリント法は転写性能が高く、テンプレート1の凹凸パターン13がそのまま転写される。従って、凹凸パターン13のラフネスもそのまま転写されてしまう可能性がある。従って、通常、所定の許容値以下のラフネスのテンプレート1がナノインプリント法で用いられる。
【0033】
次に、図4Bに示すように、化合物含有層20および材料膜30を形成する。
【0034】
次に、図4Cに示すように、化合物含有層20が露出するように材料膜30を全て除去する。これにより、ラインエッジラフネスは、例えば、約15%改善する。これは、一連のプロセスで石英のラフネス凸部131が除去されるためである。
【0035】
以上のように、第1実施形態によれば、化合物含有層20が凹凸パターン13に沿って基材10の表層に露出するように設けられる。これにより、ラフネスを低減することができる。
【0036】
また、化合物含有層20は、上記のように、炭化ケイ素(SiC)を含む膜である。炭化ケイ素は、シリコン(Si)とダイアモンド(C)との中間的な特性を有し、優れた硬度を有する。傷つきやすさの指標として、修正モース硬度が利用されている。石英の修正モース硬度が8であり、炭化ケイ素の修正モース硬度が13である。従って、化合物含有層20の炭化ケイ素は、基材10の石英よりも傷つきにくい。凹凸パターン13の表層の炭化ケイ素は、硬質膜コートとして機能する。これにより、転写パターン品質の劣化につながる、凹凸パターン13への傷等の欠陥を抑制することができる。
【0037】
また、炭化ケイ素膜を形成する他の方法として、例えば、SiとCとを含む原料ガスを用いた熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法が用いられる場合がある。熱CVD法のプロセス温度は、通常、約2000℃と高温である。この温度は、石英の加工温度(例えば、約1900℃)よりも高い。従って、石英の凹凸パターンに熱CVD法で炭化ケイ素を精度よく成膜することは難しい。
【0038】
これに対して、第1実施形態では、PBII&D法により、常温で石英の凹凸パターン13に材料膜30を成膜するとともに、炭化ケイ素膜を形成する。これにより、超薄膜の炭化ケイ素膜で覆われた石英の凹凸パターン13を、高温処理を経ずに作製することができる。
【0039】
尚、基材10の材料は、石英に限られず、他の材料であってもよい。化合物含有層20の化合物は、炭化ケイ素に限られず、他の化合物であってもよい。
【0040】
(第2実施形態)
図5A図5Fは、第2実施形態によるテンプレート1の製造方法の一例を示す断面図である。第2実施形態は、材料膜30の堆積および除去の工程が複数回行われる点で、第1実施形態とは異なっている。
【0041】
まず、図5Aに示すように、基材10に凹凸パターン13を形成する。図5Aの工程は、第1実施形態の図4Aの工程とほぼ同様である。
【0042】
次に、図5Bに示すように、凹凸パターン13に炭素イオンを注入するとともに、凹凸パターン13を覆うように材料膜30を形成する。より詳細には、ラフネス凸部131における成膜レートがラフネス凹部132における成膜レートよりも低くなるように材料膜30を形成される。例えば、PBII&D法によるカーボン成膜では、ラフネス凸部131よりもラフネス凹部132にカーボン材料が早く定着し、成膜レートが速くなる傾向がある。つまり、成膜初期段階において、材料膜30は、ラフネス凹部132には成膜されるが、ラフネス凸部131にはほとんど成膜されない。従って、材料膜30は、図5Bに示すように、ラフネス凹部132において比較的厚く形成され、ラフネス凸部131において比較的薄く形成される。
【0043】
材料膜30の膜厚は、例えば、約1nm~約3nmである。材料膜30の成膜量(厚さ)は、例えば、成膜時間によって制御される。
【0044】
次に、図5Cに示すように、材料膜30および化合物含有層20を除去する。材料膜30の除去は、ハロゲンガス添加プラズマを用いたエッチングにより行われる。ハロゲンガスは、例えば、CHF、CF、SF等である。従って、図5Cの工程では、材料膜30だけでなく、化合物含有層20の炭化ケイ素もエッチングされる。尚、図5Cは、ラフネス凸部131の化合物含有層20が除去され、ラフネス凸部131の基材10が材料膜30から一部露出するタイミングを示す。
【0045】
図5Dは、図5Cからさらにエッチングが進んだ状態を示す。すなわち、図5Cおよび5Dに示すように、ラフネス凸部131を露出させるように材料膜30の一部を除去するとともに、ラフネス凸部131の化合物含有層20およびラフネス凸部131の基材10の一部を除去する。ハロゲンガス添加プラズマが用いられるため、材料膜30および化合物含有層20だけでなく、石英である基材10もエッチングされる。図5Dに示すラフネス凸部131は、エッチングが進み、図5A~5Cに示すラフネス凸部131と比較して、ラフネス凸部131の一部が削れて低くなっている。
【0046】
また、材料膜30が全部除去される前に、材料膜除去工程が終了する。ラフネス凸部131以外のパターン凸部11は、材料膜30により被覆されたままである。従って、材料膜30がマスクとして機能し、ラフネス凸部131以外の基材10および化合物含有層20は、除去されない。従って、凹凸パターン13を消失させることなくラフネス凸部131を選択的に除去することができ、ラインエッジラフネスを改善することができる。
【0047】
次に、図5Eに示すように、凹凸パターン13に炭素イオンを注入するとともに、凹凸パターン13を覆うように材料膜30を形成することにより、ラフネス凸部131の基材と材料膜30との間に化合物含有層20を形成する。これにより、図5Dの工程で除去された化合物含有層20を修復することができる。
【0048】
次に、図5Fに示すように、化合物含有層20を露出させるように材料膜30を除去する。材料膜30は、例えば、酸素プラズマを用いたエッチングにより除去される。図5Fに示すように、側面F13のラフネス凸部131を低くすることができ、かつ、凹凸パターン13に沿って化合物含有層20を形成することができる。
【0049】
以上のように、第2実施形態によれば、図5Dの工程において、材料膜30を除去するだけでなく、ラフネス凸部131の上面を一部除去する。これにより、凹凸パターン13には悪影響を与えることなく、ラフネス凸部131を選択的に削ることができる。この結果、ラフネス凸部131を削ることにより、ラフネスをさらに低減することができる。
【0050】
第2実施形態によるテンプレート1のその他の構成は、第1実施形態によるテンプレート1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第2実施形態によるテンプレート1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、材料膜30の成膜工程(図5B)および除去工程(図5Cおよび図5D)を含めたラフネス凸部131の除去工程が1回行われる。一方、第2実施形態の変形例では、ラフネス凸部131の除去工程が2回以上行われる。
【0052】
ラフネス凸部131の選択的除去が可能なのは、材料膜30が残存している期間であり、時間限定がある。そこで、酸素プラズマを用いたエッチングで材料膜30を全部除去して、材料膜30を再度成膜するようにすれば、ラフネス凸部131を再度選択的に除去することが可能になる。
【0053】
1回当たりのラフネス凸部131の削り量を大きくすると、制御性が悪化する可能性がある。従って、1回当たりの削り量を減らして、ラフネス凸部131の除去工程が複数回行われる。
【0054】
まず、図5Dの工程の後、化合物含有層20が露出するように材料膜30を全て除去する。材料膜30は、例えば、酸素プラズマを用いたエッチングにより除去される。
【0055】
次に、図5B図5Dに示すラフネス凸部131の除去工程を1回以上繰り返す。すなわち、図5Bに示すように、炭素イオンを再び注入するとともに材料膜30を再び形成する。次に、図5Cおよび図5Dに示すように、材料膜30の一部を再び除去するとともにラフネス凸部131の化合物含有層20およびラフネス凸部131の基材10の一部を再び除去する。
【0056】
その後、第2実施形態の図5E以降と同様の工程が実行される。
【0057】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態によるテンプレート1の製造方法の一例を示す断面図である。第3実施形態は、第2実施形態の図5Bと比較して、成膜する材料膜30の厚さが異なっている。
【0058】
まず、第2実施形態と同様に、基材10に凹凸パターン13を形成する(図5Aを参照)。
【0059】
次に、図6に示すように、凹凸パターン13に炭素イオンを注入するとともに、凹凸パターン13を覆うように材料膜30を形成する。より詳細には、少なくともラフネス凹部132が埋まるまで材料膜30を形成する。図6に示す例では、第2実施形態の図5Bと比較して、材料膜30の膜厚が薄い。図6に示すラフネス凸部131およびその周辺では、材料膜30はあまり成膜されていない。材料膜30の成膜量(厚さ)は、例えば、成膜時間によって制御される。
【0060】
その後、第2実施形態の図5C以降と同様の工程が実行される。
【0061】
第3実施形態では、材料膜30の除去量を少なくしても、ラフネス凸部131を選択的に露出させることができる。
【0062】
第3実施形態によるテンプレート1のその他の構成は、第2実施形態によるテンプレート1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第3実施形態によるテンプレート1は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第3実施形態によるテンプレート1に第2実施形態の変形例を組み合わせてもよい。
【0063】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態によるテンプレート1の製造方法の一例を示す断面図である。第4実施形態は、第2実施形態の図5Bと比較して、成膜する材料膜30の厚さが異なっている。
【0064】
まず、第2実施形態と同様に、基材10に凹凸パターン13を形成する(図5Aを参照)。
【0065】
次に、図7に示すように、凹凸パターン13に炭素イオンを注入するとともに、凹凸パターン13を覆うように材料膜30を形成する。より詳細には、少なくともラフネス凸部が埋まるまで材料膜30を形成する。図7に示す例では、第2実施形態の図5Bと比較して、材料膜30の膜厚が厚い。図7に示すラフネス凸部131およびその周辺が十分に埋まるように、材料膜30が厚く成膜される。材料膜30の成膜量(厚さ)は、例えば、成膜時間によって制御される。
【0066】
次に、第2実施形態の図5Cおよび図5Dに示すように、ラフネス凸部131を露出させるように材料膜30の一部を除去するとともに、ラフネス凸部131の化合物含有層20およびラフネス凸部131の基材10の一部を除去する。より詳細には、材料膜30のエッチングレートと略同じエッチングレートになるように基材10の一部を除去する。
【0067】
ここで、第4実施形態における材料膜30の除去工程では、材料膜30と基材10とのエッチングレートがほぼ1:1となるように行われる。エッチングレートがほぼ1:1である場合、図7に示す材料膜30の表面形状を維持するように、材料膜30とともに基材10をエッチングすることができる。ラフネス凸部131およびその周辺では、材料膜30が最も薄い。従って、基材10のうちラフネス凸部131が最も早くエッチングされる。また、ラフネス凸部131以外の領域では、材料膜30が厚いため、ラフネス凸部131以外の基材10がエッチングされることを抑制することができる。従って、ラフネス凸部131を選択的に削ることをより容易にすることができる。
【0068】
尚、エッチングレートの調整は、例えば、ガス比等の調整により行われる。エッチングレートの調整は、例えば、材料膜30の膜質に応じて行われる。
【0069】
その後、第2実施形態の図5E以降と同様の工程が実行される。
【0070】
第4実施形態によるテンプレート1のその他の構成は、第2実施形態によるテンプレート1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第4実施形態によるテンプレート1は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第4実施形態によるテンプレート1に第2実施形態の変形例を組み合わせてもよい。
【0071】
(第5実施形態)
図8Aおよび図8Bは、第5実施形態によるテンプレート1の製造方法の一例を示す断面図である。第5実施形態は、第2実施形態と比較して、材料膜30の形成方法が異なっている。
【0072】
まず、図8Aに示すように、基材10に凹凸パターン13を形成する。
【0073】
次に、図8Bに示すように、凹凸パターン13に炭素イオンを注入するとともに、凹凸パターン13に材料膜30を形成する。より詳細には、パターン凸部11の上面F11およびパターン凹部12の底面F12における成膜レートに対して、凹凸パターン13の側壁部(側面F13)における成膜レートが低くなるように、材料膜30を形成する。図8Bに示す例では、側面F13に、上面F11および底面F12よりも薄い材料膜30が形成される。
【0074】
凹凸パターン13への材料膜30の付き方は、材料膜30の成膜条件により調整可能である。側壁部における材料膜30の成膜量を減らすには、材料膜30の成膜時にラジカル化したカーボン材料を減らすことが有効である。プラズマ源を、例えば、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)法にすることにより、ラジカル成分を効率よく除去することができる。
【0075】
図9は、比較例によるテンプレート1の製造方法の一例を示す断面図である。比較例では、PBII&D法により材料膜30が形成される。従って、比較例は、第2実施形態でもある。
【0076】
図8B図9とを比較すると、上面F11および底面F12に成膜される材料膜30の厚さは、ほぼ同じである。一方、図8Bに示す側面F13に成膜される材料膜30は、図9に示す側面F13に成膜される材料膜30よりも薄い。従って、第5実施形態では、FCVA法により、側面F13に形成される材料膜30をより薄くすることができる。第5実施形態の図8Bでは、比較例の図9と比較して、側面F13の成膜量を、例えば、3割程度低減することができる。これにより、材料膜30のより少ない削り量で、側面F13におけるラフネス凸部131を露出させることができる。また、上面F11および底面F12は材料膜が比較的厚く残すことができる。これにより、側面F13のラフネス凸部131を削る際に、上面F11および底面F12も削れてしまうことを抑制することができる。従って、側面F13のラフネス凸部131を、より選択的に削りやすくすることができる。
【0077】
第5実施形態によるテンプレート1のその他の構成は、第2実施形態によるテンプレート1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第5実施形態によるテンプレート1は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第5実施形態によるテンプレート1に第2実施形態の変形例を組み合わせてもよい。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
1 テンプレート、10 基材、11 パターン凸部、12 パターン凹部、13 凹凸パターン、131 ラフネス凸部、132 ラフネス凹部、13 凹凸パターン、20 化合物含有層、30 材料膜、F1 面、F11 上面、F12 底面、F13 側面
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8A
図8B
図9