(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140099
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】木造梁の架構構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/26 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
E04B1/26 F
E04B1/26 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040754
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 崇興
(72)【発明者】
【氏名】植草 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】垣田 淳
(57)【要約】
【課題】木造梁のスパンを長くすることを目的とする。
【解決手段】木造梁の架構構造は、一対の第一柱22Aに、上下方向に間隔を空けて架設される上下二段の第一木造梁30Aと、上下二段の第一木造梁30Aの側方において、一対の第二柱22Bに、上下方向に間隔を空けて架設される上下二段の第二木造梁30Bと、第一木造梁30Aと第二木造梁30Bとに架設される木造小梁60であって、上下二段の第一木造梁30Aの間に配置されて当該第一木造梁30Aを連結するとともに、上下二段の第二木造梁30Bの間に配置されて当該第二木造梁を連結する木造小梁60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第一柱に、上下方向に間隔を空けて架設される上下二段の第一木造梁と、
上下二段の前記第一木造梁の側方において、一対の第二柱に、上下方向に間隔を空けて架設される上下二段の第二木造梁と、
前記第一木造梁と前記第二木造梁とに架設される小梁であって、上下二段の前記第一木造梁の間に配置されて該第一木造梁を連結するとともに、上下二段の前記第二木造梁の間に配置されて該第二木造梁を連結する小梁と、
を備える木造梁の架構構造。
【請求項2】
互いに対向する前記第一柱及び前記第二柱にそれぞれ架設される第三木造梁と、
上段の前記第一木造梁と上段の前記第二木造梁の間に配置され、前記小梁、及び前記第三木造梁に支持される床と、
を備える請求項1に記載の木造梁の架構構造。
【請求項3】
前記第三木造梁は、互いに対向する前記第一柱及び前記第二柱を両側から挟持する左右二列の木造梁部材を有する、
請求項2に記載の木造梁の架構構造。
【請求項4】
上下二段の前記第一木造梁の各々は、平面視にて、前記小梁の両側に配置されるヒンジ部を有し、
上下二段の前記第二木造梁の各々は、平面視にて、前記小梁の両側に配置されるヒンジ部を有する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の木造梁の架構構造。
【請求項5】
一対の前記第一柱の各々は、前記第一木造梁を梁幅方向の両側から挟持する一対の木造柱部材を有し、
一対の前記第二柱の各々は、前記第二木造梁を梁幅方向の両側から挟持する一対の木造柱部材を有する、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の木造梁の架構構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造梁の架構構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の柱と、一対の柱の上部に、上下に間隔を空けて架設された上下の横架材とを備える木造の門型フレームが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、水平方向に間隔を空けて併設されるダブルビームが知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-234407号公報
【特許文献2】特開平5-133002号公報
【特許文献3】特開2017-503942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、梁のスパンが長くなるに従って、梁の必要断面積が大きくなる。
【0006】
しかしながら、木造の梁は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の梁と比較して、断面積を大きくすることが難しく、スパンを長くすることが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、木造梁のスパンを長くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の木造梁の架構構造は、一対の第一柱に、上下方向に間隔を空けて架設される上下二段の第一木造梁と、上下二段の前記第一木造梁の側方において、一対の第二柱に、上下方向に間隔を空けて架設される上下二段の第二木造梁と、前記第一木造梁と前記第二木造梁とに架設される小梁であって、上下二段の前記第一木造梁の間に配置されて該第一木造梁を連結するとともに、上下二段の前記第二木造梁の間に配置されて該第二木造梁を連結する小梁と、を備える。
【0009】
請求項1に係る木造梁の架構構造によれば、上下二段の第一木造梁は、一対の第一柱に、上下方向に間隔を空けて架設される。また、上下二段の第二木造梁は、上下二段の第一木造梁の側方において、一対の第二柱に、上下方向に間隔を空けて架設される。この上下二段の第一木造梁と上下二段の第二木造梁とには、小梁が架設される。
【0010】
ここで、小梁は、上下二段の第一木造梁の間に配置されて当該第一木造梁を連結する。このように小梁によって上下二段の第一木造梁を連結することにより、小梁の荷重が上下二段の第一木造梁に分散して伝達される。
【0011】
したがって、例えば、上下二段の第一木造梁の断面積を大きくせずに、これらの第一木造梁のスパンを長くすることができる。
【0012】
これと同様に、小梁によって上下二段の第二木造梁を連結することにより、例えば、上下二段の第二木造梁の断面積を大きくせずに、これらの第二木造梁のスパンを長くすることができる。
【0013】
請求項2に記載の木造梁の架構構造は、請求項1に記載の木造梁の架構構造において、互いに対向する前記第一柱及び前記第二柱にそれぞれ架設される第三木造梁と、上段の前記第一木造梁と上段の前記第二木造梁の間に配置され、前記小梁、及び前記第三木造梁に支持される床と、を備える。
【0014】
請求項2に係る木造梁の架構構造によれば、第三木造梁は、互いに対向する第一柱及び第二柱にそれぞれ架設される。また、床は、上段の第一木造梁と上段の第二木造梁との間に配置され、小梁、及び第三木造梁に支持される。つまり、床は、上段の第一木造梁及び第二木造梁には直接支持されず、小梁を介して上下二段の第一木造梁、及び上下二段の第二木造梁に支持されるとともに、第三木造梁に支持される。
【0015】
ここで、床が上段の第一木造梁及び第二木造梁に直接支持される場合、上段の第一木造梁及び第二木造梁に作用する床の荷重が、下段の第一木造梁及び第二木造梁に作用する床の荷重よりも大きくなる。そのため、上段の第一木造梁及び第二木造梁の必要断面積が、下段の第一木造梁及び第二木造梁の必要断面積よりも大きくなる。
【0016】
これに対して本発明では、前述したように、床は、上段の第一木造梁及び第二木造梁には直接支持されず、小梁を介して上下二段の第一木造梁、及び上下二段の第二木造梁に支持される。これにより、床の荷重が、小梁を介して上下二段の第一木造梁に分散して伝達されるとともに、上下二段の第二木造梁に分散して伝達される。
【0017】
そのため、上段の第一木造梁及び第二木造梁の必要断面積を小さくすることができる。したがって、例えば、上段の第一木造梁及び第二木造梁の運搬性や揚重性が向上する。
【0018】
また、床は、小梁だけでなく、第三木造梁にも支持される。これにより、床から、小梁を介して上下二段の第一木造梁、及び上下二段の第二木造梁に作用する床の荷重が低減される。したがって、上下二段の第一木造梁、及び上下二段の第二木造梁の必要断面積をさらに小さくすることができる。
【0019】
請求項3に記載の木造梁の架構構造は、請求項2に記載の木造梁の架構構造において、前記第三木造梁は、互いに対向する前記第一柱及び前記第二柱を両側から挟持する左右二列の木造梁部材を有する。
【0020】
請求項3に係る木造梁の架構構造によれば、第三木造梁は、互いに対向する第一柱及び第二柱を両側から挟持する左右二列の木造梁部材を有する。この左右二列の木造梁部材によって床を支持することにより、左右二列の木造梁部材の必要断面積を小さくしつつ、左右二列のスパンを長くすることができる。
【0021】
請求項4に記載の木造梁の架構構造は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の木造梁の架構構造において、上下二段の前記第一木造梁の各々は、平面視にて、前記小梁の両側に配置されるヒンジ部を有し、上下二段の前記第二木造梁の各々は、平面視にて、前記小梁の両側に配置されるヒンジ部を有する。
【0022】
請求項4に係る木造梁の架構構造によれば、上下二段の第一木造梁の各々は、平面視にて、小梁の両側に配置されるヒンジ部を有する。つまり、上下二段の第一木造梁の各々は、ゲルバー梁とされる。これと同様に、上下二段の第二木造梁の各々は、平面視にて、小梁の両側に配置されるヒンジ部を有する。つまり、上下二段の第二木造梁の各々は、ゲルバー梁とされる。
【0023】
このように上下二段の第一木造梁、及び上下二段の第二木造梁をゲルバー梁とすることにより、上下二段の第一木造梁、上下二段の第二木造梁の応力及びたわみが小さくなる。したがって、上下二段の第一木造梁、上下二段の第二木造梁の必要断面積をさらに小さくすることができる。
【0024】
また、例えば、ヒンジ部の位置によって、上下二段の第一木造梁の曲げ剛性を調整することにより、上下二段の第一木造梁が負担する小梁荷重の負担割合を変更することができる。これと同様に、ヒンジ部の位置によって、上下二段の第二木造梁の曲げ剛性を調整することにより、上下二段の第二木造梁が負担する小梁荷重の負担割合を変更することができる。したがって、上下二段の第一木造梁、及び上下二段の第二木造梁の設計自由度が向上する。
【0025】
請求項5に記載の木造梁の架構構造は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の木造梁の架構構造において、一対の前記第一柱の各々は、前記第一木造梁を梁幅方向の両側から挟持する一対の木造柱部材を有し、一対の前記第二柱の各々は、前記第二木造梁を梁幅方向の両側から挟持する一対の木造柱部材を有する。
【0026】
請求項5に係る木造梁の架構構造によれば、一対の第一柱の各々は、第一木造梁を梁幅方向の両側から挟持する一対の木造柱部材を有する。これにより、各第一柱の一対の木造柱部材の必要断面積を小さくすることができる。
【0027】
また、一対の第二柱の各々は、第二木造梁を梁幅方向の両側から挟持する一対の木造柱部材を有する。これにより、各第二柱の一対の木造柱部材の必要断面積を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、木造梁のスパンを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施形態に係る木造梁の架構構造が適用された構造物を示す平面図である。
【
図2】
図1に示される第一架構を示す立面図、及び上下二段の第一木造梁のモデル図である。
【
図4】
図1の4-4線断面図、及び第三木造梁の木造梁部材のモデル図である。
【
図6】
図2に示される上下二段の第一木造梁と左右二列の木造小梁の接合部を示す縦断面図である。
【
図7】連続する3つの第一架構を示す
図2に対応する立面図、及び上下二段の第一木造梁のモデル図である。
【
図8】(A)~(C)は、
図2に示される第一架構の施工過程を示す立面図である。
【
図9】
図8(A)に示される第一柱の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る木造梁の架構構造について説明する。
【0031】
図1には、本実施形態に係る木造梁の架構構造が適用された構造物10が示されている。なお、各図に示される矢印X方向及び矢印Y方向は、互いに直交する水平二方向を示している。
【0032】
構造物10は、矢印X方向に沿った第一架構20A及び第二架構20Bと、矢印Y方向に沿って配置され、第一架構20A及び第二架構20Bを繋ぐ2つの第三架構50と、第一架構20Aと第二架構20Bとに架設される左右二列の木造小梁60と、第三架構50及び左右二列の木造小梁60に支持された木造床70とを備えている。
【0033】
なお、
図1では、木造床70の外形が、二点鎖線で示されている。また、木造小梁60は、小梁の一例であり、木造床70は、床の一例である。
【0034】
(第一架構)
第一架構20Aは、一対の第一柱22Aと、一対の第一柱22Aに架設された上下二段の第一木造梁30Aとを有している。一対の第一柱22Aは、第一木造梁30Aの材軸方向(矢印X方向)に間隔を空けて配置されている。各第一柱22Aは、一対の木造柱部材24を有する二重柱とされている。
【0035】
一対の木造柱部材24は、木材や、集成材等の木質材によって形成されている。また、一対の木造柱部材24は、角柱状に形成されており、第一木造梁30Aの梁幅方向(矢印Y方向)に間隔を空けて配置されている。この一対の木造柱部材24の間に、上下二段の第一木造梁30Aが配置されている。
【0036】
上下二段の第一木造梁30Aは、木材や、集成材等の木質材によって形成されている。各第一木造梁30Aは、通し梁とされており、一対の木造柱部材24の間を貫通している。また、各第一木造梁30Aは、梁幅方向(矢印Y方向)の両側から、一対の木造柱部材24によって挟持されている。なお、各第一木造梁30Aと一対の木造柱部材24とは、例えば、図示しない通しボルト等によって接合(ピン接合)されている。
【0037】
図2に示されるように、上下二段の第一木造梁30Aは、断面矩形状に形成されており、上下方向(梁成方向)に間隔を空けて配置されている。各第一木造梁30Aは、一対の第一柱22Aにそれぞれ支持される仕口梁部材32と、仕口梁部材32を繋ぐ中間梁部材34とを有している。
【0038】
仕口梁部材32は、一対の木造柱部材24の間に配置されている。また、仕口梁部材32は、一対の木造柱部材24から両側へ張り出した状態で、その材軸方向の中央部が一対の木造柱部材24に支持(接合)されている。
【0039】
中間梁部材34は、一対の第一柱22Aにそれぞれ支持された仕口梁部材32の間に配置されている。
図3に示されるように、中間梁部材34と仕口梁部材32とは、各々の端面同士を突き合せた状態で配置されている。また、中間梁部材34の端部と仕口梁部材32の端部には、スリット36がそれぞれ形成されている。スリット36には、中間梁部材34と仕口梁部材32とに亘る接合プレート42が挿入されている。
【0040】
接合プレート42は、鋼板等によって形成されており、厚み方向を第一木造梁30Aの梁幅方向(矢印Y方向)として配置されている。この接合プレート42は、複数のドリフトピン44によって中間梁部材34及び仕口梁部材32にそれぞれ接合(ピン接合)されている。これにより、上下二段の第一木造梁30Aが、ゲルバー梁とされている。また、仕口梁部材32と中間梁部材34との接合部は、ヒンジ部40とされている。
【0041】
なお、仕口梁部材32と中間梁部材34との接合構造は、接合プレート42及びドリフトピン44に限らず、適宜変更可能である。
【0042】
(第二架構)
図1に示されるように、第二架構20Bは、第一架構20Aの側方に配置されている。換言すると、第二架構20Bは、第一架構20Aに対して第一木造梁30Aの梁幅方向(矢印Y方向)の一方側に配置されている。この第二架構20Bは、一対の第二柱22Bと、一対の第二柱22Bに架設された上下二段の第二木造梁30Bとを有している。
【0043】
一対の第二柱22Bは、一対の第一柱22Aの側方に配置されている。この一対の第二柱22Bと一対の第一柱22Aとは、第一木造梁30Aの梁幅方向にそれぞれ対向している。各第二柱22Bは、一対の木造柱部材24を有している。なお、第二柱22Bとは、第一柱22Aと同様の構成とされているため、詳細の説明を省略する。
【0044】
上下二段の第二木造梁30Bは、上下二段の第一木造梁30Aの側方に配置されている。この上下二段の第二木造梁30Bと上下二段の第一木造梁30Aとは、梁幅方向(矢印Y方向)にそれぞれ対向している。また、上下二段の第二木造梁30Bは、一対の第二柱22Bにそれぞれ支持された仕口梁部材32と、仕口梁部材32を繋ぐ中間梁部材34とを有している。なお、上下二段の第二木造梁30Bは、上下二段の第一木造梁30Aと同様の構成とされているため、詳細の説明を適宜省略する。
【0045】
(第三架構)
一対の第三架構50は、平面視にて、第一架構20A及び第二架構20Bと直交又は略直交する方向(矢印Y方向)に沿って配置されている。また、一対の第三架構50は、第一木造梁30Aの材軸方向(矢印X方向)に互いに対向している。
【0046】
第三架構50は、矢印X方向に互いに対向する第一柱22A及び第二柱22Bと、第一柱22A及び第二柱22Bに架設された第三木造梁52を有している。なお、第三架構50と、第一架構20A及び第二架構20Bとは、第一柱22A及び第二柱22Bを共有している。
【0047】
第三木造梁52は、通し梁とされている。また、第三木造梁52は、左右二列の木造梁部材54を有する二列梁とされている。左右二列の木造梁部材54は、木材や、集成材等の木質材によって形成されている。また、左右二列の木造梁部材54は、断面矩形状に形成されている。これらの木造梁部材54は、第一木造梁30Aの材軸方向(矢印X方向)に間隔を空けて配置されるとともに、互いに略平行に配置されている。
【0048】
左右二列の木造梁部材54は、第一柱22A及び第二柱22Bの両側に配置されている。この左右二列の木造梁部材54によって、第一柱22A及び第二柱22Bの一対の木造梁部材54が、第一木造梁30Aの材軸方向の両側から挟持されている。なお、左右二列の木造梁部材54と一対の木造梁部材54とは、図示しない通しボルト等によって接合されている。
【0049】
図4に示されるように、左右二列の木造梁部材54の一端側は、上下二段の第一木造梁30Aの間に配置されており、これらの第一木造梁30Aによって上下方向(梁成方向)の両側から挟持されている。また、左右二列の木造梁部材54の他端側は、上下二段の第二木造梁30Bの間に配置されており、これらの第二木造梁30Bによって上下方向(梁成方向)の両側から挟持されている。
【0050】
(木造小梁)
図1に示されるように、左右二列の木造小梁60は、上下二段の第一木造梁30Aと上下二段の第二木造梁30Bとに架設されている。各木造小梁60は、木材や、集成材等の木質材によって形成されている。また、左右二列の木造小梁60は、断面矩形状に形成されている。これらの木造小梁60は、第一木造梁30A及び第二木造梁30Bの材軸方向に間隔を空けて配置されるとともに、互いに略平行に配置されている。
【0051】
図5に示されるように、左右二列の木造小梁60の一端側は、上下二段の第一木造梁30Aの間に配置されており、これらの第一木造梁30Aを連結している。また、左右二列の木造小梁60の他端側は、上下二段の第二木造梁30Bの間に配置されており、これらの第二木造梁30Bを連結している。
【0052】
なお、木造小梁60及び第一木造梁30Aの接合構造と、木造小梁60及び第二木造梁30Bの接合構造は、同様とされている。そのため、以下では、木造小梁60及び第一木造梁30Aの接合構造について説明し、木造小梁60及び第二木造梁30Bの接合構造の説明は、適宜省略する。
【0053】
図6に示されるように、左右二列の木造小梁60の一端側は、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34の間に配置されている。また、左右二列の木造小梁60と上下二段の第一木造梁30Aとは、引きボルト62及びナット64によって接合されている。
【0054】
具体的には、上下二段の中間梁部材34、及び木造小梁60には、上下方向に貫通する貫通孔34H,60Hがそれぞれ形成されている。これらの貫通孔34H,60Hに引きボルト62が挿入されている。この状態で、引きボルト62の両端部にナット64を締め込むことにより、中下二段の中間梁部材34と木造小梁60とが、せん断力を伝達可能に接合(ピン接合)されている。
【0055】
なお、上下二段の中間梁部材34、及び木造小梁60の接合構造は、引きボルト62及びナット64に限らず、例えば、ヒンジ部40と同様に、接合プレートを用いたドリフトピン接合であっても良い。
【0056】
(床)
図1に示されるように、木造床70は、例えば、木材や集成材、CLT、LVL等の木質材で形成された木造面材によって形成されている。また、木造床70は、平面視にて、矩形状に形成されている。この木造床70は、上段の第一木造梁30Aと上段の第二木造梁30Bとの間に配置されている。また、木造床70は、一対の第三木造梁52の一方の木造梁部材54に亘って配置されている。なお、木造床70の上には、例えば、二重床が形成される。
【0057】
図4及び
図5に示されるように、左右二列の木造小梁60の上面(天端)と、第三木造梁52の左右二列の木造梁部材54の上面(天端)とは、同じ高さに配置されている。この左右二列の木造小梁60の上面、各第三木造梁52の一方の木造梁部材54の上面に、木造床70が載置(支持)されている。
【0058】
図5に示されるように、木造床70の端面と、上段の第一木造梁30Aの側面との間には、隙間Sが形成されている。これと同様に、木造床70の端面と、上段の第二木造梁30Bの側面との間には、隙間Sが形成されている。
【0059】
これにより、木造床70と上段の第一木造梁30A及び上段の第二木造梁30Bとは、構造的に縁が切られている。そのため、木造床70の荷重は、左右二列の木造小梁60を介して、上下二段の第一木造梁30A及び上下二段の第二木造梁30Bに伝達される。
【0060】
(第一木造梁の曲げモーメントの調整方法)
図2に示されるように、本実施形態では、左右二列の木造小梁60から、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34に作用する曲げモーメントが同じ又は同等になるように、上下二段の第一木造梁30Aのヒンジ部40の位置が調整されている。なお、上下二段の第二木造梁30Bのヒンジ部40の配置は、上下二段の第一木造梁30Aのヒンジ部40の位置と同様とされている。
【0061】
具体的には、平面視にて、上段の第一木造梁30Aのヒンジ部40が、下段の第一木造梁30Aのヒンジ部40よりも左右二列の木造小梁60側に配置されている。これにより、上段の第一木造梁30Aの中間梁部材34が、下段の第一木造梁30Aの中間梁部材34よりも短くなっている。つまり、上段の第一木造梁30Aの中間梁部材34の曲げ剛性が、下段の第一木造梁30Aの中間梁部材34の曲げ剛性よりも高くなっている。
【0062】
このように上下二段の中間梁部材34の剛性差を利用して、左右二列の木造小梁60から、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34に作用する曲げモーメントが同じ又は同等になるように調整されている。
【0063】
ここで、左右二列の木造小梁60から、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34に作用する曲げモーメントについて補足する。
【0064】
図2には、上下二段の第一木造梁30Aのモデル図が示されている。このモデル図では、上下二段の第一木造梁30Aと左右二列の木造小梁60とを接合する引きボルト62の軸剛性を評価し、左右二列の木造小梁60を、上下二段の第一木造梁30Aを連結するバネKとしてモデル化している。また、本実施形態では、上下二段の第一木造梁30Aが通し梁とされている。そのため、モデル図では、上下二段の第一木造梁30Aの端部の支持条件を固定としてモデル化している。
【0065】
図2に示されるモデル図に基づくと、上段の第一木造梁30Aの中間梁部材34に作用する曲げモーメントM
U、及び下段の第一木造梁30Aの中間梁部材34に作用する曲げモーメントM
Lは、下記式(1),(2)から求められる。
【0066】
なお、モデル図におけるPは、左右二列の木造小梁60から上下二段の木造小梁60に作用する鉛直荷重である。また、左右二列の木造小梁60から上段の第一木造梁30Aに作用する鉛直荷重をP
Uとし、左右二列の木造小梁60から下段の第一木造梁30Aに作用する鉛直荷重をP
Lとする(P=P
U+P
L)。さらに、寸法a,cは、第一柱22の柱芯からヒンジ部40までの距離を示し、寸法b,dは、2つのヒンジ部40間の距離を示している。
【数1】
【0067】
上記式(1),(2)より、曲げモーメントMU,MLが等しく又は同等になるように、ヒンジ部40の位置を調整することにより、上下二段の第一木造梁30Aの断面形状及び断面積を同じにすることができる。
【0068】
なお、曲げモーメントMU,MLが等しく又は同等になるように、第一柱22Aに対する第一木造梁30Aの固定度を調整しても良い。第一柱22Aに対する第一木造梁30Aの固定度は、例えば、第一柱22Aと第一木造梁30Aと接合する通しボルトの本数を増減することにより調整される。
【0069】
また、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34のたわみδ
U,δ
Uは、下記式(3)及び式(4)から求められ、また、下記式(3)及び式(4)から式(5)の関係が得られる。この式(5)から、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34が負担する曲げモーメントM
U,M
Lの負担割合を適宜調整することも可能である。
【数2】
ただし、
k
U:上段の第一木造梁の中間梁部材の曲げ剛性より求まる鉛直バネ定数
k
L:下段の第一木造梁の中間梁部材の曲げ剛性より求まる鉛直バネ定数
E :第一木造梁の中間梁部材のヤング率
I
U:上段の第一木造梁の中間梁部材の断面二次モーメント
I
L:下段の第一木造梁の中間梁部材の断面二次モーメント
である。
【0070】
さらに、本実施形態では、左右二列の木造小梁60から、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34に作用する曲げモーメントと、木造床70から、第三木造梁52の一方の木造梁部材54に作用する曲げモーメントが同じ又は同等になるように、上下二段の第一木造梁30Aのヒンジ部40の位置が調整されている。
【0071】
ここで、第三木造梁52の一方の木造梁部材54の材軸方向の中央部に作用する曲げモーメントについて補足する。
【0072】
図4には、第三木造梁52の左右二列の木造梁部材54のうち、一方の木造梁部材54のモデル図が示されている。このモデル図では、木造梁部材54の端部の支持条件を単純支持(ピン接合)としてモデル化している。
【0073】
図4に示されるモデル図に基づくと、木造床70から、第三木造梁52の一方の木造梁部材54の材軸方向の中央部に作用する曲げモーメントM
Mは、下記式(6)から求められる。なお、モデル図におけるwは、木造床70から第三木造梁52の一方の木造梁部材54に作用する等分布荷重である。また、寸法Lは、木造梁部材54(第三木造梁52)の支持スパン(第一柱22Aの柱芯と第二柱22Bの柱芯との距離)である。
【数3】
【0074】
上記式(1),(2),(6)より、曲げモーメントMU,ML,MMが等しく又は同様になるように、上下二段の第一木造梁30Aのヒンジ部40の位置を調整することにより、上下二段の第一木造梁30A、及び第三木造梁52の木造梁部材54の断面形状及び断面積を同じにすることができる。
【0075】
なお、上下二段の第一木造梁30Aが三連梁(連続梁)の場合、そのモデル図は、
図7のようになる。なお、
図7では、説明の便宜上、4本の第一柱22Aのうち、左右両端の第一柱22Aを第一柱22AEとする。また、3つの第一架構20Aのうち、左右両側の第一架構20Aの第一木造梁30Aを、第一木造梁30AEとする。
【0076】
第一木造梁30A,30AEが三連梁の場合、左右両端の第一柱22AEでは、第一木造梁30AEが連続しない。そのため、第一木造梁30AEにおける第一柱22AE側にヒンジ部を設けると、当該第一木造梁30AEが不安定となる。そこで、第一木造梁30AEにおける第一柱22AE側には、ヒンジ部が設けられていない。これにより、第一木造梁30AEを安定させることができる。
【0077】
(構造物の施工方法)
次に、本実施形態に係る木造梁の架構構造が適用された構造物10の施工方法の一例について説明する。
【0078】
図8(A)には、一対の第一柱22Aが立てられた状態が示されている。各第一柱22Aには、下段の第一木造梁30Aの仕口梁部材32が予め接合されている。なお、図示を省略するが、一対の第二柱22Bも立てられている。各第二柱22Bには、下段の第二木造梁30Bの仕口梁部材32が予め接合されている。
【0079】
この状態から、先ず、下段の第一木造梁30A、下段の第二木造梁30Bを施工する。具体的には、図示しない揚重機によって、下段の第一木造梁30Aの中間梁部材34を吊り上げ、
図8(B)に示されるように、左右の仕口梁部材32の間に配置する。そして、中間梁部材34と仕口梁部材32とを接合プレート42(
図3参照)を介して接合する。また、下段の第一木造梁30Aと同様に、下段の第二木造梁30Bも施工する。
【0080】
次に、互いに対向する第一柱22A及び第二柱22Bに第三木造梁52を架設する。具体的には、第一柱22Aの一対の木造柱部材24の両側に、第三木造梁52の左右二列の木造梁部材54をそれぞれ配置し、下段の第一木造梁30Aの上にそれぞれ載置する。この状態で、一対の木造柱部材24と左右二列の木造梁部材54とをそれぞれ接合する。これと同様に、第二柱22Bの一対の木造柱部材24と左右二列の木造梁部材54とをそれぞれ接合する。
【0081】
次に、左右二列の木造小梁60、及び木造床70を施工する。具体的には、木造床70の下面には、左右二列の木造小梁60が予め接合されている。この木造床70を図示しない揚重機によって吊り上げ、
図8(C)に示されるように、左右二列の木造小梁60の一端側を、下段の第一木造梁30Aの中間梁部材34の上に載置するとともに、左右二列の木造小梁60の他端側を、下段の第二木造梁30Bの中間梁部材34(
図4参照)の上に載置する。
【0082】
また、木造床70の左右両側の端部を、左右両側の第三木造梁52の一方の木造梁部材54の上に載置する。この状態で、木造床70の左右両側の端部と、左右両側の第三木造梁52の一方の木造梁部材54とをそれぞれ接合する。
【0083】
次に、上段の第一木造梁30A、及び上段の第二木造梁30Bを施工する。具体的には、第一柱22Aの一対の木造柱部材24の間に、上段の第一木造梁30Aの仕口梁部材32を挿入し、これらの木造柱部材24と仕口梁部材32とをそれぞれ接合する。
【0084】
次に、図示しない揚重機によって、上段の第一木造梁30Aの中間梁部材34を吊り上げ、仕口梁部材32の間に配置する。そして、中間梁部材34と仕口梁部材32とを接合プレート42(
図3参照)を介して接合する。
【0085】
次に、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34と、左右二列の木造小梁60とを引きボルト62及びナット64(
図6参照)によって接合する。これと同様に、上段の第二木造梁30Bも施工する。これにより、構造物10(
図1参照)が施工される。
【0086】
このように本実施形態では、木造床70の下面に左右二列の木造小梁60を予め接合してユニット化することにより、施工性を向上させることができる。
【0087】
なお、
図9に示される例では、二階層分の第一柱22Aが一節(一節二層)とされている。この第一柱22Aには、二階層分の上下二段の第一木造梁30Aの仕口梁部材32が予め接合されている。
【0088】
また、
図9に示される例では、第三木造梁52の左右二列の木造梁部材54が、第一木造梁30Aと同様に、ゲルバー梁とされている。つまり、木造梁部材54は、仕口梁部材56と、図示しない中間梁部材とを有している。そして、第一柱22Aには、二階層分の第三木造梁52の仕口梁部材32,56が予め接合されている。
【0089】
このように第一柱22Aに仕口梁部材32,56を予め接合してユニット化することにより、施工性をさらに向上させることができる。
【0090】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0091】
上下二段の第一木造梁30Aは、一対の第一柱22Aに、上下方向に間隔を空けて架設されている。また、上下二段の第二木造梁30Bは、上下二段の第一木造梁30Aの側方において、一対の第二柱22Bに、上下方向に間隔を空けて架設されている。この上下二段の第一木造梁30Aと上下二段の第二木造梁30Bとには、左右二列の木造小梁60が架設されている。
【0092】
ここで、
図2に示されるように、左右二列の木造小梁60は、上下二段の第一木造梁30Aの間に配置されて当該第一木造梁30Aを連結している。このように左右二列の木造小梁60によって上下二段の第一木造梁30Aを連結することにより、左右二列の木造小梁60の荷重Pが、上下二段の第一木造梁30Aに分散して伝達される。
【0093】
したがって、上下二段の第一木造梁30Aの断面積を大きくせずに、これらの第一木造梁30Aのスパンを長くすることができる。
【0094】
これと同様に、左右二列の木造小梁60によって上下二段の第二木造梁30Bを連結することにより、上下二段の第二木造梁30Bの断面積を大きくせずに、これらの第二木造梁30Bのスパンを長くすることができる。
【0095】
また、木造床70は、上段の第一木造梁30Aと上段の第二木造梁30Bとの間に配置されており、左右二列の木造小梁60、及び第三木造梁52の一方の木造梁部材54に支持されている。つまり、木造床70は、上段の第一木造梁30A及び第二木造梁30Bには直接支持されず、左右二列の木造小梁60を介して上下二段の第一木造梁30A、及び上下二段の第二木造梁30Bに支持されるとともに、第三木造梁52の一方の木造梁部材54に支持されている。
【0096】
ここで、木造床70が上段の第一木造梁30Aに直接支持される場合、上段の第一木造梁30Aに作用する木造床70の荷重が、下段の第一木造梁30Aに作用する木造床70の荷重よりも大きくなる。そのため、上段の第一木造梁30Aの必要断面積が、下段の第一木造梁30Aの必要断面積よりも大きくなる。
【0097】
これに対して本実施形態では、前述したように、木造床70は、上段の第一木造梁30Aには直接支持されず、左右二列の木造小梁60を介して上下二段の第一木造梁30Aに支持されている。これにより、木造床70の荷重Pが、左右二列の木造小梁60を介して上下二段の第一木造梁30Aに分散して伝達される。
【0098】
そのため、上段の第一木造梁30Aの必要断面積を小さくすることができる。したがって、例えば、上段の第一木造梁30Aの運搬性や揚重性が向上する。
【0099】
これと同様に、木造床70は、上段の第二木造梁30Bには直接支持されず、左右二列の木造小梁60を介して上下二段の第二木造梁30Bに支持されている。そのため、上段の第二木造梁30Bの必要断面積を小さくすることができる。したがって、例えば、上段の第二木造梁30Bの運搬性や揚重性が向上する。
【0100】
また、木造床70は、左右二列の木造小梁60だけでなく、第三木造梁52にも支持されている。これにより、木造床70から、左右二列の木造小梁60を介して上下二段の第一木造梁30A、及び上下二段の第二木造梁30Bに作用する木造床70の荷重が低減される。したがって、上下二段の第一木造梁30A、及び上下二段の第二木造梁30Bの必要断面積をさらに小さくすることができる。
【0101】
さらに、第三木造梁52は、互いに対向する第一柱22A及び第二柱22Bを両側から挟持する左右二列の木造梁部材54を有している。この左右二列の木造梁部材54によって木造床70を支持することにより、左右二列の木造梁部材54の必要断面積を小さくしつつ、左右二列の木造梁部材54のスパンを長くすることができる。
【0102】
また、上下二段の第一木造梁30Aの各々は、平面視にて、左右二列の木造小梁60の両側に配置されるヒンジ部40を有している。つまり、上下二段の第一木造梁30Aの各々は、ゲルバー梁とされている。これと同様に、上下二段の第二木造梁30Bの各々は、平面視にて、左右二列の木造小梁60の両側に配置されるヒンジ部40を有している。つまり、上下二段の第二木造梁30Bの各々は、ゲルバー梁とされている。
【0103】
このように上下二段の第一木造梁30A、及び上下二段の第二木造梁30Bをゲルバー梁とすることにより、上下二段の第一木造梁30A、上下二段の第二木造梁30Bの応力及びたわみが小さくなる。したがって、上下二段の第一木造梁30A、及び上下二段の第二木造梁30Bの必要断面積をさらに小さくすることができる。
【0104】
また、例えば、ヒンジ部40の位置によって、上下二段の第一木造梁30Aにおける中間梁部材34の曲げ剛性をそれぞれ調整することにより、上下二段の第一木造梁30Aが負担する木造小梁60荷重P(
図2参照)の負担割合を変更することができる。これと同様に、ヒンジ部40の位置によって、上下二段の第二木造梁30Bにおける中間梁部材34の曲げ剛性をそれぞれ調整することにより、上下二段の第二木造梁30Bが負担する木造小梁60の荷重の負担割合を変更することができる。
【0105】
したがって、上下二段の第一木造梁30A、及び上下二段の第二木造梁30Bの設計自由度が向上する。
【0106】
また、本実施形態では、上下の第一木造梁30Aの断面形状及び断面積が同じとされている。さらに、上段の第一木造梁30Aのヒンジ部40は、平面視にて、下段の第一木造梁30Aのヒンジ部40よりも木造小梁60側に配置されている。
【0107】
これにより、上段の第一木造梁30Aの中間梁部材34が、下段の第一木造梁30Aの中間梁部材34よりも短くなっている。つまり、上段の第一木造梁30Aの中間梁部材34の曲げ剛性が、下段の第一木造梁30Aの中間梁部材34の曲げ剛性よりも高くなっている。この上下二段の第一木造梁の中間梁部材34同士が、左右二列の木造小梁60によって連結されている。
【0108】
ここで、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34の曲げ剛性が同じ場合、上段の中間梁部材34よりも下段の中間梁部材34に作用する木造小梁60の荷重PLが大きくなる。そのため、上段の中間梁部材34よりも下段の中間梁部材34の必要断面積が大きくなる。
【0109】
これに対して本実施形態では、前述したように、上段の中間梁部材34の曲げ剛性が、下段の中間梁部材34の曲げ剛性よりも高くなっている。これにより、上段の中間梁部材34に作用する木造小梁60の荷重PUと、下段の中間梁部材34に作用する木造小梁60の荷重PLとの差を小さくし、又は差をなくすことができる。
【0110】
したがって、上下二段の第一木造梁30Aの必要断面積を同じにすることができる。これと同様に、上下二段の第二木造梁30Bの必要断面積を同じにすることができる。
【0111】
さらに、上下二段の第一木造梁30Aの中間梁部材34、及び上下二段の第二木造梁30Bの中間梁部材34に作用する曲げモーメントMU,ML(式(1),(2)参照)と、第三木造梁52の一方の木造梁部材54に作用する曲げモーメントMM(式(6)参照)を同一又は同等にすることにより、上下二段の第一木造梁30A、上下二段の第二木造梁30B、及び第三木造梁52の左右二列の木造梁部材54の必要断面積を同じにすることができる。
【0112】
また、一対の第一柱22Aの各々は、第一木造梁30Aを梁幅方向の両側から挟持する一対の木造柱部材24を有している。これにより、一対の木造柱部材24の必要断面積を小さくすることができる。
【0113】
これと同様に、一対の第二柱22Bの各々は、第二木造梁30Bを梁幅方向の両側から挟持する一対の木造柱部材24を有している。これにより、一対の木造柱部材24の必要断面積を小さくすることができる。
【0114】
このように本実施形態では、第一柱22A、第二柱22B、第一木造梁30A、第二木造梁30B、及び第三木造梁52の必要断面積を小さくすることができる。したがって、第一架構20A、第二架構20B、及び第三架構50の施工性が向上する。
【0115】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0116】
上記実施形態では、平面視にて、上段の第一木造梁30Aのヒンジ部40が、下段の第一木造梁30Aのヒンジ部40よりも木造小梁60側に配置されている。しかし、平面視にて、上段の第一木造梁30Aのヒンジ部40は、下段の第一木造梁30Aのヒンジ部40と同じ位置に配置されても良い。また、平面視にて、下段の第一木造梁30Aのヒンジ部40が、上段の第一木造梁30Aのヒンジ部40よりも左右二列の木造小梁60側に配置されても良い。このことは、第二木造梁30Bについても同様である。
【0117】
また、第一木造梁30Aのヒンジ部40は、適宜省略可能である。つまり、第一木造梁30Aは、ゲルバー梁に限らない。このことは、第二木造梁30Bについても同様である。
【0118】
また、上記実施形態では、木造小梁60が、2本とされている。しかし、木造小梁60は、少なくとも1本あれば良い。また、上記実施形態における小梁は、木造に限らず、鉄骨造や鉄筋コンクリート造等であっても良い。
【0119】
また、上記実施形態では、第三木造梁52が、左右二列の木造梁部材54によって構成されている。しかし、第三木造梁52は、少なくとも1本の木造梁部材によって構成することができる。また、第三架構50の梁は、木造に限らず、鉄骨造や鉄筋コンクリート造等であっても良い。
【0120】
また、上記実施形態では、第一柱22A及び第二柱22Bが、一対の木造柱部材24によって構成されている。しかし、第一柱22A及び第二柱22Bは、少なくとも1本の木造柱部材によって構成することができる。
【0121】
また、上記実施形態の床は、木造床70とされている。しかし、床は、木造に限らず、コンクリート造等であっても良い。また、床には、ALC等の種々の床材を用いることができる。
【0122】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0123】
22A 第一柱
22B 第二柱
24 木造柱部材
30A 第一木造梁
30B 第二木造梁
40 ヒンジ部
52 第三木造梁
54 木造梁部材
60 木造小梁(小梁)
70 木造床(床)