(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140102
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】鋼管の加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 7/16 20060101AFI20220915BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220915BHJP
B24B 9/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B24B7/16 F
B24B41/06 L
B24B9/00 601F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040759
(22)【出願日】2021-03-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-06
(71)【出願人】
【識別番号】316000172
【氏名又は名称】株式会社エム・エス・ケー
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】松原 香
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 豊
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
3C049
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034AA13
3C034BB13
3C034BB75
3C034BB93
3C034CA01
3C034CB01
3C034CB08
3C034DD20
3C043BC02
3C043CC04
3C043DD01
3C043DD05
3C049AA04
3C049AA12
3C049AB04
3C049CA01
3C049CA04
3C049CB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の加工面を有する鋼管を載置部にて固定した状態にて所望の方向に回転移動させ、グラインダの加工位置を調整しながら切削加工処理を施すことができる鋼管の加工装置を提供する。
【解決手段】鋼管の加工装置10では、固定機構12は、その上面に鋼管11を固定した状態にて回転することで、グラインダ支持機構14の手前に鋼管11の加工面を容易に設置することが出来る。この構造により、1台の加工装置10にて、異なる加工面に対して切削加工処理を施すことが出来ると共に、異なる加工面に切削加工処理を施す度に、ホイスト装置等を用いて鋼管11を固定機構12上面に載置する作業が不要となり、作業時間が短縮され、作業効率が向上される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも鋼管に形成されたフレア加工面及びバーリング加工面に対してグラインダによる切削加工を施す鋼管の加工装置であって、
前記鋼管を固定する固定機構と、
前記グラインダのディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に対して切削可能な位置に支持するグラインダ支持機構と、を備え、
前記固定機構は、前記フレア加工面または前記バーリング加工面が前記グラインダ支持機構の近傍に位置するように、前記鋼管を固定した状態にて回転可能であり、
前記グラインダ支持機構は、前記ディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に沿って回転移動させながら前記グラインダによる切削加工を施すことを特徴とする鋼管の加工装置。
【請求項2】
前記固定機構は、
前記鋼管を支持する載置部と、
前記鋼管を載置し、前記載置部に対して前記鋼管の延在方向に渡り少なくとも2箇所以上配設される第1の固定部と、
前記鋼管を上面から押圧し、前記第1の固定部との間に前記鋼管を挟持する第2の固定部と、を有し、
前記第2の固定部は、前記載置部の天面に対して上下方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管の加工装置。
【請求項3】
前記第1の固定部は、前記鋼管の前記延在方向に回転可能な一対の第1のローラ部を有し、
前記第1のローラ部の回転軸は、前記延在方向と略直交方向に配設されると共に、前記天面に対して略15度傾斜した状態となることを特徴とする請求項2に記載の鋼管の加工装置。
【請求項4】
前記第1の固定部は、前記第1のローラ部の間に配設されると共に、前記載置部に支持された前記鋼管をその周方向に回転させる第2のローラ部を有し、
前記第2の固定部は、前記載置部に支持された前記鋼管をその周方向に回転させるローラ部を有し、
前記ローラ部は、前記鋼管の最頂部と接触し、前記第2のローラ部は、前記鋼管の最底部と接触することを特徴とする請求項3に記載の鋼管の加工装置。
【請求項5】
前記グラインダ支持機構は、前記ディスクと前記フレア加工面または前記バーリング加工面との離間距離が前記ディスクの先端の最大の振幅幅より狭くなる非接触位置に前記ディスクが位置するように、前記グラインダを支持し、
前記ディスクは、その回転時において、前記非接触位置から、前記ディスクの振幅動作により前記フレア加工面または前記バーリング加工面との接触状態と非接触状態とを繰り返すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鋼管の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管の加工装置に関し、特に、複数の加工面を有する鋼管を載置部にて固定した状態にて所望の方向に回転移動させ、グラインダの加工位置を調整しながら切削加工処理を施すことができる鋼管の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鋼管のフランジ部を研削する端面加工装置100として、
図9に示す加工装置が知られている。
図9は、従来の端面加工装置100を説明する側面図である。
【0003】
図9に示す如く、端面加工装置100は、主に、鋼管101を固定する固定機構102と、鋼管101の端面を研削加工するグラインダ103と、グラインダ103を支持するグラインダ支持機構104と、グラインダ103と鋼管101の端面との離間距離を測定する原点検出接触センサ105と、グラインダ支持機構104を移動させる搬送機構106と、制御部(図示せず)と、を備える。
【0004】
端面加工装置100では、上記グラインダ支持機構104等を介して、鋼管101の端面であるフランジ部107の所望の領域にグラインダ103を配置した後、固定機構102の回転部をゆっくりと回転させることで、鋼管101の端面が回転する。そして、グラインダ103のディスク103Aが、鋼管101の端面に対して接触状態と非接触状態を繰り返すことで、鋼管101の端面の平坦加工処理が施される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、従来の分岐管継手の製造方法として、
図10A及び
図10Bに示す製造方法が知られている。
図10Aは、従来の分岐管継手120の製造方法を説明する側面図である。
図10Bは、従来の分岐管継手の製造方法により形成された分岐管継手を説明する斜視図である。
【0006】
図10Aに示す如く、バーリング加工装置121は、主に、鋼管122の両端部を把持するクランプ123と、バーリング加工を施すバーリングボンチ124と、鋼管122のバーリング加工領域を加熱する高周波加熱コイル125と、を備える。
【0007】
分岐管継手120の製造方法としては、鋼管122をクランプ123にて固定し、鋼管122の内部にバーリングボンチ124をセットした後、高周波加熱コイル125を稼働させ、バーリング加工を施す領域の鋼管122を加熱する。そして、鋼管122が設定温度まで加熱された後、バーリングボンチ124を上昇させ、鋼管122にバーリング加工を施す。その後、鋼管122を冷却させることで、
図10Bに示す如く、鋼管122の所望の領域に枝管部126が形成された分岐管継手120が形成される(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6587261号公報
【特許文献2】特開昭60-177913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図9に示す端面加工装置100では、固定機構102が鋼管101の延在方向の一端部を固定し、固定機構102の回転部が回転することで、鋼管101が回転する。そして、鋼管101の他端部側に形成されたフランジ部107に対して、グラインダ103を用いて平坦加工処理を施している。つまり、端面加工装置100は、鋼管101の延在方向の端部に形成された加工面に対して加工処理を施す装置である。
【0010】
一方、
図10A及び
図10Bに示すように、バーリング加工装置121にて形成される鋼管122の枝管部126は、鋼管122の延在方向の端部ではなく、鋼管122の延在方向の中間部に形成される。そのため、端面加工装置100では、鋼管122の枝管部126に対しては、グラインダ103を用いた加工処理が施せないという課題がある。
【0011】
つまり、鋼管101が、ユニット配管として用いられる際には、鋼管101には、フレア加工によるフランジ部107及びバーリング加工による枝管部126とが形成されるが、1台の端面加工装置100では、上記2つの加工面に対して加工処理を施すことが出来ない。その結果、フランジ部107と枝管部126に対して加工処理を施す際には、鋼管101をそれぞれ専用の加工装置に設置し、加工処理を施す必要があり、その都度、鋼管101の設置作業が必要となり作業時間が増加し、生産性が悪いという課題がある。
【0012】
尚、鋼管101の設置作業では、鋼管101は重量物であり、その安全性を確保した作業が要求されるため、鋼管101の安全保持機構対策及びその対策に基づく作業工数の増加により、上記作業時間の増加の要因となる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の加工面を有する鋼管を載置部にて固定した状態にて所望の方向に回転移動させ、グラインダの加工位置を調整しながら切削加工処理を施すことができる鋼管の加工装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の鋼管の加工装置では、少なくとも鋼管に形成されたフレア加工面及びバーリング加工面に対してグラインダによる切削加工を施す鋼管の加工装置であって、前記鋼管を固定する固定機構と、前記グラインダのディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に対して切削可能な位置に支持するグラインダ支持機構と、を備え、前記固定機構は、前記フレア加工面または前記バーリング加工面が前記グラインダ支持機構の近傍に位置するように、前記鋼管を固定した状態にて回転可能であり、前記グラインダ支持機構は、前記ディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に沿って回転移動させながら前記グラインダによる切削加工を施すことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記固定機構は、前記鋼管を支持する載置部と、前記鋼管を載置し、前記載置部に対して前記鋼管の延在方向に渡り少なくとも2箇所以上配設される第1の固定部と、前記鋼管を上面から押圧し、前記第1の固定部との間に前記鋼管を挟持する第2の固定部と、を有し、前記第2の固定部は、前記載置部の天面に対して上下方向に移動可能であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記第1の固定部は、前記鋼管の前記延在方向に回転可能な一対の第1のローラ部を有し、前記第1のローラ部の回転軸は、前記延在方向と略直交方向に配設されると共に、前記天面に対して略15度傾斜した状態となることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記第1の固定部は、前記第1のローラ部の間に配設されると共に、前記載置部に支持された前記鋼管をその周方向に回転させる第2のローラ部を有し、前記第2の固定部は、前記載置部に支持された前記鋼管をその周方向に回転させるローラ部を有し、前記ローラ部は、前記鋼管の最頂部と接触し、前記第2のローラ部は、前記鋼管の最底部と接触することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記グラインダ支持機構は、前記ディスクと前記フレア加工面または前記バーリング加工面との離間距離が前記ディスクの先端の最大の振幅幅より狭くなる非接触位置に前記ディスクが位置するように、前記グラインダを支持し、前記ディスクは、その回転時において、前記非接触位置から、前記ディスクの振幅動作により前記フレア加工面または前記バーリング加工面との接触状態と非接触状態とを繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の鋼管の加工装置では、固定機構は、その上面に鋼管を固定した状態にて回転することで、グラインダ支持機構の手前に鋼管のフレア加工面またはバーリング加工面を容易に設置することができる。この構造により、1台の加工装置にて、異なる加工面に対して切削加工処理を施すことが出来ると共に、異なる加工面に切削加工処理を施す度に、ホイスト装置等を用いて鋼管を固定機構上面に載置する作業が不要となり、作業時間が短縮され、作業効率が向上される。
【0020】
また、本発明の鋼管の加工装置は、載置部の天面に対して上下方向に移動可能な第2の固定部を有する。この構造により、切削加工処理が施される鋼管としては、目的や用途に応じて様々な口径のものが取り扱われるが、第1及び第2の固定部にて鋼管をしっかりと固定した状態にて、鋼管のフレア加工面またはバーリング加工面に対して切削加工処理を施すことが出来る。
【0021】
また、本発明の鋼管の加工装置では、第1の固定部は、鋼管の延在方向に回転可能な一対の第1のローラ部を有し、第1のローラ部の回転軸は、上記延在方向と略直交方向に配設されると共に、載置部の天面に対して略15度傾斜した状態となる。この構造により、鋼管のフレア加工面またはバーリング加工面は、グラインダ支持機構に対して所望の加工位置に調整可能となると共に、鋼管と同径のバーリング加工面に対しても精度良く切削加工処理を施すことが出来る。
【0022】
また、本発明の鋼管の加工装置では、第1の固定部は、載置部に支持された鋼管をその周方向に回転させる第2のローラ部を有し、第2の固定部も、載置部に支持された鋼管をその周方向に回転させるローラ部を有する。この構造により、鋼管のバーリング加工面が、容易にグラインダ支持機構に対して所望の加工位置に位置決めされる。そして、1台の加工装置にて、切削条件の異なる複数の加工面に対して、精度良く切削加工処理を施すことが出来る。
【0023】
また、本発明の鋼管の加工装置では、グラインダ支持機構は、ディスクをフレア加工面またはバーリング加工面から離間した位置に固定し、その回転時の振幅幅を利用してフレア加工面またはバーリング加工面に切削加工処理を施すことが出来る。この構造により、フレア加工面またはバーリング加工面が切削され過ぎることが防止される。特に、バーリング加工面は、肉薄部であり、その立ち上がり長さが短いため、バーリング加工面が切削され過ぎることでの、溶接不良が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態の鋼管の加工装置を説明する斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態の鋼管の端面加工装置の概要を説明するブロック図である。
【
図3A】本発明の一実施形態である鋼管の加工装置の固定機構を説明する斜視図である。
【
図3B】本発明の一実施形態である鋼管の加工装置の固定機構を説明する側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態である鋼管の加工装置のグラインダ支持機構を説明する断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態である鋼管の加工装置による加工方法を説明する斜視図である。
【
図6A】本発明の他の実施形態である鋼管の加工装置による加工方法を説明する側面図である。
【
図6B】本発明の他の実施形態である鋼管の加工装置による加工方法を説明する側面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態である鋼管の加工装置による加工方法を説明する斜視図である。
【
図8A】本発明の他の実施形態である鋼管の加工装置による加工方法を説明する側面図である。
【
図8B】本発明の他の実施形態である鋼管の加工装置による加工方法を説明する側面図である。
【
図9】従来の鋼管のフランジ部を研削する端面加工装置を説明する側面図である。
【
図10A】従来の鋼管の分岐管継手の製造方法を説明する側面図である。
【
図10B】従来の鋼管の分岐管継手の製造方法を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の一実施形態である鋼管の加工装置10(以下、「加工装置10」と呼ぶ。)について図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、紙面上下方向は加工装置10の高さ方向を示し、紙面左右方向は加工装置10の横幅方向を示し、紙面前後方向は加工装置10の奥行方向を示す。
【0026】
図1は、本実施形態の加工装置10を説明する斜視図である。
図2は、本実施形態の加工装置10を説明するブロック図である。
図3Aは、本実施形態の加工装置10の固定機構12を説明する斜視図である。
図3Bは、本実施形態の加工装置10の固定機構12を説明する側面図である。
図4は、本実施形態の加工装置10のグラインダ支持機構14を説明する断面図である。
【0027】
図1に示す如く、加工装置10は、主に、鋼管11を固定する固定機構12と、鋼管11に形成された加工面を切削するグラインダ13と、グラインダ13を支持するグラインダ支持機構14と、グラインダ支持機構14に設けられ、グラインダ13と鋼管11の加工面41(
図6A参照)、51(
図8A参照)を認識する画像認識部15(
図2参照)と、グラインダ支持機構14を移動させる搬送機構16と、制御部17A(
図2参照)と、を有する。尚、本実施形態の加工面41が、特許請求の範囲に記載のフレア加工面に対応し、本実施形態の加工面51が、特許請求の範囲に記載のバーリング加工面に対応する。
【0028】
尚、以下の説明では、本実施形態の切削とは、グラインダ13のディスク13Aにて鋼管11の加工面に対して接触と非接触とを繰り返しながら平坦加工処理等を施すことを意味し、広義には、砥石等による加工と同様に、ディスク13Aにて鋼管11の加工面と連続して接触して平坦加工処理等を施すことも含む概念である。
【0029】
鋼管11は、冷凍食品加工工場や冷蔵食品加工工場等のプラント設備にて、排水やガス等の流体を流すための流体配管として用いられる。鋼管11としては、例えば、配管用ステンレス鋼管や配管用炭素鋼管が用いられる。そして、鋼管11は、各プラント設備の設計に応じて所望の経路にて敷設されるため、予め、工場内にて鋼管11は所望の形状に加工され、配管の敷設現場では、上記加工済みの鋼管11同士をボルト・ナットを用いて連結する。この配管の敷設方法により、上記敷設現場での溶接作業を最小限に低減し、溶接による工数や施工時間を大幅に低減し、配管敷設の工期短縮が実現される。
【0030】
本実施形態の鋼管11の加工面41,51とは、少なくとも、フレア加工により鋼管11の両端部に形成される継手部11A及びバーリング加工により鋼管11の中間部の所望の領域に形成される分岐部11Bに対して切削加工処理を施す面のことをいう。そして、継手部11Aの加工面41には、平坦加工処理が施されることで、ガスケットとの密接性が高められ、流体配管としての止水性が高められる。一方、分岐部11Bの加工面51には、平坦加工処理及び開先加工処理が施されることで、他の配管との溶接接合強度が確保される。
【0031】
固定機構12は、主に、鋼管11をその上面に略水平状態にて支持する載置部21と、その上面に鋼管11が載置される第1の固定部22と、鋼管11の上部側を下方側へと押圧する第2の固定部23と、鋼管11を支持した状態の載置部21を回転させる公知の回転部(図示せず)、とを有する。尚、固定機構12としては、載置部21上面にて位置決めされた鋼管11を固定するチェーンベルト19を有する場合でも良い。
【0032】
図示したように、載置部21の上部は、その上面に鋼管11を固定した状態にて、矢印18にて示すように、載置部21内部の回転部を介して略水平方向に回転可能である。この構造により、固定機構12では、鋼管11が載置部21上面に固定された状態にて、グラインダ支持機構14の手前に、加工処理を施す継手部11Aや分岐部11Bを容易に設置することが出来る。つまり、鋼管11の加工面41,51が変わる毎に工場内のホイスト装置等を用いて、載置部21上面に鋼管11を載置し直す作業が不要となり、作業効率が大幅に向上される。
【0033】
グラインダ13は、グラインダ支持機構14の角度調整部14B(
図4参照)に対して固定される。グラインダ13としては、例えば、工機ホールディングス株式会社製の電気ディスクグラインダやエアディスクグラインダが用いられる。そして、グラインダ13は、主に、鋼管11の加工面41,51を切削するディスク13A(
図4参照)と、ディスク13Aを回転自在に支持する本体部13B(
図4参照)と、を有する。
【0034】
グラインダ支持機構14は、主に、搬送機構16の主柱部16Aに対して固定される本体部14Aと、グラインダ13を固定すると共に、グラインダ13の角度を調整する角度調整部14B(
図4参照)と、本体部14Aを加工面41,51に沿って回転させる回転支持部14Cと、を有する。
【0035】
画像認識部15(
図2参照)は、グラインダ支持機構14の本体部14Aの前面の上部に配設されるカメラ15A(
図4参照)を有する。そして、カメラ15Aは、制御部17Aと接続し、取得した撮像画像データを制御部17Aへと送信し、制御部17Aは、上記撮像画像等から鋼管11の加工面41,51の位置情報やグラインダ13から加工面41,51までの距離情報等を算出し、グラインダ支持機構14や搬送機構16の動作を制御する。
【0036】
搬送機構16は、グラインダ支持機構14の本体部14Aを支持する主柱部16Aと、主柱部16Aを可動自在に支持する台座部16Bと、を有する。台座部16Bの上面には、主柱部16Aが、固定機構12側(紙面前後方向)へと移動するためのレール部(図示せず)が形成される。そして、主柱部16Aは、レール部上面に配設され、手動式または自動式により固定機構12側へと移動し、鋼管11の加工面41,51に対してグラインダ13のディスク13Aを所望の加工位置に調整することが出来る。
【0037】
図2に示す如く、制御部17Aとしては、例えば、加工装置10に接続されたパーソナルコンピュータ17であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成され、加工装置10を制御するための各種の演算等を実行する電子制御ユニット(ECU)である。
【0038】
記憶部17Bは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-only Memory)等の不揮発性メモリにて構成され、加工装置10の制御に必要な各種データが記憶される。そして、記憶部17B内の各種データの1つとして、加工処理を行う鋼管11に関するデータが記憶される。尚、入力部17Cは、パーソナルコンピュータ17に接続されたキーボードやマウス等から構成され、作業者は、入力部17Cを操作して、加工処理を行う鋼管11に関するデータ、例えば、鋼管11の口径、長さや加工面41,51の形成位置や形状等のCAD/CAMデータを入力することが出来る。また、作業者は、加工装置10に配設された操作部により、上記作業を行う場合でも良い。
【0039】
図3Aに示す如く、第1の固定部22は、載置部21上にて鋼管11を適宜その延在方向へと移動させる第1のローラ部22A,22Bと、載置部21上にて鋼管11を適宜その周方向に回転させる第2のローラ部22Cと、を有する。尚、第1のローラ部22A,22B及び第2のローラ部23Aは、駆動部24の停止中には、電動モータの負荷によりその位置に固定され、鋼管11をしっかりと固定する。
【0040】
第1のローラ部22A,22Bは、例えば、回転式ローラであり、少なくとも鋼管11と接触する部分が、載置部21の天面21Aよりも上方に位置するように配設される。そして、第1のローラ部22A,22Bは、駆動部24(
図2参照)である電動モータを介して回転することで、鋼管11をその延在方向(紙面左右方向)にスライド移動させることが出来る。
【0041】
2組の第1のローラ部22A,22Bは、その中心を結ぶ中心線CL2が鋼管11の軸心CL1(
図1参照)と一致するように、載置部21の天面21A上に配設される。そして、鋼管11は、2組の第1のローラ部22A,22B上面に載置され、4点支持状態となると共に、鋼管11の軸心CL1は天面21Aと略平行となるように安定状態にて固定される。
【0042】
図示したように、第1のローラ部22A,22Bは、載置部21の天面21Aに対して、その回転軸CL3(
図3B参照)が約15度傾斜した状態にて配設される。上述したように、鋼管11には、バーリング加工による分岐部11Bが形成されるが、鋼管11と同径の開口を有する分岐部11Bが形成される場合がある。点線にて示すように、鋼管11に同径の分岐部11Bが形成された場合でも、鋼管11の加工面51は、載置部21の天面21Aから離間した状態となる。その結果、鋼管11の加工面51の全面に対してグラインダ13のディスク13Aが接触することができ、鋼管11の加工面51に対して切削加工処理が施される。
【0043】
また、
図3Bに示す如く、第2のローラ部22Cは、第1のローラ部22A,22B間であり、第2のローラ部22Cの回転中心C1が、上記中心線CL2と略一致するように、載置部21に配設される。また、第2のローラ部22Cは、載置部21の天面21Aと略直交方向(紙面上下方向)に可動自在に配設される。
【0044】
この構造により、第2のローラ部22Cは、主に、バーリング加工による分岐部11Bの位置を調整する際に用いられ、鋼管11をその周方向に回転させる際に上昇して鋼管11の最底部と接触する。そして、第2のローラ部22Cは、鋼管11を下方から押圧しながら第2の固定部23のローラ部23Aと一緒に回転し、鋼管11をその周方向に回転させる。一方、鋼管11が、第1のローラ部22A,22Bを介してその延在方向にスライド移動する際には、第2のローラ部22Cは下降して鋼管11と非接触状態となる。
【0045】
次に、
図3A及び
図3Bに示す如く、第2の固定部23は、鋼管11をその周方向に回転させるローラ部23Aと、ローラ部23Aを載置部21の天面21Aと略直交方向(紙面上下方向)に可動させる可動部23Bと、を有する。そして、載置部21上面に載置される鋼管11の口径は、例えば、65A~250Aであり、ローラ部23Aは、可動部23Bを介して鋼管11の口径に応じて高さ方向に移動し、鋼管11の最頂部と接触し、鋼管11を上方から押圧する。尚、可動部23Bは、載置部21内に配設された駆動部24(
図2参照)、例えば、電動モータを介して駆動し、電動モータの停止時には、電動モータの負荷によりその位置に固定され、鋼管11をしっかりと押圧することが出来る。
【0046】
グラインダ13が、鋼管11の加工面41,51に対して切削加工処理を施す際には、ローラ部23Aは、第1のローラ部22A,22B側へと鋼管11を押圧することで、鋼管11をしっかりと固定する。一方、鋼管11の分岐部11Bの位置調整を行う際には、ローラ部23Aは、第2のローラ部22Cと一緒に回転し、鋼管11をその周方向に回転させる。
【0047】
ここで、
図2に示す如く、固定機構12は、制御部17Aにより制御され、駆動部24を介して駆動する。鋼管11が、工場のホイスト装置(図示せず)等を介して載置部21の第1のローラ部22A,22B上面に載置された後、制御部17Aは、記憶部17Bに記憶されたデータ、例えば、鋼管11の加工面41,51の位置や鋼管11の口径等のデータに基づいて、駆動部24を介して第1及び第2の固定部22,23を回転させる。そして、載置部21上での鋼管11の固定位置の微調整を行うことで、鋼管11が安定状態にて載置部21上に固定されると共に、鋼管11の加工面41,51の位置が、グラインダ支持機構14に対しても所望の位置へと調整される。
【0048】
尚、第1及び第2の固定部22,23を回転させる駆動部24としては、例えば、電動モータが用いられる。また、載置部21を回転させる回転部(図示せず)としては、例えば、油圧式の回転テーブルが用いられる。また、第1の固定部22の第1のローラ部22A,22Bや載置部21の回転部は、作業者による手動式にて回転させる機構の場合でも良い。
【0049】
図4に示す如く、グラインダ支持機構14は、鋼管11の加工面41,51に対してグラインダ13のディスク13Aを非接触の位置に固定する。そして、グラインダ13のディスク13Aは、切削加工時に、常時、鋼管11の加工面41,51を押圧するのではなく、その回転時における振幅動作を利用して、繰り返し鋼管11の加工面41,51を叩く様に接触状態と非接触状態を繰り返す。
【0050】
グラインダ支持機構14の角度調整部14Bは、例えば、扇形状であり、その円周面にウォームギアが形成される支持プレート31と、支持プレート31を鋼管11の加工面41,51に向けて間欠的に回転させる駆動部25(
図2参照)としてのステッピングモータ32と、を有する。
【0051】
この構造により、角度調整部14Bでは、制御部17Aが、画像認識部15からの撮像画像等用いてステッピングモータ32を制御し、支持プレート31が、間欠的に回転する。そして、支持プレート31の先端に固定されたグラインダ13は、鋼管11の加工面41,51に向けて回動し、グラインダ13のディスク13Aは、鋼管11の加工面41,51に対して非接触の所望の加工位置に固定される。
【0052】
グラインダ支持機構14の回転支持部14Cは、例えば、支持プレート31を回転自在に支持すると共に、支持プレート31を加工装置10の高さ方向(紙面上下方向)に移動させる支持部33と、支持部33と連結する回転軸34と、搬送機構16の主柱部16A内に配設され、回転軸34を回転させる回転機構35と、を有する。
【0053】
また、支持部33は、加工装置10の横幅方向(紙面左右方向)の両端部にてボールスプライン軸36と連結する。そして、駆動部25としての電動モータ37が、ボールスプライン軸36を回転させることで、支持部33は、加工装置10の高さ方向(紙面上下方向)に移動する。尚、ボールスプライン軸36は、本体部14Aに支持される。
【0054】
この構造により、制御部17Aが、画像認識部15からの撮像画像等用いて演算を行い、回転支持部14Cの回転機構35や電動モータ37を制御することで、回転軸34が回転し、支持プレート31を含む本体部14Aが回転する。その結果、支持プレート31に固定されたグラインダ13のディスク13Aは、鋼管11の加工面41,51に合わせて回転することで、鋼管11の加工面41,51には均一に切削加工処理が施される。
【0055】
このとき、切削加工処理を施す継手部11Aの加工面41や分岐部11Bの加工面51では、様々な大きさの口径となる。そのため、制御部17Aは、回転軸34の回転に合わせて、電動モータ37を制御し、支持プレート31を適宜上下方向へと移動させることで、様々な大きさの口径の加工面41,51に対して切削加工処理を行うことが出来る。その結果、鋼管11の加工面41,51の切削量も均一化され、上述した配管としての止水性が向上し、また鋼管11の溶接箇所での溶接強度も得られる。
【0056】
次に、本発明の他の実施形態である加工装置10を用いた鋼管11の加工方法について図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、以下の説明では、
図1から
図4を用いて説明した加工装置10と同一の部材には同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、本実施形態の鋼管11の加工方法の説明の際には、適宜、
図1から
図4を用いる場合もある。
【0057】
図5は、本実施形態の加工装置10を用い、鋼管11の継手部11Aに対して平坦加工処理を施す加工方法を説明する斜視図である。
図6A及び
図6Bは、本実施形態の加工装置10を用い、鋼管11の継手部11Aに対して平坦加工処理を施す加工方法を説明する側面図である。
図7は、本実施形態の加工装置10を用い、鋼管11の分岐部11Bに対して平坦加工処理及び開先加工処理を施す加工方法を説明する斜視図である。
図8Aは、本実施形態の加工装置10を用い、鋼管11の分岐部11Bに対して平坦加工処理を施す加工方法を説明する側面図である。
図8Bは、本実施形態の加工装置10を用い、鋼管11の分岐部11Bに対して開先加工処理を施す加工方法を説明する側面図である。
【0058】
最初に、
図5から
図6Bを用いて、鋼管11の継手部11Aの加工面41への平坦加工処理について説明する。
【0059】
先ず、
図1に示す如く、作業者は、鋼管11の両端部にフレア加工による継手部11Aを形成し、また、鋼管11の中間部にバーリング加工による分岐部11Bを形成する。そして、作業者は、工場内のホイスト装置等を用いて、固定機構12の載置部21の上面に鋼管11を載置する。このとき、図示したように、平坦加工処理を施す継手部11A側が、載置部21の端部から、例えば、30cm程度外側へと導出した状態にて、鋼管11が載置部21の上面に固定される。
【0060】
次に、
図5に示す如く、加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作し、制御部17Aは第1の固定部22及び第2の固定部23を制御し、載置部21の上面に載置された鋼管11の位置調整を行い、位置決めして固定する。その後、制御部17Aは載置部21内の回転部(図示せず)を制御し、載置部21の上部側を略90度回転することで、鋼管11の継手部11Aをグラインダ支持機構14の手前へと配設する。
【0061】
次に、
図6Aに示す如く、作業者は、加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作し、制御部17Aはグラインダ支持機構14(
図1参照)を制御し、グラインダ13のディスク13Aを鋼管11の加工面41に対して所望の加工位置へと固定する。上述したように、制御部17Aは、画像認識部15のカメラ15A(
図4参照)が取得した上記撮像画像等から加工面41の位置情報やグラインダ13から加工面41までの距離情報等を算出し、角度調整部14B(
図4参照)や回転支持部14C(
図4参照)を制御し、ディスク13Aを上記所望の加工位置へと固定する。
【0062】
図6Aでは、加工装置10による切削加工処理が開始される前のセット状態を示す。矢印L1にて示す領域が、平坦加工処理を施す継手部11Aの加工面41である。そして、ディスク13Aの中心部よりも半径方向の外側の切削加工面が、鋼管11の加工面41に対向し、矢印42にて示すように、ディスク13Aの切削加工面と約1mm程度離間した状態である。つまり、グラインダ13のディスク13Aは、加工面41に対して非接触位置を保持しながら、切削加工処理を加工面41に施すことで、継手部11Aを削り過ぎることが防止される。
【0063】
また、グラインダ13のディスク13Aは高速回転するため、矢印43にて示すように、ディスク13Aの先端部では、約1~2mm程度の振幅動作が発生する。そして、ディスク13Aの中心部へ向かう程、その振幅動作の幅は狭まるため、ディスク13Aの切削加工面と加工面41との成す角度θ1が、1度以上5度以下となるように、ディスク13Aは、その先端側が加工面41側へと傾斜して配設される。
【0064】
つまり、上記角度θ1を1度以上5度以下に保つことで、ディスク13Aの切削加工面と加工面41との接触面積が大きくなり量産性に適すると共に、ディスク13Aの切削加工面が加工面41に対して必要以上に押圧することがなく、加工面41を切削し過ぎることが防止される。
【0065】
次に、
図6Bに示す如く、作業者は、加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作し、鋼管11の加工面41に対してグラインダ13による平坦加工処理を開始させる。上述したように、制御部17Aは、画像認識部15が取得した上記撮像画像データ等を用いて演算し、加工面41を位置認識しながら、回転支持部14Cの回転機構35や電動モータ37を制御し、グラインダ13のディスク13Aを鋼管11の加工面41に合わせて一定の速度にて回転させながら、加工面41に対して切削加工処理を施す。
【0066】
図6Bでは、加工装置10による切削加工処理が施される状態を示す。継手部11Aの加工面41において、矢印43にて示すように、ディスク13Aの先端側が大きく振幅し、実線は、ディスク13Aが加工面41側へと最も近づいた状態を示し、点線は、ディスク13Aが加工面41から最も離れた状態を示す。
【0067】
切削加工処理時において、ディスク13Aは、
図6Aにて説明した非接触位置において高速回転し、その高速回転により発生するディスク13Aの振幅動作を利用して加工面41を削り、平坦面とする。そして、ディスク13Aは、高速回転しているため、ディスク13Aの振幅動作のスピードも高速となるが、ディスク13Aの切削加工面と加工面41とは、実線の接触状態と点線の非接触状態を繰り返す。
【0068】
そして、グラインダ13は、鋼管11の加工面41に沿って一定の速度にて回転することで、ディスク13Aの切削加工面と加工面41との接触領域は徐々に移動する。そして、ディスク13Aが、加工面41に対して複数周に渡り回転することで、加工面41には、徐々に平坦面が形成されていく。
【0069】
上述したように、制御部17Aは、切削加工処理中においても、画像認識部15から取得した上記撮像画像データ等を用いて演算し、加工面41とディスク13Aとの離間距離等を算出する。そして、継手部11Aの加工面41の平坦加工処理では、制御部17Aは搬送機構16の駆動部26(
図2参照)である、例えば、ステッピングモータ(図示せず)を制御し、主柱部16Aを加工面41側へと適宜前進させ、矢印42にて示すように、ディスク13Aの切削加工面と加工面41との約1mm程度離間した状態を維持する。
【0070】
この加工方法により、ディスク13Aの切削加工面が、鋼管11の加工面41に対して、実線にて示す接触状態と点線にて示す非接触状態とを繰り返しながら、切削加工処理を施す。その結果、加工面41には、徐々に平坦面が形成されることとなり、継手部11Aが必要以上に切削されることが防止される。そして、継手部11Aにおける止水性を向上すると共に、継手部11Aが所望の耐久性を有し、高品質な流体配管を形成することができる。
【0071】
次に、
図7から
図8Bを用いて、鋼管11の分岐部11Bの加工面51への平坦加工処理及び開先加工処理について説明する。尚、本実施形態では、上述した鋼管11の一端側の継手部11A側から切削加工処理を行い、順次、分岐部11Bの切削加工処理を行った後、最後に、鋼管11の他端側の継手部11Aの切削加工処理を行う。また、説明の都合上、
図8A及び
図8Bでは、鋼管11の分岐部11Bはその断面として図示する。
【0072】
図7に示す如く、作業者は、加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作し、制御部17Aは載置部21内の回転部(図示せず)を制御し、載置部21の上部側を略90度回転することで、鋼管11は、グラインダ支持機構14に対して
図1に示す元の位置へと戻る。その後、制御部17Aは第1の固定部22及び第2の固定部23を制御し、鋼管11の一端側の分岐部11Bが、グラインダ支持機構14の手前に位置するように、鋼管11をその延在方向(紙面左右方向)に移動させる。次に、分岐部11Bの加工面51が所望の加工位置となるように、鋼管11をその周方向に回転させた後、鋼管11を位置決めして固定する。
【0073】
図8Aに示す如く、作業者は、加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作し、制御部17Aはグラインダ支持機構14及び搬送機構16を制御し、グラインダ13のディスク13Aを鋼管11の加工面51に対して所望の加工位置へと固定する。上述したように、制御部17Aは、画像認識部15が取得した上記撮像画像等から加工面51の位置情報やグラインダ13から加工面51までの距離情報等を算出する。そして、制御部17Aは、主柱部16Aを加工面51側へと前進させた後、角度調整部14B(
図4参照)や回転支持部14C(
図4参照)を制御し、ディスク13Aを上記所望の加工位置へと固定する。
【0074】
ここで、バーリング加工による分岐部11Bでは、その厚みは、フレア加工による継手部11Aの厚みと比較して肉薄部となると共に、その立ち上がり長さは、例えば、8.0mm~10.0mm程度と短くなる。そして、分岐部11Bでは、他の鋼管との所望の溶接強度を得るために平坦加工処理及び開先加工処理が行われる。
【0075】
そこで、図示したように、加工面51への平坦加工処理では、ディスク13Aの中心部よりも半径方向の内側の切削加工面が、鋼管11の加工面51に対向し、矢印52にて示すように、ディスク13Aの切削加工面と約0.5mm程度離間した状態である。つまり、ディスク13Aの振幅幅の狭い領域を利用して、加工面51に対して非接触位置を保持しながら、矢印53にて示す接触状態と非接触状態とを繰り返す切削加工処理を加工面51に施すことで、分岐部11Bを削り過ぎることが防止される。
【0076】
そして、分岐部11Bの加工面51の平坦加工処理の加工方法は、
図6A及び
図6Bを用いて上述した平坦加工処理の加工方法と同様であり、ここではその説明を参照し、詳細の説明を省略する。尚、加工面51の平坦加工処理では、ディスク13Aは、例えば、加工面51に対して2~3周程度回転し、分岐部11Bの溶接に必要な立ち上がり長さを確保する。
【0077】
図8Bに示す如く、作業者は、加工面51への平坦加工処理を終えた後、加工面51への開先加工処理を行う。作業者は、加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作し、制御部17Aはグラインダ支持機構14を制御する。そして、開先加工処理では、点線54にて示すように、加工面51の最外周側を傾斜形状に切削加工処理するため、制御部17Aは、グラインダ13のディスク13Aを鋼管11の加工面51側へと更に15度程度傾斜させる。
【0078】
図示したように、加工面51の開先加工処理では、上述した平坦加工処理と同様に、ディスク13Aの中心部よりも半径方向の内側の切削加工面を用いて行われる。そして、肉薄部である分岐部11Bを切削し過ぎることを防止するため、ディスク13Aは、例えば、加工面51に対して2~3周程度回転し、加工面51に環状の開先部を形成する。
【0079】
その後、作業者は、引き続き、加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作し、加工装置10では、鋼管11に形成された残りの分岐部11Bや他端側の継手部11Aに対して、切削加工処理を施す。尚、鋼管11の各継手部11Aや分岐部11Bに対して、作業者が、その都度、加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作する場合に限定するものではなく、作業者が、最初に加工装置10またはパーソナルコンピュータ17を操作することで、1本の鋼管11の各継手部11Aや分岐部11Bに対して、自動式にて連続して切削加工処理を施す場合でも良い。
【0080】
上述したように、鋼管11の加工方法では、1台の加工装置10のグラインダ13にて、継手部11Aの加工面41に対する平坦加工処理と、分岐部11Bの加工面51に対する平坦加工処理及び開先加工処理との加工条件の異なる3つの切削加工処理を施すことが出来る。その際に、鋼管11は、工場内のホイスト装置等を用いて載置部21上面に載置された後、その鋼管11に形成された複数の継手部11Aや分岐部11Bに対して切削加工処理が終了するまでは、載置部21上面に載置された状態のままである。
【0081】
この加工方法により、1本の鋼管11に対して、上記ホイスト装置等を用いて何度も載置部21上面に載置し、また、載置部21上面から降ろす作業が不要となり、作業時間が短縮されると共に、鋼管11を移動させる作業の際の事故リスクが大幅に低減される。そして、1台の加工装置10にて、3種類の切削加工処理が可能となることで、加工装置の導入費用が低減され、製造コストも大幅に低減される。
【0082】
尚、本実施形態では、鋼管11の分岐部11Bの加工面51では、ディスク13Aが加工面51に対して非接触の位置からディスク13Aの振幅を利用して接触状態と非接触の状態を繰り返すことで、切削加工処理を施す場合について説明したが、この場合に限定するものではない。上述したように、分岐部11Bは、バーリング加工により肉薄部となると共に、その立ち上がり長さが短くなり、切削し過ぎることを防止する必要がある。そのため、最初からディスク13Aを加工面51と接触する位置に固定し、常時、ディスク13Aが、加工面51と接触する、所謂、研削加工に近い状態により、加工面51に平坦加工処理及び開先加工処理を施す場合でも良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 鋼管の加工装置
11 鋼管
11A 継手部
11B 分岐部
12 固定機構
13 グラインダ
13A ディスク
13B 本体部
14 グラインダ支持機構
14A 本体部
14B 角度調整部
14C 回転支持部
15 画像認識部
15A カメラ
16 搬送機構
16A 主柱部
16B 台座部
17 パーソナルコンピュータ
17A 制御部
17B 記憶部
21 載置部
21A 天面
22 第1の固定部
22A,22B 第1のローラ部
22C 第2のローラ部
23 第2の固定部
23A ローラ部
23B 可動部
31 支持プレート
32 ステッピングモータ
33 支持部
34 回転軸
35 回転機構
36 ボールスプライン軸
37 電動モータ
41,51 加工面
【手続補正書】
【提出日】2022-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも鋼管に形成されたフレア加工面及びバーリング加工面に対してグラインダによる切削加工を施す鋼管の加工装置であって、
前記鋼管を固定する固定機構と、
前記グラインダのディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に対して切削可能な位置に支持するグラインダ支持機構と、を備え、
前記固定機構は、前記フレア加工面または前記バーリング加工面が前記グラインダ支持機構の近傍に位置するように、前記鋼管を固定した状態にて略水平方向に回転可能であり、
前記グラインダ支持機構は、前記ディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に沿って回転移動させながら前記グラインダによる切削加工を施し、
前記固定機構は、
前記フレア加工面を切削加工する場合には、前記鋼管をその延在方向にスライド移動させ、前記フレア加工面を前記グラインダ支持機構に対して位置決めして固定し、
前記バーリング加工面を切削加工する場合には、前記鋼管をその周方向に回転させ、前記バーリング加工面を前記グラインダ支持機構に対して位置決めして固定することを特徴とする鋼管の加工装置。
【請求項2】
前記固定機構は、
前記鋼管を支持する載置部と、
前記載置部に支持された前記鋼管をその延在方向にスライド移動させる第1のローラ部と、
前記載置部に支持された前記鋼管をその周方向に回転させる第2のローラ部と、を有し、
前記フレア加工面を切削加工する場合には、前記第1のローラ部を用いて前記鋼管をスライド移動させ、
前記バーリング加工面を切削加工する場合には、前記第2のローラ部を用いて前記鋼管を回転させることを特徴とする請求項1に記載の鋼管の加工装置。
【請求項3】
前記第1のローラ部の回転軸は、前記延在方向と略直交方向に配設されると共に、前記天面に対して略15度傾斜した状態となることを特徴とする請求項2に記載の鋼管の加工装置。
【請求項4】
前記固定機構は、
前記載置部の天面に対して上下方向に移動可能な第3のローラ部と、を有し、
前記第2のローラ部は、前記第1のローラ部の間に配設され、
前記第3のローラ部は、前記鋼管の最頂部と接触し、前記第2のローラ部は、前記鋼管の最底部と接触し、
前記第2のローラ部及び前記第3のローラ部は、前記鋼管をその周方向に回転させることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の鋼管の加工装置。
【請求項5】
前記グラインダ支持機構は、前記ディスクと前記フレア加工面または前記バーリング加工面との離間距離が前記ディスクの先端の最大の振幅幅より狭くなる非接触位置に前記ディスクが位置するように、前記グラインダを支持し、
前記ディスクは、前記フレア加工面または前記バーリング加工面に沿って回転移動時において、前記非接触位置から、前記ディスクの振幅動作により前記フレア加工面または前記バーリング加工面との接触状態と非接触状態とを繰り返すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鋼管の加工装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の鋼管の加工装置では、少なくとも鋼管に形成されたフレア加工面及びバーリング加工面に対してグラインダによる切削加工を施す鋼管の加工装置であって、前記鋼管を固定する固定機構と、前記グラインダのディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に対して切削可能な位置に支持するグラインダ支持機構と、を備え、前記固定機構は、前記フレア加工面または前記バーリング加工面が前記グラインダ支持機構の近傍に位置するように、前記鋼管を固定した状態にて略水平方向に回転可能であり、前記グラインダ支持機構は、前記ディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に沿って回転移動させながら前記グラインダによる切削加工を施し、前記固定機構は、前記フレア加工面を切削加工する場合には、前記鋼管をその延在方向にスライド移動させ、前記フレア加工面を前記グラインダ支持機構に対して位置決めして固定し、前記バーリング加工面を切削加工する場合には、前記鋼管をその周方向に回転させ、前記バーリング加工面を前記グラインダ支持機構に対して位置決めして固定することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記固定機構は、前記鋼管を支持する載置部と、前記載置部に支持された前記鋼管をその延在方向にスライド移動させる第1のローラ部と、前記載置部に支持された前記鋼管をその周方向に回転させる第2のローラ部と、を有し、前記フレア加工面を切削加工する場合には、前記第1のローラ部を用いて前記鋼管をスライド移動させ、前記バーリング加工面を切削加工する場合には、前記第2のローラ部を用いて前記鋼管を回転させることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記第1のローラ部の回転軸は、前記延在方向と略直交方向に配設されると共に、前記天面に対して略15度傾斜した状態となることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記固定機構は、前記載置部の天面に対して上下方向に移動可能な第3のローラ部と、を有し、前記第2のローラ部は、前記第1のローラ部の間に配設され、前記第3のローラ部は、前記鋼管の最頂部と接触し、前記第2のローラ部は、前記鋼管の最底部と接触し、前記第2のローラ部及び前記第3のローラ部は、前記鋼管をその周方向に回転させることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
本発明の鋼管の加工装置では、前記グラインダ支持機構は、前記ディスクと前記フレア加工面または前記バーリング加工面との離間距離が前記ディスクの先端の最大の振幅幅より狭くなる非接触位置に前記ディスクが位置するように、前記グラインダを支持し、前記ディスクは、前記フレア加工面または前記バーリング加工面に沿って回転移動時において、前記非接触位置から、前記ディスクの振幅動作により前記フレア加工面または前記バーリング加工面との接触状態と非接触状態とを繰り返すことを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも鋼管に形成されたフレア加工面及びバーリング加工面に対してグラインダによる切削加工を施す鋼管の加工装置であって、
前記鋼管を固定する固定機構と、
前記グラインダのディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に対して切削可能な位置に支持するグラインダ支持機構と、を備え、
前記固定機構は、前記フレア加工面または前記バーリング加工面が前記グラインダ支持機構の近傍に位置するように、前記鋼管を固定した状態にて略水平方向に回転可能であり、
前記グラインダ支持機構は、前記ディスクを前記フレア加工面または前記バーリング加工面に沿って回転移動させながら前記グラインダによる切削加工を施し、
前記固定機構は、
前記フレア加工面を切削加工する場合には、前記鋼管をその延在方向にスライド移動させ、前記フレア加工面を前記グラインダ支持機構に対して位置決めして固定し、
前記バーリング加工面を切削加工する場合には、前記鋼管をその周方向に回転させ、前記バーリング加工面を前記グラインダ支持機構に対して位置決めして固定することを特徴とする鋼管の加工装置。
【請求項2】
前記固定機構は、
前記鋼管を支持する載置部と、
前記載置部に支持された前記鋼管を前記延在方向にスライド移動させる第1のローラ部と、
前記載置部に支持された前記鋼管を前記周方向に回転させる第2のローラ部と、を有し、
前記フレア加工面を切削加工する場合には、前記第1のローラ部を用いて前記鋼管をスライド移動させ、
前記バーリング加工面を切削加工する場合には、前記第2のローラ部を用いて前記鋼管を回転させることを特徴とする請求項1に記載の鋼管の加工装置。
【請求項3】
前記第1のローラ部の回転軸は、前記延在方向と略直交方向に配設されると共に、前記載置部の天面に対して略15度傾斜した状態となることを特徴とする請求項2に記載の鋼管の加工装置。
【請求項4】
前記固定機構は、
前記載置部の天面に対して上下方向に移動可能な第3のローラ部を有し、
前記第2のローラ部は、前記第1のローラ部の間に配設され、
前記第3のローラ部は、前記鋼管の最頂部と接触し、前記第2のローラ部は、前記鋼管の最底部と接触し、
前記第2のローラ部及び前記第3のローラ部は、前記鋼管を前記周方向に回転させることを特徴とする請求項2に記載の鋼管の加工装置。
【請求項5】
前記グラインダ支持機構は、前記ディスクと前記フレア加工面または前記バーリング加工面との離間距離が前記ディスクの先端の最大の振幅幅より狭くなる非接触位置に前記ディスクが位置するように、前記グラインダを支持し、
前記ディスクは、前記フレア加工面または前記バーリング加工面に沿って回転移動時において、前記非接触位置から、前記ディスクの振幅動作により前記フレア加工面または前記バーリング加工面との接触状態と非接触状態とを繰り返すことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鋼管の加工装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記固定機構は、前記鋼管を支持する載置部と、前記載置部に支持された前記鋼管を前記延在方向にスライド移動させる第1のローラ部と、前記載置部に支持された前記鋼管を前記周方向に回転させる第2のローラ部と、を有し、前記フレア加工面を切削加工する場合には、前記第1のローラ部を用いて前記鋼管をスライド移動させ、前記バーリング加工面を切削加工する場合には、前記第2のローラ部を用いて前記鋼管を回転させることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記第1のローラ部の回転軸は、前記延在方向と略直交方向に配設されると共に、前記載置部の天面に対して略15度傾斜した状態となることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
また、本発明の鋼管の加工装置では、前記固定機構は、前記載置部の天面に対して上下方向に移動可能な第3のローラ部を有し、前記第2のローラ部は、前記第1のローラ部の間に配設され、前記第3のローラ部は、前記鋼管の最頂部と接触し、前記第2のローラ部は、前記鋼管の最底部と接触し、前記第2のローラ部及び前記第3のローラ部は、前記鋼管を前記周方向に回転させることを特徴とする。