(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140121
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】布用の冷却デバイス、冷却デバイス付き布、および冷却デバイス付きマスク
(51)【国際特許分類】
F25B 21/02 20060101AFI20220915BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20220915BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F25B21/02 T
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040782
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】594149804
【氏名又は名称】カジナイロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 政隆
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆平
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 拓人
(72)【発明者】
【氏名】吉村 貫生
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CB19
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】従来よりも冷却効果が長続きする用の冷却デバイス、冷却デバイス付き布および冷却デバイス付きマスクを提供する。
【解決手段】本発明の布用の冷却デバイスは、熱電変換素子と、放熱部材と、ファンとを有する冷却モジュールと、冷却モジュールに対してバッテリーの電力を供給するための配線ケーブルと、を備える冷却デバイスであって、冷却モジュールは、熱電変換素子と放熱部材とファンとがこの順に積層状態で配置される第一形態と、第一形態の状態から冷却モジュールの一部が残りの冷却モジュールから分離した状態の第二形態とに変形可能であり、第二形態では、布を冷却モジュールに着脱可能であり、第一形態では、布が冷却モジュールに着脱不能である
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換素子と、放熱部材と、ファンとを有する冷却モジュールと、
前記冷却モジュールに対してバッテリーの電力を供給するための配線ケーブルと、
を備える冷却デバイスであって、
前記冷却モジュールは、前記熱電変換素子と前記放熱部材と前記ファンとがこの順に積層状態で配置される第一形態と、前記第一形態の状態から前記冷却モジュールの一部が残りの前記冷却モジュールから分離した状態の第二形態とに変形可能であり、
前記第二形態では、布を前記冷却モジュールに着脱可能であり、
前記第一形態では、前記布が前記冷却モジュールに着脱不能である、
布用の冷却デバイス。
【請求項2】
前記第二形態は、前記ファンの少なくとも一部が前記放熱部材から分離した状態である、請求項1に記載の布用の冷却デバイス。
【請求項3】
前記ファンは、前記放熱部材とは反対側に向かって送風する、
請求項1に記載の布用の冷却デバイス。
【請求項4】
前記冷却デバイスは、複数の前記冷却モジュールを備え、
前記配線ケーブルは、前記複数の冷却モジュールに電気的に並列に接続されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の布用の冷却デバイス。
【請求項5】
前記冷却モジュールの一部と残りの前記冷却モジュールとは、配線伝送路で接続されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の布用の冷却デバイス。
【請求項6】
前記放熱部材は、前記熱電変換素子の放熱面に対して面接触する平板部と、前記平板部から前記熱電変換素子に対して離れるように延びる棒状部と、を有し、さらに、
前記第二形態において前記放熱部材は、布の網目を通るように前記棒状部を差し込むことで、当該布に取り付けられる、
請求項1から5のいずれか一項に記載の布用の冷却デバイス。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の冷却デバイスと、
前記冷却デバイスの前記冷却モジュールが前記第二形態から前記第一形態に変形する際に挟み込まれる布と、
を備え、
前記布は、前記冷却デバイスが取り付けられる取付部と、前記冷却デバイスが取り付けられない布地部とを備え、
前記取付部は、布地部よりも網目が大きく形成されている、
冷却デバイス付き布。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか一項に記載の冷却デバイスと、
前記冷却デバイスの前記冷却モジュールが前記第二形態において着脱される布と、
を備え、
前記布は、前記冷却デバイスが取り付けられる取付部と、前記冷却デバイスが取り付けられない布地部とを備え、
前記取付部は、前記冷却デバイスを保持する開口部を設けている、
冷却デバイス付き布。
【請求項9】
前記開口部は、前記開口部に挿通された前記冷却モジュールを取り付けることが可能に構成されている取付パーツを備えている、
請求項8に記載の冷却デバイス付き布。
【請求項10】
前記取付部は、前記布地部よりも熱伝導率の高い繊維材料で形成されている、
請求項7から9のいずれか一項に記載の冷却デバイス付き布。
【請求項11】
使用者の少なくとも口元を覆う本体部と、前記本体部を使用者の頭部に装着させるための装着部と、を有する、マスクであって、
前記本体部は、請求項7から10のいずれか一項に記載の冷却デバイス付き布を備える、
マスク。
【請求項12】
熱電変換素子と放熱部材とファンとを有する冷却モジュールと、前記熱電変換素子とファンとに電力を供給するバッテリーと、を有する冷却デバイスであって、
前記冷却デバイスは、前記熱電変換素子と前記放熱部材と前記ファンとがこの順に積層状態で配置される第一形態と、前記冷却デバイスの少なくとも一部が、残りの前記冷却デバイスから分離した状態の第二形態とに変形可能であり、
前記第二形態では、布を前記冷却モジュールに着脱可能であり、
前記第一形態では、前記布が前記冷却モジュールに着脱不能である、
布用の冷却デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布用の冷却デバイス、冷却デバイス付き布、および冷却デバイス付きマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
夏場など、高温多湿の環境下で衣服やマスクなどを着用している際には、心拍数や呼吸数、血中の二酸化炭素濃度、または体感温度が上昇しやすいため、身体に負担がかかることが懸念されている。特に、近年は、感染症拡大の予防対策の一つとして、マスクの使用が挙げられており、従来よりも季節に関わらず、マスクを着用する機会が増えてきている。
【0003】
そこで、高温多湿環境下でも快適に着用できる布の例として、接触冷感機能を有する生地を利用したマスクが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のマスクのような、接触冷感機能を有する布を用いた着用物であっても、着用後まもなくすると、生地が体温と同程度に上昇してしまい、冷却効果が長続きしない。
【0006】
そこで、本発明は、従来よりも冷却効果が長続きする布用の冷却デバイス、冷却デバイス付き布および冷却デバイス付きマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る布用の冷却デバイスは、
熱電変換素子と、放熱部材と、ファンとを有する冷却モジュールと、
前記冷却モジュールに対してバッテリーの電力を供給するための配線ケーブルと、
を備える冷却デバイスであって、
前記冷却モジュールは、前記熱電変換素子と前記放熱部材と前記ファンとがこの順に積層状態で配置される第一形態と、前記第一形態の状態から前記冷却モジュールの一部が残りの前記冷却モジュールから分離した状態の第二形態とに変形可能であり、
前記第二形態では、布を前記冷却モジュールに着脱可能であり、
前記第一形態では、前記布が前記冷却モジュールに着脱不能である。
【0008】
上記構成によれば、バッテリーの電力を冷却モジュールに供給し続ける間、冷却モジュールの熱電変換素子は冷却機能を有する。使用者は第二形態の冷却モジュールに布を取り付けて、その後第一形態に変形することで、布に対して冷却モジュールを容易に固定することができる。使用者は、この冷却モジュールを備えた布を装着することで、肌を冷却することができ、その冷却効果を長持ちさせることができる。
【0009】
本発明の一側面に係る冷却デバイス付き布は、
上記の冷却デバイスと、
前記冷却デバイスの前記冷却モジュールが前記第二形態から前記第一形態に変形する際に挟み込まれる布と、
を備え、
前記布は、前記冷却デバイスが取り付けられる取付部と、前記冷却デバイスが取り付けられない布地部とを備え、
前記取付部は、布地部よりも網目が大きく形成されている。
【0010】
上記構成によれば、ユーザは簡易な作業で、冷却デバイス付き布に冷却デバイスの取付け及び取外しを行うことができる。
【0011】
本発明の一側面に係る冷却デバイス付き布は、
上記の冷却デバイスと、
前記冷却デバイスの前記冷却モジュールが前記第二形態において着脱される布と、
を備え、
前記布は、前記冷却デバイスが取り付けられる取付部と、前記冷却デバイスが取り付けられない布地部とを備え、
前記取付部は、前記冷却デバイスを保持する開口部を設けている。
【0012】
上記構成によれば、冷却デバイスが冷却デバイス付き布に取り付けられるとき、一部の冷却モジュールと残りの冷却モジュールとが開口部を挟んで配置される。このとき、第一形態の時に冷却モジュール内の熱交換が阻害されにくい。
【0013】
本発明の一側面に係るマスクは、
使用者の少なくとも口元を覆う本体部と、前記本体部を使用者の頭部に装着させるための装着部と、を有する、マスクであって、
前記本体部は、上記の冷却デバイス付き布を備える。
【0014】
上記構成によれば、ユーザの少なくとも口元を覆う冷却デバイス付き布は冷却デバイスを備えるため、冷却モジュールに電力が供給されている間は使用者の口元を冷却することができる。これにより、冷却効果が長持ちするマスクが提供できる。
【0015】
本発明の一側面に係る布用冷却デバイスは、
熱電変換素子と放熱部材とファンとを有する冷却モジュールと、前記熱電変換素子とファンとに電力を供給するバッテリーと、を有する冷却デバイスであって、
前記冷却デバイスは、前記熱電変換素子と前記放熱部材と前記ファンとがこの順に積層状態で配置される第一形態と、前記冷却デバイスの少なくとも一部が、残りの前記冷却デバイスから分離した状態の第二形態とに変形可能であり、
前記第二形態では、布を前記冷却モジュールに着脱可能であり、
前記第一形態では、前記布が前記冷却モジュールに着脱不能である。
【0016】
上記構成によれば、バッテリーの電力を冷却モジュールに供給し続ける間、冷却モジュールの熱電変換素子は冷却機能を有する。使用者は第二形態の冷却モジュールに布を取り付けて、その後第一形態に変形することで、布に対して冷却モジュールを固定することができる。この冷却モジュールを備えた布を装着することで、使用者の肌を冷却することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来よりも冷却効果が長続きする用の冷却デバイス、冷却デバイス付き布および冷却デバイス付きマスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る冷却デバイス付きマスクをユーザが着用した図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る冷却デバイス付き布について、取付部と布地部の網目の大きさについて説明する図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る冷却デバイス付きマスクを冷却デバイスの位置で上方から断面視した断面模式図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した冷却デバイスの拡大図であって、第1実施形態に係る布用の冷却デバイスの布への取付け及び取外しについて説明する図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係冷却デバイス付きマスクを冷却デバイスの位置で上方から断面視した断面模式図である。
【
図6】
図6は、取付部の変形例として、取付部に設けられた開口部を説明する図である。
【
図7】
図7は、取付部に開口部が設けられた場合の、冷却デバイス付き布に冷却デバイスが取付け及び取外しを説明する図である。
【
図8】
図8は、冷却デバイスの変形例を示す図である。
【
図9】
図9は、一例として、シャツに取り付けられた冷却デバイスを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態における布用の冷却デバイス、冷却デバイス付き布、及び冷却デバイス付きマスクについて図面を用いて説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。また、「冷却デバイス付き布」とは、冷却デバイスと、その冷却デバイスに対する取付け及び取外しが可能な布と、を備える。つまり、「冷却デバイス付き」とは、冷却デバイスが取り付けられている状態と冷却デバイスが取り外されている状態を含んでいる。
【0020】
(第一実施形態)
図1は、ユーザが、実施形態における冷却デバイス付きマスク1(以下、マスク1という)を着用した図である。
図1に示すように、マスク1は、本体部11と、装着部12と、冷却デバイス10と、を備えている。本体部11は、ユーザの少なくとも口元を覆う布であり、冷却デバイス付き布である。本体部11は、取付部11aと布地部11bとを有する。取付部11aは、特に冷却したい部分を覆う布である。本実施形態においては下あごの左右両側を冷却することを意図しているため、取付部11aは、
図1に示すように下あごの左右両側を覆うように設けられている。布地部11bは、本体部11のうち取付部11a以外の部分であり、特には冷却する必要がない部分を覆う布である。本実施形態においては唇及び上あごを冷却することを特には意図していないため、布地部11bは唇及び上あごを覆うように設けられている。本体部11は編まれた布地で構成されている。
【0021】
図2は本体部11の取付部11aと布地部11bとの網目の大きさについて説明する図である。
図2に示すように、取付部11aには比較的大きい網目11cが形成されている。布地部11bは網目がほとんど形成されていないか、極めて微小な網目が形成されている(図示省略)。すなわち、取付部11aの網目11cは、布地部11bの網目よりも大きく形成されている。取付部11aに形成される網目11cの具体的な望ましい大きさについては後述する。
また、冷却デバイス付き布11の取付部11aは、布地部11bよりも熱伝導率が高い繊維材料で形成されている。例えば、取付部11aに使用される材料は、ポリエステル、ポリエチレン、キュプラなどが用いられてよい。また、布地部11bには、コットン、レーヨン、リネンなどが用いられてもよい。
【0022】
図1に戻って、装着部12は、ユーザがマスク1を装着するために耳などにかけられることでマスク1の本体部11をユーザの頭部に保持する。冷却デバイス10は、冷却モジュール20と、配線ケーブル13とを有する。配線ケーブル13は、バッテリー2と接続するための端子13aを有する。配線ケーブル13は、バッテリー2と接続して、バッテリー2の電力を冷却モジュール20に供給する。なお、冷却デバイス10は、配線ケーブル13と冷却モジュール20とが一体に接続するように構成されていても良く、配線ケーブル13と冷却モジュール20とが取り外し可能となるように構成されていても良い。また、ユーザの皮膚と後述する熱電変換素子21の冷却面21aとが直接接触した際に、ユーザの汗などによって冷却モジュール20が故障することを防ぐために、図示しない酸化シリコン膜などの軟質部材によって、冷却モジュール20及び配線ケーブル13が覆われていても良い。
【0023】
図3は、布用の冷却デバイス10と本体部11を説明する図である。
図4は、
図3に示した冷却モジュール20の拡大図である。
図3及び
図4に示すように、冷却モジュール20は、熱電変換素子21と、放熱部材22と、ファン23と、を備えている。ここで、熱電変換素子21は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する素子であり、例えばペルチェ素子である。熱電変換素子21は、電気エネルギーが加えられると冷却される冷却面21aと、電気エネルギーが加えられると加熱する放熱面21bとを有する。バッテリー2の電力を冷却モジュール20に供給する配線ケーブル13は、本実施形態においては熱電変換素子21と接続されている。
【0024】
放熱部材22は、放熱及び吸熱を行う部材であり、例えばヒートシンクである。放熱部材22は、熱源から熱を吸収する平板部22aと、吸収した熱を排出する棒状部22baを複数備えた排熱部22bを有する。棒状部22baは、平板部から平板部に対して垂直に延びるように設けられている。棒状部22baは、例えば、千鳥型に配列されていることが望ましい。
【0025】
ファン23は、図示しない羽根が軸を中心に回転することによって送風する装置である。ファン23は、羽根の回転により空気が羽根に近づく方向に吸い込まれる吸込面23aと、羽根の回転により空気が羽根から遠ざかる方向に吐き出される吐出面23bを有する。熱電変換素子21と、ファン23とは、配線伝送路24で接続されている。配線伝送路24は、バッテリー2から給電された熱電変換素子21から、さらにファン23に電力を供給するように構成されている。
【0026】
使用時においては、
図3に示す右側の冷却モジュール20のように、熱電変換素子21と、放熱部材22と、ファン23とが、この順に積層されて配置されている。このとき
図4に示すように、熱電変換素子21の放熱面21bと、放熱部材22の平板部22aとは、当接している。同様に、冷却モジュール20の第一形態において、放熱部材22の排熱部22bとファン23の吸込面23aは当接している。熱電変換素子21と放熱部材22との接続構造及び放熱部材22とファン23との接続構造は、例えば、凹凸構造が互いに係合することによって実現しうる。
【0027】
次に、
図4を参照して、冷却デバイス10の、マスク1の本体部11への取付け及び取外しの様子について説明する。
【0028】
冷却モジュール20は第一形態を有する。
図3に示す右側の冷却モジュール20のように、熱電変換素子21と、放熱部材22と、ファン23とが、この順に積層されて配置されている状態を第一形態と呼ぶ。このとき、熱電変換素子21の放熱面21bと放熱部材22の平板部22aとは対向して接触している。
図4において、第一形態の冷却モジュール20のうち後述の第二形態と異なる部分を破線で示している。
【0029】
また、冷却モジュール20は、布の取付け及び取外しを行うための第二形態を有する。
図3に示す左側の冷却モジュール20のように、冷却モジュール20の一部が、残りの冷却モジュール20と分離している状態を第二形態と呼ぶ。本実施形態においては、ファン23が熱電変換素子21と放熱部材22とから分離する。ただし、冷却モジュール20が第二形態にあっても、配線伝送路24を介して、熱電変換素子21とファンとは接続されている。
図4において第二形態の冷却モジュール20を実線で示している。
【0030】
冷却モジュール20の第一形態と第二形態とは、ユーザの手指の操作によって冷却モジュール20を変形させて切り替えることが可能である。
【0031】
次に、冷却モジュール20の第一形態及び第二形態と、マスク1の本体部11の取付け及び取外しとの関係について説明する。
【0032】
冷却モジュール20が第二形態であるとき、分離したファン23と放熱部材22との間に、布を挟むように配置することができる隙間が生じる。この隙間にマスク1の本体部11の取付部11aを差し入れる。取付部11aの網目11c(
図2参照)に棒状部22baを差し込むことで、放熱部材22に本体部11が取り付けられる。逆に、網目11cに差し込まれた棒状部22baを引き抜くことで、本体部11を隙間から引き抜いて放熱部材22から取り外すことができる。したがって、冷却モジュール20が第二形態にあるとき、本体部11は冷却モジュール20に着脱可能である。
【0033】
ここで、冷却モジュール20に布が取り付けられた状態で、ファン23を放熱部材22に積層させるように冷却モジュール20を変形させる。すなわち、冷却モジュール20を第二形態から第一形態に移行させる。このとき、放熱部材22とファン23との間には、本体部11を引き抜くための十分な隙間がない。このため、本体部11は冷却モジュール20に対して取り外すことができない。
また、冷却モジュール20に布が取り付けられていない状態で、ファン23を放熱部材22に積層させるように冷却モジュール20を変形させる。すなわち、冷却モジュール20を第二形態から第一形態に移行させる。このとき、放熱部材22とファン23との間には、本体部11を差し込むための十分な隙間がない。このため、本体部11は冷却モジュール20に対して取り付けることができない。
したがって、冷却モジュール20が第一形態のとき、本体部11は着脱不能である。
【0034】
冷却デバイス10は、本体部11が冷却モジュール20に固定された状態で使用される。つまり、冷却デバイス10が使用されるとき、冷却モジュール20は第1形態である。
バッテリー2から熱電変換素子21に電力が供給されることで、熱電変換素子21の冷却面21aの温度が低下する。この状態で、冷却面21aがユーザの皮膚に接触または近接することで、ユーザに対する冷却効果を得ることができる。バッテリー2(
図1参照)から電力が供給される限り、熱電変換素子21による冷却効果は保たれる。
【0035】
熱電変換素子21は冷却面21aからの冷却と同時に、放熱面21bからの発熱も生じる。放熱面21bから生じた熱は、放熱面21bと対向する放熱部材22の平板部22aから吸収され、放熱部材22の排熱部22bに蓄積される。熱電変換素子21からファン23に電力を供給されることでファン23は運転し、排熱部22bに蓄積された熱が排熱される。ここで、放熱部材22の排熱部22bとファン23の吸込面とは対向しているため、熱は熱電変換素子21及び放熱部材22の反対側に離れる方向に排出される。
【0036】
このように、上述した実施形態の冷却デバイス付きマスク1及び冷却デバイス10は、冷却モジュール20は、熱電変換素子21と放熱部材22とファン23とがこの順に積層状態で配置される第一形態と、第一形態の状態から冷却モジュール20の一部であるファンが残りの冷却モジュールである放熱部材22及び熱電変換素子21から分離した状態の第二形態とに変形可能である。第二形態では、布である本体部11を冷却モジュール20に着脱可能であり、第一形態では、布である本体部11が冷却モジュール20に着脱不能である。
【0037】
この構成によれば、バッテリー2の電力を冷却モジュール20に供給し続ける間、冷却モジュール20の熱電変換素子21は冷却機能を有する。ユーザは第二形態の冷却モジュール20に本体部11を取り付けて、その後第一形態に変形することで、本体部11に対して冷却モジュール20を容易に固定することができる。ユーザは、この冷却モジュール20を備えたマスク1を装着することで、肌を冷却することができ、その冷却効果を長持ちさせることができる。
【0038】
また、部品自体が複数に分割されて分離する構成の場合、その部品の設計が煩雑になり製造コストも増大する可能性がある。しかし、上述した実施形態の冷却デバイス10によれば、ファン23と放熱部材22という別の部品同士が互いの組付け部分で分離するので、部品自体を分割させる構成と比較して、平易に設計することができる。したがって、より製造コストを抑えた布用の冷却デバイス10を提供できる。
【0039】
上述した実施形態の冷却デバイス10によれば、ファン23は放熱部材22とは反対の方向に送風するので、熱電変換素子21の放熱面21bから発生した熱は、熱電変換素子21及び放熱部材22から離れる方向に排出される。冷却デバイス10の排熱性が向上するので、ファン23による十分な排熱効果を得るために必要な電力が低減される。これにより、熱電変換素子21に供給できる電力が多くすることができるので、熱電変換素子21の冷却性能の向上が期待できる。
【0040】
上述した実施形態の冷却デバイス10によれば、熱電変換素子21とファンとが配線伝送路24で接続されているため、冷却モジュール20が第二形態であっても、熱電変換素子21からファンに給電されるとともに、熱電変換素子21とファン24とのどちらか一方のみを紛失する虞が低減できる。これにより、冷却デバイス10の部品点数を少なくするとともに、冷却デバイス10の取付け及び取外しに係るユーザの負担を軽減できる。
【0041】
上述した実施形態の冷却デバイス10および冷却デバイス付き布の一例である本体部11によれば、本体部11を冷却モジュールに取り付ける際に、本体部11の網目11cを放熱部材22の棒状部22baに差し込む。これにより、本体部1は、棒状部22baとファン23の吸込面23aとの間の伝熱を阻害することなく、冷却モジュール20へより強固に固定される。特に、取付部11aが備える網目11cは、布地部11bの網目よりも大きく形成されているので、ユーザは簡易な作業で、冷却デバイス10の取付け及び取外しを行うことができる。
【0042】
上述した実施形態の本体部11では、冷却デバイス10が備えられる取付部11aには、布地部11bと比べて熱伝導率が高い繊維材料が用いられる。このため、放熱部材22などから伝わった熱は、取付部11a全体に広がって伝わる。これによりファン23による冷却効果が取付部11a全体で得られるので、本体部11の排熱性能が向上する。
【0043】
上述した実施形態の冷却デバイス10と、冷却デバイス付き布の一例である本体部11とを備えるマスク1では、ユーザの少なくとも口元を覆う本体部11は冷却デバイス10を備えるため、冷却モジュール20に電力が供給されている間は使用者の口元を冷却することができる。これにより、冷却効果が長持ちするマスクが提供できる。
【0044】
なお、取付部11aの網目11cは、放熱部材22の棒状部22baと同じ大きさであるか、放熱部材22の棒状部22baよりも小さく形成されることが望ましい。より具体的には。取付部11aの網目11cの周の長さは、棒状部22baの周の長さの60%~100%であることが望ましい。このとき、取付部11aの網目11cに棒状部22baを差し込むと、棒状部22baと取付部11aの網目11cが密着するので、棒状部22ba周りに隙間が発生しにくい。したがって、放熱部材22の棒状部22baを介して熱交換を行いつつも、放熱部材22の棒状部22ba周りで空気は交換されにくい冷却デバイス付き布11が提供できる。
【0045】
(第二実施形態)
次に第二実施形態に係る冷却デバイス110を説明する。
図5は第二実施形態に係る冷却デバイス110について説明する図である。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。
【0046】
図3に示すように第一実施形態では、複数の冷却モジュール20が用いられるとき、配線ケーブル13を介して複数の冷却モジュール20は電気的に直列に接続されていたのに対して、
図5に示すように、配線ケーブル131,132を介して複数の冷却モジュール20は並列に接続されている点が異なっている。
【0047】
このとき、バッテリー2と接続する端子13aから、配線ケーブル131,132は二手に分かれて複数の冷却モジュール20と接続しているので、配線ケーブル131,132は本体部に沿わせて配置される必要はなく、配線ケーブル131,132の配置の自由度が向上する。これにより、冷却デバイス110を使用時におけるユーザの快適性が向上する。
【0048】
図6は、取付部11aの変形例として、取付部111aに設けられた開口部111cを説明する図である。
図6に示すように、
図2に示した第一実施形態の取付部11aと比較すると、変形例に係る本体部111(冷却デバイス付き布の一例)の取付部111aには、開口部111cが設けられる点が異なっている。開口部111cは、熱電変換素子21と放熱部材22とファン23とが積層される方向から見たときの冷却モジュール20と、略同等の大きさ及び形状で形成されている。これにより、開口部111cは冷却モジュール20が挿入可能に構成されている。一方で、布地部111bには、冷却モジュール20が挿通できるほどの開口部は設けられていない。
【0049】
開口部111cには、挿通された冷却モジュール20を取り付け可能に構成された取付パーツ31を備えている。
図6の例では、取付パーツ31が開口部111cの全周にわたって設けられているが、開口部111cの一部だけに設けられても良い。また、取付パーツ31に冷却モジュール20が取り付けられる手段は他の形態であっても良い。例えば、冷却モジュール20の一部の突起が、取付パーツ31の内壁面の一部に突起部が嵌合する溝が設けられていて、突起が溝に嵌合することで冷却モジュール20に本体部111が取り付けられても良い。また、取付パーツ31が、ファン23と放熱部材22とに挟まれるようにして、冷却モジュール20に本体部111が取り付けられても良い。
【0050】
次に、冷却モジュール20に対する本体部111の取付け及び取外しに説明する。
図7は、取付部11aに開口部111cが設けられた場合の、本体部111に冷却デバイス10が取付け及び取外しを説明する図である。
図7に示すように、冷却モジュール20が第二形態にあるとき、熱電変換素子21と放熱部材22とを開口部111cに挿通させることで、取付パーツ31は放熱部材22を嵌合させて保持する。これにより、冷却デバイス付き布111が冷却モジュール20に取り付けられる。そして、放熱部材22から分離していたファン23を、熱電変換素子21と放熱部材22とを開口部111cに挿通させた方向とは逆の方向から組み合わせることで、冷却モジュール20は第一形態になり、冷却デバイス付き布111は冷却モジュール20に対して取外し不能になる。
【0051】
上述した実施形態の冷却デバイス付き布である本体部111では、冷却デバイス10がこの本体部111に取り付けられるとき、一部の冷却モジュールであるファン23と残りの冷却モジュールである熱電変換素子21および放熱部材22とは開口部111cを挟んで配置される。このとき、第一形態の時に放熱部材22とファン23との間に本体部111は挟まれないため、放熱部材22とファン23との間で熱交換をより阻害されにくい。
【0052】
上述した本体部111では、開口部111cには取付パーツ31を設けているので、開口部111cに挿通された冷却モジュール20をより強固に固定することができる。
【0053】
第1実施形態および第2実施形態における冷却デバイス10は、配線ケーブルによってバッテリー2から冷却モジュールまで電力が供給されていたが、バッテリーと冷却モジュールとが一体に構成されていても良い。
図8は実施形態の冷却デバイスの変形例を示す図である。
図8に示すように、変形例における冷却モジュール20Aは、バッテリー2Aがファン23Aに一体に取り付けられている。
本変形例において熱電変換素子21Aとファン23Aとは、熱電変換素子21Aと放熱部材22Aとファン23Aとの内部を通る内部伝送路24Aによって電気的に接続されている。
【0054】
上述の冷却デバイス10Aにおいても、第二形態において布を冷却モジュール20A取り付けて、第一形態において布を冷却モジュール20Aに固定することができる。第1実施形態および第2実施形態における冷却デバイス10と同様に、ユーザは、上述の冷却デバイス10Aを備えた布を装着することで、従来よりも長続きする冷却効果を得ることができる。
【0055】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明した。本実施形態は本発明の一例であって、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0056】
例えば、本実施形態においては望ましい形態の1つとして、ファンと放熱部材とが分離することで第2形態に移行する構成について説明したが、本発明は本実施形態の例に限られない。例えば、放熱部材の板状部と放熱部材の排熱部との間で分離するなどのように、部品自体が複数に分離することで第二形態に移行するように構成されても良い。
【0057】
例えば、実施形態における冷却デバイス付きマスクは、冷却モジュールを2個備えているが、本発明が備えるべき冷却モジュールの個数は実施形態に依らず変更可能である。また、実施形態における冷却デバイス付きマスクをユーザが装着したとき、本発明の冷却モジュールがユーザのどの部分に当たるかについても、実施形態に依らず変更可能である。
【0058】
冷却デバイス付き布は、製法、種類等に限定されず、例えば、織物、編み物、不織布などが適用されてよい。
【0059】
さらに、冷却デバイス及び冷却デバイス付き布が適用される対象物はマスクに限られない。
図9は、一例として、シャツに取り付けられた冷却デバイスを説明する図である。
図9に示すように、上述した冷却デバイスがシャツの襟元に設けられていて、冷却デバイス付き布が襟に適用されているので、該シャツを着用したユーザは、バッテリーから冷却モジュールに電力が供給されている限り、頸動脈付近を冷却することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 冷却デバイス付きマスク
2,2A バッテリー
10,10A,110 冷却デバイス
11,111 冷却デバイス付き布(本体部)
11a,111a 取付部
11b,111b 布地部
11c,111c 網目
12 装着部
13,131,132 配線ケーブル
13a 端子
20,20A 冷却モジュール
21,21A 熱電変換素子
21a 冷却面
21b 放熱面
22,22A 放熱部材
22a 平板部
22b 排熱部
22ba 棒状部
23,23A ファン
23a 吸込面
23b 吐出面
24 配線伝送路
24A 内部伝送路
31 取付パーツ