(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140142
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】O/W/O型酸性乳化液状食品、食品及びO/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20220915BHJP
A23L 27/60 20160101ALN20220915BHJP
【FI】
A23D7/00 504
A23L27/60 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040827
(22)【出願日】2021-03-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501149411
【氏名又は名称】キユーピータマゴ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正記
(72)【発明者】
【氏名】石嵜 直純
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋志
【テーマコード(参考)】
4B026
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG04
4B026DH01
4B026DH02
4B026DH03
4B026DP01
4B026DX06
4B047LE02
4B047LG11
4B047LG66
4B047LP03
(57)【要約】
【課題】O/W型の酸性乳化液状食品を含み、良好な撥水性と呈味性とを両立した、O/W/O型酸性乳化液状食品を提供する。
【解決手段】O/W型酸性乳化液状食品、及び、最外油相に可塑性油脂組成物を含む、O/W/O型酸性乳化液状食品であって、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含み、5℃での固体脂含量が、3.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1.0質量%以上、10質量%以下含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
O/W型酸性乳化液状食品、及び、最外油相に可塑性油脂組成物を含む、O/W/O型酸性乳化液状食品であって、
前記可塑性油脂組成物は、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含み、
5℃での固体脂含量が、3.0質量%以上、15質量%以下であり、
25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1.0質量%以上、10質量%以下含むことを特徴とする、O/W/O型酸性乳化液状食品。
【請求項2】
前記O/W型酸性乳化液状食品と前記可塑性油脂組成物との質量比が、8:2~4:6であることを特徴とする、請求項1に記載のO/W/O型酸性乳化液状食品。
【請求項3】
前記O/W型酸性乳化液状食品が、卵黄を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のO/W/O型酸性乳化液状食品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のO/W/O型酸性乳化液状食品を含む食品。
【請求項5】
O/W型酸性乳化液状食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる乳化工程を含み、
前記可塑性油脂組成物は、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含み、
5℃での固体脂含量が、3.0質量%以上、15質量%以下であり、
25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、
前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1.0質量%以上、10質量%以下含むことを特徴とする、O/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法。
【請求項6】
前記乳化工程の前に、前記最外相用油脂を含気させる含気工程を含むことを特徴とする、請求項5に記載のO/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はO/W/O型酸性乳化液状食品、食品及びO/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水相のpHが4.5以下であり、外油相が品温20℃で固体の固体脂を含有し、内油相が品温20℃で液状の食用油脂を含有することで、離水や水分等の移行が生じにくい酸性乳化調味料が記載されている。
【0003】
特許文献2及び特許文献3には、品温20℃で固体の固体脂を5~90%含有する油脂をベースとし、水分含有量が60%以下であり、卵黄を固形分換算で1%以上10%以下、有機酸を固形分換算で0.1~3%含有する調味料を用いることで、それぞれ離水が少なく保存性に優れた野菜サラダ及びタマゴサラダが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/084264号公報
【特許文献2】特開第2017-26号公報
【特許文献3】特開第2017-33号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、O/W型の酸性乳化液状食品に食用油脂を加えたO/W/O型酸性乳化液状食品において、O/W型の酸性乳化液状食品の味を活かした優れた呈味性を有し、かつ、撥水性を良好なものとすることについて検討されていないため、この点で改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、O/W型の酸性乳化液状食品を含み、良好な撥水性と呈味性とを両立した、O/W/O型酸性乳化液状食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、O/W型酸性乳化液状食品、及び、最外油相に可塑性油脂組成物を含むO/W/O型酸性乳化液状食品において、可塑性油脂組成物が、当該可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、特定量の液油及び総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを含み、固体脂含量が特定の範囲である場合に、良好な撥水性と呈味性とを両立した、O/W/O型酸性乳化液状食品を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)O/W型酸性乳化液状食品、及び、最外油相に可塑性油脂組成物を含む、O/W/O型酸性乳化液状食品であって、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含み、5℃での固体脂含量が、3.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1.0質量%以上、10質量%以下含むことを特徴とする、O/W/O型酸性乳化液状食品、
(2)前記O/W型酸性乳化液状食品と前記可塑性油脂組成物との質量比が、8:2~4:6であることを特徴とする、(1)のO/W/O型酸性乳化液状食品、
(3)前記O/W型酸性乳化液状食品が、卵黄を含むことを特徴とする、(1)又は(2)のO/W/O型酸性乳化液状食品、
(4)(1)~(3)のO/W/O型酸性乳化液状食品を含む食品、
(5)O/W型酸性乳化液状食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる乳化工程を含み、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含み、5℃での固体脂含量が、3.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1.0質量%以上、10質量%以下含むことを特徴とする、O/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法、
(6)前記乳化工程の前に、前記最外相用油脂を含気させる含気工程を含むことを特徴とする、(5)のO/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、O/W型の酸性乳化液状食品を含み、良好な撥水性と呈味性とを両立した、O/W/O型酸性乳化液状食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、単に「%」と記載されている場合は「質量%」を意味する。
【0011】
<本発明のO/W/O型酸性乳化液状食品の特徴>
本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品は、O/W型酸性乳化液状食品、及び、最外油相に可塑性油脂組成物を含む、O/W/O型酸性乳化液状食品であって、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含み、5℃での固体脂含量が、3.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1.0質量%以上、10質量%以下含む。
【0012】
前述の組成を有する可塑性油脂組成物を最外油相に含むことで、良好な撥水性と呈味性とを両立したO/W/O型酸性乳化液状食品を提供できる。本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品は、撥水性に優れるので、接触する他の食品素材との間の水分移行を抑制することができ、O/W型酸性乳化液状食品及び当該食品素材が本来有する風味及び食感を維持することができる。また、本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品は呈味性に優れるので、O/W型酸性乳化液状食品のみずみずしい風味及び食感を呈することができる。このように、本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品は、良好な撥水性と呈味性とを兼ね備えるので、O/W型酸性乳化液状食品及び接触する他の食品素材がそれぞれ本来有する呈味を、それぞれを維持したまま喫食者に感じさせることができる。
【0013】
<O/W/O型酸性乳化液状食品の態様>
本発明において、O/W/O型酸性乳化液状食品は、水中油(O/W)型の酸性乳化液状食品を分散相として、連続相となる最外油相に分散相を均一に分散させた油中水中油(O/W/O)型の酸性乳化液状食品が意図される。
【0014】
本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品の態様としては、例えば、食品の材料等が挙げられる。食品の材料としては、例えば、調味料、並びに練り込み用、スプレッド用、フィリング用、及びトッピング用の食品の材料が挙げられる。調味料としては、例えば、マヨネーズ、タルタルソース、ドレッシング等が挙げられる。ドレッシングとしては、サラダクリーミードレッシング、乳化状ドレッシング等が挙げられる。
【0015】
<O/W/O型酸性乳化液状食品のpH>
本発明の一態様において、O/W/O型酸性乳化液状食品のpHは、酸性のpHの範囲であれば、用途等に応じて適宜調整すればよい。例えば、O/W/O型酸性乳化液状食品のpHは、微生物発生を制御して保存性を高めながら、コクがあり、かつ、口当たりのよいO/W/O型酸性乳化液状食品が得られる観点から、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは3.3以上であり、さらに好ましくは3.8以上である。また、例えば、O/W/O型酸性乳化液状食品のpHは、微生物発生を制御して保存性を高めながら、コクがあり、かつ、口当たりのよいO/W/O型酸性乳化液状食品が得られる観点から、好ましくは6.5以下であり、より好ましくは5.5以下であり、さらに好ましくは4.6以下である。
【0016】
<最外油相>
本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品は、最外油相に可塑性油脂組成物を含む。本発明の一態様における可塑性油脂組成物は、乳化剤を含有しなくても、容易にO/W/Oに乳化した状態を作ることができる。換言すれば、最外油相に乳化剤を実質的に含まないO/W/O型酸性乳化液状食品も本発明の一態様である。当該O/W/O型酸性乳化液状食品の態様によれば、健康志向が高い消費者のニーズを満たす、乳化剤を含まない食品を提供することができる。
【0017】
<可塑性油脂組成物>
本発明において、可塑性油脂組成物は可塑性を有する油脂組成物が意図される。本発明の一態様における、可塑性油脂組成物の態様としては、例えば、油脂のみの態様、油脂に加えて水系原料を含むW/O乳化物の態様のものが挙げられる。可塑性油脂組成物の油脂のみの態様としては例えばショートニングが挙げられ、可塑性油脂組成物のW/O乳化物の態様としては例えばマーガリンが挙げられる。また、本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、油脂を、可塑性油脂組成物の総量に対して、例えば65質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上含む。
【0018】
<液油の種類>
本発明において、「液油」は、品温20℃で、液状でかつ油脂結晶が析出しない油脂が意図される。本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品において、可塑性油脂組成物に含まれる液油は、特定の液油に制限されない。例えば、菜種油、オリーブ油、ごま油、えごま油、大豆油、グレープシードオイル、コーン油、亜麻仁油、米油、綿実油、サフラワー油、落花生油、パーム分別油等の植物性油脂であって前記「液油」の定義に該当するもの;魚油、肝油等の動物性油脂であって前記「液油」の定義に該当するものが挙げられる。液油は、粗油、半精製油、精製油、又はサラダ油であってよい。所望の可塑性油脂組成物が得られるように、各液油の特性を考慮して適切な液油を選択すればよい。液油は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
【0019】
<液油の含有量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含む。可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対する液油の含有量が50質量%未満であると、可塑性油脂組成物が硬くなる。そのため、O/W/O型酸性乳化液状食品も硬くなることから、O/W/O型酸性乳化液状食品の食感が悪くなる。また、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対する液油の含有量が90質量%未満であることにより、次の利点がある。まず、O/W/O型酸性乳化液状食品が含有するО/W型酸性乳化液状食品のみずみずしさがより活かされ、優れた呈味性を有する。また、可塑性油脂組成物に含有させる後述の液油以外の油脂としてできるだけ柔らかい油脂を採用できる。結果として5℃での固体脂含量と25℃での固体脂含量との差を大きくしやすい。その結果、O/W/O型酸性乳化液状食品の呈味性がより優れる。複数種の液油を併用して含有する場合は、液油の総含有量が前述の範囲となるように液油を含有すればよい。
【0020】
<液油の好ましい含有量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物に含まれる液油の含有量は、O/W/O型酸性乳化液状食品をより柔らかくし、滑らかにする観点から、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、好ましくは60質量%以上である。また、当該含有量は、O/W/O型酸性乳化液状食品においてより良好な撥水性及び呈味性を実現する観点から、好ましくは85質量%以下である。
【0021】
<液油以外の油脂>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、液油以外の油脂を含む。本発明において、「液油以外の油脂」は、品温20℃で固体の油脂、及び品温20℃で油脂結晶が析出している油脂が意図される。液油以外の油脂としては、例えば、パーム油、パーム軟質油、パーム核油、ヤシ油等の植物性油脂であって、前記「液油以外の油脂」の定義に該当するもの;ラード、牛脂、乳脂等の動物性油脂であって、前記「液油以外の油脂」の定義に該当するものが挙げられる。液油以外の油脂は、水素添加油、分別油、エステル交換油等の加工油脂であってよい。液油以外の油脂の種類及び含有量は、可塑性油脂組成物の固体脂含量(Solid Fat Content:SFC)が後述の範囲となる範囲であれば、特に制限はない。所望の可塑性油脂組成物が得られるように、各油脂の特性を考慮して適切な液油以外の油脂を選択すればよい。液油以外の油脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用して用いてもよい。
【0022】
<固体脂含量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、5℃での固体脂含量(Solid Fat Content:SFC)が、3.0質量%以上、15質量%以下である。また、本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品において、可塑性油脂組成物は、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少ない。
【0023】
なお、本明細書において、可塑性油脂組成物のSFCは、後述する実施例に記載の方法によって測定した値が意図され、可塑性油脂組成物を製造する際に使用される固体脂の量とは区別されることに留意されたい。また、「25℃でのSFCが、前記5℃のときのSFCより0.50質量%以上、8.0質量%以下少ない」とは、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が0.50質量%以上、8.0質量%以下であることが意図される。
【0024】
可塑性油脂組成物の5℃でのSFCが3.0質量%未満、又は15質量%より大きいと、O/W/O型酸性乳化液状食品において、O/W型酸性乳化液状食品のみずみずしい風味及び食感が感じられない。
【0025】
可塑性油脂組成物の、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が0.50質量%未満であると、O/W/O型酸性乳化液状食品において、O/W型酸性乳化液状食品のみずみずしい風味及び食感が感じにくく、呈味性に劣る。また、可塑性油脂組成物の、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が8.0質量%を超えると、O/W/O型酸性乳化液状食品は呈味性に優れるが、乳化が不安定になるため、保存性が悪くなる。したがって、25℃でのSFCが、前記5℃でのSFCより0.50質量%以上、8.0質量%以下少ないことにより、O/W/O型酸性乳化液状食品において、保存性を悪くすること無く、呈味性を優れるものにすることができる。
【0026】
<好ましい固体脂含量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、より良好な撥水性及び呈味性を実現する観点から、5℃でのSFCが好ましくは3.5質量%以上であり、より好ましくは5.0質量%以上である。また、可塑性油脂組成物は、より良好な呈味性を実現する観点から、5℃でのSFCが好ましくは12質量%以下である。
【0027】
また、本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、O/W/O型酸性乳化液状食品の呈味性をより良くする観点から、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が好ましくは1.5質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上である。また、可塑性油脂組成物は、O/W/O型酸性乳化液状食品の保存性をより良くする観点から、5℃でのSFCから25℃でのSFCを減じた値が好ましくは7.0質量%以下である。
【0028】
<総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールの含有量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロール(以下、「C54以上の飽和TAG」ということがある。)を1.0質量%以上、10質量%以下含む。換言すれば、本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は、可塑性油脂組成物の全油脂中のC54以上の飽和TAG量が前述の範囲となるように液油と液油以外の油脂とを含有すればよい。
【0029】
本発明において、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対するC54以上の飽和TAGの量は、後述する実施例に記載の方法によって測定した値をいう。「総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロール」は、トリアシルグリセロール1分子を構成する脂肪酸が全て飽和脂肪酸であり、且つ当該脂肪酸の炭素数の合計が54以上であることが意図される。
【0030】
可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対するC54以上の飽和TAG量が1.0質量%以上であることによって、O/W/O型酸性乳化液状食品の撥水性がより向上する。また、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対するC54以上の飽和TAG量が10質量%を超えると、喫食時に口の中で融解しづらいため、得られるO/W/O型酸性乳化液状食品の呈味性が劣るというデメリットがある。
【0031】
<総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールの好ましい含有量>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対するC54以上の飽和TAGの量は、O/W/O型酸性乳化液状食品の撥水性をより良くする観点から、好ましくは1.5質量%以上であり、より好ましくは2.5質量%以上であり、10質量%以下である。
【0032】
<最外油相における可塑性油脂組成物以外の成分>
本発明の一態様において、最外油相は可塑性油脂組成物以外の成分を含んでもよい。可塑性油脂組成物以外の成分は、最外油相に含まれた際に最外油相の乳化安定性、撥水性及び、食用とする場合の呈味性を損なわない範囲であれば、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができる。可塑性油脂組成物以外の成分は例えば、水、増粘安定剤、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類、甘味料、着色料、酸化防止剤、植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、及び香辛料等を含有することができる。
【0033】
<含気>
本発明の一態様において、可塑性油脂組成物は含気されたものであってもよい。可塑性油脂組成物が含気されていることで次の利点がある。つまり、可塑性油脂組成物が柔らかくなるため乳化工程において乳化しやすくなる。また、可塑性油脂組成物の粒子がきめ細かくなり口当たりがより良好になる。また、可塑性油脂組成物の体積を増やすことができるので、O/W/O型酸性乳化液状食品を製造する際の可塑性油脂組成物の添加量を少なくすることができる。なお、本発明において「含気されている」は、気体が相溶されていること、及び、気体が気泡を形成して分散していることのうち少なくとも一方が意図される。
【0034】
<可塑性油脂組成物の好ましい量>
本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品において、O/W型酸性乳化液状食品と可塑性油脂組成物との質量比は、8:2~4:6であることが好ましい。O/W型酸性乳化液状食品と可塑性油脂組成物との質量比が前述の範囲内であることにより、O/W型酸性乳化液状食品のみずみずしさを示し、より良好な呈味を有するO/W/O型酸性乳化液状食品を得ることができる。
【0035】
<O/W型酸性乳化液状食品>
本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品は、O/W型酸性乳化液状食品を含む。本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品に含まれるO/W型酸性乳化液状食品は、油相を分散相とし、水相を連続相として油相を均一に分散させた乳化物である。なお、O/W型酸性乳化液状食品は、乳化剤を含んでいてもよい。
【0036】
<O/W型酸性乳化液状食品の種類>
本発明の一態様において、O/W型酸性乳化液状食品の種類は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。O/W型酸性乳化液状食品の態様としては、例えば、食品の材料等が挙げられる。食品の材料としては、例えば、調味料、並びに練り込み用、スプレッド用、フィリング用、及びトッピング用の食品の材料が挙げられる。調味料としては、例えば、マヨネーズ、タルタルソース、ドレッシング等が挙げられる。ドレッシングとしては、サラダクリーミードレッシング、乳化状ドレッシング等が挙げられる。
【0037】
<O/W型酸性乳化液状食品のpH>
本発明の一態様において、O/W型酸性乳化液状食品のpHは、酸性のpHの範囲であれば、用途等に応じて適宜調整すればよい。好ましい範囲及びその理由は、前述のO/W/O型酸性乳化液状食品のpHに関する説明と同じであるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0038】
<卵黄>
本発明の一態様において、O/W型酸性乳化液状食品は、卵黄を含んでもよい。本発明において、「卵黄」は、一般に食品の用途に用いることができる卵黄が意図される。卵黄としては、例えば、(i)酵素処理、脱コレステロール処理あるいは脱糖処理等を施した加工卵黄、(ii)卵を割卵し、工業的に卵白を分離除去した液卵黄、(iii)液卵黄に砂糖や食塩を添加し、0℃以下あるいはチルドで流通させる加塩卵黄又は加糖卵黄、(iv)液卵黄を乾燥処理した乾燥卵黄等が挙げられる。中でも、卵黄は、O/W型酸性乳化液状食品の乳化安定性を向上させる観点から、好ましくはホスフォリパーゼA処理卵黄である。また、ホスフォリパーゼA処理卵黄としては、例えば、リゾ化率が好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、また、好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下のものが好ましい。
【0039】
<卵黄の好ましい含有量>
本発明の一態様において、O/W型酸性乳化液状食品に含まれる卵黄の含有量は、O/W/O型酸性乳化液状食品のコクを向上させる観点から、O/W/O型酸性乳化液状食品の総量に対して、生卵黄換算で好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上である。また、O/W/O型酸性乳化液状食品に含まれる卵黄の含有量は、O/W/O型酸性乳化液状食品の口当たりを軽くする観点から、O/W/O型酸性乳化液状食品の総量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0040】
<O/W型酸性乳化液状食品の卵黄以外の成分>
本発明の一態様において、O/W型酸性乳化液状食品は、必要に応じて、卵黄以外の成分を適宜に含んでもよい。O/W型酸性乳化液状食品は、水相成分として、例えば、水、酸味料、食塩、調味料、糖類、香辛料、着色料、着香料、増粘剤、有機酸、酸化防止剤、保存料、静菌剤等を含んでもよい。また、O/W型酸性乳化液状食品は、必要に応じて、油相成分としては、植物油脂、動物油脂、鉱物油、合成油等を含んでもよい。これらは、単独で含まれていてもよく、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0041】
<本発明の食品の特徴>
本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品を含む食品もまた、本発明の範疇に含まれる。当該食品としては、例えば、本発明のO/W/O型酸性乳化液状食品が前述の食品の材料である態様において、当該材料から得られる食品が挙げられる。また、例えば、本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品が前述の調味料である態様においては、本発明の一態様に係る食品として、当該調味料と他の食品材料とを練り合わせた食品、及び当該調味を他の食品にトッピングした食品等が挙げられる。他の食品材料としては、例えば、ゆで卵等の卵製品、エビ、イカ、ちくわ等の魚介類及び魚肉加工食品、生野菜、米、パン等が挙げられる。他の食品としては、例えば、おにぎり、サンドイッチ、お好み焼き、及びたこ焼き等が挙げられる。
【0042】
本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品の一態様である調味料は、撥水性が高い。よって、当該調味料を食品に用いれば、調味料から他の食品材料への、水分移行、及び当該水分移行に伴う調味料に含まれる水分以外の成分の移行を抑制できる。調味料から他の食品材料への水分移行を抑制することで、調味料のみずみずしさを保つことができるとともに、他の食品材料がべたつくことを抑制することができる。例えば、本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品を含むツナサラダ、及びタマゴサラダ等をおにぎり、又はサンドイッチのフィリングとして用いた場合、おにぎりの米、又はサンドイッチのパンにフィリングの水分が移行しにくいため、フィリングがパサつきにくく、米又はパンの食感が損なわれにくい。また、例えば、本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品をマカロニサラダ等のパスタサラダに用いてもよい。この態様によれば、O/W/O型酸性乳化液状食品の水分がパスタへ移行することが減じられるため、パスタがふやけることが減じられると共に、O/W/O型酸性乳化液状食品のみずみずしさが維持される。また、当該調味料を食品に用いれば、他の食品材料からの調味料への水分移行も抑制することができる。したがって、例えば、他の食品材料が生野菜又は加熱凝固卵等のサラダの材料である場合には、サラダの材料から調味料への水分の滲出が抑制され、生野菜のシャキシャキとした食感又はゆでタマゴのふんわりとした食感を保つことができる。また、当該調味料をトッピングとして用いた場合には、当該調味料が滲んで、文字、線描き及びイラストレーション等のトッピングの形状が崩れることを抑制することができる。例えば、本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品を、お好み焼き又はたこ焼きに線描きの形態でトッピングした場合、お好み焼き又はたこ焼きにトッピングされた他のソースに滲みにくいので、製品外観が好適に保たれるという効果を奏する。
【0043】
<本発明の食品中のO/W/O型酸性乳化液状食品の含有量>
食品中に含まれているO/W/O型酸性乳化液状食品の含有量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができる。
【0044】
<O/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法>
本発明の一態様にかかるO/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法は、O/W型酸性乳化液状食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる乳化工程を含み、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含み、5℃での固体脂含量が、3.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1.0質量%以上、10質量%以下含む。最外相用油脂は、可塑性油脂組成物を含めばよい。可塑性油脂組成物については、本発明に係るO/W/O型酸性乳化液状食品が含む可塑性油脂組成物と同じであるので、説明は繰り返さない。
【0045】
<乳化工程>
本発明の一態様に係る乳化工程は、O/W型酸性乳化液状食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる工程である。O/W型酸性乳化液状食品と、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とを乳化させる方法は、O/W型酸性乳化液状食品を分散相とし、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂を連続相としてエマルションを形成すればよく、特に限定されない。例えば、可塑性油脂組成物を含む最外相用油脂とO/W型酸性乳化液状食品とを、従来公知の撹拌機を用いて撹拌混合すればよい。
【0046】
乳化工程は、最外相が可塑性油脂組成物のみから形成されるように行なってもよく、最外相が可塑性油脂組成物以外の成分を含んで形成されるように行なってもよい。乳化工程は例えば、可塑性油脂組成物と可塑性油脂組成物以外の成分とを予め混合して最外相用油脂を得、得られた最外相用油脂とO/W型酸性乳化液状食品とを乳化させることで、行なってもよい。
【0047】
<可塑性油脂組成物の製造方法>
本発明の一態様にかかるO/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法において用いられる可塑性油脂組成物は、前述の範囲の組成となるように液油と液油以外の油脂とを含有すればよく、特に限定されない。例えば、液油と液油以外の油脂とを混合する工程の後に、得られた混合物を急冷可塑化する工程を経て製造された可塑性油脂組成物を用いてもよい。
【0048】
<液油と液油以外の油脂との混合>
液油と液油以外の油脂とを混合する工程では、液油と液油以外の油脂とを混合することができればよく、混合方法は特に限定されない。例えば、従来公知の撹拌機を用いて撹拌混合すればよい。油脂は加温され、融解されて撹拌混合されることが好ましい。
【0049】
<急冷可塑化>
液油と液油以外の油脂とを混合する工程後に必要により油脂結晶が析出しない程度に混合物を予備冷却した後、急冷可塑化する工程を行なう。急冷可塑化は、従来公知の冷却機を用いて行うことができる。従来公知の冷却機としては、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、及びケムテーター等の密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等を用いて行ってもよく、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターとの組み合わせにより行ってもよい。急冷可塑化を行なうことにより、可塑性を有する油脂組成物が得られる。また、急冷可塑化の際には、冷却機に加えて、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)、レスティングチューブ、又はホールディングチューブ等を使用してもよい。
【0050】
<含気工程>
本発明の一態様に係るO/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法は、乳化工程の前に、最外相用油脂を含気させる含気工程を含んでもよい。
【0051】
最外相用油脂を含気させる方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、最外相用油脂に気体を吹き込みながら撹拌することで含気させてもよく、最外相用油脂と気体とが接触するように、ミキサー等を用いて泡立てることで含気させてもよい。また、最外相用油脂を含気する方法として、窒素ガス等の不活性ガスを充填させる方法も挙げられる。
【0052】
以下、本発明について、実施例、比較例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例0053】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0054】
<原料油脂>
以下に、本実施例で用いた原料油脂を示す。
【0055】
(液油)
菜種油:市販品を用いた。
【0056】
(液油以外の油脂)
パーム油:市販品を用いた。
【0057】
パームステアリン:ヨウ素価33のものを用いた。
【0058】
エステル交換油1:以下の方法で調製したものを用いた。
【0059】
パーム分別軟質部(ヨウ素価56)を110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行って、エステル交換油1を得た。
【0060】
エステル交換油2:以下の方法で調製したものを用いた。
【0061】
原料油脂としてパーム油を60質量部、ヤシ油を20質量部、及び菜種油を20質量部混合したものを用いた以外は、エステル交換油1と同様の方法でエステル交換することで、エステル交換油2を得た。
【0062】
エステル交換油3:以下の方法で調製したものを用いた。
【0063】
原料油脂としてパーム油を20質量部、パーム核油を40質量部、及びパーム極度硬化油(ヨウ素価0.1以下)を40質量部混合したものを用いた以外は、エステル交換油1と同様の方法でエステル交換することで、エステル交換油3を得た。
【0064】
菜種極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0065】
パーム極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0066】
ハイエルシンナタネ極度硬化油:ヨウ素価0.1以下のものを用いた。
【0067】
<固体脂含量の定量方法>
可塑性油脂の固体脂含量は、基準油脂分析試験法2.2.9-2013に記載の方法で定量した。
【0068】
<トリアシルグリセロール(TAG)の定量方法>
(ガスクロマトグラフィーの条件)
カラム:Ultra ALLOY-1(MS/HT)(FRONTIER LAB製)
移動相:ヘリウムガス
注入温度:380℃
カラム温度:280℃で1分間、その後に400℃で10分間(昇温速度10℃/分)
検出器:FID
検出器温度:400℃
(定量方法)
トリウンデカノイン及びC54~C66の飽和トリアシルグリセロールをクロロホルムに溶解し、標準溶液を用意した。
【0069】
前記条件のガスクロマトグラフィーにおいて、トリウンデカノインの試料濃度当たりのクロマトグラム面積値に対する、C54~C66の飽和トリアシルグリセロールそれぞれの試料濃度当たりのクロマトグラム面積値の比(ファクター)を求めた。
【0070】
製造例及び比較製造例の可塑性油脂組成物を調製するのに用いた各原料油脂及び内部標準としてトリウンデカノインを溶解したクロロホルム溶液を試料溶液として、前記条件のガスクロマトグラフィー分析を行い、前記ファクターを基に、各原料油脂中のC54~C66の飽和トリアシルグリセロールの含有量を求めた。C54~C66の飽和トリアシルグリセロール量を合計することで、C54以上の飽和トリアシルグリセロール量を求めた。
【0071】
製造例及び比較製造例に含まれるC54以上の飽和トリアシルグリセロール量は、各原料油脂の配合量および各原料油脂中のC54以上のトリアシルグリセロール量に基づいて算出した。
【0072】
[製造例1]
表1に示す配合で、液油及び液油以外の油脂を60℃に加熱、溶解して混合した後に、冷却しながら練りを加えることで、製造例1の可塑性油脂組成物を作製した。
【0073】
[製造例2~7、及び比較製造例1~9]
表1に示す配合量にした以外は製造例1と同様にして、製造例2~7、及び比較製造例1~9の可塑性油脂組成物を作製した。なお、製造例6は、製造例7の可塑性油脂組成物を作製した後に、さらに表1の組成になるように液油を注加して、混合することによって作製された可塑性油脂組成物である。つまり、本発明の一態様における可塑性油脂組成物を液油で希釈したものである。
【表1】
【0074】
[実施例1]
<O/W型酸性乳化液状食品>
O/W型酸性乳化液状食品として、市販のマヨネーズ(キユーピー株式会社製、pH4.0)を使用した。
【0075】
<O/W/O型酸性乳化液状食品の製造方法>
<含気工程>
製造例1の可塑性油脂組成物をホバートミキサーで600秒間撹拌し、可塑性油脂組成物を含気させた。
【0076】
<乳化工程>
次いで、O/W型酸性乳化液状食品と可塑性油脂組成物との比(質量比)が7:3となる量で、O/W型酸性乳化液状食品を投入し、ホイッパーを用いて軽く撹拌することによって両者を混合して、実施例1のO/W/O型酸性乳化液状食品を作製した。
【0077】
[実施例2~7、比較例1~9]
最外相用油脂として、製造例2~6、及び比較製造例1~5、7~9の可塑性油脂組成物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~6、及び比較例1~5、7~9のO/W/O型酸性乳化液状食品を作製した。
【0078】
また、最外相用油脂として、製造例7の可塑性油脂組成物を使用したこと、及び乳化工程の前に含気工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7のO/W/O型酸性乳化液状食品を作製した。
【0079】
また、最外相用油脂として、比較製造例6の可塑性油脂組成物を使用したこと、及び含気工程において、可塑性油脂組成物を撹拌する時間を680秒間としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6のO/W/O型酸性乳化液状食品を作製した。
【0080】
<撥水性の評価>
実施例1~7、及び比較例1~9の各O/W/O型酸性乳化液状食品を平板上に薄く塗り広げ、その上にスポイト(Kartell S.p.A.製、パスツールピペット3ml非無菌)で水を1滴(0.03g)落とし、撥水性の有無を下記評価基準により目視で評価した。その水滴の形が丸く球状になっている場合、撥水性有りと判断した。撥水できていない場合は、水滴が球状にならず、滲む、又は水が白濁した。
【0081】
<撥水性の評価基準>
○:十分撥水した。具体的には、水滴の形状が、球状、又は、少し扁平して水平方向から見たときに楕円となる形状で維持された。
△:○よりは弱いが、撥水した。具体的には、水滴の形状が○より扁平したが、白濁したり、濁ったりはしなかった。
×:撥水しなかった。具体的には、水滴が球状を維持せずに広がり、白濁したり濁ったりした。
【0082】
<呈味性の評価>
パネラーが実施例1~7、及び比較例1~9の各O/W/O型酸性乳化液状食品を喫食して、下記評価基準により呈味性を評価した。
【0083】
<呈味性の評価基準>
◎:О/W型酸性乳化液状食品のみずみずしい風味を最も強く感じた。
○:◎よりも弱いが、О/W型酸性乳化液状食品のみずみずしい風味を強く感じた。
△:穏やかに感じた。
×:感じなかった。
【0084】
<pHの評価>
実施例1~7、及び比較例1~9の各O/W/O型酸性乳化液状食品のpHを測定した。
【0085】
<評価の結果>
実施例1~7、及び比較例1~9の各O/W/O型酸性乳化液状食品の評価の結果を表2に示す。
【表2】
【0086】
<O/W/O型酸性乳化液状食品を含む食品>
[実施例8]
実施例5のO/W/O型酸性乳化液状食品と加熱凝固卵の截断物とを3:7(質量比)で混合し、タマゴサラダを得た。得られたタマゴサラダを食パン表面に塗布した。得られた食パンを実施例8の食品とした。
【0087】
[実施例9]
実施例5のO/W/O型酸性乳化液状食品とツナとを3:7(質量比)で混合し、ツナサラダを得た。得られたツナサラダをフィリングとして用いたおにぎりを作製した。得られたおにぎりを実施例9の食品とした。
【0088】
[実施例10]
実施例5のO/W/O型酸性乳化液状食品と加熱処理済のタマネギとを3:7(質量比)で混合し、サラダを作製した。得られたサラダを実施例10の食品とした。
【0089】
[実施例11]
実施例5のO/W/O型酸性乳化液状食品と千切りされた生のキュウリとを3:7(質量比)で混合し、サラダを作製した。得られたサラダを実施例11の食品とした。
【0090】
[実施例12]
実施例5のO/W/O型酸性乳化液状食品と千切りされた生のダイコンとを3:7(質量比)で混合し、サラダを作製した。得られたサラダを実施例12の食品とした。
【0091】
[実施例13]
実施例5のO/W/O型酸性乳化液状食品と千切りされた生のキャベツとを3:7(質量比)で混合し、サラダを作製した。得られたサラダを実施例13の食品とした。
【0092】
<呈味性の評価>
パネラーが実施例8~13の各食品を喫食して、下記評価基準により呈味性を評価した。
【0093】
<呈味性の評価基準>
○:O/W/O型酸性乳化液状食品と他の食品材料との間の水分移行が少なく、他の食品材料本来の食感、呈味が感じられた。
×:O/W/O型酸性乳化液状食品と他の食品材料との間の水分移行が多く、他の食品材料本来の食感、呈味が感じられなかった。
【0094】
[実施例14]
実施例5のO/W/O型酸性乳化液状食品をお好み焼きソースが塗布されたお好み焼き表面に線を描くようにトッピングした。得られたお好み焼きを実施例14の食品とした。
【0095】
<外観の評価>
パネラーが実施例14の各食品を肉眼で観察して、下記評価基準により食品の外観を評価した。
【0096】
<外観の評価基準>
○:O/W/O型酸性乳化液状食品が他の食品材料に対して滲出せず、線描きの形状が維持された。
×:O/W/O型酸性乳化液状食品が他の食品材料に対して滲出し、線描きの形状が維持されなかった。
【0097】
実施例8~13の食品の呈味性の評価結果、及び実施例14の食品の外観の評価結果を表3に示す。
【0098】
【0099】
表2に示したように、O/W型酸性乳化液状食品、及び、最外油相に可塑性油脂組成物を含む、O/W/O型酸性乳化液状食品であって、前記可塑性油脂組成物は、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、液油を50質量%以上、90質量%未満含み、5℃での固体脂含量が、3.0質量%以上、15質量%以下であり、25℃での固体脂含量が、前記5℃での固体脂含量より0.50質量%以上、8.0質量%以下少なく、前記可塑性油脂組成物に含まれる油脂の総量に対して、総炭素数54以上の飽和トリアシルグリセロールを1.0質量%以上、10質量%以下含むO/W/O型酸性乳化液状食品は、良好な撥水性と呈味性とを両立することができることが示された。
【0100】
また、表3に示したように、上記性質を有するO/W/O型酸性乳化液状食品を食品材料として用いることで、接触する他の食品材料との間の水分移行が抑制され、他の食品素材本来の食感を感じさせることができる食品を提供することが可能であることも示された。