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  • 特開-超音波送受信器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140152
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】超音波送受信器
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040845
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000229081
【氏名又は名称】日本セラミック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 誠
(72)【発明者】
【氏名】重森 巧
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓貴
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA22
5D019BB02
5D019BB13
5D019FF01
5D019GG06
5D019HH02
(57)【要約】
【課題】
従来の超音波センサにおいては、有底筒状ケースの底面厚みばらつきが超音波センサの共振周波数ばらつきに影響しており、有底筒状ケースの底面に精密な加工を行う必要がある為センサの低コスト化が難しい。加えて超音波センサを駆動させ送受信を行う際、有底筒状ケースの底面部振動が有底筒状ケース側壁にも伝達してしまい、超音波センサの残響が悪化してしまうという問題がある。
【解決手段】
課題を解決する為、超音波センサに用いる筐体において樹脂又は金属から成る板と圧電素子から成るユニモルフ振動子と樹脂または金属から成る筒状部品を弾性を有する樹脂材で接合する事で有底筒状ケースにおける底面厚みの精度管理を容易に実現できる。加えて有底筒状ケースの底面部振動が有底筒状ケース側壁へ伝達する事が抑制されることで不要な振動の発生を抑制する事が出来、超音波センサの近距離検知性能が向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と筒状部を有する有底筒状ケースと、前記有底筒状ケースの内底面に接合された圧電素子とを備える超音波センサの構造において、樹脂又は金属から成る板と圧電素子から成るユニモルフ振動子と、樹脂または金属から成る筒状部品を、弾性を有する樹脂材で接合したことを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサにおいて、筒状部品に金属製端子をインサート成型または圧入によって一体化したことを特徴とする超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を有底筒状ケースに貼り合わせた空中用の超音波センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波センサを用いた距離計ユニットを車両に取り付けて、車両に物体が接近した際に運転者に衝突の危険を知らせる安全装置が広く使用されている。特に、車両を後退させる際に後方の物体を距離計ユニットで検出し、運転手に物体の接近を知らせる安全装置がよく利用されている。(例えば特許文献1)
【0003】
具体的には、物体の接近を運転手にブザーで知らせる安全装置や車両の前方に障害物があると車両が発進しないようブレーキが動作させるブレーキ連動式の安全装置が発明されている。
【0004】
ここで使用される超音波センサを用いた距離計ユニットでは、主に防滴型の超音波センサが使用されている。
防滴型の超音波センサは、例えば特許文献2で紹介されている(文献中では防滴型の超音波センサを防滴型超音波送受波器とよんでいる)。
防滴型の超音波センサは有底筒状ケースの底面に、両面に電極が施された圧電素子が接着されており、圧電素子の各電極に電気的に接続された端子は外部に取り出されており、圧電素子の上部にはスポンジ状もしくはフェルト状の吸音材をかぶせてから、シリコーンゴムなどの弾性を有する充填剤で密閉した構造である。
有底筒状ケースの開口側の背面がシリコーンゴムなどの充填剤で完全に覆われることで内部に液体が浸入しない構造になっている。前述の構造のため、超音波センサ内部にて圧電素子の各電極同士が短絡することがないため、液体がかかるような屋外でも使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-112297
【特許文献2】特開2010-154059
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の超音波センサは、有底筒状ケースの内底面に接合された圧電素子の上側に、予め成形されたスポンジを配置し、その上の有底筒状ケースの開口側に封止材を配置する構造が、一般的である。
従来の超音波センサにおいては、有底筒状ケースの底面厚みのばらつきが超音波センサの共振周波数ばらつきに大きく影響しており、このばらつきを抑える為には有底筒状ケースの底面を切削による精密な加工を行う必要がある。このため従来の技術における超音波センサにおいてはセンサ筐体の低コスト化が難しい。加えて超音波センサに電圧を印可して超音波の送受信を行う際、有底筒状ケースの底面部振動が、有底筒状ケース側壁にも伝達してしまい不要な振動が発生する事で超音波センサの残響が悪化し、超音波センサの近距離検知性能が悪くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
超音波センサに用いる筐体において、樹脂又は金属から成る板と圧電素子から成るユニモルフ振動子と樹脂または金属から成る筒状部品を弾性を有する樹脂材で接合する。有底筒状ケースにおける底面の厚みは切削による加工を実施せずともプレスなどによる安価な工法で金属板厚みの精度管理が容易となる。また、樹脂又は金属から成る板と圧電素子から成るユニモルフ振動子と樹脂または金属から成る筒状部品を弾性を有する樹脂材で接合することで、超音波センサに電圧を印可して超音波の送受信を行う際の有底筒状ケースの底面部振動が弾性を有する樹脂材によって吸収され、有底筒状ケース側壁への振動伝達が遮断されて不要な振動の発生を抑制する事が出来、超音波センサ残響特性の安定化による近距離検知性能の向上が可能となる。さらに、有低筒状ケースの底面のみを振動させることが出来る為、ユニモルフ振動子の振動効率が向上し、超音波センサの出力特性が向上し、有底筒状ケースを用いた従来の超音波センサよりも超音波の音圧の帯域が広くなり、幅広い温度域での安定した送受信性能が実現できる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の請求項1に関わる超音波センサの構造図
図2】本発明の請求項2に関わる超音波センサの構造図
図3】従来の超音波センサの構造図
図4】本発明に関わる超音波センサと従来の超音波センサにおける有底筒状ケース底面の振動振幅と有底筒状ケースの側壁部振動振幅
図5】本発明に関わる超音波センサと従来の超音波センサにおける残響時間、反射感度
図6】本発明に関わる超音波センサと従来の超音波センサにおける音圧を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【実施例0009】
(発明型の超音波センサの構造)
図1は本発明の請求項1に関わる超音波センサの構造図である。本発明に関わる超音波センサの構成は、 金属板1とPZT系セラミックと折り返し電極とを構成に含む圧電素子2から成るユニモルフ振動子3と、金属の筒状部品4を、弾性を有する樹脂材5で接合することによる筐体内部に、圧電素子2の表面を覆うように成形されたスポンジ材6aまたは発泡シリコーンからなる多孔質弾性体6bが配置される。金属板1は密度が高く、ヤング率が大きい樹脂材を用いてもよい。また、筒状部品4は金属を用いてもよい。前述の圧電素子2上の各電極は、リード線7aおよび7bで半田付けにより電気的に接続されており、有底筒状ケース2内部の開口側を非多孔質の樹脂材からなる弾性体8を充填することにより封止されている。
図2は本発明の請求項2に関わる超音波センサの構造図である。請求項2に関わる超音波センサにおいては、 金属板1とPZT系セラミックと折り返し電極とを構成に含む圧電素子2から成るユニモルフ振動子3と、樹脂または金属から成る筒状部品4を、弾性を有する樹脂材5で接合することによる筐体の内部に、圧電素子2の表面を覆うように成形されたスポンジ材6aまたは発泡シリコーンからなる多孔質弾性体6bが配置される。筒状部品4には金属端子9aおよび9bがインサートまたは圧入により一体化されている。前述の圧電素子2上の各電極とピン端子9aおよび9bの各端子はリード線10aおよび10bで半田付けにより電気的に接続されており、有底筒状ケース2内部の開口側を非多孔質の樹脂材からなる弾性体8を充填することにより封止されている。
【0010】
(従来型の超音波センサの構造) 図3は従来型の超音波センサの構造図の一例である。従来型の超音波センサの構成は、アルミ合金からなる有底筒状ケース2の内底面に、PZT系セラミックと折り返し電極とを構成に含む圧電素子1が接着されており、圧電素子1の上に成形されたスポンジ3bが配置され、リード線4が圧電素子上1の各電極とピン端子6の各端子とが半田付けにより電気的に接続されており、有底筒状ケース2内部の開口側を非多孔質のシリコーン樹脂からなる弾性体3bを充填することにより封止されている。
【0011】
図4図1の本発明に関わる超音波センサと図3の従来の超音波センサにおける有底筒状ケース底面の振動振幅と有底筒状ケースの側壁部振動振幅を比較したものである。これによると、従来の超音波センサにおける有底筒状ケース底面の振動振幅と本発明における有底筒状ケース底面の振動振幅が同等であった場合でも本発明に関わる超音波センサの有底筒状ケースの側壁部振動振幅は従来の超音波センサにおける有底筒状ケースの側壁部振動振幅に対して半分以下となっており、有底筒状ケース底面の振動が有底筒状ケース側壁部へ伝達するのを抑制出来ていることが分かる。
図5図1の本発明に関わる超音波センサと図3の従来の超音波センサにおける残響時間、反射感度を示したグラフである。残響時間について、本発明に関わる超音波センサでは従来型の約半分になっている。これは有底筒状ケース底面の振動が有底筒状ケース側壁部へ伝達する事を抑制した効果によるものである。尚、今回の発明に関わる実施の形態において、弾性を有する樹脂材5の材質をシリコーンとした場合には、硬度30から硬度50の間で良好な特性を示すことが分かった。
図6図1の本発明に関わる超音波センサと図3の従来の超音波センサにおける音圧を示したグラフである。音圧の周波数特性に関して、本発明に関わる超音波センサにおいては有低筒状ケースの底面のみを振動させることが出来る為、ユニモルフ振動子の振動効率が向上し、従来の超音波センサよりもより広帯域において高い音圧を示している。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、車両向けのバックセンサやコーナーセンサ、自動駐車システムのみならず、超音波センサが利用されている様々な分野に適用できる。
【符号の説明】
【0013】
1 樹脂又は金属から成る板
2 圧電素子
3 ユニモルフ振動子
4 樹脂又は金属から成る筒状部品
5 弾性を有する樹脂材
6a スポンジ材
6b 発泡シリコーンからなる多孔質弾性体
7a リード線
7b リード線
8 非多孔質の樹脂材からなる弾性体
9a ピン端子
9b ピン端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6