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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140154
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】身体付着物浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20220915BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20220915BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20220915BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220915BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20220915BHJP
   A61L 2/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/003 100
F24F7/007 B
A61L9/01 F
A61L9/14
A61L2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040847
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】592049575
【氏名又は名称】株式会社旭テック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100165593
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 淳也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕重
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信治
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
3L056BD04
3L056BF06
3L058BF04
3L058BH03
3L058BK01
4C058AA28
4C058BB02
4C058EE26
4C058JJ12
4C058JJ24
4C058JJ26
4C058KK06
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA16
4C180CB04
4C180DD09
4C180EA06X
4C180EA58X
4C180GG07
4C180HH05
4C180MM10
(57)【要約】
【課題】特殊な液体・ガス等を身体に直接触れさせることなく、身体に付着した付着物を適切に浄化することができ、且つ、有害な物質を含む気体が排気され難い身体付着物浄化装置を提供する。
【解決手段】除去部2は、気流によって身体から付着物を除去する。浄化部3は、除去部2によって身体から除去された付着物を浄化する。気体誘導路4は、除去部2の下部から浄化部3へ気体を誘導する。除去部2は、エアシャワー室10と給気部11を備える。給気部11は、装置の外部から空気を取り込むと共に、エアシャワー室10の上方から下方へ気流を発生させる。浄化部3は、殺菌消毒部30、フィルタ42、排気部40を備える。殺菌消毒部30は、殺菌消毒効果を有する浄化用液体5を気体流路20中でミスト化することで、気体中の粒子の殺菌消毒を行う。フィルタ42は、気体流路20中に設けられ、気体中の粒子を捕集する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に付着した付着物を除去して浄化する身体付着物浄化装置であって、
身体の周囲に気流を発生させることで、前記気流によって前記身体から付着物を除去する除去部と、
前記除去部によって前記身体から除去された付着物を浄化する浄化部と、
前記除去部において身体の周囲を通過した気体を、前記除去部から前記浄化部へ誘導する気体誘導路と、
を備え、
前記除去部は、
前記身体の周囲を覆うエアシャワー室と、
前記エアシャワー室の上部に設けられ、前記身体物浄化装置の外部から内部に空気を取り込むと共に、前記エアシャワー室の上方から下方へ気流を発生させる給気部と、
を備え、
前記気体誘導路は、
前記除去部における前記エアシャワー室の下部から前記浄化部へ気体を誘導し、
前記浄化部は、
前記気体誘導路によって前記除去部から誘導された気体を通過させる気体流路と、
殺菌消毒効果を有する浄化用液体を前記気体流路中でミスト化し、前記気体流路を通過する気体と前記浄化用液体を気液接触させることで、気体中の粒子の殺菌消毒を行う殺菌消毒部と、
前記気体流路中に設けられ、気体中の粒子を捕集するフィルタと、
前記気体流路内の気体を、排気口を通じて前記身体付着物浄化装置の外部に排気する排気部と、
を備えたことを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の身体付着物浄化装置であって、
前記浄化部は、
前記気体流路のうち、ミスト化された前記浄化用液体と気体を気液接触させる気液接触領域よりも下流側に、前記気体流路を通過する気体から液体を分離する気液分離部をさらに備えたことを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の身体付着物浄化装置であって、
前記殺菌消毒部は、
ミスト化された前記浄化用液体と気体を気液接触させる気液接触領域よりも高い位置に設けられ、前記浄化用液体をミスト化して放出するミストノズルと、
前記気液接触領域よりも低い位置に設けられ、一旦ミスト化された前記浄化用液体が流れ込んで貯留される貯留部と、
前記貯留部に貯留された前記浄化用液体を、前記ミストノズルへ汲み上げるポンプと、
を備えたことを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の身体付着物浄化装置であって、
前記殺菌消毒部は、
前記気液接触領域を形成する内壁のうち、前記気体誘導路側の壁面から前記貯留部側に向けて斜め下方に延びると共に、前記気体誘導路における前記浄化部側の開放端の上方を覆う逆流防止部をさらに備えたことを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の身体付着物浄化装置であって、
前記浄化用液体が次亜塩素酸水であることを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の身体付着物浄化装置であって、
前記浄化部の側部を構成する壁部に、前記浄化部の外部から作業者によって開閉可能な開閉部が設けられており、
前記開閉部が開放されることで、前記ミストノズルおよび前記貯留部が外部に開放されることを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の身体付着物浄化装置であって、
前記エアシャワー室に隣接して設けられたダストボックスと、
前記エアシャワー室と前記ダストボックスを区分けする壁部に設けられ、前記エアシャワー室の内側から使用者によって開閉されることで、前記エアシャワー室と前記ダストボックスの間を開閉する蓋部と、
をさらに備えたことを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の身体付着物浄化装置であって、
プラズマ放電によって水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンを発生させるイオン発生機能を搭載した照明装置を、前記エアシャワー室の上部に備えたことを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の身体付着物浄化装置であって、
前記除去部は、
使用者が前記エアシャワー室に出入りするために、前記エアシャワー室の側部を構成する壁部に開閉可能に設けられた扉部をさらに備えたことを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の身体付着物浄化装置であって、
前記フィルタが、HEPAフィルタまたはULPAフィルタであることを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の身体付着物浄化装置であって、
装置の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記エアシャワー室内の使用者の身体に付着した付着物を除去するための稼働出力で、前記給気部を駆動させる稼働中処理と、
前記稼働中処理が行われていない間に、前記稼働出力よりも低い待機出力で前記給気部を駆動させる待機中処理と、
を実行することを特徴とする身体付着物浄化装置。
【請求項12】
請求項11に記載の身体付着物浄化装置であって、
前記エアシャワー室内に使用者が入ったことを検知する検知部をさらに備え、
前記制御部は、
前記待機中処理の実行中に、前記エアシャワー室内に使用者が入ったことが前記検知部によって検知されることを契機として、前記待機中処理を前記稼働中処理に自動で切り換えることを特徴とする身体付着物浄化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、身体に付着した付着物を除去して浄化する身体付着物浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の身体(例えば、衣服、肌、および頭髪等)に付着し、人に害をもたらす種々の粒子(ウイルス、細菌、物質等)が知られている。例えば、近年世界中で蔓延している新型コロナウイルスは、衣服に付着した状態で少なくとも数時間は生存するとの報告がある。衣服に付着した新型コロナウイルスがそのまま放置されると、ウイルスに感染するリスクは増加する。なお、新型コロナウイルス以外にも、人に害をもたらす可能性がある多くのウイルスおよび細菌が空気中に含まれていることは言うまでもない。
【0003】
また、大気中に浮遊するマイクロプラスチック(AMPs:Airbone microplastics)が、人の健康に重大な影響を与えるとの報告もある。マイクロプラスチックは、飲食によって人の体内に取り込まれた際には体外に排出されるが、呼吸によって肺に入り込んだマイクロプラスチックは肺に溜まり込んでしまい、人に重篤な症状をもたらす危険性がある。さらに、空気中には、アレルギー反応を引き起こす可能性がある多くの粒子(例えば、花粉、埃、および黄砂等)も含まれている。
【0004】
身体に付着した付着物が人に与える影響を抑制するために、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載のエアシャワー装置は、除菌性または消臭性を有する化合物を含有する衛生水を微粒化して、人に直接吹き付けることで、除菌・消臭を図っている。特許文献2に記載のエアシャワー室は、内部に入った人が入った状態で、除菌機能を有する除菌ガスを内部に送り込む。特許文献3に記載の防護服殺菌装置は、小部屋内の人に紫外線を照射しつつエアを吹き付けると共に、フィルタを通じて小部屋内の空気を排気する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-80745号公報
【特許文献2】特開2012-137264号公報
【特許文献3】実用新案登録第3230337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載の装置では、衛生水または除菌ガスを人に直接吹き付ける必要がある。この場合、使用される衛生水または除菌ガスの種類によっては、衛生水または除菌ガス自体が人の健康に害を及ぼす可能性もある。従って、人の健康への影響が小さく、且つ除菌機能を有する衛生水または除菌ガスを使用する必要があるので、衛生水または除菌ガスの選択肢が著しく限定されてしまう。仮に、適切な衛生水または除菌ガスが使用されたとしても、衛生水または除菌ガスを吹き付けられた人は、不快な気分となる場合も多い。
【0007】
また、特許文献3に記載の装置でも、人に紫外線を照射する必要があるため、皮膚等に影響が出る可能性がある。さらに、紫外線とフィルタのみでは無害化が困難な物質も多い。無害化できなかった物質はそのまま排気されてしまい、装置の設置位置の周囲環境が汚染されてしまう。以上のように、特殊な液体・ガス等を身体に直接触れさせることなく、身体に付着した付着物を適切に浄化することができ、且つ、有害な物質を含む気体が排気され難い装置は、従来の技術では実現することが困難であった。
【0008】
本開示の典型的な目的は、特殊な液体・ガス等を身体に直接触れさせることなく、身体に付着した付着物を適切に浄化することができ、且つ、有害な物質を含む気体が排気され難い身体付着物浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示における典型的な実施形態が提供する身体付着物浄化装置は、身体に付着した付着物を除去して浄化する身体付着物浄化装置であって、身体の周囲に気流を発生させることで、前記気流によって前記身体から付着物を除去する除去部と、前記除去部によって前記身体から除去された付着物を浄化する浄化部と、前記除去部において身体の周囲を通過した気体を、前記除去部から前記浄化部へ誘導する気体誘導路と、を備え、前記除去部は、前記身体の周囲を覆うエアシャワー室と、前記エアシャワー室の上部に設けられ、前記身体物浄化装置の外部から内部に空気を取り込むと共に、前記エアシャワー室の上方から下方へ気流を発生させる給気部と、を備え、前記気体誘導路は、前記除去部における前記エアシャワー室の下部から前記浄化部へ気体を誘導し、前記浄化部は、前記気体誘導路によって前記除去部から誘導された気体を通過させる気体流路と、殺菌消毒効果を有する浄化用液体を前記気体流路中でミスト化し、前記気体流路を通過する気体と前記浄化用液体を気液接触させることで、気体中の粒子の殺菌消毒を行う殺菌消毒部と、前記気体流路中に設けられ、気体中の粒子を捕集するフィルタと、気体流路内の気体を、排気口を通じて身体付着物浄化装置の外部に排気する排気部と、を備える。
【0010】
本開示に係る身体付着物浄化装置によると、特殊な液体・ガス等を身体に直接触れさせることなく、身体に付着した付着物を適切に浄化することができ、且つ、有害な物質を含む気体が排気され難い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】身体付着物浄化装置1の外観および内部の構成を示す正面図である。
図2】身体付着物浄化装置1の外観および内部の構成を示す平面図である。
図3】身体付着物浄化装置1の外観および内部の構成を示す左側面図である。
図4】身体付着物浄化装置1の外観および内部の構成を示す右側面である。
図5】身体付着物浄化装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図6】身体付着物浄化装置1が実行する運転制御処理のフローチャートである。
図7】変形例の身体付着物浄化装置100の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<概要>
本開示で例示する身体付着物浄化装置は、身体に付着した付着物を除去して浄化する。身体付着物浄化装置は、除去部、浄化部、および気体誘導路を備える。除去部は、身体の周囲に気流を発生させることで、気流によって身体から付着物を除去する。浄化部は、除去部によって身体から除去された付着物を浄化する。気体誘導路は、除去部において身体の周囲を通過した気体を、除去部から浄化部へ誘導する。除去部は、エアシャワー室と給気部を備える。エアシャワー室は、使用者の身体の周囲を覆う(身体の周囲の全てを覆ってもよいし、身体の周囲の一部が開放されていてもよい)。給気部は、エアシャワー室の上部に設けられ、身体物浄化装置の外部から内部に空気を取り込むと共に、エアシャワー室の上方から下方へ気流を発生させる。気体誘導路は、除去部におけるエアシャワー室の下部から浄化部へ気体を誘導する。浄化部は、気体流路、殺菌消毒部、フィルタ、および排気部を備える。気体流路は、気体誘導路によって除去部から誘導された気体を通過させる流路である。殺菌消毒部は、殺菌消毒効果を有する浄化用液体を気体流路中でミスト化し、気体流路を通過する気体と、ミスト化した浄化用液体を気液接触させることで、気体中の粒子の殺菌消毒を行う。フィルタは、気体流路中に設けられ、気体中の粒子を捕集する。排気部は、気体流路内の気体を、排気口を通じて装置の外部に排気する。
【0013】
本開示で例示する身体付着物浄化装置によると、まず、外部から取り込まれた空気の気流によって、身体に付着した付着物が除去される。従って、特殊な液体・ガス等を身体に直接触れさせる場合に比べて安全性が高く、使用者が不快な気分となる可能性も低い。また、エアシャワー室では、上方から下方への気流が発生する。従って、下方から上方への気流、または、横方向の気流等が利用される場合に比べて、気流によって身体から除去された粒子が、使用者の口および鼻等から口内および体内に入り込んでしまう可能性が低下する。さらに、エアシャワー室の下部から浄化部へ誘導された気体には、ミスト化された浄化用液体による殺菌消毒と、フィルタによる粒子の捕集の両方が施される。つまり、本開示の身体付着物浄化装置では、ウイルス等の殺菌消毒と、殺菌消毒の効果が無いマイクロプラスチック等の粒子の捕集が両方行われる。従って、身体から除去された付着物を含む気体は、殺菌消毒と粒子の捕集によって適切に無害化された状態で、排気部によって装置の外部に排気される。以上のように、本開示の身体付着物浄化装置によると、特殊な液体・ガス等を身体に直接触れさせることなく、身体に付着した付着物を適切に浄化することができ、且つ、有害な物質を含む気体が排気され難い。
【0014】
フィルタは、気体流路のうち、浄化用液体と気体を気液接触させる気液接触領域よりも下流側(例えば、装置から気体が排出される排気口等)に設けられていてもよい。この場合、気体流路を通過する気体は、殺菌消毒部によって殺菌消毒が行われた後に、フィルタを通過する。その結果、身体から除去されたウイルス等は、フィルタに付着する前に殺菌消毒部を通過する。よって、ウイルス等がフィルタに付着し難くなるので、フィルタの交換等の作業が安全に行われ易い。
【0015】
浄化部は、気体流路のうち、ミスト化された浄化用液体と気体を気液接触させる気液接触領域よりも下流側に(つまり、排気口側)に、気体流路を通過する気体から液体を分離する気液分離部を備えていてもよい。この場合、ミスト化された浄化用液体を含んだまま気体が装置の外部に排気されることが、適切に抑制される。例えば、安全性が高い浄化用液体である次亜塩素酸水であっても、噴霧状の次亜塩素酸水が人に吸引されるような取り扱いは推奨されていない。従って、浄化用液体を含んだ気体が排気されることを、気液分離部によって抑制することで、装置の安全性おより利便性がさらに向上する。
【0016】
なお、フィルタは、気体流路のうち、気液分離部よりもさらに下流側に設けられていてもよい。つまり、気液分離部は、気体流路のうち、気液接触領域とフィルタの間に設けられていてもよい。この場合、ミスト化された浄化用液体がフィルタに付着する可能性が低下する。よって、浄化用液体によるフィルタの目詰まり等も適切に抑制される。
【0017】
殺菌消毒部は、ミストノズル、貯留部、およびポンプを備えていてもよい。ミストノズルは、気液接触領域よりも高い位置に設けられ、浄化用液体をミスト化して放出する。貯留部は、気液接触領域よりも低い位置に設けられる。貯留部には、ミストノズルによって一旦ミスト化された浄化用液体が流れ込んで貯留される。ポンプは、貯留部に貯留された浄化用液体を、ミストノズルへ汲み上げる。この場合、殺菌消毒部は、浄化用液体を内部で循環させながら、気体中の粒子の殺菌消毒を行うことができる。従って、浄化用液体の消費量が大幅に削減される。
【0018】
なお、前述した気液分離部は、浄化用液体の貯留部の上方(例えば、鉛直上方)に設けられていてもよい。この場合、気液分離部によって分離された浄化用液体は、貯留部に流れ込む。従って、より効率良く浄化用液体が利用される。
【0019】
殺菌消毒部は逆流防止部を備えていてもよい。逆流防止部は、気液接触領域を形成する内壁のうち、気体誘導路側の壁面から貯留部側に向けて斜め下方に延びると共に、気体誘導路における浄化部側の開放端の上方を覆う。この場合、ミスト化された後に逆流防止部上に落下した浄化用液体は、気体誘導路の開放端に入り込まずに、逆流防止部を伝って貯留部に流れ込む。よって、浄化用液体が気体誘導路を通じて除去部へ流れることが、適切に抑制される。
【0020】
浄化用液体は次亜塩素酸水であってもよい。次亜塩素酸水は、強力な殺菌消毒効果を有しつつ、人に対する安全性も高い浄化用液体として、厚生労働省に認められている。また、次亜塩素酸水は、有機物と接することで分解されて水となるので、環境に対する安全性も高く、取り扱いも容易である。従って、浄化用液体として次亜塩素酸水が用いられることで、より適切、容易、且つ安全に付着物が浄化される。
【0021】
ただし、次亜塩素酸水とは異なる浄化用液体を採用することも可能である。例えば、銀イオン水が浄化用液体として採用されてもよい。また、次亜塩素酸水や銀イオン水以外であっても、殺菌消毒効果を有し、且つ人や環境に対する安全性が高い液体であれば、浄化用液体として好適に使用できる。
【0022】
浄化部の側部を構成する壁部に、浄化部の外部から作業者によって開閉可能な開閉部が設けられていてもよい。開閉部が開放されることで、ミストノズルおよび貯留部が外部に開放されてもよい。この場合、作業者は、開閉部を開放させることで、例えば、貯留部への浄化用液体の補充作業、およびミストノズルのメンテナンス等の種々の作業を容易に実行することができる。また、開閉部が閉鎖されることで、ミスト化された浄化用液体等が外部に漏洩することが防止される。よって、より適切に身体付着物浄化装置が稼働される。
【0023】
身体付着物浄化装置は、ダストボックスと蓋部をさらに備えていてもよい。ダストボックスは、エアシャワー室に隣接して設けられる。蓋部は、エアシャワー室とダストボックスを区分けする壁部に設けられ、エアシャワー室の内側から使用者によって開閉されることで、エアシャワー室とダストボックスの間を開閉する。この場合、使用者は、汚染されている可能性がある衣服等を、エアシャワー室内からダストボックス内に入れることができる。従って、汚染されている可能性がある衣服の着替え等を使用者が行っている間に、除去部によって付着物が除去される。よって、使用者の時間効率も向上する。
【0024】
なお、蓋部の具体的な構成は適宜選択できる。例えば、蓋部は、エアシャワー室の内側から使用者によって押し込まれることでダストボックスを開放し、且つ、押し込みが解除されることでダストボックスを閉鎖する半自動扉であってもよい。この場合、使用者は、蓋部を押し込むだけで、汚染物を容易にダストボックスに入れることができる。また、使用者が蓋部を閉鎖しなくても、半自動でダストボックスが閉鎖されるので、ダストボックスからエアシャワー室内に有害な粒子が移動することも適切に抑制される。
【0025】
身体付着物浄化装置は、エアシャワー室の上部に照明装置を備えていてもよい。照明装置は、プラズマ放電によって水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンを発生させるイオン発生機能を備えていてもよい。プラズマ放電によって水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンを発生させることで、抗ウイルス、除菌、消臭等の効果が得られることが知られている。また、プラズマ放電によって発生するこれらのイオンは、従来の殺菌装置等に用いられていた除菌ガス等とは異なり、人の健康に与える影響は著しく低い。よって、イオン発生機能を搭載した照明装置が用いられることで、身体に付着した付着物がより適切に浄化される。
【0026】
除去部には扉部が設けられていてもよい。扉部は、使用者がエアシャワー室に出入りするために、エアシャワー室の側部を構成する壁部に開閉可能に設けられている。この場合には、扉部が設けられずにエアシャワー室の一部が常に開放されている場合に比べて、エアシャワー室内の密閉度が高くなる。その結果、給気部によって外部から取り込まれた気体は、エアシャワー室の上部から下部の気体誘導路に適切に流れやすくなる。また、扉部が設けられていない場合に比べて、気流によって身体から除去された粒子が、使用者の出入り口を通じて外部に漏洩する可能性も低下する。よって、身体に付着した付着物がより適切に浄化される。
【0027】
なお、扉部を設ける場合、扉部の設置方法および設置数は適宜選択できる。例えば、除去部には、使用者がエアシャワー室に入る際に開閉される入り口用扉と、使用者がエアシャワー室を出る際に開閉される出口用扉が設けられていてもよい。また、使用者がエアシャワー室に入る際に開閉される扉部と、エアシャワー室を出る際に開閉される扉部は、同じ扉部であってもよい。また、扉部は、例えば、上下方向に延びる回転軸を中心に回動される回動扉であってもよいし、水平方向にスライドされるスライド扉であってもよい。扉部は、作業者によって手動で開閉されてもよいし、自動で開閉されてもよい。
【0028】
ただし、扉部を省略することも可能である。つまり、使用者がエアシャワー室に出入りするための入り口および出口の少なくとも一方(入り口と出口は共通でもよい)は、常に開放されていてもよいし、カーテン等によって簡易的に開閉されてもよい。これらの場合でも、身体付着物浄化装置は、エアシャワー室の上方から下方へ気流を発生させることで、身体に付着した付着物を適切に除去することが可能である。
【0029】
フィルタは、HEPAフィルタまたはULPAフィルタであってもよい。HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)とは、定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を有しており、且つ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。ULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)とは、定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率を有しており、且つ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。フィルタとしてHEPAフィルタまたはULPAフィルタが用いられることで、非常に細かい粒子も高い精度で捕集されるので、有害な物質を含む気体が排気される可能性がさらに低下する。
【0030】
身体付着物浄化装置の制御部は、稼働中処理と待機中処理を実行してもよい。稼働中処理では、制御部は、エアシャワー室内の使用者の身体に付着した付着物を除去するための稼働出力で、給気部を駆動させる。待機中処理では、制御部は、稼働中処理が行われていない間に、稼働出力よりも低い待機出力で給気部を駆動させる。この場合、待機中であっても低出力でエアシャワー室内の上方から下方へ気流が発生するので、待機中に有害な粒子が装置の外部に漏洩する可能性が低くなる。また、稼働時には、高出力で適切に付着物が除去される。よって、より適切に装置の駆動が制御される。
【0031】
ただし、待機中処理の内容を変更することも可能である。例えば、制御部は、待機中処理では給気部の駆動を完全に停止させてもよい。また、制御部は、複数段階で待機中処理を実行してもよい。例えば、制御部は、稼働中処理の終了後の所定時間は、稼働出力よりも低い待機出力で給気部を駆動させると共に、所定時間が経過した以後は給気部の駆動を完全に停止させてもよい。また、制御部は、稼働中処理が終了した以後の時間が経過する毎に、給気部の出力を徐々に下げてもよい。これらの場合、待機中の有害粒子の漏洩の防止と、消費電力の削減が適切に両立される。また、装置の使用頻度が高い場合等は、制御部は、常に稼働中処理を実行してもよい。
【0032】
身体付着物浄化装置は、エアシャワー室内に使用者が入ったことを検知する検知部をさらに備えてもよい。制御部は、待機中処理の実行中に、エアシャワー室内に使用者が入ったことが検知部によって検知されることを契機として、待機中処理を稼働中処理に自動で切り換えてもよい。この場合、使用者または装置の管理者等が何らかの操作を行わなくても、使用者がエアシャワー室内に入ると、稼働中処理が自動的に開始される。従って、身体に付着した付着物が、より適切に浄化される。
【0033】
なお、稼働中処理を待機中処理に切り替える契機も適宜選択できる。例えば、制御部は、エアシャワー室内に使用者が残っているか否かに関わらず、設定された稼働時間だけ稼働中処理を実行した後に、稼働中処理を待機中処理に切り替えてもよい。この場合、稼働時間は、装置の管理者等によって適宜調整されてもよい。また、制御部は、エアシャワー室内から使用者がいなくなったことが検知されることを契機として、稼働中処理を待機中処理に切り替えてもよい。
【0034】
また、検知部の構成も適宜選択できる。例えば、使用者がエアシャワー室に出入りするための扉部を設ける場合、扉部が開放状態から閉鎖状態とされたことを検知するセンサが、検知部として採用されてもよい。また、使用者がエアシャワー室内にいるか否かを検知する赤外線センサ等が、検知部として採用されてもよい。
【0035】
<実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、図1図4を参照して、本実施形態における身体付着物浄化装置1の機械的構成について説明する。図1図4では、身体付着物浄化装置1の外観に加えて、内部の構成の一部も模式的に示されている。図1は、身体付着物浄化装置1の正面図、図2は身体付着物浄化装置1の平面図、図3は身体付着物浄化装置1の左側面図、図4は身体付着物浄化装置1の右側面図である。なお、図1図4に示す矢印は、気体(主に空気)が流れる方向を示す。
【0036】
(全体構成)
図1に示すように、身体付着物浄化装置1は、除去部2、浄化部3、および気体誘導路4(図1における下部の斜線部分)を備える。除去部2は、使用者(つまり、付着物を除去する対象者)の身体の周囲に気流を発生させることで、気流によって身体から付着物を除去する。本実施形態では、気流によって身体から除去される付着物(粒子等)には、ウイルス、細菌、マイクロプラスチック、花粉、埃、および黄砂等の種々の物質が含まれる。浄化部3は、除去部2によって使用者の身体から除去された付着物を浄化する。気体誘導路4は、除去部2において身体の周囲を通過した気体を、除去部2から浄化部3へ誘導する。
【0037】
(除去部)
除去部2について詳細に説明する。除去部2は、エアシャワー室10、給気部11、照明装置12、扉部13(入り口用扉13A、出口用扉13B)、検知部14、ダストボックス15、および蓋部16を備える。
【0038】
図1に示すように、エアシャワー室10は、使用者の身体を覆う。本実施形態のエアシャワー室10は、後述する扉部13(入り口用扉13Aおよび出口用扉13B)が閉じられた状態で、使用者の身体の周囲の全ての方向(つまり、上方、下方、および側方の全ての方向)を覆う。ただし、使用者の周囲の一部が開放されていてもよい。
【0039】
給気部11(図1図3参照)は、エアシャワー室10の上部(本実施形態では天井部)に設けられている。給気部11は、身体付着物浄化装置1の外部から内部に空気を取り込むと共に、エアシャワー室10の内部で上方から下方へ気流を発生させる。また、図1に示すように、気体誘導路4における一対の開放端4A,4Bのうち、除去部2側の開放端4Aは、エアシャワー室10の下部に位置している。つまり、気体誘導路4は、除去部2におけるエアシャワー室10の下部から浄化部3へ気体を誘導する。その結果、給気部11によってエアシャワー室10内に取り込まれた気体は、使用者の身体から付着物を除去しながら、エアシャワー室10内を上方から下方へ移動し、開放端4Aを通じて気体誘導路4に誘導される。従って、下方から上方への気流、または、横方向の気流等が利用される場合に比べて、気流によって身体から除去された粒子が、使用者の口および鼻等から口内および体内に入り込んでしまう可能性が低下する。また、身体に直接触れるのは空気なので、特殊な液体やガス等を体に直接触れさせる場合に比べて安全性が高く、使用者が不快な気分となる可能性も低い。
【0040】
図2に示すように、本実施形態では、エアシャワー室10の天井部に設けられた4つの給気ファンが、給気部11として使用されている。ただし、給気部11の構成を変更することも可能である。例えば、給気部11は、エアシャワー室10の側面の上部から、横方向または斜め方向に空気を取り込んだ後、取り込んだ空気をエアシャワー室10内の下方へ送り込んでもよい。
【0041】
照明装置12(図1および図3参照)はエアシャワー室10の上部(詳細には、エアシャワー室10の天井部の内側)に設けられており、エアシャワー室10の内部を照明する。本実施形態の照明装置12は、人感センサ(本実施形態では赤外線センサ)を備える。照明装置12は、エアシャワー室10内で人を感知すると照明を点灯させると共に、人を感知しなくなった以後所定時間(例えば30秒)が経過すると、照明を消灯させる。
【0042】
本実施形態の照明装置12は、プラズマ放電によって水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンを発生させるイオン発生機能を備える。プラズマ放電によって発生した水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンは、抗ウイルス、除菌、消臭等の効果を発揮する。また、プラズマ放電によって発生するこれらのイオンは、従来の殺菌装置等に用いられていた除菌ガス等とは異なり、人の健康に与える影響は著しく低い。よって、身体に付着した付着物が、より適切に浄化される。
【0043】
扉部13(図1図3参照)は、使用者がエアシャワー室10に出入りするために、エアシャワー室10の側部を構成する壁部に開閉可能に設けられている。従って、扉部13が設けられずにエアシャワー室10の一部(出入り口)が常に開放されている場合に比べて、エアシャワー室10内の密閉度が高くなる。その結果、給気部11によって外部から取り込まれた気体は、エアシャワー室10の上部から下部の気体誘導路4に適切に流れやすくなる。また、扉部13が設けられていない場合に比べて、気流によって身体から除去された粒子が、使用者の出入り口を通じて外部に漏洩する可能性も低下する。
【0044】
なお、図2および図3に示すように、本実施形態の除去部2には、使用者がエアシャワー室10に入る際に開閉される入り口用扉13Aと、使用者がエアシャワー室10を出る際に開閉される出口用扉13Bが設けられている。入り口用扉13Aおよび出口用扉13Bは、共に、上下方向に延びる回転軸を中心として手動で回動される回動扉である。しかし、身体付着物浄化装置1に扉部13を設ける場合、扉部13の数および構造は適宜選択できる。例えば、1つの扉部が、入り口用と出口用で兼用されてもよい。扉部は、スライド扉であってもよい。扉部は、自動で開閉されてもよい。
【0045】
検知部14(図1参照)は、エアシャワー室10内に使用者が入ったことを検知する。一例として、本実施形態の検知部14は、扉部13(詳細には、入り口用扉13A)が開放状態から閉鎖状態とされたことを検知することで、エアシャワー室10内に使用者が入ったことを検知するセンサである。しかし、身体付着物浄化装置1に検知部を搭載する場合、赤外線センサ等が検知部として使用されてもよい。
【0046】
ダストボックス15(図1図3参照)は、エアシャワー室10に隣接して設置されている。本実施形態では、ダストボックス15は、エアシャワー室10の左隣に接するように設けられている。また、本実施形態のダストボックス15の壁部(本実施形態では左側の壁部)には、使用者によってダストボックス15内に入れられた物を、身体付着物浄化装置1の外側から取り出すための汚染物取り出し用扉17(図1図3参照)が設けられている。
【0047】
蓋部16(図1参照)は、エアシャワー室10とダストボックス15を区分けする壁部(本実施形態では、エアシャワー室10を構成する6つの壁部のうち、左側の壁部)に設けられている。蓋部16は、エアシャワー室10の内側から使用者によって開閉されることで、エアシャワー室10とダストボックス15の間を開閉する。使用者は、蓋部16を開放させることで、有害な粒子(付着物)によって汚染されている可能性がある衣服等(以下、「汚染物」という)を、エアシャワー室10内からダストボックス15の袋に入れることができる。従って、汚染されている可能性がある衣服の着替え等を使用者が行っている間に、除去部2によって付着物が除去される。
【0048】
なお、本実施形態の蓋部16は、エアシャワー室10の内側からダストボックス15側に使用者によって押し込まれることで、ダストボックス15を開放する。また、使用者による蓋部16の押し込みが解除されることで、ダストボックス15が閉鎖される。つまり、本実施形態の蓋部16は、半自動扉である。従って、使用者は、蓋部16を押し込むだけで、汚染物を容易にダストボックス15に入れることができる。また、使用者が蓋部16を閉鎖しなくても、半自動でダストボックス15が閉鎖されるので、ダストボックス15からエアシャワー室10内に有害な粒子が移動することも適切に抑制される。
【0049】
(浄化部)
浄化部3について詳細に説明する。浄化部3は、気体流路20、殺菌消毒部30、排気部40、排気口41、およびフィルタ42を備える。
【0050】
気体流路20(図1および図4参照)は、気体誘導路4によって除去部2から浄化部3内に誘導された気体を、排気口41まで通過させる。気体流路20は、浄化部3を構成する各種部材(例えば、浄化部3の筐体の壁部等)によって形成される。図1に示すように、本実施形態における気体流路20は、気体誘導路4における浄化部3側の開放端4Bから、逆流防止部36(詳細は後述する)を迂回しつつ上方へ延びる。気体流路20は、さらに上方へ延び、気液接触領域35および気液分離部37(詳細は後述する)を通過する。そして、気体流路20は、排気部40およびフィルタ42を経て排気口41へ至る。
【0051】
殺菌消毒部30(図1および図4参照)は、殺菌消毒効果を有する浄化用液体5(図1参照)を気体流路20中でミスト化し、気体流路20を通過する気体と浄化用液体5を気液接触させることで、気体中の粒子の殺菌消毒を行う。
【0052】
以下では、ミスト化された浄化用液体5と、気体流路20を流れる気体を気液接触させる領域を、気液接触領域35とする。気液接触領域35は、気体流路20のうち、気体が下方から上方に移動する部位に形成されている。従って、気体が横方向等に移動する部位に気液接触領域35が形成される場合に比べて、ミスト化された浄化用液体5と気体がさらに接触し易くなる。なお、殺菌消毒部30の詳細な説明は後述する。
【0053】
本実施形態では、浄化用液体5として次亜塩素酸水が採用されている。次亜塩素酸水は、強力な殺菌消毒効果を有しつつ、人に対する安全性も高い。また、次亜塩素酸水は、有機物と接することで分解されて水となるので、環境に対する安全性も高く、取り扱いも容易である。従って、浄化用液体5として次亜塩素酸水が用いられることで、より適切、容易、且つ安全に付着物が浄化される。ただし、前述したように、次亜塩素酸水以外でも、殺菌消毒効果を有し、且つ人や環境に対する安全性が高い液体(例えば銀イオン水等)を、浄化用液体5として使用することができる。
【0054】
排気部(本実施形態では排気ファン)40は、気体流路20内の気体を、排気口41を通じて身体付着物浄化装置の外部に排気する。従って、気体は、給気部11によってエアシャワー室10の上部から装置内部に取り込まれた後、エアシャワー室10を下方へ向かい、気体誘導路4によって浄化部3へ誘導されて、浄化部3の気体流路20を経て排気口41から排気される。よって、給気部11のみによって気体を装置内部で誘導する場合に比べて、より円滑に気体が誘導される。装置の内部が負圧になるので、身体から除去された付着物が、浄化される前に隙間等から漏洩する可能性も低下する。
【0055】
排気口41は、浄化部3における上部に設けられている。詳細には、図1に示すように、排気口41は、人の平均身長よりも高い位置に設けられている。従って、排気口41からの排気が、身体付着物浄化装置1の近傍の人に直接当たる可能性が低下する。なお、本実施形態では、排気口41は装置の前方を向く位置に設けられている。しかし、排気口41が向く方向を変更することも可能である。
【0056】
フィルタ42は、気体流路20中に設けられており、気体流路20を通過する気体中の粒子を捕集する。その結果、使用者の身体を通過した気体は、フィルタ42によって粒子を極力除去された状態で、排気口41から装置の外部に排気される。
【0057】
本実施形態のフィルタ42には、HEPAフィルタが採用されている。HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)とは、定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率を有しており、且つ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。フィルタ42としてHEPAフィルタが用いられることで、非常に細かい粒子も高い精度で捕集される。よって、有害な物質を含む気体が排気される可能性がさらに低下する。なお、フィルタ42としてULPAフィルタが採用された場合には、細かい粒子はさらに高精度で捕集される。ただし、HEPAフィルタおよびULPAフィルタ以外のフィルタが採用されてもよい。この場合でも、フィルタ42と殺菌消毒部30が併用されることで、身体から除去された付着物を含む気体は、殺菌消毒と粒子の捕集によって適切に無害化された状態で、装置の外部に排気される。なお、フィルタ42の設置位置の詳細については後述する。
【0058】
殺菌消毒部30について詳細に説明する。図1および図4に示すように、本実施形態の殺菌消毒部30は、ミストノズル31、パイプ32、貯留部33、ポンプ34、逆流防止部36(図1参照)、気液分離部37、および開閉部38を備える。
【0059】
ミストノズル31は、浄化用液体5をミスト化して放出する。ミストノズル31は気液接触領域35よりも高い位置に設けられているので、ミストノズル31によってミスト化された浄化用液体5は、気液接触領域35を上方から下方へ通過する。パイプ32は、貯留部33からミストノズル31に浄化用液体5を供給する。貯留部33は、気液接触領域35よりも低い位置(本実施形態では、気液接触領域35の下方)に設けられている。
【0060】
貯留部33には、ミストノズル31によって一旦ミスト化された浄化用液体5が落下、または流れ込むことで、浄化用液体5が貯留される。ポンプ34は、貯留部33に貯留された浄化用液体5を、パイプ32を通じてミストノズル31へ汲み上げる。その結果、浄化用液体5は、ミストノズル31から放出される。以上の構成によって、本実施形態の殺菌消毒部30は、浄化用液体5を浄化部3の内部で循環させながら、気体中の粒子の殺菌消毒を行う。従って、浄化用液体5の消費量が大幅に削減される。
【0061】
逆流防止部36(図1参照)は、気体流路20における気液接触領域35を形成する浄化部3の内壁のうち、気体誘導路4側の壁面(本実施形態では、除去部2側の壁面)から貯留部33に向けて斜め下方に延びる。逆流防止部36は、貯留部33との間に気体流路20を確保した状態で、気体誘導路4における浄化部3側の開放端4Bの上方を覆う。つまり、逆流防止部36は、気液接触領域35と気体誘導路4の開放端4Bの間の仕切りとなる。従って、ミスト化された後に逆流防止部36上に落下した浄化用液体5は、気体誘導路4の開放端4Bには入り込まずに、逆流防止部36を伝って貯留部33に流れ込む。よって、浄化用液体5が気体誘導路4を通じて除去部2へ流れることが、適切に抑制される。一例として、本実施形態の逆流防止部36は板状の部材であるが、逆流防止部36の形状は板状に限定されない。
【0062】
気液分離部(エリミネータ)37は、気体流路20のうち、気液接触領域35よりも下流側(つまり、排気口41側)に設置されている。気液分離部37は、気体流路20を通過する気体から液体を分離する。従って、ミスト化された浄化用液体5を含んだまま気体が装置の外部に排気されることが、気液分離部37によって適切に抑制される。なお、安全性が高い次亜塩素酸水が浄化用液体5として使用されている場合でも、噴霧状の次亜塩素酸水が人に吸引されるような取り扱いは推奨されていない。従って、浄化用液体5を含んだ気体が排気されることを、気液分離部37によって抑制することで、装置の安全性おより利便性がさらに向上する。なお、本実施形態の気液分離部37は、気体の通過距離を増加させて、気体に接触する部分の面積を十分に確保することで、気体中の液体を接触面に付着させて気液を分離する。
【0063】
本実施形態では、気液分離部37は、貯留部33の上方(本実施形態では鉛直上方)に設けられている。従って、気液分離部37によって気体から分離された浄化用液体5は、下方に位置する貯留部33に流れ込む。よって、より効率良く浄化用液体5が利用される。
【0064】
また、本実施形態のフィルタ42は、気体流路20のうち、気液接触領域35よりも下流側(本実施形態では排気口41)に設けられている。従って、気体流路20を通過する気体は、殺菌消毒部30によって殺菌消毒が行われた後に、フィルタ42を通過する。その結果、身体から除去されたウイルス等は、フィルタ42に付着する前に殺菌消毒部30を通過する。よって、ウイルス等がフィルタ42に付着し難くなるので、フィルタ42の交換等の作業が安全に行われ易い。
【0065】
また、本実施形態のフィルタ42は、気体流路20のうち、気液分離部37よりもさらに下流側に設けられている。つまり、気液分離部37は、気体流路20のうち、気液接触領域35とフィルタ42の間に設けられている。従って、ミスト化された浄化用液体5がフィルタ42に付着する可能性が低下する。よって、浄化用液体5によるフィルタ42の目詰まり等も適切に抑制される。
【0066】
開閉部38は、浄化部3の側部を構成する壁部(本実施形態では、右側の壁部)に設けられている。作業者は、浄化部3の外側から開閉部38を開閉することができる。開閉部38が開放されると、ミストノズル31、パイプ32、および貯留部33等が外部に開放された状態となる。従って、作業者は、開閉部38を開放させることで、例えば、貯留部33への浄化用液体5の補充作業、および、ミストノズル31のメンテナンス等の種々の作業を容易に実行することができる。また、開閉部38が閉鎖されることで、ミスト化された浄化用液体5等が外部に漏洩することが防止される。
【0067】
(電気的構成)
図5を参照して、身体付着物浄化装置1の電気的構成について説明する。身体付着物浄化装置1は制御部50を備える。制御部50には、コントローラ51および記憶部52が設けられている。コントローラ51は、身体付着物浄化装置1における各種制御を司る。記憶部52には、コントローラ51によって実行されるプログラム、および各種値等が記憶される。また、制御部50には、前述した給気部11、照明装置12、検知部14、ポンプ34、および排気部40が接続されている。制御部50は、給気部11、照明装置12、ポンプ34、および排気部40の駆動を制御する。
【0068】
(運転制御処理)
図6を参照して、身体付着物浄化装置1が実行する運転制御処理について説明する。身体付着物浄化装置1の電源がオンとされると、制御部50のコントローラ51は、記憶部52に記憶されたプログラムに従って、図6に示す運転制御処理を実行する。なお、身体付着物浄化装置1の電源がオフとされると、運転制御処理は終了する。
【0069】
まず、コントローラ51は、照明装置12の駆動を開始する(S1)。一例として、本実施形態の照明装置12にはマイコンが搭載されており、人感センサの感知結果に基づく照明の点灯・消灯処理は、マイコンによって行われる。なお、照明装置12のイオン発生機能は、電源がオンとされている間は常に実行される。
【0070】
次いで、コントローラ51は、ポンプ34の駆動を開始する(S2)。その結果、浄化部3の気液接触領域35において、浄化用液体5がミスト化される。本実施形態では、電源がオンとされている間に常にポンプ34が駆動される。しかし、ポンプ34は、給気部11等に連動して駆動されてもよい。
【0071】
次いで、コントローラ51は、給気部11を低速で運転させる待機中処理を実行する(S3)。待機中処理とは、後述する稼働出力よりも低い待機出力で、給気部11を駆動させる処理である。
【0072】
コントローラ51は、待機中処理の実行中に、エアシャワー室10内に使用者が入室したことが検知部14によって検知されたか否かを判断する(S4)。入室が検知されていなければ(S4:NO)、処理はS3へ戻り、待機中処理が継続される。
【0073】
エアシャワー室10内への使用者の入室が検知されると(S4:YES)、コントローラ51は、待機中処理を稼働中処理に自動で切り換える(S5)。稼働中処理とは、エアシャワー室10内の使用者の身体に付着した付着物を除去するための稼働出力(前述した待機出力よりも高い出力)で、給気部11を駆動させる処理である。つまり、稼働中処理では、給気部11が高速で運転される。
【0074】
コントローラ51は、稼働中処理が開始された以後の経過時間が、設定されている稼働時間に達したか否かを判断する(S6)。経過時間が稼働時間に達していなければ(S6:NO),処理はS5へ戻り、稼働中処理が繰り返される。経過時間が稼働時間に達すると(S6:YES)、処理はS3へ戻り、稼働中処理が待機中処理に切り換えられる。
【0075】
以上のように、本実施形態の身体付着物浄化装置1では、稼働中処理が行われていない間でも、待機中処理によって給気部11が低速で運転される。従って、待機中であっても低出力で装置内の気体が浄化される。よって、待機中に有害な粒子が装置の外部に漏洩する可能性が低くなる。また、装置の設置環境の気体の浄化も進む。また、本実施形態では、使用者がエアシャワー室10内に入ると、稼働中処理が自動的に開始される。従って、使用者または装置の管理者等が何らかの操作を行わなくても、使用者の身体に付着した付着物が適切に浄化される。
【0076】
なお、本実施形態では、コントローラ51は、給気部11に対する待機中処理および稼働中処理に連動させて、排気部40に対しても同様の待機中処理および稼働中処理を実行する。従って、待機中における気体の浄化動作と、稼働中における気体の浄化動作が適切に切り替えられる。
【0077】
上記実施形態および変形例で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態および変形例で例示された技術を変更することも可能である。ここで、図7を参照して、上記実施形態の変形例の身体付着物浄化装置100について説明する。図7に示すように、身体付着物浄化装置100は、複数(図7では3つ)の除去部2A,2B,2Cを備えていてもよい。浄化部3A,3B,3Cは、複数の除去部2A,2B,2Cから気体誘導路4を通じて誘導された気体を、纏めて浄化してもよい。この場合、気体誘導路4は、例えば、除去部2A,2B,2Cの各々の床下を経て、浄化部3A,3B,3Cに通じていてもよい。また、図7に示すように、複数の除去部2A,2B,2Cおよび複数の浄化部3A,3B,3Cの少なくともいずれかを繋げることで、使用者が除去部2A,2B,2C内のエアシャワー室を歩行している間に身体の付着物を浄化することも可能である。また、図7に示すように、使用者が除去部2A,2B,2C内のエアシャワー室に出入りするための扉部を省略することも可能である。また、上記実施形態および変形例で例示した複数の技術の一部のみを採用してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 身体付着物浄化装置
2 除去部
3 浄化部
4 気体誘導路
4A,4B 開放端
5 浄化用液体
10 エアシャワー室
11 給気部
12 照明装置
13A 入り口用扉
13B 出口用扉
14 検知部
15 ダストボックス
16 蓋部
20 気体流路
30 殺菌消毒部
31 ミストノズル
33 貯留部
34 ポンプ
35 気液接触領域
36 逆流防止部
37 気液分離部
38 開閉部
40 排気部
41 排気口
42 フィルタ
50 制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7