(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140157
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】農作業車両
(51)【国際特許分類】
A01D 69/00 20060101AFI20220915BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20220915BHJP
A01D 41/02 20060101ALI20220915BHJP
F16H 61/26 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A01D69/00 303Z
A01B69/00 302
A01D41/02 B
F16H61/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040853
(22)【出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】岡田 晋輔
【テーマコード(参考)】
2B043
2B074
2B076
3J067
【Fターム(参考)】
2B043BA02
2B043BA06
2B043BB14
2B043DB17
2B043DB18
2B074AA01
2B074AB01
2B074AC02
2B074BA05
2B074DB03
2B076AA03
2B076DA03
2B076DA15
2B076DA16
2B076DB08
2B076DC01
3J067AA02
3J067AB01
3J067AC03
3J067AC51
3J067BA12
3J067BB07
3J067DA03
3J067DA63
3J067FA04
3J067FA64
3J067FB76
3J067GA14
(57)【要約】
【課題】農作業車両において、副変速機構が中立の状態で不意に機体が旋回することを防止し、安全性を確保するとともに、動力伝達系の構造をシンプルにし、ミッションケースのコンパクト化を図る。
【解決手段】走行部の左右の駆動輪に動力を伝達する伝動機構と、駆動源からの動力の伝達を受け、伝動機構に伝達される動力を生成する走行用変速装置と、駆動源からの動力の伝達を受けるとともに、運転部に設けられたステアリングホイール18による操向操作の入力を受け、伝動機構に伝達される操向用の動力を生成する操向用変速装置と、走行用変速装置と伝動機構との間の動力伝達系に設けられ、走行用変速装置により生成された動力について複数段の変速および中立の操作を行う副変速機構と、副変速機構が中立に操作されることで、操向操作を行うためのステアリングホイール18の動作を規制する操向操作規制機構60とを備えた農作業車両。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部の左右の駆動輪に動力を伝達する伝動機構と、
駆動源からの動力の伝達を受け、前記伝動機構に伝達される動力を生成する走行用変速装置と、
前記駆動源からの動力の伝達を受けるとともに、運転部に設けられた操向操作部材による操向操作の入力を受け、前記伝動機構に伝達される操向用の動力を生成する操向用変速装置と、
前記走行用変速装置と前記伝動機構との間の動力伝達系に設けられ、前記走行用変速装置により生成された動力について複数段の変速および中立の操作を行う副変速機構と、
前記副変速機構が中立に操作されることで、前記操向操作を行うための前記操向操作部材の動作を規制する操向操作規制機構と、
を備えた農作業車両。
【請求項2】
前記操向操作部材の動作は回動動作であり、
前記操向操作規制機構は、前記操向操作部材の操作にともなって回動する操作軸の回動を規制するように構成されている
請求項1に記載の農作業車両。
【請求項3】
前記副変速機構は、前記運転部に設けられた副変速レバーの操作により操作されるものであり、
前記操向操作規制機構は、前記操作軸に設けられた係止部に当接することで前記操作軸の回動を規制するロック部材を含み、
前記副変速レバーは、連結機構によって前記ロック部材に連結されており、
前記副変速レバーが前記副変速機構を中立とする中立の操作位置に位置することで、前記操向操作規制機構は、前記ロック部材により前記操作軸の回動を規制するロック状態となる
請求項2に記載の農作業車両。
【請求項4】
前記連結機構は、前記運転部において前記副変速レバーが設けられたサイドコラムの内部から前記操作軸側に向けて延出するように設けられている
請求項3に記載の農作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンバイン等の農作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばコンバイン等の農作業車両には、機体を走行させるための構成として、走行変速を行うための走行用HSTと、操向操作を行うための操向用HSTと、走行部を構成する左右一対のクローラ部に対して駆動力の伝達を行うための差動機構等の伝動機構とを備えたものがある。なお、HSTは、油圧式無段変速装置である。
【0003】
このような構成において、走行用HSTと伝動機構との間の動力伝達系に、副変速機構が設けられており、操向用HSTと伝動機構との間の動力伝達機構に、旋回クラッチとしてのクラッチ装置が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。副変速機構は、農作業車両の運転部に設けられた副変速レバーの操作によって変速操作される。副変速レバーは、切換操作位置として、例えば、高速、中速および低速の変速操作位置、並びに中立(ニュートラル)の操作位置を有する。
【0004】
特許文献1には、副変速レバーによる副変速機構の中立操作に連動させて旋回クラッチを切として操向用HSTの出力をオフとし、副変速レバーの中立以外の操作位置では旋回クラッチを入とする構成が開示されている。同文献には、副変速レバーの操作に対する旋回クラッチの連動構成として、機械的に連動させる構成と電気的に連動させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように副変速レバーによる中立操作に連動させて旋回クラッチを切とする構成によれば、副変速レバーによる中立操作によって走行用HSTの出力がオフとなった状態において、操向用HSTの出力によって左右のクローラ部が駆動して機体が旋回するといった不具合を解消することができる。
【0007】
しかしながら、上述のような構成によれば、ミッションケース内等において旋回クラッチとしてのクラッチ装置を設ける必要がある。このため、動力伝達系の構造が複雑となるとともに、ミッションケースが大型化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、副変速機構が中立の状態で不意に機体が旋回することを防止することができ、安全性を確保することができるとともに、動力伝達系の構造をシンプルにすることができ、ミッションケースのコンパクト化を図ることができる農作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る農作業車両は、走行部の左右の駆動輪に動力を伝達する伝動機構と、駆動源からの動力の伝達を受け、前記伝動機構に伝達される動力を生成する走行用変速装置と、前記駆動源からの動力の伝達を受けるとともに、運転部に設けられた操向操作部材による操向操作の入力を受け、前記伝動機構に伝達される操向用の動力を生成する操向用変速装置と、前記走行用変速装置と前記伝動機構との間の動力伝達系に設けられ、前記走行用変速装置により生成された動力について複数段の変速および中立の操作を行う副変速機構と、前記副変速機構が中立に操作されることで、前記操向操作を行うための前記操向操作部材の動作を規制する操向操作規制機構と、を備えたものである。
【0010】
本発明の他の態様に係る農作業車両は、前記農作業車両において、前記操向操作部材の動作は回動動作であり、前記操向操作規制機構は、前記操向操作部材の操作にともなって回動する操作軸の回動を規制するように構成されているものである。
【0011】
本発明の他の態様に係る農作業車両は、前記農作業車両において、前記副変速機構は、前記運転部に設けられた副変速レバーの操作により操作されるものであり、前記操向操作規制機構は、前記操作軸に設けられた係止部に当接することで前記操作軸の回動を規制するロック部材を含み、前記副変速レバーは、連結機構によって前記ロック部材に連結されており、前記副変速レバーが前記副変速機構を中立とする中立の操作位置に位置することで、前記操向操作規制機構は、前記ロック部材により前記操作軸の回動を規制するロック状態となるものである。
【0012】
本発明の他の態様に係る農作業車両は、前記農作業車両において、前記連結機構は、前記運転部において前記副変速レバーが設けられたサイドコラムの内部から前記操作軸側に向けて延出するように設けられているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、副変速機構が中立位置にある状態で不意に機体が旋回することを防止することができ、安全性を確保することができるとともに、動力伝達系の構造をシンプルにすることができ、ミッションケースのコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの駆動装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る副変速機構の構成の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る運転部の構成および連結機構の構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る連結機構の構成を示す左側面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る操向操作規制機構の構成を示す前方斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る操向操作規制機構の構成を示す後方斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る操向操作規制機構の構成を示す上方断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る操向操作規制機構の構成を示す左側面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る操向操作規制機構の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、駆動源から走行部までの動力伝達構成に設けられた副変速機構(副変速装置)が中立操作されることで運転部の操向操作部材の動作を規制する構成を設けることにより、不意な機体の旋回を防止して安全性を確保するとともに、ミッションケースのコンパクト化を図ろうとするものである。以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
以下に説明する本発明の実施の形態では、本発明に係る農作業車両として、コンバインを例にとって説明する。ただし、本発明に係る農作業車両は、コンバインに限定されるものではく、本発明は他の農作業車両にも適用可能である。
【0017】
まず、
図1、
図2および
図5を用いて、本実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、コンバイン1の前方に向かって左側および右側を、それぞれコンバイン1における左側および右側とする。
【0018】
図1および
図2に示すように、コンバイン1は、左右一対のクローラ部3,3を有するクローラ式の走行装置として構成された走行部2と、走行部2により支持された走行機体4とを備える。コンバイン1は、刈取部5と、脱穀部6と、穀粒タンク7と、選別部8と、排出オーガ9と、排藁処理部10とを備える。
【0019】
走行部2を構成する各クローラ部3は、走行機体4の下方において前後方向に延設されたトラックフレーム3aと、トラックフレーム3aに支持された各種回転体と、これらの回転体に巻回された履帯3bとを有する。クローラ部3は、トラックフレーム3aに支持された回転体として、トラックフレーム3aの前端部に支持された駆動スプロケット3c等を含む。クローラ部3は、駆動スプロケット3cにおいて、走行機体4上に搭載された駆動源としてのエンジン11の動力の伝達を受けて駆動する。
【0020】
刈取部5は、圃場の穀稈を刈り取りながら取り込むための装置構成であり、走行機体4の前部に設けられている。刈取部5は、走行機体4の前側において、コンバイン1の機体幅の略全体にわたって設けられている。刈取部5は、走行機体4に対して、昇降用の油圧シリンダを介して所定の軸回りに回動可能に装着されており、油圧シリンダの伸縮動作による回動動作によって昇降調節可能に設けられている。
【0021】
刈取部5は、刈取フレームとしての刈取支持機枠5aを有し、この刈取支持機枠5aに、分草体5b、引起装置5c、刈刃装置5e、および穀稈搬送装置5fを支持させて構成されている。刈取部5は、分草体5bにより圃場の穀稈を分草し、分草した穀稈を引起装置5cにより引き起し、引き起した穀稈を穀稈搬送装置5fにより後側へ搬送しつつ刈刃装置5eにより切断して刈り取る。刈取部5が有する各装置は、エンジン11から伝達される動力によって作動する。
【0022】
走行機体4上には、刈取部5により刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀部6と、脱穀部6から取り出された穀粒を貯留する穀粒タンク7とが、横並び状に設けられている。脱穀部6は機体左側に、穀粒タンク7は機体右側にそれぞれ配置されている。
【0023】
脱穀部6は、前後方向を回転軸方向とする扱胴6aおよび処理胴(図示略)と、扱胴6aの左方に設けられた穀稈供給装置とを有する。穀稈供給装置は、穀稈の株元を挟持して穂先を扱胴6a側とした横臥姿勢で穀稈を後方へ搬送する。穀稈供給装置は、左右方向を回転軸方向とする複数のスプロケットに巻回されたフィードチェン6bと、フィードチェン6bと協働して穀稈の株元を挟扼する穀稈供給挟扼体6cとを有する。
【0024】
走行機体4上における脱穀部6の下方には、脱穀部6により脱穀処理された処理物を選別処理する選別部8が設けられている。選別部8は、揺動選別装置8aと、図示せぬ風選別装置および穀粒搬送装置を有する。選別部8は、脱穀部6から落下してきた処理物を揺動選別装置8aにより揺動選別し、揺動選別後の処理物を風選別装置により風選別する。選別部8は、風選別後の処理物のうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒タンク7に向けて右方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部に排出する。穀粒搬送装置により穀粒タンク7に向けて搬送された穀粒は、穀粒タンク7に貯留される。
【0025】
走行機体4上の右側後端部には、穀粒タンク7内の穀粒を外部へ排出する穀粒排出装置としての排出オーガ9が旋回可能に設けられている。穀粒タンク7に貯留されている穀粒は、スクリューコンベアを内装した排出オーガ9により搬送され、排出オーガ9の先端部に設けられた排出口9aから排出される。排出口9aから排出された穀粒は、トラックの荷台やコンテナ等に投入される。
【0026】
一方、走行機体4上において、脱穀部6の後方には、脱穀部6による脱穀処理後の排藁を処理する排藁処理部10が設けられている。排藁処理部10は、排藁搬送装置10aと、排藁切断装置10bとを有する。排藁搬送装置10aは、脱穀部6により脱穀済みの穀稈(排稈)を後方に搬送して機体の外部に排出するかあるいは排藁切断装置10bに搬送する。排藁切断装置10bは、排藁搬送装置10aから搬送された排稈を切断して機体の外部に排出する。
【0027】
また、走行機体4上において、刈取部5の右方であって穀粒タンク7の前方には、キャビン15により覆われた運転部12が設けられている。運転部12は、キャビン15内に設けられている。運転部12の前部には、操向操作部材としてのステアリングホイール18が設けられており、ステアリングホイール18の後方に、運転席19が設けられている(
図5参照)。ステアリングホイール18の回転操作により、任意に機体を左右に旋回させることができる。キャビン15の右側面部には、キャビン15に対する乗降用のドア13が設けられている。
【0028】
図5に示すように、キャビン15内において、運転席19の左側方には、各種操作具等が配設された側部操作部20が設けられている。側部操作部20は、キャビン15内の左側部において平面視で前後方向に延設されたサイドコラム21を有する。サイドコラム21の上側には、変速操作具としての主変速レバー22および副変速レバー23を含む各種操作具が配設されている。
【0029】
主変速レバー22は、走行機体4の変速操作を行うための操作具である。副変速レバー23は、コンバイン1が備える副変速機構40(
図3参照)を変速操作するための操作具である。主変速レバー22および副変速レバー23は、サイドコラム21の上面部21aを貫通して立ち上がった状態で前後方向に傾動操作可能に設けられている。なお、主変速レバー22のグリップ部には、刈取部5に関する操作や脱穀部6に関する操作や車速制御に関する操作等を行うための各種スイッチが配設されている。
【0030】
運転部12の後下方には、エンジン11を含む原動機部が設けられている。エンジン11の動力は、変速装置等を介して、走行部2、刈取部5、脱穀部6、選別部8、排出オーガ9、排藁処理部10等、コンバイン1が備える各部の各種装置に伝達される。エンジン11は、ディーゼルエンジンである。
【0031】
次に、コンバイン1が備える走行機体4を走行させるための構成、および走行機体4の変速操向に関する構成について、
図3を用いて説明する。
【0032】
コンバイン1は、走行変速を行うための走行用変速装置である走行用HST36と、操向操作を行うための操向用変速装置である操向用HST37とを有する。ここで、「HST」とは、油圧ポンプを駆動させることで発生させた油圧を油圧モータで再び回転力に変換する方式を採用した油圧式無段変速装置(Hydro Static Transmission)である。各HSTの駆動により、走行機体4の直進走行や旋回走行やスピンターン等が行われる。
【0033】
走行用HST36は、油路を介して互いに接続され共通の油圧回路を構成する可変容積型の走行ポンプ36Pおよび可変容積型の走行モータ36Mを有する。また、走行用HST36は、走行ポンプ36Pに対応する走行ポンプ用電磁弁36aと、走行モータ36Mに対応する走行モータ用電磁弁36bと、出力軸36cとを有する。
【0034】
走行用HST36においては、エンジン11からの動力を受けつつ走行ポンプ用電磁弁36aを介して、走行ポンプ36Pの調整駆動(走行駆動調整)が行われる。走行ポンプ36Pの調整駆動による走行モータ36Mの駆動は、出力軸36cに伝達される。
【0035】
コンバイン1は、走行部2を構成する左右一対のクローラ部3,3に対して駆動力の伝達を行うための伝動機構としての差動機構38を備える。差動機構38は、遊星歯車群等を含んで構成されている。差動機構38は、左右の出力軸として、左側の第1出力軸38aおよび右側の第2出力軸38bとを有する。差動機構38においては、入力された駆動力が、遊星歯車群等を介して左右の第1出力軸38aおよび第2出力軸38bに出力される。第1出力軸38aおよび第2出力軸38bは、それぞれ対応するクローラ部3の駆動輪である駆動スプロケット3cに駆動力を伝達する。これにより、クローラ部3が走行駆動する。
【0036】
主変速レバー22は、変速入力軸等により変速機構32に連動連結されており、変速機構32は、走行用HST36が有する所定の走行用操作軸に連動連結されている。また、ステアリングホイール18は、操作軸としてのホイール支軸65(
図5参照)に支持されており、ホイール支軸65は、操向入力軸等により操向機構31に連動連結されており、操向機構31は、操向用HST37が有する所定の操向用操作軸に連動連結されている。
【0037】
また、コンバイン1は、副変速レバー23により操作される副変速機構40を備える。そして、走行用HST36の出力軸36cは、副変速機構40を介して差動機構38に連動連結されている。副変速レバー23は、所定の伝動機構を介して副変速機構40に連動連結されている。副変速機構40は、周知の構成のものであるが、例えば次のような構成を備えている。
【0038】
図4に示すように、副変速機構40は、第1ギア43を有する副変速軸42と、第2ギア46を有するブレーキ軸45とを含む。第1ギア43は、走行用HST36の出力軸36cからの動力の伝達を受ける所定の入力ギア41に噛合している。第2ギア46は、差動機構38への動力の伝達を行う所定の出力ギア44に噛合している。副変速機構40は、副変速軸とブレーキ軸との間に、各軸に支持され互いに噛合可能に設けられた一対のギアの組合せとして、低速用ギア(47,48)、中速用ギア(49,50)、および高速用ギア(51,46)を有する。
【0039】
低速用ギアのうち、副変速軸42に設けられた低速用ギア47は、副変速軸42に固設されており、ブレーキ軸45に設けられた低速用ギア48は、ブレーキ軸45に対して相対回転可能に支持されている。中速用ギアのうち、副変速軸42に設けられた中速用ギア49は、副変速軸42に固設されており、ブレーキ軸45に設けられた中速用ギア50は、ブレーキ軸45に対して相対回転可能に支持されている。高速用ギアのうち、副変速軸42に設けられた高速用ギア51は、副変速軸42に対して相対回転可能に支持されており、ブレーキ軸45に設けられた高速用ギアとしての第2ギア46は、ブレーキ軸45に固設されている。
【0040】
ブレーキ軸45には、低中速スライダ53が設けられている。低中速スライダ53は、スプライン嵌合等により、ブレーキ軸45に対して軸方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。低中速スライダ53は、ブレーキ軸45の軸方向の移動により、低速用ギア48または中速用ギア50に係合することで、係合したギアの回転をブレーキ軸45に伝達する。なお、ブレーキ軸45には、ブレーキ54が設けられている。
【0041】
副変速軸42には、高速スライダ55が設けられている。高速スライダ55は、スプライン嵌合等により、副変速軸42に対して軸方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。高速スライダ55は、副変速軸42の軸方向の移動により、高速用ギア51に係合することで、副変速軸42の回転を第2ギア46に伝達する。
【0042】
このような構成において、副変速機構40の変速操作として、低中速スライダ53および高速スライダ55のスライド操作による低速(L)・中速(M)・高速(H)の切換え操作が行われる。また、副変速機構40は、操作状態として、中立(ニュートラル)の状態を有する。副変速機構40の中立状態においては、低中速スライダ53および高速スライダ55はいずれのギアにも係合しておらず、副変速軸42の動力がブレーキ軸45に伝達されない。副変速機構40は、運転部12に設けられた副変速レバー23の回動操作により操作される。
【0043】
このような構成において、主変速レバー22の操作により、基本的に走行ポンプ用電磁弁36aの駆動操作が行われ、走行ポンプ36Pおよび走行モータ36Mの駆動によって出力軸36cから差動機構38へ動力が伝達される。この際、副変速レバー23の操作により、副変速機構40の駆動操作が行われる。
【0044】
したがって、主変速レバー22の操作により、エンジン11の動力が、走行ポンプ36Pや走行モータ36M等を経由して出力軸36cに伝達される。走行用HST36の出力軸36cに動力が伝達されると、出力軸36cに副変速機構40を介して連動連結された差動機構38において、各種遊星歯車群を介して第1出力軸38aおよび第2出力軸38bに駆動力が伝達され、これらの出力軸が同一方向に回転駆動する。
【0045】
すなわち、主変速レバー22の操作によって走行用HST36の回転駆動操作が行われ、差動機構38の遊星歯車群を介して第1出力軸38aおよび第2出力軸38bの駆動操作が行われる。これにより、両出力軸の正回転あるいは逆回転が行われ、左右のクローラ部3,3による前後の直進走行が行われる。また、主変速レバー22の操作量(倒し角)によって走行用HST36の出力軸36cの回転数が変化し、機体の走行速度が無段階に変速される。
【0046】
コンバイン1において、差動機構38および副変速機構40は、ミッションケース57内に収容されている。ミッションケース57は、走行機体4においてエンジン11の前方の位置に設置されている。ミッションケース57内において、副変速機構40を構成する副変速軸42やブレーキ軸45が所定の位置に軸支されている。
【0047】
また、操向用HST37は、油路を介して互いに接続され共通の油圧回路を構成する可変容積型の操向ポンプ37Pおよび可変容積型の操向モータ37Mを有する。また、操向用HST37は、操向ポンプ37Pに対応する操向ポンプ用電磁弁37aと、出力軸37cとを有する。操向用HST37においては、エンジン11からの動力を受けつつ操向ポンプ用電磁弁37aを介して、操向ポンプ37Pの調整駆動(操向駆動調整)が行われる。操向ポンプ37Pの調整駆動による操向モータ37Mの駆動は、出力軸37cに伝達される。操向用HST37の出力軸37cは、差動機構38に連動連結されている。
【0048】
このような構成において、ステアリングホイール18の操作により、基本的に操向ポンプ用電磁弁37aの駆動操作が行われ、操向ポンプ37Pおよび操向モータ37Mの駆動によって出力軸37cから差動機構38へ動力が伝達される。
【0049】
したがって、ステアリングホイール18の操作により、エンジン11の動力が、操向ポンプ37Pや操向モータ37M等を経由して出力軸37cに伝達される。操向用HST37の出力軸37cに動力が伝達されると、出力軸37cに連動連結された差動機構38において、各種遊星歯車群を介して第1出力軸38aおよび第2出力軸38bに駆動力が伝達され、これらの出力軸が互いに反対方向に回転駆動する。
【0050】
すなわち、ステアリングホイール18の操作によって操向用HST37の回転駆動操作が行われ、差動機構38の遊星歯車群を介して第1出力軸38aおよび第2出力軸38bの駆動操作が行われる。これにより、互いに反対方向である各出力軸の正回転あるいは逆回転が行われ、クローラ部3,3による旋回あるいはスピンターンが行われる。
【0051】
このように、コンバイン1は、ステアリングホイール18、主変速レバー22および副変速レバー23の操作により、走行用HST36や操向用HST37等を機械的に操作しながら、差動機構38等の機械的な動力の伝達を行い、一対のクローラ部3,3を有する走行部2による走行機体4の前後進、旋回走行、スピンターン等を行うように構成されている。
【0052】
以上のように、コンバイン1は、走行部2の左右の駆動スプロケット3cに動力を伝達する差動機構38と、エンジン11からの動力の伝達を受け、差動機構38に伝達される動力を生成する走行用HST36と、エンジン11からの動力の伝達を受けるとともに、運転部12に設けられたステアリングホイール18による操向操作の入力を受け、差動機構38に伝達される操向用の動力を生成する操向用HST37とを備える。また、コンバイン1は、走行用HST36と差動機構38との間の動力伝達系に設けられた副変速機構40とを備える。
【0053】
副変速機構40は、走行用HST36により生成された動力について複数段の変速および中立の操作を行う。本実施形態では、副変速機構40は、複数段の変速として、高速、中速および低速の切換えを行う。
【0054】
このような構成を備えたコンバイン1は、副変速機構40が中立に操作されることで、操向操作を行うためのステアリングホイール18の動作を規制する操向操作規制機構60を備えている。
【0055】
本実施形態では、操向操作を行うためのステアリングホイール18の動作は、ステアリングホイール18の回動動作である。そして、操向操作規制機構60は、ステアリングホイール18の回動操作にともなって回動するホイール支軸65の回動を規制するように構成されている。
【0056】
すなわち、操向操作規制機構60は、副変速機構40が中立の状態になることにともない、少なくとも操向用HST37が作動しない程度に、ステアリングホイール18の回動を規制する。操向操作規制機構60の構成について、
図5から
図10を用いて説明する。
【0057】
図5および
図6に示すように、ステアリングホイール18は、把持部をなす円環状のホイール本体61と、ホイール本体61の下側に設けられ下方に向けて突出した軸状の支持軸部62とを有する。ステアリングホイール18は、支持軸部62の下側に設けられた継手部63を介してホイール支軸65に連結支持されている。継手部63は、ユニバーサルジョイントとして構成されている。
【0058】
ホイール支軸65は、円形状の横断面形状をなす直線棒状の部材により構成されており、わずかに後傾状に傾斜した状態で略上下方向に延伸している。ホイール支軸65は、操向入力軸として、運転部12の前部における所定の位置で、ステアリングホイール18の回動操作にともなってステアリングホイール18と一体的に軸回りに回動するように設けられている。ホイール支軸65の下側は、ユニバーサルジョイント等の継手部を介して操向入力軸に連結されている。ホイール支軸65の左後方に、副変速レバー23が設けられている。
【0059】
副変速レバー23は、直線状に延伸した幅狭の板状の部材により構成されており、左右方向を板厚方向として設けられている。副変速レバー23は、上部を、サイドコラム21の上面部21aから突出させている。上面部21aには、前後方向に延伸した長手状のガイド孔21bが形成されている。ガイド孔21bは、副変速レバー23を貫通させるとともに副変速レバー23の前後回動を許容する。副変速レバー23の上端部には把持部23aが設けられている。
【0060】
副変速レバー23は、サイドコラム21内に固定状態で設けられた後支柱71に対して、レバー軸支部72により、左右方向を回動軸方向として所定の回動軸O1回りに回動可能に支持されている。レバー軸支部72は、後支柱71から左方に向けて突設された固定軸73に、円筒状の支持筒部74を回動可能に挿嵌させた構成を有する。固定軸73の中心軸は、回動軸O1に一致している。
【0061】
副変速レバー23は、支持筒部74の外周面から突設された支持アーム75に固定状態で支持されている。支持アーム75は、支持筒部74の筒軸方向を板厚方向とする幅狭の板状の部分であり、支持筒部74と一体の部分として支持筒部74の径方向外側に向けて突設されている。副変速レバー23は、下端部を支持アーム75に左側から重ねた状態で、ボルト76等の固定具によって支持アーム75に固定されている。このような構成により、副変速レバー23は、支持筒部74および支持アーム75と一体的に固定軸73の軸回りに前後に回動するように設けられている。
【0062】
副変速レバー23は、切換操作位置として、副変速機構40の高速の操作状態、中速の操作状態、および低速の操作状態の各状態に対応した高速位置(H)、中速位置(M)、および低速位置(L)、並びに副変速機構40の中立の状態に対応した中立位置(N)を有する。これらの副変速レバー23の切換操作位置は、後側から前側にかけて、高速位置、中速位置、中立位置、および低速位置の順に位置している。上面部21aの表面には、副変速レバー23の切換操作位置に対応した位置に、「H」、「M」、「N」、「L」等の文字が記載されている。副変速レバー23の切換操作により、主変速レバー22の変速基準値が切り換えられる。
【0063】
副変速機構40の動作として、副変速レバー23が高速位置に切換え操作されることで、高速スライダ55が高速用ギア51に係合し、高速スライダ55、高速用ギア51および第2ギア46を介して、副変速軸42の回転動力がブレーキ軸45に伝達される。また、副変速レバー23が中速位置に切換え操作されることで、低中速スライダ53が中速用ギア50に係合し、中速用ギア49,50および低中速スライダ53を介して、副変速軸42の回転動力がブレーキ軸45に伝達される。また、副変速レバー23が低速位置に切換え操作されることで、低中速スライダ53が低速用ギア48に係合し、低速用ギア47,48および低中速スライダ53を介して、副変速軸42の回転動力がブレーキ軸45に伝達される。これらのいずれの操作位置の場合も、ブレーキ軸45の回転動力は、第2ギア46から出力ギア44を介して差動機構38に入力される。
【0064】
一方、副変速レバー23が中立位置に切換え操作されることで、低中速スライダ53および高速スライダ55は、いずれもどのギアにも係合せず、副変速軸42からブレーキ軸45への回転動力の伝達が絶たれた状態となる。
【0065】
図5および
図6は、副変速レバー23が高速位置にある状態(23H)を示している。
図6には、副変速レバー23の位置状態として、中速位置にある状態の副変速レバー23M、中立位置にある副変速レバー23N、および低速位置にある副変速レバー23Lをそれぞれ二点鎖線で示している。副変速レバー23は、高速位置では後傾状となり、中速位置では略鉛直状となり、中立位置では前傾状となり、低速位置ではさらに前傾状となる。
【0066】
このように、副変速レバー23は、回動軸O1回りに前後回動するよう支持され、4箇所の切換操作位置のいずれかの位置に選択的に位置するように操作される。副変速レバー23の前後回動に連動するように、操向操作規制機構60が設けられている。
【0067】
操向操作規制機構60は、ホイール支軸65に設けられた係止部81に当接することでホイール支軸65の回動を規制するロック部材82を含むロック機構として構成されている。このような操向操作規制機構60に対し、副変速レバー23は、連結機構90によってロック部材82に連結されている。そして、副変速レバー23が副変速機構40を中立とする中立の操作位置(中立位置(N))に位置することで、操向操作規制機構60は、ロック部材82によりホイール支軸65の回動を規制するロック状態となる。
【0068】
ロック部材82は、係止部81に対して前側に設けられている。つまり、ロック部材82は、ホイール支軸65の前方に設けられている。係止部81およびロック部材82について具体的に説明する。
【0069】
まず、係止部81について説明する。係止部81は、ホイール支軸65の上部に設けられたスリーブ部材83の一部として設けられている。スリーブ部材83は、筒状の部材であり、ホイール支軸65を貫通させるとともに、ホイール支軸65に対して固定された状態で設けられている。すなわち、スリーブ部材83は、筒状の外形において内周側に形成された貫通孔部内にホイール支軸65を位置させ、ホイール支軸65に対して軸方向について移動不能、かつ相対回転不能に設けられている。
【0070】
スリーブ部材83は、スリーブ部材83の後側における上下の端部に設けられた2箇所の軸固定部85により、ホイール支軸65に固定されている。軸固定部85においては、
図9に示すように、ホイール支軸65の外周側およびスリーブ部材83の内周側のそれぞれに形成されたキー溝65a,83aに、四角柱状のキー86が嵌合している。スリーブ部材83の内周側のキー溝83aは、スリーブ部材83の軸方向に沿って延伸している。
【0071】
キー86は、スリーブ部材83の周壁を貫通する六角穴付きの止めネジ87により押圧固定されている。止めネジ87は、スリーブ部材83の周壁に形成された雌ネジ部83bに螺挿され、先端側をキー86に圧接させている。雌ネジ部83bは、スリーブ部材83の外周面から円筒状に突出したボス部83cに形成されている。
【0072】
このような軸固定部85の構成によれば、止めネジ87を緩めることで、キー溝83aによりスリーブ部材83をホイール支軸65の軸方向に移動させることができ、ホイール支軸65の位置調整を行うことができる。なお、ホイール支軸65に対してスリーブ部材83を固定するための方法は、特に限定されるものではなく、溶接等の他の方法であってもよい。
【0073】
また、スリーブ部材83の上下両側には、支持プレート部88が設けられている。各支持プレート部88は、所定の屈曲形状を有する前後の支持プレート88aにより、ホイール支軸65を貫通させる貫通孔部88bを形成している。前後の支持プレート88aは、互いの一部同士を上下に重ねた状態でボルト88c等の固定具によって互いに締結固定されている。
【0074】
支持プレート部88の貫通孔部88b内には、スリーブ部材83の上下の端部において本体部83dに対して段差状に形成された縮径部83eが位置している。上下の支持プレート部88は、運転部12においてステアリングホイール18の下側に設けられた所定の部位に対して固定支持されている。このように、ホイール支軸65は、スリーブ部材83を介して、上下の支持プレート部88により上下方向に挟持された態様で支持されている。上下の支持プレート部88により、例えばステアリングホイール18の操作にともなって撓もうとするホイール支軸65が支持され、ホイール支軸65の撓みが抑制される。
【0075】
スリーブ部材83の筒軸方向の中央部に、係止部81が設けられている。係止部81は、円筒状のスリーブ部材83において、スリーブ部材83の外径を部分的に拡径させた鍔状の部分として設けられている。つまり、係止部81は、スリーブ部材83の円筒状の本体部83dの外周面の周方向に沿う円弧状の突条部分として形成されている。
【0076】
係止部81は、円環形状に対して前側の部分を部分的に切り欠かれた態様の形状を有し、ホイール支軸65の軸方向において前側を開放側とした略「C」字状をなすように形成されている(
図9参照)。係止部81においては、切欠き部分の端面として、前側を向く平面状の係止面89が形成されている。係止面89は、スリーブ部材83の本体部83dを間に介して係止部81の左右両側に形成されている。
【0077】
左右の係止面89は、共通の仮想平面上に位置しており、ホイール支軸65の軸方向視で左右方向に沿う共通の直線上に位置している。係止面89は、係止部81の外周側および内周側をそれぞれ上底側および下底側とする略台形状の外形を有する。左右の係止面89は、ホイール支軸65の軸方向視において、ホイール支軸65の中心軸に一致する軸心位置O2より前側(
図9において上側)に位置しており、スリーブ部材83の本体部83dの前端よりも後側(
図9において下側)に位置している。したがって、スリーブ部材83は、本体部83dの前端部を、左右の係止面89より前側に突出させている。左右の係止面89が、ロック部材82に対する当接面となる。
【0078】
次に、ロック部材82について説明する。ロック部材82は、スリーブ部材83の前方において左右方向に沿って設けられた回動操作軸91と、回動操作軸91と一体の部分として設けられた支持プレート部92と、支持プレート部92に固定支持されたロックプレート93とを有する。
【0079】
回動操作軸91は、直線棒状の軸であり、左右方向に沿う中心軸に一致する所定の回動軸C1を中心として回動可能に設けられている。回動操作軸91は、上下方向について、係止部81と略同じ高さに位置しており、係止部81の前方に位置している。回動操作軸91は、左右方向について、右側の端部を、ホイール支軸65よりも右側に位置させており、左側を、サイドコラム21側へと延出させている。
【0080】
回動操作軸91は、回動操作軸91の前下方の位置にて回動操作軸91と平行状に配された支持軸95に対して、板状のブラケット96を介して回動可能に支持されている。支持軸95は、キャビン15の右側面部等に対して固定状態で支持されている。ブラケット96は、支持軸95を貫通させるとともに、筒状の右軸受部97を介して回動操作軸91の右側の端部を支持している。
【0081】
ブラケット96は、所定の形状を有する上下の支持プレート96aにより、右軸受部97を嵌合させるとともに支持軸95を貫通させる貫通孔部96bを形成している。上下の支持プレート96aは、互いの一部同士を左右に重ねた状態でボルト96c等の固定具によって互いに締結固定されている。右軸受部97には、回動操作軸91の右端部に形成された縮径部91aが回動可能に挿嵌されている。
【0082】
回動操作軸91において、係止部81の前方の部位となる右側の部分に、支持プレート部92が設けられている。支持プレート部92は、回動操作軸91の外周面から、回動操作軸91の軸方向視で回動操作軸91の径方向に略平行な方向に沿って突出するように設けられている。支持プレート部92は、回動操作軸91からの突出側の端部である縁端部に、回動操作軸91の軸方向視で回動操作軸91の径方向に略直交する方向に沿う端面92aを有する。
【0083】
支持プレート部92は、左右方向については、左右両側をそれぞれ左右の係止面89よりも左右外側に位置させる長さを有する。支持プレート部92は、左右方向についてスリーブ部材83に対応する位置に凹部92bを有する。支持プレート部92は、板状の部材を回動操作軸91に対して溶接等によって固定することによって設けられる。
【0084】
ロックプレート93は、略矩形板状の部材であり、長手方向を回動操作軸91の軸方向に沿わせ、支持プレート部92に対して上側(前側)から重なった状態で設けられている。ロックプレート93は、支持プレート部92に対して左右両側の部位で固定ボルト98およびナット99によって締結固定されている。
【0085】
固定ボルト98は、ロックプレート93側から、ロックプレート93および支持プレート部92のそれぞれに形成されたボルト孔を貫通し、支持プレート部92の下側(後側)に位置するナット99に螺合している。固定ボルト98等による固定部は、ロックプレート93の左右両端部に位置しており、左右方向について、係止部81における左右の係止面89よりも左右外側となる位置に設けられている。
【0086】
ロックプレート93は、回動操作軸91の径方向の外側に、支持プレート部92の端面92aと平行状の端面であるストッパ面100を有する。ロックプレート93は、支持プレート部92に対して、ストッパ面100を、支持プレート部92の端面92aよりも回動操作軸91の径方向外側(
図9において下側)に位置させるように設けられている。ロックプレート93が、操向操作規制機構60のロック状態(以下単に「ロック状態」ともいう。)において係止部81の当接を受ける部分となる。ロックプレート93は、ストッパ面100において、係止部81の係止面89の接触を受ける。
【0087】
回動操作軸91の回動軸C1を中心とした回動において、ロックプレート93がストッパ面100を係止部81の係止面89に突き合わせた状態が、ロック状態となる。すなわち、回動操作軸91の回動位置として、回動操作軸91の回動にともなって支持プレート部92とともに一体的に回動するロックプレート93が、ストッパ面100を係止面89に近接対向させる回動位置が、ロック状態に対応した回動位置となる。
【0088】
図9は、操向操作規制機構60のロック状態を示している。
図9に示すように、ロック状態においては、係止部81の係止面89とロックプレート93のストッパ面100との間には、わずかな隙間D1が存在している。この隙間D1は、回動操作軸91の回動においてロックプレート93が係止部81に干渉することがないように設定される。つまり、隙間D1は、ロック状態でのロックプレート93の回動位置を介した上下両側への回動を許容する程度の大きさに設定される。隙間D1は、例えば数ミリメートル程度である。
【0089】
ロックプレート93においては、ストッパ面100側において、左右の係止面89間のスリーブ部材83の本体部83dの突出部分との干渉を避けるための円弧状の凹部93aが形成されている。凹部93aにより、ストッパ面100が左右の面部に分断されている。つまり、ロックプレート93は、凹部93aを介して左右両側にストッパ面100を有する。そして、ロック状態においては、右側の係止面89(89R)に対して右側のストッパ面100(100R)が対向し、左側の係止面89(89L)に対して左側のストッパ面100(100L)が対向した状態となる。
【0090】
以上のような構成によって得られるロック状態においては、ステアリングホイール18の回動操作にともなうホイール支軸65の軸心位置O2を中心とした回動が、係止部81およびロック部材82によって規制される。具体的には、ステアリングホイール18の左回転方向の操作にともなうホイール支軸65の回動(
図9、矢印E1参照)は、右側の係止面89Rが右側のストッパ面100Rに接触することによって規制される。同様に、ステアリングホイール18の右回転方向の操作にともなうホイール支軸65の回動(
図9、矢印E2参照)は、左側の係止面89Lが左側のストッパ面100Lに接触することによって規制される。
【0091】
このように、操向操作規制機構60は、副変速レバー23が中立位置にある状態において、ホイール支軸65の回動を規制することで、ステアリングホイール18が回動しないようにステアリングホイール18の位置を保持する。操向操作規制機構60は、機体を直進させる状態に対応した回動位置、つまり左右の回動操作における中心位置にあるステアリングホイール18に対して、回動の規制作用を与えるように構成されている。
【0092】
また、操向操作規制機構60において、ロックプレート93は、支持プレート部92に対して、回動操作軸91の径方向に沿う方向(
図9における上下方向)ついて位置調整可能に設けられている。具体的には、ロックプレート93において固定ボルト98を貫通させるボルト孔93bが、ロックプレート93の矩形状の外形における短手方向(
図9における上下方向)を長手方向とする長孔として形成されている。
【0093】
これにより、ボルト孔93bに固定ボルト98を貫通させた状態で、ボルト孔93bの長手方向についてのロックプレート93の位置調整が可能となる。ロックプレート93の位置調整により、支持プレート部92の端面92aからのロックプレート93の突出量、つまり回動操作軸91の径方向に沿う方向についてのストッパ面100の位置が調整される。これにより、ロック状態におけるストッパ面100と係止面89との隙間D1の大きさが調整される。
【0094】
なお、支持プレート部92に対するロックプレート93の位置調整のための構成としては、支持プレート部92において固定ボルト98を貫通させるボルト孔を、ロックプレート93のボルト孔93bと同様に長孔とした構成であってもよい。
【0095】
また、ロックプレート93におけるストッパ面100と反対側の縁部の左右中央部には、ロックプレート93の位置調整等に用いられる凹部93cが形成されている。
【0096】
以上のような構成を備えた操向操作規制機構60に対して、副変速レバー23が、連結機構90によってロック部材82に連動連結されており、連結機構90により、副変速レバー23の操作にともなう回動動作が、回動操作軸91の回動軸C1回りの回動動作として伝達される。そして、副変速レバー23の切換え操作により、操向操作規制機構60のロック状態およびロックの解除状態が切り換えられる。
【0097】
連結機構90について説明する。連結機構90は、運転部12において副変速レバー23が設けられたサイドコラム21の内部からホイール支軸65側に向けて延出するように設けられている。すなわち、副変速レバー23は、運転部12において運転席19の左側に設けられたサイドコラム21に設けられており、サイドコラム21内において一端側を副変速レバー23の支持部に連結させた連結機構90が、サイドコラム21内から前側に向けて延設されている。そして、連結機構90の他端側は、ロック部材82をなす回動操作軸91の左端部に連結されている。
【0098】
図5および
図6に示すように、連結機構90は、支持筒部74から下側に延出された操作アーム111と、操作アーム111に連結された連結軸112と、連結軸112に連結された回動操作プレート113と、回動操作プレート113に連結されたリンクアーム114と、リンクアーム114に連結されるとともに回動操作軸91の左端部に設けられた連結部材115とを有する。
【0099】
操作アーム111は、支持筒部74の筒軸方向を板厚方向とする板状の部分であり、支持筒部74と一体の部分として支持筒部74の径方向外側に向けて突設されている。操作アーム111は、支持筒部74に対して副変速レバー23の延出方向と反対方向に延出している。
【0100】
側面視において、操作アーム111は、副変速レバー23を支持する支持アーム75に対し、副変速レバー23の回動軸O1を中心として点対称の態様で設けられている。したがって、操作アーム111は、支持筒部74から前下方に向けて延出しており、側面視において、副変速レバー23および支持アーム75とともに直線状をなすように設けられている。なお、支持筒部74の筒軸方向については、操作アーム111は、支持アーム75に対して左側にずれた位置に設けられている。
【0101】
連結軸112は、直線棒状の軸本体部112aと、軸本体部112aの一端部に設けられた後取付板部112bと、軸本体部112aの他端部に設けられた前取付板部112cとを有する直線状の部材である。連結軸112は、後取付板部112bを、操作アーム111の先端部(下端部)に対して左側から重ねた状態で、後支軸116により操作アーム111に回動可能に連結支持させている。連結軸112の前取付板部112cは、回動操作プレート113に連結されている。
【0102】
回動操作プレート113は、中心角の角度を鋭角とする略扇状の外形を有する板状の部材であり、サイドコラム21内において後支柱71の前方の位置に固定状態で設けられた前支柱117に対して、軸支部118により、左右方向を回動軸方向として所定の回動軸O3回りに回動可能に支持されている。軸支部118は、前支柱117から左方に向けて突設された固定軸119に、円筒状の支持筒部120を回動可能に挿嵌させた構成を有する。固定軸119の中心軸は、回動軸O3に一致している。回動操作プレート113は、軸支部118の上側に位置している。
【0103】
回動操作プレート113は、略扇状の外形における中心角側を支持筒部120側とするとともに板厚方向を支持筒部120の筒軸方向とし、支持筒部120と一体の部分として設けられている。このような構成により、回動操作プレート113は、支持筒部120と一体的に固定軸119の軸回りに前後に回動するように設けられている。
【0104】
回動操作プレート113の上部において、連結軸112の前取付板部112cが、回動操作プレート113に対して左側から重なった状態で、前支軸121により回動操作プレート113に回動可能に連結支持されている。
【0105】
支持筒部120からは前下方に向けて支持アーム122が延出しており、支持アーム122には、操作ロッド123の上端部が回動可能に連結支持されている。操作ロッド123は、支持アーム122から下方に延設されており、ミッションケース57内に設けられた副変速機構40に対して所定の連結部材を介して連結されている。これにより、副変速レバー23の動作が副変速機構40に伝達され、副変速機構40の変速操作が行われる。
【0106】
リンクアーム114は、所定の屈曲形状を有する幅狭の板状の部材である。リンクアーム114は、後側に位置する一端側を、回動操作プレート113の上部において、回動操作プレート113に対して右側から重なった状態で、後支軸127により回動操作プレート113に回動可能に連結支持させている。リンクアーム114は、回動操作プレート113に対する連結部から、側面視で前斜め上方に向けて、かつ屈曲形状によって前左側に向けて延出しており、前側に位置する他端側を、回動操作軸91の左端部に設けられた連結部材115に連結させている。
【0107】
連結部材115は、回動操作軸91の左端部を挿入させた取付筒部115aと、取付筒部115aと一体の部分として取付筒部115aの径方向外側に向けて上側に突設された突片部115bとを有する。取付筒部115aは、例えば円筒状の孔部において二面幅をなす一対の平面部を設けた孔形状を嵌合形状として、回動操作軸91の左端部を相対回転不能に挿嵌させている。また、連結部材115は、取付筒部115aの周壁部を貫通して回動操作軸91に螺挿されるボルト等の固定具126によって回動操作軸91に固定されている。突片部115bは、取付筒部115aの筒軸方向を板厚方向とする板状の部分である。
【0108】
連結部材115の突片部115bに、リンクアーム114の他端側が連結支持されている。リンクアーム114は、前側の端部を、左右方向を板厚方向とする連結部114aとしており、連結部114aを、連結部材115の突片部115bに対して左側から重ねた状態で、前支持軸128により突片部115bに回動可能に連結支持させている。前支持軸128は、連結部114aおよび突片部115bにピンを貫通させること等により設けられている。前支持軸128によるリンクアーム114の回動中心は、側面視において回動操作軸91の回動軸C1の上方に位置している。
【0109】
連結部材115の取付筒部115aの右側には、回動操作軸91を回転可能に支持した左軸受部129が設けられている。左軸受部129および突片部115bには、回動操作軸91の左端部に形成された縮径部91bが挿入されている。
【0110】
以上のような構成を備えた連結機構90によって副変速レバー23とロック部材82を連結した構成によれば、次のような連動作用が得られる。
図6に示すように、副変速レバー23を回動軸O1回りに前後に回動させることで(矢印F1参照)、操作アーム111が、副変速レバー23と一体的に回動軸O1回りに回動する(矢印F2参照)。
【0111】
操作アーム111の回動にともない、連結軸112が押し引きされる方向に移動する(矢印F3参照)。連結軸112の移動にともない、回動操作プレート113が回動軸O3を中心に回動する(矢印F4参照)。回動操作プレート113の回動にともない、リンクアーム114が押し引きされ(矢印F5参照)、連結部材115を介して回動操作軸91が軸心位置O2を中心に回動する(矢印F6参照)。回動操作軸91の回動にともない、ロックプレート93が回動操作軸91と一体的に回動する(
図10、矢印F7参照)。なお、回動操作プレート113の回動にともない、操作ロッド123を介して副変速機構40の変速操作が行われる。
【0112】
副変速レバー23の切換え操作に連動する操向操作規制機構60の動作について、
図6および
図11を用いて説明する。
図6に示すように、副変速レバー23が高速位置にある状態(23H)では、
図11Aに示すように、ロックプレート93は、係止部81よりも上側に位置し、ストッパ面100を係止面89に対して上側に位置させている。
【0113】
図6において二点鎖線の副変速レバー23Mで示すように、副変速レバー23を高速位置(H)から中速位置(M)へと前側に移動させることで、
図11Bに示すように、ロックプレート93は、下側に回動し、副変速レバー23が高速位置にある状態よりも下側、かつ係止部81よりも上側に位置し、ストッパ面100を係止面89に対して上側に位置させた状態となる。
【0114】
図6において二点鎖線の副変速レバー23Nで示すように、副変速レバー23を中速位置(M)から中立位置(N)に移動させることで、
図11Cに示すように、ロックプレート93は、下側に回動し、ストッパ面100を係止面89に突き合わせた状態となる。つまり、操向操作規制機構60がロック状態となる。
【0115】
図6において二点鎖線の副変速レバー23Lで示すように、副変速レバー23を中立位置(N)から低速位置(L)に移動させることで、
図11Dに示すように、ロックプレート93は、ロック状態での位置からさらに下側に回動し、係止部81よりも下側に位置し、ストッパ面100を係止面89に対して下側に位置させた状態となる。
【0116】
副変速レバー23の前後の回動操作に関し、連結機構90は次のように動作してロックプレート93を回動させる。副変速レバー23を前側に移動操作することで、操作アーム111が後側に回動して連結軸112が後側に引かれ、回動操作プレート113が後側に回動する。これにより、リンクアーム114が後側に引かれ、連結部材115の突片部115bが左側面視で右回転方向に回動し、回動操作軸91がロックプレート93とともに左側面視で右回転方向に回動する。
【0117】
一方、副変速レバー23を後側に移動操作することで、操作アーム111が前側に回動して連結軸112が前側に押され、回動操作プレート113が前側に回動する。これにより、リンクアーム114が前側に押され、連結部材115の突片部115bが左側面視で左回転方向に回動し、回動操作軸91がロックプレート93とともに左側面視で左回転方向に回動する。
【0118】
以上のように、副変速レバー23の切換え操作に連動する連結機構90の動作により、ロックプレート93の位置が切り換えられる。そして、副変速レバー23が中立位置(N)に操作されることで、操向操作規制機構60のロック状態が得られる。すなわち、操向操作規制機構60は、副変速レバー23が中立位置にある場合、ステアリングホイール18の回動操作を規制し、副変速レバー23が中立位置(N)以外の複数段の変速操作位置にある場合、ステアリングホイール18の回動操作を許容する。
【0119】
逆に、ステアリングホイール18を左右いずれかに回動させた状態においては、ロックプレート93または支持プレート部92が係止部81に干渉し、副変速レバー23を中立位置(N)に位置させることが規制される。つまり、ステアリングホイール18が中心位置にある状態において、副変速レバー23を中立位置(N)に位置させることによる操向操作規制機構60のロック状態が得られる。
【0120】
本実施形態に係るコンバイン1によれば、副変速レバー23が中立位置にある状態で不意に機体が旋回することを防止することができ、安全性を確保することができるとともに、動力伝達系の構造をシンプルにすることができ、ミッションケース57のコンパクト化を図ることができる。
【0121】
本実施形態に係る操向操作規制機構60を備えた構成によれば、副変速レバー23による中立操作に連動させて機体の旋回を防止するために、ミッションケース57内において例えば操向用HST37と差動機構38との間にクラッチ装置等を設けることが不要となる。これにより、ミッションケース57の動力伝達系の構造の簡素化を図ることができるとともに、クラッチ装置等が不要な分、ミッションケース57の小型化を図ることができる。
【0122】
また、操向操作規制機構60は、ロック状態において、ステアリングホイール18の回動操作にともなうホイール支軸65の回動操作を規制するように構成されている。このような構成によれば、不意に機体が旋回することを防止して安全性を確保することができるとともに、操向操作規制機構60を簡易な構造のものとすることができる。
【0123】
また、操向操作規制機構60は、ホイール支軸65に設けられた係止部81に当接することでホイール支軸65の回動を規制するロック部材82を含み、副変速レバー23は、連結機構90によってロック部材82に連結されており、副変速レバー23が中立位置に位置することで操向操作規制機構60のロック状態が得られる。このような構成によれば、不意に機体が旋回することを防止して安全性を確保することができるとともに、操向操作規制機構60をより簡易な構造のものとすることができる。
【0124】
また、連結機構90は、サイドコラム21からホイール支軸65側に向けて延出するように設けられている。このような構成によれば、サイドコラム21内の空間を有効に利用して連結機構90を設けることができ、省スペース化を図りながら副変速レバー23に連動してロック部材82を動作させるための構成を設けることができる。
【0125】
また、ロック部材82において、ロックプレート93は、回動操作軸91に対するストッパ面100の位置を移動させる方向に位置調整可能に設けられている。このような構成によれば、ホイール支軸65に設けられる係止部81との関係で、ロック状態におけるストッパ面100の位置、つまり隙間D1(
図9参照)の寸法を調整することが可能となる。これにより、副変速レバー23およびこれに連動するロック部材82の動作について良好な動作性を得ることができる。
【0126】
また、上下の軸固定部85により、ホイール支軸65に対するスリーブ部材83の位置調整を可能とした構成によれば、ロックプレート93の位置調整と相俟って、スリーブ部材83とロックプレート93との位置関係を細かく調整することができる。
【0127】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る農作業車両は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0128】
上述した実施形態において、副変速機構40が中立に操作されることでステアリングホイール18の動作を規制する操向操作規制機構60は、副変速レバー23の動作を機械的に伝達することでステアリングホイール18の回動を規制するものであるが、操向操作規制機構60の構成はこのような構成に限定されるものではない。操向操作規制機構60は、例えば、電気的な制御信号に基づいて動作してステアリングホイール18の回動を規制するロック装置であってもよい。この場合、ロック装置は、例えば、ステアリングホイール18あるいはホイール支軸65の近傍に設けられ、副変速機構40を中立の状態とする副変速レバー23の操作についての検知信号に基づき、ステアリングホイール18の回動をロックするように構成される。
【0129】
また、上述した実施形態において、操向操作部材は、ステアリングホイール18であるが、操向操作部材はこれに限定されるものではない。操向操作材は、例えば、傾動操作されるレバー操作具等であってもよい。
【0130】
また、上述した実施形態において、副変速レバー23は回動操作されるものであり、副変速レバー23の回動操作により副変速機構40が操作される構成が採用されているが、本発明において副変速機構を操作するための副変速レバーは回動操作されるものに限定されない。副変速レバーは、例えば操作態様をスライド操作とするものであってもよい。この場合、副変速レバーのスライド操作による動作が連結機構によって伝達され、操向操作規制機構のロック部材が動作することになる。
【0131】
本発明に係る技術が適用される場面としては、例えば、コンバインにおいて、機体を停止させた状態で行われる、刈取部における穀稈搬送装置や脱穀部におけるフィードチェン等の搬送系等に対する注油を行う場合や、運転部に対して作業者が乗降する場合等が想定される。これらの場合においては、エンジンから走行部への動力の伝達を絶って機体を停止させるために副変速機構が中立に操作されることから、かかる状態で操向操作部材の動作を規制することで、操向操作部材が不意に動かされて機体が旋回することが防止され、安全性が確保される。なお、コンバインにおける注油の作業は、例えば、副変速機構を中立状態としたで、注油の対象部位である搬送系等を駆動させながら行われる。
【符号の説明】
【0132】
1 コンバイン(農作業車両)
2 走行部
3 クローラ部
3c 駆動スプロケット(駆動輪)
11 エンジン(駆動源)
12 運転部
18 ステアリングホイール(操向操作部材)
21 サイドコラム
23 副変速レバー
36 走行用HST(走行用変速装置)
37 操向用HST(操向用変速装置)
38 差動機構(伝動機構)
40 副変速機構
60 操向操作規制機構
65 ホイール支軸(操作軸)
81 係止部
82 ロック部材
89 係止面
90 連結機構
91 回動操作軸
93 ロックプレート
100 ストッパ面