(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140169
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01G 11/30 20130101AFI20220915BHJP
H01G 11/58 20130101ALI20220915BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20220915BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20220915BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20220915BHJP
H01M 10/24 20060101ALI20220915BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220915BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01G11/30
H01G11/58
H01G11/68
H01G11/70
H01G11/42
H01M10/24
H01M4/66 A
H01M4/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021048586
(22)【出願日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2021040220
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】星野 勝義
(72)【発明者】
【氏名】塚田 学
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅人
(72)【発明者】
【氏名】清村 雄也
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭太
(72)【発明者】
【氏名】大原 和樹
(72)【発明者】
【氏名】村松 大輔
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AB03
5E078BA13
5E078BA30
5E078BA59
5E078DA07
5E078FA07
5H017AA02
5H017CC25
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE09
5H028AA06
5H028CC11
5H028EE01
5H050AA08
5H050BA11
5H050CA01
5H050CB07
5H050CB09
5H050DA04
5H050FA09
5H050FA16
(57)【要約】
【課題】 水系電解液を用いつつも、容量が大きい新規な蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】 絶縁性の外郭体と、外郭体内で保持された、正極、負極及び電解液とを有し、正極と負極とが、電解液を介して隔離された状態で保持されている蓄電デバイスであって、電解液はアルカリ電解液であり、正極は、第1の金属繊維シートと、第1の金属繊維シート上に存在する導電性ナノ構造とを有しており、負極は、第2の金属繊維シートと、第2の金属繊維シートに担持された炭素材料とを有することを特徴とする、蓄電デバイス。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の外郭体と、前記外郭体内で保持された、正極、負極及び電解液とを有し、
前記正極と前記負極とが、前記電解液を介して隔離された状態で保持されている蓄電デバイスであって、
前記電解液はアルカリ電解液であり、
前記正極は、第1の金属繊維シートと、前記第1の金属繊維シート上に存在する導電性ナノ構造とを有しており、
前記負極は、第2の金属繊維シートと、前記第2の金属繊維シートに担持された炭素材料とを有する
ことを特徴とする、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記第1の金属繊維シート及び前記第2の金属繊維シートは、銅及び/又はステンレスから成る、請求項1記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記負極に含まれる前記炭素材料が、活性炭を含む、請求項1または2記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記導電性ナノ構造が、金属を含む、請求項1~3いずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記導電性ナノ構造に含まれる前記金属が、銀、銅、コバルトのうち少なくとも1つ以上である、請求項4に記載の蓄電デバイス。
【請求項6】
前記電解液が溶存酸素を含む、請求項1~5のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【請求項7】
レドックスキャパシタである、請求項1~6のいずれかに記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスは、大きな物質変換を伴う化学反応を利用した二次電池と、化学反応を利用しないか、又は、材料表面の物質変換をわずかに伴う化学反応を利用したキャパシタに大別される。
【0003】
さらに、キャパシタは電気二重層キャパシタ(EDLC)とレドックスキャパシタとに区別される。これらのうち二次電池とEDLCは既に市販に至っているが、レドックスキャパシタは、いまだに研究段階に留まっている。EDLCは、再生可能エネルギー(風力発電、太陽光発電)の蓄電デバイスとして、また、ハイブリッド自動車や電気自動車の補助電源として利用されている。
【0004】
二次電池は、放電容量が大きい反面、出力、繰返し耐久性、充放電時間に課題があり、また、EDLCは、出力、繰返し耐久性、充放電時間に優れるが、放電容量が小さいというトレードオフの関係にある。レドックスキャパシタは、EDLCの出力、繰り返し耐久性、充放電時間の特徴を担保し、さらに短所である放電容量が改善できるとして盛んに研究されている。
【0005】
ここで、蓄電素子の電解液は非水系の方が、電気容量等のデバイス特性の観点から有利なことが一般的に知られている。
【0006】
例えば、特許文献1は、アルミニウムなど金属多孔体を集電体として分厚い電極を形成した、放電特性等に優れる非水電解質電池等の電気化学デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1においても、電解液は非水系の方が電圧を高く設定できるため好ましい旨が開示されている。一方、非水系の電解液を用いた蓄電素子は激しい発火や爆発の恐れがあり、安全性の観点から水系電解液を用いた蓄電デバイスの開発が望まれている。また、環境面からも水系電解液を用いた蓄電デバイスは好ましい。
【0009】
そこで、本発明は、水系電解液を用いつつも、容量が大きい新規な蓄電デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題について、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、特定の構造を有する電極を用いた蓄電デバイスとすることで、水系電解液を用いても、蓄電デバイスの容量を向上可能なことを発見し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
本発明(1)は、
絶縁性の外郭体と、前記外郭体内で保持された、正極、負極及び電解液とを有し、
前記正極と前記負極とが、前記電解液を介して隔離された状態で保持されている蓄電デバイスであって、
前記電解液はアルカリ電解液であり、
前記正極は、第1の金属繊維シートと、前記第1の金属繊維シート上に存在する導電性ナノ構造とを有しており、
前記負極は、第2の金属繊維シートと、前記第2の金属繊維シートに担持された炭素材料とを有する
ことを特徴とする、蓄電デバイスである。
前記第1の金属繊維シート及び前記第2の金属繊維シートは、銅及び/又はステンレスから成ることが好ましい。
前記負極に含まれる前記炭素材料が、活性炭を含むことが好ましい。
前記導電性ナノ構造が、金属を含むことが好ましい。
前記導電性ナノ構造に含まれる前記金属が、銀、銅、コバルトのうち少なくとも1つ以上であることが好ましい。
前記電解液が溶存酸素を含むことが好ましい。
前記蓄電デバイスは、レドックスキャパシタであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水系電解液を用いつつも、容量が大きい新規な蓄電デバイスを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る蓄電デバイス100の概念図である。
【
図2】導電性ナノ構造を形成するための三電極方式の装置の模式図である。
【
図4】実施例1における、充放電回数に応じた容量の変化を示す図である。
【
図5】実施例11における、充放電回数に応じた容量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る蓄電デバイスについて詳述するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
【0015】
本発明に係る蓄電デバイスは、通常、キャパシタ(好ましくはレドックスキャパシタ)として使用されるが、本発明の構成を有する限りにおいて、その他の蓄電デバイス(例えば、2次電池等)にも使用できる。
【0016】
なお、以下に示された各種物性は、特に断らない限り25℃において測定されたものとする。
【0017】
<<<<蓄電デバイス>>>>
<<<全体構成>>>
本発明に係る蓄電デバイス100は、
図1に示されるように、外郭体110と、外郭体110内で保持された、電極対120(正極121、負極122)及び電解液130と、を有する。正極121及び負極122は、電解液130に浸漬されている。正極121と負極122とは、電解液130を介して隔離された状態で保持されている。
【0018】
蓄電デバイス100は、通常、外部回路や外部電源等(図示せず。)と、正極121及び負極122と、を電気的に接続するための端子140を有している。
【0019】
端子140は、導電可能に構成されていればその材質及び形状は何ら限定されない。端子140は、正極121及び負極122と一体に形成されていてもよいし、正極121及び負極122とは別体に形成された上で、端子140と正極121及び負極122とが電気的に接続されていてもよい。
【0020】
蓄電デバイス100は、正極121と負極122との電気的な接触を防止すること等を目的として、正極121と負極122との間に、更にセパレーター150を含んでいてもよい。
【0021】
このようなセパレーター150としては、蓄電デバイスに通常使用されるセパレーター(例えば、絶縁性を有する不織布や、絶縁性及びイオン透過性を有する多孔膜等)を使用可能である。セパレーター150の材料、厚み、大きさ等は、蓄電デバイス100の電気的構成に応じて適宜調整可能である。
【0022】
蓄電デバイス100は、正極121、負極122及び電解液130を含む電気的構成を1ユニットとして、複数のユニットからなるものであってもよい。
【0023】
図示しないが、蓄電デバイス100は、正極121及び負極122をシート状とし、絶縁性を有するセパレーター150を介して正極121及び負極122を巻き取り、電解液130と共に外郭体110内に収容した構造とすることも可能である。このように構成することで、単位体積あたりの電気容量を向上させることが可能である。
【0024】
その他の電気的構成等は、特に限定されず、通常の蓄電デバイスで設定される条件等を適用可能である。
【0025】
次に、本発明の特徴部分である、外郭体110、電極対120及び電解液130について詳述する。
【0026】
<<<外郭体110>>>
外郭体110は、絶縁性を有し、端子140を除いて外郭体110内部と外郭体110外部とを導通不可能とし、且つ、正極121、負極122及び電解液130を保持するよう構成されている。
【0027】
外郭体110の形状及び大きさは、その内部に、正極121、負極122及び電解液130は特に限定されない。
図1では外郭体110をケース型としているが、外郭体110を円筒状又は薄板状としてもよいし、外郭体110をフィルム状として、全体をラミネートする構成としてもよい。
【0028】
なお、外郭体110は、正極121、負極122及び電解液130を密閉状態にて保持することが好ましい。このような構成とすることで、電解液130中に空気中の二酸化炭素等の酸性ガスが溶存すること防止し、本発明の効果をより高めることができる。ここで示す「密閉状態」とは、電解液130の漏れを防止する水密性、及び、外部の気体(特に、大気中の二酸化炭素)が積極的に電解液に触れないような気密性、を有することを示す。このような構成とすることで、後述する電解液130の変質を防止することが可能となる。また、外郭体110が「絶縁性を有する」とは、各蓄電デバイス(キャパシタや2次電池等)に使用される外郭体に求められる程度に導通不可能(乃至は導通困難)であることを示す。
【0029】
外郭体110の材料としては、絶縁性を有し、好ましくは外郭体110内部の密閉状態を十分に保持可能であれば特に限定されないが、電解液130により変質し難い材料であることが好ましい。
【0030】
また、外郭体110は、外郭体110全体として求められる性質(例えば、気密性や絶縁性)と、外郭体110の内部構成に対して求められる性質(例えば、電解液130により変質し難いこと)と、を共に達成するために、複数の層からなる層構造を有していてもよい。そのような場合、外郭体110の一部を構成する材料として、導電性を有する材料が含まれていてもよい。
【0031】
<<<電極対120>>>
電極対120は、正極121及び負極122から構成される。
【0032】
<<正極121>>
正極121は、第1の金属繊維シートと、第1の金属繊維シート上に存在する導電性ナノ構造と、を有する。なお、ここで示す「金属繊維シート上」とは、「金属繊維シートの表面、構成物である金属繊維の表面、金属繊維シート内部に形成された外部環境と連通した孔内部の表面」の全てを包含するものとする。
【0033】
なお、正極121及び負極122の形状及び大きさ(面積及び厚さ)、正極121及び負極122の隔離距離等は、蓄電デバイス100の電気的構成に応じて適宜調整可能である。
【0034】
<第1の金属繊維シート>
第1の金属繊維シートを構成する金属繊維は、第1の金属繊維シートが導電性を有する限りどのような金属種であってもよく、例えば、鉄、鋼(ステンレス鋼)、銅、ニッケル、モリブデン等とすることができる。第1の金属繊維シートは、中でも、銅及び/又はステンレスから成ることが好ましい。銅及び/又はステンレスから成る金属繊維シートとは、例えば、銅繊維及び銅合金繊維、ステンレス繊維並びにこれらの繊維の混合物から成る金属繊維シートである。
【0035】
なお、導電性を有する、又は、導電性の材質とは、電気抵抗率が1×1010Ω・m以下のものをいう。導電性の測定方法は、公知の方法で測定ができるが、例えば、JIS C2139:2008の方法に準拠して測定できる。
【0036】
第1の金属繊維シートには、本発明の効果を阻害しない限りにおいて金属以外の成分を含んでいてもよい。
【0037】
第1の金属繊維シートの、構成金属繊維の平均繊維径、密度(坪量)、厚み等は、剛直性や導電性、電気容量等を考慮して適宜変更可能である。
【0038】
金属繊維の平均繊維径は、例えば、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上であること好ましく、100μm以下、50μm以下、30μm以下、25μm以下であることが好ましい。金属繊維の平均繊維長は、金属繊維シートを構成できる程度の長さとすればよく、一般的な範囲で適宜設定可能であり特に限定されない。金属繊維の平均繊維長は、例えば、1mm~10mmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、3mm~5mmの範囲である。なお、本明細書における「平均繊維径」及び「平均繊維長」とは、顕微鏡で20本を測定し、測定値を平均した値である。
【0039】
坪量は、例えば、10g/m2以上、50g/m2以上、100g/m2以上、200g/m2以上であることが好ましく、1000g/m2以下、700g/m2以下、500g/m2以下であることが好ましい。
【0040】
第1の金属繊維シートは、性能や用途に応じて、取付用の穴や切込み等の加工が施されていてもよい。
【0041】
第1の金属繊維シートは、例えば、金属繊維を湿式抄造することにより製造可能である。金属繊維を湿式抄造したシートの例としては、特開平07-258706号公報に開示された方法によって作製された金属繊維焼結シート等が挙げられる。
【0042】
この金属繊維シートは、好適なステンレス鋼繊維や銅繊維を用いて作製可能であり、孔や隙間の大きさ及び分布などを調整でき、さらにはシート形成後の加工が可能であり、様々な形状に二次加工できる点で用途範囲が広く好適である。
【0043】
第1の金属繊維シートにおける繊維の占積率は、5~50%の範囲が好ましく、15%~40%がより好ましい。
本明細書における「金属繊維シートにおける繊維の占積率」とは、金属繊維シートの体積に対して繊維が存在する部分の割合である。単一金属繊維のみから金属繊維シートが構成される場合、金属繊維シートの坪量と厚み、及び金属繊維の真密度から以下の式により算出される。
占積率(%)=金属繊維シートの坪量/(金属繊維シートの厚み×金属繊維の真密度)×100
なお、金属繊維シートが、他の金属繊維や金属繊維以外の繊維を含む場合には、組成比率を反映した真密度値を採用することで占積率を算出することができる。
【0044】
<導電性ナノ構造>
導電性ナノ構造を有する正極121は、上述した金属繊維シートを基材として、その基材の表面に導電性ナノ構造を形成させたものである。
【0045】
導電性ナノ構造の材質は、金属繊維シート上に形成することができる導電性を有する材質であれば、特に限定されない。例えば、金属、セラミックス、樹脂、ガラス、グラファイト、などが挙げられ、これらのうち、少なくとも1つの材質が用いられていればよい。
【0046】
また非導電体の材質を公知の方法によって、導電性とした材質とすることができる。例えば、ホウ素のような第13族元素やリンなど第15族元素をイオン注入したシリコンやダイヤモンドなどが挙げられる。またイオン注入による導電性の付加方法の場合など、ナノ構造形成後に実施が可能な方法の場合には、非導電性のナノ構造を基材表面に形成したのち、イオン注入等を行うことで導電性ナノ構造とすることができる。
【0047】
導電性ナノ構造の材質は、電気伝導度等の電気特性から金属が好ましく(即ち、導電性ナノ構造が、金属を含むことが好ましく)、金、白金、銀、銅、コバルトがより好ましく、可逆的な電気化学反応を発現する特性から、銀、銅、コバルトがさらに好ましく、銅が特に好ましい。
【0048】
導電性ナノ構造の形状は特に限定されないが、多角形状、円形状、楕円形状等の粒状;多角形状、円形状、楕円形状等の板状;針状;多角形状、円形状、楕円形状等の柱状;繊維状;樹枝状;結晶成長における骸晶形状;等が挙げられ、これらが複数組み合わさった形状(複合的な構造)でもよい。
【0049】
複合的な構造の例としては、樹枝状が挙げられ、例えば、繊維状の構造から枝分かれして、繊維状の構造が成長し、さらにその繊維状の構造から繊維状の構造が繰返し成長した構造とすることができる。このような複雑な繰返し構造は、多孔質導電体に形成された導電性ナノ構造の表面積を著しく大きくすることが可能であり、放電容量や繰返し耐久性を向上させることができる。
【0050】
ナノサイズの構造とは、導電性ナノ構造を構成する少なくとも一辺の長さ(断面における直径や短軸)が、1μm未満である構造とする。また同様にミクロンサイズの構造とは、構造を構成する一辺の長さ(断面における直径や短軸)が、0.001~1mmである構造とする。
【0051】
導電性ナノ構造の大きさは、特に限定されない。例えば、樹枝状の導電性ナノ構造の場合には、樹枝状構造全体としてはミクロンサイズであってもよく、少なくとも樹枝の枝にあたる部分がナノサイズであればよい。即ち、導電性ナノ構造自体の大きさは限定されず、少なくとも一部にナノサイズの構造部分を有する構造であればよい。
【0052】
また、別の例として、導電性ナノ構造が繊維状である場合に、少なくとも、その断面の短径(又は短軸)がナノサイズであればよく、その場合に繊維の長さは本発明の効果を妨げない限り限定されない。例えば、導電性ナノ構造全体の大きさ、即ち、多孔質導電体表面からの導電性ナノ構造の最長の長さは、0.001~1000μmとすることができ、0.01~500μmが好適である。
【0053】
また、導電性ナノ構造が複合的な構造である場合には、導電性ナノ構造を構成するナノサイズの構造部分の大きさは、ナノサイズの構造を構成する少なくとも一辺の長さ(断面における直径や短軸)が、1μm未満とすることができ、1~500nmが好適であり、5~300nmがより好適である。
【0054】
導電性ナノ構造の大きさの測定は、導電性ナノ構造の大きさによって異なるが、SEM(例えばJIS K0132:1997に準拠)や透過型電子顕微鏡(TEM:JIS H7804:2004に準拠)等を用いて測定することができる。また複数の測定方法を組み合せることもできる。
【0055】
<正極121の製造方法>
正極121、即ち、導電性ナノ構造を有する金属繊維シートは、公知の方法により製造することができる。例えば、気相反応蒸着法、セルフアッセンブリー法、リソグラフィーを用いる方法、電子線ビーム加工、FIB加工、電気化学的な方法等が挙げられる。このうち、製造費用自体が安価であり、また、設備も簡便かつ安価である電気化学的な方法がより好適であり、特許第5574158号による銅ナノ構造体の製造方法などがさらに好適である。同様に、国際公開第2019/059238号に開示された方法も好適に適用される。
【0056】
以下に、正極121の製造方法の一例として、好適例である三電極法による銅のナノ構造物の形成方法について述べる。
【0057】
図2に示したように、電源と、動作電極と対向電極が備えられた主室と、副室、塩橋及び参照電極からなる三電極式セル装置を用いる。
【0058】
電源は特に限定されないが、ポテンショスタットが好ましい。ポテンショスタットは動作電極の電位を参照電極に対して一定にする装置であり、動作電極と対向電極間の電位を正確に測り、参照電極には電流をほとんど流さないようにする仕組みである。ポテンショスタットを使用しない場合には、別途同様の調整を行う必要がある。
【0059】
金属繊維シートを動作電極とする。対向電極は特に限定されず、公知の材質を用いることができる。例えば、白金などが挙げられる。参照電極は、公知の参照電極であれば特に限定されず、例えば飽和カロメル電極が挙げられる。
【0060】
主室には蒸留水に銅錯体である硫酸テトラアンミン銅(II)又は硫酸銅(II)と、硫酸リチウムと、アンモニア水とで調製した電解液を入れ、副室には蒸留水に硫酸リチウムとアンモニア水で調製した電解液を入れる。
【0061】
参照電極に対し、-1.0V~-2.0V印加し、0.10~20C/cm2の電気量を通電することで、硫酸テトラアンミン銅(II)あるいは硫酸銅(II)が二電子還元され、動作電極である金属繊維シートに、銅が析出し、ナノ構造が形成される。このとき、0.1~120分通電を行い、表面及び内部に導電性ナノ構造を有する金属繊維シートを得ることができる。
【0062】
また、金属繊維シートは、全体として導電性を有する限りにおいて、非導電性の材質と組み合わせることもできる。
【0063】
<<<負極122>>>
負極122は、第2の金属繊維シートと、第2の金属繊維シートに担持された炭素材料とを有する。
【0064】
<<第2の金属繊維シート>>
第2の金属繊維シートを構成する金属繊維は、第2の金属繊維シートが導電性を有する限りどのような金属種であってもよく、例えば、鉄、鋼(ステンレス鋼)、銅、ニッケル、モリブデン等とすることができる。第2の金属繊維シートは、中でも、銅及び/又はステンレスから成ることが好ましい。銅及び/又はステンレスから成る金属繊維シートとは、例えば、銅繊維及び銅合金繊維、ステンレス繊維並びにこれらの繊維の混合物から成る金属繊維シートである。
【0065】
第2の金属繊維シートには、本発明の効果を阻害しない限りにおいて金属以外の成分を含んでいてもよい。
【0066】
第2の金属繊維シートの、構成金属繊維の平均繊維径、密度(坪量)、厚み等は、剛直性や導電性、電気容量等を考慮して適宜変更可能である。
【0067】
金属繊維の平均繊維径は、例えば、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上であること好ましく、100μm以下、50μm以下、30μm以下、25μm以下であることが好ましい。金属繊維の平均繊維長は、金属繊維シートを構成できる程度の長さとすればよく、一般的な範囲で適宜設定可能であり特に限定されない。金属繊維の平均繊維長は、例えば、1mm~10mmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、3mm~5mmの範囲である。
【0068】
坪量は、例えば、10g/m2以上、50g/m2以上、100g/m2以上、200g/m2以上であることが好ましく、1000g/m2以下、700g/m2以下、500g/m2以下であることが好ましい。
【0069】
第2の金属繊維シートは、性能や用途に応じて、取付用の穴や切込み等の加工が施されていてもよい。
【0070】
第2の金属繊維シートは、例えば、金属繊維を湿式抄造することにより製造可能である。金属繊維を湿式抄造したシートの例としては、特開平07-258706号公報に開示された方法によって作製された金属繊維焼結シート等が挙げられる。
【0071】
この金属繊維シートは、好適なステンレス鋼繊維や銅繊維を用いて作製可能であり、孔や隙間の大きさ及び分布などを調整でき、さらにはシート形成後の加工が可能であり、様々な形状に二次加工できる点で用途範囲が広く好適である。
【0072】
第2の金属繊維シートにおける繊維の占積率は、5~50%の範囲が好ましく、15%~40%がより好ましい。
【0073】
第2の金属繊維シートは、第1の金属繊維シートと同一の材質/構造等の繊維シートであってもよいし、異なる材質/構造等の繊維シートであってもよい。
【0074】
<<炭素材料>>
炭素材料は、一般的な導電性炭素材料から選択することができ、例えば、カーボンブラック、グラフェン、黒鉛、カーボンナノチューブ、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、活性炭等が挙げられる。炭素材料は、中でも、活性炭を含むことが好ましく、活性炭とカーボンブラックとを含むことがより好ましい。炭素材料は変性されていてもよい。なお、炭素材料を主の導電材料とし、更に別の炭素材料を導電助剤として組み合わせて使用したり、炭素材料以外の材料を導電助剤として使用してもよい。
【0075】
第2の金属繊維シートは、炭素材料以外の材料が担持されていてもよい。例えば、第2の金属繊維シートは、第2の金属繊維シートからの炭素材料(粒状)の脱落を防止するためにバインダーを含有してもよい。バインダーとしては公知の材料を使用可能であるが、化学的な安定性が高いという点で、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂が好ましい。このようなバインダーの付着量は、第2の金属繊維シートの全重量に対して10重量%以下等とすればよい。
【0076】
<負極122の製造方法>
負極122、即ち、炭素材料が担持された金属繊維シートは、公知の方法により製造することができる。
【0077】
以下に、負極122の製造方法の一例について説明する。
【0078】
バインダーと、バインダーを溶解可能な溶媒と、導電材料(炭素材料及び必要に応じて導電助剤)とを混合し、炭素材料含有ペーストを準備する。
次に、炭素材料含有ペーストを金属繊維シートに付着させる。付着方法としては、公知方法(炭素材料含有ペーストの塗布や炭素材料含有ペースト中への含浸等)によって実施することができる。
最後に、炭素材料含有ペーストが付着した金属繊維シートを乾燥させることにより、炭素材料が付着した金属繊維シートを製造することができる。
【0079】
溶媒の種類、攪拌時間、乾燥条件(温度や時間)等は、使用するバインダーや炭素材料の種類等に応じて適宜変更すればよい。
【0080】
また、炭素材料含有ペースト中の導電材料の濃度、粘度、及び付着時間を変更することで、金属繊維シートに付着される炭素材料の量を調整することができる。
【0081】
<<<電解液130>>>
電解液130は、典型的には、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等のアルカリ金属の水酸化物を溶質として含むアルカリ電解液であるが、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液、アルカリ土類金属の水酸化物の水溶液等であってもよい。
【0082】
電解液が水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液である場合、電解液130中のアルカリ金属イオンのモル濃度は、電極の材質により好適範囲が変わるが、好ましくは0.01~5mol/L、より好ましくは0.02~2mol/L、更に好ましくは0.05~1mol/Lである。
【0083】
電解液130のpHは、特に限定されないが、好ましくは12以上、より好ましくは13以上等とすればよい。
【0084】
ここで、電解液130は、溶存酸素を含むことが好ましい。
より具体的には、電解液130の溶存酸素濃度(特に、蓄電デバイスの充放電開始前乃至は充放電開始前時点での溶存酸素濃度)は、蓄電デバイスの使用環境によっても異なるが、好ましくは0.3mg/L(0.01mM)以上であり、より好ましくは1mg/L以上であり、更に好ましくは5mg/L以上であり、特に好ましくは7mg/L以上である。溶存酸素濃度の上限値は、蓄電デバイスの使用環境における酸素の溶解度とすることができる。
更に具体的な例として、蓄電デバイスを20℃環境で使用する場合において、電解液130の溶存酸素濃度は、0.3mg/L以上(上限値は溶解度)であることが好ましく、8mg/L以上であることがより好ましい。
なお、20℃における酸素の溶解度は、41mg/L(1.27mM)である(下記文献1参照)。
ここで、20℃において実際に水に溶解している酸素の溶解量は8mg/L(0.25mM)である(下記文献2参照)。つまり、大気に接触されている電解液130は20℃における溶存酸素濃度が8mg/L程度であり、このような電解液130は十分な溶存酸素を含有しているといえる。
電解液130が溶存酸素を含むことで、繰り返し充放電性に優れる蓄電デバイスとすることができる。
[文献1]
電気化学協会編,新編電気化学測定法,pp12~15(1988)
[文献2]
大谷文章,片山靖,金村誠之,加藤健司,桑畑進,立間徹,外山滋,松原浩,三輪哲也,Electrochemistry,70巻,356-358頁(2002年)
【0085】
電解液130中の溶存酸素濃度は、窒素バブリングによる脱酸素、大気中での電解液130の静置、酸素の吹込み等によって調整することができる。なお、電解液130中の溶存酸素濃度は、市販の測定装置(例えば、BAS社製 FireStingGO2 ポケット酸素モニター)によって測定することができる。
【0086】
電解液130の溶存酸素濃度を安定させるために、電解液130が外郭体110内に密閉状態にて保持されていてもよい。
【実施例0087】
次に、実施例及び比較例により、本発明の効果を詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例には何ら限定されない。
【0088】
<<<<電極の作成>>>>
金属繊維シートを準備した上で、この金属繊維シートに導電性ナノ構造を形成して正極を製造し、この金属繊維シートに炭素材料を担持させることで負極を製造した。以下、それぞれの工程について説明する。
【0089】
<<<金属繊維シートの準備>>>
<<ステンレス鋼繊維シート>>
ステンレス鋼繊維シートは、繊維径:8μm、厚み:100μm、坪量:300g/m2、占積率:33%である。坪量は、金属繊維シートの1平方メートルあたりのシートの重さを意味している。占積率は、金属繊維シートの体積当たりの金属繊維の占める割合であり、数値が少ないほど、金属繊維シートに空隙が多いことを示している。
【0090】
<<銅繊維シート>>
銅繊維シートは、繊維径:18.5μm、厚み:100μm、坪量:300g/m2、占積率:33%の、抄造・焼結された銅繊維シートを使用した。
【0091】
<<<導電性ナノ構造を有する金属繊維シート>>>
<<銅系の導電性ナノ構造を有する金属繊維シート>>
以下の手順に基づき、銅系の導電性ナノ構造を有する金属繊維シートを製造した。
【0092】
<導電性ナノ構造体作成用電解液の調製>
(硫酸テトラアンミン銅(II)電解液)
硫酸テトラアンミン銅(II)(アルドリッチ社製、純度98%)を0.31gと、支持電解質である硫酸リチウム(和光純薬社製、純度99.0%)を0.64gとを、蒸留水40.2mLに溶解させた。この溶液にNH3水(関東化学社製、アンモニア含有量29%水溶液)を9.8mL添加し、マグネティックスターラーで30分間攪拌し、硫酸テトラアンミン銅(II)の濃度が25mMの導電性ナノ構造体作成用電解液とした。
【0093】
<導電性ナノ構造を有する金属繊維シートの製造装置>
図2の三電極法を用いて導電性ナノ構造を有する評価試料を作製した。電源はポテンショスタット(北斗電工社製、モデルHAB-151)を使用し、
図2に示すように3極式セルを接続した。前記調製された電解液を電解セルの主室に入れた。前記調製された電解液から硫酸テトラアンミン銅(II)のみを除いた電解液を作製し、それを副室に入れた。
そしてポテンショスタットの動作電極の端子に、金属繊維シート基材を使用し、対向電極端子に白金板、及び、参照電極の端子に水銀-酸化水銀電極(BAS社製、モデルRE-61AP、以降Hg/HgOと略記する)を接続した。
【0094】
<導電性ナノ構造を有する金属繊維シートの製造>
動作電極に-1.45Vの電位を印加し、2.0C/cm2の電気量を通電した。電解セルの主室に入れた動作電極の金属繊維シートでは、このとき硫酸テトラアンミン銅(II)が2電子還元され、銅が析出する。同時にアンモニアが形態制御剤として作用するため、銅は単なる膜の形態ではなく、デンドライト状、繊維状、棒状、針状等の様々な形状のナノワイヤーとして析出する。電解終了後、銅ナノワイヤーが形成された金属繊維シート基材を電解液から取り出し、蒸留水でくり返し洗浄することにより、導電性ナノ構造を有する金属繊維シートを得た。
【0095】
<<コバルト系の導電性ナノ構造を有する金属繊維シート>>
以下の手順に基づき、コバルト系の導電性ナノ構造を有する金属繊維シートを製造した。
【0096】
<導電性ナノ構造体作成用電解液の調製>
(ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物電解液)
ヘキサアンミンコバルト(III)塩化物(アルドリッチ社製、純度99%以上)を0.508gと、支持電解質である硫酸リチウム(和光純薬社製、純度99.0%)を1.28gとを、蒸留水100mLに溶解させ、マグネティックスターラーで30分間攪拌し、ヘキサアンミンコバルト濃度が19mMの電解液とした(硫酸リチウムの濃度は0.1M)。
【0097】
<導電性ナノ構造を有する金属繊維シートの製造装置>
図2の三電極法を用いて導電性ナノ構造を有する評価試料を作製した。電源はポテンショスタット(北斗電工社製、モデルHAB-151)を使用し、
図2に示すように3極式セルを接続した。前記調製された電解液を電解セルの主室に入れた。副室には、0.1Mの硫酸リチウムを溶解した電解質水溶液を入れた。また副室には、参照電極を浸漬した。主室と副室は塩橋によって電気的に接続されている。
そしてポテンショスタットの動作電極の端子には、金属繊維シート基材、対向電極端子に白金板、及び、参照電極の端子には、銀―塩化銀電極(BAS社製、モデルRE-1CP、以降Ag/AgClと略記する)を接続した。
【0098】
<導電性ナノ構造を有する金属繊維シートの製造>
動作電極に-1.07Vの電位を印加し3.0C/cm2の電気量を通電した。このときヘキサアンミンコバルト(III)イオンが3電子還元され、コバルトが析出する。同時にアンモニアが形態制御剤として作用するため、コバルトは単なる膜の形態ではなく、デンドライト状、繊維状、棒状、針状等の様々な形状のナノワイヤーとして析出する。電解終了後、コバルトナノワイヤーが形成された基材を電解液から取り出し、蒸留水でくり返し洗浄することにより、導電性ナノ構造を有する金属繊維シートを得た。
【0099】
<<銀系の導電性ナノ構造を有する金属繊維シート>>
以下の手順に基づき、銀系の導電性ナノ構造を有する金属繊維シートを製造した。
【0100】
<導電性ナノ構造体作成用電解液の調製>
硝酸銀(関東化学社製、純度99.8%以上)を0.085gと、支持電解質である硫酸リチウム(和光純薬社製、純度99.0%以上)を1.28gとを、蒸留水96mLに溶解させた。この溶液にNH3水(関東化学社製、アンモニア含有量29%水溶液)を3.26mL添加し、マグネティックスターラーで30分間攪拌し、硝酸銀の濃度が5mMの導電性ナノ構造体作成用電解液とした。
【0101】
<導電性ナノ構造を有する金属繊維シートの製造装置>
図2の三電極法を用いて導電性ナノ構造を有する評価試料を作製した。電源はポテンショスタット(北斗電工社製、モデルHAB-151)を使用し、
図2に示すように3極式セルを接続した。前記調製された電解液を電解セルの主室に入れた。前記調製された電解液から硝酸銀のみを除いた電解液を作製し、それを副室に入れた。
そしてポテンショスタットの動作電極の端子に、金属繊維シート基材を使用し、対向電極端子に白金板、及び、参照電極の端子にHg/HgOを接続した。
【0102】
<導電性ナノ構造を有する金属繊維シートの製造>
動作電極に-1.04Vの電位を印加し2.0C/cm2の電気量を通電した。このときジアンミン銀(I)イオンが1電子還元され、銀が析出する。同時にアンモニアが形態制御剤として作用するため、銀は単なる膜の形態ではなく、デンドライト状のナノワイヤーとして析出する。電解終了後、銀ナノワイヤーが形成された基材を電解液から取り出し、蒸留水でくり返し洗浄することにより、導電性ナノ構造を有する金属繊維シートを得た。
【0103】
<<<炭素材料が担持された金属繊維シート>>>
前述した金属繊維シートと同様の金属繊維シートを準備した。
【0104】
<活性炭が担持されたSUS繊維シートの製造>
ポリフッ化ビニリデン(アルドリッチ社製)を0.070g量りとり、サンプル瓶に加え、その中にN-メチル-2-ピロリジノン(関東ケミカル社製, 純度99%)を3.5g加え、マグネティックスターラーで24時間攪拌した。その後、活性炭YP-50F(クラレ社製)を0.42gとカーボンブラック(アルドリッチ社製)を0.035g(もしくはケッチェンブラック(ライオンスペシャリティーケミカルズ社製)0.035g)加え、3時間攪拌し、活性炭ペーストを作製した。このペーストを金属製のスパチュラを用いてSUS繊維シート(2.5×1cm)上に1cm角の面積になるように、裏と表両方に塗布した。その後、温風乾燥機で200℃で3時間乾燥することにより、活性炭が担持されたSUS繊維シートを得た。
【0105】
<<<<評価試験>>>>
以下の手順に基づき、上記した電極を含む畜電デバイスの評価試験を実施した。使用した正極及び負極の組み合わせは、表に示す通りである。また各電極は、平面寸法を1cm×2cmに成形し、1cm×1cmを電解液に浸漬して用いた。
【0106】
<<<充放電耐性評価試験>>>
図3に示した装置を用いて、充放電耐性評価試験を行った。電源は充放電ユニット(北斗電工社製、モデルHJ1010mSM8A)を使用し、正極及び負極に表に示す電極、及び、参照電極の端子にSCE、を接続した。外郭容器はポリスチレン製を使用し、ポリスチレン容器にシリコン栓で蓋をした密閉状態で充放電試験を行った。電解液は表に示す電解液とした。充放電耐性評価試験は20℃の環境で実施された。
【0107】
充放電を繰り返すサイクル試験を実施し、サイクル試験後の電気容量を測定した。サイクル試験に際しての、電流密度、繰り返し回数等の測定条件は、表に示す通りである。なお、一部の実施例については、サイクル試験中に電流密度を度々変更して充放電を行った。なお、サイクル回数は、サイクル回数が300回程度で、概ね容量が安定することから、サイクル回数300回が1つの基準となる場合がある。
【0108】
更に、実施例11として、実施例1と同一の電極構成を有し、電解液に対して30~40分の窒素バブリングによる脱酸素を行うことで電解液中の溶存酸素濃度を低減させた畜電デバイスを準備した。
各実施例及び比較例について、充放電耐性評価試験前に電解液の溶存酸素濃度を測定した。
【0109】
【0110】
実施例及び比較例から、本発明に係る蓄電デバイスは、水系電解液を用いつつも、容量を向上可能なことが把握される。
【0111】
ここで、実施例1におけるサイクル回数毎の容量の変化を
図4に、実施例11におけるサイクル回数毎の容量の変化を
図5に示す。このように、電解液が溶存酸素を含まない実施例11は、最大容量は非常に優れた結果となったが、充放電回数が一定回数を超えると、急激に容量が減少した。一方で、電解液が溶存酸素を含む実施例1は、充放電回数が増加しても、容量の変化が少ないものであった。実施例2-10についても同様に、充放電回数の容量変化が少ないものであった。以上より、電解液の溶存酸素濃度が、繰り返し充放電性に影響を与えることが示唆された。