(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140178
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】円盤揚力型垂直離着陸機(円盤揚力機・円揚機)
(51)【国際特許分類】
B64C 39/06 20060101AFI20220915BHJP
B64C 27/22 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B64C39/06
B64C27/22
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021074452
(22)【出願日】2021-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】595125890
【氏名又は名称】竹本 護
(72)【発明者】
【氏名】竹本 護
(57)【要約】
【課題】従来の垂直離着陸機としてのヘリコプター等はいずれも機体の下方に向けて強力な空気流を吹き付けてその空力的反作用として機体を上昇させていたものであり、「離着陸地点の周辺に強い風害を生じさせる」「騒音が酷い」「ローターやプロペラやファンによる機体進行方向に対する推進効率が劣るために燃費効率が悪い」等の欠点があった。
【解決手段】「機体の上部に装着された回転翼および回転翼に装着された揚力円盤をそれぞれの回転駆動装置により水平回転させることによって揚力円盤の上面に『円盤揚力』を発生させこの上方向への揚力の作用により揚力円盤を含む回転翼したがってまた機体に上昇力を発生させる」ことにより「上記の欠点を解消した垂直離着陸機としての『円盤揚力型垂直離着陸機』」を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
「垂直離着陸機としての機体の構成と構造」において、
1、「機体の胴体部の上部」に「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を設ける。
2、「前記1の回転軸部」に「平板形状からなりかつその中心部を前記1の回転軸部とし当該の回転軸部の回転軸を前記1の回転駆動装置に回転駆動されて自在に水平回転する『回転翼』」を設ける。
3、「前記2の回転翼の両端方向で前記2の回転軸の軸心部から等距離の位置」にそれぞれ「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を設ける。
4、「前記2の回転翼における前記3の回転軸部」にそれぞれ「円盤形状からなりかつその中心部を前記3の回転軸部とし当該の回転軸部の回転軸を前記3の回転駆動装置に回転駆動されて自在に水平回転する『揚力円盤』」を設ける。
5、ただし、「前記2の回転翼」は「前記1の機体の胴体部の上部」において当該の胴体と接触することなく回転し、「前記4の揚力円盤」はいずれも「前記2の回転翼の上部」において当該の回転翼と接触することなく回転し、かつ、「前記2の回転翼の上面」は「前記4の揚力円盤の円盤面」を面積構造的に内包するものとする。
6、また、「前記2の回転翼の上面と前記4の揚力円盤の下面」はともに平滑な面形状を形成し、かつ、「双方の面」は揚力円盤の静止時においても回転時においても狭隘な隙間を隔てて接触することなく面平行的に対向するものとする。
7、「前記2の回転翼の上部」に「回転翼と並行して設けられた翼でその中心部が両側の迎角の差動部分として機能し回転翼が機体の進行側にある場合はその迎角を小とし逆側にある場合はその迎角を大とする翼として機能する『回転翼揚力均衡翼』」を設ける。
8、機体の胴体の前方部に操縦席を中央部に客室もしくは貨物室を後方部に水平尾翼と垂直尾翼およびテールローターを設ける。
9、「機体の胴体部」に「機体を前方方向へ進行させる推進装置」を設ける。
「垂直離着陸機としての以上の1~9の機体の構成と構造」からなることを特徴とする円盤揚力型垂直離着陸機。
【請求項2】
「[請求項1]の円盤揚力型垂直離着陸機における垂直離着陸原理を応用した双回転翼型の円盤揚力型垂直離着陸機」であって、その「機体の構成と構造」において、
1、「機体の胴体部の上部」に「機体の前後方向を基準としての左右水平方向に延伸する左右一対の固定翼としての『回転翼支持翼』」を設ける。
2、「前記1の回転翼支持翼の両端部」にそれぞれ「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を設ける。
3、「前記1の回転翼支持翼の両端部の前記2の回転軸部」にそれぞれ「平板形状からなりかつその中心部を前記2の回転軸部とし当該の回転軸部の回転軸を前記2の回転駆動装置に回転駆動されて自在に水平回転する『回転翼』」を設ける。
4、「前記3の回転翼の両端方向で前記3の回転軸の軸心部から等距離の位置」にそれぞれ「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を設ける。
5、「前記3の回転翼における前記4の回転軸部」にそれぞれ「円盤形状からなりかつその中心部を前記4の回転軸部とし当該の回転軸部の回転軸を前記4の回転駆動装置に回転駆動されて自在に水平回転する『揚力円盤』」を設ける。
6、ただし、「前記3の回転翼」は「前記1の回転翼支持翼の上部」において当該の回転翼支持翼および胴体と接触することなく回転し、「前記5の揚力円盤」はいずれも「前記3の回転翼の上部」において当該の回転翼と接触することなく回転し、かつ、「前記3の回転翼の上面」はそれぞれ「前記5の揚力円盤の円盤面」を面積構造的に内包するものとする。
7、また、「前記3の回転翼の上面と前記5の揚力円盤の下面」はいずれも平滑な面形状を形成し、かつ、「双方の面」は揚力円盤の静止時においても回転時においても狭隘な隙間を隔てて接触することなく面平行的に対向するものとする。
8、機体の胴体の前方部に操縦席を中央部に客室もしくは貨物室を後方部に水平尾翼と垂直尾翼を設ける。
9、「機体の胴体部もしくは回転翼支持翼」に「機体を前方方向へ進行させる推進装置」を設ける。
「円盤揚力型垂直離着陸機としての以上の1~9の機体の構成と構造」からなることを特徴とする円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明の技術分野は、
1、「機体の胴体上部」に「平板形状からなりかつその中心部を回転軸部として自在に水平回転する『回転翼』」を設け、
2、「当該の回転翼の両端部の上部」にそれぞれ「円盤形状からなりかつその中心部を回転軸部として自在に水平回転する『揚力円盤』」を設け、
3、「当該の回転翼の上面と当該の揚力円盤の下面を狭隘な隙間を隔てて面平行的に対向させた状態でそれぞれの回転駆動装置によって当該の回転翼および当該の揚力円盤を回転させること」により回転翼および揚力円盤に「円盤揚力」を発生させ、
4、この円盤揚力を利用することにより、「回転翼したがってまた機体」に垂直上昇力を発生させ、もって上昇・下降・空中停止等の垂直運動を自在に行なう垂直離着陸機。
に関する技術分野である。
【0002】
ただし、本願発明における用語としての「円盤揚力型垂直離着陸機」「円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機」「回転翼」「揚力円盤」「回転翼揚力均衡翼」「回転翼支持翼」「円盤揚力」の定義については、以下のとおりである。
【0003】
「円盤揚力型垂直離着陸機」とは、
1、「垂直離着陸機としての機体の構成と構造」において、
イ、「機体の胴体部の上部」に「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を設ける。
ロ、「前記イの回転軸部」に「平板形状からなりかつその中心部を前記イの回転軸部とし当該の回転軸部の回転軸を前記イの回転駆動装置に回転駆動されて自在に水平回転する『回転翼』」を設ける。
ハ、「前記ロの回転翼の両端方向で前記ロの回転軸の軸心部から等距離の位置」にそれぞれ「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を設ける。
ニ、「前記ロの回転翼における前記ハの回転軸部」にそれぞれ「円盤形状からなりかつその中心部を前記ハの回転軸部とし当該の回転軸部の回転軸を前記ハの回転駆動装置に回転駆動されて自在に水平回転する『揚力円盤』」を設ける。
ホ、ただし、「前記ロの回転翼」は「前記イの機体の胴体部の上部」において当該の胴体と接触することなく回転し、「前記ニの揚力円盤」はいずれも「前記ロの回転翼の上部」において当該の回転翼と接触することなく回転し、かつ、「前記ロの回転翼の上面」は「前記ニの揚力円盤の円盤面」を面積構造的に内包するものとする。
ヘ、また、「前記ロの回転翼の上面と前記ニの揚力円盤の下面」はともに平滑な面形状を形成し、かつ、「双方の面」は揚力円盤の静止時においても回転時においても狭隘な隙間を隔てて接触することなく面平行的に対向するものとする。
ト、「前記ロの回転翼の上部」に「回転翼と並行して設けられた翼でその中心部が両側の迎角の差動部分として機能し回転翼が機体の進行側にある場合はその迎角を小とし逆側にある場合はその迎角を大とする翼として機能する『回転翼揚力均衡翼』」を設ける。
チ、機体の胴体の前方部に操縦席を中央部に客室もしくは貨物室を後方部に水平尾翼と垂直尾翼およびテールローターを設ける。
リ、「機体の胴体部」に「機体を前方方向へ進行させる推進装置」を設ける。
との構成と構造からなることを特徴とする垂直離着陸機であって、
2、「当該の回転翼および揚力円盤の回転による『当該の回転翼の下面および揚力円盤の上面の表面における大気の相対気流の発生』を原因として揚力円盤の上面に『円盤揚力』を発生させ、この『円盤揚力』を原因として「回転翼したがって機体に『垂直上昇力』を発生させること」によって「機体の垂直方向の運動としての『上昇・下降・空中停止』等の運動」を行ない、
3、「機体前方方向への推進装置」の作動によって「機体の水平方向の運動としての前進運動」を行なう垂直離着陸機。
をいう。
【0004】
「円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機」とは、
1、「円盤揚力型垂直離着陸機としての機体の構成と構造」において、
イ、「機体の胴体部の上部」に「機体の前後方向を基準としての左右水平方向に延伸する左右一対の固定翼としての『回転翼支持翼』」を設ける。
ロ、「前記イの回転翼支持翼の両端部」にそれぞれ「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を設ける。
ハ、「前記イの回転翼支持翼の両端部の前記ロの回転軸部」にそれぞれ「平板形状からなりかつその中心部を前記ロの回転軸部とし当該の回転軸部の回転軸を前記ロの回転駆動装置に回転駆動されて自在に水平回転する『回転翼』」を設ける。
ニ、「前記ハの回転翼の両端方向で前記ハの回転軸の軸心部から等距離の位置」にそれぞれ「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を設ける。
ホ、「前記ハの回転翼における前記ニの回転軸部」にそれぞれ「円盤形状からなりかつその中心部を前記ニの回転軸部とし当該の回転軸部の回転軸を前記ニの回転駆動装置に回転駆動されて自在に水平回転する『揚力円盤』」を設ける。
ヘ、ただし、「前記ハの回転翼」は「前記イの回転翼支持翼の上部」において当該の回転翼支持翼および胴体と接触することなく回転し、「前記ホの揚力円盤」はいずれも「前記ハの回転翼の上部」において当該の回転翼と接触することなく回転し、かつ、「前記ハの回転翼の上面」はそれぞれ「前記ホの揚力円盤の円盤面」を面積構造的に内包するものとする。
ト、また、「前記ハの回転翼の上面と前記ホの揚力円盤の下面」はいずれも平滑な面形状を形成し、かつ、「双方の面」は揚力円盤の静止時においても回転時においても狭隘な隙間を隔てて接触することなく面平行的に対向するものとする。
チ、機体の胴体の前方部に操縦席を中央部に客室もしくは貨物室を後方部に水平尾翼と垂直尾翼を設ける。
リ、「機体の胴体部もしくは回転翼支持翼」に「機体を前方方向へ進行させる推進装置」を設ける。
との構成と構造からなることを特徴とする双回転翼型の円盤揚力型垂直離着陸機であって、
2、「当該の回転翼および揚力円盤の回転による『当該の回転翼の下面および揚力円盤の上面の表面における大気の相対気流の発生』を原因として揚力円盤の上面に『円盤揚力』を発生させ、この『円盤揚力』を原因として「回転翼したがって回転翼支持翼したがってまた機体に『垂直上昇力』を発生させること」によって「機体の垂直方向の運動としての『上昇・下降・空中停止』等の運動」を行ない、
3、「機体前方方向への推進装置」の作動によって「機体の水平方向の運動としての前進運動」を行なう双回転翼型の円盤揚力型垂直離着陸機。
をいう。
【0005】
ただし、「円盤揚力型垂直離着陸機」の略称を「円盤揚力機」および「円揚機」とし、「円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機」の略称を「双回転円盤揚力機」および「双回転円揚機」とする。
【0006】
「円盤揚力型垂直離着陸機における『回転翼』」とは、
1、「円盤揚力型垂直離着陸機」の機体を構成する部材の一で、
2、「円盤揚力型垂直離着陸機の胴体の上部もしくは円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機の回転翼支持翼の上部に装着された部材」として、
3、「その中心部に『回転軸方向を垂直方向とする回転軸部』と『この回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置』が装着され、『その両端方向で当該の回転軸の軸心部から等距離の位置』にそれぞれ『揚力円盤』が装着された平板形状からなる部材」であって、
4、「当該の回転軸部を回転軸とし当該の回転駆動装置によって回転駆動されて水平面を自在に回転する翼」として機能し、
5、「当該の回転と揚力円盤の回転が合成されることによって当該の翼回転面の上下に発生する大気の相対気流を原因として形成される『揚力』」によって当該翼に「上方向への揚力」を発生させ、したがってまた機体に「上昇力」を発生させる部材。
をいう。
【0007】
「円盤揚力型垂直離着陸機における『揚力円盤』」とは、
1、「円盤揚力型垂直離着陸機」の機体を構成する部材の一で、
2、「『回転翼』の両端部の上部で『当該の回転翼の回転軸の軸心部から等距離の位置』に装着された部材」として、
3、「その中心部に『回転軸方向を垂直方向とする回転軸部』と『この回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置』が装着された円盤形状からなる部材」であって、
4、「当該の回転軸部を回転軸とし当該の回転駆動装置によって回転駆動されて水平面を自在に回転する円盤」として機能し、
5、「当該の回転と回転翼の回転が合成されることによって当該の円盤の上面に発生する大気の相対気流を原因として形成される『揚力』」によって当該の円盤したがって回転翼に「上方向への揚力」を発生させ、したがってまた機体に「上昇力」を発生させる部材。
をいう。
【0008】
「円盤揚力型垂直離着陸機における『回転翼揚力均衡翼』」とは、
1、「円盤揚力型垂直離着陸機」の機体を構成する部材の一で、
2、「回転翼の上部に回転翼と並行して設けられた翼型の部材」として、
3、その中心部において「両側の当該の翼のそれぞれの迎角を任意に差動変換させる機構」を有し、
4、機体の進行方向を基準として、回転翼が前進方向にある場合はその迎角を小とすることによって当該方向の回転翼全体に発生する揚力を小とし、回転翼が後退方向にある場合はその迎角を大とすることによって当該方向の回転翼全体に発生する揚力を大とし、もって「機体の前進方向と回転翼の回転方向によって発生する機体の左右位置における揚力の不均衡」を解消し「機体の左右位置における揚力の均衡」を形成する部材。
をいう。
【0009】
「円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機における『回転翼支持翼』」とは、
1、「円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機」の機体を構成する部材の一で、
2、「機体の胴体部の上部」に設けられた「機体の前後方向を基準としての左右水平方向に延伸する左右一対の固定翼」であって、
3、その両端部にそれぞれ「回転軸方向を垂直方向とする回転軸部と当該の回転軸部の回転軸を回転駆動する回転駆動装置」を装着し、
4、「当該の回転軸部」に「当該の回転駆動装置に回転駆動されて水平面を自在に回転する『回転翼』」を装着した部材。
をいう。
【0010】
「円盤揚力型垂直離着陸機における『円盤揚力』」とは、
1、「円盤揚力型垂直離着陸機の揚力円盤に発生する上向きの力」で、
2、「円盤揚力型垂直離着陸機の回転翼を回転させかつ『当該の回転翼の両端で回転する揚力円盤』を『回転翼の回転速度に比してその回転速度が十分に高速である回転速度』で回転させ回転翼の下面と揚力円盤の上面に『大気の相対気流』を発生させる場合」においては、
3、「回転翼の上面と揚力円盤の下面が面平行的かつ非接触的に近接対向しておりかつ双方の面の間の空間は密閉されている状況」および「回転翼と揚力円盤の回転運動によって生じる回転翼の下面と揚力円盤の上面における相対的な対気運動速度差」を原因として「回転翼の下面の全域における対気速度の総和が揚力円盤の上面を含む回転翼の上面の全域における対気速度の総和よりも小である現象」が発生し、
4、この「回転翼の上下の面における対気速度の総和差」を原因として「回転翼の下面に下向きに発生する揚力の総和」よりも「揚力円盤の上面を含む回転翼の上面に上向きに発生する揚力の総和」が大となり、
5、「この双方の揚力の総和差」を原因として揚力円盤と回転翼の全体に発生する「揚力円盤と回転翼の全体を上方向に持ち上げようとする力」。
をいう。
【背景技術】
【0011】
従来の垂直離着陸機としては、「機体上部のローターを回転させて上昇力を得るヘリコプター」「プロペラやファンを回転させて上昇力を得るドローン」「ジエット気流を下方に噴射して上昇力を得る軍用機」等の航空機が存在していたが、
これらの垂直離着陸機はいずれも機体の下方に向けて強力な空気流を吹き付けてその空力的反作用として機体を上昇させていたものであり、したがってその上昇力はほとんどが「抗力」の作用により発生させていたものである。
このため、これらの垂直離着陸機には、「離着陸地点の周辺に強力な下降気流や高熱気流による風害を生じさせる」「騒音が酷い」「ローターやプロペラやファンによる機体進行方向に対する推進効率が劣るために燃費効率が悪い」等の克服し難い欠点があった。
【0012】
これに対して、本願発明の「円盤揚力型垂直離着陸機」においては、
「回転翼および揚力円盤をそれぞれの回転駆動装置により水平回転させることによって揚力円盤の上面に『円盤揚力』を発生させこの上方向への揚力の作用により『揚力円盤を含む回転翼』したがってまた機体に上昇力を発生させる」
ことにより、上記の欠点のない垂直離着陸機を得るものである。
【先行技術文献】
【0013】
【特許文献1】1、円盤揚力型短距離離着陸機に係る特許文献としての「特願2020-014183」である特許文献。
【非特許文献】
【0014】
特許出願人が「円盤揚力型垂直離着陸機における機体の構成と構造およびその上昇力の発生方法に関連する非特許文献」をインターネット検索およびj-platpat検索によって探してみたが適当な参考文献は見つからなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の垂直離着陸機としての「ヘリコプター・ドローン・ジエット軍用機」等の航空機が持っていた「離着陸地点の周辺に強力な下降気流や高熱気流による風害を生じさせる」「騒音が酷い」「ローターやプロペラやファンによる機体進行方向に対する推進効率が劣るために燃費効率が悪い」等の欠点を克服し、
「離着陸地点の周辺に風害や大騒音を生じさせる恐れがない」「機体進行方向に対する推進効率が良く燃費効率も良い」等の長所・利点を有する垂直離着陸機を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
「本願発明の円盤揚力型垂直離着陸機が上記の課題を解決するための手段として機能する原理」すなわち「機体に『揚力による垂直上昇力』すなわちまた『下降気流の空力的反作用によることのない垂直上昇力』を発生させかつ機体を垂直上昇させる原理」については、以下の1~5のとおりである。
【0017】
1、「
図1」すなわち「円盤揚力型垂直離着陸機の正面図」すなわちまた「回転翼2の上面と揚力円盤1の下面が面平行的かつ非接触的に近接対向しておりかつ双方の面の間の空間が密閉されている構造図」を参照図として、
2、「『揚力円盤1と回転翼2の回転に伴い揚力円盤1と回転翼2に発生する揚力の様相』すなわちまた『機体が垂直上昇する様相』」に関しては、以下の3~5のとおりである。
【0018】
3、「回転翼2が回転しており揚力円盤1が回転していない場合」においては、
イ、回転翼2は水平回転しており、かつ、揚力円盤1の上面と回転翼2の下面はともに水平面形状であり、顕著な流線形的な凹凸面を形成しているわけではない。
ロ、したがって、「揚力円盤1の上面の対気速度と回転翼2の下面の対気速度は同一」であり、「『揚力円盤1の上面を含む回転翼2の上面に作用する気圧』と『回転翼2の下面に作用する気圧』は『ともに大気圧以下の同一気圧』」である。
ハ、したがってまた、「『揚力円盤1の上面を含む回転翼2の上面の全面に作用する揚力量』と『回転翼2の下面の全面に作用する揚力量』は同一量」であり、「揚力円盤1を含む回転翼2」に「垂直上昇力」が発生することはなく、機体が垂直上昇することはない。
【0019】
4、「揚力円盤1が回転しており回転翼2が回転していない場合」においては、
イ、「回転していないことでその下面が対気速度を有していない回転翼2の当該の下面に作用する気圧」は「大気圧」であるのに対して、「回転していることでその上面が対気速度を有している揚力円盤1の当該の上面の表面部分に作用する気圧」は「大気圧以下」であるが、回転翼2が回転していないことで「回転翼2の上下の空間すなわち揚力円盤1の上方の空間と回転翼2の下方の空間」においては「回転翼2に作用する気流」は存在しない。
ロ、したがって、「揚力円盤1の上面の表面部分よりも上部の大気」は揚力円盤1に対して静止しており「回転翼2の下面の大気」もまた回転翼2に対して静止しているために、揚力円盤1がどれほど高速回転しても揚力円盤1の上面と回転翼2の下面に「大気の流れ」が発生することはなく、双方の面に「揚力」が発生することはない。
ハ、したがってまた、「揚力円盤1を含む回転翼2」に「垂直上昇力」が発生することはなく、機体が垂直上昇することはない。
【0020】
5、一方、「円盤揚力型垂直離着陸機を運転している場合」すなわち「揚力円盤1が高速回転しており回転翼2が回転している場合」においては、
イ、「揚力円盤1を含む回転翼2の上面と回転翼2の下面」にはそれぞれ「大気の相対気流」が発生する。
ロ、「高速回転している揚力円盤1の上面の対気速度」は「回転翼2の回転速度に揚力円盤1の回転速度が加算されての対気速度」であり、したがって「揚力円盤1の上面の全面の対気速度」は「回転翼2の下面の対気速度」よりもつねに大である。
ハ、すなわちまた、「揚力円盤1の上面の全面に作用する気圧」は「回転翼2の下面の全面に作用する気圧」よりもつねに「低気圧」である。
ニ、したがって、「『揚力円盤1の上面の全面に作用する円盤揚力』を含む回転翼2の上面に作用する揚力の総量」は「回転翼2の下面の全面に作用する揚力の総量」よりもつねに大であるために、「揚力円盤1を含む回転翼2」にはその「上下の揚力の総量の差」に応じての「垂直上昇力」が発生する。
ホ、したがってまた、「揚力円盤1と回転翼2のそれぞれの回転数を増大させることにより当該の垂直上昇力が機体の重量を超えた時点」で「機体は浮上し垂直上昇すること」となり、機体は「円盤揚力型垂直離着陸機」として機能することとなる。
ヘ、ただし、「揚力円盤1における高速回転」とは、
「回転する揚力円盤1の上面のすべての位置における対気速度が回転する回転翼2の下面のすべての位置における対気速度よりも大となる回転速度」
をいう。
【0021】
なお、上記の原理の説明は、「円盤揚力型垂直離着陸機における垂直上昇原理」に限定しての説明であり、円盤揚力型垂直離着陸機において「従来のヘリコプター等が行なっていた前進運動や全周方向への移動や機体の旋回等の実用的運動能力」を得るためには、「機体の胴体部分等のいずれかの部分に相当の推進機能を有する推進装置を装着すること」が必要であり、その「装着と機体の運動の様相」は後述の「実施例1」「実施例2」において説明するものとする。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の「円盤揚力型垂直離着陸機」においては、
1、「回転翼2および揚力円盤1をそれぞれの回転駆動装置12もしくは22により回転させることによって揚力円盤1の上面に『揚力』を発生させこの揚力の作用により回転翼2したがってまた機体に上昇力を発生させること」により、「従来の下降気流の空力的反作用としての上昇力を得ていた垂直離着陸機」としての「機体上部のローターを回転させて上昇力を得るヘリコプター」「プロペラやファンを回転させて上昇力を得るドローン」「ジエット気流を下方に噴射して上昇力を得る軍用機」等の垂直離着陸機が持っていた「離着陸地点の周辺に強力な下降気流や高熱気流を吹き付けることによって風害を生じさせる」「騒音が酷い」等の欠点を克服することが可能となり、
2、また、「揚力円盤1を含めての回転翼2の外形は機体進行方向に対して並行する平板形状である」ために、機体の進行中においても回転翼2の空気抵抗は僅少であり、従来の垂直離着陸機が持っていた「ローターやプロペラやファンによる機体進行方向に対する空気抵抗が大であり推進効率が劣るために燃費効率が悪い」等の欠点を克服することが可能となり、
3、もって、「離着陸地点の周辺に風害や大騒音を生じさせる恐れがない」「機体進行方向に対する推進効率が良いことで燃費効率も良い」等の効果と利便性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】1、『
図1』は、円盤揚力型垂直離着陸機の「正面図」である。イ、「揚力円盤部分」は揚力円盤1の回転軸11の軸心を通過する断面図である。ロ、「回転翼部分」は回転翼2の回転軸21の軸心を通過する断面図である。ハ、「揚力円盤1の回転軸11と回転駆動装置12」は側面図である。ニ、「回転翼2の回転軸21と回転駆動装置22」は側面図である。ホ、「回転翼揚力均衡翼4」「胴体3」「推進装置6」は正面図である。
【
図2】2、『
図2』は、円盤揚力型垂直離着陸機の「平面図」である。イ、「揚力円盤1と回転翼2」を平面描写しているが「回転翼揚力均衡翼4」の描写は省略している。
【
図3】3、『
図3』は、円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機の「正面図」である。イ、「揚力円盤部分」は揚力円盤1の回転軸11の軸心を通過する断面図である。ロ、「回転翼部分」は回転翼2の回転軸21の軸心を通過する断面図である。ハ、「揚力円盤1の回転軸11と回転駆動装置12」は側面図である。ニ、「回転翼2の回転軸21と回転駆動装置22」は側面図である。ホ、「回転翼支持翼5」「胴体3」「推進装置6」は正面図である。
【
図4】4、『
図4』は、円盤揚力型垂直離着陸機双回転翼型機の「平面図」である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0024】
「円盤揚力型垂直離着陸機の飛行状況」については、以下の1~5のとおりである。
1、地上において、「揚力円盤1を高速回転させるとともに回転翼2を回転させる」と、
イ、「揚力円盤1と回転翼2が大気内を回転する」ことによって「揚力円盤1を含む回転翼2の上面と回転翼2の下面に『大気の相対気流』が発生」し、したがって「揚力円盤1を含む回転翼2の上面と回転翼2の下面にはそれぞれに『揚力』が発生する」が、
ロ、揚力円盤1が高速回転をしているために「揚力円盤1の上面の対気速度は回転翼2の下面の対気速度よりも常に大」であり、したがって「揚力円盤1を含む回転翼2の上面に発生する揚力は回転翼2の下面に発生する揚力よりも常に大」である。
2、さらに、「揚力円盤1と回転翼2の双方の回転速度を上げる」と、
イ、「揚力円盤1を含む回転翼2の上面に発生する揚力と回転翼2の下面に発生する揚力の『揚力差』」が双方の回転速度の上昇とともに大となり、
ロ、「その『揚力差の値』が機体の重量の値を超えた時点」で機体は浮上し「上昇」を開始する。
3、「空中に浮上した機体における上昇・下降・空中停止の様相」に関しては、
イ、「揚力円盤1の回転速度を上げる」もしくは「揚力円盤1と回転翼2の回転速度を上げる」と、「揚力円盤1を含む回転翼2の上面の相対気流の速度が回転翼2の下面の相対気流の速度よりもいっそう大」となり、したがって「揚力円盤1を含む回転翼2の上面の揚力が回転翼2の下面の揚力よりもいっそう大」となって、「当該の揚力差の増大」を原因として機体は上昇する。
ロ、「揚力円盤1の回転速度を下げる」もしくは「揚力円盤1と回転翼2の回転速度を下げる」と、「揚力円盤1を含む回転翼2の上面の相対気流の速度と回転翼2の下面の相対気流の速度の速度差が小」となり、したがって「揚力円盤1を含む回転翼2の上面の揚力と回転翼2の下面の揚力の揚力差が小」となって、「当該の揚力差の減少」を原因として機体は下降する。
ハ、「機体が空中において上下動をせず停止している状態時」において「揚力円盤1と回転翼2の回転速度を維持する」と、「揚力円盤1を含む回転翼2の上面の相対気流の速度と回転翼2の下面の相対気流の速度」が維持され、したがって「揚力円盤1を含む回転翼2の上面の揚力と回転翼2の下面の揚力」も維持され、機体は空中停止する。
4、「機体が前進する様相」に関しては、
イ、機体が空中浮上している状態で、「機体の胴体3に装着しているレシプロエンジン・ターボブロップエンジン・ジエットエンジン・モーター等の推進装置6」を作動させプロペラ・ファン・ジエット噴流等による後方への気流を発生させれば機体は前進する。
ロ、ただし、機体の前進時においては、「回転翼2の前進側の翼面対気速度」としては「回転翼2の回転速度に機体の前進速度が加算された速度」となり、「回転翼2の後退側の翼面対気速度」としては「回転翼2の回転速度から機体の前進速度が減算された速度」となり、したがって「回転翼2の前進側の揚力が大となり後退側の揚力が小となる」ために、この揚力の左右差を解消し左右の揚力を均衡させ機体の左右の平衡を保つ必要が生じる。
ハ、この「機体の前進時における機体の左右の平衡姿勢」を保つためには、『回転翼揚力均衡翼4』を作動させ、回転翼2の前進側の回転翼揚力均衡翼4の迎角を小とし回転翼2の後退側の回転翼揚力均衡翼4の迎角を大とし、もって、回転翼2の前進側の回転翼揚力均衡翼4の揚力を小とし回転翼2の後退側の回転翼揚力均衡翼4の揚力を大とし、「回転翼2全体の揚力の左右差」を解消すれば良い。
5、なお、「以上の1~4に示す機体」においては、機体は「上昇・下降・空中停止・前進の運動」しかできないが、従来のヘリコプター等が行なっていた「機体が前後左右等の水平全周方向へ移動する運動および静止旋回する運動」に関しては、
イ、機体の胴体3に「機体の水平全周方向への推進力を有する推進装置でその推進方向の選択により機体を希望する前後左右等の水平全周方向へ自在に移動させかつ機体を水平方向に自在に回転させる推進装置」およびテールローターを装着し、
ロ、「当該の推進装置およびテールローター」を適宜に作動させることにより、「機体を希望する前後左右等の水平全周方向へ自在に移動させる」ものとし、かつ、「機体を水平方向に自在に回転させる」ものとする。