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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140200
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】金型装置および射出吹込成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20220915BHJP
   B29C 45/04 20060101ALI20220915BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B29C45/37
B29C45/04
B29C49/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021080570
(22)【出願日】2021-05-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2021038624
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 誠
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AG07
4F202AG23
4F202AG24
4F202AG26
4F202AH55
4F202AR12
4F202AR14
4F202CA11
4F202CA15
4F202CB01
4F202CC07
4F202CK12
4F202CK17
4F206AG07
4F206AG23
4F206AG24
4F206AG26
4F206AH55
4F206AR12
4F206AR14
4F206JA06
4F206JC06
4F206JL02
4F206JQ81
4F206JW41
4F208AG07
4F208AH55
4F208LA08
4F208LB01
4F208LG03
4F208LG16
4F208LG19
4F208LG29
4F208LH06
(57)【要約】
【課題】口部にフランジ部を有する成形品においてフランジ部の表面の平滑性を向上させることが可能な金型装置を提供する。
【解決手段】本発明の金型装置は、第1凹型部を有する第1金型と、第2凹型部を有する第2金型と、両面に複数のコア金型が配設され、当該コア金型が当該第1金型および当該第2金型と型締可能な中間金型と、を備え、口部を有するプリフォームおよび成形品を成形する金型装置であって、前記第1凹型部と前記コア金型とで形成されるキャビティ空間のうちのプリフォームの前記口部に対応するキャビティ空間の第1容積が、前記第2凹型部と前記コア金型とで形成されるキャビティ空間のうちの成形品の前記口部に対応するキャビティ空間の第2容積よりも大きくなっている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹型部を有する第1金型と、第2凹型部を有する第2金型と、両面に複数のコア金型が配設され、当該コア金型が当該第1金型および当該第2金型と型締可能な中間金型と、を備え、口部を有するプリフォームおよび成形品を成形する金型装置であって、
前記第1凹型部と前記コア金型とで形成されるキャビティ空間のうちのプリフォームの前記口部に対応するキャビティ空間の第1容積が、前記第2凹型部と前記コア金型とで形成されるキャビティ空間のうちの成形品の前記口部に対応するキャビティ空間の第2容積よりも大きい、金型装置。
【請求項2】
前記コア金型は、プリフォームおよび成形品の前記口部に対応するキャビティ空間を形成する根元部を有し、
前記第1凹型部は、プリフォームの前記口部に対応するキャビティ空間を形成する第1開口部を有し、
前記第2凹型部は、成形品の前記口部に対応するキャビティ空間を形成する第2開口部を有し、
前記根元部と前記第1開口部とでプリフォームの前記口部に対応するキャビティ空間を形成すると共に、前記根元部と前記第2開口部とで成形品の前記口部に対応するキャビティ空間を形成する、請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記第1凹型部は、前記第1開口部に、前記第2凹型部の前記第2開口部よりも窪む窪み部を有し、
前記第1凹型部は、フランジ部と首部とを有する口部のフランジ部に対応するフランジ部側凹型部と、口部の首部に対応する首部側凹型部とを有し、
前記第1金型は、少なくとも、前記フランジ部側凹型部と前記首部側凹型部との間に前記窪み部を有する、請求項2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記フランジ部側凹型部と前記首部側凹型部との間に位置する前記窪み部は、前記第1凹型部の軸線に直交する径方向の内側から外側に向かって、軸線方向に沿って測った長さが漸減する、請求項3に記載の金型装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の金型装置が取り付けられる、射出吹込成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型装置および射出吹込成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば飲料物や食品などの内容物を収容する容器として、口部にフランジ部を有する容器が使用されることがある。このような容器は、容器の中間成形体であるプリフォームの射出成形と、プリフォームを膨張させて容器を得るための吹込成形とを、同時に同一の成形機で効率よく大量に製造可能であることから、射出吹込成形機を用いて製造され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、このような容器を用いて内容物を充填する際には、容器に内容物を充填した後、口部のフランジ部に、シーラント層を有する蓋材を例えば超音波や加熱などの方法により溶着することで、容器の密封が行われている。したがって、容器の密封には蓋材がフランジ部に適切に溶着されることが必要であり、それ故に、容器のフランジ部の表面には高い平滑性が求められている。このような要求に対して従来の製造では、成形材料を射出成形してプリフォームを得る工程での射出・保圧条件を調整することにより、平滑性の向上が行われることがあった。しかし、射出・保圧条件の調整による方法ではフランジ部の表面の平滑性が十分とは言えず、さらなる改善が求められていた。
【0004】
そこで、本発明は、口部にフランジ部を有する容器などの成形品においてフランジ部の表面の平滑性を向上させることが可能な金型装置、および射出吹込成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決することのできる一の金型装置は、第1凹型部を有する第1金型と、第2凹型部を有する第2金型と、両面に複数のコア金型が配設され、当該コア金型が当該第1金型および当該第2金型と型締可能な中間金型と、を備え、口部を有するプリフォームおよび成形品を成形する金型装置であって、前記第1凹型部と前記コア金型とで形成されるキャビティ空間のうちのプリフォームの前記口部に対応するキャビティ空間の第1容積が、前記第2凹型部と前記コア金型とで形成されるキャビティ空間のうちの成形品の前記口部に対応するキャビティ空間の第2容積よりも大きくなっている。
【0006】
また上述した課題を解決することのできる一の射出吹込成形機は、上記の金型装置が取り付けられる、射出吹込成形機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、口部にフランジ部を有する成形品においてフランジ部の表面の平滑性を向上させることが可能な金型装置、および射出吹込成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る金型装置を用いて成形可能な成形品の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る金型装置が取り付けられた射出吹込成形機の一例を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る金型装置が取り付けられた射出吹込成形機を用いた射出吹込成形の工程を説明する概略図である。
図4図2に示す金型装置を、射出吹込成形機に取り付けて型開完了時の状態で示す図である。
図5図4のI-I線に沿った断面図である。
図6図2に示す金型装置を、射出吹込成形機に取り付けて型締時の状態で示す図である。
図7図6のII-II線に沿った断面図である。
図8図7に示す金型装置の第1金型と中間金型との一部を、型締時の状態で示す拡大断面図である。
図9図7に示す金型装置の第2金型と中間金型との一部を、型締時の状態で示す拡大断面図である。
図10図8に示す金型装置の第1金型と中間金型との一部をさらに拡大した断面図である。
図11図9に示す金型装置の第2金型と中間金型との一部をさらに拡大した断面図である。
図12】(a)~(c)は、図10に示す金型装置の第1金型の変形例を、図10と同様な状態で示す拡大断面図である。
図13】窪み部における軸線方向に沿って測った長さLを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0010】
〔金型装置〕
本実施形態の金型装置は、第1金型と、第2金型と、両面に複数のコア金型が配設され、当該コア金型が当該第1金型および当該第2金型と型締可能な中間金型と、を備え、図2に示すような射出吹込成形機に取り付けることで射出吹込成形を行うことができる。
本実施形態の金型装置により成形可能な成形品は、例えば図1に示すように、口部112にフランジ部111を有する容器MPである。このような容器MPは、特に限定されないが例えば、フランジ部111の表面(以下、フランジ面とも称す)に蓋材を溶着することにより、内部に収容した飲料物や食品などを密封することができる。
【0011】
ここで、図2に示す本実施形態の金型装置を取り付けることができる射出吹込成形機1は、成形材料を溶融させて金型装置101内に向けて射出する射出装置21と、射出装置21を金型装置101に対して前進・後退変位させる移動装置26と、金型装置101を型締状態と型開状態との間で開閉させる型締装置31とを備える。
本実施形態の金型装置の詳細を説明するに当たり、このような射出吹込成形機を用いた射出吹込成形の工程を簡単に説明する。図3の概略図に示すように、まず、金型装置101の第1金型102、第2金型103、中間金型104が、図3(a)に示すように型締状態となる。続いて、中間金型104のコア金型104a1と第1金型102とで形成されるキャビティ空間に射出装置21から成形材料が充填され、プリフォームPFの射出成形が行なわれる。次いで、プリフォームPFの成形材料が所定温度に冷却されると、型締装置の作動により第2金型103が所定の位置に後退するとともに、中間金型移動装置の作動により中間金型104が型開きの位置へと移動する。射出成形されたプリフォームPFは一方側のコア金型104a1に装着されており、図3(b)に示す型開位置で中間金型104が180度回転する。
再び、金型装置101の第1金型102、第2金型103、中間金型104が、型締装置や中間金型移動装置により移動して、図3(c)に示すように型締状態となる。この際、図3(c)に示す型締位置で、プリフォームPFを装着している一方側のコア金型104a1が吹込用の第2金型103内へ、他方側のコア金型104a2が第1金型102内へ挿入される。そして、一方側のコア金型104a1の根元部から空気が噴出されて吹込成形が行なわれる。一方、他方側のコア金型104a2と第1金型102のキャビティ空間に成形材料が充填され射出成形が行なわれ、一方側のコア金型104a1と他方側のコア金型104a2の両面で吹込成形と射出成形が同時に行なわれる。
吹込成形された成形品MPは図3(d)に示す型開位置で割型が開き取出される。次いで、プリフォームPFを装着している他方側のコア金型104a2が第2金型103内へ、一方側のコア金型104a1が再度第1金型102内へとそれぞれ挿入され、射出吹込成形を反復して行なうことができる。
本実施形態の金型装置は、上述するような工程で射出吹込成形する射出吹込成形機において取り付けて使用することができる。
【0012】
続いて、本実施形態の金型装置を図4図12を用いてより詳細に説明する。
本実施形態の金型装置101は、図4図7に示すように、第1金型102と、第2金型103と、両面に複数のコア金型104aが配設され、当該コア金型104aが当該第1金型102および当該第2金型103と型締可能な中間金型104と、を備えている。
なお、図4は、図2に示す金型装置101を、射出吹込成形機に取り付けて型開完了時の状態で、横方向から視た図である。図5は、図4のI-I線に沿った断面図である。また、図6は、金型装置101を、射出吹込成形機に取り付けて型締時の状態で横方向から視た図である。図7は、図6のII-II線に沿った断面図である。また、図8および図9は、図7の要部を拡大した断面図である。
【0013】
第1金型102は第1凹型部102aを有し、第1凹型部102aは、具体的には図7および図8に示すように、金型装置101の型締状態で、中間金型104のコア金型104aと協働して射出成形用のキャビティ空間を区画形成する。キャビティ空間は吹込成形前の中間成形体であるプリフォームPFの所望の形状に対応する形状となっており、キャビティ空間内に溶融状態の成形材料が射出されることで、プリフォームPFが成形される。なお、図8に示す例では、キャビティ空間にはプリフォームPFが形成されている。
【0014】
第1凹型部102aは、図8に示すように、第1凹型部102aの第1開口部102bとは軸線Aに沿う方向(以下軸線方向とも称す。)で逆側である底部にゲート102cを有しており、射出装置より溶融した成形材料が、当該ゲート102cを介してキャビティ空間へ流入する。
なお、第1金型102の第1凹型部102a、また、後述の第2金型103の第2凹型部103a、中間金型104のコア金型104aにおいては、キャビティ空間を形成する表面の形状や金型の外表面の形状を、円柱状にすることができる。また、第1凹型部102a、第2凹型部103a、コア金型104aの中心には仮想線としての軸線Aが存在するものとする。
図示の例では、第1凹型部102aは金型装置101の高さ方向に6つ並ぶことで列を形成し、その列は金型装置101の幅方向に間隔をおいて2つ設けられる。なお、射出成形用の第1凹型部102aの数は特に限定されない。
【0015】
また、第1金型102、後述する第2金型103、中間金型104においては、射出吹込成形の各工程で適切な温度に調整されることが必要になる。そのため、第1金型102、第2金型103、中間金型104は、油もしくは水等の液体その他の加熱用等の熱媒体を流動させることが可能な流路(図示せず)を内部に有することができる。また、第1金型102、第2金型103、中間金型104には、熱電対等の温度検出素子等(図示せず)を設けることができる。
【0016】
第2金型103は第2凹型部103aを有し、第2凹型部103aは、具体的には図7および図9に示すように、金型装置101の型締状態で、中間金型104のコア金型104aと協働して吹込み成形用のキャビティ空間を区画形成する。具体的には、第2凹型部103aは、第2凹型部103aの第2開口部103dとは軸線方向逆側に位置する底型部103cと、当該底型部103cに軸線方向開口部側に隣接し、軸線方向に直交する径方向に分割可能である複数の割型部103b(図示の例では2つの割型部であり、金型幅方向に分割可能)と、を有することができる。第2凹型部103aは、底型部103cと割型部103bとが組み合わされ、中間金型104のコア金型104aが挿入されることで、第2凹型部103aの内部にキャビティ空間が区画形成される。また、第2凹型部103aのキャビティ空間を区画形成する表面は、成形品MPの外表面の形状に対応する形状となっている。つまり、吹込成形で膨張したプリフォームPFを第2凹型部103aの表面が当該膨張を規制し、その結果として、第2凹型部103aの表面の形状が成形品MPの外表面の形状として転写され、成形品MPの所望の形状が形成される。なお、図9に示す例では、コア金型104aの表面上にプリフォームPFが存在し、吹込成形を行う前の状態であり、吹込成形を行うことで、図中の破線で示す位置に成形品MPが成形されることとなる。
【0017】
また、図示の例では、吹込み成形用の第2凹型部103aが、底型部103cと2つの割型部103bとで形成されている。当該第2凹型部103aが金型装置101の高さ方向に6つ並ぶことで列を形成し、当該列が金型装置101の幅方向に間隔をおいて2つ設けられる。なお、第2凹型部103aの数は特に限定されない。
また、割型部103bは、後述する割型開閉機構62により開閉させることができる。第2金型103の割型部103bは、割型開閉機構62によって金型幅方向で同じ向きに動かすものどうしが、割型連結部材63a、63bで連結され得、それにより、それぞれの割型部103bが同時に作動することができる。
【0018】
なお、図示の例では、第2凹型部103aは、底型部103cと複数の割型部103bとを有しているが、底型部103cを有さず、複数の割型部103bだけを有することもできる。
【0019】
中間金型104は、図4図7に示すように、板状に形成される板状部104bと、板状部104bの一方側の主面に設けられるコア金型104a(一方側のコア金型104aと称す)と、板状部104bの他方側の主面に設けられるコア金型104a(他方側のコア金型104aと称す)とを有する。一方側のコア金型104aと、他方側のコア金型104aとは、板状部104bを挟んで対称に配設される。一方側のコア金型104a、他方側のコア金型104aは、射出成形用の第1凹型部102aや吹込み成形用の第2凹型部103aと同数設けられる。
【0020】
中間金型104のコア金型104aは、図8図9に示すように、略円柱状である。その根元部104cには、コア金型104aが第2凹型部103aに挿入されて区画形成されるキャビティ空間内でプリフォームPFを吹込成形するため、吹込スリット104dが形成されている。当該吹込スリット104dは、根元部104cの表面に開口し、中間金型104の外部と連通し、外部よりプリフォームPFを膨張させるための流体(特に気体)を吹き込むことができる。
【0021】
ところで、本実施形態の金型装置101により成形可能な成形品MPは、例えば図1に示すように、口部112にフランジ部111を有する容器である。より具体的には、当該容器は、全体として軸線Aに直交する断面が円形であって、フランジ部111および首部114を有する口部112と、口部112の内径よりも拡径した側壁部および底部を有する本体部113とを有する。また、このような成形品MPは、中間成形体であるプリフォームPFを吹込成形することで得られる。プリフォームPFは、同様に全体として軸線Aに直交する断面が円形であって、フランジ部121および首部124を有する口部122と、口部122の内径と略同じまたは若干小さい内径の側壁部および底部を有する本体部とを有する。
【0022】
成形品MPの口部112中の首部114は、図9においてプリフォームPFを吹込成形する際の状態を示すように、プリフォームPFの内部に吹込スリット104dを介して気体を吹き込んでプリフォームPFを全体として膨張させた後であっても、第2凹型部103aの第2開口部103dによって膨張が抑えられた部分である。成形品MPの口部112中の首部114に対応する部分をプリフォームPFの口部122中の首部124とする。
また、成形品MPの本体部113は、図9に示すように、プリフォームPFの内部に対して吹込スリット104dを介して気体を吹き込んだ結果、第2凹型部103aの内部でプリフォームPFが膨張して形成された部分である。成形品MPの本体部113に対応する部分をプリフォームPFの本体部とする。
【0023】
また、本実施形態の金型装置101は、上記のような成形品MPおよびプリフォームPFを射出吹込成形するため、成形品MPおよびプリフォームPFの各部位に対応するキャビティ空間を形成する。
すなわち、金型装置101において、第1凹型部102aは、プリフォームPFの口部122に対応するキャビティ空間を形成する第1開口部102bを有する。また、コア金型104aは、プリフォームPFの口部122および成形品MPの口部112に対応するキャビティ空間を形成する根元部104cを有する。第2凹型部103aは、成形品MPの口部112に対応するキャビティ空間を形成する第2開口部103dを有する。
したがって、第1凹型部102aの第1開口部102bとコア金型104aの根元部104cとで、プリフォームPFの口部122(フランジ部121から首部124までの部分)に対応するキャビティ空間(以下、プリフォームPFの口部122に対応するキャビティ空間の部分を第1空間部分とも称す)を形成する。また、第2凹型部103aの第2開口部103dとコア金型104aの根元部104cとで、成形品MPの口部112(フランジ部111から首部114までの部分)に対応するキャビティ空間(以下、成形品MPの口部112に対応するキャビティ空間の部分を第2空間部分とも称す)を形成する。
また、本実施形態の金型装置101は、第1凹型部102aの本体部(第1開口部102bよりも底部側の部分)とコア金型104aの本体部(根元部104cよりも先端側の部分)とで、プリフォームPFの本体部に対応するキャビティ空間を形成する。また、本実施形態の金型装置101は、第2凹型部103aの本体部(第2開口部103dよりも底部側の部分)とコア金型104aの本体部(根元部104cよりも先端側の部分)とで、成形品MPの本体部113に対応するキャビティ空間を形成する。
【0024】
さらに、本実施形態の金型装置101は、図8図9に示すように、第2凹型部103aの第2開口部103dの先端103eと、コア金型104aの根元部104cにおける底部104e(根元部のうち最も根元になる部分)とで、成形品MPのフランジ部111に対応するキャビティ空間を形成する。また、第1凹型部102aの第1開口部102bの先端102dと、コア金型104aの根元部104cにおける底部104eとで、プリフォームPFのフランジ部121に対応するキャビティ空間を形成する。
また、より詳細には、第1凹型部102aの第1開口部102bの先端102dと、第2凹型部103aの第2開口部103dの先端103eと、コア金型104aの根元部104cにおける底部104eとに、径方向(軸線Aに直交する方向)外側に延びる表面が存在し、それぞれの表面によって、成形品MPやプリフォームPFのフランジ部111、121の表面(フランジ面)およびフランジ面とは逆側の表面(フランジ部の裏面)が形成される。
【0025】
そして、本実施形態の金型装置101においては、第1凹型部102aとコア金型104aとで形成されるキャビティ空間のうちのプリフォームPFの口部122に対応するキャビティ空間(第1空間部分)の第1容積が、第2凹型部103aとコア金型104aとで形成されるキャビティ空間のうちの成形品MPの口部112に対応するキャビティ空間(第2空間部分)の第2容積よりも大きくなっている。
【0026】
本実施形態において、このように第1空間部分の第1容積が、第2空間部分の第2容積よりも大きいことにより、口部112にフランジ部111を有する成形品MPにおいて、成形品MPのフランジ部111のフランジ面の平滑性を向上させることができる。
具体的には、従来、第1金型と中間金型とを用いてプリフォームPFを射出成形した場合、例えば図10に示すように、射出成形時にフランジ部を形成するキャビティ空間において成形材料が十分に供給されないことが生じることがあった(例えば図10の符号125)。そしてその結果、フランジ面の平滑性が十分でないことがあった。このような現象に対しては、例えば、射出成形における射出・保圧工程での条件を調整することにより改善させ得るが、フランジ面の平滑性向上は十分とは言えなかった。
これに対して、本実施形態では、第1空間部分内で射出成形により形成されたプリフォームPFの口部122が、吹込工程において、第1空間部分の第1容積より小さい第2容積の第2空間部分内に位置することとなる。したがって、吹込工程での第2金型103および中間金型104の型締およびプリフォームPF内への吹込の過程で第2凹型部103aおよびコア金型104aがプリフォームPFの口部122の成形材料を押圧することとなる。その結果、押圧された成形材料が流動、変形し、成形品MPのフランジ部111を成形するキャビティ空間内で成形材料圧が高まり、それにより、成形品MPのフランジ部111のフランジ面の平滑性を向上させることができる。
【0027】
なお、第1凹型部102aとコア金型104aとで形成されるキャビティ空間のうちのプリフォームPFの口部122に対応するキャビティ空間とは、射出成形工程において、射出成形されたプリフォームPFのうち口部122が位置することとなるキャビティ空間であり、第1凹型部102aの第1開口部102bとコア金型104aの根元部104cとで区画形成されるキャビティ空間である。
また、第2凹型部103aとコア金型104aとで形成されるキャビティ空間のうちの成形品MPの口部112に対応するキャビティ空間とは、吹込成形工程において、成形品MPのうち口部112が位置することとなるキャビティ空間であり、第2凹型部103aの第2開口部103dとコア金型104aの根元部104cとで区画形成されるキャビティ空間である。
プリフォームPFの口部122とは、成形品MPの口部112に対応する部分であり、ここでの「対応する」とは、具体的には例えば、プリフォームPFの口部122を軸線A方向に沿って測った長さを、成形品MPの口部112を軸線A方向に沿って測った長さと同じにすることを挙げることができる。
成形品MPの口部112とは、プリフォームPFの吹込成形工程において、プリフォームPFを全体として膨張させた後であっても、第2凹型部103aの第2開口部103dによって膨張が抑えられた部分である。
なお、プリフォームPFの口部122および成形品MPの口部112は、コア金型104aの表面上に吹込スリット104dが存在する場合には、プリフォームPFまたは成形品MPの中でも、吹込スリット104dの軸線方向の位置よりも、第1開口部102b側の範囲または第2開口部103d側の範囲に位置する部分とすることができる。
第1空間部分の第1容積および第2空間部分の第2容積は、第1金型102と中間金型104とを型締した状態、第2金型103と中間金型104とを型締した状態で形成される空間の容積を意味する。
【0028】
ところで、本実施形態において、第1空間部分の第1容積を第2空間部分の第2容積よりも大きくするため、金型装置101は、特に限定されないが例えば次のような構成を有することができる。
すなわち、第1凹型部102aが、図10図11に示すように、第1凹型部102aの第1開口部102bに、第2凹型部103aの第2開口部103dよりも窪む窪み部105を有することによって、第1空間部分の第1容積を第2空間部分の第2容積よりも大きくすることができる。
或いは、第1空間部分の厚さ(換言すれば、第1金型102および中間金型104の型締状態での第1開口部102bの第1表面102eからコア金型104aの根元部104cの表面までの距離)が、第2空間部分の厚さ(換言すれば、第2金型103および中間金型104の型締状態での第2開口部103dの第2表面103fからコア金型104aの根元部104cの表面までの距離)より大きくなることによって、第1空間部分の第1容積を、第2空間部分の第2容積よりも大きくすることができる。なお、第1空間部分の厚さが、第2空間部分の厚さより大きくなるとは、軸線Aを含む断面視において、第1空間部分の全体の厚さが、第2空間部分の厚さより大きくなってもよく、第1空間部分の少なくとも一部の厚さが、第2空間部分の厚さより大きくなってもよい。また、第1空間部分の一周にわたって第1空間部分の厚さが第2空間部分の厚さより大きくなってもよく、一周ではなく周方向の一部の第1空間部分の厚さが第2空間部分の厚さより大きくなってもよい。
さらに或いは、第2凹型部103aの第2開口部103dおよび/またはコア金型104aの根元部104cが、第2開口部103dの一部および/または根元部104cの一部をそれぞれの表面から突出させることが可能な突出機構を有し、そして、吹込工程での型締およびプリフォームPF内への吹込の過程で、当該突出機構を作動させて第2開口部103dの一部および/または根元部104cの一部を突出させることによって、第1空間部分の第1容積が、第2空間部分の第2容積よりも大きくなるようにすることができる。
【0029】
ここで、本実施形態において、第1凹型部102aが有することができる窪み部105について説明する。
窪み部105は、第1凹型部102aが有するものであって、図10図11に示すように、第1凹型部102aの第1開口部102bに位置する、第2凹型部103aの第2開口部103dよりも窪む部分である。具体的には、窪み部105は、第1凹型部102aの第1開口部102bの第1表面102eの少なくとも一部が、第2凹型部103aの第2開口部103dの第2表面103fよりも窪む部分である。つまり、第1表面102eと第2表面103fとを比較した場合において、第1表面102eの少なくとも一部が第2表面103fよりも窪み、それにより、第1容積が第2容積より大きくなっている。
【0030】
なお、第1凹型部102aの第1表面102eは、プリフォームPFのフランジ部121から首部124までの部分の外表面を区画形成する第1凹型部102aの表面である。また、第2凹型部103aの第2表面103fは、成形品MPのフランジ部111から首部114までの部分の外表面を区画形成する第2凹型部103aの表面である。
換言すれば、第2表面103fは、成形品MPのフランジ部111および首部114を有する口部112の外表面に接する、第2凹型部103aの表面であり、また、第1表面102eは、成形品MPの口部112に対応する、プリフォームPFの口部122の外表面に接する、第1凹型部102aの表面である。
【0031】
本実施形態において、第1凹型部102aが窪み部105を有することにより次の効果を得ることができる。
本実施形態において、第1金型102が窪み部105を有することにより、射出成形によって得られたプリフォームPFのフランジ部121から首部124までの部分(口部122)において、窪み部105に対応する部分が厚く形成されることとなる。そして、中間金型104がプリフォームPFを保持する状態で中間金型104と第2金型103とが型締されると、第2金型103は、第1金型102が有する窪み部105を有しないので、第2金型103の第2表面103fが、プリフォームPFにおける厚さが厚く形成された部分を押圧することとなる。その結果、押圧された成形材料が流動、変形し、フランジ部111を成形するキャビティ空間内で成形材料圧が高まり、それにより、成形品MPのフランジ部111のフランジ面の平滑性を向上させることができる。
なお、窪み部105が第1凹型部102aの表面の中でも第1表面102eに存在するのは、第1表面102eがフランジ面を形成する中間金型104の表面と近くに位置し、成形材料への押圧によってフランジ部111を形成するキャビティ空間内での成形材料圧の向上を期待できるためである。またさらに、第1凹型部102aの第1開口部102bより底部側の部分の表面に窪み部が存在している場合、第2凹型部103aの第2開口部103dより底部側の部分の表面が成形材料を押圧しにくく、押圧の効果を得にくいためである。
【0032】
なお、第1金型102が有する窪み部105は、その形状、配置位置など、特に限定されず任意にすることができるが、窪み部105は次の位置に設けられることが好ましい。すなわち、本実施形態において、プリフォームPFのフランジ部121に対応する第1凹型部102a中の部分(フランジ部121を区画形成する部分)をフランジ部側凹型部102fとし、また、プリフォームPFの首部124に対応する第1凹型部102a中の部分(首部124を区画形成する部分)を首部側凹型部102gとする。このとき、第1金型102は、少なくとも、フランジ部側凹型部102fと首部側凹型部102gとの間に窪み部105を有することが好ましい。換言すれば、フランジ部121の根元に対応する第1金型102の角を第2金型103の角よりも面取りしたような形状とすることが好ましい。
第1金型102が少なくとも、フランジ部側凹型部102fと首部側凹型部102gとの間に窪み部105を有することにより、上述のように、成形材料への押圧の効果を得るとともに、射出成形の際、フランジ部121を形成するキャビティ空間の奥へと成形材料が流れ込みやすくすることができる。
また、成形材料の流動性の観点から、フランジ部側凹型部102fと首部側凹型部102gとの間に窪み部105が存在する場合には、当該窪み部105は、径方向の内側から外側に向かって、軸線方向に沿って測った長さが漸減することが好ましい。なおここでの軸線方向に沿って測った長さLは、図13に示すように、窪み部105中の特定の位置Paで測った長さを意味し、具体的には次のようにして測定することができる。すなわち、まず第1金型102の第1表面102e(実線)と第2金型103の第2表面103f(破線)を重ね合わせ比較することで、窪み部105を特定する。次いで、前記重ね合わせた状態で、窪み部105の窪み表面105aの特定の位置Paから、第2凹型部103aのフランジ部側凹型部103gの表面を含む平面Pまでを軸線Aに平行な方向に沿って測ることで長さLを得ることができる。
【0033】
さらに、第1表面102eに対向するコア金型104aの表面上に吹込スリット104dが存在する場合には、窪み部105は、第1表面102eの中でも、吹込スリット104dの軸線方向の位置よりも、第1開口部102b側の範囲にある表面に存在することが好ましい。
【0034】
また、窪み部105の窪みの程度や範囲は、求められるフランジ面の平滑性に応じて任意に調整することができるが、例えば窪み部105において窪む容積は、第1金型102が第1表面102eに窪み部を有しない場合においてプリフォームPFに生じ得るヒケ量よりも大きいことが好ましい。
【0035】
また、窪み部105の形状は、特に限定されないが例えば、図10図12(a)~(c)に示すように、軸線Aを含む断面視において、直線状の輪郭線を含む形状、円弧状や楕円弧状などの曲線状の輪郭線を含む形状、またはそれらの組合せの形状とすることもできる。さらに、窪み部105は、図12(c)に示すように、1か所だけではなく複数箇所に設けることができ、フランジ面の平滑性が十分でない部分の状況(例えば十分でない部分の範囲や程度)に応じて対処することができる。さらに、窪み部105は、第1金型102が一周にわたって有することが好ましいが、一周ではなく部分的に存在させることもできる。また、窪み部105の窪むとは、軸線Aを含む断面視において、第1表面102eと第2表面103fとを比較した場合において、第1表面102eの一部だけが第2表面103fよりも窪む場合だけでなく、第1表面102eの全体または広範囲の部分が第2表面103fよりも窪む(第1表面102eに対する空間の方向を上方向とするとき、第2表面103fの位置が第1表面102eの位置がよりも上方向に位置する)場合も含む。
【0036】
〔射出吹込成形機〕
続いて、本実施形態の射出吹込成形機を図2図7を用いて説明する。なお、上述で説明した構成と同じ構成は、その説明を省略する。
【0037】
本実施形態の射出吹込成形機は、上述した本実施形態の金型装置101が取り付けられる射出吹込成形機である。
本実施形態の射出吹込成形機1は、成形材料を溶融させて金型装置101内に向けて射出する射出装置21と、移動装置26、金型装置101を型締状態と型開状態との間で開閉させる型締装置31とを備える。本実施形態の射出吹込成形機1を用いることで、先述の、本実施形態の金型装置101の欄で図3の概略説明図を参照して説明した工程で、射出吹込成形を行うことができる。
【0038】
〔射出装置〕
射出装置21は主に、金型装置101に向けて延びる円筒状等のシリンダ22と、シリンダ22の内部にそれと中心軸線を平行にして配置されて、周囲にフライトが螺旋状に設けられたスクリュ23と、シリンダ22の外周側にその周囲を取り囲んで配置されたバンド状等のヒータ24と、シリンダ22及びスクリュ23の後方側に配置されたモータボックス25とを備える。図示は省略するが、モータボックス25内には、シリンダ22の先端部に所定の量の成形材料を蓄積させるため、スクリュ23を中心軸線周りに回転させる計量モータや、金型装置101に接近する方向及び金型装置101から離れる方向の各方向へのスクリュ23の前進及び後退変位を行う射出モータ、スクリュ23が成形材料から受ける圧力を検出する圧力検出センサ等が配置されている。
【0039】
なおここでは、金型装置101の第1金型102が取り付けられる型締装置31の固定プラテン32aに接近する向きを前方側とし、固定プラテン32aから離隔する向きを後方側とする。したがって、図2では固定プラテン32aの右側に位置する射出装置21について見ると、固定プラテン32aに接近する左向きが前方側となり、固定プラテン32aから離隔する右向きが後方側になる。
【0040】
シリンダ22は、後方側でモータボックス25の手前に、成形材料をシリンダ22内に投入するためのホッパーが取り付けられ得る供給口22aが設けられる。また、金型装置101に近接するシリンダ22の先端部には、その前方側で横断面積が小さくなるノズル22bが設けられている。なお、供給口22aの近傍には水冷等による水冷シリンダ22cを設けることができる。
【0041】
ノズル22bの周囲を含むシリンダ22の周囲に配置されるヒータ24は、たとえば図示のように、シリンダ軸線方向で複数の部分に分割されて、各ヒータ部分の内側のシリンダ22の内部を異なる温度で加熱できるものとすることができる。各ヒータ部分には、温度検出器を設けることができる。
【0042】
スクリュ23の先端側は、その外径を部分的に小さくして設けた括れ部の周囲に、スクリュ23とともに前進及び後退変位してそれより前方側に送られた成形材料の後方側への逆流を防止する図示しない逆流防止リングが配置され得る。この逆流防止リングは、たとえば、それより前方側もしくは後方側に位置する成形材料から受ける圧力に応じて、スクリュ23に対して前後に変位し、それにより後方側から前方側に向かう成形材料の流れのみを許容するものである。
【0043】
このような構成を有する射出装置21によれば、供給口22aからシリンダ22の内部に投入された成形材料は、シリンダ22の外周側のヒータ24による加熱の下、計量モータで駆動されるスクリュ23の回転に基づいて溶融されつつ、シリンダ22の内部で前方側に向けて送られて、シリンダ22の先端部に蓄積される。この際に、スクリュ23は射出モータにより後退変位させられて、シリンダ22の先端部に、成形材料が蓄積される空間を形成する。
【0044】
その後、スクリュ23を前進変位させることにより、シリンダ22の先端部の成形材料は、ノズル22bを経て金型装置101に向けて射出される。さらにその後、シリンダ22の先端部に残留している成形材料を通じて、金型装置101のキャビティに充填された成形材料に圧力を作用させる保圧を行う。このとき、金型装置101の射出成形用キャビティで成形材料の冷却収縮に起因して不足した成形材料を補充することができる。
【0045】
なお、この射出吹込成形機1はインラインスクリュ式のものであるが、可塑化シリンダ及び可塑化スクリュと、射出シリンダ及び射出プランジャーとに構造及び機能上分離させたプリプラ式の射出吹込成形機とすることも可能である。
【0046】
〔移動装置〕
移動装置26は、たとえば射出装置21のモータボックス25の下部等に設けられ、固定プラテン32aに対して射出装置21を前進及び後退変位させる進退駆動機構である。
移動装置26を構成する進退駆動機構としては種々の機構を採用することができるが、図示の移動装置26は、油圧等の液圧ポンプ27と、液圧ポンプ27を作動させる電動等によるポンプ作動用モータ28と、液圧ポンプ27から作動液が供給されて、先端が固定プラテン32aに固定されたピストンロッドを押出・引込運動させる複動型の液圧シリンダ29とを含んで構成されている。
【0047】
この移動装置26は、上述した液圧ポンプ27、ポンプ作動用モータ28及び液圧シリンダ29が取り付けられたスライドベース26a、ならびに、ベースフレーム2上に敷設されて該スライドベース26aの直線運動を案内するガイド26bをさらに含む。それにより、スライドベース26aの上部に載置された射出装置21の進退変位を実現する。
【0048】
移動装置26により、射出装置21を金型装置101から離隔させたり、また、射出装置21を金型装置101に接近させて、射出装置21のシリンダ22のノズル22bを所定の圧力で金型装置101に押し付ける、いわゆるノズルタッチを行ったりすることが可能になる。
【0049】
〔型締装置〕
型締装置31は、固定プラテン32a、可動プラテン32b及び中間金型支持枠32cを有する金型保持機構32の他、固定プラテン32aに対して中間金型支持枠32cを動かす中間金型移動機構61と、固定プラテン32aに対して可動プラテン32bを動かすプラテン移動機構33と、第2金型103の割型部103bを開閉する割型開閉機構62とを有する。中間金型移動機構61及び割型開閉機構62については、図4図7を参照しながら後述する。
【0050】
金型保持機構32は、射出装置21及び金型装置101の相互間に位置する固定プラテン32aと、固定プラテン32aとの間で金型装置101を隔てて位置し、固定プラテン32aに対して接近・離隔変位が可能な可動プラテン32bと、固定プラテン32aと可動プラテン32bとの間に配置され、固定プラテン32aに対して接近・離隔変位が可能な中間金型支持枠32cとを含む。また、型締装置31には、固定プラテン32aから後述のリヤプラテン34側に延びて固定プラテン32aとリヤプラテン34とを連結する一本又は複数本のタイバー32dが設けられている。可動プラテン32b及び中間金型支持枠32cは、この例では、タイバー32dにより固定プラテン32aに対する離隔・接近変位がガイドされるものとしているが、タイバー32dでガイドされない場合もある。
【0051】
金型保持機構32のうち、固定プラテン32aは、ベースフレーム2上に固定して取り付けられる。一方、可動プラテン32b及び中間金型支持枠32cはそれぞれ、ベースフレーム2上に敷設されたガイド部材32e上に配置され、互いに独立して、固定プラテン32aに対して離隔する方向及び接近する方向にスライドすることができる。
【0052】
なお、固定プラテン32aに対して可動プラテン32b及び中間金型支持枠32cが離隔する位置では、金型装置101の第2金型103及び中間金型104が第1金型102から開いた型開状態となる。この離隔位置から可動プラテン32b及び中間金型支持枠32cのそれぞれを固定プラテン32aに向けて接近させることで、第2金型103及び中間金型104が第1金型102に対して閉じた型閉状態となるとともに、さらに可動プラテン32b及び中間金型支持枠32cをそれぞれ固定プラテン32aにて接近させて、第2金型103及び中間金型104が第1金型102に対して押し付けられた型締状態となる。ここでは、金型装置101の第1金型102が取り付けられる固定プラテン32aに接近する向きを前方側とし、固定プラテン32aから離隔する向きを後方側とする。型締装置31の固定プラテン32aを除く多くの部分については、図2では、固定プラテン32aに接近する右向きが前方側になり、固定プラテン32aから離隔する左向きが後方側になる。
【0053】
図示の中間金型支持枠32cは、正面視で矩形等の枠状を有し、水平面に平行な平面内で前後方向に直交する金型幅方向(図2では前後方向)に延びる回転軸部41が回転可能に設けられている。この例では、回転軸部41の軸方向を水平方向と平行な方向にしているが、回転軸部41の軸方向はこれに限らず、たとえば鉛直方向と平行な方向等とすることも可能である。
【0054】
また、中間金型支持枠32cには、回転軸部41を回転駆動し、それとともに中間金型104を回転させる中間金型回転機構が設けられる。この中間金型回転機構は、図示は省略するが、たとえば、回転軸部41の端部に設けることができ、この例では、一方側の端部42a側に設けることができる。
【0055】
固定プラテン32aに対して中間金型支持枠32cを動かす中間金型移動機構61は、たとえば、図4図7に示すように、固定プラテン32a及び中間金型支持枠32cのそれぞれに取り付けられて、モータにより駆動される液圧ポンプで作動する液圧シリンダ61a及びピストンロッド61b等で構成することができる。この例では、金型幅方向で第1金型102及び中間金型104の外側に位置する二対の液圧シリンダ及びピストンロッドを設けているが、一対又は三対以上としてもよい。
【0056】
型締装置31のプラテン移動機構33は、図2に示すように、ベースフレーム2上に配置されたリヤプラテン34と、リヤプラテン34上に設けた型締モータ35と、型締モータ35の回転運動を、可動プラテン32bの変位方向の直線運動に変換する運動変換機構36と、運動変換機構36に伝達された力を増大させて可動プラテン32bに伝えるトグル機構37とを備えるものである。
【0057】
このうち、運動変換機構36は、回転運動を直線運動に変換できる種々の機構とすることができるが、この例では、型締モータ35により回転駆動されるねじ軸36a及び、ねじ軸36aに螺合するナット36bを含んで構成されるものとしている。運動変換機構36は、ボールねじとすることも可能である。そして、運動変換機構36からの伝達力を増大させるトグル機構37は、上記の運動変換機構36のナット36bと可動プラテン32bとをつなぐ複数のリンク37a~37cを、ジョイントで揺動可能に接続してなるものである。リンク及びジョイントの個数ならびにその形状は適宜変更することが可能であるが、図2に示すところでは、ナット36bに接続されて上下方向に延びるクロスヘッド37dに、該クロスヘッド37dを隔てて上下に位置するリンク37a~37cからなる一対のリンク群が、揺動可能に接続されて設けられている。
【0058】
なお、リヤプラテン34上には、上述した型締モータ35の他、型厚調整モータ38も設けることができる。この型厚調整モータ38は、先述の金型保持機構32の各タイバー32dの延長部分に接続されたねじ軸及びナットに回転駆動力を付与することにより、固定プラテン32aと、ベースフレーム2上で移動可能に載置されたリヤプラテン34との間の間隔を調整するべく機能する。これにより、金型装置101の交換や、温度変化に起因する金型装置101の厚みの変更等の際にも、金型装置101に所期したとおりの型締力を与えることができるように型厚の調整を行うことができる。図示は省略するが、ベースフレーム2上で固定プラテン側を移動可能とし、リヤプラテン側を固定としても、型厚の調整を実現可能である。
【0059】
また、この型締装置31は、図4図7に示すように、液圧シリンダ62b及びピストンロッド62a等を有し、これにより第2金型103の割型部103bを金型幅方向に進退駆動して開閉する割型開閉機構62を備えるものである。
【0060】
図示の型締装置31は、可動プラテン32bの移動方向が水平方向と平行な横型のものであるが、該移動方向を垂直方向とした竪型のものとすることも可能である。
【0061】
(射出吹込成形機の動作)
以上に述べた射出吹込成形機1では、次に述べる各工程を行うように動作する。
図4図5に示す金型装置101の型開状態で、プラテン移動機構33により可動プラテン32bを固定プラテン32a側に移動させるとともに、中間金型移動機構61により中間金型支持枠32cを固定プラテン32a側に移動させる型閉工程を行う。
【0062】
次いで、前回の成形時の後述する計量で既に射出装置21の内部に成形材料が所定の量で蓄積されて配置された状態で、型締装置31を用いて、図6図7に示すように、金型装置101を型締状態とする型締工程が行われる。型締工程では、第1金型102と中間金型104との間に、射出成形用キャビティが区画され、第2金型103と中間金型104との間に、吹込み成形用キャビティが区画される。
【0063】
そして、スクリュ23の前進により上記の成形材料を、金型装置101の射出成形用キャビティに向けて射出し、成形材料を射出成形用キャビティに充填する射出工程を行う。射出工程では、射出成形用キャビティへの成形材料の充填後に、スクリュ23をさらに前進させて射出装置21の先端部の内部にある成形材料を所定の圧力に保持する保圧が行われる。しかる後、射出成形用キャビティに充填された成形材料を冷却させて固化させる。これにより、射出成形用キャビティにプリフォームPFが成形される。なおこの際に、射出装置21内に別途投入した成形材料を、ヒータ24による加熱下でスクリュ23の回転により射出装置21の先端部に向けて送りながら溶融させ、所定の量の成形材料を先端部に配置する計量が行われる。
【0064】
上記の射出工程と並行して、吹込み成形用キャビティでは吹込み工程が行われる。吹込み成形用キャビティには、中間金型104の反転前に射出成形用キャビティで既に成形されたプリフォームPFが配置されている。吹込み工程では、当該プリフォームPFに対して空気その他の気体等の流体を供給し、吹込み成形用キャビティでプリフォームPFを膨張させて、成形品MPを成形する。
【0065】
その後は、型締装置31のプラテン移動機構33及び中間金型移動機構61を作動させて、可動プラテン32b及び中間金型支持枠32cのそれぞれを固定プラテン32aから離れる側に移動させ、金型装置101を開く型開工程を行う。
【0066】
型開工程の後は、割型開閉機構62を用いて、第2金型103の割型部103bを開いて成形品MPを取り出した後、第2金型103の割型部103bを閉じる割型開閉工程を行う。
またここでは、中間金型回転機構により中間金型104を反転させる中間金型回転工程を行う。これにより、割型開閉工程で成形品MPが回収された側における中間金型104のコア金型104aが、第1金型102の第1凹型部102a側を向くことになる。一方、射出工程でプリフォームPFが成形された側における中間金型104のコア金型104aは、プリフォームPFを保持した状態で、第2金型103の第2凹型部103aを向く。
なお、中間金型回転工程は、割型開閉工程とほぼ同時期又は、割型開閉工程の前もしくは後に行うことができる。
【0067】
射出吹込成形機1を用いた射出成形では、上述したような型閉工程、型締工程、射出工程、吹込み工程、型開工程、割型開閉工程及び中間金型回転工程が繰り返し行われる。
【符号の説明】
【0068】
1 射出吹込成形機
2 ベースフレーム
21 射出装置
22 シリンダ
22a 供給口
22b ノズル
22c 水冷シリンダ
23 スクリュ
24 ヒータ
25 モータボックス
26 移動装置
26a スライドベース
26b ガイド
27 液圧ポンプ
28 ポンプ作動用モータ
29 液圧シリンダ
31 型締装置
32a 固定プラテン
32b 可動プラテン
32c 中間金型支持枠
32d タイバー
32e ガイド部材
33 プラテン移動機構
34 リヤプラテン
35 型締モータ
36 運動変換機構
36a ねじ軸
36b ナット
37 トグル機構
37a~37c リンク
37d クロスヘッド
38 型厚調整モータ
41 回転軸部
42a 一方側の端部
61 中間金型移動機構
61a 液圧シリンダ
61b ピストンロッド
62 割型開閉機構
62a ピストンロッド
62b 液圧シリンダ
63a、63b 割型連結部材
101 金型装置
102 第1金型
102a 第1凹型部
102b 第1開口部
102c ゲート
102d (第1開口部の)先端
102e 第1表面
102f フランジ部側凹型部
102g 首部側凹型部
103 第2金型
103a 第2凹型部
103b 割型部
103c 底型部
103d 第2開口部
103e (第2開口部の)先端
103f 第2表面
103g フランジ部側凹型部
104 中間金型
104a コア金型
104a1 一方側のコア金型
104a2 他方側のコア金型
104b 板状部
104c 根元部
104d 吹込スリット
104e (コア金型の根元部における)底部
105 窪み部
105a 窪み表面
111 (成形品の)フランジ部
112 (成形品の)口部
113 (成形品の)本体部
114 (成形品の)首部
121 (プリフォームの)フランジ部
122 (プリフォームの)口部
124 (プリフォームの)首部
PF プリフォーム
MP 成形品、容器
P 平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1凹型部を有する第1金型と、第2凹型部を有する第2金型と、両面に複数のコア金型が配設され、当該コア金型が当該第1金型および当該第2金型と型締可能な中間金型と、を備え、口部を有するプリフォームおよび成形品を成形する金型装置であって、
前記第1凹型部と前記コア金型とで形成されるキャビティ空間のうちのプリフォームの前記口部に対応するキャビティ空間の第1容積が、前記第2凹型部と前記コア金型とで形成されるキャビティ空間のうちの成形品の前記口部に対応するキャビティ空間の第2容積よりも大き
前記第1凹型部は、プリフォームの前記口部に対応するキャビティ空間を形成する第1開口部と、フランジ部と首部とを有する前記口部の前記フランジ部に対応するフランジ部側凹型部と、前記口部の前記首部に対応する首部側凹型部とを有し、
前記第2凹型部は、成形品の前記口部に対応するキャビティ空間を形成する第2開口部を有し、
前記第1凹型部は、前記第1開口部に、前記第2凹型部の前記第2開口部よりも窪む窪み部を有し、
前記フランジ部側凹型部と前記首部側凹型部との間に位置する前記窪み部は、前記第1凹型部の軸線に直交する径方向の内側から外側に向かって、軸線方向に沿って測った長さが漸減する、金型装置。
【請求項2】
前記コア金型は、プリフォームおよび成形品の前記口部に対応するキャビティ空間を形成する根元部を有し
記根元部と前記第1開口部とでプリフォームの前記口部に対応するキャビティ空間を形成すると共に、前記根元部と前記第2開口部とで成形品の前記口部に対応するキャビティ空間を形成する、請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金型装置が取り付けられる、射出吹込成形機。