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特開2022-140203表面性状に優れたFe-Ni合金およびその製造方法、CFRP用金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140203
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】表面性状に優れたFe-Ni合金およびその製造方法、CFRP用金型
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20220915BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20220915BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20220915BHJP
   C21C 7/06 20060101ALI20220915BHJP
   C21C 7/064 20060101ALI20220915BHJP
   C22C 38/50 20060101ALI20220915BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C21C7/00 B
C21C7/04 A
C21C7/06
C21C7/064 Z
C21C7/00 N
C22C38/50
C21D9/46 P
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021085459
(22)【出願日】2021-05-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021040496
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000232793
【氏名又は名称】日本冶金工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】桐原 史明
(72)【発明者】
【氏名】水野 建次
【テーマコード(参考)】
4K013
4K037
【Fターム(参考)】
4K013AA01
4K013AA09
4K013BA02
4K013BA05
4K013BA08
4K013BA11
4K013BA14
4K013CA02
4K013CA09
4K013CE04
4K013EA01
4K013EA03
4K013EA04
4K013EA05
4K013EA09
4K013EA19
4K013EA28
4K037EA01
4K037EA04
4K037EA05
4K037EA09
4K037EA11
4K037EA14
4K037EA15
4K037EA18
4K037EA19
4K037EA21
4K037EA22
4K037EA27
4K037EA31
4K037EB02
4K037EC01
4K037FA02
4K037FB00
4K037FF00
4K037FG00
4K037JA06
(57)【要約】
【課題】非金属介在物組成や表面介在物個数を制御し、表面性状の優れたFe-Ni合金を提供する。
【解決手段】mass%にて、C:0.001~0.2%、Si:0.001~0.2%、Mn:0.005~0.7%、Ni:30.0~45.0%、Cr:0.3%以下、Al:0.001~0.1%、Ti:0.001~0.020%、O:0.007%以下、Mg:0.0030%以下、N:0.010%以下、Ca:0.0015%以下、Na:0.00005~0.001%、残部Fe及び不可避的不純物から成り、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系複合酸化物を必須非金属介在物として含有し、さらにCaO、MgO、MgO・Al、MnO・SiO、NaOの1種以上を任意非金属介在物として含有し、全非金属介在物のうちCaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaOの個数比率が40%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C:0.001~0.2mass%、Si:0.001~0.2mass%、Mn:0.005~0.7mass%、Ni:30.0~45.0mass%、Cr:0.3mass%以下、Al:0.001~0.1mass%、Ti:0.001~0.020mass%、O:0.007mass%以下、Mg:0.0030mass%以下、N:0.010mass%以下、Ca:0.0015mass%以下、Na:0.00005~0.001mass%、残部がFe及び不可避的不純物から成り、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系複合酸化物の非金属介在物を必須成分として含有し、さらにCaO、MgO、MgO・Al、MnO・SiO、NaOのうち1種以上の非金属介在物を任意成分として含有し、全非金属介在物のうち、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO介在物の個数比率が40%以上であることを特徴とするFe-Ni合金。
【請求項2】
Nb:0.01~1.00mass%を含有することを特徴とする請求項1に記載のFe-Ni系合金。
【請求項3】
前記全非金属介在物のうち、CaOおよびNaO介在物の個数比率がそれぞれ20%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のFe-Ni合金。
【請求項4】
前記全非金属介在物のうち、MgO・Al介在物の個数比率が20%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のFe-Ni合金。
【請求項5】
前記全非金属介在物のうち、MnO・SiO介在物の個数比率が20%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のFe-Ni合金。
【請求項6】
前記CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系酸化物は、CaO:20~60mass%、SiO:10~40mass%、Al:30mass%以下、MgO:5~50mass%、NaOが、0.001~1mass%、残部がMnOからなるものであり、前記MgO・AlはMgO:10~40%、Al:60~90%であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のFe-Ni合金。
【請求項7】
板厚200mmのスラブを板厚30mmまで熱間圧延した場合の、圧延方向に平行に分散して幅5μm以上、かつ40μm以上連続して並ぶ非金属介在物が、合金表面200mm中の面積において10個以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のFe-Ni合金。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のFe-Ni合金で構成されたCFRP用金型。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のFe-Ni合金の製造方法であって、電気炉にて、原料を溶解し、次いで、AODおよび/またはVODにおいて脱炭した後、石灰、蛍石、フェロシリコン合金および/またはAlを投入し、CaO:50~70%、SiO:3~30%、MgO:3~15%、Al:5%以下、NaO:0.001~1%、残部FからなるCaO-Al-MgO-SiO-NaO-F系スラグを用い、脱酸、脱硫をArによる攪拌を施しながら行い、LFにてAr攪拌による介在物浮上を促しながら温度および成分調整をした後、連続鋳造機または普通造塊法で鋳造してインゴットを製造し、前記インゴットに熱間鍛造を施してスラブを製造し、続けて熱間圧延、冷間圧延を実施することを特徴とする表面性状に優れたFe-Ni合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状に優れたFe-Ni合金に関するものであり、Fe-Ni合金の精錬方法に関し、スラグ組成および溶鋼中のMg、Al、CaおよびNaを制御することにより、溶鋼中の非金属介在物のうち無害であるCaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系へと制御し、さらに、表面の介在物個数を低減させた表面性状に優れたFe-Ni合金およびその製造方法に関するものであり、特にCFRPの金型に適したFe-Ni合金に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化複合材料(Carbon fiber reinforced plastic, CFRP)は、高い強度と軽さを持ち合わせた素材であり、ゴルフクラブなどのスポーツ用途から、自動車や航空・宇宙産業など幅広い分野にて用いられている素材である。特に、航空機産業や自動車産業に用いられる場合、非常に高い寸法精度が要求されるため、熱膨張係数の小さいインバー合金(Fe-36%Ni)が金型として広く使用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、インバー合金をCFRPの金型として用いる場合、金型表面がCFRPに転写されるため、金型自体の表面性状は非常に重要な因子の一つであり、できる限り平滑な表面が求められている。
【0004】
特許文献2では、金型用インバー合金の表面にメッキ処理を施すことより、金型表面を十分に平滑に保つ方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、金型表面にメッキを施すことはコスト上昇になり、さらに微細な形状部分へのメッキは困難である。また、非金属介在物は、金型母材の表面性状に影響を及ぼす可能性があるが、介在物量や介在物組成に関する記載は見られなかった。
【0006】
ここで、インバー合金における介在物の無害化を図る技術は幾つか開示されている。
特許文献3では、非延伸系介在物であるMgO・AlやMnO-MgO-SiOの介在物個数を20%以下に制御している。
【0007】
また、特許文献4では、MnO-SiO-Al-CaO-MgO-Cr-FeO-TiO系に介在物を制御し、清浄性に優れたFe-Ni合金の製造方法を提案している。
【0008】
しかしながら、特許文献3および特許文献4は、シャドウマスクやリードフレームを対象としたものであり、CFRP用金型に要求される特性に関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8-269613号公報
【特許文献2】特開2014-205317号公報
【特許文献3】特開2010-159437号公報
【特許文献4】特開2003-073779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の問題に鑑み、本発明では、非金属介在物の組成や表面における介在物個数を制御し、表面性状の優れたFe-Ni合金、特にCFRP金型用途に優れた適性をもつFe-Ni合金を提供することを目的とする。さらに、それを実現する製造方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。まず、種々の板厚30mmのFe-Ni合金から、10cm×10cmの試験片を採取した。この試験片表面を鏡面研磨し、光学顕微鏡を用い、200倍の倍率に10mm×20mmの面積200mmにおける、圧延方向に平行に分散して40μm以上連続して並ぶ非金属介在物の個数を測定した。さらに、これら表面における非金属介在物に関して、SEM/EDSによる組成分析を行った。さらに、この試験片を湿度60%、温度40度の雰囲気にて24時間保持を行ったのち、再度40μm以上連続して並ぶ非金属介在物個数を測定し、SEM/EDSによる非金属介在物の組成を測定した、さらに、この試験片表面を水洗し、さらに1μm深さほど、バフ研磨を施したのち、3Dレーザー顕微鏡にて、10cm×10cmの試験片の表面にて、深さ10μm、直径40μmを超えるピットの数を測定した。これら測定した結果について、鋭意解析を進めた。その結果、CaOおよびNaO介在物が多い場合、深さ10μm、直径40μmを超えるピットの数が多くなることが明らかとなった。これは、表面に存在するCaOおよびNaO介在物が(式1)および(式2)の反応式のように、大気中の水分と反応し、水和物となり、表面より脱落したためであることが明らかとなった
CaO+HO=Ca(OH) ・・・(式1)
NaO+HO=2NaOH …(式2)
【0012】
さらに鋭意解析を進めた結果、非金属介在物を大気中の水分と反応しない介在物形態に制御すれば、深さ10μm、直径40μmを超えるピットが発生しないことが明らかとなった。すなわち、非金属介在物を、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系のガラス質の介在物へ制御すれば、深さ10μm、直径40μmを超えるピットが発生しないことが明らかとなった。さらに、上記のような表面性状を有するFe-Ni合金に関して、操業条件との関係について鋭意解析を重ねた。この解析により得られた知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、C:0.001~0.2mass%、Si:0.001~0.2mass%、Mn:0.005~0.7mass%、Ni:30.0~45.0mass%、Cr:0.3mass%以下、Al:0.001~0.1mass%、Ti:0.001~0.020mass%、O:0.007 mass%以下、Mg:0.0030mass%以下、N:0.010mass%以下、Ca:0.0015mass%以下、Na:0.00005~0.001mass%、残部がFe及び不可避的不純物から成り、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系複合酸化物の非金属介在物を必須成分として含有し、さらにCaO、MgO、MgO・Al、MnO・SiO、NaOのうち1種以上の非金属介在物を任意成分として含有し、全非金属介在物のうち、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO介在物の個数比率が40%以上であることを特徴とする表面性状に優れたFe-Ni合金である。
【0014】
本発明の合金においては、さらに、Nb:0.01~1.00mass%を含有することが好ましい。
【0015】
さらにこの非金属介在物のうち、CaOおよびNaO介在物の個数比率が20%以下であることが好ましく、MgO・Al介在物の個数比率が20%以下であることが好ましく、さらに、MnO・SiO介在物の個数比率が20%以下であることが好ましい。
【0016】
また、この非金属介在物のうち、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系酸化物は、CaO:20~60mass%、SiO:10~40mass%、Al:30mass%以下、MgO:5~50mass%、NaOが、0.001~1mass%、残部がMnOからなるものであり、MgO・AlはMgO:10~40mass%、Al:60~90mass%である。
【0017】
また、これら非金属介在物の内、圧延方向に平行に分散して幅5μm以上、かつ40μm以上連続して並ぶ非金属介在物が、合金表面200mm中の面積において10個以下であること好ましい。
【0018】
さらに本願発明では、このFe-Ni合金の製造方法についても提供する。電気炉にて、原料を溶解し、次いで、AODおよび/またはVODにおいて脱炭した後、石灰、蛍石、フェロシリコン合金および/またはAlを投入し、CaO:50~70mass%、SIO:3~30mass%、MgO:3~15mass%、Al:5mass%以下、NaO:0.001~1mass%、残部がFからなるCaO-Al-MgO-SiO-NaO-F系スラグを用い、脱酸、脱硫を大量のArによる攪拌を施しながら行い、LFにてAr攪拌による介在物浮上を促しながら温度および成分調整をした後、連続鋳造機または普通造塊法で鋳造し、インゴットを製造し、インゴットに熱間鍛造を施してスラブを製造し、続けて熱間圧延、冷間圧延を実施することを特徴とする表面性状に優れたFe-Ni合金の製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明のFe-Ni合金の化学成分限定理由を示す。
C:0.001~0.2mass%以下
C は、合金の強度を維持するために必要な元素である。このCの量が0.001mass%未満では、充分な強度を得ることができず、一方、0.2mass%を超えると熱膨張係数を大きくするため、C の含有量は0.001~ 0.2mass%と規定した。好ましくは0.002~0.1mass%である。より好ましくは、0.003~0.05mass%である。
【0020】
Si:0.001~ 0.2mass%
Siは、脱酸に有効な元素であり、非金属介在物組成をCaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系に制御する働きがある。このSiの量が0.001mass%未満では脱酸効果を充分に得ることができず、また非金属介在物組成をCaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系に制御できない。一方、Siの含有量が0.2mass%超だと、熱膨張率が大きくなり、Fe-Ni合金板に要求される特性に答えられなくなるとともに、スラグ中のMgOを還元して、Mgを溶鋼中に供給する。これとAlが反応して非金属介在物が、クラスター化が容易なMgO・Alスピネルとなり、表面欠陥を引き起こす。そこで、本発明では、Siの含有量を0.001~ 0.2mass%と定めた。この範囲内で好ましくは、0.002~0.19mass%である。より好ましくは、0.003~0.18mass%である。
【0021】
Mn:0.005~0.7mass%
Mnは、脱酸に有効な元素であり、非金属介在物組成をCaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系に制御する働きがある。しかし、Fe-Ni合金の熱膨張率を上げる働きを有する元素でもあり、この観点からは、できるだけ低濃度であることが望ましい。すなわち、Mn含有量が0.005mass%未満だと、脱酸効果を十分に得ることができず、また非金属介在物の組成を低融点であるCaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系に制御できない。一方、0.7mass%超だと、Fe-Ni合金の熱膨張率が大きくなり、Fe-Ni合金板に要求される品質を満足することができなくなる。そこで、本発明では、Mnの含有量を0.005~ 0.7mass%と定めた。好ましくは、0.01~ 0.65mass%である。より好ましくは、0.02~0.6mass%である。
【0022】
Ni:30.0~45.0mass%
Niは、熱膨張率に大きく影響を及ぼす元素であり、200℃では36mass%付近で、500℃では42mass%付近で熱膨張率が極小となることが知られている。しかし、このNi含有量が30mass%未満になるか、または45mass%を超えると熱膨張率が大きくなり、要求特性に応えられなくなる。したがって、Niの含有量は30.0~45.0mass%とする。好ましくは、32.0~43.0mass%であり、より好ましくは、35.0~42.0mass%である。
【0023】
Cr:0.3mass%以下
Crは熱膨張率を上げる元素であり、この観点からは、できるだけ低濃度であることが望まれる。このため、Crの含有量は0.3mass%以下と規定する。好ましくは、0.25mass%以下である。より好ましくは、0.20mass%以下である。
【0024】
Al:0.001~0.1mass%
Alは脱酸元素であり、本発明において非常に重要な役割を担う元素である。このAlの量が0.001mass%未満では、脱酸が充分でなくなるため、O濃度が0.007mass%を超えて高くなり、酸化物系介在物の個数が多くなり、表面欠陥の原因となる。一方、このAl量が0.1mass%を超えると、スラグ中のMgOおよびCaOを還元する力が強くなりすぎて、鋼中のMgおよびCaが0.001mass%を超えるようになる。それによって、介在物組成が、CaOやMgO・Al系主体となってしまう。このような理由から、Alは0.001~0.1mass%と規定した。好ましくは、0.0015~ 0.08mass%であり、より好ましくは0.002~0.07mass%である。
【0025】
Ti:0.001~0.020mass%
Tiは脱酸に有効な元素である。0.001mass%未満だと脱酸効果を発揮せず、0.020mass%以上だとTiNを生成し、表面欠陥を引き起こす恐れがある。この理由から、Tiは0.001~0.020mass%と規定した。好ましくは、0.0012~0.015mass%である。より好ましくは0.0015~0.010mass%である。
【0026】
O:0.007mass%以下
Oは合金中の構成成分と結びつき、介在物を生成する。これら介在物が粗大であれば、表面性状を悪化させるので、極力低減させる必要がある。0.007mass%を超えると粗大な介在物が生成することから、Caは0.007mass%以下と規定した。好ましくは0.006mass%以下であり、より好ましくは0.005mass%以下である。
【0027】
Mg:0.0030mass%以下
Mgは、0.0030mass%を超えると、非金属介在物がMgO、MgO・Alになりやすくなる。MgOはクラスター化せず微細な非金属介在物であり、表面品質に影響はないが、MgO・AlはFe-Ni溶鋼中の精錬過程で、凝集合体しクラスター上の大型介在物になりやすく、製品での表面欠陥を引き起こす。そこで、本発明では0.0030mass%以下と規定した。好ましくは、0.0020mass%以下である。より好ましくは、0.0010mass%以下である。
【0028】
N:0.010mass%以下
Nは、各種元素と窒化物を生成するので、極力低減させる必要がある元素である。そこで本願発明では0.010mass%以下と規定した。好ましくは、0.009mass%以下であり、より好ましくは、0.008mass%以下である。
【0029】
Ca:0.0015mass%以下
Caは非金属介在物を、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系非金属介在物に制御するために有用な元素である。しかし、このCaは、0.0015mass%を超えると、介在物中のCaO濃度を上昇させ、水和物となり、表面性状を悪化させる恐れがある。このような観点から、Caの含有量は0.0015mass%以下と規定する。好ましくは、0.0007mass%以下である。より好ましくは、0.0005mass%以下である。
【0030】
Na:0.00005~0.001mass%
Naは、非金属介在物をCaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系のガラス質の介在物へ制御する上で非常に重要な成分である。その効果は0.00005mass%未満だと発揮せず、0.001mass%以上だとNaO介在物が生成し、表面性状に悪影響を及ぼす恐れがある。この理由から、Naは0.00005mass%~0.001mass%に規定した。好ましくは0.00008mass%~0.0005mass%である。より好ましくは、0. 00010mass%~0.0003mass%である。なお、Naはスラグ中のNaOを還元することにより、溶鋼へ供給することができる。
【0031】
Nb:0.01~1.00mass%
本発明のFe-Ni合金には、上記各成分の他に、必要に応じてさらにNbを添加するのが好ましい。Nbは、微量であれば熱膨張係数を下げる効果があり、また、0.01~1.00mass%の範囲であればFe-Ni合金板の強度向上のために有効な元素である。低熱膨張特性を必要としているFe-Ni合金板の強度が上がれば、Fe-Ni合金板の厚みを薄くすることができ、材料の軽量化が図れ、CFRP用の金型には好適である。しかし、1.00mass%を超えると逆に熱膨張係数が増大する。この理由から、Nbを添加するときは、0.01~1.00mass%と規定した。好ましくは、0.02~0.50mass%の範囲である。より好ましくは、0.10~0.30mass%である。
【0032】
非金属介在物
本発明では、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系複合酸化物を必須の非金属介在物として含み、この他さらに、CaO、MgO、MgO・Al、MnO・SiO、NaOの1種以上を任意の非金属介在物として含むことができる。この場合において、必須の非金属介在物と任意の非金属介在物とを合わせた全非金属介在物中、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO介在物の個数比率が40%以上であることを好ましい態様としている。以下、非金属介在物の個数比率限定の根拠を示す。
【0033】
CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系複合酸化物の他さらに、CaO、MgO、MgO・Al、MnO・SiO、NaOの1種または2種以上の介在物を含有し、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO介在物の個数比率が40%以上
本発明に係るFe-Ni合金は、合金中のSi、Al、Mg、Ca、Naの含有量に従い、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系酸化物を必須成分として、また、CaO、MgO、MgO・Al、MnO・SiO、NaOの1種以上を任意成分として、非金属介在物を含有する。このうち、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO酸化物は、非常に安定な酸化物であるため、大気中の水分と反応し、水和物となって表面にピットを引き起こさない。CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO酸化物の含有量が個数割合で40%以上であれば、表面ピットの数が少ないことから、個数比率で40%以上と定めた。好ましくは、45%以上であり、より好ましくは50%以上である。
【0034】
CaOおよびNaO介在物の個数比率が20%以下
CaOおよびNaOは、大気中の水分と反応して、水和物となって表面から脱落し、ピットを引きおこす介在物のため、極力少ないほうが好ましい。そのため、CaOおよびNaO介在物の個数比率が20%以下と定めた。好ましくは、15%以下である。より好ましくは、10%以下である。なお、MgOも大気環境化にて水和物Mg(OH)を生成するが、CaOとNaOと比較して、水和物へ変化するのに時間を要し、本発明には、影響が非常に小さいことから、特に規定はしない。
【0035】
MgO・Al介在物の個数比率が20%以下
MgO・Al介在物は、凝集、粗大化し、表面性状を悪化させる要因となるため、極力少ないほうが好ましい。そのため、MgO・Al介在物の個数比率が20%以下と規定した。好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0036】
MnO・SiO介在物の個数比率が20%以下
MnO・SiO介在物は、粗大な非金属介在物であり、表面欠陥を引きおこすため、極力少ないほうが好ましい。そのため、MnO・SiO介在物の個数比率が20%以下と規定した。好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0037】
CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系酸化物中に含有される各成分を規定した理由を説明する。
【0038】
CaO:20~60mass%、SiO:10~40mass%、Al:30mass%以下、MgO:5~50mass%、NaO:0.001~1mass%、残部がMnO
基本的には、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO酸化物の融点が1300℃程度以下となり、かつガラス質の酸化物となるよう上記範囲に設定した。なお、CaOが20mass%未満では融点が高くなり、CaOが60mass%を超えるとCaO介在物が共存する。SiOが10mass%未満ならびに40mass%超では、融点が高くなってしまう。Alが30mass%超では、MgO・Al介在物が共存してしまう。MgOが5mass%未満ならびに50mass%超では、融点が高くなってしまう。また、NaOが0.001mass%以上では、介在物の融点を下げ、さらにガラス質の介在物へと制御する効果を得るが、1mass%超では、純粋なNaO介在物が共存する。以上の理由から、CaO:20~60mass%、SiO:10~40mass%、Al:30mass%以下、MgO:5~50mass%、NaO:0.001~1mass%、残部がMnOとした。
【0039】
MgO・Alの構成成分を規定した理由を説明する。
MgO・AlはMgO:10~40mass%、Al:60~90mass%
MgO・Alは比較的広い固溶体を持つ化合物である。上記の範囲で固溶体となるので、このように定めた。
【0040】
また、表面における非金属介在物の個数および大きさを規定した理由を説明する。
幅5μm以上、かつ40μm以上連続して並ぶ非金属介在物が、合金表面200mm中の面積において10個以下
合金表面に存在する介在物は、表面性状に大きな影響を及ぼす。特に、幅5μm以上、かつ40μm以上連続して並ぶ非金属介在物は、線状欠陥などのような表面欠陥の起点となるため、極力少ないほうが望ましい。ただし、幅5μm以上、かつ40μm以上連続して並ぶ非金属介在物が、合金表面200mm中の面積において10個以下であれば、表面欠陥が発生しにくいことから、上記のように規定した。好ましくは8個以下であり、より好ましくは、5個以下である。なお、並ぶ介在物間隔が20μm以下であるものは連結した一つの塊として1個と数え、間隔が20μmを超えるものは別の塊である。
【0041】
CFRP金型用途に優れた適性を有することを特徴とする表面性状の優れたFe-Ni合金
本発明は、ピットの発生がなく、表面性状が優れたFe-Ni合金である。そのため、CFRP金型用途に優れた適性を有する。
【0042】
製造方法
本願発明では、Fe-Ni合金の製造方法も提案する。まず、原料を溶解し、所定の組成を有するFe-Niを溶製し、次いで、AODおよび/またはVODにおいて脱炭し、さらにN濃度を0.010mass%以下に制御した後、石灰、蛍石、フェロシリコン合金および/またはAlを投入しCaO:50~70mass%、SiO:3~30mass%、MgO:3~15mass%、Al:5mass%以下、NaO:0.001~1mass%、残部FからなるCaO-SiO-MgO-Al-NaO-F系スラグを用いて、脱酸、脱硫を大量のArによる攪拌を施しながら行い、さらにTi添加し、所定のTi濃度に制御した後、LFにてAr攪拌による介在物浮上を促しながら温度および成分調整をした後、連続鋳造機もしくは普通造塊によりインゴットを製造する。インゴットからはさらに、熱間鍛造を施し、スラブを製造する。製造したスラブは、表面を研削し、1200℃で加熱して熱間圧延を実施し、所定の厚みまで圧延し、焼鈍、酸洗を行い、表面のスケールを除去し、最終的に所定の厚みを有する板を製造する方法である。これにより、非金属介在物は、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系複合酸化物の他さらに、CaO、MgO、MgO・Al、MnO・SiO、NaOの1種または2種以上に制御できる。その結果、CaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO酸化物の含有量が個数割合で40%以上であるFe-Ni合金を得ることができる。
【0043】
本発明に係るFe-Ni合金の製造方法では、上述のようにスラグの組成に特徴を有している。以下、本発明でスラグ組成を上記の如く規定した根拠を説明する。
【0044】
CaO:50~70mass%
スラグ中のCaO濃度は、脱酸および脱硫を効率よく行い、かつ介在物制御を行うために重要な元素である。石灰を投入することで濃度を調節する。CaO濃度が70mass%を越えると、スラグ中CaOの活量が高くなり、溶鋼中に還元されるCa濃度が0.001mass%を超えて高くなり、CaO単体の非金属介在物が生成し、最終製品の表面にピットを発生させる。そのため、上限を70mass%とした。一方、CaO濃度が50mass%未満だと、脱酸、脱硫が進まずに、本発明におけるS濃度、O濃度の範囲に制御することができなくなる。そのため、下限を50mass%とした。よって、CaO濃度は50~70mass%とした。好ましくは52~68mass%である。より好ましくは、55~65mass%である。
【0045】
SiO:3~30mass%
スラグ中SiOは最適な流動性を確保するために重要な元素であるため、3mass%は必要である。しかしながら、SiOは30mass%を超えて高すぎると、酸素濃度も0.007mass%を超えて高くなってしまう。なお、SiO濃度はフェロシリコン合金の投入量で調節できる。以上のように、SiO濃度は3~30mass%と規定した。好ましくは3~28mass%である。より好ましくは、3~25mass%である。
【0046】
MgO:3~15mass%
スラグ中のMgOは、溶鋼中に含まれるMg濃度を請求項に記載される濃度範囲に制御するために、重要な元素であるとともに、非金属介在物を本発明に好ましい組成に制御するためにも重要な元素である。そこで、下限を3mass%とした。一方、MgO濃度が15mass%を超えると、溶鋼中のMg濃度が高くなり、MgO・Alが生成し、線状欠陥などの表面欠陥の起点となる。そこで、MgO濃度の上限を15%とした。好ましくは、4~14mass%であり、より好ましくは、5~12mass%である。スラグ中のMgOは、AOD精錬、あるいはVOD精錬する際に使用されるドロマイトレンガ、またはマグクロレンガがスラグ中に溶け出すことで、所定の範囲となる。あるいは、所定の範囲に制御するため、ドロマイトレンガ、またはマグクロレンガの廃レンガを添加してもよい。
【0047】
Al:5mass%以下
スラグ中のAlは、高いとMgO・Al介在物が生成し、MgO・Al介在物の個数比率が20%を超えてしまうため、スラグ中のAl濃度は極力下げる必要がある。そのため、上限を5mass%とした。好ましくは4mass%以下であり、より好ましくは3mass%以下である。
【0048】
NaO:0.001~1mass%
スラグ中NaOは、介在物組成をCaO-SiO-Al-MgO-MnO-NaO系へと制御する効果があるため、0.001mass%以上あることが好ましい。しかしながら、1mass%を超えると、NaO介在物を生成させるため、NaO濃度を0.001~1mass%と規定した。好ましくは、0.002~0.9mass%である。より好ましくは0.003~0.5mass%である。なお、NaO濃度は、炭酸ナトリウムの添加によりコントロールすることができる。
【実施例0049】
次に実施例を提示して、本発明の構成および作用効果をより、明らかにするが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。容量60トンの電気炉により、フェロニッケル、純ニッケル、鉄屑、Fe-Ni合金屑などを原料として、溶解した。その後、AODおよび/またはVODにおいてCを除去するための酸素吹精(酸化精錬)により脱炭し、さらにN濃度を0.010mass%以下に制御した後、石灰石、蛍石および炭酸ナトリウムを投入し、CaO-SiO-Al-MgO-NaO-F系スラグを生成させ、さらに、FeSiおよび/またはAlを投入し、脱酸した後、さらにAr撹拌して脱硫を進めた後、Ti添加を行い、Ti濃度を制御した。その後、取鍋に出鋼して、温度調整ならびに成分調整を行い、連続鋳造機もしくは普通造塊により、インゴットを製造した。さらにインゴットは熱間鍛造を施し、スラブを製造した。
【0050】
製造したスラブは、表面を研削し、1200℃で加熱して厚み200mmから板厚30mmまでの熱間圧延を施し、焼鈍酸洗工程を経て厚板を製造した。その後、焼鈍、酸洗を行い、表面のスケールを除去した。表1に得られたFe-Ni合金の化学成分、製鋼工程(EF:電気炉、AOD:アルゴン酸素脱炭装置、VOD:真空酸素脱炭装置、LF:取鍋精錬装置、CC:連続鋳造機、IC:普通造塊法)、AODもしくはVOD精錬終了時のスラグ組成を示す。表2に非金属介在物組成および介在物の形態および品質評価を示す。
【0051】
(1)合金の化学成分およびスラグ組成:蛍光X線分析装置を用いて定量分析を行い、合金の酸素濃度は不活性ガスインパルス融解赤外線吸収法で定量分析を行った。
(2)非金属介在物組成:連続鋳造の場合は、鋳込み開始直後、タンディッシュにて採取したFe-Ni合金サンプル、普通造塊法の場合は、鋳型につながる湯道にてFe-Ni合金サンプルを採取し、凝固させたものを鏡面研磨し、SEM-EDSを用いて、サイズ5μm以上の非金属介在物を20点ランダムに測定した。
(3)各介在物組成の個数比率:上記(2)の測定の結果から個数比率を評価した。
(4)介在物個数分布:得られたスラブを厚さ200mmから板厚30mmまでの熱間圧延(圧下率:98.5%)を行い板厚30mmとしたFe-Ni合金板より、10cm×10cmの試験片を採取し、この試験片の表面をバフ研磨し、鏡面仕上げを施した。研磨後のサンプル表面に関して、光学顕微鏡を用い、200倍の倍率にて、10mm×20mmの面積における、圧延方向に平行に分散して40μm以上連続して並ぶ非金属介在物の個数を測定した。
(5)ピット評価:上記(4)にて鏡面仕上げを施した試料を、湿度60%、温度40度の雰囲気にて24時間保持を行ったのち、この試験片表面を水洗し、さらに1μm深さほど、バフ研磨を施したのち、3Dレーザー顕微鏡にて、10cm×10cmの試験片の表面にて、深さ10μm、直径40μmを超えるピットの数を測定した。ここでピットの数が0個ならば◎、1~2個ならば〇、3~5個ならば△、6個以上ならば×と評価した。
(6)表面欠陥評価:酸洗、焼鈍し、表面のスケールを除去したFe-Ni合金板10m中における表面欠陥の数を測定した。10m中に表面欠陥の数が0個ならば◎、1個ならば〇、2個ならば△、3個以上ならば×と評価した。
(7)総合評価:ピット評価および表面欠陥評価を以下のように点数付けし、ピット評価と表面欠陥の合計点が6点ならば◎、4~5点ならば〇、3点ならば△とし、2点以下もしくは、ピット評価か表面欠陥評価が×評価ならば、×評価とした。
ピット評価: ◎3点 〇2点 △1点 ×0点
表面欠陥評価:◎3点 〇2点 △1点 ×0点
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
発明例の1~17は、本発明の範囲を満足していたために、表面欠陥は少なく、また試料表面における深さ10μm、直径40μmを越える粗大なピットの数もほとんどなく、良好な品質を得ることが出来た。
【0055】
一方、比較例は本願発明の範囲を逸脱したものである。以下に、各例について説明する。
比較例18はSi濃度が0.0004mass%、Al濃度が0.0003mass%と低く、脱酸が進まず、O濃度が0.0121mass%となってしまった。さらに、スラグから溶鋼へNaが供給されず、Na濃度が0.00001mass%と低くなった。その結果、介在物は、大型のMnO・SiO介在物が多数形成し、介在物起因の表面欠陥が10m中に10個以上発生した。
【0056】
比較例19は、Si濃度が0.370mass%とAl濃度が0.210mass%と高く、脱酸反応が過剰に進んだ結果、スラグ層より、Ca、MgおよびNaが溶鋼へ過剰に供給され、Ca濃度が0.0022mass%、Mg濃度が0.0038mass%、Na濃度が0.0017mass%と高くなった。その結果、CaO単体およびNaO単体の非金属介在物が多く生成し、試料調整後の表面に、深さ10μm、直径40μmを超えるピットが多数観察された。さらに、MgO・Al介在物起因の表面欠陥も観察された。
【0057】
比較例20は、スラグへ過剰のNaOを供給した結果、溶鋼中のNa濃度が0.002mass%と高くなった。その結果、介在物がNaO主体となり、試料調整後の表面に、深さ10μm、直径40μmを超えるピットが多数観察された。
【0058】
比較例21は、スラグ中へNaOを供給しなかったものであり、溶鋼中のNa濃度も0.00002mass%と低くなり、介在物はNaOを含有しないCaO-SiO-Al-MgO系となった。その結果、介在物の融点が高くなり、熱間圧延時に、微細分散されず、表面欠陥の引きおこした。また、一部の介在物が、ガラス質とならなかったため、試料調整後の表面に、深さ10μm、直径40μmを超えるピットも一部、観察された。
【0059】
比較例22は、TiおよびN濃度が0.036mass%および0.012mass%と高くなったものであり、Fe-Ni合金の薄板表面にTiN起因の表面欠陥が多数観察された。
【0060】
比較例23は、Mgを直接溶鋼へ供給し、Mgが0.0033mass%と高くなってしまった。その結果、スラグ中のAlと反応し、MgO・Al介在物が多数生成した。その結果、MgO・Al比率が高くなり、表面欠陥が多数検出された。
【0061】
比較例24は、投入したMnが歩留らず、Mn濃度が0.003%と低くなったものである。その結果、脱酸が十分に行われず、酸素濃度が0.008%と高くなった。さらに介在物組成もMnOを含まないCaO-SiO-MgO-Al-NaO系となった。その結果、介在物の融点が高くなり、介在物個数も多くなり、介在物起因の表面欠陥が多数検出された。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の技術は、非金属介在物の組成や表面における介在物個数へ制御し、表面性状の優れたFe-Ni合金、特にCFRP金型用途に優れた適性を持つFe-Ni合金を得ることができる。