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  • 特開-幹細胞凍結乾燥粉末の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140224
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】幹細胞凍結乾燥粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
C12N1/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120707
(22)【出願日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】110108805
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】520014512
【氏名又は名称】長新生醫國際股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】李 友▲錚▼
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BB02
4B065BB19
4B065BC50
4B065BD11
4B065BD18
4B065BD21
4B065BD50
4B065CA50
(57)【要約】
【課題】一種の幹細胞冷凍乾燥粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の幹細胞冷凍乾燥粉末の製造方法のステップ1では、栄養混合物を基本培養基にし、非必須アミン酸、L-グルタミン、ノックアウト血清代替(KSR)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ペニシリンおよびグリシンを添加する。ステップ2では、トリプシン、コラゲナーゼを利用してヒト幹細胞組織を解離し、ヒト幹細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、ノックアウト血清代替(KSR)と塩化カルシウムを前記培養基に添加する。ステップ3では、幹細胞を予定時間まで培養した後、培養基を濾過して取得した濾液に所定量のジメチルスルホキシド(DMSO)とプロピレングリコールとを添加し、よく混ぜて冷凍保存する。ステップ4では、幹細胞冷凍乾燥粉末にフェノールグループの化合物を添加し、幹細胞冷凍乾燥粉末の匂いを改善する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
400mlの栄養混合物(即ちDMEM/F12)を基本培養基とし、6mlの非必須アミノ酸、6mlのL-グルタミン、120mlのノックアウト血清代替(KSR)、10ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、所定量のペニシリンおよびグリシンを添加する、培養基の製造に係るステップ1と、
0.5mlのトリプシン、5mlのコラゲナーゼを利用してヒト幹細胞組織を解離し、ヒト幹細胞を40mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、10mlのノックアウト血清代替(KSR)と0.5mlの塩化カルシウム(CaCl2)とを前記培養基に添加して幹細胞を培養する、解離および幹細胞の培養に係るステップ2と、
前記培養基を予定時間まで培養した後、前記培養基から採取した上部清浄液を濾過して取得した濾液に1.42mlのジメチルスルホキシド(DMSO)、2.2mlのプロピレングリコール、および新しい培養液を添加して混ぜ、複数に分けて-80℃で冷凍保存し、需要に応じて幹細胞冷凍乾燥粉末に製造する、冷凍乾燥に係るステップ3と、
化学式C1014Oのキャラバノールグループの化合物を前記幹細胞冷凍乾燥粉末に添加し、前記幹細胞冷凍乾燥粉末の匂いを改善する、フェノールグループの添加に係るステップ4と、
を含む幹細胞冷凍乾燥粉末の製造方法。
【請求項2】
前記ステップ2において、前記幹細胞をマウス胚性芽細胞(MEF)の供給層で培養し、前記マウス胚性芽細胞を前記培養基に置いて培養することを特徴とする請求項1に記載した幹細胞冷凍乾燥粉末の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、細胞の継代培養を数回行い、毎回の上部清浄液を抽出することを特徴とする請求項2に記載した幹細胞冷凍乾燥粉末の製造方法。
【請求項4】
前記ステップ3において、細孔径が0.22μmのフィルターで前記上部清浄液を濾過して濾液を取得することを特徴とする請求項3に記載した幹細胞冷凍乾燥粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞組合物に関わり、特に、一種の幹細胞冷凍乾燥粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場でよくある皮膚細胞を活性化できると宣伝しているフェイシャルパックなどの保養用品は、植物幹細胞などの細胞活性化を促進できる成分また細胞成長因子のある成分を添加したため、皮膚構造強化、しわ改善の効果がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、フェイシャルパックなどの保養用品に添加される細胞活性化を促進できる成分また細胞成長因子のある成分の含有量が低いため、皮膚構造強化、しわ改善の効果が明らかではなく、良いとは言えない。
【0004】
よって、本発明者は長年の幹細胞製品開発経験に基づいて、フェイシャルパックなどの保養用品に使用可能な本発明(幹細胞凍結乾燥粉末の製造方法)を創作した。
【0005】
本発明は、ヒト幹細胞の分泌物で製造した、EGF、FGF、KGF成長因子のある、無臭の、フェイシャルパックまた塗りつけられる保養用品に使用可能な実用的機能のある一種の幹細胞凍結乾燥粉末の製造方法を提供することを主要目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の幹細胞冷凍乾燥粉末の製造方法は、前記目的を達成するため、下記のステップ1~ステップ4を含む。
【0007】
培養基の製造に係るステップ1では、所定定量の栄養混合物(DMEM/F12)を基本培養基とし、適量の非必須アミン酸(NON-ESSENTIAL AMINOACID)、L-グルタミン(L-glutamine)、ノックアウト血清代替(KSR)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、ペニシリン(PENICILLIN)およびグリシンを添加する。
【0008】
解離および幹細胞の培養に係るステップ2では、適量のトリプシン(TRYPSIN)、コラゲナーゼ(COLLAGENASE)を利用してヒト幹細胞組織を解離し、ヒト幹細胞を適量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、ノックアウト血清代替(KSR)と塩化カルシウムとを培養基に添加し、幹細胞を培養する。
【0009】
冷凍乾燥に係るステップ3では、幹細胞を予定時間まで培養した後、培養基から採取した上部清浄液を濾過して取得した濾液に所定量のジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコール(PROPYLENE GLYCOL)、および新しい培養液を添加して混ぜ、複数に分けて-80℃で冷凍保存し、需要に応じて幹細胞冷凍乾燥粉末に製造する。
【0010】
フェノールグループの添加に係るステップ4では、化学式C1014Oのキャラバノールグループの化合物を幹細胞冷凍乾燥粉末に添加し、幹細胞冷凍乾燥粉末の匂いを改善する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例のプロセスイメージを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳しく説明する。図1に示すように、本発明の実施例の幹細胞冷凍燥粉末の製造方法は、符号110、120、130、140を付した4つのステップを含む。
【0013】
ステップ1(110)で培養基を製造する。400mlの栄養混合物(即ちDMEM/F12)を基本培養基とし、6mlの非必須アミン酸(NON-ESSENTIAL AMINOACID)、6mlのL-グルタミン(L-glutamine)、120mlのノックアウト血清代替(KSR)、10ng/mlの塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)および適量のペニシリン(PENICILLIN)及びグリシンを添加する。ノックアウト血清代替(KSR)は最終的に20%になる。
【0014】
栄養混合物(DMEM/F12)が幅広く使用される基本培養基なので、様々な異なる哺乳動物細胞の成長に使用可能である。ノックアウト血清代替(KSR)はウシ胎児血清(FBS)の代用品として使用可能である。L-グルタミン(L-glutamine)は培養基に細胞内アミノ酸を提供する元として使われる。塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は、ヒト胚性幹細胞と培養基の重要成分である。
【0015】
ステップ2(120)で解離し、幹細胞を培養する。0.5mlのトリプシン(TRYPSIN)、5mlのコラゲナーゼ(COLLAGENASE)を利用してヒト幹細胞組織を解離し、ヒト幹細胞を40mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解する。10mlのノックアウト血清代替(KSR)と0.5mlの塩化カルシウム(CaCl2)とを、ペトリ皿に置いた培養基に添加して幹細胞を培養する。
【0016】
本実施例に採用したヒト幹細胞とは脂肪細胞組織である。まずはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で幹細胞組織を30回以上流し洗いし、トリプシン(TRYPSIN)、コラゲナーゼ(COLLAGENASE)を利用して幹細胞組織を解離する。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の濃度が5×103cells/cm2から1×104cells/cm2までとする。幹細胞をマウス胚性芽細胞(MEF)(inactivated)の供給層(feeder layer)で培養する。マウス胚性芽細胞を培養基に置き、5~10日間培養する(2日間に一度培養基を交換する)。幹細胞収束度が80%を上回ったとき、上部清浄液を抽出して細胞の継代培養(passage)を5回行い、毎回の上部清浄液(幹細胞分泌物)を抽出する。細胞の継代培養(passage)方法は周知の技術なので、ここで詳しく説明しない。幹細胞培養の過程において、表皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮細胞成長因子(KGF)など、多数の成長因子(タンパク質)を分泌できるため、細胞の継代培養(passage)で採取した上部清浄液には成長因子が含まれる可能性がある。
【0017】
ステップ3(130)で冷凍乾燥する。採取した上部清浄液に適量のアセトアミド(ACETAMIDE)(約6mlの上部清浄液に0.59gのアセトアミド(ACETAMIDE)を添加する)を添加する。細孔径が0.22μmのフィルター(フィルターメンブレンまたはシリンジフィルター)で上部清浄液を濾過して取得した濾液に1.42mlのジメチルスルホキシド(DMSO)、2.2mlのプロピレングリコール(PROPYLENE GLYCOL)、および4mlの新しい培養液を添加してよく混ぜる。均等に複数に分けて-80℃で冷凍保存し、需要に応じて真空抽出、昇華乾燥後氷晶を抽出などの乾燥方法で、幹細胞冷凍乾燥粉末に製造する。
【0018】
ステップ4(140)でフェノールグループを添加する。化学式C1014Oのキャラバノールグループの化合物(例えばカルバクロール、カルボン、ピロリドン、チモールなど)を幹細胞冷凍乾燥粉末に添加し、幹細胞冷凍乾燥粉末の匂いを改善するほか、冷凍乾燥粉末の水分吸収度を減少し、冷凍乾燥粉末の製品品質を向上する。
【0019】
ヒト幹細胞組織は脂肪細胞組織のほか、歯肉下細胞、嗅覚幹細胞、骨髄、臍帯また他の幹細胞組織として使用することが可能である。異なる幹細胞組織を使って冷凍乾燥粉末を製造する時に、濾液に含まれる生長因子の含有量を多くにするため、本発明の各ステップに記載したレシピの含有量、また細胞培養時の細胞の継代培養(passage)回数などの条件を調整できる。
【0020】
表皮成長因子(EGF)は表皮細胞の新陳代謝を促進したり、老化ケラチンの代謝を加速したり、ニキビ跡を修復したり、しわを改善したり、肌の水分保有能力を増強したりするなどの効能があって、肌弾力の増強、しわ減少、肌の老化抑制、栄養保持などの作用がある。線維芽細胞成長因子(FGF)は創傷治癒、真皮細胞の増殖、分化、損傷皮膚の修復を促進でき、細胞の活力を回復できる。表皮細胞成長因子(KGF)は水分流失を減少できる。本発明はEGF、FGF、KGFなどの成長因子のある幹細胞分泌物で製造された無臭の製品のため、フェイシャルパックなどの保養用品に使用できる。
【0021】
上記の説明は本発明に関わる実施例の一つであり、本発明を限るものではない。当該技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の趣旨および範囲において、適切な修正または追加を行うことが可能である。故に、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に決めた内容に準ずるものとする。
図1