(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140227
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】管理装置、管理方法、管理プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130731
(22)【出願日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021040103
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100171583
【弁理士】
【氏名又は名称】梅景 篤
(72)【発明者】
【氏名】牧野 良保
(72)【発明者】
【氏名】青木 貫
(72)【発明者】
【氏名】林田 修二
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA62
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
(57)【要約】
【課題】加工装置の将来的な異常を予測すること。
【解決手段】制御装置30は、複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた加工条件を示す加工条件データと、を取得する取得部31と、複数の加工パラメータのうち、検査結果と相関を有する特定パラメータを選定する分析部34と、特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置の将来的な異常を予測する予測部35と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加工パラメータを含む加工条件のもとで複数の対象物を順に加工する加工装置を管理する管理装置であって、
前記複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、前記複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた前記加工条件を示す加工条件データと、を取得する取得部と、
前記複数の加工パラメータのうち、前記検査結果と相関を有する特定パラメータを選定する分析部と、
前記特定パラメータの値の経時変化に基づいて、前記加工装置の将来的な異常を予測する予測部と、
を備える管理装置。
【請求項2】
前記予測部は、前記特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示す場合に、前記加工装置が将来的に異常となることを予測する、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記加工装置は、複数の加工パラメータのそれぞれに関連する部品を備え、
前記予測部は、前記特定パラメータに関連する部品の将来的な異常を予測する、請求項1又は請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記検査結果の経時変化に基づいて、前記検査結果が異常を示す時期を予測する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記検査結果に基づいて、前記加工装置に突発異常が発生したか否かを判定する判定部を更に備える、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項6】
前記判定部は、正常に加工された対象物の検査結果に基づいて正常範囲を設定し、前記検査結果データによって示される検査結果が前記正常範囲から外れた場合に前記突発異常が発生したと判定する、請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記予測部による予測結果を出力する出力部を更に備える、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の管理装置。
【請求項8】
複数の加工パラメータを含む加工条件のもとで複数の対象物を順に加工する加工装置を管理する管理方法であって、
前記複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、前記複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた前記加工条件を示す加工条件データと、を取得するステップと、
前記複数の加工パラメータのうち、前記検査結果と相関を有する特定パラメータを選定するステップと、
前記特定パラメータの値の経時変化に基づいて、前記加工装置の将来的な異常を予測するステップと、
を含む管理方法。
【請求項9】
複数の加工パラメータを含む加工条件のもとで複数の対象物を順に加工する加工装置を管理するようにコンピュータを動作させる管理プログラムであって、
前記複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、前記複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた前記加工条件を示す加工条件データと、を取得するステップと、
前記複数の加工パラメータのうち、前記検査結果と相関を有する特定パラメータを選定するステップと、
前記特定パラメータの値の経時変化に基づいて、前記加工装置の将来的な異常を予測するステップと、
をコンピュータに実行させるための管理プログラム。
【請求項10】
複数の加工パラメータを含む加工条件のもとで複数の対象物を順に加工する加工装置を管理するようにコンピュータを動作させる管理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記管理プログラムは、
前記複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、前記複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた前記加工条件を示す加工条件データと、を取得するステップと、
前記複数の加工パラメータのうち、前記検査結果と相関を有する特定パラメータを選定するステップと、
前記特定パラメータの値の経時変化に基づいて、前記加工装置の将来的な異常を予測するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラムである、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理装置、管理方法、管理プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理、メッキ処理、溶接、及びショットピーニングといった加工が行われることがある。例えば、ショットピーニング加工では、加工された製品から選択された製品に対して応力測定及び磁性評価を行うことによって、その品質が管理されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工設備(加工装置)が有している各部品は経時的に劣化することがある。加工装置の劣化が、製品の品質に影響を及ぼすおそれがある。そこで、本技術分野では、加工装置の将来的な異常を予測することが望まれている。
【0005】
本開示は、加工装置の将来的な異常を予測可能な管理装置、管理方法、管理プログラム、及び記録媒体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る管理装置は、複数の加工パラメータを含む加工条件のもとで複数の対象物を順に加工する加工装置を管理する装置である。この加工装置は、複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた加工条件を示す加工条件データと、を取得する取得部と、複数の加工パラメータのうち、検査結果と相関を有する特定パラメータを選定する分析部と、特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置の将来的な異常を予測する予測部と、を備える。
【0007】
本開示の別の側面に係る管理方法は、複数の加工パラメータを含む加工条件のもとで複数の対象物を順に加工する加工装置を管理する方法である。この管理方法は、複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた加工条件を示す加工条件データと、を取得するステップと、複数の加工パラメータのうち、検査結果と相関を有する特定パラメータを選定するステップと、特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置の将来的な異常を予測するステップと、を含む。
【0008】
本開示の更に別の側面に係る管理プログラムは、複数の加工パラメータを含む加工条件のもとで複数の対象物を順に加工する加工装置を管理するようにコンピュータを動作させるプログラムである。この管理プログラムは、複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた加工条件を示す加工条件データと、を取得するステップと、複数の加工パラメータのうち、検査結果と相関を有する特定パラメータを選定するステップと、特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置の将来的な異常を予測するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の更に別の側面に係る記録媒体は、複数の加工パラメータを含む加工条件のもとで複数の対象物を順に加工する加工装置を管理するようにコンピュータを動作させる管理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。管理プログラムは、複数の対象物のそれぞれの検査結果を示す検査結果データと、複数の対象物のそれぞれの加工に用いられた加工条件を示す加工条件データと、を取得するステップと、複数の加工パラメータのうち、検査結果と相関を有する特定パラメータを選定するステップと、特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置の将来的な異常を予測するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0010】
これらの管理装置、管理方法、管理プログラム、及び記録媒体では、複数の加工パラメータのうち、検査結果と相関を有する特定パラメータが選定され、選定された特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置の将来的な異常が予測される。複数の加工パラメータのうち、検査結果に影響を及ぼし得る加工パラメータの値が経時的に変化すると、対象物の加工精度が低下すると考えられる。したがって、検査結果と相関を有する特定パラメータの値の経時変化を考慮することによって、加工装置の劣化、つまり加工装置の将来的な異常を予測することが可能となる。
【0011】
いくつかの実施形態では、予測部は、特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示す場合に、加工装置が将来的に異常となることを予測してもよい。加工パラメータに関連する加工装置の部分が劣化している場合、当該加工パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示すと考えられる。検査結果と相関を有する特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示す場合、対象物の加工精度が低下すると考えられる。したがって、上記構成によれば、加工装置の将来的な異常の予測精度を向上させることが可能となる。
【0012】
いくつかの実施形態では、加工装置は、複数の加工パラメータのそれぞれに関連する部品を備えてもよい。予測部は、特定パラメータに関連する部品の将来的な異常を予測してもよい。この場合、加工装置のうち、将来的に異常となる部品が特定され得る。したがって、部品が異常状態となる前に当該部品を交換する等のメンテナンスを行うことが可能となる。
【0013】
いくつかの実施形態では、予測部は、検査結果の経時変化に基づいて、検査結果が異常を示す時期を予測してもよい。検査結果が異常を示すまでは、対象物は正常に加工され得る。したがって、検査結果が異常を示す時期を予測することで、その時期が到来するまでに、加工装置を修理させることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記管理装置は、検査結果に基づいて、加工装置に突発異常が発生したか否かを判定する判定部を更に備えてもよい。加工装置は、経時的に劣化するだけでなく、突発的に異常を生じることがある。上記構成によれば、加工装置の将来的な異常だけでなく、突発異常を検知することができるので、加工装置をより適切に管理することが可能となる。
【0015】
いくつかの実施形態では、判定部は、正常に加工された対象物の検査結果に基づいて正常範囲を設定してもよく、検査結果データによって示される検査結果が正常範囲から外れた場合に突発異常が発生したと判定してもよい。検査結果が正常範囲から外れた場合には、加工装置に何らかの異常が生じている可能性がある。したがって、上記構成によれば、加工装置の突発異常を適切に検知することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記管理装置は、予測部による予測結果を出力する出力部を更に備えてもよい。この場合、加工装置の管理者に予測結果を認識させることができる。したがって、加工装置に異常が発生する前に、加工装置の修理を行わせることが可能となる。その結果、対象物の加工精度を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の各側面及び各実施形態によれば、加工装置の将来的な異常を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る加工装置を概略的に示す構成図である。
【
図3】
図3は、
図2に示される制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図2に示される制御装置が行う管理方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、検査結果のマッピングを説明するための図である。
【
図7】
図7は、相関係数の算出方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、検査結果と各加工パラメータとの相関係数の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、検査結果が異常を示す時期の予測方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、記録媒体に記録された管理プログラムの構成を示す図である。
【
図12】
図12は、投射材の粒径ごとの渦電流比率と渦電流の浸透深さとの関係を示す図である。
【
図13】
図13は、応力値と試料距離との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
【0020】
図1及び
図2を参照しながら、一実施形態に係る加工装置を説明する。
図1は、一実施形態に係る加工装置を概略的に示す構成図である。
図2は、
図1に示される加工装置のブロック図である。
図1及び
図2に示される加工装置1は、所定の加工条件のもとで複数の対象物Wを順に加工する装置である。対象物Wの例としては、歯車鋼及びばね鋼等が挙げられる。歯車鋼の例としては、クロムモリブデン鋼(JIS SCM420H)、クロム鋼鋼材(SCr420H)、及びニッケルクロム鋼鋼材(JIS SNCM439)が挙げられる。ばね鋼の例としては、マンガンクロム鋼鋼材(JIS SUP9)が挙げられる。本実施形態では、加工装置1の一例として、ショットピーニング装置を用いて説明を行う。加工条件は、複数の加工パラメータを含む。各加工パラメータは、加工装置1に設けられたセンサによって測定される。加工パラメータの例としては、圧力、投射量、及び加工時間が挙げられる。
【0021】
加工装置1は、検査台11と、検査台12と、キャビネット13と、を備えている。検査台11は、未加工の対象物Wが載置される台である。検査台11は、キャビネット13の外に設けられ、キャビネット13の搬入口の手前に位置する。検査台11に載置された対象物Wに対して、応力測定が行われる。検査台12は、加工済みの対象物Wが載置される台である。検査台12は、キャビネット13の外に設けられ、キャビネット13の搬出口の手前に位置する。検査台12に載置された対象物Wに対して、応力測定が行われる。
【0022】
キャビネット13は、内部空間Vを画定する箱状の形状を有している。キャビネット13の内部空間Vには、複数の部屋が設けられている。複数の部屋は、搬入室ST1と、検査室ST2と、投射室ST3と、投射室ST4と、検査室ST5と、搬出室ST6と、を含む。搬入室ST1、検査室ST2、投射室ST3、投射室ST4、検査室ST5、及び搬出室ST6は、その順に後述の回転テーブル45の回転軸AX1の回りに配列されている。互いに隣り合う2つの部屋は、壁板状の仕切部14によって区切られている。各部屋は、ステーションと称されることもある。
【0023】
搬入室ST1は、対象物Wをキャビネット13に搬入するための部屋である。検査室ST2は、ショットピーニング加工が行われる前の対象物Wの電磁気特性を検査するための部屋である。投射室ST3,ST4のそれぞれは、ショットピーニング加工を行うための部屋である。検査室ST5は、ショットピーニング加工が行われた後の対象物Wの電磁気特性を検査するための部屋である。搬出室ST6は、対象物Wをキャビネット13から搬出するための部屋である。
【0024】
加工装置1は、入力装置15と、表示装置16と、搬送装置21と、読取装置22と、応力測定装置23と、応力測定装置24と、磁性評価装置25と、磁性評価装置26と、噴射装置27と、噴射装置28と、制御装置30と、を備えている。
【0025】
入力装置15は、制御装置30を操作するための装置である。入力装置15の例としては、タッチパネル、マウス、及びキーボードが挙げられる。表示装置16は、各種情報を表示するための装置である。表示装置16の例としては、ディスプレイが挙げられる。
【0026】
搬送装置21は、対象物Wを搬送する装置である。搬送装置21は、コンベア41~43と、ロボット44と、回転テーブル45と、複数(本実施形態では、6つ)の載置テーブル46と、を備えている。
【0027】
コンベア41は、対象物Wを搬入するためのコンベアである。コンベア41は、前工程から検査台11の近傍まで延びており、前工程から対象物Wを搬送する。コンベア42は、対象物Wを搬出するためのコンベアである。コンベア42は、検査台12の近傍から後工程まで延びており、対象物Wを後工程に搬送する。コンベア43は、対象物Wを廃棄するためのコンベアである。コンベア43は、例えば、検査台12の近傍から破壊検査を行うための検査装置(不図示)まで延びており、対象物Wを検査装置まで搬送する。
【0028】
ロボット44は、対象物Wを搬送するためのロボットである。ロボット44は、例えば、6軸ロボットである。ロボット44は、コンベア41から検査台11に対象物Wを移動させる。ロボット44は、応力検査済みの対象物Wを検査台11からキャビネット13内の搬入室ST1に移動させる。ロボット44は、搬出室ST6から検査台12に対象物Wを移動させる。ロボット44は、応力検査済みの対象物Wを検査台12からコンベア42又はコンベア43に移動させる。
【0029】
回転テーブル45は、搬入室ST1、検査室ST2、投射室ST3、投射室ST4、検査室ST5、及び搬出室ST6の順に対象物Wを搬送するための円板状のテーブルである。回転テーブル45は、キャビネット13内に配置されている。回転テーブル45は、搬入室ST1、検査室ST2、投射室ST3、投射室ST4、検査室ST5、及び搬出室ST6にわたって設けられる。回転テーブル45は、回転テーブル45の中心を通る回転軸AX1の回りに回転可能に設けられている。回転テーブル45は、ある部屋に位置する載置テーブル46が隣の部屋の所定位置で停止するように、回転軸AX1の回りに間欠的に回転する。回転軸AX1は、搬入室ST1、検査室ST2、投射室ST3、投射室ST4、検査室ST5、及び搬出室ST6によって囲まれている。
【0030】
載置テーブル46は、対象物Wを載置するための円板状のテーブルである。複数の載置テーブル46は、回転テーブル45の上面に設けられ、回転テーブル45の周方向に一定の間隔で環状に配置されている。各載置テーブル46の直径は、回転テーブル45の直径よりも小さい。各載置テーブル46は、載置テーブル46の中心を通る回転軸AX2の回りに回転可能に設けられている。各回転軸AX2が延びる方向は、回転軸AX1が延びる方向と実質的に同じである。各載置テーブル46は、回転テーブル45の回転に伴って、搬入室ST1、検査室ST2、投射室ST3、投射室ST4、検査室ST5、及び搬出室ST6の順に、各ステーションを循環移動する。なお、仕切部14には、載置テーブル46が通過可能な開口が設けられている。
【0031】
読取装置22は、対象物Wに関する対象物情報を取得する装置である。対象物情報は、例えば、対象物ID、及び対象物Wの種類を含む。対象物IDは、対象物Wを一意に識別可能な情報である。本実施形態では、読取装置22は、対象物Wに付されているタグに保持されている対象物情報を読み取る装置(リーダー)である。タグの例としては、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、QRコード(登録商標)、及びバーコードが挙げられる。読取装置22は、例えば、コンベア41の下流端の側方に設けられている。読取装置22は、対象物情報を制御装置30に出力する。
【0032】
応力測定装置23,24のそれぞれは、対象物Wの表面の残留応力を測定する装置である。応力測定装置23は、検査台11に載置された対象物Wの表面の残留応力を測定する。応力測定装置24は、検査台12に載置された対象物Wの表面の残留応力を測定する。応力測定装置23,24のそれぞれは、例えば、X線応力測定法を用いた残留応力測定を行う。X線応力測定法は、X線回折により金属等の材料の結晶格子面間隔の変化から、結晶のひずみを測定し、応力値を算出する方法である。X線応力測定法の例として、例えばcosα法が挙げられる。cosα法等のX線応力測定手法は公知であるので、ここではその詳細な説明を省略する。応力測定装置23,24のそれぞれは、測定した残留応力値を制御装置30に出力する。
【0033】
磁性評価装置25,26のそれぞれは、対象物Wの電磁気特性を測定する装置である。磁性評価装置25は、検査室ST2に停止している対象物Wの電磁気特性を測定する。磁性評価装置26は、検査室ST5に停止している対象物Wの電磁気特性を測定する。対象物Wが導体である場合、表面加工による内部の弾性及び塑性等の組織的な歪みの変化又は加工による相変態によって導体の透磁率及び導電率が変化する。磁性評価装置25,26のそれぞれは、例えば、渦電流法を用いて、対象物Wにおける斑の有無及び金属組織の状態を評価する。渦電流とは、時間的に変化する磁界によって導体に生じる電流である。渦電流には、磁界の周波数(励磁周波数)によって対象物Wに浸透する深さを変える特長があるので、対象物Wの内部を検査できるほか、対象物Wの表面からの深さに合わせて励磁周波数を設定することで、表面加工の傾向をより具体的に評価することができる。
【0034】
磁性評価装置25,26のそれぞれは、円筒状のコアと、コアの外周面に巻き回されたコイルと、を備えている。対象物Wの検査対象の表面がコアの内周面に向かい合うように、コアによって画定される内部空間に対象物Wが配置される。この状態で、コイルに所定の周波数の交流電力を供給することにより交流磁界が発生する。これにより、検査対象の表面に、交流磁界と交差する方向に流れる渦電流が励起される。周波数掃引渦電流法が用いられてもよい。周波数掃引渦電流法は、励磁周波数を広範囲にて掃引することで、最表面から最大約200μmまでの対象物Wの内部を渦電流が徐々に浸透し、各励磁周波数における渦電流反応を測定する方法である。磁性評価装置25,26のそれぞれは、励磁周波数とともに測定値を制御装置30に出力する。
【0035】
なお、同一の励磁周波数における磁性評価装置25による測定値及び磁性評価装置26による測定値から、加工前の対象物Wに対するコイルのインピーダンスと、加工後の対象物Wに対するコイルのインピーダンスとの比率(以下、「渦電流比率」という。)が得られる。渦電流比率は、例えば、制御装置30において算出される。
【0036】
噴射装置27,28のそれぞれは、対象物Wに投射材を噴射する装置であり、例えばエアノズル式のショットピーニング加工機である。噴射装置27,28のそれぞれは、投射材を含む圧縮空気をノズルから噴射して、対象物Wに投射材を衝突させる。噴射装置27のノズル27aは、投射室ST3の側壁に設けられている。ノズル27aの噴射口は、投射室ST3に停止している対象物Wに向くように設定されている。噴射装置28のノズル28aは、投射室ST4の側壁に設けられている。ノズル28aの噴射口は、投射室ST4に停止している対象物Wに向くように設定されている。
【0037】
制御装置30は、加工装置1を統括制御するとともに、加工装置1を管理する装置(コントローラ)である。制御装置30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリと、ネットワークカード等の通信装置と、を含むコンピュータとして構成されている。
【0038】
次に、
図3を参照しながら、制御装置30の機能構成を説明する。
図3は、
図2に示される制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、制御装置30は、機能的には、取得部31と、記憶部32と、判定部33と、分析部34と、予測部35と、出力部36と、を含む。後述の管理方法の説明において、各機能部の機能(動作)を詳細に説明するので、ここでは各機能部の機能を簡単に説明する。
【0039】
取得部31は、各種情報を取得する機能部である。取得部31は、例えば、複数の対象物Wのそれぞれの対象物情報と、複数の対象物Wのそれぞれの加工条件データと、複数の対象物Wのそれぞれの検査結果データと、を取得する。具体的には、取得部31は、対象物Wごとに、対象物情報と、加工時刻と、加工条件データと、検査結果データと、を取得し、これらのデータを対応付けた検査データを記憶部32に出力する。加工時刻は、例えば、対象物IDによって識別される対象物Wから読取装置22が対象物情報を読み取った時刻である。加工条件データは、対象物IDによって識別される対象物Wの加工に用いられた加工条件を示すデータである。具体的には、加工条件データは、各加工パラメータの値を示す。検査結果データは、対象物IDによって識別される対象物Wの検査結果を示すデータである。本実施形態では、検査結果として、加工前の残留応力値、加工後の残留応力値、及び渦電流比率が挙げられる。
【0040】
取得部31は、制御装置30が分析指令を受け取ったことに応じて、記憶部32から所定期間の検査データを取得する。取得部31は、例えば、1日、1週間、1ヶ月、及び1年の検査データを取得する。
【0041】
記憶部32は、取得部31から受け取った検査データを記憶(格納)する機能部である。記憶部32は、対象物Wごとに検査データを記憶している。
【0042】
判定部33は、検査結果に基づいて、加工装置1に突発異常が発生したか否かを判定する機能部である。判定部33は、正常に加工された対象物(良品サンプル)の検査結果に基づいて正常範囲を設定し、取得部31によって取得された検査結果が正常範囲から外れた場合に突発異常が発生したと判定する。なお、判定部33は、検査結果が正常範囲から外れた場合に、加工装置1に突発異常が発生したか、あるいはノイズが混入したと判定してもよい。以下の説明では、判定部33は、検査結果が正常範囲から外れた場合、加工装置1に突発異常が発生したと判定することとする。
【0043】
分析部34は、検査データを分析する機能部である。分析部34は、複数の加工パラメータの中から、特定パラメータを選定する。特定パラメータは、検査結果と相関を有する加工パラメータである。分析部34は、検査結果と各加工パラメータとの相関係数を算出し、相関係数の絶対値が相関閾値よりも大きい場合に、その相関係数を有する加工パラメータを特定パラメータとして選定する。相関係数は、-1から+1までの値を取る。相関係数が-1に近いほど、検査結果と加工パラメータとの負の相関が強いことを示す。相関係数が+1に近いほど、検査結果と加工パラメータとの正の相関が強いことを示す。相関閾値は、検査結果と加工パラメータとが強い相関を有することを示す値であり、例えば0.7に設定される。
【0044】
予測部35は、特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置1の将来的な異常を予測する機能部である。予測部35は、特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示す場合に、加工装置1が将来的に異常となることを予測する。予測部35は、例えば、特定パラメータに関連する部品の将来的な異常を予測する。予測部35は、検査結果の経時変化に基づいて、検査結果が異常を示す時期を予測してもよい。
【0045】
出力部36は、各種情報を出力する機能部である。出力部36は、例えば、判定部33による判定結果、及び予測部35による予測結果を出力する。
【0046】
次に、
図4~
図9を参照しながら、制御装置30が行う管理方法を説明する。
図4は、
図2に示される制御装置が行う管理方法を示すフローチャートである。
図5は、検査結果のマッピングを説明するための図である。
図6は、閾値円を説明するための図である。
図7は、相関係数の算出方法を説明するための図である。
図8は、検査結果と各加工パラメータとの相関係数の一例を示す図である。
図9は、検査結果が異常を示す時期の予測方法を説明するための図である。
図4に示される一連の処理は、例えば、制御装置30が入力装置15から分析指令を受信したことを契機として開始される。なお、加工装置1は既に十分な数の対象物Wを加工しており、記憶部32には十分な数の検査データが格納されている。
【0047】
まず、取得部31が検査データを取得する(ステップS11)。ステップS11では、取得部31は、記憶部32に格納されている検査データのうち、最新の検査データを含む所定期間の検査データを取得する。そして、取得部31は、検査データを判定部33及び分析部34に出力する。
【0048】
続いて、判定部33は、突発異常が発生したか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12では、判定部33は、取得部31から検査データを受け取ると、各検査データに含まれる各検査結果を正常範囲と比較することによって、突発異常が発生したか否かを判定する。正常範囲は、予め設定されている。
【0049】
具体的に説明すると、
図5に示されるように、判定部33は、例えば、第1検査結果を縦軸に設定し、第2検査結果を横軸に設定した座標空間に、各良品サンプルから得られた第1検査結果及び第2検査結果を示す点をマッピングする。例えば、第1検査結果は、応力測定に関する検査結果であり、第2検査結果は磁性評価に関する検査結果である。応力測定に関する検査結果の例としては、加工後の残留応力値、及び半価幅が挙げられる。磁性評価に関する検査結果としては、渦電流比率が挙げられる。そして、
図6に示されるように、判定部33は、マッピングされた点を多変量解析することによって、モデル化して閾値円Rthを設定する。多変量解析にMT法が用いられてもよい。この場合、閾値円Rthは、マハラノビス距離に基づいて設定される。
【0050】
判定部33は、各検査データの第1検査結果と第2検査結果とを示す点を上記座標空間にマッピングし、各点が閾値円Rth内に含まれるか、閾値円Rthの外側かを判定する。そして、判定部33は、いずれかの点が閾値円Rthの外側である場合に、当該点と閾値円Rthの円周との距離を算出する。判定部33は、当該距離が判定閾値よりも大きい場合には突発異常が発生したと判定する。判定部33は、すべての点が閾値円Rthの内側である場合に、突発異常が発生していないと判定する。判定部33は、いくつかの点が閾値円Rthの外側にある場合でも、外側に位置する各点と閾値円Rthとの距離がいずれも判定閾値よりも小さい場合には突発異常が発生していないと判定する。
【0051】
ステップS12において、突発異常が発生したと判定された場合(ステップS12:YES)、判定部33は、判定結果を出力部36に出力する。そして、出力部36は、判定結果を出力する(ステップS13)。出力部36は、例えば、表示装置16(ディスプレイ)に判定結果を出力する。
図6に示されるように、表示装置16は、出力部36から判定結果を受け取ると、閾値円と突発異常が発生したことを示す点とをグラフで表示する。以上により、管理方法の一連の処理が終了する。
【0052】
そして、ステップS12において、突発異常が発生していないと判定された場合(ステップS12:NO)、分析部34は、複数の加工パラメータのうち、検査結果と相関を有する特定パラメータを選定する(ステップS14)。ステップS14では、分析部34は、まず、取得部31から受け取った検査データを用いて、検査結果と各加工パラメータとの相関係数を算出する。例えば、分析部34は、第1検査結果(残留応力値)と、圧力、投射量、及び加工時間といった加工パラメータのそれぞれとの相関係数を算出する。
【0053】
図7に示されるように、分析部34は、例えば、第1検査結果を縦軸に設定し、1つの加工パラメータを横軸に設定した座標空間に、第1検査結果と当該第1検査結果が得られた際の加工パラメータの値とを示す点をマッピングする。そして、分析部34は、公知の手法により、第1検査結果と加工パラメータとの相関係数を算出する。残りの加工パラメータについても同様に、分析部34は、第1検査結果との相関係数を算出する。同様に、分析部34は、第2検査結果と、加工パラメータのそれぞれとの相関係数を算出する。
【0054】
図8に示されるように、各検査結果と各加工パラメータ(加工パラメータMP1~MP8)との相関係数が得られると、分析部34は、相関係数の絶対値と相関閾値とを比較する。そして、分析部34は、相関係数の絶対値が相関閾値よりも大きい場合に、その相関係数を有する加工パラメータを特定パラメータとして選定する。そして、分析部34は、特定パラメータを示す情報を予測部35に出力する。なお、分析部34は、複数の特定パラメータを選定してもよい。
【0055】
続いて、予測部35は、加工装置1が将来的に異常となる可能性があるか否か(高いか否か)を判定する(ステップS15)。ステップS15では、予測部35は、分析部34によって選定された特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置1の将来的な異常を予測する。具体的には、予測部35は、特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示すか、特定パラメータの値が増加傾向及び減少傾向のいずれも示さないかを判定する。具体的に説明すると、予測部35は、例えば、特定パラメータの値の時系列データを単回帰分析することによって、特定パラメータを時間の一次式で近似する。予測部35は、この近似直線の傾きの絶対値が所定の傾きよりも大きい場合に、特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示すと判定する。
【0056】
そして、予測部35は、特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示す場合に、加工装置1が将来的に異常となる可能性がある(高い)と予測する。予測部35は、特定パラメータの値が増加傾向及び減少傾向のいずれも示さない場合に、加工装置1が将来的に異常となる可能性がない(低い)と予測する。なお、特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示している場合、当該特定パラメータに関連する部品が劣化していると考えられる。例えば、特定パラメータが圧力であれば、圧縮空気を供給するための部品(コンプレッサ及びエア流量制御弁等)が劣化していると考えられる。したがって、予測部35は、特定パラメータに関連する部品の将来的な異常を予測してもよい。
【0057】
ステップS15において、加工装置1が将来的に異常となる可能性がない(低い)と判定された場合(ステップS15:NO)、管理方法の一連の処理が終了する。一方、ステップS15において、加工装置1が将来的に異常となる可能性がある(高い)と判定された場合(ステップS15:YES)、予測部35は、検査結果が異常(NG)となる時期を予測する(ステップS16)。
【0058】
ステップS16では、予測部35は、まず、増加傾向又は減少傾向を示す特定パラメータによって、異常となる検査結果を推測する。予測部35は、例えば、単回帰分析により、第1検査結果及び第2検査結果のうち、異常となる検査結果を推測する。予測部35は、第1検査結果及び第2検査結果のうち、特定パラメータとの相関係数が大きい方の検査結果を、異常となる検査結果として推測してもよい。そして、予測部35は、推測された検査結果の経時変化に基づいて、当該検査結果が異常を示す時期を予測する。予測部35は、例えば、検査結果の時系列データを単回帰分析することによって、当該検査結果が異常を示す時期を予測する。
【0059】
具体的に説明すると、
図9に示されるように、予測部35は、検査結果の時系列データを単回帰分析することによって、検査結果を時間の一次式で近似する。そして、予測部35は、上記一次式を表す直線Lが正常範囲の上限値を上回る時間(時期)又は下限値を下回る時間(時期)を、検査結果が異常を示す時期として算出する。
図9に示される例では、時間Taに直線Lが下限値を下回る。そして、予測部35は、予測結果を出力部36に出力する。予測結果は、例えば、増加傾向又は減少傾向を示す特定パラメータ、特定パラメータにより異常となる検査結果、及び当該検査結果が異常を示す時期を含む。
【0060】
続いて、出力部36は、予測結果を出力する(ステップS17)。出力部36は、例えば、表示装置16(ディスプレイ)に予測結果を出力する。そして、表示装置16は、予測結果を表示する。例えば、表示装置16は、
図9に示されるように、検査結果の時系列データと、検査結果が異常を示す時間Taと、をグラフ表示してもよい。以上により、管理方法の一連の処理が終了する。
【0061】
なお、ステップS13の後に、ステップS14以降の処理を行ってもよい。この場合、突発異常の検査データ以外の検査データを用いて、以降の処理が行われる。
【0062】
次に、
図10を参照しながら、コンピュータを制御装置30(管理装置)として機能させるための管理プログラムP及び管理プログラムPを記録する記録媒体MDを説明する。
図10は、記録媒体に記録された管理プログラムの構成を示す図である。
【0063】
図10に示されるように、管理プログラムPは、メインモジュールP30、取得モジュールP31、判定モジュールP33、分析モジュールP34、予測モジュールP35、及び出力モジュールP36を備える。メインモジュールP30は、制御装置30に係る処理を統括的に制御する部分である。取得モジュールP31、判定モジュールP33、分析モジュールP34、予測モジュールP35、及び出力モジュールP36を実行することにより実現される機能はそれぞれ、上記実施形態における取得部31、判定部33、分析部34、予測部35、及び出力部36の機能と同様である。
【0064】
管理プログラムPは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及び半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体MDによって提供される。管理プログラムPは、データ信号としてネットワークを介して提供されてもよい。
【0065】
以上説明した制御装置30、管理方法、管理プログラムP、及び記録媒体MDでは、複数の加工パラメータのうち、検査結果と相関を有する特定パラメータが選定され、特定パラメータの値の経時変化に基づいて、加工装置1の将来的な異常が予測される。加工装置1の経時劣化により、各加工パラメータの値が経時的に変化すると考えられる。複数の加工パラメータのうち、検査結果に影響を及ぼし得る加工パラメータの値が経時的に変化すると、対象物Wの加工精度が低下すると考えられる。したがって、検査結果と相関を有する特定パラメータの値の経時変化を考慮することによって、加工装置1の劣化、つまり加工装置1の将来的な異常を予測することが可能となる。
【0066】
加工パラメータに関連する加工装置1の部分(部品)が劣化している場合、当該加工パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示すと考えられる。加工パラメータの中でも、検査結果と相関を有する特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示す場合には、対象物Wの加工精度が低下すると考えられる。これに対し、予測部35は、特定パラメータの値が増加傾向又は減少傾向を示す場合に、加工装置1が将来的に異常となることを予測する。したがって、加工装置1の将来的な異常の予測精度を向上させることが可能となる。
【0067】
加工装置1は、複数の加工パラメータのそれぞれに関連する部品を有している。予測部35は、特定パラメータに関連する部品の将来的な異常を予測する。この構成によれば、加工装置1のうち、将来的に異常となる部品が特定され得る。したがって、部品が異常状態となる前に適切なタイミングで当該部品を交換する等のメンテナンスを行うことが可能となる。その結果、対象物Wの加工精度を維持することが可能となり、加工不良品の発生を抑制することができる。交換すべきタイミングが予測されることにより、交換用の部品の数を低減することができる。
【0068】
予測部35は、検査結果の経時変化に基づいて、検査結果が異常を示す時期を予測する。検査結果が異常を示すまでは、対象物Wは正常に加工され得る。したがって、検査結果が異常を示す時期を予測することで、その時期が到来するまでに、加工装置1を修理させることができる。
【0069】
加工装置1は、経時的に劣化するだけでなく、突発的に異常を生じることがある。これに対し、判定部33は、検査結果に基づいて、加工装置1に突発異常が発生したか否かを判定する。この構成によれば、加工装置1の将来的な異常だけでなく、突発異常を検知することができるので、加工装置1をより適切に管理することが可能となる。
【0070】
検査結果がその検査結果の正常範囲から外れた場合には、加工装置1に何らかの異常が生じている可能性がある。これに対し、判定部33は、正常に加工された対象物Wの検査結果に基づいて設定された正常範囲から、検査結果が外れた場合に突発異常が発生したと判定する。この構成によれば、加工装置1の突発異常を適切に検知することができる。
【0071】
出力部36は、予測部35による予測結果を出力する。この構成によれば、加工装置1の管理者に予測結果を認識させることができる。したがって、加工装置1に異常が発生する前に、加工装置1の修理を行わせることが可能となる。その結果、対象物Wの加工精度を維持することが可能となる。加工装置1の異常を未然に防ぐことができるので、加工装置1を管理する管理者の数を削減することが可能となる。
【0072】
分析部34は、検査結果と加工パラメータとの相関係数の絶対値が相関閾値よりも大きい加工パラメータを特定パラメータとして選定している。したがって、加工装置1の管理者が加工装置1を熟知していなかったとしても、加工精度(対象物Wの品質)に影響を及ぼす加工パラメータを推定することが可能となる。
【0073】
なお、本開示に係る管理装置、管理方法、管理プログラム、及び記録媒体は上記実施形態に限定されない。
【0074】
加工装置1は、ショットピーニング装置に限られない。加工装置1は、熱処理装置でもよく、鋳造装置でもよく、研磨加工装置及び研削加工装置等の機械加工装置でもよい。
【0075】
上記実施形態では、制御装置30が加工装置1の管理装置の機能(
図3に示される機能部)を有しているが、加工装置1の外部に設けられたサーバ装置が管理装置の機能を有してもよい。この場合、ショットピーニング装置等の加工装置1にIoT(Internet of Things)技術を活用することとなり、表面評価技術を利用した次世代の「ものづくり」が可能となる。
【0076】
取得部31は、加工過程における物理量を示す加工過程データを更に取得してもよい。このような物理量の例としては、振動、音、及び表面温度が挙げられる。これらの物理量は、加工装置1に設けられたセンサによって測定され得る。加工過程データが分析されることによって、加工過程における加工装置1の異常を検知することができる。
【0077】
出力部36は、複数の対象物Wの検査データを表示装置16に表示させてもよい。例えば、
図5に示されるように、表示装置16は、第1検査結果と第2検査結果とを示す点を座標空間にマッピングして表示してもよい。
図11に示されるように、表示装置16は、検査結果ごとに、検査結果を時系列に表示してもよい。
図11に示される表示例では、正常範囲の上限値と下限値とが表示され、検査結果が時系列に表示されている。突発異常と判定された検査結果Daは、正常な検査結果とは異なる表示態様で表示されている。さらに、変化点CP1,CP2が表示されている。変化点CP1は、材料ロットが切り替わったことによる変化点である。変化点CP2は、加工装置1の部品が交換されたことによる変化点である。変化点CP1,CP2の原因は、加工装置1の管理者によって入力装置15から入力され、検査結果とともに表示されてもよい。
【0078】
この構成によれば、加工装置1の管理者は、対象物Wの品質に関係する検査結果の変化点を時系列で確認することができる。管理者が加工装置1の使用経験及び勘を有していなくても、簡単に正常範囲を設定することができる。この正常範囲は、管理者の勘のような曖昧な基準ではなく、加工ばらつきを加味した統計的な検査結果から設定されるので、突発異常の判定精度を向上させることが可能となる。
【0079】
分析部34は、分析結果を出力部36に出力してもよい。分析結果は、各検査結果と当該検査結果が得られた際の加工パラメータの値とを示す点をマッピングしたグラフ、各検査結果と各加工パラメータとの相関係数を含む。出力部36は分析結果を表示装置16に出力してもよく、表示装置16は分析結果を表示してもよい。表示装置16は、例えば、
図7及び
図8に示されるようなグラフを表示する。
【0080】
分析部34は、複数の対象物Wの検査データを用いて、他の分析を行ってもよい。分析部34は、各分析結果を出力部36に出力し、出力部36は、各分析結果を表示装置16に表示させる。
【0081】
図12に示されるように、分析部34は、投射材の粒径ごとの渦電流比率と渦電流の浸透深さとの関係を分析してもよい。
図12では、縦軸は渦電流比率を示し、横軸は浸透深さを示す。浸透深さは、励磁周波数を換算することによって得られる。粒径が大きくなるにつれて、加工深さが深くなる。したがって、粒径が大きくなるにつれて、渦電流の浸透深さが深くなり、渦電流比率も大きくなる。
【0082】
図13に示されるように、分析部34は、応力値と試料距離との関係を分析してもよい。
図13では、縦軸は試料距離を示し、横軸は残留応力値を示す。試料距離は、応力測定装置23,24から対象物Wまでの距離である。なお、分析部34は、応力値とMS(MISS SET)との関係を分析してもよい。MSは、試料距離の最適値を示す指標である。MSの値が大きいほど、応力測定装置23,24が対象物Wから離れていることを表し、MSの値が小さいほど、応力測定装置23,24が対象物Wに近いことを表す。MSの値が0に近いほど、試料距離が最適値(最適距離)に近いことを表す。MSが0付近(例えば、-500~+500)で推移している状態で、応力値が所定の閾値(正常範囲)から外れた場合、十分なショットピーニングが行われていないことが推測される。試料距離が大きく変化した際に、応力値が閾値(正常範囲)から外れた場合には、対象物Wと応力測定装置23,24との位置合わせが不十分であることが予想される。
【0083】
図14に示されるように、分析部34は、残留応力値と面積値との関係を分析してもよい。
図14では、縦軸は残留応力値を示し、横軸は面積値を示す。面積値は、指定した深さ範囲において、磁性評価装置25,26から出力される測定値(渦電流比率)に基づいて描かれる曲線と、基準比率を示す直線と、により囲まれた領域の面積を示す値である。指定した深さは、評価対象である深さの範囲である。基準比率は、所定のインピーダンス比率(渦電流比率)である。加工装置1がショットピーニング装置である場合、残留応力値の絶対値が小さくなり、かつ、面積値が小さくなる傾向にあると、十分なショットピーニングが行われていないことが予想される。
【0084】
加工パラメータとして、センサ等で直接測定可能な加工パラメータだけでなく、間接的に測定可能な加工パラメータが用いられてもよい。このような加工パラメータの例としては、投射材の粒径が挙げられる。
図12に示されるように、渦電流比率のピーク値における渦電流の浸透深さは、投射材の粒径が小さくなるにつれて小さくなる。投射材の粒径は、この関係を用いて間接的に計測され得る。
【符号の説明】
【0085】
1…加工装置、16…表示装置、23,24…応力測定装置、25,26…磁性評価装置、27,28…噴射装置、27a,28a…ノズル、30…制御装置(管理装置)、31…取得部、32…記憶部、33…判定部、34…分析部、35…予測部、36…出力部、MD…記録媒体、P…管理プログラム、W…対象物。