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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014023
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】一液型エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20220112BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220112BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
C08G59/20
C08L63/00 Z
C08K5/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116141
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平田 智輝
(72)【発明者】
【氏名】河村 芳範
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
4J002CD06W
4J002CD06X
4J002EU117
4J002EV016
4J002FD148
4J002FD206
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GQ00
4J036AA01
4J036AA05
4J036AD08
4J036DC41
4J036DD02
4J036JA01
4J036JA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】柔軟性エポキシ樹脂を含む一液型エポキシ樹脂組成物であって、低温硬化性及び柔軟性を兼ね備えた一液型エポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】(A)柔軟性エポキシ樹脂、(B)チオール化合物(ただし、少なくとも下記式(1)で表されるチオール化合物を含む。)及び(C)潜在性硬化剤を含む一液型エポキシ樹脂組成物。

(式中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、n及びnはそれぞれ独立に2又は3である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下(A)~(C)を含有する一液型エポキシ樹脂組成物。
(A)柔軟性エポキシ樹脂
(B)チオール化合物(ただし、少なくとも以下式(1)で表されるチオール化合物を含む。)
【化1】
(式中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、n及びnはそれぞれ独立に2又は3である。)
(C)潜在性硬化剤
【請求項2】
更に、(A)以外のエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)以外のエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂である、請求項2に記載の一液型エポキシ樹脂組成物
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の一液型エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性エポキシ樹脂、特定のチオール化合物および硬化剤を含む一液型エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エポキシ樹脂はその硬化物が機械的特性、電気的特性、熱的特性、耐薬品性および接着性等の点で優れた性能を有することから、塗料、電気電子用絶縁材料、接着剤等の幅広い用途に利用されている。
【0003】
エポキシ樹脂を用いた組成物は上記のような特長を持つ反面、その硬化物は柔軟性に乏しく非常に脆いという欠点がある。これは硬化物が多少の歪みにより破壊されることを意味しており、種々の用途において非常に問題となる。例えば、エポキシ樹脂組成物を自動車、家電及びその他電気部品等の接着や封止に使用する場合、硬化物が脆いと機械的振動や熱による膨張収縮によりひび割れが発生し、金属部の腐食や性能低下の原因となり好ましくない。斯かる課題の解決手段として例えば、硬化時に柔軟性(可撓性)を示し得るエポキシ樹脂(いわゆる柔軟性エポキシ樹脂)を使用することによって、硬化物に柔軟性を付与し、脆さを改善する方法が知られている(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
また、近年、一液型エポキシ樹脂組成物を用いて耐熱性の低い部材を接着、あるいは封止するために一液型エポキシ樹脂組成物に対する低温硬化性の要求が高まっており、低温硬化性の発現には、特定構造を有するチオール化合物を使用することが有効であることが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63-265915号公報
【特許文献2】特開2004-156024号公報
【特許文献3】特開2007-23134号公報
【特許文献4】国際公開WO2018/079466号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、上記特許文献1~3記載を参考に柔軟性エポキシ樹脂を含む一液型エポキシ樹脂組成物を調製し該一液型エポキシ樹脂組成物を低温硬化させたところ、後述する比較例に示す通り、短時間では硬化しないことが判明した。そこで、上記特許文献4に記載されるチオール化合物(グリコールウリル誘導体)を用いたところ、低温硬化性は改善されるものの、得られる硬化物の柔軟性が大きく低下することが判明した。
【0007】
本発明は、柔軟性エポキシ樹脂を含む一液型エポキシ樹脂組成物であって、低温硬化性および柔軟性を兼ね備えた一液型エポキシ樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討した結果、柔軟性エポキシ樹脂、特定のチオール化合物および潜在性硬化剤を含む一液型エポキシ樹脂組成物によれば、前記課題が解決できることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0009】
〔1〕
以下(A)~(C)を含有する一液型エポキシ樹脂組成物。
(A)柔軟性エポキシ樹脂
(B)チオール化合物(ただし、少なくとも以下式(1)で表されるチオール化合物を含む。)
【0010】
【化1】
(式中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、n及びnはそれぞれ独立に2又は3である。)
(C)潜在性硬化剤
【0011】
〔2〕
更に、(A)以外のエポキシ樹脂を含む、〔1〕に記載の一液型エポキシ樹脂組成物。
【0012】
〔3〕
前記(A)以外のエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂である、〔2〕に記載の一液型エポキシ樹脂組成物
【0013】
〔4〕
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の一液型エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温硬化性および柔軟性を兼ね備えつつ、低温硬化させた場合であっても優れた接着強度を有する、柔軟性エポキシ樹脂を含む一液型エポキシ樹脂組成物を提供することができる。とりわけ、上記式(1)で表されるチオール化合物を含んでいれば、他のチオール化合物を併用しても柔軟性が発現する為、他のチオール化合物の併用により様々な特徴を有するエポキシ樹脂組成物の提供も可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、(A)柔軟性エポキシ樹脂、(B)チオール化合物[ただし、少なくとも以下式(1):
【0016】
【化2】
(式中、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、n及びnはそれぞれ独立に2又は3である。)
で表される化合物を含む。]及び(C)潜在性硬化剤を含有する。以下、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物について詳述する。
【0017】
[(A)柔軟性エポキシ樹脂]
本発明で用いられる柔軟性エポキシ樹脂とは、硬化させた際に可撓性を発現するエポキシ樹脂のことであり、例えば、特許文献1~特許文献3に記載されるエポキシ樹脂等が挙げられる。また、柔軟性エポキシ樹脂の具体的な構造としては、例えば、(a)2以上のグリシジルオキシ基、(b)2以上の-CH-を主骨格に含む二価の非芳香族炭化水素基、及び(c)二価の芳香族基を主骨格に含む二価の芳香族含有炭化水素基、を含むエポキシ化合物またはそれらの重合体が挙げられる。なお、前記主骨格とは、(a)の2以上のグリシジルオキシ基を両末端に有する骨格のうち、最も鎖の長い骨格を言う。以下、前記(b)及び(c)について詳述する。
【0018】
(b)2以上の-CH-を主骨格に含む二価の非芳香族炭化水素基
二価の非芳香族炭化水素基において、主骨格に含まれる-CH-の数は、2以上が好ましく、より好ましくは3以上、さらに好ましくは、4以上、特に好ましくは、5~30、殊更好ましくは、6~20である。当該2以上の-CH-は、直接結合していてもよいし、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、二重結合で結合された2つの炭素、三重結合で結合された2つの炭素、チオエーテル結合を介して結合していてもよい。
【0019】
2以上の-CH-を主骨格に含む二価の非芳香族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基及びアルキレンオキシ基が挙げられ、これらは、置換基を有していても有していなくてもよい。ここで置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基及びオキソ基から選択される基が挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0020】
置換基として用いられるアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~14、さらに好ましくは1~12、さらにより好ましくは1~6、特に好ましくは1~3である。該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられる。後述するように、置換基として用いられるアルキル基は、さらに置換基(二次置換基)を有していてもよい。斯かる二次置換基を有するアルキル基としては、例えば、ハロゲン原子で置換されたアルキル基が挙げられ、具体的には、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、テトラフルオロエチル基、テトラクロロエチル基等が挙げられる。
【0021】
置換基として用いられるシクロアルキル基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
置換基として用いられるアルコキシ基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アルコキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~20、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~6である。該アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、及びデシルオキシ基が挙げられる。
【0023】
置換基として用いられるシクロアルキルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、さらに好ましくは3~6である。該シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0024】
置換基として用いられるアミノ基は、直鎖状又は分岐状の脂肪族、又は芳香族のいずれであってもよい。該アミノ基の炭素原子数は、好ましくは1~20、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~6である。該アミノ基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、イソプロピルアミノ基、アミノブトキシ基、sec-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、アミノペンチル基、アミノヘキシル基、アミノヘプチル基、アミノオクチル基、アミノノニル基、及びアミノデシル基、アミノフェニル基などが挙げられる。
【0025】
置換基として用いられるシリル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該シリル基の炭素原子数は、好ましくは1~20、好ましくは1~12、さらに好ましくは1~6である。該シリル基としては、例えば、メチルシリル基、エチルシリル基、プロピルシリル基、イソプロピルシリル基、ブトキシシリル基、sec-ブチルシリル基、イソブチルシリル基、tert-ブチルシリル基、ペンチルシリル基、ヘキシルシリル基、ヘプチルシリル基、オクチルシリル基、ノニルシリル基、及びデシルシリル基が挙げられる。
【0026】
置換基として用いられるアシル基は、式:-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アシル基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。該アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、及びピバロイル基が挙げられる。
【0027】
置換基として用いられるアシルオキシ基は、式:-O-C(=O)-Rで表される基(式中、Rはアルキル基)をいう。Rで表されるアルキル基は直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。該アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは2~20、より好ましくは2~13、さらに好ましくは2~7である。該アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、及びピバロイルオキシ基が挙げられる。
【0028】
2以上の-CH-を主骨格に含む二価の非芳香族炭化水素基は、2以上の-CH-のほかにさらにシクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アルカポリエニレン基、アルカジイニレン基、アルカトリイニレン基等、メチレン基以外の非芳香族系の二価の基を含んでいてもよい。
【0029】
2以上の-CH-を主骨格に含む二価の非芳香族炭化水素基としては、例えば、置換基を有していても有していなくてもよい炭素数2~20のアルキレン基、または置換基を有していても有していなくてもよい炭素数2~20のアルキレンオキシ基が好ましい。なお、ここで、上記炭素数は、置換基を含む場合は、置換基の炭素数を除外した数である。
【0030】
アルキレンオキシ基は、例えば、以下式(b1)~(b6)で示される構造の1つ以上を有していてもよい。
(b1)-O-CH(-CH)-(O-(CH-O-CH(-CH)-、
(b2)-(O-(CH-、
(b3)-(O-CH-CH(-CH))-、
(b4)-O-CH-CH(-OH)-CH-(O-(CH)-O-CH-CH(-OH)-CH-、
(b5)-(O-(CH-O-CH-CH(-OH)-
(b6)-(O-CH-CH(-CH))-O-CH-CH(-OH)-
ここで、p、r、u及びwは、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~6の整数、更に好ましくは1~3の整数である。また、q、s、t、v、y及びzは、1~20の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~6の整数、更に好ましくは1~3の整数である。
【0031】
(c)二価の芳香族基を主骨格に含む二価の芳香族含有炭化水素基
二価の芳香族基を主骨格に含む二価の芳香族含有炭化水素基において、芳香族基は、例えば、フェニレン基、ナフタレン基、アントラセン基、ビフェニル基であってもよい。フェニレン基は、オルト、メタ、又はパラのフェニレン基であってもよい。二価の芳香族含有炭化水素基中に、当該芳香族基を2以上含んでいてもよい。2以上の芳香族基含む場合、当該芳香族基は直接結合していてもよいし、アルキレン基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、二重結合で結合された2つの炭素、三重結合で結合された2つの炭素等を介して結合していてもよい。特に好ましい二価の芳香族含有炭化水素基としては、
【0032】
【化3】
(上記式中、*は結合点を示す。)
及び
【0033】
【化4】
(上記式中、*は結合点を示す。)
を挙げることができる。
【0034】
上記(a)~(c)で示した構造を有するエポキシ化合物は、主骨格が環状ではなく鎖状であることが好ましい。エポキシ化合物全体として鎖状であれば、主骨格中に、二価の芳香族基等の二価の環状基を一部に含んでもよい。また、主骨格を構成する基が上述した置換基を有していてもよい。上記エポキシ化合物の重合体とは、当該エポキシ化合物が重合して、例えば分子量500~1500程度の重合体となったものを言う。
【0035】
本発明で用いられる柔軟性エポキシ樹脂は上記した構造及び特徴を有しているが、より具体的には、以下の式(2)又は式(3)で示される構造で表されるエポキシ化合物またはそれらの重合体を含有していることが好ましい。
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
式(2)及び(3)中、mおよびmは、それぞれ独立に1~20の整数、好ましくは1~10の整数である。
【0039】
式(2)及び(3)中、X、X及びXは、2以上の-CH-を主骨格に含む二価の非芳香族炭化水素基である。ここで、2以上の-CH-を主骨格に含む二価の非芳香族炭化水素基の定義は上述したとおりである。式(2)においてmが2以上の整数である場合、複数あるXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。式(3)中のX及びXは互いに同一であっても異なっていてもよく、また、mが2以上の整数である場合、複数あるXは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数あるXは互いに同一であっても異なっていてもよい。X、X及びXは、上述の(b1)~(b6)から選択される基であってもよい。
【0040】
式(2)及び(3)中、Ar、Ar及びArは、互いに同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していても有していなくてもよい、二価の芳香族基を主骨格に含む二価の芳香族含有炭化水素基である。二価の芳香族基を主骨格に含む二価の芳香族含有炭化水素基の定義は上述したとおりである。式(2)中のAr及びArは互いに同一であっても異なっていてもよく、また、mが2以上の整数である場合、複数あるArは互いに同一であっても異なっていてもよい。式(3)中のmが2以上の整数である場合、複数あるArは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
さらに、式(3)のエポキシ樹脂は、以下の式(4)で表される構造を有していてもよい。
【0042】
【化7】
【0043】
式(4)中、mは、1~20の整数、好ましくは1~10の整数である。
【0044】
式(4)中のX3-6及びAr3-4の定義は、上述したXやArの定義と同様である。式(4)中のX、X、X、Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、mが2以上の整数である場合、複数あるXは互いに同一であっても異なっていてもよく、複数あるXは互いに同一であっても異なっていてもよい。Ar及びArは、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、mが2以上の整数である場合、複数あるArは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、X3-6は、上述の(b1)~(b6)から選択される基であってもよい。
【0045】
本発明で用いられる柔軟性エポキシ樹脂またはそれらの重合体の構造としては、例えば、以下の構造(kは1~20の整数、好ましくは1~5の整数)が挙げられる。
【0046】
【化8】
【0047】
また、例えば、以下の構造(hはそれぞれ0~20の整数、好ましくは0~5の整数であり、i、jはそれぞれ独立に1~20の整数、好ましくは1~5の整数である)が挙げられる。
【0048】
【化9】
【0049】
本発明で用いられる柔軟性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、200~1000g/eq、好ましくは300~600g/eqである。エポキシ当量が200以上であれば揮発性が少なく、低粘度とならず、取り扱い易い粘度となるので好適である。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量が1000g/eq以下であれば、高粘度とならず、取り扱いの面で好適である。ここで、エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量であり、例えば、JIS K 7236(2009)に準拠して測定することができる。
【0050】
本発明で用いられる柔軟性エポキシ樹脂は25℃で液状であることが好ましい。25℃で液状とすることにより、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の取扱性が向上する。
【0051】
本発明で用いられる柔軟性エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、DIC社製EXA-4850-150、EXA-4816、及びEXA-4822;ADEKA社製EP-4000S、EP-4000SS、EP-4003S、EP-4010S、及びEP-4011S;新日本理化社製BEO-60E及びBPO-20E;三菱ケミカル社製YL7175-500、YL7175-1000、YL7410、及びYX-7105;並びに阪本薬品工業社製SR-FXB等が例示される。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
[前記(A)以外のエポキシ樹脂]
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物には、前記(A)以外のエポキシ樹脂(以下、他のエポキシ樹脂と称することもある。)を併用してもよい。他のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、カテコール、レゾルシン等の多価フェノールまたはグリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピハロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、p-オキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸とエピハロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、フタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸とエピハロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル、4,4-ジアミノジフェニルメタン、m-アミノフェノール、4-アミノフェノール等とエピハロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。これらエポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、他のエポキシ樹脂は25℃で液状であることが好ましい。25℃で液状とすることにより、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の取扱性が向上する。
【0053】
併用してもよい他のエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828EL」、「jER827」、「jER1001」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER807」)、液状ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(新日鉄化学社製「ZX1059」)、水素添加された構造のエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX8000」)、ジシクロペンタジエン型多官能性エポキシ樹脂(DIC社製「HP7200」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業社製「PB-3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000H」、「NC3000L」、三菱ケミカル社製「YX4000」)などが挙げられる。
【0054】
また、他のエポキシ樹脂を併用する場合、その量は、一液型エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ樹脂100重量部に対し、例えば、90重量部以下、好ましくは75重量部以下である。他のエポキシ樹脂の量を90重量部以下とすることで、得られる硬化物の柔軟性をより向上させることができる。また、他のエポキシ樹脂を10重量部以上、好ましくは20重量部以上併用することにより、接着強度の更なる向上が可能となる。
【0055】
[(B)チオール化合物(少なくとも、上記式(1)で表される化合物を含む。)]
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、少なくとも上記式(1)で表されるチオール化合物を含む。上記式(1)において、Zは硫黄原子又は酸素原子であり、好ましくは硫黄原子である。また、上記式(1)において、繰り返し単位数n及びnは、それぞれ独立して2又は3であり、柔軟性をより向上させることができることから、好ましくはn=3、且つn=2である。
【0056】
本発明において(B)の量は、(エポキシ官能基当量)/(チオール官能基当量)で求められる値が、例えば、0.7~1.4、好ましくは0.8~1.2となる量である。ここで、チオール官能基当量とは、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物中の全チオール基の数を意味し、該樹脂組成物中の各チオール化合物の重量を、各々のチオール当量で除した値を足し合わせることにより得られる値である。また、前記チオール当量は、チオール化合物の分子量を、該チオール化合物1分子中のチオール基の数で除することにより求めることができる。一方、エポキシ官能基当量とは、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物中の全エポキシ基の数を意味し、該樹脂組成物中の各エポキシ樹脂の重量を、各々のエポキシ当量で除した値を足し合わせることにより得られる値である。
【0057】
また、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、上記式(1)で表されるチオール化合物以外のチオール化合物(以下、他のチオール化合物と称することもある。)を含んでいてもよい。含んでいてもよい他のチオール化合物の具体例としては、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a-メチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジメチルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(メルカプトメチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)-3a,6a-ジフェニルグリコールウリル等のグリコールウリル骨格を有するチオール化合物;4,6-ビス{3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-5-メルカプト-2,4-ジチアペンチルチオ}-1,3-ジチアン、4,6-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-6-[4-(6‐メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,4,8,9‐テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4,5-ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-1,3-ジチオラン、4-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、4-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]-5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラン、2-{ビス[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メチル}-1,3-ジチエタン、2-[3,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-6-メルカプト-2,5-ジチアヘキシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-11-メルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデシルチオ]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、2-[3-ビス(メルカプトメチルチオ)メチル-5,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-8-メルカプト-2,4,7-トリチアオクチル]メルカプトメチルチオメチル-1,3-ジチエタン、4,5-ビス{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-1,3-ジチオラン、4-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-5-[1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)-4-メルカプト-3-チアブチルチオ]-1,3-ジチオラン、2-{ビス[4-(5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラニル)チオ]メチル}-1,3-ジチエタン、4-[4-(5-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチオラニル)チオ]-5-{1-[2-(1,3-ジチエタニル)]-3-メルカプト-2-チアプロピルチオ}-1,3-ジチオラン等の環式構造を有するチオール化合物;1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、1,1,5,5-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3-チアペンタン、1,1,6,6-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-3,4-ジチアヘキサン、2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタンチオール、3-メルカプトメチルチオ-1,7-ジメルカプト-2,6-ジチアヘプタン、3,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,9-ジメルカプト-2,5,8-トリチアノナン、3-メルカプトメチルチオ-1,6-ジメルカプト-2,5-ジチアヘキサン、1,1,9,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-5-(3,3-ビス(メルカプトメチルチオ)-1-チアプロピル)3,7-ジチアノナン、トリス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、トリス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、テトラキス(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)メタン、テトラキス(4,4-ビス(メルカプトメチルチオ)-2-チアブチル)メタン、3,5,9,11-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,13-ジメルカプト-2,6,8,12-テトラチアトリデカン、3,5,9,11,15,17-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,19-ジメルカプト-2,6,8,12,14,18-ヘキサチアノナデカン、9-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,4,8,9-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,5,7,10-テトラチアウンデカン、3,4,8,9,13,14-ヘキサキス(メルカプトメチルチオ)-1,16-ジメルカプト-2,5,7,10,12,15-ヘキサチアヘキサデカン、8-[ビス(メルカプトメチルチオ)メチル]-3,4,12,13-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,15-ジメルカプト-2,5,7,9,11,14-ヘキサチアペンタデカン、4,6-ビス[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7-メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-1,3-ジチアン、4-[3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-7‐メルカプト-2,6-ジチアヘプチルチオ]-6-メルカプトメチルチオ-1,3-ジチアン、1,1-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-1,3-ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1-[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル]-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、1,5-ビス[4-(6-メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアニルチオ]-3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-2,4-ジチアペンタン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,11-ジメルカプト-2,4,6,10-テトラチアウンデカン、9-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-3,5,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,6,8,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3-[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-7,9,13,15-テトラキス(メルカプトメチルチオ)-1,17-ジメルカプト-2,4,6,10,12,16-ヘキサチアヘプタデカン、3,7-ビス[2-(1,3-ジチエタニル)]メチル-1,9-ジメルカプト-2,4,6,8-テトラチアノナン等の脂肪族チオール化合物;ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールポリ(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(2-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート及びトリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート等の、ポリオールとメルカプト有機酸のエステル化反応によって得られるチオール化合物等が挙げられる。これら他のチオール化合物の中でも、グリコールウリル骨格を有するチオール化合物が好ましく、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリルがより好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
他のチオール化合物を併用する場合、得られる硬化物の柔軟性をより向上させるためには、他のチオール化合物の量を上記式(1)で表されるチオール化合物と他のチオール化合物の合計量100重量部に対し、40重量部以下、好ましくは20重量部以下とする。また、他のチオール化合物を併用しなくても充分接着強度は得られるが、より接着強度を向上させる場合、他のチオール化合物を1重量部以上、好ましくは10重量部以上併用することが好ましい。
【0059】
[(C)潜在性硬化剤]
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物に含まれる潜在性硬化剤とは、室温(25℃)では上述のエポキシ樹脂に対し活性を持たず、加熱により活性化し、硬化を促進する機能を有する化合物のことである。なお、本発明においては、前記した機能を有する化合物であっても前述した(B)チオール化合物は潜在性硬化剤に含まれないものとする。
【0060】
潜在性硬化剤は、固体であっても液体であってもよいが、保存安定性をより向上させることができることから、固体の潜在性硬化剤が好ましい。固体の潜在性硬化剤としては、室温で固体のイミダゾール化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物、ジシアンジアミド、マイクロカプセル型潜在性硬化剤等が例示され、これら固体の潜在性硬化剤の中でも、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物、ジシアンジアミド及びマイクロカプセル型潜在性硬化剤が好ましい。これら潜在性硬化剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記室温で固体のイミダゾール化合物としては、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2-メチルイミダゾリル-(1))-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2′-メチルイミダゾリル-(1)′)-エチル-S-トリアジン・イソシアヌール酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテート、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)-尿素、N,N′-(2-メチルイミダゾリル-(1)-エチル)-アジボイルジアミド等が例示される。前記エポキシ樹脂アミンアダクト化合物としては、味の素ファインテクノ社製アミキュアMY-24、アミキュアMY-R、特開昭和57-100127号公報に示されたアダクト系化合物等が例示される。前記エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物としては、味の素ファインテクノ社製アミキュアPN-23、アミキュアPN-R、エアープロダクト ジャパン社製サンマイドLH-210等が例示される。前記変性脂肪族ポリアミン化合物としては、T&K TOKA社製フジキュアーFXE-1000、フジキュアーFXR-1121等が例示される。マイクロカプセル型潜在性硬化剤としては、旭化成イーマテリアルズ社製ノバキュアHX-3721、ノバキュアHX-3722、ノバキュアHX-3741、ノバキュアHX-3742、ノバキュアHX-3748、ノバキュアHX-3613、ノバキュアHX-3088、ノバキュアHX-3921HP、ノバキュアHX-3941HP等が例示される。
【0062】
また、液体の潜在性硬化剤としては、T&K TOKA社製フジキュア-7000、フジキュア-7001、フジキュア-7002等が例示される。
【0063】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物に含まれる(C)の量は、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂100重量部に対し、例えば、0.1~100重量部、好ましくは1~60重量部、より好ましくは5~30重量部である。
【0064】
[安定化剤]
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物には、長期保存性向上の観点から安定化剤を含んでいてもよい。安定化剤としては、例えば、ボレート化合物、チタネート化合物、ジルコネート化合物、アルミネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物及びメルカプト有機酸等が例示される。これら安定化剤の中でも、汎用性および安全性の点からボレート化合物が好ましく、ボレート化合物の中でもトリエチルボレート、トリ-n-プロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリ-n-ブチルボレートがより好ましい。また、これら安定化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
[その他添加剤]
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物には、さらに反応性希釈剤、添加剤(例えば、無機充填剤、難燃剤、サイジング剤、カップリング剤、着色剤、チクソトロピー剤、帯電防止剤など)等を含んでいてもよい。
【0066】
<本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の調製方法>
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物の調製には、通常のエポキシ樹脂組成物の調製方法と同様に一般的な撹拌混合装置と混合条件が適用される。例えば、柔軟性エポキシ樹脂、チオール化合物(ただし、少なくとも上記式(1)で表される化合物を含む。)及び潜在性硬化剤、並びに必要に応じて他のエポキシ樹脂、反応性希釈剤、溶剤及び添加剤等を均一になるまで充分に混合することにより、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を調製することができる。その際、使用される装置としては、ミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ、押出機等が例示される。混合条件としてはエポキシ樹脂等を溶解および/または低粘度化し、撹拌混合効率を向上させるために加熱してもよい。また、摩擦発熱、反応発熱等を除去するために必要に応じて冷却してもよい。
【0067】
<本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物>
続いて、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物の製造法及び該硬化物について詳述する。
【0068】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物は、例えば、本発明の一液型エポキシ樹脂組成物を金型に流し込み注型した後、熱により硬化させることによって得ることができる。熱により硬化させる場合、硬化温度は使用する硬化剤やエポキシ樹脂の種類等によって異なるが、通常50~150℃、好ましくは60~120℃、より好ましくは70~100℃である。
【0069】
本発明の一液型エポキシ樹脂組成物は、低温硬化性に優れ、また柔軟性や接着強度に優れる硬化物を与えることから、例えば、自動車、家電及びその他電気部品等の接着剤や封止剤として好適に用いることができる。
【実施例0070】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等において各測定値は、次の方法、測定条件に従った。
【0071】
[柔軟性確認試験]
各実施例および比較例で得られた一液型エポキシ樹脂組成物を各々型に流し込み、80℃で120分加熱することにより、硬化物を作成した。得られた硬化物を加工し、3号ダンベル型試験片(厚さ3mm)を作成した。テンシロン万能材料試験機((株)オリエンテック製)を用いて、上記試験片について、JIS K 7161の測定方法に準じて、引張試験[引張速度:5mm/min、ロードFS:5kN、チャック間距離(標線間距離):60mm]を行い、硬化物の引張破断伸度を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
[接着強度試験]
各実施例および比較例で得られた一液型エポキシ樹脂組成物を、被着体である鋼板(JIS3100 C1100P:1.6×25×100mm)に塗布し、80℃で30分加熱することにより試験片を作成した。作成した試験片を25℃の室内で放冷させ、JIS K 6850における引張剪断接着強さの測定方法に準拠して、鋼-鋼引張剪断接着強さを測定した。
【0073】
<実施例1~10、比較例1>
表1の配合組成(重量部)となるよう、各々プラスチック容器に材料を量り取り、ディスパー(TOKUSHU KIKA社製ROBO MIX)を用いて十分混合した後、脱泡し、一液型エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物について、上記測定方法に従って引張破断伸度および鋼-鋼引張剪断接着強さを測定した。結果を表1に示す。なお、使用した各材料の詳細は以下の通り。
【0074】
・EXA-4850-150:DIC社製、ビニルエーテル変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポキシ当量:435g/eq)
・DER331:ダウ・ケミカル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190g/eq)
・アミキュアPN-23:味の素ファインテクノ社製、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物
・ACTOCURE(登録商標)SS32:川口化学工業社製、1,3,5-トリス[3-(2-メルカプトエチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート(上記式(1)に於いてZが硫黄原子、n=3、n=2)(チオール当量:177g/eq)
・ACTOCURE(登録商標)ES23:川口化学工業社製、1,3,5-トリス [2-(3-メルカプトプロポキシ)エチル]イソシアヌレート(上記式(1)に於いてZが酸素原子、n=2、n=3)(チオール当量:161g/eq)
・C3TS-G:四国化成社製、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル(チオール当量:110g/eq)
・アエロジル200:日本アエロジル社製、微粉末シリカ
【0075】
【表1】
【0076】
<比較例2>
プラスチック容器に、EXA-4850-150 65重量部、DER331 35重量部、アミキュアPN-23 15重量部、アエロジル200 1重量部をそれぞれ量り取り、ディスパー(TOKUSHU KIKA社製ROBO MIX)を用いて十分混合した後、脱泡し、一液型エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を型に流し込み、80℃で120分加熱したが、硬化物は得られなかった。