(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140253
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】癌治療のためのビーム成形装置を有する中性子源
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20220915BHJP
G21K 1/00 20060101ALI20220915BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20220915BHJP
H05H 3/06 20060101ALI20220915BHJP
H05H 7/12 20060101ALI20220915BHJP
G21K 1/02 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61N5/10 H
G21K1/00 N
G21K5/02 N
H05H3/06
H05H7/12
G21K1/02 R
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021166597
(22)【出願日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】17/198,922
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】521177072
【氏名又は名称】アデルファイ・テクノロジー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メルビン・アーサー・ピーストルップ
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・マシュー・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・シオドア・クリーマー・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ケビン・ギャリー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・ラウンズ・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】アラン・シー・チェン
(72)【発明者】
【氏名】グレン・エマーソン・ジョーンズ・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ・ゾン・グワン
(72)【発明者】
【氏名】ランドル・スコット・アーダール
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ナサニエル・アモロソ
【テーマコード(参考)】
2G085
4C082
【Fターム(参考)】
2G085BA02
2G085BA17
2G085DA03
2G085EA07
4C082AC07
4C082AE01
4C082AG26
4C082AG42
(57)【要約】
【課題】癌治療のためのビーム成形装置を有する中性子源を提供すること。
【解決手段】癌治療装置は、モデレータブロックの表面を通って出る中性子を発生する中性子源と、長さおよび長さより小さい直径の円形断面を有する細長いビーム成形装置(BSA)とを有し、BSAが、一端で中性子源のモデレータブロックの表面に結合され、モデレータブロックの表面から直交して突出し、BSAが、モデレータブロックから離れた一端で円錐形の要素を有し、円錐形の要素が、モデレータブロックから離れる方向で直径が減る。中性子源によって生成される中性子が、モデレータブロックの表面でBSAに入り、BSAの長さを進行し、モデレータブロックから離れたBSAの一端での開口を通ってBSAを出る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデレータブロックの表面を通って出る中性子を発生する中性子源と、
長さおよび長さより小さい直径の円形断面を有する細長いビーム成形装置(BSA)とを備え、BSAが、一端で中性子源のモデレータブロックの表面に結合され、モデレータブロックの表面から直交して突出し、BSAが、モデレータブロックから離れた一端で円錐形の要素を有し、円錐形の要素が、モデレータブロックから離れる方向で直径が減り、
中性子源によって生成される中性子が、モデレータブロックの表面でBSAに入り、BSAの長さを進行し、モデレータブロックから離れたBSAの一端での開口を通ってBSAを出る、癌治療装置。
【請求項2】
BSAが、サファイア結晶シリンダおよびモデレータブロックから離れた一端の円錐形の要素内のファンネルキャビティと同一線上のビスマスディスクを入れる同心の内側スリーブを入れる外側スリーブをさらに備え、
BSAに近接した表面を通ってモデレータブロックを出る中性子が、ビスマスディスクおよびサファイア結晶を通過し、ファンネルに入り、ファンネルを通りコリメートされて、BSAの一端で開口を通って出て、腫瘍の中性子照射に有用なスポットサイズを有する中性子ビームを提供する、請求項1に記載の癌治療装置。
【請求項3】
モデレータブロックが、高密度ポリエチレン(HDPE)、テフロン、超高分子量ポリエチレンまたは黒鉛のうちの1つまたは組み合わせで作られる、請求項1に記載の癌治療装置。
【請求項4】
外側スリーブが、高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量ポリエチレンである、請求項2に記載の癌治療装置。
【請求項5】
BSAの長さが、3インチ以上10インチ以下である、請求項1に記載の癌治療装置。
【請求項6】
BSAの外径が、3/4インチ以上2インチ以下である、請求項1に記載の癌治療装置。
【請求項7】
ファンネルの長さが、1以上10インチ以下である、請求項2に記載の癌治療装置。
【請求項8】
モデレータブロックから離れたBSAの一端の開口が、0.38インチ以上0.75インチ以下の直径を有する、請求項1に記載の癌治療装置。
【請求項9】
モデレータブロックの表面を通ってBSA内に出る中性子を発生する中性子源のモデレータブロックの表面から、第1の端から直交して突出するように、長さおよび長さより小さい直径の円形断面を有する細長いビーム成形装置(BSA)を結合することであって、BSAが、モデレータブロックから離れる一端で円錐形のファンネルを有し、円錐形の要素が、モデレータブロックから離れる方向で直径が減り、モデレータブロックから離れた第2の端での放射開口で終了する、ことと、
対象者を中性子源に近接したサポート上に配置することと、
放射開口をPONSにおける腫瘍部位に近接させながら、対象者の口腔内にBSAを位置決めすることと、
ある期間、放射開口から放射される中性子で腫瘍を照射することと
を含む、PONSにおける腫瘍のために対象者を治療するための方法。
【請求項10】
BSAを口腔内に位置決めするために対象者および装置が操作される時間の間、中性子源の電源が切れていて、中性子を発生しないことを確実にするためのステップと、対象者および装置が治療のために位置決めされた後、腫瘍を治療するために、中性子源に電力を供給するためのステップとをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
BSAが、サファイア結晶シリンダおよびモデレータブロックから離れた一端の円錐形の要素内のファンネルキャビティと同一線上のビスマスディスクを入れる同心の内側スリーブを入れる外側スリーブをさらに備え、BSAに近接した表面を通ってモデレータブロックを出る中性子が、ビスマスディスクおよびサファイア結晶を通過し、ファンネルに入り、ファンネルを通りコリメートされて、BSAの一端で開口を通って出る、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
モデレータブロックが、高密度ポリエチレン(HDPE)、テフロン、超高分子量ポリエチレンまたは黒鉛のうちの1つまたは組み合わせで作られる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
外側スリーブが、高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量ポリエチレンである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
モデレータブロックの表面を通ってBSA内に出る中性子を発生する中性子源のモデレータブロックの表面から、第1の端から直交して突出するように、長さおよび長さより小さい直径の円形断面を有する細長いビーム成形装置(BSA)を結合することであって、BSAが、モデレータブロックから離れる一端で円錐形のファンネルを有し、円錐形の要素が、モデレータブロックから離れる方向で直径が減り、モデレータブロックから離れた第2の端での放射開口で終了する、ことと、
対象者を中性子源に近接したサポート上に配置することと、
放射開口を前立腺の腫瘍部位に近接させながら、対象者の肛門の腔内にBSAを位置決めすることと、
ある期間、放射開口から放射される中性子で腫瘍を照射することと
を含む、前立腺における腫瘍のために対象者を治療するための方法。
【請求項15】
BSAを口腔内に位置決めするために対象者および装置が操作される時間の間、中性子源の電源が切れていて、中性子を発生しないことを確実にするためのステップと、対象者および装置が治療のために位置決めされた後、腫瘍を治療するために、中性子源に電力を供給するためのステップとをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
BSAが、サファイア結晶シリンダおよびモデレータブロックから離れた一端の円錐形の要素内のファンネルキャビティと同一線上のビスマスディスクを入れる同心の内側スリーブを入れる外側スリーブをさらに備え、BSAに近接した表面を通ってモデレータブロックを出る中性子が、ビスマスディスクおよびサファイア結晶を通過し、ファンネルに入り、ファンネルを通りコリメートされて、BSAの一端で開口を通って出る、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
モデレータブロックが、高密度ポリエチレン(HDPE)、テフロン、超高分子量ポリエチレンまたは黒鉛のうちの1つまたは組み合わせで作られる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
外側スリーブが、高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量ポリエチレンである、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年9月25日に出願されたS/N17/032,211の同時係属出願の一部継続出願である。親のケースの開示は、少なくとも引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ホウ素中性子癌治療法(BNCT)のための装置および方法の技術領域にあり、特に中性子発生装置のための改善されたビーム成形および治療のための対象者への適用に関する。
【背景技術】
【0003】
熱中性子が癌腫瘍の破壊のための癌治療法のために用いられてきたように、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は当技術において新規ではない。これらの中性子は、癌部位に配置されたホウ素-10と相互作用する。中性子はホウ素と相互作用して、分裂イベントを生成し、それにより、アルファ粒子およびリチウム核が作成される。次に、これらの極めて多くのイオン化された粒子は放出され、近くの癌腫瘍細胞の化学結合を破壊する。現在、リアクタまたは加速器内で作成される中性子は、BNCT治療に適した中性子エネルギースペクトルを成形するモデレータを通過する。モデレータおよびその次に患者の組織を通過しながら、中性子は、衝突によって低速化され、低エネルギー熱中性子になる。熱中性子は、癌部位に配置されたホウ素-10核との反応を受け、複合核(励起したホウ素-11)を形成し、それらは、次にリチウム-7およびアルファ粒子に即座に崩壊する。アルファ粒子およびリチウムイオンの両方は、反応のすぐ近くで、約5-9マイクロメートルまたは大体1つの細胞直径の厚さの範囲で密集したイオン化を生成する。このエネルギーの放出は、周囲の癌細胞を破壊する。この技術は、放射線損傷が短距離で起こり、したがって通常の組織を残すことができるので、有利である。
【0004】
ガドリニウムはまた、その非常に高い中性子捕捉断面積のため、中性子捕捉療法(NCT)における捕捉剤とみなすことができる。多くのガドリニウム化合物は、脳腫瘍をイメージングするための造影剤として、いつも決まって用いられてきた。腫瘍は、ガドリニウムの大部分を吸収し、ガドリニウムをNCTのための優れた捕捉剤にしてきた。それゆえ、GNTCはまた、本発明の実施形態におけるバリエーションとみなされてもよい。
【0005】
中性子エネルギー範囲、E、の以下の定義は、しばしば、医療、市販および科学的な用途のために中性子を生成および使用する当業者によって用いられる:高速(E>1MeV)、熱外(0.5eV<E<1Mev)および熱(E<0.5eV)中性子。
【0006】
BNCTは、多形性膠芽腫(GBM)のような以前は治療不可能な癌を治療する可能性を有する。米国において、脳腫瘍は、29歳未満の男性および20歳未満の女性のための癌関連の死亡の2番目によくある原因である。GBMは、ほぼいつも致命的であり、これまで知られている効果的な治療がない。原発性脳腫瘍により、1年につき約13,000人が死亡する。
【0007】
膠芽細胞が切除されたところで従来の医療が用いられる場合、新しい腫瘍は、ほぼ必ず、しばしば元の腫瘍部位から遠くで再発する。それゆえ、有効な放射線療法は、かなりの体積を包含しなければならず、放射線は均一に分布されなければならない。従来の放射線治療は、たいてい、GBMに対して役立つためには、あまりに有毒である。
【0008】
分布した腫瘍のために、有効な放射線療法は、より大きい体積を包含しなければならず、放射線は、均一に分布されなければならない。これは、肝癌にもあてはまる。肝臓は、多くの原発腫瘍からの転移の最も一般的なターゲットである。原発性および転移性肝癌は、たいてい、特に多数の個々の腫瘍の切除の後、致命的である。従来の放射線治療または化学療法に対する切除不能な肝細胞癌の奏効率はまた非常に劣っている。しかしながら、最近の結果は、低エネルギー中性子に衝突される10B化合物を用いた、肝臓全体の熱中性子照射がすべての肝転移を破壊する方法でありうることを示す。
【0009】
BNCTの最近の研究は、中性子捕捉療法が用いられて大量の異なる癌を治療することができることを示した。BNCTが、従来のガンマ放射線によって以前照射された部位で再発した手術不可能の局所的に進行した頭頸部癌の治療において、効果的で安全であると判明した。したがって、BNCTは、より広範囲にわたる癌のために検討可能である。癌部位に対するドーズが、γ-放射線源によって生成されるドーズより大いに強化可能であるので、BNCTは期待できる。これは、中性子-ホウ素反応が短距離(5-9um距離)の放射線の放射を生成するという事実の結果であり、したがって、通常の組織は残されることができる。加えて、ホウ素は、10以上の高い腫瘍対脳の高濃度比を達成でき、それにより、異常組織を選択的に破壊することができる。
【0010】
BNCTは、大部分の臨床環境に対して実際的でないか入手可能でない原子炉または加速器を用いてテストされて中性子を生成する。リアクタはまた、理想的な中性子スペクトルを生成せず、γ-放射線によって汚染される。
【0011】
低電圧融合中性子発生装置(LVFG)は、癌治療に利用できる長寿命の容易に減速される中性子源を可能にする。しかしながら、DD核融合反応を用いたコンパクトな中性子発生装置は、等方性であり指向性ではない放射を有し、それゆえ、生成される中性子を集束またはコリメートすることは、容易に達成されない。さらに、大部分の減速材料およびプロセスは、結果として、ガンマおよびより高いエネルギー中性子のような好ましくない成分を生ずる。高速中性子を熱エネルギーに減速することはまた、結果として、所望の熱中性子束および輝度の低減につながる。指向性で高密度の熱中性子束をターゲット部位上で取得することは、中性子の大きな損失および拡大された熱中性子源なしでは困難であった。
【0012】
リアクタとは異なり、LVFGは、この問題を補償することができる品質、例えば小さい源サイズ、高い中性子の輝度および低い高速中性子エネルギー(2.5MeV)を有する。小さい源サイズは、より容易な収集および高速中性子の熱中性子または熱外中性子のいずれかへの減速を可能にし、それにより、中性子束を増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当技術において明らかに必要なものは、モジュール式の比較的小さいLVFGであって、固有のコリメーティング装置に結合されて熱中性子の実質的に集束されたビームを生成し、対象者の体上の腫瘍部位に係合するための装置に統合されて、腫瘍部位への中性子の送達を効果的に改善することができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態では、癌治療装置が提供され、癌治療装置は、モデレータブロックの表面を通って出る中性子を発生する中性子源と、長さおよび長さより小さい直径の円形断面を有する細長いビーム成形装置(BSA)とを備え、BSAが、一端で中性子源のモデレータブロックの表面に結合され、モデレータブロックの表面から直交して突出し、BSAが、モデレータブロックから離れた一端で円錐形の要素を有し、円錐形の要素が、モデレータブロックから離れる方向で直径が減る。中性子源によって生成される中性子が、モデレータブロックの表面でBSAに入り、BSAの長さを進行し、モデレータブロックから離れたBSAの一端での開口を通ってBSAを出る。
【0015】
一実施形態において、BSAに近接した表面を通ってモデレータブロックを出る中性子が、ビスマスディスクおよびサファイア結晶を通過し、ファンネルに入り、ファンネルを通りコリメートされて、BSAの一端で開口を通って出て、腫瘍の中性子照射に有用なスポットサイズを有する中性子ビームを提供するように、BSAが、サファイア結晶シリンダおよびモデレータブロックから離れた一端の円錐形の要素内のファンネルキャビティと同一線上のビスマスディスクを入れる同心の内側スリーブを入れる外側スリーブをさらに備える。
【0016】
一実施形態において、モデレータブロックが、高密度ポリエチレン(HDPE)、テフロン、超高分子量ポリエチレンまたは黒鉛のうちの1つまたは組み合わせで作られる。また、一実施形態において、外側スリーブが、高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量ポリエチレンである。そして、一実施形態において、BSAの長さが、3インチ以上10インチ以下である。
【0017】
本発明の一実施形態において、BSAの外径が、3/4インチ以上2インチ以下である。また、一実施形態において、ファンネルの長さが、1以上10インチ以下である。そして、一実施形態において、モデレータブロックから離れたBSAの一端の開口が、0.38インチ以上0.75インチ以下の直径を有する。
【0018】
本発明の他の態様において、PONSにおける腫瘍のために対象者を治療するための方法が提供され、方法は、モデレータブロックの表面を通ってBSA内に出る中性子を発生する中性子源のモデレータブロックの表面から、第1の端から直交して突出するように、長さおよび長さより小さい直径の円形断面を有する細長いビーム成形装置(BSA)を結合することであって、BSAが、モデレータブロックから離れる一端で円錐形のファンネルを有し、円錐形の要素が、モデレータブロックから離れる方向で直径が減り、モデレータブロックから離れた第2の端での放射開口で終了する、ことと、対象者を中性子源に近接したサポート上に配置することと、放射開口をPONSにおける腫瘍部位に近接させながら、対象者の口腔内にBSAを位置決めすることと、ある期間、放射開口から放射される中性子で腫瘍を照射することとを含む。
【0019】
一実施形態において、方法は、BSAを口腔内に位置決めするために対象者および装置が操作される時間の間、中性子源の電源が切れていて、中性子を発生しないことを確実にするためのステップと、対象者および装置が治療のために位置決めされた後、腫瘍を治療するために、中性子源に電力を供給するためのステップとをさらに含む。また、一実施形態において、方法が、サファイア結晶シリンダおよびモデレータブロックから離れた一端の円錐形の要素内のファンネルキャビティと同一線上のビスマスディスクを入れる同心の内側スリーブを入れる外側スリーブをさらに備え、BSAに近接した表面を通ってモデレータブロックを出る中性子が、ビスマスディスクおよびサファイア結晶を通過し、ファンネルに入り、ファンネルを通りコリメートされて、BSAの一端で開口を通って出る。一実施形態において、モデレータブロックが、高密度ポリエチレン(HDPE)、テフロン、超高分子量ポリエチレンまたは黒鉛のうちの1つまたは組み合わせで作られる。そして、一実施形態において、外側スリーブが、高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量ポリエチレンである。
【0020】
本発明のさらに他の態様において、前立腺における腫瘍のために対象者を治療するための方法が提供され、方法は、モデレータブロックの表面を通ってBSA内に出る中性子を発生する中性子源のモデレータブロックの表面から、第1の端から直交して突出するように、長さおよび長さより小さい直径の円形断面を有する細長いビーム成形装置(BSA)を結合することであって、BSAが、モデレータブロックから離れる一端で円錐形のファンネルを有し、円錐形の要素が、モデレータブロックから離れる方向で直径が減り、モデレータブロックから離れた第2の端での放射開口で終了する、ことと、対象者を中性子源に近接したサポート上に配置することと、放射開口を前立腺の腫瘍部位に近接させながら、対象者の肛門の腔内にBSAを位置決めすることと、ある期間、放射開口から放射される中性子で腫瘍を照射することとを含む。
【0021】
一実施形態において、この方法は、BSAを口腔内に位置決めするために対象者および装置が操作される時間の間、中性子源の電源が切れていて、中性子を生成しないことを確実にするためのステップと、対象者および装置が治療のために位置決めされた後、腫瘍を治療するために、中性子源に電力を供給するためのステップとをさらに含む。一実施形態において、方法が、サファイア結晶シリンダおよびモデレータブロックから離れた一端の円錐形の要素内のファンネルキャビティと同一線上のビスマスディスクを入れる同心の内側スリーブを入れる外側スリーブをさらに備え、BSAに近接した表面を通ってモデレータブロックを出る中性子が、ビスマスディスクおよびサファイア結晶を通過し、ファンネルに入り、ファンネルを通りコリメートされて、BSAの一端で開口を通って出る。一実施形態において、モデレータブロックが、高密度ポリエチレン(HDPE)、テフロン、超高分子量ポリエチレンまたは黒鉛のうちの1つまたは組み合わせで作られる。そして、一実施形態において、外側スリーブが、高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量ポリエチレンである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明の一実施形態におけるモジュール式中性子発生装置の横断面図である。
【
図1B】
図1Aのモジュール式発生装置の長手方向断面図である。
【
図2】中性子源を用いたラジオグラフィにおける「幾何形状の不鮮明度」すなわちぼやけを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるLVFG、そのプレモデレータおよび小エリアの源のための収束ファンネルの断面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態において、単純なビーム成形アセンブリ(BSA)の収束ファンネルの軸にわたる距離xの関数として、熱中性子収率(n/sec-cm
2)を示す図である。
【
図4B】単純なBSA(ファンネルを有するスラブ)の収束ファンネルの軸にわたる距離xの関数として、および、ファンネルなしで、厚さL
1+L
2=9.5cmを有するモデレータの場合に測定された熱中性子収率(n/sec-cm
2)を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態において、コンピュータシミュレーションのためのナイフエッジ画像を生成するのに必要な構成要素の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態において、高速中性子(E>0.5eV)および熱中性子(E<0.5eV)に対するガドリニウム(Gd)から作られるナイフエッジのコンピュータシミュレーションを示す図である。
【
図7A】本発明の一実施形態において、検出器アレイにわたる横断距離xの関数として、画像流束を示す図である。
【
図7B】本発明の一実施形態において、検出器アレイにわたる横断距離xの関数として、画像流束を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態において、BSAの端とナイフエッジとの間の距離、Lの関数として、ナイフエッジの画像解像度(mm)を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態において、BSAの端とナイフエッジとの間の距離、Lの関数として、ナイフエッジを測定するのにかかる推定された時間(秒)を示す図である。
【
図10A】本発明の一実施形態において、ビスマスフォイル、ファンネル、出口開口および反射する黒鉛スリーブを有するサファイア結晶から成るBSAを有するモジュール式発生装置の長手方向断面である。
【
図10B】本発明の一実施形態における、加速チャンバの軸に沿って、および、ターボ真空ポンプの軸に沿ってとられる
図10Aのモジュール式発生装置の横断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態においてビーム成形装置(BSA)を有する低電圧融合発生装置(LVFG)の正面図である。
【
図12】対象者の脳の基底部内の腫瘍を治療するために適用されるBSAを有するLVFGを示す図である。
【
図13】対象者の前立腺内の腫瘍を治療するために適用されるBSAを有するLVFGを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1Aおよび
図1Bは、十分な熱中性子束を生成するように設計された、発明者に知られているモジュール式中性子発生装置118の断面図である。モジュール式発生装置118は、高速中性子のエネルギーを熱エネルギーに減速させるように知られている材料で作られるプレモデレータ108を備える。熱中性子生成のための大部分の実施形態において、プレモデレータは、高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量(UHMW)ポリエチレンのような材料の成形された固体ブロックでもよい。材料およびその厚さの選択は、少なくとも部分的に所望の中性子スペクトル(例えば、熱または熱外)および所望の中性子収率によって決定される。
【0024】
モジュール式発生装置118は、この例では、4つの重要な要素を有する:(1)ジュウテリウムイオン源102、(2)ジュウテリウムイオン104が加速される加速チャンバ100、および(3)ジュウテリウムイオンによって衝突されて、高エネルギーの中性子110を生成するチタンターゲット106。ジュウテリウムイオン源102は、実施態様において、取り付けられたマイクロ波源160およびマイクロ波スラグチューナ172を有する。動作中、ジュウテリウムガスは、加速チャンバの上部の端のプラズマイオンチャンバ174内にゆっくり漏出させられ、そこで、マイクロ波エネルギーはガスをイオン化し、ジュウテリウムD+イオン104を作成する。ガスはマイクロ波エネルギーによってイオン化され、ジュウテリウムイオン(D+)104は、作成され、加速チャンバ100内へと、イオン抽出アイリス138を通り、そして、装置に損傷を与えうる、逆流電子がプラズマ源内に戻るように加速されることから逸らす電子抑制シュラウド180を通り加速される。電子は、加速チャンバ内で作成されたジュウテリウムガス内のD+イオンの衝突によって作成される。
【0025】
ジュウテリウムイオンは正に帯電し、ターゲット106は120kVから220kVまでのレベルに負に帯電し、D+イオンは負にバイアスされたチタン(Ti)ターゲット106に強く引きつけられる。加速チャンバ100は、一実施形態では約10-6トルの適度の真空を提供するターボ真空ポンプ124に接続され、D+イオンが抽出アイリス138からターゲット106まで進行するとき、D+イオンの散乱を最小にする。チタンターゲット106は、キャビティ181内のチャンバの底に位置決めされ、キャビティは、プレモデレータ材料内に形成される。プレモデレータ108は、ターゲットへの、およびターゲットからの高圧ケーブルおよび流体冷却流路のための通路を有する。プレモデレータ108は、高電圧絶縁体として、および、高い負のバイアスにあるターゲットのための機械的支持として作用する。動作中にあるとき、イオンビーム内のD+イオンはチタンターゲット106に引きつけられ、そこで、高速中性子は、結果として生じるDD核融合反応において生成される。
【0026】
ジュウテリウム-ジュウテリウム(D-D)反応を用いて、熱中性子エネルギーに減速されなければならない高速中性子を生成する融合源のための大きな問題は、高速の熱外中性子ならびに高エネルギーのガンマ放射がたいてい高速中性子の熱エネルギーへの減速の一部であるということである。外部からの放射線がアイリス材料を貫通しうる場合、これらの成分はアイリスの吸収材料を貫通する熱中性子を伴いうるし、開口サイズDを実質的に増加させ得、所望の画像をぼやけさせる。
【0027】
大きなリアクタにおいて、ガンマ線およびX線とともに熱中性子、熱外中性子および高速中性子の混合物を有する熱中性子が取得された。中性子ラジオグラフィおよび放射線療法のような用途は、たいてい、中性子エネルギーがX線またはガンマ成分のない単一の中性子エネルギー帯に制限されることを必要とする。不必要な放射成分を排除するための方法が必要である。
【0028】
本発明の実施形態におけるモジュール式DD融合発生装置118は、小さいチタンターゲット(例えば、水冷式の銅のフィンが後置されるチタンの5-7cmの直径ディスク)を用いて、中性子を生成する。
図1Aおよび
図1Bは、最大の熱中性子を生成するモジュール式中性子発生装置の断面図である。ターゲットは、この実施態様における装置の不可欠な部分であるプレモデレータ上で直接支持される。Tiターゲットは、締着具でプレモデレータブロックに取り付けられてもよく、Oリングでブロックに封止されてもよい。本発明の実施形態におけるターゲットは、容易に手動で除去可能であり、置換可能である。それらはまた、長寿命を有し、不具合なしで4000時間以上もテストされた。
【0029】
以下の説明において、本発明の開示および教示の一部を形成し、本発明が実施されうる特定の実施形態を示す添付の図面が参照される。他の実施形態が利用されてもよく、本発明の範囲を逸脱することなく構造の変化がなされてもよいことを理解されたい。
【0030】
本発明の実施形態における加速器構造は、コンパクトであり、わずか約4-5cmの高密度ポリエチレン(HDPE)または15-20cmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)テフロンを追加して、本発明の実施形態における中性子ビームテーラリングの第1のステージを生成するプレモデレータ108を含む。これらの実施形態におけるプレモデレータは、以下いくつかの図面に関して教示されているように、各モジュール式発生装置の不可欠な部分である。他の短い長さのアタッチメントは、プレモデレータに追加されて、中性子ビームのビーム純度、サイズおよび形状をさらに改善し、モジュール式中性子発生装置を非常に多用途の中性子源にする。この出願において教示される固有の装置のための主な用途は、熱中性子ラジオグラフィであり、それは、小さい源のサイズ、高い中性子収率(n/cm2)および高いビーム純度を必要とする。高い熱中性子ビーム純度は、DD融合プロセスおよび2.5MeVの中性子を熱エネルギーに減速する間導入されうる他の中性子および光子成分を最小にすることによって、本発明の実施形態において達成される。フィルタリングプロセスは、中性子フィルタ:「ローパス」および「ハイパス」フィルタの両方を用いて遂行される。結果として生じる中性子束を最大にし、中性子源のサイズを最小にするために、これらのフィルタおよびコリメータは、長さにおいて最小にされ、中性子発生装置に近接する。これは、結果として、多くの用途のための非常にコンパクトで有用な中性子源を生ずる。
【0031】
大部分の放射線源に知られているように、画像の鮮明度および鮮鋭度のために小さい源のサイズが必要である。「幾何形状の不鮮明度」すなわち「ぼやけ」は、源の直径の有限サイズによって生じる画像詳細の損失を参照する。これは、X線管のような放射線源にあてはまり、直径Dの電子ビームは、X線管の陽極(例えば、タングステンターゲット)に当たり、直径Dの源サイズを生成する。ラジオグラフィイメージング(例のシンクロトロンラジエータまたはプラズマピンチX線源)に用いられる他の放射線源において、スポットまたは源サイズDは、X線または中性子が放射されているところを定義するスリットまたは金属開口のいずれかにより定義可能である。本発明において、開口は、ファンネルまたは円錐開口の出口開口D2によって定義される。
【0032】
源またはスポットサイズは、結果として「幾何形状の不鮮明度」、「ぼやけ」または直径D2の中性子放射サイズの有限サイズによって生じる画像詳細の損失になりうる。中性子が熱中性子エネルギーに減速された後、中性子源において、スポットサイズD2は出口開口によって定義される。収束開口は、HDPEおよび黒鉛のような異なる材料で作られることができる出口開口によって定義され、結果として熱中性子の収集およびコリメーションになる。
【0033】
単純な幾何形状を有する
図2に示すように、中性子源から検出器までの距離L、240、および源-放射直径D
2、228、が結果として小さいD
2/Lになる場合、最小のぼやけ(B
o、226)が達成されうる。これは、Δx厚さ242である対象物のためのΔx(D
2/L)の解像度を可能にする。より高い解像度(より少ないぼやけB
o、226)のために、この関係は、源直径D
2ができるだけ小さく、検出器距離L、240、からできるだけ離れていることを必要とする。源サイズD
2を制限する中性子源の上に開口を配置することは、流束密度(N/sec-cm
2)を低減させ、ここでNは、開口を検出器へと通過する1秒当たりの中性子の数である。最適条件は、中性子の損失なしにD
2を低減することである。集束光学素子は、光子のためにこれを達成するが、熱エネルギー範囲の中性子に対しては、これは、絶えず拡大する中性子ビームからの中性子の損失なしでは短距離Lにおいて困難である。
【0034】
熱中性子の収集は、ファンネルの出口D
2で増加した熱流束を有する中性子を、小さいスポットサイズD
2に収集する、および導く両方のためのファンネル222(
図3)により達成可能である。短い(4-5cm)モデレータを有するコンパクトなDD融合源は、高速中性子源(チタンターゲット)から短い距離において、高速の2.5MeVの中性子を熱エネルギーに低速化させる。次に、中性子は、HDPEのスラブに形成される比較的短い(例えば、L
2=3から4cm)ファンネル形状によって収集される。減速および散乱の両方は、ファンネル長Lに沿って起こり続ける。シミュレーションは、この結果、円錐の幾何形状および高速中性子エミッタ(Tiターゲット)のサイズに応じて、中性子束が2から3倍に増加し、スポットサイズが直径1から3cmになることを示す。
【0035】
熱中性子を生成および収集するためのDD融合発生装置のコンパクト性およびプレモデレータの短さにより、中性子ビーム内の他のデバイスの使用も可能になる。これらのデバイスは、中性子ビーム内の高速中性子およびガンマ放射を低減することができる短い長さのサファイア結晶およびビスマスを含み、したがって、ビームを浄化し、熱中性子の比較的純粋なビームを達成する。
【0036】
融合デバイスにおいて、例えば本発明のLVFGにおいて、中性子の数は制限される。中性子の比較的小さいスポット源を有するコンパクトな融合発生装置の使用が、中性子フィルタもまたコンパクトで互いに接近していることを可能にする。モジュール式発生装置は、従来技術では別々の機能であった多数の機能を組み合わせる。これらの統合された機能は、中性子の生成および中性子エネルギー帯の選択の両方を含む。この方法は、デバイスの全長を短縮し、高流束を確実にする。
【0037】
図2に示されたように、画像解像度の重大な要件は、高い中性子収率の小さい直径の源サイズである。
図3は、中性子発生装置の断面である。一実施形態において、ラジオグラフィのための小さい源サイズを生成することができる、ファンネル222の形の単純なビーム成形装置(BSA)が追加される。一実施形態において、収束ファンネルは、6cmのベース直径D
1および1.5cmの出口開口D
2を有する。ファンネルは、プレモデレータ108によって放射されている熱中性子を収集する。
図3の断面は、イオンビーム発生のための加速チャンバ100の軸に沿って、モジュール式発生装置の一部であるターボ真空ポンプ124の軸に直角にとられる。
【0038】
一実施形態において、ファンネル222の入力開口D1(252)は、ほぼL1=5.5cmで、直径が6cmであるチタンターゲット106から離れて配置される。この位置は、少なくともこの特定の例では、熱中性子束が最大であることを示したところであり、熱中性子を収集することが出口開口D2で中性子を最大にするところである。
【0039】
図3に示すように、ファンネル222の形をした短いビーム成形アセンブリ(BSA)は、ここでTiターゲット106および短いモデレータまたはプレモデレータ108の後に提供され、熱中性子は、大きい開口D
1によって収集され、ファンネル222の端のより小さい開口D
2の方に向けられうる。単純な実施形態では、ファンネル222は、斜視図の
図3に示すように、HDPEで作られるBSA支持構造(またはプレート)234内に機械加工される逆円錐であり、入口開口D
1および出口開口D
2を有する。本実施形態における円錐形のファンネル222は、HDPEのプレート234内に形成される。他の材料、例えばテフロン、UHMWポリエチレンまたは黒鉛がプレートのために用いられることができる。
図3に示すように、出口開口250はまた、遮蔽248内に機械加工されて、出口開口から来る熱中性子を定義する。
【0040】
開口D1での収集の後、結果として生ずる熱中性子ビームは、開口D2を出て、単純なプレモデレータと比較したとき、熱中性子のための増加した流束およびより小さい源サイズを提供する。
【0041】
図4Aは、一例における、D
2における流束密度対cmでの横方向寸法のプロットである。
図4Aの例において、スポットサイズは、直径(D
1)でおよそ1.5cmである。ファンネル222なしであれば、源サイズの直径は、直径6cmのディスクであり、拡大しているであろう(
図4)。チタンターゲット106と直接またはほぼ接触したモデレータの使用は、ファンネル222の上部開口D
1で最大の熱中性子束を生成するためである。適度の長さ(この例ではL
2=4cm)のファンネル222を直接プレモデレータ上に追加することは、最大数の中性子およびより高い熱中性子束が収集され、より小さい源サイズが取得されることを可能にする。プレモデレータ108およびBSA(HDPEスラブ234内のファンネル222)の接近したスタッキングが、最大数の熱中性子が小さい源サイズによって取得されることを可能にする。
図4Aは、ファンネルを有するスラブの有益な効果を明らかに示す。
【0042】
その最大の熱中性子束(n/sec-cm
2)でHDPEモデレータによって放射される熱中性子ビームのサイズを低減するために、ファンネル開口222は、D
+イオンビーム104の方向によって定義される発生装置118の軸とチタンターゲット106とに沿って追加される。
図3Aおよび
図3Bに示すように、開口の寸法は、この例では:D
2=1.5cm、D
1=6.0cm、L
1=4.0cm、L
2=3.0cm、E<0.5eVである。
図4のプロットは、これらのパラメータに対するモンテカルロ中性粒子(MCNP)コードシミュレーションからである。ファンネルがない場合、モデレータは、直径10cmのFWHMのビームスポットを示す。ファンネル222が配置されると、半値全幅(FWHM)と呼ばれる知られている技術によって定義される、放射のFWHMは、直径およそ2cmであり、中性子束は、コリメートされていない中性子ビームより2倍大きい。ファンネルの後の源サイズは、2cmの半値全幅を有するが、プレモデレータだけに対しては、それは10cmである。源が十分な距離Lにあり、十分小さい放射サイズ直径(D
2)で小さいD
2/Lを有する場合、高解像度を達成することができる。これは、厚さΔx=1mmである対象物に対するΔx(D
2/L)の解像度を可能にする。1.5cmのD
2およびL=20cmに対して、解像度は、0.1mmである。
【0043】
装置のプロトタイプは、本特許出願の出願時に構築され、テストされた。上述したように、2つの図に示されるように、装置は、ファンネルコリメータを有して、
図3Aおよび
図3Bに示される。プロトタイプファンネルコリメータの寸法は、D
1=6cmおよびD
2=1.5cmで、L
1=5.5cmおよびL
2=4cmを有する。これらの寸法は、他の実施形態において異なってもよい。熱中性子の検出の方法は、NaClの小さいチップの線形配列である。これらのチップは、測定された時間に到来する熱中性子によって活性化された。次に、放射性流束は、中性子分光手段により測定された。結果は、
図4Bに示される。全体形状および大きさは、
図4Aのシミュレーションされた結果と同等である。
図4Bのピーク流束は、
図4Aのシミュレーション(9×10
6n/sec-cm
2)のそれより小さい(6×10
6n/sec-cm
2)。相違は、検出器の解像度からである(測定されたもの対シミュレーションされたもの)。
図4Aのシミュレーションは、より短いプレモデレータ、L
1=4.0cmを使用し、対してL
1=5.5cmであった。しかしながら、両方の場合において、L
2=5.5cmであり、4Aと4Bとの間の比較は、HDPEファンネルBSAがコリメーションの方法として実際効果的であることを示す。
【0044】
BSAの例において、収束コリメータが用いられる。円錐台の方向を逆転させる発散コリメータのような他の幾何形状が用いられることもできる。これらは、原子炉源産業の全体にわたって用いられてきた。いくつかのコリメータは、発散収束形状を有し、結果としてより短いBSA長およびより高い熱中性子束を生じうる。
【0045】
円錐開口源がどの程度良好に行うかを見るために、
図5に示すように、5.0mmのH
2O、142、で作られる検出器アレイ224の前に配置された、厚さ1.0mmのガドリニウム(Gd)ナイフエッジ238の画像がシミュレーションされる。この計算のために、望ましい画像特性は、(a)10
3n/(s-cm
2)より大きい流束であり、(b)望ましい解像度は1mmであり、1桁以上のコントラストを有する。
【0046】
円錐開口中性子源がどの程度良好に働くかを見るために、円錐BSA222を有する厚さ1.0mmのガドリニウム(Gd)ナイフエッジ238の画像がシミュレーションされる。水(5cm、240)は、熱中性子を散乱させる検出器246内の材料をシミュレーションするために用いられる。Gdナイフエッジ238は、上流側上に、H
2O、240の前に配置されて、解像度およびコントラストを決定する。
図5に示す配置では、Lは、BSA222とGd-ナイフエッジ238との間の距離である。この提案に示されるすべてのシミュレーションにおいて、ダイオードアレイ検出器246は、H
2O240の後ろから1.0mm離れたところにあると仮定される。BSA222は、埋め込まれた空気の円錐である(HDPE内で機械加工され、D
1=6cmの入口開口およびD
2=1.5cmの出口開口を有する)。中性子束(n/cm
2-sec)は、熱(E<0.5eV)および高速(E>0.5eV)エネルギー中性子束成分を比較する、
図6に示されるモンテカルロ中性粒子(MCNP)シミュレーションを用いて見出される。
【0047】
これらの特性を達成することを試みるために、さまざまなモジュレータおよびBSA配置が考慮される。対象物は、5mmのH
2O、240が後置される厚さ1.0mmのGdナイフエッジ238であり、H
2Oの上流側に配置されて、解像度およびコントラストを決定する。発生装置において、イオンビーム104は、直径5cmのTiターゲット106に当たり、2.5MeVの中性子は、厚さL
1=4cmのプレモデレータ内に放射される。
図6は、シミュレーションされたモンテカルロ輸送(MCNP)熱流束244および高速242の中性子束を、検出器アレイ224にわたるxの関数として示す。この配置に対して、解像度は、8.5mmであると計算される。いくらか異なるパラメータを有する他のシミュレーションは、3.3mmの解像度を与えた。
【0048】
減速プロセスから作成される高速中性子は、
図6の一番上の曲線に示される。シミュレーションの高速中性子242がGdナイフエッジ全体でコントラストされていないことに留意されたい。実際、大部分の中性子検出器は、高速中性子および熱中性子を容易に区別することができない。しかしながら、高速中性子および熱中性子の分離は、中性子ビームをパルス化することによって達成可能である。発生装置は、イオンビームをパルス化し、D
+イオンを作成するマイクロ波電力を中断することによって減速可能である。10μ秒と同程度に短いパルスは、この方法を用いて発明者によって生成された。高速中性子は、チタンターゲットで作成され、次に、4cmのHDPEプレモデレータを通過し、ここで約50%が熱エネルギーに低減する。10μ秒のパルスの中性子に対して、速度の違い(熱中性子が2.2km/sec、高速中性子が1.4×10
4km/sec)は、開口から20cmで検出器に到達するとき、結果として20μ秒遅れる熱中性子になる。電荷結合素子(CCD)カメラによって検出される高速中性子および熱中性子パルスの読み込みタイミングが、2つの画像:熱中性子によって生じる一方および高速中性子によって生ずる他方を区別することを可能にする。中性子源の特性は、十分な中性子束である(例えば、10
3n/(s-cm
2)または小さいスポットサイズから来るものより大きい。1桁以上の画像コントラストを有するミリメートルの解像度が望ましい。
【0049】
図5の配置およびL=2.0cmについて、
図6は、熱およびより高いエネルギーの中性子束を示す。これらのパラメータに対して、流束は良好であり、コントラストは良好であり、横寸法は良好であるが、解像度は約8.5mmである。
【0050】
解像度を改善するために、D
1およびD
2に対する異なるパラメータが選択され、BSA開口D
2228からナイフエッジまでの異なる距離Lが試される。発生装置、ナイフエッジおよび検出器アレイに対する他のすべてのパラメータは同一である。より大きい開口D
2=5cmおよびD
1=8cm。ナイフエッジまでの距離L=2cm。x(cm)の関数としての流束は、
図7Aに示される。最大熱流束は、理にかなった3.4×10
6n/cm
2-secであるが、解像度は6-mmである。
図7Bに示すように、距離Lを100cmに増加すると、ミリメートル以下の解像度が達成される。これらのシミュレーションの全体にわたって、HDPEがモデレータ108およびBSA222の両方において用いられ、モデレータの厚さはL
1=4cmであり、BSAの厚さはL
2=4cmである。
図8において、解像度をLの関数としてプロットすると、解像度は改善し続ける。L=20から50cmについて、1mmの所望の解像度を達成することができる。
【0051】
しかしながら、距離Lの増加とともに、イメージングのための利用できる中性子束は減少し、結果として、中性子の収集のための測定時間は増加する。これは、アレイの各ダイオードが約250の中性子を測定のために必要とするという単純な仮定によって推定されうる。
図9において、測定時間をLの関数としてプロットすると、数秒のオーダーで測定時間を達成するということが分かる。L=20から50cmについて、1mmの解像度を有するナイフエッジ画像の検出を、1から3秒以内の高品質の画像を達成するのに十分すぎる時間に行うことができる。
【0052】
この出願の全体において、収束コリメータが用いられるが、発散コリメータまたは収束および発散コリメータの組み合わせが用いられてもよい。発散円錐コリメータにおいて、円錐は、カドミウム、インジウム、B4Cまたはホウ素のようなグレージング角の反射材料に内側が覆われてもよい。円錐は、機械加工可能な材料で作られ、Cd、InまたはBによって内側が覆われる。収束コリメータにおいてライニング(Cd、InまたはB)のないHDPEの使用は、この開示において教示され、MCNPシミュレーションによって示されるように、収集および中性子の熱エネルギーへのさらなる減速の両方が達成可能であることを確実にする。
【0053】
熱中性子は透過されるが高速中性子は減衰されるローパスフィルタによって高速中性子を減衰させることによって、解像度はさらに改善されうる。高速中性子は減衰される必要があるか、または、高速中性子に対する検出器の感度は抑制される必要がある。高速中性子を排除するために、長さ9cmのサファイア結晶は、BSAに追加されうる。サファイア(Al2O3)は、0.04nm未満の波長の中性子(500meV)に対するその透過率が厚さ100mmのための3%未満であるので、有効な高速中性子フィルタである。
【0054】
現在の技術は、キロポーラス(Kyropoulos)技術として知られているものを用いて、大きい直径の単結晶サファイアインゴットを成長させることを可能にする。サファイアインゴットの直径は、5から12cmであり、5から20cmの長さの厚さを有してもよい。熱中性子束のおよそ80%を透過させながら、7cmのサファイアが高速中性子収率を1桁分だけ低減させうると推定される。
【0055】
図10Aおよび
図10Bは、
図3に示すのと同じ要素の多くを有するが、HDPEの長方形のプレート234の追加の詳細およびコリメーティングファンネル222の前で中性子ビームをフィルタリングするための、プレート234を通る通路内の要素を有するモジュール式発生装置を示す。この例では、約5.5cmのHDPEを用いたプレモデレータ108は、高速中性子および熱中性子においてとほぼ等しい中性子ビームを生成する。
図10Aおよび
図10Bに示すように、HDPE内の水素の熱中性子捕捉によって生成される高エネルギーガンマ線の数を低減するビスマスフィルタ238およびサファイア結晶220が追加されうる。本実施形態において、サファイア結晶220は、スリーブ236内に適合する長さ5から15cmの外径を有し、ガンマバックグラウンドを減衰させるのに十分高い平均原子番号、Z、を有するシリンダでもよい。ビスマスフィルタ238は、サファイア結晶の直上でスリーブ236内に適合するサファイア結晶の直径のディスクである。サファイアフィルタ220は、プレモデレータ108の真下で、サファイアフィルタ220を包囲するスリーブ236内に追加され、反射器として作用し、サファイア結晶220の外側にある中性子を減衰させる。ファンネル222は、長さL
2=4cmであり、低減する開口D
1は、所望の小さいビーム直径D
2のための所望の最小開口D
2に熱中性子を向ける。Tiターゲット106から開口D
2、250までの距離(L
1+L
2+L
3+L
4+L
5)を最小にすることは、重要である。これは、小さい開口D
2に送達される熱中性子収率を最大にしながら、ガンマおよび高速中性子のスプリアス放射を最小にする。これは、良好な画像解像度およびコントラストのために必要な熱中性子の数を最大にする。
【0056】
D+イオンビーム104は、チタンターゲット106に当たり、そこで、D+イオンは、埋め込まれ、DD融合反応を作成し、結果として高速(2.5MeV)中性子の等方性放射を生ずる。サファイアフィルタを通して透過されている流束を最大にするために、結晶220は、イオンビーム104の方向および最大の到来する熱中性子ビームと同一線上のその軸に整列される。サファイア結晶の長さおよび方位は、好ましくは、1.2から2.5Aの波長範囲において熱中性子透過を最大にしながら、高速中性子の波長を1オングストローム未満に最小にするように選択される。高速中性子透過、T、は、結晶長、L、とともに、指数的に減少する:すなわちT=I/Io=exp(-L/Lo)である。本実施形態において、70mmのサファイア結晶長が選択され、それは、大体、熱中性子に対して高速中性子の1桁分の減少を与える。
【0057】
混合中性子ビームがサファイアフィルタを透過していると仮定し、高速および熱外中性子成分ならびにHDPEプレモデレータ材料内で生成されるガンマ線を抑制しながら、熱中性子を最大にすることが望ましい。この例では、サファイア結晶から成るシリンダ220の下の熱中性子の、半値全幅(FWHM)の定義によって定義される2.5cmのビームの透過を最大にすることが望ましい。熱中性子は透過の間散乱され、いくつかはサファイア結晶の外側で失われる。しかしながら、結晶面のすぐ外側の高密度(または高いZ)反射材料のスリーブ236は、熱中性子を反射し、結晶内に戻すことができ、このことにより、BSAへの出口における全中性子収率を増加させることができる。この例では、スリーブ236は、サファイア結晶を囲むビスマスである。高いZスリーブの臨界角は、いかなるグレージング角の熱中性子をも反射するが、サファイアからビスマスに通過する高いエネルギーの中性子を散乱し、吸収する。理想的には、熱中性子はサファイアシリンダの下に進行し、高速中性子は吸収または散乱される。サファイア結晶の端の円錐開口は、小開口(D2)から熱流束を透過させるように作用する。この実施態様では、円錐開口228の直径は、D1=6cmからD2=1.5cmまで先細になる。円錐開口222および長方形のプレート234を形成するのに用いられることができる他のパラメータおよび材料、例えば黒鉛が存在する。
【0058】
タングステンターゲット106が、プラスチック(HDPEまたはテフロン)のプレモデレータ108上にあるので、ターゲットから来る高速中性子は、プレモデレータに直接入り、熱または熱外エネルギーに減速可能である。短いビーム成形アセンブリ(BSA)は、Tiターゲットおよびプレモデレータの下で提供され、そこで熱中性子のいくつかは、収集され、BSAの端の小さい開口の方に向けられうる。短い、L
5、アイリス250は、BSAの真下に配置される。アイリス250の材料は、鉛およびB
4Cで作られてもよい。その最も単純な実施形態において、BSAは、
図3Aおよび
図3Bで示す逆円錐222である。BSAのHDPEは、熱中性子の反射器およびコリメータとして作用する。他で述べられるように、コリメータは、黒鉛のような他の材料で作られることができる。BSAの開口で結果として生ずる熱中性子ビームは、単純なモデレータと比較したとき、熱中性子のためのより高い流束およびより小さい源サイズを与える。示した例では、スポットサイズは、直径(D
2)でおよそ1.5cmである。BSAなしであれば、プレモデレータの源サイズの直径は、直径6cmのディスクであり、拡大しているであろう。チタンターゲット106との直接またはほぼ接触したプレモデレータ108の使用の背景にあるアイディアは、最大の熱中性子束を生成することである。適度の厚さ(この例ではL
2=4cm)のBSAを直接プレモデレータに追加することは、最大数の中性子およびより高い熱中性子束が収集され、より小さい源サイズが取得されることを可能にする。プレモデレータおよびBSAの接近したスタッキングは、最大数の熱中性子が小さい源サイズD
2によって取得されることを可能にする。
【0059】
本発明の実施形態では、熱中性子の収集は、ファンネルの円錐の出口で増加した熱流束を有する中性子を、小さいスポットサイズに収集する、および導く両方のための円錐形のファンネルにより達成可能である。短い熱モデレータ(例えばHDPEまたは高濃度の水素原子を有するUHMWプラスチック)を有するコンパクトなDD融合源は、高速中性子源(チタンターゲット106)から短い距離(L
1+L
2+L
3+L
4+L
5)において、高速の2.5MeVの中性子を熱エネルギーに急速に散乱させる。
図3Aおよび
図3Bに示すように、次に、中性子は、HDPEのスラブ内の比較的短い(例えば、L
2=3から4cm)ファンネル222によって収集される。減速および散乱の両方は、円錐長Lに沿って起こり続ける。シミュレーションは、この結果、円錐の幾何形状および高速中性子エミッタ(Tiターゲット)のサイズに応じて、中性子束が2から3倍に増加し、直径1から3cmのスポットサイズになることを示す。短い空間およびエネルギーフィルタの追加は、中性子源の輝度を改善し、高速中性子、ガンマ放射のスプリアス放射の影響を制限することによって、画像を改善する。
【0060】
本発明の実施形態では、熱中性子を生成および収集するためのDD融合発生装置および減速プロセスの短さおよびコンパクト性が、中性子ビーム内の高速中性子およびガンマ放射を低減することができる短い長さのサファイア220およびビスマス結晶240を含むビーム内の他のデバイスの使用も可能にし、したがって、ビームを浄化し、癌部位での熱中性子のビームを達成する。中性子の比較的小さいスポット源を有するコンパクトな融合発生装置の使用は、これらの中性子フィルタもまた、コンパクトで互いに接近していることを可能にする。これは、結果として、固定された、大きなおよび高価なリアクタ源と異なり、多くの研究室および現場位置において用いられることができる中性子の有用な源になる。
【0061】
本発明の他の態様において、固有のビーム成形装置(BSA)は、ホウ素中性子捕捉療法の用途において腫瘍の集中治療のための低電圧融合発生装置(LVFG)の使用のために提供される。上述したように、BNCTは、安定ホウ素同位元素10Bを運搬する薬を蓄積する、生じる腫瘍のための選択的な放射線治療である。BNCTは、腫瘍の治療のための従来の放射線療法に代わるものとして、臨床評価されてきた。薬運搬10Bおよび熱中性子の両方は、癌部位に送達されなければならない。
【0062】
図11は、本発明の一実施形態において固有のビーム成形装置(BSA)1105を有する低電圧融合発生装置(LVFG)1101の正面図である。
図12は、腫瘍のびまん性橋膠腫(DIPG)を治療するために適用されるBSA1105を有するLVFG1101を示す図である。
図13は、対象者の前立腺内の腫瘍を治療するために適用されるBSA1105を有するLVFG1101を示す図である。
【0063】
一実施形態において、
図11のLVFG1101は、詳細に上述したLVFG118と同一または非常に類似してもよいが、他の実施形態において異なってもよく、発生装置がBSA1105への入口で熱中性子束を生成するという一般要件を有する。
【0064】
この例では、コンパクトなBSA1105は、モデレータ1103のベース表面からの全長L
10および最大直径D5を有する細長い管構造である。この構造は、発明者によってコンパクト腫瘍学中性子源(Compact Oncologic Neutron Source)(CONS)と称されてきた。異なる実施形態において、L
10の長さは、約3インチから約10インチまででもよい。異なる実施形態において、長さは、装置の意図された使用に少なくとも部分的に依存しうる。例えば、
図12に描写された目的のために、対象者の口腔内に延在して、対象者ののどの後ろでPONSに近接して中性子を放射するために、L
10は、約6インチでもよい。
図12に描写された目的のための最大直径D5は、例えば、約1インチでもよいが、異なる対象物への適用のモデルのためにいくぶん変わってもよい。
【0065】
対象者の前立腺内の腫瘍を治療するために、
図13に示すように、L
10は6インチよりいくらか小さくてもよく、全径D5は、より大きくてもよく、例えば直径2インチまででもよい。いずれの場合でも、BSA1105は、比較的長く比較的狭い管構造である。
【0066】
BSA1105の幾何形状およびサイズは、健康な組織に損傷を与えうるより有害な放射成分の最小化を伴って、人体上の特定の点で中性子を位置決めし、集束させることを可能にする。この例では、LVFG1101は、約5.5cmのHDPEのプレモデレータ1103を通過した後、高速中性子および熱中性子の混合物を生成する。この例では、高速中性子は、プレモデレータ1103によって約50%の熱エネルギーおよび50%の高速中性子に減速される。硬X線もまた、典型的には生成される。高速中性子および硬X線は、役に立つn
th+10B反応に寄与せず、健康な組織に有害であるので、中性子ビームおよび収集された残留する熱中性子n
thから排除される必要がある。熱中性子だけは、ホウ素中性子の相互作用および癌細胞の破壊に効果的である。
図10Aおよび
図10Bに示される、ラジオグラフィでの使用のために設計されるBSA314による有害な成分のフィルタリングおよび熱中性子の収集は、まさにそれをする。
【0067】
BSA1105およびプレモデレータ1103は、材料選択および最適寸法によって癌部位で最適な中性子エネルギーのために調整されうる。プレモデレータスラブ1103は、サイズが低減され、人体と密接に接触できるように成形されうる。
図11において、BSAはLVFGとともにPONSにおける腫瘍を照射するために用いられて示されて、
図13において、BSAは、肛門において位置決めされ、前立腺における癌を照射する。両方の場合において、BSAは、手術なしでこれらの位置に配置される。
図11において、BSAは、口内に位置決めされて、口蓋でプレートの前方のPONSの方に向けられる。これは、手術なしでPONSにできるだけ近くで中性子放射をもたらし、中性子はPONSが位置する脊柱の上部に向けられる。
【0068】
図11に示すように、この例では、サファイア結晶1107およびビスマスフィルタ1106は、HDPE内の水素の熱中性子捕捉によって生成される高エネルギーガンマ線を低減するために位置決めされる。本実施形態において、サファイア結晶1107は、内側スリーブ1108内に適合する外径を有するシリンダであり、スリーブの材料は、ガンマバックグラウンドを減衰させるのに十分高い平均原子番号、Z、を有する。ビスマスフィルタ1106は、サファイア結晶の真上でスリーブ1108内に適合するサファイア結晶の直径のディスクである。この例では長さL
7=4cm程度であるファンネル1111は、所望の小さいビーム直径のための所望の最小開口D
4に熱中性子を向ける低減する開口を提供する。Tiターゲット1104から開口D
4、1112までの距離(L
6+L
7+L
8+L
9)を最小にすることは、重要である。これは、小さい開口D
4に送達される熱中性子収率を最大にしながら、ガンマおよび高速中性子のスプリアス放射を最小にする。これは、癌部位に対する最大ドーズのために必要な熱中性子の数を最大にする。
【0069】
図12および
図13に示される中性子およびガンマ線遮蔽1115は、癌ゾーンの外側での患者に対する放射線を最小にするために、プレモデレータスラブ1103の表面内におよびそれに沿って位置決めされる。この遮蔽は、さもなければプレモデレータスラブ1103から漏れる有害な放射線から対象者を保護する。遮蔽1115は、Gd、WもしくはB
4Cのいくつかの層、または、これらの材料の1つ以上の組み合わせとして作られてもよい。Gdは、熱中性子を停止させるのが得意であり、Wは、ガンマ線およびB
4Cの両方を停止させる。
【0070】
遮蔽1115の主な目的は、健康組織に対する有害な放射線を低減することであるが、トレードオフは、患者から中性子源までの距離L10+L6の増加のため、癌部位へ行く熱放射もまた低減することである。有害な放射線を最小にするために、ドーズ間の時間は、発生装置をオンおよびオフするが、依然として「殺す」ドーズを癌細胞に与えることによって制限される。ドーズが十分なことを確実にするために、遮蔽1115は薄くなる。
【0071】
内側スリーブ1108内に入れられたディスク1106および円筒状結晶1107に加えて、BSA1105は、外側スリーブ1109と、この例では高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量(UHMW)ポリエチレンでもよいファンネル1111上の外側のカバー1110とをさらに含む。これらの材料は、有害物質(例えばBiおよびPb)との患者の接触を最小にし、さらに、円錐レンズによって癌部位の方に向けられない中性子およびガンマを低減するように選択される。
【0072】
図示の位置にBSAを持ってくることによって、最小の健康な組織が照射される間、放射線は癌部位に位置決め可能である。加えて、LVFGは、リアクタまたは線形加速器よりはるかに小さく、説明されている適切なBSAによって、これらのデバイスと比較して、中性子ビームを癌部位に向け、位置決めするために容易に位置決め可能である。LVFGおよびその付随するBSAは、線形加速器またはリアクタとは異なる小さいガントリーを用いて回転されることおよび移動されることが可能であり、線形加速器またはリアクタは、はるかに大きく、ほとんどの場合、全く移動されることができず、患者は、装置に整列され、位置決めされなければならない。
【0073】
治療の選択肢の不足およびほとんどすべてのDIPG患者が診断後の2年以内に死ぬという事実は、DIPG調査に重要で差し迫った必要性を作る。残念なことに、DIPG治療の選択肢は、制限される。腫瘍細胞はすべて、呼吸のような機能のために重要である脳幹内の通常の細胞によって混在するので、腫瘍は外科的に除去されることができない。腫瘍に対するガンマ放射は、これらの腫瘍を縮小し、DIPGをもつ子供により長生きさせると証明された唯一の治療法であるが、放射線の量が癌細胞および健康な細胞の両方に悪影響を与えるので、放射線でさえ腫瘍を永久になくすことはできない。BNCTの使用は、ホウ素を選択的に吸収した癌細胞をターゲットにする。CONSを用いて癌部位をターゲットにすることは、健康組織に対する放射線をさらに低減し、一方BNCTは、癌細胞死をさらに増加させる。
【0074】
当業者は、この出願に描写および説明されている例が完全に例示的であり、本発明の範囲を制限するものでないということを理解する。寸法は、異なる用途で変わりうるし、材料および構造の詳細も同様に変わりうる。本発明の範囲は、請求項によってのみ制限される。
【符号の説明】
【0075】
100 加速チャンバ
102 ジュウテリウムイオン源
104 イオン
106、1104 Tiターゲット
108、1103 プレモデレータ
110 中性子
118 発生装置
124 ターボ真空ポンプ
138 抽出アイリス
160 マイクロ波源
172 マイクロ波スラグチューナ
174 プラズマイオンチャンバ
180 電子抑制側板
181 キャビティ
220、1107 結晶
222、1111 ファンネル
224 検出器アレイ
228 円錐開口
234 プレート
236 スリーブ
238 ナイフエッジ
248、1115 遮蔽
250 出口開口
1101 低電圧融合発生装置(LVFG)
1105 ビーム成形装置(BSA)
1106 ビスマスフィルタ
1108 内側スリーブ
1109 外側スリーブ
1110 カバー
【外国語明細書】