(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140258
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】グラビア印刷インキセット、印刷物、及び包装材料
(51)【国際特許分類】
C09D 11/037 20140101AFI20220915BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220915BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20220915BHJP
【FI】
C09D11/037
C09B67/20 F
C09D11/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021172067
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2021039597の分割
【原出願日】2021-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昌平
(72)【発明者】
【氏名】濱田 直樹
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AE04
4J039BE01
4J039CA04
4J039EA15
4J039EA16
4J039EA17
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】リサイクル可能なグラビア印刷インキセット、印刷物、及び包装材料の提供。
【解決手段】上記課題は、式(1)で表されるフタロシアニン顔料とバインダー樹脂とを含むシアンインキ、一般式(2)で表されるイソインドリン顔料とバインダー樹脂とを含むイエローインキ、及び一般式(3)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料とバインダー樹脂とを含むマゼンタインキ、を含むグラビア印刷インキセットによって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される顔料とバインダー樹脂とを含むシアンインキ、
下記一般式(2)で表される顔料とバインダー樹脂とを含むイエローインキ、及び
下記一般式(3)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料とバインダー樹脂とを含むマゼンタインキ、を含むグラビア印刷インキセット。
【化1】
【化2】
[一般式(2)中、X
1~X
4は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、又はチオアリール基を表す。X
5及びX
6は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。Aは、一般式(2-1)、又は(2-2)で表される基を表す。
一般式(2-1)中、Y
1は-O-又は-NH-を表し、X
7は水素原子、アルキル基、
又はアリール基を表す。
一般式(2-2)中、X
8及びX
9は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。]
【化3】
[一般式(3)中、X
10~X
17は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。
一般式(4)中、X
18~X
27は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、チオアルキル基、又は置換基を有してよいアリール基を表す。
一般式(5)中、Y
2は-O-又は-NR-を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は置換基を有してよいアリール基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(2)で表される顔料が、下記式(6)~(8)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料を含む、請求項1に記載のグラビア印刷インキセット。
【化4】
【請求項3】
前記一般式(3)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料が、一般式(3)で表される顔料を含む、請求項1又は2に記載のグラビア印刷インキセット。
【請求項4】
さらに、脱離性を有するクリアインキを含む、請求項1~3いずれか1項に記載のグラビア印刷インキセット。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載のグラビア印刷インキセットから形成された印刷層と、基材層とを含む印刷物。
【請求項6】
脱離性を有する層を含む、請求項5に記載の印刷物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の印刷物を用いてなる包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアンインキ、イエローインキ、及びマゼンタインキを含むグラビア印刷インキセット、並びに該インキセットを用いてなる印刷物、及び包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムを用いてなるパッケージ、プラスチックボトル等のプラスチック製品が海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は、海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり海水中に浮遊する。このようなマイクロプラスチックは、表面には細かな凹凸があり有害な化学物質を吸着しやすい性質を有している。また、マイクロプラスチック自体が、有害な化学物質を含む場合もある。
そして、海洋生物がマイクロプラスチックを餌と誤認して摂取することにより、マイクロプラスチックに由来する有害な化学物質が海洋生物の体内中に蓄積し、生態系に影響を及ぼすことが懸念される。さらに、人間が当該海洋生物を摂取することで、人間の体内にも有害な化学物質が蓄積することが懸念される。
【0003】
マイクロプラスチックを削減する試みとして、プラスチック製品のリサイクルが行われており、主なリサイクル方法として、(1)マテリアルリサイクル、(2)ケミカルリサイクル、(3)サーマルリサイクル等が挙げられる。
【0004】
上記(1)としては、例えば、プラスチック製品を樹脂毎に選別し、不純物を除去した後、粉砕、洗浄、溶融してペレットとし、そのペレットを使用して、新たな製品にする方法が挙げられる。ただし、樹脂を溶融する際には、通常200℃以上の熱がかかるため、プラスチック製品に、ハロゲン原子又は第一級芳香族アミンを多く含むインキが付着している場合、ハロゲンガスや酸性ガスである塩化水素等が発生し、設備を傷める恐れがある。また、第一級芳香族アミンが人体に影響を及ぼす可能性がある。
また、特許文献1には、アルカリ水溶液によって、プラスチックフィルムからインキ等を脱離する技術が開示されている。しかしながら、プラスチック製品からインキを脱離できたとしても、脱離したインキは、最終的に、焼却等の処理を行った上で廃棄する必要がある。したがって、インキがハロゲン原子又は第一級芳香族アミンを多く含むものであると、焼却時にハロゲンガスが発生して焼却炉を傷める恐れがあり、ダイオキシン等の有害ガスが発生する恐れがあり、第一級芳香族アミンが人体に影響を及ぼす可能性がある。また、焼却しても金属は燃えずに残るため、インキが土壌に影響を及ぼす重金属を含む場合、埋め立て処分を行うことが困難である。
【0005】
上記(2)及び(3)も同様に、プラスチック製品に付着したインキがハロゲン原子を含むと、ハロゲンガス又は塩化水素が発生して炉を傷める恐れがあり、ダイオキシン等の有害ガスが発生する恐れがある。また、(3)の場合、プラスチック製品に付着したインキが土壌に影響を及ぼす重金属を含む場合、焼却しても金属は燃えずに残るため、埋め立て処分を行うことが困難である。
【0006】
このように、安全且つ環境負荷を低減したプラスチック製品のリサイクルは困難であり、ハロゲン原子、第一級芳香族アミン、環境に影響を及ぼす重金属を含まないか、含んでいてもその量が極めて微量であり、安全衛生及び環境負荷低減に優れるプラスチック製品を形成可能なグラビア印刷物は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、リサイクル可能なグラビア印刷インキセット、印刷物、及び包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記式(1)で表される顔料とバインダー樹脂とを含むシアンインキ、
下記一般式(2)で表される顔料とバインダー樹脂とを含むイエローインキ、及び
下記一般式(3)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料とバインダー樹脂とを含むマゼンタインキ、を含むグラビア印刷インキセットに関する。
【化1】
【化2】
[一般式(2)中、X
1~X
4は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、又はチオアリール基を表す。X
5及びX
6は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。Aは、一般式(2-1)、又は(2-2)で表される基を表す。
一般式(2-1)中、Y
1は-O-又は-NH-を表し、X
7は水素原子、アルキル基、
又はアリール基を表す。
一般式(2-2)中、X
8及びX
9は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表
す。]
【化3】
[一般式(3)中、X
10~X
17は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。
一般式(4)中、X
18~X
27は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、チオアルキル基、又は置換基を有してよいアリール基を表す。
一般式(5)中、Y
2は-O-又は-NR-を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は置換基を有してよいアリール基を表す。]
【0010】
本発明は、前記一般式(2)で表される顔料が、下記式(6)~(8)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料を含む、上記グラビア印刷インキセットに関する。
【化4】
【0011】
本発明は、前記一般式(3)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料が、一般式(3)で表される顔料を含む、上記グラビア印刷インキセットに関する。
【0012】
本発明は、さらに、脱離性を有するクリアインキを含む、上記グラビア印刷インキセットに関する。
【0013】
本発明は、上記グラビア印刷インキセットから形成された印刷層と、基材層とを含む印刷物に関する。
【0014】
本発明は、脱離性を有する層を含む、上記印刷物に関する。
【0015】
本発明は、上記印刷物を用いてなる包装材料に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、リサイクル可能なグラビア印刷インキセット、印刷物、及び包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のグラビア印刷インキセットは、式(1)で表されるフタロシアニン顔料とバインダー樹脂とを含むシアンインキ、一般式(2)で表されるイソインドリン顔料とバインダー樹脂とを含むイエローインキ、及び一般式(3)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料とバインダー樹脂とを含むマゼンタインキを含むことを特徴とする。
シアンインキ、イエローインキ、マゼンタインキに含まれる顔料を、ハロゲン原子及び環境に影響を及ぼす重金属を含まず、第一級芳香族アミンを含有及び生成しないものに特定することで、三原色を形成するシアン、イエロー、マゼンタの3色全体において、ハロゲン原子、環境に影響を及ぼす重金属、及び第一級芳香族アミンの含有量を大幅に低減することができる。
ハロゲン原子の量を減らすことで、燃焼時にダイオキシンなどの有毒ガスが発生を低減でき、燃焼時の安全性を向上させることができる。また、塩化水素ガスなどの発生も低減できることで、焼却炉等への腐食を防ぐことができる。
環境に影響を及ぼす重金属の量を減らすことで、廃棄物の埋め立て処理などを行う際に、土壌、植物、ひいては生態系に与える影響を低減することができる。
第一級芳香族アミンの量を減らすことで、燃焼時の有毒ガス発生や、埋め立て時の健康を脅かす恐れのある化学物質の環境への流出量を低減することができる。
これにより、該インキセットを用いて得られる印刷物、及び包装材料は、上記成分の含有量が大幅に低減し、安全衛生、及び環境保全に優れるものとなる。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリルアミド」の表記は、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を表す。
【0019】
<グラビア印刷インキセット>
本発明で用いられるグラビア印刷インキセットは、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、その他必要に応じて顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などの補助剤を含むシアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキの3色インキを含むセットである。
本発明のグラビア印刷インキセットは、本発明の効果を損なわない範囲で、墨インキ、白インキ、特色インキ等のその他のインキを含んでもよい。
【0020】
<シアンインキ>
本発明におけるシアンインキは、下記式(1)で表されるフタロシアニン顔料(1)とバインダー樹脂とを含む。
【0021】
【0022】
本発明のインキセットは、シアンインキ中にフタロシアニン顔料(1)を含むことで、ハロゲン原子、第一級芳香族アミン、環境に影響を及ぼす重金属を含むことなく、トラッピング性に優れ、印刷インキとして必要な色相を有するグラビア印刷インキセットを提供することができる。
【0023】
式(1)で表される顔料(1)の製造方法は特に制限されず、例えば、特定の金属フタロシアニンを、酸に接触させることによる脱金属反応により合成することができる。
金属フタロシアニンは、例えば、リチウムフタロシアニン、ナトリウムフタロシアニン、カルシウムフタロシアニン、マグネシウムフタロシアニンが挙げられる。
酸は、例えば、硫酸、塩酸が挙げられる。
また、フタロニトリル、又は1,3-ジイミノイソインドリンなどから直接的に得る方法も挙げられる。
【0024】
金属フタロシアニンの製造方法については、公知のいかなる方法を用いてもよいが、例えば、フタル酸類、尿素、金属若しくは金属塩、及び触媒などを、有機溶剤の存在下若しくは非存在下で加熱することで製造することができる。
【0025】
顔料(1)は、合成後、溶剤の濾過や溶剤留去等の反応溶剤との分離処置を行った後、水や有機溶剤での洗浄を行うことが好ましい。洗浄の際に酸やアルカリを用いてもよい。更に精製が必要ならば、公知の精製技術である昇華、アシッドペースト、アシッドスラリー、再沈殿、再結晶、抽出等の操作によって不純物を除去してもよい。
【0026】
また、式(1)で表されるフタロシアニン顔料は、合成したものをそのまま使用してもよいが、所望の結晶型への転移や粒子サイズの制御、易分散性の付与等といった目的に応じて、顔料化の操作を行うことが好ましい。顔料化とは、粗大な結晶で粒子径分布も広いクルードと呼ばれる粗製顔料を、精製、結晶形や粒子径の制御、表面処理などを目的とする工程を経て、顔料として使用できる状態に加工する処理であって、例えば、ソルベント法、ソルベントミリング法、ソルベントソルトミリング法が挙げられる。顔料化処理の前処理として、さらにアシッドペースト、ドライミリング等の操作を行ってもよく、複数の顔料化法を併用してもよい。
【0027】
また、本発明におけるシアンインキは、本発明の効果を逸脱しない範囲で、必要に応じ
て、公知の着色剤を任意に組み合わせて含有してもよい。
シアンインキ中における、フタロシアニン顔料(1)を含む着色剤の含有率は、シアンインキの質量を基準として、好ましくは4~15質量%であり、より好ましくは5~12質量%の範囲である。
【0028】
<イエローインキ>
本発明におけるイエローインキは、下記一般式(2)で表されるイソインドリン顔料(2)とバインダー樹脂とを含む。
【0029】
【0030】
一般式(2)中、X1~X4は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、又はチオアリール基を表す。X5及びX6は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。Aは、一般式(2-1)又は(2-2)で表される基を表す。
一般式(2-1)中、Y1は-O-又は-NH-を表し、X7は水素原子、アルキル基
、又はアリール基を表す。
一般式(2-2)中、X8及びX9は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。
【0031】
本発明のインキセットは、イエローインキ中に上記イソインドリン顔料(2)を含むことで、ハロゲン原子、第一級芳香族アミン、環境に影響を及ぼす重金属を含むことなく、トラッピング性に優れ、印刷インキとして必要な色相を有するグラビア印刷インキセットを提供することができる。
【0032】
一般式(2)中、X1~X6におけるアルキル基(-R)は、炭化水素から水素原子を1つ除いた原子団を意味し、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれでもよい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4-デシルシクロヘキシル基が挙げられる。
【0033】
上記アルキル基は、2以上のアルキル基(但し、一方はアルキレン基となる)が連結基
を介して互いに結合した構造を有してもよい。連結基の具体例として、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)が挙げられる。すなわち、本明細書において、アルキル基は、例えば、「-R’-O-R」で表される基(R’は上記アルキル基から水素原子を1つ除いた原子団を表す)を含む。このような基の具体例として、-C2H4-O-C2H5が挙げられる。
【0034】
一般式(2)中、X1~X6におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1又は2である。
【0035】
一般式(2)中、X1~X4におけるアルコキシ基は、上述のアルキル基(-R)に酸素原子が結合した基(-OR)である。
【0036】
一般式(2)中、X1~X4おけるアリール基(-Ar)は、芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いた原子団を意味する。
アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クオーターフェニリル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、又はオバレニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基が挙げられる。
アリール基の炭素数は、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~20である。アリール基はフェニル基であることが最も好ましい。
【0037】
一般式(2)中、X1~X4におけるアリールオキシ基は、上述のアリール基(-Ar)に酸素原子が結合した基(-OAr)である。一実施形態において、アリールオキシ基は、フェノキシ基であることが好ましい。
【0038】
一般式(2)中、X1~X4おけるチオアルキル基は、上述のアルキル基に硫黄原子が結合した基(-SR)である。一実施形態において、チオアルキル基は、好ましくは、直鎖構造を有するアルキル基に硫黄原子が結合した基である。
また、チオアリール基は、上述のアリール基に硫黄原子が結合した基(-SAr)である。一実施形態において、チオアリール基は、チオフェニル基であることが好ましい。
【0039】
一実施形態において、一般式(2)におけるX1~X4は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基(アルキル基の炭素数は1~6)、フェニル基、フェノキシ基、チオアルキル基(アルキル基の炭素数は1~6)、及びチオフェニル基からなる群から選択されることが好ましい。
【0040】
一般式(2-1)中、Y1は、-O-又は-NH-を表し、好ましくは-NH-である。
X7において、アルキル基及びアリール基は、先の一般式(2)における記載を援用できる。耐熱性、耐候性、及び分散安定性の観点から、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1又は2である。
【0041】
一般式(2-2)のX8及びX9において、アルキル基は、先の説明と同義である。耐熱性、耐候性、及び分散安定性の観点から、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1又は2である。
【0042】
一般式(2)で表されるイソインドリン顔料(2)として好ましくは、下記式(6)~(24)で表される顔料(6)~(24)である。
【0043】
【0044】
【0045】
中でも、耐熱性、耐候性、及び分散安定性の観点から、より好ましくは、上記式(6)~(8)で表される顔料(6)~(8)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料を含むものである。
【0046】
イソインドリン顔料(2)は、微細化処理を行い微細粒子に加工してから使用することが好ましい。微細化処理は、例えば、アシッドペースティングに代表される溶解析出法やソルベントソルトミリング、ドライミリング等が挙げられる。微細化後の顔料粒子の平均一次粒子径は、好ましくは20~300nmであり、より好ましくは50~150nmである。なお、ソルベントソルトミリングの条件によっては、顔料粒子の粒子径が成長する場合もある。
【0047】
一般式(2)で表されるイソインドリン顔料(2)は、1種を単独で用いてもよく、2
種類以上を併用して用いてもよい。
本発明におけるイエローインキがイソインドリン顔料(2)を2種以上含む場合、その製造方法としては以下が挙げられる。
(I)2種以上を一度に合成する方法(共合成法)、(II)分散体の作成時に2種以上の
イソインドリン顔料を混合する方法、(III)2種以上のイソインドリン顔料を一緒にア
シッドペースティング法、アシッドスラリー法、ドライミリング法、ソルトミリング法、ソルベントソルトミリング法、ソルベント法等を用いて顔料化する方法、(IV)上記方法を組み合わせた方法。
中でも好ましくは、(I)共合成法、(III)一緒にアシッドペースティング法、ソルベントソルトミリング法を用いて顔料化する方法、(IV)(I)と(III)とを組み合わせた方法、のいずれかである。
【0048】
本発明におけるイエローインキは、本発明の効果を逸脱しない範囲で、必要に応じて、公知の着色剤を任意に組み合わせて含有してもよい。
イエローインキ中における、イソインドリン顔料(2)を含む着色剤の含有率は、イエローインキの質量を基準として、好ましくは4~15質量%であり、より好ましくは5~12質量%の範囲である。
【0049】
<マゼンタインキ>
本発明におけるマゼンタインキは、下記一般式(3)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料とバインダー樹脂とを含む。
【0050】
【0051】
一般式(3)中、X10~X17は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。
一般式(4)中、X18~X27は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、チオアルキル基、又は置換基を有してよいアリール基を表す。
一般式(5)中、Y2は-O-又は-NR-を表し、Rは、水素原子、アルキル基、又は置換基を有してよいアリール基を表す。
【0052】
本発明のインキセットは、マゼンタインキ中に、上記一般式(3)~(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の顔料を含むことで、ハロゲン原子、第一級芳香族アミン、環境に影響を及ぼす重金属を含むことなく、トラッピング性に優れ、印刷インキとして必要な色相を有するグラビア印刷インキセットを提供することができる。
【0053】
[一般式(3)で表される顔料]
一般式(3)で表される顔料(3)は、キナクリドン顔料である。
一般式(3)中、X10~X17におけるアルキル基(-R)は、炭化水素から水素原子を1つ除いた原子団を意味し、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれでもよい。
【0054】
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、トリフルオロメチル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4-デシルシクロヘキシル基等であってよい。
【0055】
上記アルキル基は、2以上のアルキル基(但し、一方はアルキレン基となる)が連結基を介して互いに結合した構造を有してもよい。連結基の具体例として、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)が挙げられる。すなわち、本明細書において、アルキル基は、例えば、「-R’-O-R」で表される基(R’は上記アルキル基から水素原子を1つ除いた原子団を表す)が挙げられる。このような基の具体例として、-C2H4-O-C2H5が挙げられる。
【0056】
X10~X17におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1又は2である。
【0057】
本発明に用いるキナクリドン顔料(3)は公知の方法で合成できる。工業的には、(1)サーマルプロセス、(2)PPAプロセス等が知られており、第一級芳香族アミンであるアニリン類の含有量が非常に少ないという観点から、好ましくは(1)サーマルプロセスである。
【0058】
一般式(3)で表される顔料(3)として好ましくは、下記式(25)~(29)で表される顔料(25)~(29)である。
【0059】
【0060】
[一般式(4)で表される顔料]
一般式(4)で表される顔料(4)は、ジケトピロロピロール(以下DPP)顔料である。
一般式(4)のX18~X27におけるアルキル基は、先の一般式(3)のX10~X17における記載を援用できる。X18~X27におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1又は2である。
【0061】
一般式(4)中、X18~X27におけるアルコキシ基は、上述のアルキル基(-R)に酸素原子が結合した基(-OR)である。
【0062】
一般式(4)中、X18~X27におけるチオアルキル基は、上述のアルキル基に硫黄原子が結合した基(-SR)である。一実施形態において、チオアルキル基は、好ましくは、直鎖構造を有するアルキル基に硫黄原子が結合した基である。
【0063】
一般式(4)中、X18~X27における置換基を有してよいアリール基(-Ar)は、芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いた原子団である。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クオーターフェニリル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセ
フェナントリレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、又はオバレニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基が挙げられる。
X18~X27におけるアリール基の炭素数は、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~20である。アリール基としてはフェニル基が最も好ましい。
【0064】
本発明に用いるジケトピロロピロール顔料(4)の製造方法は特に制限されないが、例えば、特開昭58-210084号公報が開示するように、対応する芳香族ニトリルとコハク酸ジエステルを有機溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0065】
一般式(4)で表される顔料(4)として好ましくは、下記式(30)~(41)で表される顔料(30)~(41)である。
【0066】
【0067】
[一般式(5)で表される顔料]
一般式(5)で表される顔料(5)は、ペリレン顔料である。
一般式(5)中、Y2の-NR-における、アルキル基は、先の一般式(3)のX10~X17における記載を援用できる。Y2の-NR-におけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり
、特に好ましくは1又は2である。
【0068】
一般式(5)中、Y2の-NR-における置換基を有してよいアリール基は、先の一般式(4)のX18~X27における記載を援用できる。Y2の-NR-におけるアリール基の炭素数は、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~20である。アリール基としてはフェニル基が最も好ましい。
【0069】
本発明に用いるペリレン顔料(5)は公知の方法で製造できる。例えば、W.Herbst,K.Hunger,Industrial Organic Pigments:Production,Properties,Applications,1993,p467~p480等が挙げられる。ペリレン顔料の製造方法は、この方法に限定されるものではない。
【0070】
一般式(5)で表される顔料(5)として好ましくは、下記式(42)~(53)で表される顔料(42)~(53)である。
【0071】
【0072】
本発明におけるマゼンタインキは、一般式(3)~(5)で表される顔料を、1種を単
独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。一般式(3)~(5)で表される顔料を、2種類以上を併用して使用する場合、固溶体にして用いてもよい。
【0073】
本発明におけるマゼンタインキは、本発明の効果を逸脱しない範囲で、必要に応じて、公知の着色剤を任意に組み合わせて含有してもよい。
マゼンタインキ中における、顔料(3)~(5)を含む着色剤の含有率は、マゼンタインキの質量を基準として、好ましくは4~15質量%であり、より好ましくは5~12質量%の範囲である。
【0074】
<バインダー樹脂>
本発明のグラビア印刷用インキセットに使用されるバインダー樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ブチラール、石油樹脂が挙げられる。
上記バインダー樹脂は、ハロゲン原子を含まないという観点から、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ゴム等を含まないことが好ましい。しかしながら、本発明の効果を逸脱しない範囲で含有することを除外するものではない。
これらのバインダー樹脂は、シアン、イエロー、マゼンタの各色において各々独立して選択され、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0075】
[ポリウレタン樹脂]
本発明におけるバインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂が好適に用いられる。
本明細書におけるポリウレタン樹脂は、ポリウレタンウレア樹脂を包含するものであり、従来公知の方法により得ることができる。
公知の方法としては、例えば、ポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、適切な溶剤中で、アミノ基を有する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤と反応させる二段法;あるいは、ポリプロピレングリコール、併用ポリオール、ジイソシアネート化合物、アミノ基を有する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤を、適切な溶剤中で一度に反応させる一段法;が挙げられる。
上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどのアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤;が挙げられる。
これらの方法の中でも、より均一なポリウレタン樹脂が得られるという観点から、好ましくは二段法である。ポリウレタン樹脂を二段法で製造する場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と、鎖伸長剤及び末端封鎖剤のアミノ基との当量比(イソシアネート基のモル/アミノ基のモル)が、1/1.3~1/0.9の範囲であることが好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3以上であると、未反応のまま残存する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤が低減し、ポリウレタン樹脂の黄変、及び印刷後臭気を抑制することができる。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/0.9以下であると、得られるポリウレタン樹脂の分子量が適切となり、印刷後に好適な膜強度をもたらす樹脂を得ることができる。
【0076】
上記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは、15,000~100,000の範囲である。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が15,000以上であると、インキの耐ブロッキング性、印刷被膜の強度、及び耐油性に優れ、100,000以下である
と、得られるインキの粘度が適切な範囲となり、印刷被膜の光沢に優れる。
【0077】
また、上記ポリウレタン樹脂は、印刷適性及びラミネート強度の観点からアミン価を有するものが好ましい。アミン価は0.5~20mgKOH/gであることが好ましく、1~15mgKOH/gであることがより好ましい。
【0078】
各色インキ中における、バインダー樹脂の含有率は、インキの質量を基準として、好ましくは4~25質量%であり、より好ましくは6~20質量%の範囲である。
【0079】
<インキの製造>
本発明におけるシアン、イエロー、マゼンタの各色インキは、例えば、所定の顔料を含む着色剤、及びバインダー樹脂を、有機溶剤中に溶解及び/又は分散することで製造できる。具体的には、顔料、バインダー樹脂溶液、必要に応じて顔料分散剤等を加え混合・分散して顔料分散体を製造し、次いで、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の添加剤等を配合することにより製造することができる。
【0080】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを調節することにより調整することができる。分散機としては、一般に使用される、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0081】
[有機溶剤]
本発明のグラビア印刷インキセットに使用してもよい有機溶剤は、公知の有機溶剤を使用でき、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等エステル系有機溶剤;n-プロパノール、イソプロパノール、エタノールメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系有機溶剤;エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;が挙げられる。これらの有機溶剤は、2種以上を混合して使用することが好ましい。
中でも、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合溶剤を使用することが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との質量比(エステル系有機溶剤の質量:アルコール系有機溶剤の質量)は、好ましくは95:5~40:60であり、より好ましくは90:10~50:50である。
各色インキ中における、有機溶剤の含有率は、インキの質量を基準として、好ましくは60~90質量%であり、より好ましくは70~85質量%の範囲である。
【0082】
各色インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ適度に分散させる観点から好ましくは10mPa・s以上であり、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から好ましくは1,000mPa・s以下である。尚、上記粘度は、トキメック社製B型粘度計で25℃において測定された値である。
【0083】
[ハロゲン量]
本発明のグラビア印刷インキセットは、3色全てがハロゲン原子を含まないか、含有していても極微量であるため、インキセットとしてのハロゲン量を大幅に低減することができる。
シアンインキのハロゲン量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは200
ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下である。
イエローインキのハロゲン量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下である。
マゼンタインキのハロゲン量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下である。
中でも、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクが含有するハロゲン量が、それぞれ100ppm以下であることが特に好ましい。各インキ中のハロゲン量を100ppm以下とすることで、インキセットとしてのハロゲン量が100ppm以下となり、より安全性に優れ、環境負荷を低減することができる。
【0084】
上記ハロゲン量は、JIS K0127(2013)に準拠した測定方法により求めることができる。この測定方法は、燃焼法にて前処理を行ったサンプルをイオンクロマトグラフ法で定量するものであり、本明細書においては、インキを乾固させ、その膜を削り取り、削り取った乾固物を燃焼法にて前処理を行い、得られたサンプルのハロゲン含有量をイオンクロマトグラフィーで定量することで求めることができる。
【0085】
[第一級芳香族アミン]
本発明のグラビア印刷インキセットは、3色全てが第一級芳香族アミンを含まないか、含有していても極微量であるため、インキセットとしての第一級芳香族アミン量を大幅に低減することができる。
本明細書における第一級芳香族アミンとは、アンモニアの水素原子を1つ、芳香族原子団で置換した化合物の総称である。
【0086】
シアンインキの第一級芳香族アミンの量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは10ppm以下であり、より好ましくは1ppm以下であり、さらに好ましくは500ppb(検出限界)以下である。
イエローインキの第一級芳香族アミンの量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは10ppm以下であり、より好ましくは1ppm以下であり、さらに好ましくは500ppb(検出限界)以下である。
マゼンタインキの第一級芳香族アミンの量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは10ppm以下であり、より好ましくは1ppm以下であり、さらに好ましくは500ppb(検出限界)以下である。
中でも、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクが含有する第一級芳香族アミンの量が、それぞれ500ppb以下であることが特に好ましい。各インキ中の第一級芳香族アミンの量を500ppb以下とすることで、インキセットとしての第一級芳香族アミンの量が500ppb以下となり、より安全性に優れ、環境負荷を低減することができる。
【0087】
[環境に影響を及ぼす重金属]
本発明のグラビア印刷インキセットは、3色全てが環境に影響を及ぼす重金属を含まないか、含有していても極微量であるため、インキセットとしての環境に影響を及ぼす重金属の量を大幅に低減することができる。
重金属とは比重4以上の金属のことであり、重金属の多くは、植物に対する毒性を有するか、人や環境に影響を与えるため、土壌中の許容量が規制されている。
例えば、銅や亜鉛は、植物が過剰摂取すると生育阻害が起こることが知られており、水銀、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素等は、人の健康への影響が認められている。
また、その他の重金属でも、植物が過剰摂取すると生育阻害やクロロシスが起きたり、土壌中の微生物への影響により有機物分解能が低下したりと、土壌への影響が大きく、プラスチック包装材料などに付着した印刷インキを燃焼し、埋め立てをしようとした場合の弊害となる。
【0088】
一方、重金属の中でも、金、プラチナ、チタン、バナジウム、ニオブ、ジルコニウム、タングステンは、土壌では安定で存在しているか、又は、植物等に対する毒性が無いことが知られている。また、鉄も重金属であるが、植物の成長に必要不可欠であり、微量であれば土壌に存在しても問題がないことが知られている。
【0089】
そのため、本明細書における環境に影響を及ぼす重金属とは、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ヒ素(As)、セレン(Se)、イットリウム(Y)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、すず(Sn)、水銀(Hg)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)を意味する。
【0090】
シアンインキの環境に影響を及ぼす重金属の量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下である。
イエローインキの環境に影響を及ぼす重金属の量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下である。
マゼンタインキの環境に影響を及ぼす重金属の量は、インキ不揮発分の質量を基準として、好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは10ppm以下である。
中でも、シアンインク、イエローインク、マゼンタインクが含有する環境に影響を及ぼす重金属の量が、それぞれ10ppm以下であることが特に好ましい。各インキ中の環境に影響を及ぼす重金属の量を10ppm以下とすることで、インキセットとしての環境に影響を及ぼす重金属の量が10ppm以下となり、より安全性に優れ、環境負荷を低減することができる。
【0091】
本明細書における、環境に影響を及ぼす重金属の量は、乾固させたインキをマイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル社製、ETHOS1)を使用して酸分解し、インキに含まれる金属を抽出した後、マルチ型ICP発光分光分析装置(Agilent社製、720-ES)を用いて抽出液に含まれる重金属量を測定することで、インキ不揮発分中の含有率を求めることができる。
【0092】
<脱離性を有するクリアインキ>
本発明のグラビア印刷インキセットは、さらに、脱離性を有するクリアインキを含んでもよい。「脱離性を有するクリアインキ」とは、該クリアインキにより形成される印刷層が、アルカリ水溶液で中和され、溶解又は膨潤することにより、基材層から剥離する性質を有するものを指す。
上記アルカリ水溶液に使用する塩基性化合物は、特に制限されず、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が挙げられる。より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
なお、本明細書において、アルカリ水溶液で中和し、溶解又は膨潤する工程を「アルカリ処理」と言う場合がある。また、アルカリ処理により脱離性を有する層を「脱離層」と言う場合がある。すなわち、脱離性を有するクリアインキにより形成される印刷層は、脱離性を有する層(脱離層)に該当する。
【0093】
[水酸基含有樹脂]
脱離性を有するクリアインキとして好ましくは、カルボキシ基含有樹脂を含むものであ
り、色インキより前に基材層上に印刷されるプライマー組成物として好適に用いられる。
前記カルボキシ基含有樹脂は、特に制限されず、従来公知の樹脂から選択することができ、単独又は2種以上を併用してもよい。カルボキシ基含有樹脂の樹脂骨格としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロースが挙げられ、ラミネート適性が良好であることから、好ましくはウレタン樹脂である。
【0094】
カルボキシ基含有ウレタン樹脂の水酸基価は、好ましくは1~35mgKOH/gであり、より好ましくは10~30mgKOH/gである。1mgKOH/g以上であると、アルカリ水溶液による脱離性が良好となるため好ましく、35mgKOH/g以下であると、基材密着性が良好となるため好ましい。
カルボキシ基含有ウレタン樹脂の酸価は、好ましくは15mgKOH/g以上であり、
より好ましくは15~70mgKOH/gであり、さらに好ましくは20~50mgKOH/gである。15mgKOH/g以上であると、アルカリ水溶液による脱離性が良好と
なるため好ましく、70mgKOH/gであると、基材密着性や包装材料とした際の耐レトルト性が良好となるため好ましい。
水酸基価及び酸価は、いずれもJISK0070に従って測定した値である。
【0095】
カルボキシ基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000であり、より好ましくは15,000~70,000であり、さらに好ましくは15,000~50,000である。
【0096】
カルボキシ基含有ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、6以下であることが好ましい。分子量分布が6以下である場合、過剰な高分子量成分及び、未反応成分、副反応成分その他の低分子量成分に起因する影響を回避することができ、脱離性、プライマー組成物の乾燥性、耐レトルト適性が良好となる。
また、分子量分布が小さい、即ち分子量分布がシャープであるほど、アルカリ水溶液による溶解・剥離作用が均一に起こり、脱離性が向上するため好ましい。分子量分布は、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは4以下である。また、分子量分布は1.5以上が好ましく、より好ましくは1.2以上である。
【0097】
上記カルボキシ基含有ウレタン樹脂はアミン価を有していてもよい。カルボキシ基含有ウレタン樹脂がアミン価を有する場合、アミン価は0.1~20mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~10mgKOH/gである。
【0098】
カルボキシ基含有ウレタン樹脂は特に制限されず、例えば、ポリオール、ヒドロキシ酸及びポリイソシアネートを反応させてなる樹脂であることが好ましい。ヒドロキシ酸を使用することで、ウレタン樹脂に酸価を付与することができ、脱離性を向上させることができる。より好ましくは、ポリオール、ヒドロキシ酸及びポリイソシアネートを反応させてなる樹脂に、さらに、ポリアミンを反応させてなる樹脂である。
【0099】
脱離性を有するクリアインキは、さらに硬化成分としてポリイソシアネートを含有してもよい。ポリイソシアネートは特に制限されず、従来公知のポリイソシアネートから選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
また、脱離性を有するクリアインキは、水酸基含有樹脂、ポリイソシアネート以外のその他成分を含有してもよく、前述のシアン、イエロー、マゼンタの各色インキと同様に、有機溶剤、ブロッキング剤等の添加剤を配合することができる。
【0100】
<印刷物>
本発明の印刷物は、上記グラビア印刷インキセットから形成された印刷層と、基材層とを有するものであり、本発明のインキセットにおけるシアンインキ、イエローインキ、マゼンタインキを基材上に印刷して得ることができる。
グラビア印刷の方式は特に制限されず、公知の方式から適宜選択できる。グラビア印刷の方式は、表刷り印刷と裏刷り印刷に大別され、例えば、表刷り印刷において基材が白色紙や白色フィルムである場合、基材上に、イエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキの順で印刷を行うことで、印刷物を得ることができる。
また、例えば、裏刷り印刷で基材が透明フィルムである場合、基材上に、ブラックインキ、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、白インキの順で印刷を行うことで、印刷物を得ることができる。
本発明のインキセットがクリアインキを含む場合、該クリアインキは、色インキより前に基材上に印刷されることが好ましい。
印刷層の厚みは、用途、使用するインキの種類や数、及び重ね印刷の回数によって適宜選択できるが、通常、0.5~10μmの範囲である。
【0101】
[基材層]
基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材;ポリカーボネート基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル基材;ポリスチレン基材;AS、ABS等のポリスチレン系樹脂;ポリアミド基材;ポリ塩化ビニル基材;ポリ塩化ビニリデン基材;セロハン基材;紙基材;アルミニウム箔基材;これらの複合材料からなる複合基材;が挙げられる。基材は、フィルム状、シート状のいずれであってもよい。中でも、ガラス転移点が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
【0102】
上記基材の表面は、金属酸化物等が蒸着処理されていてもよく、ポリビニルアルコール等がコート処理されていてもよい。このような表面処理された基材としては、例えば、酸化アルミニウムを表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AE、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXBが挙げられる。基材は、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理されていてもよく、コロナ処理又は低温プラズマ処理されていてもよい。
【0103】
[脱離性を有する層(脱離層)]
本発明の印刷物は、脱離性を有する層を含むことができる。ここで「脱離性を有する」とは、アルカリ水溶液で中和され、溶解又は膨潤することにより、基材層から剥離する性質を有する者を指す。脱離性を有する層は、前述するクリアインキから形成される印刷層であってもよいし、印刷層以外の層であってもよい。
脱離性を有する層の厚みは、特に制限されず、通常、0.5~5μmの範囲である。
【0104】
<包装材料>
本発明の包装材料は、少なくともその一部に上述の印刷物を用いてなるものであればよく形状は制限されない。包装材料としては、例えば、印刷物とシーラント基材とが、公知の接着剤からなる接着剤層を介して貼り合わされた構成が挙げられ、四方シール包装体、三方シール包装体、ピロー包装体、スティック袋、ガセット袋、角底袋、スタンディングパウチ、深絞り容器、真空包装体、スキンパック、チャック袋、スパウトパウチ、ひねり包装、包み包装、シュリンク包装、ラベル、液体紙パック、紙トレー等の様々な形状を有する包装体に好適に用いることができる。
【0105】
[接着剤層]
上記接着剤層の形成に使用できる接着成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレ
ート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系接着剤;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系接着剤;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂が挙げられる。
これらの接着成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、ポリウレタン系接着剤が好ましく用いられる。
【0106】
上記ポリウレタン系接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとを含む反応性接着剤であり、脱離性を有するものであってもよい。脱離性を有するポリウレタン接着剤としては、例えば、特開2020-084130号公報に記載のラミネート接着剤が挙げられる。
このような脱離性を有するポリウレタン接着剤は、酸価が、5~45mgKOH/gであることが好ましい。また、ポリウレタン系接着剤を構成するポリオールがポリエステルポリオールを含み、ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる一種を含むことが好ましい。
接着剤層の厚みは、通常1~6μmの範囲である。
【実施例0107】
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述における「部」及び「%」は、特に断りのない限り、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0108】
<アミン価の測定>
アミン価は、固形分試料1gを中和するのに要する酸と当量の水酸化カリウムのmg数であり、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって当量点までの滴定量を求めた後、滴定量から算出された値である。
【0109】
<分子量及び分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
【0110】
<酸価及び水酸基価>
酸価及び水酸基価は、JIS K 0070(1992)に記載の方法に従って測定した。
【0111】
<顔料の製造>
(合成例A-1)フタロシアニン化合物[1]の合成
1-ペンタノール400部に、o-フタロジニトリル100部、1,8-ジアザビシク
ロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン119部を混合して加熱撹拌し、6時間還流させた。反応終了後、得られた青色析出物を濾別し、メタノールで洗浄を行い、青色ケーキを得た。
次いで、得られたケーキを、水1000部に入れて撹拌し、98%硫酸31.58部を加えて、80℃で3時間加熱撹拌した。撹拌終了後、青色沈殿物を濾別し、水で洗浄し、80℃で乾燥後、粉砕し、青色粉体を得た。
次いで、テトラヒドロフラン1000部に青色粉体を加えて、80℃で2時間加熱撹拌した。撹拌終了後、青色沈殿物を濾別し、メタノールで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ表1に示すフタロシアニン化合物[1]95部を得た。
【0112】
(合成例A-2)フタロシアニン化合物[2]の合成
1-ペンタノール400部に、o-フタロジニトリル100部、塩化銅(I)19.3
部、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン119部を混合して加熱撹拌し、6時間還流させた。反応終了後、得られた青色析出物を濾別し、メタノールで洗浄を行い、青色ケーキを得た。
次いで、得られたケーキを、水1000部に入れて撹拌し、98%硫酸31.58部を
加えて、80℃で3時間加熱撹拌した。撹拌終了後、青色沈殿物を濾別し、水で洗浄し、80℃で乾燥後、粉砕し、青色粉体を得た。
次いで、98%硫酸800部に青色粉体を加えて、60℃で3時間加熱撹拌した。撹拌終了後、上記硫酸溶液を水4000部に撹拌しながら滴下し、青色沈殿物を得た。得られた青色沈殿物を濾別し、水で洗浄し、80℃で乾燥後、粉砕し、青色粉体を得た。
次いで、テトラヒドロフラン1000部に青色粉体を加えて撹拌し、2時間還流させた。撹拌終了後、青色沈殿物を濾別し、メタノールで洗浄を行い、減圧下で乾燥させ、表1に示すフタロシアニン化合物[2]110部を得た。
【0113】
(合成例A-3)イソインドリン化合物[1]の合成
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ、2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いて濾別した。さらに、濾物を水1600部に加え、40℃にて30分撹拌した。そのスラリーを濾別し不揮発分を得た。なお、原料の消失はUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィ Waters社製)にて確認した。
次いで、還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、上記不揮発分60部相当、水480部、80%酢酸162部を加え、撹拌した。一方で、ガラス製フラスコに、水461部、80%酢酸194部を加え、そこへバルビツール酸40.74部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を上記不揮発分の撹拌液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2400部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、表2に示すイソインドリン化合物[1]84.91部を得た。
【0114】
(合成例A-4)イソインドリン化合物[2]の合成
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、80%酢酸800部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸128部を加え、65℃にて撹拌し、バルビツール酸を溶解させた。一方で、ガラス製フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60.00部を加え、30℃にて撹拌した。この撹拌液を上記加熱溶解液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加
熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2000部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、表2に示すイソインドリン化合物[2]144.17部を得た。
【0115】
(合成例A-5)イソインドリン化合物[3]の合成
バルビツール酸40.74部の代わりに、1,3-ジメチルバルビツール酸49.65部を使用した以外は合成例A-3と同様に合成し、表2に示すイソインドリン化合物[3]91.96部を得た。
【0116】
(合成例A-6)イソインドリン化合物[4]の合成
バルビツール酸40.74部の代わりに、バルビツール酸35.77部及び1,3-ジメチルバルビツール酸6.31部を使用した以外は合成例A-3と同様に合成し、表2に示すイソインドリン化合物[4]85.97部を得た。
【0117】
(合成例A-7)アゾ化合物[Y1]の合成
3,3’-ジクロロベンジジン塩酸塩をその3倍モルの塩酸と2倍モルの亜硝酸ナトリウムを使って常法によりテトラゾ化し、10℃、0.125モル/lのテトラゾ水溶液を調製した。一方、アセトアセト-2,5-ジメトキシ-4-クロロアニリド54.3部を、水酸化ナトリウム14.4部を含む水溶液に溶解し、25℃、0.259モル/lのカップラー水溶液を調製した。また、酸性水溶液として80%酢酸30部とノニオン系界面活性剤カデナックスDMC-W(商品名、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)有効成分換算2.4部と水とからなる酢酸溶液500部を調製し、撹拌機を有する反応器に仕込んだ。この酢酸溶液にカップラー水溶液を19.3ml/分の流量で40分間注入してカップラーを沈殿させた。このカップラースラリー中に出口を持つ注入管をセットし、テトラゾ水溶液を18.4ml/分の流速で注入を開始した。反応液面でテトラゾが僅かに検出されるまで、約40分を要して注入した。カップリング反応率は91.8%であった。以後、70℃まで加熱後、濾過、精製し、85℃で乾燥して表3に示すアゾ化合物[Y1]73.1部を得た。
【0118】
(合成例A-8)アゾ化合物[Y2]の合成
1,2-ビス-(2-アミノフェノキシ)エタン345部を水4,500部に加え、35%塩酸654部を添加し3時間撹拌し、塩酸水溶液中に十分に分散させた。氷浴中で、分散液に氷を加えて0℃以下を確認した後、38%亜硝酸ナトリウム溶液423部を滴下してジアゾ化した。滴下終了後、ヨウ化カリウムでんぷん紙で亜硝酸イオンが過剰であることを確認しながら1時間撹拌した後、濾過してテトラゾ溶液を得た。テトラゾ溶液は、カップリング反応直前に、ヨウ化カリウムでんぷん紙で過剰な亜硝酸イオンが認められなくなるまでスルファミン酸を添加したうえで使用した。一方、5-アセトアセトアミド-ベンズイミダゾロン750部を水6,000部に添加し、10分間撹拌後、温度を20~25℃にした。29%水酸化ナトリウム水溶液880部を添加し、十分に溶解が確認されたのち後、濾過した。ろ液を水と氷を使用し、5℃で全体量12,000部に調製し、80%酢酸676部を20分かけて添加し、カップラースラリーを得た。ここにカップリング助剤として、ステアリン酸クロリドとタウリンとの縮合生成物10部を添加した。
前記テトラゾ溶液をカップラースラリーの表面下に18~22℃の条件下で5時間かけて注入した。その際、過剰のテトラゾ塩が検出しないよう注入速度を調整した。カップリング中、少量の2N水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH値を常に6.0に保った。
カップリング終了後は90℃まで加熱し、30分以上保持した後、70℃まで冷却したうえでろ過、水洗しプレスケーキを得た。プレスケーキを水とかき混ぜてペーストにし、35%イソブタノール水混合溶液中の顔料固形分が4%懸濁液になるように、水とイソブ
タノールを加えた。
この懸濁液を撹拌式オートクレーブ中で1時間以内に150℃に加熱し、3時間この温度で保った。約80℃に冷却後、水蒸気の導入によりイソブタノールを共沸的に留出した。水性顔料懸濁液を吸引ろ過し、少しばかりの水で洗浄し、真空乾燥器中70℃で乾燥した後粉砕し、表3に示すアゾ化合物[Y2]998部を得た。
【0119】
(合成例A-9)キナクリドン化合物[1]の合成
よく乾燥した1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジ(カルボン酸メチルエステル)45.6部(0.2モル)、アニリン46.57部(0.5モル)、メタノール500部、35%塩酸4.65部(0.045モル)を1リットルの耐圧ガラスオートクレーブに計り入れ、密封した後窒素ガスで十分に反応容器内の酸素を置換してからゲージ圧で0kg/cm2に設定し、強力に撹拌しながら室温から100℃まで15分で昇温した後3時間反応を行った。反応中の反応容器の圧力は最高で3.8kg/cm2であった。反応後30℃以下に冷却してから大気圧に開放して、10%水酸化ナトリウム水溶液18部を投入して10分間撹拌後生成物を濾過した。濾過したケーキは60℃に加熱したメタノールで十分に洗浄した。生成した2,5-ジアニリノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステルの収量は75.07部で理論収量の99.3%であった。また純度は99.5%であった。
次いで、上記で得られた2,5-ジアニリノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステル30部、ジメチルナフタレン異性体混合物150部を、200ミリリットルの底部に出口バルブを有するフラスコ中、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、120~170℃に加熱した。一方、ジメチルナフタレン異性体混合物150部を、500ミリリットルフラスコ中、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら280℃以上に加熱した。そこに、上記の熱混合液を20~40分掛けて導入した後、混合物を280~283℃(還流)で30分保持した。沸騰したジメチルナフタレン異性体混合物に、120~170℃の2,5-ジアニリノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステルとジメチルナフタレン異性体混合物を導入した瞬間から、メタノールの発生を伴いながら6,13-ジヒドロキナクリドンの生成反応が開始し、メタノールの発生は283℃での還流開始直後には殆どなくなった。100℃に冷却後、窒素ガス雰囲気を解除し、内容物を濾過し、熱メタノール500部で洗浄し、乾燥して6,13-ジヒドロキナクリドン24.47部(理論量の98.2%)を得た。IR及び吸光度により純度は99%以上であった。
上記で得られた6,13-ジヒドロキナクリドン10部とメタノール80部を還流器付200ミリリットルフラスコに仕込み撹拌した。50%水酸化ナトリウム水溶液12部を加え40℃で30分撹拌し、次いで10%硫酸26部を滴下、加水分解した後、速やかにm-ニトロベンゼンスルホン酸ソーダ10部を加え、すぐに50%水酸化ナトリウム水溶液3部を加えたのち4時間リフラックスした。混合物をろ過、水洗、乾燥、粉砕を経て、表4に示すキナクリドン化合物[1](無置換キナクリドン)9.82部を得た。
【0120】
(合成例A-10)キナクリドン化合物[2]の合成
よく乾燥した1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジ(カルボン酸メチルエステル)45.60部(0.2モル)とp-トルイジン53.5部(0.5モル)、メタノール500部、35%塩酸4.65部(0.045モル)を1リットルの耐圧ガラスオートクレーブに計り入れ、密封した後窒素ガスで十分に反応容器内の酸素を置換してからゲージ圧で0kg/cm2に設定し、強力に撹拌しながら室温から100℃まで15分で昇温した後3時間反応を行なった。反応中の反応容器の圧力は最高で3.8kg/cm2であった。反応後30℃以下に冷却してから大気圧に開放して、10%水酸化ナトリウム水溶液18部を投入して10分間撹拌後生成物を濾過した。濾過したケーキは60℃に加熱したメタノールで十分に洗浄した。生成した2,5-ジ-p-トルイジノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステルの収量は75.07部で理論収量の99.3%であった。また純度は99.5%であった。
次いで、上記で得られた2,5-ジ-p-トルイジノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステル30部、ジメチルナフタレン異性体混合物150部を、200ミリリットルの底部に出口バルブを有するフラスコ中、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、120~170℃に加熱した。一方、ジメチルナフタレン異性体混合物150部を、500ミリリットルフラスコ中、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら280℃以上に加熱した。そこに、上記の熱混合液を20~40分掛けて導入した後、混合物を280~283℃(還流)で30分保持した。沸騰したジメチルナフタレン異性体混合物に、120~170℃の2,5-ジアニリノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステルとジメチルナフタレン異性体混合物を導入した瞬間から、メタノールの発生を伴いながら2,9-ジメチル-6,13-ジヒドロキナクリドンの生成反応が開始し、メタノールの発生は283℃での還流開始直後には殆どなくなった。100℃に冷却後、窒素ガス雰囲気を解除し、内容物を濾過し、熱メタノール500部で洗浄し、乾燥して2,9-ジメチル-6,13-ジヒドロキナクリドン24.44部(理論量の96.71%)を得た。
上記で得られた2,9-ジメチル-6,13-ジヒドロキナクリドン10部とメタノール80部を還流器付200ミリリットルフラスコに仕込み撹拌した。50%水酸化ナトリウム水溶液12部を加え40℃で30分撹拌し、次いで10%硫酸26部を滴下、加水分解した後、速やかにm-ニトロベンゼンスルホン酸ソーダ10部を加え、すぐに50%水酸化ナトリウム水溶液3部を加えたのち4時間リフラックスした。混合物をろ過、水洗、乾燥、粉砕を経て粗製2,9-ジメチル-キナクリドン9.60部を得た。
次いで、氷浴で10℃以下に冷やし、フラスコ中で撹拌された98%硫酸90部に上記で得られた粗製2,9-ジメチル-キナクリドン9部を、温度が30℃以上にならないよう注意しながら添加した。全量加えた後、30℃以下で1時間撹拌した。撹拌された10℃の水1000部に対して、上記硫酸溶液を突沸に注意しながら滴下した。滴下終了後ろ過、中性になるまで水洗を行い、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキに水を添加し、水酸化ナトリウムによってpHを9.0に調整した後、ステアリン酸クロリドとタウリンとの縮合生成物を0.09部、35%イソブタノール水混合溶液中の顔料固形分が4%懸濁液になるように水とイソブタノールを加えた。この懸濁液を2時間還流させ、その後液温が99℃になるまでイソブタノールを留去した。70℃まで冷却後、ろ過、60℃温水洗、乾燥、粉砕を経て、表4に示すキナクリドン化合物[2]8.9部を得た。
【0121】
(合成例A-11)キナクリドン化合物[3]の合成
氷浴で10℃以下に冷やし、フラスコ中で撹拌された98%硫酸90部に、合成例A-10で得られた粗製2,9-ジメチル-キナクリドン6.3部及び合成例A-9で得られたキナクリドン化合物[1]2.7部を、温度が30℃以上にならないよう注意しながら添加した。全量加えた後、30℃以下にて1時間撹拌した。撹拌された10℃の水1000部に対して、上記硫酸溶液を突沸に注意しながら滴下した。滴下終了後ろ過、中性になるまで水洗を行い、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキに水を添加し水酸化ナトリウムによってpHを9.0に調整した後、ステアリン酸クロリドとタウリンとの縮合生成物を0.09部、35%イソブタノール水混合溶液中の顔料固形分が4%懸濁液になるように水とイソブタノールを加えた。この懸濁液を2時間還流させ、その後液温が99℃になるまでイソブタノールを留去した。70℃まで冷却後、ろ過、60℃温水洗、乾燥、粉砕を経て、表4に示すキナクリドン化合物[3]8.9部を得た。
【0122】
(合成例A-12)DPP化合物[1]の合成
還流管を付けたステンレス製反応容器に、窒素雰囲気下、モレキュラシーブで脱水したtert-アミルアルコール180部、及びナトリウム-tert-アミルアルコキシド147部を加え、撹拌しながら100℃に加熱し、アルコラート溶液を調製した。一方で、ガラス製フラスコに、コハク酸ジイソプロピル90部、ベンゾニトリル91.8部を加え、撹拌しながら90℃に加熱して溶解させ、これらの混合物の溶液を調製した。この混合物の加熱溶液を、100℃に加熱した上記アルコラート溶液中に、激しく撹拌しながら
、2時間かけて一定の速度でゆっくり滴下した。滴下終了後、90℃にて2時間、加熱撹拌を継続し、ジケトピロロピロール系化合物のアルカリ金属塩を得た。さらに、ガラス製ジャケット付き反応容器に、メタノール600部、水600部、及び酢酸358部を加え、-10℃に冷却した。この冷却した混合物を、高速撹拌ディスパーサーを用いて、4000rpmで回転させながら、この中に、75℃まで冷却した先に得られたジケトピロロピロール系化合物のアルカリ金属塩溶液を、少量ずつ添加した。この際、メタノール、酢酸、及び水からなる混合物の温度が常に-5℃以下の温度を保つように、冷却しながら、かつ、75℃のジケトピロロピロール系化合物のアルカリ金属塩の添加する速度を調整しながら、およそ120分にわたって少量ずつ添加した。アルカリ金属塩添加後、赤色の結晶が析出し、赤色の懸濁液が生成した。続いて、得られた赤色の懸濁液を限外濾過装置でメタノールスラリーに置換して40℃で2時間保持したのち、水洗、濾別し、ケーキを80℃にて24時間乾燥させ、粉砕することにより、表4に示すDPP化合物[1]114.2部を得た。
【0123】
(合成例A-13)DPP化合物[2]の合成
還流管を付けたステンレス製反応容器に、窒素雰囲気下、モレキュラシーブで脱水したtert-アミルアルコール180部、及びナトリウム-tert-アミルアルコキシド147部を加え、撹拌しながら100℃に加熱し、アルコラート溶液を調製した。一方で、ガラス製フラスコに、コハク酸ジイソプロピル90部、4-シアノビフェニル159.5部を加え、撹拌しながら90℃に加熱して溶解させ、これらの混合物の溶液を調製した。この混合物の加熱溶液を、100℃に加熱した上記アルコラート溶液中に、激しく撹拌しながら、2時間かけて一定の速度でゆっくり滴下した。滴下終了後、90℃にて2時間、加熱撹拌を継続し、ジケトピロロピロール系化合物のアルカリ金属塩を得た。さらに、ガラス製ジャケット付き反応容器に、メタノール600部、水600部、及び酢酸358部を加え、-10℃に冷却した。この冷却した混合物を、高速撹拌ディスパーサーを用いて、4000rpmで回転させながら、この中に、75℃まで冷却した先に得られたジケトピロロピロール系化合物のアルカリ金属塩溶液を、少量ずつ添加した。この際、メタノール、酢酸、及び水からなる混合物の温度が常に-5℃以下の温度を保つように、冷却しながら、かつ、75℃のジケトピロロピロール系化合物のアルカリ金属塩の添加する速度を調整しながら、およそ120分にわたって少量ずつ添加した。アルカリ金属塩添加後、赤色の結晶が析出し、赤色の懸濁液が生成した。続いて、得られた赤色の懸濁液を限外濾過装置でメタノールスラリーに置換して40℃で2時間保持したのち、水洗、濾別し、ケーキを80℃にて24時間乾燥させ、粉砕することにより、表4に示すDPP化合物[2]174.5部を得た。
【0124】
(合成例A-14)キナクリドン/DPP化合物の合成
遮光された容器中で撹拌しているN-メチル-2-ピロリドン100部に対し、合成例A-9で得られたキナクリドン化合物[1](無置換キナクリドン)7部及び合成例A-12で得られたDPP化合物[1](無置換ジケトピロロピロール顔料)3部を、粉が舞わないよう注意しながら添加した。十分に分散していることを確認した後、tert-ブトキシカリウム3.8部を徐々に添加した。溶解を確認した後、20℃以下で1時間撹拌した。撹拌した20℃の水1000部に80%酢酸5部を加えた溶液に、上記溶解液をゆっくりと注ぎ入れた後、1時間撹拌し、ろ過、水洗、乾燥、粉砕を経て、表5に示す無置換キナクリドンと無置換ジケトピロロピロールの固溶体顔料(キナクリドン/DPP化合物)9.6部を得た。
【0125】
(合成例A-15)ペリレン化合物[1]の合成
還流管を付けたステンレス製反応容器に、窒素雰囲気下、ジエチレングリコールジメチルエーテル500部、カリウム-tert-ブトキシド170.7部、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)251.9部を加え、130℃で1時間
加熱撹拌した。次いで、1,8-ナフタルイミド100部を加え、さらに130℃で3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾別し、ジエチレングリコールジメチルエーテル300部で洗浄し、減圧下で12時間乾燥させた。得られた固体を、水200部及びメタノール200部でリスラリーした後濾別、水、アセトン、ジクロロメタンで洗浄後、減圧下120℃で8時間乾燥させ、粉砕することにより、表5に示すペリレン化合物[1]188.1部を得た。
【0126】
(合成例A-16)ペリレン化合物[2]の合成
還流管を付けたステンレス製反応容器に、窒素雰囲気下、ジエチレングリコールジメチルエーテル500部、カリウム-tert-ブトキシド159.4部、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)235.2部を加え、130℃で1時間加熱撹拌した。次いで、N-メチル-1,8-ナフタルイミド100部を加え、さらに130℃で3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却後、析出物を濾別し、ジエチレングリコールジメチルエーテル300部で洗浄し、減圧下で12時間乾燥させた。得られた固体を、水200部及びメタノール200部でリスラリーした後濾別、水、アセトン、ジクロロメタンで洗浄後、減圧下120℃で8時間乾燥させ、粉砕することにより、表5に示すペリレン化合物[2]188.2部を得た。
【0127】
(合成例A-17)アゾ化合物[R1]の合成
2,5-ジクロロアニリン100部を水1375部中に加えて2時間撹拌した後、35%塩酸を加えてさらに1時間撹拌し、氷500部を加えて5℃以下まで冷却した。次いで、亜硝酸ナトリウム50.3部を水150部に溶解させた溶液を加え、5℃以下を保持して2時間撹拌した。次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液794部、80%酢酸696部、及び氷587部を混合撹拌したバッファー液を加え、ジアゾ溶液を調製した。一方、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸117.3部を、水980部及び25%水酸化ナトリウム水溶液696部を用いて溶解させ、カップラー溶液を調製した。撹拌装置を備えたバッチ式単一反応槽にジアゾ溶液を仕込み、撹拌しながらカップラー溶液を40分かけて注入した。得られた赤色スラリーを60℃で1時間撹拌し、濾別、水洗し、80℃で16時間乾燥させ、粉砕することにより、アゾ化合物[R1’]210.0部を得た。
次に、2-ニトロトルエン1050部中にアゾ化合物[R1’]210.0部及びN,N-ジメチルホルムアミド2部を加え、室温で撹拌した。次いで、塩化チオニル96.8部を加え、懸濁液を120℃で4時間加熱撹拌した。過剰な塩化チオニルを除去するために、80℃、減圧下で4時間留去し、アゾ化合物[R1’]の酸塩化物を得た。一方、2-クロロ-1,4-フェニレンジアミン41.6部を2-ニトロトルエン991部に加え
、90℃で2時間撹拌し溶解させた。得られた溶液を75℃に冷却し、上記で得られたアゾ化合物[R1’]の酸塩化物を加え、90℃で1時間、100℃で1時間、120℃で2時間撹拌し、塩酸ガスが放出されなくなったことを確認し100℃に冷却した。スラリーを濾別し、2-ニトロトルエン1800部、メタノール1800部、3600部の水で洗浄し、減圧下120℃で8時間乾燥させ、粉砕することにより、表5に示すアゾ化合物[R1]232.3部を得た。
【0128】
(合成例A-18)アゾ化合物[R2]の合成
3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド100部を水1375部中に加えて2時間撹拌した後、35%塩酸を加えてさらに1時間撹拌し、氷500部を加えて5℃以下まで冷却した。次いで、亜硝酸ナトリウム33.6部を水100部に溶解させた溶液を加え、5℃以下を保持して2時間撹拌した。次いで、25%水酸化ナトリウム水溶液531部、80%酢酸465部、及び氷587部を混合撹拌したバッファー液を加え、ジアゾ溶液を調製した。一方、N-(4-クロロ-2,5-ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボキシアミド(ナフトールAS-LC)149.2部を、メタノール980部及び25%水酸化ナトリウム水溶液466部を用いて溶解させ、カップラー溶液を
調製した。撹拌装置を備えたバッチ式単一反応槽にジアゾ溶液を仕込み、撹拌しながらカップラー溶液を40分かけて注入した。得られた赤色スラリーを60℃で1時間撹拌し、濾別、水洗し、80℃で16時間乾燥させ、粉砕することにより、表5に示すアゾ化合物[R2]231.7部を得た。
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
<ポリウレタン樹脂の製造>
(ポリウレタン樹脂溶液[1]の製造)
アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる数平均分子量2,000のポリエステルジオール54.719部、イソホロンジイソシアネート3.989部、酢酸n-プロピル10.0部を窒素気流下に85℃で3時間反応させ、酢酸n-プロピ
ル10.0部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液78.718部を得た。次いでイソホロンジアミン1.031部、ジ-n-ブチルアミン0.261部、酢酸n-プロピル30.4部及びイソプロピルアルコール19.6部を混合したものに、
得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液78.718部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量60,000、アミン価3.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂溶液[1]を得た。
【0135】
(ポリウレタン樹脂溶液[2]の製造)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPA(数平均分子量2,000のポリ(プロピレングリコール)アジペートジオール)を161.9部、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)27.7部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)96.4部、メチルエチルケトン(MEK)200部を仕込み、90℃で5時間反応させて末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。得られた末端イソシアネート基ウレタンプレポリマー樹脂溶液に対し、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(AEA)13.6部、エタノールアミン(MEA)0.5部、イソプロピルアルコール(IPA)350部を混合したものを室温で60分かけて滴下し、更に70℃で3時間反応させた。更にMEK150部を用いて固形分を調整し、固形分30%、重量平均分子量35,000、Mw/Mn=3.0、酸価35.0mgKOH/g、水酸基価25.7mgKOH/gのポリウレタン樹脂溶液[2]を得た。
【0136】
<グラビア印刷インキの製造>
(製造例B-1)
フタロシアニン化合物[1]6.5部、ポリウレタン樹脂溶液[1]34.5部、N-プロピルアセテート20部、イソプロピルアルコール5部を撹拌混合し、サンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液[1]20部、N-プロピルアセテート11部、イソプロピルアルコール3部を添加し、シアンインキ[1]を得た。
【0137】
(製造例B-2~B-18)
フタロシアニン化合物[1]6.5部を、表6に示した化合物及び表6記載の量に変更した以外は製造例B-1と同様にして、表6記載のインキを得た。
【0138】
<グラビア印刷インキの評価>
得られたインキについて、固形分中の、ハロゲン量、第一級芳香族アミンの量、環境に影響を及ぼす重金属の量を以下のとおり測定した。結果を表6に示す。
【0139】
[ハロゲン量の測定方法]
透明基板上に各インキを乾燥後の厚みが2.0μmになるように塗布した。80℃で乾燥させた後、0.5g削り取った。削り取った膜を燃焼法にて前処理を行った後イオンクロマトグラフィーで定量することで、各インキ固形分中のハロゲン量(ppm)を求めた。
【0140】
[第一級芳香族アミン量の測定方法]
固形分が2gとなるように秤量した各インキを、DMFで50mlに定容し、超音波バスで2時間分散した。作製した分散液を0.2μmのフィルターで濾過し、DMF溶液を得た。次いで、そのDMF溶液1mlに、9mlの4%アンモニア/メタノール溶液を混合し、再び0.2μmのフィルターで濾過した。この溶液を使用し、AP(89)1試験法(ETAD212)に記載の方法により、HPLC測定を行った。混入しうる第一級芳香族アミンの検量線を作製し、インキ固形分中の第一級芳香族アミン量を求めた。検出限界は500ppb(0.5ppm)であり、検出できなかったものは、0.5ppm未満(<0.5)と表記した。
【0141】
[環境に影響を及ぼす重金属の量]
各インキを80℃で乾燥させ、乾固させた。乾固物をマイクロ波試料前処理装置(マイルストーンゼネラル社製、ETHOS1)を使用して酸分解し、乾固物に含まれる金属を抽出した。マルチ型ICP発光分光分析装置(Agilent社製、720-ES)を用いて抽出液に含まれる重金属量を測定し、インキ固形分中の環境に影響を及ぼす重金属の量(ppm)を算出した。重金属が検出されなかったものは、N.D.と表記した。
【0142】
【0143】
<インキセットの評価>
[実施例A-1~A-32、比較例A-1~A-17]
得られた各インキを表7に記載のとおり組み合わせて、インキセット1~49とした。
得られたインキセットについて、以下の方法でトラッピング性、ガマットを評価した。結果を表7に示す。
【0144】
[トラッピング性]
(シアンインキ/マゼンタインキ)
シアンインキ及びマゼンタインキを、各々、混合溶剤1(メチルエチルケトン:N-プロピルアセテート:イソプロパノール=40:40:20)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
厚み12μmのコロナ放電処理ポリエステル(PET)フィルム(東洋紡社製 E-5100)のコロナ放電処理面に、シアン、マゼンタの順で重ね印刷し、印刷物を得た。
印刷条件は、温度25℃、湿度60%、印刷速度100m/分、印刷距離4000mとした。シアンインキはヘリオ175線グラデーション版(版式コンプレスト、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用い、マゼンタインキはヘリオ175線グラデーション版(版式エロンゲート、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用いた。
【0145】
(シアンインキ/イエローインキ)
シアンインキ及びイエローインキを、各々、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
厚み12μmのコロナ放電処理ポリエステルフィルム(東洋紡社製 E-5100)のコロナ放電処理面に、シアン、イエローの順で重ね印刷し、印刷物を得た。
印刷条件は、温度25℃、湿度60%、印刷速度100m/分、印刷距離4000mとした。シアンインキはヘリオ175線グラデーション版(版式コンプレスト、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用い、イエローインキはヘリオ175線グラデーション版(版式エロンゲート、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用いた。
【0146】
(イエローインキ/マゼンタインキ)
イエローインキ及びマゼンタインキを、各々、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
厚み12μmのコロナ放電処理ポリエステルフィルム(東洋紡社製 E-5100)のコロナ放電処理面に、イエロー、マゼンタの順で重ね印刷し、印刷物を得た。
印刷条件は、温度25℃、湿度60%、印刷速度100m/分、印刷距離4000mとした。イエローインキはヘリオ175線グラデーション版(版式エロンゲート、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用い、マゼンタインキはヘリオ175線グラデーション版(版式エロンゲート、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用いた。
【0147】
得られた印刷物のグラデーション重ね印刷部分について、キーエンス社製マイクロスコープ(VHX-5000)を用いてトラッピング性を観察し、以下の基準で評価した。
○:印刷ムラが版深70%未満で発生する(良好)
△:印刷ムラが版深70%以上、80%未満で発生する(使用可能)
×:印刷ムラが版深80%以上で発生する、又は、重ねのインキがすべて網点となり、濡れ広がっていない(使用不可)
【0148】
[ガマット評価]
シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキを、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。希釈した各インキを用いて、シアン、マゼンタ、イエローの刷り順で印刷し、単色ベタ部(シアン、マゼンタ、イエロー)、単色ベタ刷り重ね部(シアン×マゼンタ、シアン×イエロー、イエロー×マゼンタ)を有する印刷物を得た。印刷条件を以下に示す。
【0149】
(印刷条件)
印刷機:富士機械5色機
シアン版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、エロンゲート
マゼンタ版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、コンプレスト
イエロー版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、コンプレスト
印刷速度:150m/分
基材:コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績(株)製パイレンP-2161、20μm)
乾燥温度:50℃
【0150】
得られた印刷物について、グレタグマクベスD196を用いて印刷物の単色ベタ部(イエロー、マゼンタ、シアン)の濃度値を測定した。また、測定機としてgretagmacbeth製SpectroEyeを使用し、D50光源、2度観測視野、ホワイトバック(標準白色板使用)、フィルター類未使用の条件で、単色ベタ部及び重ね刷り部を測色した。
a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(イエロー、マゼンタ、シアン)、及び、単色ベタ刷り重ね部(シアン×マゼンタ、シアン×イエロー、イエロー×マゼンタ)計6色のa*対b*の値を、プロットした六角形を作成した。比較例A-5の面積を100%とした場合の面積比を求め、その面積比から以下の基準で評価した。-は未評価であることを表す。
○:面積比が90%以上である(良好)
△:面積比が85%以上、90%未満である(使用可能)
×:面積比が85%未満である(使用不可)
【0151】
【0152】
表7によれば、特定の顔料を含む3色インキの組み合わせである本発明のグラビア印刷インキセットは、各インキがいずれもハロゲン原子、第一級芳香族アミン、及び環境に影響を及ぼす重金属を含まないか、含んでいてもその量が極めて微量であり、安全衛生と環境保全とに優れていた。また、本発明のグラビア印刷インキセットは、各々の色のトラッピング性が良好であった。これは、本願特定の顔料の組み合わせによる効果であると推測している。
中でも、式(1)で表されるフタロシアニン顔料を含むシアンインキ、式(6)~(8)で表されるイソインドリン顔料を含むイエローインキ、式(16)、(17)で表されるキナクリドン顔料を含むマゼンタインキ、を含むグラビア印刷インキセット(実施例A-1~A-3、A-6、A-9~A-11、A-14、A-17~A-19、A-22、A-25~A-27、A-30)は、ガマットが非常に広く、色再現性に優れていた。
【0153】
一方、比較例A-1~A-17は、ハロゲン原子、第一級芳香族アミン、及び環境に影響を及ぼす重金属のいずれかの含有量が多いインキを含むため、本願の課題を解決できない。
【0154】
<脱離性を有するクリアインキの製造>
(クリアインキ[1]の作製)
ポリウレタン樹脂溶液[2](固形分30%)87部、酢酸エチル(EA)5部、IPA5部、シリカ(水澤化学社製「P-73」、平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子)3部を、ディスパーを用いて撹拌混合して、クリアインキ[1]を得た。
【0155】
<脱離性を有する接着剤の製造>
(ラミネート接着剤溶液[1]の作製)
四つ口セパラブルフラスコに、テレフタル酸82部、イソフタル酸682部、アジピン酸236部、エチレングリコール236部、ネオペンチルグリコール525部、1,6-ヘキサンジオール405部を仕込み、220~260℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下、240~260℃で5時間脱グリコール反応を行った。その後、イソホロンジイソシアネート2部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部に、無水トリメリット酸2.83部を添加し、180℃で約2時間反応させた。次いで酢酸エチルで不揮発分50%に希釈して、数平均分子量6,000、酸価16.5mgKOH/gである部分酸変性ポリエステルポリオール溶液を得た。
得られたポリオール溶液100部と、HDIビウレットの不揮発分95%酢酸エチル溶液7.94部とを混合し、酢酸エチルを加えて不揮発分30%のラミネート接着剤溶液[1]を得た。
【0156】
<包装材料の製造>
[実施例B-1]包装材料1
上述するクリアインキ[1]を、EA/IPA混合溶剤(質量比70/30)により、粘度が15秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
シアンインキ[1]、イエローインキ[1]、マゼンタインキ[1]を、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
希釈した各インキを用いて、版深20μmのグラビア版を備えたグラビア校正5色機と、クリアインキ[1]、シアンインキ[1]、イエローインキ[1]、及びマゼンタインキ[1]を含むインキセットとを用いて、厚み20μmのコロナ処理延伸ポリプロピレンフィルムに対し、クリアインキ[1]、シアンインキ[1]、イエローインキ[1]、及びマゼンタインキ[1]の順で重ね印刷し、各ユニットにおいてはそれぞれ50℃にて乾
燥し、「OPP基材/脱離層(クリアインキ)/シアン、イエロー又はマゼンタの印刷層」の構成であり、脱離性を有する層を含む印刷物を得た。
次いで、得られた印刷物の印刷層上に、ドライラミネート機を用いてラミネート接着剤溶液[1]を塗工し、ライン速度40m/分にて、厚み25μmのアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレン(VMCPP)フィルムと貼り合わせ、「OPP基材/脱離性を有する印刷層/3色重ね印刷層/脱離性を有する接着剤層/VMCPP基材」の構成であり、脱離層を有する包装材料1を得た。
【0157】
[実施例B-2~B-32、比較例B-1~B-17]包装材料2~49
インキセットを表8に示すインキに変更した以外は実施例B-1と同様にして、脱離層を有する包装材料2~49を得た。
【0158】
<包装材料の評価>
得られた包装材料から、4cm×4cmのサイズの試験片を切出し、2%の水酸化ナトリウム水溶液50gに浸した後、40℃にて30分撹拌した。撹拌を停止した後、底に沈殿した印刷層を集め、イオン交換水で洗浄した後、乾燥した。乾燥した印刷層を使用し、上述するグラビア印刷インキの評価と同様にして、ハロゲン量、第一級芳香族アミン量、環境に影響を及ぼす重金属の量を測定した。結果を表8に示す。
【0159】
【0160】
表8によれば、実施例B-1~B-32のように、本発明のグラビア印刷インキセットを用いた包装材料は、脱離処理後の印刷層中に含まれるハロゲン量、第一級芳香族アミン量、環境に影響を及ぼす重金属の量が極微量である。すなわち、包装材料をリサイクル又は廃棄した場合においても、安全衛生面、環境負荷低減の観点で優れている。
【0161】
一方、比較例B-1~B-17の包装材料は、脱離処理後の印刷層中に含まれるハロゲン量、第一級芳香族アミン量、又は環境に影響を及ぼす重金属の量のいずれかが大きく、安全衛生面、環境負荷低減の課題を解決できない。