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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140264
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20220915BHJP
   G02B 5/124 20060101ALI20220915BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B5/124
G02B5/00 Z
G02B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176729
(22)【出願日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2021039965
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦
(72)【発明者】
【氏名】大原 知子
(72)【発明者】
【氏名】浜田 勝平
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕紹
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA04
2H042AA16
2H042AA26
2H042EA04
2H042EA12
2H042EA15
2H042EA21
2H199BA32
2H199BA63
2H199BB10
2H199BB15
2H199BB18
2H199BB20
2H199BB29
(57)【要約】
【課題】空中表示の質の向上を図ることのできる空中表示装置を提供すること。
【解決手段】実施形態の空中表示装置は、面状発光体と、再帰反射シートと、ハーフミラーとを備える。前記面状発光体は、発光部を有する。前記再帰反射シートは、前記面状発光体の出射面側に配置され、前記発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する。前記ハーフミラーは、前記再帰反射シートの出射面側に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を有する面状発光体と、
前記面状発光体の出射面側に配置され、前記発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーと、
を備える空中表示装置。
【請求項2】
前記面状発光体は、所定の方向に配光が制御される、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記面状発光体は、線状光源と導光板と有し、
前記発光部は光学素子から構成される、
請求項1または2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記再帰反射シートの貫通孔からアイポイントの存在する方向に出射する光を抑制する光学部材、
を備える請求項1~3のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記光学部材は、前記再帰反射シートと前記面状発光体との間に配置され、前記再帰反射シートの貫通孔に対応する複数の貫通孔がずらされて設けられた遮光シートである、
請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記光学部材は、前記再帰反射シートと前記面状発光体との間に配置され、所定の方向の光を通過させるルーバーシートである、
請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記光学部材は、
前記再帰反射シートと前記面状発光体との間に配置された第1の反射型偏光シートと、
前記再帰反射シートの出射面側に配置され、前記再帰反射シートの貫通孔と同じ位置に貫通孔が設けられた第1の位相差フィルムと、
前記ハーフミラーに代えて設けられた第2の反射型偏光シートと、
から構成される、
請求項4に記載の空中表示装置。
【請求項8】
前記第1の反射型偏光シートに代えて設けられた吸収型偏光シートを備える、
請求項7に記載の空中表示装置。
【請求項9】
前記吸収型偏光シートと前記面状発光体との間に配置された第3の反射型偏光シートを備える、
請求項8に記載の空中表示装置。
【請求項10】
前記面状発光体と該面状発光体の出射面側に隣接する前記反射型偏光シートとの間に配置された第2の位相差フィルムを備える、
請求項7または9に記載の空中表示装置。
【請求項11】
前記第2の反射型偏光シートの出射面側に設けられた他の吸収型偏光シートを備える、
請求項7~10のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項12】
前記第1の位相差フィルムの出射面側に設けられた低反射シートを備える、
請求項7~11のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項13】
前記再帰反射シートの前記面状発光体側に設けられる遮光シートを備える、
請求項1~12のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項14】
前記遮光シートの前記面状発光体側の表面は、正反射を低下させるアンチグレア処理が施されている、
請求項13に記載の空中表示装置。
【請求項15】
前記面状発光体の発光部は、前記空中表示する図形を表すのに用いられる可能性のある貫通孔の位置をカバーする略矩形状の領域を発光するか、または、前記再帰反射シートの貫通孔に対応する位置をカバーする領域を発光する、
請求項1~14のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項16】
前記面状発光体の出射面と反対側に配置される反射シートを備える、
請求項1~15のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項17】
前記再帰反射シートの出射面側の貫通孔の外側の部分に、静電センサを構成する1対のセンサ電極が設けられる、
請求項1~16のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、再帰反射シートやハーフミラーが用いられ、空中に画像を結像させる空中表示装置が提案されている(例えば、特許文献1、2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-81138号公報
【特許文献2】特開2017-107165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、画像が結像される位置を調整しやすくしたり、空中に表示される画像を広い角度から観察可能としたりすることを主な目的としており、空中表示の質の向上を目指すものではなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、空中表示の質の向上を図ることのできる空中表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空中表示装置は、面状発光体と、再帰反射シートと、ハーフミラーとを備える。前記面状発光体は、発光部を有する。前記再帰反射シートは、前記面状発光体の出射面側に配置され、前記発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する。前記ハーフミラーは、前記再帰反射シートの出射面側に配置される。
【0007】
本発明の一態様に係る空中表示装置は、空中表示の質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態にかかる空中表示装置の例を示す表示面側から見た図である。
図2図2は、図1におけるX-X断面図である。
図3図3は、トイレ個室内における操作パネルの配置例を示す図である。
図4図4は、比較例となる空中表示装置の例を示す表示面側から見た図である。
図5図5は、図4におけるX-X断面図である。
図6図6は、導光板に設けられた光学素子の一部を導光板の裏面の法線方向から見た図である。
図7図7は、図6におけるY-Y断面図である。
図8図8は、導光板の発光部の配光制御により発光部を見えなくした状態の例を示す図である。
図9図9は、導光板の発光部を構成する光学素子の形状の例を示す図である。
図10図10は、光学素子の一例として断面形状がV形状の凹型の光学素子(図9)を規定する値を示す図である。
図11図11は、貫通孔が設けられた遮光シートにより発光部を見えなくした状態の例を示す図である。
図12図12は、ルーバーシートにより発光部を見えなくした状態の例を示す図である。
図13図13は、偏光反射シート、位相差フィルムおよび偏光反射シートにより発光部4bを見えなくした状態の例を示す図である。
図14図14は、図13の構成の第1の改良例を示す空中表示装置の断面図である。
図15図15は、図13の構成の第2の改良例を示す空中表示装置の断面図である。
図16図16は、図13の構成の第3の改良例を示す空中表示装置の断面図である。
図17図17は、図13の構成の第4の改良例を示す空中表示装置の断面図である。
図18図18は、図13の構成の第5の改良例を示す空中表示装置の断面図である。
図19図19は、空中表示の周辺の輝度分布の例を示す図である。
図20図20は、再帰反射シートの構造例を示す断面図である。
図21図21は、センサ電極を有する静電センサによる空中表示へのタッチの検知の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る空中表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0010】
図1は、一実施形態にかかる空中表示装置1の例を示す表示面側から見た図である。図2は、図1におけるX-X断面図である。なお、図1および図2における空中表示装置1は、個室トイレ内の壁面等に設置される操作パネルに採用されることが想定されており、表示面が水平方向を向いている。
【0011】
図1および図2において、空中表示装置1は、略矩形状の開口2aが形成されたフレーム2内に、面状発光体を構成する線状光源3と導光板4とが配置されている。線状光源3は、導光板4の入光側面4aの長手方向(X軸方向)に沿って線状に発光する光源である。導光板4は、ポリカーボネートやアクリル等の透明材料により形成され、入光側面4aから入射された光を終端側まで導き、裏面(非表示面)側に設けられた、光学素子により形成される発光部4bにより光を反射する。
【0012】
なお、この実施形態では、発光部4bの光学素子の調整により、表示面側のアイポイントEPが存在しない方向(図2における左下側)に光を出射し、アイポイントEPが存在する所定方向に出射する光を抑制するようにしている。アイポイントEPは、ユーザが目視することが想定される位置である。
【0013】
また、導光板4の発光部4bは、後述する再帰反射シート5における、空中表示する図形を表すのに用いられる可能性のある複数の貫通孔5aの位置を余裕をもってカバー(貫通孔5aの周囲の所定範囲もカバー)する略矩形状の領域(表示面側から見た形状)を発光するか、または、再帰反射シート5の1または複数の貫通孔5aに対応する位置を余裕をもってカバー(貫通孔5aの周囲の所定範囲もカバー)する領域を発光するものとする。前者の場合、導光板4の発光部4bの端部は、再帰反射シート5のいちばん外側の貫通孔5aに正対する位置から導光方向(Y軸方向)に長く設定される。この長く設定された端部は、再帰反射シート5の貫通孔5aから光軸を逆方向に伸ばして導光板4の裏側付近に到達する位置よりも、配光や部材の位置精度等を考慮してより外側の位置である。横方向(X軸方向)について、導光板4の発光部4bは、導光板4のほぼ全幅に延びるものとなる。後者の場合、導光板4の発光部4bは、再帰反射シート5の各貫通孔5aについて、導光方向(Y軸方向)と横方向(X軸方向)とについて長く設定される。前者の場合、空中表示する図形を変更する場合、再帰反射シート5の貫通孔5aを変更すればよいため、対応が容易になる。また、後者の場合、導光板4から出る光を表示に必要なものに絞ることができるため、光効率を高めることができる。
【0014】
また、フレーム2の非表示面側には、開口2aを覆うように、反射シート8が配置されており、導光板4から背面側へ漏れる光を導光板4に戻すことで、光効率を高め、輝度を高めている。なお、フレーム2の非表示面側に開口2aはなくてもよく(底板で塞がれていてもよい)、導光板4の非表示面側に反射シート8が設けられていればよい。
【0015】
また、導光板4の出射面側には、発光部4bに対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔5aを有する再帰反射シート5が、反射面を出射面側(導光板4とは反対側)に向けて配置されている。なお、再帰反射シート5に設けられる貫通孔5aは、図示の例ではドット状の小さな丸孔となっているが、例えばピクトグラムを構成する任意の形状の孔でもよい。以下の実施形態における貫通孔5aについても同様である。再帰反射シート5は、透明の微小なガラスビーズ球などが表面に隙間なく配置され、入射された光を同じ経路で出射(入射角と出射角が同じ)する性質を有したシートである。再帰反射シート5としては、ガラスビーズ球の他に、コーナーキューブと呼ばれる、光を反射する性質を持った3枚の面が互いに直角に組み合わされた、立方体の頂点の内面を利用したものも使用することができる。この場合、コストは若干高くなるが、光利用効率が高く、空中表示(空中像)のボケが少なくなるという利点がある。
【0016】
また、フレーム2の表示面側には、開口2aを覆うようにハーフミラー6が配置され、ハーフミラー6にはトップカバー7が外側に重ねられている。なお、ハーフミラー6の外側(視認側)にハードコート処理を施すことにより、トップカバー7を省略することもできるが、ハーフミラー6はフィルム状であるため、支持用の透明樹脂板が必要となる。なお、ハードコート処理は、傷防止や汚れ防止、抗菌などを目的として施されるものであり、トップカバー7が外側に配置される場合でも、トップカバー7にハードコート処理を施すのが好ましい。ハーフミラー6は、入射された光の半分程度を反射し、残りの半分程度を透過させる性質を有した光学部材である。トップカバー7は、透明材料により形成され、ハーフミラー6を保護するためのものである。なお、トップカバー7の透過度を下げることにより、外部から空中表示装置1の内部が見えづらくなり、空中表示だけを見やすくすることができる。また、再帰反射シート5とハーフミラー6とは、互いに少し傾けて配置されるものであってもよい。
【0017】
図2において、面状発光体を構成する導光板4の発光部4bから出た光は再帰反射シート5の貫通孔5aを通って経路L1で出る。この光は、半分程度がハーフミラー6で反射され、経路L2により再帰反射シート5に当たる。再帰反射シート5に当たった光は、入射角と同じ出射角で経路L3によりハーフミラー6に戻り、半分程度が透過する。発光部4bのある点から出た光は、経路L1の角度が変わっても幾何学的な関係から空中表示装置1外の同じ位置を通過するため、ハーフミラー6およびトップカバー7の外側に空中像による空中表示Iが行われ、ユーザのアイポイントEPから視認することができ、ユーザに指Fにより触れる動作を行わせることができる。
【0018】
図3は、トイレ個室内における操作パネル100の配置例を示す図である。操作パネル100の前面には空中表示装置1が配置されている。図3においては、便座Tに腰かけた利用者Mが容易に手の届く壁W上の位置に操作パネル100が設けられている。操作パネル100の床面からの高さは例えば1m、水平位置は利用者Mの膝の位置と同等である。このような操作パネル100の配置に対し、日本人の平均座高を考慮すると、空中表示Iの垂直方向の視野範囲は、例えば、水平方向を基準として、上方向に10deg~35degとなる。空中表示Iの水平方向の視野範囲は、例えば±40degとなる。
【0019】
図4は、比較例となる空中表示装置1’の例を示す表示面側から見た図である。図5は、図4におけるX-X断面図である。図4および図5において、空中表示装置1’は、略矩形状の開口2a’が形成されたフレーム2’内に、面状発光体を構成する線状光源3’と導光板4’とが配置されている。線状光源3’は、導光板4’の入光側面4a’の長手方向に沿って線状に発光する光源である。導光板4’は、ポリカーボネートやアクリル等の透明材料により形成され、入光側面4a’から入射された光を終端側まで導き、裏面(非表示面)側に設けられた、光学素子により形成される発光部4b’により光を表示面側に反射する。
【0020】
また、フレーム2’の非表示面側には、開口2a’を覆うように、反射面を導光板4’側に向けて再帰反射シート5’が配置されている。また、フレーム2’の表示面側には、開口2a’を覆うようにハーフミラー6’が配置され、ハーフミラー6’にはトップカバー7’が外側に重ねられている。
【0021】
図5において、透明表示装置を構成する導光板4’の発光部4b’から経路L1’で出た光は、半分程度がハーフミラー6’で反射され、経路L2’により導光板4’を通過して再帰反射シート5’に当たる。再帰反射シート5’に当たった光は、入射角と同じ出射角で経路L3’によりハーフミラー6’に戻り、半分程度が透過する。発光部4b’のある点から出た光は、経路L1’の位置が変わっても幾何学的な関係から空中表示装置1’外の同じ位置を通過するため、ハーフミラー6’およびトップカバー7’の外側に空中像による空中表示I’が行われ、ユーザのアイポイントEP’から視認することができる。
【0022】
ここで、図4および図5に示された比較例では、
・空中表示のパターン境界が不明瞭である
・発光部が見えてしまう
・多重像が見えてしまう
等により、空中表示の質が低下するおそれがあった。
【0023】
上記の「空中表示のパターン境界が不明瞭である」の原因の一つは、導光板4’の発光部4b’を構成する光学素子4c’(図1および図2における実施形態の導光板4の発光部4bを構成する光学素子4cについても同様)の加工方法に起因する。図6は、導光板4’に設けられた光学素子4c’の一部を導光板4’の裏面の法線方向から見た図であり、図7は、図6におけるY-Y断面図である。図6および図7において、光学素子4c’は導光板4’から切削工具であるバイトにより削られて形成されるか、バイトにより光学素子4c’に対応する突条が形成された金型により導光板4’が形成される過程で光学素子4c’が形成される。そのため、光学素子4c’の端部Eでは幅が細く深さが浅くなり、出射面側に対して反射する光量が低下し、空中表示のパターン境界が不明瞭となってしまう。
【0024】
この点、図1および図2の実施形態において、空中表示のパターン境界を定めるのは再帰反射シート5の貫通孔5aであり、導光板4の発光部4bを構成する光学素子4cの端部が空中表示のパターン境界に影響を与えることがなくなるため、空中表示のパターン境界を明瞭にすることができる。
【0025】
また、上記の「空中表示のパターン境界が不明瞭である」の他の原因として、図4および図5の比較例では、再帰反射シート5’とハーフミラー6’とが導光板4’を挟んで設けられるため、光の経路が長く、通過する界面が多いことが挙げられる。すなわち、図5において、発光部4b’から出た光は、経路L1’→経路L2’→経路L3’と進み、導光板4’の表面(表示面側の面)、ハーフミラー6’の裏面、導光板4’の表面および裏面、再帰反射シート5’の表面(反射面)、導光板4’の裏面および表面、ハーフミラー6’の裏面および表面、トップカバー7’の裏面および表面を経る。光の経路が長いことで光の拡散が生じやすくなり、界面が多いことで、界面の微細な凹凸形状や透明樹脂内部の不純物等により光の拡散および減衰が生じやすくなり、空中表示のパターン境界が不明瞭となる。
【0026】
この点、図1および図2の実施形態において、発光部4bから出た光は、経路L1→経路L2→経路L3と進み、導光板4の表面、ハーフミラー6の裏面、再帰反射シート5の表面(反射面)、ハーフミラー6の裏面および表面、トップカバー7の裏面および表面を経ることになり、通過する界面が少なくなったり、透明樹脂の通過長さが短くなったりする。その結果、空中表示のパターン境界を明瞭にすることができる。
【0027】
次に、上記の「発光部が見えてしまう」の原因は、図4および図5の比較例において、導光板4’の発光部4b’からの配光が制御されておらず、発光部4b’からアイポイントEP’に直接に進む光によるものである。なお、導光板4’の発光部4b’からの光がアイポイントEP’に直接に向かわないように配光制御することも考えられるが、アイポイントEP’に向かう光を完全になくすことは困難であるため、配光制御しても若干の不要光がアイポイントEP’へ直接進む。
【0028】
この点、図1および図2の実施形態においては、導光板4の発光部4bの光学素子の調整により、表示面側のアイポイントEPが存在しない方向(図2における左下側)に光を出射するようにしているため、発光部が見えてしまう問題は解消する。図8は、導光板4の発光部4bの配光制御により発光部4bを見えなくした状態の例を示す図である。図8において、導光板4の発光部4bから経路L0により出る光は配光制御により大幅に抑制され、正常な経路L1の光が主となるため、発光部が見えてしまうことはなくなる。
【0029】
以下、導光板4の配光制御について、より詳細に説明する。図9は、導光板4の発光部4bを構成する光学素子4cの形状の例を示す図である。なお、ここでは断面形状がV形状の凹型の光学素子について図示したが、断面形状が多角形状の凹型の光学素子や断面形状がトップフラット円弧形状(先端部が平坦になった円弧形状)型の光学素子であってもよい。また、図9において、光学素子4cの配置されるピッチは、例えば0.1mmとされているが、ピッチの値はこの値に限られない。
【0030】
図10は、光学素子4cの一例として断面形状がV形状の凹型の光学素子(図9)を規定する値を示す図である。図10において、光学素子4cは、幅Dと、頂角と、光立ち上げ側の底角(角度A)とにより規定される。ここでは、幅Dを0.1mmとし、頂角を60degとし、角度Aを変数とする。前述した垂直方向の視野範囲10deg~35degに配光制御する場合、シミュレーションの結果から、幅D=0.1mm、頂角=60deg、角度A=32degが適した値となる。なお、水平方向の視野範囲±40degは、線状光源3による水平方向への配光により実現される。なお、配光制御により、発光部が見えてしまうのが防止されるだけでなく、無駄な方向への光出射がなくなって光効率を高め、輝度を向上させることもできる。
【0031】
図8図10では、導光板4の一部の光学素子による配光制御について説明したが、導光板4の発光部4bを見えなくするための他の構成について、図11図13を用いて説明する。なお、所定方向に出射する光の抑制は、大方は面状発光体である導光板4の発光部4bを構成する光学素子4cで行われるが、それだけでは不十分な場合には、以下の図11図13の光学部材で補われる。
【0032】
図11は、貫通孔9aが設けられた遮光シート9により発光部4bを見えなくした状態の例を示す図である。図11において、図2と異なるのは、再帰反射シート5と導光板4との間に、新たな光学部材として、再帰反射シート5の貫通孔5aに対応する複数の貫通孔9aがずらされて設けられた遮光シート9が設けられている点である。図11において、遮光シート9の貫通孔9aは再帰反射シート5の貫通孔5aよりも上側にずらされて設けられているため、上向きの経路L0の光は抑制され、下向きの経路L1の光が主となる。
【0033】
図12は、ルーバーシート10により発光部4bを見えなくした状態の例を示す図である。図12において、図2と異なるのは、再帰反射シート5と導光板4との間に、新たな光学部材として、所定方向(図において斜め下向き)の光を通過させるルーバーシート10が設けられている点である。ルーバーシート10により、上向きの経路L0の光は抑制され、下向きの経路L1の光が主となる。
【0034】
図13は、偏光反射シート11、位相差フィルム12および偏光反射シート13により発光部4bを見えなくした状態の例を示す図である。図13において、図2と異なるのは、新たな光学部材として偏光反射シート11と位相差フィルム12と偏光反射シート13とが設けられていることである。偏光反射シート11は、再帰反射シート5と導光板4との間に配置される。なお、偏光反射シート11は再帰反射シート5の貫通孔5aを覆うだけでよいが、全面に積層されるものでもよい。位相差フィルム12は、再帰反射シート5の出射面側に配置され、再帰反射シート5の貫通孔5aと同じ位置に貫通孔12aが設けられている。例えば、再帰反射シート5に位相差フィルム12が貼り付けられた後に、貫通孔5aおよび貫通孔12aが同時に形成される。位相差フィルム12の位相差はλ/4となっており、X-Y面内における遅延軸は入射する光線の偏光の軸(偏光反射シート13の反射軸もしくは透過軸であり、基本的に反射軸と透過軸は水平か垂直に配置されるので、結果的にX軸かY軸)に対して正方向または負方向に45°傾けられている。偏光反射シート13は、ハーフミラー6(図2)に代えて設けられており、透過軸(通過させる偏光の方向)は偏光反射シート11と直交するように配置されている。
【0035】
図13において、導光板4の発光部4bから経路L0で出た光は、偏光反射シート11により、例えば図の紙面の奥行方向に振動する偏波となり、再帰反射シート5の貫通孔5aおよび位相差フィルム12の貫通孔12aを通過して、偏光反射シート13に到達する。貫通孔5a、12aでは偏波の状態は変化しない。ここで、偏光反射シート13は、例えば図の上下方向に振動する偏波を通過させる向きに配置されているため、経路L0の光は抑制される。
【0036】
一方、導光板4の発光部4bから経路L1で出た光は、偏光反射シート11により、例えば図の紙面の奥行方向に振動する偏波となり、再帰反射シート5の貫通孔5aおよび位相差フィルム12の貫通孔12aを通過して、偏光反射シート13に到達する。ここで、偏光反射シート13は、例えば図の上下方向に振動する偏波を通過させる向きに配置されているため、ほぼ全てが反射されて経路L2となり、位相差フィルム12を通過し、再帰反射シート5により再帰反射され、再度、位相差フィルム12を通過して経路L3となる。ここで、位相差フィルム12を2回透過することにより位相がλ/2だけずらされるため、上下方向に振動する偏波に変化し、偏光反射シート13を通過し、空中表示Iの一部となる。なお、偏光サングラスをかけた利用者であっても、一般に偏光サングラスの透過軸は図の上下方向に設定されているため、空中表示Iを視認することができる。偏光サングラスの透過軸と空中表示Iの透過軸とが直交している場合は、偏光解消シート(例えば、東洋紡株式会社のコスモシャインSRF)を偏光反射シート13(後述の図14図16の偏光反射シート13、図17または図18の吸収型偏光シート13Aについても同様)の視認側に配置すれば、空中表示Iの視認が可能となる。
【0037】
次に、上記の「多重像が見えてしまう」の原因は、図4および図5の比較例において、主に経路L2’、L3’で導光板4’を通過する際の界面が見えてしまうことによる。この点、図1および図2の実施形態においては、経路L1で再帰反射シート5の貫通孔5aを出た光は、導光板4の界面を通過することがないため、多重像が見えてしまうことはなくなる。
【0038】
次に、図14図18は、図13で説明された偏光反射シート11、13および位相差フィルム12によって導光板4の発光部4bから再帰反射シート5の貫通孔5aを通ってアイポイント方向へ直接に出る光を見えなくする構成(偏光構成)の改良例である。すなわち、図13の構成では、経路L3の図の上下方向に振動する偏波の光が偏光反射シート13で反射された戻り光(経路L1の逆方向に進む光)が貫通孔12a、5aを通って偏光反射シート11に当たる。偏光反射シート13では図の奥行方向に振動する偏波の光が基本的には反射するが、図の上下方向に振動する偏波の光も若干は反射する。偏光反射シートは偏光度が吸収型偏光シートよりも低いため、透過軸方向以外の偏光が透過および反射する。つまり、偏光反射シートだけでは偏光度が低く、透過軸が水平垂直からずれているため、開口見えの原因となる。また、偏光反射シート13の透過軸は水平・垂直方向から若干ずれている。さらに、位相差フィルム12は可視域のすべて波長に対して遅延量がλ/4にはなっていないため、経路L3の光の偏波は完全に図の上下方向に振動する偏波の光にはなっていない。以上のことから、偏光反射シート13では経路L3の光は図の奥行方向だけでなく上下方向に振動する偏波の光も反射する。偏光反射シート11は図の奥行方向の偏波を通過させ、図の上下方向に振動する偏波を反射することから、図の上下方向に振動する偏波である上記の戻り光は反射し、そのまま外側の偏光反射シート13を通過して外部に出る。また、偏光反射シート11を透過した光は面状発光体(導光板4、反射シート8の他にプリズムシートが含まれる場合もある)で反射し、偏光反射シート11と透過した光の一部が偏光反射シート13を透過する。そのため、貫通孔12a、5aの開口部が光っているように見えてしまい、空中表示Iの視認性を低下させてしまう。その対策が図14の構成である。
【0039】
図14は、図13の構成の第1の改良例を示す空中表示装置1の断面図である。図14において、図13の構成と異なるのは、偏光反射シート(反射型偏光シート)11が吸収型偏光シート11Aに変わった点であり、吸収型偏光シート11Aを通過する偏波の方向は偏光反射シート11と同じである。反射型偏光シートは、透過しない偏波の光を反射する性質を有するのに対し、吸収型偏光シートは、透過しない偏波の光を吸収する性質を有する。なお、吸収型偏光シート11Aの透過軸は、シートの水平方向もしくは垂直方向からほとんどずれていない。
【0040】
図14において、導光板4の発光部4bから経路L1で出た光は、吸収型偏光シート11Aにより、例えば図の紙面の上下方向に振動する偏波の成分は吸収され、図の紙面の奥行方向に振動する偏波となり、再帰反射シート5の貫通孔5aおよび位相差フィルム12の貫通孔12aを通過して、偏光反射シート13に到達する。ここで、偏光反射シート13は、例えば図の上下方向に振動する偏波を通過させる向きに配置されているため、ほぼ全てが反射されて経路L2となり、位相差フィルム12を通過し、再帰反射シート5により再帰反射され、再度、位相差フィルム12を通過して経路L3となる。ここで、位相差フィルム12を2回透過することにより位相がλ/2だけずらされるため、図の上下方向に振動する偏波に変化し、偏光反射シート13を通過し、空中表示Iの一部となる。
【0041】
また、経路L3の光は全てが偏光反射シート13を通過するわけではなく、一部は偏光反射シート13で反射され、戻り光として経路L4で再帰反射シート5の貫通孔5aおよび位相差フィルム12の貫通孔12aを通過して、吸収型偏光シート11Aに到達する。この戻り光の偏波は図の上下方向に振動するものとなっている。ここで、吸収型偏光シート11Aは図の奥行方向の偏波を通過させ、図の上下方向の偏波を吸収するため、経路L4の戻り光はほとんどが吸収される。そのため、戻り光の吸収型偏光シート11Aによる反射はなくなり、貫通孔12a、5aの開口部が光っているように見えることがなく、空中表示Iの視認性を低下させてしまうことがなくなる。
【0042】
図14の構成では、導光板4の発光部4bから経路L1で出た光が吸収型偏光シート11Aに当たり、図の奥行方向に振動する偏波は通過するが、図の上下方向に振動する偏波は吸収されるため、光のロスが大きく、最終的に空中表示Iの輝度が低下してしまう。その対策が図15の構成である。
【0043】
図15は、図13の構成の第2の改良例を示す空中表示装置1の断面図である。図15において、図14の構成と異なるのは、吸収型偏光シート11Aと導光板4との間に反射型偏光シート11Rが設けられた点である。反射型偏光シート11Rの透過軸は吸収型偏光シート11Aと一致もしくはほぼ一致している。なお、ボトム(導光板4側)の吸収型偏光シート11Aと反射型偏光シート11Rの透過軸のずれは、あまり輝度や開口見えには影響を及ぼさない。後述の図17または図18におけるトップ(出射側)の吸収型偏光シート13Aと偏光反射シート13の透過軸のずれは、輝度や開口見えへの影響は大きい。また、図15において、吸収型偏光シート11Aと反射型偏光シート11Rは、単に積層されるものでもよいが、両者が貼り合わされて密着することで、界面反射が低減し、輝度の向上に寄与する。
【0044】
図15において、導光板4の発光部4bから経路L1で出た光は吸収型偏光シート11Aよりも先に反射型偏光シート11Rに当たり、図の奥行方向に振動する偏波は通過され、図の上下方向に振動する偏波は反射される。反射型偏光シート11Rで反射された光は導光板4に戻り、再利用される。吸収型偏光シート11A以降の動作は、図14と同様である。そのため、吸収型偏光シート11Aによる光のロスがなくなり、空中表示Iの輝度の向上が図られる。
【0045】
図15の構成では、反射型偏光シート11Rにより反射されて導光板4に戻された光(図の上下方向に振動する偏波)は、導光板4の内部で複雑に反射されたり、面状発光体の光学部品(導光板4、プリズムシート等)の位相差に起因したりして、図の奥行方向に振動する偏波に変換された場合には、反射型偏光シート11Rを通過して、空中表示Iの輝度向上に寄与することができる。しかし、導光板4の内部で偏波の方向が変わらない場合には、輝度向上への寄与が期待できない。その対策が図16の構成である。
【0046】
図16は、図13の構成の第3の改良例を示す空中表示装置1の断面図である。図16において、図15の構成と異なるのは、反射型偏光シート11Rと導光板4との間に位相差フィルム15が配置された点である。位相差フィルム15の位相差はλ/4となっており、X-Y面内における遅延軸は入射する光線の偏光の軸(偏光反射シート13の反射軸もしくは透過軸であり、基本的に反射軸と透過軸は水平か垂直に配置されるので、結果的にX軸かY軸)に対して正方向または負方向に45°傾けられている。なお、吸収型偏光シート11Aと反射型偏光シート11Rと位相差フィルム15は、単に積層されるものでもよいが、それらが貼り合わされて密着することで、界面反射が低減し、輝度の向上に寄与する。
【0047】
図16において、導光板4の発光部4bから経路L1で出た光は位相差フィルム15を通過する。しかし、後段の反射型偏光シート11Rにより反射されて導光板4に戻された光(図の上下方向に振動する偏波)は、位相差フィルム15を通過し、導光板4を経由して再び位相差フィルム15を通過することとなり、2回、位相差フィルム15を通過するため、図の奥行方向に振動する偏波に変換される。そのため、後段の反射型偏光シート11Rを通過することができ、空中表示Iの輝度向上に寄与することができる。その後の動作は同様である。なお、導光板4からの出射光は偏光に若干の偏りがあるため、位相差フィルム15による位相差の影響を若干受ける。そして、反射型偏光シート11Rは直線偏光タイプであるため、透過軸成分の偏光が多ければ、透過光は増加する。また、位相差フィルム15は、図13における偏光反射シート11の導光板4側に配置されるようにしてもよい。
【0048】
図13図16の構成では、出射側の偏光反射シート13により図の上下方向に振動する偏波は通過され、図の奥行方向に振動する偏波は内部に反射されてブロックされていたが、フィルムタイプの偏光反射シート13はシートの水平・垂直の軸から透過軸が若干ずれている場合が多く、図の奥行方向に振動する偏波が完全にブロックされておらず、貫通孔12a、5aの開口部が光っているように見える要因となる。例えば、図13における経路L0の光の一部が外部から見えてしまう。その対策が図17の構成である。
【0049】
図17は、図13の構成の第4の改良例を示す空中表示装置1の断面図である。図17において、図16の構成と異なるのは、偏光反射シート13とトップカバー7との間に吸収型偏光シート13Aが配置された点である。吸収型偏光シート13Aの透過軸は偏光反射シート13とほぼ同じである。なお、吸収型偏光シート13Aと偏光反射シート13の透過軸が完全に位置すると効果が低下する。それぞれの透過軸が一致し、吸収型偏光シート11Aと直交状態が最も効果が得られる。そのため、吸収型偏光シート11Aと透過軸が90度になってない場合、効果が低下する。偏光反射シートは偏光度が吸収型偏光シートよりも低いため、透過軸方向以外の偏光が透過および反射することも、開口見えの原因になる。そのため、それぞれの透過軸が一致し、吸収型偏光シート11Aと直交すると損失が最も少ない状態で透過および反射するため、輝度が高くなり、開口見えが低減できる。偏光反射シート13の透過軸は垂直から若干ずれているので、ずれた方向に吸収型偏光シート13Aの透過軸が一致すると開口見えの原因になる。正確には吸収型偏光シート11Aの透過軸と吸収型偏光シート13Aの透過軸が直交する。また、図16をベースとして改良された例が図17に示されたが、図13図15をベースとして同様な改良が施されるのでもよい。
【0050】
図17において、図の奥行方向に振動する偏波の経路L0の光は、偏光反射シート13によりほとんどがブロックされるが、偏光反射シート13の透過軸がX-Y面内でずれている場合、ずれに応じた量の光がブロックされずに通過する。しかし、後段の吸収型偏光シート13Aにより図の奥行方向に振動する偏波のほとんどが吸収されるため、外部に経路L0から出る光はほとんどなくなり、貫通孔12a、5aの開口部が光っているように見えてしまうのが防止され、空中表示Iの視認性の低下が防止される。
【0051】
図13図17の構成では、再帰反射シート5の出射側に位相差フィルム12が設けられており、例えば、図17の経路L2の光は位相差フィルム12を通して再帰反射シート5で再帰反射されて経路L3の光となるが、位相差フィルム12の表面でも正反射が発生し、不要な空中像の要因となる。その対策が図18の構成である。
【0052】
図18は、図13の構成の第5の改良例を示す空中表示装置1の断面図である。図18において、図17の構成と異なるのは、位相差フィルム12の出射側に低反射シート16が設けられている点である。なお、低反射シート16には位相差フィルム12の貫通孔12aおよび再帰反射シート5の貫通孔5aと同じ位置に貫通孔16aが設けられている。例えば、再帰反射シート5に位相差フィルム12および低反射シート16が貼り付けられた後に、貫通孔5a、12a、16aが同時に形成される。なお、図17をベースとして改良された例が図18に示されたが、図13図16をベースとして同様な改良が施されるのでもよい。
【0053】
図18において、経路L2で偏光反射シート13から低反射シート16側に反射してきた光は、低反射シート16により正反射が抑えられ、低反射シート16の内部を貫通していく光だけとなり、正反射に基づく不要な空中像(空中表示Iと偏光反射シート13との間の距離の2倍の位置に発生する空中像)の発生が防止され、空中表示Iの視認性の低下が防止される。また、不要な空中像に使われる光が空中表示Iに使用されることで、空中表示Iの輝度向上にもつながる。
【0054】
次の表1は、シートまたはフィルムの組み合わせによる空中表示I等の輝度およびコントラストの計算結果である。
【0055】
【表1】
【0056】
表1において、左端の列は対応する構成の図番を示している。変形例#1~#3は図には表されていない。なお、表1は全ての組み合わせを網羅しておらず、他の構成もあり得る。表1において、「Bottom」は導光板4と再帰反射シート5との間に配置されるシートまたはフィルム、「Middle」は再帰反射シート5の周辺のシートまたはフィルム、「Top」はトップカバー7の周辺のシートまたはフィルムである。また、「LV」はルーバーシート、「λ/4」は位相差シート、「rPol」は反射型偏光シート、「aPol」は吸収型偏光シート、「黒」は吸収シート、「RR」は再帰反射シート、「AR」は低反射シート、「HM」はハーフミラー、「A」は主要な空中像の輝度、「B」は貫通孔5a等による開口部の輝度、「C」は不要な空中像の輝度、「CT1」(コントラスト)はA/B、「CT2」はA/Cである。また、「Middle」における吸収シート「黒」は、後述する再帰反射シート5の背面に設けられる反射層(5d)である。
【0057】
図19は、空中表示の周辺の輝度分布の例を示す図であり、空中表示装置1の表示側の面の法線方向から図1におけるY軸の負方向に23度傾いた方向から輝度計の中心に空中表示Iの中心が位置するように測定された輝度分布である。23度傾けられているため、再帰反射シート5の貫通孔5a等による開口部の像NI1、空中表示I、不要な像NI2が重ならず、それぞれの像による輝度評価が可能となっている。なお、不要な像NI2は、空中表示Iと偏光反射シート13との間の距離の2倍の位置に発生する空中像である。図19において、中央は空中表示Iに対応する主要な空中像、上側の像NI1は再帰反射シート5の貫通孔5a等の開口部に対応するもの、下側の像NI2は再帰反射シート5等の表面反射や多重反射による不要な空中像である。
【0058】
表1から、主要な空中像の輝度「A」が最も高いのは図18の構成であり、コントラストCT1が最も高いのは変形例#2の構成であり、コントラストCT2が最も高いのは図18の構成である。
【0059】
次に、図1図2図11図18(後述の図21も同様)の構成における再帰反射シート5の問題点の解決策が示される。すなわち、再帰反射シート5には若干の光透過性があるため、貫通孔5aが設けられていない部分からの漏れ光により空中表示Iのコントラストが低下するという問題があった。なお、図11の構成では再帰反射シート5の光源側に遮光シート9が設けられるため、貫通孔5aが設けられていない部分からの漏れ光による影響は少ないが、影響が皆無とは言えないため、対策は効果がある。このような漏れ光の問題は、金属蒸着等による反射層が設けられるコーナーキューブ型の再帰反射シート5の場合、反射層を厚くすることにより漏れ光の低減が可能であるが、大幅なコストアップを招くため、現実的ではない。
【0060】
図20は、再帰反射シート5の構造例を示す断面図である。図20において、再帰反射シート5は、透明な板の裏側にコーナーキューブを構成する頂角が90°のプリズム5cが形成され、その外側に金属蒸着等による反射層5dで反射面が形成されている。右側の平面視から明らかなように、反射層5dが形成される面は三角錐状のプリズムが縦横に配置されたものとなっている。また、反射層5dの背面には、粘着剤5eを介して、例えば黒色の遮光シート5fが貼り付けられている。なお、粘着剤5eを黒色等の低透過のものとすれば、遮光シート5fは黒色等にしなくてもよい。また、コントラストの改善のためには、遮光シート5fとして、遮光シートと同等の散乱特性を有する拡散シートが配置されるようにしてもよい。このような構造の再帰反射シート5が図1図2図11図18(後述の図21も同様)の構成に用いられることで、再帰反射シート5の貫通孔5aが設けられていない部分からの漏れ光が低減され、空中表示Iのコントラストの低下が防止される。
【0061】
また、図20における再帰反射シート5の背面の遮光シート5fは、単に遮光性が高いだけでなく、導光板4側の表面の散乱状態により空中表示Iのコントラストが影響を受けることが確認されている。表2は、「メーカー」および「商品名」により特定される遮光シート(黒フィルム)5fについて、「空中像評価」と「黒フィルム評価」とが示されたものである。「メーカー」「商品名」のすぐ下の「PMMA」は、アクリル樹脂を意味しており、遮光シートが設けられていない状態に対応している。「空中像評価」は、主要な空中像の輝度「AI」と、開口部の輝度「開口」と、コントラスト「CT」と、「漏れ光」とを含んでいる。「AI」は前述の表1の「A」に対応し、「開口」は表1の「B」に対応し、「CT」は表1の「CT1」に対応している。「黒フィルム評価」は、「全光線透過」「全反射」「正反射」「光沢度」を含んでいる。表3は、「メーカー」および「商品名」により特定される遮光シート(黒フィルム)5fについて、「総厚」「基材」「表面」「塗工処理」を含んでいる。「表面」の「AG」は、アンチグレア処理を意味している。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
表2および表3から、遮光シートが設けられていない状態の「PMMA」の場合の「漏れ光」に対して、いずれの遮光シートであっても、「漏れ光」は大幅に減少している。コントラスト「CT」は、「X2B#50」「X2B#75」「X4LGB#25」が優れている。すなわち、アンチグレア処理が施されていて「正反射」が小さいほど、コントラスト「CT」の改善がみられる。これは、遮光シートで散乱反射された光の散乱が弱く正反射が強いと、開口から光が出射し、開口の輝度を増加させるためと考えられる。例えば、図2において、導光板4から出た光は再帰反射シート5の導光板4側の遮光シートで反射され、導光板4の表面で反射されて貫通孔5aの開口を通ってアイポイントEP側に出ていく成分があるが、遮光シートの正反射が小さいと、このノイズ成分は小さくなり、開口の輝度が小さくなる。
【0065】
次に、空中表示を非接触式の電気的なスイッチのボタンとして動作させるための構成について説明する。図21は、センサ電極14A、14Bを有する静電センサによる空中表示Iへのタッチの検知の例を示す図である。図21において、図2と異なるのは、再帰反射シート5の出射面側の貫通孔5aの外側の部分に、1対のセンサ電極14A、14Bが設けられている点である。センサ電極14A、14B間に電圧を印加することで、破線で示すような電気力線が生じ、ユーザが指Fで空中表示Iを触れる過程で、接地レベルにある指Fにより電気力線に変化を生じさせ、その変化から空中表示Iへのタッチを検出することができる。ユーザの指Fは空中表示Iに触れるだけで、実在のボタン等に触れるわけではないので、衛生面において望ましいものとすることができる。なお、IR(赤外線)センサ等により指Fの空中表示Iへの接触が検出され、対応する機能のオン・オフ等が制御されるようにしてもよい。
【0066】
なお、再帰反射シート5としては、例えばプリズムタイプが採用されるが、その場合、再帰反射シート5のプリズム面にはAl蒸着がされるので、貫通孔5a以外は光がほとんど透過しない。また、金属は電気力線を遮断してしまうため、静電センサは再帰反射シート5の出射面側に配置しないといけない。空中像の結像距離はハーフミラー6と再帰反射シート5との間の距離に依存するため、トップカバー7より離れた位置に空中像を結像させようとすると、ハーフミラー6と再帰反射シート5との間の距離は長くなる。そのため、空隙にセンサ電極14A、14Bや制御基板を配置することでデットスペースを生かすことができる。センサ電極14A、14Bや制御基板は、光路を邪魔しないように配置される。また、迷光が乱反射しないように、制御基板は黒色もしくは黒色印刷した方が好ましい。黒色にすることで視認側からセンサ電極14A、14Bや制御基板が見えにくくなる。また、図21図2の構成がベースとされているが、図11図18の構成がベースとされるものであってもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0068】
以上のように、実施形態に係る空中表示装置は、発光部を有する面状発光体と、面状発光体の出射面側に配置され、発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する再帰反射シートと、再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーとを備える。これにより、空中表示の質の向上を図ることができる。
【0069】
また、面状発光体は、所定の方向に配光が制御される。これにより、面状発光体単体により配光制御を行うことができ、発光部が見えてしまう問題を解消することができる。
【0070】
また、面状発光体は、線状光源と導光板と有し、発光部は光学素子から構成される。これにより、面状発光体を容易に実現することができる。
【0071】
また、再帰反射シートの貫通孔からアイポイントの存在する方向に出射する光を抑制する光学部材を備える。これにより、発光部が見えてしまう問題をより有効に解消することができる。
【0072】
また、光学部材は、再帰反射シートと面状発光体との間に配置され、再帰反射シートの貫通孔に対応する複数の貫通孔がずらされて設けられた遮光シートである。これにより、面状発光体による配光制御を補うことができ、発光部が見えてしまう問題をより有効に解消することができる。
【0073】
また、光学部材は、再帰反射シートと面状発光体との間に配置され、所定の方向の光を通過させるルーバーシートである。これにより、面状発光体による配光制御を補うことができ、発光部が見えてしまう問題をより有効に解消することができる。
【0074】
また、光学部材は、再帰反射シートと面状発光体との間に配置された第1の反射型偏光シートと、再帰反射シートの出射面側に配置され、再帰反射シートの貫通孔と同じ位置に貫通孔が設けられた第1の位相差フィルムと、ハーフミラーに代えて設けられた第2の反射型偏光シートとから構成される。これにより、面状発光体による配光制御を補うことができ、発光部が見えてしまう問題をより有効に解消することができる。
【0075】
また、第1の反射型偏光シートに代えて設けられた吸収型偏光シートを備える。これにより、再帰反射シートの貫通孔を通して第1の偏光反射シートにより反射される光によって、貫通孔の開口部が光って見えてしまうのが防止され、空中表示の視認性の低下が防止される。
【0076】
また、吸収型偏光シートと面状発光体との間に配置された反射型偏光シートを備える。これにより、吸収型偏光シートによる光のロスが低減され、空中表示の輝度が向上する。
【0077】
また、面状発光体とこの面状発光体の出射面側に隣接する反射型偏光シートとの間に配置された第2の位相差フィルムを備える。これにより、反射型偏光シートで面状発光体側に戻された光の再利用が促進され、空中表示の輝度が向上する。
【0078】
また、第2の反射型偏光シートの出射面側に設けられた他の吸収型偏光シートを備える。これにより、第2の偏光反射シートの透過軸のずれに起因する不要な偏光成分の透過を防ぎ、空中表示の視認性が向上する。
【0079】
また、第1の位相差フィルムの出射面側に設けられた低反射シートを備える。これにより、第1の位相差フィルムの表面での反射による不要な空中像が抑制され、空中表示の視認性が向上し、空中表示の輝度も向上する。
【0080】
また、再帰反射シートの面状発光体側に設けられる遮光シートを備える。これにより、貫通孔が設けられていない部分の漏れ光が低減され、コントラストが向上する。
【0081】
また、遮光シートの面状発光体側の表面は、正反射を低下させるアンチグレア処理が施されている。これにより、再帰反射シートの面状発光体側の面での反射により貫通孔の開口部が光って見えるのが低減され、コントラストが向上する。
【0082】
また、面状発光体の発光部は、空中表示する図形を表すのに用いられる可能性のある貫通孔の位置をカバーする略矩形状の領域を発光するか、または、再帰反射シートの貫通孔に対応する位置をカバーする領域を発光する。これにより、発光部の構成に選択肢を与えることができる。
【0083】
また、面状発光体の出射面と反対側に配置される反射シートを備える。これにより、漏れる光を減らし、光効率を高め、輝度を高めることができる。
【0084】
また、再帰反射シートの出射面側の貫通孔の外側の部分に、静電センサを構成する1対のセンサ電極が設けられる。これにより、空中表示に適合する、非接触式のスイッチを構成することができる。
【0085】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 空中表示装置,2 フレーム,2a 開口,3 線状光源,4 導光板,4a 入光側面,4b 発光部,5 再帰反射シート,5a 貫通孔,6 ハーフミラー,7 トップカバー,8 反射シート,9 遮光シート,9a 貫通孔,10 ルーバーシート,11 偏光反射シート,11A 吸収型偏光シート,11R 反射型偏光シート,12 位相差フィルム,13 偏光反射シート,13A 吸収型偏光シート,14A、14B センサ電極,EP アイポイント,I 空中表示,F 指
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