(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140300
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びにポリスチレン系樹脂積層発泡容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20220915BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220915BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220915BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220915BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/00 H
B32B27/30 B
B32B27/32 C
B65D1/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015092
(22)【出願日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2021038899
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】白石 奏
【テーマコード(参考)】
3E033
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA13
3E033BA14
3E033BA15
3E033BA22
3E033BB08
3E033CA02
3E033CA03
3E033CA20
3E033DD03
3E033FA04
3E033FA10
4F100AK01C
4F100AK03B
4F100AK04B
4F100AK05B
4F100AK06B
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4F100AK62B
4F100AL01B
4F100AL05B
4F100BA03
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4F100GB16
4F100JA04B
4F100JA05B
4F100JB16C
4F100JC00B
(57)【要約】
【課題】剥離強度、容器強度、耐衝撃性に優れ、成形時のドローダウンを抑制でき、成形性及び生産性をより高められるポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【解決手段】ポリスチレン系樹脂発泡シート10の片面又は両面に非発泡樹脂層20が積層され、非発泡樹脂層20は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む混合樹脂を含み、前記混合樹脂におけるスチレン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して27~95質量%であり、前記混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して2.2~12質量%であり、前記混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して0.1~70質量%である、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面に非発泡樹脂層が積層され、
前記非発泡樹脂層は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む混合樹脂を含み、
前記混合樹脂におけるスチレン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して27~95質量%であり、
前記混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して2.2~12質量%であり、
前記混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して0.1~70質量%である、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項2】
前記混合樹脂がハイインパクトポリスチレン系樹脂を含み、前記混合樹脂において、前記ハイインパクトポリスチレン系樹脂と、前記ポリオレフィン系樹脂との質量比(前記ハイインパクトポリスチレン系樹脂:前記ポリオレフィン系樹脂)が、45:55~99.9~0.1である、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項3】
前記混合樹脂における、前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項4】
前記混合樹脂は結晶化ピークを有し、前記結晶化ピークのピーク温度が90~140℃であり、
前記混合樹脂の融点と、前記ピーク温度との温度差が1~20℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂が高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項6】
前記高密度ポリエチレンと、前記低密度ポリエチレンとの質量比(前記高密度ポリエチレン:前記低密度ポリエチレン)が、10:90~90:10である、請求項5に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項7】
前記混合樹脂における、前記ポリオレフィン系樹脂が植物由来樹脂である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項8】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面及び前記非発泡樹脂層の片面又は両面の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂フィルム層が位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面に、前記混合樹脂を含む樹脂組成物を押出して積層する積層工程を含む、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法。
【請求項10】
ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面に非発泡樹脂層が積層され、
前記非発泡樹脂層は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む混合樹脂を含み、
前記混合樹脂におけるスチレン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して27~95質量%であり、
前記混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して2.2~12質量%であり、
前記混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して0.1~70質量%である、ポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項11】
前記混合樹脂がハイインパクトポリスチレン系樹脂を含み、前記混合樹脂において、前記ハイインパクトポリスチレン系樹脂と、前記ポリオレフィン系樹脂との質量比(前記ハイインパクトポリスチレン系樹脂:前記ポリオレフィン系樹脂)が、45:55~99.9~0.1である、請求項10に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項12】
前記混合樹脂における、前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である、請求項10又は11に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項13】
前記混合樹脂は結晶化ピークを有し、前記結晶化ピークのピーク温度が90~140℃であり、
前記混合樹脂の融点と、前記ピーク温度との温度差が1~20℃である、請求項10~12のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項14】
前記ポリオレフィン系樹脂が高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含む、請求項10~13のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項15】
前記高密度ポリエチレンと、前記低密度ポリエチレンとの質量比(前記高密度ポリエチレン:前記低密度ポリエチレン)が、10:90~90:10である、請求項14に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項16】
前記混合樹脂における、前記ポリオレフィン系樹脂が植物由来樹脂である、請求項10~15のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項17】
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面及び前記非発泡樹脂層の片面又は両面の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂フィルム層が位置する、請求項10~16のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【請求項18】
請求項10~17のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器の製造方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面に、前記混合樹脂を含む樹脂組成物を押出して積層する積層工程と、
前記積層工程で得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを加熱し、成形する成形工程と、を含む、ポリスチレン系樹脂積層発泡容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びにポリスチレン系樹脂積層発泡容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を発泡させた樹脂発泡シート及びその成形体は、軽量で断熱性が高いという特徴から、食品容器等に用いられている。
ポリスチレン系樹脂発泡シート(発泡シート)からポリスチレン系樹脂発泡容器(発泡容器)を成形する方法としては、発泡シートを加熱して軟化し、これを金型に挟み込んで所望の形状とする方法がある。
【0003】
発泡シートを成形する際、加熱工程にて加熱ゾーン内で発泡シートの中心部が垂れ下がる「ドローダウン」と呼ばれる現象が発生する場合がある。ドローダウンが発生すると、各容器の重量のバラツキや、しわが発生する等の外観不良の要因となる。
【0004】
こうした問題に対して、例えば、特許文献1では、延伸付与された市販フィルムを表面に積層することでドローダウンの抑制が図られている。例えば、特許文献2では、発泡シートを押出成形する際に冷却風を吹き付け、発泡シート自体に延伸を付与することでドローダウンの抑制が図られている。例えば、特許文献3では、発泡シートに非発泡フィルムを積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シート(積層発泡シート)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-141772号公報
【特許文献2】特開2006-264024号公報
【特許文献3】特開2013-010299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、発泡シートの目付が重たいと、その自重に耐え切れず、ドローダウンを抑制できない場合がある。このため、発泡シートに応じて市販フィルムをより厚いものに変更する必要があり、成形性に難がある。特許文献2の技術では、発泡シートの吐出量を増加して生産性の向上を図ると、冷却風を吹き付ける制御が困難になり、狙いの延伸の発泡シートを得られないおそれがある。このため、生産性を高めることが困難である。特許文献3の技術では、樹脂の溶融張力不足によって、成形時に伸び不良を生じ、成形性及び生産性に課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、剥離強度、容器強度、耐衝撃性に優れ、成形時のドローダウンを抑制でき、成形性及び生産性をより高められるポリスチレン系樹脂積層発泡シート及びその製造方法並びにポリスチレン系樹脂積層発泡容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面に非発泡樹脂層が積層され、
前記非発泡樹脂層は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む混合樹脂を含み、
前記混合樹脂におけるスチレン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して27~95質量%であり、
前記混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して2.2~12質量%であり、
前記混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して0.1~70質量%である、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[2]前記混合樹脂がハイインパクトポリスチレン系樹脂を含み、前記混合樹脂において、前記ハイインパクトポリスチレン系樹脂と、前記ポリオレフィン系樹脂との質量比(前記ハイインパクトポリスチレン系樹脂:前記ポリオレフィン系樹脂)が、45:55~99.9~0.1である、[1]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[3]前記混合樹脂における、前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である、[1]又は[2]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[4]前記混合樹脂は結晶化ピークを有し、前記結晶化ピークのピーク温度が90~140℃であり、
前記混合樹脂の融点と、前記ピーク温度との温度差が1~20℃である、[1]~[3]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂が高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[6]前記高密度ポリエチレンと、前記低密度ポリエチレンとの質量比(前記高密度ポリエチレン:前記低密度ポリエチレン)が、10:90~90:10である、[5]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[7]前記混合樹脂における、前記ポリオレフィン系樹脂が植物由来樹脂である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
[8]前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面及び前記非発泡樹脂層の片面又は両面の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂フィルム層が位置する、[1]~[7]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【0009】
[9][1]~[8]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面に、前記混合樹脂を含む樹脂組成物を押出して積層する積層工程を含む、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの製造方法。
【0010】
[10]ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面に非発泡樹脂層が積層され、
前記非発泡樹脂層は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む混合樹脂を含み、
前記混合樹脂におけるスチレン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して27~95質量%であり、
前記混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して2.2~12質量%であり、
前記混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、前記混合樹脂の総質量に対して0.1~70質量%である、ポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
[11]前記混合樹脂がハイインパクトポリスチレン系樹脂を含み、前記混合樹脂において、前記ハイインパクトポリスチレン系樹脂と、前記ポリオレフィン系樹脂との質量比(前記ハイインパクトポリスチレン系樹脂:前記ポリオレフィン系樹脂)が、45:55~99.9~0.1である、[10]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
[12]前記混合樹脂における、前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である、[10]又は[11]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
[13]前記混合樹脂は結晶化ピークを有し、前記結晶化ピークのピーク温度が90~140℃であり、
前記混合樹脂の融点と、前記ピーク温度との温度差が1~20℃である、[10]~[12]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
[14]前記ポリオレフィン系樹脂が高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含む、[10]~[13]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
[15]前記高密度ポリエチレンと、前記低密度ポリエチレンとの質量比(前記高密度ポリエチレン:前記低密度ポリエチレン)が、10:90~90:10である、[14]に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
[16]前記混合樹脂における、前記ポリオレフィン系樹脂が植物由来樹脂である、[10]~[15]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
[17]前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面及び前記非発泡樹脂層の片面又は両面の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂フィルム層が位置する、[10]~[16]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器。
【0011】
[18][10]~[17]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂積層発泡容器の製造方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面又は両面に、前記混合樹脂を含む樹脂組成物を押出して積層する積層工程と、
前記積層工程で得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを加熱し、成形する成形工程と、を含む、ポリスチレン系樹脂積層発泡容器の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートによれば、剥離強度、容器強度、耐衝撃性に優れ、成形時のドローダウンを抑制でき、成形性及び生産性をより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートの一例を示す断面図である。
【
図2】本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡容器の一例を示す斜視図である。
【
図3】実施例1のポリスチレン系樹脂積層発泡シートから採取した試料のDSC曲線である。
【
図4】混合樹脂のTMA測定で得られるTMA曲線の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「~」は、その両端の値を下限値及び上限値として含む範囲を表す。
以下に、本発明の好ましい実施の形態について、シート状のポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に、非発泡樹脂層を有するポリスチレン系樹脂積層発泡シートを例にして説明する。ポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に非発泡樹脂層が設けられていてもよく、ポリスチレン系樹脂発泡シートの両面に非発泡樹脂層が設けられていてもよい。ポリスチレン系樹脂発泡シートは、単層の発泡層で構成されていてもよく、2層以上の発泡層を有していてもよい。非発泡樹脂層は、単層の非発泡層で構成されていてもよく、2層以上の非発泡層を有していてもよい。
【0015】
[ポリスチレン系樹脂積層発泡シート]
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(以下、単に「積層発泡シート」ともいう)は、シート状のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう)と、発泡シートの片面又は両面に非発泡樹脂層が積層されてなる。
非発泡樹脂層は、スチレン成分とブタジエン成分とオレフィン成分とを含む混合樹脂を含有する。
積層発泡シートの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の積層発泡シート1の断面図である。積層発泡シート1は、シート状の発泡シート10と、発泡シート10の片面に積層された非発泡樹脂層20とを有する。
【0017】
積層発泡シート1の厚さT1は、用途を勘案して決定できる。例えば、厚さT1は、0.5~7.5mmが好ましく、0.7~5.0mmがより好ましく、1.0~4.0mmがさらに好ましい。厚さT1が上記下限値以上であると、容器強度、容器の耐衝撃性をより高められる。厚さT1が上記上限値以下であると、積層発泡シート1の成形性をより高められる。
厚さT1は、例えば、ダイヤルシックネスゲージを用いて測定できる。
【0018】
積層発泡シート1の坪量は、例えば、70~850g/m2が好ましく、120~700g/m2がより好ましく、200~550g/m2がさらに好ましい。積層発泡シート1の坪量が上記下限値以上であると、容器の耐衝撃性をより高められる。積層発泡シート1の坪量が上記上限値以下であると、積層発泡シート1の成形性をより高められる。
積層発泡シート1の坪量は、以下の方法で測定できる。
積層発泡シート1の幅方向(TD方向)の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m2当たりの質量に換算した値を、積層発泡シート1の坪量(g/m2)とする。
【0019】
積層発泡シート1の見掛け密度は、例えば、0.060~0.716g/cm3が好ましく、0.086~0.540g/cm3がより好ましく、0.130~0.363g/cm3がさらに好ましい。積層発泡シート1の見掛け密度が上記下限値以上であると、容器の耐衝撃性をより高められる。積層発泡シート1の見掛け密度が上記上限値以下であると、容器をより軽量にでき、かつ断熱性をより高められる。
【0020】
積層発泡シート1の見掛け密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定することによって求められる。
具体的には、元のセル構造を変えないように切断した積層発泡シート1の試験片について、その質量と見掛け体積とを測定し、下記式(1)により算出する。
積層発泡シート1の見掛け密度(g/cm3)=試験片の質量(g)/試験片の見掛け体積(cm3)・・・(1)
【0021】
≪発泡シート≫
発泡シート10は、ポリスチレン系樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡してなる層(発泡樹脂層)であり、樹脂中に気泡が形成されている。発泡性樹脂組成物に含まれる樹脂(即ち、発泡シート10を構成する樹脂)は、熱可塑性樹脂である。
【0022】
ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i-プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体;スチレン系モノマーを主成分とし、スチレン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体;スチレン系モノマーとブタジエン等のゴム分との共重合体、スチレン系モノマーの単独重合体もしくはこれらの共重合体もしくはスチレン系モノマーとビニルモノマーとの共重合体とジエン系のゴム状重合体との混合物又は重合体である、いわゆるハイインパクトポリスチレン;等が挙げられる。
【0023】
スチレン系モノマーと重合可能なビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を表し、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」と「メタクリロニトリル」の一方又は双方を表す。
【0024】
ジエン系のゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン三次元共重合体等が挙げられる。
これらのポリスチレン系樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
ポリスチレン系樹脂としては、スチレンモノマーから誘導される単位を50モル量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、中でもポリスチレンがより好ましい。
【0025】
ポリスチレン系樹脂は、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)、市販されているポリスチレン系樹脂、懸濁重合法等の方法で新たに調製されたポリスチレン系樹脂等、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂でもよいし、リサイクル原料のポリスチレン系樹脂でもよい。
リサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレー等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したものが挙げられる。また、例えば、リサイクル原料としては、ポリスチレン系樹脂発泡シートから食品包装用トレーを打ち抜いた後に生じる端材を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものが挙げられる。
使用できるリサイクル原料としては、使用済みの発泡容器等の成形体を再生処理して得られたもの以外に、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)、事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)等から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂が挙げられる。
【0026】
ポリスチレン系樹脂の質量平均分子量Mwは、12万~45万が好ましく、15万~40万がより好ましい。質量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値を、標準ポリスチレンによる較正曲線に基づき換算した値である。
【0027】
ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、0.5~6.0g/10minが好ましく、0.7~3.0g/10minがより好ましい。ポリスチレン系樹脂のMFRが上記下限値以上であると、容器強度をより高められる。ポリスチレン系樹脂のMFRが上記上限値以下であると、発泡シート10の成形性をより高められる。
本明細書において、ポリスチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に記載のB法に準拠し、試験温度200℃、試験荷重49.03N、予熱時間5分の条件で測定される値をいう。
【0028】
発泡シート10を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対するポリスチレン系樹脂の含有量は、50質量部以上が好ましく、75質量部以上がより好ましく、90質量部以上がさらに好ましく、95質量部以上が特に好ましい。ポリスチレン系樹脂の含有量が上記下限値以上であると、発泡シート10の成形性をより高められ、成形体である発泡容器の剛性(容器強度)を高められる。
ポリスチレン系樹脂の含有量の上限値は、特に限定されず、発泡シート10を構成する熱可塑性樹脂100質量部に対して、100質量部でもよい。
【0029】
発泡性樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含有してもよい。ポリスチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(2,6-ジメチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジエチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジクロルフェニレン-1,4-エーテル)等のポリフェニレンエーテル系樹脂等が挙げられる。
【0030】
発泡性樹脂組成物は、発泡剤を含有する。
発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素;テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;等が挙げられ、中でも、炭化水素が好ましく、ブタンが好ましい。ブタンとしては、ノルマルブタン又はイソブタンがそれぞれ単独で使用されてもよいし、ノルマルブタンとイソブタンとが任意の割合で併用されてもよい。これらの発泡剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0031】
発泡性樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部が好ましく、1~7質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。
【0032】
発泡性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、発泡剤以外の他の成分(以下、「発泡層任意成分」ともいう)を含有してもよい。発泡層任意成分としては、例えば、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、消臭剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等が挙げられる。
発泡層任意成分の種類は、発泡シート10に求められる物性等を勘案して決定される。発泡層任意成分は、1種単独でもよく、2種以上の組み合わせでもよい。
【0033】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末等の混合物等が挙げられる。これらの気泡調整剤は、発泡シート10の独立気泡率を高め、発泡層を形成しやすい。
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物等が挙げられる。
【0034】
発泡性樹脂組成物中の発泡層任意成分の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、例えば、0.05~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.3~5.0質量部がさらに好ましい。発泡層任意成分の含有量が上記下限値以上であると、発泡層任意成分に由来する効果を発揮できる。発泡層任意成分の含有量が上記上限値以下であると、ダイ等への目詰まりをより良好に防止し、発泡シート10の外観をより良好にできる。
【0035】
発泡シート10の厚さT10は、例えば、0.3~5.0mmが好ましく、0.4~3.0mmがより好ましく、0.5~2.5mmがさらに好ましい。発泡シート10の厚さT10が上記下限値以上であると、発泡容器の耐衝撃性をより高められる。発泡シート10の厚さT10が上記上限値以下であると、発泡容器をより軽量にし、かつ成形性のさらなる向上を図れる。
発泡シート10の厚さT10は、積層発泡シート1の厚さT1と同様の方法で求められる。
【0036】
発泡シート10の坪量は、例えば、50~600g/m2が好ましく、90~500g/m2がより好ましく、150~400g/m2がさらに好ましい。発泡シート10の坪量が上記下限値以上であると、発泡容器の耐衝撃性をより高められる。発泡シート10の坪量が上記上限値以下であると、発泡容器をより軽量にし、かつ成形性のさらなる向上を図れる。加えて、発泡シート10の坪量が上記上限値以下であると、加熱成形の際の加熱時間が長くなり過ぎず、発泡容器の生産性をより高められる。
発泡シート10の坪量は、積層発泡シート1の坪量と同様の方法で求められる。
【0037】
発泡シート10の見掛け密度は、例えば、0.050~0.666g/cm3が好ましく、0.066~0.500g/cm3がより好ましく、0.100~0.333g/cm3がさらに好ましい。発泡シート10の見掛け密度が上記下限値以上であると、発泡容器の耐衝撃性をより高められる。発泡シート10の見掛け密度が上記上限値以下であると、発泡容器をより軽量にでき、かつ断熱性をより高められる。
発泡シート10の見掛け密度は、積層発泡シート1の見掛け密度と同様の方法で求められる。
【0038】
発泡シート10の発泡倍率は、例えば、1.5~20倍が好ましく、2~15倍がより好ましく、3~10倍がさらに好ましい。発泡シート10の発泡倍率が上記下限値以上であると、発泡容器の耐衝撃性をより高められる。発泡シート10の発泡倍率が上記上限値以下であると、発泡シート10の成形性のさらなる向上を図れる。
発泡シート10の発泡倍率は、1を「発泡シート10の見掛け密度(g/cm3)」で除した値である。
【0039】
発泡シート10の平均気泡径は、例えば、80~450μmが好ましく、150~400μmがより好ましく、200~350μmがさらに好ましい。発泡シート10の平均気泡径が上記下限値以上であると、発泡容器の耐衝撃性をより高められる。発泡シート10の平均気泡径が上記上限値以下であると、発泡容器の表面平滑性をより高められる。
発泡シート10の平均気泡径は、ASTM D2842-69に記載の方法に準拠して測定できる。
【0040】
発泡シート10の独立気泡率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%でもよい。発泡シート10の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック‐連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法に準拠して測定できる。
【0041】
≪非発泡樹脂層≫
非発泡樹脂層20は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む混合樹脂を含み、実質的に気泡が形成されていない層である。加えて、非発泡樹脂層20は、実質的に発泡剤を含有しない層である。非発泡樹脂層20は、実質的に気泡が形成されていない層であるが、非発泡樹脂層20を共押出法で形成する場合等では、わずかに発泡剤を含んでいてもよい。
【0042】
混合樹脂は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含む。
本明細書において、「混合樹脂」とは、非発泡樹脂層20を構成する樹脂組成物中の全樹脂成分のことをいう。
ポリスチレン系樹脂のMFRは、上述した発泡シート10を構成するポリスチレン系樹脂のMFRと同様である。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂の場合、ポリエチレン系樹脂のMFRは、0.1~15.0g/10minが好ましく、0.2~8.0g/10minがより好ましい。ポリエチレン系樹脂のMFRが上記下限値以上であると、溶融時の流動性が良好で、生産性をより高められる。ポリエチレン系樹脂のMFRが上記上限値以下であると、成形時の伸びが良好で、成形性をより高められる。
本明細書において、ポリエチレン系樹脂のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に記載のB法に準拠し、試験温度190℃、試験荷重21.18N、予熱時間5分の条件で測定される値をいう。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂の場合、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、2.0~20.0g/10minが好ましく、4.0~14.0g/10minがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂のMFRが上記下限値以上であると、溶融時の流動性が良好で、生産性をより高められる。ポリプロピレン系樹脂のMFRが上記上限値以下であると、成形時の伸びが良好で、成形性をより高められる。
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に記載のB法に準拠し、試験温度230℃、試験荷重21.18N、予熱時間5分の条件で測定される値をいう。
【0045】
本明細書において、スチレン成分は、混合樹脂を加熱して分解した際に得られるスチレンモノマーを意味する。スチレン成分は、混合樹脂に含まれるポリスチレン系樹脂に由来する。ポリスチレン系樹脂としては、発泡シート10を構成するポリスチレン系樹脂と同様の樹脂が挙げられる。中でも、ハイインパクトポリスチレン系樹脂を含むものが好ましい。混合樹脂がハイインパクトポリスチレン系樹脂を含むことで、発泡容器の耐衝撃性をより高められる。
【0046】
本明細書において、ブタジエン成分は、混合樹脂を加熱して分解した際に得られるブタジエンモノマー及び4-ビニル-1-シクロヘキセンモノマーを意味する。ブタジエン成分は、混合樹脂に含まれるポリスチレン系樹脂に由来する。
【0047】
本明細書において、オレフィン成分は、混合樹脂を加熱して分解した際に得られるオレフィンモノマーを意味する。オレフィン成分は、混合樹脂に含まれるポリオレフィン系樹脂に由来する。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリスチレン系樹脂と混合した場合に混合樹脂の成形性が良好であることから、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、容器強度をより高められることから、HDPEが好ましい。
本明細書において、高密度ポリエチレンとは、樹脂密度が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下のポリエチレン系樹脂をいう。中密度ポリエチレンとは、樹脂密度が0.930g/cm3超0.940g/cm3未満のポリエチレン系樹脂をいう。低密度ポリエチレンとは、樹脂密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下のポリエチレン系樹脂をいう。直鎖状低密度ポリエチレンとは、直鎖状の低密度ポリエチレンをいう。
ポリエチレン系樹脂の樹脂密度は、JIS K7112:1999「プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のB法(ピクノメーター法)に記載方法に準拠して測定できる。
【0048】
ポリオレフィン系樹脂は、ラミネート加工性をより高められることから、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含むことが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂が、高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンとを含む場合、高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとの質量比(高密度ポリエチレン:低密度ポリエチレン)は、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、30:70~70:30がさらに好ましい。高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとの質量比が10:90以上であると、発泡シート10の成形時のドローダウンをより抑制できる。高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとの質量比が90:10以下であると、混合樹脂の溶融伸びをより高められ、引取安定性をより高められる。
ここで、「ラミネート加工性」とは、混合樹脂を押出す際の非発泡樹脂層20の成形性を評価する指標の一つであり、ネックインと引取安定性とから評価できる。
本明細書において、「ネックイン」とは、ネックイン現象のことをいい、非発泡樹脂層20の幅方向(TD方向)の両端部の厚さが厚くなる現象のことをいう。「引取安定性」とは、非発泡樹脂層20を引取る際の引取速度を上げたときに、非発泡樹脂層20の厚さの変動を抑制することをいう。
ラミネート加工性を高めることで、非発泡樹脂層20の成形性をより一層高められ、積層発泡シート1の生産性をより一層高められる。
【0049】
混合樹脂に含まれるポリオレフィン系樹脂は、環境負荷を低減できることから、植物由来樹脂であることが好ましい。植物由来樹脂としては、例えば、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーが挙げられる。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
植物由来樹脂としては、いわゆるバイオPE、バイオPP等、植物由来のポリエチレン系樹脂、植物由来のポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0050】
混合樹脂におけるスチレン成分の含有量は、混合樹脂の総質量に対して27~95質量%であり、40~93質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。混合樹脂におけるスチレン成分の含有量が上記下限値以上であると、剥離強度をより高められる。混合樹脂におけるスチレン成分の含有量が上記上限値以下であると、発泡シート10の成形時のドローダウンをより抑制できる。
混合樹脂におけるスチレン成分の含有量は、実施例に記載の方法で求められる。
【0051】
混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量は、混合樹脂の総質量に対して2.2~12質量%であり、3.2~10質量%が好ましく、4.1~8.0質量%がより好ましい。混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量が上記下限値以上であると、容器の耐衝撃性及び成形性をより高められる。混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量が上記上限値以下であると、容器強度をより高められる。
混合樹脂におけるブタジエン成分の含有量は、実施例に記載の方法で求められる。
【0052】
混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、混合樹脂の総質量に対して0.1~70質量%であり、2~50質量%が好ましく、3~40質量%がより好ましい。混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量が上記下限値以上であると、成形時のドローダウンをより抑制できる。混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量が上記上限値以下であると、容器強度及び剥離強度をより高められる。
混合樹脂におけるオレフィン成分の含有量は、実施例に記載の方法で求められる。
【0053】
混合樹脂がハイインパクトポリスチレン系樹脂を含む場合、混合樹脂におけるハイインパクトポリスチレン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂との質量比(ハイインパクトポリスチレン系樹脂:ポリオレフィン系樹脂)は、45:55~99.9~0.1が好ましく、50:50~98:2がより好ましく、60:40~95:5がさらに好ましい。混合樹脂におけるハイインパクトポリスチレン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂との質量比が上記数値範囲内であると、容器強度及び容器の耐衝撃性に優れ、かつ、成形時のドローダウンをより抑制できる。
【0054】
非発泡樹脂層20を構成する樹脂組成物は、混合樹脂を含む。混合樹脂を含む樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂へのポリオレフィン系樹脂の分散性を向上させるために、相溶化剤を含有することが好ましい。
相溶化剤としては、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを相溶化し得るものであればよく、従来公知の相溶化剤を用いることができる。相溶化剤としては、特にスチレン系熱可塑性エラストマーの使用が好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性、弾力性に優れ、ゴム的性状を有する。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンとブタジエンとスチレンとのエラストマー(SBS系)、スチレンとイソプレンとスチレンとのエラストマー(SIS系)、これらを水添した水添スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。水添スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンとエチレンとブチレンとスチレンとのエラストマー(SEBS系)、スチレンとブタジエンとブチレンとスチレンとのエラストマー(SBBS系)、スチレンとエチレンとプロピレンとスチレンとのエラストマー(SEPS系)等が挙げられる。これらの中でもハイインパクトポリスチレン系樹脂へのポリオレフィン系樹脂の分散性をより向上できることから、相溶化剤としては、SEBS系の水添スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0055】
樹脂組成物が相溶化剤を含有する場合、相溶化剤の含有量は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との合計量100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~15質量部がより好ましく、3~10質量部がさらに好ましい。相溶化剤の含有量が上記数値範囲内であると、ポリスチレン系樹脂へのポリオレフィン系樹脂の分散性をより向上できる。
【0056】
非発泡樹脂層20において、熱流束示差走査熱量測定(DSC)装置を用いて測定される混合樹脂の結晶化ピークのピーク温度(Tc)は、90~140℃が好ましく、95~130℃がより好ましく、100~125℃がさらに好ましい。混合樹脂の結晶化ピークのピーク温度(Tc)が上記下限値以上であると、成形時のドローダウンをより抑制できる。混合樹脂の結晶化ピークのピーク温度(Tc)が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
混合樹脂の結晶化ピークのピーク温度(Tc)は、実施例に記載の方法で求められる。
混合樹脂の結晶化ピークのピーク温度(Tc)は、混合樹脂の種類、混合樹脂の組成、及びこれらの組合せにより調節できる。
【0057】
非発泡樹脂層20における混合樹脂の融点(Tm)は、100~160℃が好ましく、105~150℃がより好ましく、110~140℃がさらに好ましい。非発泡樹脂層20における混合樹脂の融点(Tm)が上記数値範囲内であると、成形性をより高められる。
非発泡樹脂層20における混合樹脂の融点(Tm)は、実施例に記載の方法で求められる。
非発泡樹脂層20における混合樹脂の融点(Tm)は、混合樹脂の種類、混合樹脂の組成、及びこれらの組合せにより調節できる。
【0058】
非発泡樹脂層20における混合樹脂の融点(Tm)と、混合樹脂の結晶化ピークのピーク温度(Tc)との温度差(Tm-Tc)(以下、「過冷却温度差」ともいう)は、1~20℃が好ましく、5~17℃がより好ましく、11~14℃がさらに好ましい。過冷却温度差(Tm-Tc)が上記数値範囲内であると、成形時のドローダウンをより抑制できる。
過冷却温度差(Tm-Tc)は、混合樹脂の融点(Tm)と、混合樹脂の結晶化ピークのピーク温度(Tc)とから算出できる。
【0059】
非発泡樹脂層20における混合樹脂の軟化温度は、96~140℃が好ましく、98~130℃がより好ましく、100~120℃がさらに好ましい。非発泡樹脂層20における混合樹脂の軟化温度が上記下限値以上であると、成形時のドローダウンをより抑制できる。非発泡樹脂層20における混合樹脂の軟化温度が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
非発泡樹脂層20における混合樹脂の軟化温度は、JIS K7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に記載の方法に準拠して測定できる。
非発泡樹脂層20における混合樹脂の軟化温度は、混合樹脂の種類、混合樹脂の組成、及びこれらの組合せにより調節できる。
【0060】
非発泡樹脂層20における混合樹脂の樹脂密度は、0.990~1.039g/cm3が好ましく、1.000~1.038g/cm3がより好ましく、1.010~1.037g/cm3がさらに好ましい。非発泡樹脂層20における混合樹脂の樹脂密度が上記下限値以上であると、容器強度をより高められる。非発泡樹脂層20における混合樹脂の樹脂密度が上記上限値以下であると、成形時のドローダウンをより抑制できる。
非発泡樹脂層20における混合樹脂の樹脂密度は、実施例に記載の方法で求められる。
非発泡樹脂層20における混合樹脂の樹脂密度は、混合樹脂の種類、混合樹脂の組成、及びこれらの組合せにより調節できる。
【0061】
非発泡樹脂層20の溶融張力は、2.1cN以上が好ましく、2.6cN以上がより好ましく、3.4cN以上がさらに好ましい。非発泡樹脂層20の溶融張力が上記下限値以上であると、成形時の伸びが良好で、成形性をより高められる。非発泡樹脂層20の溶融張力の上限値は特に限定されず、例えば、8cN以下とされる。
非発泡樹脂層20の溶融張力は、実施例に記載の方法で求められる。
非発泡樹脂層20の溶融張力は、混合樹脂の種類、混合樹脂の組成、及びこれらの組合せにより調節できる。
【0062】
非発泡樹脂層20の厚さT20は、15~400μmが好ましく、30~300μmがより好ましく、50~200μmがさらに好ましく、90~160μmが特に好ましい。非発泡樹脂層20の厚さT20が上記下限値以上であると、容器強度をより高められる。非発泡樹脂層20の厚さT20が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
非発泡樹脂層20の厚さT20は、積層発泡シート1を厚さ方向に切断した断面を顕微鏡等で観察することにより求められる。
【0063】
非発泡樹脂層20を構成する樹脂組成物は、混合樹脂以外の他の成分(以下、「任意成分」ともいう)を含有してもよい。任意成分としては、上述した発泡層任意成分と同様の成分が挙げられる。
樹脂組成物が任意成分を含む場合、任意成分の含有量は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との合計量100質量部に対して、例えば、0.05~10質量部が好ましく、0.1~5.0質量部がより好ましく、0.3~3.0質量部がさらに好ましい。任意成分の含有量が上記下限値以上であると、任意成分に由来する効果を発揮できる。任意成分の含有量が上記上限値以下であると、溶融時の流動性が良好で、生産性をより高められる。
【0064】
[積層発泡シートの製造方法]
積層発泡シート1の製造方法としては、例えば、発泡シート10となる原反シートを製造し(原反シート製造工程)、原反シートの片面又は両面に、混合樹脂を含む樹脂組成物を押出して積層する(積層工程)方法が挙げられる。
【0065】
原反シート製造工程としては、従来公知の製造方法を採用できる。
まず、熱可塑性樹脂及びその他成分を含有する原料組成物と、発泡剤とを押出機に供給して溶融し、混練して発泡性樹脂組成物とする。熱可塑性樹脂を溶融する温度(溶融温度:設定温度)は、例えば、180~270℃が好ましい。溶融温度が上記下限値以上であると、樹脂と他の原料とを均一に混合できる。溶融温度が上記上限値以下であると、樹脂の分解を抑制できる。
【0066】
積層工程としては、樹脂組成物を押出機(Tダイ)により原反シートの表面に押出す方法(Tダイ法)、共押出により発泡シート1に非発泡樹脂層20が設けられた積層発泡シート1を得る方法(共押出法)等が挙げられる。
【0067】
積層工程において、押出機から押出す樹脂組成物の坪量は、例えば、15~400g/m2が好ましく、30~300g/m2がより好ましく、50~200g/m2がさらに好ましく、90~160g/m2が特に好ましい。押出機から押出す樹脂組成物の坪量が上記下限値以上であると、非発泡樹脂層20の厚さが充分な積層発泡シート1が得られる。このため、成形時のドローダウンをより抑制できる。押出機から押出す樹脂組成物の坪量が上記上限値以下であると、成形性をより高められる。
【0068】
非発泡樹脂層20を引取機で引取る際の引取速度は、特に限定されないが、例えば、10~30m/minが好ましく、13~28m/minがより好ましく、20~26m/minがさらに好ましい。引取速度が上記下限値以上であると、非発泡樹脂層20の生産性をより高められる。引取速度が上記上限値以下であると、非発泡樹脂層20のラミネート加工性をより高められる。
【0069】
積層発泡シート1は、原反シートと、非発泡樹脂層20となる非発泡層原反とを各々製造し、原反シートと非発泡層原反とを重ね、これを加熱圧着して(熱圧着法)製造してもよい。原反シートと非発泡層原反とを重ね、これを接着剤で貼り合せてもよい(貼合法)。
【0070】
非発泡層原反は、非発泡層原反の原料となる2種以上の樹脂ペレットを予め溶融混合し、再度ペレット(混合ペレット)とし、これを押出機に供給して溶融し、混錬して、非発泡層原反を製造してもよい。非発泡層原反の製造方法としては、混合ペレットをTダイ法又は共押出法に供してもよい。あるいは、混合ペレットを製造せずに、1種以上の樹脂ペレットを押出機に供給して溶融し、混錬して非発泡層原反を製造してもよい。混合樹脂の分散性をより高めて、発泡容器の耐衝撃性をより高められる観点から、混合ペレットを用いて非発泡樹脂層を形成することが好ましい。
【0071】
本実施形態によれば、片面又は両面に非発泡樹脂層20が積層されているため、成形時のドローダウンを抑制できる。加えて、本実施形態の非発泡樹脂層20は、混合樹脂におけるスチレン成分の含有量、ブタジエン成分の含有量及びオレフィン成分の含有量が特定の範囲内であるため、剥離強度を高められる。さらに、本実施形態の非発泡樹脂層20は、混合樹脂におけるスチレン成分の含有量、ブタジエン成分の含有量及びオレフィン成分の含有量が特定の範囲内であるため、成形時の伸びが良好で、成形性をより高められる。
【0072】
本実施形態の積層発泡シート1は、片面又は両面に熱可塑性樹脂フィルム層(不図示)を有していることが好ましい。積層発泡シート1は、片面のみに熱可塑性樹脂フィルム層を有していてもよく、両面に熱可塑性樹脂フィルム層を有していてもよい。すなわち、発泡シート10の片面又は両面及び非発泡樹脂層20の片面又は両面の少なくとも一つの面に、熱可塑性樹脂フィルム層が位置することが好ましい。
積層発泡シート1が熱可塑性樹脂フィルム層を有する場合、発泡シート10の表面(最表面)11及び非発泡樹脂層20の表面(最表面)21の双方又はいずれか一方に、熱可塑性樹脂フィルム層が積層されていることがより好ましい。熱可塑性樹脂フィルム層を積層することによって、積層発泡シート1や発泡容器の強度を向上できる。加えて、積層発泡シート1や発泡容器に、耐油性、意匠性、表面平滑性、印刷性、酸素バリア性、水蒸気バリア性等を付与できる。
本発明の効果を阻害しない範囲で、発泡シート10と非発泡樹脂層20との界面30に熱可塑性樹脂フィルム層を設けてもよい。
【0073】
熱可塑性樹脂フィルム層は、単層のフィルム層で構成されていてもよく、2層以上のフィルム層を有していてもよい。
熱可塑性樹脂フィルム層は、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸又は二軸延伸された延伸フィルムであってもよい。
熱可塑性樹脂フィルム層は、環境負荷を低減できることから、植物由来樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルム層は、意匠性を付与できることから、印刷柄等が施された印刷層を有することが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルム層の厚さは、例えば、10~200μmが好ましく、13~150μmがより好ましく、15~80μmがさらに好ましい。
【0074】
熱可塑性樹脂フィルム層としては、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンフラノエート系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、エチレンビニルアルコール系樹脂フィルム等が挙げられる。
ポリスチレン系樹脂フィルムは、発泡シート10と非発泡樹脂層20との接着性に優れることから、熱圧着法によって積層できるので好ましい。
ポリプロピレン系樹脂フィルムは、積層発泡シートや発泡容器に耐油性を付与できるので好ましい。
ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、エチレンビニルアルコール系樹脂フィルムは、酸素や水蒸気等のガスバリア性を付与できるので好ましい。
【0075】
熱可塑性樹脂フィルム層を積層させる方法としては、次の方法等が挙げられる。
(1)熱可塑性樹脂フィルム層と発泡シート10とをこの順で重ね、これを加熱圧着する方法(熱圧着法)、あるいは、熱可塑性樹脂フィルム層と非発泡樹脂層20とをこの順で重ね、これを加熱圧着する方法(熱圧着法)。
(2)熱可塑性樹脂フィルム層と発泡シート10とをこの順で重ね、各層を接着剤で貼り合せる方法(貼合法)、あるいは、熱可塑性樹脂フィルム層と非発泡樹脂層20とをこの順で重ね、各層を接着剤で貼り合せる方法(貼合法)。
(3)熱可塑性樹脂フィルム層の原料となる樹脂をTダイにより発泡シート10の表面、あるいは、非発泡樹脂層20の表面に押し出す方法(Tダイ法)。
(4)共押出により、発泡シート10に熱可塑性樹脂フィルム層が設けられた積層体を得る方法(共押出法)、あるいは、共押出により、非発泡樹脂層20に熱可塑性樹脂フィルム層が設けられた積層体を得る方法(共押出法)。
【0076】
[ポリスチレン系樹脂積層発泡容器]
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡容器(以下、「発泡容器」ともいう)は、上述した本発明の積層発泡シートを成形してなるものである。
成形体としては、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々の容器;容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。
これらの容器の用途としては、例えば、食品用が好ましい。
【0077】
本発明の発泡容器の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図2の発泡容器100は、平面視形状が真円形の丼形状の容器である。発泡容器100は、円形の底壁110と、底壁110の周縁から立ち上がる側壁120とを有する。側壁120は上端に向かうに従い、外側に広がっている。
発泡容器100には、側壁120の上端で囲まれた開口部130が形成されている。側壁120の上端で囲まれた開口部130は、平面視真円形である。底壁110は、開口部130の方向に凸となる平面視真円形の凸部112と、凸部112を囲む円環状の凹部114とから形成されている。
発泡容器100は、即席麺等を収納し、熱湯を注いで喫食する等の食品用の容器として、好適に用いられる。
【0078】
なお、本実施形態の発泡容器100は、平面視で真円形であるが、本発明はこれに限定されない。発泡容器の平面視形状は、楕円形でもよいし多角形でもよい。
【0079】
発泡容器100は、内面のみに非発泡樹脂層を有していてもよく、外面のみに非発泡樹脂層を有していてもよく、内面及び外面の双方に非発泡樹脂層を有していてもよい。
発泡容器100は、熱可塑性樹脂フィルム層を有していることが好ましい。発泡容器100は、内面のみに熱可塑性樹脂フィルム層を有していてもよく、外面のみに熱可塑性樹脂フィルム層を有していてもよく、内面及び外面の双方に熱可塑性樹脂フィルム層を有していてもよい。
【0080】
[発泡容器の製造方法]
発泡容器の製造方法としては、例えば、積層発泡シートを加熱して軟化させ(加熱工程)、これを雌型と雄型とで挟み込んで成形する(成形工程)方法(熱成形方法)が挙げられる。
【0081】
加熱工程は、積層発泡シートを加熱して軟化する工程である。加熱工程における加熱温度は、積層発泡シートが軟化する温度であればよく、例えば、80~150℃とされる。
【0082】
成形工程は、加熱された積層発泡シートを雌型と雄型とで挟み込んで、任意の形状の容器を得る工程である。この際、本発明の積層発泡シートは、片面又は両面に混合樹脂を含む非発泡樹脂層が積層されているため、ドローダウンを抑制できる。加えて、本実施形態の非発泡樹脂層は、混合樹脂におけるスチレン成分の含有量、ブタジエン成分の含有量及びオレフィン成分の含有量が特定の範囲内であるため、剥離強度、容器強度、耐衝撃性を高められる。さらに、本実施形態の非発泡樹脂層は、混合樹脂におけるスチレン成分の含有量、ブタジエン成分の含有量及びオレフィン成分の含有量が特定の範囲内であるため、成形時の伸びが良好で、成形性をより高められる。
【0083】
成形工程における成形方法としては、例えば、真空成形や圧空成形、あるいはこれらの応用としてのフリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースロード成形等、従来公知の熱成形方法が挙げられる。
【0084】
成形工程における成形型の温度は特に限定されないが、例えば、50~150℃が好ましく、60~130℃がより好ましい。成形型の温度が上記下限値以上であると、成形速度を高められ、生産性をより高められる。成形型の温度が上記上限値以下であると、積層発泡シートが溶融するのを防止できる。
【0085】
成形型内で、積層発泡シートを所望の形状に成形した後、金型を開き、積層発泡シートから発泡容器部分を打ち抜く。積層発泡シートから発泡容器部分を打ち抜くことで、発泡容器が得られる。
【0086】
以上説明した通り、本発明の発泡容器によれば、片面又は両面に混合樹脂を含む非発泡樹脂層が積層されているため、容器強度、耐衝撃性を高められる。
【実施例0087】
以下に、実施例を示して本願発明をより詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0088】
(使用原料)
≪ポリスチレン系樹脂≫
・E641N:ハイインパクトポリスチレン、商品名「E641N」(東洋スチレン(株)製)、ブタジエン成分:6質量%、樹脂密度:1.04g/cm3。
・XL5:ハイインパクトポリスチレン、商品名「XL5」(東洋スチレン(株)製)、ブタジエン成分:13質量%、樹脂密度:1.04g/cm3。
・475D:ハイインパクトポリスチレン、商品名「475D」(PSジャパン(株)製)、ブタジエン成分:3.9質量%、樹脂密度:1.04g/cm3。
・HRM26:汎用ポリスチレン、商品名「HRM26」(東洋スチレン(株)製)、樹脂密度:1.05g/cm3。
・HP555:汎用ポリスチレン、商品名「HP555」(DIC(株)製)、樹脂密度:1.05g/cm3。
【0089】
≪ポリオレフィン系樹脂≫
・SGF4960:高密度ポリエチレン(HDPE)、商品名「SGF4960」(植物由来、Braskem社製)、MFR:0.34g/10min、樹脂密度:0.961g/cm3。
・SGF4950:高密度ポリエチレン(HDPE)、商品名「SGF4950」(植物由来、Braskem社製)、MFR:0.34g/10min、樹脂密度:0.956g/cm3。
・SGE7252NS:高密度ポリエチレン(HDPE)、商品名「SGE7252NS」(植物由来、Braskem社製)、MFR:2.2g/10min、樹脂密度:0.953g/cm3。
・SHC7260:高密度ポリエチレン(HDPE)、商品名「SHC7260」(植物由来、Braskem社製)、MFR:7.2g/10min、樹脂密度:0.959g/cm3。
・HY540:高密度ポリエチレン(HDPE)、商品名「HY540」(石油由来、日本ポリエチレン(株)製)、MFR:1.0g/10min、樹脂密度:0.946g/cm3。
・J241:高密度ポリエチレン(HDPE)、商品名「J241」(石油由来、旭化成(株)製)、MFR:5.0g/10min、樹脂密度:0.964g/cm3。
・SBF0323HC:低密度ポリエチレン(LDPE)、商品名「SBF0323HC」(植物由来、Braskem社製)、MFR:0.32g/10min、樹脂密度:0.923g/cm3。
・SLL118:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、商品名「SLL118」(植物由来、Braskem社製)、MFR:1.0g/10min、樹脂密度:0.918g/cm3。
・PM600A:ホモポリプロピレン(PP)、商品名「PM600A」(石油由来、サンアロマー(株)製)、MFR:8.0g/10min、樹脂密度:0.900g/cm3。
【0090】
<相溶化剤>
・H1043:水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS系)、商品名「タフテック(登録商標)H1043」(旭化成(株)製)、樹脂密度:0.970g/cm3、成分比(質量比)「スチレン/ブタジエン/オレフィン」=67/4/29。
【0091】
[実施例1~22、比較例1~4]
≪原反シートの製造≫
主原料としてメルトマスフローレイト(MFR)1.8g/10minのポリスチレン系樹脂(商品名「G0002」、PSジャパン(株)製)100質量部、気泡調整剤としてタルクマスターバッチ(商品名「DSM1401A」、東洋スチレン(株)製)1.0質量部をタンデムの押出機に入れ、混合し、溶融し、混練した。この溶融物に所定の位置でブタンガス(イソブタン)3.3質量部を圧入し、混練した後、円筒状の発泡体を口径φ170mmのサーキュラーダイから押し出し、所定のマンドレルにて冷却し、切り裂いてシート状に成形し、巻き取りを行った。得られた原反シート(発泡シート)の厚さは1.75mm、坪量は220g/m2、見掛け密度は0.126g/cm3であった。
【0092】
≪非発泡樹脂層用の樹脂組成物の混合≫
表1~6に示す配合量でポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ハイインパクトポリスチレン系樹脂、汎用ポリスチレン系樹脂)、相溶化剤を配合し、ミキシングドラムにて予備混合した。
【0093】
≪積層発泡シートの製造≫
上記≪原反シートの製造≫で得られた原反シートの片面に、上記≪非発泡樹脂層用の樹脂組成物の混合≫で予備混合した樹脂組成物を、押出機(Tダイ)にて坪量が120g/m2となるように調整して押出し、Tダイ法で引取速度13m/minでラミネートして積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの厚さは1.84mm(非発泡樹脂層の厚さは120μm、発泡シートの厚さは1.72mm)、坪量は340g/m2、見掛け密度は0.185g/cm3であった。
【0094】
[実施例23]
実施例4と同じ組成の樹脂組成物を上記原反シートの片面に押出し、Tダイ法でラミネートして、実施例4の積層発泡シートと同じ構成の積層体を得た。得られた積層体の非発泡樹脂層の表面(最表面)に、厚さ50μmのCPPSドライラミフィルム(厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムと厚さ20μmの無延伸ポリスチレンフィルムとを接着剤層を介して積層したドライラミフィルム)を、無延伸ポリスチレンフィルム側が非発泡樹脂層の表面に接着されるように、熱圧着法でラミネートした。また、得られた積層体の発泡シート(発泡層)の表面には、印刷柄を施した厚さ20μmのCPSフィルム(無延伸ポリスチレンフィルム)を、熱圧着法でラミネートした。このようにして、非発泡樹脂層の表面と、発泡シート(発泡層)の表面の双方に、熱可塑性樹脂フィルム層を有する積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの厚さは1.91mm(CPPSドライラミフィルムの厚さは50μm、非発泡樹脂層の厚さは120μm、発泡シートの厚さは1.72mm、CPSフィルムの厚さは20μm)、坪量は407g/m2、見掛け密度は0.212g/cm3であった。
【0095】
≪発泡容器の製造≫
各例の積層発泡シートを27±3℃、相対湿度60±5%にて24時間に亘って放置した。その後、積層発泡シートから縦700mm×横1040mmの平面視長方形の試験片を切り出した。
次に、単発成形機(東成産業(株)製、商品名「FM-3A」)を用い、この単発成形機の上側ヒーターの平均温度を270℃とし、下側ヒーターの平均温度を220℃とし、雰囲気温度を155℃とした。
次に、上記試験片を上記単発成形機に導入して15秒間加熱した後に、熱成形により上部に開口部を有する発泡容器を、各実施例に対してそれぞれ18個作製した。実施例1~16、比較例1~4の発泡容器は、容器内面に非発泡樹脂層を有し、実施例17の発泡容器は、容器内面に熱可塑性樹脂フィルム層(CPPSドライラミフィルム層)を有していた。得られた発泡容器は、平面視円形の丼状の容器(開口直径190mm、底部直径170mm、高さ50mm)であった。
【0096】
得られた積層発泡シートの物性、非発泡樹脂層の物性、発泡容器の物性を以下の方法で測定し、評価した。結果を表1~表4に示す。表中、非発泡樹脂層組成の欄の「-」は、その成分を含有しないことを示す。表中、非発泡樹脂層物性の欄の「-」は、その項目を測定していないことを示す。表中、評価の欄の「-」は、その項目の評価を行わなかったことを示す。
【0097】
≪混合樹脂中の各成分の割合(3成分比)≫
得られた積層発泡シートから、非発泡樹脂層をスライサー又は剃刀で採取した切片を切削し、試料を約0.1~0.5mg精秤した。キューリー点が590℃の日本分析工業(株)製「パイロホイル」強磁性金属体で上記試料を包んで試験体を作製した。試験体は強磁性金属体が試料に圧着するように作製し、日本分析工業(株)製「JPS-700型」キューリーポイントパイロライザー装置にて試験体を加熱して試料を分解させた。
【0098】
<スチレン成分の割合>
分解によって生成したスチレンモノマーを、アジレント・テクノロジー(株)製「GC7820」ガスクロマトグラフ(検出器=FID)を用いて測定し、スチレンモノマーのピーク面積を求めた。スチレンモノマーのピーク面積について、予め作成しておいた検量線より試料に含まれるスチレン成分の割合を算出した。検量線作成標準試料は、積水化成品工業(株)製の懸濁重合PS微粒子を使用した。
【0099】
<ブタジエン成分の割合>
分解によって生成したブタジエンモノマーと4-ビニル-1-シクロヘキセンモノマーを、アジレント・テクノロジー(株)製「GC7820」ガスクロマトグラフ(検出器=FID)を用いて測定し、ブタジエンモノマーと4-ビニル-1-シクロヘキセンモノマーとの合計のピーク面積を求めた。ブタジエンモノマーと4-ビニル-1-シクロヘキセンモノマーとの合計をブタジエン成分とした。試料に含まれるブタジエン成分の割合は、予め作成しておいた検量線より算出した。検量線作成標準試料は、スチレン/ブタジエンゴム=85/15(質量比)の標準試料を使用した。
【0100】
ガスクロマトグラフの測定条件等は以下の通りとした。
<測定条件>
・加熱:590℃、5秒間。
・オーブン温度:300℃。
・ニードル温度:300℃。
・カラム:Agilent Technologies社製「DB-5」(膜厚0.25μm×内径0.25mm×長さ30m)。
【0101】
<GCオーブン昇温条件>
・初期温度:50℃(0.5分間保持)。
・第1段階昇温速度:10℃/min(200℃まで、保持時間0分)。
・第2段階昇温速度:20℃/min(320℃まで)。
・最終温度:320℃(0.5分間保持)。
・キャリアガス:Heガス。
・He流量:25mL/min。
・注入口圧力:100kPa。
・カラム入口圧力:100kPa。
・注入口温度:300℃。
・検出器温度:300℃。
・スプリット比:1/50。
【0102】
<オレフィン成分の割合>
非発泡樹脂層に含まれる主な成分が、スチレン成分、ブタジエン成分、エチレン成分の3成分系の場合は、下記式(2)によりオレフィン成分(エチレン成分)の割合を算出した。
[エチレン成分の含有量(質量%)]=100-[ガスクロマトグラフで測定されたスチレン成分の含有量(質量%)]-[ガスクロマトグラフで測定されたブタジエン成分の含有量(質量%)] ・・・(2)
【0103】
なお、非発泡樹脂層に含まれる主な成分が、スチレン成分、ブタジエン成分、エチレン成分の3成分系であることは、赤外吸光スペクトルを下記の測定装置及び測定条件により測定することで確認した。
<測定装置及び測定条件>
・測定装置:Thermo SCIENTIFIC社製「Nicolet iS10」フーリエ変換赤外分光光度計及びThermo SCIENTIFIC社製一回反射型水平状ATR Smart-iTR。
・ATRクリスタル:ダイヤモンド貼付KRS-5(角度=45°)。
・測定法:一回反射型ATR法。
・測定波数領域:4000cm-1~400cm-1。
・測定深度の波数依存性:補正せず。
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器及びKBrビームスプリッター。
・分解能:4cm-1。
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)。
・試験数:n=3測定で平均値を用いた。
【0104】
非発泡樹脂層に含まれる主な成分が、4成分系以上であった場合は、エチレン/スチレンが所定の質量比である標準試料の検量線(例えば、比率25/50、50/50、75/50の3点)をあらかじめ準備しておくことで、混合樹脂の測定で得られた赤外吸光スペクトルから、混合樹脂中のエチレン/スチレン成分比を算出することができ、下記式(3)でオレフィン成分(エチレン成分)の割合を算出することができる。
[エチレン成分の含有量(質量%)]=[ガスクロマトグラフで測定されたスチレン成分の含有量(質量%)]×[赤外吸光スペクトルで算出されたエチレン/スチレン成分比] ・・・(3)
【0105】
≪融点(Tm)、結晶化温度(Tc)、過冷却温度差(Tm-Tc)≫
非発泡樹脂層における混合樹脂の融点(Tm)及び結晶化温度(結晶化ピークのピーク温度(Tc))は、JIS K7121:1987、JIS K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。ただし、サンプリング方法、温度条件に関しては、以下のように行った。
積層発泡シートから、非発泡樹脂層をスライサー又は剃刀で採取し、縦10mm、横5mmの長方形の形状に切り出したものを試料とした。試料をアルミニウム製測定容器の底に、隙間のないよう、適当な大きさに切削して5.5±0.5mg充填後、アルミニウム製の蓋をした。
次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量(DSC)装置を用い、示差走査熱量分析を実施した。DSC測定では、窒素ガス流量20mL/minのもと、以下のようなステップで試料の加熱、冷却を実施してDSC曲線を得た。
(ステップ1)30℃から-40℃まで降温した後10分間保持。
(ステップ2)-40℃から220℃まで昇温(1回目昇温)、10分間保持。
(ステップ3)220℃から-40℃まで降温(冷却)、10分間保持。
(ステップ4)-40℃から220℃まで昇温(2回目昇温)。
なお、全ての昇温、降温は速度10℃/minで行った。基準物質としてアルミナを用いた。
【0106】
DSC装置付属の解析ソフトを用い、冷却過程(ステップ3)に見られる結晶化ピークのトップの温度を読みとって結晶化温度(Tc)とし、2回目昇温過程(ステップ4)に見られる融解ピークのトップの温度を読みとって融解温度(融点(Tm))とした。
過冷却温度差(Tm-Tc)は、下記式(4)により算出した。
[過冷却温度差(Tm-Tc)(℃)]=[融点(Tm)(℃)]-[結晶化温度(Tc)(℃)] ・・・(4)
【0107】
図3に、実施例1の積層発泡シートから採取した試料のDSC曲線を示す。
図3に示すように、曲線Pが2回目昇温過程(ステップ4)のDSC曲線である。曲線Pの融解ピークのトップの温度131.1℃が、混合樹脂の融点(Tm)である。
曲線Qが、冷却過程(ステップ3)のDSC曲線である。曲線Qの結晶化ピークのトップの温度119.7℃が、混合樹脂の結晶化温度(Tc)である。
混合樹脂の過冷却温度差(Tm-Tc)は、式(4)より、131.1-119.7=11.4℃となる。
【0108】
≪溶融張力≫
非発泡樹脂層の溶融張力は、チアスト社製、Rheologic5000T ツインボアキャピラリーレオメーターを用いて測定した。溶融張力は上記測定装置に口径2.095mm、長さ8mm、流入角度90度(コニカル)のキャピラリーダイをセットして、このキャピラリーダイの下方27cmに位置する張力検出用のプーリーで測定した。まず、試験温度200℃に加熱された径15mmのバレルに測定試料を充填した。充填した測定試料を5分間予熱して溶融させた。ピストン降下速度(0.07730mm/s)を一定に保持して溶融物をキャピラリーダイから紐状に押出した。この紐状物を張力検出用のプーリーに通した後、巻取りロールを用いて巻き取った。その巻取り速度は初速を4mm/sとした。巻取り速度は加速度12mm/s2で徐々に増加させた。紐状物が切断した点の直前の張力の極大値と極小値の平均を測定試料の溶融張力(MT)とした。
【0109】
≪軟化温度≫
混合樹脂の軟化温度は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTRAR TMA/SS6100」熱、応力、歪み(TMA)測定装置を用い、JIS K7196:1991「熱可塑性プラスチックフィルム及びシートの熱機械分析による軟化温度試験方法」に記載の方法に準拠して測定した。ただし、サンプリング方法、温度条件に関しては以下のように行った。
まず、積層発泡シートから、非発泡樹脂層をスライサー又は剃刀で採取し、縦25mm、横25mmの正方形の形状に切り出したものを複数枚用意し、180℃で5分間、熱プレスして、厚さ1mm、直径10mmの円盤プレート状の試験片を作製した。試験片の厚さは測定前に荷重500mNの圧子(針)を試験片に当てて測定した。測定条件は、以下の通りとした。
【0110】
<測定条件>
・モード:針入試験モード(石英プローブ先端φ1mm)。
・雰囲気:窒素雰囲気。
・荷重:500mN。
・昇温速度:5℃/min。
・測定温度:30℃~200℃。
【0111】
TMA測定で得たTMA曲線の解析は、装置付属の解析ソフトを用いた。TMA曲線は、解析ソフトで石英係数設定による補正を行った。
図4に、混合樹脂のTMA測定で得られるTMA曲線の一例を示す。
図4に示すように、曲線Rは、温度に対する針入の深さを表す。圧子(針)が針入を始めるよりも低温側に認められるTMA曲線の直線部分を高温側に延長したラインをベースラインL1として設定した。針入速度が最大となる部分の接線L2を低温側へ延長してベースラインL1との交点Sを求めた。交点Sにおける温度を針入温度とし、針入温度を混合樹脂の軟化温度とした。
【0112】
≪混合樹脂の樹脂密度≫
混合樹脂の樹脂密度は、以下の方法で求めた。
積層発泡シートから、非発泡樹脂層をスライサー又は剃刀で採取し、縦100mm、横25mmの長方形の形状に切り出したものを30枚用意して試験片とした。この試験片について、東京サイエンス(株)製「1000型」空気比較式比重計を用いて、1-1/2-1気圧法により試験片の体積(cm3)を求めた。試験片は予め、JIS K7100:1999「プラスチック-状態調節及び試験のための標準雰囲気」に記載の記号23/50、2級の環境下で16時間かけて状態調節し、測定に用いた。測定は同環境下において実施した。なお、空気比較式比重計は、標準球(大28.96cm3、小8.58cm3)にて補正を行った。混合樹脂の樹脂密度(g/cm3)は、下記式(5)により計算した。
[樹脂密度(g/cm3)]=[試験片の質量(g)]/[空気比較式比重計での測定体積(cm3)] ・・・(5)
【0113】
(評価方法)
≪剥離強度≫
各例で得られた積層発泡シートの非発泡樹脂層を手で剥がし、下記評価基準に基づいて剥離強度を評価した。
《表記基準》
A:剥離強度が充分に強く、非発泡樹脂層を手で剥がすことができない。
B:非発泡樹脂層を剥がした際に、発泡シートが材料破壊するほど強く接合している。
C:非発泡樹脂層を剥がした際に、発泡シートの材料破壊はほとんど見られない。
D:非発泡樹脂層の端が浮いており、僅かな力で剥がすことができる。
【0114】
≪容器の耐衝撃性≫
各例で得られた発泡容器に400gの水を入れ、開口部をシールした。この容器を23℃の環境下で1.0mの高さからコンクリート面に落下させ、容器の破損の有無を目視で確認した。各例10個の発泡容器について試験を行い、下記評価基準に基づいて、容器の耐衝撃性を評価した。なお、比較例4は、発泡容器を成形できなかったため、容器の耐衝撃性の評価を行わなかった。
《評価基準》
A:破損した容器の数が0~2個。
B:破損した容器の数が3~5個。
C:破損した容器の数が6~9個。
D:破損した容器の数が10個。
【0115】
≪成形時のドローダウン≫
上記≪発泡容器の製造≫で切り出した試験片を単発成形機に導入し、雰囲気温度155℃で15秒間加熱した後に、成形することなく取り出した直後の試験片のシート形状を目視で観察し、下記評価基準に基づいて成形時のドローダウンを評価した。
《評価基準》
A:一切ドローダウンしていない。
B:成形機内で僅かにドローダウンが見られるが、取り出した後はドローダウンしていない。
C:僅かにドローダウンしている。
D:明らかにドローダウンしている。
【0116】
≪成形時の伸び≫
各例で得られた発泡容器を目視で観察し、下記評価基準に基づいて成形時の伸びを評価した。成形時の伸びが大きいほど成形性に優れる。
《評価基準》
A:18個全てがきれいに成形できていた。
B:18個のうちの一部の容器で、容器内面に非発泡樹脂層の伸び不良による白度の濃淡が見られた。
C:18個全ての容器の容器内面に、非発泡樹脂層の伸び不良による白度の濃淡が見られた。
D:18個のうちの一部の容器で、ひび割れ又はシワの発生が見られた。
【0117】
≪容器強度≫
各例で得られた発泡容器の開口部を手で持ち、下記評価基準に基づいて容器強度を評価した。なお、比較例4は、発泡容器を成形できなかったため、容器強度の評価を行わなかった。
《評価基準》
A:開口部を手で持ち、外側に引っ張った際に充分な強度がある。
B:開口部を手で持ち、外側に引っ張った際に適度な強度がある。
C:開口部を手で持ち、外側に引っ張った際に強度が弱く感じる。
D:開口部を下に向け、底面を上から押した際に側壁が容易に座屈する。
【0118】
≪総合評価≫
上記5項目(剥離強度、容器の耐衝撃性、成形時のドローダウン、成形時の伸び、容器強度)について、下記評価基準に基づいて、総合評価を行った。
《評価基準》
A:上記5項目中、全ての項目評価が「A」であるか、又は、全ての項目評価が「A」もしくは「B」であり、1つの「B」があった。
B:上記5項目中、全ての項目評価が「A」、「B」又は「C」であり、2つ以上の「B」又は1つの「C」があった。
C:上記5項目中、全ての項目評価が「A」、「B」又は「C」であり、2つの「C」があった。
D:上記5項目中、項目評価に「C」又は「D」があり、かつ、3つ以上の「C」又は1つ以上の「D」があった。
【0119】
(ラミネート加工性評価)
上記総合評価とは別に、非発泡樹脂層の成形性及び生産性を確認する目的で、各例の非発泡樹脂層について、ラミネート加工性評価を行った。ラミネート加工性評価では、以下の評価を行った。
【0120】
≪引取安定性≫
非発泡樹脂層の厚さが120μmになるように押出機の吐出量を調整した。続いて、引取機の引取速度を所定の速度に調整し、押出方向(MD方向)の長さ3m引取って、押出ラミネート時の非発泡樹脂層の厚さの変動を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、SU1510)で確認した。厚さの変動は、引取った非発泡樹脂層の厚さが、120μmに対して±30μm以上となった場合に「変動有り」とした。下記評価基準に基づいて、引取安定性を評価した。非発泡樹脂層の厚さが変動有りとなる引取速度が速いほど引取安定性に優れる。
《評価基準》
A:引取速度26m/minで厚さの変動なし。
B:引取速度26m/minでは厚さの変動有りだが、引取速度23m/minでは厚さの変動なし。
C:引取速度23m/minでは厚さの変動有りだが、引取速度20m/minでは厚さの変動なし。
D:引取速度20m/minでは厚さの変動有りだが、引取速度16m/minでは厚さの変動なし。
E:引取速度16m/minでは厚さの変動有りだが、引取速度13m/minでは厚さの変動なし。
【0121】
≪ネックイン≫
各例で得られた積層発泡シートを幅方向(TD方向)に沿って厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテク製、SU1510)で観察し、非発泡樹脂層の厚さが150μm以上となっている位置を確認した。下記評価基準に基づいて、ネックイン現象の発生の有無を評価した。非発泡樹脂層の厚さが150μm以上となっている位置が、幅方向の端部に近いほど、ネックイン現象を抑制できていると判断した。
《評価基準》
A:厚さが150μm以上となっている位置が幅方向の端部から5cm以内である。
B:厚さが150μm以上となっている位置が幅方向の端部から5cm超10cm以内である。
C:厚さが150μm以上となっている位置が幅方向の端部から10cmよりも中心寄りである。
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表1~6に示すように、本発明を適用した実施例1~23は、総合評価が「A」、「B」又は「C」であった。
これに対して、非発泡樹脂層にポリオレフィン系樹脂を含まない比較例1は、成形時のドローダウンが「D」であり、総合評価が「D」であった。ブタジエン成分の含有量及びオレフィン成分の含有量が本発明の範囲外である比較例2は、剥離強度が「D」であり、総合評価が「D」であった。ブタジエン成分の含有量が本発明の範囲外である比較例3は、項目評価「C」が3つあり、総合評価が「D」であった。ブタジエン成分の含有量が本発明の範囲外である比較例4は、成形時の伸びが「D」で、発泡容器を成形できなかった。
【0129】
以上の結果から、本発明を適用することで、剥離強度、容器強度、耐衝撃性に優れ、成形時のドローダウンを抑制でき、成形性及び生産性をより高められることが確認された。