(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140347
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】信号解析器におけるコヒーレント型の時間ゲート残留スパー特性評価及び補正のための方法、装置、及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01R 23/16 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01R23/16 D
G01R23/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022033337
(22)【出願日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】17/197,182
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・マイケル・オーウェン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】信号解析器におけるコヒーレント型の時間ゲート残留スパー特性評価及び補正のための方法、装置、及びシステムを提供する。
【解決手段】本方法は、入力信号が信号解析器の入力に提供されていない状態で存在する信号解析器のディスプレイ上の信号を表示することと、信号解析器のディスプレイ上に表示されている信号内のエネルギースパイクがそれを越えるとスプリアスであるとみなされる予め決めた振幅閾値を確立することと、予め決めた振幅閾値に基づいて、信号解析器のディスプレイ上に表示されている信号内の1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することと、信号解析器のディスプレイ上に表示されている信号から1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することとを含む。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号解析器のディスプレイ上のスプリアスエネルギースパイクを低減又は除去する方法であって、前記信号解析器の1つ以上のプロセッサ又は他の回路部によって実施され、
入力信号が前記信号解析器の入力に提供されていない状態で存在する前記信号解析器の前記ディスプレイ上の信号を表示することと、
前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギースパイクがそれを越えるとスプリアスであるとみなされる予め決めた振幅閾値を確立することと、
前記予め決めた振幅閾値に基づいて、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内の1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することと、
前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号から前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することと
を含む方法。
【請求項2】
前記予め決めた振幅閾値を確立することは、
前記入力信号が前記信号解析器の前記入力に提供されていない状態で前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギーレベルの標準偏差を自動的に求めることと、
前記予め決めた振幅閾値が、表示された前記エネルギーレベルの二乗平均平方根(RMS)値を上回る前記標準偏差のN(非負数)であるように自動的に設定することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することは、前記ディスプレイ上に表示されている前記信号の周波数領域表現の各部分を周波数のビンに分類することと、前記予め決めた振幅閾値を上回る振幅を有する前記信号の前記周波数領域表現の部分に対応する周波数のビンをスプリアスエネルギースパイクとして識別することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することは、
前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクの周波数スペクトルを表す値を格納する疎配列を自動的に作成することと、
前記疎配列内に格納された前記値の逆高速フーリエ変換(IFFT)を自動的に実行して、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す値を有する時間領域配列を得ることと、
前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示された前記スプリアスエネルギースパイクを表す値と測定すべき前記入力信号を表す値との総和から、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す前記時間領域配列内の値を自動的に減算することと、
前記信号解析器の前記ディスプレイによって表示されている前記信号の表示を自動的に更新して、前記低減された又は除去されたスプリアスエネルギースパイクを反映することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疎配列を作成することは、信号前区間を超えて前記スペクトルを外挿することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記信号前区間は、前記信号解析器の前記ディスプレイ上の、入力信号が前記信号解析器によって受信されていない区間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記信号解析器の電源を投入した後に自動的に実行されることと、
前記方法は、所定の期間後に自動的に実行されることと、
前記方法は、前記信号解析器のユーザが、ボタンを押下するか、ノブを回すか、又は他のトリガ機構によって前記方法を開始した後に実行されることと
のいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
信号解析器のディスプレイ上のスプリアスエネルギースパイクを低減又は除去する装置であって、
入力信号が前記信号解析器の入力に提供されていない状態で存在する前記信号解析器の前記ディスプレイ上の信号を表示することと、
前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギースパイクがそれを越えるとスプリアスであるとみなされる予め決めた振幅閾値を確立することと、
前記予め決めた振幅閾値に基づいて、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内の1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することと、
前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号から前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することと
を行うように構成された、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部
を備える装置。
【請求項9】
前記予め決めた振幅閾値を確立するために、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、
前記入力信号が前記信号解析器の前記入力に提供されていない状態で前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギーレベルの標準偏差を自動的に求めることと、
前記予め決めた振幅閾値が、表示された前記エネルギーレベルの二乗平均平方根(RMS)値を上回る前記標準偏差のN(非負数)であるように自動的に設定することと
を行うように更に構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記ディスプレイ上に表示されている前記信号の周波数領域表現の各部分を周波数のビンに分類するように構成され、前記予め決めた振幅閾値を上回る振幅を有する前記信号の前記周波数領域表現の部分に対応する周波数のビンがスプリアスエネルギースパイクとして識別される、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するために、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、
前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクの周波数スペクトルを表す値を格納する疎配列を自動的に作成することと、
前記疎配列内に格納された前記値の逆高速フーリエ変換(IFFT)を自動的に実行して、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す値を有する時間領域配列を得ることと、
前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示された前記スプリアスエネルギースパイクを表す値と測定すべき前記入力信号を表す値との総和から、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す前記時間領域配列内の値を自動的に減算することと、
前記信号解析器の前記ディスプレイによって表示されている前記信号の表示を自動的に更新して、前記低減された又は除去されたスプリアスエネルギースパイクを反映することと
を行うように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、信号前区間を超えて前記スペクトルを外挿することによって前記疎配列を作成するように構成される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記信号前区間は、前記信号解析器の前記ディスプレイ上の、入力信号が前記信号解析器によって受信されていない区間である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記信号解析器の電源を投入した後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成されることと、
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、所定の期間後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成されることと、
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記信号解析器のユーザが、ボタンを押下するか、ノブを回すか、又は他のトリガ機構によって前記方法を開始した後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成されることと
のいずれかを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項15】
信号解析器であって、
入力信号が該信号解析器の入力に提供されていない状態で存在する信号を表示するように構成されたディスプレイと、
該信号解析器の前記ディスプレイ上のスプリアスエネルギースパイクを除去又は低減する1つ以上のプロセッサ又は他の回路部であって、該信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギースパイクがそれを越えるとスプリアスであるとみなされる予め決めた振幅閾値を確立することと、前記予め決めた振幅閾値に基づいて、該信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内の1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することと、該信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号から前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することとを行うように構成された、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部と
を備える信号解析器。
【請求項16】
前記予め決めた振幅閾値を確立するために、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、
前記入力信号が前記信号解析器の前記入力に提供されていない状態で前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギーレベルの標準偏差を自動的に求めることと、
前記予め決めた振幅閾値が、表示された前記エネルギーレベルの二乗平均平方根(RMS)値を上回る前記標準偏差のNであるように自動的に設定することであって、Nは非負の数であることと
を行うように更に構成される、請求項15に記載の信号解析器。
【請求項17】
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記ディスプレイ上に表示されている前記信号の周波数領域表現の各部分を周波数のビンに分類するように構成され、前記予め決めた振幅閾値を上回る振幅を有する前記信号の前記周波数領域表現の部分に対応する周波数のビンがスプリアスエネルギースパイクとして識別される、請求項15に記載の信号解析器。
【請求項18】
前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するために、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、
前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクの周波数スペクトルを表す値を格納する疎配列を自動的に作成することと、
前記疎配列内に格納された前記値の逆高速フーリエ変換(IFFT)を自動的に実行して、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す値を有する時間領域配列を得ることと、
前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示された前記スプリアスエネルギースパイクを表す値と測定すべき前記入力信号を表す値との総和から、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す前記時間領域配列内の値を自動的に減算することと、
前記信号解析器の前記ディスプレイによって表示されている前記信号の表示を自動的に更新して、前記低減された又は除去されたスプリアスエネルギースパイクを反映することと
を行うように構成される、請求項15に記載の信号解析器。
【請求項19】
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、信号前区間を超えて前記スペクトルを外挿することによって前記疎配列を作成するように構成され、
前記信号前区間は、前記信号解析器の前記ディスプレイ上の、入力信号が前記信号解析器によって受信されていない区間である、請求項18に記載の信号解析器。
【請求項20】
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記信号解析器の電源を投入した後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成されることと、
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、所定の期間後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成されることと、
前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記信号解析器のユーザが、ボタンを押下するか、ノブを回すか、又は他のトリガ機構によって前記方法を開始した後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成されることと
のいずれかを含む、請求項15に記載の信号解析器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示される主題は、包括的には、信号解析器に関する。より詳細には、本明細書において開示される主題は、信号解析器における残留信号スパー(spur)を特性評価及び補正することに関する。
【背景技術】
【0002】
信号解析器(signal analyzer)は、解析器によって受信される電気入力信号の振幅及び位相を測定するのに使用される機器(instrument)である。解析器は、電気入力信号によって搬送される有用な情報を抽出するためにデジタル技術を利用する。多くの解析器において、スペクトルチャート(spectrum chart:スペクトル図)は、信号の実効的な解析を妨げうる残留スパー(residual spur)(すなわち、スペクトルチャート内の、実際の入力信号に起因しないスプリアスエネルギースパイク(spurious energy spike)又はピーク)を表示する。残留スパーは、入力信号が与えられたか否かと無関係に、及び入力信号の特性と無関係に、スペクトルチャート上に存在する。加えて、残留スパーの周波数及び振幅は、入力信号の周波数及び振幅に依存しない。
【0003】
これらの現象をより良好に視覚化するのを助けるために、
図1A及び
図1Bは、入力関連スパーが強調表示されたスペクトルチャートを示しており、
図2A及び
図2Bは、残留スパーが強調表示されたスペクトルチャートを示している。
図1Aは、1つの周波数における入力信号(大きいスパイク)を有するスペクトルを示しており、
図1Bは、
図1Aの周波数とは異なる周波数における入力信号を有するスペクトルを示している。スパーの存在は、入力信号の周波数(及び、図示されていないものの、入力信号振幅)に依存する。
図1Aは、信号入力が接続されていないが、
図1Bは、接続されている。楕円によって強調表示されているように、
図1Bの場合にはスパーが存在するが、
図1Aの場合には存在しない。したがって、これは入力関連スパーとみなされる。なぜならば、このスパーは、特定の信号が存在するときにのみ存在するためである。
【0004】
図2A及び
図2Bは、
図1A及び
図1Bと非常に類似したスペクトルを示している。この事例では、スパーは、楕円によって強調表示されているように、双方のチャート(すなわち、入力信号が存在する場合及び入力信号が存在していない場合の双方)において存在する。これは、残留スパーが入力信号と無関係に存在し、かつそれら残留スパーの周波数及び振幅は、入力信号に依存しないためである。楕円によって囲まれている残留スパーは、変化せず、入力の周波数又は存在と無関係に同じ振幅、周波数、及び位相において存在する。
【0005】
残留スパーのいくつかの原因としては、ローカル発振器(local oscillator:LO)の漏洩、ホモダイン受信機(homodyne receiver)における「DCオフセット」、ローカル発振器の互いに混合するいくつかの高調波、アナログ/デジタル変換器(ADC)のインタリーブスパー、及び遮蔽が不十分な場合のクロストーク又は干渉が挙げられる。
【0006】
現状、残留スパーの問題に対処するために、中間周波数(IF)ディザリング(dithering)を使用してスパーを低減するのを助けることができる。この事例では、最終中間周波数における「実際の」信号は、高側混合(high-side mixing)又は低側混合(low-side mixing)に依存してLO周波数に対して(+/-)1:1シフトする。デジタルIFは、これに従ってシフトすることができる。他の混合モードが、より高い周波数(すなわち、2:1又は3:1)において望ましい場合があるが、その比は事前に(a priori)既知である。この事例では、残留スパーは、逆方向において(-/+)1:1、又は異なる割合で(例えば、3:1)のいずれかでシフトする。異なる中間周波数において2回(以上)の取得が行われる場合、各高速フーリエ変換(FFT)のビン(bin)においてその一組の取得の最小値を取得することができ、「実際の」周波数のみが一定に留まり、したがって、「最小値(min)」演算が実行された後に保存されるはずである。しかしながら、この技術に伴ういくつかの問題は、この技術がスペクトル振幅データに対してのみ機能すること、位相データがない(すなわち、IQ時系列がない)こと、及びこの技術は、信号が各取得間で準定常(quasi-stationary)であることを必要とすることである。本出願において、「IQデータ」という用語等において頭字語IQに対して言及するとき、「I」は、「同相(in-phase)データ」を指し、これは、実部及び虚部を含む複素電気信号の「実部」であり、「Q」は、「直交(quadrature)」を指し、これは、複素電気信号の「虚部」である。直交信号は、同相信号と位相が90度ずれている。
【0007】
加えて、残留スパー問題に対する現行の解決策は、リアルタイムLOディザリング又はチャープ(chirp)LOを含む。この技術において、単一の連続的なIQ取得全体を通して、第1の「物理的な」LOの位相が連続的にディザリングされ、これにより入力信号が一意の方法で位相変調される。この方法において、擬似ランダム位相、正弦波、又は線形「チャープ」LO(直交位相軌跡(quadratic phase trajectory))を用いて連続ディザリングを実行することができる。この技術において、スパーの位相軌跡は、LO周波数に対する異なる周波数関係に起因して異なる位相軌跡を被る。デジタル領域に変換されると、この技法は、逆位相ディザリングを適用して、元の信号を再構成する。ここで、「非ディザリング(un-dithering)」は、スパーをそれらの元の周波数において再構成せず、エネルギーを、ディザー強度に関係付けられた或る帯域幅にわたって拡がったままにする。
【0008】
リアルタイムLOディザリング技術は、IQ時系列に適用され、したがって、復調、それに続くFFT、又は他の任意の適切な処理に使用することができる。この技術は、更なるスイープを行わないので、この方法に関連付けられた時間ペナルティは存在しない。さらに、LOディザリングは、LO及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を用いてリアルタイムで連続的に適用することができ、その結果、補正を伴う長いIQ記録でさえ可能であり、後処理の必要がない。
【0009】
しかしながら、この技術のいくつかの制限は、ディザリング又はチャーピングをサポートするLO及びデジタルアーキテクチャを必要とすることを含む。これは、解析器上で利用可能な位相雑音最適化モードを制限する場合がある。また、この技術は、物理的及びデジタルのディザリングと、相対的に平坦な振幅と、RD/IFチェーン(RD/IF chain)全体に通じた群遅延との間の完全な同期を必要とする。誤差の結果、キャリアの周辺のより高い測波帯をもたらしうる。また、この技術の場合、スプリアスエネルギー(スパー)の全てが依然として存在するが、もはや1つの周波数において集中しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、信号解析器における残留スパーに対処する新たな技術及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示によれば、信号解析器におけるコヒーレント型の時間ゲート残留スパー特性評価(coherent time-gated residual spur characterization)及び補正のための方法、装置、及びシステムが提供される。1つの態様において、信号解析器のスプリアス信号エネルギーを低減する方法が提供され、該方法は、入力信号が前記信号解析器の入力に提供されていない状態で存在する信号を前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示することと、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギースパイクがそれを越えるとスプリアスであるとみなされる予め決めた振幅閾値を確立することと、前記予め決めた振幅閾値に基づいて、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内の1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することと、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号から前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することとを含む。
【0012】
いくつかの実施の形態において、前記予め決めた振幅閾値を確立することは、前記入力信号が前記信号解析器の前記入力に提供されていない状態で前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギーレベルの標準偏差を自動的に求めることと、前記予め決めた振幅閾値が、表示された前記エネルギーレベルの二乗平均平方根(RMS:root mean square)値を上回る前記標準偏差のNであるように自動的に設定することであって、Nは非負の数であることとを含む。いくつかの更なる実施の形態において、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することは、前記ディスプレイ上に表示されている前記信号の周波数領域表現の各部分を周波数のビン(frequency bin)に分類することと、前記予め決めた振幅閾値を上回る振幅を有する前記信号の前記周波数領域表現の部分に対応する周波数のビンをスプリアスエネルギースパイクとして識別することとを含む。
【0013】
いくつかの実施の形態において、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することは、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクの周波数スペクトルを表す値を格納する疎配列(sparse array:スパース行列)を自動的に作成することと、前記疎配列内に格納された前記値の逆高速フーリエ変換(IFFT:inverse fast Fourier transform)を自動的に実行して、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す値を有する時間領域配列(time-domain array)を得ることと、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示された前記スプリアスエネルギースパイクを表す値と測定すべき前記入力信号を表す値との総和から、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す前記時間領域配列内の値を自動的に減算することと、前記信号解析器の前記ディスプレイによって表示されている前記信号の表示を自動的に更新して、前記低減された又は除去されたスプリアスエネルギースパイクを反映することとを含む。
【0014】
いくつかの実施の形態において、前記疎配列を作成することは、信号前区間(pre-signal interval)を超えて前記スペクトルを外挿することを含む。いくつかの更なる実施の形態において、前記信号前区間は、前記信号解析器の前記ディスプレイ上の、入力信号が前記信号解析器によって受信されていない区間である。いくつかの実施の形態において、前記方法は、前記信号解析器の電源を投入した後に自動的に実行され、又は、前記方法は、所定の期間後に自動的に実行され、又は、前記方法は、前記信号解析器のユーザが、ボタンを押下するか、ノブを回すか、又は他のトリガ機構によって前記方法を開始した後に実行される。
【0015】
別の態様において、信号解析器のディスプレイ上のスプリアスエネルギースパイクを低減又は除去する装置が提供され、該装置は、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部であって、入力信号が前記信号解析器の入力に提供されていない状態で存在する信号を前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示することと、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギースパイクがそれを越えるとスプリアスであるとみなされる予め決めた振幅閾値を確立することと、前記予め決めた振幅閾値に基づいて、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内の1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することと、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号から前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することとを行うように構成された、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部を備える。
【0016】
いくつかの実施の形態において、前記予め決めた振幅閾値を確立するために、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記入力信号が前記信号解析器の前記入力に提供されていない状態で前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示されている前記信号内のエネルギーレベルの標準偏差を自動的に求めることと、前記予め決めた振幅閾値が、表示された前記エネルギーレベルの二乗平均平方根(RMS)値を上回る前記標準偏差のNであるように自動的に設定することであって、Nは非負の数であることとを行うように更に構成される。いくつかの実施の形態において、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記ディスプレイ上に表示されている前記信号の周波数領域表現の各部分を周波数のビンに分類するように構成され、前記予め決めた振幅閾値を上回る振幅を有する前記信号の前記周波数領域表現の部分に対応する周波数のビンがスプリアスエネルギースパイクとして識別される。
【0017】
さらに、いくつかの更なる実施の形態において、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するために、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクの周波数スペクトルを表す値を格納する疎配列を自動的に作成することと、前記疎配列内に格納された前記値の逆高速フーリエ変換(IFFT)を自動的に実行して、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す値を有する時間領域配列を得ることと、前記信号解析器の前記ディスプレイ上に表示された前記スプリアスエネルギースパイクを表す値と測定すべき前記入力信号を表す値との総和から、前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す前記時間領域配列内の値を自動的に減算することと、前記信号解析器の前記ディスプレイによって表示されている前記信号の表示を自動的に更新して、前記低減された又は除去されたスプリアスエネルギースパイクを反映することとを行うように構成される。
【0018】
いくつかの実施の形態において、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、信号前区間を超えて前記スペクトルを外挿することによって前記疎配列を作成するように構成される。いくつかの更なる実施の形態において、前記信号前区間は、前記信号解析器の前記ディスプレイ上の、入力信号が前記信号解析器によって受信されていない区間である。いくつかの実施の形態において、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記信号解析器の電源を投入した後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成され、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、所定の期間後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成され、又は、前記1つ以上のプロセッサ又は他の回路部は、前記信号解析器のユーザが、ボタンを押下するか、ノブを回すか、又は他のトリガ機構によって前記方法を開始した後に前記信号解析器の前記ディスプレイに表示されている前記信号からの前記1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去するように構成される。
【0019】
本明細書において開示される主題の態様のうちのいくつかが上記で言及され、また、これらの態様は、ここで開示される主題によって全体として又は部分的に達成されるが、本明細書の以下で最良に説明されるものとして添付図面に関連して取り上げられた場合、説明が進むにつれて他の態様が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】入力関連スパーを強調表示した例示のスペクトルチャートである。
【
図1B】入力関連スパーを強調表示した例示のスペクトルチャートである。
【
図2A】残留スパーを強調表示した例示のスペクトルチャートである。
【
図2B】残留スパーを強調表示した例示のスペクトルチャートである。
【
図3A】本開示のいくつかの実施形態による、信号解析器におけるコヒーレント型の時間ゲート残留スパー特性評価及び補正のための方法における例示のステップを示す図である。
【
図3B】本開示のいくつかの実施形態による、信号解析器におけるコヒーレント型の時間ゲート残留スパー特性評価及び補正のための方法における例示のステップを示す図である。
【
図3C】本開示のいくつかの実施形態による、信号解析器におけるコヒーレント型の時間ゲート残留スパー特性評価及び補正のための方法における例示のステップを示す図である。
【
図4A】スプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図4B】スプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図4C】スプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図4D】スプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図5A】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているトリガ前区間における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイル、又は、スプリアスエネルギースパイクの振幅軌跡又は位相軌跡を識別する方法を示すチャートを示す図である。
【
図5B】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているトリガ前区間における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイル、又は、スプリアスエネルギースパイクの振幅軌跡又は位相軌跡を識別する方法を示すチャートを示す図である。
【
図5C】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているトリガ前区間における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイル、又は、スプリアスエネルギースパイクの振幅軌跡又は位相軌跡を識別する方法を示すチャートを示す図である。
【
図5D】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているトリガ前区間における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイル、又は、スプリアスエネルギースパイクの振幅軌跡又は位相軌跡を識別する方法を示すチャートを示す図である。
【
図5E】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているトリガ前区間における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイル、又は、スプリアスエネルギースパイクの振幅軌跡又は位相軌跡を識別する方法を示すチャートを示す図である。
【
図5F】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているトリガ前区間における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイル、又は、スプリアスエネルギースパイクの振幅軌跡又は位相軌跡を識別する方法を示すチャートを示す図である。
【
図5G】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているトリガ前区間における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイル、又は、スプリアスエネルギースパイクの振幅軌跡又は位相軌跡を識別する方法を示すチャートを示す図である。
【
図6A】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているIQ記録の最後における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図6B】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているIQ記録の最後における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図6C】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているIQ記録の最後における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図6D】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているIQ記録の最後における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図6E】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているIQ記録の最後における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図6F】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされているIQ記録の最後における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図7A】信号が存在している状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている関心の被変調信号における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図7B】信号が存在している状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている関心の被変調信号における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図7C】信号が存在している状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている関心の被変調信号における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図7D】信号が存在している状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている関心の被変調信号における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図7E】信号が存在している状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている関心の被変調信号における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図7F】信号が存在している状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている関心の被変調信号における信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図8A】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている、信号がアクティブであった後の時間区間において取得された信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図8B】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている、信号がアクティブであった後の時間区間において取得された信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図8C】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている、信号がアクティブであった後の時間区間において取得された信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図8D】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている、信号がアクティブであった後の時間区間において取得された信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図8E】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている、信号がアクティブであった後の時間区間において取得された信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図8F】信号が存在していない状態でスプリアスエネルギーレベルがアイソレートされている、信号がアクティブであった後の時間区間において取得された信号解析器ディスプレイの様々なプロファイルを示す図である。
【
図9】本開示のいくつかの実施形態による残留スパー特性評価及び補正を実施するように構成された1つ以上のプロセッサ又は他の回路部を備える例示の信号解析器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願の主題は、信号解析器のディスプレイ上の残留スプリアスエネルギースパイク(residual spurious energy spike)(スパー(spur))を特性評価する方法、装置、及びシステムの例示の実施形態を提供する。本開示の実施形態は、信号入力が存在するか否かと無関係に信号解析器のディスプレイ上に存在する残留スパーを特性評価及び補正するように設計される。残留スパーの周波数及び振幅は、入力信号に依存しない。残留スパー(residual spur)は、ローカル発振器(LO)の漏洩、ホモダイン受信機における「DCオフセット」、ローカル発振器の互いに混合する高調波、アナログ/デジタル変換器(ADC)インタリーブスパー、及び遮蔽が不十分な場合のクロストーク又は干渉によって引き起こされうる。
【0022】
図面、具体的には、
図3A、
図3B、及び
図3Cを参照すると、これらの図は、本開示のいくつかの実施形態による信号解析器のディスプレイ上の残留スプリアスエネルギースパイクを低減又は除去する方法300のフローチャートを示している。
図3Aは、方法300の高レベルの図を示しており、
図3Bは、方法300の第2のステップ304において行われることのより詳細なフローチャートを示しており、
図3Cは、方法300の第4のステップ308において行われることのより詳細なフローチャートを示している。いくつかの実施形態において、方法300は、1つ以上のプロセッサ、又は他の回路部、例えば、限定することなく、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルロジックアレイ(FPGA)、コントローラ、集積回路、又は他の回路部等によって実施することができるコンピュータ実施、プロセッサ実施、又は回路実施方法である。本明細書において説明されるように、いくつかの実施形態において、方法300は、信号解析器の内部で実施することもできるし、方法300は、信号解析器の外部の1つ以上のプロセッサ又は他の回路部によって実行することができるとともに、信号解析器は、本明細書において説明されるディスプレイ更新情報を受信し、受信された更新情報に従って自身のディスプレイを更新することもできる。
【0023】
本方法300がリニアに記載されているものの、本開示は、本主題を、ステップのこのリニアな一組に限定するものとして読まれるべきではない。いくつかの実施形態において、方法300におけるステップは、信号解析器のディスプレイ上に表示されているものに依存して、及び、方法が信号解析器によってトリガされるときに依存して、異なる順序で実行することもできるし、続けて又は異なる順序で複数回実行することもできる。さらに、いくつかの実施形態において、方法300は、図示のフローチャートにおける任意のステップから開始することができ、或るステップの完了後、この方法は、当該方法の完了前にそのステップに戻ることができる。とはいえ、いくつかの他の実施形態においては、方法300は、本明細書において説明される通りに進む。
【0024】
加えて、いくつかの実施形態において、本開示の方法300は、入力信号が信号解析器のディスプレイ上に存在していない状態で、又は、信号入力が信号解析器上で接続されてもおらず、アクティブでもない状態で、実行される。いくつかの実施形態において、本開示の方法300は、信号入力が接続された状態で、ただし、スイッチ又は他のデバイスが、信号解析器のディスプレイ上に表示されている状態から信号入力を切断している状態で実行される。
【0025】
いくつかの実施形態において、方法300における第1のステップ302は、入力信号が信号解析器の入力に提供されていない状態で存在する信号を、信号解析器のディスプレイ上に表示することを含む。本開示がディスプレイ又は表示された信号の観点で本明細書において方法300、システム、及び装置を説明しているものの、いくつかの実施形態において、ディスプレイは、全く含める必要がない。例えば、限定することなく、ディスプレイがオフであり、ユーザが解析器のディスプレイをイネーブルすることなくプログラムに従ってスペクトル又は時間領域データを取り出すときに、本明細書において説明される同じ原理を使用することができる。いくつかの他の実施形態において、スペクトルは、測定又は計算されるが、必ずしも表示されるとは限らない。いくつかの実施形態において、方法300における第2のステップ304は、信号解析器のディスプレイ上に表示されている信号内のエネルギースパイクがそれを越えるとスプリアスであるとみなされる予め決めた振幅閾値を確立することを含む。いくつかの実施形態において、方法300における第3のステップ306は、この予め決めた振幅閾値に基づいて、信号解析器のディスプレイ上に表示されている信号内の1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することを含む。いくつかの事例において、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することは、ディスプレイ上に表示されている信号の周波数領域表現の各部分を周波数のビンに分類することと、予め決めた振幅閾値を上回る振幅を有する信号の周波数領域表現の部分に対応する周波数のビンをスプリアスエネルギースパイクとして識別することとを含む。いくつかの実施形態において、方法300における第4のステップ308は、信号解析器ディスプレイから、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に低減又は除去することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、第2のステップ304は、一連のサブステップを含む。例えば、限定することなく、第2のステップ304は、入力信号が信号解析器の入力に提供されていない状態で信号解析器のディスプレイ上に表示されている信号内のエネルギーレベルの標準偏差を自動的に求めることを含む第1のサブステップ304Aを含む。いくつかの実施形態において、第2のステップ304は、予め決めた振幅閾値が、表示されたエネルギーレベルの二乗平均平方根(RMS)値を上回る標準偏差のNであるように自動的に設定することを含む第2のサブステップ304Bを含み、Nは、閾値が要求されるスパーのない(spur-free)ダイナミックレンジを満たし(すなわち、低側におけるN)、かつ、識別されたスパーがランダム雑音ではないという十分に高い信頼度を有する(すなわち、高側におけるN)ように選択される非負の数である。
【0027】
Nが高い値になるほど(それは、常に非負の数である)、この閾値を超える周波数点が、(振幅及び位相がランダムであるために)減算除去することができない単なるランダム雑音である可能性が低くなる。しかし、Nが高い値になるにつれて、この閾値は、識別するスパーが少なくなるので、この閾値は、閾値未満であるスパーをそのまま残すことになる。いくつかの実施形態において、Nのための理想的な「導出」値は、雑音サンプルの累積分布関数(CDF:cumulative distribution function)に基づく。雑音周波数のビンの実部(real part)及び虚部(imaginary part)は正規分布に従うと仮定すると(概して真である)、振幅は、レイリー分布に従い、ここで、振幅(magnitude)は、以下に等しい。
Magnitude = √(real
2 +imag
2)
レイリー分布(Rayleigh distributed)のCDFは、
【数1】
である。
【0028】
そのため、例えば、限定することなく、例示の実施形態がx=4*σ(すなわち、N=4)を選択した場合、CDF(4*σ)=99.97%である。これは、この閾値を超える点は、99.97%の信頼度でスパーである(そして雑音ではない)ことを意味する。雑音が単なる偶然でその高さのピークに至ったという確率は非常に低い。閾値を上回る信号が実際にスパーであるという許容可能な信頼度レベル0<p<1を所与とするNを求めるのに逆CDF(inverse CDF)を使用することができる。その事例において、
N = √(-2*ln(1-p))
である。
【0029】
より完全には、σは、測定の帯域幅にわたって変化する(雑音パワーは、帯域幅にわたって完全に平坦ではない)ので、σを周波数の関数として、隣接する100個程度の周波数のビンに基づいてそれを計算することによって、推定することができる。
【0030】
重要な点は、前もって決めておくあるいは予め決めた振幅閾値を、スプリアスエネルギースパイクをフィルタにおいて捕らえるほどに十分低く、ただし、それが実際に信号又は他の重要な情報を含むほどには低くならないように、設定することである。いくつかの実施形態において、前もって決めておく振幅閾値は、最大エネルギースパイク又はスパーの閾値を含み、その振幅が最大エネルギースパイク閾値を上回るエネルギースパーはいずれも、スプリアスエネルギースパイクとして識別されず、したがって、信号解析器ディスプレイから低減されることも、消去されることもない。
【0031】
いくつかの実施形態において、第3のステップ306において、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別することは、ディスプレイ上に表示されている信号の周波数領域表現の各部分を周波数のビンに分類することと、前もって決めておく振幅閾値を上回る振幅を有する信号の周波数領域表現の部分に対応する周波数のビンをスプリアスエネルギースパイクとして識別することとを含む。換言すれば、その振幅が前もって決めておく振幅閾値(すなわち、第2のステップ304において求められた閾値)よりも高く表示された周波数におけるエネルギースパイクは、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部によってスプリアスエネルギースパイクとして識別される。
【0032】
いくつかの実施形態において、第4のステップ308は、
図3Cに示される4つのサブステップを含む。例えば、限定することなく、いくつかの実施形態において、第4のステップ308は、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクの周波数スペクトルを表す値を格納する疎配列を自動的に作成することを含む第1のサブステップ308Aを含む。いくつかの実施形態において、第4のステップ308は、疎配列内に格納された値の逆高速フーリエ変換(IFFT)を自動的に実行して、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す値を有する時間領域配列を得ることを含む第2のサブステップ308Bを含む。いくつかの実施形態において、第4のステップ308は、信号解析器のディスプレイ上に表示されたスプリアスエネルギースパイクを表す値と測定すべき入力信号を表す値との総和から、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを表す時間領域配列内の値を自動的に減算することを含む第3のサブステップ308Cを含む。いくつかの実施形態において、第4のステップ308は、信号解析器のディスプレイによって表示されている信号の表示を自動的に更新して、低減された又は除去されたスプリアスエネルギースパイクを反映することを含む第4のサブステップ308Dを含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、疎配列を作成することは、信号前区間を超えてスペクトルを外挿することを含む。信号前区間は、信号解析器のディスプレイ上の、入力信号が信号解析器によって受信されていない区間である。特に、いくつかの実施形態において、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクの疎配列は、入力信号が信号解析器によって受信されているかに依存せずに作成することができる。
【0034】
上記で説明されたように、これらのステップのそれぞれは、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部によって実行され、信号解析器の動作に対する任意の時間フレームにおいて実行されうる。例えば、限定することなく、いくつかの実施形態において、この方法は、起動時(すなわち、信号解析器の電源を投入して始動させるとき)、所定の期間(すなわち、信号解析器の電源が投入された後の1時間ごと、信号解析器の電源が投入された後の10分、15分、20分、30分、又は45分ごと、又は信号解析器の特性若しくは他の任意の考慮事項に基づく他の任意の適した期間)の後、ユーザによって(すなわち、ボタン、セレクタ、ノブ、又は他の入力を介して)方法を実行するようにトリガされた後、残留スパーに変化を引き起こしうる任意のイベントの後(すなわち、本開示の方法によるもの以外)、信号解析器の1つ以上のプロセッサによって実行されるように構成される。
【0035】
図面のうちのいくつかの以下の説明は、上記で説明された方法のステップ及び効果を示すのを助ける様々なエネルギーチャート及びスペクトルを示している。さらに、以下の説明は、上記で説明された方法に対する更なる詳細を与える。
【0036】
図4A~
図4Dを参照すると、
図4Aは、時間領域におけるバーストWi-Fi信号のパワー対時間プロファイルを示している。信号が存在していない状態で本開示の方法を実行することを示すために、
図4A~
図4Dにおいて、
図4Aにおける垂直の破線同士の間のトリガ前エリア402内で解析が実行される。本明細書において説明されるように、信号が存在しないときに残留スパーのスペクトル識別が行われる。いくつかの実施形態において、方法の開始のトリガは、入力が接続されていないことを信号解析器のユーザが知得している間、手動で(すなわち、ボタンが押下されるか又はノブが回された後)実行することができる。或いは、この方法は、タイマ、又は何らかの他のトリガイベントによって自動的に開始することができる。この事例において、信号解析器は、入力信号が接続されていないことを確実にする必要がある。いくつかの実施形態において、トリガ機構は、信号解析器のAPIを介したソフトウェアコマンド、所定の期間の経過又は温度の変化によってトリガされる機器のアライメント(alignment:調整)を含むことができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、入力が接続されていないことを確実にするために、信号解析器は、スパー補正方法を実行するのに適切な時点において入力信号を接続及び切断するように構成されたハードウェア内の高アイソレーションスイッチ(high-isolation switch)又は「ミュート(mute)」スイッチを備えることができる。無線周波数(RF)入力において実装される場合、全ての下流のスパー源(downstream spur source)を特性評価し、除去することができる。アナログ/デジタル変換器(ADC)の直前の中間周波数(IF)において実装される場合、ADC残留スパーのみが補正又は除去されることになる。いくつかの実施形態において、高アイソレーションスイッチ又は「ミュート」スイッチは、RF入力において実装することができる。他の実施形態において、高アイソレーションスイッチ又は「ミュート」スイッチは、IFにおいて実装することができる。
【0038】
いくつかの更なる実施形態において、スイッチは、取得間のアライメントの実行として実装することができる。この事例において、これは、依然として信号入力を切断するために「ミュート」スイッチを必要とするが、スイッチは、電気機械式とすることができ、又は、これは、ユーザが入力信号を手動でディスエーブルすることを要求することができる。これは、アライメントが数分ごとにのみ実行される場合、残留スパーが非常に安定した振幅及び位相を有することを要求する。切断する又はスパーが特性評価されている間に入力信号が切断されている状態を維持することを確実にする様々な実施形態が企画され、これは、限定しないが上記で説明された手法のうちのいくつかを含む。
【0039】
図4Bは、
図4Aにおける時間領域チャートの周波数領域スペクトル(すなわち、高速フーリエ変換[FFT])を示している。
図4Cは、
図4Aの垂直の破線同士の間の部分(すなわち、信号が存在する前のトリガ前区間)の時間領域表現を示している。
図4Dは、
図4Cの時間領域表現の周波数領域スペクトルを示している。
図4Dに示されるエネルギースパイクは、残留スパー404を示す。
図4Dに示される残留スパー404は、入力信号が存在していない(トリガ前領域402内に信号が存在しておらず、
図4Dが領域402のスペクトルである)にもかかわらず存在している。これらは、本開示の方法、装置及びシステムがそれらを識別し、その後低減又は消去するように構成される残留スプリアスエネルギースパイク(スパー)である。
【0040】
図5A~
図5Fを参照すると、
図5Aは、上記の
図4Aと同じバーストWi-Fi信号のパワー対時間プロファイルを示しており、チャートの入力信号が垂直の破線同士の間に存在しないセクションであるものとして識別されるトリガ前区間502を有する。
図5Aにおけるチャートは、上記で定義されたようにIQデータと呼ぶことができる。
図5Bは、
図5Aにおけるチャートのトリガ前区間502の周波数領域スペクトルを示しており、残留スプリアスエネルギースパイク、又は残留スパー504が表示され、はっきりと見える。
【0041】
上記で説明されたように、方法における第1のステップは、ディスプレイ上のエネルギースパイクがスプリアスとみなされる又はスパーとみなされる前もって決めておく振幅閾値を確立することである。このステップは、
図5Bにおける水平閾値線506によって示される。本質的に、この水平閾値線506を上回る振幅を有するエネルギースパイクは、スプリアスエネルギースパイク又はスパーとみなされる。いくつかの実施形態において、いずれの振幅において閾値を設定するべきかを決定するために、方法は、信号解析器のディスプレイ上に表示されたエネルギーレベル(すなわち、入力信号が存在しないとき)の標準偏差を測定することを含む。エネルギーレベルの標準偏差が測定されると、この方法は、表示されたエネルギーレベルの二乗平均平方根(RMS)値を上回る標準偏差の或る倍数Nであるように(すなわち、上記で説明されたように)前もって決めておく振幅閾値を設定することを含む。
【0042】
これにより、水平線506が設定されるレベル又は振幅が決定される。水平線506の表示は、単なる例示にすぎず、実際に方法の一部であるわけではなく、むしろ、本開示の方法の理解を助けるために図面に含まれたものであることに留意されたい。この方法は、水平線506によって示される、前もって決めておく振幅閾値を設定することを含む。前もって決めておく振幅閾値を設定した後、この方法を実行するプロセッサ又は他の回路部は、次に、ディスプレイ上に表示されている信号の周波数領域表現の各部分を周波数のビンに分類し、前もって決めておく振幅閾値である水平線506を上回る振幅を有する信号の周波数領域表現の部分に対応する周波数のビンをスプリアスエネルギースパイクとして識別することによって、1つ以上のスプリアスエネルギースパイクを自動的に識別する。いくつかの実施形態において、この方法は、FFTグリッドが既知のスパー上に厳密に当たるように区間長を選択することを含む。代替的に、いくつかの実施形態は、周波数推定方法、例えば、パラボラフィッティング(parabolic fitting)、多重信号分類(MUSIC:multiple signal classification)、又は残留スパーが周波数領域スペクトルにおいて存在する周波数を識別する他の適した方法を使用することを含むことができる。
【0043】
先行するステップにおいて各残留スパーの周波数のビンが前もって決めておく振幅閾値を上回る振幅を有するものとして識別されると、この方法は、スプリアススペクトルを表す疎配列を作成することを含む。
図5Dは、そのようなスペクトルを示している。ここでは、スペクトルは、各スパーの推定された振幅及び位相の周波数領域表現を示す。いくつかの実施形態において、このスパーの振幅及び周波数がキャプチャ全体の持続時間にわたって一定であることが仮定され、それゆえ、上記で生成された疎配列は、トリガ前区間502を超えて外挿することができる。振幅及び周波数は一定であるが、位相は一定ではない。位相は、位相軌跡プロットにおいて示されるように経時的に変化する。位相の傾きは、周波数(度/秒(deg/sec)、又は単にHzである回転/秒(rations/sec))である。スパーが特性評価される信号前(pre-signal)区間の開始における初期位相は、以下の
図5Gにおけるプロットのy切片である。傾き及びy切片から、位相は、後の任意の時点に外挿することができる。振幅は、常に一定であると仮定される。
【0044】
図5Cは、
図5Dにおいて表示されるスパーの周波数スペクトルの逆高速フーリエ変換(IFFT)を示している。
図5Cは、正弦波の時間領域総和を示しており、各正弦波は、
図5Dからのそれぞれのスパーに対応する。正弦波のこの総和は、以下の関数によって表される。
【数2】
【0045】
本明細書において説明されるように、これは、連続波信号の疎配列であるので、当業者であれば、いくつかの実施形態において、この方法は、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のFPGA、又は1つ以上のASICによって実施することができることを理解するであろう。振幅及び位相は、FFT技術を用いて正確に測定することができる。残留スパーの周波数は、多くの場合、機器のアーキテクチャの知識に起因して既知であるが、上記で言及された技術を用いて推定することもできる。
図5Gに関連する説明は、スパーの振幅軌跡及び位相軌跡を識別すること、及びしたがって、スパーの周波数の推定に対する更なる詳細を有する。
【0046】
残留スパーアレイの時間領域関数(すなわち、
【数3】
が計算されると、これを、元のIQデータ(すなわち、
図5A)から減算して、補正された(すなわち、スパーのない又はスパーが低減された)IQデータを生成することができる。元のIQデータを関数x(t)によって表すことができる場合、補正されたIQデータの時間領域関数は、以下の通りとなる。
【数4】
図5Eは、補正されたIQデータの時間領域信号
【数5】
を示している。換言すれば、
図5Cに示される時間領域配列は、
図5Aの時間領域IQデータから減算される。
図5Eに示される時間領域信号の周波数領域スペクトルである
図5Fに示すように、
図5Bにおいて明確に存在したスプリアスエネルギースパイクは、
図5Fにおいては、もはや存在しない。
【0047】
図5Gを参照すると、この図は、スパーの振幅軌跡及び位相軌跡を推定する技術を示すのを助ける。
図5Gは、3つの信号の位相対時間のプロットである。その目標は、振幅、位相、及び周波数(すなわち、信号の位相対時間の傾き)を取得して、スパーの位相軌跡を作成することである。この情報が1つ以上のプロセッサ、FPGA、ASIC等によって得られると、後の任意の時点において、プロセッサ(複数の場合もある)は、残留スパーの振幅(一定)、位相(一定ではない)、及び周波数(一定)を求めることができる。振幅、周波数、及び初期位相は、所定の閾値を上回るFFTのビンを検出することによって求められる(振幅及び位相であるそれらの値、並びに周波数に属するFFTのビンのみを保存する)。これは、位相軌跡が単なる直線であるので、後の時点においてスパーの複素値を計算することで十分である。
【0048】
信号前区間において行われるスパー特性評価は、傾き(周波数)及びy切片(初期位相)を与え、それにより、スパーの位相がどのようなものであるか任意の未来の時点において計算することができ、それにより、本主題の方法、システム、及び装置が、同じ振幅及び反対の位相を有するスパーを追加することができる。いくつかの実施形態において、カウンタ又は他の適したメモリデバイスをプロセッサ、ASIC、又はFPGAにおいて実装して、スパー特性評価アライメントとトリガイベントとの間でいくつのサンプルが経過したかを計数することができる。この経過時間を、その後、ソフトウェア(又はASIC又はFPGA)によって使用して、後の減算のためにその残留部の振幅、位相、及び周波数を更新することができ、これは、本明細書において更に説明される。
【0049】
図6A~
図6Fを参照すると、これらの図は、上記で説明された方法が実施されるときにディスプレイ上で見られる出力を示し、ディスプレイは、入力信号がトリガされ、その後除去された後のIQデータの期間に注目している。このエリアは、
図6Aにおける垂直の破線によって強調表示され、信号後(post-signal)エリア602と称される。
図6Bに示されるように、周波数領域スペクトルは、この方法が実施される前のスパー604を示している。上記で説明された方法が次に実行され、スパーが識別され、時間領域スパー配列(time-domain spur array)が、
図6Dに示される識別されたスパーに基づいて、
図6Cにおいて生成される。時間領域スパー配列が
図6Aからの元のIQデータから減算された後、残りの時間領域信号は、
図6Eに示される。
図6Eの時間領域スパー補正信号の周波数領域スペクトルが、
図6Fに示されており、スパー604の全てではないが大半が消去又は実質的に低減されたことを示している。いくつかのスパー604は依然として残っている一方で、残っているそれらのスパーはそれでもなお、
図6Bに示されるそれらの補正前振幅と比較して低減された振幅を有する。ここで、平均雑音レベルを5標準偏差分上回るレベルにおいて6つのスパーが識別され、上位3つは、約8dB~約30dBもの低減の程度まで実質的に低減又は補正された。
【0050】
図7A~
図7Fを参照すると、これらの図は、上記の方法が実施されたときにディスプレイ上で見られる出力を示している。この一連の図面は、注目期間が、入力信号が存在している間であることを除いて、上記と同じ出力を示している。これらの図面において、この方法は、入力信号が表示される前に依然として実行されていたが、このことは、入力信号が受信された後でもスパーが除去/低減される方法を示している。
図7Aに示されるように、注目エリア702は、信号入力が存在しているとともに表示される間(すなわち、2つの垂直の破線の間)である。
図7Bは、注目エリア702からの
図7AのIQデータの周波数領域スペクトルを示している。
図7Bに示されるように、残留スパー704は、この方法が実行される前、及び入力信号が受信されている状態であっても、依然として存在する。
図7C及び
図7Dは、それぞれ、スパーを表す疎配列の時間領域スペクトル及び周波数領域スペクトルを示している。
図7E及び
図7Fに示されるように、スパーは、この例において、更にここでも低減、又は補正された。更にここでも、6つのスパーが識別され、測定された帯域外スパーは、約13dB~17dBだけ低減された。4.96GHzにおける最大のスパーは変調内であり、マーカ読み取り値が上昇した。なぜならば、このスパーは、その周波数における変調と破壊的に干渉していたためである。結果として、この周波数のビンにおける補正された測定値は、スパーの存在によって(上又は下のいずれにも)損なわれていないのでより正確である。いずれのイベントにおいても、実質的な補正は、本開示の方法を用いて依然として達成された。
【0051】
図8A~
図8Fを参照すると、これらの図は、入力信号がもはや存在していない10ミリ秒後の信号解析器のディスプレイ上で見られる出力を示している。いくつかのスパーは位相及び振幅において迅速にドリフトするので、特性評価が有効であるのは有限の時間のみである。
図8Aにおいて、100μ秒のトリガ前区間802が使用される。区間が長くなるほど、スパーの平均複素値のより良好な推定値が与えられる。
図8Bは、ここでも、トリガ前区間802中のIQデータの周波数領域スペクトルを示しており、IQデータにおいて存在しているスパー804を示している。
図8C及び
図8Dは、
図8Bに対して本開示の方法を使用して識別されるスパーの疎配列の時間領域スペクトル及び周波数領域スペクトルを示している。
図8Eは、
図8Aからの時間領域IQデータから減算された
図8Cからの時間領域信号を示している。
図8Fは、補正されたIQデータの周波数領域スペクトルを示しており、ここでも、残留スパーは、18dB~33dBもの低減の程度まで依然として実質的に低減される。これは、スパーの振幅軌跡及び位相軌跡がこのより長い期間にわたって安定していることを示している。これらの軌跡が完全に安定している場合、完全なスパー相殺が達成される。これらの軌跡が適度に安定している場合、適度かつ実質的な改善が達成される。これらの軌跡が実質的にドリフトする場合、同じ又は更に何も行わないよりも不良の結果が得られる。
【0052】
図9は、本開示のいくつかの実施形態による装置、すなわち信号解析器900の主要コンポーネントを示すブロック図を示している。いくつかの実施形態において、信号解析器900は、例えば、限定することなく、スペクトル解析器、ベクトル信号解析器、変調解析器、オシロスコープ、デジタイザ、又はADC及びプロセッサ(複数の場合もある)を有する他の受信装置を含むことができる。いくつかの実施形態において、本開示の信号解析器900は、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部902と、スプリアスエネルギースパイク低減及び/又は消去アルゴリズム又はロジック904と、1つ以上の信号入力906と、ディスプレイ908とを備える。当業者であれば、信号解析器900が、信号解析器900の様々な機能を動作させるために、筐体、様々な電気回路、電力供給部、バッテリ等の他のコンポーネントを備えることを理解するであろう。しかしながら、本開示において、上記の関連コンポーネントが説明される。
【0053】
いくつかの実施形態において、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部902は、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のFPGA、1つ以上のASIC、1つ以上の集積回路、又はスプリアスエネルギースパイク低減アルゴリズム/ロジック904を使用して本明細書において説明される方法を実施することが可能な他の任意の適した回路部を含むことができる。いくつかの実施形態において、この方法は、コンピュータ可読媒体に記憶される1つ以上のソフトウェア命令として記述され、1つ以上のプロセッサ902は、ソフトウェア命令を実行するように構成される。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、ASIC、FPGA、集積回路等のハードウェア回路部において実施され、ハードウェア回路部は、その形式を問わず、本明細書において説明される方法を実施するように構成される。いくつかの実施形態において、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部902は、ユーザが(すなわち、ボタン、スイッチ、ノブ、又はタッチスクリーン作動を介して)この方法を動作させるためにトリガされた後、本明細書において説明されたような所与の期間の後に、及び/又は起動時に、この方法を動作させるように構成することができる。
【0054】
本明細書において説明されるように、入力信号が存在していない状態でスプリアスエネルギースパイク又はスパー低減方法を実施するのが理想的である。換言すれば、信号入力906を物理的に切断することができるか、信号が接続された信号入力上に存在し得ないか、又はスイッチを信号解析器900内に含めることができるかのいずれかであり、ここで、スイッチは、信号解析器900の1つ以上のプロセッサ902から信号入力を切断するように構成され、それゆえ、ディスプレイ908上に信号は表示されない。
【0055】
いくつかの実施形態において、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部902は、ディスプレイ908上に表示されたIQデータに対してスプリアスエネルギースパイク低減/補正方法を実施し、次に、残留スパーを最小化、低減、又は消去した信号を反映するためにディスプレイを更新するように構成される。いくつかの事例においては、本明細書において説明される方法及びシステムはディスプレイ908上のスパーを補正するのに使用されるものの、他の実施形態においては、ディスプレイは全く使用されない。ディスプレイがオフであり、ユーザが解析器のディスプレイをイネーブルすることなくプログラムに従ってスペクトル又は時間領域データを取り出すときに、本明細書において説明される同じ原理を使用することができる。いくつかの他の実施形態において、スペクトルは、測定又は計算されるが、必ずしも表示されるとは限らない。換言すれば、方法が実施される前に、ディスプレイ908は、IQデータの周波数領域スペクトルにおけるスパイクを示している。その後、1つ以上のプロセッサ又は他の回路部902は、スパー補正方法を実施する。方法が実施され信号が補正されると、スペクトル解析器上のIQデータのディスプレイ908は、このスパー低減/消去を反映するために更新される。
【0056】
図9は信号解析器900に内蔵されているものとしてスプリアスエネルギースパイク低減アルゴリズム/ロジック904を示しているものの、当業者であれば、係属中の本開示の方法を任意のプロセッサ又は適した回路部を使用して実施することができることを理解するであろう。例えば、限定することなく、信号解析器900の外部の1つ以上のプロセッサ又は他の回路部(すなわち、サーバ、クラウドコンピューティング装置、パーソナルコンピュータ等)を、信号解析器900に接続し、本明細書において説明されるスパー低減方法を実行するように構成することができる。
図9において示されていないものの、いくつかの実施形態において、本開示の例示の信号解析器900は、本明細書において説明される方法を実行するように構成された外部のプロセッサへの有線又は無線接続(すなわち、Wi-Fi、イーサネット(登録商標)、USB、Bluetooth(登録商標)等)を含む。いくつかの他の実施形態において、本明細書において説明される方法を実行するように構成されたプロセッサ又は他の回路部は、アフターマーケット(after-market)のアップグレード又は追加の特徴として信号解析器900にインストールすることができる。さらに、本開示のいくつかの実施形態において、信号解析器900の中央処理ユニット(CPU)(すなわち、信号解析器900の主プロセッサ)を、本主題の方法を実施するように構成することができ、又は、専用プロセッサ又は他の回路部を、本主題の方法を実行するために信号解析器900に設ける若しくは設置することができる(すなわち、アフターマーケットデバイス等)。
【0057】
前述の説明は、コンピュータ関連技術を改善するように設計された方法、装置、及びシステムを例示している。ここで、改善は、信号解析器内の内部コンポーネントによって引き起こされるスプリアスエネルギースパイクに対するものである。これは、IQデータのディスプレイをより正確にするためにスプリアスエネルギースパイク低減方法を実施することによって、信号解析器技術、明確にはコンピュータ関連技術を改善する。これらの改善を行わなければ、スペクトル解析器は、受信される信号を正確に反映しない場合がある周波数領域スペクトルを生成する。
【0058】
本主題は、その趣旨及び必須の特性から逸脱することなく他の形式において具現化することができる。したがって、説明された実施形態は、全ての面において、例示的であり、制限的ではないものとみなされる。本主題が或る特定の実施形態の観点で説明されたものの、当業者に明らかである他の実施形態も、本主題の範囲内にある。
【外国語明細書】