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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140352
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20220915BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALI20220915BHJP
   H01Q 5/364 20150101ALI20220915BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q9/04
H01Q5/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034061
(22)【出願日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021040189
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高村 祐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真悟
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 咲
【テーマコード(参考)】
5J045
【Fターム(参考)】
5J045AA03
5J045DA08
5J045NA01
(57)【要約】
【課題】
アンテナが搭載される環境によらず、安定した特性を得ることができるとともに、複数の周波数帯域にも対応できるアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
接続導体を介して電気的に接続されたグランド導体面と放射導体面とを略平行に配置し、アンテナを放射導体面に対して垂直方向から平面視した際に、放射導体面の先端部がグランド導体面と重畳するようにアンテナを構成する。放射導体面の面積の2分の1以上をグランド導体面と重畳させる共に、同軸ケーブルで給電する際の給電点はグランド導体面と重畳させないのが好ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド導体面と、該グランド導体面に対し略平行に配置された放射導体面とを有するアンテナであって、該グランド導体面と該放射導体面は接続導体を介して電気的に接続されると共に、該アンテナを該放射導体面に対して垂直方向から平面視した際、該放射導体面の先端部が該グランド導体面と重畳していることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
該アンテナを該放射導体面に対して垂直方向から平面視した際、該放射導体面の面積の2分の1以上が該グランド導体面と重畳していることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
該グランド導体面、該接続導体、該放射導体面はそれぞれ長手方向と短手方向を有し、該グランド導体面の長手方向、該接続導体の長手方向、該放射導体面の長手方向は互いに平行であるとともに、
該放射導体面と該接続導体は、該接続導体の長手方向の一端側に設けられた第1接続部を介して電気的に接続されており、
該グランド導体面と該接続導体は、該接続導体の長手方向の他端側に設けられた第2接続部を介して電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のアンテナ。
【請求項4】
該接続導体の長手方向に沿った第1側辺は該グランド導体面の長手方向の側辺の一部と対向しているとともに、該接続導体の長手方向に沿った第2側辺は該放射導体面の長手方向の側辺の一部と対向していることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ
【請求項5】
該接続導体の長手方向の一端側から他端側に向かう方向を第1方向とした場合、該放射導体面において該第1接続部に隣接する領域から、第1方向と反対の方向に、該グランド導体面に対して略平行な面を有する第1延出素子が延出していることを特徴とする請求項3または4に記載のアンテナ。
【請求項6】
該第1延出素子は、該グランド導体面に対して略平行な面である第1領域と、該第1領域に接続されていると共に該接続導体と同一平面で一体化された第2領域とを有することを特徴とする、請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
該接続導体の長手方向の一端側から他端側に向かう方向を第1方向とした場合、該放射導体面には第1方向とは反対側に延出する第2延出素子が存在することを特徴とする、請求項3~6の何れか一項に記載のアンテナ。
【請求項8】
該放射導体面から、該放射導体面に対して略垂直に延出する第3延出素子が延出していることを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載のアンテナ。
【請求項9】
該第3延出素子は、該放射導体面の先端部から該グランド導体面に向かって延出していることを特徴とする、請求項8に記載のアンテナ。
【請求項10】
同軸ケーブルの内部導体が該アンテナ上に設けられた給電点、該同軸ケーブルの外部導体が該グランド導体面上に設けられた接続点に接続されたアンテナであって、該給電点は該放射導体面もしくは該接続導体の何れかに設けられることを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載のアンテナ。
【請求項11】
該給電点から、該放射導体面の先端に向かう方向を第2方向とした場合、該接続点と、該接続点に対して第2方向側に存在する該グランド導体面の端縁までの距離は、該アンテナが対応する周波数帯域の波長の4分の1以上の長さであることを特徴とする、請求項10に記載のアンテナ。
【請求項12】
該給電点から、該グランド導体面が存在する方向に第1垂線を下ろした際、該第1垂線と該グランド導体面とが交差しないことを特徴とする、請求項10または11に記載のアンテナ。
【請求項13】
該接続点から、該放射導体面が存在する方向に第2垂線を延ばした際、該第2垂線と該放射導体面が交差しないことを特徴とする、請求項10~12の何れか一項に記載のアンテナ。
【請求項14】
該接続点は、該グランド導体面に設けられたグランド側壁面上に設けられることを特徴とする、請求項10~13の何れか一項に記載のアンテナ。
【請求項15】
該グランド導体面と該放射導体面とによって挟持された誘電体を有する、請求項1~14の何れか一項に記載のアンテナ。
【請求項16】
該誘電体の該接続導体に接する面に第1嵌合突起が設けられ、該第1嵌合突起は該接続導体に設けられた第1嵌合孔に嵌合されていることを特徴とする、請求項15に記載のアンテナ。
【請求項17】
請求項4を引用する請求項15または16に記載のアンテナであって、該誘電体の該接続導体に接する面に、該第1側辺と該グランド導体面の長手方向の側辺の一部とが対向することによって形成されたスリットに挿入される突出部が形成されていることを特徴とする、請求項15または請求項16に記載のアンテナ。
【請求項18】
請求項10を引用する請求項17に記載のアンテナであって、該給電点から、該グランド導体面が存在する方向に第3垂線を下ろした際、該第3垂線と該突出部とが交差することを特徴とする、請求項17に記載のアンテナ。
【請求項19】
請求項8を引用する請求項15~18の何れか一項に記載のアンテナであって、該誘電体の該第3延出素子に接する面に第2嵌合突起が設けられ、該第2嵌合突起は該第3延出素子に設けられた第2嵌合孔に嵌合されていることを特徴とする、請求項15~18の何れか一項に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機能を有する機器に使用されるアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末機器に代表される多種多様な機器に無線LAN、WiMAX(登録商標)、WiFi(登録商標)、BlueTooth(登録商標)をはじめとする無線データ通信システムが採用されている。
【0003】
近年では、IoT(Internet of Things)やCASE(Connected、Autonomous、 Shared、Electric)といった考え方の普及により、従来は通信機能を有していなかった機器に通信機能を持たせ、データ通信を行う試みが行われており、これらの機器に搭載されるアンテナの需要が高まっている。
【0004】
機器に搭載されるアンテナの課題として、搭載される環境によってアンテナ特性が変化してしまうことが挙げられる。特にアンテナが金属導体に近接した場合は、アンテナと金属導体間の電磁的結合により、予めアンテナに設定されたインピーダンスの変化が発生し、通信特性への影響が大きくなる。
【0005】
金属導体が近接した際の影響を抑制したアンテナとして、給電点とグランド板を結ぶ線路において、グランド板に接続される部分の長さを所定の値に設定したもの(特許文献1)や、インピーダンス制御部を介してアンテナ周辺に存在する金属をアンテナ給電部と接続したもの(特許文献2)などが提案されている。
【0006】
上記の手法によって金属導体の近接の影響を抑制することは可能であるが、金属導体の位置や形状は機器によって変化するため、アンテナが搭載される環境によって抑制効果が左右される側面も存在する。
【0007】
加えて、無線データ通信システムの拡充に伴い、アンテナは複数の周波数帯域で通信が行えることも求められている。例えば、上述したWiFiは2.4GHz帯域と5GHz帯域の周波数を使用する規格であるが、近年はこれらの周波数帯域に加えて6~7GHz帯域の周波数も使用したWiFi6Eと称される規格も発表されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-53809号公報
【特許文献2】特許第6651010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、アンテナが搭載される環境によらず、安定した特性を得ることができるとともに、複数の周波数帯域にも対応できるアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はアンテナの構造を鋭意検討した結果、グランド導体面と放射導体面とを略平行に配置し、アンテナを放射導体面に対して垂直方向から平面視した際に、放射導体面の先端部がグランド導体面と重畳するよう構成することで、上記の課題を解決できることを見出した。
【0011】
本発明のアンテナは、搭載される環境によるインピーダンスの変化が抑制され、搭載機器に拠らず安定した通信特性が得られる効果が期待できるとともに、複数の周波数帯域に対応することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のアンテナの基本的構成である。
図2】本発明のアンテナの変形例で、接続導体の形状を変形させた態様である。
図3】本発明のアンテナの変形例で、第1延出素子を設けた態様である。
図4】本発明のアンテナの変形例で、第1延出素子を変形した態様である。
図5】本発明のアンテナの変形例で、第2延出素子を設けた態様である。
図6】実施例1のアンテナのV.S.W.Rである。
図7】実施例2のアンテナのV.S.W.Rである。
図8】実施例3のアンテナのV.S.W.Rである。
図9】実施例4のアンテナのV.S.W.Rである。
図10】導体近接試験の概略図である。
図11】実施例1のアンテナの、導体近接試験によるV.S.W.Rの変化の様子である。
図12】実施例2のアンテナの、導体近接試験によるV.S.W.Rの変化の様子である。
図13】実施例3のアンテナの、導体近接試験によるV.S.W.Rの変化の様子である。
図14】実施例1のアンテナの、導体近接試験による利得の変化の様子である。
図15】実施例2のアンテナの、導体近接試験による利得の変化の様子である。
図16】実施例3のアンテナの、導体近接試験による利得の変化の様子である。
図17】比較例のアンテナで、1種の周波数帯域に対応するものである。
図18】比較例のアンテナで、3種の周波数帯域に対応するものである。
図19】比較例1のアンテナの、導体近接試験によるV.S.W.Rの変化の様子である。
図20】比較例2のアンテナの、導体近接試験によるV.S.W.Rの変化の様子である。
図21】比較例1のアンテナの、導体近接試験による利得の変化の様子である。
図22】比較例2のアンテナの、導体近接試験による利得の変化の様子である。
図23】本発明のアンテナの変形例で、グランド側壁面と誘電体を設けた態様である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1を参照しながら、本発明について説明する。
【0014】
本発明のアンテナ1は図1に示すように、グランド導体面10、放射導体面30、グランド導体面10と放射導体面30とを電気的に接続する接続導体20によって構成される。
【0015】
本発明で特徴的なことは、放射導体面30がグランド導体面10に対して略平行に配置されているとともに、アンテナ1を放射導体面30に対して垂直方向(図1におけるZ方向)から平面視した際に、放射導体面30の先端部がグランド導体面10と重畳していることである。
【0016】
図1に示したアンテナ1は逆Fアンテナとして動作し、逆Fアンテナにおける電界分布は、アンテナ1の先端部、すなわち放射導体面30の先端部(図1における領域33)付近で大きくなる。
【0017】
放射導体面30の先端部がグランド導体面10と重畳することで、放射導体面30の先端部とグランド導体面10との間に電磁的結合が形成される。放射導体面30における電界分布が大きい領域に予めグランド導体面10との電磁的結合が形成されていることで、アンテナ1に金属導体が近接しても、アンテナ1と金属導体との間に新たな電磁的結合が形成されにくく、アンテナ1の通信特性の変化が抑制される。このため、アンテナ1は安定した通信特性を示す。
【0018】
グランド導体面10と放射導体面30との間に安定した電磁的結合を形成する観点から、グランド導体面10と放射導体面30とが重畳する面積を広くするのが好ましく、放射導体面30の面積の2分の1以上をグランド導体面10と重畳させた態様が特に好ましい。
【0019】
接続導体20は、図1に示したようにグランド導体面10に対して略垂直に延出するように設ければよいが、これに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において任意の態様で設けることができる。
【0020】
加えて、放射導体面30の形状も、図1に示した略直線状に限定されず、本発明の技術的思想の範囲において任意の形状を選択することができる。
【0021】
以下、アンテナ1を複数の周波数帯域に対応させる場合に好ましく利用できる、接続導体20、放射導体面30などの態様について述べる。
【0022】
アンテナ1を複数の周波数帯域に対応させる場合は、図2に示したように、グランド導体面10、接続導体20、及び放射導体面30のそれぞれを長手方向と短手方向を有した形状とし、グランド導体面10の長手方向、接続導体20の長手方向、及び放射導体面30の長手方向を互いに平行な状態とする。
【0023】
この時、放射導体面30と接続導体20とを、接続導体20の長手方向の一端側に設けられた第1接続部21を介して電気的に接続するとともに、グランド導体面10と接続導体20とを、接続導体20の長手方向の他端側に設けられた第2接続部22を介して電気的に接続する。
【0024】
以降、特に断りが無い限り、接続導体20の長手方向の一端側(第1接続部21が存在する側)から他端側(第2接続部22が存在する側)に向かう方向(各図における+X方向)を、アンテナの第1方向とする。
【0025】
この態様とする際は、接続導体20の長手方向に沿った第1側辺L1がグランド導体面10の長手方向の側辺の一部と対向するとともに、接続導体20の長手方向に沿った第2側辺L2は放射導体面30の長手方向の側辺の一部と対向することになる。
【0026】
特に、第1側辺L1とグランド導体面10の側辺が対向することによって、両者の間にスリットSが形成され、スリットSを形成する辺の長さに応じた波長に相当する周波数帯域に対応できるようになる。
【0027】
この態様の場合、放射導体面30が低周波数帯域、スリットSが高周波数帯域に対応する。
【0028】
さらに、第1接続部21の近傍における放射導体面30の形状を変更することで、高周波数帯域における通信特性を安定させることができる。
【0029】
具体的には、第1接続部21に隣接する放射導体面30の領域を領域31と定義した際、図3に示すように領域31から第1方向と反対の方向(各図における-X方向)に、グランド導体面10に対して略平行な面を有する第1延出素子41を延出させる。
【0030】
第1延出素子41が存在することで、図3に示した延長部分L3が設定され、第1側辺L1から連続している導体辺の総延長が延長されることになる。この結果、スリットSを形成する導体辺の長さに電気的な変化が生じた状態となり、スリットSが対応する周波数の微調整ができるとともに、通信特性を安定させるためのインピーダンス整合も行うことができる。
【0031】
加えて、第1延出素子41自身が他の周波数帯域に対応する放射導体としても機能する。
【0032】
また、第1延出素子41は、図4に示すように、グランド導体面10に対して略平行な面である第1領域411と、第1領域411に接続されているとともに接続導体20と同一平面で一体化された第2領域412とを有した形状としても良い。第2領域412を形成することで、延長部分L3をより詳細に設定することができ、通信特性の安定化に寄与する。なお、第2領域412は原則として、接続導体20と視覚的に区別できるように形成される。
【0033】
第1延出素子41の先端部は、放射導体面30の先端部と同様、アンテナ1を放射導体面30に対して垂直方向から平面視した際にグランド導体面10と重畳するのが好ましい。
【0034】
加えて、図5に示すように、放射導体面30内に、第1方向と反対の方向に延出する第2延出素子42を備えても良い。第2延出素子42の存在によって、アンテナ1が対応する周波数帯域が増えるとともに、第1延出素子41との相乗効果によって、通信特性の安定に寄与する。
【0035】
また、第2延出素子42の延出方向が第1方向の反対向きとなっていることで、放射導体面30を第1方向に流れた後、第1方向の反対へと流れる折り返し電流を第2延出素子42へと取り込むことができ、第2延出素子42に高い電界分布を発生させることができる。
【0036】
この結果、放射導体面30の先端部付近と、放射導体面30の先端部から離れた場所に位置する第2延出素子42のそれぞれに高い電界分布が発生することになるため、それぞれが対応する周波数帯域間での干渉が抑制され、通信特性の安定に寄与する。
【0037】
なお、第2延出素子42の先端部も、放射導体面30の先端部と同様、アンテナ1を放射導体面30に対して垂直方向から平面視した際にグランド導体面10と重畳するのが好ましい。
【0038】
原則として、第2延出素子42は、放射導体面30と視覚的に区別できるよう形成される。第2延出素子42と放射導体面30の視覚的な区別が困難な場合、第1方向の反対へと流れる折り返し電流を取り込む効果が弱まり、通信特性が不安定となる場合がある。
【0039】
さらに、図1~5に示されているように、放射導体面30から略垂直に延出する第3延出素子43を設けても良い。第3延出素子43の存在によって、アンテナ1が対応する周波数帯域の増加、インピーダンス調整、通信特性の安定等の効果を得ることができる。
【0040】
第3延出素子43を設ける位置、設ける数、延出させる向きは所望する通信特性に応じて任意に設定することができるが、放射導体面30からグランド導体面10に向かって(各図における-Z方向に)延出する第3延出素子43が存在するのが好ましい。
【0041】
放射導体面30からグランド導体面10に向かって延出する第3延出素子43は、その先端がグランド導体面10に近接することで、グランド導体面10との電磁的結合が期待できる。第3延出素子43とグランド導体面10との間に新たな電磁的結合が発生することで、アンテナ1の通信特性の変化がさらに抑制され、通信特性の安定化に寄与すると共に、新たな電磁的結合を利用した周波数帯域の追加も可能である。
【0042】
第3延出素子43を設ける位置で、特に好ましいのは放射導体面30の先端部である。先述した通り、放射導体面30の先端部付近で電界分布が大きくなるため、第3延出素子43とグランド導体面10との間の強固な電磁的結合が期待でき、通信特性の安定化に寄与する。
【0043】
以上、本発明のアンテナ1を複数の周波数帯域に対応させる場合に好ましい接続導体20及び放射導体面30の態様を示したが、具体的な態様は上記のものに限定されず、所望する通信特性に応じて種々の態様のものを採用することができる。例えば、後述する実施例のように、放射導体面30は幅が異なる複数の領域を組み合わせて構成しても良い。
【0044】
本発明のアンテナ1は、同軸ケーブル50によって高周波信号を給電することを想定したものであるが、アンテナ1に同軸ケーブル50を接続する際は、同軸ケーブル50の内部導体を放射導体面30もしくは接続導体20に接続して給電点Pとし、同軸ケーブル50の外部導体をグランド導体面10上に設定した接続点Gに接続する。
【0045】
このように同軸ケーブル50を接続することで、グランド導体面10と放射導体面30のそれぞれに電流の流れを発生させることができ、通信特性の安定に寄与する。
【0046】
本発明に使用する同軸ケーブル50は、周知のフッ素樹脂被覆等の高周波同軸ケーブルを使用すればよく、太さはAWG28~38程度のものが好ましく利用できる。同軸ケーブル50の内部導体、あるいは外部導体をアンテナ1の所定の場所に接続するには、ハンダ付による固定、あるいはカシメによる固定などを利用することができる。
【0047】
また、給電点Pと接続点Gの位置関係の設定も、通信特性の安定に寄与する。
【0048】
具体的には、給電点Pから放射導体面30の先端へ向かう方向を第2方向(各図における+X方向に相当)とした場合、接続点Gから、接続点Gに対して第2方向に存在するグランド導体面10の端縁までの距離が、アンテナ1が対応する周波数帯域の波長の4分の1以上の長さであることが好ましい。
【0049】
この構成とすることで、給電点Pから放射導体面30に供給された電流が主に流れる方向と、接続点Gからグランド導体面10に供給された電流が主に流れる方向とが、共に第2方向に揃う。放射導体面30、グランド導体面10に流れる電流の方向が同方向に揃うことで、電流によって発生する磁界の向きも揃い、磁界が弱められることが抑制される。この結果、アンテナの通信特性がより一層安定する。
【0050】
なお、アンテナ1が複数の周波数帯域に対応する場合、接続点Gからグランド導体面10の端縁までの距離は原則としてアンテナ1が対応する周波数帯域のうち、最も低い周波数帯域の波長に基づいて決定される。
【0051】
また、接続点Gから、接続点Gからグランド導体面10の端縁までの距離をアンテナ1が対応する周波数帯域の波長の4分の1に設定する場合は、厳密に4分の1にする必要はなく、その周波数帯域に属する各々の周波数の4分の1程度の値であれば、多少の変動は許容される。
【0052】
また、給電点Pの位置は図1に示したように、給電点Pからグランド導体面10が存在する方向(各図の-Z方向)に第1垂線VL1を下した際、第1垂線VL1とグランド導体面10とが交差しない場所に設けるのが好ましい。この構成は、アンテナ1を放射導体面30に対して垂直方向から平面視した際、給電点Pがグランド導体面10と重畳しないと言い換えることができる。
【0053】
給電点Pには高周波信号が直接給電されるため、接続導体20及び放射導体面30の他の場所と比較して電界分布が高くなる。給電点Pとグランド導体面10が近接すると、給電点Pに発生する電界によって、グランド導体面10に発生する電流に影響を与えることがある。
【0054】
給電点Pがグランド導体面10に重畳しない、すなわち給電点Pとグランド導体面10とを必要以上に近接させないことによって、給電点Pによるグランド導体面10への影響が抑制され、グランド導体面10に流れる電流の向きを制御でき、アンテナ1の通信特性の安定に寄与する。
【0055】
加えて、この態様は給電点Pの近傍に空間を確保できるため、同軸ケーブル50の内部導体を放射導体面30もしくは接続導体20に接続する際の作業性に優れ、アンテナ1の製造面でも好ましい態様である。
【0056】
同様に、接続点Gの位置は、図1に示したように接続点Gから放射導体面30が存在する方向(各図の+Z方向)に第2垂線VL2を延ばした際、第2垂線VL2と放射導体面30とが交差しない場所に設けるのが好ましい。この構成は、アンテナ1を放射導体面30に対して垂直方向から平面視した際、接続点Gが放射導体面30と重畳しないと言い換えることができる。
【0057】
給電点Pと同様、接続点Gにも、外部導体を介して高周波信号が直接供給されるため、グランド導体面10の他の場所と比較して電流分布が高くなる。接続点Gと放射導体面30が近接すると、接続点Gに発生する電界によって、放射導体面30に発生する電流に影響を与えることがある。
【0058】
接続点Gが放射導体面30に重畳しない、すなわち接続点Gと放射導体面30とを必要以上に近接させないことによって、接続点Gによる放射導体面30への影響が抑制され、放射導体面30に流れる電流の向きを制御でき、アンテナ1の通信特性の安定に寄与する。
【0059】
この態様は接続点Gの近傍に空間を確保できるため、同軸ケーブル50の外部導体をグランド導体面10に接続する際の作業性に優れ、アンテナ1の製造面でも好ましい態様である。
【0060】
同軸ケーブル50を接続する際の作業性を高める観点では、図23に示したように、グランド導体面10にグランド側壁面12を設け、接続点Gをグランド側壁面12上に設けた態様も好ましく利用できる。図23に示したグランド側壁面12はグランド導体面10から+Z方向に延出した態様であり、接続導体20に対して仮想的な同一平面上に存在する。グランド側壁面12の態様は図23に示したものに限定されず、後述するように接続点Gを-Y方向に向けて同軸ケーブル50をアンテナ1に設けることができる態様であれば、+Z方向に対して傾斜して延出した態様や、接続導体20が属する仮想的平面に対して平行な仮想的平面上に位置する態様としても良い。
【0061】
接続点Gをグランド側壁面12上に設けた態様は、図23に示すように。給電点P、接続点Gが共に-Y方向に向いた状態で同軸ケーブル50をアンテナ1に設けることできる。給電点P、接続点Gの向く方向が統一されることで同軸ケーブル50の接続作業を行う際にアンテナの向きを変える必要がなくなり、作業性が高まる。
【0062】
加えて、グランド側壁面12の一部を折り返してカシメ片13とし、同軸ケーブル50の外被をグランド側壁面12上にカシメ固定することも可能であり、同軸ケーブル50の接続強度を高める点でも好ましく利用できる。
【0063】
本発明のアンテナ1を構成する各導体は、洋白(白銅)、銅、鉄、黄銅、鋼等で作られた、厚さ0.1~1mm程度の金属一枚板を打ち抜いて一体成型したもの、誘電体基材上に導電パターンを設けたもの、あるいは両者を組み合わせて構成したものなどが使用できる。
【0064】
金属一枚板を打ち抜いて一体成型した導体を使用する場合は、波長短縮効果によってアンテナ1を小型化するために、グランド導体面10と放射導体面30との間にABS等で形成された誘電体70を挟持しても良い。
【0065】
通常、誘電体70は長さ方向(X方向)、幅方向(Y方向)、厚さ方向(Z方向)の寸法を有した直方体状に形成されたものを使用するが、所望するアンテナ特性に応じて形状、寸法は適宜変更しても良く、軽量化や誘電率の調整を目的とした肉抜き部や、アンテナ1の保持を容易にするための突起類を設けても良い。
【0066】
以下、本発明において好ましく利用できる誘電体70の態様について述べる。
【0067】
誘電体70の態様の1つとして、誘電体70が接続導体20に接する面に第1嵌合突起71Aが設けられた態様が挙げられる。第1嵌合突起71Aは接続導体20に設けられた第1嵌合孔に嵌合され、第1嵌合突起71Aの先端部分が加熱変形によってつぶされることで、誘電体70は接続導体20に対して強固に固定される。
【0068】
嵌合突起71を利用した誘電体70の固定は、接続導体20に対する固定のみに限られず、必要に応じて固定箇所を増やしても良い。例えば、放射導体面30から第3延出素子43が延出している場合は、誘電体70が第3延出素子43に接する面に第2嵌合突起71Bを設け、第2嵌合突起71Bを第3延出素子43に設けられた第2嵌合孔に嵌合させる態様を採用することができる。
【0069】
図23に示した態様では、第1嵌合突起71A、第2嵌合突起71Bが共に-Y方向に向いた状態のため、給電点P、接続点Gが共に-Y方向に向いた状態の時と同様に、アンテナ組立時の作業性が高まる。また、各嵌合突起71が向く向きを統一することで、アンテナ1の外寸法の増加を最小限に抑制しつつ、誘電体70を固定することができる。
【0070】
また、グランド導体面10、接続導体20が長手方向と短手方向を有し、グランド導体面10の長手方向と接続導体20とが互いに平行で、接続導体20の長手方向に沿った第1側辺L1がグランド導体面10の長手方向の側辺の一部と対向することでスリットSが形成されている場合は、誘電体70が接続導体20と接する面に、スリットSに挿入される突出部72を形成するのが好ましい。
【0071】
この突出部72は、給電点Pからグランド導体面10が存在する方向に第3垂線VL3を下ろした際、第3垂線VL3と突出部72とが交差するように形成するのが好ましい。
【0072】
このように突出部72を形成することで、給電点P付近において同軸ケーブル50の-Z方向側に突出部72が存在することになる。このため、給電点Pに-Z方向の外力が作用した際も給電点Pは突出部72によって支持され、外力による給電点Pの破損が抑制される。また、突出部72の存在によって+Z方向の外力が給電点Pに作用し難くなる。
【0073】
以上の通り、突出部72は給電点Pの保護に寄与する。
【0074】
本発明のアンテナ1は、通信装置に組み込まれる形で使用される。
【実施例0075】
本発明のアンテナ1の具体例として、実施例1~4を示す。
【0076】
各アンテナとも、厚さが0.2mmの洋白の一枚板を打ち抜いて作成した所定の形状のアンテナエレメントに、給電用の同軸ケーブル50を接続して製作される。
【0077】
同軸ケーブル50は先端部が段剥ぎされているとともに、他端には接続する電子機器に対応する周知の同軸ケーブル用コネクタが設けられている。段剥ぎによって露出した同軸ケーブル50の内部導体を接続導体20もしくは放射導体面30、外部導体をグランド導体面10へそれぞれ半田付けし、給電点P及び接続点Gを設けることでアンテナ1が完成する。
【0078】
使用した同軸ケーブル50の仕様は以下の通りである。

・内部導体の外径:0.24mm
・フッ素樹脂(PFA)製絶縁体の外径:0.68mm
・外部導体の外径:0.93mm
・フッ素樹脂(PFA)製外被の外径1.13mm
【0079】
[実施例1]
第1の実施例として、図1に示したアンテナ1の具体的な態様を示す。
【0080】
実施例1のアンテナ1-1を構成する各要素の形状、寸法は以下の通りである。

・グランド導体面10:幅7mm、長さ50mmの略矩形状導体板の左下頂点から+X方向へ14mmの位置を起点として、幅5mm×長さ6.5mmの部分をくり抜いた略凹形状。

・接続導体20:グランド導体面10の左下頂点から+X方向へ12mmの位置を幅方向の中心として、+Z方向へ幅3.5mm、長さ5mmで延出した略矩形状。

・放射導体面30:接続導体20の左辺を起点として+X方向へ幅3.5mm、長さ3.5mmで延出する領域31、さらに+X方向へ幅2.5mm、長さ19mmで延出する領域32、同様に+X方向に延出する幅3.5mm、長さ3mmの領域33を組み合わせた略直線状の構成。領域31、33と、領域32の面積の半分以上は、アンテナ1-1をZ方向から平面視した際、グランド導体面10と重畳する。

・第3延出素子43:放射導体面30の先端(領域33)から、-Z方向に幅3mm、長さ2mmで延出した略矩形状。
【0081】
実施例1のアンテナ1-1は、放射導体面30と第3延出素子43とで2.4GHz帯域に対応することを意図したものである。
【0082】
接続点Gの位置は、グランド導体面10の左上頂点を起点として+X方向に12.5mm、-Y方向に2.5mmのグランド導体面10の表面とした。給電点Pの位置は、放射導体面30の左辺から+X方向に5.5mmの位置(領域32内)における、放射導体面30の-Z方向を向く面とした。
【0083】
接続点Gからグランド導体面10の右辺までの距離は37.5mmで、アンテナ1が対応する2.4GHz帯域の波長(約125mm)の4分の1より長い。
【0084】
また、給電点Pの-Z方向にはグランド導体面10が存在せず、給電点Pからグランド導体面10が存在する方向に第1垂線VL1を下ろした際、第1垂線VL1とグランド導体面10とが交差しない状態となっている。
【0085】
さらに、接続点Gの+Z方向には放射導体面30が存在せず、接続点Gから放射導体面30が存在する方向に第2垂線VL2を延ばした際、第2垂線VL2と放射導体面30が交差しない状態となっている。
【0086】
[実施例2]
第2の実施例として、図2に示したアンテナ1の具体的な態様を示す。
【0087】
実施例2のアンテナ1-2を構成する各要素の形状、寸法は以下の通りである。

・グランド導体面10:幅7mm、長さ50mmの略矩形状。

・接続導体20:グランド導体面10の右下頂点から-X方向へ23mmの位置を幅方向の中心として、+Z方向へ幅3.5mm、長さ3mmで延出した後、-X方向へ幅1.5mm、長さ13.5mmで延出し、さらに+Z方向へ幅6mm、長さ0.5mm延出した略S字形状。

・放射導体面30:接続導体20の左辺を起点として+X方向へ幅2mm、長さ3mmで延出する領域31、さらに+X方向へ幅4mm、長さ3mmで延出する領域32、同様に+X方向に延出する幅2mm、長さ16mmの領域33、幅4mm、長さ3mmの領域34を組み合わせた構成。領域31~34は、アンテナ1をZ方向から平面視した際、グランド導体面10と重畳する。

・第3延出素子43:放射導体面30の先端(領域34)から、-Z方向に幅5mm、長さ1.5mmで延出した略矩形状。
・第1側辺L1:長さ13.5mm

・第2側辺L2:長さ11mm
【0088】
実施例2のアンテナ1-2は、放射導体面30と第3延出素子43とで2.4GHz帯域に、グランド導体面10と接続導体20との間に形成されたスリットSが5GHz帯域に対応するWiFi規格に使用されるアンテナを意図したものである。
【0089】
接続点Gの位置は、グランド導体面10の左上頂点を起点として+X方向に14mm、-Y方向に3.5mmのグランド導体面10の表面とした。給電点Pの位置は、第1側辺L1に沿った、グランド導体面10の左辺から+X方向に17mmの位置における、接続導体20の+Y方向を向く面とした。
【0090】
接続点Gからグランド導体面10の右辺までの距離は36mmで、アンテナ1-2が対応する2.4GHz帯域の波長(約125mm)の4分の1より長い。
【0091】
また、接続点Gの+Z方向には放射導体面30が存在しないため、接続点Gから放射導体面30が存在する方向に第2垂線VL2を延ばした際、第2垂線VL2と放射導体面30が交差しない状態となっている。
【0092】
[実施例3]
第3の実施例として、図4に示したアンテナ1の具体的な態様を示す。
【0093】
実施例3のアンテナ1-3を構成する各要素の形状、寸法は以下の通りである。

・グランド導体面10:幅7.5mm、長さ41mmの略矩形状。

・接続導体20:グランド導体面10の右下頂点から-X方向へ15.5mmの位置を幅方向の中心として、+Z方向へ幅7mm、長さ4mmで延出した後、-X方向へ幅2.5mm、長さ13mmで延出した、略L字形状。

・放射導体面30:接続導体20の左辺を起点として+X方向へ幅1.5mm、長さ2mmで延出する領域31、さらに+X方向へ幅2mm、長さ8mmで延出する領域32、同様に+X方向に延出する幅1mm、長さ2mmの領域33、幅1.5mm、長さ17.5mmの領域34を組み合わせた構成。領域31~34は、アンテナ1をZ方向から平面視した際、グランド導体面10と重畳する。

・第1延出素子41:領域31の左辺を起点として-X方向へ幅1.4mm、長さ3mm延出する第1領域411と、接続導体20と同一平面で一体化された幅2.3mm、長さ3mmの第2領域412とで構成される。

・第3延出素子43:放射導体面30の先端(領域34)から、-Z方向に幅5mm、長さ2mmで延出した略矩形状。

・第1側辺L1:長さ13mm

・第2側辺L2:長さ12mm
【0094】
実施例3のアンテナ1-3は、放射導体面30が2.4GHz帯域に、グランド導体面10と、接続導体20及び第1延出素子41の第2領域412との間に形成されたスリットSが5GHz帯域に対応するとともに、放射導体面30が対応する2.4GHz帯域の高周波電流に由来して発生する第3高調波を、第3延出素子43とグランド導体面10との間の容量結合によって調整することで、6~7GHz帯域にも対応したWiFi6E規格に使用されるアンテナを意図したものである。
【0095】
接続点Gの位置は、グランド導体面10の下辺に沿った、グランド導体面10の左辺から+X方向に10.5mmの位置における、グランド導体面10の表面とした。給電点Pの位置は、第1側辺L1に沿った、グランド導体面10の左辺から+X方向に12mmの位置における、接続導体20の+Y方向を向く面とした。
【0096】
接続点Gからグランド導体面10の右辺までの距離は30.5mmで、アンテナ1が対応する2.4GHz帯域の波長(約125mm)の4分の1に略等しい値と見なすことができる。
【0097】
[実施例4]
第4の実施例として、図5に示したアンテナ1の具体的な態様を示す。
【0098】
実施例4のアンテナ1-4を構成する各要素の形状、寸法は以下の通りである。

・グランド導体面10:幅7.5mm、長さ41mmの略矩形状導体板の右下から-X方向へ5.5mmの位置を起点として、幅2.5mm×長さ24mmの部分をくり抜いた略凹形状。

・接続導体20:グランド導体面10の右辺から-X方向へ16mmの位置を幅方向の中心として、+Z方向へ幅7mm、長さ3mmで延出した後、-X方向へ幅2mm、長さ9mmで延出した、略L字形状。

・放射導体面30:接続導体20の左辺を起点として+X方向へ幅2.5mm、長さ6
mmで延出する領域31、さらに+X方向へ幅1.5mm、長さ1mmで延出する領域32、同様に+X方向に延出する幅4.5mm、長さ16mmの領域33を組み合わせた構成。領域31~33は、アンテナ1をZ方向から平面視した際、グランド導体面10と重畳する。

・第1延出素子41:領域31の左辺を起点として-X方向へ幅2mm、長さ6mm延出した第1領域411のみで構成される。

・第2延出素子42:領域33の左辺から、領域33の上辺を延長する形で-X方向に、幅1.5mm、長さ5.5mmで延出した構成。

・第3延出素子43:放射導体面30の先端(領域33)から、-Z方向に幅4mm、長さ2mmで延出した略矩形状。

・第1側辺L1:長さ9mm

・第2側辺L2:長さ10mm
【0099】
実施例4のアンテナ1-4は、放射導体面30と第3延出素子43が2GHz帯域に、グランド導体面10と、接続導体20及び第1延出素子41(第1領域411)との間に形成されたスリットSが5GHz帯域に対応するとともに、第1延出素子41と第2延出素子42の相互作用によって6~7GHz帯域にも対応するWiFi6E規格に使用されるアンテナを意図したものである。
【0100】
接続点Gの位置は、グランド導体面10の下辺に沿った、グランド導体面10の左辺から+X方向に11.5mmの位置における、グランド導体面10の表面とした。給電点Pの位置は、第1側辺L1に沿った、グランド導体面10の左辺から+X方向に13.5mmの位置における、接続導体20の-Y方向を向く面とした。
【0101】
接続点Gからグランド導体面10の右辺までの、X方向に沿った距離は29.5mmで、グランド導体面10にくり抜き部が存在し、接続点Gに供給された電流がグランド導体面10の右辺に到達するにはくり抜き部の辺に沿って迂回することを考慮すると、アンテナ1が対応する2.4GHz帯域の波長(約125mm)の4分の1に略等しい値と見なすことができる。
【0102】
また、給電点Pの-Z方向にはグランド導体面10が存在しないため、給電点Pからグランド導体面10が存在する方向に第1垂線VL1を下ろした際、第1垂線VL1とグランド導体面10とが交差しない状態となっている。
【0103】
さらに、接続点Gの+Z方向には放射導体面30が存在しないため、接続点Gから放射導体面30が存在する方向に第2垂線VL2を延ばした際、第2垂線VL2と放射導体面30が交差しない状態となっている。
【0104】
[比較例1]
第1の比較例として、図17に示したアンテナ1’を用意した。
【0105】
比較例1のアンテナ1’-1を構成する各要素の形状、寸法は以下の通りである。

・グランド導体面10’:幅7mm、長さ50mmの略矩形状。

・垂直グランド導体面11’:グランド導体面10’の左下頂点から+X方向に10mmの位置を起点として、グランド導体面10’に対して垂直な面を形成するよう+X方向へ幅1.5mm、長さ30mm延出した構成。
・接続導体20’:垂直グランド導体面11’の左辺を起点として、+Z方向へ幅2mm、長さ2.5mmで延出した直線状。

・放射導体面30’:接続導体20’の左辺を起点として+X方向へ幅0.5mm、長さ30mm延出した略直線状。放射導体面30’は接続導体20’と同一平面上に形成されており、アンテナ1’をZ方向から平面視した際に、放射導体面30’はグランド導体面10’と重畳しない。
【0106】
比較例1のアンテナ1’-1は、実施例1のアンテナ1-1と同様、2.4Hz帯域に対応することを意図したものである。
【0107】
接続点G’の位置は、グランド導体面10’の下辺に沿った、グランド導体面10’の左辺から+X方向に12mmの位置における、グランド導体面10’の表面とした。給電点P’の位置は、放射導体面30’の左辺から+X方向に4mmの位置における、接続導体20の+Y方向を向く面とした。
【0108】
[比較例2]
第2の比較例として、図18に示したアンテナ1’を用意した。
【0109】
比較例2のアンテナ1’-2を構成する各要素の形状、寸法は以下の通りである。

・グランド導体面10’:幅8.5mm、長さ46.5mmの略矩形状導体板の左下部を幅1.5mm×長さ13.5mmに渡って除去した形状。

・垂直グランド導体面11’:グランド導体面10の右下頂点を起点として、グランド導体面10’に対して垂直な面を形成するよう-X方向へ幅1mm、長さ33mm延出した構成。

・延出グランド導体面12’:垂直グランド導体面11’の右端から+Y方向へ幅3mm、長さ2.5mm延出した略矩形状。

・接続導体20’:垂直グランド導体面11’の右辺から-X方向へ15mmの位置を幅方向の中心として、+Z方向へ幅4mm、長さ2.5mmで延出した後、-X方向へ幅1.5mm、長さ16mmで延出した、略L字形状。

・放射導体面30:接続導体20’の左辺を起点として+X方向へ幅3mm、長さ5.5
mmで延出する領域31’、さらに+X方向へ幅1.5mm、長さ21mmで延出する領域32’を組み合わせた構成。領域31’、32’は、アンテナ1’をZ方向から平面視した際、グランド導体面10’と重畳しない。

・第3延出素子43’:放射導体面30’の先端(領域32’)から、-Z方向に幅3mm、長さ1.5mmで延出した略矩形状。
【0110】
比較例2のアンテナ1’-2は、実施例2~4と同等の周波数帯域に対応するアンテナを意図したものである。
【0111】
接続点G’の位置は、グランド導体面10’の下辺に沿った、グランド導体面10’の左辺から+X方向に11mmの位置における、グランド導体面10’の表面とした。給電点P’の位置は、グランド導体面10の左辺から+X方向に13.5mmの位置における、接続導体20’の-Y方向を向く面とした。
【0112】
[アンテナの評価]
以上に述べた実施例、比較例のアンテナに対し以下の項目で評価を行った。

・項目1:V.S.W.R
・項目2:導体近接に伴うV.S.W.R.の変化
・項目3:導体近接に伴う利得の変化
【0113】
[項目1:V.S.W.R]
実施例1~4のアンテナのV.S.W.Rを図6~9に示す。
【0114】
実施例1のアンテナ1-1は、2.4GHz付近にV.S.W.Rのピーク(値が小さい領域)が存在し、意図した周波数帯域に対応するアンテナであることを確認できた。
【0115】
実施例2のアンテナ1-2は、2.4GHz付近と5.5GHz付近(5GHz帯域)にV.S.W.Rのピークが存在し、WiFi規格に対応できるアンテナであることを確認できた。
【0116】
実施例3、4のアンテナ1-3、4は、2.4GHz付近、5.5GHz付近(5GHz帯域)、7GHz付近(6~7GHz帯域)にV.S.W.Rのピークが存在し、WiFi6E規格に対応できるアンテナであることを確認できた。
【0117】
[項目2:導体近接に伴うV.S.W.R.の変化]
作成したアンテナから、実施例1~3、比較例1、2のアンテナを選択し、各アンテナに導体を近接させた際の、各アンテナのV.S.W.Rの変化の様子を図11~13、及び図19、20に示す。
【0118】
導体60は、アンテナの幅(Y方向寸法)と同じ幅、及びアンテナの長さ(X方向寸法)より十分大きい長さの面を有する塊状の金属であり、図10に示すように、その面が放射導体面30と平行となる状態で、グランド導体面10が存在する側(-Z方向側)から近接させた。図10(a)は実施例のアンテナに対する試験の様子、図10(b)は比較例のアンテナに対する試験の様子を示す。
【0119】
近接距離は、実施例ではグランド導体面10と導体60との間隔、比較例では導体60に対向するグランド導体面10’の端縁から導体60までの距離とした。
【0120】
実施例1のアンテナ1-1は、導体60の近接距離が15mmの場合、2.4GHz付近にV.S.W.Rのピークが存在し、目的とする周波数帯域で十分な通信特性を有することが確認できる。導体60の近接距離が10mm、5mmになるとV.S.W.Rの多少の変化は発生するが、ピーク付近では殆ど変化がなく、導体60が近接しても意図した通信特性を安定して維持できるアンテナであると評価できる。
【0121】
一方、比較例1のアンテナ1’-1は、導体60の近接距離が15mm、10mmの場合は概ね意図した通信特性が得られているものの、近接距離が5mmになるとV.S.W.Rが乱れ、意図した通信特性を維持できなくなった。
【0122】
実施例2のアンテナ1-2は、導体60の近接距離が15mmの場合、2.4GHz付近、5.5GHz付近(5GHz帯域)にピークが存在し、目的とする周波数帯域で十分な通信特性を有することが確認できる。導体60の近接距離が10mm、5mmとなってもV.S.W.Rの目立った変化がなく、導体60が近接しても意図した通信特性を安定して維持できるアンテナであると評価できる。
【0123】
実施例3のアンテナ1-3は、導体60の近接距離が15mmの場合、2.4GHz付近、5.5GHz付近(5GHz帯域)、6.7GHz付近(6~7GHz帯域)にピークが存在し、目的とする周波数帯域で十分な通信特性を有することが確認できる。導体60の近接距離が10mm、5mmとなってもVSWRの目立った変化がなく、導体60が近接しても意図した通信特性を安定して維持できるアンテナであると評価できる。
【0124】
一方、比較例2のアンテナ1’-2は、構成の違いによってV.S.W.Rのピークが得られる周波数が変化しているものの、導体60の近接距離が15mm、10mmの場合は概ね意図した通信特性が得られている。しかしながら、導体60の近接距離が5mmになると、5GHz以上の周波数帯域のVSWRが乱れ、意図した通信特性を維持できなくなった。
【0125】
[項目3:導体近接に伴う利得の変化]
作成したアンテナから、実施例1~3、比較例1、2のアンテナを選択し、各アンテナに導体60を近接させた際の、各アンテナの利得(放射導体面30に平行な面における値)の変化の様子を図14~16、及び図21、22に示す。導体60の近接方法は項目2を評価した際と同様である。
【0126】
実施例1~3のアンテナは、導体60の近接距離が5mmの場合でも対応する周波数帯域における利得の目立った変化がなく、導体60が近接しても意図した通信特性を安定して維持できるアンテナであると、利得の面でも評価できる。
【0127】
一方、比較例1、2のアンテナは、導体60の近接距離が5mmの場合になると、比較例1では2.4GHz帯域で、比較例2では特に6~7GHz帯域で利得の減少が発生し、利得の面でも導体60の近接による影響を受けやすいアンテナと言える。
【0128】
以上の結果から、本発明のアンテナは、グランド導体面10と放射導体面30を重畳させた構造により、導体近接の影響を抑制できるとともに、延出素子等を併用することで複数の周波数帯域にも対応できるアンテナと評価できる。
【0129】
以上に述べたアンテナは本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、他の周波数帯域に対応するアンテナにも適用できることは言うまでもない。特に、アンテナ1の具体的構成は以上述べた例に制限されず、本発明の思想の範囲内で適宜変形して利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のアンテナは、通信機能を有した種々の機器に適用でき、IoTに使用される産業装置、自動車関連機器、通信機能を有した情報家電などに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0131】
1 アンテナ
10 グランド導体面
12 グランド側壁面
13 カシメ片
20 接続導体
21 第1接続部
22 第2接続部
30 放射導体面
31~34 放射導体面を構成する領域
41 第1延出素子
411 第1領域
412 第2領域
42 第2延出素子
43 第3延出素子
50 同軸ケーブル
60 導体
70 誘電体
71A 第1嵌合突起
71B 第2嵌合突起
72 突出部
L1 第1側辺
L2 第2側辺
L3 第1延出素子による導体辺の延長部分
S スリット
P 給電点
G 接続点
VL1 第1垂線
VL2 第2垂線
VL3 第3垂線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23