(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140359
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】キャンドモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034908
(22)【出願日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】10 2021 105 759.0
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ベレンデス
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン オーヒスレン
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD16
5H605FF06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クーラントを漏らさず、同時に、簡単で製造が経済的であるキャンドモータを提供する。
【解決手段】ステータ11と、ステータ11に対して回転可能であるように取り付けられたロータ21と、ステータ11及びロータ21の間に配置されたキャン要素2と、キャン要素2に結合された支持リング3とを備えたキャンドモータ1。支持リング3はそれ自体で及び/又はキャン要素2と一緒に、積層鉄心41に少なくとも部分的に軸方向に隣接して延在する支持セクション7を提供する。支持セクション7は、ロータ空間210がステータ空間110に対してクーラントが漏れない態様でシールされるように、シールセクション23がシール装置4に対向した状態で横たわる。ここで、支持セクション7は、シールセクション23から支持セクション7の軸方向端部まで延在し、少なくとも軸方向において露出されるように構成された端部セクション33を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの積層鉄心(41)と、巻線ヘッド(61)を備えた少なくとも1つの巻線(51)とを備えたステータ(11)を備え、前記ステータ(11)に対して回転可能であるように取り付けられたロータ(21)と、前記ステータ(11)及び前記ロータ(21)の間に配置された少なくとも1つのキャン要素(2)と、前記キャン要素(2)に結合された少なくとも1つの支持リング(3)とを備えたキャンドモータ(1)であって、前記支持リング(3)はそれ自体で及び/又は前記キャン要素(2)と一緒に、前記積層鉄心(41)に少なくとも部分的に軸方向に隣接して延在する支持セクション(7)を提供し、前記支持セクション(7)は、ロータ空間(210)がステータ空間(110)に対してクーラントが漏れない態様でシールされるように、少なくとも1つのシールセクション(23)が少なくとも1つのシール装置(4)に対向した状態で横たわるキャンドモータ(1)において、
前記支持セクション(7)が、前記シールセクション(23)から前記支持セクション(7)の軸方向端部まで延在し、少なくとも軸方向において露出されるように構成された端部セクション(33)を有する、
ことを特徴とするキャンドモータ(1)。
【請求項2】
前記端部セクション(33)が、半径方向において露出されるようにも構成され、及び/又は、前記シールセクション(23)の外側の前記支持セクション(7)が、完全に露出されるように構成される、請求項1に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項3】
前記シール装置(4)がハウジング構造(31)に留められ、前記支持セクション(7)が前記シール装置(4)によってのみ前記ハウジング構造(31)に支持され、前記シール装置(4)が、少なくとも1つのエラストマーシールリップ(14)を備える、請求項1又は2に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項4】
前記シールセクション(23)は、前記支持セクション(7)がその半径方向内側が前記シール装置(4)に接した状態で横たわるように、前記支持セクション(7)の半径方向内側に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項5】
前記支持リング(3)が前記積層鉄心(41)にも取り付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項6】
前記支持リング(3)が、排他的に圧力嵌め式に、特に半径方向の嵌め合いによってのみ、前記積層鉄心(41)に接合される、請求項5に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項7】
前記支持リング(3)が繊維複合材料(5)から製造され、好ましくは少なくとも2層の層状構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項8】
前記キャン要素(2)が前記支持リング(3)に積層され、好ましくは前記支持リング(3)に接着剤で付着されない、請求項1~7のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項9】
前記支持リング(3)及び前記キャン要素(2)が、少なくとも部分的に同一材料から、好ましくは繊維複合材料(5)から製造される、請求項1~8のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項10】
前記支持リング(3)の材料が、前記積層鉄心(41)の熱膨張係数に適合された熱膨張係数を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項11】
前記膨張係数の適合が層状構造によって実現され、特に、繊維複合材料(5)の繊維角度の的を絞った向きによって実現される、請求項10に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項12】
前記巻線ヘッド(61)が前記積層鉄心(41)から端部側で軸方向に突出し、前記シールセクション(23)が、少なくとも部分的に前記巻線ヘッド(61)に重なる軸方向位置に配置される、請求項1~11のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項13】
前記支持リング(3)が前記巻線ヘッド(61)から間隔を空けて配置され、好ましくは前記巻線ヘッド(61)の注封化合物と接触しない、請求項12に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項14】
前記端部セクション(33)が半径方向内側で前記ステータ空間(110)に少なくとも部分的に流体的に接続される、請求項1~13のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【請求項15】
少なくとも2つの支持リングを備え、前記キャンのそれぞれの軸方向端部に少なくとも1つの支持リングが割り当てられる、請求項1~14のいずれか一項に記載のキャンドモータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャンドモータであって、少なくとも1つの積層鉄心と、巻線ヘッドを備えた少なくとも1つの巻線とを備えたステータを備え、及びステータに対して回転可能であるように取り付けられたロータを備えたキャンドモータに関する。少なくとも1つのキャン要素が、ステータとロータとの間に配置される。例えば、キャン要素は、セパレート型のキャンであるか、又はライナであり、ライナはステータと一緒に製造する過程で、ステータに接続される(特に形状合致式及び/又は粘着式に)。少なくとも1つの支持リングが、キャン要素に結合される。支持リングはそれ自体で及び/又はキャン要素と一緒に、積層鉄心に少なくとも部分的に軸方向に隣接して延在する支持セクションを提供する。支持セクションは、ロータ空間がステータ空間に対してクーラントが漏れない態様でシールされるように、少なくとも1つのシールセクションが少なくとも1つのシール装置に対向した状態で横たわる。
【背景技術】
【0002】
そのようなキャンドモータは通常、電気駆動機械として、例えば永久磁石型同期機械として設計される。キャンドモータは、液体冷却媒体がステータ巻線の巻線ヘッドの周りに流される場合、直接的な巻線ヘッド冷却によって冷却されることが多い。
【0003】
前記のタイプのキャンドモータが(特許文献1)から知られている。そこに記載されたキャンドモータは、その要求を確実に満たす。それにもかかわらず、前記キャンドモータをさらに発展させ、改良することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2018 115 927 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、意図された動作状況下で確実にクーラントを漏らさず、同時に、簡単で製造が経済的であるキャンドモータを提供することである。キャンドモータが可能な最低重量を有することもまた、好ましくは追及される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的は請求項1の特徴を有するキャンドモータによって達成される。本発明の好ましい発展は、従属項の主題である。本発明のさらなる利点はこの概要から、及び例示的な実施形態の記載から明らかになるだろう。
【0007】
本発明によるキャンドモータは、少なくとも1つの積層鉄心と、巻線ヘッドを備えた少なくとも1つの巻線とを備えたステータを備える。キャンドモータは、ステータに対して回転可能であるように(特にハウジング構造に)取り付けられた少なくとも1つのロータを備える。キャンドモータは、少なくとも1つのキャン要素を備える。キャン要素は、ステータとロータとの間に(半径方向ギャップ内に)配置される。キャンドモータは、少なくとも1つの支持リングを備える。支持リングはキャン要素に結合される。支持リングは、少なくとも部分的にそれ自体で及び/又は少なくとも部分的にキャン要素と一緒に、支持セクションを提供する。支持セクションは、積層鉄心に少なくとも部分的に軸方向に隣接して延在する。特に、支持セクションは、軸方向に積層鉄心を越えて突出する。支持セクションは、少なくとも1つのシールセクションが少なくとも1つのシール装置に対向した状態で横たわる。特に、このようにして、ロータ空間は、ステータ空間に対してクーラントが漏れない態様でシールされる。ここで、支持セクションは、シールセクションから、支持セクションの(特に支持リング及び/又はキャンの)軸方向端部まで延在する端部セクションを備える。ここで、支持セクションは、少なくとも軸方向において露出されるように構成される。
【0008】
本発明は多数の利点を提供する。顕著な利点は、露出された端部セクションを備えた支持セクションによって与えられる。したがって、キャンドモータの動作中に熱的に誘導された膨張、又は機械的に誘導された移動を、特に有利に補償することができる。さらなる利点は、端部セクションの前に配置されたシールセクションによって与えられる。このようにして、分離により、ステータ空間に対するロータ空間の確実なシールが同時に保証される。本発明はさらに、分離及びシールが設計の点で簡単に実装可能であり、及びモータが特に経済的に製造可能であるという利点を提供する。
【0009】
また、端部セクションが半径方向に露出するように構成されていることが好ましく、有利である。特に、端部セクションは全体的に露出するように構成されている。特に、シールセクションの外側の(全体の)支持セクションが露出するように構成されていることが好ましい。特に、端部セクション、好ましくは、シールセクションの外側の支持セクション全体が、その半径方向外側及び/又はその半径方向内側で露出するように構成されている。好ましくは、端部セクションは、周囲の構成要素、好ましくはハウジング構造に対して空間を有しており、この空間は、支持リングの壁厚さの少なくとも2倍、特に3倍に相当する。すべての実施形態において、支持リングの少なくとも1つの軸方向端部が、軸方向及び/又は半径方向に露出するように構成されていることが好ましい。
【0010】
シール装置は特にハウジング構造に留められる。ハウジング構造は特に、軸受プレート及び/又は端部側フランジとして形成されるか、又は、少なくとも1つの軸受プレート及び/又は端部側フランジを備える。すべての実施形態において、端部セクションがハウジング構造から間隔を空けて配置されることが好ましい。ここで、支持セクションは、好ましくは、シール装置によって(のみ)ハウジング構造に支持され、特に半径方向に支持される。シール装置は、好ましくは、少なくとも1つのシールリップ、好ましくは弾性シールリップ、特に好ましくはエラストマーシールリップを備える。このような支持体は、構成要素の特に有利な分離を可能にすると同時に、支持リング及びキャンの信頼性の高い支持を可能にする。特に、シール装置は、半径方向の内側及び/又は少なくとも1つの軸方向の側がハウジング構造に対向した状態で横たわる。
【0011】
シールセクションは、好ましくは、支持セクションの半径方向内側に配置される。この配置は、特に、支持セクションがその半径方向内側がシール装置及び好ましくはエラストマーシールリップに対向した状態で横たわるようなものである。特に、支持セクションは、シール装置を円周方向に取り囲んでいる。特に、支持セクションは、シール装置によって半径方向内側でシールされている。また、支持セクションは、その半径方向の外側及び/又は軸方向の側がシール装置に対向した状態で横たわり得る。
【0012】
特に、キャン要素は、支持リングの半径方向内側に配置される。この配置は、特に、キャン要素が支持リングの半径方向内側に対して半径方向外側で支持されるようなものである。キャン要素は、支持リングの半径方向外側に配置されてもよい。この配置は、特に、キャン要素が支持リングの半径方向外側に対して半径方向内側で支持されるようなものである。
【0013】
キャン要素及び支持リングが接合領域で少なくとも部分的に重なり合うことが可能であり且つ有利である。ここで、接合領域において、キャン要素及び支持リングは、内側で半径方向に及び/又は外側で半径方向に平らな態様で互いに移行し得る。接合領域は支持セクションの一部又は全部に、又はこれを越えて延在し得る。すべての実施形態において、支持リング及びキャン要素は別個の構成要素であることが好ましい。
【0014】
端部セクションは少なくとも部分的に半径方向内側でステータ空間に流体的に接続されることが可能であり且つ有利である。そのような実施形態により分離と組み合わせて特に有利な冷却動作が可能になる。露出された構成の結果として、クーラントは、シール装置まで、又はシールセクションまで、端部セクションの半径方向内側を流れることができる。
【0015】
すべての実施形態において、支持リングを積層鉄心に取り付けることが特に好ましく且つ有利である。特に支持リングは積層鉄心に留められる。特に、積層鉄心及び支持リングは、少なくとも部分的に重なり合う。積層鉄心及び支持リングはそれらの半径方向内側で平らな態様で互いに移行することが可能である。
【0016】
支持リングは好ましくは圧力嵌め式に積層鉄心に接合される。支持リングは特に好ましくは排他的に圧力嵌め式に積層鉄心に接合される。これにより、熱的又は機械的に誘導される積層鉄心の変化が、支持リングに、したがってクーラント漏れ止め性に影響を及ぼすことが防止される。支持リングは好ましくは、半径方向の嵌め合いによって、特に好ましくは排他的に半径方向の嵌め合いによって、積層鉄心に接合される。特に、そのような接合は、モータの意図された動作温度範囲全体にわたって提供される。特に、支持リングは、積層鉄心に粘着式に接合されない。特に、半径方向の嵌め合いに関して、(各場合において)少なくとも1つの軸方向ショルダ部が、支持リング及び/又は積層鉄心に提供される。
【0017】
支持リングは少なくとも1つの繊維複合材料から製造されることが特に好ましい。支持リングは好ましくは繊維複合材料の少なくとも2層、特に多層の層状構造を有する。特に、ガラス繊維補強及び/又は炭素繊維補強プラスチックが提供される。熱膨張に関する利点とは別に、そのような複合材料はさらに電磁的中立性を与える。さらに、繊維複合材料から構成された支持リングの場合、上記のショルダ部を特に簡単に作製することもできる。例えば、ショルダ部は、所望の嵌め合い寸法に研磨される。しかしながら、支持リングを金属材料から、例えばアルミニウム又は鋼から作製することも可能である。
【0018】
特に、支持リングは、キャン要素上に(接合領域で)積層される。支持リングは、特に、半径方向外側からキャン要素に積層される。このため、繊維複合材料の層は、特に、的を絞った方法でキャン要素に横たえられる。これにより確実な支持動作が可能になり、同時に動作中の適切な膨張挙動が可能になる。キャン要素を支持リングに積層することも可能である。すべての実施形態において、支持リングはキャン要素に接着剤で付着されないことが好ましい。特に、接合領域において、接着剤による接続は提供されず、好ましくは他の粘着式の接続も提供されない。
【0019】
支持リング及びキャン要素は好ましくは少なくとも部分的に同一材料から、特に好ましくは繊維複合材料から製造される。これは、キャンドモータの動作中の熱膨張挙動に特に有利であることが判明している。特に、支持リング及びキャン要素は、電気的に非伝導性又は非常に低い伝導性の材料から製造される。
【0020】
キャン要素は特に、最大で1ミリメートル、好ましくは最大で0.7mm、特に好ましくは最大で0.5mmの壁厚さを有する。例えば、0.4mm±10%の壁厚さが提供される。特に、支持リングはキャン要素の壁厚さの最大で6倍、好ましくは最大で5倍、特に好ましくは最大で4倍に相当する壁厚さを有する。例えば、支持リングは1.6mm±10%の壁厚さを有する。
【0021】
特に、支持リングは積層鉄心の熱膨張係数に適合された熱膨張係数を有する材料から製造される。ここで特に半径方向の膨張が考慮される。特に、支持リング及び積層鉄心の膨張係数は少なくともほぼ等しく、例えば±10%の逸脱で等しい。支持リングの材料が、鋼の膨張係数に適合された熱膨張係数、例えば12×10-61/Kである熱膨張係数を有することが特に好ましい。このようにして、ステータの硬化及び焼戻しの間の解離の影響を打ち消すことができる。
【0022】
膨張係数の適合は好ましくは層状構造によって実行され、特に好ましくは繊維複合材料の繊維角度の狙いを定めた向きによって実行される。特に、ここで、繊維角度は、半径方向の所望の膨張係数が達成されるような向きである。
【0023】
特に、巻線ヘッドは、端部側で積層鉄心から軸方向に突出している。ここで、シールセクションは、少なくとも部分的に巻線ヘッドと重なる軸方向位置に配置されることが好ましい。特に、シールセクションは、巻線ヘッドよりも半径方向内側に位置している。接合領域を軸方向において少なくとも部分的に積層鉄心と重なるように配置することも可能である。また、接合領域は、軸方向に少なくとも部分的に巻線ヘッドと重なるように配置されていてもよい。巻線ヘッドの下のシールセクションのそのような配置は、多数の利点を与える。特に、キャン要素は、巻線ヘッドの領域で、支持リングによって(のみ)支持される。キャン要素は、巻線ヘッドの前で軸方向に終端し得る、又は、少なくとも部分的に巻線ヘッドと軸方向に重なり得る。特に、巻線ヘッドは、支持リングを越えて軸方向に突出している。また、支持リングは、巻線ヘッドを越えて軸方向に突出し得る。
【0024】
支持リングは、巻線ヘッドから間隔を空けて配置されることが好ましい。また、支持リングは、巻線ヘッドと接触しないことが好ましい。注封化合物が設けられている場合、特に支持リングは、巻線ヘッドの注封化合物と接触しない。特に、少なくとも端部セクション、好ましくは支持セクション全体が、巻線ヘッドから間隔を空けて配置される。
【0025】
特に、キャンドモータは、少なくとも2つの支持リングを備える。キャンのそれぞれの軸方向端部に、少なくとも1つの支持リングが割り当てられることが好ましい。特に、キャン要素は、それぞれの場合において、少なくとも1つの支持リングによって、その軸方向端部で支持される。特に、支持リングは、この場合、上記のように構成及び配置される。支持リングの同じ配置を軸方向の両端に設けることも可能である。また、支持リングの異なる構成又は配置をそれぞれの軸方向端部に設けることも可能である。キャン要素は、好ましくは、反対側の軸方向端部に配置された少なくとも2つの支持リングによって、それぞれのシール装置に半径方向に支持される。
【0026】
本発明の文脈において、露出された形態とは、特に、キャンドモータの他の構成要素に対する、好ましくはハウジング構造に対する間隔を空けた配置を意味するように理解される。本発明の文脈において、「軸方向」及び「半径方向」という位置用語は、特に、キャンドモータの長手方向軸又は回転軸に関連する。本発明の文脈において、キャンドモータは、缶詰めにされた電気機械を意味するように理解され、その結果、本発明によるキャンドモータはモータ又は発電機であり得る。
【0027】
特にキャン要素はステータに留められる。特にキャン要素は、半径方向外側がステータの半径方向内側に対向した状態で横たわる。特に支持リングはロータに留められない。特に、キャン要素は、ステータの軸方向端部を越えて突出する。特に、キャン要素は、外周面がステータに対向した状態で横たわる。特に、キャン要素は、単独で又は少なくとも1つの支持リングと組み合わせて、ロータ空間をステータ空間に対してシールするのに適切であり、そのように構成される。少なくとも1つの支持リング及び好ましくは少なくとも2つの支持リングは、ステータ空間とロータ空間との間に流体を漏らさない離隔が存在するように、キャン要素の長さを長くすることが可能である。
【0028】
支持セクションにおいて、キャン要素及び支持リングは、部分的に又は完全に軸方向に重なり得る。次にキャン要素及び支持リングは好ましくは、支持セクション内で互いに結合される。しかしながら、支持リングだけが支持セクション内に延在することも可能である。次にキャン要素及び支持リングは好ましくは、支持セクションの外側で、特に端部セクションの外側で互いに結合される。
【0029】
キャン要素及び支持リングは、積層鉄心と少なくとも部分的に重なる軸方向の位置で互いに結合されてもよい。キャン要素及び支持リングはまた、積層鉄心に少なくとも部分的に軸方向に隣接して互いに結合されてもよい。キャン要素及び支持リングは、少なくとも部分的に端部セクションにおいて互いに結合されてもよい。
【0030】
キャン要素は好ましくは、支持リングの軸方向長さ全体にわたって延在する。キャン要素及び支持リングは、好ましくは、共通の軸方向端部を有する。次に支持セクションは、キャン要素及び支持リングによって一緒に形成される。しかしながら、キャン要素が支持リングの軸方向長さの一部のみにわたって延在することも可能である。次に支持リングは好ましくは、キャン要素の軸方向端部を越えて突出する。ここで、支持セクションは、支持リング単独で、又は部分的にキャン要素及び支持リングによって形成されてもよい。
【0031】
支持セクションにおいて、支持リングは部分的に、又はその軸方向長さ全体で、キャン要素に対して同軸に配置されてもよい。ここで、支持リングは、キャン要素の内側又は外側に配置されてもよい。特に、端部セクションは、積層鉄心の方を向く支持リングの軸方向端部の反対側に位置する。特に、端部セクションは、積層鉄心に背く。
【0032】
キャンドモータは、積層鉄心の軸方向端部側に配置された、特にそれと平行に延在する少なくとも1つの端部ディスク(面ディスクとも呼ばれる)を備えることが可能である。端部ディスクはしたがって面ディスクと呼ぶこともできる。そのような実施形態において、支持リングを端部ディスクから間隔を空けて配置することが特に好ましい。特に、支持リングは、端部ディスクに接続されない。特に、端部ディスク及び支持リングは、異なる材料から製造される。特に、端部セクションは、端部ディスクから間隔を空けて配置されるように、露出されるよう構成される。これにより、端部ディスクからの熱的及び/又は機械的な分離が可能になり、これは特に有利であることが判明している。
【0033】
本発明の文脈において、キャン要素は好ましくは、キャン及びライナの両方を意味するように理解される。特に、キャン要素は、少なくとも1つのキャン備えるか、又はキャンとして構成される。キャンは特にセパレート型の構成要素として構成される。キャンは、特に、ステータとは別々に製造可能である。キャンドモータの動作状態において、キャンは特に固定式に設置される。代替的に又は追加的に、キャン要素は、少なくとも1つのライナを備えてもよく、又はライナとして形成されてもよい。ライナは特に、少なくとも部分的にステータ内に製造可能である、又は製造される(例えば硬化される)。ステータは、少なくとも部分的に、ライナの製造のための成型工具として機能し得る。例えば、ライナは、(少なくとも接合領域において)ステータの上に積層される。ライナは特に、ステータに形状合致式に及び/又は粘着式に接続される。ライナは好ましくは固定式にステータに接続される(特に、非破壊的に分離できないように)。キャン要素はまた、ステータシールと呼ぶこともできる。
【0034】
本発明のさらなる利点は、添付の図面を参照して以下で考察される例示的実施形態から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】断面側面図における本発明によるキャンドモータの完全に概略的な詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、本発明によるキャンドモータ1を詳細に示し、キャンドモータ1はこの場合ステータ11の巻線51の直接冷却を可能にする。ステータ11は積層鉄心41を備え、その端部側で巻線51の巻線ヘッド61が突出している。キャンドモータ1はさらにロータ21(ここではこれ以上詳しく示されない)を備える。ロータはハウジング構造31に回転可能に取り付けられる。ハウジング構造31はこの場合、例えば軸受プレート又はフランジである。より良い概説のために、キャンドモータ1の一方の軸方向側だけがここに示されている。反対側は好ましくは同様の構成である。
【0037】
ステータ11とロータ21との間に半径方向ギャップが形成され、ここにキャン要素2が延在する。それぞれの場合において、1つの支持リング3が、ステータ11の軸方向端部を越えて突出するキャン2のセクションに配置される。この結果、ステータ空間110(これを通って流体が流れる)は、ロータ空間210から、流体が漏れないように離隔される。キャン要素2は、ここに示されない軸方向端部に支持リング3を同様に備える。特に、支持及びシールが同様の方法でそこで実現される。キャン要素2は支持リング3によって半径方向に支持される。
【0038】
動作中、液体クーラントは、冷却チャネル6を介してステータ空間110に入ることができ、そこで巻線ヘッド61及び巻線51の残りに沿って流れる。次に、暖められたクーラントは、再びさらなる冷却チャネル6(ここでは見ることができない)を介してステータ空間110から放出されることができる。
【0039】
ここで、キャン要素2とともに支持リング3は支持セクション7を形成し、支持セクション7はシールセクション23がシール装置4に対向した状態で支持される。ここで、シール装置4はハウジング構造31に留められ、エラストマー装置14を有する。支持セクションはここで積層鉄心から、支持リング3の又はキャン2の端部まで延在する。
【0040】
ハウジング構造31及び他の隣接する構成要素からの熱的及び機械的な分離を確実にするために、支持セクション7は露出された端部セクション33をここで備える。端部セクション33は、この場合において、軸方向において、また、半径方向内側及び半径方向外側に、すべての隣接する構成要素から離間される。端部セクション33は、シールセクション23から、支持セクション7の隣接する軸方向端部まで延在する。結果として、キャン要素2及び支持リング3は、ここでハウジング構造31と接触せず、したがって、排他的にエラストマーシール14に支持される。ここで、支持リング3はまた、巻線ヘッド61ともその注封化合物とも接触しない。支持セクション7は、したがって、シールセクション23の外側で完全に露出されるように構成される。
【0041】
ここで示される実施形態において、支持リング3はキャン2の半径方向外側に配置されている。しかしながら、キャン要素2を支持リング3の半径方向外側に配置することもできる。キャン要素2及び支持リング3は、この場合、接合領域13に沿って互いに重なり合うように配置される。例えば、支持リング3は、ここで1.6mmの壁厚さを有する。例えば、キャン要素2はここで0.4mmの壁厚さを有する。
【0042】
支持リング3はここで繊維複合材料5から製造される。これにより熱膨張の係数をステータ11の積層鉄心41に適合させることができる。キャン要素2もまた好ましくは繊維複合材料5から製造される。キャン要素2は次いで、例えば、積層鉄心41の内側輪郭に積層されたライナとして構成される。次いで支持リング3は、例えば、接合領域13においてその内側でキャン要素2に部分的又は完全に半径方向に積層され得る。
【0043】
ここで、繊維複合材料5は、少なくとも2つ、好ましくは3つ又はそれ以上の層を有する。繊維複合材料の使用により、支持リング3はこの場合において特に低い導電率を有し、したがって、干渉及び電力損失を防止する。さらに、このようにして、例えば、金属製の支持リング3の場合よりも著しく低い重量を達成することが可能である。
【0044】
キャン要素2への取り付けに加えて、支持リング3は、この場合において、積層鉄心41にも取り付けられる。ここで、支持リング3及び積層鉄心41は、半径方向の嵌め合いによって排他的に圧力嵌めにおいて接合される。このため、積層鉄心41は、ショルダ部71を有する。代替的に又はそれに加えて、ショルダ部71は支持リング3内に形成されてもよい。例えば、支持リング3は、ショルダ部71の領域において所望の嵌め合い寸法に研磨される。これは、特に、支持リング3が繊維複合材料5から製造される場合、有利である。特に、残りの領域は、未研磨のままにされる。
【0045】
ここで、支持リング3及び積層鉄心41に対して接着剤等は使用されない。ここで接合は、キャンドモータ1の動作温度範囲全体にわたって、圧力嵌め式によってのみ行われ、粘着では行われない。これはまた、円周方向における支持リング3の適合された熱膨張係数によっても可能になる。
【0046】
ここで、繊維複合材料5は、積層鉄心41の熱膨張係数に適合された熱膨張係数を有する。ここで積層鉄心41は鋼から構成されている。例えば、ここで、膨張係数は12×10-61/Kである。鋼の熱膨張係数に対する膨張係数の適合は、例えば層状構造によって、及び例えば繊維角度の構成を介して実現される。このようにして、ステータ11の硬化及び焼戻しの間の、及びモータの動作中の加熱時のキャン2及び支持リング3の望ましくない解離を、確実に防止することができる。
【0047】
ここで提案された支持リング3は巻線ヘッド61の領域でキャン2を支持するように機能し、同時に、ステータ空間110及びロータ空間210のシールのためのシールセクション23を提供する。ここで、本発明は、支持リング3及びキャン要素2がシールセクション23の外側でハウジング構造31に一切接触しないという特別な利点を付与する。したがって、信頼できる支持及び信頼できるシール動作が、熱的及び機械的な分離と組み合わせて達成される。
【符号の説明】
【0048】
1 キャンドモータ
2 キャン要素
3 支持リング
4 シール装置
5 繊維複合材料
6 冷却チャネル
7 支持セクション
11 ステータ
13 接合領域
14 エラストマーシールリップ
21 ロータ
23 シールセクション
31 ハウジング構造
33 端部セクション
41 積層鉄心
51 巻線
61 巻線ヘッド
71 ショルダ部
110 ステータ空間
210 ロータ空間