(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140369
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】飛翔害虫駆除用スプレー
(51)【国際特許分類】
A01N 25/06 20060101AFI20220915BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20220915BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20220915BHJP
A01M 7/00 20060101ALI20220915BHJP
B05B 11/00 20060101ALI20220915BHJP
B05B 9/04 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
A01N25/06
A01P7/04
A01N25/30
A01M7/00 B
B05B11/00 102Z
B05B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035548
(22)【出願日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2021039552
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 綾
(72)【発明者】
【氏名】飯田 稔明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政宏
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 数馬
(72)【発明者】
【氏名】小泉 亮太
【テーマコード(参考)】
2B121
4F033
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121CB02
2B121CB22
2B121CB47
4F033RA02
4F033RC01
4H011AC02
4H011BC03
4H011BC04
4H011BC06
4H011BC07
4H011BC19
4H011DA21
4H011DE16
4H011DG08
4H011DH02
4H011DH03
(57)【要約】
【課題】スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫駆除用組成物を飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる飛翔害虫駆除用スプレーを提供する。
【解決手段】トリガースプレー式噴霧容器と、前記トリガースプレー式噴霧容器に充填された飛翔害虫駆除用組成物とから構成される飛翔害虫駆除用スプレーであって、前記飛翔害虫駆除用組成物は、界面活性剤(A)及び水を含有し、前記トリガースプレー式噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置で測定される、前記飛翔害虫駆除用スプレーの噴霧物の体積粒径分布において、粒径が310μm以下の前記噴霧物の割合が70体積%以上95体積%以下であり、粒径が354μm以上773μm以下の前記噴霧物の割合が0.05体積%以上であり、粒径が1483μm以上1926μm以下の前記噴霧物の割合が4.90体積%以下である、飛翔害虫駆除用スプレー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガースプレー式噴霧容器と、前記トリガースプレー式噴霧容器に充填された飛翔害虫駆除用組成物とから構成される飛翔害虫駆除用スプレーであって、
前記飛翔害虫駆除用組成物は、界面活性剤(A)及び水を含有し、
前記トリガースプレー式噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置で測定される、前記飛翔害虫駆除用スプレーの噴霧物の体積粒径分布において、
粒径が310μm以下の前記噴霧物の割合が70体積%以上95体積%以下であり、
粒径が354μm以上773μm以下の前記噴霧物の割合が0.05体積%以上であり、
粒径が1483μm以上1926μm以下の前記噴霧物の割合が4.90体積%以下である、飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項2】
前記飛翔害虫駆除用組成物中の皮膜形成性ポリマーの含有量が0.5質量%未満である、請求項1に記載の飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項3】
前記界面活性剤(A)が、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、N-ラウロイル-N-メチルタウリン塩、ドデシル硫酸塩及びラウリルトリメチルアンモニウム塩から選択される少なくとも一種の界面活性剤(A1)以外の界面活性剤(A2)を含む、請求項1又は2に記載の飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項4】
前記界面活性剤(A2)が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも一種であり、
前記カチオン性界面活性剤が、炭素数が10以上18以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩から選択される少なくとも一種を含み、
前記アニオン性界面活性剤が、炭素数5以上18以下の脂肪族アルコールとスルホコハク酸とのモノ又はジエステルの塩、炭素数が10以上18以下のアルキル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシル-N-メチルアミノ酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、及び脂肪酸塩から選択される少なくとも一種を含み、
前記両性界面活性剤が、炭素数が10以上18以下のアルキル基を有するアルキルアミンオキシド、及び炭素数が10以上18以下のアルキル基を有するアルキルベタインから選択される少なくとも一種を含み、
前記非イオン性界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、アルキルグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン及びポリオキシエチレン変性シリコーンから選択される少なくとも一種を含む、請求項3に記載の飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項5】
前記界面活性剤(A2)が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選択される少なくとも一種であり、
前記界面活性剤(A1)の含有量が0質量%以上1.0質量%以下であり、
前記界面活性剤(A2)の含有量が0.2質量%超過2.0質量%以下である、請求項3又は4に記載の飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項6】
前記界面活性剤(A2)がカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選択される少なくとも一種であり、
前記界面活性剤(A1)の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下であり、
前記界面活性剤(A2)の含有量が0.1質量%以上2.0質量%以下である、請求項3又は4に記載の飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項7】
前記界面活性剤(A2)が非イオン性界面活性剤であり、
前記界面活性剤(A1)の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下であり、
前記界面活性剤(A2)の含有量が0.1質量%以上2.0質量%以下である、請求項3又は4に記載の飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項8】
前記飛翔害虫駆除用組成物中の前記水の含有量が80質量%以上99.89質量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項9】
前記トリガースプレー式噴霧容器の噴出口径が0.1mm以上1.5mm以下である、請求項1~8のいずれかに記載の飛翔害虫駆除用スプレー。
【請求項10】
飛翔害虫に噴霧して用いる飛翔害虫駆除用組成物であって、
界面活性剤(A)及び水を含有し、
前記飛翔害虫駆除用組成物を噴霧容器に充填し、前記噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置で測定される、前記飛翔害虫駆除用組成物の噴霧物の体積粒径分布において、
粒径が310μm以下の前記噴霧物の割合が70体積%以上95体積%以下であり、
粒径が354μm以上773μm以下の前記噴霧物の割合が0.05体積%以上であり、
粒径が1483μm以上1926μm以下の前記噴霧物の割合が4.90体積%以下である、飛翔害虫駆除用組成物。
【請求項11】
皮膜形成性ポリマーの含有量が0.5質量%未満である、請求項10に記載の飛翔害虫駆除用組成物。
【請求項12】
前記水の含有量が80質量%以上99.89質量%以下である、請求項10又は11に記載の飛翔害虫駆除用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔害虫駆除用スプレー及び飛翔害虫駆除用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫、例えば、蚊、ハエ等の飛翔害虫は、人等の動物に病原体を媒介して感染症を引き起こしたり、皮膚炎を引き起こしたりする要因となっている。特に、一部の蚊は、デング熱、ジカ熱、黄熱病、脳炎、マラリア等の病原体を媒介することから、衛生学的に非常に有害な昆虫である。
従来、このような飛翔害虫から身を守るために、殺虫剤を散布する方法、皮膚表面に害虫忌避剤を塗布する方法等が汎用されている。
【0003】
しかしながら、殺虫剤に含まれる殺虫成分、害虫忌避剤に含まれる害虫忌避成分は、人体への安全性が懸念されている。特に、蚊に刺されやすい幼児に対しては安全性の高い殺虫剤乃至害虫忌避剤の適用が望まれる。
また、従来は主として屋外での虫刺されを予防することが検討されてきたが、近年の研究によれば、蚊に刺される頻度は、屋内でも屋外と同程度かそれ以上に高いことが明らかになってきた。そこで、屋内でも飛翔害虫から身を守るための提案が望まれている。
【0004】
殺虫成分を使用せずに飛翔害虫を捕獲、駆除する方法に関して、例えば特許文献1には、エチルアルコール又はエチルアルコールを含む液体をハエ等の飛翔性昆虫に噴霧して飛行を妨げて、該飛翔性昆虫を捕獲する方法が開示されている。
特許文献2には、被膜形成能を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体と、界面活性剤とを含有する水性液である害虫駆除剤及び害虫駆除製剤が、殺虫成分を含んでいなくても害虫駆除効果が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-180635号公報
【特許文献2】特開2012-97004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、エチルアルコールそれ自体、又は、例えばエチルアルコール70重量%に対して水30重量%で希釈したものを飛翔性昆虫に噴霧することが記載されているが、可燃性有機溶剤であるエチルアルコールを多く含む液体を噴霧する方法は、環境安全性の観点からは好ましい方法とはいえない。
特許文献2の害虫駆除剤は、被膜形成能を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を含有することで、飛翔害虫に噴射した際に飛翔害虫の翅の柔軟性を低下させ、飛翔能力を失わせたり、気門又は気管を塞ぐ皮膜となって害虫を窒息させたりすることにより害虫駆除効果を奏するものである。しかしながら、飛翔害虫に噴霧するタイプの害虫駆除剤は噴霧に適した粘度に調整する必要があることから、害虫駆除剤としての有効成分であるポリマーの添加量が実質的に制限される。
また、飛翔害虫に噴霧するタイプの害虫駆除剤は、駆除効果を高めるため、一定以上離れた場所から飛翔害虫に噴霧した際にも飛翔害虫に効率よく到達させるという性能も求められる。このような性能の詳細については、特許文献1及び2では検討されていない。
【0007】
本発明は、スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫駆除用組成物を飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる飛翔害虫駆除用スプレーに関する。
さらに、本発明は、飛翔害虫に噴霧して用いる飛翔害虫駆除用組成物であって、スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる飛翔害虫駆除用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、噴霧された飛翔害虫駆除用組成物(以下、「噴霧物」ともいう)の体積粒径分布を特定の分布とすることにより、飛翔害虫に噴霧した際に噴霧物の到達量を増加させ、該組成物を飛翔害虫に効率よく到達させることができ、飛翔害虫の駆除効果を向上し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]に関する。
[1]トリガースプレー式噴霧容器と、前記トリガースプレー式噴霧容器に充填された飛翔害虫駆除用組成物とから構成される飛翔害虫駆除用スプレーであって、
前記飛翔害虫駆除用組成物は、界面活性剤(A)及び水を含有し、
前記トリガースプレー式噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置で測定される、前記飛翔害虫駆除用スプレーの噴霧物の体積粒径分布において、
粒径が310μm以下の前記噴霧物の割合が70体積%以上95体積%以下であり、
粒径が354μm以上773μm以下の前記噴霧物の割合が0.05体積%以上であり、
粒径が1483μm以上1926μm以下の前記噴霧物の割合が4.90体積%以下である、飛翔害虫駆除用スプレー。
[2]飛翔害虫に噴霧して用いる飛翔害虫駆除用組成物であって、
界面活性剤(A)及び水を含有し、
前記飛翔害虫駆除用組成物を噴霧容器に充填し、前記噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置で測定される、前記飛翔害虫駆除用組成物の噴霧物の体積粒径分布において、
粒径が310μm以下の前記噴霧物の割合が70体積%以上95体積%以下であり、
粒径が354μm以上773μm以下の前記噴霧物の割合が0.05体積%以上であり、
粒径が1483μm以上1926μm以下の前記噴霧物の割合が4.90体積%以下である、飛翔害虫駆除用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫駆除用組成物を飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる飛翔害虫駆除用スプレーを提供することができる。
さらに、本発明によれば、飛翔害虫に噴霧して用いる飛翔害虫駆除用組成物であって、スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる飛翔害虫駆除用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】マイクロシャボンを説明するための図であり、噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置における噴霧物の写真を図示したものであり、(a)は実施例1の噴霧物を示し、(b)は比較例3の噴霧物を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[飛翔害虫駆除用スプレー]
本発明の飛翔害虫駆除用スプレーは、トリガースプレー式噴霧容器と、前記トリガースプレー式噴霧容器に充填された飛翔害虫駆除用組成物とから構成される飛翔害虫駆除用スプレーであって、前記飛翔害虫駆除用組成物は、界面活性剤(A)(以下、「成分(A)」ともいう)及び水を含有し、前記トリガースプレー式噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置で測定される、前記飛翔害虫駆除用スプレーの噴霧物の体積粒径分布において、粒径が310μm以下の噴霧物(以下、「小粒径噴霧物」ともいう)の割合が70体積%以上95体積%以下であり、粒径が354μm以上773μm以下の噴霧物(以下、「中粒径噴霧物」」ともいう)の割合が0.05体積%以上であり、粒径が1483μm以上1926μm以下の噴霧物(以下、「大粒径噴霧物」ともいう)の割合が4.90体積%以下である。
ここで、前記トリガースプレー式噴霧容器の噴出口からの噴霧は、前記噴霧容器の噴出口からの噴霧方向が、地面に対し水平になるように、略一定圧で0.35~0.45秒間かけてフルストロークで引くことにより行うことができる。
【0013】
本発明の飛翔害虫駆除用スプレーは、スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫駆除用組成物を飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる。
また、本発明の飛翔害虫駆除用スプレーは、飛翔害虫駆除用組成物を飛翔害虫の翅に接触させることで飛翔能力を低下させる機能を有し、飛翔害虫の飛翔を抑制すること、飛翔中或いは壁等に降着している飛翔害虫を地面に落下させること等の作用機序により無害化して、飛翔害虫の駆除効果を奏するものである。
なお、本発明において飛翔害虫の飛翔能力を低下させるとは、飛翔害虫が飛翔できなくなることを指す。また、本発明において飛翔害虫を駆除するとは、飛翔害虫の飛翔を抑制すること、飛翔中の害虫を撃墜し地面に落下させること、或いは壁等に降着している飛翔害虫を地面に落下させること等の作用機序により、人等の動物に対し飛翔害虫を無害化することを指す。
【0014】
本発明において「飛翔害虫」とは、飛行しながら人等の動物に近づき、その皮膚から吸血する害虫、吸血はしなくても飛翔しながら病原細菌等を媒介する害虫、飛行すること自体が人間に対し不快感を与える害虫等をいう。
飛翔害虫の具体例としては、シナハマダラカ、アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイシマカ、チカイエカ、ヒトスジシマカ、トウゴウヤブカ、ガンビエハマダラカ、ステフェンスハマダラカ等の蚊;セスジユスリカ、アカムシユスリカ等のユスリカ;クロオオブユ、キアシオオブユ、アオキツメトゲブユ等のブユ;イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ、クロバエ、ニクバエ、タネバエ、タマネギバエ、ミバエ、ショウジョウバエ、チョウバエ、チェチェバエ、サシバエ等のハエ;シクロアブ、ウシアブ、メクラアブ、ゴマフアブ等のアブ;トクナガクロヌカカ、オオシマヌカカ、ニワトリヌカカ等のヌカカ;キイロスズメバチ、セグロアシナガバチ、ミツバチ等のハチ等が挙げられる。
本発明の飛翔害虫駆除用スプレーは、これらの中でも、特に蚊に対する駆除効果が優れている。
【0015】
本発明の飛翔害虫駆除用スプレーは、本発明の組成物を、トリガースプレー式噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置において、上記体積粒径分布を有する噴霧物として噴霧することにより用いられる。当該体積粒径分布は、噴霧容器を用いて噴霧された本発明の飛翔害虫駆除用スプレーの噴霧物の体積粒径分布を意味する。具体的には、当該噴霧物の体積粒径分布は、本発明の組成物が充填され吐出される噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置における噴霧物について、スプレーテックレーザ回折システム(Malvern Panalytical社、型番:STP5921に同社750mmレンズを装着)を用いてレーザ回折法により測定される値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。噴霧容器の噴出口からの水平距離が30cmの位置において上記体積粒径分布となる噴霧物を飛翔害虫に適用すれば、実使用において、飛翔害虫を効率よく駆除することができる。
【0016】
本発明の効果が得られる理由は、下記のように推察される。
本発明において、小粒径噴霧物と大粒径噴霧物は、液滴(以下、それぞれ小粒径液滴、大粒径液滴ともいう)である一方、中粒径噴霧物は、気泡(以下、マイクロシャボンともいう)であると考えられる。すなわち、液滴は、その外部も内部も本件発明の組成物で構成されるのに対して、気泡は外面が当該組成物で構成され、内部が空洞であるものである。ここで、
図1は、マイクロシャボンを説明するための図であり、噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置における噴霧物の写真を図示したものであり、(a)は実施例1の噴霧物を示し、(b)は比較例3の噴霧物を示している。
図1(a)に示すように、本発明の飛翔害虫駆除用スプレーの噴霧物は、マイクロシャボンが観察される。
噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置において、上記体積粒径分布を有する噴霧物は、内部が空洞のため軽いマイクロシャボンを一定量含みながら、中身が詰まり重い大粒径液滴の含有量が少ないことで、空気中の噴霧物にかかる重力や浮力等の力のバランスが最適化される。それにより、噴霧物の直進性が高まり、マイクロシャボンを含む噴霧物をより遠くまで到達させることができると考えられる。
また、本発明の組成物は界面活性剤(A)を含むことで、飛翔害虫の体を濡らす作用に優れると考えられる。本発明の組成物に含まれる界面活性剤(A)及び水はいずれも人体及び環境への安全性に優れている。
以上から、噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置において、小粒径噴霧物の割合が70体積%以上95体積%以下であり、マイクロシャボンの割合が0.05体積%以上であり、大粒径液滴の割合が4.90体積%以下であることで、組成物を飛翔害虫に対し噴霧した際に噴霧物の到達量が増加し、飛翔害虫に効率よく到達させることができ、更に界面活性剤(A)を含有するので、飛翔害虫の翅を濡らし、飛翔能力を低下させる作用により飛翔害虫を駆除するため、前述した飛翔害虫の駆除効果を向上させることができると考えられる。
【0017】
すなわち本発明は、界面活性剤(A)を含有する飛翔害虫駆除用組成物を飛翔害虫に対し上記所定の体積粒径分布を有する状態で噴霧することで、飛翔害虫に飛翔害虫駆除用組成物を効率よく到達させ、飛翔害虫の翅を濡らし、飛翔能力を低下させる作用により飛翔害虫を駆除するものである。例えば飛翔中の飛翔害虫に飛翔害虫駆除用組成物を噴霧すると、飛翔害虫の翅が濡れることにより落下し、飛翔害虫は生存しているが飛翔できず、人に対して無害化された状態となる。したがって本発明の飛翔害虫駆除用組成物は、例えば、従来の殺虫成分を含有する殺虫剤とは区別される。
以上のように本発明の飛翔害虫駆除用組成物は、飛翔害虫の翅を濡らすことが可能な界面活性剤(A)を飛翔害虫駆除の有効成分として用いたものであり、殺虫成分を含有しなくても駆除効果の高い飛翔害虫駆除用組成物とすることができるので、人体及び環境への安全性が高い。
なお、本発明の飛翔害虫駆除用スプレーは飛翔中の害虫だけではなく、例えば壁や地面に降着している飛翔害虫に対して適用してもよい。
【0018】
以下、本発明の飛翔害虫駆除用組成物の詳細を説明する。
【0019】
<成分(A):界面活性剤>
本発明の飛翔害虫駆除用組成物は界面活性剤(A)を含むことにより、飛翔害虫の翅を濡らすことが可能となる。
本発明における界面活性剤(A)としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤の中でも、人体及び環境に対する安全性の観点からは、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、非イオン性界面活性剤を含むことが更に好ましく、非イオン性界面活性剤であることが更に好ましい。
【0020】
本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、飛翔害虫の翅を濡らす作用に優れる観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上であり、組成物の噴霧物の直進性を高め、飛翔害虫を効率よく駆除する観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
さらに、本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、噴霧した組成物が被噴霧面に付着することによるべたつき及びぬるつきを抑制する観点から、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。使用場面は特に限定されないが、例えば屋内で使用する場合には、床、壁等のべたつき及びぬるつきを抑制することができ、取り扱い性をより良好なものとすることができる。
【0021】
界面活性剤(A)としては、噴霧物を特定の体積粒径分布に容易に制御できるという観点(以下、「粒度分布の制御が容易であるという観点」ともいう)から、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、N-ラウロイル-N-メチルタウリン塩、ドデシル硫酸塩及びラウリルトリメチルアンモニウム塩から選択される少なくとも一種の界面活性剤(A1)以外の界面活性剤(A2)を含むことが好ましい。
界面活性剤(A2)としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも一種が挙げられる。
また、界面活性剤(A1)は増泡機能において優れているため、界面活性剤(A1)と界面活性剤(A2)とを併用することも好ましい態様の一つである。
ここで、界面活性剤(A1)において、N-ラウロイル-N-メチルタウリン塩、ドデシル硫酸塩及びラウリルトリメチルアンモニウム塩における塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩及びカリウム塩から選択される少なくとも一種がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。
【0022】
界面活性剤(A2)が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選択される少なくとも一種であるとき、特定の体積粒径分布を有する噴霧物の状態に制御しやすいという観点から、界面活性剤(A1)の含有量が0質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、界面活性剤(A2)の含有量が0.2質量%超過2.0質量%以下であることが好ましい。このとき、界面活性剤(A1)の含有量は、粒度分布の制御が容易であるという観点から、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。界面活性剤(A2)の含有量は、粒度分布の制御が容易であるという観点から、好ましくは0.22質量%以上、より好ましくは0.23質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.45質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
【0023】
また、界面活性剤(A2)が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選択される少なくとも一種であるとき、粒度分布の制御が容易であるという観点から、界面活性剤(A1)の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、界面活性剤(A2)の含有量が0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。このとき、界面活性剤(A1)の含有量は、粒度分布の制御が容易であるという観点から、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。界面活性剤(A2)の含有量は、粒度分布の制御が容易であるという観点から、好ましくは0.12質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
また、界面活性剤(A1)/界面活性剤(A2)の比率は、粒度分布の制御が容易であるという観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上であり、同様の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下である。
【0024】
また、界面活性剤(A2)が非イオン性界面活性剤であるとき、粒度分布の制御が容易であるという観点から、界面活性剤(A1)の含有量が0.01質量%以上1.0質量%以下であり、かつ、界面活性剤(A2)の含有量が0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。このとき、界面活性剤(A1)の含有量は、粒度分布の制御が容易であるという観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。界面活性剤(A2)の含有量は、粒度分布の制御が容易であるという観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
【0025】
界面活性剤(A2)としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0026】
〔カチオン性界面活性剤〕
カチオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数が10以上18以下のアルキル基を有する第4級アンモニウム塩(ただし、ラウリルトリメチルアンモニウム塩を除く)から選択される少なくとも一種が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム(以下、「アルキル(C12-16)ベンジルジメチルアンモニウムクロリド」ともいう)、アルキルピリジニウム塩、アルキルジメチルアミン及びその塩、アルコキシアルキルジメチルアミン及びその塩、アルキルアミドアルキルジメチルアミン及びその塩、ジエタノールアミンモノアルキルエステル及びその塩、トリエタノールアミンモノアルキルエステル及びその塩、トリエタノールアミンジアルキルエステル及びその塩等が挙げられる。
【0027】
アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルコキシアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩、及びアルキルピリジニウム塩におけるカチオン性基の対イオンとしては、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下のカルボン酸イオン(ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン)、及び塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオンが挙げられる。これらの中でも、製造の容易性及び原料入手容易性の観点から、好ましくはハロゲン化物イオンであり、より好ましくは塩化物イオンである。
【0028】
アルキルジメチルアミン、アルコキシアルキルジメチルアミン、アルキルアミドアルキルジメチルアミン、ジエタノールアミンモノアルキルエステル、トリエタノールアミンモノアルキルエステル、トリエタノールアミンジアルキルエステルは予め酸と反応させて塩として組成物に配合してもよく、そのまま組成物に配合し、更に該組成物に酸を配合することにより該組成物中で塩を形成させてもよい。従って、ここでは、上記アミン、アルキルエステル及びその塩をカチオン性界面活性剤と定義する。
アルキルジメチルアミン、アルコキシアルキルジメチルアミン、アルキルアミドアルキルジメチルアミン、ジエタノールアミンモノアルキルエステル、トリエタノールアミンモノアルキルエステル、及びトリエタノールアミンジアルキルエステルの塩としては、有機酸又は無機酸による塩が挙げられる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;ポリグルタミン酸等のポリカルボン酸;グリコール酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。
【0029】
飛翔害虫の翅を濡らす作用に優れる観点、並びに、噴霧物の直進性を高め、飛翔害虫を効率よく駆除する観点から、カチオン性界面活性剤としては、好ましくは塩化ベンザルコニウムである。
【0030】
〔アニオン性界面活性剤〕
アニオン性界面活性剤としては、炭素数5以上18以下の脂肪族アルコールとスルホコハク酸とのモノ又はジエステルの塩(以下、「スルホコハク酸エステル塩ともいう」)、炭素数が10以上18以下のアルキル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩(ただし、ドデシル硫酸塩を除く)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシル-N-メチルアミノ酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、及び脂肪酸塩から選択される少なくとも一種が挙げられる。これらの中でも、噴霧物の直進性を高め、飛翔害虫を効率よく駆除する観点から、炭素数5以上18以下の脂肪族アルコールとスルホコハク酸とのモノ又はジエステルの塩、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、炭素数5以上18以下の脂肪族アルコールとスルホコハク酸とのモノ又はジエステルの塩がより好ましい。
スルホコハク酸エステル塩は、好ましくはジエステルの塩である。
スルホコハク酸エステル塩を構成する脂肪族アルコールの炭素数は、5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは10以下である。
スルホコハク酸エステル塩における塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩及びカリウム塩から選択される少なくとも一種がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を構成するアルキル基の炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
【0031】
アニオン性界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1~3個有するアルカノールアンモニウム(例えばモノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、トリイソプロパノールアンモニウム等)が挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましく、ナトリウムイオンがより好ましい。
【0032】
〔両性界面活性剤〕
両性界面活性剤としては、例えば、炭素数が10以上18以下のアルキル基を有するアルキルアミンオキシド、及び炭素数が10以上18以下のアルキル基を有するアルキルベタインから選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0033】
〔非イオン性界面活性剤〕
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、アルキルグリセリルエーテル(ただし、2-エチルヘキシルグリセリルエーテルを除く)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、及びポリオキシエチレン変性シリコーンから選択される少なくとも一種が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の中でも、飛翔害虫の翅を濡らす作用に優れる観点から、HLB(親水親油バランス)値が18.0以下である非イオン性界面活性剤が好ましい。当該HLB値は、より好ましくは16.0以下、更に好ましくは15.0以下である。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド及びアルキルグリセリルエーテルから選択される少なくとも一種が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びアルキルグルコシドから選択される少なくとも一種がより好ましい。ここで、HLB値は、界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、グリフィン法により次式から求めることができる。非イオン界面活性剤が2種以上の成分からなる場合、HLBは各成分のHLB値を基にして、各成分の配合率を重みとした加重平均値として求めるものとする。なお、次式において「界面活性剤中に含まれる親水基」としては、例えば、ヒドロキシ基及びエチレンオキシ基が挙げられる。
HLB=20×[(界面活性剤中に含まれる親水基の式量の総和)/(界面活性剤の分子量)]
【0034】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
R1-O-(Y)m-H (1)
〔式(1)において、R1はアルキル基を示し、Yはオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位を示す。mはYの平均付加モル数を示す。〕
一般式(1)において、R1を構成するアルキル基の炭素数は、飛翔害虫の翅を濡らす作用に優れる観点から、好ましくは8以上22以下、より好ましくは8以上18以下、更に好ましくは8以上14以下である。アルキル基としては直鎖アルキル基、分岐アルキル基のいずれでもよいが、表面張力を低下させ、飛翔害虫の翅を濡らす作用に優れる観点から直鎖アルキル基が好ましい。
また、Yは、オキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位を示し、Yはオキシエチレン単位が好ましい。mはYの平均付加モル数を示し、組成物の噴霧物の直進性を高め、飛翔害虫を効率よく駆除する観点からは、好ましくは4以上、より好ましくは6以上である。また、飛翔害虫の翅を濡らす作用に優れる観点からは、当該平均付加モル数は、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、より好ましくは、オキシエチレン基の平均付加モル数が6以上、10以下であるポリオキシエチレンラウリルエーテルである。
【0035】
アルキルグルコシドとしては、好ましくは炭素数8以上22以下、より好ましくは炭素数8以上18以下、更に好ましくは炭素数8以上14以下のアルキル基を有するアルキルグルコシドが挙げられる。アルキル基としては直鎖アルキル基、分岐アルキル基のいずれでもよい。
アルキルグルコシドの具体例としては、オクチルグルコシド、2-エチルヘキシルグルコシド、ノニルグルコシド、デシルグルコシド、イソデシルグルコシド、ラウリルグルコシド、トリデシルグルコシド、ミリスチルグルコシド、ステアリルグルコシド、イソステアリルグルコシド、及び、これらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド及びミリスチルグルコシドから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0036】
アルキルグリセリルエーテルとしては、好ましくは炭素数8以上22以下、より好ましくは炭素数8以上18以下、更に好ましくは炭素数8以上14以下のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテルが挙げられる。アルキル基としては直鎖アルキル基、分岐アルキル基のいずれでもよいが、組成物の噴霧物の直進性を高め、飛翔害虫を効率よく駆除する観点からは分岐アルキル基が好ましい。
アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、オクチルグリセリルエーテル、ノニルグリセリルエーテル、デシルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル、ラウリルグリセリルエーテル、トリデシルグリセリルエーテル、ミリスチルグリセリルエーテル、ステアリルグリセリルエーテル、イソステアリルグリセリルエーテル、及び、これらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、デシルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル及びラウリルグリセリルエーテルから選択される少なくとも一種が好ましく、イソデシルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0037】
界面活性剤(A)は、1種又は2種以上を組み合わせて含有させることができる。また、組成物中の界面活性剤の含有量は、組成物中で解離する状態で存在するものは、解離型としての量である。すなわち、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムであれば、ジオクチルスルホコハク酸としての量である。また、両性界面活性剤は、組成物のpHによって解離状態が変わり、解離型と非解離型が混在する場合がある。かかる場合、組成物中の両性界面活性剤の含有量は、解離型及び非解離型を含めた量とする。
【0038】
<水>
本発明の飛翔害虫駆除用組成物は、飛翔害虫を駆除するための有効成分である界面活性剤(A)を溶解又は分散する媒体として、水を含有する。
組成物中の水の含有量は、人体及び環境に対する安全性の観点、並びに組成物の噴霧物を噴霧に適した粒径に制御しやすくする観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、好ましくは99.89質量%以下、より好ましくは99.85質量%以下である。
【0039】
<その他の成分>
本発明の飛翔害虫駆除用組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤(A)及び水以外の成分、例えば、有機酸、有機酸塩、防腐剤、着色剤、香料、pH調整剤等を含有することもできる。また、水以外の水性媒体、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の、炭素数1~5のアルコール;1,3-ブチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素数6以下のジオール及びトリオールを含有してもよい。
ただし、本発明の効果を得る観点から、飛翔害虫駆除用組成物中の界面活性剤(A)及び水以外の成分の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0040】
本発明の飛翔害虫駆除用組成物は、人体及び環境に対する安全性の観点から、有機酸及び有機酸塩以外の殺虫成分を含有しないことが好ましい。本発明における飛翔害虫駆除用組成物は、人体及び環境への安全性に優れる、飛翔害虫の翅を効果的に濡らすことが可能な界面活性剤(A)を含有する。当該界面活性剤(A)は、飛翔害虫を駆除するための有効成分として、組成物中に含有されるものであり、殺虫成分を含有しなくても飛翔害虫駆除効果の高い組成物とすることができるためである。
ここでいう殺虫成分とは、例えば、下記ピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫成分、カーバメート系殺虫成分、IRAC MoA Classification Version 9.4 (Mar 2020)のグループ1~32に記載された殺虫成分、国際公開第2018/079565号の段落0049に記載された殺虫剤等(ただし、有機酸及び有機酸塩に該当するものを除く)が挙げられる。
ピレスロイド系殺虫剤としては、例えば、メトフルトリン、dl,d-T80-アレスリン、フタルスリン、d-T80-フタルスリン、d,d-T80-プラレトリン、d,d-T98-プラレトリン、d-T80-レスメトリン、トランスフルトリン、イミプロトリン、シフェノトリン、d,d-T-シフェノトリン、エンペントリン、ペルメトリン、フェノトリン、エトフェンプロックス、ピレトリン等が挙げられる。
また、ピレスロイド系殺虫剤以外の殺虫成分として、例えば、フェニトロチオン、マラチオン等の有機リン系殺虫剤、プロポクスル、カルバリル等のカーバメート系殺虫剤、ケルセン、キノメチオネート、ヘキサチアゾクス等の殺ダニ剤、イミダクロプリド、ジノテフラン、クロチアジニン等のネオニコチノイド系殺虫剤等が挙げられる。
【0041】
また「有機酸及び有機酸塩以外の殺虫成分を含有しない」とは、飛翔害虫駆除用組成物中の有機酸及び有機酸塩以外の殺虫成分の含有量が、1質量%未満、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0.001質量%以下であり、更に好ましくは実質的に含有しないことを意味する。本明細書において、「実質的に含有しない」とは意図的に添加していないことを意味し、不純物として微量に含むことを排除するものではない。
【0042】
有機酸及び有機酸塩は人体及び環境への安全性に優れている。そのため、本発明の飛翔害虫駆除用組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、殺虫成分として有機酸及び有機酸塩を含んでもよい。
有機酸及び有機酸塩としては、例えば、安息香酸、乳酸、ソルビン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸及びこれらの塩等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機酸塩における塩としては、殺虫性をより向上させる観点から、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩及びカリウム塩から選択される少なくとも一種がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。
【0043】
本発明の飛翔害虫駆除用組成物は、飛翔害虫駆除用組成物を噴霧に適した粘度に調整しやすくする観点;噴霧物の体積粒径分布を噴霧に適した分布に制御しやすくする(特に、粒径が1483μm以上1926μm以下の噴霧物の割合を低下させる)観点;及び、飛翔害虫駆除用組成物を使用した際に、噴霧した組成物が被噴霧面に付着することによるべたつきを抑制する観点から、皮膜形成性ポリマーの含有量が少ない方が好ましい。
例えば、飛翔害虫駆除用組成物中の皮膜形成性ポリマーの含有量としては、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.07質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
皮膜形成性ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、シリコーン構造含有ポリマー、ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、多糖類系ポリマー等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させた高分子化合物を意味し、特に、皮膜形成性の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体が該当する。
皮膜形成性の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体としては、カチオン性、アニオン性、非イオン性、及び両性高分子化合物のいずれでもよい。皮膜形成性の(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体のうち両性高分子化合物としては、例えば、N-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(三菱ケミカル株式会社製「ユカフォーマー202」、「ユカフォーマー104D」、「ユカフォーマーAMPHOSET」、「ユカフォーマーR205S」、「ユカフォーマーSM」等)、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体、N-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアミノエチル-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。
本発明の飛翔害虫駆除用組成物中、皮膜形成性ポリマーの含有量が少ないと、組成物の粘度上昇が抑えられる。そのため噴霧容器としてトリガースプレー式容器を用いた場合、トリガーを引く速度が低下することなく、且つ安定化する。トリガーを引く速度が速いと、液滴にかかる圧力が高くなるので組成物の噴霧物が小さくなりやすい。またトリガーを引く速度が安定することにより、組成物の液膜がスピンの力によって液滴にばらける際に噴霧物が小さくなりやすく、且つ粒径制御も容易になる。
【0044】
本発明の飛翔害虫駆除用組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、界面活性剤(A)、水、及び必要に応じて用いられるその他の成分を配合し、公知の攪拌装置等を用いて混合することにより製造できる。
【0045】
<噴霧物の体積粒径分布>
前述の通り、噴霧物の体積粒径分布は、噴霧容器を用いて噴霧された飛翔害虫駆除用組成物の体積粒径分布であって、組成物が充填され吐出される噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置における噴霧物について、スプレーテックレーザ回折システム(Malvern Panalytical社、型番:STP5921に同社750mmレンズを装着)を用いてレーザ回折法により測定される値であり、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。本方法による体積粒径分布の測定範囲は1~3000μmである。
【0046】
噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置における、噴霧された飛翔害虫駆除用組成物の体積粒径分布は、下記の要件を満たすことがより好ましい。
粒径が310μm以下の噴霧物の割合は、噴霧物の到達量を増加させ、該組成物を飛翔害虫に効率よく到達させる観点から、70体積%以上、好ましくは71体積%以上、より好ましくは72体積%以上であり、同様の観点から、95体積%以下、好ましくは93体積%以下、より好ましくは91体積%以下、更に好ましくは90体積%以下である。
粒径が354μm以上773μm以下の噴霧物の割合は、噴霧物の到達量を増加させ、該組成物を飛翔害虫に効率よく到達させる観点から、0.05体積%以上、好ましくは0.08体積%以上、より好ましくは0.10体積%以上、更に好ましくは0.12体積%以上であり、同様の観点から、好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは12体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。
粒径が1483μm以上1926μm以下の噴霧物の割合は、噴霧物の到達量を増加させ、該組成物を飛翔害虫に効率よく到達させる観点から、4.90体積%以下、好ましくは4.7体積%以下、より好ましくは4.5体積%以下、更に好ましくは4.3体積%以下、更に好ましくは4.0体積%以下、更に好ましくは3.5体積%以下であり、下限値は特に限定されないが、例えば、0.1体積%以上であり、1.0体積%以上であってもよい。
【0047】
上記噴霧物の体積粒径分布は、例えば、該組成物に用いる界面活性剤(A)及び含有量、使用する噴霧容器の噴出口径、並びにこれらの組み合わせにより制御することができる。特に、本発明の飛翔害虫駆除用組成物の動的表面張力の変化量が小さくなるような界面活性剤(A)及び含有量の組み合わせを選択することにより、上記噴霧物の体積粒径分布を上記分布に制御することが可能である。動的表面張力の変化量が小さいと、噴霧速度が速くてもマイクロシャボンができやすく、上記噴霧物の体積粒径分布を上記分布に制御しやすくなると考えられる。
【0048】
<トリガースプレー式噴霧容器>
本発明の飛翔害虫駆除用スプレーに用いるトリガースプレー式噴霧容器としては、前記飛翔害虫駆除用組成物を充填して、特定の体積粒径分布を有する噴霧物の状態で飛翔害虫に噴霧することができるものであれば特に制限されない。
トリガースプレー式噴霧容器の容量は特に制限されないが、飛翔害虫に向けて噴霧する観点から、例えば、50mL以上500mL以下である。
トリガースプレー式噴霧容器の噴出口径は、特定の体積粒径分布を有する噴霧物の状態に制御しやすいという観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、更に好ましくは0.3mm以上であり、同様の観点から、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.2mm以下、更に好ましくは1.0mm以下である。なお「トリガースプレー式噴霧容器の噴出口径」とは、トリガースプレー式噴霧容器の噴射ノズル先端の内径における最大径を意味する。吐出口の形状は特に限定されないが、円形もしくは楕円形が好ましい。
【0049】
特定の体積粒径分布を有する噴霧物の状態に制御しやすいという観点では、トリガースプレー式容器の中でも、蓄圧式のトリガースプレー容器が更に好ましい。蓄圧式スプレー容器は、一般に、容器内部に収容されたシリンダに対してピストンをスライドさせることにより、一定圧を超えたシリンダ内の液体をノズルから噴出させる構造となっている。すなわち、シリンダ内の液圧が一定圧を超えた場合に初めて液体が容器外部に噴出されるので、噴出される液滴の粒径制御の点で有利である。
蓄圧式のトリガースプレー容器としては、例えば特開2017-226474号公報に記載の容器を例示することができる。
【0050】
また、トリガースプレー式容器は泡形成機構を備えていてもよいが、特定の体積粒径分布を有する噴霧物の状態に制御しやすいという観点からは、泡形成機構を有さないものであることが好ましい。
ここで「泡形成機構」とは、具体的には下記(1)又は(2)の機構を意味する。
(1)容器の噴出口にて噴出方向と垂直に配置した、突起を備えた板状体やメッシュ状の衝壁を有する機構であって、ミスト状に噴出された液体を、該板状体や該障壁に衝突させることで、空気とともに混合し泡状にする機構
(2)容器の噴出口近傍に外気導入孔を有し、ミスト状に噴出された液体と、導入された外気とが容器内で混合されるとともに、筒状の内壁面に衝突するなどして発泡し、泡状となって噴出口から前方に噴出される機構
上記(1)の具体例としては、特開2003-112090号公報の
図15、特開2011-251218号公報、特開2006-320845号公報の
図2に記載の機構等が挙げられる。
上記(2)の具体例としては、特開2007-167719号公報の
図2、特開2006-150279号公報の
図2、特開昭52-116919号公報の
図2に記載の機構等が挙げられる。
【0051】
泡形成機構を有さないトリガースプレー式容器とは、液体をノズルの噴出口から容器外部に、前記泡形成機構を経由せずに、液滴として噴出する構造のトリガースプレー式容器を言い、好ましくは、ノズルの噴出口から容器外部に、液滴として直接噴出する構造のトリガースプレー式容器をいう。
泡形成機構を有さないトリガースプレー式容器から吐出される噴霧物の外観形状としては、好ましくは、室温(25℃)下、容器の噴出口から水平距離で30cmの位置にある壁に向かって、フルストロークで1回噴霧して1分後、100μm以上の大きさの気泡が認められないものである。より好ましくは、容器の噴出口から水平距離で30cmの位置にある壁に向かってフルストロークで1回噴霧して0.5分後、100μm以上の大きさの気泡が認められないものである。
【0052】
本発明の飛翔害虫駆除用スプレーは、粒度分布の制御が容易であるという観点から、噴射剤の含有量が少ない方が好ましい。例えば、飛翔害虫駆除用スプレー中の噴射剤の含有量としては、飛翔害虫駆除用組成物及び噴射剤の合計量を100質量%としたとき、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。
上記噴射剤とは、エアゾール式容器で中身を噴射させるために利用するガスを意味する。噴射剤としては、例えば、液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハロゲン化炭化水素等の液化ガス;窒素、圧縮空気、炭酸ガス、亜酸化窒素、アルゴン、ヘリウム等の圧縮ガス;等が挙げられる。
【0053】
[飛翔害虫駆除用組成物]
本発明の第二の態様の組成物(以下、「第二の組成物」ともいい、前述の本発明の飛翔害虫駆除用スプレーで用いた本発明の組成物を「第一の組成物」ともいう」)は、飛翔害虫に噴霧して用いる飛翔害虫駆除用組成物であって、界面活性剤(A)及び水を含有し、飛翔害虫駆除用組成物を噴霧容器に充填し、下記測定方法1により前記噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置で測定される、飛翔害虫駆除用組成物の噴霧物の体積粒径分布において、粒径が310μm以下の噴霧物の割合が70体積%以上95体積%以下であり、粒径が354μm以上773μm以下の噴霧物の割合が0.05体積%以上であり、粒径が1483μm以上1926μm以下の噴霧物の割合が4.90体積%以下である。
(測定方法1)
トリガースプレー式噴霧容器(噴出口径0.8mm)に充填した飛翔害虫駆除用組成物を、トリガー操作を1回行うことにより噴霧速度3.0g/秒以上4.5g/秒以下で噴霧し、レーザ回折法により、噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置における、噴霧された飛翔害虫駆除用組成物の体積粒径分布を測定する。
第二の組成物は、飛翔害虫に噴霧して用いる飛翔害虫駆除用組成物であって、スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる。
また、第二の組成物は、飛翔害虫の翅に接触させることで飛翔能力を低下させる機能を有し、飛翔害虫の飛翔を抑制すること、飛翔中或いは壁等に降着している飛翔害虫を地面に落下させること等の作用機序により、飛翔害虫の駆除効果を奏するものである。
第二の組成物の効果が得られる理由は、前述の本発明の飛翔害虫駆除用スプレーの効果が得られる理由と同じ理由が考えられる。
第二の組成物を構成する各成分及びその好適態様は、前述した第一の組成物と同じである。
第二の組成物を充填した飛翔害虫駆除用スプレーに用いる噴霧容器及びその好適態様は、前述した第一の組成物を充填した飛翔害虫駆除用スプレーと同じである。
第二の組成物における前記噴霧物の体積粒径分布の好適態様は、前述の本発明の飛翔害虫駆除用スプレーにおける前記噴霧物の体積粒径分布の好適態様と同じである。
【0054】
[飛翔害虫の駆除方法]
本発明の飛翔害虫の駆除方法は、飛翔害虫に対して、噴霧容器に充填した飛翔害虫駆除用組成物(以下、「第三の組成物」ともいう)を噴霧する工程を含む、飛翔害虫の駆除方法であって、飛翔害虫駆除用組成物は界面活性剤(A)及び水を含有し、噴霧容器の噴出口から水平距離で30cmの位置における、飛翔害虫駆除用組成物の噴霧物の体積粒径分布において、粒径が310μm以下の噴霧物の割合が70体積%以上95体積%以下であり、粒径が354μm以上773μm以下の噴霧物の割合が0.05体積%以上であり、粒径が1483μm以上1926μm以下の噴霧物の割合が4.90体積%以下である。
ここで、前記噴霧容器の噴出口からの噴霧は、例えば、前記噴霧容器の噴出口からの噴霧方向が、地面に対し水平になるように、略一定圧で0.35~0.45秒間かけてフルストロークで引くことにより行うことができる。
【0055】
本発明の飛翔害虫の駆除方法は、スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫駆除用組成物を飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる。
また、本発明の飛翔害虫の駆除方法は、該組成物を、飛翔害虫の翅に接触させることで飛翔能力を低下させる機能を有し、飛翔害虫の飛翔を抑制すること、飛翔中或いは壁等に降着している飛翔害虫を地面に落下させること等の作用機序により無害化して、飛翔害虫の駆除効果を奏するものである。
本発明の飛翔害虫の駆除方法の効果が得られる理由は、前述の本発明の飛翔害虫駆除用スプレーの効果が得られる理由と同じ理由が考えられる。
第三の組成物を構成する各成分及びその好適態様は、前述した第一の組成物と同じである。
本発明の飛翔害虫の駆除方法において、第三の組成物を充填した飛翔害虫駆除用スプレーに用いる噴霧容器及びその好適態様は、前述した第一の組成物を充填した飛翔害虫駆除用スプレーと同じである。
本発明の飛翔害虫の駆除方法における前記噴霧物の体積粒径分布の好適態様は、前述の本発明の飛翔害虫駆除用スプレーにおける前記噴霧物の体積粒径分布の好適態様と同じである。
【0056】
トリガースプレー式容器による飛翔害虫駆除用組成物の吐出量は、十分な量の噴霧物を飛翔害虫に到達させて飛翔害虫を効率よく駆除する観点から、トリガー操作1回あたりの吐出量として、好ましくは0.2g/回以上、より好ましくは0.5g/回以上、更に好ましくは0.7g/回以上である。また、飛翔害虫駆除用スプレーを使用した際に、噴霧した組成物が被噴霧面に付着することによるべたつきを抑制する観点からは、好ましくは2.0g/回以下、より好ましくは1.5g/回以下、更に好ましくは1.2g/回以下である。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種評価は以下の方法により行った。
【0058】
(噴霧物の体積粒径分布)
噴霧物の体積粒径分布は、室温(25℃)下で、スプレーテックレーザ回折システム(Malvern Panalytical社、型番:STP5921に同社750mmレンズを装着)を用いてレーザ回折法により測定した。レーザ回折システムの測定エリアまでの水平距離が30cmの位置に噴霧容器の噴射ノズルの先端が来るように、各例の組成物をトリガースプレー式噴霧容器(トリガータイプ:蓄圧、容量370mL、噴出口径0.8mm、吐出量:0.9g/回)(リセッシュ除菌EX(花王株式会社製)のトリガー式スプレーヤー)に充填したスプレーを設置し、トリガー操作を1回行うことにより組成物を噴霧して、レーザ長さが34cm、レーザ幅が1.8cmの測定エリアにおいて検出された噴霧物の体積粒径分布を測定した。本測定器による体積粒径分布の測定範囲は1~3000μmである。
前記トリガー操作においては、前記噴霧容器の噴出口からの噴霧方向が、地面に対し水平になるように、略一定圧でフルストロークでトリガーを引き、トリガー操作時間(トリガーを引き始めてから引き終わるまでの時間)は0.38秒、液の吐出時間(液が吐出開始してから吐出終了するまでの時間)は0.22秒、噴霧速度(吐出量/液の吐出時間)は、4.0g/秒であった。
【0059】
(噴霧物の到達量)
表1及び2に記載の飛翔害虫駆除用組成物を、トリガースプレー式噴霧容器(トリガータイプ:蓄圧、容量370mL、噴出口径0.8mm、吐出量:0.9g/回)(リセッシュ除菌EX(花王株式会社製)のトリガー式スプレーヤー)に充填したスプレーを準備した。
噴霧物の到達量は、水溶液をろ紙(フィルターペーパー#1、直径300mm、アドバンテック東洋株式会社製)に吹き付けることにより測定した。具体的には、評価前に、噴霧前のろ紙の質量及び噴霧前の噴霧容器の質量を測定し、次いで、ろ紙までの水平距離が30cmの位置に噴霧容器の噴射ノズルの先端(すなわち、噴出口)が来るようにスプレーを固定し、ろ紙に向けてトリガー操作を1回行うことにより水溶液を噴霧した。噴霧後に、噴霧後のろ紙の質量及び噴霧後の噴霧容器の質量を測定した。下記の計算式より、噴霧1回あたりの噴霧物の到達率を算出した。
噴霧物の到達率(%)={(噴霧後のろ紙の質量(g))-(噴霧前のろ紙の質量(g))}×100÷{(噴霧前の噴霧容器の質量(g))-(噴霧後の噴霧容器の質量(g))}
噴霧物の到達量が多いほど、噴霧物の直進性が高く、飛翔害虫に効率よく到達させることができる作用に優れる飛翔害虫駆除用組成物であると判定できる。
【0060】
実施例及び比較例において、界面活性剤及び皮膜形成性ポリマーとしては以下のものを用いた。
【0061】
(界面活性剤(A1))
2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(花王株式会社製、製品名:ペネトールGE-EH)
N-ラウロイル-N-メチルタウリンナトリウム(日本サーファクタント工業株式会社製、製品名:ニッコールLMT-P)
ドデシル硫酸ナトリウム(花王株式会社製、製品名:エマール0)
ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド(富士フイルムワコーケミカル株式会社製)
【0062】
(界面活性剤(A2))
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(東邦化学工業株式会社製、製品名:エアロールCT-1K;三洋化成工業株式会社製、製品名:サンモリンOT-70S)
アルキル(C12-16)ベンジルジメチルアンモニウムクロリド(花王株式会社製、製品名:サニゾールC)
ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(川研ファインケミカル株式会社製、製品名:ソフタゾリンLAO-C)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム(花王株式会社製、製品名:エマール270J)
ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル(花王株式会社製、製品名:エマルゲン109P)
【0063】
(皮膜形成性ポリマー)
N-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体(三菱ケミカル株式会社製、製品名:ユカフォーマーR205S)
【0064】
実施例1~10、比較例1~4(飛翔害虫駆除用組成物の調製及び評価)
飛翔害虫駆除用組成物に用いる各成分を、表1及び2に示す組成で飛翔害虫駆除用組成物をそれぞれ調製した。調製においては、スターラーで均一系となるよう各成分を溶解させた。各表に記載した量は各成分の有効成分量(質量%)である。また、各表に記載した界面活性剤(A)の量は、先述のとおり、解離型の量である。なお、組成物中で解離しない非イオン性界面活性剤は配合量である。また、アルキル(C12-16)ベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロリドの量は、解離型の量で表す代わりに、配合量とした。
得られた飛翔害虫駆除用組成物を用いて、前記方法により各種評価を行った。評価結果を表1及び2にそれぞれ示す。
【0065】
【0066】
【0067】
表1及び2より、本発明の飛翔害虫駆除用スプレー及び飛翔害虫駆除用組成物によれば、噴霧物を飛翔害虫に効率よく到達させることができ、飛翔害虫である蚊の飛翔能力を低下させる効果に優れることがわかる。
本発明によれば、スプレーから組成物を噴霧した際の直進性が高く、飛翔害虫駆除用組成物を飛翔害虫に効率よく到達させることができ、駆除効果を向上させることができる飛翔害虫駆除用スプレーを得ることができる。