(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014038
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】手羽先餃子用鶏皮及びその加工方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/50 20160101AFI20220112BHJP
A22C 21/00 20060101ALI20220112BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20220112BHJP
【FI】
A23L13/50
A22C21/00 Z
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116172
(22)【出願日】2020-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】506129061
【氏名又は名称】株式会社ニッチフーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 孝夫
【テーマコード(参考)】
4B011
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B011FA02
4B036LF11
4B036LH36
4B036LP24
4B042AC10
4B042AD39
4B042AG07
4B042AH04
4B042AP21
(57)【要約】
【課題】手羽先餃子の外観、質感のボリュームアップ及び需要者への購買訴求を図り、需要者に対するキャッチアップ効果の向上及び喫食した際の満足度を向上する。
【解決手段】手羽元2の1本の太骨2aと手羽中3部分に並列する2本の中骨3a,3bとを接合している関節6及び筋腱7を切離し、2本の中骨3a,3bを手羽元側で接合している軟骨10を切断し、手羽中3部分に並列する2本の中骨3a,3bを挟む一方側の身肉に切れ目CLを入れ、この切れ目CLを開く方向に手羽中3を折り曲げて、手羽元2の太骨2aと2本の中骨3a,3bとの接合を外し、この2本の中骨3a,3bの先端部を切れ目から突出させ、2本の中骨3a,3bを挟む他方側に残った身肉8を切断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
除骨した手羽先肉の手羽元、手羽中及び手羽先まで連続した鶏皮を一単位の皮とすること特徴とする手羽先餃子用鶏皮。
【請求項2】
手羽元の1本の太骨と手羽中部分に並列する2本の中骨とを接合している関節及び筋を切離する工程、2本の中骨を手羽元側で接合している軟骨を切断する工程、手羽中部分に並列する2本の中骨を挟む一方側の身肉に切れ目を入れる工程、この切れ目を開く方向に手羽中を折り曲げて、手羽元の太骨と2本の中骨との接合を外し、この2本の中骨の先端部を切れ目から突出させる工程、2本の中骨を挟む他方側に残った身肉を切断する工程とからなることを特徴とする手羽先餃子用鶏皮の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏の手羽肉の調理加工品、とくに手羽肉に具材を詰め物加工した手羽先餃子に関し、とくに手羽元から手羽中まで連続した肉身から骨を除去した手羽先餃子用鶏皮およびその加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食用鶏肉は各部位ごとに分けられ、それぞれに部位に応じた食肉処理を施して提供されるが、その中でも手羽先は骨付近に旨味があり皮や軟骨にコラーゲンが豊富に含まれ、安価なので、よく調理の素材にされる。この手羽先を食用に供する場合、そのまま揚げる、蒸す、焼く、煮込み調理されるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、手羽先はその特異な形態と身肉対する中骨部分の比率が高く食べ難い。そこで、これに適宜加工を施して、外観的にも喫食上も好ましい形態とすることができれば、より多くの需要に供することができる。そこで、手羽先の中骨を除去して食べやすくした加工食品が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1に示すように、手羽先の骨を抜き出し、骨のない手羽先を袋に見立てて中に、餃子の具、ミックスベジタブル、シーフード(魚のすり身)などの各種具材を詰め物とする手羽料理が提案されている。この手羽料理は骨がないので食べやすく、また具材が追加されることによって栄養価も向上する。
【0005】
特許文献2には、手羽先肉の手羽中部分の中骨を抜き、手羽先部分を切り落とし、筒状になった中骨空所に食物や調味料を入れて加熱する手羽先肉の調理方法が開示されている。手羽先部分を切り落とし、手羽中部分の中骨を抜いて調理されることから、食べ易く、中の詰物または加熱方法を変えることにより違った嗜好の食品(以下、「手羽先餃子」と称する)となっている。
【0006】
ところで、上述した手羽先餃子は、手羽先肉の手羽中部分を「餃子の皮」として見立てて用いたものであるが、手羽先肉の手羽中部分には中骨が入っており、そのままでは「餃子の皮」として用いることはできない。そこで、従来、以下のようにして、手羽中部分の中骨が取り除かれていた(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
特許文献3においては、先ず
図6に示すように、手羽先肉10の手羽先部分11と手羽中部分12を、作業者がそれぞれ左右の手で持って、手羽先部分11の中骨13と手羽中部分12の2本の中骨14a,14bと関節部分(
図6の二点鎖線Aを参照)を折る(第1ステップ)。次いでハサミや包丁を用いて、手羽中部分12の中骨14aや14bの周りの肉や筋,油4を、当該中骨14a,14bの根元付近まで削いでいく(第2ステップ)。最後に、
図7に示すように、手羽先部分11を一方の手で持ち、他方の手で中骨14a,14bを引き抜く(
図7の矢印Cを参照;第3ステップ)。以上の作業を経ることにより、手羽中部分に中骨14a,14bが入っていない状態となり、手羽中部分12を「餃子の皮」として用いることが可能となっている。
【0008】
しかし、手羽先肉の加工処理のうち最もきつい作業は、ハサミや包丁を用いて、手羽中部分の中骨周囲の肉や筋、油脂を、当該中骨の根本付近まで削ぎ落す作業である。とくに「油脂」は骨の表面にこびり付いているため、容易に除去することができず、この油脂が残った状態では、中骨14a,14bを簡単に引き抜くことができない。
【0009】
そこで、本発明者は、高齢者や女性が作業者となって「手羽先餃子」を工場で大量に生産する場合を想定して、特許文献4において、この削ぎ落し作業を楽に行うことができる切削具を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3-49663号公報
【特許文献2】特開平6-292535号公報
【特許文献3】特開2015-21685号公報
【特許文献4】実用新案登録第3217549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、手羽肉の中骨を抜き、その空洞に具材を詰め込む「手羽先餃子」は多くの種類が市場し提供され好評を博している。すなわち、鶏の手羽肉から骨を切離し、餡を包んで餃子様に加工することによって、良好な外観と喫食するに便利な形態とする。しかしながら、従来のものは、手羽肉の手羽中と手羽先までを一単位部位として使用しているものが多くを占め、食肉加工品として陳腐化していることも否めない。
【0012】
そこで、本発明者は、需要者が食肉加工品として十分な満足感を得られるべく、鋭意研究を重ね、手羽先肉の手羽元部分の皮までを含んだ手羽先餃子を製造することを着想した。つまり、手羽肉の「手羽元」、「手羽中」、「手羽先」まで連続した鶏皮を一単位の皮とすることで、従来製品よりも大きなサイズで、手羽先餃子の外観、質感のボリュームアップ及び需要者への購買訴求を図り、需要者に対するキャッチアップ効果の向上及び喫食した際の満足度を向上することができると考察した。
【0013】
しかしながら、手羽元から手羽中にかけて連続する鶏皮部分は非常に薄く、この部分が破損、又は毀損することなく、手羽元部分の中骨と手羽中部分の中骨を取り除く作業は困難であった。本発明は、上記の実情に鑑み、手羽先餃子の外観、質感のボリュームアップ及び需要者への購買訴求を図り、需要者に対するキャッチアップ効果の向上及び喫食した際の満足度を向上することができる手羽先餃子用鶏皮を得ることを目的とする。さらに、本発明は、上記形態の手羽餃子用鶏皮を得るための加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の手羽先餃子用鶏皮は、除骨した手羽肉の手羽元、手羽中及び手羽先まで連続した鶏皮を一単位の皮とすること第1の特徴とする。
【0015】
そして、前記手羽先餃子用鶏皮の加工方法は、手羽元の1本の太骨と手羽中部分に並列する2本の中骨とを接合している関節及び筋腱を切離する工程、2本の中骨を手羽元側で接合している軟骨を切断する工程、手羽中部分に並列する2本の中骨を挟む一方側の身肉に切れ目を入れる工程、この切れ目を開く方向に手羽中を折り曲げて、手羽元の太骨と2本の中骨との接合を外し、この2本の中骨の先端部を切れ目から突出させる工程、2本の中骨を挟む他方側に残った身肉を切断する工程とからなることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
手羽先餃子の外観、質感のボリュームアップ及び需要者への購買訴求を図り、需要者に対するキャッチアップ効果の向上及び喫食した際の満足度を向上することができる付加価値の高い調理品とすることができる。また、破損、又は毀損することなく、手羽元部分の中骨と手羽中部分の中骨を取り除く作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る手羽先餃子用鶏皮の加工工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例0019】
図1に示すように、本発明で得られる手羽先餃子用鶏皮5は、手羽肉1の除骨した手羽先肉の手羽元2、手羽中3及び手羽先4まで連続した鶏皮を一単位の皮とする。
【0020】
そして、前記手羽先餃子用鶏皮5の加工方法は、手羽元2の1本の太骨2aと手羽中3部分に並列する2本の中骨3a,3bとを接合している関節6及び筋腱7を切離する工程、2本の中骨3a,3bを手羽元側で接合している軟骨10を切断する工程、手羽中3部分に並列する2本の中骨3a,3bを挟む一方側の身肉に切れ目を入れる工程、この切れ目を開く方向に手羽中3を折り曲げて、手羽元2の太骨2aと2本の中骨3a,3bとの接合を外し、この2本の中骨3a,3bの先端部を切れ目から突出させる工程、2本の中骨3a,3bを挟む他方側に残った身肉を切断する工程とからなる。
【0021】
手羽肉1は、手羽元2の1本の太骨2aと、それに間接部分6で繋がった手羽中3の2本の並行する中骨3a,3bと、それらの骨を取り巻くと身肉8と皮9で構成されている。そして、本発明では、手羽先の中でもとくに肉薄の手羽元2と手羽中3の皮9と身肉8が連続した状態に保形することを狙いとして、加工による身肉部分の破損や毀損が発生しないように以下のごとき加工を施す。
【0022】
先ず、手羽元2と手羽中3と手羽先4が連なった手羽肉1の裏側を上にして、加工台の上におき、手羽元2と手羽中3を繋ぐ関節10を人指で押圧する等して固定し、手羽元2の1本の太骨2aと手羽中3部分に並列する2本の中骨3a,3bとを接合している関節6及び筋腱7をハサミやナイフ等で切離と共に、中骨3a,3bを手羽元側で接合している軟骨10をハサミやナイフ等で切断する。次いで、手羽中2の並列する2本の中骨3a,3bが挟む裏側の身肉8に、手羽元側(太い方)から間接10部分まで包丁等で骨達するまでの切れ目CLを入れる。これにより、手羽元2及び手羽中3の裏側半面の身肉8が切開された状態となる。
【0023】
次いで、手羽元2側と手羽先4側を両手で握持して、切れ目CLを開く方向に手羽部分全体を折り曲げる。この工程により、手羽中3の中骨3a,3bが外れ、その先端部が切れ目Cから突出してくる。
【0024】
その後、表側の身肉を、先に切れ目CLを付けたのと同じ位置をハサミやナイフ等で切断する、こうして、手羽肉1は除骨した手羽元2、手羽中3及び手羽先4まで連続した身肉と鶏皮を一単位の皮9とする手羽先餃子用鶏皮5となる。これ以後の加工については、調理する時期と、最終的に食用に供する形態で様々である。
【0025】
全ての骨を除去した手羽餃子用鶏皮に、所定量の具材を適宜詰め込む。この具材としては、例えば、挽肉、キャベツ、ニラ等を餡にした餃子の具、魚のすり身などが考えられる。そして、具材を詰め込んだ手羽肉の鶏皮を元どおりに突き合わせ食用結着材を使用して継ぎ目を結着する。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。すなわち、鶏の手羽先以外の食用の家禽、家畜等の食肉加工処理においても有用である。