(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140384
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】共重合体粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 224/00 20060101AFI20220915BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C08F224/00
C08F220/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036369
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021038149
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】井本 慎也
(72)【発明者】
【氏名】寳來 健介
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀高
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL03Q
4J100AQ01P
4J100BA11P
4J100CA04
4J100DA01
4J100EA06
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA21
4J100FA28
4J100GC07
4J100JA32
(57)【要約】
【課題】
溶解性及び取り扱い性に優れる、α-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】
α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む、球形部を有する共重合体粒子であって、共重合体粒子の一次粒径の平均粒径が0.5~100μmであり、共重合体の重量平均分子量が150000超である共重合体粒子、並びに水溶媒中で、α-メチレンラクトン及び(メタ)アクリル酸アルキルを含む単量体を、単量体の全量に対して、10~5000質量ppmの連鎖移動剤の存在下で重合させる重合工程を備え、単量体の全量を前記重合工程の初期から系中に存在させる、共重合体粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む、球形部を有する共重合体粒子であって、
前記共重合体粒子の一次粒径の平均粒径が0.5~100μmであり、
前記共重合体の重量平均分子量が150000超である共重合体粒子。
【請求項2】
前記共重合体粒子が1~1000質量ppmの分散剤を含有する、請求項1に記載の共重合体粒子。
【請求項3】
フィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズが2.5%未満である、請求項1又は2に記載の共重合体粒子。
【請求項4】
形状が球状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の共重合体粒子。
【請求項5】
α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む、共重合体粒子の製造方法であって、
水溶媒中で、前記α-メチレンラクトン及び前記(メタ)アクリル酸アルキルを含む単量体を、前記単量体の全量に対して、10~5000質量ppmの連鎖移動剤の存在下で重合させる重合工程を備え、
前記単量体の全量を前記重合工程の初期から系中に存在させる、共重合体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記重合を分散剤の存在下で行う、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記重合が懸濁重合である、請求項5又は6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体は、透明性、耐熱性、光学等方性に優れ、光学用途への適用が期待されている。例えば、特許文献1には、所定のα-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体(樹脂)の成形体であるフィルム等が、光学用部材の用途に適することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1等の従来のα-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体は、通常ペレットの状態で得られる。共重合体からフィルムを形成する際には、一般的に共重合体を溶媒に溶解させてドープ液を調製した後に、溶液キャスト法(溶液流延法)を適用する。ここで、ペレット状の共重合体を溶媒に溶解させようとすると、溶解に時間がかかる、正確な秤量が難しいためドープ液の濃度を調整しづらい等といった問題がある。
【0005】
そこで本発明は、溶解性及び取り扱い性に優れる、α-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[4]に記載の共重合体粒子、及び[5]~[7]に記載の共重合体粒子の製造方法を提供する。
[1] α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む、球形部を有する共重合体粒子であって、共重合体粒子の一次粒径の平均粒径が0.5~100μmであり、共重合体の重量平均分子量が150000超である共重合体粒子。
[2] 上記共重合体粒子が1~1000質量ppmの分散剤を含有する、[1]に記載の共重合体粒子。
[3] フィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズが2.5%未満である、[1]又は[2]に記載の共重合体粒子。
[4] 形状が球状である、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合体粒子。
[5] α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む、共重合体粒子の製造方法であって、水溶媒中で、α-メチレンラクトン及び(メタ)アクリル酸アルキルを含む単量体を、単量体の全量に対して、10~5000質量ppmの連鎖移動剤の存在下で重合させる重合工程を備え、単量体の全量を前記重合工程の初期から系中に存在させる、共重合体粒子の製造方法。
[6] 上記重合を分散剤の存在下で行う、[5]に記載の製造方法。
[7] 上記重合が懸濁重合である、[5]又は[6]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、溶解性及び取り扱い性に優れる、α-メチレンラクトン由来の構成単位を含む共重合体粒子及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
[共重合体粒子]
本実施形態の共重合体粒子は、α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む。なお、「共重合体粒子」とは、α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含む共重合体を主成分とする粒子である。共重合体粒子における共重合体の含有量は、90質量%以上であると好ましく、95質量%以上であるとより好ましく、99質量%以上であると更に好ましい。
【0010】
本実施形態の共重合体粒子は球形部を有する。なお、球形部は、真球状のものに限られず、アスペクト比(長径/短径の比)が1.0~1.5であれば楕円体状等であってもよい。球形部を有する共重合体粒子の形状としては、球状、一つ又は複数の突起部を有する球状等が挙げられ、球状、又は、一つの突起部を有する球状であると好ましい。突起部の形状としては、例えば、略半球状、略円錐状等が挙げられる。本実施形態の共重合体粒子は、球状の粒子のみからなるものであっても、球状の粒子と、突起部を有する球状の粒子とが混在するものであっても、突起部を有する球状の粒子のみからなるものであってもよい。
【0011】
本実施形態の共重合体粒子の一次粒径の平均粒径は0.5~100μmである。当該平均粒径は、溶解性向上等の観点から、0.75~50μmであると好ましく、1~30μmであるとより好ましく、1.5~10μmであると更に好ましい。
【0012】
共重合体粒子の一次粒径の平均粒径は、コールター原理を使用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「コールターマルチサイザーIII」)により測定される値である。具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0013】
α-メチレンラクトン由来の構成単位は、α位の炭素にメチレン基が結合したα-メチレンラクトンの重合により形成される。α-メチレンラクトン由来の構成単位の具体的な構造は特に限定されない。ラクトンの環員数は、特に限定されないが、環構造の安定性が高く、この高い安定性に基づいてより高い表面強度が得られることから、好ましくは5員環(γ-ラクトン)又は6員環(δ-ラクトン)である。
【0014】
5員環又は6員環であるα-メチレンラクトンの具体例は、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-δ-バレロラクトンである。これらは置換基を有するものであってもよい。
【0015】
α-メチレンラクトン由来の構成単位は、好ましくは以下の式(1)に示す構造を有する構成単位である。
【0016】
【0017】
式(1)におけるR1~R4は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
【0018】
式(1)に示す構造を有する構成単位は、以下の式(2)に示すα-メチレン-γ-ブチロラクトンを含む単量体の重合により形成できる。
【0019】
【0020】
式(2)におけるR1~R4は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基である。
【0021】
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基は、例えば、アルキル基である。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。アルキル基は直鎖でも分岐を有していてもよく、環状でもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
芳香族炭化水素基は特に限定されず、例えば、複素環構造を含んでいてもよい。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0023】
R1~R4は、好ましくは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、より好ましくは全て水素原子である。
【0024】
共重合体におけるα-メチレンラクトン由来の構成単位の含有量は、耐熱性等をより向上させる観点から、好ましくは5~50質量%、より好ましくは7.5~45質量%、更に好ましくは10~40質量%である。なお、共重合体における各構成単位の含有量は、共重合体を重溶媒に溶解させ、1H-NMRを測定し各構成単位に対応するピークの面積比を算出することで求めることができる。
【0025】
炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位は、(メタ)アクリル酸アルキルの重合により形成される。(メタ)アクリル酸アルキルにおける炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~3、より好ましくは1又は2、更に好ましくは1である。
【0027】
共重合体における(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位の含有量は、耐熱性、透明性等をより向上させる観点から、好ましくは95~40質量%、より好ましくは92.5~45質量%、更に好ましくは90~50質量%である。
【0028】
共重合体は、α-メチレンラクトン由来の構成単位及び炭素数1~6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位以外のその他の単量体の構成単位を含んでいてもよい。その具体例としては、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の単量体由来の構成単位が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0029】
共重合体におけるその他の構成単位の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
【0030】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は150000超である。当該共重合体の重量平均分子量は、得られる延伸フィルムの強度を向上させる観点から、180000超であると好ましく、200000超であるとより好ましい。また、共重合体の重量平均分子量の上限は特に限定されないが、例えば2000000以下、1000000以下、又は700000以下とすることができる。
【0031】
本実施形態の共重合体粒子は、1~1000質量ppmの分散剤を含有していてもよい。共重合体粒子における分散剤の含有量は、5~500質量ppmであってもよく、1~100質量ppmであってもよい。なお、共重合体粒子中に含まれる分散剤は、通常、分散剤を用いて共重合体粒子を合成した後に、残存するものである。
【0032】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子系分散安定剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム)等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤;その他アルギン酸塩、ゼイン、カゼイン;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、ケイソウ土、ベントナイト、水酸化チタン、水酸化トリウム、金属酸化物粉末等の無機分散剤などが挙げられる。なかでも、重合工程後に得られた共重合体と分散剤とを分離しやすくなる観点から、水溶性高分子系分散安定剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤等の水に溶けやすい分散剤を用いることが好ましく、水溶性高分子系分散安定剤を用いることがより好ましく、特に、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩を用いることが好ましい。
【0033】
本実施形態の共重合体粒子は、分散剤以外の種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;4-ターシャリーブチルカテコール(TBC)、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4H-TEMPO)等の重合禁止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤等の位相差調整剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;等が挙げられる。本実施形態の共重合体粒子における添加剤の含有量は、0~2質量%であってもよく、0~1質量%であってもよい。
【0034】
本実施形態の共重合体粒子は、上記添加剤のなかでも重合禁止剤を含有することが好ましい。本実施形態の共重合体粒子における重合禁止剤の含有量は、0~2質量%であってもよく、0~1質量%であってもよい。
【0035】
本実施形態の共重合体粒子は、比較的高い密度(例えば1.29g/cm3程度)を有する。
【0036】
本実施形態の共重合体粒子をフィルムにしたときの厚さ100μm当たりの内部ヘイズは、透明性を向上させるため、2.5%未満であると好ましい。当該内部ヘイズは、より好ましくは2.0%以下、更に好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.0%以下である。当該内部ヘイズは、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0037】
本実施形態の共重合体粒子及びこれを用いたフィルムは、光学用途、例えば、導光部材、フィルム用途、レンズ(光学レンズ等)等の各種用途に適用することができる。
【0038】
(共重合体粒子の製造方法)
本実施形態の共重合体粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、水溶媒中で、上記α-メチレンラクトン及び上記(メタ)アクリル酸アルキルを含む単量体を、単量体の全量に対して、10~5000質量ppmの連鎖移動剤の存在下で重合させる重合工程を備え、単量体の全量を重合工程の初期から系中に存在させることを特徴とする方法で製造することができる。
【0039】
水溶媒は、水単独であってもよく、非水溶媒(特に水溶性有機溶媒)を含んでいてもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メチルプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;等が挙げられる。
【0040】
水溶媒中、有機溶媒の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0041】
重合温度は、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~90℃、更に好ましくは70~90℃である。また、重合時間は好ましくは0.5~20時間、より好ましくは1~10時間である。
【0042】
重合工程においては、単量体の全量を重合工程の初期から系中に存在させることが好ましい。単量体の全量を重合工程の初期から系中に存在させる方法としては、実質的に重合が開始する前に単量体の全量が反応器へ投入されていればよく、例えば、反応器の温度を重合温度まで上昇させる前に単量体の全量を反応器へ投入することができる。
【0043】
単量体を水溶媒中に分散させるときには、パドル翼等で攪拌して分散させてもよく、高速せん断タービン型分散機、高圧ジェットホモジナイザー、超音波式乳化分散機、媒体攪拌分散機、強制間隙通過型分散機等の乳化分散装置を用いて分散させてもよい。
【0044】
単量体を重合させる際には、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤、分散剤及び/又は添加剤を添加してもよい。
【0045】
重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等のアゾ化合物などが挙げられる。重合開始剤の含有割合は、用いる単量体の組み合わせ、反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、全単量体に対して、好ましくは100~50000質量ppm、より好ましくは500~30000質量ppm、更に好ましくは1000~20000質量ppmである。
【0046】
連鎖移動剤としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、β-メルカプトプロピオン酸等の単官能チオール化合物;両末端メルカプト変性ポリシロキサン等の2官能チオール化合物;側鎖がメルカプト変性された側鎖多官能メルカプト変性ポリシロキサンなどが挙げられる。連鎖移動剤の添加の有無、及び添加する場合には添加量によって、得られる共重合体の分子量を調整することができる。連鎖移動剤の含有割合は、用いる単量体の組み合わせ、反応条件等に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、重量平均分子量が150000超、特に200000超といった高い重量平均分子量の共重合体を得る観点から、全単量体に対して、好ましくは10~5000質量ppm、より好ましくは100~3000質量ppm、更に好ましくは150~2500質量ppm、特に好ましくは200~1900質量ppmである。
【0047】
分散剤としては、上述のものが例示される。分散剤の添加により、重合反応の安定性を向上させることができる。分散剤の含有割合は、特に制限されないが、全単量体に対して、好ましくは0.1~3質量%、より好ましくは0.2~1質量%である。
【0048】
添加剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤、;4-ターシャリーブチルカテコール(TBC)、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4H-TEMPO)等の重合禁止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤等の位相差調整剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤、アルカン等の非水溶性の有機溶媒;等が挙げられる。添加剤の含有割合は、特に制限されないが、全単量体に対して、0.001~2質量%であってもよく、0.002~1質量%であってもよい。
【0049】
重合反応の形態としては、例えば、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。これらの中で、得られる共重合体の透明性をより向上できる点等から、分散剤の存在下で、水溶媒中に単量体を懸濁させて反応を行う懸濁重合が好ましい。重合反応時、反応系中に上記重合禁止剤を含むことで、懸濁重合中に併発する乳化重合を抑制することができる。これにより、得られる共重合体粒子の透明性等の物性及び取り扱い性が向上する。
【0050】
重合工程後に、固液分離することにより、共重合体粒子を回収することができる。固液分離の方法としては、濾取、遠心分離、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0051】
得られた共重合体粒子は、乾燥させることが好ましい。乾燥温度は例えば60℃以上120℃以下とすることができる。
【0052】
また固液分離をせずに直接乾燥により水を取り除いてもよい。各種ドライヤーを用いて乾燥させることで直接共重合体を粉体として取得することができる。
【0053】
本実施形態の製造方法により製造される共重合体粒子は、光学用途、例えば、導光部材、フィルム用途、レンズ(光学レンズ等)等の各種用途に適用することができる。
【0054】
上述の製造方法により製造される共重合体粒子から形成されるフィルムは、透明性、弾性率及び強度が高い。フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、共重合体粒子を溶媒に溶解させてドープ液を調製した後に、溶液キャスト法(溶液流延法)を適用することで製造できる。溶液キャスト法を適用することで、溶融押出法を適用するときよりも、高い重合平均分子量をもつ共重合体を使用することができ、これにより高い弾性率及び強度を備えるフィルムが得られやすい。
【0055】
上述の製造方法により製造される共重合体粒子から形成されるフィルムは、共重合体をフィルムの全量を基準として好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100重量%、特に好ましくは80~100質量%、最も好ましくは90~100質量%含んでよい。共重合体の含有量が50質量%以上であると、透明性により優れるフィルムを得ることができる。
【0056】
フィルムは、所望のフィルムの特性に合わせて、上述のα-メチレンラクトン由来の構成単位を有する共重合体に加えて、その他の重合体、その他の添加剤等を含有していてもよい。
【0057】
その他の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースプロピオネート等のセルロース誘導体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム等の弾性有機微粒子;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂、ASA樹脂等のゴム質重合体などが挙げられる。その他の重合体の含有量は、延伸フィルム(樹脂組成物)の全量を基準として、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~40質量%、更に好ましくは0~30重量%、特に好ましくは0~20質量%、最も好ましくは0~10質量%である。
【0058】
その他の添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラー;酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤又は無機充填剤;可塑剤;滑剤;帯電防止剤;難燃剤;流動化剤;相溶化剤などが挙げられる。フィルムは、1種又は2種以上のその他の添加剤を含有することができる。その他の添加剤の含有量は、延伸フィルムの全量を基準として、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%、更に好ましくは0~0.5質量%である。
【0059】
フィルムは、延伸することによって延伸フィルムとすることができる。フィルムは、可とう性に優れる点、場合によっては位相差を付与できる点で、好ましくは延伸フィルムである。
【0060】
フィルムを延伸する方法としては、従来公知の延伸方法が適用でき、例えば、自由幅一軸延伸、定幅一軸延伸等の一軸延伸;逐次二軸延伸、同時二軸延伸等の二軸延伸等が挙げられる。フィルム面内の任意の直交する二方向に対する耐折れ曲げ性が向上するという点で、フィルムを延伸する方法は好ましくは二軸延伸である。
【0061】
フィルムを延伸する際の延伸温度は、好ましくは上述の共重合体のガラス転移温度近辺である。より具体的には、好ましくは(ガラス転移温度-30)℃~(ガラス転移温度+100)℃、より好ましくは(ガラス転移温度-20)℃~(ガラス転移温度+50)℃、更に好ましくは(ガラス転移温度-10)℃~(ガラス転移温度+30)℃である。
【0062】
フィルムを延伸する際の延伸倍率は、例えば、縦横方向それぞれ1.05~10倍の範囲であってよい。また、縦横二軸延伸する場合の面倍率は、1.8~10倍であり、延伸後のフィルムの強度及び硬度を向上させる観点から、好ましくは2~7倍であり、より好ましくは2.2~6倍であり、更に好ましくは2.5~5倍であり、特に好ましくは2.6~4.5倍である。
【0063】
フィルムの膜厚は、好ましくは1μm以上350μm未満、より好ましくは10μm以上300μm以下である。シート状の樹脂成形体(シート)の膜厚は、好ましくは350μm以上10mm以下、より好ましくは350μm以上5mm以下である。
【0064】
フィルムのJIS K7136に準じた方法で測定される全光線透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、85%以上であると、フィルムの透明性が充分なものとなり得る。
【0065】
フィルムは、延伸フィルムの面内方向位相差(Re)が好ましくは15nm以下であり、より好ましくは10nm以下であり、更に好ましくは5nm以下である。また延伸フィルムの厚み方向位相差(Rth)の絶対値が好ましくは30nm以下であり、より好ましくは20nm以下であり、更に好ましくは17nm以下であり、特に好ましくは15nm以下である。位相差の絶対値が小さいと、配向複屈折が小さく光学等方性が高くなるため、光学フィルム、特にディスプレイなどに使用される保護フィルムなどの部材として、一層好適に用いることができる。
【0066】
フィルムの弾性率は、フィルムの硬度をより向上させ塑性変形を抑制する観点から、好ましくは4GPa以上、より好ましくは4.5GPa以上、更に好ましくは5GPa以上である。フィルムの弾性率の上限は特に限定されないが、例えば、15GPa以下とすることができる。なお、フィルムの弾性率は、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0067】
フィルムの鉛筆硬度は、フィルムの耐擦り傷性や硬度をより向上させる観点から、好ましくはH以上、より好ましくは2H以上、更に好ましくは3H以上である。
【0068】
樹脂成形体がフィルムである場合、フィルムは、所定の条件でフィルムをU字型に折り曲げて戻すことを繰り返す屈曲試験(フォルダブル試験)において、折り曲げる回数が100000回を超えても折り曲げ部分に破断が生じないことが好ましい。なお、所定の条件とは、例えば、実施例に記載の条件とすることができる。
【実施例0069】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」、「ppm」は「質量ppm」を意味する。また、各種物性は、次のようにして測定・評価した。
【0070】
[重合における重合反応率]
攪拌重合における重合反応時の反応率は、得られた重合反応液中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC-2014)を用いて測定して求めた。
【0071】
[共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は、以下のとおりである。
システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
測定側カラム構成:
・ガードカラム(東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ-L)
・分離カラム(東ソー製、TSKgel SuperHZM-M) 2本直列接続
リファレンス側カラム構成:
・リファレンスカラム(東ソー製、TSKgel SuperH-RC)
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS-オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
【0072】
[共重合体中のML含有量]
共重合体中のML含有量(α-メチレン-γ-ブチロラクトン由来の構成単位の含有量)は、1H-NMRにより求めた。具体的には、重溶媒として重DMSO又は重クロロホルムを使用し、核磁気共鳴分光計(BRUKER製、AV300M)を用いて1H-NMR測定を行い、得られた1H-NMRプロファイルの面積比から求めた。
【0073】
[共重合体のガラス転移温度(Tg)]
共重合体のガラス転移温度は、JIS K 7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク社製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
【0074】
[熱分解開始温度(DyTGA)]
共重合体の熱分解温度(DyTGA)はダイナミックTG測定により求めた。具体的には、差動型示差熱天秤装置(リガク製、Thermo plus2 Tg-8120)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から500℃まで昇温した。このとき、昇温中のサンプルの質量減少速度が0.005質量%/秒以下の場合は昇温速度を10℃/分として、0.005質量%/秒を超える場合は、質量減少速度が0.005質量%/秒以下を保つように階段状等温制御を併用して、昇温した。上記質量減少速度を保つために最初に階段状等温制御とした温度(階段状等温制御とした最も低い温度)を、重合体のDyTGAとした。
【0075】
[共重合体の内部ヘイズ]
ヘイズはJIS K7136の規定に準拠して求めた。具体的には、共重合体を240℃、40MPaで10分間熱プレス成形して得られた未延伸フィルムを用意し、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-1001DP)を用いて、光路長10mmの石英セルに1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン(テトラリン)を満たし、その中にフィルムを浸漬して測定し、100μm当たりの内部ヘイズ値として算出した。
【0076】
[共重合体の内部b*値]
共重合体を240℃、40MPaで10分間熱プレス成形して得られた未延伸フィルムを用意し、分光光度計(日本電色工業株式会社製、Colormeter ZE6000)を用いて、光路長10mmの石英セルに1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン(テトラリン)を満たし、その中にフィルムを浸漬して測定し、L*a*b*表色系の厚さ100μm当たりのb*値として算出した。
【0077】
[共重合体中の分散剤含有量]
得られた共重合体の粉体をメタノールと水に分散させて、濾過した後に濾液中の分散剤量を高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatograpphy、HPLC)を用い、検量線法にて測定した。
【0078】
[共重合体粉体の平均粒径]
分散剤を使用して共重合体粉体を水中に分散させた後、さらに超音波を照射して粒子が分散している状態の分散液を調整し、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製の「コールターマルチサイザーIII」、アパーチャ50μm)を使用して、質量基準の平均粒径を測定した。
【0079】
[共重合体粉体のアスペクト比(SEM)]
共重合体粉体を走査型電子顕微鏡(日本電子製 FE-SEM)を用いて、倍率1万倍で観察し、長軸の長さを測定した。また長軸と直行する短軸の長さを測定し、長軸の長さ/短軸の長さをアスペクト比として計算した。任意の10個の粒子について測定してその平均値を算出した。
【0080】
[共重合体粉体の溶媒への溶解性]
溶媒への溶解性は、20%のジクロロメタン溶液の調製にかかる時間で評価した。具体的には12部のジクロロメタンを24℃で反応釜に攪拌翼を付けて200rpmで攪拌している中に、3部の共重合体を加えた後、完全に溶解するまでの時間で評価した。
【0081】
[ドープ液の粘度]
ドープ液の粘度は、BHII型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて25℃にて測定した。
【0082】
[ドープ液の黄色度(YI)]
ドープ液の黄色度(YI)はJIS Z 8729の規定に準拠して求めた。具体的には分光色差計(日本電色工業株式会社製:Colormeter ZE6000)の透過モードで、光路長10mmの石英セルを用いて測定した。
【0083】
[ドープ液のヘイズ]
ドープ液のヘイズはJIS K7136の規定に準拠して求めた。具体的には、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-1001DP)を用いて、光路長10mmの石英セルを用いて測定した。
【0084】
[フィルムの厚さ]
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ製)により求めた。
【0085】
[フィルムの全光線透過率]
フィルムの全光線透過率はJIS K7361の規定に準拠して求めた。具体的には、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-1001DP)を用いて測定した。
【0086】
[フィルムの引張試験(弾性率測定)]
延伸フィルムを90mm×20mmの大きさに切り出して試験片とし、温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、JIS K7127に準拠し、オートグラフ(島津製作所製:AG-X)を用いて引張試験を実施した。条件は引張速度を歪0.5%まで0.25mm/分、それ以降は1mm/分とし、チャック間距離を55mm、変位計での測定する標線間隔を25mmとして、25℃で3回試験を行い、その平均値を測定値とした。変位は非接触伸び幅計(島津製作所製:TRViewX)を用いて計測し、弾性率は歪が0.05%から0.25%までの間の傾きとして評価した。
【0087】
[フィルムの鉛筆硬度]
フィルムの鉛筆硬度は、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用い、安田精機製作所(株)製 鉛筆引っかき硬度試験機No.533を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に準拠して、750g荷重下で評価を行い、傷がつかない最も高い鉛筆の硬度を鉛筆硬度とした。
【0088】
[フィルムのフォルダブル試験]
延伸フィルムを15mm×80mmの大きさに切り出して試験片とし、Tension-FreeFolding Clamshell-type(ユアサシステム機器製、DMLHP-CS)にテープで固定した。また、試験片を長辺の半分の位置で折り曲げ、折り畳まれた状態の試験片の長辺の両端部間の距離が5mmとなり、試験片の折り曲げ部分の曲率半径が2.5mmとなるように折り畳まれた状態を設定した。その後、25℃の環境下で、平坦に開いた状態から折り畳まれた状態にすることを1回の屈曲として、1分間に30回の屈曲回数で、10万回屈曲を繰り返した。試験後の折り畳まれた部分のフィルムが破断していなかった場合を「○」、破断していた場合を「×」として評価した。
【0089】
[フィルムの位相差]
延伸フィルムの波長589nmの光に対する面内位相差Re及び厚さ方向位相差Rthを、全自動複屈折計(王子計測機器社製「KOBRA-WR」)を用いて入射角40°の条件で測定した。具体的には、フィルムの面内における遅相軸方向の屈折率をnx、フィルムの面内における進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとして、下記式から面内位相差Re及び厚さ方向位相差Rthをそれぞれ求めた。なお、下記の実施例においては、フィルムの厚さdを40μmとして、面内位相差Re及び厚さ方向の位相差Rthを求めた。
面内位相差Re=(nx-ny)×d
厚さ方向位相差Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d
【0090】
[フィルムの内部ヘイズ]
ヘイズはJIS K7136の規定に準拠して求めた。具体的には、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-1001DP)を用いて、光路長10mmの石英セルに1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン(テトラリン)を満たし、その中にフィルムを浸漬して測定し、100μm当たりの内部ヘイズ値として算出した。
【0091】
なお、メタクリル酸メチル(MMA)、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)、ベンジルメタクリレート(BzMA)は東京化成工業から入手した。パーロイルL(ジラウロイルパーオキサイド、LPO)は日油株式会社より、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(ルペロックス(登録商標)575(R575))はアルケマ吉富社より、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名「ハイテノール(登録商標)NF-08」は第一工業製薬株式会社より入手した。nDMはn-ドデシルメルカプタンを示す。
【0092】
<共重合体の合成及びフィルムの作製>
(実施例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器を用意した。容器に分散剤としてハイテノール(登録商標)NF-08を0.25部溶解した脱イオン水75部を仕込んだ。そこへあらかじめ調整しておいたモノマーとしてMMAを35部、MLを15部、開始剤としてLPOを0.25部、連鎖移動剤としてnDMを0.05部混合した液を仕込み、T.K.ホモミクサーMARK II model2.5(プライミクス株式会社製)を用い、3000rpmで5分間攪拌して均一な懸濁液とした。
懸濁液に脱イオン水を125部、4H-TEMPOを0.025部追加し、反応器に移送し、攪拌し窒素ガスを吹き込みながら反応溶液が70℃になるまで加熱した。内温70℃になった時点を反応開始とし、そのまま70℃で反応器を保温して自己発熱により液温がピーク温度に到達した後に75℃に保ち、さらに反応開始2時間後に重合液を90℃まで昇温して4時間攪拌して重合反応を完了させた。その後、反応液(懸濁液)を冷却し、濾過して共重合体を濾取し、さらに熱風乾燥機を用いて乾燥して共重合体(粉体)を得た。重合完了時のモノマーの転化率、ポリマーの分子量と得られた共重合体の物性を表1に示す。なお、走査型電子顕微鏡を用いて共重合体粉末を観察したところ、球状の粉体と、一つの突起部を有する球状の粉体とが混在していた。
【0093】
得られた共重合体をジクロロメタンで希釈し、ポリマー含有量20wt%のドープ液を調製した後、5μmのフィルターで加圧濾過した。ドープ液の物性は表1に示す。ドープ液を目視で確認したところ、均一に分散しており、その後一晩静置してもドープ液の外観に変化は見られなかった。
次にPETフィルムにドープ液を滴下し、アプリケーターを使用して膜厚800μmに塗り広げた。その後、PETフィルムごと乾燥機に入れ40℃で30分、60℃で30分乾燥させた後、塗布したフィルムをPETから剥離した。さらに80℃から130℃で乾燥して、厚さ160μmの未延伸キャストフィルムを得た。得られた未延伸フィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所社製、X6-S)を用いて、Tg+20℃の延伸温度にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2.0倍となるように逐次二軸延伸を行い、冷却することにより、厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表1に示す。
【0094】
(実施例2)
あらかじめモノマーとしてMMAを30部、MLを20部、開始剤としてLPOを0.25部、連鎖移動剤としてnDMを0.1部混合した液を用意した以外は実施例1と同様に共重合体(粉体)を得た。重合完了時のモノマーの転化率、ポリマーの分子量と得られた共重合体の物性を表1に示す。なお、走査型電子顕微鏡を用いて共重合体粉末を観察したところ、球状の粉体と、一つの突起部を有する球状の粉体とが混在していた。
次に実施例1と同様に得られた共重合体をジクロロメタンで希釈してドープ液を調製した。得られたドープ液の物性は表1に示す。さらに実施例1と同様にキャストフィルム作製、延伸を行い厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表1に示す。
【0095】
(実施例3)
あらかじめモノマーとしてMMAを40部、MLを10部、開始剤としてLPOを0.25部、連鎖移動剤としてnDMを0.05部混合した液を用意した以外は実施例1と同様に共重合体(粉体)を得た。重合完了時のモノマーの転化率、ポリマーの分子量と得られた共重合体の物性を表1に示す。なお、走査型電子顕微鏡を用いて共重合体粉末を観察したところ、全て球状の粉体であった。
次に実施例1と同様に得られた共重合体をジクロロメタンで希釈してドープ液を調製した。得られたドープ液の物性は表1に示す。さらに実施例1と同様にキャストフィルム作製、延伸を行い厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表1に示す。
【0096】
(実施例4)
あらかじめモノマーとしてMMAを27部、MLを15部、BzMAを8部、開始剤としてLPOを0.25部、連鎖移動剤としてnDMを0.05部混合した液を用意した以外は実施例1と同様に共重合体(粉体)を得た。重合完了時のモノマーの転化率、ポリマーの分子量と得られた共重合体の物性を表1に示す。なお、走査型電子顕微鏡を用いて共重合体粉末を観察したところ、全て球状の粉体であった。
次に実施例1と同様に得られた共重合体をジクロロメタンで希釈してドープ液を調製した。得られたドープ液の物性は表1に示す。さらに実施例2と同様にキャストフィルム作製、延伸を行い厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表1に示す。
【0097】
(実施例5)
あらかじめモノマーとしてMMAを30部、MLを20部、開始剤としてLPOを0.25部、連鎖移動剤としてnDMを0.025部混合した液を用意した以外は実施例1と同様に懸濁液を作製した。懸濁液に脱イオン水を125部追加し、反応器に移送し、攪拌し窒素ガスを吹き込みながら反応溶液が70℃になるまで加熱した。内温70℃になった時点を反応開始とし、そのまま70℃で反応器を保温して自己発熱により液温がピーク温度に到達した後に75℃に保ち、さらに反応開始2時間後に重合液を90℃まで昇温して4時間攪拌して重合反応を完了させた。その後、反応液(懸濁液)を冷却し、濾過して共重合体を濾取し、さらに熱風乾燥機を用いて乾燥して共重合体(粉体)を得た。重合完了時のモノマーの転化率、ポリマーの分子量と得られた共重合体の物性を表1に示す。なお、走査型電子顕微鏡を用いて共重合体粉末を観察したところ、全て球状の粉体であった。
次に実施例1と同様に得られた共重合体をジクロロメタンで希釈してドープ液を調製した。得られたドープ液の物性は表1に示す。さらに実施例1と同様にキャストフィルム作製、延伸を行い厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表1に示す。
【0098】
(実施例6)
分散剤としてハイテノール(登録商標)NF-08を1部用い、モノマーとしてMMAを37.5部、MLを12.5部、開始剤としてLPOを0.25部、連鎖移動剤としてnDMを0.05部混合した液を仕込み、T.K.ホモミクサーMARK II model2.5(プライミクス株式会社製)を用い、2000rpmで5分間攪拌して均一な懸濁液とした。懸濁液に脱イオン水を125部追加し、反応器に移送し、攪拌し窒素ガスを吹き込みながら反応溶液が70℃になるまで加熱した。内温70℃になった時点を反応開始とし、そのまま70℃で反応器を保温して自己発熱により液温がピーク温度に到達した後に75℃に保ち、さらに反応開始2時間後に重合液を90℃まで昇温して4時間攪拌して重合反応を完了させた。その後、反応液(懸濁液)を冷却し、濾過して共重合体を濾取し、さらに熱風乾燥機を用いて乾燥して共重合体(粉体)を得た。重合完了時のモノマーの転化率、ポリマーの分子量と得られた共重合体の物性を表1に示す。なお、走査型電子顕微鏡を用いて共重合体粉末を観察したところ、全て球状の粉体であった。
次に実施例1と同様に得られた共重合体をジクロロメタンで希釈してドープ液を調製した。得られたドープ液の物性は表1に示す。さらに実施例1と同様にキャストフィルム作製、延伸を行い厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表1に示す。
【0099】
(比較例)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、モノマーとしてMMA35部、ML15部、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)を60部仕込み、これに窒素を通じつつ83℃まで昇温させた。その後、重合開始剤としてルペロックス(登録商標)575を0.15部加えて83-90℃で6時間かけて溶液攪拌重合を行った。得られた重合液を240℃で1時間真空乾燥(133Pa(1mmHg))して共重合体の塊を取得した後に、2mm角程の大きさまで粉砕して共重合体の粉砕固体を得た。重合完了時のモノマーの転化率、ポリマーの分子量と得られた共重合体の物性を表1に示す。なお、共重合体粉砕固体は不定形であり、アスペクト比を測定することはできなかった。
次に実施例1と同様に得られた共重合体をジクロロメタンで希釈してドープ液を調製した。得られたドープ液の物性は表1に示す。さらに実施例2と同様にキャストフィルム作製、延伸を行い厚さ40μmの延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの物性を表1に示す。
【0100】
【0101】
比較例のように、ペレット状の共重合体を粉砕することで粉砕固体とすることもできるが、粉砕は手間であり、砕固体の溶解性も低い。一方、実施例1~6で得られた共重合体粉末は、溶解性及び取り扱い性に優れる。