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特開2022-140389ねじれた羽根を備える送風ファンの成形金型および送風ファンの成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140389
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】ねじれた羽根を備える送風ファンの成形金型および送風ファンの成形方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/22 20060101AFI20220915BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20220915BHJP
   B29C 45/33 20060101ALI20220915BHJP
   B29C 45/44 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F04D29/22 H
B29C33/44
B29C45/33
B29C45/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036713
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2021038747
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504448586
【氏名又は名称】松田金型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】松田 正雄
【テーマコード(参考)】
3H130
4F202
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB46
3H130BA95C
3H130BA95Z
3H130CB01
3H130DJ08X
3H130EA02C
3H130EC17C
3H130ED01C
3H130ED01Z
4F202AH04
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CK13
4F202CK32
4F202CK54
4F202CK74
4F202CM90
(57)【要約】
【課題】単位羽根の多数を第一円板と第二円板で挟んだ送風ファンで、単位羽根にねじれを有する送風ファンを一体で成形する。
【解決手段】
送風ファン1の単位羽根30間の送風路を成形する挿入金型60を挿入往復金型62と挿入起伏金型72とを積層して構成する。成形位置で成形し(a)、挿入起伏金型72を成形位置に留めて挿入往復金型62のみを放射方向に移動し(b。第一中間位置)、次に挿入起伏金型72を傾動軸67周りに回動させて先端73を下げながら、挿入往復金型62と挿入起伏金型72の両方を放射方向に移動する(c~e)。次に、この位置(e。第二中間位置)から挿入往復金型62の傾斜を止めて挿入往復金型62と挿入起伏金型72の両方を放射方向に移動して、脱型位置まで移動する(f)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじれを有する単位羽根の多数を回転軸の回りに回転対称に配置した羽根群を、前記回転軸と中心を合わせた第一円板と第二円板とで挟んで形成した構造の樹脂製の送風ファンを、一体で成形する金型であって、以下のように構成したことを特徴としたねじり羽根を備える送風ファンの成形金型。
(1) 前記送風ファンの前記単位羽根は、放射側の外縁が前記第一円板および第二円板の外周付近に位置し、かつ、前記単位羽根の回転軸側の内縁は前記回転軸から半径方向および前記各円板の外周方向に対して、斜めに形成した。
(2) 前記成形金型は、前記第一円板の外面側を成形する第一金型と、前記第二円板の外面側を成形する第二金型とを備え、かつ前記各金型と協働して前記羽根を成形する第三金型、さらにこれらの作動を制御する制御機構を備えた。
さらに前記第三金型は、前記第一金型および前記第二金型と離接できる金型基台に内に、前記送風ファンの送風路に対応した挿入金型を備えて構成し、前記挿入金型は前記回転軸に対して求心方向および放射方向に移動できる挿入往復金型と、傾動軸の回りに起伏傾動して、「起」位置から「伏」位置まで移動可能となる挿入起伏金型とを積層した構造とした。
(3) 前記制御機構は、前記第一金型、第二金型および第三金型が、閉じた「成形位置」と、開いた「脱型位置」とをとることができるように構成した。
さらに前記制御機構は、前記第三金型の挿入金型、が前記回転軸に近づき成形する「成形位置」と、前記第一円板および第二円板の外周よりも放射方向に位置する「脱型位置」とをとり、かつ前記挿入金型が前記成形位置と前記脱型位置との間を移動可能となるように構成した。
(4) 前記制御機構は、前記挿入起伏金型が成形位置に留まり、前記挿入往復金型のみを放射方向に所定位置まで移動させ、続いて前記挿入起伏金型が徐々に中心側が挿入往復金型側に向かうように傾動軸回りに傾動させながら、同時に前記挿入往復金型を放射方向に移動させるように構成した。
【請求項2】
ねじれを有する単位羽根の多数を回転軸の回りに回転対称に配置した羽根群を、前記回転軸と中心を合わせた第一円板と第二円板とで挟んで形成した構造の樹脂製の送風ファンを、一体で成形する金型であって、以下のように構成したことを特徴としたねじり羽根を備える送風ファンの成形金型。
(1)前記送風ファンの前記単位羽根は、放射側の外縁が前記第一円板および第二円板の外周付近に位置し、かつ、前記単位羽根の回転軸側の内縁は前記回転軸から半径方向および前記各円板の外周方向に対して、斜めに形成した。
さらに前記単位羽根の中心側の端と放射側の端を結ぶ仮想弦線として、前記単位羽根は、前記仮想弦線に対して中間部が一方向に凸となるように形成され、
かつ、前記単位羽根で、前記羽根が前記第一円板側の仮想弦線を第一仮想弦線と、前記羽根が前記第二円板と接する側の第二仮想弦線とした場合、前記「第一仮想弦線」と前記「第二仮想弦線」とが前記回転軸方向で交差するように配置された。
(2)前記成形金型は、前記第一円板の外面側を成形する第一金型と、前記第二円板の外面側を成形する第二金型とを備え、かつ前記各金型と協働して前記羽根を成形する第三金型、さらにこれらの作動を制御する制御機構を備えた。
さらに前記第三金型は、前記第一金型および前記第二金型と離接できる金型基台に内に、前記送風ファンの送風路に対応した挿入金型を備えて構成し、前記挿入金型は前記回転軸に対して求心方向および放射方向に移動できる挿入往復金型と、傾動軸の回りに起伏傾動して、「起」位置から「伏」位置まで移動可能となる挿入起伏金型とを積層した構造とした。
(3)前記制御機構は、前記第一金型、第二金型および第三金型が、閉じた「成形位置」と、開いた「脱型位置」とをとることができるように構成した。
さらに前記制御機構は、前記第三金型の挿入金型が、前記回転軸に近づき成形する「成形位置」と、前記第一円板および第二円板の外周よりも放射方向に位置する「脱型位置」とをとり、かつ前記挿入金型が前記成形位置と前記脱型位置との間を移動可能とし、前記成形位置に続き、第一中間位置、第二中間位置、および前記脱型位置と順に位置できるように構成した。
(4)前記制御機構は、前記挿入金型の成形位置から第一中間位置において、前記挿入起伏金型が成形位置に留まり、前記挿入往復金型のみが放射方向に所定位置まで移動するように構成した。さらに前制御機構は、前記挿入金型の前記第一中間位置から前記第二中間位置において、前記挿入往復金型および挿入起伏金型を放射方向に所定位置まで移動させ、かつ同時に、前記挿入起伏金型を傾動軸回りに徐々に中心側が挿入往復金型側に向かい所定位置まで傾斜させるように構成した。さらに前記制御機構は、前記挿入金型の第二中間位置から脱型位置において、前記挿入起伏金型の所定位置での傾斜状態を維持して、前記挿入往復金型および前記挿入起伏金型を放射方向に移動させるように構成した。
【請求項3】
以下のように構成したことを特徴とした請求項1または請求項2に記載したねじり羽根を備える送風ファンの成形金型。
(1) 挿入往復金型内に、回転軸方向に移動する操作部材を設け、挿入起伏金型内に前記操作部材の一端が当接する操作凹面を形成して、
(2) 制御機構は、成形位置から第一中間位置までは前記操作部材が前記操作凹面を押圧せず、かつ第一中間位置に至ったならば、前記操作部材の一端が前記操作凹面を押圧して、前記挿入起伏金型を傾動軸周りに傾動させるように制御し、かつ挿入起伏金型と挿入往復金型とを放射方向に移動するように構成した。
【請求項4】
以下のように構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載したねじり羽根を備える送風ファンの成形金型。
(1)送風ファンの軸と同軸に回転できる連結円環部材を第一金型、第二金型および第三金型と干渉しない位置に配置する。
(2)前記連結円環部材の一点とリンクロッドの一端部とを軸止めし、前記リンクロッドの他端部と挿入往復金型とを軸止めした。
【請求項5】
ねじれを有する単位羽根の多数を回転軸の回りに回転対称に配置した羽根群を、前記回転軸と中心を合わせた第一円板と第二円板とで挟んで形成した構造の樹脂製の送風ファンを、成形金型で一体に成形する成形方法であって、以下のように構成したことを特徴としたねじり羽根を備える送風ファンの成形方法。
(1)前記送風ファンの前記単位羽根は、放射側の外縁が前記第一円板および第二円板の外周付近に位置し、かつ、前記単位羽根の回転軸側の内縁は前記回転軸から半径方向および前記各円板の外周方向に対して、斜めに形成した。
(2)前記成形金型は、前記第一円板の外面側を成形する第一金型と、前記第二円板の外面側を成形する第二金型とを備え、かつ前記各金型と協働して前記単位羽根を成形する第三金型とを備えた。
前記第三金型は、前記第一金型および前記第二金型と離接できる金型基台に内に、前記送風ファンの送風路に対応した挿入金型を備えて構成し、前記挿入金型は前記回転軸に対して求心方向および放射方向に移動できる挿入往復金型と、前記挿入金型に備えた傾動軸の回りに起伏傾動して、「起」位置から「伏」位置まで移動可能となるような挿入起伏金型とを積層した構造とした。
(3)前記成形金型を閉じて、送風ファンを成形した後に、以下のように成形金型を操作して、成形する。
(a)前記第一金型、第二金型および第三金型を閉じて、金型内に樹脂を成形して送風ファンを成形する。
(b)続いて、前記挿入起伏金型を成形位置に留めて、前記挿入往復金型のみを成形位置から第一中間位置まで放射方向に移動させる。
(c)続いて、第一中間位置に至ったならば、挿入起伏金型の留めを解除して、挿入起伏金型を傾動軸周りに回転させ、挿入起伏金型の回転軸側を挿入往復金型側に徐々に傾斜させながらかつ前記挿入起伏金型と前記挿入往復金型とを、第二中間位置まで放射方向に移動させる。
(d)続いて、第二中間位置に至ったならば、前記挿入起伏金型の回動を止め、あるいは前記挿入起伏金型の回動を続けて、前記挿入起伏金型と前記挿入往復金型とを、脱型位置まで移動する。
(e)前記前記挿入起伏金型と前記挿入往復金型とを脱型位置に移動させる動作の前後に、あるいは、同時に、前記第一金型および前記第二金型を脱型位置に移動させる。
(f)前記挿入起伏金型、前記挿入往復金型、前記第一金型および前記第二金型が脱型位置に至った状態で、成形した送風ファンを前記成形金型から取り出す。
(g)続いて、前記前記挿入起伏金型、前記挿入往復金型、前記第一金型および前記第二金型を成形位置に戻す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の単位羽根を有する樹脂製の送風ファンを成形する際に使用する成形金型で、単位羽根にねじりを有する場合に適する送風ファンの成形金型および送風ファンの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の送風ファンでは、多数の単位羽根を並べて、これを第一円板と第二円板とで挟んだ構造で、単位羽根の間に送風路を形成していた。また、送風ファンでは風量や風圧を高めるために、単位羽根の枚数や屈曲形状が複雑になっていた。
このような送風ファンを成形する場合、一般的には、単位羽根に第一円板または第二円板を一体に成形し、これに別途成形した第二円板または第一円板を接着剤で接合し、あるいは超音波振動で接合して、製造していた。しかし、接合面が弱くなる場合があるので、一体で成形する技術が提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
このような送風ファンを一体成形で成形する場合、送風ファンでは、外周に較べて中心側の厚さ(第一円板と第二円板の距離)が厚くなっており、成形した送風ファンの送風路から単位羽根を成形した挿入金型が抜けないため、工夫が必要であった、例えば、その挿入金型を送風路から抜くために、厚さ方向に2つに分割して、一旦、一方の金型の先端側を傾斜させて、金型の先端部の厚さを低くした後に、続いて金型全体を放射方向に移動させて金型を抜いていた(特許文献1)。さらに、送風ファンの回転軸側の厚さがより厚くなった場合や、羽根の屈曲が大きくなった場合には、挿入金型を3つに分割して、2つの分割した金型の中心側をより低く傾斜させた後に金型全体を放射方向に開く構造も提案されていた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-148562号公報
【特許文献2】特開2017-87706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、羽根にねじりを形成した送風ファンの場合、挿入金型を分割して中心側を傾斜するだけでは、送風路から金型を抜くことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、挿入金型を分割して中心側を傾斜可能な構造とすると共に、徐々に傾斜させながら挿入金型全体を往復移動可能としたので、前記問題を解決した。
【0007】
即ちこの成形金型の第一の発明は、ねじれを有する単位羽根の多数を回転軸の回りに回転対称に配置した羽根群を、前記回転軸と中心を合わせた第一円板と第二円板とで挟んで形成した構造の樹脂製の送風ファンを、一体で成形する金型であって、以下のように構成したことを特徴としたねじり羽根を備える送風ファンの成形金型である。
(1) 前記送風ファンの前記単位羽根は、放射側の外縁が前記第一円板および第二円板の外周付近に位置し、かつ、前記単位羽根の回転軸側の内縁は前記回転軸から半径方向および前記各円板の外周方向に対して、斜めに形成した。
(2) 前記成形金型は、前記第一円板の外面側を成形する第一金型と、前記第二円板の外面側を成形する第二金型とを備え、かつ前記各金型と協働して前記羽根を成形する第三金型、さらにこれらの作動を制御する制御機構を備えた。さらに前記第三金型は、前記第一金型および前記第二金型と離接できる金型基台に内に、前記送風ファンの送風路に対応した挿入金型を備えて構成し、前記挿入金型は前記回転軸に対して求心方向および放射方向に移動できる挿入往復金型と、傾動軸の回りに起伏傾動して、「起」位置から「伏」位置まで移動可能となる挿入起伏金型とを積層した構造とした。
(3) 前記制御機構は、前記第一金型、第二金型および第三金型が、閉じた「成形位置」と、開いた「脱型位置」とをとることができるように構成した。さらに前記制御機構は、前記第三金型の挿入金型、が前記回転軸に近づき成形する「成形位置」と、前記第一円板および第二円板の外周よりも放射方向に位置する「脱型位置」とをとり、かつ前記挿入金型が前記成形位置と前記脱型位置との間を移動可能となるように構成した。
(4) 前記制御機構は、前記挿入起伏金型が成形位置に留まり、前記挿入往復金型のみを放射方向に所定位置まで移動させ、続いて前記挿入起伏金型が徐々に中心側が挿入往復金型側に向かうように傾動軸回りに傾動させながら、同時に前記挿入往復金型を放射方向に移動させるように構成した。
【0008】
また、成形金型の第二の発明は、ねじれを有する単位羽根の多数を回転軸の回りに回転対称に配置した羽根群を、前記回転軸と中心を合わせた第一円板と第二円板とで挟んで形成した構造の樹脂製の送風ファンを、一体で成形する金型であって、以下のように構成したことを特徴としたねじり羽根を備える送風ファンの成形金型である。
(1)前記送風ファンの前記単位羽根は、放射側の外縁が前記第一円板および第二円板の外周付近に位置し、かつ、前記単位羽根の回転軸側の内縁は前記回転軸から半径方向および前記各円板の外周方向に対して、斜めに形成した。さらに前記単位羽根の中心側の端と放射側の端を結ぶ仮想弦線として、前記単位羽根は、前記仮想弦線に対して中間部が一方向に凸となるように形成され、かつ、前記単位羽根で、前記羽根が前記第一円板側の仮想弦線を第一仮想弦線と、前記羽根が前記第二円板と接する側の第二仮想弦線とした場合、前記「第一仮想弦線」と前記「第二仮想弦線」とが前記回転軸方向で交差するように配置された。
(2)前記成形金型は、前記第一円板の外面側を成形する第一金型と、前記第二円板の外面側を成形する第二金型とを備え、かつ前記各金型と協働して前記羽根を成形する第三金型、さらにこれらの作動を制御する制御機構を備えた。さらに前記第三金型は、前記第一金型および前記第二金型と離接できる金型基台に内に、前記送風ファンの送風路に対応した挿入金型を備えて構成し、前記挿入金型は前記回転軸に対して求心方向および放射方向に移動できる挿入往復金型と、傾動軸の回りに起伏傾動して、「起」位置から「伏」位置まで移動可能となる挿入起伏金型とを積層した構造とした。
(3)前記制御機構は、前記第一金型、第二金型および第三金型が、閉じた「成形位置」と、開いた「脱型位置」とをとることができるように構成した。さらに前記制御機構は、前記第三金型の挿入金型が、前記回転軸に近づき成形する「成形位置」と、前記第一円板および第二円板の外周よりも放射方向に位置する「脱型位置」とをとり、かつ前記挿入金型が前記成形位置と前記脱型位置との間を移動可能とし、前記成形位置に続き、第一中間位置、第二中間位置、および前記脱型位置と順に位置できるように構成した。
(4)前記制御機構は、前記挿入金型の成形位置から第一中間位置において、前記挿入起伏金型が成形位置に留まり、前記挿入往復金型のみが放射方向に所定位置まで移動するように構成した。さらに前制御機構は、前記挿入金型の前記第一中間位置から前記第二中間位置において、前記挿入往復金型および挿入起伏金型を放射方向に所定位置まで移動させ、かつ同時に、前記挿入起伏金型を傾動軸回りに徐々に中心側が挿入往復金型側に向かい所定位置まで傾斜させるように構成した。さらに前記制御機構は、前記挿入金型の第二中間位置から脱型位置において、前記挿入起伏金型の所定位置での傾斜状態を維持して、前記挿入往復金型および前記挿入起伏金型を放射方向に移動させるように構成した。
【0009】
また、前記成形金型の発明において、以下のように構成したことを特徴としたねじり羽根を備える送風ファンの成形金型である。
(1) 挿入往復金型内に、回転軸方向に移動する操作部材を設け、挿入起伏金型内に前記操作部材の一端が当接する操作凹面を形成して、
(2) 制御機構は、成形位置から第一中間位置までは前記操作部材が前記操作凹面を押圧せず、かつ第一中間位置に至ったならば、前記操作部材の一端が前記操作凹面を押圧して、前記挿入起伏金型を傾動軸周りに傾動させるように制御し、かつ挿入起伏金型と挿入往復金型とを放射方向に移動するように構成した。
【0010】
また、前記成形金型の発明において、以下のように構成したことを特徴とするねじり羽根を備える送風ファンの成形金型である。
(1)送風ファンの軸と同軸に回転できる連結円環部材を第一金型、第二金型および第三金型と干渉しない位置に配置する。
(2)前記連結円環部材の一点とリンクロッドの一端部とを軸止めし、前記リンクロッドの他端部と挿入往復金型とを軸止めした。
【0011】
さらに成形方法の発明は、ねじれを有する単位羽根の多数を回転軸の回りに回転対称に配置した羽根群を、前記回転軸と中心を合わせた第一円板と第二円板とで挟んで形成した構造の樹脂製の送風ファンを、成形金型で一体に成形する成形方法であって、以下のように構成したことを特徴としたねじり羽根を備える送風ファンの成形方法である。
(1)前記送風ファンの前記単位羽根は、放射側の外縁が前記第一円板および第二円板の外周付近に位置し、かつ、前記単位羽根の回転軸側の内縁は前記回転軸から半径方向および前記各円板の外周方向に対して、斜めに形成した。
(2)前記成形金型は、前記第一円板の外面側を成形する第一金型と、前記第二円板の外面側を成形する第二金型とを備え、かつ前記各金型と協働して前記単位羽根を成形する第三金型とを備えた。さらに前記第三金型は、前記第一金型および前記第二金型と離接できる金型基台に内に、前記送風ファンの送風路に対応した挿入金型を備えて構成し、前記挿入金型は前記回転軸に対して求心方向および放射方向に移動できる挿入往復金型と、前記挿入金型に備えた傾動軸の回りに起伏傾動して、「起」位置から「伏」位置まで移動可能となるような挿入起伏金型とを積層した構造とした。
(3)前記成形金型を閉じて、送風ファンを成形した後に、以下のように成形金型を操作して、成形する。
(a)前記第一金型、第二金型および第三金型を閉じて、金型内に樹脂を成形して送風ファンを成形する。
(b)続いて、前記挿入起伏金型を成形位置に留めて、前記挿入往復金型のみを成形位置から第一中間位置まで放射方向に移動させる。
(c)続いて、第一中間位置に至ったならば、挿入起伏金型の留めを解除して、挿入起伏金型を傾動軸周りに回転させ、挿入起伏金型の回転軸側を挿入往復金型側に徐々に傾斜させながらかつ前記挿入起伏金型と前記挿入往復金型とを、第二中間位置まで放射方向に移動させる。
(d)続いて、第二中間位置に至ったならば、前記挿入起伏金型の回動を止め、あるいは前記挿入起伏金型の回動を続けて、前記挿入起伏金型と前記挿入往復金型とを、脱型位置まで移動する。
(e)続いて、前記前記挿入起伏金型と前記挿入往復金型とを脱型位置に移動させる動作の前後に、あるいは、同時に、前記第一金型および前記第二金型を脱型位置に移動させる。
(f)続いて、前記挿入起伏金型、前記挿入往復金型、前記第一金型および前記第二金型が脱型位置に至った状態で、成形した送風ファンを前記成形金型から取り出す。
(g)続いて、前記前記挿入起伏金型、前記挿入往復金型、前記第一金型および前記第二金型を成形位置に戻す。
【0012】
前記において、「前記単位羽根で、前記羽根が前記第一円板側の仮想弦線を第一仮想弦線と、前記羽根が前記第二円板と接する側の第二仮想弦線とした場合、前記「第一仮想弦線」と前記「第二仮想弦線」とが前記回転軸方向で交差する位置に配置された。」とは、羽根にいわゆるねじれが生じている状態をいう。
【0013】
また、前記における「一体」とは、複数回の成形工程により成形した部品を機械的に(物理的に)貼り合わせ、あるいは複数回の成形工程により半成形品に追加的に二次成形をする工程を含まない製造をいう。
【発明の効果】
【0014】
樹脂製の送風ファンの成形予定の送風路部分に位置して、送風ファンの単位羽根を成形する挿入金型を特殊構造とした。すなわち、回転軸に対して求心放射方向に移動できる挿入金型を、挿入往復金型と挿入起伏金型とを積層して構成して、挿入往復金型のみを放射方向に移動可能として、かつ挿入起伏金型挿入を挿入往復金型の傾動軸周りに回転自在とした。
したがって、挿入往復金型を放射方向に移動させつつ同時に挿入起伏金型を傾斜させることがきる。よって、従来、一体成形できなかったねじれた単位羽根を備える送風ファンで、簡易な金型構造で、一体成形できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施により製造される送風ファンの斜視図である。
図2】(a)は、この発明の実施により製造される送風ファンの平面図、(b)は単位羽根の構造を概略して説明した拡大平面図である。
図3】この発明の実施により製造される送風ファンで、(a)は正面図、(b)は図2のA-A線における断面図である。
図4】この発明の実施に使用する挿入金型で、(a)は成形状態を表す平面図、(b)は成形状態を表す正面図である。
図5】(a)~(f)は、この発明の実施に使用する挿入金型の作動を説明する正面図である。
図6】この発明の実施形態の挿入金型の配置で、成形状態(閉状態)を表す平面図である。
図7】この発明の実施形態の挿入金型の配置で、同じく成形状態(閉状態)を表す斜視図である。
図8】この発明の実施形態の挿入金型の配置で、脱型状態(開放状態)を表す平面図である。
図9】この発明の実施形態の挿入金型の配置で、脱型状態(開放状態)を表す斜視図である。
図10】この発明の実施により製造される他の送風ファンの平面図である。
図11】この発明の他の実施形態(連結円環部材を使用した)で挿入金型省略した図を表し、(a)は成形状態、(b)は脱型状態の斜視図である。
図12】同じくこの発明の他の実施形態(連結円環部材を使用した)で挿入金型を表示した図を表し、(a)は脱型状態、(b)は成形状態の斜視図である。
図13】同じくこの発明の他の実施形態(連結円環部材を使用した)で一部を切断した(挿入金型を省略した)図を表し、脱型途中の状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.成形する送風ファン1の構造
【0017】
(1) この発明の金型で成形する送風ファン1は、回転軸3の周りに回転するもので、回転軸3の周りに多数(ここでは7枚)の単位羽根30、30を放射状に並べた羽根群を備え、回転軸3を共通する第一円板10の内面11と第二円板(中央開口28あり)20の内面21とで羽根群を挟んで構成する(図1図2(a))。また、隣接する単位羽根30、30の側面34、35、第一円板10の内面11、第二円板20の内面21とで囲まれた部分が送風路5、5を構成し、送風路5、5は第二円板20の中央開口28に連通している(図1図2(a))。
【0018】
(2) 第一円板10は、外周12から中心(回転軸3)に向けての所定範囲に外周側が平坦(回転軸3に対して直角な平面)な外周平坦面13が形成され、回転軸3を挿通する軸孔15を備え、第二円板20側に向けて突出した中央膨出部14が形成されている(図1図2(a)、図3(b))。
中央膨出部14は、軸孔15(回転軸3)を頂上とするなだらかな曲線状の山のような形状で、かつ回転軸3周りに回転対称に形成されている。また、中央膨出部14は第一円板10の半径の「5分の3」程度の外径で形成されている。したがって、半径方向で、外周12から軸孔15に向けて、外周平坦部13が「5分の2」程度続き、境目なくなだらかに連続して中央膨出部14に至る構造となっている(図1図2(a)、図3(b)。
第一円板10で内面11の反対側を外面11aとする。
【0019】
(3) 第二円板20は、第一円板10と同芯で、同一外径で形成され、半径方向で中心(回転軸3の位置)から「5分の4」程度まで中央開口28が形成され、第二円板20は外周22から半径方向で「5分の1」程度のリング形状であり、リング形状の部分を外周傾斜部23とする。外周傾斜部23は、外周22の最外周に平坦な(第一円板10の外周平坦面13に平行な)最外周平坦面24に続き、第一円板10から離れる方向に徐々に屈曲した傾斜面25に続き、第一円板10から最も離れる位置にリブ状の内周縁26が形成されている。傾斜面25は、階段状の同心円で徐々に第一円板10から離れる方向に屈曲して形成されている(図1図2(a)、図3(a)(b))。
第二円板20で内面21の反対側を外面21aとする。
【0020】
(4) 羽根群は、単位羽根30を7枚、回転軸3周りに並べて構成する。各単位羽根30、30は、以下のように形成されている。
【0021】
(4)(a)単位羽根30は、第一円板10側で、第一円板10との接地面、すなわち第一円板接地面37は第一円板10の外周平坦面13に位置する。
単位羽根30は、半径方向で半径とは若干角度をもって配置され、外周端31は第一円板10の外周12付近または一致した位置(すなわち、第二円板20の外周22付近または一致した位置)に位置し、回転軸3に近い内周端32も外周平坦面13に位置する(図1図2(a))。
第一円板接地面37で、単位羽根30は中間部がやや太く、両先端が徐々に細くなる形状で、両先端すなわち外周端31と内周端32とを結んだ直線を第一仮想弦38とし、第一仮想弦38に対して単位羽根30を回転軸方向に見るとその側面は一側が凸側面34、他側が凹側面35となるように屈曲した断面形状を備えている(図2(a)(b))。
第一円板接地面37で、外周端31から半径方向で、第一仮想弦38(内周端32側)は、半径と40°程度(30°~60°)傾斜して配置されている(図2(b)。
【0022】
(4)(b)単位羽根30は、この断面形状で、第一円板10(第一円板接地面37)から第二円板20に向けて徐々に厚さが薄くなるような形状で作成されている。
【0023】
(4)(c)単位羽根30で、第二円板20側の端面で、外周傾斜部23とは接地しているが、中央開口28では露出部44を形成している。外周傾斜部23とは接地部分と、露出部44で第二円板20側の端面とを含めて、第二円板接地面41とする。
したがって、第二円板接地面41でも、単位羽根30は中間部がやや太く、両先端が徐々に細くなる形状で、両先端すなわち外周端31と内周端32とを結んだ直線を第二仮想弦42とし、第二仮想弦42に対して単位羽根30を回転軸方向に見るとその側面は一側が凸側面34、他側が凹側面35となるように屈曲した断面形状を備えている(図1図2図3)。
また、単位羽根30は、第二円板20側でも同様に、外周端31は、第二円板20の外周22に位置している(図1図2(a))。
【0024】
(4)(d)第一仮想弦38と第二仮想弦42とは、両弦の中間位置で交わるようにねじられており、回転軸3方向で、第一仮想弦38と第二仮想弦42とが交わる角度は、15°程度(10~30°程度)で形成されている(図2(b))。
したがって、外周側で第一円板10の外周平坦面13に対して、各単位羽根30、30は直角ではなく、斜めに配置されている。
【0025】
(4)(e)第一円板接地面37で、一の単位羽根30の外周端31と中心(回転軸3)とを結ぶ直線Pは、隣り合う一方の単位羽根30の内周端32付近を通るように配置されている(図2(a))。
【0026】
2.成形金型の構造
【0027】
(1) 成形金型は、第一金型(図示していない)、第二金型(図示していない)および挿入金型60、60を備える金型基台50を含む第三金型と、これらの制御機構とを備える構造である。制御機構は第一金型、第二金型、第三金型を保持する機構および作動を機械的電気的に制御する機構である。第一金型および第二金型は成形する送風ファン1の回転軸3方向に離接して、閉じて成形する成形位置(閉鎖位置)、および開いて成形した送風ファン1を取り出す脱型位置(開放位置)をとることができる。挿入金型60は、送風ファン1が備える送風路5を成形するもので、送風路5の数(=単位羽根30の数)に応じた数が回転軸3まわりに配置され、挿入金型60は回転軸3に対して求心側の成形位置(閉鎖位置)、放射側の脱型位置(開放位置)をとることができる。
【0028】
(2) 第一金型は、送風ファン1の第一円板10の外面11a、外周12の周面、軸孔15を成形するように構成されている(図1図2(a)、図3(b))。
第二金型は、送風ファン1の第二円板20の外面21a、外周22の周面、外周傾斜部23の内周面、単位羽根30の中央開口28に露出した露出部44、第一円板10の内面11で中央膨出部14付近を成形するように構成されている(図1図2(a)、図3(a)(b))。
挿入金型60は、成形する単位羽根30、30の間(送風路5内)に挿入され、単位羽根30の両側面34、35、第一円板10の内面11で外周平坦面13付近、第二円板20の内面21で外周傾斜部23付近、を成形するように構成されている(図1図2(a)、図3(b))。
【0029】
(3) 挿入金型60は、挿入往復金型62の積層面64と挿入起伏金型72の積層面74とを、互いの積層面64、74を合わせて積層した構造で、これらを保持する断面コ状の保持機構なども含む(図4)。また、挿入往復金型62と挿入起伏金型72とは、積層面64と積層面74とを密着した状態で、挿入往復金型62の往復移動方向(成形する送風ファン1の回転軸3に対して、求心側から放射側への往復移動方向。図4の矢示81方向、矢示82方向)に沿って滑らかに相対移動が可能となっている。
したがって、挿入金型60は成形位置で、挿入往復金型62と挿入起伏金型72とが、その先端63、73側(送風ファンの回転軸3側)を揃えて一体して(図4)、第一金型および第二金型と協働して送風ファン1を成形する。挿入往復金型62が第二円板20の内面21側を成形して、挿入起伏金型72が第一円板10の内面11側を成形し、挿入往復金型62の両側面66、66と挿入起伏金型72の両側面76、76とが単位羽根30を成形できる構造となっている。
【0030】
(4) 挿入往復金型62は、金型基台50の摺動面53に沿う案内部材52に挟まれて取り付けられており、また、挿入往復金型62は、その他面65(積層面64の反対側)が金型基台50の摺動面53に置かれて滑らかに求心方向・放射方向に移動できるようになっている(図4)。
また、挿入往復金型62は、金型基台50に取り付けた油圧シリンダー57により操作される。すなわち、ピストン58を放射方向(すなわち、挿入金型60移動方向)に向けた油圧シリンダー57のそのピストン58の先端が、挿入往復金型62の他面63a側の凸部69に取り付けられている。ピストン58の往復運動に伴い、挿入往復金型62が移動できるように制御されている(図4)。また、油圧シリンダー57は、1つの挿入往復金型(挿入金型)に対して1つ配置されている。
【0031】
(5) また、挿入往復金型62の移動方向の中間部で、挿入往復金型62と挿入往復金型72の積層方向(回転軸3の方向)に、貫通孔を形成して(図示していない)、貫通孔内に貫通孔方向に長い操作部材68を摺動自在に挿入してある。操作部材68はその軸方向に摺動して、一端68aを操作往復金型62の積層面64から突出でき、また他端68bを挿入往復金型62の積層面64の他側である他面65から突出できるように、構成されている。なお、操作部材68の軸方向の移動は、金型基台50の摺動面53に形成した押圧部材54などにより操作される(図4)。
【0032】
(6) また、挿入起伏金型72の基端73a側の位置に傾動軸67が設けられ、傾動軸67は、挿入金型60の保持部材(図示していない)に、挿入起伏金型72が回動できるように保持されている(軸支されても良い)。傾動軸67は、挿入往復金型62の往復方向(すなわち、挿入起伏金型72と挿入往復金型62とが積層面74、64で密着して相対移動する方向)とは直角で、かつ回転軸3の軸方向とも直角の方向に配置されている。
また、挿入起伏金型72の傾動軸67は、挿入往復金型62に対して、挿入起伏金型72が傾動軸67周りに回動自在となるように、形成されている。すなわち、挿入起伏金型72は先端73側(送風ファン1の回転軸3側)が傾動軸67を中心にして起伏できる構造となっている(図4)。
【0033】
(7) また、挿入起伏金型72の積層面74には、積層面74の反対側の他面75に向けた凹部が形成され(凹部の開口は積層面74に向いている)、挿入起伏金型72(挿入往復金型62)の往復移動方向で凹部の中間部から基端側に向けて、成形位置で、傾動軸67を越えたあたりまで操作平坦面77が形成され、操作平坦面77から連続して、挿入起伏金型72の基端73a側に操作凹面78が形成されている。操作凹面78は、部分円状の凹曲面状で、挿入起伏金型72の基端73a側(積層面74付近で)積層面74と直角に近い角度(60°~90°程度)で至っており、積層面74付近が、操作凹面78の基端78aとなっている(図4(b))。
【0034】
(8) また、成形位置における挿入往復金型62の先端63の位置(成形する送風ファン1の回転軸3側)の位置を「ゼロ」として、この位置から移動した挿入往復金型62の先端63放射方向の距離をLとする。また、成形位置での挿入起伏金型72の傾斜を「ゼロ」として(図5では積層面74と略平行)の位置からの挿入起伏金型72の傾斜をθとする(図5)。
【0035】
3.送風ファン1の成形
【0036】
(1) この実施形態で成形する送風ファン1は、例えば、
送風ファン1の外径D=460mm、
送風ファン1の最大高さH=130mm
程度である(図2(a)、図3(a))。なお、最大高さDは、第一円板10の外面11aから第二円板20の内周21の縁(外周傾斜部23で、第一円板10から最も遠い位置)までの長さをいう。
【0037】
(2) 制御機構(図示していない)を操作して以下のような状態とする。すなわち、第三金型の金型基台50で、挿入金型60、60が最も回転軸3に近づく求心方向に位置しており、この状態で各挿入往復金型62の先端63と挿入起伏金型72の先端73を揃えた状態とした成形位置(求心位置)としてある(図5(a)、図4)。また、第一金型および第二金型も互いに、挿入金型60、6(金型基台50、第三金型)に近づき閉じて、成形位置としてある。この状態で成形金型内に樹脂を注入して、送風ファン1を成形する。
【0038】
(3) 成形完了後、挿入金型60を脱型位置に移動させる操作(制御機構の作動)について、(a)~(f)で説明する。
【0039】
(3)(a)成形位置 図5(a) L0=0、θ0=0°
挿入金型60が最も回転軸3に近づいている成形位置では、成形された送風ファン1には、第一円板10に中央膨出部14が形成され、第二円板20に外周傾斜部23が形成され、各単位羽根30、30がねじった形状および配置としてあるので、このままでは、挿入金型60を放射状に移動しても、成形した送風ファン1の送風路5から挿入金型60を抜くことはできない。
以下の(b)~(f)の作動に先立ちあるいは(b)~(f)の作動と同時期に、第三金型(金型基台50、挿入金型60、60)に対して、第一金型および第二金型を開く(図示していない)。
【0040】
(3)(b)第一移動位置(第一中間位置) 図5(b) L1、θ1=0°
送風ファン1の成形が完了したならば、油圧シリンダー57を作動させ、ピストン58を矢示83方向に伸ばして挿入往復金型62を放射方向(矢示81方向)に、移動させる(図5(a)から図5(b)まで)。
この際に、挿入往復金型62の操作部材68は挿入往復金型62とともに移動するが、操作部材68の他端68bは金型基台50の摺動面53の押圧部材(図示していない)に触れずに積層面64内に位置し、かつ操作部材68の一端68aは、往復方向で操作平坦面77付近に位置して、かつ操作部材68の一端68aは積層面64から突出せず、または突出していても挿入起伏金型72の操作平坦面77に当接せずに、わずかに離れるように制御されている。よって、挿入起伏金型72は、操作部材68(挿入往復金型62)とは連動せず、かつ挿入起伏金型72の先端72付近が成形された送風ファン1に掛かっており、成形位置に留まって傾動もせずに移動もしない。
したがって、上記油圧シリンダー57の矢示83方向の作動により、挿入往復金型62のみが放射方向(矢示81方向)にL1まで移動する(図4)。
L1=100mm
【0041】
(3)(c)第二移動位置 図5(c) L2、θ2
引き続き、油圧シリンダー57が作動しており、ピストン58を矢示83方向に移動させ(図4)、挿入往復金型62の先端が放射方向(矢示81方向)でL1から少々L2まで移動する(図5(b)から図5(c)まで)。
L2=110mm
この際、挿入往復金型62の先端がL1を通過したところで、挿入往復金型62と共に移動している操作部材68の他端68bが摺動面53の押圧部材(図示していない)に当接して、押圧部材が操作部材68を軸方向で一端68a側に若干移動させ、操作部材68の一端68aを挿入起伏金型72の操作凹面78に当接させる。さらに、挿入往復金型62の移動にしたがって押圧部材に乗った操作部材68の一端68aが操作凹面78を押圧し続け、操作部材68の一端68aに押されて操作凹面78に沿って、挿入起伏金型72は傾動軸67周りに回動して、挿入起伏金型72の先端73をθ2まで傾斜させる。
θ2=3°
したがって、挿入起伏金型72は、操作部材68の一端68aが操作凹面78を押圧しているので、操作部材68に引かれて、挿入往復金型62と共に第二移動位置まで移動する。
【0042】
(3)(d)第三移動位置 図5(d) L3、θ3
引き続き、油圧シリンダー57が矢示83方向に作動しており、挿入往復金型62の先端63がL2から少々L3まで放射方向(矢示81方向)に移動する(図5(c)から図5(d)まで)。
L3=130mm
この際、引き続き、押圧部材が操作部材68の他端68bを押圧し続け、挿入往復金型62と共に移動している操作部材68の先端68aが挿入起伏金型62の操作凹面78を押圧し続けるので、挿入起伏金型72は更に傾動軸67周りに回動して、挿入起伏金型62の先端73をθ3まで傾斜させる。
θ3=7°
したがって、挿入起伏金型62は、操作部材68の一端68aが操作凹面78を押圧しているので、操作部材68に引かれながら、挿入往復金型62と共に第三移動位置まで移動する。
【0043】
(3)(e)第四移動位置(第二中間位置) 図5(e) L4、θ4
引き続き、油圧シリンダー57が作動しておりピストン58を矢示83方向に移動させ、挿入往復金型62の先端63が放射方向(矢示81方向)でL3から少々L4まで移動する(図5(d)から図5(e)まで)。
L4=150mm
この際、引き続き、押圧部材が操作部材68の他端68bを押圧し続け、挿入往復金型62と共に移動している操作部材68の先端68aが挿入起伏金型72の操作凹面78を押圧し続け、挿入起伏金型72は更に傾動軸周りに回動して、挿入起伏金型72の先端72をθ4まで傾斜させる。
θ4=12°
したがって、挿入起伏金型72は、操作部材68の一端68aが操作凹面78を押圧しているので、操作部材68に引かれながら、挿入往復金型62と共に第四移動位置まで移動する。
【0044】
(3)(f)脱型位置 図5(f) L5、θ5
第四移動位置(図5(e))に達した状態で、挿入起伏金型72の先端73側が、成形した送風ファン1との係止から逃れた状態となる。また、第四移動位置(図5(e))に達した状態で、挿入往復金型62の操作部材68の一端68aは挿入起伏金型62の操作凹面78の基端78aに位置し、操作部材68は操作凹面78の基端78aに係止して、これ以上挿入起伏金型72を傾動させるように押圧はできない状態となっている。よって、
θ4=θ5=12°
である。
したがって、引き続き、油圧シリンダー57が作動しておりピストン58は矢示83方向に移送しており、挿入往復金型62の先端63がL4からL5となるまで、挿入往復金型62と挿入起伏金型72とが同時に放射方向(矢示83方向)に移動する。この際、挿入起伏金型72の起伏動作はなく、第四移動位置での起伏角度を維持している。
L5=215mm
L5の状態となった段階で、挿入金型60(挿入往復金型62および挿入起伏金型72)は、成形した送風ファン1の送風路5から脱出し、したがって、挿入金型50の先端(挿入往復金62の先端63および挿入起伏金型72の先端73)は、第一円板10の外周12および第二円板20の外周22よりも放射方向に位置する。
【0045】
(4) 挿入金型60が脱型位置(図5(f))となった状態で、これと前後して、あるいは同時に、第一金型と第二金型も開いて、脱型状態になっている。よって、送風ファン1を成形金型から取り出す(脱型する)。
なお、成形位置(図5(a))から脱型位置(図5(f))への挿入往復金型62および挿入起伏金型72の一連の動きは、油圧シリンダー57のピストン58を打ち出す動作(矢示83方向。図4(b))にしたがって、滑らかに進む。
【0046】
(5) 続いて、成形した送風ファン1を成形金型から取り出したならば、次の成形操作にむけて、シリンダー57を逆に作動させ、ピストン58を引けば(矢示84方向に移動させる。図4)、脱型位置(図5(f)、図8図9)から挿入金型50が矢示82方向に移動して(図8)、成形位置(図5(a)、図6図7))に移動する。これに前後してまたは同時に第一金型および第二金型も成形位置に戻る(図示していない)。
【0047】
(6) なお、前記における挿入金型50を動かす構造(積層面64、74、傾動軸67、操作平坦面77、操作凹面78、挿操作部材68などを含む)、金型基台50を動かす構造、シリンダー57を動かす構造、第一金型および第二金型を動かす構造、およびこれらを作動させるソフトウエアなどが制御機構を構成する。
【0048】
3.他の実施形態
【0049】
(1) 前記実施形態において、成形される送風ファン1において、送風路5内であって、単位羽根30の内周端32の近傍と、第一円板10の内面11(外周平坦部13)の中央膨出部14近傍と、中央膨出部14の単位羽根30の内周端32近傍とに、第二円板側(中央開口28側)に膨出して段差を埋めて滑らかにする形状とした送風路均し部6を形成することもできる(図10)。この場合には、送風均し部6に対応して、挿入金型60の挿入往復金型62および挿入起伏金型72の先端63、73側の形状、第一金型の形状を構成する(図示していない)。
【0050】
(2) また、前記実施形態において、成形される送風ファン1の構成において、単位羽根20にねじりが形成されていれば、単位羽根20の枚数、回転軸3方向単独の単位羽根20の屈曲、回転軸3方向と直角の方向単独での単位羽根20の屈曲は任意である(図示していない)。また、第一円板10、第二円板20に放射状の凹凸が形成されているなど第一円板10、第二円板20の構成も任意であり、従来の他の構造を採用することもできる(図示していない)。
また、直線Pに対して、隣り合う他の単位羽根30隣り合う単位羽根30の内周端32が離れていても、あるいはその単位羽根30が直線Pと交叉してしていても構わない(図示していない)。
【0051】
(3) また、前記実施形態の挿入金型50の制御おいて、第四移動位置(第二中間位置)を経由して、それ以降を挿入起伏金型72の傾斜を固定して、脱型位置に移動させた。しかし、成形する送風ファン1の構造によっては、第三移動位置から継続して、挿入起伏金型72の傾斜を進めながら挿入起伏金型72と挿入往復金型62とを放射方向(矢示83方向)に移動させて、脱型位置まで移動させることもできる(図示していない)。
【0052】
(4) また、前記実施形態において、挿入金型50の制御おいて、各挿入往復金型62(挿入金型60)の求心、放射方向の往復運動をより滑らかに行うために連結円環部材90を設けることもできる(図11図13)。
連結円環部材90(断面凹)は、一面に真円の真円溝91を形成してあり、真円溝91の内周縁および外周縁はともに真円に形成されている。また、真円溝91の中心軸は、往復運動をする挿入往復金型62、62の中心、すなわち成形予定の送風ファン1の回転軸3と同芯に形成されている。また、真円溝91内に連結円板(連結円環部材)92を円周方向に嵌合して、連結円板92は真円溝91内を滑らかに円移動できるように形成されている。したがって、連結円板92の内周縁および外縁円も真円で、連結円板92の軸も成形予定の送風ファン1の回転軸3と同芯に形成してある。連結円環部材90は金型基台50内に配置され、取り付けられている。
また、挿入往復金型62の数に応じたリンクロッド94を用意し、連結円板92上の1点に、各リンクロッド94の一端部を均等に配置し、かつ連結して軸支(回転自在)し、各リンクロッド94の他端部を対応する各挿入往復金型62の他面65かつ他面63a側の凸部69に連結軸支(回転自在)する。したがって、凸部69に油圧シリンダー57のピストン58が連結されているので、ピストン58、58が一斉(同時)に摺動して、同時に真円溝91内で連結円板92が滑らかに回転する。したがって、ピストン58の往復運動に対応して挿入往復金型62が求心放射方向に移動し、これが真円溝91内で連結円板92の滑らかに回転に案内されるので、総ての挿入往復金型62の滑らかな往復運動が案内される。
連結円環部材90、連結円板(連結円環部材)92、リンクロッド94は、挿入往復金型62の他面65と、油圧シリンダー57およびピストン58の間の間隙89内に配置され(図4(b))、かつ第一金型((図示していない)、第二金型(図示していない)および第三金型(挿入金型60)と干渉せず、かつ当然ながら送風ファン1の成形に干渉しない位置に配置される。なお、図4(b)における連結円環部材90、連結円板(連結円環部材)92、リンクロッド94は、配置位置が間隙89内にあることを概略図示したものであり、実際の寸法とは必ずしも一致していない。
また、連結円環部材90は、成形される送風ファン1の外周外径Dより若干大きく形成して配置されることが好ましい。たとえば、前記のように外径D=460mmの場合、連結円環部材90の真円溝の径、すなわち連結円板92の径は、570mm程度に形成される。
【0053】
(5) 上記(4)の場合、前記実施形態と同様に作動して、挿入金型60および他の金型を閉じて送風ファン1を成形し(図11(a)、図12(b))、同様に制御して挿入往復金型62および挿入起伏金型72を送風ファン1の送風路5から抜いて(図11(b)、図12(a))、送風ファン1を取り出す(図1図3)。
この際、通常は、図11および図12で、上側が上を向けて配置されている(すなわち、真円溝91の中心軸や送風ファン1の中心軸3は水平に配置されている)ので、上側と下側で油圧シリンダー57およびピストン58の負荷が異なるが、前記連結円環部材90、連結円板(連結円環部材)92、リンクロッド94の作動により、異なる負荷を吸収して、挿入金型60の求心方向放射方向の動きをさらに滑らかに行うことができる。
【0054】
(6)前記(4)(5)の場合、リンクロッド94を連結した連結円板92を金型基台50に取り付けた連結円環部材90の真円溝91に嵌合したが、円運動ができる連結円環部材にリンクロッド94を取り付ければ、他の構造とすることもできる。例えば、リンクロッド94を連結円環部材90に取り付け、連結円環部材90の真円溝91に嵌挿した連結円板92を金型基台50に取り付けることもできる(図示していない)。
【符号の説明】
【0055】
1 送風ファン
3 送風ファンの回転軸
5 送風ファンの送風路
6 送風路の送風路均し部
10 送風ファンの第一円板
11 第一円板の内面
11a 第一円板の外面
12 第一円板の外周
13 第一円板の外周平坦部
14 第一円板の外周平坦面
15 第一円板の軸孔
20 送風ファンの第二円板
21 第二円板の内面
21a 第二円板の外面
22 第二円板の外周
23 第二円板の外周傾斜部
24 第二円板の外周傾斜部の最外周平坦部
25 第二円板の外周傾斜部の傾斜面
26 第二円板の外周傾斜部の内周縁
28 第二円板の中央開口
30 送風ファンの単位羽根
31 単位羽根の外周端
32 単位羽根の内周端
34 単位羽根の凸側面
35 単位羽根の凹側面
37 単位羽根の第一円板接地面
38 単位羽根の第一仮想弦
41 単位羽根の第二円板接地面
42 単位羽根の第二仮想弦
44 単位羽根の露出部
50 金型基台
52 金型基台の案内部材
53 金型基台の摺動面
57 金型基台の油圧シリンダー
58 金型基台の油圧シリンダーのピストン
60 挿入金型
62 挿入金型の挿入往復金型
63 挿入往復金型の先端
63a 挿入往復金型の基端
64 挿入往復金型の積層面
65 挿入往復金型の他面
66 挿入往復金型の側面
67 挿入往復金型の傾動軸
68 挿入往復金型の操作部材
68a 操作部材の一端
68b 操作部材の他端
69 挿入往復金型の他面65側の凸部
72 挿入金型の挿入起伏金型
73 挿入起伏金型の先端
73a 挿入起伏金型の基端
74 挿入起伏金型の積層面
75 挿入起伏金型の他面
76 挿入起伏金型の側面
77 挿入起伏金型の操作平坦面
78 挿入起伏金型の操作凹面
89 間隙
90 シリンダー連結部材
91 シリンダー連結部材の円溝
92 連結円環
94 リンクロッド
図1
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