(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140393
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】意匠シート
(51)【国際特許分類】
D06N 3/00 20060101AFI20220915BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
D06N3/00
B32B27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036870
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2021039078
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104906
【氏名又は名称】クラレプラスチックス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宗宮 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 達也
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA14
4F055AA15
4F055BA12
4F055BA13
4F055BA21
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4F100AK01B
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4F100AR00
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4F100DC16C
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4F100GB08
4F100HB40C
4F100JN08B
4F100JN08C
(57)【要約】
【課題】光を透過させた際、色調の変化や濃淡のある透かし模様を有した意匠及び、天井用照明膜を含むシートや、ロールブラインドで使用する上で必要な性能を兼ね備えた意匠シートを提供する。
【解決手段】 繊維基布を基材として、その少なくとも一面に樹脂層を設けた可撓性積層体を含む意匠シートであって、前記樹脂層表面に所望の模様を有したレース層が形成されており、レース層の最大高さは0.10mm~6.00mmであり、該可撓性積層体の厚さは、0.15mm以上であることを特徴とする意匠シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基布を基材として、その少なくとも一面に樹脂層を設けた可撓性積層体を含む意匠シートであって、前記樹脂層表面に所望の模様を有したレース層が形成されており、レース層の最大高さは0.10mm~6.00mmであり、該可撓性積層体の厚さは、0.15mm以上であることを特徴とする意匠シート。
【請求項2】
前記可撓性積層体は、JIS K7375試験法に準拠して測定した全光線透過率が25%から90%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の意匠シート。
【請求項3】
日本電色工業(株)分光色差計にて測定した前記レース層と前記可撓性積層体の色差ΔEが1以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の意匠シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過させた際の意匠及び天井用照明膜材や、ロールブラインドで使用するうえで必要な性能を兼ね備えた意匠シートに関する。より詳細には、レース層側より光を透過させた際、透かし模様を有した外観かつ、部分的に色調や、その濃淡の違いを楽しむことのできる意匠を有し、光源の位置により、影が生まれ深みのある外観を得ることができる採光性を有する膜材を含み、天井用照明膜やロールブラインドで使用する際に、問題のない引き裂き強度及び、吊り下げた際に、平面性のある意匠を有する意匠シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井用照明膜やロールブラインド等に使用されている膜材として、片面に光透過性樹脂被覆層が設けられ、さらに前記基材のもう一方の面に破砕ガラス粉を含有する光拡散性樹脂被覆層が設けられてなる膜材料が提案されている(特許文献1)。また、ガラス繊維基布、及びこれにフッ素共重合体からなる幹ポリマーに、フッ化ビニリデンをグラフト重合させて得た、軟質フッ素樹脂シート層を積層したシートも知られている(特許文献2)。確かにこれらのシートは適度な光透過性と光源隠蔽性とをバランス良く兼備するものではあるが、透かし模様を有した意匠や、部分的に色調やその濃淡も違いを楽しむことのできる意匠シートを得ることはできない。
【0003】
また、採光性を有する膜材料ではないが、表面にレース状の凹凸形状を有したシート・フィルムが提案されている(特許文献3~5)。これらのシートは、レース状の凹凸面から光を透過させた場合、透かし模様を得るような構成にすることは可能であるが、長期間ブラインドのような形で吊り下げを行った際に、基材の伸びに伴う「たるみ」が発生し、平面性の損なわれた意匠となってしまう。つまり、寸法安定性が不足しているため、幅広い用途展開ができない。また、引き裂き強度が低い為、照明用膜材やロールブラインドとして使用する際に、シートが裂けてしまう可能性がある。
【0004】
さらには、繊維基布の片面または、両面に熱可塑性樹脂からなる凹凸模様を有する防水層が形成され、少なくとも片面の凸部が着色された防水シートが提案されている(特許文献6)。このシートは、凸部に印刷をすることで透かし模様を再現することはできるが、樹脂層に直接凹凸形状を賦形させているため、樹脂部分の色調に変化をつけることができず、凹凸層側から光を透過させた際の、色調変化や、濃淡を表現することができない。また、特許文献6の作製方法では、凹凸高低差は、凹凸加工前のシート厚みによる制限があり、該シートの厚さ以上の凹凸を付与しようとする場合、繊維シートの変形による外観不良や破断強度、引き裂き強度等の性能が低下する等の問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5857348号公報
【特許文献2】特開平8-259637号公報
【特許文献3】実公昭59-003641号公報
【特許文献4】特公昭52-042194号公報
【特許文献5】特公昭47-049794号公報
【特許文献6】実開昭56-123235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光を透過させた際、色調の変化や濃淡のある透かし模様を有した意匠及び、天井用照明膜を含むシートや、ロールブラインドで使用する上で必要な性能を兼ね備えた意匠シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、繊維基布を基材として、その少なくとも一面に樹脂層を設けた可撓性積層体を含む意匠シートとし、さらに該意匠シートを前記樹脂層表面に所望の模様を有したレース層が形成されてなる積層シートとすることで、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、繊維基布を基材として、その少なくとも一面に樹脂層を設けた可撓性積層体を含む意匠シートであって、前記樹脂層表面に所望の模様を有したレース層が形成されており、レース層の最大高さは0.10mm~6.00mmであり、該可撓性積層体の厚さは、0.15mm以上であることを特徴とする意匠シートであり、前記可撓性積層体は、JIS K7375試験法に準拠して測定した全光線透過率が25%から90%
の範囲であり、日本電色工業(株)分光色差計にて測定した前記レース層と前記可撓性積層体の色差ΔEが1以上であることを特徴とする上記の意匠シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の意匠シートは、レース層側より光を透過させた際、透かし模様を有した外観、且つ、部分的に異なる色調や色の濃淡の違いを楽しむことのできる意匠を有している。また、光源の位置により影が生まれ、深みのある外観を得ることができ、採光性を有し、さらに十分な引き裂き強度を有する膜材であることから、天井用照明膜やロールブラインドで好適に使用でき、さらに吊り下げた際に、平面性のある意匠を有する意匠シートとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の意匠シートの断面の別の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の意匠シートは、繊維基布を基材とし、該基材の少なくとも一面に樹脂層が設けられた可撓性積層体を含み、前記樹脂層表面に所望の模様を有したレース層が形成されることを特徴とし、具体的には「レース層/樹脂層/繊維基布/樹脂層」、「レース層/樹脂層/繊維基布」の何れかの構成であることが好ましい。
【0012】
本発明の意匠シートにおいて、繊維基布を構成する繊維としては、ケナフ、コットンなどの天然繊維 、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維などの無機繊維、ビスコースレーヨン、キュプラなどの再生繊維 、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル( ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)繊維、ポリアミド( ナイロン6、ナイロン66等)繊維、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、全芳香族繊維(芳香族ポリエステル系繊維、芳香族ポリアミド系繊維、芳香族ヘテロ環ポリマー(ポリイミダゾール系、ポリオキサゾール系)繊維)、ポリ塩化ビニル繊維などの合成繊維、及びこれらの混合繊維、芯鞘繊維などが挙げられる。特に芳香族ポリエステル系、芳香族ポリアミド系、芳香族ヘテロ環ポリマー系などによる高強度繊維糸条をリップストップ併用することで得られる意匠シート本体の引裂破壊に対する耐性を増強することができる。またガラス、アルミナなどによる無機繊維糸条を用いることで得られる意匠シートは耐火性や不燃性、寸法安定性を付与することができる。
【0013】
本発明の意匠シートにおいて、繊維基布の形態としては、不織布、織物、編物、織編物等があり何ら限定されないが、織物が好適に用いられる。織物として、平織、綾織、繻子織、模紗織など汎用の織布が挙げられるが、特に織組織が、経糸・緯糸打込:3~100本/1インチの平織織布であることが好ましく、20~70本/1インチであることが特に好ましく、40~60本/1インチであることが更に好ましい。糸本打ち込み本数が少ないと、引き裂き強度低下や、長時間吊るした際に寸法変化が大きくなる。また、打ち込み本数が多い場合、柔軟性が低下し、装置に組み込む際に加工時の工数増加や、重量増加の問題がある。織物を用いる場合には、マルチフィラメント糸条の断面からの水の毛管現象による浸入を防止するための撥水処理、また、着炎時に自己消火性を付与するための防炎処理、及び樹脂層との密着性を向上させるための接着処理等を施すことができる。
【0014】
本発明の意匠シートにおいて、樹脂層に用いる樹脂は、塩化ビニル(可塑剤を含む)、塩化ビニル系共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合、エステル系ウレタンやエーテル系ウレタン、カーボネート系ウレタン、プロラクトン系ウレタン、ウレタン系エラストマーのようなポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂やポリビニルエステル樹脂のようなポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステルやポリメタアクリル酸エステル、アクリル系エラストマーのようなアクリル系樹脂、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマーなどの樹脂やエラストマーあるいはその架橋体、またはこれらの併用などを用いることができ、紫外線吸収剤、着色剤、艶消し剤、充填剤等を添加することもできる。特に本発明の意匠シートにおいては汎用性の面から塩化ビニル(可塑剤を含む)、ウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合などの樹脂を用いることが好ましく、またJIS K7375試験法に準拠して測定した全光線透過率が30%から95%であることが好ましく50%から80%であることが特に好ましく、60%から75%であることが更に好ましい。全光線透過率が低い場合、光を透過させたとしても、背面レース層の色調由来の意匠が得られない。一方、透過率が高い場合、背面レース層の模様がそのまま見えているだけの意匠となってしまう。
【0015】
本発明の意匠シートにおいて、樹脂層に添加する紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤もしくは無機系紫外線吸収剤を0.01から5.00質量%含むことが好ましく、0.10から2.50質量%が特に好ましく、0.20から1.50質量%が更に好ましい。具体的にはトリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート化合物などを側鎖に有するアクリル系単量体と他のエチレン系不飽和化合物(アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体、スチレン、酢酸ビニル等)と共重合させた重量平均分子量が1万以上のものが有機系紫外線吸収剤として挙げられ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄が無機系紫外線吸収剤として挙げられ、この中から選ばれた1種類以上の紫外線吸収剤を添加することができる。
【0016】
本発明の意匠シートにおいて、樹脂層に添加する着色剤としてポリアゾレッドや結合アゾイエローのような有機系着色剤や群青や酸化チタン、弁柄、鉄黄のような無機系着色剤のいずれかを添加されたものを用いることができる。添加量に関しては樹脂100.0質量部に対して0.1質量部から50.0質量部が好ましく、1.0質量部から30.0質量部が特に好ましく、10.0から20.0質量部が更に好ましい。
【0017】
本発明の意匠シートにおいて、樹脂層を設ける方法としては、圧縮成型法、カレンダー法、Tダイス押出法、キャスティング法、ディッピング法、コーティング法などのいずれかによるによる製造方法が用いられ、前記製造方法により得られる樹脂層の厚さは0.05mmから1.00mmであることが好ましく、0.10mmから0.50mmであることが特に好ましく、0.10mmから0.30mmが更に好ましい。厚さが薄すぎると耐久性が悪くなることや意匠を損なう要因となる。また、厚すぎると加工性や柔軟性が低下するばかりか重量の増加や意匠性低下の要因となる。
【0018】
本発明の意匠シートにおいて、前記繊維基布を基材として、その少なくとも一面に前記樹脂層を設けた可撓性積層体はJIS K7375試験法に準拠して測定した全光線透過率が25%から90%であることが好ましく、35%から70%であることが更に好ましく、40%から50%であることが特に好ましい。全光線透過率が、25%未満である場合、光を透過させたとしても、背面レース層の色調由来の意匠性が得られにくい。また、90%より高い場合、背面レース層の模様がそのまま見えているだけの意匠となってしまう。また、可撓性積層体の厚さは、0.15mm以上であることが必要であり、0.20mmから0.80mmであることが好ましく、0.25mmから0.50mmであることが更に好ましい。厚さが薄い場合、加工時にフィルムが伸ばされてしまい上手く加工することができず、厚さが厚い場合、重量が大きく増加してしまい加工性が低下してしまうばかりか、生産時に巻き出し部の巻き径が大きくなってしまい、長巻の製品を得ることができなくなってしまう。
【0019】
本発明の意匠シートにおいて、レース層に用いる樹脂は、塩化ビニル(可塑剤を含む)、塩化ビニル系共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合、エステル系ウレタンやエーテル系ウレタン、カーボネート系ウレタン、プロラクトン系ウレタン、ウレタン系エラストマーのようなポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂やポリビニルエステル樹脂、ポリエステル系エラストマーのようなポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステルやポリメタアクリル酸エステル、アクリル系エラストマーのようなアクリル樹脂、スチレン系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコン系エラストマーなどの樹脂やエラストマーあるいはその架橋体、またはこれらの併用などを用いることができ、紫外線吸収剤、着色剤、艶消し剤、充填剤等を添加することも可能。特に本発明の意匠シートにおいては可撓性積層体との密着を考慮して樹脂層と同種の樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の意匠シートにおいて、レース層に添加する紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤もしくは無機系紫外線吸収剤を0.01から5質量%含むことが好ましく、0.10から2.50質量%含むことが特に好ましく、0.20から1.50質量%含むことが更に好ましい。具体的にはトリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート化合物などを側鎖に有するアクリル系単量体と他のエチレン系不飽和化合物(アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体、スチレン、酢酸ビニル等)と共重合させた重量平均分子量が1万以上のものが有機系紫外線吸収剤として挙げられ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄が無機系紫外線吸収剤として挙げられ、この中から選ばれた1種類以上の紫外線吸収剤を添加することができる。
【0021】
本発明の意匠シートにおいて、レース層に添加する着色剤としてポリアゾレッドや結合アゾイエローのような有機系着色剤や群青や酸化チタン、弁柄、鉄黄のような無機系着色剤のいずれかを添加されたものを用いることができる。添加量に関しては樹脂100.0質量部に対して0.1質量部から50.0質量部が好ましく、1.0質量部から30.0質量部が特に好ましく、10.0から20.0質量部が更に好ましい。
【0022】
本発明の意匠シートにおいて、成形ロールに溶融樹脂を供給して模様地を形成すると共に、該模様地が高温の状態にある時に、可撓性積層体を供給して所望のレース層と可撓性積層体を一体に接合させることで意匠シートは得られる。前記方法で得られるレース層の最大高さは、0.10mmから6.00mmであることが必要であり、0.15mmから5.00mmであることが好ましく、0.20mmから3.00mmであることが特に好ましく、更に好ましくは、0.30mmから1.00mmである。レース層の最大高さが低すぎる場合(0.10mm未満の場合)、意匠シート背面より光を照射した際に、光源角度により発生する影を上手く得ることができず、意匠の低下が発生し、レース層の最大高さが高すぎる場合(6.00mmより高い場合)、加工性や柔軟性が低下するばかりか重量の増加やロール状に巻いた際に巻きシワが発生してしまい意匠低下や、光の照射する角度を変化させた際、生まれる影が大きい為、透かし模様全体が失われた意匠となってしまうばかりか、重量が大きく増加し加工性の低下にもつながる。
【0023】
本発明の意匠シートにおいて、所望の模様を有したレース層を成形することが重要である。所望の模様としては、タータン・チェックやギンガムチェック、エプロンチェック、ブロックチェック、オーバーチェック、ハーリキンチェック、ハウンドトゥースチェック、グレンチェックシェパードチェック、バスケットチェック、ウィンドウペン、グラフチェック、タッタソールチェック、バーバリーチェック、ハウスチェック、マドラスチェック、バッファローチェック等のチェック柄や、組亀甲や毘沙門亀甲等の亀甲模、鱗模様、七宝、青海波、工字繋ぎ、立桶、巴、吉原繋ぎや曲輪繋ぎ、くぎ抜き繋ぎ、分銅繋ぎ等の繋ぎ模様、ピンドット、雷文、網目、コインドットやリングドット、ポルカドット、シャワードット、バブルドット、ランダムドット、スタードット、花柄、様幾何学模様、和紙調模様等が挙げられる。模様間の隙間に関しては、0.1mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることが特に好ましく、10.0mm以上であることが更に好ましい。
【0024】
本発明の意匠シートにおいて、レース層の薄肉部の幅も重要である。薄肉部とは、レース層の最も薄い部分あるいは樹脂の存在しない部分のことを指す。この幅としては、0.1mm以上であることが好ましく、1.0mm以上であることが更に好ましい。レース層の薄肉部の幅が小さい場合、光の照射角度によりレースの模様が不明瞭となる。なお、薄肉部の厚みは、レース層の最大高さより小さく、6.00mm以下であることが好ましく、5.00mm以下であることがより好ましく、3.00mm以下であることが特に好ましく、更に好ましくは、1.00mm以下である。また、樹脂が存在しない部分であってもよく、その場合、厚みは0.00mmと表記される。
【0025】
本発明の意匠シートにおいて、レース層及び可撓性積層体の色差を日本電色工業(株)分光色差計にて測定した場合、ΔEが1以上であることが好ましく、ΔEが3以上であることが特に好ましく、ΔEが5以上であることが更に好ましい。
【0026】
本発明の意匠シートの表面及び裏面には防汚層や消臭層、インキ層、遮熱層等を設けることもできる。
【0027】
防汚層としては例えば、アクリル系樹脂、フッ素系共重合樹脂、アクリルーシリコン共重合樹脂、アクリルーフッ素共重合樹脂、アクリルーウレタン共重合樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合樹脂とのブレンド、及びこれら樹脂にシリカ微粒子、コロイダルシリカ、オルガノシリケート、シランカップリング剤、紫外線吸収剤などを含んでなる層を防汚層として設けることができる。
【0028】
消臭層としては例えば、アミン系、ヒドラジン系などの有機窒素系化合物、金属キレート化合部などの有機消臭剤、多孔質シリカ、シリカゲル、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、活性炭及び活性白土などの多孔質材料や、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、二酸化チタン、リン酸ジルコニウムの様な金属酸化物などの無機物消臭剤を含んだ層を設けることが好ましく、樹脂100質量部に対して5質量部から50質量部が好ましく、20質量部から30質量部が特に好ましい。
【0029】
インキ層としては、接着性の点からバインダー成分を含むことが好ましい。バインダー成分としてはエステル系ウレタンやエーテル系ウレタン、カーボネート系ウレタン、プロラクトン系ウレタン、ウレタン系エラストマーのようなポリウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂やポリビニルエステル樹脂のようなポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステルやポリメタアクリル酸エステル、アクリル系エラストマーのようなアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アミド樹脂、変性ポリオレフィンの少なくとも一種を含むことが好ましい。インキ層に用いるバインダー成分は樹脂層と同種である樹脂を用いることが接着性の観点より好ましい。
【0030】
また、インキ層に使用される顔料としては、パールマイカ、酸化チタンや酸化鉄で被覆されたマイカ、アルミニウム粉、銀粉、金粉、銅粉、青銅粉、その他の金属合金の粉末、金属蒸着細片など金属粒子、金属酸化物含有顔料もしくは、上記記載の金属粒子、金属酸化物含有顔料とパーマネントレットやフタロシアニングリーン、ファーストイエローなどのような有機系顔料、もしくは、カーボン、黄鉛やクロムバーミリオン、炭酸カルシウム、バライト粉などのような無機系顔料の混合顔料を用いることが好ましい。インキ層に含まれる顔料成分は5~40質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがより好ましい。
【0031】
本発明の意匠シートの製造方法は、上記構成を満たす意匠シートを製造する方法であれば特に限定されない。本実施形態の意匠シートの製造方法の例としては、繊維基布の少なくとも一面に樹脂層を圧縮成型し、可撓性積層体を得る。その後、同一方向へ回動するベルト車対に支持させた保持ベルト上に模様成形ロールを対設し、該成形ロールに溶融樹脂を供給して模様を形成せしめると共に、該模様が未だ高温状態にある時に、可撓性積層体を供給して所望のレース層と可撓性積層体を一体に接合させることで意匠シートが得られる。
【実施例0032】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<寸法安定性評価>
意匠シートを250mm×100mmにカットし、250mm側を長さ方向(長辺)、100mm側を幅方向(短辺)とした。短辺の両端から50mmの箇所それぞれに短辺に対して平行に標線を引き、その2本の標線間150mmの長さを標線間距離とした。短辺(100mm幅)の片方を固定治具に固定し、もう片方の短辺側に250gfの荷重を加え、40℃雰囲気下で72時間吊るした際の、標線間距離の変化を測定し、標線間距離の変化が1mm未満である場合を良好と判断した。
【0034】
<引き裂き強度 N>
JIS L1096に定められるC法(トラペゾイド法)に準拠し、引張速度200m
m/minで引き裂き強さ(N)を測定した。この時の引き裂き強さが50N以上である
場合を良好と判断した。
【0035】
<意匠>
実施例1から20、比較例1から7の意匠シートをレース層もしくは、凹凸層側から光を透過させた際の意匠を5名の評価者が肉眼での評価により確認した。
レース模様(凹凸模様)が確認でき、部分での色調変化や色の濃淡が確認でき、光を透過させる角度により、影が生まれる場合を〇、レース模様(凹凸模様)が確認できないもしくは、レース模様(凹凸模様)は確認できるが、部分での色調変化や色の濃淡が確認できない等のいずれかがみられる場合を×と判断することとした。その際に、任意に選抜した評価者5名全員が〇と判断したものを「5」、5名中4名が〇と判断したものを「4」、5名中3名が〇と判断したものを「3」、5名中2名が〇と判断したものを「2」、5名中1名が〇と判断したものを「1」、5名全員が×と判断したものを「0」と評価し、「4」以上を意匠良好と判断した。
【0036】
<全光線透過率 %>
可撓性積層体を、JIS K7375試験方法に規定の方法にて全光線透過率を測定し
た。
【0037】
<色差 ΔE>
日本電色工業(株)製の分光色差計SE6000を用いて、レース層と可撓性積層体の色差ΔEを測定した。ここでのΔEとは、CIEの規格におけるΔE*abを示す。
【0038】
<実施例1>
繊維基布1、樹脂層1、レース層1の詳細は以下のとおりである。
繊維基布1
品名:H105MU208T(ユニチカ株式会社製)
材質:ガラス繊維
厚さ:0.10mm
目付:115g/m2
糸密度:60×57本/インチ
樹脂層1
樹脂:軟質塩化ビニル樹脂
配合
軟質塩化ビニル樹脂(東ソー株式会社 リューロンペースト860):100質量部
フタル酸ジオクチル(富士フィルム和光純薬株式会社):50質量部
酸化チタン(堺化学工業株式会社 R-62N):0.5質量部
全光線透過率:52.30%
厚さ:0.15mm
レース層1
樹脂:軟質塩化ビニル樹脂
配合
カネビニール S1003N(株式会社カネカ製) 平均重合度:1300 100質量部
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(株式会社ジェイ・プラス製) 60質量部
軽質炭酸カルシウム(東洋電化工業株式会社製) 10質量部
Ba-Zn系安定剤 PSL-55(日東化成工業株式会社製) 3質量部
着色剤(酸化チタン) R11.P(堺化学工業株式会社製) 2質量部
最大高さ:0.55mm
薄肉部幅:最小1mm、薄肉部の厚み:0.00mm(樹脂の存在しない部分)
【0039】
(1)可撓性積層体の製造方法
サイズ縦297mm×横210mmの樹脂層1を2枚用意し、サイズ縦297mm×横210mmの繊維基布1の両側に樹脂層1を積層し、下記記載の圧縮成型機(加熱用)を用いて温度150℃、圧力3MPaにて30秒間熱プレスを行いその後、下記記載の圧縮成型機(冷却用)を用いて30秒間冷却を行い、厚さ0.25mmの可撓性積層体を製造した。
圧縮成型機(加熱用);
メーカー:株式会社神藤金属工業所
型式:NF-37H
シリンダー径:150mm
金属プレス板:320mm×320mm
圧縮成型機(冷却用);
メーカー:株式会社神藤金属工業所
型式:NF-37C
シリンダー径:150mm
プレス板:320mm×320mm
冷却方法:冷水
(2)意匠シートの製造方法
スクリュー回転数が、15rpm、150℃の押し出し機(ダイス:170℃)より、100℃の成形ロールに、溶融樹脂を供給して模様を形成すると共に、該模様が高温の状態にある時に、可撓性積層体を供給することで、可撓性積層体が溶融し、レース層と可撓性積層体が張り合わせられた意匠シートを得た。
【0040】
<実施例2>
繊維基布1を繊維基布2に変更した以外は実施例1と同様の条件にて意匠シートを得た。意匠シートの物性等を表1に示す。
繊維基布2
品名:KE2002SWJ(荒澤ターポリン株式会社製)
材質:ポリエステル繊維
厚さ:0.14mm
目付:52g/m2
糸密度:タテ24本/インチ ヨコ24本/インチ
【0041】
<実施例3>
樹脂層1を樹脂層2に変更した以外は実施例1と同様の条件にて意匠シートを得た。意匠シートの物性等を表1に示す。
樹脂層2
樹脂:軟質塩化ビニル樹脂
配合
軟質塩化ビニル樹脂(東ソー株式会社 リューロンペースト860):100質量部
フタル酸ジオクチル(富士フィルム和光純薬株式会社):50質量部
全光線透過率:90.74%
厚さ:0.30mm
【0042】
<実施例4>
樹脂層1を樹脂層2に変更した以外は実施例2と同様の条件にて意匠シートを得た。意匠シートの物性等を表1に示す。
【0043】
<実施例5>
レース層1をレース層2に変更した以外は実施例1と同様の条件にて意匠シートを得た。意匠シートの物性等を表1に示す。
レース層2
樹脂:軟質塩化ビニル樹脂
配合
カネビニール S1003N(株式会社カネカ製) 平均重合度:1300 100質量部
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(株式会社ジェイ・プラス製) 60質量部
軽質炭酸カルシウム(東洋電化工業株式会社製) 10質量部
Ba-Zn系安定剤 PSL-55(日東化成工業株式会社製) 3質量部
着色剤(酸化チタン) R11.P(堺化学工業株式会社製) 2質量部
最大高さ:0.18mm
薄肉部幅:最小1mm、薄肉部の厚み:0.00mm(樹脂の存在しない部分)
【0044】
<実施例6>
レース層1をレース層2に変更した以外は実施例2と同様の条件にて意匠シートを得た。意匠シートの物性等を表1に示す。
【0045】
<実施例7>
実施例1で得られた意匠シート表面に以下の条件のインキ層を塗布後、印刷を行った。
インキ層の塗布条件
Select-Roller(オーエスジーシステムプロダクツ株式会社製)を用いて、東洋紡社製E5100(PETフィルム)に下記インキを1g/m2程度塗布し、レース層表面を塗工面に付着させ、凸部にインキ(東洋インキ株式会社 VKNT特シルバー)を転写させる。その後60℃の乾燥機で2分乾燥させて、インキ層を設けた意匠シートを得た。意匠シートの物性等を表1に示す。
インキ:東洋インキ株式会社製「VKNTシルバー」
【0046】
<実施例8>
実施例2で製造した意匠シート表面に実施例7と同様の条件にて印刷を行った。意匠シートの物性等を表1に示す。
【0047】
<実施例9>
レース層1をレース層3に変更した以外は実施例1と同様の条件にて意匠シートを得た。
レース層3
樹脂:軟質塩化ビニル樹脂
配合
カネビニール S1003N(株式会社カネカ製)平均重合度:1300 100質量部
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(株式会社ジェイ・プラス製) 60質量部
軽質炭酸カルシウム(東洋電化工業株式会社製) 10質量部
Ba-Zn系安定剤 PSL-55(日東化成工業株式会社製) 3質量部
着色剤(酸化チタン) R11.P(堺化学工業株式会社製) 2質量部
最大高さ:5.00mm
薄肉部幅:最小1mm、薄肉部の厚み:0.00mm(樹脂の存在しない部分)
【0048】
<比較例1>
可撓性積層体の代わりに樹脂層1を使用した以外は実施例1と同様にして、意匠シートを作製した(樹脂層1の表面にレース層1を成膜した)。
【0049】
<比較例2>
可撓性積層体の代わりに下記樹脂層3を使用した以外は実施例1と同様にして、意匠シートを作製した(樹脂層3の表面にレース層1を成膜した)。
樹脂層3
樹脂:軟質塩化ビニル樹脂
配合
軟質塩化ビニル樹脂(東ソー株式会社 リューロンペースト860):
フタル酸ジオクチル(富士フィルム和光純薬株式会社):50部
酸化チタン(堺化学工業株式会社 R-62N):2部
全光線透過率:8.72%
厚さ:1.4mm
【0050】
<比較例3>
樹脂層1を2枚用意し、繊維基布1の両側に樹脂層を積層した。型紙1を用いてエンボス賦形することにより、凹凸を有する形状を樹脂層1の表面に賦形した。賦形させたシートを実施例7と同様に樹脂層1の凸部にインキ層の塗布を行った。
型紙1
R-281(リンテック株式会社)
【0051】
<比較例4>
レース層1をレース層4に変更した以外は実施例1と同様の条件にて意匠シートを得た。
レース層4
樹脂:軟質塩化ビニル樹脂
配合
軟質塩化ビニル樹脂(東ソー株式会社 リューロンペースト860):100質量部
フタル酸ジオクチル(富士フィルム和光純薬株式会社):50質量部
酸化チタン(堺化学工業株式会社 R-62N):2質量部
最大高さ:0.01mm
薄肉部幅:最小1mm、薄肉部の厚み:0.00mm(樹脂の存在しない部分)
【0052】
<比較例5>
レース層1をレース層5に変更した以外は実施例1と同様の条件にて意匠シートを得た。
レース層5
樹脂:軟質塩化ビニル樹脂
配合
カネビニール S1003N(株式会社カネカ製) 平均重合度:1300 100質量部
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(株式会社ジェイ・プラス製) 60質量部
軽質炭酸カルシウム(東洋電化工業株式会社製) 10質量部
Ba-Zn系安定剤 PSL-55(日東化成工業株式会社製) 3質量部
着色剤(酸化チタン) R11.P(堺化学工業株式会社製) 2質量部
最大高さ:9.00mm
薄肉部幅:最小1mm、薄肉部の厚み:7.12mm
【0053】
【0054】
【0055】
〈評価結果〉
実施例1から9の意匠シートは、繊維基布を含んだ可撓性積層体の表面にレース層を設け、可撓性積層体の厚さが0.15mm以上であり、レース層の最大高さが0.05から6.00mmの範囲であることにより、色調の変化や濃淡、光の角度により影のある透かし模様を有する、優れた意匠が得られた。また、繊維基布を含むことにより、引き裂き強度や平面性に関しても優れている。
【0056】
一方、繊維基布を含まないシート(比較例1および2)は、40℃の環境下で200gfの荷重を加えると、シートにたるみが見られた。これにより、寸法が安定せず、平面性の損なわれた意匠となっていた。また、繊維基布を含んだ可撓性シート表面にレース層を設ける代わりに、エンボス賦形により凹凸形状を付与したシート(比較例3)は、透かし模様や、光の角度により影のある透かし模様は確認できるが、色の変化を表現できていない意匠となった。また、シート厚み以上のエンボスを賦形したため、糸目の変形に伴い、意匠が低下するだけでなく、レース層が薄いシート(比較例4)は、角度を変化させた際に影のある外観を作ることができず、レース層が厚いシート(比較例5)は、照射する角度を変えた際、生まれる影が、大きい為、透かし模様全体の意匠が不十分であった。
本発明の意匠シートは、レース層側より光を透過させた際、透かし模様を有した外観かつ、部分的に異なる色調や色の濃淡の違いを楽しむことのできる意匠を有している。また、光源の位置により影が生まれ深みのある外観を得ることができ、さらに採光性を有する膜材であることから、天井用照明膜やロールブラインドで好適で用いることができる。