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特開2022-140397次世代の乳酸製造のための改良された製造方法
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  • 特開-次世代の乳酸製造のための改良された製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140397
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】次世代の乳酸製造のための改良された製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/56 20060101AFI20220915BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20220915BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C12P7/56
C12P1/00 A
C12N1/20 A
C12N1/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022037046
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】202121010021
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】518386656
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレイション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INDIAN OIL CORPORATION LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】511302482
【氏名又は名称】デパートメント オブ バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シヴァグルナサン,ペリヤサミー
(72)【発明者】
【氏名】サタワル,アロック
(72)【発明者】
【氏名】ラジ,ティラス
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ラヴィンドラ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,ラヴィ プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】プリ,スレシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール,サンカラ スリ ヴェンカタ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD33
4B064CA02
4B064CC06
4B064CC07
4B064CC30
4B064CD09
4B064DA20
4B065AA30X
4B065AC14
4B065BB15
4B065BB21
4B065CA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】酸で処理されたリグノセルロース系バイオマスを用いた同時糖化共発酵プロセスを利用した、高タイター(titer)の乳酸を生産するための改良されたプロセスを提供する。
【解決手段】この方法は、希酸と温度範囲150℃~210℃の過熱蒸気とで、五炭糖と六炭糖を含むリグノセルロース系バイオマスを前処理することと、第1ステップで前処理されたリグノセルロース系バイオマスを、水酸化ナトリウム(NaOH)ペレットで中和することと、第2ステップで得られた中和されたスラリーに、1.5~10FPU/gのセルラーゼ酵素、細菌、栄養素、及び緩衝剤を加えて、五炭糖及び六炭糖を温度範囲40~45℃で、120~144時間加水分解共発酵させて、乳酸を生産することとを含む。本発明の方法は、簡素な栄養素を必要とし、その結果短時間で高タイターの乳酸が生産される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース系バイオマスから乳酸を製造するための改良された製造方法であって、
希酸及び温度範囲150℃~210℃の過熱蒸気で、五炭糖及び六炭糖を含むリグノセルロース系バイオマスを前処理する第1ステップと、
第1ステップで前処理されたリグノセルロース系バイオマスを水酸化ナトリウム(NaOH)ペレットで中和する第2ステップと、
第2ステップで得られた中和されたスラリーに、1.5~10FPU/gのセルラーゼ酵素、細菌、栄養素、及び緩衝剤を加えて、五炭糖及び六炭糖を40℃~45℃の温度範囲で120~144時間加水分解共発酵させて、乳酸を生産する第3ステップと、
を含む製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法であって、
バイオマススラリーの前処理において、さらにpH調整剤でスラリーのpHを5.0~5.5に調整する、製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法であって、
pH調整剤は、含水水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カルシウム(CaCO3)から選択される、製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法であって、
栄養素は、酵母エキス及びリン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)である、製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法であって、
緩衝剤は、炭酸カルシウム(CaCO3)である、製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法であって、
前処理されたバイオマススラリーは、無毒化することなく発酵される、製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法であって、
細菌は、Lactobacillus lactis2369(NCIM)及びLactobacillus delbrueckii2365(NCIM)から選択されたLactobacillus属である、製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の製造方法であって、
リグノセルロース系バイオマスは、稲わら、麦わら、サトウキビの搾りかす、綿茎、大麦の茎、竹、及び、セルロースとヘミセルロースとの少なくとも一方を含む農業残渣からなる群から選択される、製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の製造方法であって、
五炭糖はキシロースであり、
六炭糖はグルコースである、製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の製造方法であって、
120時間以内の発酵時間で、~90g/Lの乳酸が生産される、製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法であって、
発酵はバッチプロセスである、製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の前処理されたスラリーを用いてリグノセルロース系バイオマスから乳酸を製造する方法であって、同時糖化共発酵が行われる、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を製造する方法に関する。とりわけ、本発明は、酸で処理されたバイオマスを用いた同時糖化共発酵プロセスを利用した、高タイター(titer)の乳酸を生産するための改良されたプロセスを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
経済成長と世界中に広がるエネルギー需要の拡大に伴い、化石燃料の消費も増加している。そのため、様々な化学工業界では、化石燃料ベースの経済活動に置き換わる、燃料及び化学製品の生産をする生物経済の発展の可能性を積極的に模索している。世界中で、リグノセルロース系バイオマス(LCB)からエタノール燃料が生産されているが、LCBからエタノール燃料を生産するのは1Gエタノール燃料よりコスト高となる。そこで、2Gバイオエタノールプロセスの経済面を改善し、化学製品の生産のための化石燃料への依存を減らすため、バイオリファイナリーに基づくコンセプトが開発中である。
【0003】
リグノセルロース系バイオマスは、工業化学品、すなわち乳酸、酢酸、プロピオン酸、エタノール燃料の生産に用いられる、地球上で最も豊富で再生可能で利用可能な有機材料である。LCBは主に50~60%が重合糖類で構成されている(Zhaoら、2017)。これらリグノセルロース系バイオマスにおけるポリマー糖は、セルロース(β-1, 4-グルカンの重合体)、ヘミセルロース(すなわちキシラン、グルカン、マンナン、アラビナン等)、リグニン(フェニルプロパノイド重合体)、抽出物あるいは灰などの、複雑な難分解性基質(recalcitrance matrix)にはめ込まれている(Rajら、2015)。このため、本来備わっている難分解性細胞壁基質を分解することが、酵素的糖化のためのポリマー糖を放出するのに非常に重要となる。さらにLCB内にはめ込まれたポリマー糖は、乳酸菌によって利用されるため加水分解されて発酵性糖になる必要がある。2Gバイオリファイナリーでは、最初にLCB全体にわたって前処理が行われる。これは、バイオマスの結晶複合体構造を分解し、それを酵素糖化用にセルラーゼが接触できるようにして、バイオマスを酵素によって消化されやすくするのに役立つ。したがって、この熱化学前処置と酵素加水分解との効果的な組み合わせは、単糖類の生産に不可欠である。単糖類は発酵で乳酸に変換され、工業規模生産における主な障害の要因となる、前処理されたスラリーの固液分離や洗浄といった面倒なプロセスを回避することができる。
【0004】
乳酸(LA)は、もっとも前途有望な酸であり、食品、医薬品、化粧品、化学産業等で幅広く利用されている。LAは中間前駆物質として、様々な化学製品やポリマー、すなわち、バイオプラスチック、保存料、添加物、及びアクリル酸などの生産に役立つ。例えば、PLA(ポリ乳酸)は、乳酸から合成可能な生体適合性熱可塑性物質の調製に使われる重合体の一つである。
【0005】
従来、LAは、高純度の糖資源、すなわち、糖蜜、グルコースあるいはでんぷんなどの微生物発酵から合成される。現在、商業的に1年あたり3.3x10トンのLAが生化学的方法で生産されている(Liら、2016)。しかしながら、糖分が豊富に含まれる第1世代の作物の利用可能性に限りがあることや、食品と燃料が競合することにより、代替原料の探索が今では最新の研究分野となっている。そのため近頃は、安くて非食料品の糖基質から乳酸発酵させるための、効率的で費用対効果の良い方法を開発することが好まれている。現在の2Gバイオリファイナリープロセスは、高い生産費用が原因で多くの金融危機に直面している。よって、乳酸発酵と2Gエタノールプロセスの組み合わせによって、その方法の経済性を改善し得る。したがって、上記バイオベースの生産に対する商業化の課題に取り組むため、乳酸生産細菌を使ったinsitu糖化と乳酸への共発酵とを伴う、非常に制限された研究活動が行われた。最近の研究(Grewal & Khareら、2018)では、ワンポットプロセスにおける、イオン液体処理された綿の実のかたまり、麦わら、及びサトウキビの搾りかすの、SSCFのための全体論的なアプローチが示されている。これによると、Lactobacillus brevis株を使用して0.22、0.49、及び0.52g/gの乳酸が産生された。同様に、(Zhangら、2016)は、トウモロコシの茎葉とモロコシ茎とのSSCFを、L.plantarum株を使用して実施した。これによると、27.3,22.0g/Lの乳酸が産生され、生産性はそれぞれ0.75及び0.65g/L/gであった。
【0006】
リグノセルロース系バイオマスの乳酸への生体触媒変換のためのSHCF及びSSCF方法が、先行技術文献に開示されている。これらの方法にはそれぞれ独自の長所があり、別々の加水分解・共発酵工程には、それらに最適な条件での酵素加水分解(50~52℃)の操作と発酵(30~42℃)とが別々に含まれる。しかしながら、バイオマスの加水分解と発酵のために高固形分を投入する間、フィードバック阻害と高い酵素負荷要件によってこれらの方法のスケールアップが制限される。一方で、同時糖化共発酵(SSCF)方法は、酵素加水分解と発酵に適した温度範囲、望ましくは37~42℃で行われる。ここで、糖を放出すると同時に放出された糖を乳酸へと生物変換することにより、発酵工程の間に生産された糖と他の副生産物のフィードバック阻害のリスクを低減する。
【0007】
US 2015/0125917 A1には、リグノセルロース系バイオマスを乳酸へ生物変換するための別個の加水分解及び共発酵工程の方法が記載されている。この文献には、Lactobacillus coryniformis subsp.Torquensを使った別々の工程における乳酸の酵素加水分解と発酵のための、蒸気爆発前処理されたバイオマスを使用することが記載されている。しかしながら、この工程ではリグノセルロース系糖類から乳酸への変換効率は65%であり、~40g/Lの乳酸生産タイターという結果となった。
【0008】
WO 2013/050584 A1は、新規のThermoanaerobacter sp.株を使って、リグノセルロース系バイオマス由来の単糖類から乳酸などのカルボン酸を製造する方法に関する。この文献には、リグノセルロース系バイオマスに対する硫酸触媒蒸気前処理と、糖分解酵素を使った前処理済スラリーの酵素加水分解との利用について記載されている。この方法は、およそ20g/Lの乳酸とともに、総計~70g/Lの生産物が形成されたことを示した。
【0009】
WO 2011/049205 A1には、殺菌処理の手順なしで植物バイオマスから乳酸を生産するSHCF法が記載されている。特に、この文献には50~120℃でバイオマスからリグニンを分離するための苛性ソーダなどの、アルカリ溶液を利用することが記載されている。糖が豊富に含まれる溶液は、セルラーゼ(ノボザイムズ社)を利用して得られた。さらにこの文献には、乳酸の生産方法が記載されており、この方法は、好アルカリ性乳酸菌EnterococcuscasseriflavusL-120を、pH9~11の非滅菌条件下でセルロース糖化液を含んだ培地で培養するステップと、その結果得られた培養物をさらにpH5~9で培養するステップとを備える。
【0010】
US 20110177567 A1は、リグノセルロース系バイオマスから発酵生産物として有機酸を製造する方法に関する。ここで、リグノセルロース系バイオマスはpH8~14.0のアルカリ性剤を用いて前処理される。この特許文献には、流加法においてB.coagulansによる、アルカリ前処理された麦わらの同時糖化発酵(SSF)が記載されている。これによると、55時間の培養後、~40.1g/Lの乳酸が生産され、理論上の収量の43%(w/w)に相当する。
【0011】
US 10,240,171 B2は、別々の糖化ステップと発酵ステップによる、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を生産する方法に関する。この文献には、遺伝子組み換えされていないBacillus coagulans DSM2314を用いた、乳酸の酵素加水分解と発酵のために、アルカリ前処理されたバイオマスを利用することについて記載されている。
【0012】
WO 2009/025547 A1は、リグノセルロース系バイオマスを乳酸へ生物変換するためのSSCFの方法に関する。それは、遺伝子組み換えされていないBacillus coagulans DSM2314を用いた、乳酸の同時糖化発酵のための、アルカリ前処理されたバイオマスの利用について開示している。この方法は、2時間の最初の前加水分解ステップと、その後に続く酵素加水分解と発酵のステップとを備える。この方法では、0.74g/L/hで、タイターが40.7g/Lの乳酸が生産された。その前処理されたバイオマス内に存在するグルカン及びキシラン変換の加水分解効率は、それぞれ55%、75%であったと述べられている。
【0013】
US 2015/019777 A1には、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を生産するための、連結された(consolidated)バイオ加工の一段階の方法が開示されている。この発明では、好気条件下でのリグノセルロース系バイオマスの加水分解と乳酸生産のために、Paenibacillus macerans IIPSP3(MTCC5569)を用いる。しかしながら、この方法では、微生物を増殖させるための複合栄養素を利用し、固形分負荷(solid loading)が低く、乳酸生産に対する糖の変換効率が低い。
【0014】
EP 3 587 584 A1には、阻害物質(HMF、フルフラール、酢酸、及びギ酸)の形成量が少ないリグノセルロース系バイオマスのための前処理方法と、その後の、低い酵素投与量で糖変換を改善するための酵素加水分解ステップとが開示されている。
【0015】
リグノセルロース系バイオマスを乳酸へと微生物変換することについては、様々な非特許文献で報告されている。例えば、Jiang,Tら、PloS one,11(2)は、B. coagulans NL01による乳酸生産のため、酸で前処理され、かつ、無毒化されていない(undetoxified)濃縮酸触媒蒸気爆発加水分解物(CASEH)を使用した。この方法では、45g/Lの乳酸が生産され、生産性は0.46g/L/hであった。他の報告では、Yiら(Journal of biotechnology,217,112-121)は、SSFプロセスにおいて、25%(w/w)の高い固形分負荷を有する、希酸で前処理され、かつ、生物無毒化(biodetoxified)されたトウモロコシ茎葉から乳酸を生産するために、遺伝子操作されたPediococcus acidilactici菌を使用した。この方法により76g/Lの乳酸が生産されており、阻害物質の除去が乳酸生産の増強において重要な役割を果たすことが実証されている。遺伝子操作株による乳酸の集積は、生物無毒化による阻害物質の除去度合いに強く依存した。他の報告(Ouyangら、2013Bioresource technology,135,475-480)によると、B. coagulansNL01によってトウモロコシ茎葉から乳酸を生産することが示されており、酵素糖化で生産された固形残さを含んだリグノセルロース系加水分解物から56g/Lの乳酸が得られたことが報告されている。流加発酵において、リグノセルロース系加水分解物の上清から75.03g/LのL-乳酸が得られた。その収率は74.5%であり、平均生産性は1.04g/L/hであった。
【0016】
Tuら、2019には、分離された菌株Lactobacillus plantarumを使用して、統合された同時糖化発酵法において、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を生産することが記載されている。その菌株により、発酵阻害物質を除去する無毒化方法の必要性を排除した。その方法によれば、最終的な乳酸の濃度は65.6g/Lとなり、セルロースから乳酸への収率が69%となった。
【0017】
Zhanら、2014は、麦わらから乳酸が生産される方法に関する。特に好熱性乳酸(LA)の生産者が、Bacillus coagulansIPE22株として分離・同定されている。その株は、ペントース、ヘキソース及びセロビオースを発酵させる能力を示し、また、リグノセルロース系加水分解物から出る阻害物質に対する耐性がある。
【0018】
Galbeら、2016には、遺伝子組み換えされたペントース発酵性酵母菌株Saccharomycescerevisiaeを用いた、同時糖化共発酵(SSCF)のプロセス設計により、蒸気前処理され酢酸が含浸された麦わらにおけるグルコースとキシロースからのエタノール生産を改良する研究が記載されている。
【0019】
Wischralら、2018には、Lactobacillus spp.による乳酸生産のための、サトウキビの搾りかすの加水分解物の利用に関する研究が記載されている。特に、一例として、キシロースを効率的に消費する能力を有した5株のLactobacillus spp.について調査されている。その後、バイオマスの分画が、希酸とアルカリ前処理によってなされ、選択された菌株によるヘミセルロース加水分解物(HH)発酵能は、バイオリアクターで実施される。
【0020】
入手できる文献によりいくつかの乳酸生産方法が提供されているが、その利用可能な方法はいくつかの課題に直面している。そこで、より少ない栄養必要量で、より高い生産性をもたらす乳酸の生産方法を開発することが従来技術において求められている。
【発明の概要】
【0021】
本発明の一態様として、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を生産するための改良された方法を提供する。この方法は、希酸と温度範囲150℃~210℃の過熱蒸気で、五炭糖と六炭糖を含むリグノセルロース系バイオマスを前処理する第1ステップと、第1ステップで前処理されたリグノセルロース系バイオマスを、水酸化ナトリウム(NaOH)ペレットで中和する第2ステップと、第2ステップで中和されたスラリーに、1.5~10FPU/gのセルラーゼ酵素、細菌、栄養素、及び緩衝剤とを加えて、五炭糖と六炭糖を温度範囲40~45℃で、120~144時間加水分解共発酵させて乳酸を生産する第3ステップとを含む。
【0022】
本発明の一つの実施形態では、バイオマススラリーの前処理において、さらにpH調整剤でスラリーをpH5.0~5.5に調整する方法が提供される。
【0023】
本発明の他の実施形態では、pH調整剤は、含水水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸カルシウム(CaCO)から選択される方法が提供される。
【0024】
本発明のさらに他の実施形態では、栄養素は、酵母エキス及びリン酸水素二アンモニウム((NH4)HPO)が用いられる方法が提供される。
【0025】
本発明のさらに他の実施形態では、緩衝剤は、炭酸カルシウム(CaCO)が用いられる方法が提供される。
【0026】
本発明の一つの実施形態では、前処理されたバイオマススラリーは、無毒化することなく発酵される方法が提供される。
【0027】
本発明の他の実施形態では、細菌は、Lactobacilluslactis2369(NCIM)とLactobacillusdelbrueckii2365(NCIM)から選択されたLactobacillus属である方法が提供される。
【0028】
本発明のさらに他の実施形態では、リグノセルロース系バイオマスは、稲わら、麦わら、サトウキビの搾りかす、綿茎、大麦の茎、竹、及び、セルロースとヘミセルロースとの少なくとも一方を含む農業残渣からなる群から選択される方法が提供される。
【0029】
本発明のさらに他の実施形態では、五炭糖はキシロースであり、六炭糖はグルコースである方法が提供される。
【0030】
本発明の一つの実施形態では、120時間以内の発酵時間で、~90g/Lの乳酸が生産される方法が提供される。
【0031】
本発明の他の実施形態では、発酵反応はバッチプロセスである方法が提供される。
【0032】
本発明の一態様として、前処理されたスラリーを用いて、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を生産する方法が提供される。この方法では、同時糖化共発酵が行われる。
【0033】
本主題のこれら及びその他の特徴、側面、及び利点は、以下に記載する説明を参照することで、よりよく理解される。この概要は、概念の選択を簡略化された形式で導入するために提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明のこれら及びその他の特徴、側面、及び利点は、以下の詳細な説明が、添付の図面を参照して読まれることで、よりよく理解できるであろう。なお、図面全体を通して同様の符号が同様の部品を表す。
図1図1は、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を生産するSSCF法に関する、全体のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
便宜上、本開示のさらなる説明の前に、本明細書で使用される特定の用語、及び例をここにまとめた。これらの定義は、本開示のリマインダーに照らして読み、当業者によって理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、当業者らに認識され且つ知られた意味であるが、便宜上及び完全を期すために、特定の用語とその意味を以下に記載する。
【0036】
定義:
本発明の目的のため、次の用語はその中で示すとおりの意味に解釈される。
【0037】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、その冠詞の文法上の目的語が「一つ以上」(すなわち「少なくとも一つ」)であることを示すものとして用いられる。
【0038】
「含んでいる」、「からなる」という語は、さらなる要素が含まれ得る包括的、つまりopen senseな意味で採用される。この用語は、「のみからなる」という意味に解釈されるものではない。
【0039】
本明細書を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、「含む(comprise)」という単語並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」などの変形は、明記された一つの要素もしくはステップ、または要素もしくはステップのグループを含むことを意味するものであり、ほかのいずれの一つの要素もしくはステップ、または要素もしくはステップのグループを除外するものではないと解釈される。
【0040】
「~を含む」という用語は、「~を含むがこれに限定されるものではない」という意味で採用され、「~を含む」と「~を含むがこれに限定されるものではない」とは同じ意味で採用される。
【0041】
リグノセルロース系バイオマス、すなわち単子葉植物などの植物バイオマスのほぼすべての形態は、3つの主要な化学画分であるヘミセルロース、セルロース、リグニンを含んでいる。植物細胞壁中のセルロースとヘミセルロースは、残余物内の複合体構造に存在する。ヘミセルロースは、大半が5炭糖(キシロース及びアラビノース)であり、一部が6炭糖(ガラクトース、グルコース及びマンノース)である、高分岐の短鎖重合体である。ヘミセルロースはこの分岐構造のため、非晶質で、酵素または希酸処理により比較的容易に個々の構成糖へ加水分解される。セルロースは、植物細胞壁内のβ(1→4)結合したD-グルコースで構成されている線状重合体であり、α(1→4)結合したD-グルコースで構成されている直鎖状または分岐した重合体を持つでんぷんによく似ている。でんぷんは、乾燥穀物及びウェットミルのエタノールプラントにおけるトウモロコシ穀物の主要基質である。しかしながら、でんぷんとは異なり、セルロースのグルコース糖は、セルロースを密接結合した直鎖状に形成するβグリコシド結合によって一緒につなぎ合わされている。セルロース鎖の間で高度な水素結合が生じるため、セルロースは、高度に安定しており且つでんぷんやヘミセルロースの重合体よりも化学的処理または酵素処理による加水分解に対する高い耐性を持つ硬い結晶構造を形成する。
【0042】
そこで、前処理プロセスは通常、細胞壁マトリックスを変性させて切り開いて、ヘミセルロースを加水分解し、結晶度を弱めるために使用される。前処理をすることにより、リグノセルロース系バイオマスの消化されにくい部分、例えばセルロースやリグニンを破断し、その結果消化性を向上させる。前処理の後、バイオマスの大部分が消化され易くなる一方、一部は消化されにくいまま残る。最終的に、その前処理プロセスによって、セルロース及び/またはヘミセルロースは炭水化物重合体から発酵性糖への変換のために(次の加水分解プロセスの間において)より利用し易くなる。
【0043】
本明細書において用いられる「セルラーゼ酵素」は、主にエキソ型加水分解酵素、エンド型加水分解酵素、ベータグルコシダーゼ、及び他の補助酵素から構成される混合形態酵素である。セルラーゼは、セルロース分子を単糖類と短鎖の多糖類またはオリゴ糖に分解する。
【0044】
本明細書において用いられる「前処理されたバイオマス」または「バイオマスの前処理」は、天然のバイオマスを扱いにくくしている物理的及び化学的な障害を取り除き、より良い酵素加水分解のためにセルロースを露出させるものである。ほとんどの前処理では、化学的(酸あるいはアルカリ)及び物理的(高温、蒸気あるいは圧力)な要素が個々にまたは組み合わせて使用され、酵素加水分解に対する障害を取り除いて、酵素消化性を向上させる。
【0045】
本明細書において用いられる「無毒化(detoxification)」は、前処理プロセスで生じた阻害物質(ヒドロキシメチル・フルフラール、フルフラール、酢酸、ギ酸などの毒性化合物)が、前処理されたバイオマスから、化学的、物理的または生物学的な方法によって除去または中和されるプロセスである。
【0046】
本発明は、より少ない栄養必要量で高タイターの乳酸を生産するための酸処理されたバイオマスの生物変換であって、費用対効果の高い乳酸生産をもたらす高い固形分負荷と低い酵素負荷での操作に関する。
【0047】
本発明の目的は、ワンポット同時糖化共発酵プロセス(SSCF)において、廃棄されたリグノセルロース系バイオマスから高タイターの乳酸を生産することである。特に本発明は、希酸前処理を使用したリグノセルロース系バイオマスからの乳酸生産方法を提供する。この前処理方法は、ヘミセルロースを最大まで可溶性にして、市販のセルラーゼを使ったセルロースを豊富に含んだ前処理済スラリーの消化効率を改善する。希酸前処理されたリグノセルロース系バイオマスは、酵素加水分解するための可溶性五炭糖と固体六炭糖を含んでいる。この後、前処理されたバイオマス中の五炭糖と六炭糖が、セルラーゼ酵素、細菌及び栄養素により共発酵され、効率的な乳酸生産のために固定された温度設定を伴う単一ユニットシステムにおいて乳酸が回収される。
【0048】
したがって、本発明の一つの態様によれば、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を生産するための改良された方法が提供される。この方法は、五炭糖と六炭糖とを含んだリグノセルロース系バイオマスを、希酸と温度150~210℃の過熱蒸気とで前処理する第1ステップと、第1ステップにおいて前処理されたリグノセルロース系バイオマスを、水酸化ナトリウムペレットで中和する第2ステップと、第2ステップで得た中和されたスラリーに、1.5~10FPU/gのセルラーゼ酵素、細菌、栄養素及び緩衝剤を加え、五炭糖と六炭糖とを40~45℃の温度で、120~144時間加水分解及び共発酵させて、乳酸を生産する第3ステップと、を含んでいる。
【0049】
本発明の一つの実施形態では、バイオマススラリーの前処理は、pH調整剤でスラリーのpHを5~5.5に調整するステップを更に含む乳酸生産方法が提供される。
【0050】
本発明の他の実施形態では、スラリーのpHを調整するpH調整剤は、含水水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、及び炭酸カルシウム(CaCO)から選択される乳酸生産方法が提供される。
【0051】
本発明のさらに他の実施形態では、栄養素は、酵母エキスとリン酸水素二アンモニウム((NH4)HPO)とである乳酸生産方法が提供される。
【0052】
本発明のさらに他の実施形態では、緩衝剤は炭酸カルシウム(CaCO)である乳酸生産方法が提供される。
【0053】
本発明の一つの実施形態では、前処理されたバイオマススラリーは、無毒化することなく発酵される乳酸生産方法が提供される。
【0054】
乳酸の生産は、一般的に細菌属Lactobacillus株の発酵により行われる。具体的には細菌種の例として、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus acidophilus、乳酸菌、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus pentosus、及びLactobacillus lactisなどがある。本発明の好ましい実施形態として、Lactobacillus属は、Lactobacillus lactis2369(NCIM)とLactobacillus delbrueckii2365(NCIM)から選択される。本発明に用いるこのLactobacillus属は、前処理されたバイオマスのグルコース画分及びキシロース画分の両方を利用でき、その結果高タイターの乳酸生産がなされる。
【0055】
本発明の一つの実施形態では、リグノセルロース系バイオマスは、稲わら、麦わら、サトウキビの搾りかす、綿茎、大麦の茎、竹、及び農業残渣からなる群から選択され、農業残渣はセルロースとヘミセルロースとの少なくとも一方を含む乳酸生産方法が提供される。
【0056】
本発明の他の実施形態では、五炭糖はキシロースであり、六炭糖はグルコースである乳酸生産方法が提供される。
【0057】
本発明の一つの実施形態では、120時間以内の発酵時間で、~90g/Lの乳酸が生産される乳酸生産方法が提供される。
【0058】
本発明の他の実施形態では、10~25%(w/w)のバイオマス負荷が乳酸生産のために使用された。また、本発明の好ましい実施形態として、高タイターの乳酸生産のために25%(w/w)の高い固形分負荷が使用される。
【0059】
本発明の一つの実施形態では、発酵反応はバッチプロセスである乳酸生産方法が提供される。
【0060】
本発明の一つの態様として、前処理されたスラリーを用いた、リグノセルロース系バイオマスから乳酸を生産する方法が提供され、この方法では同時糖化共発酵が行われる。
【0061】
したがって、本発明に係る方法により、ワンポット同時糖化共発酵プロセス(SSCF)において、廃棄されたリグノセルロース系バイオマスから高タイターの乳酸が生産される。この方法は、微生物増殖のために必要とされる栄養素がより簡素であり、発酵は非滅菌の開放空間で実行できる。さらに、25%(w/w)の高い固形分負荷と低い酵素投与量(1.5~10FPU/g-バイオマス)が、乳酸発酵のために必要とされる。また、実施例の表2~4に示されている発酵プロセスで得られた結果は、そのプロセスで使用したLactobacillus lactis及びLactobacillus delbrueckii株によって、SSCF方法を介して前処理済みバイオマスから高タイターの乳酸が生産されることを実証している。
【0062】
本主題は、その好ましい実施形態を参照することにより詳細に説明されているが、他の実施形態も採用できる。
【0063】
実施例
本開示は実施例を用いて説明されるが、当該実施例は、本開示の実際の例を説明することを意図しており、限定的に解釈することで本開示の範囲に対する限定を意味することを意図しない。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法及び材料を開示された方法の実施に使用することができるが、例示的な方法、装置及び材料が本明細書に記載されている。記載されている特定の方法や実験条件は変更可能であるため、本開示はそのような方法及び実験条件に限定されないことを理解されたい。
【0064】
実施例1:前処理されたリグノセルロース系バイオマスの調製
リグノセルロース系バイオマスの調製のため、ウッタルプラデシ州マトゥラ(Mathura, Uttar Pradesh(北緯27.28度、東経77.41度))近郊の地域から、収穫期間に農業廃棄物の稲わら(Oryza sativa)を収集した。その稲わらを空気乾燥して、ナイフカッティングミルを用いて10mmサイズに細かく破砕した上、実験のため室温(25℃)で保たれた状態で密閉されたポリ袋の中に保存した。表1は、天然バイオマスと前処理されたバイオマスの化学成分を示している。破砕された稲わらの希酸による前処理は、自社設計のパイロット規模の連続リアクターシステム(150kg/日)を使用し、希硫酸(1.8%)を使用して実施した。このプラントは、破砕ミル、高圧リアクター、スクリューフィーダー、液圧プレス、スラリータンク及び供給ホッパーを備えている。破砕された(10mmの)稲わらは、あらかじめ継続して30分間酸性溶液(1.8%)に浸した。さらに、酸に浸したバイオマスを、余分な水分を50%まで減らすためにプレスし、濡れたバイオマスを、10Kgh-1の流量で供給ホッパーを通して供給した。稲わらは、過熱蒸気を用いて、162℃までの最適温度、5.2バールの圧力、10分間の滞留時間で前処理した。希酸前処理の後、前処理されたスラリーを収集して室温まで冷まし、化学組成をNREL法(NREL/TP-510-42621)によって特定した。
【0065】
表1:天然稲わらと前処理された稲わらの化学組成解析
【0066】
実施例2:Lactobacilluslactis2369による乳酸生産のための同時加水分解共発酵プロセス(SSCF)
乳酸生産のために、まず希酸前処理された稲わらを水酸化ナトリウムペレットでpH4.8~5.0に中和した。前処理されて中和されたスラリーに、基質1グラムあたり5FPU/gのセルラーゼを用いた市販のセルラーゼ酵素、酵母エキス(1%)、リン酸水素二アンモニウム(0.1%)、炭酸カルシウム(~0.45g/g-全糖)、10%(v/v)のLactobacillus lactis2369NCIM培養物を添加し、発酵を単一ステップで実施した。同時加水分解共発酵プロセスは、120時間~140時間継続してリアクター温度を42℃に維持するとともに、200rpmに固定してバッチ方式で実施した。下記の表2は、希酸前処理された稲わらを使用した乳酸生産と酢酸生産について示している。最終的に108g/Lの乳酸が生産されたことが判明した。すべての水性のサンプルを、ウォーターズ社製のHPLC装置(ウォーターズ、スイス)を使用して、乳酸と副産物の濃度を特定するHPLC法により解析した。このHPLC装置は、HPX87H及びHPX87Pカラム(バイオラッド・ラボラトリーズ、アメリカ)、並びに波長210nmで計測するウォーターズ社製の屈折率検出器(RI2414)及びウォーターズ社製の紫外線・可視分光光度計(2489)を備えている。D/L乳酸比色分析キットから明らかなように、主要成分としてD乳酸を含む乳酸(D/L)のラセミ混合物が得られた。
【0067】
表2:Lactobacillus lactisを使用した乳酸生産のSSCFプロセス

#最初の糖の濃度は、細菌の培養物を添加する前の供給スラリー内で測定される。
【0068】
実施例3:Lactobacillus delbrueckii2365による乳酸生産のための同時加水分解共発酵プロセス(SSCF)
Lactobacillusdelbrueckii細菌株は、前処理されたリグノセルロース系バイオマスの五炭糖と六炭糖からの乳酸生産を実証するため評価される。この方法では、実施例2と同様に、まず希酸前処理された稲わらを水酸化ナトリウムペレットでpH4.8~5.0に中和した。中和された稲わら(乾燥重量で20~25wt.%)に、市販のセルラーゼ(5FPU/g)、酵母エキス(1%)、リン酸水素二アンモニウム(0.1%)、炭酸カルシウム(~0.45g/g-全糖)、及び10%(v/v)のLactobacillus delbrueckiiNCIM培養物を一度に添加した。同時加水分解共発酵プロセスは、リアクター温度を42℃に維持することによりバッチ方式で実施した。下記の表3は、Lactobacillus delbrueckii2365株を使用した乳酸生産及び酢酸生産について示している。ここでは反応時間120時間のうちに97g/Lの乳酸が回収されたことがわかる。D/L乳酸比色分析キットから明らかなように、その菌株によりL乳酸(L)の均質な混合物が生産される。
【0069】
表3:Lactobacillus delbrueckiiを使用した乳酸生産のSSCF方法

#最初の糖の濃度は、細菌の培養物を添加する前の供給スラリー内で測定される。
【0070】
実施例4:Lactobacillus delbrueckii2365とLactobacillus lactis2369の共培養を介した乳酸生産のための同時加水分解共発酵プロセス(SSCF)
この方法では、前処理されたリグノセルロース系バイオマスの五炭糖及び六炭糖から乳酸を生産するためのLactobacillus delbrueckii2365とLactobacillus lactis2369を、1:1の割合で混ぜて共培養した。この方法では、まず希酸前処理された稲わらを水酸化ナトリウムペレットでpH4.8~5.0に中和した。中和された稲わら(乾燥重量で20~25wt.%)に、市販のセルラーゼ(5FPU/g)、酵母エキス(1%)、リン酸水素二アンモニウム(0.1%)、炭酸カルシウム(~0.45g/g-全糖)、5%(v/v)のLactobacillus delbrueckii及び5%(v/v)のLactobacilluslactisを一度に添加した。同時加水分解共発酵プロセスは、リアクター温度を42℃に維持することによりバッチ方式で実施した。その結果(下記図4に示す)、Lactobacillus delbrueckiiとLactobacillus lactisの共培養により、120時間の反応時間で濃度82g/Lの乳酸が得られた。D/L乳酸比色分析キットから明らかなように、これらの菌株により乳酸(D/L)のラセミ混合物が生産される。
【0071】
表4:Lactobacillus lactisとLactobacillus delbrueckiiの共培養物を使用した乳酸生産のSSCF方法

#最初の糖の濃度は、細菌の培養物を添加する前の供給スラリー内で測定される。
図1
【外国語明細書】