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特開2022-140398破砕機、破砕装置の速度制御方法、及び、破砕装置の速度制御プログラム
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  • 特開-破砕機、破砕装置の速度制御方法、及び、破砕装置の速度制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140398
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】破砕機、破砕装置の速度制御方法、及び、破砕装置の速度制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B02C 25/00 20060101AFI20220915BHJP
   B02C 1/04 20060101ALI20220915BHJP
   B02C 21/02 20060101ALN20220915BHJP
【FI】
B02C25/00 B
B02C1/04
B02C21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037053
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2021039566
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】石橋 規史
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063AA10
4D063AA18
4D063GA07
4D063GC05
4D063GC08
4D063GC29
4D063GD03
4D063GD19
4D063GD20
4D067DD04
4D067FF03
4D067FF14
4D067FF15
4D067GA02
4D067GA20
4D067GB04
(57)【要約】
【課題】破砕装置が省エネルギーのための低速駆動状態に移行した場合に、通常の駆動状態へ適切なタイミングで戻す。
【解決手段】破砕機は、速度可変型の破砕装置と、供給装置と、投入検出部と、制御部と、を備える。前記供給装置は、前記破砕装置に破砕対象物を供給する。前記投入検出部は、前記供給装置に前記破砕対象物が投入されたことを検出する。前記制御部は、前記破砕装置の速度を、破砕対象物を破砕するときの第1速度と、前記第1速度よりも低速である第2速度と、の間で切り換える制御を行う。前記破砕対象物が投入されたことを前記投入検出部が検出した場合、前記制御部は、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度可変型の破砕装置と、
前記破砕装置に破砕対象物を供給する供給装置と、
前記供給装置に前記破砕対象物が投入されたことを検出する投入検出部と、
前記破砕装置の速度を、破砕対象物を破砕するときの第1速度と、前記第1速度よりも低速である第2速度と、の間で切り換える制御を行う制御部と、
を備え、
前記破砕対象物が投入されたことを前記投入検出部が検出した場合、前記制御部は、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換えることを特徴とする破砕機。
【請求項2】
請求項1に記載の破砕機であって、
前記投入検出部は、前記供給装置の振動の大きさを検出する振動検出部であり、
前記振動検出部が検出した振動の大きさが振動閾値以上である場合、前記制御部は、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換えることを特徴とする破砕機。
【請求項3】
請求項1に記載の破砕機であって、
前記供給装置は、油圧駆動型であり、
前記投入検出部は、前記供給装置を駆動するために用いられる作動油の圧力を検出する圧力検出部であり、
前記制御部は、前記圧力検出部により検出された圧力を圧力閾値と比較した結果に基づいて、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換え、
前記制御部は、前記圧力閾値を自動的に変更することを特徴とする破砕機。
【請求項4】
請求項3に記載の破砕機であって、
前記供給装置を作動させる作動油の温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記温度検出部により検出された温度に応じて、前記圧力閾値を自動的に変更することを特徴とする破砕機。
【請求項5】
請求項4に記載の破砕機であって、
前記制御部が前記破砕装置の速度を前記第1速度から前記第2速度へ切り換える条件に、前記温度検出部によって検出された温度が所定の制御閾値以上であることが含まれることを特徴とする破砕機。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の破砕機であって、
前記制御部は、
予め定められた複数の温度帯と、
それぞれの温度帯に対応する閾値と、
を記憶しており、
前記制御部は、前記温度検出部により検出された温度が前記複数の温度帯の何れに属するかを判定し、当該温度が属している温度帯に対応する閾値を前記圧力閾値として決定することを特徴とする破砕機。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の破砕機であって、
前記制御部は、温度と閾値の関係を示す計算式を記憶しており、
前記制御部は、前記温度検出部により検出された温度に基づいて、前記計算式を用いて得られた閾値を前記圧力閾値として決定することを特徴とする破砕機。
【請求項8】
請求項4から7までの何れか一項に記載の破砕機であって、
前記供給装置における前記破砕対象物の搬送速度が固定であることを特徴とする破砕機。
【請求項9】
請求項4から7までの何れか一項に記載の破砕機であって、
前記供給装置における前記破砕対象物の搬送速度が変更可能であり、
前記制御部は、前記温度検出部により検出された温度と、前記供給装置の搬送速度と、の両方に基づいて、前記圧力閾値を自動的に変更することを特徴とする破砕機。
【請求項10】
請求項3に記載の破砕機であって、
前記破砕装置の速度を前記第1速度から前記第2速度へ切り換える前の前記作動油の圧力である切換前圧力が検出され、
前記制御部は、前記切換前圧力に基づいて前記圧力閾値を決定することを特徴とする破砕機。
【請求項11】
速度可変型の破砕装置と、
前記破砕装置に破砕対象物を供給する供給装置と、
前記供給装置に前記破砕対象物が投入されたことを検出する投入検出部と、
を備える破砕機における、前記破砕装置の速度制御方法であって、
前記破砕装置の速度を、破砕対象物を破砕するときの第1速度から、前記第1速度よりも低速である第2速度へ切り換える第1工程と、
前記破砕対象物が投入されたことを前記投入検出部が検出した場合、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換える第2工程と、
を含むことを特徴とする破砕装置の速度制御方法。
【請求項12】
速度可変型の破砕装置と、
前記破砕装置に破砕対象物を供給する供給装置と、
前記供給装置に前記破砕対象物が投入されたことを検出する投入検出部と、
を備える破砕機における、前記破砕装置の速度制御プログラムであって、
前記破砕装置の速度を、破砕対象物を破砕するときの第1速度から、前記第1速度よりも低速である第2速度へ切り換える第1ステップと、
前記破砕対象物が投入されたことを前記投入検出部が検出した場合、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換える第2ステップと、
を含むことを特徴とする破砕装置の速度制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、破砕装置の速度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば移動式破砕機において、破砕装置の負荷が相対的に低い状態で運転回転数を低下させる構成が知られている。特許文献1は、この種の構成を開示する。
【0003】
特許文献1の鉱物材料処理プラントは、複数のアクチュエータを備える。アクチュエータとしては、例えば、破砕機、供給機、コンベヤ、篩分け装置及び振動シュートである。これらのアクチュエータは、駆動動力をディーゼルエンジンから得る液圧システムによって駆動される。
【0004】
特許文献1の鉱物材料処理プラントは、処理モードと待機モードを切換可能に構成されている。鉱物材料が不足した場合等に、待機モードが開始される。待機モードでは、選択されたアクチュエータ(例えば、破砕機)が、減速された速度での運転を継続する。エネルギー消費は、処理モードよりも待機モードの方が小さくなる。特許文献1では、処理モードを、特定の条件が満たされた場合に自動的に開始させる場合についても触れられている。具体的には、スイッチが操作されたこと、所定時間が経過したこと、又は、処理されるべき鉱物材料の量等に基づいて、処理モードに移行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6475614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スイッチの操作に応じて処理モードに移行する場合、モードを切り替えるタイミングか否かをユーザが判断する必要があり、ユーザの手間となる。また、所定時間の経過に応じて処理モードに移行する場合、処理されるべき鉱物材料が存在しない又は少ないにもかかわらず、処理モードに移行する可能性がある。また、特許文献1には、処理されるべき鉱物材料の量等を検出する方法が開示されていない。
【0007】
つまり、特許文献1には、適切なタイミングで処理モードに自動的に移行する具体的な方法が開示されていない。また、処理モードに移行するタイミングが遅い場合、待機モードで多量の鉱物材料が処理されるため、処理効率が低くなる。
【0008】
本出願は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、破砕装置が省エネルギーのために低速駆動状態に移行した場合に、通常の駆動状態へ適切なタイミングで戻すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本出願の第1の観点によれば、以下の構成の破砕機が提供される。即ち、破砕機は、速度可変型の破砕装置と、供給装置と、投入検出部と、制御部と、を備える。前記供給装置は、前記破砕装置に破砕対象物を供給する。前記投入検出部は、前記供給装置に前記破砕対象物が投入されたことを検出する。前記制御部は、前記破砕装置の速度を、破砕対象物を破砕するときの第1速度と、前記第1速度よりも低速である第2速度と、の間で切り換える制御を行う。前記破砕対象物が投入されたことを前記投入検出部が検出した場合、前記制御部は、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換える。
【0011】
本出願の第2の観点によれば、以下の破砕装置の速度制御方法が提供される。即ち、この方法は、速度可変型の破砕装置と、供給装置と、投入検出部と、を備える破砕機における、前記破砕装置の速度を制御する。前記供給装置は、前記破砕装置に破砕対象物を供給する。前記投入検出部は、前記供給装置に前記破砕対象物が投入されたことを検出する。この方法は、第1工程と、第2工程と、を含む。前記第1工程では、前記破砕装置の速度を、破砕対象物を破砕するときの第1速度から、前記第1速度よりも低速である第2速度へ切り換える。前記第2工程では、前記破砕対象物が投入されたことを前記投入検出部が検出した場合、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換える。
【0012】
本出願の第3の観点によれば、以下の構成の破砕装置の速度制御プログラムが提供される。即ち、このプログラムは、速度可変型の破砕装置と、供給装置と、投入検出部と、を備える破砕機における、前記破砕装置の速度を制御する。前記供給装置は、前記破砕装置に破砕対象物を供給する。前記投入検出部は、前記供給装置に前記破砕対象物が投入されたことを検出する。破砕装置の速度制御プログラムは、第1ステップと、第2ステップと、を含む。前記第1ステップでは、前記破砕装置の速度を、破砕対象物を破砕するときの第1速度から、前記第1速度よりも低速である第2速度へ切り換える。前記第2ステップでは、前記破砕対象物が投入されたことを前記投入検出部が検出した場合、前記破砕装置の速度を前記第2速度から前記第1速度へ切り換える。
【0013】
これにより、状況の変化による影響を考慮しつつ、省エネルギーのための低速駆動状態から通常の駆動状態へ、破砕装置を適切なタイミングで復帰させることができる。また、破砕装置へ破砕対象物を供給する供給装置に破砕対象物が投入されたことをトリガとしているので、供給装置が破砕対象物を破砕装置に実際に供給するまでに、時間的余裕をもって当該破砕装置を通常の駆動状態へ戻すことができる。従って、復帰当初から良好な効率で破砕を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本出願によれば、破砕装置が省エネルギーのために低速駆動状態に移行した場合に、通常の駆動状態へ適切なタイミングで戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本出願の一実施形態に係る移動式破砕機の全体的な構成を示す側面図。
図2】供給装置及び破砕装置の駆動に関する構成を示すブロック図。
図3】制御装置が行う処理を説明するフローチャート。
図4】変形例の制御装置が行う処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して本出願の実施の形態を説明する。図1は、本出願の一実施形態に係る移動式破砕機(破砕機)100の全体的な構成を示す側面図である。
【0017】
図1に示す移動式破砕機100(移動式処理機)は、例えば、骨材、石灰石等の原石(破砕対象物、物体)を1次破砕するために用いられる。
【0018】
移動式破砕機100は、破砕設備1が走行装置2の上に搭載された自走型破砕機として構成されている。移動式破砕機100は、主駆動源としてのエンジン発電機5を備える。エンジン発電機5は、フレーム70に支持されている。
【0019】
走行装置2は、移動式破砕機100を移動させることができる。走行装置2は、破砕設備1の下方に配置されている。走行装置2は、クローラ6と、スプロケット7と、を備える。走行装置2は、フレーム70に支持されている。
【0020】
クローラ6は、例えば鋼板からなる無端状に形成され、スプロケット7に巻き掛けられている。スプロケット7は走行装置2において回転可能に支持されており、図示しない出力軸の回転に伴って回転する。左右のクローラ6を同じ方向に等しい速度で回転させることで、移動式破砕機100を直進させることができる。以下では、移動式破砕機100がこのように直進する方向を前後方向と呼び、前後方向とも上下方向とも垂直な方向を左右方向と呼ぶことがある。
【0021】
破砕設備1は、例えば、岩石採掘現場で採掘された原石等の破砕対象物を粗砕きする1次破砕設備として構成される。この破砕設備1は、供給装置11と、破砕装置12と、破砕物排出コンベア13と、を備える。破砕対象物又は破砕物は、供給装置11、破砕装置12、及び破砕物排出コンベア13の順に流れる。以下、「上流」及び「下流」というときは、破砕対象物又は破砕物が上記のように流れる方向での上流及び下流を意味する。
【0022】
供給装置11は、ホッパ21と、振動フィーダ22と、を備える。
【0023】
ホッパ21は、上方が開放された形状に構成されている。ホッパ21には、作業機90を用いて、破砕対象物を投入することができる。ホッパ21に投入された破砕対象物は、振動フィーダ22に供給される。ホッパ21は、フレーム70に支持されている。具体的には、ホッパ21とフレーム70は、上下に延びる支持柱71を介して連結されている。本実施形態では、支持柱71は前後方向に2本並べて、かつ左右一対で設けられている。ただし、ホッパ21をフレーム70に支持させる構造は、本実施形態の構造とは異なっていてもよい。
【0024】
振動フィーダ22は、ホッパ21に投入された破砕対象物を、破砕装置12に向けて搬送する。振動フィーダ22は、例えば、グリズリ付振動フィーダとして構成される。振動フィーダ22はホッパ21とは独立して振動する。振動フィーダ22は、フレーム70に支持されている。具体的には、振動フィーダ22とフレーム70は、防振部材72を介して連結されている。防振部材72は、例えばバネ又はゴム等であり、振動フィーダ22で発生した振動をフレーム70に伝達されにくくする。本実施形態では、防振部材72は前後方向に2本並べて、かつ左右一対で設けられている。ただし、振動フィーダ22をフレーム70に防振支持させる構造は、本実施形態の構造とは異なっていてもよい。
【0025】
破砕設備1は、投入検出部としての振動検出部73を備える。振動検出部73は、例えば渦電流型又は圧電型の振動センサである。振動検出部73は、供給装置11に破砕対象物が投入されたか否かを振動に基づいて判定するために設けられている。破砕対象物が供給装置11に投入された場合、破砕対象物がホッパ21又は振動フィーダ22に当たって振動が発生する。また、この振動は、支持柱71又は防振部材72を介してフレーム70に伝達される。つまり、破砕対象物の投入に起因して、供給装置11及びフレーム70が振動する。ただし、供給装置11のうち振動フィーダ22は自ら振動を発生させる。そのため、振動検出部73は、ホッパ21又はフレーム70に配置されることが好ましい。また、本実施形態では、振動検出部73がフレーム70に配置されている。振動フィーダ22が発生させる振動は連続的かつ周期的な振動であり、防振部材72により軽減されている。また、破砕対象物が投入される際の振動は振動フィーダ22の振動よりも大きいことから、フレーム70に振動検出部73を配置することにより、破砕対象物の投入に起因する振動を精度良く検出できる。ただし、振動検出部73の位置はこれに限られない。また、振動検出部73は必須ではなく省略することもできる。
【0026】
破砕装置12は、供給装置11によって供給された破砕対象物を破砕する。破砕装置12は、例えば、図1に示すシングルトグル型ジョークラッシャ(揺動式破砕装置)として構成することができる。
【0027】
破砕装置12は、固定歯31と、可動歯32と、を備える。固定歯31及び可動歯32は、互いに対面して、その間に適宜の空間を形成するように構成されている。以下、この空間を破砕空間と呼ぶことがある。
【0028】
破砕空間は、下方となるのに従って狭くなるV字状に形成される。破砕空間の上方は開放されており、振動フィーダ22の下流側端部と実質的に接続されている。破砕空間の下方も開放されており、破砕物排出コンベア13と接続されている。
【0029】
固定歯31は、破砕装置12のハウジングに対して固定的に設けられている。可動歯32は、偏心軸33によって、破砕装置12のハウジングに支持されている。偏心軸33を回転させることで、可動歯32を往復的に揺動させることができる。破砕装置12は、可動歯32の揺動によって、固定歯31と可動歯32の間に投入された破砕対象物を噛み砕く。
【0030】
ただし、破砕装置12は、例えば、公知のコーンクラッシャ(旋動式破砕装置)、インパクトクラッシャ(衝突式破砕装置)として構成されても良い。
【0031】
破砕物排出コンベア13は、破砕装置12で破砕された破砕物を外部に排出する。破砕物排出コンベア13は、移動式破砕機100の前後方向において、供給装置11とは反対側に配置されている。
【0032】
次に、供給装置11及び破砕装置12を駆動するための構成について、図2を参照して説明する。
【0033】
図2に示すように、移動式破砕機100が備えるエンジン発電機5は、エンジン41と、発電機42と、を備える。
【0034】
エンジン41の出力軸は、移動式破砕機100の適宜の場所に配置された油圧ポンプ45の入力軸と連結される。供給装置11の振動フィーダ22には、油圧モータ46が取り付けられている。油圧ポンプ45は、作動油を油圧モータ46に圧送する。これにより、供給装置11を駆動することができる。油圧ポンプは必ずしもエンジンと連結される必要はなく、発電機から得た電力でポンプ用電動モータを運転し、油圧ポンプを動かす構成でもよい。
【0035】
エンジン41の出力軸は、発電機42の入力軸と連結される。破砕装置12は、電動モータ48を備える。発電機42が発電した電力は、電動モータ48に供給される。これにより、破砕装置12を駆動することができる。
【0036】
電動モータ48と発電機42との間には、インバータ49が配置される。このインバータ49は、電動モータ48に対して、公知の定トルク制御を行う。
【0037】
移動式破砕機100は更に、破砕装置12の駆動モードを制御するための制御装置(制御部)50を備える。制御装置50は、モード切換判定部51と、電動モータ制御部52と、を備える。
【0038】
具体的に説明すると、制御装置50は公知のコンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM、タイマ回路等を備える。前記ROMには、本出願の破砕装置12の速度制御方法を実現するための速度制御プログラムが記憶されている。このソフトウェアとハードウェアの協働により、制御装置50を、モード切換判定部51及び電動モータ制御部52として動作させることができる。
【0039】
制御装置50は、破砕装置12の電動モータ48を制御するために、2つのモードを自動的に切換可能に構成されている。第1モードは通常モードであり、第2モードは低速モードである。
【0040】
通常モードは、破砕装置12が破砕対象物を処理している場合のモードである。低速モードは、破砕装置12が破砕対象物を実質的に処理していない場合のモードである。
【0041】
移動式破砕機100は、電流センサ56を備える。電流センサ56は、電動モータ48に流れる電流の大きさを検出することができる。電流センサ56は、制御装置50に電気的に接続されている。電流センサ56が検出した電流の大きさは、制御装置50に入力される。
【0042】
制御装置50は、電流センサ56が検出した電流値に基づいて、破砕装置12の負荷を判定する。通常モードにおいて、制御装置50のモード切換判定部51は、電動モータ48の電流の大きさが所定の電流閾値よりも小さい状態が所定時間以上継続したと判断した場合は、制御装置50を低速モードへ切り換える。
【0043】
移動式破砕機100は、油圧センサ(圧力検出部、投入検出部)57及び油温センサ(温度検出部)58を備える。油圧センサ57は、油圧ポンプ45と油圧モータ46との間の作動油経路47における圧力を検出することができる。油温センサ58は、作動油経路47を流れる作動油の温度を検出することができる。油圧センサ57及び油温センサ58は、制御装置50にそれぞれ電気的に接続されている。油圧センサ57が検出した圧力、及び、油温センサ58が検出した温度は、制御装置50に入力される。
【0044】
制御装置50は、油圧センサ57が検出した圧力の大きさに基づいて、供給装置11の負荷を判定する。低速モードにおいて、制御装置50のモード切換判定部51は、作動油経路47の圧力の大きさが所定の圧力閾値よりも大きい状態が所定時間以上継続したと判断した場合は、制御装置50を通常モードへ切り換える。
【0045】
この圧力閾値は、油温センサ58が検出した温度に応じて変更される。圧力閾値の詳細については後述する。
【0046】
電動モータ制御部52は、インバータ49を介して電動モータ48を制御する。この制御は、制御装置50が通常モード及び低速モードのうち何れであるかに応じて変化する。
【0047】
通常モードでは、制御装置50の電動モータ制御部52は、電動モータ48を通常の回転速度(第1速度)で駆動するようにインバータ49を制御する。
【0048】
低速モードでは、制御装置50の電動モータ制御部52は、電動モータ48を通常モードよりも低い速度(第2速度)で駆動するようにインバータ49を制御する。低速モードでの電動モータ48の回転速度は、通常モードよりも、例えば数%~数十%程度低くすることができる。
【0049】
本実施形態において、電動モータ48は上述したように定トルク制御されている。定トルク制御では、電動モータ48の出力は回転速度に比例する。従って、低速モードにおいて電動モータ48の回転速度を減少させることで、破砕装置12における省エネルギーを実現することができる。
【0050】
なお、供給装置11においては、制御装置50のモードが何れであるかを問わず、油圧モータ46は通常の速度で駆動される。
【0051】
制御装置50が通常モードであり、破砕装置12の電動モータ48が通常の速度で運転されている状態で、作業機90がホッパ21への破砕対象物の投入を中断した場合を考える。破砕装置12は振動フィーダ22から投入される破砕対象物を順次破砕するので、ホッパ21の破砕対象物は減少し、やがて無くなる。ホッパ21が空になると、続いて振動フィーダ22が空になる。振動フィーダ22が破砕対象物を搬送しなくなるので、破砕装置12に破砕対象物が無い状態となる。
【0052】
破砕装置12において破砕対象物が無くなると、破砕抵抗がゼロになるため、電動モータ48の負荷は通常よりも低くなる。この結果、電流センサ56の検出値が低くなる。
【0053】
制御装置50のモード切換判定部51は、電流センサ56の検出値を常時監視している。モード切換判定部51は、電流センサ56の検出値が前述の電流閾値よりも小さい状態が所定時間以上継続した場合には、モードを通常モードから低速モードに切り換える。モードの変更に伴い、電動モータ制御部52は、電動モータ48を通常よりも低速で回転するように制御する。この結果、省エネルギーを実現できる。
【0054】
次に、制御装置50が低速モードである状態で、作業機90がホッパ21への破砕対象物の投入を再開した場合を考える。破砕対象物は振動フィーダ22によって搬送されるため、油圧ポンプ45と油圧モータ46の間の作動油経路47の油圧は、搬送負荷に応じて高くなる。
【0055】
低速モードにおいて、制御装置50のモード切換判定部51は、油圧センサ57の検出値を常時監視している。モード切換判定部51は、油圧センサ57の検出値が前述の圧力閾値よりも大きい状態が所定時間以上継続した場合には、モードを低速モードから通常モードに切り換える。モードの変更に伴い、電動モータ制御部52は、電動モータ48を通常の速度で回転するように制御する。これにより、破砕装置12において破砕対象物を通常どおりの効率で破砕することができる。
【0056】
このように、制御装置50は、破砕装置12よりも上流の供給装置11の負荷が増大したことをトリガとして、モードを低速モードから通常モードに切り換える。従って、供給装置11で搬送される破砕対象物が破砕装置12に到達する前に、破砕装置12の速度を通常どおりに戻すことができる。この結果、作業効率の低下を確実に回避することができる。
【0057】
次に、油圧ポンプ45と油圧モータ46の間で循環する作動油について説明する。
【0058】
モードを低速モードから通常モードに適切なタイミングで切り換えるために、制御装置50には、供給装置11の負荷が小さい状態での作動油経路47の圧力を監視して、負荷の増大を正しく検出することが要求される。
【0059】
一般に、作動油は温度によって粘性が変化する。移動式破砕機100の始動直後においては、作動油の温度は大気の温度と実質的に等しいが、移動式破砕機100の運転に伴って、作動油の圧力エネルギーの一部が損失して熱に転換されるため、温度が上昇する。作動油経路47における作動油の容量、図示しないオイル冷却装置の能力等にもよるが、移動式破砕機100の運転時に作動油の温度は例えば40℃~60℃程度まで上昇することがある。
【0060】
作動油の温度が上昇すると、粘性が低下するため、運転時の作動油圧力は小さくなる。このように、作動油の粘性の変化は、低速モードから通常モードに切り換えられるタイミングが早過ぎたり遅過ぎたりする原因になる。
【0061】
そこで、本実施形態の制御装置50では、低速モードから通常モードへ切り換える場合の圧力閾値を、油温センサ58が検出した温度に応じて変更するように構成されている。
【0062】
例えば、以下のように制御することが考えられる。制御装置50において、20℃未満、20℃以上40℃未満、40℃以上の3つの温度帯のそれぞれにおいて、上述の圧力閾値が予め定められる。この圧力閾値は、温度が高くなるに従って低くなるように設定される。低速モードにおいて、モード切換判定部51は、油温センサ58から入力された作動油の温度が、3つの温度帯の何れに属するかを判定し、属する温度帯に対応する圧力閾値を採用する。この圧力閾値と、油圧センサ57が検出した作動油の圧力と、を比較した結果に基づいて、低速モードから通常モードへ切り換えるか否かが判定される。
【0063】
図3のフローチャートを参照して、制御装置50が行う処理について具体的に説明する。
【0064】
処理が開始されると、制御装置50は、現在のモードが通常モードであるか否かを判定する(ステップS101)。
【0065】
現在のモードが通常モードである場合、制御装置50のモード切換判定部51は、破砕装置12の電動モータ48の電流値を電流センサ56から取得し、この電流値が所定の閾値を所定時間以上継続して下回っているか否かを判定する(ステップS102)。
【0066】
ステップS102の判定結果が肯定的である場合、モード切換判定部51は、供給装置11を駆動するための作動油(作動油経路47の作動油)の温度を油温センサ58から取得し、この温度が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS103)。以下、この閾値を制御閾値と呼ぶことがある。制御閾値は任意に定めることができるが、例えば10℃とすることが考えられる。
【0067】
ステップS103の判断で、作動油の温度が制御閾値以上である場合、制御装置50は、現在のモードを低速モードに切り換える(ステップS104)。作動油の温度が制御閾値以下である場合は、現在のモードは通常モードで維持される。
【0068】
ステップS102の判定結果が否定的である場合、現在のモードは通常モードで維持される。何れの場合も、処理はステップS108に進む。
【0069】
ステップS101の判断で、現在のモードが低速モードである場合、制御装置50のモード切換判定部51は、作動油経路47の作動油の温度を油温センサ58から取得し、この温度に基づいて圧力閾値を決定する(ステップS105)。続いて、制御装置50のモード切換判定部51は、作動油経路47の作動油の圧力を油圧センサ57から取得し、この圧力値が圧力閾値を所定時間以上継続して上回っているか否かを判定する(ステップS106)。この判定結果が肯定的である場合は、制御装置50は、現在のモードを通常モードに切り換える(ステップS107)。判定結果が否定的である場合は、現在のモードは低速モードで維持される。その後、処理はステップS108に進む。
【0070】
制御装置50は、再度、現在のモードが通常モードであるか否かを判定する(ステップS108)。
【0071】
現在のモードが通常モードである場合、制御装置50の電動モータ制御部52は、破砕装置12の電動モータ48を通常の速度で駆動するように、インバータ49を制御する(ステップS109)。現在のモードが低速モードである場合、制御装置50の電動モータ制御部52は、破砕装置12の電動モータ48を通常よりも低い速度で駆動するように、インバータ49を制御する(ステップS110)。何れの場合も処理はステップS101に戻り、上記の処理が反復される。
【0072】
本実施形態において、モードの切換は、実質的に電動モータ48の速度の切換に相当する。従って、図3のフローチャートにおいて、ステップS104が第1ステップ(第1工程)、ステップS105~ステップS107が第2ステップ(第2工程)に対応する。
【0073】
以上の制御により、作動油の粘性が温度によって変化することによる影響を考慮して、供給装置11における負荷の増大を適切に検出することができる。
【0074】
本実施形態のモード切換判定部51は、破砕装置12の電動モータ48の負荷が小さいこと(ステップS102)だけでなく、作動油の温度が閾値以上であること(ステップS103)を条件として、通常モードから低速モードに切り換えている。言い換えれば、制御装置50は、破砕装置12において破砕対象物が無い状態であっても、作動油の温度が制御閾値未満である場合は、温度が制御閾値まで上昇するのを待機してから低速モードに移行する。
【0075】
作動油の温度が低い場合は、温度変化に対する粘度の変化が特に大きい。仮に、作動油の温度が相当に低いときに低速モードに移行すると、ステップS105における閾値を適切に決定することが困難になる。これは、適切でないタイミングで低速モードから通常モードに戻ってしまう原因になる。本実施形態では、作動油が所定温度以上であるときにだけ低速モードに移行する。従って、作動油の温度が一定以上の場合に限って、温度に応じた圧力閾値の決定(ステップS105)が行われるので、温度と圧力の関係を単純化し易くなる。この結果、高い精度での制御を実現することができる。
【0076】
上記の実施形態において、油圧ポンプ45の吐出流量は一定である。しかしながら、油圧ポンプ45の吐出流量を、例えばオペレータの操作によって変更可能な構成とすることもできる。これにより、供給装置11における振動フィーダ22の搬送速度を、破砕対象物の性質等を考慮して切り換えることができる。このための具体的な構成は様々であるが、例えば、減速比を変更可能な変速機構をエンジン41と油圧ポンプ45との間に設ける構成とすることができる。また、油圧ポンプ45を可動斜板式とし、斜板の角度を変更する構成とすることもできる。作動油経路47における作動油の流量を変更可能な構成においては、圧力閾値は、温度帯に加えて、作動油の流量に応じて変化させることが好ましい。
【0077】
制御装置50は、複数の温度帯を設定してそれぞれの圧力閾値を定める代わりに、例えば、作動油の温度と圧力閾値との関係を示す適宜の計算式に油温センサ58の検出値を代入することで、圧力閾値を得ることもできる。
【0078】
また、以下のように制御することもできる。即ち、破砕装置12の負荷が低いことを検出した結果として通常モードから低速モードに切り換えられるとき、制御装置50は、油圧センサ57の検出値(切換前圧力)を取得する。破砕装置12が空であるため、その上流に位置する供給装置11も空になっているはずである。従って、このときの油圧センサ57の検出値は、供給装置11が空の状態に対応している。制御装置50は、油圧センサ57から入力された検出値に予め定めた値を加算し、得られた値を圧力閾値として記憶する。低速モードに切り換えられた後、モード切換判定部51は、記憶されている圧力閾値を、低速モードから通常モードへ切り換える際の圧力閾値として採用する。加算する値を適切に定めることで、破砕装置12の運転速度に制御によるハンチングが生じるのを防止することができる。
【0079】
通常、ホッパ21への破砕対象物の投入が長期にわたって中断することは考えにくいため、中断の前後で、作動油の温度は大きく変動しないと考えられる。従って、上記の制御によっても、作動油の温度変化に伴う粘性の変化の影響を排除して、供給装置11における負荷の増大を適切に検出することができる。また、この制御では油温センサ58を省略することができ、構成を簡素化できる。
【0080】
次に、図4を参照して、本実施形態の変形例について説明する。なお、以後の説明においては、本実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0081】
本実施形態では、作動油圧力に基づいて、低速モードから通常モードに切り替えるか否かを判定する。この点、本変形例では、振動検出部73が検出した振動に基づいて、低速モードから通常モードに切り替えるか否かを判定する。即ち、制御装置50は、振動検出部73が検出した振動に基づいて、供給装置11に破砕対象物が投入されたと判定した場合に、低速モードから通常モードに切り替える。
【0082】
以下、図4のフローチャートを参照して詳細に説明する。なお、図4のフローチャートのステップS201~S203は、図3のフローチャートのステップS101,s102,S104と同じであるため説明を省略する。図4のフローチャートのステップS206~S209は、図3のフローチャートのステップS107~S110と同じであるため説明を省略する。
【0083】
ステップS201の判断で、現在のモードが低速モードである場合、制御装置50のモード切換判定部51は、振動検出部73が検出した振動の大きさを取得する(ステップS204)。次に、制御装置50のモード切換判定部51は、取得した振動の大きさが振動閾値以上か否かを判定する(ステップS205)。この判定結果が肯定的である場合は、制御装置50は、現在のモードを通常モードに切り換える(ステップS206)。ステップS205の判定結果が否定的である場合は、現在のモードは低速モードで維持される。
【0084】
振動閾値は、供給装置11に破砕対象物が投入されたことを検出するための閾値である。従って、振動閾値は、振動検出部73が検出する、低速モード時の破砕装置12の振動、低速モード時の振動フィーダ22の振動、及びエンジン41の振動等よりも大きい値である。更に、振動閾値は、破砕対象物が供給装置11に投入された際に振動検出部73が検出する値よりも小さい値である。これらの条件を満たす振動閾値が実験的、経験的、又はシミュレーション等により求められ、予め設定されている。
【0085】
制御装置50は、ステップS205の処理において、振動検出部73が検出した振動の大きさが一瞬だけでも振動閾値以上となれば、肯定的と判定する。これに代えて、制御装置50は、振動検出部73が検出した振動の大きさが振動閾値以上となる回数又は時間を考慮して判定を行ってもよい。これにより、誤検出等で一時的に振動の検出値が高くなる事態に通常モードに切り替えられることを抑制できる。
【0086】
なお、投入する破砕対象物の重さ、又は、破砕対象物を投入する高さに応じて、供給装置11に破砕対象物が投入された際に発生する振動の大きさは異なる。そのため、本変形例では、振動閾値を変更可能である。破砕設備1のユーザ、管理者、又は製造販売者は、破砕対象物の重さが重いほど、又は、破砕対象物を投入する高さが高いほど、大きな振動閾値を設定する。これにより、破砕設備1の使用環境に応じた適切な振動閾値を設定できる。
【0087】
本変形例では、破砕対象物が供給装置11に投入されたことに起因する振動を検出する。これにより、破砕対象物が破砕装置12に到達するより前に低速モードから通常モードに復帰させることができる。その結果、破砕対象物が破砕装置12に到達した当初から通常モードの破砕装置12で処理することができるので、処理効率が高い。
【0088】
以上に説明したように、本実施形態又は変形例の移動式破砕機100は、速度可変型の破砕装置12と、供給装置11と、投入検出部(油圧センサ57又は振動検出部73)と、制御装置50と、を備える。供給装置11は、破砕装置12に破砕対象物を供給する。投入検出部(油圧センサ57又は振動検出部73)は、供給装置11に破砕対象物が投入されたことを検出する。制御装置50は、破砕装置12の速度を、破砕対象物を破砕するときの第1速度と、第1速度よりも低速である第2速度と、の間で切り換える制御を行う。制御装置50は、破砕対象物が投入されたことを投入検出部が検出した場合、破砕装置12の速度を第2速度から第1速度へ切り換える。
【0089】
これにより、状況の変化による影響を考慮しつつ、省エネルギーのための低速駆動状態から通常の駆動状態へ、破砕装置を適切なタイミングで復帰させることができる。また、破砕装置よりも上流側に位置する供給装置に破砕対象物が投入されたことをトリガとしているので、供給装置で搬送される破砕対象物が破砕装置に到達するまでに、時間的余裕をもって当該破砕装置を通常の駆動状態へ戻すことができる。従って、通常の駆動状態へ復帰した当初から、良好な効率で破砕を行うことができる。
【0090】
本変形例の移動式破砕機100において、投入検出部は、供給装置11の振動の大きさを検出する振動検出部73である。振動検出部73が検出した振動の大きさが振動閾値以上である場合、制御装置50は、破砕装置12の速度を第2速度から第1速度へ切り換える。
【0091】
破砕対象物が供給装置に投入された直後に振動が発生するため、破砕対象物が供給装置に投入されたことを早期に検出できる。
【0092】
本実施形態の移動式破砕機100において、供給装置11は、油圧駆動型である。投入検出部は、供給装置11を駆動するために用いられる作動油の圧力を検出する油圧センサ57である。制御装置50は、油圧センサ57により検出された圧力を圧力閾値と比較した結果に基づいて、破砕装置12の速度を第2速度から第1速度へ切り換える。制御装置50は、圧力閾値を自動的に変更する。
【0093】
これにより、油圧センサは油圧回路に設けられていることが多いため、特別な装置を追加することなく、本処理を行うことができる。特に、圧力閾値を自動的に変更することにより、状況に応じて適切な閾値を用いて供給装置に破砕対象物が投入されたか否かを検出できる。
【0094】
また、本実施形態の移動式破砕機100は、供給装置11を作動させる作動油の温度を検出する油温センサ58を備える。制御装置50は、油温センサ58により検出された温度に応じて、圧力閾値を自動的に変更する。
【0095】
これにより、作動油の温度が変化することによる影響を適切に考慮して、破砕装置を低速駆動状態から通常の駆動状態へ的確なタイミングで戻すことができる。
【0096】
また、本実施形態の移動式破砕機100において、制御装置50が破砕装置12の速度を第1速度から第2速度へ切り換える条件に、油温センサ58によって検出された温度が所定の制御閾値以上であることが含まれる。
【0097】
これにより、作動油の温度に応じた圧力閾値の変更を、低温域では行わないことで、制御の精度を向上させることができる。
【0098】
また、本実施形態の移動式破砕機100において、制御装置50は、予め定められる複数の温度帯と、それぞれの温度帯に対応する閾値と、を記憶している。制御装置50は、油温センサ58により検出された温度が前記複数の温度帯の何れに属するかを判定し、温度が属している温度帯に対応する閾値を圧力閾値として決定する。
【0099】
これにより、簡素な処理を実現できる。
【0100】
ただし、制御装置50において温度と閾値の関係を示す計算式を記憶しておき、制御装置50は、油温センサ58により検出された温度に基づいて、計算式を用いて得られた閾値を圧力閾値として決定することもできる。
【0101】
これにより、圧力閾値をきめ細かく制御することができる。
【0102】
また、本実施形態の移動式破砕機100において、供給装置11における破砕対象物の搬送速度が固定である。
【0103】
これにより、圧力閾値の制御が簡素になる。
【0104】
一方、供給装置11における破砕対象物の搬送速度を変更可能に構成することもできる。この場合、制御装置50は、油温センサ58により検出された温度と、供給装置11の搬送速度と、の両方に基づいて、圧力閾値を自動的に変更する。
【0105】
これにより、作動油の流量の影響を更に考慮して、供給装置11の負荷を適切に監視することができる。
【0106】
本実施形態の移動式破砕機100において、破砕装置12の速度を第1速度から第2速度へ切り換える前の作動油の圧力である切換前圧力を検出するように構成することもできる。この場合、制御装置50は、切換前圧力に基づいて圧力閾値を決定する。
【0107】
この制御によっても、作動油の温度による影響を実質的に考慮して、供給装置11の負荷を適切に監視することができる。
【0108】
以上に本出願の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0109】
電動モータ48の負荷は、電流センサ56により取得されることに限定されない。例えば、電動モータ48の出力軸等にトルクセンサを設け、トルクセンサの検出値によって電動モータ48の負荷を検出する構成に変更することができる。
【0110】
電動駆動式の破砕装置12を、油圧駆動式の破砕装置に変更することもできる。また、上記変形例においては、油圧駆動式の供給装置11を電動駆動式の供給装置に変更することもできる。
【0111】
供給装置11の構成は、上記に限定されない。例えば、振動フィーダ22の代わりに適宜のコンベアを用いることができる。
【0112】
本出願は、移動式でない定置式の破砕機に適用することもできる。
【0113】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。ここで、図3及び図4のフローチャートでは、低速モードと通常モードの切替えに関する処理の後に、現在のモードを判定して電動モータ48を駆動する速度を定める処理を行う。これに代えて、低速モードと通常モードを切り替える処理の一環として、電動モータ48を駆動する速度を定めてもよい。これにより、現在のモードを判定する処理を省略できる。
【0114】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組合せ、を含む回路又は処理回路を使用して実行することができる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本出願において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェア、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであっても良いし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであっても良い。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組合せであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0115】
11 供給装置
12 破砕装置
50 制御装置(制御部)
57 油圧センサ(投入検出部、圧力検出部)
58 油温センサ(温度検出部)
73 振動検出部(投入検出部)
100 移動式破砕機(破砕機)
図1
図2
図3
図4