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特開2022-140405プリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140405
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】プリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/0622 20140101AFI20220915BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
B23K26/0622
B23K26/067
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022037566
(22)【出願日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021076798
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512052904
【氏名又は名称】大船企業日本株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒井 邦男
(72)【発明者】
【氏名】金谷 保彦
(72)【発明者】
【氏名】波多 泉
(72)【発明者】
【氏名】北 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】立石 秀典
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD14
4E168CB03
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA23
4E168DA32
4E168DA44
4E168DA52
4E168DA60
4E168EA02
4E168EA06
4E168EA11
4E168EA15
4E168EA19
4E168JA04
4E168JB01
4E168KA04
(57)【要約】
【課題】 レーザ発振機を有効に使用して、加工能率に優れ、品質に優れるプリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機を提供すること。
【解決手段】 RFパルスを印加することによりレーザを発振するレーザ発振器1を用いてレーザ加工を行うプリント基板のレーザ加工方法において、
前記RFパルスの印加を終了した後のレーザが出力されている間に前記RFパルスの印加を再開させることによりレーザ発振を継続させ、連続して発振されるレーザ2を所望の時間切り取ってプリント基板のレーザ加工を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFパルスを印加することによりレーザを発振する炭酸ガスレーザ発振器を用いてレーザ加工を行うプリント基板のレーザ加工方法において、
前記RFパルスの印加を終了した後のレーザが出力されている間に前記RFパルスの印加を再開させることによりレーザ発振を継続させ、連続して発振されるレーザを所望の時間切り取ってプリント基板のレーザ加工を行うことを特徴とするプリント基板のレーザ加工方法。
【請求項2】
前記RFパルスの印加時間と前記RFパルスのオフ時間を制御することにより鋸歯状パルスを生成し、生成した前記鋸歯状パルスにより加工することを特徴とする請求項1に記載のプリント基板のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記RFパルスの印加時間と前記RFパルスのオフ時間との和、または前記RFパルスの印加時間と前記RFパルスのオフ時間との比率、の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項2に記載のプリント基板のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記RFパルスを印加することによりレーザを発振する炭酸ガスレーザ発振器を用いてレーザ加工を行うプリント基板のレーザ加工装置において、
前記RFパルスの印加を終了した後のレーザが出力されている間に前記RFパルスの印加を再開させることによりレーザ発振を継続させ、連続して発振されるレーザを所望の時間切り取って加工部に供給するよう制御する制御装置を備えたことを特徴とするプリント基板のレーザ加工装置。
【請求項5】
複数の加工ヘッドを備え、1個のレーザ発振器から前記複数の加工ヘッドのそれぞれにレーザを分配するように構成しておき、いずれかの加工ヘッドの位置決めが完了した場合は、他の加工ヘッドの位置決め状態を考慮することなく、当該加工ヘッドにレーザを供給する制御装置を備えたことを特徴とする請求項4に記載のプリント基板のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージ基板の製造工程において、銅層の上にビルドアップされたABF材あるいはPET付ABF材からなる絶縁層にブラインドホール(行止まり穴。以下、単に穴またはBHという。)を形成するのに好適なプリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のビルドアップ式のプリント基板は銅層の上に、ガラス繊維やフィラを含有する樹脂で形成された絶縁層(以下、単に「絶縁層」という。)と銅層とを一体にしたものを絶縁層を挟むようにして積層し、表面の銅層と下層の銅層をめっきで接続する層間接続用として40~120μmの穴をレーザにより加工していた。
【0003】
初めに、従来のレーザ加工機の構成について説明する。
図9は、従来の2ヘッド式レーザ加工機の構成図である。
炭酸ガスレーザ発振器1(以下、レーザ発振器1という。)は、パルス状直線偏光のレーザ2を出力する。レーザ発振器1とビームスプリッタ4との間に配置されたビーム径調整装置3はレーザ2のエネルギ密度を調整するための装置であり、レーザ発振器1から出力されたレーザ2の外径を変更することによりレーザ2のエネルギ密度を調整する。すなわち、ビーム径調整装置3の前後におけるレーザ2のエネルギは変化しない。したがって、ビーム径調整装置3から出射されたレーザ2はレーザ発振器1から出力されたレーザ2と見なすことができるので、以下、レーザ発振器1とビーム径調整装置3と、を併せてレーザ出力装置1Aという。なお、ビーム径調整装置3は使用されない場合もある。
ビーム径調整装置3と偏光変換装置5Aとの間にはビームスプリッタ4が配置されている。ビームスプリッタ4はレーザ2を直角な2方向のレーザ2Aとレーザ2Bに分割する。レーザ2Aは図示を省略する第1の加工ヘッドAに、また、レーザ2Bは図示を省略する第2の加工ヘッドBに供給される。ここで、第1の加工ヘッドAと第2の加工ヘッドBは同一の構成であるので、以下、構成が同じもの(符号5~符号12)は添え字A,Bを付して区別し、第1の加工ヘッドAの場合についてのみ説明する。
偏光変換装置5Aは直線偏光のレーザ2Aを円偏光のレーザ6Aに変換する。なお、偏光変換装置5Aは加工中において加工部で反射されたレーザ6Aを遮断する反射光遮断機構(詳細は省略する。)を備えており、加工部で反射されたレーザ6Aによるレーザ発振器1の損傷を予防する機能を備えている。偏光変換装置5Aとガルバノミラー10Aaとの間に配置されたプレート7Aはレーザ6Aを透過させない材質(例えば、銅)で形成されており、所定の位置にアパーチャ(窓であり、この場合は円形の貫通穴)8Aが複数個かつ選択可能に形成されている。プレート7Aは図示を省略する駆動装置により駆動され、選択されたアパーチャ8Aの軸線をレーザ6Aの軸線と同軸に位置決めする。ガルバノ装置9Aは一対のガルバノミラー10Aa、10Abで構成され、図中矢印で示すように回転軸の回りに回転自在であり、反射面を任意の角度に位置決めすることができる。fθレンズ(集光レンズ)11Aは、図示を省略する加工ヘッドAに保持されている。ガルバノミラー10Aa、10Abとfθレンズ11Aとでレーザ6Aの光軸をプリント基板12Aの所望の位置に位置決めする光軸位置決め装置を構成しており、ガルバノミラー10Aa、10Abの回転角度とfθレンズ11Aの直径とで定まるスキャン領域(すなわち、加工領域)12Aは、50mm×50mm程度の大きさである。ワークである銅層と絶縁層とからなるプリント基板13は、X-Yテーブル14に固定されている。なお、第1の加工ヘッドAと第2の加工ヘッドBとは同一パターンのプリント基板13を加工する場合もあれば、異なるパターンのプリント基板13を加工する場合もある。制御装置20は入力された制御プログラムに従い、レーザ発振器1、ビーム径調整装置3、プレート7A、7Bの駆動装置、ガルバノミラー10Aa、10Ab、10Ba、10BbおよびX-Yテーブル14A(場合によってはX-Yテーブル14Bも含む)を制御する。
【0004】
そして、穴を加工をする場合は、X-Yテーブル14A,14Bを移動させて指定された加工領域12A、12Bをfθレンズ11A,11Bにそれぞれ対向させた後、先ず、当該加工領域12A、12B内の総ての銅層を1回のビーム照射(すなわち、1パルスの照射)により穴を加工した後、1ないし複数回のパルス照射により絶縁層を加工して、当該加工領域12A、12B内の穴を完成させる。
【0005】
図10はガルバノミラーの設定時間とレーザ照射時間を示す図であり、図中の横軸は時間であり、(a)は加工ヘッドAの場合、(b)は加工ヘッドBの場合、である。
ヘッドAのガルバノミラー10Aaと10Abのうち、ある加工箇所において位置決め時間が長くなる方の時間をヘッドAのガルバノ時間GAと言い、ヘッドBのガルバノミラー10Baと10Bbのうち、ある加工箇所において位置決め時間が長くなる方の時間をヘッドBのガルバノ時間GBと言うとする。L1は1回のレーザ照射時間である。
加工ヘッドAと加工ヘッドBが加工するプリント基板13Aとプリント基板13Bの加工内容が同一でガルバノ時間GAとGBが同じ場合、2つの加工ヘッドに同時にレーザ2を同時に供給することができる。しかし、加工ヘッドAと加工ヘッドBの加工内容が異なり、ガルバノ時間GAとGBが異なる場合、加工ヘッドAと加工ヘッドBにレーザ2を同時に供給するためには、ガルバノ時間の長い方に合わせなければならない。すなわち、GA1<GB1、GA2>GB2とすると、加工ヘッドAには(GB1-GA1)の待ち時間が発生し、加工ヘッドBには(GA2-GB2)の待ち時間が発生する。このため、全体としての加工能率が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、基板の薄板化が進むことに伴い、パッケージ用の基板として表面に銅層がない絶縁層に穴を加工する場合が増加している。このような場合に加工する穴の径は60μm以下であり、加工する場合に必要な出力は20W程度である。
次に、実際の加工例について説明する。
図11は、従来のレーザ照射例を説明する図であり、縦軸は出力、横軸は時間である。また、上段はレーザ発振器1のレーザ媒体を励起するRFパルス(以下、単にRFという。)のオン・オフを示している。
例えば、絶縁層に60μmの穴を加工する場合、RF印加時間20μsにおける出力が20Wである出力曲線A1によりレーザを照射して加工を行った後、次のパルス周期に同一条件のレーザをもう一度照射する。すなわち、この場合の加工時間は、ガルバノミラー位置決め後に照射する第1のパルスのパルス周期100μsに、第1のパルスに続く第2のパルス周期100μsの内のレーザが継続する80μs(RF停止後のレーザが消滅するまでの時間60μsを含む。)を加えた180μsである。ここで、レーザを連続して2回照射できるのは、加工閾値が高い銅層の加工あるいは銅層加工後の厚さが60μmを超える絶縁層を加工する場合と異なり、加工閾値が低く、厚さが30μm程度の絶縁層で、加工部に蓄積される熱量が小さいためである。
なお、同図に示すように、出力曲線A1はRF印加直後に第1のピーク出力(出力の継続時間は短時間である。)を持っている。この第1のピーク出力は、定格RF印加時間(この場合は20μs)における第2のピーク出力の1/2程度である。また、RF印加が停止された後は、レーザ発振器内のレーザ媒体に蓄積されたエネルギがレーザとして出力される。図示の場合、レーザ発振器内のレーザ媒体に基づくレーザの継続時間は60μs程度である。
【0007】
しかし、上記の加工では、以下のような不具合が発生する。
(1)第1のピーク出力の影響により、加工した穴の入り口部の直径が2~3μm大きくなってしまう場合がある。
(2)レーザの出力変動に伴い、加工した穴の径がばらつく。
ここで、上記レーザの出力変動について図面を用いて説明する。
図12は、第2のピーク出力の出力変動を示す図であり、(a)はパルス周波数が1~5kHzの場合を、(b)はパルス周波数が1~10kHzの場合を、それぞれ示している。例えば、加工する穴の間隔がほぼ同じである場合、第2のピーク出力はほとんど変動しない。しかし、加工する穴の間隔は、プリント基板に実装する実装品の間隔や下層の銅層に接続する穴位置により定まるため、一様ではない。この結果、レーザ励起間隔(すなわちデューティ)が変化することにより、レーザ媒体に蓄積される出力が変化する。そして、同図(a)に示すように、周波数が1~5kHzの場合は出力が±3%程度、また同図(b)に示すように、周波数が1~10kHzの場合は出力が±5%程度変化する。このため、加工した穴の径がばらつく。
(3)RF印加時間20μsに続くRF停止期間においても、RFが停止されてから60μs程度の間、レーザ媒体に蓄積されたエネルギが加工部に照射されるため、加工部の温度は上昇する。加工部の温度上昇値が絶縁層の加工閾値よりも低い場合であっても、この期間が10μs以上継続すると、穴底と穴壁面の絶縁層が炭化され易くなり、穴の加工品質が低下する。
以上説明したように、加工する穴径の均一化と絶縁層の品質の低下を防止することが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、レーザ発振器を有効に活用することにより、加工能率に優れ、品質に優れるプリント基板のレーザ加工方法およびプリント基板のレーザ加工機を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の手段は、
RFパルスを印加することによりレーザを発振する炭酸ガスレーザ発振器を用いてレーザ加工を行うプリント基板のレーザ加工方法において、
前記RFパルスの印加を終了した後のレーザが出力されている間に前記RFパルスの印加を再開させることによりレーザ発振を継続させ、連続して発振されるレーザを所望の時間切り取ってプリント基板のレーザ加工を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の手段は、請求項1に記載のプリント基板のレーザ加工方法において
前記RFパルスの印加時間と前記RFパルスのオフ時間を制御することにより鋸歯状パルスを生成し、生成した前記鋸歯状パルスにより加工することを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の手段は、請求項2に記載のプリント基板のレーザ加工方法において、
前記RFパルスの印加時間と前記RFパルスのオフ時間との和、または前記RFパルスの印加時間と前記RFパルスのオフ時間との比率、の少なくとも一方を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の手段は、前記RFパルスを印加することによりレーザを発振する炭酸ガスレーザ発振器を用いてレーザ加工を行うプリント基板のレーザ加工装置において、
前記RFパルスの印加を終了した後のレーザが出力されている間に前記RFパルスの印加を再開させることによりレーザ発振を継続させ、連続して発振されるレーザを所望の時間切り取って加工部に供給するよう制御する制御装置を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の手段は、請求項4に記載のプリント基板のレーザ加工装置において、
複数の加工ヘッドを備え、1個のレーザ発振器から前記複数の加工ヘッドのそれぞれにレーザを分配するように構成しておき、いずれかの加工ヘッドの位置決めが完了した場合は、他の加工ヘッドの位置決め状態を考慮することなく、当該加工ヘッドにレーザを供給する制御装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
加工する穴の穴径を均一にすると共に、穴壁面の品質を向上させることができるだけでなく、加工能率を向上させることができる。また、安定したレーザを連続して発振するようにしたので、複数のヘッドにレーザを供給する場合、いずれのヘッドに対しても他のヘッドとは無関係に必要なレーザを供給できるので、レーザ加工機としての加工能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る鋸歯状波の要素を説明する図である。
図2】出力波形例である。
図3】本発明に係る鋸歯状波の生成手順を説明する図である。
図4】鋸歯nの矩形波パルスによる加工例を説明する図である。
図5】出力のエネルギ空間分布を説明する図である。
図6】本発明に係る2ヘッド式レーザ加工機の構成図である。
図7】ガルバノミラーの設定時間とレーザ照射時間を示す図である。
図8】フィラ入りの絶縁層を加工する場合の矩形波パルスの説明図である。
図9】従来の2ヘッド式レーザ加工機の構成図である。
図10】ガルバノミラーの設定時間とレーザ照射時間を示す図である。
図11】従来のレーザ照射例を説明する図である。
図12】第2のピーク出力の出力変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る鋸歯状波の構成要素を説明する図である。なお、同図における出力曲線C(基本波パルス波形)は、定格デューティ60%(RF印加時間/パルス周期である。以下、「定格デューティ」を単に「Dty」と表記する。)、パルス周期10KHz、最大出力250Wの出力曲線であり、縦軸は発振されるレーザの出力、横軸は時間である。また、上段はレーザ発振器1のレーザ媒体を励起するRFのオン・オフを示している。
始めに、出力曲線Cについて説明する。時刻T0でRFをオンすると、時刻T1でレーザが爆発的に出力され、時刻Tjで第1のピーク出力Wjに達した後、時刻Tdまで減衰し、その後再び増加に転じ、時刻T0からRF印加時間60μs経過した時刻T2で第2のピーク出力250Wに達する。ここで、RF印加期間における実線で示す出力は、RFによりレーザ媒体であるNガスを介してCOガスに遷移した出力(同図では60μs付近に点線で示す出力)と、COガスがRFにより直接励起された出力(すなわち、点線で示す出力と実線で示す出力に挟まれた出力)との和である。そこで、RF印加が停止されると、RFによりCOガスが直接励起される出力は0になり、時刻T2以降は、レーザ発振器内のレーザ媒体であるNガスに蓄積されたエネルギがレーザとして出力される。なお、レーザ媒体に蓄積されたエネルギは時刻T2以降60μs程度出力される。
【0017】
本発明者は、実験およびシミュレーションにより、以下の要件を確認した。
1.要件1
たとえば、Dty60%(パルス幅60μs)、パルス周期10kHzでRFを印加した場合、出力曲線Cに示されているように、発振されたレーザの出力は徐々に増加してパルス幅60μsで最大になる。そして、RF印加を停止させると、出力が減衰する。そして、レーザ発振器のDty範囲内でレーザを発振させた場合、RF印加時間が変わっても出力は同じ出力曲線(図示の出力曲線C)に沿って上昇する。すなわち、Dty40%(パルス幅40μs)、10kHzで発振させた場合、出力は出力曲線Cを辿って上昇し、パルス幅40μsで最大になり、上記の場合と同様に減衰する。また、Dty20%(パルス幅20μs)、10kHzで発振させた場合も、出力曲線Cに沿って上昇し、パルス幅20μsで最大になり、上記の場合と同様に減衰する。
【0018】
2.要件2
COレーザの場合、時刻T0においてRFの印加を開始すると、時刻T1においてレーザ媒体に蓄積された励起出力によりレーザの発振が開始され、出力が急増して時刻Tjにおいて第1のピーク出力Wjになった後、一旦減衰し(時刻Td)以降は出力が再び増加してRF印加停止時に第2のピーク出力になる。
この場合、時刻Tdは時刻T0から0.4~0.5μsであり、Dty、パルス幅が変わっても、時刻Tdにおける出力応答(単位時間当たりの出力変化)Wsはほぼ一定であることを見いだした。
【0019】
3.要件3
RF印加を停止すると、出力は250Wからレーザ媒体に蓄積された残留出力に切り替わる。切り替わり時間は0.4~0.5μsであり、出力は一旦下がった後、若干上昇し、その後減衰する。以下、出力切り替わり時の出力応答を出力応答Wc、若干上昇するときの出力応答を出力応答Wdという。
そして、上記出力応答WcはDty、パルス幅が変わってもほとんど変わらない値となることを見いだした。なお、出力応答Wcと上記の出力応答Wsとは出力方向が互いに異なるが、出力成分の大きさは殆ど同じである。
【0020】
4.要件4
図2は出力波形例であり、レーザ媒体に蓄積されたエネルギがパルス周期の終点においてRF印加を再開した場合の出力波形である。同図に示すように、RF印加開始時にレーザ媒体に蓄積された残留出力(図中斜線を付して示すΔzであり、RF印加開始時の出力はΔWである。ここで、ΔW>0である。)が存在する場合、次(2つ目)のパルス周期の励起が開始されると、励起された出力は残留出力に重畳されて、0.4~0.5μs後に出力応答Wsで出力が増加するが、このとき、第1のピーク出力Wjは発生しない。なお、ここでは第1のパルス周期と第2のパルス周期との接続部について説明したが、第nのパルス周期まで繰り返すと、出力応答Wsが発生する出力のレベルが徐々に高くなる一方、第2のピーク出力は徐々に低下するが、1秒程度で安定する。
ここで、上記図11の場合は、2つ目のパルス周期が開始される前にレーザ媒体に蓄積された残留エネルギが0になっているため、2つ目のパルス周期の出力曲線は1つ目のパルス周期と同じ出力曲線となる。
【0021】
ここで、出力曲線CにおいてDty60%で連続発振させた出力の積分値(すなわち、パルス周期である0~100μsに出力された全出力)をパルス周期100μsで除した値を平均出力Wavと呼ぶ。
なお、Dtyを一定にした場合、パルス周期が20~200KHzの範囲において、図1に示す平均出力Wavはほとんど変わらない。一方、パルス周波数を一定にした場合、平均出力WavDtyに比例して増加する。また、出力曲線CのRFオン期間の平均出力における接線方向の出力応答Wrと、出力曲線CのRFオフ期間の平均出力における接線方向の出力応答Wfは平均出力に固有の値になる。
なお、図1には、100kHZと200kHzの鋸歯状波が記載されているが、詳細は図3を用いて説明する。
【0022】
図3は、本発明に係る鋸歯状波の生成手順を説明する図である。
出力曲線CにおいてDty=Trf1/tm(ただし、tmはパルス周期であり、RF印加期間Trf1およびRF印加停止期間Trf0からなっている。)を設定すると、平均出力Wavが定まる。パルス周期tmを短くしても、RF印加時間trf1とRF印加停止時間trf0との比率が同じであれば、Dtyは同じであり、平均出力Wavもほとんど変わらない。そこで、本発明に係る鋸歯状波は基本波パルス波形(上記の出力曲線C)および上記要件1~4に基づき生成される。
【0023】
鋸歯状波の生成手順は以下の通りである。
手順1)縦軸を出力軸として、Dtyとパルス周期tmおよび平均出力Wavと上限出力Wpおよび下限出力Wvを設定する。ここで、上限出力Wpは、照射したパルスにより目的とする穴径が得られる出力レベル〔J/s〕であり、材料の閾値に応じた値に設定される。また、下限出力Wvは、連続発振が安定した鋸歯パルスにおいて、RFオン時の出力応答Wsの立ち上がり時刻での出力レベルである。
手順2)横軸を時間軸として、時刻t0における下限出力Wv上の点をQ1、また、パルス周期である時刻t2における下限出力Wv上の点をQ6とする。そして、点Q1を始点とする出力応答Wsをプロットし、出力応答Wsの終点を点Q2とする。
手順3)点Q2と、時刻t1における上限出力Wp上の点Q3を出力応答Wrで結ぶ。なお、時刻t1はTrf1の終点(Trf0の始点)である。
手順4)点Q3を始点として出力応答Wcをプロットし、出力応答Wcの終点を点Q4とする。
手順5)点Q1と点Q4を結ぶ延長線上に小さな出力応答Wdをプロットし、終点を点Q5とする。
手順6)点Q5と点Q6を出力線分Wfで結ぶ。すなわち、点Q5は点Q1と点Q4を結ぶ延長線と点Q6を終点とする出力応答Wfとの交点である。
以上の手順により、下限出力Wvに加えた鋸歯状波が完成する。
以下、下限出力Wvに上記の手順で形成された多角形を重畳した鋸歯状のパルスを「鋸歯状パルス」という。
なお、段落0024で説明したように、レーザ発振器の出力は1秒を超えると安定状態になり、レーザ発振器が稼働状態にある限り、平均出力Wavおよび上限出力Wpの変動幅は±1%程度になる。
また、同図に示すように、点Q1と点Q4を点線で結ぶとすると、四角形Q1Q2Q3Q4に囲まれる出力が段落0016で説明したRFによりCOガスが直接励起された出力に相当する。
ここで、図1には上記の手順で作成した100KHzの鋸歯状パルスと、200KHz鋸歯状パルスがそれぞれ1個記載されている。
【0024】
ここで、Dty一定で、パルス周期tmを変えた場合、出力応答Ws、Wcは変わらない。一方、出力応答Wr、Wd、Wfは、パルス周期tmに応じて変わるが、平均出力Wavはほとんど変化しない。また、パルス周期tm一定で、Dtyを変えた場合、出力応答Ws、Wcはほとんど変わらず、出力応答Wr、Wd、Wfが変化する。この場合、Dtyが小さくなると出力応答Wr、Wd、の増加割合(立ち上がり)が急になり、出力応答Wfの減少割合(立ち下がり)が緩やかになる。一方、Dtyが大きくなると出力応答Wr、Wd、の増加割合(立ち上がり)が緩やかになり、出力応答Wfの減少割合(立ち下がり)が急になる。そして、平均出力はDtyに応じて変わるが、それぞれ固有の値として決まる。
したがって、Dty範囲内で、パルス周期tm、RF印加時間trf1、RF印加停止時間trf0を設定することにより、鋸歯状パルスの波形と出力を制御することができる。実加工においては、前述の波形生成プロセスが連続して行われ、n個の鋸歯状パルス(nは1以上の整数。)が形成される。以後、加工時に供給されるn個の鋸歯状パルスからなるパルスをひとまとめにして「鋸歯nの矩形波パルス」という。
【0025】
図4は鋸歯nの矩形波パルスによる加工例を説明する図で、縦軸は出力、横軸は時間である。
ここで、加工する穴が上記図11で説明したと同じ穴であるとすると、従来技術の場合はパルス周波数10kHzの2パルスで加工したので、レーザ照射時間は20μsが2回、加工時間は1パルス目のパルス周期100μsと2パルス目のRF印加時間20μsと非励起時間60μsを加えた180μsであった。一方、本願の場合、従来と同等のパルスエネルギがえられるパルス周波数100kHzの鋸歯2の矩形波パルスを2回照射して加工する場合、パルス周期の影響を受けないので、2つの矩形パルスの間隔を任意に設定可能であり、仮に2つの鋸歯2の矩形波パルスの間隔を60μsとすると、加工時間は100μsである。従って、本願に依れば従来よりも80μsだけ加工時間を短縮することができる。
【0026】
次に、加工した穴の形状を参照しながら本願と従来技術を説明する。
図5は出力のエネルギ空間分布を説明する図で、(a)は本願の場合、(b)は従来技術の場合であり、縦軸は規格化したエネルギレベルと加工深さを、横軸は穴の径方向である。同図におけるDsは加工部のビームスポット径を、DRは目的とする穴径を、DR1、DR’はDRよりも小径の穴径を、DB,DB’は穴底径を、それぞれ示している。また、Lv0はエネルギレベル0の位置を、Lv1は絶縁層の表面位置を、Lv2は絶縁層の底面位置を、kは絶縁層の加工閾値を示している。
また、epは出力Wp時のエネルギ分布を、evは出力Wv時のエネルギ分布を、eavは平均出力Wav時のエネルギ分布を、1eは第1のパルスのエネルギ分布を、2eは第2のパルスのエネルギ分布を、それぞれ示している。なお、出力Wp、出力Wvおよび平均出力Wavは図3に示した通りである。
本願の加工プロセスを加工した穴の径方向に対応させて、以下説明する。なお、RF印加期間trf1における加工径が増加する時のエネルギ分布を径増加エネルギ分布と呼び、RF印加停止期間trf0の加工径が減少するエネルギ分布を径減少エネルギ分布と呼ぶものとする。RF印加と同時に出力Wvに重畳された出力立ち上がり約0.4μsの出力応答Wsで加工が開始され、次いで出力応答Wsの加工径増加エネルギ分布により加工され、時間trf1が経過すると目的とする穴入り口径が形成される。Rf印加停止と同時に、加工径減少ネルギ分布の出力応答Wc、加工径微増出力応答Wd、加工径減少エネルギ分布出力応答Wfによりさらに加工が行われる。
上記の加工工程において、スポット径DRとDBおよびDR’とDB’で交互に加工が行われる。加工開始時の出力立ち上がりが、従来パルスよりも急峻であり、照射時間は短い。また、RF印加停止後のエネルギ分布径が小さくなり、穴入り口、穴側壁から離れるため、絶縁層加工時の穴入り口と穴側壁面への熱伝導が減る。この結果、穴壁面の絶縁層の熱影響が軽減され、穴品質が向上する。さらに、連続した鋸歯状パルスで加工するため、従来技術のように加工に関与しないRF印加停止後のレーザ照射はされない。したがって、穴入り口と穴側壁面の品質が低下することはない。また、第1のピーク出力の影響を受けないので、穴の入り口径が広がることもない。
【0027】
図6は、本発明に係る2ヘッド式レーザ加工機の構成図であり、図8と同じ物あるいは同一機能の物は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
レーザ発振器1は、レーザ発振を駆動する高周波RFの印加時間と休止時間を設定することにより、周波数50kHz以上の連続した直線偏光鋸歯状のレーザ2を出力する。レーザ発振器1とビームスプリッタ4との間に配置されたビーム径調整装置3はレーザ2のエネルギ密度を調整するための装置であり、レーザ発振器1から出力されたレーザ2の外径を変更することによりレーザ2のエネルギ密度を調整する。すなわち、ビーム径調整装置3の前後におけるレーザ2のエネルギは変化しない。したがって、ビーム径調整装置3から出射されたレーザ2はレーザ発振器1から出力されたレーザ2と見なすことができるので、以下、レーザ発振器1とビーム径調整装置3と、を併せてレーザ出力装置1Aという。なお、ビーム径調整装置3は使用されない場合もある。
ビームスプリッタ4と偏光変換装置5Aとの間にはドライバ61Aにより駆動されるAOM50Aが配置されている。AOM50Aはレーザ2Aを1次光のレーザ2A1Kと0次光のレーザ2A0に分岐し、分岐する割合(開度)を変えることにより、加工に使用するレーザ2A1Kの出力を調整する。加工に使用されないレーザ2A0は周辺に拡散しないようにして図示を省略するダンパに廃棄される。
【0028】
このレーザ加工機は、第2のヘッドBが図示を省略する第2のヘッドB移動装置により、固定の第1のヘッドAに対してX方向に位置決めできるように構成されており、第2のヘッドBの位置を第1のヘッドAに対して最大Sだけ広げられるように構成されている。ミラー31とミラー34は予め定める位置に固定されており、ミラー32,33は図示を省略するミラー移動装置に支持されており、X方向に位置決め自在である。なお、ミラー31~34は、ミラー32,33がX方向のいずれの位置にあっても、アパーチャ8Bの軸線がガルバノミラー10Baの中心に一致するように配置されている。制御装置20は、レーザ発振器1、ビーム径調整装置3、AOMのドライバ61A、61B、プレート7A、7Bの駆動装置、ガルバノミラー10Aa、10Ab、10Ba、10BbおよびX-Yテーブル14A(場合によってはX-Yテーブル14Bを含む)、図示を省略する第2のヘッドBの移動装置およびミラー移動装置を制御する。
【0029】
以下、加工手順を説明する。なお、加工内容はヘッド毎に異なるが、動作としては実質的に同じなので、第1のヘッドAの場合について説明する。
加工開始が指令されると、制御装置20は第2のヘッドBの移動装置を駆動して、第2のヘッドBを指定された位置に移動させる。次に、X-Yテーブルを制御して第1のヘッドAを加工位置に位置決めすると共にガルバノミラー10Aa、10Abを最初の加工位置に位置決めして待機する。また、図示を省略する第2のヘッドBの移動装置を動作させ、第2のヘッドBを第1のヘッドAに対して距離sだけ移動させる。その後、図示を省略するミラー移動装置を動作させ、ミラー32の位置を距離s/2だけヘッド2の移動方向に移動させる。この結果、アパーチャ8とガルバノミラー10Baとの距離は常に一定になるので、第2のヘッドBの位置に関わらず、アパーチャ8の像の大きさを常に一定に保つことができる。
【0030】
そして、先ず、レーザ発振器1を動作させ、予め定められた待ち時間経過後に加工プログラムをスタートさせて加工を開始する。ここで、待ち時間を設ける理由は、レーザ発振器1の出力が熱的な平衡状態に達するまでは不安定になるからであり、時間としては1~2秒程度である。
そして、待ち時間が経過すると、制御装置20は予め入力された加工プログラムに従って、レーザ発振器1から鋸歯状に整形されたレーザ2(以下、単にレーザ2と言う。)を出力させる。レーザ2はビーム径調整装置3により径を変更され、ビームスプリッタ4によりレーザ2Aに分割されて、AOM50に入射する。AOM50は、制御装置20から動作指令を受けるまではレーザ2Aをダンパに廃棄する。制御装置20は、ガルバノミラー10Aa、10Abの内、遅く位置決めされた方の位置決め完了信号を受け取ると、ドライバ61Aを介してAOM50Aを動作させ、レーザ2Aを予め指定された出力に減衰させたn個の鋸歯パルスからなる矩形波パルス2A1Kとして出力させる。矩形波パルス2A1Kはガルバノミラー10Aa、10Abにより位置決めされて、プリント基板13Aの指定された位置に入射してプリント基板13Aに穴を開ける。以下、従来の場合と同様に、指定された加工が完了するまで上記の穴開け動作を繰り返す。なお、上記の加工において、レーザ発振器1は予め指定された周期およびパルス周期でRFをオン・オフすることにより、レーザ2を加工の開始から終了まで連続して出力させる。
【0031】
図7は、本発明におけるガルバノミラーの設定時間とレーザの照射時間を説明する図であり、(a)は加工ヘッドAの場合を、(b)は加工ヘッドBの場合を、それぞれ示している。また、図中の横軸は時間である。
同図に示すように、鋸歯パルスからなるレーザ2A,2Bは加工中常時出力されており、第1のヘッドAの場合、ガルバノ時間GA1またはGA2が完了するとAOM50により、必要とされるn個の鋸歯パルスからなる矩形波パルス2A1Kが加工部に照射されて穴を開ける。この場合、第1のヘッドAは第2のヘッドBのガルバノ時間GB1、GB2を考慮することなく作業を継続する。同様に、第2のヘッドBは第1のヘッドAのガルバノ時間GA1、GA2を考慮することなく作業を継続する。この結果、各ヘッドに待ち時間が発生せず、加工能率を従来よりも20~30%向上させることができる。なお、図示を省略する装置のクロックに従い、ガルバノミラーの位置決めが終了すると、AOM50は、加工部に供給される鋸歯nの矩形波パルスに欠損あるいは欠落が生じないよう、出力が最初の鋸歯パルスのRF印加開始時刻に合うよう制御される。
【0032】
次に、本発明に基づく鋸歯の構成についてさらに詳細に説明する。
図8はフィラ(強化材)入りの絶縁層を加工する場合の矩形波パルスの説明図であり、横軸は時間で、t0~tn9はt0を基準とする時刻である。また、THは1個の鋸歯nの矩形波パルスである。
ここで、上段はAOMの動作を示しており、AはAOMの開度100%、mAはAOMの開度m%である。また、中段はRFのオンオフを示しており、tmはパルス周期、trf1はRFのオン時間、trf0はRFのオフ時間である。また、下段は出力で、図中のWpfは絶縁層のフィラを加工できる上限出力、Wprは絶縁層の樹脂を加工できる上限出力である。
同図(a)の場合、RMオン期間はレーザ径を大きくして主としてフィラを加工し、RMオフ期間はレーザ径を小さくすることで、加工により発生するガスや加工屑を加工部から速やかに除去できるので、穴壁面および穴底の加工品質が向上する。また、同図(b)の場合、同図(a)の場合と同様に、加工により発生するガスや加工屑を加工部から速やかに除去できるので、穴壁面および穴底の加工品質が向上する。
また、同図(c)は、同図(a)の点線で囲んだ部分の変形例であり、同図(a)におけるRMオン期間の出力立ち上がりの途中(図中の時刻td1)から時間taだけAOMをオンするようにした波形制御例である。このようにすると、出力上昇部の高い平均出力Wavhで加工する結果、穴入り口部と穴側壁が均一になり穴品質が向上する。
また、同図(d)は、例えば穴の深さ方向に傾斜をつけたい場合に採用される。
【0033】
次に、加工例について説明する。
図8(a)(b)(c)に示す鋸歯nの矩形波パルス、また図4(b)の従来パルスを適用して、パッケージ用フィラ入り絶縁層(味の素社ABF材厚さ約30μm)に、同径の加工スポット60μmで加工を行った結果は以下の通りである。なお、この図は鋸歯パルスの形状を示すものであり、加工に用いる鋸歯nの矩形波パルスを示しているわけではない。
・同図(a)の場合、周波数100kHzの2つの鋸歯3の矩形波パルス、Dty60%(trf1=6μs、trf0=4μs)、Wpf=20W、期間trf1はAOM開度100%、期間trf0はAOM開度0%とした場合、穴入口径は約62μm、穴(底径/入口径)比は約80%であった。なお、AOM開度0%の場合、図8(a)に斜線を付して示す部分の出力は0である。
・同図(b)の場合、周波数100KHzの2つの鋸歯3の矩形波パルス、Dty60%(trf1=6μs、trf0=4μs)、Wpf=20W、最初の鋸歯はAOM開度100%、2つめの鋸歯はAOM開度0%、3つめの鋸歯はAOM開度100%とした場合、穴入口径は約60μm、穴(底径/入口径)比は約80%であった。
・同図(c)の場合、周波数100KHzの2つの鋸歯3の矩形波パルス、Dty60%、td1=6μsはAOM開度0%、ta=4μsはAOM開度100%の場合、穴入口径は約60μm、穴(底径/入口径)比は約81%であった。
そして、同図(a)(b)、(c)の場合、穴底の銅層表面に樹脂の炭化はほとんどなかった。
ちなみに、図11で示した従来技術により、パルス巾20μs、パルス周波数10kHz、パルス数4で加工した場合、穴入口径は約63μm、穴(底径/入口径)比は約78%であった。また穴底の銅表面に炭化した樹脂の付着がみられた。また、第1のピーク出力Wjが第2のピーク出力WPよりも高いパルスにおいて、出力を増して加工した場合、第1のピーク出力Wjの回折光により、穴入口径が約65μmになり、穴入口周辺がリング状に損傷することがあった。
【0034】
また、ワークの材質によって最適な出力応答Ws、Wc、Wr、Wd、Wfの値は異なる。そこで、出力応答Ws、Wc、Wr、Wd、Wfの値をワークの材質に応じた最適な値とすることにより加工品質および加工速度を向上することができる。
【0035】
なお、実際の加工においては、ワーク毎に出力レベルWp、Wvの値および出力応答Ws、Wc、Wr、Wd、Wfの値は予め知られている。また、定格デューティ、パルス周期を定めた場合のレーザ発振器の最大出力も予め知られている。さらに、加工する穴径に適切なアパ-チャの径も知られている。
そこで、初めての材料を加工する場合には、例えば、先ず、従来のデータを参照してレベルWp、Wvの値を仮に定め、試験により加工した穴径と目的とする穴径を比較して出力レベルWpを増減して定める。次に、鋸歯パルスnで加工を行い、加工された穴の深さによりnの値を定める。このとき、nが大きくなると絶縁層の熱による品質劣化が発生するので、nの数が大きくなる場合には、nを分割して複数の鋸歯mの矩形波パルスを採用すると共に、各矩形波パルス間に加工部冷却のための期間を設ける。
【0036】
なお、図6で示した2ヘッド式レーザ加工機において、レーザ発振器1の出力が250Wである場合、平均出力は125Wであるから、ビームスプリッタ4で分割されて、各ヘッドには62.5Wが供給される。したがって、段落0033で説明したようにWpf=20Wの場合はヘッドA、Bのいずれも加工可能である。しかし、例えば、キャリアPETフィルム付きの樹脂を加工する場合はWpf=70Wとする必要がある。そこで、Wpf=70Wとする必要がある場合は、図6におけるレーザ発振器1の出力を、例えば500Wにする必要がある。
【0037】
また、以上ではRF印加直後に出力される第1のピーク出力がRF印加停止時の第2のピーク出力よりも小さい基本波パルス波形(出力曲線C、出力曲線A1)の出力特性を持つレーザ発振器を例にして説明したが、本願はRF印加直後に出力される第1のピーク出力がRF印加停止時の第2のピーク出力よりも大きい基本波パルス波形の出力特性を持つレーザ発振器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・レーザ発振器
2・・・レーザ
図1
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図4
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図7
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