(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140434
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】着色層形成用組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20220915BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G02B5/22
C09B67/20 F
C09B67/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093144
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2021040750の分割
【原出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】石川 真也
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佳子
(72)【発明者】
【氏名】二俣 開
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA13
2H148CA14
2H148CA15
2H148CA23
2H148CA24
2H148CA27
2H148CA29
(57)【要約】
【課題】光学フィルムにおいて、外部光反射による表示品位を向上することができ、表示装置の発光素子の寿命を向上できるようにする。
【解決手段】活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、溶剤とを含有する着色層形成用組成物において、色素は、極大吸収波長が470nm以上530nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上45nm以下である第1の色材と、極大吸収波長が560nm以上620nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上55nm以下である第2の色材と、400~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が650nm以上780nm以下の範囲にある第3の色材とを含有する。1層以上の機能層を有する透明基材に着色層形成用組成物を用いて形成した厚さ5μmの着色層を有する光学フィルムは、色相の値a*およびb*が、それぞれ-5以上+5以下の範囲となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、溶剤とを含有する着色層形成用組成物であって、
前記色素は、
極大吸収波長が470nm以上530nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上45nm以下である第1の色材と、
極大吸収波長が560nm以上620nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上55nm以下である第2の色材と、
400~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が650nm以上780nm以下の範囲にある第3の色材と、を含有し、
第一面側に形成された1層以上の機能層を有する透明基材の第二面側に前記着色層形成用組成物を用いて形成した厚さ5μmの着色層を有する光学フィルムにおいて、下記式(1)~(9)で定義される色相の値a
*およびb
*が、それぞれ-5以上+5以下の範囲にある、
着色層形成用組成物。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
ここで、λは波長を表す変数、tはX
n、Y
n、Z
nに対するX、Y、Zの比率を表す変数である。
式(1)~(3)から算出されるa
*、b
*はCIE1976L
*a
*b
*色空間(CIELAB色空間)での算出方法に準じて算出される。式(1)、(2)において、X
n、Y
n、Z
nは、D65光源の白色点における3刺激値である。
式(4)において、R
E(λ)は完全拡散反射面での反射率[%]を表す関数(各波長100%)、R2(λ)は前記機能層の最表面での表面反射率[%]を表す関数、T(λ)は前記光学フィルムの透過率[%]を表す関数である。
式(6)~(9)においてP
D65(λ)は、D65光源スペクトル、オーバーラインx(λ)、オーバーラインy(λ)、オーバーラインz(λ)は、CIE1931 2°視野での等色関数である。
式(6)から式(9)における定積分は、適宜の数値積分で求めることができる。数値積分を行う場合の波長間隔は、例えば1nm間隔とできる。
【請求項2】
JIS L 1925に準拠した前記透明基材の紫外線遮蔽率が85%以上である前記光学フィルムは、温度45℃・湿度50%RH条件にてキセノンランプ照度60W/cm2で波長300~400nmの光を120時間照射する耐光性試験前後において、波長範囲470nm~530nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ1における試験前後の透過率差ΔTλ1、波長範囲560nm~620nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ2での試験前後の透過率差ΔTλ2、および波長範囲650nm~780nmにて試験前の最小透過率を示す波長での試験前後の透過率差ΔTλ3が、いずれも20ポイント以下である、
請求項1に記載の着色層形成用組成物。
【請求項3】
添加剤として、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、および一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種類を含有する、
請求項2に記載の着色層形成用組成物。
【請求項4】
前記ラジカル捕捉剤として、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有する、
請求項3に記載の着色層形成用組成物。
【請求項5】
前記一重項酸素クエンチャーとして、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネート、ベンゼンジチオール、およびこれらの遷移金属錯体のいずれかを含有する、
請求項3に記載の着色層形成用組成物。
【請求項6】
前記色素は、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造の何れかを有する化合物およびその金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含む、
請求項1に記載の着色層形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの着色層を形成するための着色層形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子などの自発光素子を備える自発光表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、小型化に優れ、さらに低消費電力、高輝度、高反応速度等の優れた特徴を有し、次世代の表示装置として期待されている。自発光表示装置の表示面の領域内には、金属製の電極や配線が形成されている。このため、表示画面の外部から入射する光(即ち、外部光)が電極や配線で反射するためコントラスト低下などの表示品位の低下を招きやすい。
【0003】
上記の問題を解決するために、例えば自発光表示装置の表面に偏光板および位相遅延板が配置された構成が提案されている。ところが、偏光板および位相差遅延板を用いる構成では、表示装置から出射した光が偏光板および位相差遅延板を通過して外部に放出される際に、大部分の光が損失され、素子寿命の低下を招きやすかった。
【0004】
また、表示装置には高い色純度が求められる。色純度は、表示装置の表示可能な色の広さを示し、色再現範囲とも呼ばれる。よって、高い色純度であることは色再現範囲が広く、色再現性が良いことを意味する。色再現性の向上手段としては、白色光を発光する光源に、カラーフィルタを用いて色分離を行う手法、もしくは三原色RGBの単色光を発光する光源をカラーフィルタで補正し、狭半値化させる手法が知られているが、カラーフィルタを用いて表示装置の色再現性を向上させる場合には、カラーフィルタの厚膜化や色材の高濃度化が必要となり、画素形状や視野角特性の悪化など表示品位を低下させる問題があった。また、三原色RGBの単色光を発光する表示装置に対しては、カラーフィルタの形成工程が必要となり、コスト増となる課題があった。
【0005】
前述の偏光板および位相差遅延板を配置する構成やカラーフィルタを用いる構成とは異なる表示装置として、例えば、特許文献1には、有機発光素子を含む表示基板と、表示基板と離隔配置された封止基板と、を備え、表示基板と封止基板との間の空間に、外部光を波長帯毎に選抜的に吸収して透過率を調節する充填剤が埋められた有機発光表示装置が開示されている。この構成では、外部光反射を抑制して視認性を向上させるとともに、表示装置から出射した光の中で特に色純度を低下させる波長帯域の光を選択的に吸収するため色純度も向上する。しかしながら、開示された技術では、外部光の反射抑制には不十分で、且つ、反射光の色味付きが生じる課題があった。また、特定波長の光を吸収する色材は耐光性などの信頼性が不十分で、実用化は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような従来技術には以下のような問題がある。
偏光板および位相遅延板を用いた装置では、外部光による反射光の光量を抑制できるが、有機発光素子で発生する表示光の光量も低下するという問題がある。
さらに、特許文献1に開示されている波長選択吸収性を有する充填剤では、480nm~510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素と、580nm~610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素、を含有した構成が提案されている。このため、480nm未満の波長帯域、および610nmを超える波長帯域における外部光の影響を除去しにくいという問題がある。このような波長帯域の外部光が抑制できないと、反射率の低減効果が十分でなく、また反射色相の悪化が生じるという問題がある。
さらに、前述の波長選択吸収性が付与される色素は耐光性などの信頼性が不十分で、信頼性を改善しなければ実用化は困難であった。
【0008】
上述の事情を踏まえ、本発明は、表示品位の向上と発光素子の長寿命化を実現可能な光学フィルムの製造に寄与できる着色層形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、溶剤とを含有する着色層形成用組成物である。
色素は、極大吸収波長が470nm以上530nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上45nm以下である第1の色材と、極大吸収波長が560nm以上620nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上55nm以下である第2の色材と、400~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が650nm以上780nm以下の範囲にある第3の色材とを含有する。
第一面側に形成された1層以上の機能層を有する透明基材の第二面側にこの着色層形成用組成物を用いて形成した厚さ5μmの着色層を有する光学フィルムにおいて、下記式(1)~(9)で定義される色相の値a*およびb*は、それぞれ-5以上+5以下の範囲にある。
【0010】
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【0011】
ここで、λは波長を表す変数、tはXn、Yn、Znに対するX、Y、Zの比率を表す変数である。
式(1)~(3)から算出されるa*、b*はCIE1976L*a*b*色空間(CIELAB色空間)での算出方法に準じて算出される。式(1)、(2)において、Xn、Yn、Znは、D65光源の白色点における3刺激値である。
式(4)において、RE(λ)は完全拡散反射面での反射率[%]を表す関数(各波長100%)、R2(λ)は前記機能層の最表面での表面反射率[%]を表す関数、T(λ)は前記光学フィルムの透過率[%]を表す関数である。
式(6)~(9)においてPD65(λ)は、D65光源スペクトル、オーバーラインx(λ)、オーバーラインy(λ)、オーバーラインz(λ)は、CIE1931 2°視野での等色関数である。
式(6)から式(9)における定積分は、適宜の数値積分で求めることができる。数値積分を行う場合の波長間隔は、例えば、1nm間隔とできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部光反射による表示品位を向上することができ、表示装置の発光素子の寿命を向上できる光学フィルムの製造に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムに用いる透明基材の光線透過プロファイルの例を示すグラフである。
【
図3】本発明に係る光学フィルムの反射色相のクロマティクネス指数a
*及びb
*算出方法の説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図7】実施例において有機EL光源及びカラーフィルタを通して出力された白色表示時のスペクトルを示したグラフである。
【
図8】実施例において有機EL光源及びカラーフィルタを通して出力された赤色表示時、緑色表示時、及び青色表示時の各々のスペクトルのグラフである。
【
図9】実施例において表示装置反射特性2、表示装置反射色相2を算出する有機EL表示装置の電極反射率である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。すべての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
図1に厚さ方向の断面を示す本実施形態の表示装置50Aは、画像信号に基づいてカラー画像を表示する。表示装置50Aは、表示部20と、本実施形態の光学フィルム10Aと、を備える。
【0016】
表示部20は、基板21、発光素子22、およびカラーフィルタ部23を備える。
基板21は、例えば、シリコン基板で形成される。
発光素子22は、白色光を発光する。例えば、発光素子22としては、有機EL素子が用いられてもよい。有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流電圧を印加し、有機発光層に電子および正孔を注入して再結合させることにより励起子を生成し、この励起子が失活する際の光の放出を利用して発光する。発光素子22からの光は、有機発光層と直交する光軸を中心として、図示下側から上側に向かう光出射方向に出射する。
発光素子22は、例えば、半導体製造プロセスを用いて基板21上に製造される。
【0017】
各発光素子22における電極は、基板21に形成された金属製の配線を通して図示略の駆動回路に接続されている。駆動回路は、画像信号に基づいて、各発光素子22の点灯および消灯を制御する。
例えば、発光素子22は、赤色成分の画像信号に応じて点灯される第1発光素子22Rと、緑色成分の画像信号に応じて点灯される第2発光素子22Gと、青色成分の画像信号に応じて点灯される第3発光素子22Bと、が、カラー表示を行う各画素内に配置されている。
【0018】
カラーフィルタ部23は、各発光素子22の光放射方向に配置されている。
カラーフィルタ部23は、赤色光を透過させる赤色フィルタ、緑色光を透過させる緑色フィルタ、および青色光を透過させる青色フィルタを有する。赤色フィルタは第1発光素子22Rに、緑色フィルタは第2発光素子22Gに、青色フィルタは第3発光素子22Bに、それぞれ対向する位置に配置されている。
カラーフィルタ部23は、各赤色フィルタ、各緑色フィルタ、および各青色フィルタを透過する光を集光するレンズを有していてもよい。
【0019】
本実施形態の光学フィルム10Aは、表示部20のカラーフィルタ部23上に積層されている。光学フィルム10Aは、表示部20の表示領域における色純度を向上し、外部光反射による表示品位低下を抑制するために設けられている。
光学フィルム10Aは、表示部20の光出射方向において、着色層12、透明基材11、ハードコート層13、および低屈折率層14Aをこの順に備える。
【0020】
透明基材11は、厚さ方向において第1面11aと第2面11bとを有する板またはシートである。透明基材11の第2面11bは、着色層12を挟んで表示部20のカラーフィルタ部23側に配置される。透明基材11の材料における可視光の透過率は100%に近い程好ましい。ここで可視光とは、380nm以上780nm以下の可視光波長帯域の光である。
さらに、透明基材11は、紫外線遮蔽率は85%以上の紫外線吸収機能を有しており、着色層12に含まれる色素を紫外線から保護するための紫外線吸収層として機能する。ここで、紫外線遮蔽率はJIS L 1925に基づいて測定および算出され、290nmから400nmまでの波長範囲における平均透過率(単位;[%])を100%から引いた値[%]で表される。
【0021】
透明基材11の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルム(PET)、トリアセチルセルロースからなるフィルム(TAC)、ポリメチルメタクリレートからなるフィルム(PMMA)、ポリエステルからなるフィルムを好適に利用できる。透明基材11の厚みは、特に限定されないが、10μm~100μmとすることが好ましい。
図2に、これらの材質からなる透明基材の光線透過プロファイルを示す。
図2の例では、各透明基材の紫外線遮蔽率は以下の通りであり、いずれも透明基材11として好適に仕様できる。
TAC:92.9%
PMMA:93.4%
PET:88.6%
【0022】
透明基材11の紫外線吸収性は、例えば、透明基材11を形成するための樹脂材料に紫外線吸収剤を配合することによって付与することができる。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系の化合物を使用できる。
【0023】
着色層12は、色素を含有する層状部であり、透明基材11の第2面11bに重ねて配置されている。このため、着色層12は、表示部20のカラーフィルタ部23側と透明基材11との間に配置されている。
着色層12は、色素として、第1の色材と、第2の色材と、第3の色材と、を含有する。
第1の色材は、極大吸収波長が470nm以上530nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅(半値全幅)が15nm以上45nm以下である。ここで、極大吸収波長とは、光吸収率のスペクトル(吸収スペクトル)において、光吸収率の極大値のうちの最大値を与える波長を意味する。光透過率のスペクトルでは、極小値のうち最小値を与える波長を意味する。以下も同様である。
第2の色材は、極大吸収波長が560nm以上620nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上55nm以下である。
第3の色材は、400~780nmの波長範囲において最も透過率の低い波長が650nm以上780nm以下の範囲内にある。第3の色材の吸光スペクトルの半値幅は、例えば10nm以上300nm以下であるが、特に限定されない。
以下、第1の色材、第2の色材、および第3の色材を総称する場合には、単に色材と称する場合がある。
【0024】
着色層12に含まれる第1の色材、第2の色材、および第3の色材として、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含むものを使用できる。例えば、特に分子内にポルフィリン構造、ピロメテン構造、フタロシアニン構造、スクアリリウム構造を持つ化合物を用いるのが好ましい。
【0025】
また、本発明の光学フィルム10Aは、透明基材11の第1面11a側の機能層であるハードコート層13、および低屈折率層14Aの最表層である表面10a側からD65光源を照射し、光学フィルムの最下層10b側で完全拡散反射した場合の反射率R(λ)を表面10a側から測定した際に、上述の式(1)から式(9)で表される光学フィルムによる反射色相のクロマティクネス指数(値)a*、及びb*のそれぞれが-5以上+5以下の範囲内にある。前述の色相は、国際照明委員会(CIE)によって定められた均等色空間の1つ(CIE1976L*a*b*色空間、或いはCIE LAB色空間とも称される)であり、上述の式(1)、式(2)に加えて下記の式(10)で表される明度指数L*の3つの値を軸とした3次元直交座標で表される。
【0026】
【0027】
ここでYは、D65光源の反射率R(λ)での反射光の3刺激値で式(4)、(5)、(7)、(9)から算出され、Ynは、D65光源の白色点における3刺激値である。
【0028】
本発明の光学フィルムの外部光反射色相の指標とするクロマティクネス指数a
*、及びb
*の算出方法について
図3を用いて詳述する。
【0029】
厚み方向で光学フィルム10Aの機能層の最表層である表面10a面からD65光源を照射した場合、光学フィルム10Aからの出射光は表面反射成分と内部反射成分とに分けて考えることができる。表面反射成分は、表面10aでの表面反射率をR2(λ)[%]によって規定される、内部反射成分は、波長によらず100%とする完全拡散反射面での反射率RE(λ)[%]と、光学フィルム10Aにおける透過率T(λ)と、表面10aでの表面反射率R2(λ)[%]とから、式(4)で算出されるR1(λ)[%]によって規定される。
D65光源照射側の表面10a側での光学フィルム10Aの反射率をR(λ) [%]とすると、R(λ)は、上述の式(5)から算出される。
R(λ)は、R1(λ)およびR2(λ)同様、波長λの関数であるので、式(6)から式(9)のλに関する定積分を求めることで3刺激値X、Y、Zが求まる。ここで、定積分は、適宜の数値積分で求められてもよい。例えば、数値積分を行う場合の波長間隔は、例えば1nm間隔のような等間隔であってもよい。
【0030】
前述のように、式(1)及び式(2)におけるX、Y、Zは前記光学フィルム10Aの表面10a側のD65光源の反射率R(λ)での反射光の3刺激値であり、Xn、Yn、ZnはD65光源の白色点における3刺激値を表す。ここから光学フィルム10Aの外部光反射色相の指標であるクロマティクネス指数a*及びb*を算出できる。外部光反射の表示品位を高める観点から、光学フィルム10Aの外部光反射色相のクロマティクネス指数(値)a*及びb*のそれぞれが-5以上+5以下の範囲内にあることが好ましい。有機発光表示装置等の自発光表示装置の表示部や電極配線部といった内面で生じる内部反射率は、波長380nmから780nmまでの各波長においてそれぞれ異なる値となることが一般的であるが、本発明において鋭意検討した結果、RE(λ)を全ての波長で100%とする完全拡散反射面での反射率とし、光学フィルム10Aの外部光反射色相のクロマティクネス指数(値)a*及びb*のそれぞれが-5以上+5以下の範囲内にある時に、RE(λ)を実際の自発光表示装置の表示部20の内部反射率と置き換えた場合においても外部光反射色相の指標であるクロマティクネス指数a*及びb*は-5以上+5以下の範囲内となり、優れた表示品位となることを見出した。
【0031】
このような構成の着色層12によれば、全体として、470nm以上530nm以下の範囲と、560nm以上620nm以下の範囲に極大吸収波長、すなわち極小透過率を有し、更に400nm~780nmの範囲での最大吸収が650nm以上780nm以下の範囲にある第3色材を含むため620nm~780nmの範囲に極小吸収波長、すなわち極大透過率を有する分光吸収スペクトルが得られる。このため、表示部20から出射される赤色光、緑色光、および青色光の大部分は、着色層12を透過する。
これに対して、着色層12において、赤色光および緑色光の各極大波長の間の波長成分、緑色光および青色光の各極大波長の間の波長成分、紫外光、および赤外光のそれぞれの一部の透過光量は低下する。このため、例えば、外部光が表示部20の配線などで反射した光のうち、表示光の色純度を低下させる波長成分が着色層12で吸収される。
【0032】
着色層12は、添加剤として、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、および一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種類を含有してもよい。このような添加剤が含有されることによって、以下に説明するように、着色層12に含まれる色材の光や熱などによる退色を抑制し、耐久性を向上できる。
【0033】
例えば、ラジカル捕捉剤は、色素が酸化劣化する際のラジカルを捕捉し、自動酸化を抑制する働きを持ち、色素劣化(退色)を抑制する。ラジカル捕捉剤として、分子量が2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いると、高い退色抑制効果が得られる。ラジカル捕捉剤の分子量が低い場合、揮発しやすいため、着色層内へ留まる分子が少なく、十分な退色抑制効果を得ることが難しい。ラジカル捕捉剤として好適に用いられる材料としては、例えば、BASF社製Chimassorb(登録商標)2020FDL、Chimassorb(登録商標)944FDL、Tinuvin(登録商標)622、ADEKA社製LA-63Pなどが挙げられる。
【0034】
過酸化物分解剤としては、色素が酸化劣化した際に発生する過酸化物を分解し、自動酸化サイクルを停止させ、色素劣化(退色)を抑制する働きがある。過酸化物分解剤としては、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を用いることができる。
【0035】
リン系酸化防止剤としては、例えば2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、および6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンなどが挙げられる。
【0036】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル-ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0037】
一重項酸素クエンチャーは、色素を酸化劣化(退色)させやすい性質を持つ反応性の高い一重項酸素を不活性化し、色素の酸化劣化(退色)を抑制する働きがある。一重項酸素クエンチャーとしては遷移金属錯体、色素類、アミン類、フェノール類、スルフィド類が挙げられるが、特に好適に用いられる材料としては、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネートまたはベンゼンジチオールの遷移金属錯体で、中心金属としてはニッケル、銅またはコバルトが好適に用いられる。例えば、(株)林原生物化学研究所 感光色素研究所製NKX1199、NKX113、NKX114、東京化成社製 D1781、B1350、B4360、T3204などが挙げられる。
【0038】
着色層12に含まれる各色材は、優れた色補正機能を有するものの、光線、特に紫外線に対する耐性が十分でないため、紫外線が照射されると経時的に劣化し、極大吸収波長付近の光を吸収できなくなる。
本実施形態では、光学フィルム10Aにおいて、着色層12よりも外部光が先に入射する側に紫外線遮蔽率が85%以上である透明基材11を配置しているため、外部光に含まれる紫外線が、着色層12へ入射する量を抑制できる。このため、着色層12の紫外線に対する耐光性を向上できる。
紫外線吸収機能を有する透明基材11は、
図1に示す例では着色層12が直接形成されているが、透明基材11が着色層12よりも外部光入射側に配置されていればよく、透明基材11と着色層12の間に他の層を挟んで配置されてもよい。
【0039】
また、本実施形態の機能層としてハードコート層13を備えることができる。ハードコート層13は、透明基材11を外力から保護し、光透過性を有する層状部である。ハードコート層13の可視光に対する透過率は、100%に近い方が好ましい。
また、ハードコート層13を配置した光学フィルム10Aの表面硬度は、500gf(4.9N)の荷重(以下、500g荷重)での鉛筆硬度でH以上であり、鉛筆硬度は、JIS-K5600-5-4:1999に基づいて測定される。
【0040】
ハードコート層13は、活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤とを含有する組成物を塗布、乾燥し、紫外線などのエネルギー線を照射し硬化させることによって形成される。
【0041】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射により重合して硬化する樹脂であり、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを使用できる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0042】
単官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
2官能の(メタ)アクリレート化合物の例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0045】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0046】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0047】
上述した活性エネルギー線硬化性樹脂は1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した活性エネルギー線硬化性樹脂、ハードコート層形成用組成物中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0048】
光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、具体例としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、チオキサンソン系化合物、トリアジン系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。例えば、2,2-エトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドやフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等を使用できる。これらのうち1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用して良い。
【0049】
溶剤としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n-ペンチル、およびγ-プチロラクトン等のエステル類、さらにメチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらを単独、もしくは2種類以上合わせて用いても良い。
【0050】
また、ハードコート層13の形成用組成物には、屈折率調整や硬度付与を目的として金属酸化物微粒子を含有してもいい。金属酸化物微粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0051】
また、ハードコート層13の形成用組成物には、撥水性及び/又は撥油性を付与し、防汚性を高める珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有しても良い。
【0052】
また、ハードコート層13の形成用組成物には、その他の添加剤として、レベリング剤、消泡剤、光増感剤、四級アンモニウムカチオンや導電性金属微粒子等の導電材料等を加えても良い。導電性材料は、光学フィルムに帯電防止性を付与する。
【0053】
また、本実施形態の機能層として低屈折率層14Aを備えることができる。低屈折率層14Aは光学フィルム10Aが表示装置50Aに適用される際に、表示を見る使用者(視認者)に最も近い側に配置される。本実施形態では、低屈折率層14Aは、ハードコート層13における透明基材11と反対側の表面に積層されている。低屈折率層14Aの層厚は、特に限定されないが40nm~1μmとする事が好ましい。
低屈折率層14Aは、ハードコート層13よりも屈折率が低い材料からなる。これにより、外部から入射する外部光のハードコート層13との界面における反射光と、低屈折率層14Aの表面での反射光とが干渉を起こすので、外部光の表面反射率が低減される。低屈折率層14Aを設けることによって外部光の表面反射を抑制することができるので、表示装置50Aの視認性が向上する。
低屈折率層14Aは、無機物や無機化合物からなる層状部である。無機物や無機化合物としては、LiF、MgF、3NaF・AlF、AlF、Na3AlF6等の微粒子やシリカ微粒子などを例示できる。また、シリカ微粒子として、多孔質シリカ微粒子や中空シリカ微粒子などの粒子内部に空隙を有するものを用いることが、低屈折率化に有効である。また、低屈折率層14Aの形成用組成物には、無機物や無機化合物のほか、ハードコート層13で説明した活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤、その他添加剤を適宜配合してもよい。
【0054】
低屈折率層14Aの形成用組成物には、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有してもよい。これらの材料を含有することで、低屈折率層14に撥水性及び/または撥油性が付与され、防汚性を高めることができる。
【0055】
着色層12は透明基材11の11b側に形成される1層以上の層状部であり、その形成用組成物には、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、添加剤と、溶剤とを含有している。活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤は、それぞれハードコート層13で説明したものを使用する事ができる。
色素は、上述した、第1の色材と、第2の色材のうち少なくとも一方と、第3の色材と、を含んでいる。添加剤としては、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、および一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種類を含有する。
【0056】
光学フィルム10Aは、透明基材11の第2面11b上に着色層12を形成し、透明基材11の第1面11a上にハードコート層13および低屈折率層14Aをこの順に形成することにより製造できる。ただし、着色層12と、ハードコート層13および低屈折率層14Aと、は、特に限定されない。例えば、着色層12を先に形成した後に、ハードコート層13および低屈折率層14Aを形成してもよいし、この逆の順に形成してもよい。着色層12、ハードコート層13及び低屈折率層14Aは各層の構成材料を含む塗工液を塗工、乾燥し、紫外線などの活性エネルギー線を照射し硬化する事で形成できる。また、低屈折率層14Aは、このほかに例えば蒸着やスパッタリング等によっても形成できる。
【0057】
また、本実施形態の光学フィルム10Aは、必要な正面輝度、外部光反射視認性、及び表示光の色純度が得られれば、光学フィルムの透明基材11の第1面11a側に他の機能層を適宜設けてもよい。
【0058】
表示装置50Aは、表示部20を準備し、光学フィルム10Aにおける着色層12をカラーフィルタ部23の表面に、粘着層等を介して貼り合わせ、固定することで製造できる。
【0059】
本実施形態の表示装置50Aによれば、画像信号に応じて、発光素子22が点灯されると、発光素子22で発生した表示光はカラーフィルタ部23を透過する。これにより、第1発光素子22Rからの光は赤色光として、第2発光素子22Gからの光は緑色光として、第3発光素子22Bからの光は青色光として、着色層12、透明基材11、ハードコート層13、および低屈折率層14Aを透過して、光学フィルム10Aの外部に出射する。 このとき、着色層12は、表示光の赤色、緑色、および青色の波長光の透過率が良好な波長帯域を有するので、各色の表示光の輝度低下を抑制することができ、各色表示光の色純度を向上することができる。また、透明基材11では、主に紫外線領域の光を吸収するので、表示光はほとんど輝度が低下することなく透過する。低屈折率層14Aは、可視光に対する透過率が良好なので、表示光はほとんど輝度が低下することなく外部に出射する。
【0060】
一方、表示装置50Aには、光学フィルム10Aを通して外部光が入射する。
低屈折率層14Aによって、外部光の表面反射率が抑制されるので、外部光の表面反射が強すぎることによる視認性の低下が抑制される。
透明基材11に入射する外部光は、紫外線領域の波長成分が透明基材11によって吸収された状態で、着色層12に入射する。
着色層12では、外部光における着色層12に含まれる各色材の吸収波長付近の波長成分がさらに吸収される。この後、外部光は、カラーフィルタ部23を透過し、基板21に到達する。基板21には、例えば、配線や電極などの反射率が高い金属部分が含まれる。 このため、外部光は、配線や電極などで反射して、カラーフィルタ部23、着色層12、透明基材11、ハードコート層13、および低屈折率層14Aを順次透過して、外部に出射する。
表示装置50Aの観察者は、表示光に加えて、表示装置50Aの外部光による表面反射光及び外部光が表示装置50A内部を透過し、反射する内部反射光をあわせた反射光を見る。
【0061】
本実施形態では、外部光は、着色層12を2回透過して、外部に出射することで、表示光の波長成分と異なる波長成分が低減されるため外部光の内部反射を低減しつつ、表示光の輝度低下を抑制することができ表示光の色純度を向上させる。
また、表示装置50Aが非表示状態の場合においても、光学フィルム10Aの外部反射光の反射色相の指標であるクロマティクネス指数a*、b*の値を-5以上かつ+5以下にすることで光学フィルムの色味影響が小さくなり表示画面の黒味が保たれる。
本実施形態では、透明基材11によって、外部光の紫外光成分が吸収されるので、着色層12が紫外線を受けることによって、色材が劣化することが防止される。このため、着色層12における色材の分光特性は、経時的に維持されやすい。
【0062】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
図4に厚さ方向の断面を示す本実施形態の表示装置50Cは、第1の実施形態の表示装置50Aの光学フィルム10Aに代えて、本実施形態の光学フィルム10Cを備える。
光学フィルム10Cは、着色層12とハードコート層13との間に、酸素バリア層16を備える以外は、光学フィルム10Aと同様に構成される。
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0063】
酸素バリア層16は光透過性を有する透明な層である。酸素バリア層16の酸素透過度は、10cc/m2・day・atm以下である。酸素バリア層16の主な構成材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビリニデン、シロキサン樹脂等を含有するのが好ましく、三菱ガス化学社製のマクシーブ(登録商標)、株式会社クラレ製のエバール(登録商標)、ポバール、旭化成株式会社のサランラテックス(登録商標)、サラン(登録商標)レジン等を用いることができる。また、酸素バリア層16には、酸素透過度を低減するためにシリカ粒子、アルミナ粒子、銀粒子、銅粒子、チタン粒子、ジルコニア粒子、スズ粒子などの無機物粒子が分散していてもよい。
【0064】
光学フィルム10Cが表示装置50Cに取り付けられた場合、外気に含まれる酸素は、酸素バリア層16を透過しなければ着色層12に到達しない。これにより外気中の酸素が介在した着色層12の各色材の光や熱による劣化が抑制される。このため、着色層12の光吸収性能が長時間持続する。
【0065】
本実施形態の酸素バリア層16は、酸素の進入を抑制したい適宜の部位に配置できる。 例えば、表示装置50Bの外部から着色層12に進入する酸素を抑制したい場合には、酸素バリア層16は、着色層12よりも外部側の適宜の部材間または層間に配置することができる。
例えば、表示装置50Bの表示部20の方から着色層12に進入する酸素を抑制したい場合には、酸素バリア層16は、カラーフィルタ部23と着色層12との間にも配置することができる。
【0066】
本実施形態の光学フィルム10Cおよび表示装置50Cによれば、第1の実施形態と同様の着色層12、ハードコート層13、および低屈折率層14Aを備えるので、第1の実施形態と同様の作用を備える。
特に本実施形態の光学フィルム10Cは、酸素バリア層16をさらに備えるので、着色層12の色素の酸素影響による光や熱による酸化劣化を抑制できる。
【0067】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置について説明する。
図5は、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
図5に厚さ方向の断面を示す本実施形態の表示装置50Dは、第1の実施形態の表示装置50Aの光学フィルム10Aに代えて、本実施形態の光学フィルム10Dを備える。
光学フィルム10Dは、低屈折率層14Aおよびハードコート層13に代えて、防眩層17を備える以外は、光学フィルム10Aと同様に構成される。
以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0068】
防眩層17は、防眩機能を備える層状部である。
防眩機能とは、表面に微細な凹凸を有し、この凹凸で外光を散乱させることにより外光の映り込みを低減する機能である。
防眩層17を備える光学フィルム10D表面の鉛筆硬度は、第1の実施形態と同様にH以上である。
【0069】
防眩層17は、ハードコート層13と同様の組成物に加えて、防眩機能を付与する有機微粒子及び/または無機微粒子とを含有する塗工液を硬化させることによって形成することができる。有機微粒子は、防眩層17表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与するものであり、例えばアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。屈折率や樹脂粒子の分散性を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用しても良い。無機微粒子は、防眩層17中の有機微粒子の沈降や凝集を調整するものであり、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナや酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア、ジルコニア等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであっても良く、両者の混合物を使用しても良い。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。合成スメクタイトは、防眩層形成用の塗工液の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。
【0070】
防眩層17形成用組成物は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有しても良い。これらの材料は、防眩層17に撥水性及び/又は撥油性を付与し、光学フィルム10Dの防汚性を高めることができる。
【0071】
防眩層17は、第1面11a側から順に、相対的に屈折率が高い層と、相対的に屈折率が低い層とが積層された層として形成してもよい。材料を偏在させた防眩層17は、例えば、表面修飾したシリカ微粒子又は中空シリカ微粒子を含有する低屈折率材料と、高屈折率材料とを含有する組成物を塗工し、両者の表面自由エネルギーの差を利用して相分離させることにより形成することができる。防眩層17を相分離した2層で構成する場合、透明基材11a側の相対的に屈折率が高い層の屈折率を1.50~2.40とし、光学フィルム10Dの表面側の相対的に屈折率が低い層の屈折率を1.20~1.55とすることが好ましい。
【0072】
本実施形態の光学フィルム10Dおよび表示装置50Dによれば、第1の実施形態と同様の着色層12と、透明基材11と、を備えるので、第1の実施形態と同様の作用を備える。
特に本実施形態の光学フィルム10Dは、防眩層17を備えるので、外部光が、防眩層17において散乱される。このため、外部光の表面反射および映り込みが抑制されるので、表示画面および表示光の視認性が向上し、外部光反射による表示品位の低下が抑制できる。
【0073】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置について説明する。
図6は、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムおよび表示装置の一例を示す模式的な断面図である。
図6に厚さ方向の断面を示す本実施形態の表示装置50Eは、第3の実施形態の表示装置50Dの光学フィルム10Dに代えて、本実施形態の光学フィルム10Eを備える。
光学フィルム10Eは、防眩層17に低屈折率層14Eを積層した以外は、光学フィルム10Dと同様に構成される。
以下、第3の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0074】
低屈折率層14Eは、防眩層17の屈折率に比べて低い屈折率を有する以外は、第1の実施形態における低屈折率層14Aと同様である。
これにより、外部から入射する外部光の防眩層17との界面における反射光と、低屈折率層14Eの表面での反射光とが干渉を起こすので、外部光の反射率が低減される。
低屈折率層14Eを設けることによって外部光の反射を抑制することができるので、表示装置50Eの視認性が向上する。
【0075】
本実施形態の光学フィルム10Eおよび表示装置50Eによれば、第3の実施形態と同様の着色層12と、防眩層17と、を備えるので、第3の実施形態と同様の作用を備える。
特に本実施形態の光学フィルム10Eは、外部側に低屈折率層14Eを有する点でも、外部光の表面反射および映り込みが抑制されるので、表示画面および表示光の視認性が向上し、外部光反射による表示品位の低下が抑制できる。
【0076】
なお、上記各実施形態および変形例では、発光素子が有機EL素子の場合で説明した。しかし、発光素子の種類は、有機EL素子には限定されない。例えば、発光素子の例としては、白色LED素子、無機蛍光体発光素子、量子ドット発光素子などが挙げられ、光源が三原色RGBの単色光を発光する場合は、カラーフィルタ部23を除いた表示部20の構成も可能である。
【0077】
上記各実施形態および変形例では、光学フィルムが、低屈折率層、ハードコート層、酸素バリア層、防眩層など、着色層以外の種々の機能層の構成を述べたが、光学フィルムの機能層の構成は、これらには限定されない。
例えば、光学フィルムは、撥水性を有する防汚層や、導電性材料を含有した帯電防止層を有していてもよい。また、上述の機能層は、各機能層の機能を2以上備える層状部であってもよい。
【0078】
上記各実施形態および変形例では、少なくとも透明基材が紫外線吸収性を有する場合の例で説明した。しかし、光学フィルムは、紫外線吸収機能を有する紫外線吸収層をさらに備えてもよい。光学フィルムは、着色層または着色層以外の機能層が紫外線吸収層を兼ねていてもよい。
例えば、紫外線吸収層は、紫外線の照射を防止したい層状部よりも外側に配置されてもよい。この場合、光学フィルムの外部から照射される紫外線からより内側の層状部を保護できる。
【実施例0079】
本発明に係る光学フィルムについて、実施例1~12および比較例1~6を用いてさらに説明する。本発明は、以下の各実施例の具体的内容によって何ら限定されない。
【0080】
以下の実施例及び比較例では、下記[表1]、[表2]に示す層構成の光学フィルム1~18を作製し、作製した光学フィルム1~15について光学フィルムの特性を評価した。また、光学フィルム7、12、16~18を用いて、有機ELパネルの表示装置特性をシミュレーションにより確認した。
【0081】
【0082】
【0083】
<光学フィルムの作製>
以下、各層の形成方法を説明する。
【0084】
[着色層の形成]
(着色層形成用組成物の使用材料)
着色層形成に用いる着色層形成用組成物の使用材料として下記のものを用いた。
なお、色材の最大吸収波長及び半値幅は硬化塗膜での特性値を分光透過率より算出した。・第1色材:
Dye-1 下記化学式1で示されるピロメテンコバルト錯体染料(最大吸収波長 493nm、半値幅 26nm)
【0085】
【0086】
・第2色材:
Dye-2 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山田化学社製 FDG-007、最大吸収波長595nm、半値幅 22nm)
Dye-3 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(山本化成社製 PD-311S、最大吸収波長 586nm、半値幅 22nm)
・第3色材:
Dye-4 フタロシアニン銅錯体染料(山田化学社製 FDN-002、最大吸収波長 800nm、400~780nmでの最小透過率波長 780nm)
Dye-5 フタロシアニンコバルト錯体染料(山田化学社製 FDR-002、最大吸収波長 683nm、400~780nmでの最小透過率波長 683nm)
・添加剤:
ヒンダードアミン系光安定剤 Chimassorb(登録商標)944FDL(BASFジャパン社製、分子量 2000~3100)
ヒンダードアミン系光安定剤 Tinuvin(登録商標)249(BASFジャパン社製、分子量 482)
一重項酸素クエンチャー D1781(東京化成工業社製)
・紫外線吸収剤:
Tinuvin(登録商標)479(BASFジャパン社製、極大吸収波長 322nm)
LA-36(ADEKA社製、極大吸収波長 310nm、350nm)
・活性エネルギー線硬化樹脂:
UA-306H(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート ヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー)
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
・開始剤:Omnirad(登録商標) TPO(IGM Resing B.V.社製、吸収波長ピーク 275nm,379nm)
・溶剤:
MEK(メチルエチルケトン)
酢酸メチル
【0087】
(透明基材)
透明基材としては、下記のものを用いた。
・TAC:トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 TG60UL、基材厚60μm、紫外線遮蔽率92.9%)
・PMMA:ポリメチルメタクリレートフィルム(住友化学社製 W001U80、基材厚80μm、紫外線遮蔽率93.4%)
・PET1:ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製 SRF、基材厚80μm、紫外線遮蔽率 88.3%)
・PET2:ポリエチレンテレフタレートフィルム(SKC社製 TOR20、基材厚40μm、紫外線遮蔽率88.6%)
【0088】
(着色層形成)
[表1]、「表2」に示した透明基材の一方面に、表3に示す着色層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させた。その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmとなるよう着色層1~8を形成した。なお、添加量は質量比である。
【0089】
【0090】
[機能層の形成]
・酸素バリア層1形成組成物:
PVA117(クラレ社製)80%水溶液
【0091】
(酸素バリア層形成)
[表1]に示した実施例11の構成上に、上記の酸素バリア層1形成用組成物を塗布、乾燥させ、酸素透過度が1cc/m2・day・atmである酸素バリア層1を形成した。
【0092】
(ハードコート層形成用組成物の使用材料)
ハードコート層形成に用いるハードコート層形成用組成物の使用材料として下記のものを用いた。
・紫外線吸収剤:
Tinuvin(登録商標)479(BASFジャパン社製、極大吸収波長 322nm)
LA-36(ADEKA社製、極大吸収波長 310nm、350nm)
・活性エネルギー線硬化樹脂:
UA-306H(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー)
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
・開始剤:
Omnirad(登録商標) TPO(IGM Resins B.V.社製、吸収波長ピーク 275nm,379nm)
Omnirad(登録商標) 184(IGM Resins B.V.社製、吸収波長ピーク 243nm,331nm)
・溶剤:
MEK(メチルエチルケトン)
酢酸メチル
【0093】
(ハードコート層形成)
[表1]及び[表2]に示した透明基材上、着色層上または酸素バリア層上に、下記[表4]に示すハードコート層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2で紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである[表1]及び[表2]に記載のハードコート層1及び2を形成した。
【0094】
【0095】
(防眩層1形成用組成物)
防眩層1形成用組成物として下記のものを用いた。
・活性エネルギー線硬化樹脂:
ライトアクリレートPE-3A(共栄社化学株式会社製、屈折率1.52) 43.7質量部
・光重合開始剤:
Omnirad(登録商標) TPO(IGM Resins B.V.社製、吸収波長ピーク 275nm,379nm) 4.55質量部
・樹脂粒子:
スチレン-メタクリル酸メチル共重合体粒子(屈折率1.515、平均粒径2.0μm) 0.5質量部
・無機微粒子1:
合成スメクタイト 0.25質量部
・無機微粒子2:
アルミナナノ粒子、平均粒径40nm 1.0質量部
・溶剤
トルエン 15質量部
イソプロピルアルコール 35質量部
【0096】
(防眩層の形成)
[表1]に示した透明基材上に、防眩層1形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cm2で紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである[表1]に記載の防眩層1を形成した。
【0097】
(低屈折率層1形成用組成物)
低屈折率層1形成用組成物として下記のものを用いた。
・屈折率調整剤:
多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径75nm、固形分20%、溶剤メチルイソブチルケトン) 8.5質量部
・防汚性付与剤:
オプツールAR-110(ダイキン工業社製、固形分15%、溶剤メチルイソブチルケトン) 5.6質量部
・活性エネルギー線硬化樹脂:
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.4質量部
・開始剤:
Omnirad(登録商標) 184(IGM Resins B.V.社製) 0.07質量部
・レベリング剤:
RS-77(DIC社製) 1.7質量部
・溶剤:
メチルイソブチルケトン 83.73質量部
【0098】
(低屈折率層1の形成)
[表1]及び[表2]に記載のハードコート層上、防眩層上に、上記組成の低屈折率層1形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/cm2で紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、硬化後の膜厚が100nmである[表1]及び[表2]に記載の低屈折率層1を形成した。
【0099】
[フィルム特性評価]
得られた光学フィルム1~15について以下の評価を行った。
【0100】
(紫外線遮蔽率)
着色層より上層に透明基材となる実施例1~12は、基材を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて透過率を測定した。また、着色層が基材より上層にくる比較例1~3については、JIS-K5600付着性試験準拠のセロハンテープを用いて着色層より上層を剥離し、自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用い、粘着テープをリファレンスとして着色層上層の透過率を測定した。これらの透過率を用いて、紫外域(290nm~400nm)の平均透過率[%]を算出し、紫外線遮蔽率[%]を100%から紫外域(290nm~400nm)の平均透過率[%]を引いた値として算出した。
【0101】
(鉛筆硬度試験)
光学フィルムの表面に、クレメンス型引掻き硬度試験機(テスター産業株式会社製、HA-301)を用いて、JIS-K5600-5-4:1999に準拠して、500gf(4.9N)の荷重(以下、500g荷重)をかけた鉛筆(三菱鉛筆社製 UNI、鉛筆硬度H)を用いて試験を行い、キズによる外観の変化を目視で評価し、キズが観察されない場合を良い(下記[表5]、[表6]では「〇」と記載)、キズが観察される場合を不良(下記[表6]では「×」と記載した。
【0102】
(耐光性試験)
得られた着色層を含む光学フィルムの信頼性試験として、キセノンウェザーメーター試験機(スガ試験機株式会社製、X75)を用い、キセノンランプ照度60W/cm2(300nm~400nm)、試験機内温度45℃・湿度50%RH条件にて120時間試験し、試験前後に自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて透過率測定を行い、波長範囲470nm~530nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ1での試験前後透過率差ΔTλ1、波長範囲560nm~620nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ2での試験前後透過率差ΔTλ2、波長範囲650nm~780nmにて試験前の最小透過率を示す波長での試験前後での透過率差ΔTλ3を算出した。透過率差はゼロに近い方が良好であり、|ΔTλN|≦20(N=1~3)となるものが好ましく、|ΔTλN|≦10(N=1~3)となるものが更に好ましい。
【0103】
上記の項目について評価した結果を下記[表5]、[表6]に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
[表5]及び[表6]に示したように、紫外線遮蔽率85%以上の透明基材を上層に備えることで光学フィルムの硬度が保持され、第1から第3の色材を含む着色層の耐光性も大幅に改善された。紫外線吸収能を着色層に設けることでは効果が小さく、上層へ別層として配置する形成が好ましい。また、酸素遮断層を積層すること、及び、着色層内にラジカル捕捉剤として高分子量のヒンダードアミン光安定剤、一重項酸素クエンチャーとしてジアルキルジチオカルバネートニッケル錯体を含有することによって、着色層の耐光性がさらに改善された。
【0107】
[表示装置特性評価]
得られた光学フィルム7、12、16~18について以下の評価を行った。
【0108】
(白表示透過特性)
得られた光学フィルムの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この透過率を用いて、白表示時に光学フィルムを透過した光の効率を算出し、白表示透過特性として評価した。前述の効率については、白色有機EL光源(以下、有機EL光源という場合がある)から出射され、且つカラーフィルタを通して出力される白表示時の各波長における光強度を100としたときに、光学フィルムを透過した光の各波長における光強度値との比として算出した。光強度比が高いほど光源の輝度効率が高い。EL光源が出射する光のスペクトルを
図7に示した。
【0109】
(表示装置反射特性1)
得られた光学フィルムの透過率T(λ)及び表面反射率R2(λ)を、自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定した。表面反射率R2(λ)の測定については、透明基材のトリアセチルセルロースフィルムの着色層および機能層が形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布して反射防止の処置を行い、入射角5°の分光反射率測定を行い、表面反射率R2(λ)とした。電極反射率RE(λ)を波長380nmから780nmまで全て100%として、光学フィルムを配置せずD65光源が反射する反射光の光強度を100とした場合の相対反射値を、各層での界面反射、表面反射を考慮せず上述の式(4)、(5)、(7)、(9)に基づいて算出し、表示装置反射特性1として評価した。相対反射値が低いほど反射光の強度が小さく、表示品が高い。
【0110】
(表示装置反射色相1)
得られた光学フィルムの透過率T(λ)及び表面反射率R2(λ)を自動分光光度計(型番;U-4100、株式会社日立製作所製)を用いて測定した。表面反射率R2(λ)の測定については、透明基材のトリアセチルセルロースフィルムの着色層および機能層が形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布して反射防止の処置を行い、入射角5°の分光反射率測定を行い、表面反射率R2(λ)とした。電極反射率RE(λ)を波長380nmから780nmまで全て100%として、D65光源に対する反射色相のクロマティクネス指数(値)a*及びb*を、各層での界面反射及び表面反射を考慮せず上述の式(1)~(9)に基づいて算出し、表示装置反射色相1として評価した。
a*およb*は、ゼロに近いほど色味づきがなく良好であり、-5以上+5以内となることが好ましい。
【0111】
(表示装置反射特性2)
電極反射率R
E(λ)を
図9に示す有機発光表示装置(LGエレクトロニクス社製有機ELテレビ、OLED55C8PJA)の反射率測定より得られた電極反射率とした以外は、表示装置反射特性1と同様に算出した結果を表示装置反射特性2として評価した。表示装置反射特性1と同様に相対反射値が低いほど反射光の強度が小さく、表示品位が高い。
【0112】
(表示装置反射色相2)
電極反射率R
E(λ)を
図9に示す有機発光表示装置(LGエレクトロニクス社製有機ELテレビ、OLED55C8PJA)の反射率測定より得られた電極反射率とした以外は、表示装置反射色相1と同様に算出した結果を表示装置反射色相2として評価した。表示装置反射色相1と同様に、a
*およb
*は、ゼロに近いほど色味づきがなく良好であり、-5以上+5以内となることが好ましい。
【0113】
(色再現性)
得られた光学フィルムの透過率を自動分光光度計((株)日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この透過率と、
図7に示したスペクトルの有機EL光源とカラーフィルタとを通して出力される
図8に示す赤色表示、緑色表示、青色表示スペクトルとを用いて算出されるCIE1931色度値からNTSC比を算出し、色再現性として評価した。NTSC比が高いほど色再現性が広く、好ましい。
【0114】
上記の項目について評価した結果を下記[表7]に示す。
【0115】
【0116】
[表7]に示すように、着色層を備える表示装置は反射特性が大幅に低くなった。また、円偏光板では透過率が半減するといわれているのに対し、白表示透過特性の評価値に示されるように着色層を備える表示装置は輝度効率にも優れ、さらに色再現性も向上した。また、本実施例に示す第1、第2、第3色材を備える着色層は、電極反射RE(λ)が波長380nmから780nmまで全ての波長で100%の場合の反射色相のクロマティクネス指数a*及びb*のそれぞれを、-5以上+5以下の範囲内となるように、色材の吸収強度を調整することが可能であった。すなわち、反射色相をニュートラルに近づけることが可能であった。また、この特性は、実際の有機発光表示装置の電極反射率に変更した表示装置反射色相2においても、反射色相をニュートラルに維持できることが示され、表示装置の表示品位を向上させることが確認された。前述の通り、様々な波長分散性を有する有機発光表示装置の電極反射率に対して、第1、第2、第3色材の配合比を調整することで着色層を備える光学フィルムの反射色相をニュートラルにすることも本発明の一態様である。
【0117】
以上、本発明の好ましい各実施形態および変形例を実施例とともに説明したが、本発明は、各実施形態および各実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。