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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140435
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】粘着層形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20220915BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20220915BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220915BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220915BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
G02B5/22
C09B67/20 F
C09B67/20 G
C09J7/38
C09J11/06
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093147
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2021040751の分割
【原出願日】2021-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】石川 真也
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佳子
(72)【発明者】
【氏名】二俣 開
【テーマコード(参考)】
2H148
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA13
2H148CA14
2H148CA15
2H148CA19
2H148CA23
2H148CA25
2H148CA27
4J004AA10
4J004AB01
4J004FA08
4J040DF021
4J040JB09
4J040KA35
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】表示装置における表示品位の向上と発光素子の長寿命化を実現する。
【解決手段】粘着剤と色素とを含有し、前記色素は、極大吸収波長が470nm以上530nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上45nm以下である第1の色材と、極大吸収波長が560nm以上620nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上55nm以下である第2の色材と、400~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が650nm以上780nm以下の範囲にある第3の色材とを含有する。厚み25μmの着色粘着層と紫外線遮蔽率が85%以上の紫外線吸収層とを有する粘着シートにおいて、色相の値a及びbが、それぞれ-5以上+5以下の範囲にある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤と色素とを含有する粘着層形成用組成物であって、
前記色素は、極大吸収波長が470nm以上530nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上45nm以下である第1の色材と、極大吸収波長が560nm以上620nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上55nm以下である第2の色材と、400~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が650nm以上780nm以下の範囲にある第3の色材とを含有し、
前記粘着層形成用組成物によって形成された厚み25μmの着色粘着層と前記着色粘着層の一方の面に設けられたJIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上の紫外線吸収層とを有する粘着シートにおいて、下記式(1)~(9)で定義される色相の値a及びbが、それぞれ-5以上+5以下の範囲にある、
粘着層形成用組成物。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
ここで、
λは波長を表す変数であり、tはX、Y、Zに対するX、Y、Zの比率を表す変数である。
式(1)~(3)から算出されるa、bはCIE1976L 色空間 (CIELAB色空間)での算出方法に準じて算出される。式(1)、(2)においてX、Y、ZはD65光源の白色点における3刺激値である。
式(4)においてR(λ)は完全拡散反射面での反射率[%]を表す関数(各波長100%)、R2(λ)は前記紫外線吸収層に対して前記着色粘着層に接する側とは反対側の前記粘着シートにおける最表面での表面反射率[%]を表す関数、T(λ)は前記粘着シートの透過率[%]を表す関数である。
式(6)~(9)にPD65(λ)は、D65光源スペクトル、オーバーラインx(λ)、オーバーラインy(λ)、オーバーラインz(λ)は、CIE1931 2°視野での等色関数である。
式(6)から式(9)における定積分は、適宜の数値積分で求められてもよい。例えば、数値積分を行う場合の波長間隔は、1nm間隔であってもよい。
【請求項2】
前記粘着シートは、温度45℃及び湿度50%RH条件においてキセノンランプ照度60W/cmで波長300~400nmの光を120時間照射する耐光性試験前後において、波長範囲470nm~530nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ1における試験前後の透過率差ΔTλ1、波長範囲560nm~620nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ2での試験前後の透過率差ΔTλ2、及び波長範囲650nm~780nmにて試験前の最小透過率を示す波長での試験前後の透過率差ΔTλ3が、何れも20ポイント以下である、
請求項1に記載の粘着層形成用組成物。
【請求項3】
添加剤として、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、及び一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種類を含有する、
請求項1又は2に記載の粘着層形成用組成物。
【請求項4】
前記ラジカル捕捉剤として、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有する、
請求項3に記載の粘着層形成用組成物。
【請求項5】
前記一重項酸素クエンチャーとして、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネート、ベンゼンジチオール、及びこれらの遷移金属錯体のいずれかを含有する、
請求項3に記載の粘着層形成用組成物。
【請求項6】
前記色素は、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造の何れかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を含む、
請求項1に記載の粘着層形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着層形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置等の自発光表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、小型化に優れ、さらに低消費電力、高輝度、高反応速度等の優れた特徴を有し、次世代の表示装置として期待されている。自発光表示装置の表示面の領域内には、金属製の電極や配線が形成されている。これらの金属性の電極や配線は、外部から入射する光(即ち、外部光)を反射するので、コントラスト低下等の表示品位の低下を招きやすい。
【0003】
上記の表示品位低下を抑えるために、例えば自発光表示装置の表面に偏光板及び位相遅延板が配置された構成が提案されている。ところが、偏光板及び位相遅延板を用いる構成では、表示装置から出射した光が偏光板及び位相遅延板を通過して外部に放出される際に、大部分の光が損失され、素子寿命の低下を招きやすかった。
【0004】
また、表示装置には高い色純度が求められる。色純度は、表示装置の表示可能な色の広さを示し、色再現範囲とも呼ばれる。よって、高い色純度であることは色再現範囲が広く、色再現性が良いことを意味する。色再現性の向上手段としては、白色光を発光する光源にカラーフィルタを用いて色分離する手法、もしくは三原色RGBの単色光を発光する光源をカラーフィルタで補正し、狭半値化させる手法が知られているが、カラーフィルタを用いて表示装置の色再現性を向上させる場合には、カラーフィルタの厚膜化や色材の高濃度化が必要となり、画素形状や視野角特性の悪化など表示品位を低下させる問題があった。また、三原色RGBの単色光を発光する表示装置に対しては、カラーフィルタ形成の工程が必要となり、コスト増となる課題があった。
【0005】
前述の偏光板及び位相遅延板を配置する構成やカラーフィルタを用いる構成とは異なる表示装置として、例えば特許文献1には、所定の波長帯域を選択的に吸収する色材を含む光学フィルタを備えた構成の表示装置が開示されている。この光学フィルタは、表示装置から出射した光の中で特に色純度を低下させる波長帯域の光を選択的に吸収するので、有機発光素子から出射される三原色の表示に必要な光の損失が抑えられ、表示画像の視認性が向上する。しかしながら、開示された技術では、外部光の反射による表示品位低下の抑制効果は不十分で、且つ、反射光の色味付きが生じる課題があった。また特許文献2には、特定波長の光を吸収する光学フィルタとして、特定の色補正染料と紫外線安定剤を含む粘着フィルムが開示されている。しかしながら、これら開示の光学フィルタは耐光性や耐熱性の信頼性が不十分で、実用化は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-56865号公報
【特許文献2】特許第5917659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に開示されている光学フィルタは、480nm~510nmの第1の波長帯域に吸収極大波長を有する色材と、580nm~610nmの第2の波長帯域に吸収極大波長を有する色材と、さらに650nm~710nm、360nm~420nmに吸収極大波長を有する色材を含有し、これにより輝度低下を抑制し、且つ、色純度を向上させている。これらの特定波長の光を吸収する色材を含有する光学フィルタを表示装置に用いた場合、外光の反射率や外光反射による反射色相などの反射特性が変化するが、特許文献1には、表示装置の発光光源に合わせて透過特性を調整する手法は開示されていても、外光反射輝度や反射色相の調整方法は開示されておらず、反射低減部材として用いることが難しかった。このように、従来の光学フィルタ、及び有機発光表示装置をはじめとする表示装置では、表示品位の向上と発光素子の長寿命化が求められていた。
【0008】
上述の事情をふまえ、本発明は、表示品位の向上と発光素子の長寿命化を実現可能な粘着層形成用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、粘着剤と色素とを含有する粘着層形成用組成物である。色素は、極大吸収波長が470nm以上530nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上45nm以下である第1の色材と、極大吸収波長が560nm以上620nm以下の範囲にあり、吸光スペクトルの半値幅が15nm以上55nm以下である第2の色材と、400~780nmの波長の範囲において最も透過率の低い波長が650nm以上780nm以下の範囲にある第3の色材とを含有する。粘着層形成用組成物によって形成された厚み25μmの着色粘着層と着色粘着層の一方の面に設けられたJIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上の紫外線吸収層とを有する粘着シートにおいて、下記式(1)~(9)で定義される色相の値a及びbが、それぞれ-5以上+5以下の範囲にある。
【0010】
【数1】
【0011】
【数2】
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
【0014】
【数5】
【0015】
【数6】
【0016】
【数7】
【0017】
【数8】
【0018】
【数9】
【0019】
ここで、λは波長を表す変数、tはX、Y、Zに対するX、Y、Zの比率を表す変数である。
式(1)から(3)によって算出されるa、bはCIE1976L色空間(CIELAB色空間)での算出方法に準じて算出される。式(1)、(2)において、X、Y、Zは、D65光源の白色点における3刺激値である。
式(4)において、RE(λ)は完全拡散反射面での反射率[%]を表す関数(各波長100%)関数、R2(λ)は、紫外線吸収層に対して着色粘着層に接する側とは反対側の粘着シートにおける最表面での表面反射率[%]を表す関数、T(λ)は前記粘着シートの透過率[%]を表す関数である。
式(6)から(9)においてPD65(λ)は、D65光源スペクトル、オーバーラインx(λ)、オーバーラインy(λ)、オーバーラインz(λ)は、CIE1931 2°視野での等色関数である。
式(6)から(9)における定積分は、適宜の数値積分で求められてもよい。例えば、数値積分を行う場合の波長間隔は、1nm間隔であってもよい。
式(5)において、R(λ)は、粘着シートにおける内部反射を考慮した、紫外線吸収層に対して着色粘着層に接する側とは反対側からの入射光に対する光学フィルムの反射率を表している。
式(6)~(8)で表されるX、Y、Zは、D65光源の白色点における3刺激値を表す。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外部光反射における表示品位を向上することができ、表示装置の発光素子の寿命を向上することができる粘着層形成用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る第1実施形態の粘着シートの断面図である。
図2】本発明における粘着シートの反射色相のクロマティクネス指数a及びb算出方法の説明図である。
図3】本発明に係る表示装置の断面図である。
図4図1に示す粘着シート及び粘着シートを備える表示装置の断面図である。
図5】本発明に係る第2実施形態の粘着シートの断面図である。
図6】本発明に係る第3実施形態の粘着シートの断面図である。
図7】本発明に係る第4実施形態の粘着シート及び光学シートの断面図である。
図8】本発明に係る第5実施形態の粘着シート及び光学シートの断面図である。
図9】本発明に係る第6実施形態の粘着シート及び光学シートの断面図である。
図10】実施例において有機EL光源及びカラーフィルタを通して出力された白色表示時のスペクトルを示したグラフである。
図11】実施例において表示装置反射特性2、表示装置反射色相2を算出する有機EL表示装置の電極反射率である。
図12】実施例において有機EL光源及びカラーフィルタを通して出力された赤色表示時、緑色表示時、及び青色表示時の各々のスペクトルのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。全ての図面において、実施形態が異なる場合であっても、同一または相当する部材には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明に係る第1実施形態の粘着シート100Aは、少なくとも着色粘着層11と、紫外線吸収粘着層(紫外線吸収層)13と、を備える。
【0024】
着色粘着層11は、粘着層形成用組成物によって形成されている。粘着層形成用組成物は、粘着剤、色素、添加剤を含有している。着色粘着層11に含まれる粘着剤は、例えば粘着性を発揮する樹脂であり、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等であるが、特に限定されない。
【0025】
着色粘着層11は、色素として第1から第3の色材を含む1層以上から構成されている。即ち、色素は、第1から第3の色材を含有する。図1及び図2には、1層で構成されている着色粘着層11を示す。第1の色材の極大吸収波長は、470nm以上530nm以下の範囲内にある。第1の色材の吸光スペクトルの半値幅は、15nm以上45nm以下である。本明細書において、吸収極大波長とは、吸光スペクトルにおいて吸収率の極大値のうちの最大値を与える波長を意味する。第2の色材の極大吸収波長は、560nm以上620nm以下の範囲内にある。第2の色材の吸光スペクトルの半値幅は、15nm以上55nm以下である。第3の色材に対しては、極大吸収波長は特に限定せず、400nm以上780nm以下の波長範囲において最も透過率の低い波長が650nm以上780nm以下の範囲内にあるものを意味する。粘着シート100Aでは、着色粘着層11全体としての吸光スペクトルに、前述の第1から第3の各色材の極大吸収波長のピークが現れている。
以下、第1の色材、第2の色材及び第3の色材を総称する場合には、単に色材と称する場合がある。
【0026】
着色粘着層11に含まれる第1から第3の色材は、例えばポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造の何れかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含むことが好ましい。特に分子内にポルフィリン構造、ピロメテン構造、フタロシアニン構造、スクアリリウム構造を持つ化合物を用いるのが好ましい。
【0027】
着色粘着層11は、添加剤としてラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種類を含むことが好ましい。これらの添加剤を含むことによって、着色粘着層11に含まれる色材の光や熱等による退色を抑制し、耐久性を向上できる。
【0028】
ラジカル捕捉剤は、色素が酸化劣化する際のラジカルを捕捉し、自動酸化抑制する働きをもつ構成材料を含み、色素劣化(退色)を抑制する。ラジカル捕捉剤として、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いると高い退色抑制効果が得られる。ラジカル捕捉剤の分子量が低い場合、揮発しやすいため、着色層内へ留まる分子が少なく、十分な退色抑制効果を得ることが難しい。ラジカル捕捉剤として好適に用いられる材料としては、例えば、BASF社製Chimassorb(登録商標)2020FDL、Chimassorb(登録商標)944FDL、Tinuvin(登録商標)622、ADEKA社製LA-63P等が挙げられる。
【0029】
一重項酸素クエンチャーは、色素を酸化劣化(退色)させやすい性質を持つ反応性の高い一重項酸素を不活性化し、色素の酸化劣化(退色)を抑制する働きがある。一重項酸素クエンチャーとしては遷移金属錯体、色素類、アミン類、フェノール類、スルフィド類が挙げられるが、特に好適に用いられる材料としては、ジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネートまたはベンゼンジチオールの遷移金属錯体で、中心金属としてはニッケル、銅またはコバルトが好適に用いられる。例えば、(株)林原生物化学研究所 感光色素研究所製NKX1199、NKX113、NKX114、東京化成社製 D1781、B1350、B4360、T3204などが挙げられる。
【0030】
過酸化物分解剤は、色素が酸化劣化した際に発生する過酸化物を分解し、自動酸化サイクルを停止させ、色素劣化(退色)を抑制する働きがある。過酸化物分解剤としては、ヒドロペルオキシドを不活化可能な構成材料を含み、例えばリン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤であることが好ましい。
【0031】
リン系酸化防止剤としては、例えば2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及び6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
【0032】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル-ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオネート]、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0033】
紫外線吸収粘着層13は、着色粘着層11の表面(一方の面)11aに設けられている。紫外線吸収粘着層13の紫外線遮蔽率は、85%以上であることが好ましい。本明細書において、紫外線遮蔽率とは、JIS L 1925に準拠して測定される紫外線遮蔽率を意味し、290nmから400nmまでの波長範囲における平均透過率(単位;[%])を100%から引いた値[%]を表す。
【0034】
紫外線吸収粘着層13は、紫外線遮蔽率85%以上の紫外線吸収剤と、粘着剤と、を含有している。紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系化合物が挙げられる。紫外線吸収粘着層13に含まれる粘着剤は、例えば粘着性を発揮する樹脂であり、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等であって、着色粘着層11に含まれる粘着剤と同じ種類であってもよく、特に限定されない。
【0035】
粘着シート100Aは、例えば樹脂等で形成されたベースフィルム上に着色粘着層11及び紫外線吸収粘着層13の一方を形成し、その上に他方を形成してからベースフィルムを剥離することによって、製造可能である。着色粘着層11及び紫外線吸収粘着層13は、例えば各層の構成材料を含む塗工液を塗工し、乾燥することによって、形成可能である。なお、ベースフィルムを着色粘着層11及び紫外線吸収粘着層13の一方から剥離せずに後述する被覆層15として使用してもよい。
【0036】
粘着シート100Aでは、粘着シート100Aに対し、厚み方向で紫外線吸収粘着層13の表面(粘着シートにおける最表面)13a側(紫外線吸収層に対して着色粘着層に接する側とは反対側、即ち紫外線吸収粘着層よりも上方)から、D65光源から出射された光を照射し、粘着シートの最下層の表面11b側で完全拡散反射した場合の反射率R(λ)を光源照射側から測定した際に、上述の(1)式から(9)式で表される粘着シートによる反射色相のクロマティクネス指数(値)a及びbのそれぞれが、-5以上+5以下の範囲内にある。前述の色相は、国際照明委員会(CIE)によって定められた均等色空間の1つ(CIE1976L色空間、或いはCIE LAB色空間とも称される)であり、上述の式(1)、式(2)に加えて下記の式(10)で表される明度指数Lの3つの値を軸とした3次元直交座標で表される。
【0037】
【数10】
【0038】
ここでYは、D65光源の反射率R(λ)での反射光の3刺激値で上述の式(4)、(5)、(7)、(9)から算出され、YはD65光源の白色点における3刺激値である。
【0039】
本発明の粘着シートの外部光反射色相の指標とするクロマティクネス指数a及びbの算出方法について、図2を用いて説明する。
【0040】
図2に示すように、厚み方向で粘着シート100Aの紫外線吸収粘着層13に対して着色粘着層11に接する側とは反対側の表面13a面からD65光源を照射した場合、粘着シート100Aの反射光は表面反射成分と内部反射成分とに分けて考えることができる。表面反射成分は、表面13aでの表面反射率をR2(λ)[%]によって規定され、内部反射成分は、波長によらず100%とする完全拡散反射面での反射率R(λ)[%]と、粘着シート100Aにおける透過率T(λ)[%]と、表面13aでの表面反射率R2(λ)[%]とから、式(4)で算出されるR1(λ)[%]によって規定される。D65光源照射側の表面13a側での粘着シート100Aの反射率をR(λ)[%]とすると、R(λ)は、上述の式(5)から算出される。
R(λ)は、R1(λ)及びR2(λ)同様、波長λの関数であるので、式(6)から式(9)のλに関する定積分を求めることで3刺激値X、Y、Zが求まる。ここで、定積分は、適宜の数値積分で求められてもよい。例えば、数値積分を行う場合の波長間隔は、例えば1nm間隔のような等間隔であってもよい。
【0041】
前述のように、式(1)及び式(2)におけるX、Y、Zは前記粘着シート100Aの表面13a側のD65光源の反射率R(λ)での反射光の3刺激値であり、X、Y、ZはD65光源の白色点における3刺激値を表す。ここから粘着シート100Aの外部光反射色相の指標であるクロマティクネス指数a及びbを算出できる。外部光反射の表示品位を高める観点から、粘着シート100Aの色相のクロマティクネス指数(値)a及び値bのそれぞれが-5以上+5以下の範囲内にあることが好ましい。有機発光表示装置等の自発光表示装置の表示部や電極配線部といった内面で生じる内部反射率は、波長380nmから780nmまでの各波長においてそれぞれ異なる値となることが一般的であるが、本発明において鋭意検討した結果、R(λ)を全ての波長で100%とする完全拡散反射面での反射率とし、粘着シート100Aの外部光による反射色相のクロマティクネス指数(値)a及び値bのそれぞれが-5以上+5以下の範囲内にある時に、R(λ)を実際の自発光表示装置の発光層35の内部反射率と置き換えた場合においても外部光反射色相の指標であるクロマティクネス指数a及びbは-5以上+5以下の範囲内となり、優れた表示品位となることを見出した。
【0042】
粘着シート100Aは、着色粘着層11の表面11aとは反対側の表面11bと紫外線吸収粘着層13の表面13aとに、別体且つ所望の光学機器或いは光学素材を設置可能に構成されている。図1に示すように、所望の光学機器或いは光学素材が設置されていない状態では、粘性を有する表面11b、13aに汚れが付着することを防ぐため、表面11b、13aには被覆層15-1、15-2が着脱可能に設置されている。つまり、粘着シート110Aは、着色粘着層11と、紫外線吸収粘着層13と、被覆層15-1、15-2と、を備える。以下、被覆層15-1、15-2について共通する内容を説明する際には、これらの被覆層をまとめて被覆層15と記載する。
【0043】
被覆層15には、例えば任意の種類の剥離素材やセパレータが使用される。セパレータとしては、例えば樹脂フィルムや紙等が挙げられる。
【0044】
粘着シート110Aの被覆層15-1を着色粘着層11から剥離し、着色粘着層11の表面11bに発光層35を隙間なく設置できる。また、粘着シート110Aの被覆層15-2を紫外線吸収粘着層13から剥離し、紫外線吸収粘着層13の表面13aに保護層200を隙間なく設置できる。このように粘着シート100Aに発光層35及び保護層200を設けることによって、図3に示す表示装置120Aが構成される。
【0045】
図3に示すように、本発明に係る表示装置120Aは、発光層35と、粘着シート100Aと、を備える。粘着シート100Aは、粘着シート100Aは、カラーフィルタ33を介して発光層35から出射される出射光の進行方向E1の前方に配置されている。
【0046】
発光層35は、基板31と、発光素子32-1、32-2、32-3と、カラーフィルタ33と、を備える。基板31は、例えば、シリコン(Si)基板で形成される。発光素子32-1、32-2、32-3は、基板31に埋設され、例えば白色光を出射する。発光素子32-1、32-2、32-3の各々の出射面は、基板31の表面31aに露出している。発光素子32-1、32-2、32-3としては、例えば有機EL素子が用いられる。
【0047】
カラーフィルタ33は、画素毎の単位領域内において厚み方向に交差し、表面11bに沿う方向において、赤色透過領域33-R、緑色透過領域33-G、青色透過領域33-Bに区画されている。赤色透過領域33-Rからは、発光素子32-1から出射された白色光のうち赤色光がカラーフィルタ33の表面33aから進行方向E1に沿って出射される。緑色透過領域33-Gからは、発光素子32-1から出射された白色光のうち緑色光がカラーフィルタ33の表面33aから進行方向E1に沿って出射される。青色透過領域33-Bからは、発光素子32-1から出射された白色光のうち青色光がカラーフィルタ33の表面33aから進行方向E1に沿って出射される。
【0048】
保護層200は、発光層35及び粘着シート100Aを外部(図1では上方)からの衝撃等から保護するために設けられている。保護層200は、粘着シート100Aの紫外線吸収粘着層13の表面13aから進行方向E1に出射される光のうち少なくとも可視光の透過スペクトルに大きな影響を与えない光学特性を有する。「透過スペクトルに大きな影響を与えない」とは、保護層200の表面200aで発現する色相を進行方向E1とは逆の方向から測定した際に、前述の式(1)から式(3)で表されるクロマティクネス指数a及び値bのそれぞれが-5以上+5以下の範囲内にあることを意味する。保護層200は、例えば可視光に対して透明なガラス、樹脂フィルムや樹脂プレート等で形成されている。本明細書では、可視光とは、波長380nmから780nmまでの発光波長帯域を有する光を意味する。
【0049】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の粘着シート100A、110Aでは、着色粘着層11は、第1から第3の色材を含有する一層のみで構成されているが、二層以上の層で構成されてもよい。図4に示すように、着色粘着層11は、第1の色材のみを含有する着色粘着層12-1と、第2の色材のみを含有する着色粘着層12-2と、第3の色材のみを含有する着色粘着層12-3とが厚み方向に積層された三層構造を備えてもよい。三層構造全体として第1から第3の色材を含有すればよく、三層構造における着色粘着層12-1、12-2、12-3の積層順序は、特に限定されない。また、図示していないが、着色粘着層11は、第1の色材及び第2の色材の何れか一方の色材と第3の色材とを含有する第1の着色粘着層と、第1の色材及び第2の色材の何れか他方の色材と第3の色材とを含有する第2の着色粘着層と、を備えてもよい。
【0050】
上述のように二層以上の着色粘着層を備えた第1実施形態の変形例の粘着シート100A´は、粘着シート100Aと同様の作用効果を奏する。また、図4に示すように、粘着シート100Aと同様、粘着シート100A´に発光層35と保護層200とを組み合わせて表示装置120A´を構成してもよい。
【0051】
本発明に係る粘着層形成用組成物は、第1実施形態、及びその変形例の粘着シート100A、100A´を形成可能であり、粘着剤、色素、添加剤を含有する。粘着シート100Aを形成する粘着層形成用組成物に含まれる色素は、第1の色材と、第2の色材と、第3の色材を含有し、粘着シート100A´を形成する粘着層形成用組成物に含まれる色素は、第1の色材及び第2の色材の何れか一方の色材と、第3の色材と、を含有する。
【0052】
(第2実施形態)
次いで、本発明に係る第2実施形態の粘着シート等について、説明する。なお、第2実施形態以降の各実施形態については、前述の上位実施形態と異なる点について説明し、上位実施形態と共通する内容及び説明については概ね省略する。また、第2実施形態以降の各実施形態の構成の説明において、上位実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図5に示すように、本発明に係る第2実施形態の粘着シート100Bは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材(紫外線吸収層)17と、を備える。以下、紫外線吸収透明基材を、単に「透明基材」と記載する場合がある。紫外線吸収透明基材17は、着色粘着層11の表面11aに設けられている。紫外線吸収透明基材17は、紫外線吸収剤を有し、紫外線遮蔽層として機能すると共に、85%以上の紫外線遮蔽率を有し、可視光線の透過性に優れる材料により形成される。紫外線吸収透明基材17の紫外線吸収剤以外の主な形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルム(PET)、トリアセチルセルロースからなるフィルム(TAC)、ポリメチルメタクリレートからなるフィルム(PMMA)、ポリエステルからなるフィルムを好適に利用できる。紫外線吸収透明基材17の厚みは、特に限定されないが、10~100μmとすることが好ましい。
【0054】
透明基材17の紫外線吸収性は、例えば、透明基材17を形成するための樹脂材料に紫外線吸収剤を配合することによって付与することができる。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シュウ酸アニリド系、シアノアクリレート系の化合物を使用できる。
【0055】
粘着シート100Bは、着色粘着層11の表面11bに、別体且つ所望の光学機器或いは光学素材を設置可能に構成されている。つまり、粘着シート110Bは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材17と、被覆層15-1と、を備える。図示していないが、粘着シート110Bの被覆層15-1を着色粘着層11から剥離し、着色粘着層11の表面11bに第1実施形態で説明図示した発光層35を隙間なく設置できる。
【0056】
以上説明した第2実施形態の粘着シート100B、110B、及び粘着シート100B、110Bを備える表示装置は、第1実施形態の粘着シート100A、110A、及び表示装置120Aと同様の作用効果を奏する。また、第2実施形態の粘着シート100B、110Bによれば、紫外線吸収透明基材17を全体構造における最表面に配置した状態で保護層やカバーとして機能させることができ、粘着シート100B、110Bを適用する装置等の薄型化を組み立て工程の簡素化を図ることができる。
【0057】
なお、第2実施形態の粘着シート100B、110Bについても第1実施形態の粘着シート100A、110Aと同様の変形例を適用できる。
【0058】
(第3実施形態)
次いで、本発明に係る第3実施形態の粘着シート等について、説明する。
【0059】
図6に示すように、本発明に係る第3実施形態の粘着シート100Cは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材(紫外線吸収層)17と、酸素バリア層20と、を備える。酸素バリア層20は、着色粘着層11の紫外線吸収透明基材17側である11-aより上層に設ける。図6の粘着シート100Cでは、厚み方向で着色粘着層11に対して紫外線吸収透明基材17に近い側に酸素バリア層20を備えた場合を示す。
【0060】
酸素バリア層20の酸素透過度は、10cc/m・day・atm以下であり、5cc/m・day・atm以下であることがより好ましい。酸素バリア層20の主な構成材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビリニデン、シロキサン樹脂等を含有するのが好ましく、三菱ガス化学社製のマクシーブ(登録商標)、株式会社クラレ製のエバール、ポバール、旭化成株式会社のサランラテックス、サランレジン等を用いることができる。また、酸素バリア層20の厚さは特に限定されず、所望の酸素バリア性が得られる厚さとすればよい。
【0061】
また、酸素バリア層20には、無機物粒子(無機化合物からなる粒子)が分散していてもよい。無機物粒子により、酸素透過度をより低くでき、着色層21の酸化劣化(退色)をより抑制することができる。無機物粒子の大きさや含有量は、特に限定されず、酸素バリア層25の厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。酸素バリア層20に分散させる無機物粒子の大きさ(最大長)は、酸素バリア層20の厚さ未満であるのが好ましく、小さいほど有利である。なお、酸素バリア層20に分散させる無機物粒子の大きさは、均一でも不均一でもよい。酸素バリア層20に分散する無機物粒子としては、具体的には、シリカ粒子、アルミナ粒子、銀粒子、銅粒子、チタン粒子、ジルコニア粒子、スズ粒子等が挙げられる。
【0062】
粘着シート100Cは、着色粘着層11の表面11bに、別体且つ所望の光学機器或いは光学素材を設置可能に構成されている。つまり、図6に示すように、粘着シート110Cは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材17と、酸素バリア層20と、被覆層15-1と、を備える。図示していないが、粘着シート110Cの被覆層15-1を着色粘着層11から剥離し、着色粘着層11の表面11bに発光層35を隙間なく設置できる。
【0063】
以上説明した第3実施形態の粘着シート100C、110C、及び粘着シート100C、110Cを備える表示装置は、第1実施形態の粘着シート100A、110A、及び表示装置120Aと同様の作用効果を奏する。
【0064】
また、第3実施形態の粘着シート100C、110Cでは、紫外線吸収透明基材17の表面17aに、酸素透過度が10cc/m・day・atm以下である酸素バリア層20が設けられている。色素における耐光性の劣化は、酸素が介在することによる酸化劣化といえる。粘着シート100C、110Cによれば、外気に含まれる酸素が酸素バリア層20を厚み方向に透過せずに着色粘着層11に到達しないため、外気中の酸素による着色粘着層12に含まれる第1から第3の各色材の劣化を抑制できる。したがって、着色粘着層11の光吸収性能を長時間持続させることができる。即ち、粘着シート100C、110Cによれば、酸素との化学反応に起因する着色粘着層11の劣化を抑制できる。
【0065】
なお、第3実施形態の粘着シート100C、110Cについても第1実施形態の粘着シート100A、110Aと同様の変形例を適用できる。
【0066】
(第4実施形態)
次いで、本発明に係る第4実施形態の粘着シート等について、説明する。
【0067】
図7に示すように、本発明に係る第4実施形態の粘着シート100Dは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材(紫外線吸収層)17と、ハードコート層22と、を備える。ハードコート層22は、紫外線吸収透明基材17の着色粘着層11とは厚み方向で反対側の表面17aに設けられている。ハードコート層22は、樹脂等で形成された硬質な層であり、次に説明する光学シート130Dの耐傷性を高めるために設けられている。ハードコート層22の硬度は、表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上であることが好ましい。鉛筆硬度は、JIS-K5600-5-4:1999に基づいて測定される。ハードコート層22の構成材料としては、例えばウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、紫外線硬化樹脂等のエネルギー線硬化型化合物でハードコート層22を形成すると、簡便である。この場合は、紫外線吸収透明基材17にエネルギー線硬化型化合物、重合開始剤、溶剤を少なくとも含有する塗工液を塗布し、対応するエネルギー線を照射し、硬化させることによって、ハードコート層22を形成できる。また、ハードコート層22の形成用組成物には、屈折率調整や硬度付与を目的として金属酸化物微粒子を、撥水性及び/又は撥油性を付与し、防汚性付与を目的として珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを、帯電防止性付与を目的として四級アンモニウムカチオンや導電性金属微粒子等の導電材料等を、含有してもいい。金属酸化物微粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛等が挙げられる。その他、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、光増感剤等を含有してもよい。
【0068】
本発明に係る光学シート130Dは、粘着シート100Dと、低屈折率層(光学機能層、反射防止層)24と、を備える。低屈折率層24は、ハードコート層22の紫外線吸収透明基材17とは厚み方向で反対側の表面22aに設けられている。即ち、光学シート130Dでは、低屈折率層24は、紫外線吸収透明基材17に対して外光が入射する側に配置されている。低屈折率層24は、ハードコート層22よりも低い屈折率を有し、光学シート130Dに入射する外光の反射(即ち、観察者側への反射)を低減するために設けられている。低屈折率層24は、活性エネルギー線硬化樹脂を少なくとも含有する塗工液を硬化させて形成することができる。活性エネルギー線硬化樹脂はハードコート層22で説明したものを使用することができる。屈折率調整のためLiF、MgF、3NaF・AlF、AlF、Na3AlF6等の微粒子やシリカ微粒子などを配合してもよい。シリカ微粒子として、多孔質シリカ微粒子や中空シリカ微粒子等の粒子内部に空隙を有するものを用いることが、低屈折率層の低屈折率化に有効である。また、光重合開始剤や溶剤、その他の添加剤を適宜配合してもよい。低屈折率層24の屈折率は、1.20~1.55とすることが好ましい。また、低屈折率層24の膜厚は、特に限定されないが、40nm~1μmとすることが好ましい。
【0069】
低屈折率層24は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有しても良い。これらの材料は、低屈折率層24に撥水性及び/または撥油性を付与することにより、防汚性を高めることができる。
【0070】
粘着シート100D、光学シート130Dは、着色粘着層11の表面11bに、別体且つ所望の光学機器或いは光学素材を設置可能に構成されている。つまり、粘着シート110Dは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材17と、ハードコート層22と、低屈折率層24と、被覆層15-1と、を備える。図示していないが、粘着シート110Dの被覆層15-1を着色粘着層11から剥離し、着色粘着層11の表面11bに発光層35を隙間なく設置できる。
【0071】
以上説明した第4実施形態の粘着シート100D、110D、光学シート130D、及び粘着シート100D、110Dを備える表示装置は、第1実施形態の粘着シート100A、110A、及び表示装置120Aと同様の作用効果を奏する。
【0072】
また、第4実施形態の粘着シート100D、110Dによれば、紫外線吸収透明基材17の表面17aにハードコート層22が設けられているため、外部からの衝撃等に対する耐傷性を高めることができる。
【0073】
本発明に係る光学シート130Dは、粘着シート100Dと、粘着シート100Dの紫外線吸収透明基材17に対して外部光の入射側に配置され、外部光の表面反射を低減する光学機能層と、を備える。前述の光学機能層は、反射防止層として機能する低屈折率層24である。光学シート130Dによれば、外部光の強い表面反射が抑えられるため、光学シート130Dを適用する表示装置等及びその表示内容の視認性を高めることができる。
【0074】
なお、第4実施形態の粘着シート100D、110D及び光学シート130Dについても第1実施形態の粘着シート100A、110Aと同様の変形例を適用できる。
【0075】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る第5実施形態の粘着シート等について、説明する。
【0076】
図8に示すように、本発明に係る第5実施形態の粘着シート100Eは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材(紫外線吸収層)17と、を備える。
【0077】
本発明に係る光学シート130Eは、粘着シート100Eと、防眩層(光学機能層)26と、を備える。防眩層26は、紫外線吸収透明基材17の着色粘着層11とは厚み方向で反対側の表面17aに設けられている。防眩層26は、表示装置等に適用した際に表示画面の位置からの反射光(つまり、正反射光あるいは鏡面反射)を低下させ、ぎらつきを防ぐために設けられている。防眩層26は、活性エネルギー線硬化性樹脂と、必要に応じて有機微粒子及び/又は無機微粒子とを含有する塗工液を硬化させることによって形成することができる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ハードコート層22で説明したものを使用することができる。防眩層26の膜厚は、特に限定されないが、1~10μmであることが好ましい。有機微粒子は、防眩層26の表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与するものであり、例えばアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。屈折率や樹脂粒子の分散性を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用しても良い。無機微粒子は防眩層26中の有機微粒子の沈降や凝集を調整するものであり、無機微粒子としてシリカ微粒子、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。
【0078】
防眩層26は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤のいずれかを含有しても良い。これらの材料によって防眩層26に撥水性及び/又は撥油性を付与することにより、光学シート130E及び粘着シート100Eの防汚性を高めることができる。
【0079】
防眩層26は、材料を偏在させることにより、紫外線吸収透明基材17側から順に、相対的に屈折率が高い層と、相対的に屈折率が低い層とが積層された層として形成してもよい。材料を偏在させた防眩層26は、例えば、表面修飾したシリカ微粒子または中空シリカ微粒子を含有する低屈折率材料と、高屈折率材料とを含有する組成物を塗工し、両者の表面自由エネルギーの差を利用して相分離させることにより形成することができる。防眩層26をそう分離した2層で構成する場合、着色粘着層11側の相対的に屈折率が高い層の屈折率を1.50~2.40とし、防眩層26表面側の相対的に屈折率が低い層の屈折率を1.20~1.55とすることが好ましい。
【0080】
粘着シート100E、光学シート130Eは、着色粘着層11の表面11bに、別体且つ所望の光学機器或いは光学素材を設置可能に構成されている。つまり、粘着シート110Eは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材17と、防眩層26と、被覆層15-1と、を備える。図示していないが、粘着シート110Eの被覆層15-1を着色粘着層11から剥離し、着色粘着層11の表面11bに発光層35を隙間なく設置できる。
【0081】
以上説明した第5実施形態の粘着シート100E、110E、光学シート130E、及び粘着シート100E、110Eを備える表示装置は、第1実施形態の粘着シート100A、110A、及び表示装置120Aと同様の作用効果を奏する。
【0082】
本発明に係る光学シート130Eは、粘着シート100Eと、粘着シート100Eの紫外線吸収透明基材17に対して外光の入射側に配置され且つ外光の反射を低減する光学機能層として防眩層26を備える。光学シート130Eによれば、防眩層26において外光が散乱及び拡散されるため、光学シート130Eを適用する表示装置等及びその表示内容における外部光の表面反射及び映り込みを抑制できる。したがって、光学シート130Eによれば、表示装置及び表示内容、表示画像の視認性を向上させ、外部光の反射による表示品位の低下を抑制できる。
【0083】
なお、第5実施形態の粘着シート100E、110E及び光学シート130Eについても第1実施形態の粘着シート100A、110Aと同様の変形例を適用できる。
【0084】
(第6実施形態)
次に、本発明に係る光学シート等について、説明する。
【0085】
図9に示すように、本発明に係る光学シート130Fは、粘着シート100Eと、防眩層(光学機能層、反射防止層)26と、低屈折率層(光学機能層、反射防止層)24と、を備える。第6実施形態では、低屈折率層24は、防眩層26の紫外線吸収透明基材17とは厚み方向で反対側の表面26aに設けられている。
【0086】
光学シート130Fは、着色粘着層11の表面11bに、別体且つ所望の光学機器或いは光学素材を設置可能に構成されている。つまり、粘着シート110Fは、着色粘着層11と、紫外線吸収透明基材17と、防眩層26と、低屈折率層24と、被覆層15-1と、を備える。図示していないが、粘着シート110Fの被覆層15-1を着色粘着層11から剥離し、着色粘着層11の表面11bに発光層35を隙間なく設置できる。
【0087】
以上説明した光学シート130F、及び粘着シート110Fを備える表示装置は、第1実施形態の粘着シート100A、110A、及び表示装置120Aと同様の作用効果を奏する。
【0088】
本発明に係る光学シート130Fは、粘着シート100Eと、粘着シート100Eの紫外線吸収透明基材17に対して外光の入射側に配置された光学機能層として防眩層26及び低屈折率層24を備える。粘着シート110F、光学シート130Fによれば、防眩層26において外光が散乱及び拡散され、さらに低屈折率層24において外部光の強い反射が抑えられるため、粘着シート110F或いは光学シート130Fを適用する表示装置等及びその表示内容における外光のぎらつき、表面反射及び映り込み等を抑制できる。したがって、粘着シート110F或いは光学シート130Fによれば、これらを適用する表示装置及び表示内容、表示画像の視認性を向上させ、外部光の反射による表示品位の低下を抑制できる。
【0089】
なお、第6実施形態の粘着シート110F及び光学シート130Fについても第1実施形態の粘着シート100A、110Aと同様の変形例を適用できる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、変更可能である。
【0091】
例えば、本発明に係る粘着シートでは、着色粘着層は、ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種類以上を含有することが好ましい。ラジカル捕捉剤、過酸化物分解剤、一重項酸素クエンチャーの各々の種類は、前述した物質等に限定されず、適当な物質に変更されてもよい。
【0092】
例えば、本発明に係る粘着シートの紫外線吸収層に対して外部光の入射側に配置され且つ外光の反射を低減する光学機能層は、前述の低屈折率層や防眩層に限定されない。光学機能層は、高屈折率層(光学機能層、反射防止層)や、帯電防止層又は防汚層であってもよい。即ち、本発明に係る光学シートは、帯電防止層又は防汚層をさらに備えてもよい。高屈折率層は、紫外線吸収透明基材17よりも低い屈折率を有し、前述の低屈折率層と同様に、光学シートに入射する外光の反射(即ち、観察者側への反射)を低減するために設けられる。高屈折率層の構成材料としては、活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、溶剤等が挙げられる。帯電防止層は、粘着シートや表示装置への帯電を防止するために設けられ、帯電防止剤を含有する。帯電防止層の構成材料としては、電離放射線硬化性材料と、重合開始剤と、耐電防止剤とを含み、帯電防止剤としてはアンチモンをドープした酸化錫(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物系微粒子、高分子型導電性組成物や、4級アンモニウム塩等が挙げられる。防汚層は、粘着シートや表示装置への汚れの付着を防止するために設けられ、例えば撥水性を有する。防汚層の構成材料としては、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤等が挙げられる。本発明に係る光学シートは、光学機能層、帯電防止層、防汚層を全て備えてもよい。また、本発明に係る光学シートでは、粘着シートに、粘着シートの色相に大きな影響を与えず且つ所望の機能を有する任意の層が設けられてもよい。
【0093】
例えば、上述の実施形態の構成を適宜組み合わせてもよい。一例として、第3実施形態の粘着シートの酸素バリア層と紫外線吸収透明基材との間に低屈折率層や防眩層等の光学機能層が配置されてもよい。
【0094】
また、本発明に係る表示装置の発光層は、有機EL素子を備える層に限定されず、白色LED素子、無機蛍光体発光素子、量子ドット発光素子等を備えてもよい。発光層の構成は、白色光を出射する発光素子とカラーフィルタとを備える構成に限定されず、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の各色の光を出射可能な発光素子を有する構成であってもよい。
【実施例0095】
以下に、実施例を説明する。但し、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0096】
以下の実施例及び比較例では、[表1]、[表2]に示す層構成の光学シート1~19を作製し、作製した光学シート1~16について光学シートの特性を評価した。また、光学シート5、13、17~19を用いて、有機ELパネルの表示装置特性をシミュレーションにより確認した。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
<光学シートの作製>
以下、各層の形成方法を説明する。
【0100】
(基材)
基材として、下記のものを用いた。
・TAC:トリアセチルセルロースフィルム(品名;TG60UL、富士フィルム社製、基材厚60μm、紫外線遮蔽率92.9%)
・PMMA1:ポリメチルメタクリレートフィルム(品名;W001U80、住友化学社製、基材厚80μm、紫外線遮蔽率93.4%)
・PMMA2:ポリメチルメタクリレートフィルム(品名;W002N80、住友化学社製、基材厚80μm、紫外線遮蔽率13.9%)
・PET1:ポリエチレンテレフタレートフィルム(品名;SRF、東洋紡社製、基材厚;80μm、紫外線遮蔽率;88.3%)
・PET2:ポリエチレンテレフタレートフィルム(品名;TOR20、SKC社製、基材厚;40μm、紫外線遮蔽率;88.6%)
【0101】
(光学機能層の作製)
[酸素バリア層の形成]
[表1]に示した実施例3の構成上に、PVA117(クラレ社製)の80質量%水溶液を塗布し、乾燥させ、酸素透過度が1cc/m・day・atmである酸素バリア層を形成した。
【0102】
[ハードコート層の形成]
(ハードコート形成用組成物)
ハードコート層形成に用いるハードコート層形成用組成物の使用材料として下記のものを用い、[表3]に示した組成物を調製した。
・活性エネルギー線硬化性樹脂:
UA-306H(共栄社化学社製、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネート ウレタンプレポリマー)
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート)
・開始剤:
Omnirad TPO(品名;IGM Resins、B.V.社製)
Omnirad 184(品名;IGM Resins、B.V.社製)
・溶剤:
MEK(メチルエチルケトン)
酢酸メチル
【0103】
【表3】
【0104】
[表1]及び[表2]に示した光学シートの基材または酸素バリア層上に、[表3]に示すハードコート層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cmで紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである[表1]及び[表2]に記載のハードコート層1及び2を形成した。
【0105】
[防眩層の形成]
(防眩層形成用組成物)
防眩層形成に用いる防眩層形成用組成物として下記のものを用いた。
・活性エネルギー線硬化性樹脂:
ライトアクリレートPE-3A(共栄社化学株式会社製、屈折率1.52) 43.7質量部
・光重合開始剤:
Omnirad TPO(IGM Resins B.V.社製) 4.55質量部
・樹脂粒子:
スチレン-メタクリル酸メチル共重合体粒子(屈折率1.515、平均粒径2.0μm)
0.5質量部
・無機微粒子1:
合成スメクタイト 0.25質量部
・無機微粒子2:
アルミナナノ粒子、平均粒径40nm 1.0質量部
・溶剤
トルエン 15質量部
イソプロピルアルコール 35質量部
【0106】
[表1]に示した実施例7、8の光学シートの基材上に、上記組成の防眩層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置を用いて照射線量150mJ/cmで紫外線照射(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源Hバルブ)を行うことにより塗膜を硬化させ、硬化後の膜厚が5.0μmである[表1]の防眩層を形成した。
【0107】
[低屈折率層の形成]
(低屈折率層形成用組成物)
低屈折率層形成に用いる低屈折層形成用組成物として下記のものを用いた。
・屈折率調整剤:
多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径;75nm、固形分20%、溶剤メチルイソブチルケトン) 8.5質量部
・防汚性付与剤:
オプツールAR-110(ダイキン工業社製、固形分15%、溶剤メチルイソブチルケトン) 5.6質量部
・活性エネルギー線硬化性樹脂:
ペンタエリスリトールトリアクリレート 0.4質量部
・開始剤:
Omnirad 184(品名;IGM Resins、B.V.社製) 0.07質量部
・レベリング剤:
RS-77(DIC社製) 1.7質量部
・溶剤:
メチルイソブチルケトン 83.73質量部
【0108】
[表1]及び[表2]に示した光学シートのハードコート層、又は防眩層上に、上記組成の低屈折率層形成用組成物を塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥させ、その後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン社製、光源;Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/cmで紫外線照射を行うことにより塗膜を硬化させて、硬化後の膜厚が100nmである[表1]及び[表2]の低屈折率層を形成した。
【0109】
[粘着層(着色粘着層)の作製]
(ベース粘着剤の作製)
ベース粘着剤として下記の組成物を用いた。
・粘着樹脂:エチルアセテートに溶解されたブチルアクリレート(BA)/ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)共重合体溶液 70質量部
・硬化剤:イソシアネート系架橋剤 0.037質量部
・添加剤:シラン系カップリング剤 0.048質量部
・溶剤:メチルエチルケトン(MEK)30質量部
【0110】
(粘着層形成用組成物)
着色粘着層形成に用いる粘着層形成用組成物の使用材料として下記のものを用い、[表4]に示した組成物を調製した。なお、色材の最大吸収波長及び半値幅は着色粘着層での特性値を分光透過率より算出した。
・ベース粘着剤
・第1色材:
Dye-1 下記化学式(1)で示されるピロメテンコバルト錯体染料(最大吸収波長;493nm、半値幅;26nm)
・第2色材:
Dye-2 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(品名;PD-311S、山本化成社製、最大吸収波長;584nm、半値幅;17nm)
Dye-3 テトラアザポルフィリン銅錯体染料(品名;FDG-007、山田化学社製、最大吸収波長;593nm、半値幅;18nm)
・第3色材:
Dye-4 フタロシアニン銅錯体染料(品名;FDN-002、山田化学社製、最大吸収波長;800nm、400~780nmでの最小透過率波長;780nm)
Dye-5 フタロシアニンコバルト錯体染料(品名;FDR-002、山田化学社製、最大吸収波長;683nm、400nm以上780nm以下での最小透過率波長;683nm)
・添加剤:
ヒンダードアミン系光安定剤 Chimassorb944FDL(BASFジャパン社製、分子量;2000~3100)
ヒンダードアミン系光安定剤 Tinuvin249(BASFジャパン社製、分子量;482)
一重項酸素クエンチャー D1781(東京化成工業社製)
・紫外線吸収剤:
Tinuvin479(BASFジャパン社製)
LA-36(ADEKA社製)
・粘着剤:上記で作製したベース粘着剤
・溶剤:酢酸メチル
【0111】
【化1】
【0112】
【表4】
【0113】
(着色粘着層及び光学シートの作製)
上記のようにして得られた粘着剤を、離型基材フィルムに乾燥時25μmの膜厚となるように塗工し、十分に乾燥させた後、離型フィルムをラミネートし、着色粘着層を得た。得られた着色粘着層の片側の離型フィルムを剥離し、厚さ0.7mmの無アルカリガラスの支持体へ貼り合わせた。その後、着色粘着層のもう片側の離型フィルムを剥離し、[表1]及び[表2]で示した機能層を積層した基材を貼り合わせ、光学シート1~19を試作した。
【0114】
[光学シート特性評価]
(着色粘着層上、紫外線遮蔽率)
実施例1~13、比較例1~3の着色粘着層より上層である基材を含む光学機能層について、自動分光光度計(株式会社日立製作所製、U-4100)を用いて透過率を測定した。これらの透過率に基づいて、紫外域(波長帯域;290~400nm)の平均透過率を算出し、紫外線遮蔽率[%]を100%から紫外域(290nm~400nm)の平均透過率[%]を引いた値として算出した。
【0115】
(鉛筆硬度試験)
クレメンス型引掻き硬度試験機(テスター産業株式会社製、HA-301)を用いて、光学シートの表面に、JIS-K5600-5-4:1999に準拠して、500gf(4.9N)の荷重(以下、500g荷重)をかけた鉛筆(三菱鉛筆社製 UNI、鉛筆硬度H)を用いて試験を行い、キズによる外観の変化を目視で評価し、キズが観察されない場合を良い(下記、[表5]、[表6]では「○」と記載)、キズが観察される場合を不良(下記、[表5]、[表6]では「×」と記載)とした。
【0116】
(耐光性試験)
試作した光学シートの信頼性試験として、キセノンウェザーメーター試験機(スガ試験機株式会社製、X75)を用い、キセノンランプ照度60W/cm(300~400nm)、試験機内温度45℃・湿度50%RH条件にて120時間試験し、試験前後に自動分光光度計(株式会社日立製作所製、U-4100)を用いて透過率測定を行い、波長範囲470~530nmにて試験前の最小透過率を表す波長λ1での試験前後透過率差ΔTλ1、波長範囲560~620nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ2での試験前後透過率差ΔTλ2、波長範囲650~780nmにて試験前の最小透過率を示す波長λ3での試験前後での透過率差ΔTλ3を算出した。透過率差は零に近い方が良好であり、|ΔTλN|≦20(N=1~3)となるものが好ましく、|ΔTλN|≦10(N=1~3)となるものが更に好ましい。
【0117】
上記の項目について評価した結果を、[表5]及び[表6]に示す。
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
[表5]及び[表6]に示したように、第1から第3の色材を含む着色粘着層の耐光性は、紫外線遮蔽率85%以上の紫外線吸収層を上層に備えることによって大幅に改善した。紫外線吸収能を着色粘着層に設けることでは効果が小さく、上層へ別層として配置する形成が好ましい。また、酸素遮断層を積層すること、及び、着色粘着層内にラジカル捕捉剤として高分子量のヒンダードアミン光安定剤、一重項酸素クエンチャーとしてジアルキルジチオカルバネートニッケル錯体を含有することによって、着色粘着層の耐光性がさらに改善された。
【0121】
[表示装置特性評価]
試作した光学シート5及び13、17~19について以下の評価を行った。
【0122】
(白表示透過特性)
試作した光学シートの透過率について自動分光光度計(株式会社日立製作所製、U-4100)を用いて測定し、この透過率を用いて、白表示時に光学シートを透過した光の効率を算出し、白表示透過特性として評価した。前述の効率については、白色有機EL光源(以下、有機EL光源という場合がある)から出射され、且つカラーフィルタを通して出力される白表示時の各波長における光強度を100としたときに、光学シートを透過した光の各波長における光強度値との比として算出した。光強度比が高いほど光源の輝度効率が高い。有機EL光源が出射する光のスペクトルを図10に示した。
【0123】
(表示装置反射特性1)
試作した光学シートについて、透過率T(λ)及び表面反射率R2(λ)を、自動分光光度計(株式会社日立製作所製、U-4100)を用いて測定した。表面反射率R2(λ)の測定については、被着体であるガラスの着色粘着層が形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布して反射防止の処置を行い、入射角5°の分光反射率測定を行い、表面反射率R2(λ)とした。電極反射率R(λ)を波長380nmから780nmまで全て100%として、光学シートを配置しない状態でのD65光源に対するパネル反射値を100としたときの相対反射値を、各層での界面反射及び表面反射を考慮せず上述の(4)、(5)、(7)、(9)式に基づいて算出し、表示装置反射特性1として評価した。相対反射値が低い程、反射光の強度が小さく、表示品が高い。
【0124】
(表示装置反射色相1)
自動分光光度計(株式会社日立製作所製、U-4100)を用いて試作した光学シートの透過率T(λ)及び表面反射率R2(λ)を測定した。表面反射率R2(λ)の測定については、被着体であるガラスの着色粘着層が形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布して反射防止の処置を行い、入射角5°の分光反射率測定を行い、表面反射率R2(λ)とした。電極反射率R(λ)を波長380nmから780nmまで全て100%として、D65光源に対する反射色相のクロマティクネス指数(値)a及びbを、各層での界面反射及び表面反射を考慮せず上述の(1)~(9)式に基づいて算出し、表示装置反射色相1として評価した。a及びbは、ゼロに近いほど色味づきがなく良好であり、-5以上+5以内となることが好ましい。
【0125】
(表示装置反射特性2)
電極反射率R(λ)を図11に示す有機発光表示装置(LGエレクトロニクス社製有機ELテレビ、OLED55C8PJA)の反射率測定より得られた電極反射率とした以外は、表示装置反射特性1と同様に算出した結果を表示装置反射特性2として評価した。表示装置反射特性1と同様に相対反射値が低いほど反射光の強度が小さく、表示品位が高い。
【0126】
(表示装置反射色相2)
電極反射率R(λ)を図11に示す有機発光表示装置(LGエレクトロニクス社製有機ELテレビ、OLED55C8PJA)の反射率測定より得られた電極反射率とした以外は、表示装置反射色相1と同様に算出した結果を表示装置反射特性2として評価した。表示装置反射色相1と同様に、aおよbは、ゼロに近いほど色味づきがなく良好であり、-5以上+5以内となることが好ましい。
【0127】
(色再現性)
自動分光光度計(株式会社日立製作所製、U-4100)を用いて試作した光学シートの透過率を測定し、この透過率と、図10に示したスペクトルの有機EL光源とカラーフィルタとを通して出力される図12に示す赤色表示、緑色表示、青色表示スペクトルとを用いて算出されるCIE1931色度値からNTSC比を算出し、色再現性として評価した。NTSC比が高いほど色再現性が広く、好ましい。
【0128】
上記の項目について評価した結果を下記[表7]に示す。
【0129】
【表7】
【0130】
[表7]に示すように、着色粘着層を備える表示装置は反射特性が大幅に低くなった。また、円偏光板では透過率が半減するといわれているのに対し、白表示透過性の評価値に示されるように着色粘着層を備える表示装置は輝度効率にも優れ、さらに色再現性も向上した。また、本実施例に示す第1、第2、第3色材を備える着色粘着層を備えた表示装置は、電極反射R(λ)が波長380nmから780nmまで全ての波長で100%の場合の反射色相のクロマティクネス指数a及びbのそれぞれを、-5以上+5以下の範囲内となるように、色材の吸収強度を調整することが可能であった。すなわち、反射色相をニュートラルに近づけることが可能であった。また、この特性は、実際の有機発光表示装置の電極反射率に変更した表示装置反射色相2においても、反射色相をニュートラルに維持できることが示され、表示装置の表示品位を向上させることができることが確認された。前述の通り、様々な波長分散性を有する有機発光表示装置の電極反射率に対して、第1、第2、第3色材の配合比を調整することで着色粘着層を備える光学シートの反射色相をニュートラルにすることも本発明の一態様である。
【0131】
以上、本発明の好ましい各実施形態及び変形例を実施例とともに説明したが、本発明は、各実施形態及び各実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0132】
11 着色粘着層
13 紫外線吸収粘着層(紫外線吸収層)
17 紫外線吸収透明基材(紫外線吸収層)
100A、100A´、100B、100C、100D、100E、110A、110B、110C、110D、110E、110F 粘着シート
120A、120A´ 表示装置
130D、130E、130F 光学シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12