(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014044
(43)【公開日】2022-01-19
(54)【発明の名称】扉装置の開閉方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/48 20060101AFI20220112BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220112BHJP
E05F 3/04 20060101ALI20220112BHJP
E05F 11/12 20060101ALI20220112BHJP
【FI】
E06B3/48
E05D15/06 125Z
E05F3/04
E05F11/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020116185
(22)【出願日】2020-07-06
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392036876
【氏名又は名称】BX鐵矢株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】田中 一三
(72)【発明者】
【氏名】今林 哲也
【テーマコード(参考)】
2E015
2E034
【Fターム(参考)】
2E015AA01
2E015BA01
2E015BA02
2E015CA13
2E015EA03
2E015FA01
2E034AA05
2E034CA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】扉を、吊元扉とバランス扉で2分割した折戸で、扉の開く側に風圧力が高い場合でも扉が開き、扉の開く側に風圧力が低い場合でも扉を閉めることができる扉装置の開閉方法を提供する。
【解決手段】吊ハンガー部品17の軸部と下部ガイド部品の軸部を結んだ戸先側バランス扉の中央左右分割線を想定し、扉の開く側の風圧力が高い場合はOPENタイプの扉として、扉の開く側に風圧力が低い場合はCLOSEタイプの扉として使用し、OPENタイプの扉として使用する場合は戸先側バランス扉において中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉が開き方向に受ける風圧力が戸先側で扉を開ける力を軽減する力として作用させ、CLOSEタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉においては中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力が戸先側で扉を閉じる力として作用して扉全体を自閉させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を、吊元扉とこの吊元扉に軸支される戸先側バランス扉とに左右で2分割した折戸で、ドアクローザを備え、戸先側バランス扉中間上部に吊ハンガー部品を、中間下部に下部ガイド部品をそれぞれ設けた扉装置において、
前記吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部を結んだ戸先側バランス扉の中央左右分割線を想定し、
扉の開く側の風圧力が高い場合はOPENタイプの扉として、扉の開く側の風圧力が低い場合はCLOSEタイプの扉として使用し、
OPENタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉において前記中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉が開き方向に受ける風圧力が前記中央左右分割線で反転され戸先側で扉を開ける力を軽減する力として作用させ、
CLOSEタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉において前記中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力が前記中央左右分割線で反転させて戸先側で扉を閉じる力として作用して扉全体を自閉させることを特徴とした扉装置の開閉方法。
【請求項2】
戸先側バランス扉の中央左右分割線を境にした左右面積は同じか、もしくは近似した値となるようにする請求項1記載の扉装置の開閉方法。
【請求項3】
吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部は戸先側バランス扉への取付部を横方向にスライド調整可能とする請求項1または請求項2記載の扉装置の開閉方法。
【請求項4】
ドアクローザには、クローザ本体部とアーム部からなる4節リンク機構のものを使用し、アーム部を扉を支持する扉枠側に、クローザ本体部を吊元扉に結合する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の扉装置の開閉方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内外に気圧差がある場合に、ドアノブなどによる扉の開放操作のみで差圧をなくして扉を簡単に開けることができる(開力軽減機構付)とともに、風圧を受ける状態でも圧力に逆らって自閉する(扉自閉)ことができる扉装置の開閉方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は先に、室内外に気圧差がある場合に、ドアノブによる扉の開放操作のみで差圧をなくして容易に避難を可能として扉を簡単に開けることができるものとして下記特許文献1に示す差圧緩和機構付き扉装置を提案し、特許を取得した。
【特許文献1】特許第5535348号公報
【0003】
特許文献1によれば、扉を吊元扉とこの吊元扉に軸支される戸先扉とに左右で2分割して折り戸形式の扉とし、戸先扉を差圧緩和機構とするもので、平時は2枚の扉を一体として作動させ、差圧発生時は開放力を低減させるために戸先扉を先に開けることが可能となる。
【0004】
特許文献1は、扉を吊元扉とこの吊元扉に軸支される戸先扉とに左右で2分割し、扉開閉用のハンドル、ドアクローザ、吊元扉に対し戸先扉を支持回転するとともに閉鎖方向に圧力を有するヒンジクローザ、戸先扉の扉枠に対するラッチA、戸先扉の吊元扉に対するラッチBを備え、
ドアクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):DH
ドアクローザの開扉力に対して必要な閉扉力(ハンドル位置):DHC
ヒンジクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):AH
ラッチBの解除力に対して必要な力(ハンドル位置):LBH
気圧差により扉全体に作用する荷重(閉方向に作用)(ハンドル位置):PAH
気圧差により戸先扉に作用する荷重(閉方向に作用)(ハンドル位置):PBH
の関係を下記のようにした。
DH<AH+LBH
PAH+DHC>PBH+AH+LBH
【0005】
特許文献1の発明によれば、ドアクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):DHは、ヒンジクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):AHとラッチBの解除力に対して必要な力(ハンドル位置):LBHとを合わせたものよりも小さいので、平時では、ヒンジクローザの閉扉力に対して必要な開扉力を加えれば、吊元扉と戸先扉を一体で開扉させることができる。
【0006】
また、気圧差により扉全体に作用する荷重(閉方向に作用すると仮定)(ハンドル位置):PAHとドアクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):DHとを合わせたものは、気圧差により戸先扉に作用する荷重(閉方向に作用)(ハンドル位置):PBHとラッチBの解除力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):LBHとヒンジクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):AHとを合わせたものよりも大きいので、差圧発生時に、戸先扉のみを先に開扉させることができる。
【0007】
同じく出願人は先に、平時および差圧発生時のどちらの場合でも戸先扉を自閉させることができるものとして下記特許文献2に示す扉装置を提案し、特許を取得した。
【特許文献2】特許第6676604号公報
【0008】
この特許文献2は、扉を、ドア形状を凹形状にした吊元扉とこの吊元扉に軸支されるものでドア形状を凸形状とした戸先扉とに左右で2分割した折戸で、ドアクローザを備えた扉装置において、扉の上方にはハンガーレールを、扉の下方にはスライドガイドレールを設け、戸先扉中間部に、前記ハンガーレールに係合させるものとして横方向の力を受けてもスライド可能な走行体を、前記スライドガイドレールに係合させるものとしてガイド車による下部スライドガイドをそれぞれ設け、戸先扉は吊元扉に対して面積を大きく、かつ、吊元扉の面積と走行体と下部スライドガイドを結んだ線の戸先扉の吊元側の面積を合わせた面積が走行体と下部スライドガイドを結んだ線の戸先扉の戸先側の面積よりも大きく設定し、走行体および下部スライドガイドで風圧力により押し開かれるドアを保持し、戸先扉の戸先側の面積に受ける風圧力を反転させて閉じる側の力とし、その力の反転を利用して自閉可能となる、また平常時はドアクローザにより自閉させるものである。
【0009】
特許文献2によれば、扉は全開状態では、ドア形状を凸形状にした戸先扉とドア形状を凹形状にした吊元扉とが完全に折り重なり、枠に対して直角方向に向くようになっている。
【0010】
この状態からドアクローザの負荷によって扉は閉まり始め、走行体がハンガーレールをスライドし、下部スライドガイドがスライドガイドレールを移動して負荷を理想的な回転移動方向へと導き、戸先扉がなめらかな軌跡を描いてくことを可能にする。
【0011】
この時、戸先扉は、走行体によってハンガーレールに吊られ、走行体の取り付け位置が戸先扉の中心部分(変芯可能)であるため、ドアクローザの負荷によって戸先扉は走行体を中心に回転しながら、閉じられていく。
【0012】
そして、中間部保持(移動支点)することで、風圧による影響で吊元側の開ける方向力を移動支点により閉める方向力へ反転させることができる。
【0013】
また、戸先扉形状を凸形状にして大きくし、吊元扉を凹形状にして面積を小さくしていて、早めにスキマをつくり、風圧の影響を軽減することができ、戸先扉の戸先側部分面積より吊元側部分面積+吊元扉面積を合せた面積を大きく設定すれば、室間差圧時に閉まる側の面積設定となり、自閉する。
【0014】
特許文献2によれば、このようにして、圧力により発生する左右回転力を扉面積バランスにより影響を極力小さくすることで、ドア中間部ハンガー車および下部スライドガイドで風圧により押し開かれるドアを保持して、ドアが自閉する。平常時は自閉装置により自閉させることができる。
【0015】
前記特許文献1の差圧緩和機構付き扉装置は、防火区画の通路に設置される防火扉や風圧および/または水圧が掛かるおそれのある扉などで使用される。
【0016】
また、前記特許文献2の扉装置は、エレベーター機械室などに使用される。
【0017】
ビル内の気圧を測定すると、窓や扉が開いているビルの1階と8階では3hPaの気圧差があっても、窓や扉が閉まっている正圧のビルでは、1階出入口の内側と外側の気圧差は測定できない程度の差である。しかしその僅かな気圧差であっても、窓や扉が開けば中から外へと空気が勢いよく流出する。
【0018】
エレベーターシャフトはビル内では最も煙突効果が発生する場所で、煙突効果により押し上げられたシャフト内の暖かい空気が機械室に侵入して外よりも高い気圧となる。
【0019】
一方、防火扉には、常時閉鎖型防火戸と随時閉鎖型防火戸とがあるが、火災時には延焼を防止するため火災発生時に扉を確実に閉めることが要求される随時閉鎖型防火戸などで使用される。
【0020】
図7に示すような、特別避難階段の付室1(非常用EVロビーを兼用する場合も含む。)や特別避難階段などでは、廊下(通路)2や階段(室)3との関係で下記のようになる。
廊下2(低)⇒付室1(高)
差圧低高(扉の開く側の圧力が高い場合)…OPENタイプの扉
付室1(高)⇒階段室3(低)
差圧低高(扉の開く側に圧力が低い場合)…CLOSEタイプの扉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前記特許文献1の扉装置は、ドアノブによる扉の開放操作のみで差圧をなくして容易に避難を可能として扉を簡単に開けることができるものであり、特許文献2の扉装置は平時および差圧発生時のどちらの場合でも戸先扉を自閉させることができるものであり、それぞれその目的が相違する。
【0022】
本発明の目的は前記従来例の扉の開放操作のみで差圧をなくして容易に避難を可能として扉を簡単に開けることができる、および、風圧により押し開かれるドアを保持して、ドアが自閉する。平常時は自閉装置により自閉させることができるという従来の2種の扉の機能の両方を兼ね備えることができ、同じ扉で、扉の開く側に圧力が高い場合である正圧時と扉の開く側に圧力が高い場合である負圧時にいずれも開かない扉が開き、閉じない扉を閉めることができる扉装置の開閉方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、扉を、吊元扉とこの吊元扉に軸支される戸先側バランス扉とに左右で2分割した折戸で、ドアクローザを備え、戸先側バランス扉中間上部に吊ハンガー部品を、中間下部に下部ガイド部品をそれぞれ設けた扉装置において、前記吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部を結んだ戸先側バランス扉の中央左右分割線を想定し、扉の開く側の風圧力が高い場合はOPENタイプの扉として、扉の開く側の風圧力が低い場合はCLOSEタイプの扉として使用し、OPENタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉において前記中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉が開き方向に受ける風圧力が前記中央左右分割線で反転され戸先側で扉を開ける力を軽減する力として作用させ、CLOSEタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉において前記中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力が前記中央左右分割線で反転させて戸先側で扉を閉じる力として作用して扉全体が自閉させることを要旨とするものである。
【0024】
請求項1記載の本発明によれば、OPENタイプの扉として機能させる場合、戸先側バランス扉においては中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力(吊元扉が開き方向)が中央左右分割線で反転され戸先側で扉を開ける力を軽減する力として作用する。
【0025】
CLOSEタイプの扉として機能させる場合、戸先側バランス扉においては中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力(吊元扉が閉じる方向)が中央左右分割線で反転され戸先側で扉を閉じる力として作用して扉全体が自閉する。なお、吊元扉で受ける風圧力は戸先バランス扉で相殺された力(回転力)より十分に大きい力となるので自閉させることができる。
【0026】
請求項2記載の本発明は、戸先側バランス扉の中央左右分割線を境にした左右面積は同じか、もしくは近似した値となるようにすることを要旨とするものである。
【0027】
請求項2記載の本発明によれば、Sa:A部面積、Sb:B部面積、Sc:C部面積でのA部トルク=Ta、B部トルク=Tb、C部トルク=Tcにおける関係式は、下記の通りである。
(1)各面積・トルクの関係式は
Sa≒Sb…ほぼ近い大きさの面積
上記よりTa≒Tb…ほぼ同じ強さトルク(トルクの相殺)
(2)(Ta-Tb)<Tc
戸先側バランス扉吊り金物ft2廻りのAB部相殺したトルクより吊元扉C部発生トルクが大きい(ft2部で力方向が反転)。このようにTcトルクが(Ta-Tb)に比較して十分に大きいので、同じ扉で、扉の開く側に圧力が高い場合開かない扉が開くと、扉の開く側に圧力が低い場合で、閉じない扉を閉ることができる。
【0028】
面積Aと面積Bはほぼ近似した値で良い、厳密にA=Bとしなくても吊元扉で受ける力が低圧時は閉じる力となり、高圧時は扉を開ける力の開力軽減となり、A-Bでトルク相殺された値より十分大きな値となるので求める性能は得られる。吊ハンガー部品スライド調整は開閉機能特性をはっきりさせてくれる事と、2枚折れ扉が90度開いた状態での角度調整ができる。
【0029】
請求項3記載の本発明は、吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部は戸先側バランス扉への取付部を横方向にスライド調整可能とすることを要旨とするものである。
【0030】
本発明のOPEN/CLOSE機能の基本は基本計算式 Tc>(Ta-Tb)による。A部面積B部面積が同一で回転トルク相殺した値が「0」に近いほど良い。しかし、2枚折戸で90度開きを考慮する時、吊りハンガー部品・下部ガイド部品について微調整が必要になる。よって完全に「0」に調整ができるとは言えません。多少の差分トルクが残ってもC部面積でのトルクが十分に大きく・移動支点金物で反転され、低圧時には扉が自閉する、高圧時には扉を開ける力が軽減される。
【0031】
請求項3記載の本発明によれば、丁番部品での開閉力抵抗があり、室間差圧が「0」に近い部分で錠前ラッチが完全に閉じ切れない現象が出てきて、このラッチング不良を避ける為にOPEN/CLOSE機能性格をはっきりとさせるために、スライド調整を行うことができる。
【0032】
なお、このスライド調整は、(1)90度扉が開く時に吊り元扉と戸先側バランス扉がきちんとスムースに開閉できる様調整、(2)戸先側バランス扉の面積比調整、(3)低圧時、高圧時における開閉機能特性をはっきりさせる、の3点役割を持って行う。
【0033】
請求項4記載の本発明は、ドアクローザには、クローザ本体部とアーム部からなる4節リンク機構のものを使用し、アーム部を扉を支持する扉枠側に、クローザ本体部を吊元扉に結合することを要旨とするものである。
【0034】
請求項4記載の本発明によれば、ドアクローザを邪魔にならずに、かつ、効果的に作用させるように設けることができる。
【発明の効果】
【0035】
以上述べたように本発明の扉装置の開閉方法は、扉の開く側に風圧力が高い場合に扉の開放操作のみで差圧をなくして容易に避難を可能として扉を簡単に開けることができ、扉の開く側に風圧力が低い場合では風圧により押し開かれるドアを保持して、ドアが自閉する。平常時は自閉装置により自閉させることができるという、2種類の機能とも兼ね備えることができ、同じ扉で、扉の開く側に風圧力が高い場合に開かない扉が開き、扉の開く側に風圧力が低い場合に閉じない扉を閉める両方の機能が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の開閉方法で使用する扉装置の1実施形態を示す正面図である。
【
図2】本発明の開閉方法で使用する扉装置の1実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明の開閉方法で使用する扉装置の部材構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の開閉方法で使用する扉装置の第1実施形態を示す一部省略した縦断側面図である。
【
図5】本発明の開閉方法で使用する扉装置の第2施形態を示す一部省略した縦断側面図である。
【
図6】本発明の開閉方法で使用する扉装置でのドアクローザの取り付け位置を示す平面図である。
【
図7】本発明の開閉方法で使用する扉装置の設置場所の一例を示す説明図である。
【
図8】本発明の開閉方法で使用する扉装置の説明図である。
【
図9】「OPEN」「NEUTRAL」「CLOSE」の3つのタイプの扉の寸法を示す説明図である。
【
図11】正圧と負圧の力の受け方を示す説明図である。
【
図12】本発明の扉装置の開閉方法原理を示す説明図である。
【
図13】扉の「OPEN」「NEUTRAL」「CLOSE」の3つのタイプでの状態を示すグラフである。
【
図14】吊ハンガー部品の取付けを示す正面図である。
【
図15】吊ハンガー部品の取付けを示す側面図である。
【
図16】吊ハンガー部品の取付けの部品構成を示す斜視図である。
【
図17】下部ガイド部品の取付けを示す側面図である。
【
図18】下部ガイド部品の位置調整の説明図である。
【
図19】下部ガイド部品の取付けの部品構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の開閉方法で用いる扉装置の正面図、
図2は同上平面図、
図3は同上部材構成を示す斜視図で、図中12は扉枠、4は沓摺である。
【0038】
扉枠12に収まる扉として、ドア形状を凹形状にした吊元扉13とこの吊元扉13に軸支されるものでドア形状を凸形状とした戸先扉である戸先側バランス扉14とに左右で2分割した折戸とし、ドアクローザ15を設けている。
【0039】
図中16aは吊元扉13を吊支する吊元丁番、16bは戸先側バランス扉14を吊支する中間丁番、25は吊ハンガー部品用切欠き、26は下部ガイド部品用切欠き、27は戸先側上フサギ部品、28は吊元側上フサギ部品、29は下部ガイド部品用切欠きフサギ部品である。
【0040】
吊ハンガー部品用切欠き25を戸先側バランス扉14の中間上部に、下部ガイド部品用切欠き26をバランス扉14の中間下部に形成し、これら切欠き25、26を利用して戸先側バランス扉14の中間上部に吊ハンガー金物である吊ハンガー部品17を、中間下部に下部ガイド車である下部ガイド部品18を設けた。
【0041】
図4、
図5に示すように、扉枠12の上枠に内蔵するようにして扉の上方には吊ハンガー部品17が係合するハンガーレール21を設け、扉の下方である床には中間下部に下部ガイド部品18が係合するドア下部回転のガイドレールであるスライドガイドレール23を設けている。
【0042】
吊ハンガー部品17には、
図4に示すような走行輪17aを有する台車形式のものと、
図5に示すようなボールリテーナ入り走行ブロック39のものとが採用できる。
【0043】
図4の吊ハンガー部品17では、横方向の力を受けてもスライド可能なものとして吊ハンガー部品17に設ける扉の吊軸19との係合部にベアリング20を配設し、摩擦抵抗を少なくする。
【0044】
さらに、吊ハンガー部品17はビス止めによる戸先側バランス扉14へのドア取付部17bを横方向にスライド調整可能とした。吊ハンガー部品17は戸先側バランス扉14の中間部に設けられ、吊ハンガー部品用切欠き25は戸先側上フサギ部品27で覆われる。
【0045】
図5では吊ハンガー部品17に同じく横方向の力を受けてもスライド可能な走行体として走行体としてボールリテーナ入り走行ブロック39を使用した。
【0046】
図示は省略するが、ボールリテーナ入り走行ブロック39は4方向(ラジアル方向、逆ラジアル方向、横方向)に対して同一一定格荷重になるよう各ボール列が接触角45°で配置されているので、あらゆる姿勢での使用が可能になり、しかもバランスの良い予圧がかけられるので、一定の低い摩擦係数を維持しながら、4方向の剛性を高めることができる。
【0047】
さらに、走行ブロック39は前記走行輪17aを有する台車形式の吊ハンガー部品17と同様にビス止めによるや戸先側バランス扉14へのビス止めによるドア取付部44を横方向にスライド調整可能とした。
【0048】
図14~
図16にこのスライド調整の詳細を示すと、走行ブロック39は
図16に示すようにスライダー部材45、このスライダー部材45の下側に結合する支持受け部材46、支持受け部材46で吊下がる吊りボルト47、吊りボルト47を受ける上側軸受け48a,下側軸受け48b,これら上側軸受け48a,下側軸受け48bが取り付く台板スライドホルダー50、扉側取付ボルト台板49とで構成され、台板スライドホルダー50はボルト貫通用の長穴50aを有する。
【0049】
扉側取付ボルト台板49から突設するボルト49aを前記台板スライドホルダー50の長穴50aに差51し入れる際に、その貫通位置で上側軸受け48a,下側軸受け48bの台板スライドホルダー50に対する位置を調整することができる。これにより、吊りボルト47の位置が調整される。
【0050】
前記スライドガイドレール23は、ビス等で床に固設されるチャンネル部材で、これに係合させる下部ガイド部品8はアームで支持される横向き車輪で、ナイロン等の合成樹脂もしくは合成ゴムによる。
【0051】
下部ガイド部品18はビスにより横方向へスライド調整可能とした。なお、下部ガイド部品18やスライドガイドレール23は、扉への風圧で側圧100Kgに耐えるものとする。
【0052】
図17~
図19にこの下部ガイド部品18のスライド調整の機構を示すと、スライドガイドレール23に係合させるガイド車30とガイド車30をボルト・ナット止めして、扉側固定部品51に長穴52aによりスライド可能にビス止めするガイド車支持部品52からなる。
【0053】
ガイド車30はナイロン等の合成樹脂もしくは合成ゴムによるもので、
図18に示すように、扉側固定部品51をガイド車支持部品52を長穴52aを介してビス止めすることで、ガイド車30の扉に対する取付位置を調整できる。
【0054】
以上のようにして、戸先側バランス扉14の吊ハンガー部品17を設けた部分から鉛直方向の下方に前記ドア下部の回転スライドとしてガイドレール23に係合する下部ガイド部品18を設けた。
【0055】
なお、スライドガイドレール23の開口は扉のスライドが支障とならない程度でゴムや軟質合成樹脂の塞ぎ板で覆い、埃やごみが入らないようにすることもできる。
【0056】
図6に示すように、ドアクローザ15はアーム部であるリンクアーム15aとクローザ本体部である油圧シリンダー15bを有する4節リンク機構のものを使用し、リンクアーム15aを扉を支持する扉枠側に、油圧シリンダー15bの先端の扉係合部は吊元扉13に掛合させる。
【0057】
図8は本発明の扉装置の説明図であるが、図中の各項目は以下の通りである。
AB各項目
A:戸先-吊り金物間寸法
B:吊ハンガー金物-中間丁番間寸法
C:吊り元扉上下辺部寸法
D:戸先側バランス扉凸部-吊ハンガー金物間寸法
E:吊元扉タテ框幅寸法
F:吊元扉上下アーム出寸法
G:パランス扉上側欠け部寸法
H:バランス扉下衡欠け部寸法
J:吊元扉上アーム高さ寸法
K:吊元扉下アーム高在寸法
U:吊元扉図芯寸涜
Q:バランス扉戸先側A部図芯寸法
R:バランス扉中間側B部図芯寸法
各部面積
Sa:A部面積
Sb:B部面積
Sc:C部面積
【0058】
前記吊ハンガー部品17の軸部と下部ガイド部品18の軸部を結んだ戸先側バランス扉14の中央左右分割線X(以下分割線Xと称する)を想定し、この
図8に示すように、本発明では、分割線Xを境にして戸先側バランス扉14の戸先側の面積A(Sa:A部面積)と戸先側バランス扉14の吊元扉13側の面積B(Sb:B部面積)はほぼ同じ大きさにし、圧力を受けて発生するトルクを相殺し、十分に小さな力(Ta-Tb)とし、吊元扉面積(C)の受ける圧力(Tc)を分割線Xを境にして力を反転すると(Ta-Tb)に比較して(Tc)が大きな力となるように設定した。前記分割線Xは戸先側バランス扉14を左右に分割する鉛直線もしくはほぼ鉛直線となる。
【0059】
先に、本発明の扉装置の設置場所の一例について説明する。先にも述べたが、
図7に示すような、特別避難階段の付室1(非常用EVロビーを兼用する場合も含む。)や特別避難階段などであり、廊下(通路)2や階段(室)3との関係で下記のようになる。
廊下2(低)→付室1(高)
差圧低高(扉の開く側の圧力が高い場合)…OPENタイプの扉
付室1(高)→階段(室)3(低)
差圧低高(扉の開く側に圧力が低い場合)…CLOSEタイプの扉
【0060】
次に本発明の原理について説明する。面積Saと面積Sbはほぼ同じ面積とした場合を想定すると、扉の開く側が負圧/正圧では
図10に示すように、吊ハンガー部品17の周り左右で回転トルクが相殺される。
【0061】
B寸法だけではB面積が調整できず、F寸法部で調整する。B寸法はC寸法と連動関係があり、単独調整ができない(B=C+23)
【0062】
図8におけるB部面積Sbについて
B寸法はC寸法とほぼ同じ値(C寸法と同じ値)
B=C+23…23は吊元丁番軸芯とスライドレール離れた値
扉厚/2-丁番軸芯(偏芯)=23mm
Sb面積の大きさはSaと同じが望ましい。面積SbはA部面積にあわせる為、
図8におけるF寸法を調整する。
【0063】
また、吊元扉13・戸先側バランス扉14を90度まで開くにはB=C+23とする。(
図11参照)
【0064】
図8におけるC部面積について
扉の開く側が低圧(CLOSE)の場合は、C部での差圧力を検討する。
吊元ドアC部への作用力は吊り金物ft2を介して、戸先部を閉じる向き力となりドアが自閉される。
【0065】
C部面積について扉の開く側が正圧(OPEN)の場合は、吊元ドアC部への作用力は吊り金物ft2を介して、戸先部を開き方向力となり差圧によりドア開力を軽減し100N以下力で開く。
【0066】
このように開閉機能の特性変化を見ると、扉の開く側が正圧/負圧の環境について、ドアC部に受ける差圧力を利用して低圧(CLOSE:扉の開く側が低圧)ではドアが自閉する。
【0067】
また、高圧(OPEN:扉の開く側が高圧)では開かない状態なので差圧力を開く方向へ作用させて開かないドアを開力100N以下の力で開放できる。
図11にかかるOPEN/CLOSEの特性を示す。
【0068】
図7において、室間差圧は、扉の開く側が負圧の場合は-500Pa、正圧の場合は500Paを想定した。
【0069】
A部トルク=Ta、B部トルク=Tb、C部トルク=Tcとした場合、
図12に示すように扉が開けられる原理は、当初Ta<Tb+Tcである。B・C部面積で発生トルク計がA部発生トルクより大きい事で、「(Ta-Tb)<Tc」となる。その結果、扉を閉めようとする力を軽減するように作用する。
【0070】
一方、扉が自閉できる原理は、扉の「(Ta-Tb)<Tc」のトルク時、圧力が自閉方向に作用する。
【0071】
このようにして、戸先側バランス扉14の吊ハンガー部品17ft2廻り(分割線X)のAB部相殺したトルクより吊元扉C部発生トルクが大きい(ft2部で力方向が反転)し、Tcトルクが(Ta-Tb)に比較して十分に大きいので、同じ扉で、扉の開く側に圧力が高い場合に開かない扉を開けることができる正圧時と、扉の開く側に圧力が低い場合に閉じない扉を閉めることができる負圧時のついてもいずれについても有効である。
【0072】
【0073】
2.C面積部での室間差圧による発生力(吊り金物ft2により、力方向が反転する)
+500Pa時 錠前部で 開く方向となる。
-500Pa時 錠前部で 閉じる方向となる。
【0074】
3.吊り金物ft2部での横スライド調整
先に述べたように、本発明は 吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部は戸先側バランス扉へのビス止めによる取付部を横方向にスライド調整可能とするものであるが、
図13のグラフに示すように、スライド調整により、戸先側扉の面積(A)と面積(B)の大きさ割合を変化させることで開閉力特性グラフ傾きが左上がりや、右上がりの性能グラフに変化する。ゆえに、吊り金物位置調整により機能特性を扉の開く側が高い場合に有効な開力軽減機能に有利な形、そして扉の開く側が低い場合の扉自閉機能の希望性能とする。
【0075】
【0076】
扉を「OPEN」「NEUTRAL」「CLOSE」の3つのタイプで検討する。
「OPEN」は開かないドアが軽く開く場合であり、人が操作して、軽く開く、ドア自体で閉じることを主目的とした。
「CLOSE」は、閉じないドアが自閉する場合であり、ドア自体で閉じる、ドアは軽く開けられることを主目的とした。
「NEUTRAL」はその中間である。
【0077】
バランス扉14の吊ハンガー金物17の位置(ft2)、すなわち、バランス扉14のバランス扉A寸法(戸先-吊り金物)の大小により機能は変化する。(下記表3および
図9参照)
表3は扉の各タイプの面積計算とトルク計算、
図9は扉の各タイプの寸法例である。
【表3】
【0078】
前記計算例として、吊り金物位置が横方向へ+5mm、-5mm変化させた時(中間程度)、ABC部面積変化割合は±1%、AB部による吊り金物支点廻りでの回転トルク相殺結果、小さなトルク値となる。C部での差圧発生トルクは(Ta-Tb)相殺後トルクよりC部面積トルクは十分大きなトルクとなる。
【0079】
前記より、戸先側バランス扉のAB部で差圧影響を極力小さくして、吊元扉C部に発生する力を中間部移動支点ft2で介する事で戸先側での力を反転させ(C部力>AB部力)高圧側へドアを開く場合は、ドア開力方向へ作用して開力を軽減する。これにより100N以下でドア開放できる。
【0080】
低圧側へドアを開く場合は、ドア閉鎖方向へ作用して風圧力に逆らってドアが自閉される。
【0081】
先に述べたように、本発明の扉装置のOPEN/CLOSE機能の基本は基本計算式 Tc>(Ta-Tb)である。
【0082】
A部面積B部面積が同一で回転トルク相殺した値が「0」に近いほど良い。
しかし、2枚折戸で90度開きを考慮する時、吊りハンガー部品・下部ガイド部品について微調整が必要になる。よって完全に「0」に調整ができるとは言えない。多少の差分トルクが残ってもC部面積でのトルクが十分に大きく・移動支点金物で反転され、低圧時には扉が自閉する、高圧時には扉を開ける力が軽減されると考えられる。
【0083】
前記
図13における低圧時のグラフ傾きおよび高圧時のグラフ傾きは吊りハンガー部品17・下部ガイド部品18の面積比調整で変化する。理想としては、開力・閉力グラフが水平に近いと良いが、錠前ラッチ・丁番部品での開閉力抵抗があり、室間差圧が「0」に近い部分で錠前ラッチが完全に閉じ切れない現象が出てき、このラッチング不良を避ける為にOPEN/CLOSE機能性格をはっきりとさせるべく、スライド調整を行う。
【0084】
調整すると、グラフ傾きが大きくなり0近辺での不具合部分がどちらかに移動して、ラッチングが完全にされる。(不具合部分を低圧/高圧での反対側へ移動させて問題解決させる。
【0085】
このように吊りハンガー部品・下部ガイド部品の左右スライド調整には
(1)90度扉が開く時に吊り元扉と戸先側バランス扉がきちんとスムースに開閉できる様調整。
(2)戸先側バランス扉の面積比調整
(3)低圧時、高圧時における開閉機能特性をはっきりさせる。
以上の3点役割がある。
【符号の説明】
【0086】
1…付室 2…廊下(通路)
3…階段(室) 4…沓摺
12…扉枠 13…吊元扉
14…戸先側バランス扉 15…ドアクローザ
15a…リンクアーム 15b…油圧シリンダー
16a…吊元丁番 16b…中間丁番
17…吊ハンガー部品 17a…走行輪
17b…ドア取付部 18…下部ガイド部品
19…吊軸 20…ベアリング
21…ハンガーレール 23…スライドガイドレール
25…吊ハンガー部品用切欠き 26…下部ガイド部品用切欠き
27…戸先側上フサギ部品 28…吊元側上フサギ部品
29…下部ガイド部品用切欠きフサギ部品
30…ガイド車
39…ボールリテーナ入り走行ブロック
44…ドア取付部 45…スライダー部材
46…支持受け部材 47…吊りボルト
48a…上側軸受け 48b…下側軸受け
49…扉側取付ボルト台板 49a…ボルト
50…台板スライドホルダー 50a…長穴
51…扉側固定部品 52…ガイド車支持部品
52a…長穴
【手続補正書】
【提出日】2020-07-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
【手続補正書】
【提出日】2021-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内外に気圧差がある場合に、ドアノブなどによる扉の開放操作のみで差圧をなくして扉を簡単に開けることができる(開力軽減機構付)とともに、風圧を受ける状態でも圧力に逆らって自閉する(扉自閉)ことができる扉装置の開閉方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は先に、室内外に気圧差がある場合に、ドアノブによる扉の開放操作のみで差圧をなくして容易に避難を可能として扉を簡単に開けることができるものとして下記特許文献1に示す差圧緩和機構付き扉装置を提案し、特許を取得した。
【特許文献1】特許第5535348号公報
【0003】
特許文献1によれば、扉を吊元扉とこの吊元扉に軸支される戸先扉とに左右で2分割して折り戸形式の扉とし、戸先扉を差圧緩和機構とするもので、平時は2枚の扉を一体として作動させ、差圧発生時は開放力を低減させるために戸先扉を先に開けることが可能となる。
【0004】
特許文献1は、扉を吊元扉とこの吊元扉に軸支される戸先扉とに左右で2分割し、扉開閉用のハンドル、ドアクローザ、吊元扉に対し戸先扉を支持回転するとともに閉鎖方向に圧力を有するヒンジクローザ、戸先扉の扉枠に対するラッチA、戸先扉の吊元扉に対するラッチBを備え、
ドアクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):DH
ドアクローザの開扉力に対して必要な閉扉力(ハンドル位置):DHC
ヒンジクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):AH
ラッチBの解除力に対して必要な力(ハンドル位置):LBH
気圧差により扉全体に作用する荷重(閉方向に作用)(ハンドル位置):PAH
気圧差により戸先扉に作用する荷重(閉方向に作用)(ハンドル位置):PBH
の関係を下記のようにした。
DH<AH+LBH
PAH+DHC>PBH+AH+LBH
【0005】
特許文献1の発明によれば、ドアクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):DHは、ヒンジクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):AHとラッチBの解除力に対して必要な力(ハンドル位置):LBHとを合わせたものよりも小さいので、平時では、ヒンジクローザの閉扉力に対して必要な開扉力を加えれば、吊元扉と戸先扉を一体で開扉させることができる。
【0006】
また、気圧差により扉全体に作用する荷重(閉方向に作用すると仮定)(ハンドル位置):PAHとドアクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):DHとを合わせたものは、気圧差により戸先扉に作用する荷重(閉方向に作用)(ハンドル位置):PBHとラッチBの解除力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):LBHとヒンジクローザの閉扉力に対して必要な開扉力(ハンドル位置):AHとを合わせたものよりも大きいので、差圧発生時に、戸先扉のみを先に開扉させることができる。
【0007】
同じく出願人は先に、平時および差圧発生時のどちらの場合でも戸先扉を自閉させることができるものとして下記特許文献2に示す扉装置を提案し、特許を取得した。
【特許文献2】特許第6676604号公報
【0008】
この特許文献2は、扉を、ドア形状を凹形状にした吊元扉とこの吊元扉に軸支されるものでドア形状を凸形状とした戸先扉とに左右で2分割した折戸で、ドアクローザを備えた扉装置において、扉の上方にはハンガーレールを、扉の下方にはスライドガイドレールを設け、戸先扉中間部に、前記ハンガーレールに係合させるものとして横方向の力を受けてもスライド可能な走行体を、前記スライドガイドレールに係合させるものとしてガイド車による下部スライドガイドをそれぞれ設け、戸先扉は吊元扉に対して面積を大きく、かつ、吊元扉の面積と走行体と下部スライドガイドを結んだ線の戸先扉の吊元側の面積を合わせた面積が走行体と下部スライドガイドを結んだ線の戸先扉の戸先側の面積よりも大きく設定し、走行体および下部スライドガイドで風圧力により押し開かれるドアを保持し、戸先扉の戸先側の面積に受ける風圧力を反転させて閉じる側の力とし、その力の反転を利用して自閉可能となる、また平常時はドアクローザにより自閉させるものである。
【0009】
特許文献2によれば、扉は全開状態では、ドア形状を凸形状にした戸先扉とドア形状を凹形状にした吊元扉とが完全に折り重なり、枠に対して直角方向に向くようになっている。
【0010】
この状態からドアクローザの負荷によって扉は閉まり始め、走行体がハンガーレールをスライドし、下部スライドガイドがスライドガイドレールを移動して負荷を理想的な回転移動方向へと導き、戸先扉がなめらかな軌跡を描いてくことを可能にする。
【0011】
この時、戸先扉は、走行体によってハンガーレールに吊られ、走行体の取り付け位置が戸先扉の中心部分(変芯可能)であるため、ドアクローザの負荷によって戸先扉は走行体を中心に回転しながら、閉じられていく。
【0012】
そして、中間部保持(移動支点)することで、風圧による影響で吊元側の開ける方向力を移動支点により閉める方向力へ反転させることができる。
【0013】
また、戸先扉形状を凸形状にして大きくし、吊元扉を凹形状にして面積を小さくしていて、早めにスキマをつくり、風圧の影響を軽減することができ、戸先扉の戸先側部分面積より吊元側部分面積+吊元扉面積を合せた面積を大きく設定すれば、室間差圧時に閉まる側の面積設定となり、自閉する。
【0014】
特許文献2によれば、このようにして、圧力により発生する左右回転力を扉面積バランスにより影響を極力小さくすることで、ドア中間部ハンガー車および下部スライドガイドで風圧により押し開かれるドアを保持して、ドアが自閉する。平常時は自閉装置により自閉させることができる。
【0015】
前記特許文献1の差圧緩和機構付き扉装置は、防火区画の通路に設置される防火扉や風圧および/または水圧が掛かるおそれのある扉などで使用される。
【0016】
また、前記特許文献2の扉装置は、エレベーター機械室などに使用される。
【0017】
ビル内の気圧を測定すると、窓や扉が開いているビルの1階と8階では3hPaの気圧差があっても、窓や扉が閉まっている正圧のビルでは、1階出入口の内側と外側の気圧差は測定できない程度の差である。しかしその僅かな気圧差であっても、窓や扉が開けば中から外へと空気が勢いよく流出する。
【0018】
エレベーターシャフトはビル内では最も煙突効果が発生する場所で、煙突効果により押し上げられたシャフト内の暖かい空気が機械室に侵入して外よりも高い気圧となる。
【0019】
一方、防火扉には、常時閉鎖型防火戸と随時閉鎖型防火戸とがあるが、火災時には延焼を防止するため火災発生時に扉を確実に閉めることが要求される随時閉鎖型防火戸などで使用される。
【0020】
図7に示すような、特別避難階段の付室1(非常用EVロビーを兼用する場合も含む。)や特別避難階段などでは、廊下(通路)2や階段(室)3との関係で下記のようになる。
廊下2(低)⇒付室1(高)
差圧低高(扉の開く側の圧力が高い場合)…OPENタイプの扉
付室1(高)⇒階段室3(低)
差圧低高(扉の開く側に圧力が低い場合)…CLOSEタイプの扉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前記特許文献1の扉装置は、ドアノブによる扉の開放操作のみで差圧をなくして容易に避難を可能として扉を簡単に開けることができるものであり、特許文献2の扉装置は平時および差圧発生時のどちらの場合でも戸先扉を自閉させることができるものであり、それぞれその目的が相違する。
【0022】
本発明の目的は前記従来例の扉の開放操作のみで差圧をなくして容易に避難を可能として扉を簡単に開けることができる、および、風圧により押し開かれるドアを保持して、ドアが自閉する。平常時は自閉装置により自閉させることができるという従来の2種の扉の機能の両方を兼ね備えることができ、同じ扉で、扉の開く側に圧力が高い場合である正圧時と扉の開く側に圧力が高い場合である負圧時にいずれも開かない扉が開き、閉じない扉を閉めることができる扉装置の開閉方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、扉を、吊元扉とこの吊元扉に軸支される戸先側バランス扉とに左右で2分割した折戸で、ドアクローザを備え、戸先側バランス扉中間上部に吊ハンガー部品を、中間下部に下部ガイド部品をそれぞれ設けた扉装置において、開閉機能を反転させることができるように、吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部は戸先側バランス扉への取付部を横方向にスライド調整可能とし、前記吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部を結んだ戸先側バランス扉の中央左右分割線を想定し、扉の開く側の風圧力が高い場合はOPENタイプの扉として、扉の開く側の風圧力が低い場合はCLOSEタイプの扉として使用し、OPENタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉において前記中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉が開き方向に受ける風圧力が前記中央左右分割線で反転され戸先側で扉を開ける力を軽減する力として作用させ、CLOSEタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉において前記中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力が前記中央左右分割線で反転させて戸先側で扉を閉じる力として作用して扉全体を自閉させることを要旨とするものである。
【0024】
請求項1記載の本発明によれば、OPENタイプの扉として機能させる場合、戸先側バランス扉においては中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力(吊元扉が開き方向)が中央左右分割線で反転され戸先側で扉を開ける力を軽減する力として作用する。
【0025】
CLOSEタイプの扉として機能させる場合、戸先側バランス扉においては中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力(吊元扉が閉じる方向)が中央左右分割線で反転され戸先側で扉を閉じる力として作用して扉全体が自閉する。なお、吊元扉で受ける風圧力は戸先バランス扉で相殺された力(回転力)より十分に大きい力となるので自閉させることができる。
【0026】
本発明のOPEN/CLOSE機能の基本は基本計算式 Tc>(Ta-Tb)による。A部面積B部面積が同一で回転トルク相殺した値が「0」に近いほど良い。しかし、2枚折戸で90度開きを考慮する時、吊りハンガー部品・下部ガイド部品について微調整が必要になる。よって完全に「0」に調整ができるとは言えない。多少の差分トルクが残ってもC部面積でのトルクが十分に大きく・移動支点金物で反転され、低圧時には扉が自閉する、高圧時には扉を開ける力が軽減される。
【0027】
本発明によれば、丁番部品での開閉力抵抗があり、室間差圧が「0」に近い部分で錠前ラッチが完全に閉じ切れない現象が出てきて、このラッチング不良を避ける為にOPEN/CLOSE機能性格をはっきりとさせるために、スライド調整を行うことができる。
【0028】
なお、このスライド調整は、(1)90度扉が開く時に吊り元扉と戸先側バランス扉がきちんとスムースに開閉できる様調整、(2)戸先側バランス扉の面積比調整、(3)低圧時、高圧時における開閉機能特性をはっきりさせる、の3点役割を持って行う。
【0029】
請求項2記載の本発明は、戸先側バランス扉の中央左右分割線を境にした左右面積は同じか、もしくは近似した値となるようにすることを要旨とするものである。
【0030】
請求項2記載の本発明によれば、Sa:A部面積、Sb:B部面積、Sc:C部面積でのA部トルク=Ta、B部トルク=Tb、C部トルク=Tcにおける関係式は、下記の通りである。
(1)各面積・トルクの関係式は
Sa≒Sb…ほぼ近い大きさの面積
上記よりTa≒Tb…ほぼ同じ強さトルク(トルクの相殺)
(2)(Ta-Tb)<Tc
戸先側バランス扉吊り金物ft2廻りのAB部相殺したトルクより吊元扉C部発生トルクが大きい(ft2部で力方向が反転)。このようにTcトルクが(Ta-Tb)に比較して十分に大きいので、同じ扉で、扉の開く側に圧力が高い場合開かない扉が開くと、扉の開く側に圧力が低い場合で、閉じない扉を閉ることができる。
【0031】
面積Aと面積Bはほぼ近似した値で良い、厳密にA=Bとしなくても吊元扉で受ける力が低圧時は閉じる力となり、高圧時は扉を開ける力の開力軽減となり、A-Bでトルク相殺された値より十分大きな値となるので求める性能は得られる。吊ハンガー部品スライド調整は開閉機能特性をはっきりさせてくれる事と、2枚折れ扉が90度開いた状態での角度調整ができる。
【0032】
請求項3記載の本発明は、ドアクローザには、クローザ本体部とアーム部からなる4節リンク機構のものを使用し、アーム部を扉を支持する扉枠側に、クローザ本体部を吊元扉に結合することを要旨とするものである。
【0033】
請求項3記載の本発明によれば、ドアクローザを邪魔にならずに、かつ、効果的に作用させるように設けることができる。
【発明の効果】
【0034】
以上述べたように本発明の扉装置の開閉方法は、扉の開く側に風圧力が高い場合に扉の開放操作のみで差圧をなくして容易に避難を可能として扉を簡単に開けることができ、扉の開く側に風圧力が低い場合では風圧により押し開かれるドアを保持して、ドアが自閉する。平常時は自閉装置により自閉させることができるという、2種類の機能とも兼ね備えることができ、同じ扉で、扉の開く側に風圧力が高い場合に開かない扉が開き、扉の開く側に風圧力が低い場合に閉じない扉を閉める両方の機能が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の開閉方法で使用する扉装置の1実施形態を示す正面図である。
【
図2】本発明の開閉方法で使用する扉装置の1実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明の開閉方法で使用する扉装置の部材構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の開閉方法で使用する扉装置の第1実施形態を示す一部省略した縦断側面図である。
【
図5】本発明の開閉方法で使用する扉装置の第2施形態を示す一部省略した縦断側面図である。
【
図6】本発明の開閉方法で使用する扉装置でのドアクローザの取り付け位置を示す平面図である。
【
図7】本発明の開閉方法で使用する扉装置の設置場所の一例を示す説明図である。
【
図8】本発明の開閉方法で使用する扉装置の説明図である。
【
図9】「OPEN」「NEUTRAL」「CLOSE」の3つのタイプの扉の寸法を示す説明図である。
【
図11】正圧と負圧の力の受け方を示す説明図である。
【
図12】本発明の扉装置の開閉方法原理を示す説明図である。
【
図13】扉の「OPEN」「NEUTRAL」「CLOSE」の3つのタイプでの状態を示すグラフである。
【
図14】吊ハンガー部品の取付けを示す正面図である。
【
図15】吊ハンガー部品の取付けを示す側面図である。
【
図16】吊ハンガー部品の取付けの部品構成を示す斜視図である。
【
図17】下部ガイド部品の取付けを示す側面図である。
【
図18】下部ガイド部品の位置調整の説明図である。
【
図19】下部ガイド部品の取付けの部品構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の開閉方法で用いる扉装置の正面図、
図2は同上平面図、
図3は同上部材構成を示す斜視図で、図中12は扉枠、4は沓摺である。
【0037】
扉枠12に収まる扉として、ドア形状を凹形状にした吊元扉13とこの吊元扉13に軸支されるものでドア形状を凸形状とした戸先扉である戸先側バランス扉14とに左右で2分割した折戸とし、ドアクローザ15を設けている。
【0038】
図中16aは吊元扉13を吊支する吊元丁番、16bは戸先側バランス扉14を吊支する中間丁番、25は吊ハンガー部品用切欠き、26は下部ガイド部品用切欠き、27は戸先側上フサギ部品、28は吊元側上フサギ部品、29は下部ガイド部品用切欠きフサギ部品である。
【0039】
吊ハンガー部品用切欠き25を戸先側バランス扉14の中間上部に、下部ガイド部品用切欠き26をバランス扉14の中間下部に形成し、これら切欠き25、26を利用して戸先側バランス扉14の中間上部に吊ハンガー金物である吊ハンガー部品17を、中間下部に下部ガイド車である下部ガイド部品18を設けた。
【0040】
図4、
図5に示すように、扉枠12の上枠に内蔵するようにして扉の上方には吊ハンガー部品17が係合するハンガーレール21を設け、扉の下方である床には中間下部に下部ガイド部品18が係合するドア下部回転のガイドレールであるスライドガイドレール23を設けている。
【0041】
吊ハンガー部品17には、
図4に示すような走行輪17aを有する台車形式のものと、
図5に示すようなボールリテーナ入り走行ブロック39のものとが採用できる。
【0042】
図4の吊ハンガー部品17では、横方向の力を受けてもスライド可能なものとして吊ハンガー部品17に設ける扉の吊軸19との係合部にベアリング20を配設し、摩擦抵抗を少なくする。
【0043】
さらに、吊ハンガー部品17はビス止めによる戸先側バランス扉14へのドア取付部17bを横方向にスライド調整可能とした。吊ハンガー部品17は戸先側バランス扉14の中間部に設けられ、吊ハンガー部品用切欠き25は戸先側上フサギ部品27で覆われる。
【0044】
図5では吊ハンガー部品17に同じく横方向の力を受けてもスライド可能な走行体として走行体としてボールリテーナ入り走行ブロック39を使用した。
【0045】
図示は省略するが、ボールリテーナ入り走行ブロック39は4方向(ラジアル方向、逆ラジアル方向、横方向)に対して同一一定格荷重になるよう各ボール列が接触角45°で配置されているので、あらゆる姿勢での使用が可能になり、しかもバランスの良い予圧がかけられるので、一定の低い摩擦係数を維持しながら、4方向の剛性を高めることができる。
【0046】
さらに、走行ブロック39は前記走行輪17aを有する台車形式の吊ハンガー部品17と同様にビス止めによるや戸先側バランス扉14へのビス止めによるドア取付部44を横方向にスライド調整可能とした。
【0047】
図14~
図16にこのスライド調整の詳細を示すと、走行ブロック39は
図16に示すようにスライダー部材45、このスライダー部材45の下側に結合する支持受け部材46、支持受け部材46で吊下がる吊りボルト47、吊りボルト47を受ける上側軸受け48a,下側軸受け48b,これら上側軸受け48a,下側軸受け48bが取り付く台板スライドホルダー50、扉側取付ボルト台板49とで構成され、台板スライドホルダー50はボルト貫通用の長穴50aを有する。
【0048】
扉側取付ボルト台板49から突設するボルト49aを前記台板スライドホルダー50の長穴50aに差51し入れる際に、その貫通位置で上側軸受け48a,下側軸受け48bの台板スライドホルダー50に対する位置を調整することができる。これにより、吊りボルト47の位置が調整される。
【0049】
前記スライドガイドレール23は、ビス等で床に固設されるチャンネル部材で、これに係合させる下部ガイド部品8はアームで支持される横向き車輪で、ナイロン等の合成樹脂もしくは合成ゴムによる。
【0050】
下部ガイド部品18はビスにより横方向へスライド調整可能とした。なお、下部ガイド部品18やスライドガイドレール23は、扉への風圧で側圧100Kgに耐えるものとする。
【0051】
図17~
図19にこの下部ガイド部品18のスライド調整の機構を示すと、スライドガイドレール23に係合させるガイド車30とガイド車30をボルト・ナット止めして、扉側固定部品51に長穴52aによりスライド可能にビス止めするガイド車支持部品52からなる。
【0052】
ガイド車30はナイロン等の合成樹脂もしくは合成ゴムによるもので、
図18に示すように、扉側固定部品51をガイド車支持部品52を長穴52aを介してビス止めすることで、ガイド車30の扉に対する取付位置を調整できる。
【0053】
以上のようにして、戸先側バランス扉14の吊ハンガー部品17を設けた部分から鉛直方向の下方に前記ドア下部の回転スライドとしてガイドレール23に係合する下部ガイド部品18を設けた。
【0054】
なお、スライドガイドレール23の開口は扉のスライドが支障とならない程度でゴムや軟質合成樹脂の塞ぎ板で覆い、埃やごみが入らないようにすることもできる。
【0055】
図6に示すように、ドアクローザ15はアーム部であるリンクアーム15aとクローザ本体部である油圧シリンダー15bを有する4節リンク機構のものを使用し、リンクアーム15aを扉を支持する扉枠側に、油圧シリンダー15bの先端の扉係合部は吊元扉13に掛合させる。
【0056】
図8は本発明の扉装置の説明図であるが、図中の各項目は以下の通りである。
AB各項目
A:戸先-吊り金物間寸法
B:吊ハンガー金物-中間丁番間寸法
C:吊り元扉上下辺部寸法
D:戸先側バランス扉凸部-吊ハンガー金物間寸法
E:吊元扉タテ框幅寸法
F:吊元扉上下アーム出寸法
G:パランス扉上側欠け部寸法
H:バランス扉下衡欠け部寸法
J:吊元扉上アーム高さ寸法
K:吊元扉下アーム高在寸法
U:吊元扉図芯寸涜
Q:バランス扉戸先側A部図芯寸法
R:バランス扉中間側B部図芯寸法
各部面積
Sa:A部面積
Sb:B部面積
Sc:C部面積
【0057】
前記吊ハンガー部品17の軸部と下部ガイド部品18の軸部を結んだ戸先側バランス扉14の中央左右分割線X(以下分割線Xと称する)を想定し、この
図8に示すように、本発明では、分割線Xを境にして戸先側バランス扉14の戸先側の面積A(Sa:A部面積)と戸先側バランス扉14の吊元扉13側の面積B(Sb:B部面積)はほぼ同じ大きさにし、圧力を受けて発生するトルクを相殺し、十分に小さな力(Ta-Tb)とし、吊元扉面積(C)の受ける圧力(Tc)を分割線Xを境にして力を反転すると(Ta-Tb)に比較して(Tc)が大きな力となるように設定した。前記分割線Xは戸先側バランス扉14を左右に分割する鉛直線もしくはほぼ鉛直線となる。
【0058】
先に、本発明の扉装置の設置場所の一例について説明する。先にも述べたが、
図7に示すような、特別避難階段の付室1(非常用EVロビーを兼用する場合も含む。)や特別避難階段などであり、廊下(通路)2や階段(室)3との関係で下記のようになる。
廊下2(低)→付室1(高)
差圧低高(扉の開く側の圧力が高い場合)…OPENタイプの扉
付室1(高)→階段(室)3(低)
差圧低高(扉の開く側に圧力が低い場合)…CLOSEタイプの扉
【0059】
次に本発明の原理について説明する。面積Saと面積Sbはほぼ同じ面積とした場合を想定すると、扉の開く側が負圧/正圧では
図10に示すように、吊ハンガー部品17の周り左右で回転トルクが相殺される。
【0060】
B寸法だけではB面積が調整できず、F寸法部で調整する。B寸法はC寸法と連動関係があり、単独調整ができない(B=C+23)
【0061】
図8におけるB部面積Sbについて
B寸法はC寸法とほぼ同じ値(C寸法と同じ値)
B=C+23…23は吊元丁番軸芯とスライドレール離れた値
扉厚/2-丁番軸芯(偏芯)=23mm
Sb面積の大きさはSaと同じが望ましい。面積SbはA部面積にあわせる為、
図8におけるF寸法を調整する。
【0062】
また、吊元扉13・戸先側バランス扉14を90度まで開くにはB=C+23とする。(
図11参照)
【0063】
図8におけるC部面積について
扉の開く側が低圧(CLOSE)の場合は、C部での差圧力を検討する。
吊元ドアC部への作用力は吊り金物ft2を介して、戸先部を閉じる向き力となりドアが自閉される。
【0064】
C部面積について扉の開く側が正圧(OPEN)の場合は、吊元ドアC部への作用力は吊り金物ft2を介して、戸先部を開き方向力となり差圧によりドア開力を軽減し100N以下力で開く。
【0065】
このように開閉機能の特性変化を見ると、扉の開く側が正圧/負圧の環境について、ドアC部に受ける差圧力を利用して低圧(CLOSE:扉の開く側が低圧)ではドアが自閉する。
【0066】
また、高圧(OPEN:扉の開く側が高圧)では開かない状態なので差圧力を開く方向へ作用させて開かないドアを開力100N以下の力で開放できる。
図11にかかるOPEN/CLOSEの特性を示す。
【0067】
図7において、室間差圧は、扉の開く側が負圧の場合は-500Pa、正圧の場合は500Paを想定した。
【0068】
A部トルク=Ta、B部トルク=Tb、C部トルク=Tcとした場合、
図12に示すように扉が開けられる原理は、当初Ta<Tb+Tcである。B・C部面積で発生トルク計がA部発生トルクより大きい事で、「(Ta-Tb)<Tc」となる。その結果、扉を閉めようとする力を軽減するように作用する。
【0069】
一方、扉が自閉できる原理は、扉の「(Ta-Tb)<Tc」のトルク時、圧力が自閉方向に作用する。
【0070】
このようにして、戸先側バランス扉14の吊ハンガー部品17ft2廻り(分割線X)のAB部相殺したトルクより吊元扉C部発生トルクが大きい(ft2部で力方向が反転)し、Tcトルクが(Ta-Tb)に比較して十分に大きいので、同じ扉で、扉の開く側に圧力が高い場合に開かない扉を開けることができる正圧時と、扉の開く側に圧力が低い場合に閉じない扉を閉めることができる負圧時のついてもいずれについても有効である。
【0071】
【0072】
2.C面積部での室間差圧による発生力(吊り金物ft2により、力方向が反転する)
+500Pa時 錠前部で 開く方向となる。
-500Pa時 錠前部で 閉じる方向となる。
【0073】
3.吊り金物ft2部での横スライド調整
先に述べたように、本発明は 吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部は戸先側バランス扉へのビス止めによる取付部を横方向にスライド調整可能とするものであるが、
図13のグラフに示すように、スライド調整により、戸先側扉の面積(A)と面積(B)の大きさ割合を変化させることで開閉力特性グラフ傾きが左上がりや、右上がりの性能グラフに変化する。ゆえに、吊り金物位置調整により機能特性を扉の開く側が高い場合に有効な開力軽減機能に有利な形、そして扉の開く側が低い場合の扉自閉機能の希望性能とする。
【0074】
【0075】
扉を「OPEN」「NEUTRAL」「CLOSE」の3つのタイプで検討する。
「OPEN」は開かないドアが軽く開く場合であり、人が操作して、軽く開く、ドア自体で閉じることを主目的とした。
「CLOSE」は、閉じないドアが自閉する場合であり、ドア自体で閉じる、ドアは軽く開けられることを主目的とした。
「NEUTRAL」はその中間である。
【0076】
バランス扉14の吊ハンガー金物17の位置(ft2)、すなわち、バランス扉14のバランス扉A寸法(戸先-吊り金物)の大小により機能は変化する。(下記表3および
図9参照)
表3は扉の各タイプの面積計算とトルク計算、
図9は扉の各タイプの寸法例である。
【表3】
【0077】
前記計算例として、吊り金物位置が横方向へ+5mm、-5mm変化させた時(中間程度)、ABC部面積変化割合は±1%、AB部による吊り金物支点廻りでの回転トルク相殺結果、小さなトルク値となる。C部での差圧発生トルクは(Ta-Tb)相殺後トルクよりC部面積トルクは十分大きなトルクとなる。
【0078】
前記より、戸先側バランス扉のAB部で差圧影響を極力小さくして、吊元扉C部に発生する力を中間部移動支点ft2で介する事で戸先側での力を反転させ(C部力>AB部力)高圧側へドアを開く場合は、ドア開力方向へ作用して開力を軽減する。これにより100N以下でドア開放できる。
【0079】
低圧側へドアを開く場合は、ドア閉鎖方向へ作用して風圧力に逆らってドアが自閉される。
【0080】
先に述べたように、本発明の扉装置のOPEN/CLOSE機能の基本は基本計算式 Tc>(Ta-Tb)である。
【0081】
A部面積B部面積が同一で回転トルク相殺した値が「0」に近いほど良い。
しかし、2枚折戸で90度開きを考慮する時、吊りハンガー部品・下部ガイド部品について微調整が必要になる。よって完全に「0」に調整ができるとは言えない。多少の差分トルクが残ってもC部面積でのトルクが十分に大きく・移動支点金物で反転され、低圧時には扉が自閉する、高圧時には扉を開ける力が軽減されると考えられる。
【0082】
前記
図13における低圧時のグラフ傾きおよび高圧時のグラフ傾きは吊りハンガー部品17・下部ガイド部品18の面積比調整で変化する。理想としては、開力・閉力グラフが水平に近いと良いが、錠前ラッチ・丁番部品での開閉力抵抗があり、室間差圧が「0」に近い部分で錠前ラッチが完全に閉じ切れない現象が出てき、このラッチング不良を避ける為にOPEN/CLOSE機能性格をはっきりとさせるべく、スライド調整を行う。
【0083】
調整すると、グラフ傾きが大きくなり0近辺での不具合部分がどちらかに移動して、ラッチングが完全にされる。(不具合部分を低圧/高圧での反対側へ移動させて問題解決させる。
【0084】
このように吊りハンガー部品・下部ガイド部品の左右スライド調整には
(1)90度扉が開く時に吊り元扉と戸先側バランス扉がきちんとスムースに開閉できる様調整。
(2)戸先側バランス扉の面積比調整
(3)低圧時、高圧時における開閉機能特性をはっきりさせる。
以上の3点役割がある。
【符号の説明】
【0085】
1…付室 2…廊下(通路)
3…階段(室) 4…沓摺
12…扉枠 13…吊元扉
14…戸先側バランス扉 15…ドアクローザ
15a…リンクアーム 15b…油圧シリンダー
16a…吊元丁番 16b…中間丁番
17…吊ハンガー部品 17a…走行輪
17b…ドア取付部 18…下部ガイド部品
19…吊軸 20…ベアリング
21…ハンガーレール 23…スライドガイドレール
25…吊ハンガー部品用切欠き 26…下部ガイド部品用切欠き
27…戸先側上フサギ部品 28…吊元側上フサギ部品
29…下部ガイド部品用切欠きフサギ部品
30…ガイド車
39…ボールリテーナ入り走行ブロック
44…ドア取付部 45…スライダー部材
46…支持受け部材 47…吊りボルト
48a…上側軸受け 48b…下側軸受け
49…扉側取付ボルト台板 49a…ボルト
50…台板スライドホルダー 50a…長穴
51…扉側固定部品 52…ガイド車支持部品
52a…長穴
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を、吊元扉とこの吊元扉に軸支される戸先側バランス扉とに左右で2分割した折戸で、ドアクローザを備え、戸先側バランス扉中間上部に吊ハンガー部品を、中間下部に下部ガイド部品をそれぞれ設けた扉装置において、開閉機能を反転させることができるように、吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部は戸先側バランス扉への取付部を横方向にスライド調整可能とし、前記吊ハンガー部品の軸部と下部ガイド部品の軸部を結んだ戸先側バランス扉の中央左右分割線を想定し、
扉の開く側の風圧力が高い場合はOPENタイプの扉として、扉の開く側の風圧力が低い場合はCLOSEタイプの扉として使用し、
OPENタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉において前記中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉が開き方向に受ける風圧力が前記中央左右分割線で反転され戸先側で扉を開ける力を軽減する力として作用させ、
CLOSEタイプの扉として使用する場合は、戸先側バランス扉において前記中央左右分割線の左右面積にかかる風圧力はほぼ相殺され、吊元扉に受ける風圧力が前記中央左右分割線で反転させて戸先側で扉を閉じる力として作用して扉全体を自閉させることを特徴とした扉装置の開閉方法。
【請求項2】
戸先側バランス扉の中央左右分割線を境にした左右面積は同じか、もしくは近似した値となるようにする請求項1記載の扉装置の開閉方法。
【請求項3】
ドアクローザには、クローザ本体部とアーム部からなる4節リンク機構のものを使用し、アーム部を扉を支持する扉枠側に、クローザ本体部を吊元扉に結合する請求項1または請求項2のいずれかに記載の扉装置の開閉方法。