IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工株式会社の特許一覧

特開2022-140477非水系電池電極用バインダー用共重合体、非水系電池電極用スラリー、非水系電池電極、および非水系電池
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140477
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】非水系電池電極用バインダー用共重合体、非水系電池電極用スラリー、非水系電池電極、および非水系電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20220915BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220915BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220915BHJP
   C08F 220/06 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
C08F220/06
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111818
(22)【出願日】2022-07-12
(62)【分割の表示】P 2021071368の分割
【原出願日】2017-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2016042855
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 充
(72)【発明者】
【氏名】中川 康宏
(57)【要約】
【課題】非水系電池電極における活物質同士、及び活物質と集電体との間で十分な結着性を確保しつつ、電池としての内部抵抗が低減できるバインダー用共重合体、バインダー用組成物、非水系電池電極用スラリー、非水系電池電極、及び非水系電池を提供すること。
【解決手段】バインダー用共重合体は、少なくとも、一般式(1)で表す単量体(A)と、(メタ)アクリル酸塩単量体(B)とを含む単量体混合物(M)の共重合体(P)であって、前記共重合体(P)に対する前記単量体(A)由来の構造が0.5~20.0質量%とする。
[化1]
(式中、R、Rは各々独立に水素原子または炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一般式(1)で表す単量体(A)と、(メタ)アクリル酸塩単量体(B)とを含む単量体混合物(M)の共重合体(P)であって、
前記共重合体(P)に対する前記単量体(A)由来の構造が0.5~20.0質量%であることを特徴とする非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【化1】
(式中、R、Rは各々独立に水素原子または炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記単量体混合物(M)は、さらに極性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【請求項3】
前記単量体(A)が、N-ビニルホルムアミドまたはN-ビニルアセトアミドであることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【請求項4】
前記共重合体(P)の重量平均分子量が、100万~1000万の範囲であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【請求項5】
前記共重合体(P)において、
前記単量体(B)由来の構造が20.0~99.0質量%であり、
前記単量体(C)由来の構造が0.5~60.0質量%であることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の前記非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)と、
電極活物質と
を含むことを特徴とする非水系電池電極用スラリー。
【請求項7】
前記電極活物質が、負極活物質であることを特徴とする請求項6に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項8】
前記非水系電池電極用スラリーにおける前記非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)の含有量は、電極活物質100質量部に対して0.1~5質量部であることを特徴とする請求項6または7に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項9】
集電体と、
前記集電体において形成された電極活物質層と
を有し、
前記電極活物質層は、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)と電極活物質とを含む
ことを特徴とする非水系電池電極。
【請求項10】
前記電極活物質が、負極活物質であることを特徴とする請求項9に記載の非水系電池電極。
【請求項11】
請求項9または10に記載の非水系電池電極を備えることを特徴とする非水系電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電池電極用バインダー用共重合体、非水系電池電極用スラリー、該非水系電池電極用スラリーを用いて形成された非水系電池電極、及び該非水系電池電極を備える非水系電池に関する。
本願は、2016年3月4日に、日本に出願された特願2016-042855号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
非水系電解質を用いる非水系電池は高電圧化、小型化、軽量化の面において水系電池よりも優れている。そのため、非水系電池は、ノート型パソコン、携帯電話、電動工具、電子・通信機器の電源として広く使用されている。また、最近では環境車両適用の観点から電気自動車やハイブリッド自動車用にも非水系電池が使用されているが、高出力化、高容量化、長寿命化等が強く求められてきている。非水系電池としてリチウムイオン二次電池が代表例として挙げられる。
【0003】
非水系電池は、金属酸化物などを活物質とした正極と、黒鉛等の炭素材料を活物質とした負極と、カーボネート類または難燃性のイオン液体を中心した非水系電解液溶剤とを備える。非水系電池は、イオンが正極と負極との間を移動することにより電池の充放電が行われる二次電池である。詳細には、正極は、金属酸化物とバインダーから成るスラリーをアルミニウム箔などの正極集電体表面に塗布し、乾燥させた後に、適当な大きさに切断することにより得られる。負極は、炭素材料とバインダーから成るスラリーを銅箔などの負極集電体表面に塗布し、乾燥させた後に、適当な大きさに切断することにより得られる。バインダーは、正極及び負極において活物質同士及び活物質と集電体を結着させ、集電体からの活物質の剥離を防止させる役割がある。
【0004】
バインダーとして、有機溶剤系のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を溶剤としたポリフッ化ビニリデン(PVDF)系バインダーがよく知られている(特許文献1)。しかしながら、このバインダーは活物質同士及び活物質と集電体との結着性が低く、実際に使用するには多量のバインダーを必要とする。そのため、非水系電池の容量が低下する欠点がある。また、バインダーに高価な有機溶剤であるNMPを使用しているため、最終製品の価格、及びスラリーまたは集電体作成時の作業環境保全にも問題があった。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、従来から水分散系バインダーの開発が進められており、たとえば、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を併用したスチレン-ブタジエンゴム(SBR)系の水分散体が知られている(特許文献2)。このSBR系分散体は、水分散体であるため安価であり、作業環境保全の観点から有利である。また、活物質同士及び活物質と集電体との結着性が比較的良好である。そのため、PVDF系バインダーよりも少ない使用量で電極の生産が可能であり、非水系電池の高出力化、及び高容量化ができるという利点がある。これらのことから、SBR系分散体は、非水系電池電極用バインダーとして広く使用されている。
【0006】
しかしながら、SBR系バインダーは増粘剤であるカルボキシメチルセルロースを併用する必要があり、スラリー作製工程が複雑である。かつこのバインダーにおいても活物質同士、及び活物質と集電体との結着性が足りず、少量のバインダーで電極を生産した場合に、集電体を切断する工程で活物質の一部が剥離する問題があった。
【0007】
特許文献3では、アクリル酸ナトリウム-N-ビニルアセトアミド共重合体(共重合比:アクリル酸ナトリウム/N-ビニルアセトアミド=40/60質量比)を含む貼付材用粘着剤組成物が開示されている。また、特許文献4では、アクリル酸ナトリウム-N-ビニルアセトアミド(55/45(モル比))共重合体を含む含水ゲル体用組成物が開示されている。これらのアクリル酸ナトリウム-N-ビニルアセトアミド共重合体では、N-ビニルアセトアミド由来の成分を多く含んでいる。このような重合体を負極活物質(難黒鉛化炭素)及び水と混合して非水系電池電極用スラリーとした場合、スラリーに凝集物があり、電池としての内部抵抗を低減できなかった(後述する比較例3及び4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10-298386号公報
【特許文献2】特開平8-250123号公報
【特許文献3】特開2005-336166号公報
【特許文献4】特開2006-321792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決するため、非水系電池電極における活物質同士、及び活物質と集電体との間で十分な結着性を確保しつつ、電池としての内部抵抗が低減できる非水系電池電極用バインダー用共重合体、非水系電池電極用スラリー、非水系電池電極、及び非水系電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の[1]~[11]の通りである。
【0011】
[1] 少なくとも、一般式(1)で表す単量体(A)と、(メタ)アクリル酸塩単量体(B)とを含む単量体混合物(M)の共重合体(P)であって、
前記共重合体(P)に対する前記単量体(A)由来の構造が0.5~20.0質量%であることを特徴とする非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【0012】
【化1】
(式中、R、Rは各々独立に水素原子または炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【0013】
[2]前記単量体混合物(M)は、さらに極性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(C)を含むことを特徴とする[1]に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。[3] 前記単量体(A)が、N-ビニルホルムアミドまたはN-ビニルアセトアミドであることを特徴とする[1]または[2]に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
[4] 前記共重合体(P)の重量平均分子量が、100万~1000万の範囲であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
[5] 前記共重合体(P)において、
前記単量体(B)由来の構造が20.0~99.0質量%であり、
前記単量体(C)由来の構造が0.5~60.0質量%であることを特徴とする[2]~[4]のいずれかに記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の前記非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)と、電極活物質とを含むことを特徴とする非水系電池電極用スラリー。
[7] 前記電極活物質が、負極活物質であることを特徴とする[6]に記載の非水系電池電極用スラリー。
[8] 前記非水系電池電極用スラリーにおける前記非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)の含有量は、電極活物質100質量部に対して0.1~5質量部であることを特徴とする[6]または[7]に記載の非水系電池電極用スラリー。
[9] 集電体と、前記集電体において形成された電極活物質層と
を有し、前記電極活物質層は、[1]~[5]のいずれかに記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)と電極活物質とを含むことを特徴とする非水系電池電極。
[10]前記電極活物質が、負極活物質であることを特徴とする[9]に記載の非水系電池電極。
[11] [9]または[10]に記載の非水系電池電極を備えることを特徴とする非水系電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非水系電池電極における活物質同士、及び活物質と集電体との間で十分な結着性を確保しつつ、電池としての内部抵抗が低減できる非水系電池電極用バインダー用共重合体、非水系電池電極用スラリー、非水系電池電極、及び非水系電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)>
本実施形態にかかる非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)(以下、単に「バインダー用共重合体(P)」又は「共重合体(P)」とすることもある)は、後述する非水系電池の電極において電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを結着させるために用いられる。本実施形態にかかる非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)は、少なくとも、下記一般式(1)で表す単量体(A)と(メタ)アクリル酸塩単量体(B)とを含む単量体混合物(M)の共重合体である。共重合体(P)において単量体(A)由来の構造が0.5~20.0質量%である。
【0016】
【化2】
(式中、R、Rは各々独立に水素原子または炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
また、単量体混合物(M)はさらに極性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(C)を含んでもよい。
【0017】
共重合体(P)を合成する際は、水性媒質中で重合することが好ましい。重合は、水性媒質中において、ラジカル重合開始剤を用いて行うとよい。重合法としては、例えば、重合に使用する成分を全て一括して仕込んで重合する方法や、重合に使用する各成分を連続供給しながら重合する方法等が適用される。重合は、通常30~90℃の温度で行う。なお、共重合体(P)の重合方法の具体的な例は、後述の実施例において詳しく説明する。
【0018】
共重合体(P)の重量平均分子量は、100万~1000万であるが、300万~1000万であることが好ましく、500万~1000万であることがより好ましい。ここで、重量平均分子量とは、プルラン換算値であり、具体的な測定方法の一例を後述の実施例にて説明する。
【0019】
<1-1.単量体(A)>
単量体(A)は、一般式(1)において、R、Rは各々独立に水素原子または炭素数1以上5以下のアルキル基である。R、Rは各々独立に水素原子または炭素数1以上3以下のアルキル基であることが好ましく、R、Rは各々独立に水素原子またはメチル基であることがより好ましい。
【0020】
、Rの組み合わせとして好ましい具体例としては、R:H、R:H(すなわち、単量体(A)はN-ビニルホルムアミド)、R:H、R:CH(すなわち、単量体(A)はN-ビニルアセトアミド)が挙げられる。
【0021】
また、共重合体(P)において、単量体(A)由来の構造が0.5~20.0質量%である。0.5~15.0質量%であることが好ましく、0.5~10.0質量%であることがより好ましい。
単量体混合物(M)に含まれている単量体(A)の含有量は0.5~20.0質量%である。0.5~15.0質量%であることが好ましく、0.5~10.0質量%であることがより好ましい。
【0022】
<1-2.(メタ)アクリル酸塩単量体(B)>
(メタ)アクリル酸塩単量体(B)としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウムが好ましい。その中でも、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウムがより好ましく、アクリル酸ナトリウムが最も好ましい。(メタ)アクリル酸塩単量体(B)は、例えば、(メタ)アクリル酸を水酸化物やアンモニア水などで中和して得られるが、中でも入手容易性の点から、水酸化ナトリウムで中和することが好ましいためである。
単量体混合物(M)における単量体(B)の含有量は20.0~99.0質量%である。25.0~99.0質量%であることが好ましく、30.0~99.0質量%であることがより好ましい。
【0023】
<1-3.エチレン性不飽和単量体(C)>
本実施形態の単量体混合物(M)はさらに極性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(C)を含んでもよい。
エチレン性不飽和単量体(C)は、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有し、かつ、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミド基、シアノ基などの極性基を有する化合物を用いることができる。なお、エチレン性不飽和単量体(C)がアミド基を含む場合には、一般式(1)として単量体(A)は除外するものとする。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が挙げられる。ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。アミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、アルキル基の炭素数が1~3であるN‐ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノ基を除く部分のアルキル基の炭素数が1~5であるジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。シアノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては例えば、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも入手容易性の点から、アクリル酸、イタコン酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリルアミドが好ましい。
【0024】
単量体混合物(M)におけるエチレン性不飽和単量体(C)の含有量は0.5~60.0質量%である。0.5~55.0質量%であることが好ましく、0.5~50.0質量%であることがより好ましい。
【0025】
<1-4.重合開始剤>
重合の際に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、アゾ系化合物等が挙げられるが、これに限られない。重合を水中で行う場合は、水溶性の重合開始剤を用いることが好ましい。また、必要に応じて、重合の際にラジカル重合開始剤と、重亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤とを併用して、レドックス重合してもよい。
【0026】
<1-5.重合に用いる水性媒質>
本実施形態においては、重合に用いる水性媒質として水を用いるが、得られるバインダー用共重合体の重合安定性を損なわない限り、水に親水性の溶媒を添加したものを水性媒質として用いてもよい。水に添加する親水性の溶媒としては、メタノール、エタノール及びN‐メチルピロリドン等が挙げられる。
【0027】
<2.非水系電池電極用スラリー>
本実施形態の非水系電池電極用スラリー(以下、単に「スラリー」とすることもある)は、バインダー用共重合体(P)と電極活物質とを、水性媒質に溶解、分散させたものである。本実施形態のスラリーは、必要に応じて任意成分である増粘剤を含んでもよいが、スラリー作製工程の簡単化するためには、増粘剤を含まないほうが好ましい。スラリーを調製する方法としては、特に限定されないが、例えば、攪拌式、回転式、または振とう式などの混合装置を使用して必要な成分を混合する方法が挙げられる。
【0028】
<2-1.非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)の含有量>
スラリーに含まれるバインダー用共重合体(P)の含有量は、電極活物質とバインダー用共重合体(P)とを合計した質量に対して、0.1~5.0質量%であることが好ましい。この範囲であれば、電極活物質と集電体との結着性を確保するのに十分な量であり、電池としたときの内部抵抗も低くなる。バインダー用共重合体(P)の含有量として、さらに好ましくは0.3~4.5質量%、最も好ましくは0.5~3.5質量%である。
【0029】
<2-2.電極活物質>
電極活物質は、リチウム等をドープ/脱ドープ可能な材料であればよい。スラリーが負極形成用のものである場合、電極活物質の例として、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー、あるいはコークス、石油コークス、ピッチコークス、石炭コークス等のコークス類、ポリマー炭、カーボンファイバー、アセチレンブラック等のカーボンブラック、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛類、チタン酸リチウム、シリコン等が挙げられる。これら活物質の中でも、体積当たりのエネルギー密度が大きい点から、カーボンブラック、グラファイト、天然黒鉛、チタン酸リチウム、シリコン等を用いることが好ましい。中でも、炭素材料、すなわち、コークス、石油コークス、ピッチコークス、石炭コークス等のコークス類、ポリマー炭、カーボンファイバー、アセチレンブラック等のカーボンブラック、および人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛類であると、本実施形態のバインダー用共重合体(P)による結着性を向上させる効果が顕著である。
【0030】
スラリーが正極形成用のものである場合、電極活物質の例として、コバルト酸リチウム(LiCoO)、Ni-Co-Mn系のリチウム複合酸化物、Ni-Mn-Al系のリチウム複合酸化物、Ni-Co-Al系のリチウム複合酸化物などのニッケルを含むリチウム複合酸化物や、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn)、オリビン型燐酸鉄リチウム、TiS、MnO、MoO、V、などのカルコゲン化合物のうちの1種、あるいは複数種が組み合わせて用いられる。また、その他のアルカリ金属の酸化物も使用することが出来る。
【0031】
<2-3.スラリーに用いる水性媒質>
スラリーに用いる水性媒質としては、例えば、バインダー用共重合体(P)の重合に用いたものに加え、水または親水性の溶媒をさらに添加する。親水性の溶媒としては、メタノール、エタノール及びN‐メチルピロリドン等が挙げられる。
【0032】
<2-4.スラリーの性質>
スラリーの不揮発分は、本実施形態では直径5cmのアルミ皿にサンプルを約1g秤量し、大気圧、乾燥器内で空気を循環させながら130℃で1時間乾燥させ、残分を秤量することで算出される。スラリーの不揮発分は、好ましくは30~70質量%、より好ましくは40~60質量%である。スラリーの不揮発分は、水性媒質(分散媒)の量により調整する。
【0033】
また、スラリーの粘度は、本実施形態ではブルックフィールド型回転粘度計(例えば、TOKI SANGYO社製 TV-25)を用いて、液温23℃、回転数10rpmにて測定する。スラリーの粘度は、好ましくは500~20,000mPa・sであり、より好ましくは5,000~20,000mPa・sである。スラリーの粘度は、分散媒の量や増粘剤により調整する。スラリーの不揮発分や粘度が好適な範囲にあれば、集電板への塗布性が良好で、電極の生産性に優れる。電池の耐久性などの観点から、スラリーのpHは、2~10であることが好ましく、4~9であることがより好ましく、6~9であることがさらに好ましい。
【0034】
<3.非水系電池用電極>
本実施形態の非水系電池用電極は、集電体の表面上に、電極活物質がバインダー用共重合体(P)を介して形成されている。例えば、上記スラリーを集電体上に塗布し、乾燥させて電極活物質層が形成される。その後、適当な大きさに切断することにより電極が製造される。
【0035】
電極に用いられる集電体の例としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属が挙げられるが、特に限定されない。また、集電体の形状についても特に限定されないが、通常、厚さ0.001~0.5mmのシート状のものが用いられる。
【0036】
スラリーを集電体上に塗布する方法としては、一般的な塗布方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ドクターブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法およびスクイーズ法などを挙げることができる。これらの中でも、非水系電池の電極に用いられるスラリーの粘性等の諸物性及び乾燥性に対して好適であり、良好な表面状態の塗布膜を得ることが可能である点で、ドクターブレード法、ナイフ法、又はエクストルージョン法を用いることが好ましい。
【0037】
スラリーは、集電体の片面にのみ塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。スラリーを集電体の両面に塗布する場合は、片面ずつ逐次塗布してもよいし、両面同時に塗布してもよい。また、スラリーは、集電体の表面に連続して塗布してもよいし、間欠で塗布してもよい。スラリーを塗布してなる塗布膜の厚さ、長さや幅は、電池の大きさなどに応じて、適宜、決定できる。
【0038】
塗布されたスラリーの乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、熱風、真空、(遠)赤外線、電子線、マイクロ波および低温風を単独あるいは組み合わせて用いることができる。塗布膜を乾燥させる温度は、通常40~180℃の範囲であり、乾燥時間は、通常1~30分である。
【0039】
活物質層が形成された集電体は、電極として適当な大きさや形状にするために切断される。活物質層の形成された集電体の切断方法は特に限定されないが、例えば、スリット、レーザー、ワイヤーカット、カッター、トムソン等を用いることができる。
【0040】
活物質層が形成された集電体を切断する前または後に、必要に応じてそれをプレスしてもよい。それによって電極活物質を電極により強固に結着させ、さらに電極を薄くすることによる非水系電池のコンパクト化が可能になる。プレスの方法としては、一般的な方法を用いることができ、特に金型プレス法やロールプレス法を用いることが好ましい。プレス圧は、特に限定されないが、プレスによる電極活物質へのリチウムイオン等のドープ/脱ドープに影響を及ぼさない範囲である0.5~5t/cmとすることが好ましい。
【0041】
<4.非水系電池>
本実施形態にかかる非水系電池は、正極と、負極と、電解液と、必要に応じてセパレータ等の部品とが外装体に収容されたものであり、正極と負極のうちの一方または両方に上記の方法により作製された電極を用いる。電極の形状としては、例えば、積層体や捲回体が挙げられるが、特に限定されない。
【0042】
<4-1.電解液>
電解液としては、イオン伝導性を有する非水系の溶液を使用する。溶液としては、電解質を溶解した有機溶媒や、イオン液体などが例として挙げられる。
【0043】
電解質としては、アルカリ金属塩を用いることができ、電極活物質の種類等に応じ適宜選択できる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、脂肪族カルボン酸リチウム、等が挙げられる。また、その他のアルカリ金属を用いた塩を用いることもできる。
【0044】
電解質を溶解する有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジメチルカーボネート(DMC)等の炭酸エステル化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物が挙げられる。
これらの電解液は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
<4-2.外装体>
外装体としては、金属やアルミラミネート材などを適宜使用できる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型等、いずれの形状であってもよい。本実施形態の電池は、公知の製造方法を用いて製造できる。
【実施例0046】
以下にバインダー用共重合体(P)(バインダー)、負極用スラリー、電極、電池についての実施例および比較例を示して本発明をさらに詳細に説明する。各実施例及び比較例のバインダーの成分、スラリーの配合比及び各サンプルの評価結果は表1の通りである。なお、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
(バインダー用共重合体(P)(バインダー)の作製)
一般式(1)で表す単量体(A)としてN-ビニルアセトアミド(NVA)(昭和電工(株)製)を、(メタ)アクリル酸塩単量体(B)として、アクリル酸ナトリウム(AaNa)(28.5質量%水溶液として調製したもの)を用いた。また、重合触媒としてV-50(2,2’-アゾビス(2- メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、和光純薬工業社製)を、重合開始剤として過硫酸アンモニウム(和光純薬工業社製)を用いた。
【0048】
冷却管、温度計、攪拌機、滴下ロートが組みつけられたセパラブルフラスコに、NVAを10質量部、28.5質量%AaNa水溶液を315.8質量部(AaNaとして90質量部)、V-50を0.2質量部、過硫酸アンモニウムを0.05質量部、水を9.0質量部を30℃で仕込んだ。これを、80℃に昇温し、4時間重合を行った。その後、室温まで冷却し、乾燥し、粉砕して粉末状のバインダー用共重合体P1(バインダーP1)を得た。
得られたバインダー用共重合体P1の重量平均分子量(プルラン換算値)を測定した。測定された重量平均分子量は550万であった。
【0049】
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
GPC装置: GPC‐101(昭和電工(株)製))
溶媒:0.1M NaNO水溶液
サンプルカラム:Shodex Column Ohpak SB-806 HQ(8.0mmI.D. x 300mm) ×2
リファレンスカラム:Shodex Column Ohpak SB-800 RL(8.0mmI.D. x 300mm) ×2
カラム温度:40℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI-71S(株式会社島津製作所製)
ポンプ:DU-H2000(株式会社島津製作所製)
圧力:1.3MPa
流量:1ml/min
分子量スタンダード:プルラン(P‐5、P-10、P‐20、P-50、P‐100、P-200、P-400、P-800、P-1300、P-2500(昭和電工(株)製))
【0050】
(負極用スラリーの作製)
次に、負極活物質として難黒鉛化性炭素を96.5部、バインダー用共重合体P1を3.5部、水を69部加えて、攪拌式混合装置(自転公転撹拌ミキサー)を用いて2000回転/分で4分間固練りを行った。さらに水を16部加え、さらに2000回転/分で4分間混ぜ、負極用スラリーを作製した。
【0051】
(負極の作製)
この負極用スラリーを集電体となる厚さ10μmの銅箔の片面に乾燥後の塗布量が4mg/cmとなるようにドクターブレードを用いて塗布し、60℃で2分加熱乾燥後、さらに100℃で10分乾燥して活物質層を形成した。この活物質層と集電体からなる材料を金型プレスを用いてプレス圧1t/cmでプレスして負極活物質含有層を形成した。 得られた負極活物質含有層を22mm×22mmに切り出しに導電タブをつけて負極を作製した。
【0052】
(正極の作製)
また、正極は以下のように作製した。まず、LiNi1/3Mn1/3Co1/3を90質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン5質量部とを混合したものに、N-メチルピロリドンを100質量部添加して、さらに混合して正極用スラリーを作製した。
作製した正極用スラリーを、ドクターブレード法により集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上にロールプレス処理後の厚さが100μmになるように塗布し、120℃で5分乾燥、プレス工程を経て正極活物質含有層を形成した。得られた正極活物質含有層を20mm×20mmに切り出し、導電タブをつけて正極を作製した。
【0053】
(電池の作製)
上記の正極と負極を用いて以下のようにしてリチウムイオン二次電池を作製した。
また、リチウムイオン二次電池に用いる電解液を、エチレンカーボネート(EC)とチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比40:60で混合した混合溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度になるように溶解して調整した。
導電タブがつけられた正極と負極との間にポリオレフィン系の多孔性フィルムからなるセパレータを介在させて、正極と負極との活物質が互いに対向するようにアルミラミネート外装体(電池パック)の中に収納した。この外装体中に電解液を注入し、真空ヒートシーラーでパッキングし、ラミネート型電池を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
<実施例2~9>
実施例2~9の各サンプル(バインダー用共重合体、負極用スラリー、電極、電池)の作製条件について、実施例1に対して異なる部分のみ説明する。
【0056】
実施例2では、単量体混合物(M)中のAaNaの含有量を75質量%にして、さらにエチレン性不飽和単量体(C)としてアクリル酸(Aa)15質量%を加えてバインダー用共重合体P2を合成した(バインダーP2)。共重合体の重量平均分子量は370万であった。
【0057】
実施例3では、単量体混合物(M)中のNVAを5質量%、AaNaの含有量を95質量%にした(バインダー用共重合体P3(バインダーP3))。共重合体の重量平均分子量は850万であった。実施例4では、単量体混合物(M)中のNVAを2質量%、AaNaの含有量を98質量%にした(バインダー用共重合体P4(バインダーP4))。バインダー用共重合体P4の重量平均分子量は900万であった。実施例5では、単量体混合物(M)中のNVAを1質量%、AaNaの含有量を99質量%にした(バインダー用共重合体P5(バインダーP5))。バインダー用共重合体P5の重量平均分子量は770万であった。
【0058】
実施例6では、負極用スラリー中の負極活物質の配合量を97.0質量部、バインダー用共重合体P1の配合量を3.0質量部とした。実施例7では、負極用スラリー中の負極活物質の配合量を97.5質量部、バインダー用共重合体P1の配合量を2.5質量部とした。実施例8では、負極用スラリー中の負極活物質の配合量を98.0質量部、バインダー用共重合体P1の配合量を2.0質量部とした。実施例9では、負極用スラリー中の負極活物質の配合量を98.5質量部、バインダー用共重合体P1の配合量を1.5質量部とした。
【0059】
<比較例1~4>
比較例1~4の各サンプル(バインダー、負極用スラリー、電極、電池)の作製条件については、実施例1に対して異なる部分のみ説明する。
比較例1では、単量体としてNVAのみを用いた(バインダーP6)。比較例2では、単量体としてAaNaのみを用いた(バインダーP7)。比較例3では、単量体混合物(M)中のNVAの含有量を80質量%、AaNaの含有量を20質量%にした(バインダーP8)。比較例4では、単量体混合物(M)中のNVAの含有量を60質量%、AaNaの含有量を40質量%にした(バインダーP9)。
【0060】
<比較例5>
比較例5において、バインダーP10は、水分散状態のスチレンブタジエンラテックス(SBR)とカルボキシセルロスソーダ(CMC)からなる。
難黒鉛化性炭素を96.5質量部、カルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル(株)製商品名メトローズMAC350HC)を1.0質量部、水を49質量部加えて、攪拌式混合装置(自転公転撹拌ミキサー)を用いて2000回転/分で4分間固練りを行った。
その後、SBR40質量%の水分散液を6.25質量部(SBR2.5質量部、水3.75質量部)、水を32質量部加え、さらに2000回転/分で4分間混ぜ、負極用スラリーを作製した。
この負極用スラリーを用いて、実施例1と同様に負極を作製した。さらに、この負極と、実施例1と同様の方法で作製した正極とを用いて、実施例1と同様に電池を作製した。
【0061】
<比較例6>
比較例6では、バインダーP11としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いた。 次に、負極活物質として難黒鉛化性炭素を95質量部、非水系電池電極用バインダー用共重合体P11を5.0質量部、水を69質量部加えて、攪拌式混合装置(自転公転撹拌ミキサー)を用いて2000回転/分で4分間固練りを行った。さらに水を16質量部加え、さらに2000回転/分で4分間混ぜ、負極用スラリーを作製した。
この負極用スラリーを用いて、実施例1と同様に負極を作製した。さらに、この負極と、実施例1と同様の方法で作製した正極とを用いて、実施例1と同様に電池を作製した。
【0062】
<実施例及び比較例の評価方法>
各実施例及び比較例の負極用スラリー外観、電極性能、電池性能を評価した。評価方法は以下の通りで、評価結果は表1に示した通りである。
【0063】
(スラリー外観)
スラリーを目視して外観を確認し、凝集物及び塊のサイズをマイクロメーターで測定した。スラリー中に凝集物(1mm~27mm)や塊(27mm以上)がある場合を×、それ以外の場合を○と判断した。
【0064】
(負極外観)
電極を目視して外観を確認し、凝集物及び塊のサイズをマイクロメーターで測定した。凝集物(1mm~27mm)や塊(27mm以上)が確認された場合、また、電極に筋が入った場合を×、それ以外を○と判断した。
【0065】
(負極活物質層の剥離強度)
負極の集電体上に形成された活物質層とSUS板とを両面テープ(NITTOTAPE No5)を用いて貼り合わせ、剥離幅25mm、剥離速度100mm/minで180°剥離して得られた値を剥離強度とした。
【0066】
(電池性能)
作製された電池の内部抵抗(DCR(Ω))を以下のように測定した。
レストポテンシャルから3.6Vまで0.2Cの定電流充電し、充電状態(SOC)を50%にした。その後、0.2C、0.5C、1Cおよび2Cの各電流値で60秒間放電を行った。4種の電流値(1秒間での値)と電圧の関係からSOC50%でのDCR(Ω)を決定した。
【0067】
<実施例及び比較例の評価結果>
表1からわかるように、実施例1~9においては、電極(負極)の外観が良好で、負極活物質層の剥離強度(mN/mm)も十分な値を示している。また、電池としたときの内部抵抗(Ω)も十分に低い値である。
【0068】
一方、NVAの単独重合体をバインダーに用いた比較例1、及びAaNaの単独重合体をバインダーに用いた比較例2では、スラリーの外観は塊があった。また、作製した電極の外観は筋が入り、電極表面に電極活物質層を形成できず、電池としての性能評価は不可能であった。
【0069】
単量体混合物(M)に過剰のNVAを含む比較例3及び4では、スラリーの外観は凝集物があった。また、作製した電極の外観は凝集物があり、電池としての内部抵抗が十分に低減できていなかった。
【0070】
バインダーとしてSBR/CMCを用いた比較例5では、電池としての内部抵抗が十分に低減できていなかった。また、バインダーとしてPVDFを用いた比較例6では、電極活物質層としての剥離強度が不十分であり、電極としたときの内部抵抗も十分に低減できなかった。
【0071】
以上の評価結果から、実施例のバインダーと負極活物質とを含むスラリーを集電体に塗布、乾燥して得られる負極活物質層は、外観上問題なく、剥離強度も十分であり、電池としたときの内部抵抗も十分に低減できている。
したがって、本実施例にかかるバインダー用共重合体を非水系電池負極用のバインダーとして用いることにより、非水系電池負極における負極活物質同士、及び負極活物質と集電体との間で十分な結着性を確保しつつ、電池としての内部抵抗が低減できることがわかった。
【0072】
また、これらバインダーは正極活物質のため(非水系電池正極用の)のバインダーとしても用いることができ、正極活物質同士、及び正極活物質と集電体との間で十分な結着性を確保しつつ、電池としての内部抵抗が低減できる。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一般式(1)で表す単量体(A)由来の構造と、(メタ)アクリル酸塩単量体(B)由来の構造とを含む共重合体(P)であって、
前記共重合体(P)に対する前記単量体(A)由来の構造が0.5~10.0質量%であり、
前記共重合体(P)に対する前記(メタ)アクリル酸塩単量体(B)由来の構造が75.0~99.0質量%であることを特徴とする非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【化1】
(式中、R、Rは各々独立に水素原子または炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【請求項2】
らに極性官能基を有するエチレン性不飽和単量体(C)由来の構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【請求項3】
前記単量体(A)が、N-ビニルホルムアミドまたはN-ビニルアセトアミドであることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【請求項4】
前記共重合体(P)の重量平均分子量が、100万~1000万の範囲であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【請求項5】
前記共重合体(P)において、
記単量体(C)由来の構造が0.5~15質量%であることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の前記非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)と、
電極活物質と
を含むことを特徴とする非水系電池電極用スラリー。
【請求項7】
前記電極活物質が、負極活物質であることを特徴とする請求項6に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項8】
前記非水系電池電極用スラリーにおける前記非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)の含有量は、電極活物質100質量部に対して0.1~5質量部であることを特徴とする請求項6または7に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項9】
集電体と、
前記集電体において形成された電極活物質層と
を有し、
前記電極活物質層は、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水系電池電極用バインダー用共重合体(P)と電極活物質とを含む
ことを特徴とする非水系電池電極。
【請求項10】
前記電極活物質が、負極活物質であることを特徴とする請求項9に記載の非水系電池電極。
【請求項11】
請求項9または10に記載の非水系電池電極を備えることを特徴とする非水系電池。