(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140533
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】トリアルキルカチオン性脂質およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07C 229/12 20060101AFI20220915BHJP
C07C 271/20 20060101ALI20220915BHJP
C07C 217/08 20060101ALI20220915BHJP
C11B 11/00 20060101ALI20220915BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220915BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220915BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220915BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220915BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220915BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
C07C229/12
C07C271/20 CSP
C07C217/08
C11B11/00
A61P31/12
A61P1/16
A61P35/00
A61K48/00
A61K31/713
A61K31/7105
A61K9/51
A61K9/127
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022115626
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2020184356の分割
【原出願日】2013-02-22
(31)【優先権主張番号】61/602,990
(32)【優先日】2012-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513146871
【氏名又は名称】アルブータス・バイオファーマー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ウッド
(72)【発明者】
【氏名】アラン マーティン
(57)【要約】
【課題】治療剤を細胞に送達するための組成物および方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、治療剤を細胞に送達するための組成物および方法を提供する。具体的には、それらは、核酸の効果的なカプセル封入およびカプセル封入された核酸のインビボでの細胞への効果的な送達を提供する、新規なトリアルキルカチオン性脂質および核酸-脂質粒子を含む。本発明の組成物は、極めて強力であり、したがって、比較的低用量で、特定の標的タンパク質の効果的なノックダウンを可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年2月24日に出願された、米国仮出願第61/602,990号の利益を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
I.発明の背景
本発明は、新規なトリアルキルカチオン性脂質、トリアルキルカチオン性脂質のうちの1つ以上を含む脂質粒子、脂質粒子を作製する方法、ならびに脂質粒子の送達および/または投与の方法(例えば、哺乳動物における疾患の治療のための)に関する。
【背景技術】
【0003】
II.関連技術の説明
治療的核酸には、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、プラスミド、および免疫賦活核酸が含まれる。これらの核酸は、多様な機序を介して作用する。siRNAおよびmiRNA等の干渉RNA分子の場合、これらの核酸は、RNA干渉(RNAi)と称されるプロセスを通じて特定のタンパク質の細胞内レベルを下方制御し得る。細胞の細胞質内に干渉RNAを導入した後、これらの二本鎖RNA構築物は、RISCと称されるタンパク質に結合することができる。干渉RNAのセンス鎖は、RISC複合体から転位され、結合された干渉RNAのものに相補的な配列を有するmRNAを認識し、それに結合することができる、RISC内の鋳型を提供する。相補的mRNAに結合すると、RISC複合体は、mRNAを切断し、切断された鎖を放出する。RNAiは、タンパク質の合成をコードする、対応するmRNAの特異的な破壊を標的とすることによって、特定のタンパク質の下方制御をもたらすことができる。
【0004】
干渉RNA構築物は、標的タンパク質を対象とする任意のヌクレオチド配列を用いて合成することができるため、RNAiの治療的用途は極めて広範である。これまでに、siRNA構築物は、インビトロおよびインビボの両モデルにおいて、標的タンパク質を特異的に下方制御する能力を示している。さらに、siRNA構築物は、現在、臨床研究において評価が行われている。
【0005】
しかしながら、干渉RNA構築物が現在直面している2つの問題は、第1に、それらが血漿中でヌクレアーゼ消化されやすいこと、そして第2には、遊離干渉RNA分子として全身投与した際に、RISCに結合することができる細胞内区画へのアクセスを獲得する能力が限定されていることである。これらの二本鎖構築物は、分子内に化学修飾されたヌクレオチドリンカー、例えば、ホスホチオエート基を組み込むことによって、安定化され得る。しかしながら、このような化学修飾されたリンカーは、ヌクレアーゼ消化から限定された保護を提供するのみであり、構築物の活性を減少させ得る。干渉RNAの細胞内送達は、ポリマー、カチオン性リポソーム等の担体系の使用によって、またはコレステロール部分を分子に共有結合させることによって、促進することができる。しかしながら、siRNAおよびmiRNA等の干渉RNA分子の効力を増加させ、化学修飾されたヌクレオチドリンカーの要件を排除するためには、改善された送達系が必要である。
【0006】
加えて、干渉RNA等の治療的核酸が細胞膜を交差する能力が限定されていること(Vlassov et al.,Biochim.Biophys.Acta,1197:95-1082(1994)を参照されたい)、ならびに補体媒介性アナフィラキシー、改変された凝固特性、および血球減少といった、全身毒性と関連する問題(Galbraith et al.,Antisense Nucl.Acid Drug Des.,4:201-206(1994))に課題が残る。
【0007】
有効性を向上させようとするため、研究者らは、化学修飾または非修飾の治療的核酸の送達のために、脂質に基づく担体系もまた利用している。Zelphatiら(J.Contr.Rel.,41:99-119(1996))は、アニオン性(従来的)リポソーム、pH感受性リポソーム、免疫リポソーム、融合性リポソーム、およびカチオン性脂質/アンチセンス凝集体の使用について記載している。同様に、siRNAは、カチオン性リポソーム中で全身投与されており、これらの核酸-脂質粒子は、非ヒト霊長類を含む哺乳動物において、標的タンパク質の改善された下方制御をもたらすことが報告されている(Zimmermann et al.,Nature,441:111-114(2006))。
これらの発展にもかかわらず、当該技術分野において、一般的な治療上の使用に好適な、改善された脂質-治療的核酸組成物に対する必要性が残る。好ましくは、これらの組成物は、高い効率で核酸をカプセル封入し、薬物:脂質比が高く、カプセル封入された核酸を血清中での分解およびクリアランスから保護し、全身送達に好適であり、カプセル封入された核酸の細胞内送達を提供するものであろう。さらに、これらの核酸-脂質粒子は、核酸の治療有効用量での患者の治療が、患者に対する著しい毒性および/危険性を伴わないように、十分に耐容性であり、適切な治療指標を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Vlassov et al.,Biochim.Biophys .Acta,1197:95-1082(1994)
【非特許文献2】Galbraith et al.,Antisense Nuc l.Acid Drug Des.,4:201-206(1994)
【非特許文献3】Zelphatiら(J.Contr.Rel.,41:99-1 19(1996)
【非特許文献4】Zimmermann et al.,Nature,441:1 11-114(2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規なトリアルキルカチオン性(アミノ)脂質、および核酸のインビボ送達に有利なこれらの脂質を含む脂質粒子、ならびにインビボでの治療的使用に好適な核酸-脂質粒子組成物を提供する。本発明はまた、これらの組成物を作製する方法、ならびに、例えば種々の疾患状態の治療のために、これらの組成物を使用して細胞内に核酸を導入する方法を提供する。本発明はまた、本明細書に開示される全ての新規な化合物および中間体を含む。
【0010】
本明細書の実施例2に記載されるように、本発明のトリアルキルカチオン性脂質は、マウスApoB siRNAアッセイにおいて、より長いアルキル鎖を有することを除いて同一である脂質よりも、強力である。
【0011】
一態様において、本発明は、構造式(I)を有するカチオン性脂質
【化1】
またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩であって、式中、
Xは、アルキルアミノであり、
Aは、C1~C6の任意に置換されたアルキルであり、前記C1~C6の任意に置換されたアルキルは、飽和または不飽和であり得、Aは、存在してもしなくてもよく、
Yは、ケタール、エステル、任意に置換されたカルバメート、エーテル、および任意に置換されたアミドからなる群から選択され、
Zは、アルキル鎖のそれぞれがC8~C11の長さを有する3つのアルキル鎖からなる疎水性部分であり、3つのアルキル鎖のそれぞれは、飽和または不飽和であり得、3つのアルキル鎖のそれぞれは、任意に置換される、カチオン性脂質またはその塩を提供する。
【0012】
式(I)の脂質に関して、アルキルアミノ基の代表的な例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、およびエチルメチルアミノが挙げられる。
【0013】
再び式(I)の脂質に関して、カルバメートおよび/またはアミノ基上に存在する任意の置換基の代表的な例は、飽和または不飽和アルキル基(例えば、C1-C6アルキル)である。
【0014】
再び式(I)の脂質に関して、疎水性部分Zの3つのアルキル鎖のうちの1つ以上に存在し得る任意の置換基の代表的な例は、ヒドロキシル基である。
【0015】
再び式(I)の脂質に関して、疎水性部分Zのアルキル鎖が1つ以上の二重結合または三重結合を含有する場合、そのアルキル鎖は、不飽和と称されることを理解されたい。
【0016】
再び式(I)の脂質に関して、誤解を避けるために、疎水性部分Zの1つ以上のアルキル鎖は、シクロアルキル基を含み得る(例えば、シクロプロピル)ことを理解されたい。
【0017】
再び式(I)の脂質に関して、「エステル」という用語には、構造-C(=O)O-または-OC(=O)-を有するエステルが含まれることを理解されたい。「アミド」という用語には、構造-C(=O)NR-または-NR(=O)C-を有するアミドが含まれる。「カルバメート」という用語には、構造-OC(=O)NR-または-NRC(=O)O-を有するカルバメートが含まれる。
【0018】
式(I)の脂質は、例えば、例として、治療剤(例えば、siRNA等、生物学的に活性な核酸分子)を、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)に送達するために有用な、本発明の脂質粒子を作製するために有用である。
【0019】
式(I)の脂質のいくつかの実施形態において、Zは、式
【化2】
を有し、式中、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、C8~C11アルキルからなる群から選択され、R1、R2、およびR3のそれぞれは、独立して、飽和または不飽和であり得、R1、R2、およびR3のそれぞれは、任意に置換される。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、上述の式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば薬学的に許容される塩のうちの1つ以上を含む脂質粒子を提供する。ある特定の実施形態において、脂質粒子は、中性脂質等、1つ以上の非カチオン性脂質をさらに含む。ある特定の他の実施形態において、脂質粒子は、粒子の凝集を低減または阻害することができる1つ以上の複合脂質をさらに含む。さらなる実施形態において、脂質粒子は、1つ以上の活性剤または治療剤をさらに含む。
【0021】
ある特定の実施形態において、脂質粒子の非カチオン性脂質構成成分は、リン脂質、コレステロール(もしくはコレステロール誘導体)、またはそれらの組み合わせを含み得る。1つの特定の実施形態において、リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、脂質粒子の複合脂質構成成分は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体を含む。ある特定の事例において、PEG-脂質複合体は、PEG-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)複合体、PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)複合体、またはそれらの組み合わせを含む。他の実施形態において、脂質複合体は、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質複合体、例えばPOZ-DAA複合体を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、活性剤または治療剤は、核酸を含む。ある特定の事例において、核酸は、例えば、siRNA、aiRNA、miRNA、Dicer基質dsRNA、shRNA、またはそれらの混合物といった、干渉RNA分子を含む。ある特定の他の事例において、核酸は、一本鎖もしくは二本鎖DNA、RNA、またはDNA/RNAハイブリッド、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、プラスミド、免疫賦活性オリゴヌクレオチド、またはそれらの組み合わせ等を含む。
【0023】
他の実施形態において、活性剤または治療剤は、脂質粒子内の活性剤または治療剤が水溶液中で例えばヌクレアーゼまたはプロテアーゼによる酵素分解に抵抗性となるように、脂質粒子の脂質部分内に完全にカプセル封入される。さらなる実施形態において、脂質粒子は、ヒト等の哺乳動物に対して実質的に非毒性である。
【0024】
ある特定の実施形態において、本発明は、(a)1つ以上の核酸、例えば干渉RNA分子、(b)1つ以上の式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)1つ以上の非カチオン性脂質、および(d)粒子の凝集を阻害する1つ以上の複合脂質を含む、脂質粒子(例えば、LNP)を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明は、(a)1つ以上の核酸、(b)粒子中に存在する総脂質の約50mol%~約85mol%を構成する、1つ以上の式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)粒子中に存在する総脂質の約13mol%~約49.5mol%を構成する、1つ以上の非カチオン性脂質、および(d)粒子中に存在する総脂質の約0.5mol%~約2mol%を構成する、粒子の凝集を阻害する1つ以上の複合脂質を含む、脂質粒子(例えば、LNP)を提供する。
【0026】
この実施形態の一態様において、脂質粒子(例えば、LNP)は、(a)核酸、(b)粒子中に存在する総脂質の約52mol%~約62mol%を構成する、式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)粒子中に存在する総脂質の約36mol%~約47mol%を構成する、リン脂質とコレステロールまたはその誘導体との混合物、および(d)粒子中に存在する総脂質の約1mol%~約2mol%を構成する、PEG-脂質複合体を含む。核酸-脂質粒子のこの実施形態は、概して、本明細書に「1:57」製剤と称される。1つの特定の実施形態において、1:57製剤は、約1.4mol%のPEG-脂質複合体(例えば、PEG2000-C-DMA)、約57.1mol%の式Iのカチオン性脂質またはその塩、約7.1mol%のDPPC(またはDSPC)、および約34.3mol%のコレステロール(またはその誘導体)を含む、4成分系である。
【0027】
この実施形態の別の態様において、脂質粒子(例えば、LNP)は、(a)核酸、(b)粒子中に存在する総脂質の約56.5mol%~約66.5mol%を構成する、式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)粒子中に存在する総脂質の約31.5mol%~約42.5mol%を構成する、コレステロールまたはその誘導体、および(d)粒子中に存在する総脂質の約1mol%~約2mol%を構成する、PEG-脂質複合体を含む。核酸-脂質粒子のこの実施形態は、概して、本明細書に「1:62」製剤と称される。1つの特定の実施形態において、1:62製剤は、リン脂質不含であり、約1.5mol%のPEG-脂質複合体(例えば、PEG2000-C-DMA)、約61.5mol%の式Iのカチオン性脂質またはその塩、および約36.9mol%のコレステロール(またはその誘導体)を含む、3成分系である。
【0028】
1:57および1:62製剤に関連するさらなる実施形態は、PCT公開第WO 09/127060号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
他の実施形態において、本発明は、(a)1つ以上の核酸、(b)粒子中に存在する総脂質の約2mol%~約50mol%を構成する、1つ以上の式IまたはIIのカチオン性脂質、またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約90mol%を構成する、1つ以上の非カチオン性脂質、および(d)粒子中に存在する総脂質の約0.5mol%~約20mol%を構成する、粒子の凝集を阻害する1つ以上の複合脂質を含む、脂質粒子(例えば、LNP)を提供する。
【0030】
この実施形態の一態様において、脂質粒子(例えば、LNP)は、(a)核酸、(b)粒子中に存在する総脂質の約30mol%~約50mol%を構成する、式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)粒子中に存在する総脂質の約47mol%~約69mol%を構成する、リン脂質とコレステロールまたはその誘導体との混合物、および(d)粒子中に存在する総脂質の約1mol%~約3mol%を構成する、PEG-脂質複合体を含む。脂質粒子の実施形態は、概して、本明細書に「2:40」製剤と称される。1つの特定の実施形態において、2:40製剤は、約2mol%のPEG-脂質複合体(例えば、PEG2000-C-DMA)、約40mol%の式Iのカチオン性脂質またはその塩、約10mol%のDPPC(またはDSPC)、および約48mol%のコレステロール(またはその誘導体)を含む、4成分系である。
【0031】
さらなる実施形態において、本発明は、(a)1つ以上の核酸、(b)粒子中に存在する総脂質の約50mol%~約65mol%を構成する、1つ以上の式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)粒子中に存在する総脂質の約25mol%~約45mol%を構成する、1つ以上の非カチオン性脂質、および(d)粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約10mol%を構成する、粒子の凝集を阻害する1つ以上の複合脂質を含む、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)を提供する。
【0032】
この実施形態の一態様において、核酸-脂質粒子は、(a)核酸、(b)粒子中に存在する総脂質の約50mol%~約60mol%を構成する、式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)粒子中に存在する総脂質の約35mol%~約45mol%を構成する、リン脂質とコレステロールまたはその誘導体との混合物、および(d)粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約10mol%を構成する、PEG-脂質複合体を含む。核酸-脂質粒子のこの実施形態は、概して、本明細書に「7:54」製剤と称される。ある特定の事例において、7:54製剤中の非カチオン性脂質混合物は、(i)粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約10mol%のリン脂質、および(ii)粒子中に存在する総脂質の約25mol%~約35mol%のコレステロールまたはその誘導体を含む。1つの特定の実施形態において、7:54製剤は、約7mol%のPEG-脂質複合体(例えば、PEG750-C-DMA)、約54mol%の式Iのカチオン性脂質またはその塩、約7mol%のDPPC(またはDSPC)、および約32mol%のコレステロール(またはその誘導体)を含む、4成分系である。
【0033】
この実施形態の別の態様において、核酸-脂質粒子は、(a)核酸、(b)粒子中に存在する総脂質の約55mol%~約65mol%を構成する、式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩、(c)粒子中に存在する総脂質の約30mol%~約40mol%を構成する、コレステロールまたはその誘導体、および(d)粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約10mol%を構成する、PEG-脂質複合体を含む。核酸-脂質粒子のこの実施形態は、概して、本明細書に「7:58」製剤と称される。1つの特定の実施形態において、7:58製剤は、リン脂質不含であり、約7mol%のPEG-脂質複合体(例えば、PEG750-C-DMA)、約58mol%の式Iのカチオン性脂質またはその塩、および約35mol%のコレステロール(またはその誘導体)を含む、3成分系である。
【0034】
7:54および7:58製剤に関連するさらなる実施形態は、2010年6月30日に出願された米国公開特許出願第US2011/0076335号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明はまた、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)等の脂質粒子と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を提供する。
【0036】
別の態様において、本発明は、核酸等の1つ以上の治療剤を細胞に導入するための方法を提供し、この方法は、細胞を本明細書に記載の脂質粒子(例えば、LNP)と接触させることを含む。一実施形態において、細胞は哺乳動物のものであり、哺乳動物はヒトである。
【0037】
さらに別の態様において、本発明は、核酸等の1つ以上の治療剤のインビボ送達のための方法を提供し、この方法は、哺乳動物に、本明細書に記載の脂質粒子(例えば、LNP)を投与することを含む。ある特定の実施形態において、脂質粒子(例えば、LNP)は、次の投与経路のうちの1つによって投与される:経口、鼻腔内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、病巣内、気管内、皮下、および皮内。特定の実施形態において、脂質粒子(例えば、LNP)は、例えば、腸内または非経口の投与経路を介して、全身的に投与される。好ましい実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、疾患または障害の治療を、それを必要とする哺乳動物において行うための方法を提供し、この方法は、哺乳動物に、核酸等の1つ以上の治療剤を含む脂質粒子(例えば、LNP)の治療有効量を投与することを含む。疾患または障害の非限定的な例には、ウイルス感染症、肝臓疾患または障害、および癌が挙げられる。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0039】
ある特定の実施形態において、本発明は、干渉RNA(例えば、siRNA)等の核酸を、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)中で、単独または脂質低下剤との組み合わせで投与することによって、肝臓疾患または障害を治療するための方法を提供する。脂質疾患および障害の例には、脂質異常症(例えば、上昇したトリグリセリドレベル(高トリグリセリド血症)および/または上昇したコレステロールレベル(高コレステロール血症)等の高脂血症)、アテローム性動脈硬化症、冠動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(CVD)、脂肪肝疾患(脂肪)、脂質代謝異常、コレステロール代謝異常、糖尿病(2型糖尿病を含む)、肥満、心血管疾患、および代謝異常に関連する他の障害が挙げられるが、これらに限定されない。脂質低下剤の非限定的な例には、スタチン、フィブラート、エゼチミブ、チアゾリジンジオン、ナイアシン、β遮断剤、ニトログリセリン、カルシウムアンタゴニスト、および魚油が挙げられる。
【0040】
1つの特定の実施形態において、本発明は、コレステロールレベルの低下または低減を、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)(例えば、上昇した血中コレステロールレベルを有する哺乳動物)において行うための方法を提供し、この方法は、哺乳動物に、代謝性疾患および障害と関連する1つ以上の遺伝子を標的とする1つ以上の干渉RNA(例えば、siRNA)を含む、本明細書に記載の核酸-脂質粒子(例えば、LNP製剤)の治療有効量を投与することを含む。別の特定の実施形態において、本発明は、トリグリセリドの低下または低減を、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)(例えば、上昇した血中トリグリセリドレベルを有する哺乳動物)において行うための方法を提供し、この方法は、哺乳動物に、代謝性疾患および障害と関連する1つ以上の遺伝子を標的とする1つ以上の干渉RNA(例えば、siRNA)を含む、本明細書に記載の核酸-脂質粒子(例えば、LNP製剤)の治療有効量を投与することを含む。これらの方法は、標準的な組織培養技術を使用してインビトロで、または当該技術分野で既知の任意の手段を用いて干渉RNA(例えば、siRNA)を投与することによってインビボで、実行することができる。好ましい実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)は、ヒト等の哺乳動物において、肝臓細胞(例えば、肝細胞)に送達される。
【0041】
脂質粒子を使用して肝臓疾患または障害を治療することに関するさらなる実施形態は、例えば、2010年1月26日に出願されたPCT出願第PCT/CA2010/000120号および米国特許出願公開第2006/0134189号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
他の実施形態において、本発明は、干渉RNA(例えば、siRNA)等の核酸を、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)において、単独または化学療法薬との組み合わせで投与することによって、癌等の細胞増殖性障害を治療するための方法を提供する。本方法は、標準的な組織培養技術を使用してインビトロで、または当該技術分野で既知の任意の手段を用いて干渉RNA(例えば、siRNA)を投与することによってインビボで、実行することができる。好ましい実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)は、単独または化学療法薬との組み合わせで、ヒト等の哺乳動物の癌細胞に送達される。核酸-脂質粒子および/または化学療法薬はまた、従来的なホルモン療法剤、免疫療法剤、および/または放射線療法剤と共投与することができる。
【0043】
脂質粒子を使用して細胞増殖性障害を治療することに関するさらなる実施形態は、例えば、PCT公開第WO 09/082817号、米国特許出願公開第2009/0149403号、およびPCT公開第WO 09/129319号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
さらなる実施形態において、本発明は、干渉RNA(例えば、siRNA)等の核酸を、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)中で、単独またはウイルス感染症もしくはそれと関連する症状のいずれかを治療または緩和するために使用される従来的な薬剤の投与との組み合わせで投与することによって、出血熱を引き起こすアレナウイルス(例えば、ラッサウイルス)もしくはフィロウイルス(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス等)感染症または急性もしくは慢性肝炎を引き起こす肝炎(例えば、C型肝炎ウイルス)感染症等のウイルス感染症を予防または治療するための方法を提供する。本方法は、標準的な組織培養技術を使用してインビトロで、または当該技術分野で既知の任意の手段を用いて干渉RNAを投与することによってインビボで、実行することができる。ある特定の実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)は、出血熱ウイルスに感染している、および/またはそれに感染しやすい、ヒト等の哺乳動物の細胞、組織、または器官、例えば、細網内皮系の細胞(例えば、単球、マクロファージ等)等に送達される。ある特定の他の実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)は、肝炎ウイルスに感染している、および/またはそれに感染しやすい、ヒト等の哺乳動物の細胞、組織、または器官、例えば、肝臓の細胞(例えば、肝細胞)等に送達される。
【0045】
脂質粒子を使用してウイルス感染症を予防または治療することに関連するさらなる実施形態は、例えば、米国特許出願公開第2007/0218122号、米国特許出願公開第2007/0135370号、および2010年3月19日に出願された「Compositions and Methods for Silencing Hepatitis C Virus Expression」と題されるPCT出願第PCT/CA2010/000444号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
1つ以上の式Iのカチオン性脂質またはその塩、例えば、薬学的に許容される塩を含む、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、それらが、循環中に安定しており、血管外部位へのアクセスをもたらす薬力学的挙動に必要な寸法であり、標的細胞集団に達することができるため、干渉RNA等の核酸を対象(例えば、ヒト等の哺乳動物)に投与する際の使用に、特に有利かつ好適である。
【0047】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および図面から、当業者には明らかであろう。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
構造式(I)を有する脂質
【化201】
またはその塩であって、式中、
Xは、アルキルアミノであり、
Aは、C1~C6の任意に置換されたアルキルであり、前記C1~C6の任意に置換されたアルキルは、飽和または不飽和であり得、Aは、存在してもしなくてもよく、
Yは、ケタール、エステル、任意に置換されたカルバメート、エーテル、および任意に置換されたアミドからなる群から選択され、
Zは、アルキル鎖のそれぞれがC8~C11の長さを有する3つのアルキル鎖からなる疎水性部分であり、前記3つのアルキル鎖のそれぞれは、独立して、飽和または不飽和であり得、前記3つのアルキル鎖のそれぞれは、任意に置換される、脂質またはその塩。
(項目2)
前記アルキル鎖のそれぞれが、C9~C10の長さを有する、項目1に記載の脂質。
(項目3)
前記アルキル鎖のうちの少なくとも1つは、二重結合を有する、項目1に記載の脂質。
(項目4)
前記アルキル鎖のうちの少なくとも1つは、シス二重結合を有する、項目1に記載の脂
質。
(項目5)
前記アルキル鎖のうちの少なくとも1つは、シクロアルキル部分を含む、項目1に記載の脂質。
(項目6)
Xは、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、およびエチルメチルアミノからなる群から選択される、項目1に記載の脂質。
(項目7)
Aが存在する、項目1に記載の脂質。
(項目8)
Yは、エステルまたはケタールである、項目1に記載の脂質。
(項目9)
Yは、任意に置換されたカルバメートである、項目1に記載の脂質。
(項目10)
Yは、エーテルである、項目1に記載の脂質。
(項目11)
Yは、任意に置換されたアミドである、項目1に記載の脂質。
(項目12)
Zは、式
【化202】
を有し、式中、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、C8~C11アルキルからなる群から選択され、R1、R2、およびR3のそれぞれは、独立して、飽和または不飽和であり得、R1、R2、およびR3のそれぞれは、任意に置換される、項目1に記載の脂質。
(項目13)
前記脂質は、以下からなる群から選択される、項目1に記載の脂質:
【化203-1】
【化203-2】
【化203-3】
【化203-4】
(項目14)
項目1~13のいずれかに記載の脂質を含む、脂質粒子。
(項目15)
前記粒子は、非カチオン性脂質をさらに含む、項目14に記載の脂質粒子。
(項目16)
前記非カチオン性脂質は、リン脂質、コレステロール、またはリン脂質とコレステロールとの混合物からなる群から選択される、項目15に記載の脂質粒子。
(項目17)
前記リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、またはそれらの混合物を含む、項目16に記載の脂質粒子。
(項目18)
前記コレステロールは、コレステロール誘導体である、項目16に記載の脂質粒子。
(項目19)
前記粒子は、粒子の凝集を阻害する、複合脂質をさらに含む、項目14~18のいずれかに記載の脂質粒子。
(項目20)
粒子の凝集を阻害する前記複合脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体を含む、項目19に記載の脂質粒子。
(項目21)
前記PEG-脂質複合体は、PEG-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)複合体、PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)複合体、またはそれらの混合物を含む、項目20に記載の脂質粒子。
(項目22)
前記粒子は、治療剤をさらに含む、項目14~21のいずれかに記載の脂質粒子。
(項目23)
前記治療剤は、核酸である、項目22に記載の脂質粒子。
(項目24)
前記核酸は、干渉RNAである、項目23に記載の脂質粒子。
(項目25)
前記干渉RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、Dicer基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、項目24に記載の脂質粒子。
(項目26)
前記干渉RNAは、siRNAである、項目25に記載の脂質粒子。
(項目27)
前記治療剤は、37℃で30分間血清中で粒子をインキュベートした後、実質的に分解されない、項目22に記載の脂質粒子。
(項目28)
前記治療剤は、前記粒子に完全にカプセル封入される、項目22に記載の脂質粒子。
(項目29)
前記粒子は、脂質:治療剤の質量比が約5:1~約15:1である、項目22に記載の脂質粒子。
(項目30)
前記粒子は、約30nm~約150nmの中位径を有する、項目14~29のいずれかに記載の脂質粒子。
(項目31)
項目14~30のいずれかに記載の脂質粒子と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
(項目32)
治療剤を細胞に導入するための方法であって、
前記細胞を、項目14に記載の脂質粒子と接触させることを含む、方法。
(項目33)
前記細胞は、哺乳動物におけるものである、項目32に記載の方法。
(項目34)
治療剤をインビボ送達するための方法であって、
哺乳動物に、項目14に記載の脂質粒子を投与することを含む、方法。
(項目35)
前記投与は、経口、鼻腔内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、病巣内、気管内、皮下、および皮内からなる群から選択される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記哺乳動物は、ヒトである、項目34に記載の方法。
(項目37)
疾患または障害の治療を、それを必要とする哺乳動物において行うための方法であって、
前記哺乳動物に、項目14に記載の脂質粒子の治療有効量を投与することを含む、方法。
(項目38)
前記疾患または障害は、ウイルス感染症、肝臓疾患または障害、および癌からなる群から選択される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記哺乳動物は、ヒトである、項目37に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0048】
I. 序文
本発明は、核酸等の活性剤または治療剤を哺乳動物の細胞にインビボ送達するために脂質粒子において使用する際に利点を提供する、新規なカチオン性(アミノ)脂質の発見に、部分的に基づく。具体的には、本発明は、向上した核酸(例えば、干渉RNA)の活性および改善されたインビボでの組成物の耐容性を提供する、本明細書に記載の新規なカチオン性脂質のうちの1つ以上を含む、核酸-脂質粒子組成物を提供し、結果として以前に記載された核酸-脂質粒子組成物と比較して、治療指標の著しい向上をもたらす。
【0049】
特定の実施形態において、本発明は、siRNA等の干渉RNAのインビトロおよびインビボ送達のための、改善された組成物の製剤化を可能にする、新規なカチオン性脂質を提供する。これらの改善された脂質粒子組成物は、標的遺伝子のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベルを下方制御(例えば、サイレンシング)するのに有効であることが、本明細書に示される。さらに、これらの改善された脂質粒子組成物の活性は、本発明の新規なカチオン性脂質の存在に依存することが、本明細書に示される。
【0050】
本発明の脂質粒子および組成物は、カプセル封入または会合(例えば、複合体形成)された核酸等の治療剤を、インビトロおよびインビボの両方で、細胞に送達することを含む、種々の目的で使用することができる。したがって、本発明はさらに、疾患または障害の治療を、それを必要とする対象に行うための方法であって、対象を、好適な治療剤をカプセル封入するかまたはそれと会合した脂質粒子と接触させることを含む、方法を提供し、ここで、この脂質粒子は、本明細書に記載の新規なカチオン性脂質のうちの1つ以上を含む。
【0051】
本明細書に記載されるように、本発明の脂質粒子は、例えば、siRNA等の干渉RNA分子を含む、核酸の送達に特に有用である。したがって、本発明の脂質粒子および組成物は、細胞を、本明細書に記載の1つ以上の新規なカチオン性脂質を含む脂質粒子と接触させることによって、インビトロおよびインビボの両方で標的遺伝子およびタンパク質の発現を減少させるために使用することができ、ここで、この脂質粒子は、標的遺伝子の発現を低減させる核酸(例えば、siRNA)をカプセル封入するか、またはそれと会合している。あるいは、本発明の脂質粒子および組成物は、細胞を、本明細書に記載の1つ以上の新規なカチオン性脂質を含む脂質粒子と接触させることによって、インビトロおよびインビボの両方で所望されるタンパク質の発現を増加させるために使用することができ、ここで、この脂質粒子は、所望されるタンパク質の発現を強化する核酸(例えば、所望のタンパク質をコードするプラスミド)をカプセル封入するか、またはそれと会合している。
【0052】
本発明のカチオン性脂質、脂質粒子、およびそれを含む組成物、ならびに遺伝子およびタンパク質の発現を調節する核酸等の活性剤または治療剤を送達するためのそれらの使用が、以下にさらに詳細に説明される。
【0053】
II. 定義
本明細書に使用される際、以下の用語は、別途示されない限り、それら定められた意味を有する。
【0054】
「約」という用語は、本発明の脂質粒子または製剤中の構成成分の量と関連して使用される際、示された構成成分の量のプラスまたはマイナス5%の値を包含する(例えば、約10%は、9.5%~10.5%の値を包含する)。「約」という用語は、したがって、記述された構成成分の量のプラスまたはマイナス1%、2%、3%、または4%の値もまた包含する。
【0055】
本明細書に使用される「干渉RNA」または「RNAi」または「干渉RNA配列」という用語は、干渉RNAが標的遺伝子または配列と同じ細胞内にある場合、標的遺伝子または配列の発現を(例えば、分解を媒介すること、もしくは干渉RNA配列に相補的なmRNAの翻訳を阻害することによって)低減または阻害することができる、一本鎖RNA(例えば、成熟miRNA、ssRNAiオリゴヌクレオチド、ssDNAiオリゴヌクレオチド)または二本鎖RNA(すなわち、siRNA、Dicer基質dsRNA、shRNA、aiRNA、もしくはpre-miRNAといった二重鎖RNA)を含む。干渉RNAは、したがって、標的mRNA配列に相補的な一本鎖RNA、または2本の相補鎖または1本の自己相補鎖によって形成される二本鎖RNAを指す。干渉RNAは、標的遺伝子もしくは配列に実質的もしくは完全な同一性を有し得るか、またはミスマッチの領域(すなわち、ミスマッチモチーフ)を含み得る。干渉RNAの配列は、全長標的遺伝子またはその部分配列に対応し得る。好ましくは、干渉RNA分子は、化学合成される。
【0056】
干渉RNAには、「低分子干渉RNA」または「siRNA」、例えば、約15~60、15~50、または15~40(二重鎖)ヌクレオチドの長さ、より典型的には約15~30、15~25、または19~25(二重鎖)ヌクレオチドの長さの干渉RNAを含み、好ましくは、約20~24、21~22、または21~23(二重鎖)ヌクレオチドの長さである(例えば、二本鎖siRNAの各相補配列は、15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、または19~25ヌクレオチドの長さ、好ましくは約20~24、21~22、または21~23ヌクレオチドの長さであり、二本鎖siRNAは、約15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、または19~25塩基対の長さ、好ましくは約18~22、19~20、または19~21塩基対の長さである)。siRNA二重鎖は、約1~4ヌクレオチドまたは約2~3ヌクレオチドの3’オーバーハング、および5’リン酸末端を含み得る。siRNAの例には、限定することなく、一方の鎖がセンス鎖であり、他方が相補的なアンチセンス鎖である、2つの別個の鎖の分子が集合した二本鎖ポリヌクレオチド分子;センス領域とアンチセンス領域とが核酸系または非核酸系リンカーによって結合された一本鎖分子が集合した二本鎖ポリヌクレオチド分子;自己相補的なセンスおよびアンチセンス領域を有するヘアピン二次構造を有する二本鎖ポリヌクレオチド分子;ならびに、2つ以上のループ構造と環状ポリヌクレオチドがインビボまたはインビトロでプロセシングされて活性な二本鎖siRNA分子を生成する、自己相補的なセンスおよびアンチセンス領域を有する基部と有する環状一本鎖ポリヌクレオチド分子が含まれる。
【0057】
好ましくは、siRNAは、化学合成される。siRNAはまた、より長いdsRNA(例えば、約25ヌクレオチドの長さを上回るdsRNA)を大腸菌RNase IIIまたはDicerで切断することによって生成することができる。これらの酵素は、dsRNAを、生物学的に活性なsiRNAにプロセシングする(例えば、Yang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:9942-9947(2002)、Calegari et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,99:14236(2002)、Byrom et al.,Ambion TechNotes,10(1):4-6(2003)、Kawasaki et al.,Nucleic Acids Res.,31:981-987(2003)、Knight et al.,Science,293:2269-2271(2001)、およびRobertson et al.,J.Biol.Chem.,243:82(1968)を参照されたい)。好ましくは、dsRNAは、少なくとも50ヌクレオチド~約100、200、300、400、または500ヌクレオチドの長さである。dsRNAは、1000、1500、2000、5000ヌクレオチド程の長さ、またはそれ以上であり得る。dsRNAは、全遺伝子転写産物または部分的遺伝子転写産物をコードし得る。ある特定の事例において、siRNAは、プラスミドによってコードされ得る(例えば、自動的にヘアピンループを有する二重鎖に折りたたまれる配列として転写される)。
【0058】
本明細書に使用される際、「ミスマッチモチーフ」または「ミスマッチ領域」という用語は、その標的配列に対する100%の相補性を有さない、干渉RNA(例えば、siRNA)配列の一部分を指す。干渉RNAは、少なくとも1、2、3、4、5、6個、またはそれ以上のミスマッチ領域を有し得る。ミスマッチ領域は、連続的であってもよく、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヌクレオチド、もしくはそれ以上離れていてもよい。ミスマッチモチーフまたは領域は、単一のヌクレオチドを含み得るか、または2、3、4、5個、もしくはそれ以上のヌクレオチドを含んでもよい。
【0059】
「標的遺伝子の発現を阻害する」という表現は、標的遺伝子の発現をサイレンシング、低減、または阻害する、干渉RNA(例えばsiRNA)または別の治療剤の能力を指す。遺伝子のサイレンシングの程度を試験するために、試験試料(例えば、標的遺伝子を発現する培養物中の細胞の試料)または試験哺乳動物(例えば、ヒト等の哺乳動物、もしくは齧歯類(例えばマウス)等の動物モデル、もしくは非ヒト霊長類(例えばサル)モデル)を、標的遺伝子の発現をサイレンシング、低減、または阻害する干渉RNA(例えば、siRNA)と接触させる。試験試料または試験動物における標的遺伝子の発現を、干渉RNA(例えば、siRNA)と接触していないか、またはそれを投与されていない、対照試料(例えば、標的遺伝子を発現する培養細胞の試料)または対照哺乳動物(例えば、ヒト等の哺乳動物、または齧歯類(例えば、マウス)等の動物モデル、もしくは非ヒト霊長類(例えば、サル)モデル)における標的遺伝子の発現と比較する。対照試料または対照哺乳動物における標的遺伝子の発現に、100%という値を割り当ててもよい。特定の実施形態において、標的遺伝子の発現のサイレンシング、阻害、または低減は、対照試料または対照哺乳動物における標的遺伝子の発現のレベルと比較して、試験試料または試験哺乳動物における標的遺伝子の発現のレベルが、約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または0%であるときに達成される。換言すると、干渉RNA(例えば、siRNA)は、干渉RNA(例えば、siRNA)と接触していないか、またはそれを投与されていない対照試料または対照哺乳動物における標的遺伝子の発現のレベルと比較して、試験試料または試験哺乳動物における標的遺伝子の発現を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%サイレンシング、低減、または阻害する。標的遺伝子の発現レベルを判定するのに好適なアッセイには、限定することなく、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、インサイツハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、ならびに当業者に既知の表現型アッセイといった、当業者に既知の技術を使用した、タンパク質またはmRNAレベルの試験が含まれる。
【0060】
干渉RNA等の活性剤または治療剤の「有効量」または「治療有効量」は、所望される効果、例えば、干渉RNAの不在下で検出される通常の発現レベルと比較して標的配列の発現の阻害をもたらすのに十分な量である。標的遺伝子または標的配列の発現の阻害は、干渉RNAを用いて得られた値が、対照と比較して、約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、または0%であるときに達成される。標的遺伝子または標的配列の発現を測定するのに好適なアッセイには、例えば、ドットブロット、ノーザンブロット、インサイツハイブリダイゼーション、ELISA、免疫沈降、酵素機能、ならびに当業者に既知の表現型アッセイといった、当業者に既知の技術を使用した、タンパク質またはRNAレベルの試験が含まれる。
【0061】
干渉RNAによる免疫応答の「減少」、「減少させること」、「低減」、「低減すること」とは、所与の干渉RNA(例えば、修飾された干渉RNA)または他の治療剤に対する免疫応答の検出可能な減少を意味することが意図される。修飾された干渉RNAによる免疫応答の減少量は、修飾されていない干渉RNAの存在下における免疫応答のレベルと比較して判定され得る。検出可能な減少は、修飾されていない干渉RNAの存在下で検出される免疫応答よりも、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、またはそれ以上低くあり得る。干渉RNAに対する免疫応答の減少は、典型的に、インビトロで応答細胞によるサイトカイン産生(例えば、IFNγ、IFNα、TNFα、IL-6、またはIL-12)の減少、または哺乳動物対象の血清における干渉RNAの投与後のサイトカイン産生の減少によって測定される。
【0062】
本明細書に使用される際、「応答細胞」という用語は、修飾されていないsiRNA等の免疫賦活性干渉RNAと接触したときに、検出可能な免疫応答を生成する、細胞、好ましくは哺乳動物細胞を指す。例となる応答細胞には、例えば、樹状細胞、マクロファージ、末梢血単核細胞(PBMC)、脾細胞等が挙げられる。検出可能な免疫応答には、例えば、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、IL-13、TGF、およびこれらの組み合わせといった、サイトカインまたは成長因子の生成が含まれる。検出可能な免疫応答にはまた、例えば、テトラトリコペプチド反復配列1(IFIT1)mRNAによるインターフェロン誘発タンパク質の誘発が含まれる。
【0063】
「実質的な同一性」とは、ストリンジェントな条件下で参照配列とハイブリダイズする配列、または参照配列の指定の領域にわたって指定の割合の同一性を有する配列を指す。
【0064】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という表現は、核酸が、典型的には核酸の複合混合物中において、その標的配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況においては、異なるであろう。より長い配列は、特に、より高い温度でハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの詳細な手引きは、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。通常、ストリンジェントな条件は、定義されるイオン強度pHで、特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5~10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(定義されるイオン強度、pH、および核濃度下で)である(標的配列が過剰に存在するため、Tmにおいて、プローブの50%が平衡状態にある)。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミド等の不安定化剤の添加により達成することもできる。選択的または特異的ハイブリダイゼーションについては、正のシグナルは、バックグラウンドハイブリダイゼーションの少なくとも2倍、好ましくは10倍である。
【0065】
例となるストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、次の通りであり得る:50%ホルムアミド、5×SSC、および1%SDS、42℃でのインキュベーション、または5×SSC、1%SDS、65℃でのインキュベーション、65℃で0.2×SSCおよび0.1%SDS中での洗浄。PCRについては、約36℃の温度は、典型的には、低ストリンジェンシーの増幅のものであるが、アニーリング温度は、プライマーの長さに応じて、32℃~48℃で変動し得る。高ストリンジェンシーのPCR増幅のためには、約62℃の温度が典型的であるが、高ストリンジェンシーのアニーリング温度は、プライマーの長さおよび特異性に応じて、約50℃~約65℃の範囲に及び得る。高および低のいずれのストリンジェンシーの増幅のための典型的な周期条件も、30秒間~2分間の90℃~95℃の変性期、30秒間~2分間続くアニーリング期、および1~2分間の約72℃の伸長期を含む。低および高ストリンジェンシーの増幅反応のためのプロトコルおよびガイドラインは、例えば、Innis et al.,PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.N.Y.(1990)に提供される。
【0066】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、依然として実質的に同一である。これは、例えば、核酸のコピーが、遺伝子コードによって許容される最大のコドン縮退を用いて作製される場合に生じる。このような場合では、核酸は、典型的に、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例となる「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、40%ホルムアミド、1M NaCl、37℃で1%SDSの緩衝液中でのハイブリダイゼーション、および45℃で1×SSC中での洗浄、が含まれる。正のハイブリダイゼーションは、少なくともバックグラウンドの2倍である。当業者であれば、代替的なハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を用いて類似のストリンジェンシーの条件を提供することができることを容易に理解するであろう。ハイブリダイゼーションのパラメータを決定するためのさらなるガイドラインは、多数の参考文献、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,edsに提供される。
【0067】
2つ以上の核酸に関して、「実質的に同一な」または「実質的な同一性」という用語は、比較ウインドウ、または以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、もしくは手動アライメントおよび目視検査によって測定される指定領域にわたって最大対応について比較およびアライメントしたときに、同じであるか、指定の割合のヌクレオチドが同じである(すなわち、指定領域にわたる少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性)、2つ以上の配列または部分配列を指す。この定義は、文脈が示す場合、配列の相補性も同様に指す。好ましくは、実質的な同一性は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60ヌクレオチドの長さの領域にわたって存在する。
【0068】
配列比較のために、典型的に、1つの配列が参照配列として機能し、それに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要であれば部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用してもよく、または代替的なパラメータを指定してもよい。配列比較アルゴリズムは、次いで、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0069】
本明細書に使用される際、「比較ウインドウ」は、ある配列を、2つの配列が最適にアライメントされた後に、同じ連続位置数の参照配列と比較することができる、約5~約60、通例的には約10~約45、より通例的には約15~約30からなる群から選択される、いくつかの連続位置のうちのいずれか1つのセグメントへの参照を含む。比較のための配列アライメントの方法は、当該技術分野で周知である。比較のための最適な配列アライメントは、例えば、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.,2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.,48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444(1988)の類似方法の探求によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または手動アライメントおよび目視検査によって行うことができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.(1995 supplement)を参照されたい)。
【0070】
配列同一性および配列類似性パーセントを判定するのに好適なアルゴリズムの非限定的な例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.,25:3389-3402(1977)およびAltschul et al.,J.Mol.Biol.,215:403-410(1990)に記載されている。BLASTおよびBLAST 2.0を、本明細書に記載のパラメータで使用して、本発明の核酸の配列同一性パーセントを決定する。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に利用可能である。別の例は、タンパク質またはヌクレオチド(例えば、RNA)配列のアライメントのためのNeedleman-Wunschアルゴリズム等、配列同一性パーセントを判定するためのグローバルアライメントアルゴリズムである。
【0071】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計学的分析を行う(例えば、Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873-5787(1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小和確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列間の一致が偶然に起こるであろう確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸とを比較した際の最小和確率が、約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合、参照配列に類似するとみなされる。
【0072】
本明細書に使用される「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖いずれかの形態の少なくとも2つのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含有するポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。DNAは、例えば、アンチセンス分子、プラスミドDNA、事前濃縮DNA、PCR産物、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらの集団の誘導体および組み合わせの形態であり得る。RNAは、低分子干渉RNA(siRNA)、Dicer-基質dsRNA、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、非対称干渉RNA(aiRNA)、マイクロRNA(miRNA)、mRNA、tRNA、rRNA、tRNA、ウイルスRNA(vRNA)、多価RNA(MV RNA)、およびこれらの組み合わせの形態であり得る。核酸には、合成、天然、および非天然であり、参照核酸と類似の結合特性を有する、既知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基もしくは結合を含有する核酸が含まれる。このような類似体の例には、限定することなく、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2’-O-メチルリボヌクレオチド、およびペプチド-核酸(PNA)が挙げられる。具体的に限定されない限り、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有する天然のヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。別途指定されない限り、特定の核酸配列はまた、明示的に示される配列と同様に、それらの保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)、アレル、オルソログ、SNP、および相補配列を暗示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの第3位が、混合基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成することができる(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.,19:5081(1991)、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.,260:2605-2608(1985)、Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes,8:91-98(1994))。「ヌクレオチド」は、糖デオキシリボース(DNA)またはリボース(RNA)、塩基、およびリン酸基を含有する。ヌクレオチドは、リン酸基を通じて一緒に結合される。「塩基」には、プリンおよびピリミジンが含まれ、これらには、さらに、天然の化合物であるアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、ならびにプリンおよびピリミジンの天然の類似体および合成の誘導体が含まれ、それらには、アミン、アルコール、チオール、カルボン酸塩、およびハロゲン化アルキル等であるがこれらに限定されない新たな反応基を置く修飾が含まれるが、これに限定されない。
【0073】
「遺伝子」という用語は、ポリペプチドまたは前駆体ポリペプチドの生成に必要な部分長または全長コード配列を含む、核酸(例えば、DNAまたはRNA)配列を指す。
【0074】
「遺伝子産物」は、本明細書に使用される際、RNA転写産物またはポリペプチドといった遺伝子の生成物を指す。
【0075】
「脂質」という用語は、脂肪酸のエステルを含むがこれに限定されない有機化合物の群を指し、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒には可溶性であることを特徴とする。これらは、少なくとも3つのクラスに分類される:(1)脂肪および油ならびにろうを含む「単純脂質」、(2)リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」、ならびに(3)ステロイド等の「誘導脂質」。
【0076】
「脂質粒子」という用語は、核酸(例えば、干渉RNA)等の活性剤または治療剤を、目的の標的部位(例えば、細胞、組織、器官等)に送達するために使用可能な脂質製剤を含む。好ましい実施形態において、本発明の脂質粒子は、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および場合によっては粒子の凝集を阻止する複合脂質から典型的に形成される、脂質ナノ粒子である。他の好ましい実施形態において、これは、「核酸-脂質粒子」と称され得、核酸等の活性剤または治療剤は、粒子の脂質部分にカプセル封入され、それによって酵素分解から保護され得る。
【0077】
本明細書に使用される際、「LNP」という用語は、脂質ナノ粒子を指す。LNPは、脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および場合によっては粒子の凝集を阻止する複合脂質)でできた粒子核酸を指し、ここで、核酸(例えば、干渉RNA)は、脂質内に完全にカプセル封入される。ある特定の事例において、LNPは全身適用に極めて有用であり、これは、LNPが、静脈内(i.v.)注射後の長い循環寿命を呈し得、遠位部位(例えば、投与部位から物理的に離れた部位)に集積し得、そしてこれらの遠位部位で標的遺伝子発現のサイレンシングを媒介し得るためである。核酸は、その開示があらゆる目的のために参照によりその全体として本明細書に組み込まれるPCT公開第WO 00/03683号に記載のように、縮合剤と複合体を形成し、LNP内にカプセル封入することができる。
【0078】
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、典型的に、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、もしくは150nmの平均粒径を有し、実質的に非毒性である。さらに、核酸は、本発明の脂質粒子中に存在するとき、水溶液中でのヌクレアーゼによる分解に耐性である。脂質ナノ粒子およびそれらの調製方法は、例えば、米国特許出願公開第2004/0142025号および同第2007/0042031号に開示されており、それらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
本明細書に使用される際、「脂質にカプセル封入された」とは、完全なカプセル封入、部分的カプセル封入、またはその両方で、核酸(例えば、干渉RNA)等の活性剤または治療剤を提供する脂質粒子を指す。好ましい実施形態において、核酸は、脂質粒子に完全にカプセル封入される(例えば、LNPを形成する)。
【0080】
「脂質複合体」という用語は、脂質粒子の凝集を阻害する、複合脂質を指す。このような脂質複合体には、例えば、ジアルキルオキシプロピルに結合されたPEG(例えば、PEG-DAA複合体)、ジアシルグリセロールに結合されたPEG(例えば、PEG-DAG複合体)、コレステロールに結合されたPEG、ホスファチジルエタノールアミンに結合されたPEG、およびセラミドに複合体化されたPEG(例えば、米国特許第5,885,613号を参照されたい)等のPEG-脂質複合体、カチオン性PEG脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質複合体、ポリアミドオリゴマー(例えば、ATTA-脂質複合体)、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。POZ-脂質複合体のさらなる例は、PCT公開第WO 2010/006282号に記載されている。PEGまたはPOZは、脂質に直接複合体化されてもよく、またはリンカー部分を介して脂質に結合されてもよい。例えば、エステル不含リンカー部分およびエステル含有リンカー部分を含む、PEGまたはPOZと脂質との結合に好適な任意のリンカー部分を使用することができる。ある特定の好ましい実施形態において、アミドまたはカルバメート等、非エステル含有リンカー部分が使用される。上述の特許文書のそれぞれの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0081】
「両親媒性脂質」という用語は、部分的に、脂質物質の疎水性部分が疎水性相と馴染み、同時に親水性部分が水相と馴染む、任意の好適な物質を指す。親水特性は、炭水化物、リン酸、カルボン酸、硫酸(sulfato)、アミノ、スルフヒドリル、ニトロ、ヒドロキシル等の基といった、極性または荷電基の存在に由来する。疎水性は、長鎖飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、ならびに1つ以上の芳香族、脂環式、または複素環式基(複数可)によって置換されるような基を含むがこれらに限定されない、無極性基の包含によって与えられ得る。両親媒性化合物の例には、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
リン脂質の代表的な例には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイル ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、およびジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられるが、これらに限定されない。スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ-アシルオキシ酸(acyloxyacid)等、リンを欠く他の化合物もまた、両親媒性脂質として示される群の範囲内である。さらに、上述の両親媒性脂質は、トリグリセリドおよびステロールを含む他の脂質と混合することができる。
【0083】
「中性脂質」という用語は、選択されたpHにおいて、非荷電または中性のいずれかの双性イオン性形態で存在する多数の脂質種のうちのいずれかを指す。生理的pHにおいて、このような脂質には、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ケファリン、コレステロール、セレブロシド、およびジアシルグリセロールが含まれる。
【0084】
「非カチオン性脂質」とは、任意の両親媒性脂質、ならびに任意の他の中性脂質またはアニオン性脂質を指す。
【0085】
「アニオン性脂質」という用語は、生理的pHで負の電荷を有する任意の脂質を指す。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオル(palmitoyloleyol)ホスファチジルグリセロール(POPG)、および中性脂質に結合された他のアニオン性修飾基が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
「疎水性脂質」という用語は、長鎖飽和および不飽和の脂肪族炭化水素基、ならびに1つ以上の芳香族、脂環式、または複素環式基(複数可)によって任意に置換されるような基を含むがこれらに限定されない、無極性基を有する化合物を指す。好適な例には、ジアシルグリセロール、ジアルキルグリセロール、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパン、および1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
「融合性」という用語は、LNP等の脂質粒子が、細胞の膜と融合する能力を指す。この膜は、原形質膜、または細胞小器官、例えば、エンドソーム、核等を包囲する膜のいずれかであり得る。
【0088】
本明細書に使用される際、「水溶液」という用語は、全体として、または部分的に、水を含む組成物を指す。
【0089】
本明細書に使用される際、「有機脂質溶液」という用語は、全体として、または部分的に、脂質を有する有機溶媒を含む組成物を指す。
【0090】
「遠位部位」とは、本明細書に使用される際、物理的に離れた部位を指し、これは、隣接する毛細血管床に限定されず、生体全体に広く分布する部位も含む。
【0091】
LNP等の核酸-脂質粒子に関する「血清中で安定な」とは、粒子が、血清への暴露または遊離DNAもしくはRNAを著しく分解するヌクレアーゼアッセイの後に、実質的に分解されないことを意味する。好適なアッセイには、例えば、標準血清アッセイ、DNAseアッセイ、またはRNAseアッセイが挙げられる。
【0092】
「全身送達」とは、本明細書に使用される際、生物内での干渉RNA(例えば、siRNA)等の活性剤の広い生体内分布をもたらす、脂質粒子の送達を指す。いくつかの投与技術は、ある特定の薬剤の全身送達をもたらし得るが、他の薬剤の全身送達はもたらさない。全身送達とは、有用な、好ましくは治療的な量の薬剤が、身体の大部分に暴露されることを意味する。広範な生体内分布を得るには、通常、薬剤が、投与部位に対して遠位である疾患部位に達する前に、(初回通過器官(肝臓、肺等)または急速な非特異的細胞結合等によって)急速に分解または除去されないような、血中寿命を要する。脂質粒子の全身送達は、例えば、静脈内、皮下、および腹腔内を含む、当該技術分野で既知の任意の手段によるものであり得る。好ましい実施形態において、脂質粒子の全身送達は、静脈内送達による。
【0093】
「局所送達」とは、本明細書に使用される際、干渉RNA(例えば、siRNA)等の活性剤を生物内の標的部位に直接送達することを指す。例えば、薬剤は、腫瘍等の疾患部位、または炎症部位等の他の標的部位、または肝臓、心臓、膵臓、腎臓等の標的組織への直接注射によって局所的に送達され得る。
【0094】
「哺乳動物」という用語は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、ウサギ、家畜等といった、任意の哺乳動物種を指す。
【0095】
「癌」という用語は、異常な細胞の制御されない成長を特徴とする疾患のクラスの任意のメンバーを指す。この用語には、悪性、良性、軟組織、または固体として特徴づけられるかにかかわらず、全ての既知の癌および新生物状態、ならびに転移前および後の癌を含む全ての病期および悪性度の癌が含まれる。異なる種類の癌の例には、肝臓癌、肺癌、結腸癌、直腸癌、肛門癌、胆管癌、小腸癌、胃癌(stomach)(胃癌(gastric))、食道癌;胆嚢癌、膵臓癌、虫垂癌、乳癌、卵巣癌;子宮頸癌、前立腺癌、腎臓癌(例えば、腎細胞癌)、中枢神経系の癌、膠芽腫、皮膚癌、リンパ腫、絨毛種、頭頸部癌、骨肉腫、および血液癌が挙げられるがこれらに限定されない。特定の種類の肝臓癌の非限定的な例には、肝細胞癌(HCC)、続発性肝臓癌(例えば、何らかの他の非肝臓癌細胞型の転移によって引き起こされる)、および肝芽腫が挙げられる。本明細書に使用される際、「腫瘍」は、1つ以上の癌性細胞を含む。
【0096】
「MV RNA」と略される「多価RNA」という用語は、少なくとも3つのポリヌクレオチドから構成されるポリヌクレオチド複合体を指し、ここで、各ポリヌクレオチドは、その長さの全体または一部に沿って、複合体中の他のポリヌクレオチドの少なくとも2つとハイブリダイズし、これらのポリヌクレオチドのうちの1つ以上が、標的核酸配列と
ハイブリダイズすることができる標的化領域を任意に含む。各ポリヌクレオチドは、例えば、10~60ヌクレオチドの長さであり得る。ポリヌクレオチド内の標的領域(複数)は、複合体中の他のポリヌクレオチドの標的領域(複数可)がハイブリダイズする標的核酸配列(複数可)と同じかまたは異なる標的核酸配列とハイブリダイズすることができ得る。多価RNAは、インビトロで(例えば、化学合成によって)合成することができるか、または、例えば、生細胞内で前駆体からプロセシングされ得る。例えば、前駆体は、多価RNAのポリヌクレオチドのそれぞれを含む直鎖ポリヌクレオチドであり得、これは、生細胞内に導入され、そこで切断されて多価RNAを形成する。「多価RNA」という用語には、生細胞内で切断されることが意図されるこのような前駆体が含まれる。「多価RNA」という用語はまた、例として、具体的または一般的に、国際出願第PCT/US2010/036962号である公開済みの国際特許出願に記載される三部構成のポリヌクレオチド複合体も包含する。
【0097】
III. 新規なカチオン性脂質
本発明は、とりわけ、核酸等の治療剤をインビトロおよび/またはインビボで細胞に送達するために、本明細書に記載の脂質粒子中で有利に使用することができる、新規なカチオン性(アミノ)脂質を提供する。本発明の新規なカチオン性脂質は、本明細書の式Iに記載される構造を有し、それらの(R)および/または(S)エナンチオマーを含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の脂質は、ラセミ混合物を含む。他の実施形態において、本発明の脂質は、1つ以上のジアステレオマーの混合物を含む。ある特定の実施形態において、本発明の脂質は、1つのエナンチオマーが富化されており、結果として、脂質は、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%のエナンチオマー過剰率を有する。ある特定の他の実施形態において、本発明の脂質は、1つのジアステレオマーが豊富であり、結果として、脂質は、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%のジアステレオマー過剰率を有する。ある特定のさらなる実施形態において、本発明の脂質は、キラル的に純粋である(例えば、単一の光学異性体を含む)。さらなる実施形態において、本発明の脂質は、1つの光学異性体(例えば、光学的に活性な異性体)が富化されており、結果として、脂質は、少なくとも約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の異性体過剰率を有する。本発明は、ラセミ混合物として、または光学的に純粋な形態での式Iのカチオン性脂質の合成を提供する。
【0099】
「カチオン性脂質」および「アミノ脂質」という用語は、1、2、3個、またはそれ以上の脂肪酸または脂肪アルキル鎖と、pH滴定可能なアミノ頭部基(例えば、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ頭部基)とを有する、脂質およびその塩、例えば、薬学的に許容される塩を含んで本明細書に互換的に使用される。カチオン性脂質は、典型的に、カチオン性脂質のpKaよりも低いpHではプロトン化され(すなわち、正の電荷を有する)、pKaよりも高いpHでは実質的に中性である。本発明のカチオン性脂質はまた、滴定可能なカチオン性脂質とも称され得る。
【0100】
「塩」という用語には、本明細書に開示されるカチオン性脂質と1つ以上のアニオンとの間で形成される複合体等、任意のアニオン性およびカチオン性の複合体が含まれる。アニオンの非限定的な例には、無機および有機アニオン、例えば、水素化物、フッ化物、塩化物、ヨウ化物、シュウ酸塩(例えば、ヘミシュウ酸塩)、リン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸水素、リン酸二水素、酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、窒化物、亜硫酸水素塩、硫化物、亜硫酸塩、重硫酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、硫酸水素、ホウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、アクリル酸塩、ポリアクリル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、イタコン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、チグリン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、ポリメタクリレート、過塩素酸塩、塩素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、臭素酸塩、次亜臭素酸塩、ヨウ素酸塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、ヒ酸塩、亜ヒ酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩、水酸化物、過酸化物、過マンガン酸塩、およびこれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態において、本明細書に開示されるカチオン性脂質の塩は、結晶塩である。特定の実施形態において、「塩」は、「薬学的に許容される塩」である。
【0101】
「薬学的に許容される塩」という用語は、その塩が、当該技術分野で周知の種々の有機および無機対イオンに由来する、化合物の薬学的に許容される塩を指す。薬学的に許容される塩には、金属(無機)塩および有機塩の両方が含まれ、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Edition,pg.1418(1985)に列挙されるものを含むがこれらに限定されない。薬学的に許容される塩には、単なる例として、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、および硝酸塩等の無機酸の塩、またはリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩もしくはパモ酸塩(palmoate)、サリチル酸塩、およびステアリン酸塩等の有機酸の塩が挙げられる。同様に薬学的に許容されるカチオンには、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム、およびアンモニウム(特に第二級アミンを有するアンモニウム塩)が含まれるが、これらに限定されない。上記の理由により、本発明の特定の塩には、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびアンモニウム塩が含まれる。
【0102】
「アルキル」という用語には、1~24個の炭素原子を含有する、直鎖または分岐鎖の非環式または環式の飽和脂肪族炭化水素が含まれる。代表的な飽和直鎖アルキルには、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等が含まれるがこれらに限定されず、一方で飽和分岐鎖アルキルには、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル等が含まれるがこれらに限定されない。代表的な飽和環式アルキルには、本明細書に記載のC3-8シクロアルキルが含まれるがこれに限定されず、一方で不飽和環式アルキルには、本明細書に記載のC3-8シクロアルケニルが含まれるがこれに限定されない。
【0103】
「ヘテロアルキル」という用語には、約1~約5個のヘテロ原子(すなわち、1、2、3、4、または5個のヘテロ原子)、例えば、O、N、Si、および/またはS等を有し、窒素および硫黄原子が任意に酸化され得、窒素ヘテロ原子が任意に四級化され得る、上に定義される直鎖または分岐鎖の非環式または環式の飽和脂肪族炭化水素が含まれる。ヘテロアルキル基は、炭素原子またはヘテロ原子を通じて、分子の残りに結合され得る。
【0104】
「環式アルキル」という用語には、以下に記載される、置換または非置換のシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニル基の全てが含まれる。
【0105】
「シクロアルキル」という用語には、環頂点として約3~約8個の炭素原子(すなわち、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子)を有する置換または非置換の環式アルキル基が含まれる。好ましいシクロアルキル基には、環頂点として約3~約6個の炭素原子を有するものが含まれる。C3-8シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、メチル-シクロプロピル、ジメチル-シクロプロピル、シクロブチル、メチル-シクロブチル、シクロペンチル、メチル-シクロペンチル、シクロヘキシル、メチル-シクロヘキシル、ジメチル-シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチル、ならびに他の置換C3-8シクロアルキル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
「ヘテロシクロアルキル」という用語には、O、N、Si、およびSからなる群から選択され、窒素および硫黄原子が任意に酸化され得、窒素ヘテロ原子が任意に四級化され得る、約1~約3個のヘテロ原子を環員として有する、上に定義される置換または非置換環式アルキル基が含まれる。ヘテロシクロアルキル基は、炭素原子またはヘテロ原子を通じて、分子の残りに結合され得る。
【0107】
「シクロアルケニル」という用語には、環頂点として約3~約8個の炭素原子(すなわち、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子)を有する置換または非置換の環式アルケニル基が含まれる。好ましいシクロアルケニル基は、環頂点として約3~約6個の炭素原子を有するものである。C3-8シクロアルケニル基の例には、シクロプロペニル、メチル-シクロプロペニル、ジメチル-シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロへプテニル、およびシクロオクテニル、ならびに他の置換C3-8シクロアルケニル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
「ヘテロシクロアルケニル」という用語には、O、N、Si、およびSからなる群から選択され、窒素および硫黄原子が任意に酸化され得、窒素ヘテロ原子が任意に四級化され得る、約1~約3個のヘテロ原子を環員として有する、上に定義される置換または非置換環式アルケニル基が含まれる。ヘテロシクロアルケニル基は、炭素原子またはヘテロ原子を通じて、分子の残りに結合され得る。
【0109】
「アルコキシ」という用語には、式アルキル-O-の基が含まれ、ここで、「アルキル」は、前に与えられた定義を有する。アルコキシ基の非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、およびtert-ブトキシが挙げられる。
【0110】
「アルケニル」という用語には、隣接する炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を含有する、上に定義されたアルキルが含まれる。アルケニルは、シスおよびトランス異性体の両方を含む。代表的な直鎖および分岐鎖アルケニルには、エチレニル、プロピレニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブチレニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル等が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な環式アルケニルは、上に記載されている。
【0111】
「アルキニル」という用語には、隣接する炭素間に少なくとも1つの三重結合をさらに含有する、上に定義されたアルキルまたはアルケニルが含まれる。代表的な直鎖および分岐鎖アルキニルには、限定することなく、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1ブチニル等が挙げられる。
【0112】
「アリール」という用語には、一緒に融合されるかまたは共有結合される、単環または多環(最大3つの環)であり得、任意に1つ以上の置換基、例えば、ハロゲン、トリフルオロメチル、アミノ、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、シアノ、カルバモイル、アルコキシカルバモイル、メチレンジオキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、ヒドロキシ、ニトロ等を有する、ポリ不飽和で典型的には芳香族の炭化水素基が含まれる。非置換アリール基の非限定的な例には、フェニル、ナフチル、およびビフェニルが挙げられる。置換アリール基の例には、フェニル、クロロフェニル、トリフルオロメチルフェニル、クロロフルオロフェニル、およびアミノフェニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0113】
「アルキルチオ」、「アルキルスルホニル」、「アルキルスルフィニル」、および「アリールスルホニル」という用語には、それぞれ、式-S-Ri、-S(O)2-Ri、-S(O)-Ri、および-S(O)2Rjを有する基が含まれ、式中、Riは、前に定義されたアルキル基であり、Rjは、前に定義されたアリール基である。
【0114】
「アルケニルオキシ」および「アルキニルオキシ」という用語には、式-O-Riを有する基が含まれ、式中、Riは、それぞれ、アルケニルまたはアルキニル基である。
【0115】
「アルケニルチオ」および「アルキニルチオ」という用語には、式-S-Rkを有する基が含まれ、式中、Rkは、それぞれ、アルケニルまたはアルキニル基である。
【0116】
「アルコキシカルボニル」という用語には、式-C(O)O-Riを有する基が含まれ、式中、Riは、上に定義されたアルキル基であり、炭素原子の総数は、アルキルおよびカルボニル部分の合計を指す。
【0117】
「アシル」という用語には、結合点の炭素が、以下に定義されるオキソ基で置換される、任意のアルキル、アルケニル、またはアルキニルが含まれる。次のものが、アシル基の非限定的な例である:-C(=O)アルキル、-C(=O)アルケニル、および-C(=O)アルキニル。
【0118】
「複素環」という用語には、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかであり、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含有する、上述の複素環のいずれかがベンゼン環に融合された二環式環を含む5~7員の単環式または7~10員の二環式の複素環式環が含まれ、ここで、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化され得、窒素ヘテロ原子は任意に四級化され得る。複素環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合され得る。複素環には、以下に定義されるヘテロアリール、ならびにモルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル(valerolactamyl)、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
「ヘテロアリール」という用語には、窒素(N)、酸素(O)、および硫黄(S)から選択される1、2個、またはそれ以上のヘテロ原子を含有する、芳香族5~10員複素環が含まれる。ヘテロアリールは、1つ以上の炭素原子が、例えば、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、シアノ、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、複素環(例えば、モルホリニルまたはピロリジニル)等といった置換基で置換され得る。ヘテロアリールの非限定的な例には、ピリジニルおよびフラニルが挙げられる。
【0120】
「ハロゲン」という用語には、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。
【0121】
「任意に置換されたアルキル」、「任意に置換された環式アルキル」、「任意に置換されたアルケニル」、「任意に置換されたアルキニル」、「任意に置換されたアシル」、および「任意に置換された複素環」とは、置換される場合、少なくとも1つの水素原子が置換基と置き換えられることを意味する。「オキソ」置換基(=O)の場合、2つの水素原子が置き換えられる。置換基の非限定的な例には、オキソ、ハロゲン、複素環、-CN、-ORx、-NRxRy、-NRxC(=O)Ry、-NRxSO2Ry、-C(=O)Rx、-C(=O)ORx、-C(=O)NRxRy、-SOnRx、および-SOnNRxRyが挙げられ、式中、nは、0、1、または2であり、RxおよびRyは、同じかまたは異なり、独立して、水素、アルキル、または複素環であり、アルキルおよび複素環置換基のそれぞれは、オキソ、ハロゲン、-OH、-CN、アルキル、-ORx、複素環、-NRxRy、-NRxC(=O)Ry、-NRxSO2Ry、-C(=O)Rx、-C(=O)ORx、-C(=O)NRxRy、-SOnRx、および-SOnNRxRyのうちの1つ以上でさらに置換され得る。「任意に置換された」という用語は、一覧の置換基の前に使用される際、一覧に含まれる置換基のそれぞれが、本明細書に記載のように任意に置換され得ることを意味する。
【0122】
一態様において、本発明は、構造式(I)を有するカチオン性脂質
【化3】
またはその塩であって、式中、
Xは、アルキルアミノであり、
Aは、C1~C6の任意に置換されたアルキルであり、前記C1~C6の任意に置換されたアルキルは、飽和または不飽和であり得、Aは、存在してもしなくてもよく、
Yは、ケタール、エステル、任意に置換されたカルバメート、エーテル、および任意に置換されたアミドからなる群から選択され、
Zは、アルキル鎖のそれぞれがC8~C11の長さを有する3つのアルキル鎖からなる疎水性部分であり、3つのアルキル鎖のそれぞれは、独立して、飽和または不飽和であり得、3つのアルキル鎖のそれぞれは、任意に置換される、カチオン性脂質またはその塩を提供する。
【0123】
式(I)の脂質のいくつかの実施形態において、Zは、式
【化4】
を有し、式中、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、C8~C11アルキルからなる群から選択され、R1、R2、およびR3のそれぞれは、独立して、飽和または不飽和であり得、R1、R2、およびR3のそれぞれは、任意に置換される。
【0124】
特定の実施形態において、式(I)の脂質は、次の構造のうちの1つを有する:
【化5】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【0125】
いくつかの実施形態において、カチオン性脂質は、1つ以上のアニオンとともに塩(例えば、結晶塩)を形成する。1つの特定の実施形態において、カチオン性脂質は、そのシュウ酸(例えば、ヘミシュウ酸)塩であり、これは、好ましくは結晶塩である。特定の実施形態において、カチオン性脂質は、1つ以上のアニオンとともに薬学的に許容される塩を形成する。
【0126】
本明細書に記載の化合物の結晶形態、水和物、および溶媒和物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0127】
本発明の化合物は、実施例に記載される方法を含む、既知の有機合成技術によって調製することができる。いくつかの実施形態において、本発明のカチオン性脂質の合成は、保護基の使用を必要とする場合がある。保護基の方法論は、当業者に周知である(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,Green,T.W.et.al.,Wiley-Interscience,New York City,1999を参照されたい)。簡単に言うと、本発明の文脈内での保護基は、官能基の不要な反応性を低減または排除する、任意の基である。保護基を、官能基に付加してある特定の反応の間その反応性を遮蔽し、次いで、これを除去して元の官能基を露呈することができる。ある特定の事例では、「アルコール保護基」が使用される。「アルコール保護基」は、アルコール官能基の不要な反応性を減少または排除する、任意の基である。保護基は、当該技術分野で周知の技術を使用して付加および除去することができる。
【0128】
ある特定の実施形態において、本発明のカチオン性脂質は、少なくとも1つのプロトン化可能または脱プロトン化可能な基を有し、結果として、脂質は、生理的pH(例えば、pH7.4)以下では正の電荷を有し、第2のpH、好ましくは生理的pH以上では、中性となる。pHに応じたプロトンの付加または除去は、平衡プロセスであること、および荷電脂質または中性脂質への言及は、主要な種の性質を指し、脂質の全てが荷電または中性形態で存在することを要するものではないことが、当業者には理解されるであろう。1つを上回るプロトン化可能もしくは脱プロトン化可能基を有する脂質、または双性イオン性であるものは、本発明での使用から除外されない。
【0129】
ある特定の他の実施形態において、本発明によるプロトン化可能脂質は、プロトン化可能基のpKaが、約4~約11の範囲である。これらの脂質は、より低いpHの製剤化段階ではカチオン性であり、およそpH7.4の生理的pHでは粒子の大部分の表面が(完全ではないが)中和されるため、約4~約7のpKaが最も好ましい。このpKaの利点の1つは、粒子の外側表面と会合する少なくとも一部の核酸が、生理的pHではその静電相互作用を失い、単純な透析で除去され、したがって、粒子の易排除性を大幅に低減することである。
【0130】
IV. 活性剤
活性剤(例えば、治療剤)には、細胞、組織、器官、または対象に対して所望の効果を呈することが可能な任意の分子が含まれる。そのような効果は、例えば、生物学的、生理学的、および/または美容的であり得る。活性剤は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、小分子、およびそれらの混合物を含むがこれらに限定されない、任意の種類の分子または化合物であり得る。核酸の非限定的な例には、干渉RNA分子(例えば、siRNA、Dicer基質dsRNA、shRNA、aiRNA、および/またはmiRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、プラスミド、リボザイム、免疫賦活性オリゴヌクレオチド、およびこれらの混合物が挙げられる。ペプチドまたはポリペプチドの例には、限定することなく、抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント;ヒト化抗体、組み換え抗体、組み換えヒト抗体、および/またはPrimatized(商標)抗体)、サイトカイン、成長因子、アポトーシス因子、分化誘発因子、細胞表面受容体およびそれらのリガンド、ホルモン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。小分子の例には、当業者に既知の任意の従来的な薬剤または薬物等の有機小分子または化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態において、活性剤は、治療剤、またはその塩もしくは誘導体である。治療剤誘導体は、それ自体が治療的に活性であり得るか、またはさらなる修飾によって活性となるプロドラッグであってもよい。したがって、一実施形態において、治療剤誘導体は、修飾されていない薬剤と比較して、一部または全ての治療活性を保持し、一方で別の実施形態では、治療剤誘導体は、治療活性を欠くがさらなる修飾時に活性となる、プロドラッグである。
【0132】
A. 核酸
ある特定の実施形態において、本発明の脂質粒子は、核酸と会合し、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)をもたらす。いくつかの実施形態において、核酸は、脂質粒子に完全にカプセル封入される。本明細書に使用される際、「核酸」という用語には、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが含まれ、60個までのヌクレオチドを含有するフラグメントは、一般的に、オリゴヌクレオチドと称され、それよりも長いフラグメントは、ポリヌクレオチドと称される。特定の実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、約15~約60ヌクレオチドの長さである。核酸は、本発明の脂質粒子中、単独で投与されてもよく、またはペプチド、ポリペプチド、もしくは従来的な薬物等の小分子を含む本発明の脂質粒子と組み合わせて投与(例えば、共投与)されてもよい。
【0133】
本発明の文脈において、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、天然の塩基、糖、および糖間(骨格)結合からなる、ヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーのポリマーまたはオリゴマーを指す。「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語はまた、非天然のモノマーまたは同様に機能するその部分を含む、ポリマーまたはオリゴマーも含む。このような修飾または置換オリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取り込みの強化、免疫原性の低下、およびヌクレアーゼの存在下での安定性の向上といった特性のため、元の形態よりも好ましいことが多い。
【0134】
オリゴヌクレオチドは、概して、デオキシリボオリゴヌクレオチドまたはリボオリゴヌクレオチドとして分類される。デオキシリボオリゴヌクレオチドは、デオキシリボースと称される5炭糖が、この糖の5’および3’の炭素でリン酸と共有結合されて、交互の非分岐鎖ポリマーを形成するものからなる。リボオリゴヌクレオチドは、5炭糖がリボースである類似の反復構造からなる。
【0135】
本発明による核酸-脂質粒子中に存在する核酸には、既知である核酸の任意の形態が含まれる。本明細書に使用される核酸は、一本鎖DNAもしくはRNA、または二本鎖DNAもしくはRNA、またはDNA-RNAハイブリッドであり得る。二本鎖DNAの例は、本明細書に記載されており、例えば、構造遺伝子、制御および終止領域を含む遺伝子、ならびにウイルスまたはプラスミドDNAといった自己複製系が含まれる。二本鎖RNAの例は、本明細書に記載されており、例えば、siRNA、ならびにDicer基質dsRNA、shRNA、aiRNA、およびpre-miRNAといった他のRNAi剤が含まれる。一本鎖核酸には、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、成熟miRNA、および三重鎖形成オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0136】
本発明の核酸は、通常は核酸の具体的な形態に応じて、種々の長さであり得る。例えば、特定の実施形態において、プラスミドまたは遺伝子は、約1,000~約100,000ヌクレオチド残基の長さであり得る。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、約10~約100ヌクレオチドの長さに及び得る。種々の関連する実施形態において、一本鎖、二本鎖、および三本鎖のいずれのオリゴヌクレオチドも、長さが約10~約60ヌクレオチド、約15~約60ヌクレオチド、約20~約50ヌクレオチド、約15~約30ヌクレオチド、または約20~約30ヌクレオチドの長さに及び得る。
【0137】
特定の実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチド(またはその鎖)は、標的ポリヌクレオチド配列と特異的にハイブリダイズするか、またはそれに相補的である。本明細書に使用される「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」という用語は、安定かつ特異的な結合がDNAまたはRNA標的とオリゴヌクレオチドとの間に生じるような、十分な程度の相補性を示す。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的配列に対して100%相補的である必要はないことを理解されたい。好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチドは、標的配列へのオリゴヌクレオチドの結合が、標的配列の正常な機能を妨害して、有用性またはそこからの発現の喪失をもたらす場合、特異的にハイブリダイズ可能であり、特異的な結合が所望される条件下、すなわち、インビボアッセイもしくは治療的治療の場合には生理的条件下において、またはインビトロアッセイの場合にはそのアッセイが行われる条件下において、オリゴヌクレオチドと非標的配列との非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在する。したがって、オリゴヌクレオチドは、それが標的とするかまたはそれが特異的にハイブリダイズする遺伝子またはmRNA配列の領域と比較して、1、2、3個、またはそれ以上の塩基置換を含み得る。
【0138】
1. siRNA
本発明の核酸-脂質粒子のsiRNA構成成分は、目的の標的遺伝子の発現をサイレンシングすることができる。siRNA二重鎖の各鎖は、典型的に、約15~約60ヌクレオチドの長さであり、好ましくは、約15~約30ヌクレオチドの長さである。ある特定の実施形態において、siRNAは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。修飾siRNAは、通常、対応する非修飾siRNA配列よりも免疫賦活性が低く、目的の標的遺伝子に対するRNAi活性を保持する。いくつかの実施形態において、修飾siRNAは、2’OMe-グアノシン、2’OMe-ウリジン、2’OMe-アデノシン、および/または2’OMe-シトシンヌクレオチドといった、少なくとも1つの2’OMeプリンまたはピリミジンヌクレオチドを含有する。修飾ヌクレオチドは、siRNAの一方の鎖(すなわち、センスもしくはアンチセンス)、または両方の鎖に存在し得る。いくつかの好ましい実施形態において、siRNAの一方の鎖(すなわち、センスもしくはアンチセンス)または両方の鎖において、ウリジンおよび/またはグアノシンヌクレオチドのうちの1つ以上が修飾される(例えば、2’OMe-修飾される)。これらの実施形態において、修飾siRNAは、1つ以上の修飾(例えば、2’OMe-修飾)アデノシンおよび/または修飾(例えば、2’OMe-修飾)シトシンヌクレオチドをさらに含み得る。他の好ましい実施形態において、siRNAの一方の鎖(すなわち、センスもしくはアンチセンス)または両方の鎖において、ウリジンおよび/またはグアノシンヌクレオチドのみが修飾される(例えば、2’OMe-修飾される)。siRNA配列は、オーバーハング(例えば、Elbashir et al.,Genes Dev.,15:188(2001)もしくはNykanen et al.,Cell,107:309(2001)に記載される3’もしくは5’オーバーハング)を有し得るか、またはオーバーハングを欠いてもよい(すなわち、平滑末端を有する)。
【0139】
特定の実施形態において、2’OMeウリジンおよび/またはグアノシンヌクレオチドといった修飾ヌクレオチドの、siRNAの一方または両方の鎖の二本鎖領域への選択的な組み込みは、そのsiRNA分子に対する免疫応答を低減させるか、または完全に無効にする。ある特定の事例において、特異的siRNA配列の免疫賦活特性と遺伝子発現をサイレンシングするそれらの能力とは、siRNA二重鎖の二本鎖領域内への最小限かつ選択的な2’OMe修飾の導入によって、両立または最適化することができる。これは、非修飾siRNAの使用と関連するサイトカイン誘発、毒性、および標的外作用を有することなく、治療的に実行可能なsiRNAの用量で達成することができる。
【0140】
修飾siRNAは、一般に、siRNA二重鎖の二本鎖領域に、約1%~約100%(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)の修飾ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドのうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上が、修飾ヌクレオチドを含む。ある特定の他の実施形態において、siRNAの二本鎖領域の修飾ヌクレオチドのうちの一部または全てが、互いに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ヌクレオチド、またはそれ以上離れている。1つの好ましい実施形態において、siRNAの二本鎖領域の修飾ヌクレオチドはいずれも、互いに隣接しない(例えば、それぞれの修飾ヌクレオチドの間に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10の非修飾ヌクレオチドのギャップが存在する)。
【0141】
いくつかの実施形態において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約50%未満(例えば、約49%未満、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、または36%、好ましくは約35%未満、34%、33%、32%、31%、または30%)が、修飾(例えば、2’OMe)ヌクレオチドを含む。これらの実施形態の一態様において、siRNAの一方または両方の鎖の二本鎖領域のウリジンおよび/またはグアノシンヌクレオチドの約50%未満が、選択的に(例えば、それだけが)修飾される。これらの実施形態の別の態様において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約50%未満が2’OMeヌクレオチドを含み、ここで、siRNAは、siRNAの両方の鎖に2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、少なくとも1つの2’OMe-グアノシンヌクレオチドおよび少なくとも1つの2’OMe-ウリジンヌクレオチドを含み、2’OMe-グアノシンヌクレオチドおよび2’OMe-ウリジンヌクレオチドだけが、二本鎖領域に存在する2’OMeヌクレオチドである。これらの実施形態のさらに別の態様において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約50%未満が2’OMeヌクレオチドを含み、ここで、siRNAは、修飾siRNAの両方の鎖に2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、2’OMe-アデノシンヌクレオチド、およびこれらの混合物からなる群から選択される2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、二本鎖領域に2’OMe-シトシンヌクレオチドを含まない。これらの実施形態のさらなる態様において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約50%未満が2’OMeヌクレオチドを含み、ここで、siRNAは、siRNAの両方の鎖に2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、少なくとも1つの2’OMe-グアノシンヌクレオチドおよび少なくとも1つの2’OMe-ウリジンヌクレオチドを含み、siRNAは、二本鎖領域に2’OMe-シトシンヌクレオチドを含まない。これらの実施形態の別の態様において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約50%未満が2’OMeヌクレオチドを含み、ここで、siRNAは、修飾siRNAの両方の鎖に2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、2’OMe-アデノシンヌクレオチド、およびこれらの混合物からなる群から選択される2’OMeヌクレオチドを含み、二本鎖領域内の2’OMeヌクレオチドは、互いに隣接しない。
【0142】
他の実施形態において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約1%~約50%(例えば、約5%~50%、10%~50%、15%~50%、20%~50%、25%~50%、30%~50%、35%~50%、40%~50%、45%~50%、5%~45%、10%~45%、15%~45%、20%~45%、25%~45%、30%~45%、35%~45%、40%~45%、5%~40%、10%~40%、15%~40%、20%~40%、25%~40%、25%~39%、25%~38%、25%~37%、25%~36%、26%~39%、26%~38%、26%~37%、26%~36%、27%~39%、27%~38%、27%~37%、27%~36%、28%~39%、28%~38%、28%~37%、28%~36%、29%~39%、29%~38、29%~37%、29%~36%、30%~40%、30%~39%、30%~38%、30%~37%、30%~36%、31%~39%、31%~38%、31%~37%、31%~36%、32%~39%、32%~38%、32%~37%、32%~36%、33%~39%、33%~38%、33%~37%、33%~36%、34%~39%、34%~38%、34%~37%、34%~36%、35%~40%、5%~35%、10%~35%、15%~35%、20%~35%、21%~35%、22%~35%、23%~35%、24%~35%、25%~35%、26%~35%、27%~35%、28%~35%、29%~35%、30%~35%、31%~35%、32%~35%、33%~35%、34%~35%、30%~34%、31%~34%、32%~34%、33%~34%、30%~33%、31%~33%、32%~33%、30%~32%、31%~32%、25%~34%、25%~33%、25%~32%、25%~31%、26%~34%、26%~33%、26%~32%、26%~31%、27%~34%、27%~33%、27%~32%、27%~31%、28%~34%、28%~33%、28%~32%、28%~31%、29%~34%、29%~33%、29%~32%、29%~31%、5%~30%、10%~30%、15%~30%、20%~34%、20%~33%、20%~32%、20%~31%、20%~30%、21%~30%、22%~30%、23%~30%、24%~30%、25%~30%、25%~29%、25%~28%、25%~27%、25%~26%、26%~30%、26%~29%、26%~28%、26%~27%、27%~30%、27%~29%、27%~28%、28%~30%、28%~29%、29%~30%、5%~25%、10%~25%、15%~25%、20%~29%、20%~28%、20%~27%、20%~26%、20%~25%、5%~20%、10%~20%、15%~20%、5%~15%、10%~15%、または5%~10%)が、修飾ヌクレオチドを含む。これらの実施形態の一態様において、siRNAの一方または両方の鎖の二本鎖領域のウリジンおよび/またはグアノシンヌクレオチドの約1~約50%が、選択的に(例えば、それだけが)修飾される。これらの実施形態の別の態様において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約1%~約50%が2’OMeヌクレオチドを含み、ここで、siRNAは、siRNAの両方の鎖に2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、少なくとも1つの2’OMe-グアノシンヌクレオチドおよび少なくとも1つの2’OMe-ウリジンヌクレオチドを含み、2’OMe-グアノシンヌクレオチドおよび2’OMe-ウリジンヌクレオチドだけが、二本鎖領域に存在する2’OMeヌクレオチドである。これらの実施形態のさらに別の態様において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約1%~約50%が2’OMeヌクレオチドを含み、ここで、siRNAは、修飾siRNAの両方の鎖に2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、2’OMe-アデノシンヌクレオチド、およびこれらの混合物からなる群から選択される2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、二本鎖領域に2’OMe-シトシンヌクレオチドを含まない。これらの実施形態のさらなる態様において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約1~約50%が2’OMeヌクレオチドを含み、ここで、siRNAは、siRNAの両方の鎖に2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、少なくとも1つの2’OMe-グアノシンヌクレオチドおよび少なくとも1つの2’OMe-ウリジンヌクレオチドを含み、siRNAは、二本鎖領域に2’OMe-シトシンヌクレオチドを含まない。これらの実施形態の別の態様において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約1%~約50%が2’OMeヌクレオチドを含み、ここで、siRNAは、修飾siRNAの両方の鎖に2’OMeヌクレオチドを含み、siRNAは、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、2’OMe-アデノシンヌクレオチド、およびこれらの混合物からなる群から選択される2’OMeヌクレオチドを含み、二本鎖領域の2’OMeヌクレオチドは、互いに隣接しない。
【0143】
siRNAに導入され得る修飾のさらなる範囲、割合(%)、およびパターンが、米国特許出願公開第2007/0135372号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0144】
a) siRNA配列の選択
好適なsiRNA配列は、当該技術分野で既知の任意の手段を用いて特定することができる。典型的には、Elbashir et al.,Nature,411:494-498(2001)およびElbashir et al.,EMBO J.,20:6877-6888(2001)に記載される方法を、Reynolds et al.,Nature Biotech.,22(3):326-330(2004)に記載される合理的設計規則と組み合わせる。
【0145】
非限定的な例として、目的の標的遺伝子に由来する転写産物のAUG開始コドンの3’側のヌクレオチド配列を、ジヌクレオチド配列(例えば、AA、NA、CC、GG、またはUUであり、N=C、G、またはUである)に対して走査することができる(例えば、Elbashir et al.,EMBO J.,20:6877-6888(2001)を参照されたい)。ジヌクレオチド配列のすぐ3’側のヌクレオチドは、可能性のあるsiRNA配列(すなわち、標的配列またはセンス鎖配列)として識別される。典型的に、ジヌクレオチド配列のすぐ3’側の19、21、23、25、27、29、31、33、35個、またはそれ以上のヌクレオチドは、可能性のあるsiRNA配列として識別される。いくつかの実施形態において、ジヌクレオチド配列は、AAまたはNA配列であり、AAまたはNAジヌクレオチドのすぐ3’側の19個のヌクレオチドは、可能性のあるsiRNA配列として識別される。siRNA配列は、通常、標的遺伝子の長さに沿って、異なる位置で間隔を開けて配置される。siRNA配列のサイレンシング効率をさらに高めるために、可能性のあるsiRNA配列を分析して、例えば、標的細胞または生物において、他のコード配列に相同性の領域を含有しない部位を特定してもよい。例えば、約21塩基対の好適なsiRNA配列は、典型的に、標的細胞または生物において、16~17個を上回ってコード配列に相同性の連続する塩基対を有することはない。siRNA配列がRNA Pol IIIプロモーターから発現される場合、4個を上回って連続するAまたはTの配列を欠くsiRNA配列を、選択する。
【0146】
可能性のあるsiRNA配列を特定した後、相補的配列(すなわち、アンチセンス鎖配列)を設計することができる。可能性のあるsiRNA配列はまた、当該技術分野で既知の種々の基準を用いて分析することができる。例えば、siRNA配列を、それらのサイレンシング効率を高めるために、論理的設計アルゴリズムによって分析して、次の特徴のうちの1つ以上を有する配列を特定することができる:(1)約25%~約60%G/CのG/C含量、(2)センス鎖の15~19位に少なくとも3つのA/Uがある、(3)内部反復がない、(4)センス鎖の19位にAがある、(5)センス鎖の3位にAがある、(6)センス鎖の10位にUがある、(7)センス鎖の19位にG/Cがない、および(8)センス鎖の13位にGがない。これらの特徴のそれぞれの好適な値を割り当てるアルゴリズムを組み込み、siRNAの選択に有用であるsiRNA設計ツールは、例えば、http://ihome.ust.hk/~bokcmho/siRNA/siRNA.htmlに見出すことができる。当業者であれば、前述の特徴のうちの1つ以上を有する配列を、可能性のあるsiRNA配列として、さらなる分析および試験に選択することができることを理解するであろう。
【0147】
さらに、次の基準のうちの1つ以上を有する、可能性のあるsiRNA配列は、siRNAとして排除されることが多い:(1)連続して4個以上並んだ同じ塩基を含む配列、(2)Gのホモポリマーを含む配列(すなわち、これらのポリマーの構造的特徴に起因する、可能性のある非特異的な作用を低減するため)、(3)三重塩基モチーフを含む配列(例えば、GGG、CCC、AAA、またはTTT)、(4)連続して7個以上並んだG/Cを含む配列、および(5)候補内に4個以上の塩基の直接的な反復を含み、内部折り畳み構造をもたらす配列。しかしながら、当業者であれば、前述の特徴のうちの1つ以上を有する配列が、依然として、可能性のあるsiRNA配列としてのさらなる分析および試験に選択され得ることを理解するであろう。
【0148】
いくつかの実施形態において、可能性のあるsiRNA配列を、例えば、Khvorova et al.,Cell,115:209-216(2003)、およびSchwarz et al.,Cell,115:199-208(2003)に記載されるように、siRNA二重鎖の非対称性に基づいてさらに分析してもよい。他の実施形態において、可能性のあるsiRNA配列を、Luo et al.,Biophys.Res.Commun.,318:303-310(2004)に記載されるように、標的部位における二次構造に基づいてさらに分析してもよい。例えば、標的部位における二次構造を、Mfoldアルゴリズム(http://mfold.burnet.edu.au/rna_formで利用可能)を使用してモデル化して、塩基対の形態にある二次構造が少なく、ステムループが存在する、標的部位でのアクセス可能性に有利なsiRNA配列を選択することができる。
【0149】
可能性のあるsiRNA配列を特定した後、この配列を、例えば、インビトロサイトカインアッセイまたはインビボ動物モデルを用いて、何らかの免疫賦活特性の存在について分析することができる。GUリッチモチーフ(例えば、5’-GU-3’、5’-UGU-3’、5’-GUGU-3’、5’-UGUGU-3’等)等、siRNA配列のセンスおよび/またはアンチセンス鎖内のモチーフはまた、配列が免疫賦活性であり得るかどうかの指標を提供し得る。siRNA分子が免疫賦活性であることが判明すると、これを、次いで、本明細書に記載されるように、その免疫賦活特性を減少させるように修飾してもよい。非限定的な例として、siRNA配列を、細胞が検出可能な免疫応答をもたらすような条件下で、哺乳動物の応答細胞と接触させて、siRNAが免疫賦活性siRNAであるかまたは非免疫賦活性siRNAであるかを判定することができる。哺乳動物の応答細胞は、ナイーブ哺乳動物(すなわち、これまでにsiRNA配列の遺伝子産物と接触したことのない哺乳動物)に由来し得る。哺乳動物の応答細胞は、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、マクロファージ等であり得る。検出可能な免疫応答は、例えば、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL-6、IL-12、またはこれらの組み合わせといった、サイトカインまたは成長因子の生成を含み得る。免疫賦活性であるとして特定されたsiRNA分子を、次いで、センス鎖および/またはアンチセンス鎖上のヌクレオチドのうちの少なくとも1つを修飾ヌクレオチドと置き換えることによって、その免疫賦活性を減少させるように修飾してもよい。例えば、siRNA二重鎖の二本鎖領域内のヌクレオチドの約30%未満(例えば、約30%未満、25%、20%、15%、10%、または5%)を、2’OMeヌクレオチド等の修飾ヌクレオチドと置き換えてもよい。修飾siRNAを、次いで、上述のように哺乳動物の応答細胞と接触させて、その免疫賦活特性が低減されたかまたは無効となったことを確認することができる。
【0150】
免疫応答の検出に好適なインビトロアッセイには、Davidらの二重モノクローナル抗体サンドイッチ免疫アッセイ技術(米国特許第4,376,110号)、モノクローナル-ポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ(Wide et al.,in Kirkham and Hunter,eds.,Radioimmunoassay Methods,E.and S.Livingstone,Edinburgh(1970))、Gordonらの「ウエスタンブロット」法(米国特許第4,452,901号)、標識化リガンドの免疫沈降(Brown et al.,J.Biol.Chem.,255:4980-4983(1980))、例えばRaines et al.,J.Biol.Chem.,257:5154-5160(1982)に記載される酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、蛍光色素の使用を含む免疫細胞化学技術(Brooks et al.,Clin.Exp.Immunol.,39:477(1980))、および活性中和法(Bowen-Pope et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:2396-2400(1984))が挙げられるが、これらに限定されない。上述の免疫アッセイに加えて、米国特許第3,817,827号、同第3,850,752号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、および同第4,098,876号を含む、多数の他の免疫アッセイが利用可能である。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0151】
免疫応答検出のためのインビボモデルの非限定的な例には、例えば、Judge et al.,Mol.Ther.,13:494-505(2006)に記載されるインビボマウスサイトカイン誘導アッセイが挙げられる。ある特定の実施形態において、次のように実行することができるアッセイ:(1)siRNAを、尾静脈への標準的な静脈内注射によって投与することができ、(2)血液を、投与の6時間後に心穿刺によって採取し、サイトカイン分析のために血漿として処理することができ、(3)サイトカインを、製造業者の説明に従ってサンドイッチELISAキットを用いて定量化することができる(例えば、マウスおよびヒトIFN-α(PBL Biomedical;Piscataway,NJ)、ヒトIL-6およびTNF-α(eBioscience;San Diego,CA)、ならびにマウスIL-6、TNF-α、およびIFN-γ(BD Biosciences;San Diego,CA))。
【0152】
サイトカインおよび成長因子に特異的に結合するモノクローナル抗体は、複数の供給源から市販入手可能であり、当該技術分野で既知の方法を用いて生成することができる(例えば、Kohler et al.,Nature,256:495-497(1975)およびHarlow and Lane,ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Publication,New York(1999)を参照されたい)。モノクローナル抗体の生成は、既に説明されており、当該技術分野で既知の任意の手段によって達成することができる(Buhring et al.,in Hybridoma,Vol.10,No.1,pp.77-78(1991))。いくつかの方法では、検出を容易にするために、モノクローナル抗体を標識化する(例えば、分光学的、光化学的、生化学的、電気的、光学的、または化学的手段で検出可能な任意の組成物で)。
【0153】
b) siRNA分子の生成
siRNAは、例えば、1つ以上の単離された低分子干渉RNA(siRNA)二重鎖として、より長い二本鎖RNA(dsRNA)として、またはDNAプラスミドにおいて転写カセットから転写されたsiRNAもしくはdsRNAとしてを含む、複数の形態で提供され得る。いくつかの実施形態において、siRNAは、酵素的に、または部分的/完全な有機合成によって生成することができ、修飾リボヌクレオチドは、インビトロ酵素または有機合成によって導入することができる。ある特定の事例において、各鎖は、化学的に調製される。RNA分子の合成方法は当該技術分野で既知であり、例えば、Verma and Eckstein(1998)に記載されるか、または本明細書に記載される化学合成方法である。
【0154】
RNA集団を使用して、長い前駆体RNAをもたらすことができるか、または選択された標的配列に実質的もしくは完全な同一性を有する長い前駆体RNAを使用して、siRNAを作製することができる。RNAを、当業者に既知の方法に従って、細胞または組織から単離する、合成する、および/またはクローニングすることができる。RNAは、(細胞もしくは組織から得られる、cDNAから転写される、引き出される、選択される等の)混合集団であってもよく、または、単一の標的配列を表してもよい。RNAは、天然に存在するか(例えば、組織もしくは細胞試料から単離される)、インビトロで合成されるか(例えば、T7もしくはSP6ポリメラーゼ、およびPCR産物もしくはクローンcDNAを使用して)、または化学合成され得る。
【0155】
合成RNAのための長いdsRNAを形成するために、補体もまた、インビトロで転写し、ハイブリダイズして、dsRNAを形成する。天然に存在するRNA集団を使用する場合、RNAの補体もまた、例えば、RNA集団に対応するcDNAを転写することによって、またはRNAポリメラーゼを使用して、提供される(例えば、大腸菌RNAse IIIもしくはDicerによる消化のためのdsRNAを形成するため)。次いで、前駆体RNAをハイブリダイズして、消化のための二本鎖RNAを形成する。dsRNAは、対象に直接投与することができるか、または投与の前にインビトロで消化され得る。
【0156】
RNAの単離、RNAの合成、核酸のハイブリダイズ、cDNAライブラリの作製およびスクリーニング、ならびにPCRの実行のための方法は、当該技術分野で周知であり(例えば、Gubler and Hoffman,Gene,25:263-269(1983)、Sambrook et al.,(上記)、Ausubel et al.,(上記)を参照されたい)、PCR法も同様である(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al.,eds,1990)を参照されたい)。発現ライブラリもまた、当業者には周知である。本発明における一般的な使用方法を開示するさらなる基礎的文書には、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(2nd ed.1989)、Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990)、およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1994)が挙げられる。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0157】
好ましくは、siRNAは、化学合成される。本発明のsiRNA分子を含むオリゴヌクレオチドは、Usman et al.,J.Am.Chem.Soc.,109:7845(1987)、Scaringe et al.,Nucl.Acids Res.,18:5433(1990)、Wincott et al.,Nucl.Acids Res.,23:2677-2684(1995)、およびWincott et al.,Methods Mol.Bio.,74:59(1997)に記載されるもの等、当該技術分野で既知の種々の技術のいずれかを使用して合成することができる。オリゴヌクレオチドの合成は、5’末端のジメトキシトリチルおよび3’末端のホスホラミダイトといった、一般的な核酸保護および結合基を利用する。非限定的な例として、小規模な合成を、0.2μmol規模のプロトコルを用いてApplied Biosystems合成器で行うことができる。あるいは、0.2μmol規模の合成は、Protogene(Palo Alto,CA)からの96ウェルプレート合成器で行ってもよい。しかしながら、より大きいかまたは小さい規模の合成もまた、本発明の範囲内である。オリゴヌクレオチドの合成に好適な試薬、RNA脱保護の方法、RNA精製の方法は、当業者に既知である。
【0158】
siRNA分子はまた、タンデム合成技術を介して合成することができ、ここでは、両方の鎖を、切断可能なリンカーによって分離される単一の連続するオリゴヌクレオチドフラグメントまたは鎖として合成され、このリンカーが後で切断されて、別個のフラグメントまたは鎖をもたらし、これがハイブリダイズしてsiRNA二重鎖を形成する。リンカーは、ポリヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーであり得る。siRNAのタンデム合成は、複数ウェル/複数プレートの合成プラットフォーム、ならびにバッチ式反応器、合成カラム等を用いる大規模な合成プラットフォームに、容易に適合可能である。あるいは、siRNA分子は、一方のオリゴヌクレオチドがsiRNAのセンス鎖を含み、他方がアンチセンス鎖を含む、2つの異なるオリゴヌクレオチドから構築されてもよい。例えば、各鎖を別個に合成し、合成および/または脱保護後にハイブリダイゼーションまたはライゲーションによって一緒に結合させることができる。ある特定の他の事例において、siRNA分子は、自己相補的なセンスおよびアンチセンス領域がハイブリダイズして、ヘアピン二次構造を有するsiRNA二重鎖を形成する、単一の連続するオリゴヌクレオチドフラグメントとして合成され得る。
【0159】
c) siRNA配列の修飾
ある特定の態様において、siRNA分子は、2つの鎖と、二本鎖領域に少なくとも1つの修飾ヌクレオチドとを有する二重鎖を含み、ここで、各鎖は、約15~約60ヌクレオチドの長さである。有利なことに、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNA配列よりも免疫賦活性が低いが、標的配列の発現をサイレンシングする能力は保持する。好ましい実施形態において、siRNA分子に導入される化学修飾の程度は、siRNAの免疫賦活特性の低減または無効化と、RNAi活性の保持とをうまく両立させる。非限定的な例として、目的の遺伝子を標的とするsiRNA分子は、siRNAによって生成される免疫応答を排除し、同時に標的遺伝子の発現をサイレンシングするその能力を保持するように、siRNA二重鎖内の選択的なウリジンおよび/またはグアノシンヌクレオチドが最小限に修飾され得る(例えば、約30%未満、25%、20%、15%、10%、または5%修飾される)。
【0160】
本発明での使用に好適な修飾ヌクレオチドの例には、2’-O-メチル(2’OMe)、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’F)、2’-デオキシ、5-C-メチル、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)、4’-チオ、2’-アミノ、または2’-C-アリル基を有するリボヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Saenger,Principles of Nucleic Acid Structure,Springer-Verlag Ed.(1984)に記載されるもの等、ノーザン配置(Northern conformation)を有する修飾ヌクレオチドもまた、siRNA分子における使用に好適である。このような修飾ヌクレオチドには、限定することなく、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド(例えば、2’-O,4’-C-メチレン-(D-リボフラノシル)ヌクレオチド)、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ヌクレオチド、2’-メチル-チオ-エチルヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’F)ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-クロロ(2’Cl)ヌクレオチド、および2’-アジドヌクレオチドが挙げられる。ある特定の事例において、本明細書に記載のsiRNA分子は、1つ以上のG-クランプヌクレオチドを含む。G-クランプヌクレオチドは、修飾により、二重鎖内の相補的なグアニンヌクレオチドのワトソンクリックおよびフーグスティーン面(face)の両方に水素結合する能力を得る、修飾シトシン類似体を指す(例えば、Lin et al.,J.Am.Chem.Soc.,120:8531-8532(1998)を参照されたい)。さらに、ヌクレオチド塩基類似体、例えば、C-フェニル、C-ナフチル等、他の芳香族誘導体、イノシン、アゾールカルボキサミド、ならびにニトロアゾール誘導体、例えば、3-ニトロピロール、4-ニトロインドール、5-ニトロインドール、および6-ニトロインドールを有する、ヌクレオチド(例えば、Loakes,Nucl.Acids Res.,29:2437-2447(2001))を、siRNA分子に組み込んでもよい。
【0161】
ある特定の実施形態において、siRNA分子は、末端キャップ部分、リン酸骨格修飾等といった、1つ以上の化学修飾をさらに含み得る。末端キャップ部分の例には、限定することなく、逆位脱塩基残基、グリセリル修飾、4’,5’-メチレンヌクレオチド、1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、1,5-anヒドリドヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、α-ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、スレオ-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’-セコヌクレオチド、非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’-3’-逆位ヌクレオチド部分、3’-3’-逆位脱塩基部分、3’-2’-逆位ヌクレオチド部分、3’-2’-逆位脱塩基部分、5’-5’-逆位ヌクレオチド部分、5’-5’-逆位脱塩基部分、3’-5’-逆位デオキシ脱塩基部分、5’-アミノ-アルキルホスフェート、1,3-ジアミノ-2-プロピルホスフェート、3-アミノプロピルホスフェート、6-アミノヘキシルホスフェート、1,2-アミノドデシルホスフェート、ヒドロキシプロピルホスフェート、1,4-ブタンジオールホスフェート、3’-ホスホロアミデート、5’-ホスホロアミデート、ヘキシルホスフェート、アミノヘキシルホスフェート、3’-ホスフェート、5’-アミノ、3’-ホスホロチオエート、5’-ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、および架橋もしくは非架橋メチルホスホネートまたは5’-メルカプト部分が挙げられる(例えば、米国特許第5,998,203号、Beaucage et al.,Tetrahedron49:1925(1993)を参照されたい)。リン酸骨格修飾(すなわち、修飾されたヌクレオチド間結合をもたらす)の非限定的な例には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、モルホリノ、アミデート、カルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール、チオホルムアセタール、およびアルキルシリル置換が挙げられる(例えば、Hunziker et al.,Nucleic Acid Analogues:Synthesis and Properties,in Modern Synthetic Methods,VCH,331-417(1995)、Mesmaeker et al.,Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides,in Carbohydrate Modifications in Antisense Research,ACS,24-39(1994)を参照されたい)。このような化学修飾は、siRNAのセンス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖の5’末端および/または3’末端で生じ得る。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0162】
いくつかの実施形態において、siRNA分子のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖は、約1~約4個(例えば、1、2、3、もしくは4個)の2’-デオキシリボヌクレオチド、修飾(例えば、2’OMe)および/もしくは非修飾ウリジンリボヌクレオチド、ならびに/または修飾(例えば、2’OMe)および非修飾ヌクレオチドの任意の他の組み合わせを有する、3’末端オーバーハングをさらに含み得る。
【0163】
siRNA分子に導入することができる修飾ヌクレオチドおよび化学修飾の種類のさらなる例は、例えば、英国特許第GB 2,397,818 B号および米国特許出願公開第2004/0192626号、同第2005/0282188号、および同第2007/0135372号に記載され、それらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0164】
本明細書に記載のsiRNA分子は、siRNAの一方または両方の鎖に、1つ以上の非ヌクレオチドを任意に含み得る。本明細書に使用される際、「非ヌクレオチド」という用語は、糖および/またはリン酸置換を含む、1つ以上のヌクレオチド単位の代わりに核酸鎖に組み込むことができ、残りの塩基がそれらの活性を呈することを許す、任意の基または化合物を指す。この基または化合物は、それが、アデノシン、グアニン、シトシン、ウラシル、またはチミンといった、広く認識されているヌクレオチド塩基を有さず、したがって、1’位に塩基を欠くという点で、脱塩基性である。
【0165】
他の実施形態において、siRNAの化学修飾は、複合体をsiRNA分子に結合させることを含む。複合体は、例えば、生分解性リンカー等の共有結合を介して、siRNAのセンス鎖および/またはアンチセンス鎖の5’および/または3’末端に結合され得る。複合体はまた、例えば、カルバメート基または他の結合基を通じて、siRNAに結合され得る(例えば、米国特許出願公開第2005/0074771号、同第2005/0043219、および同第2005/0158727号を参照されたい)。ある特定の事例において、複合体は、細胞内へのsiRNAの送達を促進する分子である。siRNAへの結合に好適な複合体分子には、限定することなく、コレステロール等のステロイド、ポリエチレングリコール(PEG)等のグリコール、ヒト血清アルブミン(HSA)、脂肪酸、カロテノイド、テルペン、胆汁酸、葉酸塩(例えば、葉酸、葉酸塩類似体、およびその誘導体)、糖類(例えば、ガラクトース、ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、グルコース、マンノース、フルクトース、フコース等)リン脂質、ペプチド、細胞取り込みを媒介することが可能な細胞受容体のリガンド、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる(例えば、米国特許出願公開第2003/0130186号、同第2004/0110296号、および同第2004/0249178号、米国特許第6,753,423号を参照されたい)。他の例には、米国特許出願公開第2005/0119470号および同第2005/0107325号に記載される、親油性部分、ビタミン、ポリマー、ペプチド、タンパク質、核酸、小分子、オリゴ糖、炭水化物のクラスター、介入物質、小溝結合剤、切断剤、および架橋剤の複合体分子が挙げられる。さらに他の例には、米国特許出願公開第2005/0153337号に記載される、2’-O-アルキルアミン、2’-O-アルコキシアルキルアミン、ポリアミン、C5-カチオン性修飾ピリミジン、カチオン性ペプチド、グアニジニウム基、アミジニニウム(amidininium)基、カチオン性アミノ酸複合体分子が挙げられる。さらなる例には、米国特許出願公開第2004/0167090号に記載される、疎水性基、膜活性化化合物、細胞貫通化合物、細胞標的化シグナル、相互作用修飾因子、および立体安定剤複合体分子が挙げられる。さらなる例には、米国特許出願公開第2005/0239739号に記載の複合体分子が挙げられる。使用される複合体の種類およびsiRNA分子との複合体化の程度を、RNAi活性を保持すると同時に、改善されたsiRNAの薬物動態プロファイル、バイオアベイラビリティ、および/または安定性について、評価することができる。このように、当業者であれば、種々の複合体がそこに結合しているsiRNA分子をスクリーニングして、様々な周知のインビトロ細胞培養物またはインビボ動物モデルを用いて、改善された特性および完全なRNAi活性を有するものを特定することができる。上述の特許文書の開示は、あらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0166】
d) 標的遺伝子
本明細書に記載の核酸-脂質粒子のsiRNA成分を使用して、目的の遺伝子の翻訳(すなわち、発現)を下方制御するか、またはサイレンシングすることができる。目的の遺伝子には、ウイルスの感染および生存と関連する遺伝子、代謝性疾患および障害(例えば、肝臓疾患および障害)と関連する遺伝子、腫瘍形成または細胞形質転換(例えば、癌)と関連する遺伝子、血管形成遺伝子、炎症および自己免疫応答と関連するもの等の免疫調節遺伝子、受容体リガンド遺伝子、ならびに神経変性障害と関連する遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
特定の実施形態において、本発明は、複数の目的遺伝子の発現をサイレンシングする、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上のsiRNA分子の混合物を提供する。いくつかの実施形態において、siRNA分子の混合物は、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)等の脂質粒子に完全にカプセル封入される。siRNA分子は、同じ脂質粒子内に一緒にカプセル封入されてもよく、または、混合物中に存在する各siRNA種は、別個の粒子に製剤化されてもよい。
【0168】
ウイルス感染および生存に関連する遺伝子には、宿主(例えば、組織因子等の宿主因子)により発現されるもの、または細胞に結合し、そこに侵入し、そこで複製するためにウイルスにより発現されるものが含まれる。慢性ウイルス疾患と関連するウイルス配列が、特に興味深い。特に興味深いウイルス配列には、エボラウイルスおよびマールブルグウイルス等のフィロウイルス(例えば、Geisbert et al.,J.Infect.Dis.,193:1650-1657(2006)を参照されたい)、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルス、およびサビアウイルス等のアレナウイルス(Buchmeier et al.,Arenaviridae:the viruses and their replication,In:Fields Virology,Knipe et al.(eds.),4th ed.,Lippincott-Raven,Philadelphia,(2001))、インフルエンザA、B、およびCウイルス等のインフルエンザウイルス(例えば、Steinhauer et al.,Annu Rev Genet.,36:305-332(2002)およびNeumann et al.,J Gen Virol.,83:2635-2662(2002)を参照されたい)、肝炎ウイルス(例えば、Hamasaki et al.,FEBS Lett.,543:51(2003)、Yokota et al.,EMBO Rep.,4:602(2003)、Schlomai et al.,Hepatology,37:764(2003)、Wilson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:2783(2003)、Kapadia et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:2014(2003)、およびFields Virology,Knipe et al.(eds.),4th ed.,Lippincott-Raven,Philadelphia(2001)を参照されたい)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Banerjea et al.,Mol.Ther.,8:62(2003)、Song et al.,J.Virol.,77:7174(2003)、Stephenson,JAMA,289:1494(2003)、Qin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100:183(2003))、ヘルペスウイルス(Jia et al.,J.Virol.,77:3301(2003))、ならびにヒトパピローマウイルス(HPV)(Hall et al.,J.Virol.,77:6066(2003)、Jiang et al.,Oncogene,21:6041(2002))の配列が挙げられる。
【0169】
サイレンシングされ得る例となるフィロウイルスの核酸配列には、構造タンパク質(例えば、VP30、VP35、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼタンパク質(L-pol))、および膜結合タンパク質(例えば、VP40、糖タンパク質(GP)、VP24)をコードする核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。エボラウイルスの完全なゲノム配列は、例えば、Genbank受託番号NC_002549、AY769362、NC_006432、NC_004161、AY729654、AY354458、AY142960、AB050936、AF522874、AF499101、AF272001、およびAF086833に記載されている。エボラウイルスのVP24配列は、例えば、Genbank受託番号U77385およびAY058897に記載されている。エボラウイルスのL-pol配列は、例えば、Genbank受託番号X67110に記載されている。エボラウイルスのVP40配列は、例えば、Genbank受託番号AY058896に記載されている。エボラウイルスのNP配列は、例えば、Genbank受託番号AY058895に記載されている。エボラウイルスのGP配列は、例えば、Genbank受託番号AY058898、Sanchez et al.,Virus Res.,29:215-240(1993)、Will et al.,J.Virol.,67:1203-1210(1993)、Volchkov et al.,FEBS Lett.,305:181-184(1992)、および米国特許第6,713,069号に記載されている。さらなるエボラウイルスの配列は、例えば、Genbank受託番号L11365およびX61274に記載されている。マールブルグウイルスの完全なゲノム配列は、例えば、Genbank受託番号NC_001608、AY430365、AY430366、およびAY358025に記載されている。マールブルグウイルスのGP配列は、例えば、Genbank受託番号AF005734、AF005733、およびAF005732に記載されている。マールブルグウイルスのVP35配列は、例えば、Genbank受託番号AF005731およびAF005730に記載されている。さらなるマールブルグウイルスの配列は、例えば、Genbank受託番号X64406、Z29337、AF005735、およびZ12132に記載されている。エボラウイルスおよびマールブルグウイルスの核酸配列を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第2007/0135370号および2009年12月15日に出願された米国仮出願第61/286,741号に記載のものが挙げられ、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0170】
サイレンシングされ得る例となるアレナウイルスの核酸配列には、核タンパク質(NP)、糖タンパク質(GP)、L-ポリメラーゼ(L)、およびZタンパク質(Z)をコードする核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。ラッサウイルスの完全なゲノム配列は、例えば、Genbank受託番号NC_004296(LASVセグメントS)およびNC_004297(LASVセグメントL)に記載されている。ラッサウイルスの核酸配列を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、2010年3月31日に出願された米国仮出願第61/319,855号に記載のものが含まれ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0171】
サイレンシングされ得る例となる宿主の核酸配列には、出血熱ウイルスの病因において役割を果たすことが既知である、組織因子(TF)等の宿主因子をコードする核酸配列が挙げられるが、これに限定されない。TFのmRNA配列は、Genbank受託番号NM_001993に記載されている。当業者であれば、TFが、F3、凝固因子III、トロンボプラスチン、およびCD142としても知られることを理解するであろう。TF核酸配列を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、2010年3月31日に出願された米国仮出願第61/319,855号に記載のものが挙げられ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0172】
サイレンシングされ得る例となるインフルエンザウイルスの核酸配列には、核タンパク質(NP)、マトリクスタンパク質(M1およびM2)、非構造タンパク質(NS1およびNS2)、RNAポリメラーゼ(PA、PB1、PB2)、ノイラミニダーゼ(NA)、ならびに赤血球凝集素(HA)をコードする核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。インフルエンザAのNP配列は、例えば、Genbank受託番号NC_004522、AY818138、AB166863、AB188817、AB189046、AB189054、AB189062、AY646169、AY646177、AY651486、AY651493、AY651494、AY651495、AY651496、AY651497、AY651498、AY651499、AY651500、AY651501、AY651502、AY651503、AY651504、AY651505、AY651506、AY651507、AY651509、AY651528、AY770996、AY790308、AY818138、およびAY818140に記載されている。インフルエンザAのPA配列は、例えば、Genbank受託番号AY818132、AY790280、AY646171、AY818132、AY818133、AY646179、AY818134、AY551934、AY651613、AY651610、AY651620、AY651617、AY651600、AY651611、AY651606、AY651618、AY651608、AY651607、AY651605、AY651609、AY651615、AY651616、AY651640、AY651614、AY651612、AY651621、AY651619、AY770995、およびAY724786に記載されている。インフルエンザウイルスの核酸配列を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第2007/0218122号に記載のものが挙げられ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0173】
サイレンシングされ得る例となる肝炎ウイルスの核酸配列には、転写および翻訳に関与する核酸配列(例えば、En1、En2、X、P)、ならびに構造タンパク質(例えば、CおよびC関連タンパク質を含むコアタンパク質、S、M、および/もしくはLタンパク質を含むカプシドおよびエンベロープタンパク質、またはそれらのフラグメント)をコードする核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Fields Virology,上記を参照されたい)。サイレンシングされ得る例となるC型肝炎ウイルス(HCV)の核酸配列には、5’非翻訳領域(5’-UTR)、3’非翻訳領域(3’-UTR)、ポリタンパク質翻訳開始コドン領域、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列、ならびに/またはコアタンパク質、E1タンパク質、E2タンパク質、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3プロテアーゼ/ヘリカーゼ、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質、および/もしくはNS5B RNA依存性RNAポリメラーゼをコードする核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。HCVのゲノム配列は、例えば、Genbank受託番号NC_004102(HCV遺伝子型1a)、AJ238799(HCV遺伝子型1b)、NC_009823(HCV遺伝子型2)、NC_009824(HCV遺伝子型3)、NC_009825(HCV遺伝子型4)、NC_009826(HCV遺伝子型5)、およびNC_009827(HCV遺伝子型6)に記載されている。A型肝炎ウイルスの核酸配列は、例えば、Genbank受託番号NC_001489に記載されており、B型肝炎ウイルスの核酸配列は、例えば、Genbank受託番号NC_003977に記載されており、D型肝炎ウイルスの核酸配列は、例えば、Genbank受託番号NC_001653に記載されており、E型肝炎ウイルス核の酸配列は、例えば、Genbank受託番号NC_001434に記載されており、G型肝炎ウイルスの核酸配列は、例えば、Genbank受託番号NC_001710に記載さている。ウイルス感染および生存と関連する遺伝子をコードする配列のサイレンシングは、ウイルス性状態の治療に使用される従来の薬剤の投与と組み合わせて便宜的に用いることができる。肝炎ウイルスの核酸配列を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第2006/0281175号、同第2005/0058982号、および同第2007/0149470号、米国特許第7,348,314号、ならびに2010年3月19日に出願され、弁理士整理番号020801-008910PCを有する「Compositions and Methods for Silencing Hepatitis C Virus Expression」と題されるPCT出願第PCT/CA2010/000444号に記載されるものが挙げられ、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0174】
代謝性疾患および障害(例えば、肝臓が標的である障害、ならびに肝臓疾患および障害)と関連する遺伝子には、脂質異常症において発現する遺伝子、例えば、アポリポタンパク質B(APOB)(Genbank受託番号NM_000384)、アポリポタンパク質CIII(APOC3)(Genbank受託番号NM_000040およびNG_008949 REGION:5001..8164)、アポリポタンパク質E(APOE)(Genbank受託番号NM_000041およびNG_007084 REGION:5001..8612)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)(Genbank受託番号NM_174936)、ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ1型(DGAT1)(Genbank受託番号NM_012079)、ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ2型(DGAT2)(Genbank受託番号NM_032564)、LXRαおよびLXRβ等の肝臓X受容体(Genback受託番号NM_007121)、ファルネソイドX受容体(FXR)(Genbank受託番号NM_005123)、ステロール調節因子結合タンパク質(SREBP)、部位-1プロテアーゼ(S1P)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素-A還元酵素(HMG補酵素-A還元酵素)等、ならびに糖尿病において発現する遺伝子、例えば、グルコース6-ホスファターゼ等(例えば、Forman et al.,Cell,81:687(1995)、Seol et al.,Mol.Endocrinol.,9:72(1995)、Zavacki et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:7909(1997)、Sakai et al.,Cell,85:1037-1046(1996)、Duncan et al.,J.Biol.Chem.,272:12778-12785(1997)、Willy et al.,Genes Dev.,9:1033-1045(1995)、Lehmann et al.,J.Biol.Chem.,272:3137-3140(1997)、Janowski et al.,Nature,383:728-731(1996)、およびPeet et al.,Cell,93:693-704(1998)を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
当業者であれば、代謝性疾患および障害(例えば、肝臓が標的である疾患および障害、ならびに肝臓疾患および障害)と関連する遺伝子には、肝臓自体に発現する遺伝子、ならびに他の器官および組織に発現する遺伝子が含まれる。代謝性疾患および障害と関連する遺伝子をコードする配列のサイレンシングは、疾患または障害の治療に使用される従来の薬剤の投与と組み合わせて、便宜的に用いることができる。APOB遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第2006/0134189号、同第2006/0105976号、および同第2007/0135372号、ならびにPCT公開第WO 04/091515号に記載のものが挙げられ、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。APOC3遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、2010年1月26日に出願されたPCT出願第PCT/CA2010/000120号に記載のものが含まれ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。PCSK9遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第2007/0173473号、同第2008/0113930号、および同第2008/0306015号に記載のものが挙げられ、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。DGAT1遺伝子を標的とする例となるsiRNA分子は、米国特許出願公開第2004/0185559号に記載のアンチセンス化合物を使用して設計することができ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。DGAT2遺伝子を標的とする例となるsiRNA分子は、米国特許出願公開第2005/0043524号に記載のアンチセンス化合物を使用して設計することができ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0176】
腫瘍形成または細胞形質転換(例えば、癌または他の新生物形成)と関連する遺伝子には、例えば、p53ユビキチン化、c-Junユビキチン化、ヒストン脱アセチル化、細胞周期制御、およびこれらの組み合わせに関与する遺伝子が含まれる。腫瘍形成または細胞形質転換と関連する遺伝子配列の非限定的な例には、ポロ様キナーゼ1(PLK-1)(Genbank受託番号NM_005030、Barr et al.,Nat.Rev.Mol.Cell Biol.,5:429-440(2004))およびサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)(Genbank受託番号NM_000075)等のセリン/スレオニンキナーゼ;COP1(RFWD2、Genbank受託番号NM_022457およびNM_001001740)およびリングボックス1(RBX1)(ROC1、Genbank受託番号NM_014248)等のユビキチンリガーゼ;WEE1(Genbank受託番号NM_003390およびNM_001143976)等のチロシンキナーゼ;Eg5(KSP、KIF11、Genbank受託番号NM_004523)等の有糸分裂キネシン;フォークヘッドボックスM1(FOXM1)(Genbank受託番号NM_202002、NM_021953、およびNM_202003)およびRAM2(R1またはCDCA7L、Genbank受託番号NM_018719、NM_001127370、およびNM_001127371)等の転写因子;XIAP(Genbank受託番号NM_001167)等のアポトーシス阻害因子;CSN1、CSN2、CSN3、CSN4、CSN5(JAB1、Genbank受託番号NM_006837)等のCOP9シグナロソームサブユニット;CSN6、CSN7A、CSN7B、およびCSN8;ならびにHDAC1、HDAC2(Genbank受託番号NM_001527)、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、HDAC8、HDAC9等のヒストン脱アセチル化酵素等が挙げられる。
【0177】
PLK-1遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第2005/0107316号および同第2007/0265438号、ならびにPCT公開第WO 09/082817号に記載のものが挙げられ、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。Eg5およびXIAP遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第2009/0149403号に記載のものが挙げられ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。CSN5遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、PCT公開第WO 09/129319号に記載のものが挙げられ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。COP1、CSN5、RBX1、HDAC2、CDK4、WEE1、FOXM1、およびRAM2遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、2009年9月23日に出願された米国仮出願第61/245,143号に記載のものが挙げられ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0178】
腫瘍形成または細胞形質転換と関連する遺伝子配列のさらなる例には、MLL融合遺伝子、BCR-ABL(Wilda et al.,Oncogene,21:5716(2002)、Scherr et al.,Blood,101:1566(2003))、TEL-AML1、EWS-FLI1、TLS-FUS、PAX3-FKHR、BCL-2、AML1-ETO、およびAML1-MTG8(Heidenreich et al.,Blood,101:3157(2003))等の転座配列、多剤耐性遺伝子(Nieth et al.,FEBS Lett.,545:144(2003)、Wu et al,Cancer Res.63:1515(2003))、サイクリン(Li et al.,Cancer Res.,63:3593(2003)、Zou et al.,Genes Dev.,16:2923(2002))、β-カテニン(Verma et al.,Clin Cancer Res.,9:1291(2003))、テロメラーゼ遺伝子(Kosciolek et al.,Mol Cancer Ther.,2:209(2003))、c-MYC、N-MYC、BCL-2、成長因子受容体(例えば、EGFR/ErbB1(Genbank受託番号NM_005228、NM_201282、NM_201283、およびNM_201284;Nagy et al.Exp.Cell Res.,285:39-49(2003)もまた参照されたい)、ErbB2/HER-2(Genbank受託番号NM_004448およびNM_001005862)、ErbB3(Genbank受託番号NM_001982およびNM_001005915)、およびErbB4(Genbank受託番号NM_005235およびNM_001042599))等の過剰発現配列、ならびにRAS(Tuschl and Borkhardt,Mol.Interventions,2:158(2002))等の突然変異配列が挙げられる。EGFRを標的とするsiRNA分子の非限定的な例には、米国特許出願公開第2009/0149403号に記載のものが挙げられ、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。VEGFR遺伝子を標的とするsiRNA分子は、例えば、GB 2396864号、米国特許出願公開第2004/0142895号、およびCA 2456444号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0179】
DNA修復酵素をコードする配列のサイレンシングは、化学療法剤の投与と組み合わせた使用が見出される(Collis et al.,Cancer Res.,63:1550(2003)。腫瘍移動と関連するタンパク質をコードする遺伝子はまた、目的の標的配列、例えば、インテグリン、セレクチン、およびメタロプロテイナーゼである。前述の例は、限定的なものではない。当業者であれば、腫瘍形成もしくは細胞形質転換、腫瘍の成長、または腫瘍の移動を促進するかまたは推進する、いずれの全体的又は部分的遺伝子配列も、鋳型配列として含まれ得ることを理解するであろう。
【0180】
血管形成遺伝子は、新しい血管の形成を促進することができる。特に興味深い血管形成遺伝子には、血管内皮成長因子(VEGF)(Reich et al.,Mol.Vis.,9:210(2003))、胎盤成長因子(PGF)、VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(KDR/Flk-1)等が挙げられるが、これらに限定されない。VEGFR遺伝子を標的とするsiRNA分子は、例えば、GB 2396864号、米国特許出願公開第2004/0142895号、およびCA 2456444号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0181】
免疫調節遺伝子は、1つ以上の免疫応答を調節する遺伝子である。免疫調節遺伝子の例には、限定することなく、成長因子(例えば、TGF-α、TGF-β、EGF、FGF、IGF、NGF、PDGF、CGF、GM-CSF、SCF等)、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-4、IL-12(Hill et al.,J.Immunol.,171:691(2003))、IL-15、IL-18、IL-20等)、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γ等)、およびTNFが挙げられる。FasおよびFasリガンド遺伝子もまた、目的の免疫調節因子の標的配列である(Song et al.,Nat.Med.,9:347(2003))。造血およびリンパ系細胞において二次シグナル伝達分子をコードする遺伝子、例えば、Brutonのチロシンキナーゼ(Btk)(Heinonen et al.,FEBS Lett.,527:274(2002))といった、Tecファミリーキナーゼもまた、本発明に含まれる。
【0182】
細胞受容体リガンド遺伝子には、細胞表面受容体(例えば、サイトカイン受容体、成長因子受容体、チロシンキナーゼ活性を有する受容体、G-タンパク質結合受容体、インスリン受容体、EPO受容体等)に結合して、その受容体が関与する生理学的経路(例えば、細胞増殖、腫瘍形成、細胞形質転換、有糸分裂等)を調節(例えば、阻害)することができるリガンドが含まれる。細胞受容体リガンド遺伝子の非限定的な例には、サイトカイン(例えば、TNF-α、IFN-α、IFN-β、、およびIFN-γ等のインターフェロン、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27等のインターロイキン、ケモカイン等)、成長因子(例えば、EGF、HB-EGF、VEGF、PEDF、SDGF、bFGF、HGF、TGF-α、TGF-β、BMP1-BMP15、PDGF、IGF、NGF、β-NGF、BDNF、NT3、NT4、GDF-9、CGF、G-CSF、GM-CSF、GDF-8、EPO、TPO等)、インスリン、グルカゴン、Gタンパク質結合受容体リガンド等が挙げられる。
【0183】
トリヌクレオチド反復(例えば、CAG反復)の拡張をコードする鋳型は、球脊髄性筋萎縮症およびハンチントン病といった、トリヌクレオチド反復の拡張によって引き起こされる神経変性障害における病因配列のサイレンシングに使用を見出す(Caplen et al.,Hum.Mol.Genet.,11:175(2002))。
【0184】
治療目的で上述の遺伝子のいずれかをサイレンシングすることにおけるその有用性に加えて、本明細書に記載のsiRNAはまた、研究および開発用途、ならびに診断、予防、臨床、および他の医療用途にも有用である。非限定的な例として、siRNAは、目的の遺伝子が治療標的となる可能性を有するかどうかの試験を対象とする、標的検証研究に使用することができる。siRNAはまた、可能性のある治療標的としての遺伝子を発見することを目的とする、標的特定研究にも使用することができる。
【0185】
e) 例となるsiRNAの実施形態
いくつかの実施形態において、siRNA分子の各鎖は、約15~約60ヌクレオチドの長さ(例えば、約15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、もしくは19~25ヌクレオチドの長さ、または15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチドの長さ)を含む。1つの特定の実施形態において、siRNAは、化学合成される。本発明のsiRNA分子は、インビトロおよび/またはインビボで標的配列の発現をサイレンシングすることができる。
【0186】
他の実施形態において、siRNAは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、siRNAは、二本鎖領域に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約50%未満(例えば、約50%未満、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%)が、修飾ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、siRNAの二本鎖領域のヌクレオチドの約1%~約50%(例えば、約5%~50%、10%~50%、15%~50%、20%~50%、25%~50%、30%~50%、35%~50%、40%~50%、45%~50%、5%~45%、10%~45%、15%~45%、20%~45%、25%~45%、30%~45%、35%~45%、40%~45%、5%~40%、10%~40%、15%~40%、20%~40%、25%~40%、30%~40%、35%~40%、5%~35%、10%~35%、15%~35%、20%~35%、25%~35%、30%~35%、5%~30%、10%~30%、15%~30%、20%~30%、25%~30%、5%~25%、10%~25%、15%~25%、20%~25%、5%~20%、10%~20%、15%~20%、5%~15%、10%~15%、または5%~10%)が、修飾ヌクレオチドを含む。
【0187】
さらなる実施形態において、siRNAは、2’-O-メチル(2’OMe)ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’F)ヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド、およびこれらの混合物を含むがこれらに限定されない、修飾ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、siRNAは、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、2’OMe-アデノシンヌクレオチド、2’OMe-シトシンヌクレオチド、またはこれらの混合物等の2’OMeヌクレオチド(例えば、2’OMeプリンおよび/もしくはピリミジンヌクレオチド)を含む。1つの特定の実施形態において、siRNAは、少なくとも1つの2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、またはこれらの混合物を含む。ある特定の事例において、siRNAは、2’OMe-シトシンヌクレオチドを含まない。他の実施形態において、siRNAは、ヘアピンループ構造を含む。
【0188】
ある特定の実施形態において、siRNAは、siRNA分子の二本鎖領域の一方の鎖(例えば、センスもしくはアンチセンス)または両方の鎖に修飾ヌクレオチドを含む。好ましくは、ウリジンおよび/またはグアノシンヌクレオチドは、siRNA二重鎖の二本鎖領域の選択的な位置で修飾される。ウリジンヌクレオチドの修飾に関して、センス鎖および/またはアンチセンス鎖のウリジンヌクレオチドのうちの少なくとも1、2、3、4、5、6個、またはそれ以上が、2’OMe-ウリジンヌクレオチド等の修飾ウリジンヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の全てのウリジンヌクレオチドが、2’OMe-ウリジンヌクレオチドである。グアノシンヌクレオチドの修飾に関して、センス鎖および/またはアンチセンス鎖のグアノシンヌクレオチドのうちの少なくとも1、2、3、4、5、6個、またはそれ以上が、2’OMe-グアノシンヌクレオチド等の修飾グアノジンヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の全てのグアノシンヌクレオチドが、2’OMe-グアノシンヌクレオチドである。
【0189】
ある特定の実施形態において、siRNA配列内の少なくとも1、2、3、4、5、6、7個、またはそれ以上の5’-GU-3’モチーフが、例えば、5’-GU-3’モチーフを排除するためのミスマッチを導入することによって、および/または2’OMeヌクレオチド等の修飾ヌクレオチドを導入することによって、修飾され得る。5’-GU-3’モチーフは、siRNA配列のセンス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖に存在し得る。5’-GU-3’モチーフは、互いに隣接していてもよく、あるいは、それらは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヌクレオチド、またはそれ以上離れていてもよい。
【0190】
いくつかの実施形態において、修飾siRNA分子は、対応する非修飾siRNA配列よりも免疫賦活性が低い。このような実施形態において、低減された免疫賦活特性を有する修飾siRNA分子は、有利なことに、標的配列に対するRNAi活性を保持する。別の実施形態において、修飾siRNA分子の免疫賦活特性と標的遺伝子の発現をサイレンシングするその能力とは、例えば、siRNA二重鎖の二本鎖領域内等、siRNA配列内への最小限かつ選択的な2’OMe修飾の導入によって、両立または最適化することができる。ある特定の事例において、修飾siRNAは、免疫賦活性が、対応する非修飾siRNAよりも、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%低い。修飾siRNA分子および対応する非修飾siRNA分子の免疫賦活特性を、例えば、適切な脂質に基づく送達系(本明細書に開示されるLNP送達系等)を使用した哺乳動物での全身投与または哺乳動物応答細胞のトランスフェクションの約2~約12時間後に、INF-αおよび/またはIL-6レベルを測定することによって判定することができることが、当業者には容易に明らかであろう。
【0191】
他の実施形態において、修飾siRNA分子は、対応する非修飾siRNAのものの10倍以下のIC50(すなわち、半最大阻害濃度)を有する(すなわち、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNAのIC50の10倍以下であるIC50を有する)。他の実施形態において、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNA配列のものの3倍以下のIC50を有する。さらに他の実施形態において、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNAのものの2倍以下のIC50を有する。用量応答曲線を生成することができ、修飾siRNAおよび対応する非修飾siRNAのIC50値が、当業者に既知の方法を用いて容易に判定できることが、当業者には容易に明らかであろう。
【0192】
別の実施形態において、非修飾または修飾siRNA分子は、陰性対照(例えば、緩衝液のみ、異なる遺伝子を標的とするsiRNA配列、スクランブルsiRNA配列等)と比較して、標的配列の発現を少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%サイレンシングすることができる。
【0193】
さらに別の実施形態において、修飾siRNA分子は、対応する非修飾siRNA配列と比較して、標的配列の発現を、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%サイレンシングすることができる。
【0194】
いくつかの実施形態において、siRNA分子は、例えば、二本鎖領域のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖に、リン酸骨格修飾を含まない。他の実施形態において、siRNAは、例えば、二本鎖領域のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖に、1、2、3、4個、またはそれ以上のリン酸骨格修飾を含む。好ましい実施形態において、siRNAは、リン酸骨格修飾を含まない。
【0195】
さらなる実施形態において、siRNAは、例えば、二本鎖領域のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖に、2’-デオキシヌクレオチドを含まない。なおもさらなる実施形態において、siRNAは、例えば、二本鎖領域のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖に、1、2、3、4個、またはそれ以上の2’-デオキシヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、siRNAは、2’-デオキシヌクレオチドを含まない。
【0196】
ある特定の事例において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の二本鎖領域の3’末端のヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドではない。ある特定の他の事例において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の二本鎖領域の3’末端付近のヌクレオチド(例えば、3’末端から1、2、3、または4個以内のヌクレオチド)は、修飾ヌクレオチドではない。
【0197】
本明細書に記載のsiRNA分子は、二本鎖領域の片側もしくは両側に1、2、3、4個、もしくはそれ以上のヌクレオチドの3’オーバーハングを有し得るか、二本鎖領域の片側もしくは両側に、オーバーハングを欠いてもよい(すなわち、平滑末端を有する)。ある特定の実施形態において、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の3’オーバーハングは、独立して、1、2、3、4個、またはそれ以上の、2’OMeヌクレオチドおよび/または本明細書に記載されるかもしくは当該技術分野で既知の任意の他の修飾ヌクレオチドといった修飾ヌクレオチドを含む。
【0198】
特定の実施形態において、siRNAは、核酸-脂質粒子等の担体系を用いて投与される。好ましい実施形態において、核酸-脂質粒子は、(a)1つ以上のsiRNA分子、(b)式Iのカチオン性脂質またはその塩、ならびに(c)非カチオン性脂質(例えば、DPPC、DSPC、DSPE、および/もしくはコレステロール)を含む。ある特定の事例において、核酸-脂質粒子は、粒子の凝集を阻止する複合脂質(例えば、PEG-DAAおよび/またはPOZ-DAA)をさらに含み得る。
【0199】
2. Dicer基質dsRNA
本明細書に使用される際、「Dicer基質dsRNA」または「前駆体RNAi分子」という用語は、インビボでDicerによってプロセシングされて、標的遺伝子のRNA干渉のためにRISC複合体に組み込まれる活性なsiRNAをもたらす、任意の前駆体分子を含むことを意図する。
【0200】
一実施形態において、Dicer基質dsRNAは、DicerによってプロセシングされてsiRNAをもたらすように、十分な長さを有する。この実施形態によると、Dicer基質dsRNAは、(i)約25~約60ヌクレオチドの長さ(例えば、約25~60、25~55、25~50、25~45、25~40、25~35、または25~30ヌクレオチドの長さ)、好ましくは約25~約30ヌクレオチドの長さ(例えば、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドの長さ)である、第1のオリゴヌクレオチド配列(センス鎖とも称される)、および(ii)細胞の細胞質にみられる条件等、生物学的条件下において、第1の配列とアニーリングする第2のオリゴヌクレオチド配列(アンチセンス鎖とも称される)を含む。第2のオリゴヌクレオチド配列は、約25~約60ヌクレオチドの長さ(例えば、約25~60、25~55、25~50、25~45、25~40、25~35、または25~30ヌクレオチドの長さ)であり、好ましくは、約25~約30ヌクレオチドの長さ(例えば、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチドの長さ)である。さらに、Dicer基質dsRNAの配列のうちの一方のある領域、特にアンチセンス鎖のものは、標的遺伝子から生成されるRNAのヌクレオチド配列に対して、RNAi応答を引き起こすのに十分に相補的である、少なくとも約19ヌクレオチド、例えば、約19~約60ヌクレオチド(例えば、約19~60、19~55、19~50、19~45、19~40、19~35、19~30、または19~25ヌクレオチド)、好ましくは約19~約23ヌクレオチド(例えば、19、20、21、22、または23ヌクレオチド)の配列長を有する。
【0201】
第2の実施形態において、Dicer基質dsRNAは、Dicerによるそのプロセシングを強化する複数の特性を有する。この実施形態によると、dsRNAは、DicerによってプロセシングされてsiRNAをもたらすように、十分な長さを有し、次の特性のうち少なくとも1つを有する:(i)dsRNAは、非対称であり、例えば、アンチセンス鎖に3’オーバーハングを有する、および/または(ii)dsRNAは、Dicerが結合し、dsRNAを活性なsiRNAにプロセシングする方向を指示するために、センス鎖に修飾3’末端を有する。この後者の実施形態によると、センス鎖は、約22~約28個のヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は、約24~約30個のヌクレオチドを含む。
【0202】
一実施形態において、Dicer基質dsRNAは、アンチセンス鎖の3’末端にオーバーハングを有する。別の実施形態において、センス鎖は、センス鎖の3’末端に位置付けられる好適な修飾因子によって、Dicerの結合およびプロセシングのために修飾される。好適な修飾因子には、デオキシリボヌクレオチド、非環式ヌクレオチド等のヌクレオチド、ならびに蛍光分子等の立体的障害型分子が含まれる。ヌクレオチド修飾因子を使用する場合、それらは、dsRNAのリボヌクレオチドを、dsRNAの長さが変化しないように、置き換える。別の実施形態において、Dicer基質dsRNAは、アンチセンス鎖の3’末端にオーバーハングを有し、センス鎖は、Dicerによるプロセシングのために修飾される。別の実施形態において、センス鎖の5’末端は、リン酸を有する。別の実施形態において、アンチセンス鎖の5’末端はリン酸を有する。別の実施形態において、アンチセンス鎖もしくはセンス鎖、または両方の鎖が、1つ以上の2’-O-メチル(2’OMe)修飾ヌクレオチドを有する。別の実施形態において、アンチセンス鎖は、2’OMe修飾ヌクレオチドを含有する。別の実施形態において、アンチセンス鎖は、2’OMe修飾ヌクレオチドを含む3’オーバーハングを含有する。アンチセンス鎖はまた、追加の2’OMe修飾ヌクレオチドを含んでもよい。センス鎖とアンチセンス鎖は、細胞の細胞質にみられる条件等、生物学的条件下でアニーリングする。さらに、Dicer基質dsRNAの配列のうちの一方のある領域、特にアンチセンス鎖のものは、少なくとも約19ヌクレオチドの配列長を有し、ここで、これらのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に隣接する21ヌクレオチドの領域に含まれ、標的遺伝子から生成されるRNAのヌクレオチド配列に十分に相補的である。さらに、この実施形態によると、Dicer基質dsRNAはまた、次の追加の特性のうち1つ以上を有し得る:(a)アンチセンス鎖は、典型的な21量体からの右方偏移を有する(すなわち、アンチセンス鎖は、典型的な21量体と比較して、分子の右側にヌクレオチドを含む)、(b)鎖は、完全に相補的でなくてもよい、すなわち、鎖は、単純なミスマッチ対合を含有し得る、および(c)ロックド核酸(複数可)等の塩基修飾が、センス鎖の5’末端に含まれ得る。
【0203】
第3の実施形態において、センス鎖は、約25~約28個のヌクレオチド(例えば、25、26、27、または28個のヌクレオチド)を含み、ここで、センス鎖の3’末端上の2つのヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドである。センス鎖は、5’末端にリン酸を含有する。アンチセンス鎖は、約26~約30個のヌクレオチド(例えば、26、27、28、29、または30個のヌクレオチド)を含み、1~4個のヌクレオチドの3’オーバーハングを含有する。3’オーバーハングを含むヌクレオチドは、2’OMe修飾リボヌクレオチドで修飾される。アンチセンス鎖は、3’オーバーハングに隣接するアンチセンス鎖の第1のモノマーで開始する交互の2’OMe修飾ヌクレオチド、および3’オーバーハングに隣接する第1のモノマーから伸長する15~19個のヌクレオチドを含有する。例えば、27ヌクレオチドのアンチセンス鎖で、アンチセンス鎖の5’末端の最初の塩基を1位と数えると、2’OMe修飾は、塩基9、11、13、15、17、19、21、23、25、26、および27に配置される。一実施形態において、Dicer基質dsRNAは、次の構造を有し、
5’-pXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXDD-3’
3’-YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXp-5’
式中、「X」=RNAであり、「p」=リン酸基であり、「X」=2’OMe RNAであり、「Y」は、場合によっては2’OMe RNAモノマーである1、2、3、または4個のRNAモノマーから構成されるオーバーハングドメインであり、「D」=DNAである。上の鎖はセンス鎖であり、下の鎖はアンチセンス鎖である。
【0204】
第4の実施形態において、Dicer基質dsRNAは、Dicerによるそのプロセシングを強化する複数の特性を有する。この実施形態によると、dsRNAは、DicerによってプロセシングされてsiRNAをもたらすように、十分な長さを有し、次の特性のうち少なくとも1つを有する:(i)dsRNAは、非対称であり、例えば、センス鎖に3’オーバーハングを有する、および(ii)dsRNAは、Dicerが結合し、dsRNAを活性なsiRNAにプロセシングする方向を指示するために、アンチセンス鎖に修飾3’末端を有する。この実施形態によると、センス鎖は、約24~約30個のヌクレオチド(例えば、24、25、26、27、28、29、または30個のヌクレオチド)を含み、アンチセンス鎖は、約22~約28個のヌクレオチド(例えば、22、23、24、25、26、27、または28個のヌクレオチド)を含む。一実施形態において、Dicer基質dsRNAは、センス鎖の3’末端にオーバーハングを有する。別の実施形態において、アンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の3’末端に位置付けられる好適な修飾因子によって、Dicerの結合およびプロセシングのために修飾される。好適な修飾因子には、デオキシリボヌクレオチド、非環式ヌクレオチド等のヌクレオチド、ならびに蛍光分子等の立体的障害型分子が含まれる。ヌクレオチド修飾因子を使用する場合、それらは、dsRNAのリボヌクレオチドを、dsRNAの長さが変化しないように、置き換える。別の実施形態において、Dicer基質dsRNAは、センス鎖の3’末端にオーバーハングを有し、アンチセンス鎖は、Dicerによるプロセシングのために修飾される。一実施形態において、アンチセンス鎖は、5’リン酸を有する。センス鎖とアンチセンス鎖は、細胞の細胞質にみられる条件等、生物学的条件下でアニーリングする。さらに、dsRNAの配列のうちの一方のある領域、特にアンチセンス鎖のものは、少なくとも19ヌクレオチドの配列長を有し、ここで、これらのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に隣接し、標的遺伝子から生成されるRNAのヌクレオチド配列に十分に相補的である。さらに、この実施形態によると、Dicer基質dsRNAはまた、次の追加の特性のうち1つ以上を有し得る:(a)アンチセンス鎖は、典型的な21量体からの左方偏移を有する(すなわち、アンチセンス鎖は、典型的な21量体と比較して、分子の左側にヌクレオチドを含む)、および(b)鎖は、完全に相補的でなくてもよい、すなわち、鎖は単純なミスマッチ対合を含有し得る。
【0205】
好ましい実施形態において、Dicer基質dsRNAは、センス鎖が25塩基対の長さを有し、アンチセンス鎖が、2塩基の3’オーバーハングを伴う27塩基対の長さを有する、非対称構造を有する。ある特定の事例において、この非対称構造を有するdsRNAは、さらに、センス鎖の3’末端に、リボヌクレオチドのうちの2つの代わりに2つのデオキシヌクレオチドを含有する。ある特定の他の事例において、この非対称構造を有するdsRNAは、さらに、アンチセンス鎖の9、11、13、15、17、19、21、23、および25位(アンチセンス鎖の5’末端の最初の塩基を1位として)に、2’OMe修飾を含有する。ある特定のさらなる事例において、この非対称構造を有するdsRNAは、さらに、1、2、3、または4個の2’OMeヌクレオチドを含むアンチセンス鎖に、3’オーバーハング(例えば、アンチセンス鎖の26および27位に、2’OMeヌクレオチドの3’オーバーハング)を含有する。
【0206】
別の実施形態において、Dicer基質dsRNAは、まず、少なくとも19ヌクレオチドの長さを有するアンチセンス鎖のsiRNA配列を選択することによって、設計することができる。いくつかの事例において、アンチセンスsiRNAは、約24~約30ヌクレオチドの長さをもたらすために、5’末端に約5~約11個のリボヌクレオチドを含むように修飾される。アンチセンス鎖が、21ヌクレオチドの長さを有する場合、3~9個、好ましくは4~7個、またはより好ましくは6個のヌクレオチドが、5’末端に付加され得る。付加されたリボヌクレオチドは、標的遺伝子配列に相補的であり得るが、標的配列とアンチセンsiRNAとの間に完全な相補性は必要ない。すなわち、結果として得られるアンチセンスsiRNAは、標的配列に十分に相補的である。約22~約28個のヌクレオチドを有するセンス鎖が、次いで、生成される。センス鎖は、生物学的条件下でアンチセンス鎖とアニーリングするために、アンチセンス鎖と実質的に相補的である。一実施形態において、センス鎖は、Dicerによるアンチセンス鎖のプロセシングを指示するために、修飾3’末端を含有するように合成される。別の実施形態において、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’オーバーハングを有する。さらなる実施形態において、センス鎖は、Dicerによる結合およびプロセシングのために、修飾3’末端を含有するように合成され、dsRNAのアンチセンス鎖は、3’オーバーハングを有する。
【0207】
関連する実施形態において、アンチセンスsiRNAは、約22~約28ヌクレオチドの長さを提供するために、5’末端に約1~約9個のリボヌクレオチドを含むように修飾される。アンチセンス鎖は、21ヌクレオチドの長さを有する場合、1~7個、好ましくは2~5個、またはより好ましくは4個のリボヌクレオチドが、3’末端に付加され得る。付加されたリボヌクレオチドは、任意の配列を有し得る。付加されたリボヌクレオチドは、標的遺伝子配列に相補的であり得るが、標的配列とアンチセンスsiRNAとの間に完全な相補性は必要ない。すなわち、結果として得られるアンチセンスsiRNAは、標的配列に十分に相補的である。約24~約30個のヌクレオチドを有するセンス鎖が、次いで、生成される。センス鎖は、生物学的条件下でアンチセンス鎖とアニーリングするために、アンチセンス鎖と実質的に相補的である。一実施形態において、アンチセンス鎖は、Dicerによるプロセシングを指示するために、修飾3’末端を含有するように合成される。別の実施形態において、dsRNAのセンス鎖は、3’オーバーハングを有する。さらなる実施形態において、アンチセンス鎖は、Dicerによる結合およびプロセシングのために、修飾3’末端を含有するように合成され、dsRNAのセンス鎖は、3’オーバーハングを有する。
【0208】
好適なDicer基質dsRNA配列は、siRNA配列の設計、合成、および修飾のための、当該技術分野で既知の任意の手段を用いて、特定、合成、および修飾することができる。特定の実施形態において、Dicer基質dsRNAは、核酸-脂質粒子等の担体系を使用して投与される。好ましい実施形態において、核酸-脂質粒子は、(a)1つ以上のDicer基質dsRNA分子、(b)式Iのカチオン性脂質またはその塩、ならびに(c)非カチオン性脂質(例えば、DPPC、DSPC、DSPE、および/もしくはコレステロール)を含む。ある特定の事例において、核酸-脂質粒子は、粒子の凝集を阻止する複合脂質(例えば、PEG-DAAおよび/またはPOZ-DAA)をさらに含み得る。
【0209】
本発明のDicer基質dsRNAに関連する追加の実施形態、ならびにこのようなdsRNAの設計および合成の方法は、米国特許出願公開第2005/0244858号、同第2005/0277610号、および同第2007/0265220号、ならびに2009年6月5日に出願された米国仮出願第61/184,652号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0210】
3. shRNA
「低分子ヘアピンRNA」または「短いヘアピンRNA」または「shRNA」には、RNA干渉を介して遺伝子の発現をサイレンシングするために使用可能である、急なヘアピンカーブを生じる短いRNA配列が含まれる。本発明のshRNAは、化学合成され得るか、またはDNAプラスミドにおいて転写カセットから転写され得る。shRNAのヘアピン構造は、細胞機構によってsiRNAに切断され、これが、次いで、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に結合する。
【0211】
本発明のshRNAは、典型的に、約15~60、15~50、または15~40(二重鎖)ヌクレオチドの長さであり、より典型的には約15~30、15~25、または19~25(二重鎖)ヌクレオチドの長さであり、好ましくは約20~24、21~22、または21~23(二重鎖)ヌクレオチドの長さである(例えば、二本鎖shRNAの各相補配列が、15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、もしくは19~25ヌクレオチドの長さ、好ましくは約20~24、21~22、もしくは21~23ヌクレオチドの長さであり、二本鎖shRNAが、約15~60、15~50、15~40、15~30、15~25、もしくは19~25塩基対の長さ、好ましくは約18~22、19~20、もしくは19~21塩基対の長さである)。shRNA二重鎖は、アンチセンス鎖に約1~約4ヌクレオチドもしくは約2~約3ヌクレオチドの3’オーバーハング、および/またはセンス鎖に5’-リン酸末端を含み得る。いくつかの実施形態において、shRNAは、約15~約60ヌクレオチドの長さ(例えば、約15~60、15~55、15~50、15~45、15~40、15~35、15~30、または15~25ヌクレオチドの長さ)、好ましくは約19~約40ヌクレオチドの長さ(例えば、約19~40、19~35、19~30、または19~25ヌクレオチドの長さ)、より好ましくは約19~約23ヌクレオチドの長さ(例えば、19、20、21、22、または23ヌクレオチドの長さ)のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖配列を含む。
【0212】
shRNAの非限定的な例には、センスおよびアンチセンス領域が核酸系または非核酸系リンカーによって結合され、一本鎖分子から構築される二本鎖ポリヌクレオチド分子、ならびに自己相補的センスおよびアンチセンス領域を有するヘアピン二次構造を有する二本鎖ポリヌクレオチド分子が挙げられる。好ましい実施形態において、shRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖は、約1~約25個のヌクレオチド、約2~約20個のヌクレオチド、約4~約15個のヌクレオチド、約5~約12個のヌクレオチド、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25個、もしくはそれ以上のヌクレオチドを含む、ループ構造によって結合される。
【0213】
好適なshRNA配列は、siRNA配列を設計、合成、および修飾するための、当該技術分野で既知の任意の手段を用いて、特定、合成、および修飾することができる。特定の実施形態において、shRNAは、核酸-脂質粒子等の担体系を使用して投与される。好ましい実施形態において、核酸-脂質粒子は、(a)1つ以上のshRNA分子、(b)式Iのカチオン性脂質またはその塩、ならびに(c)非カチオン性脂質(例えば、DPPC、DSPC、DSPE、および/もしくはコレステロール)を含む。ある特定の事例において、核酸-脂質粒子は、粒子の凝集を阻止する複合脂質(例えば、PEG-DAAおよび/またはPOZ-DAA)をさらに含み得る。
【0214】
本発明のshRNA、ならびにこのようなshRNAを設計および合成する方法に関連するさらなる実施形態は、2009年6月5日に出願された米国仮出願第61/184,652号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0215】
4. aiRNA
siRNAと同様に、非対称干渉RNA(aiRNA)は、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)を動員し、アンチセンス鎖の5’末端に対するヌクレオチド10と11との間で標的配列の配列特異的切断を媒介することによって、哺乳動物細胞における種々の遺伝子の効果的なサイレンシングをもたらすことができる(Sun et al.,Nat.Biotech.,26:1379-1382(2008))。典型的に、aiRNA分子は、センス鎖およびアンチセンス鎖を有する短いRNA二重鎖を含み、この二重鎖は、アンチセンス鎖の3’および5’末端にオーバーハングを含有する。aiRNAは、一般に、センス鎖が、相補的アンチセンス鎖と比較して、両方の末端で短いため、非対称である。いくつかの態様において、aiRNA分子は、siRNA分子に使用されるものと類似の条件下で、設計、合成、およびアニーリングすることができる。非限定的な例として、aiRNA配列は、siRNA配列を選択するための上述の方法を使用して選択および生成することができる。
【0216】
別の実施形態において、種々の長さ(例えば、約10~25、12~20、12~19、12~18、13~17、または14~17塩基対、より典型的には12、13、14、15、16、17、18、19、または20塩基対)のaiRNA二重鎖は、目的のmRNAを標的とするアンチセンス鎖の3’および5’末端にオーバーハングを有して設計され得る。ある特定の事例において、aiRNA分子のセンス鎖は、約10~25、12~20、12~19、12~18、13~17、または14~17ヌクレオチドの長さであり、より典型的には12、13、14、15、16、17、18、19、または20ヌクレオチドの長さである。ある特定の他の事例において、aiRNA分子のアンチセンス鎖は、約15~60、15~50、または15~40ヌクレオチドの長さであり、より典型的には約15~30、15~25、または19~25ヌクレオチドの長さであり、好ましくは約20~24、21~22、または21~23ヌクレオチドの長さである。
【0217】
いくつかの実施形態において、5’アンチセンスオーバーハングは、1、2、3、4個、またはそれ以上の非標的化ヌクレオチド(例えば、「AA」、「UU」、「dTdT」等)を含有する。他の実施形態において、3’アンチセンスオーバーハングは、1、2、3、4個、またはそれ以上の非標的化ヌクレオチド(例えば、「AA」、「UU」、「dTdT」等)を含有する。ある特定の態様において、本明細書に記載のaiRNA分子は、例えば、二本鎖(二重鎖)領域および/またはアンチセンスオーバーハングに、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。非限定的な例として、aiRNA配列は、siRNA配列に関して上述された修飾ヌクレオチドのうちの1つ以上を含み得る。好ましい実施形態において、aiRNA分子は、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、またはこれらの混合物といった、2’OMeヌクレオチドを含む。
【0218】
ある特定の実施形態において、aiRNA分子は、siRNA分子、例えば、本明細書に記載のsiRNA分子のうちの1つのアンチセンス鎖に対応する、アンチセンス鎖を含み得る。特定の実施形態において、aiRNAは、核酸-脂質粒子等の担体系を使用して投与される。好ましい実施形態において、核酸-脂質粒子は、(a)1つ以上のaiRNA分子、(b)式Iのカチオン性脂質またはその塩、ならびに(c)非カチオン性脂質(例えば、DPPC、DSPC、DSPE、および/もしくはコレステロール)を含む。ある特定の事例において、核酸-脂質粒子は、粒子の凝集を阻止する複合脂質(例えば、PEG-DAAおよび/またはPOZ-DAA)をさらに含み得る。
【0219】
好適なaiRNA配列は、siRNA配列の設計、合成、および修飾のための当該技術分野で既知の任意の手段を用いて、特定、合成、および修飾することができる。本発明のaiRNA分子に関連するさらなる実施形態は、米国特許出願公開第2009/0291131号およびPCT公開第WO 09/127060号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0220】
5. miRNA
一般に、マイクロRNA(miRNA)は、約21~23ヌクレオチドの長さの一本鎖RNA分子であり、遺伝子発現を制御する。miRNAは、遺伝子によってコードされ、その遺伝子のDNAからmiRNAが転写されるが、miRNAはタンパク質に翻訳されず(非コードRNA)、代わりに、各一次転写産物(pri-miRNA)が、pre-miRNAと称される短いステムのループ構造にプロセシングされ、最終的に機能的な成熟miRNAとなる。成熟miRNA分子は、1つ以上のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に部分的または完全にのいずれかで相補的であり、それらの主要な機能は、遺伝子の発現を下方制御することである。miRNA分子の特定は、例えば、Lagos-Quintana et al.,Science,294:853-858、Lau et al.,Science,294:858-862、およびLee et al.,Science,294:862-864に記載されている。
【0221】
miRNAをコードする遺伝子は、プロセシングされた成熟miRNA分子よりもかなり長い。miRNAは、まず、キャップおよびポリA末端を有する一次転写産物またはpri-miRNAとして転写され、細胞核において、pre-miRNAとして知られる約70ヌクレオチドの短いステムループ構造にプロセシングされる。このプロセシングは、動物においては、ヌクレアーゼDroshaおよび二本鎖RNA結合タンパク質Pashaからなるマイクロプロセッサー複合体として知られるタンパク質によって、行われる(Denli et al.,Nature,432:231-235(2004))。これらのpre-miRNAは、次いで、エンドヌクレアーゼDicerとの相互作用によって、細胞質内で成熟miRNAにプロセシングされ、それはまたRNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)の形成を開始する(Bernstein et al.,Nature,409:363-366(2001)。DNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかが、miRNAを生じさせるための鋳型として機能し得る。
【0222】
Dicerがpre-miRNAステムループを切断すると、2つの相補的な短いRNA分子が形成されるが、その1つだけが、RISC複合体に統合される。この鎖は、ガイド鎖として知られており、5’末端の安定性に基づいて、RISC複合体における触媒活性RNaseであるアルゴノートタンパク質によって選択される(Preall et al.,Curr.Biol.,16:530-535(2006))。アンチガイドまたはパッセンジャー鎖として知られる残りの鎖は、RISC複合体基質として分解される(Gregory et al.,Cell,123:631-640(2005))。活性なRISC複合体に統合された後、miRNAは、それらの相補的mRNA分子と塩基対合し、標的mRNAの分解および/または翻訳のサイレンシングを誘発する。
【0223】
哺乳動物のmiRNA分子は、通常、標的mRNA配列の3’UTR内の部位に相補的である。ある特定の事例において、miRNAの標的mRNAへのアニーリングは、タンパク質の翻訳機序を遮断することによってタンパク質の翻訳を阻害する。ある特定の他の事例において、miRNAの標的mRNAへのアニーリングは、RNA干渉(RNAi)に類似のプロセスを通じて、標的mRNAの切断および分解を促進する。miRNAはまた、標的とされるmRNAに対応するゲノム部分のメチル化を標的とし得る。一般に、miRNAは、まとめてmiRNPと称されるタンパク質の補体と関連して機能する。
【0224】
ある特定の態様において、本明細書に記載のmiRNA分子は、約15~100、15~90、15~80、15~75、15~70、15~60、15~50、または15~40ヌクレオチドの長さであり、より典型的には約15~30、15~25、または19~25ヌクレオチドの長さであり、好ましくは約20~24、21~22、または21~23ヌクレオチドの長さである。ある特定の他の態様において、miRNA分子は、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。非限定的な例として、miRNA配列は、siRNA配列に関して上述された修飾ヌクレオチドのうちの1つ以上を含み得る。好ましい実施形態において、miRNA分子は、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、またはこれらの混合物といった、2’OMeヌクレオチドを含む。
【0225】
特定の実施形態において、miRNAは、核酸-脂質粒子等の担体系を使用して投与される。好ましい実施形態において、核酸-脂質粒子は、(a)1つ以上のmiRNA分子、(b)式Iのカチオン性脂質またはその塩、ならびに(c)非カチオン性脂質(例えば、DPPC、DSPC、DSPE、および/もしくはコレステロール)を含む。ある特定の事例において、核酸-脂質粒子は、粒子の凝集を阻止する複合脂質(例えば、PEG-DAAおよび/またはPOZ-DAA)をさらに含み得る。
【0226】
他の実施形態において、目的のmRNAを標的とするmiRNAの活性を遮断する1つ以上の薬剤を、本発明の脂質粒子(例えば、LNP等の核酸-脂質粒子)を使用して投与する。遮断剤の例には、立体遮断オリゴヌクレオチド、ロックド核酸オリゴヌクレオチド、およびモルホリノオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。このような遮断剤は、miRNAに直接、または標的mRNAのmiRNA結合部位に結合し得る。
【0227】
本発明のmiRNA分子に関連するさらなる実施形態は、米国特許出願公開第2009/0291131号およびPCT公開第WO 09/127060号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0228】
6. アンチセンスオリゴヌクレオチド
一実施形態において、核酸は、目的の標的遺伝子または配列を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または「アンチセンス」という用語には、標的とされるポリヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドが含まれる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、選択された配列に相補的な一本鎖のDNAまたはRNAである。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、相補的RNA鎖の翻訳を、そのRNAに結合することによって阻止する。アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドを使用して、特定の相補的(コードまたは非コード)RNAを標的とすることができる。結合が生じると、このDNA/RNAハイブリッドは、酵素RNase Hによって分解され得る。特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10~約60個のヌクレオチド、より好ましくは約15~約30個のヌクレオチドを含む。この用語はまた、所望の標的遺伝子に厳密に相補的でない可能性のあるアンチセンスオリゴヌクレオチドを包含する。したがって、本発明は、非標的特異的活性がアンチセンスにみられる場合、または標的配列との1つ以上のミスマッチを含有するアンチセンス配列が特定の使用に最も好ましい場合に、利用可能である。
【0229】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、タンパク質合成の有効かつ標的化された阻害因子であることが示されており、結果として、標的とされる遺伝子のタンパク質合成を特異的に阻害するために使用することができる。タンパク質合成を阻害するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性は、十分に確立されている。例えば、ポリガラクタウロナーゼ(polygalactauronase)およびムスカリン2型アセチルコリン受容体の合成は、それらのそれぞれのmRNA配列を対象とするアンチセンスオリゴヌクレオチドによって阻害される(米国特許第5,739,119号および同第5,759,829号を参照されたい)。さらに、アンチセンス阻害の例は、核タンパク質サイクリン、多剤耐性遺伝子(MDR1)、ICAM-1、E-セレクチン、STK-1、線条体GABAA受容体、およびヒトEGFにより示されている(Jaskulski et al.,Science,240:1544-6(1988)、Vasanthakumar et al.,Cancer Commun.,1:225-32(1989)、Peris et al.,Brain Res Mol Brain Res.,15;57:310-20(1998)、ならびに米国特許第5,801,154号、同第5,789,573号、同第5,718,709号、および同第5,610,288号を参照されたい)。さらに、種々の異常細胞増殖、例えば、癌を阻害し、それを治療するために使用することができるアンチセンス構築物もまた説明されている(米国特許第5,747,470号、同第5,591,317号、および同第5,783,683号を参照されたい)。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0230】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを生成する方法は当該技術分野で既知であり、任意のポリヌクレオチド配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを生成するように容易に適合することができる。所与の標的配列に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列の選択は、選択された標的配列の分析、ならびに二次構造、Tm、結合エネルギー、および相対的安定性の判定に基づく。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、宿主細胞内で標的mRNAへの特異的結合を低減または制止する、それらのダイマー、ヘアピン、または他の構造の形成の相対的不能性に基づいて選択され得る。mRNAの高度に好ましい標的領域には、AUG翻訳開始コドンにあるか、またはその付近の領域、およびmRNAの5’領域に実質的に相補的な配列が含まれる。これらの二次構造分析および標的部位選択の考察は、例えば、OLIGOプライマー分析ソフトウェアのv.4(Molecular Biology Insights)および/またはBLASTN 2.0.5アルゴリズムソフトウェア(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389-402(1997))を用いて行うことができる。
【0231】
7. リボザイム
本発明の実施形態によると、核酸-脂質粒子は、リボザイムと関連する。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特定の触媒ドメインを有するRNA-タンパク質複合体である(Kim et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,84:8788-92(1987)およびForster et al.,Cell,49:211-20(1987)を参照されたい)。例えば、多数のリボザイムは、リン酸エステル転移反応を、高度な特異性で加速させ、オリゴヌクレオチド基質において複数のリン酸エステルのうちの1つだけを切断することが多い(Cech et al.,Cell,27:487-96(1981)、Michel et al.,J.Mol.Biol.,216:585-610(1990)、Reinhold-Hurek et al.,Nature,357:173-6(1992)を参照されたい)。この特異性は、基質が、化学反応の前にリボザイムの内部ガイド配列(「IGS」)に特異的な塩基対相互作用を介して結合するという要件に起因している。
【0232】
少なくとも6つの基本的な種類の天然の酵素RNA分子が、現在知られている。それぞれ、生理的条件下において、トランスでRNAリン酸ジエステル結合の加水分解を触媒し得る(したがって、他のRNA分子を切断し得る)。一般に、酵素核酸は、まず標的RNAに結合することによって作用する。このような結合は、標的RNAを切断するように作用する分子の酵素的部分に近接して保持される、酵素核酸の標的結合部分を通じて生じる。したがって、酵素核酸は、相補的塩基対を通じて標的RNAをまず認識し、次いでそれに結合し、正しい部位に結合した後、標的RNAを酵素的に切断するように作用する。このような標的RNAの戦略的切断は、コードされたタンパク質の合成を指示するその能力を破壊する。酵素核酸が、そのRNA標的に結合してそれを切断した後、それは、別の標的を探すためにそのRNAをから放出され、新しい標的に繰り返し結合し、その切断を行うことができる。
【0233】
酵素核酸分子は、例えば、ハンマーヘッド、ヘアピン、肝炎δウイルス、I群イントロンもしくはRNaseP RNA(RNAガイド配列と関連して)、またはニューロスポラVS RNAモチーフの形態であり得る。ハンマーヘッドモチーフの具体的な例は、例えば、Rossi et al.,Nucleic Acids Res.,20:4559-65(1992)に記載されている。ヘアピンモチーフの例は、例えば、EP 0360257号、Hampel et al.,Biochemistry,28:4929-33(1989)、Hampel et al.,Nucleic Acids Res.,18:299-304(1990)、および米国特許第5,631,359号に記載されている。肝炎δウイルスモチーフの例は、例えば、Perrotta et al.,Biochemistry,31:11843-52(1992)に記載されている。RNasePモチーフの例は、例えば、Guerrier-Takada et al.,Cell,35:849-57(1983)に記載されている。ニューロスポラVS RNAリボザイムモチーフは、例えば、Saville et al.,Cell,61:685-96(1990)、Saville et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8826-30(1991)、Collins et al.,Biochemistry,32:2795-9(1993)に記載されている。I群イントロンの例は、例えば、米国特許第4,987,071号に記載されている。本発明に従って使用される酵素核酸分子の重要な特徴は、それらが、標的遺伝子のDNAまたはRNA領域のうちの1つ以上に相補的な特異的基質結合部位を有すること、およびそれらが、RNA切断活性を分子に与える、その基質結合部位内またはその周囲のヌクレオチド配列を有することである。したがって、リボザイム構築物は、必ずしも本明細書で言及される特定のモチーフに限定されない。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0234】
任意のポリヌクレオチド配列を標的とするリボザイムを生成する方法は、当該技術分野で既知である。リボザイムは、例えば、PCT公開第WO 93/23569号および同第WO 94/02595号に記載のように設計し、それらに記載されるようにインビトロおよび/またはインビボで試験するために合成することができる。これらのPCT公開の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0235】
リボザイム活性は、リボザイム結合アームの長さを変化させること、または血清リボヌクレアーゼによるそれらの分解を阻止する修飾(例えば、PCT公開第WO 92/07065号、同第WO 93/15187号、同第WO 91/03162号、および同第WO 94/13688号、EP 92110298.4号、ならびに米国特許第5,334,711号を参照されたく、これらは、酵素RNA分子の糖部分に行うことができる種々の化学修飾について記載しており、これらの開示は、それぞれ、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、細胞内でのそれらの有効性を強化する修飾、ならびにRNA合成時間の短縮および化学的要件の低減ためのステムII塩基の除去を有するリボザイムを化学合成することによって、最適化することができる。
【0236】
8. 免疫賦活性オリゴヌクレオチド
本発明の脂質粒子と関連する核酸は、免疫賦活性であり得、ヒト等の哺乳動物であり得る対象に投与した際に、免疫応答を誘発することができる免疫賦活性オリゴヌクレオチド(ISS、一本鎖または二本鎖)を含む。ISSには、例えば、ヘアピン二次構造をもたらす、ある特定のパリンドローム(Yamamoto et al.,J.Immunol.,148:4072-6(1992))、またはCpGモチーフ、ならびに他の既知のISS特徴(多重Gドメイン等、PCT公開第WO 96/11266号を参照されたく、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が含まれる。
【0237】
免疫賦活性核酸は、それらが、免疫応答を誘起するために、標的配列に特異的に結合し、その発現を低減させることが必要ない場合、非配列特異性と見なされる。したがって、ある特定の免疫賦活性核酸は、天然に存在する遺伝子またはmRNAの領域に対応する配列を含み得るが、それらは、依然として、非配列特異的な免疫賦活性核酸と見なされ得る。
【0238】
一実施形態において、免疫賦活性核酸またはオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドまたはCpGジヌクレオチドは、非メチル化またはメチル化であり得る。別の実施形態において、免疫賦活性核酸は、メチル化シトシンを有する少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。一実施形態において、核酸は、単一のCpGジヌクレオチドを含み、ここで、CpGジヌクレオチド中のシトシンは、メチル化されている。代替的な実施形態において、核酸は、少なくとも2つのCpGジヌクレオチドを含み、ここで、CpGジヌクレオチド中の少なくとも1つのシトシンが、メチル化されている。さらなる実施形態において、配列内に存在するCpGジヌクレオチド中の各シトシンは、メチル化されている。別の実施形態において、核酸は、複数のCpGジヌクレオチドを含み、ここで、CpGジヌクレオチドのうちの少なくとも1つが、メチル化シトシンを含む。本発明の組成物および方法での使用に好適な免疫賦活性オリゴヌクレオチドの例は、PCT公開第WO 02/069369号、同第WO 01/15726号、および同第WO 09/086558号、米国特許第6,406,705号、ならびにRaney et al.,J.Pharm.Exper.Ther.,298:1185-92(2001)に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ある特定の実施形態において、本発明の組成物および方法に使用されるオリゴヌクレオチドは、リン酸ジエステル(「PO」)骨格もしくはホスホロチオエート(「PS」)骨格、および/またはCpGモチーフ内の少なくとも1つのメチル化シトシン残基を有する。
【0239】
B. 他の活性剤
ある特定の実施形態において、本発明の脂質粒子と関連する活性剤は、1つ以上の治療的タンパク質、ポリペプチド、または有機小分子もしくは化合物を含み得る。このような治療上有効な薬剤または薬物の非限定的な例には、腫瘍学的薬物(例えば、化学療法薬、ホルモン療法剤、免疫療法剤、放射線療法剤等)、脂質低下剤、抗ウイルス薬、抗炎症化合物、抗鬱剤、刺激剤、鎮痛剤、抗生物質、受胎調節薬、解熱剤、血管拡張剤、抗血管形剤、細胞血管剤(cytovascular agent)、シグナル伝達阻害剤、心血管薬、例えば抗不整脈剤、ホルモン、血管収縮剤、およびステロイドが挙げられる。これらの活性剤は、本発明の脂質粒子中、単独で投与されてもよく、または干渉RNA等の核酸を含む本発明の脂質粒子と組み合わせて投与されてもよい(例えば、共投与)。
【0240】
化学療法薬の非限定的な例には、白金系薬物(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン(iproplatin)、サトラプラチン等)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソ尿素等)、抗体謝剤(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、アザチオプリン、メトトレキサート、ロイコボリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、ラルチトレキセド等)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル等)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン(CPT-11、Camptosar)、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、リン酸エトポシド、テニポシド等)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン等)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、スニチニブ(Sutent(登録商標)、SU11248)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標)、OSI-1774)、ラパチニブ(GW572016、GW2016)、カネルチニブ(CI 1033)、セマキシニブ(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、STI571)、ダサチニブ(BMS-354825)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(Zactima(商標)、ZD6474)等)、これらの薬学的に許容される塩、これらの立体異性体、これらの誘導体、これらの類似体、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0241】
従来的なホルモン療法剤の例には、限定することなく、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、フィナステリド、アロマターゼ阻害剤、タモキシフェン、およびゴセレリン、ならびに他のゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRH)が挙げられる。
【0242】
従来的な免疫療法剤の例には、免疫賦活剤(例えば、カルメットゲラン桿菌(BCG)、レバミゾール、インターロイキン-2、α-インターフェロン等)、モノクローナル抗体(例えば、抗CD20、抗,HER2、抗CD52、抗HLA-DR、および抗VEGFモノクローナル抗体)、免疫毒素(例えば、抗CD33モノクローナル抗体-カリケアマイシン複合体、抗CD22モノクローナル抗体-シュードモナス外毒素複合体等)、ならびに放射免疫療法(例えば、111In、90Y、または131I等と複合体形成された抗CD20モノクローナル抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0243】
従来的な放射線療法剤の例には、場合によっては腫瘍抗原を対象とする抗体と複合体形成された、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、および212Bi等の放射性核種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0244】
本発明に従って使用され得るさらなる腫瘍学的薬物には、アルケラン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、araC、三酸化ヒ素、ベキサロテン、biCNU、カルムスチン、CCNU、セレコキシブ、クラドリビン、シクロスポリンA、シトシンアラビノシド、シトキサン、デクスラゾキサン、DTIC、エストラムスチン、エキセメスタン、FK506、ゲムツズマブ-オゾガマイシン、ハイドレア、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、インターフェロン、レトロゾール、ロイスタチン、ロイプロリド、リトレチノイン(litretinoin)、メガストロール(megastrol)、L-PAM、メスナ、メトキサレン、ミトラマイシン、ナイトロジェンマスタード、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、プレドニン、リツキサン、ストレプトゾシン、STI-571、タキソテール、テモゾラミド(temozolamide)、VM-26、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、およびベルバン(velban)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従って使用され得る腫瘍学的薬物の他の例は、エリプチシンおよびエリプチシン類似体または誘導体、エポチロン、細胞内キナーゼ阻害剤、ならびにカンプトテシンである。
【0245】
上昇したトリグリセリド、コレステロール、および/またはグルコースと関連する脂質疾患または障害を治療するための脂質低下剤の非限定的な例には、スタチン、フィブラート、エゼチミブ、チアゾリジンジオン、ナイアシン、β遮断剤、ニトログリセリン、カルシウムアンタゴニスト、魚油、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0246】
抗ウイルス薬の例には、アバカビル、アシクロビル(aciclovir)、アシクロビル(acyclovir)、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、侵入阻害剤、ファムシクロビル、固定用量複合剤、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、III型インターフェロン(例えば、IFN-λ1、IFN-λ2、およびIFN-λ3等のIFN-λ分子)、II型インターフェロン(例えば、IFN-γ)、I型インターフェロン(例えば、PEG化IFN-α等のIFN-α、IFN-β、IFN-κ、IFN-δ、IFN-ε、IFN-τ、IFN-ω、およびIFN-ζ)、インターフェロン、ラミブシン、ロピナビル、ロビリド(loviride)、MK-0518、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル(nexavir)、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サクイナビル、スタブジン、相乗作用促進剤、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、これらの薬学的に許容される塩、これらの立体異性体、これらの誘導体、これらの類似体、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0247】
V. 脂質粒子
ある特定の態様において、本発明は、本明細書に記載のカチオン性(アミノ)脂質またはその塩を含む、脂質粒子を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の脂質粒子は、1つ以上の非カチオン性脂質をさらに含む。他の実施形態において、脂質粒子は、粒子の凝集を低減または阻害することができる1つ以上の複合脂質をさらに含む。さらなる実施形態において、脂質粒子は、治療的核酸(例えば、siRNA等の干渉RNA)等の1つ以上の活性剤または治療剤をさらに含む。
【0248】
脂質粒子には、リポソーム等の脂質小胞が含まれるが、これに限定されない。本明細書に使用される際、脂質小胞は、水溶性の内部を封入する脂質含有膜を有する構造を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載のカチオン性脂質のうちの1つ以上を含む脂質小胞が、脂質小胞内に核酸をカプセル封入するために使用される。他の実施形態において、本明細書に記載のカチオン性脂質のうちの1つ以上を含む脂質小胞は、核酸と複合体形成して、リポプレックスを形成する。
【0249】
本発明の脂質粒子は、典型的に、活性剤または治療剤、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、および粒子の凝集を阻害する複合脂質を含む。いくつかの実施形態において、活性剤または治療剤は、脂質粒子内の活性剤または治療剤が水溶液中で例えばヌクレアーゼまたはプロテアーゼによる酵素分解に抵抗性となるように、脂質粒子の脂質部分内に完全にカプセル封入される。他の実施形態において、本明細書に記載の脂質粒子は、ヒト等の哺乳動物に対して実質的に非毒性である。本発明の脂質粒子は、典型的に、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、または約70~約90nmの平均粒径を有する。本発明の脂質粒子はまた、典型的に、脂質:治療剤(例えば、脂質:核酸)の比(質量/質量比)が、約1:1~約100:1、約1:1~約50:1、約2:1~約25:1、約3:1~約20:1、約5:1~約15:1、または約5:1~約10:1である。
【0250】
好ましい実施形態において、本発明の脂質粒子は、干渉RNA(例えば、siRNA、Dicer基質dsRNA、shRNA、aiRNA、および/またはmiRNA)、カチオン性脂質(例えば、1つ以上の本明細書に記載される式Iのカチオン性脂質またはその塩)、非カチオン性脂質(例えば、1つ以上のリン脂質とコレステロールとの混合物)、ならびに粒子の凝集を阻害する複合脂質(例えば、1つ以上のPEG-脂質および/またはPOZ-脂質複合体)を含む、血清安定性核酸-脂質粒子(LNP)である。LNPは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上の非修飾および/または修飾干渉RNA分子を含み得る。核酸-脂質粒子およびそれらの調製方法は、例えば、米国特許第5,753,613号、同第5,785,992号、同第5,705,385号、同第5,976,567号、同第5,981,501号、同第6,110,745号、および同第6,320,017号、ならびにPCT公開第WO 96/40964号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0251】
本発明の核酸-脂質粒子において、核酸は、粒子の脂質部分に完全にカプセル封入され得、それによって、核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。好ましい実施形態において、干渉RNA等の核酸を含むLNPは、粒子の脂質部分の中に完全にカプセル封入され、それによって、核酸をヌクレアーゼ分解から保護する。ある特定の事例において、LNP中の核酸は、37℃で少なくとも約20、30、45、または60分間、粒子をヌクレアーゼに暴露した後、実質的に分解されない。ある特定の他の事例において、LNP中の核酸は、37℃で少なくとも約30、45、もしくは60分間、または少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、もしくは36時間、血清中で粒子をインキュベートした後、実質的に分解されない。他の実施形態において、核酸は、粒子の脂質部分と複合体を形成する。本発明の製剤の利点のうちの1つは、核酸-脂質粒子組成物が、ヒト等の哺乳動物に対して実質的に非毒性であることである。
【0252】
「完全にカプセル封入される」という用語は、核酸-脂質粒子中の核酸が、血清への暴露または遊離DNAまたはRNAを著しく分解するヌクレアーゼアッセイの後に、実質的に分解されないことを指す。完全にカプセル封入された系では、好ましくは、通常は100%の遊離核酸を分解する処理において、粒子中の核酸のうちの約25%未満が分解され、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは粒子中の核酸のうちの約5%未満が、分解される。「完全にカプセル封入される」とは、核酸-脂質粒子が、血清安定性である、すなわち、それらが、インビボ投与後にそれらの構成成分へと急速に分解されないことも指す。
【0253】
核酸に関して、完全なカプセル封入は、核酸と会合した際に向上した蛍光を有する色素を使用する、膜非透過性蛍光色素排除アッセイを行うことにより判定することができる。OliGreen(登録商標)およびRiboGreen(登録商標(Invitrogen Corp.;Carlsbad,CA)等の特定の色素が、プラスミドDNA、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、および/または一本鎖もしくは二本鎖リボヌクレオチドの定量的判定に利用可能である。カプセル封入は、色素をリポソーム製剤に添加し、結果として得られる蛍光を測定し、それを少量の非イオン性界面活性剤の添加時に観察される蛍光と比較することによって判定される。界面活性剤に媒介されるリポソーム二重膜の破壊により、カプセル封入された核酸が放出され、それが膜非透過性色素と相互作用することが可能となる。核酸のカプセル封入は、E=(Io- I)/Ioとして計算することができ、式中、IおよびIoは、界面活性剤の添加の前および後の蛍光強度を指す(Wheeler et al.,Gene Ther.,6:271-281(1999)を参照されたい)。
【0254】
他の実施形態において、本発明は、複数の核酸-脂質粒子を含む核酸-脂質粒子(例えば、LNP)組成物を提供する。
【0255】
いくつかの事例において、LNP組成物は、粒子の約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約30%~約95%、約40%~約95%、約50%~約95%、約60%~約95%、約70%~約95%、約80%~約95%、約85%~約95%、約90%~約95%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、または少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)が、中にカプセル封入された核酸を有するように、粒子の脂質部分内に完全にカプセル封入された核酸を含む。
【0256】
他の事例においては、LNP組成物は、投入される核酸の約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約30%~約95%、約40%~約95%、約50%~約95%、約60%~約95%、約70%~約95%、約80%~約95%、約85%~約95%、約90%~約95%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、または少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)が、粒子内にカプセル封入されるように、粒子の脂質部分内に完全にカプセル封入された核酸を含む。
【0257】
本発明の脂質粒子の使用目的に応じて、構成成分の比率は変動させることができ、特定の製剤の送達効率は、例えば、エンドソーム放出パラメータ(ERP)アッセイを用いて測定することができる。
【0258】
特定の実施形態において、本発明は、複数の本発明に記載の脂質粒子と酸化防止剤とを含む、脂質粒子(例えば、LNP)組成物を提供する。ある特定の事例において、脂質粒子組成物中の酸化防止剤は、脂質粒子中に存在するカチオン性脂質の分解を低減、阻止、および/または阻害する。活性剤が、干渉RNA(例えば、siRNA)等の治療的核酸である事例において、脂質粒子組成物中の酸化防止剤は、例えば、核酸とカチオン性脂質との間の付加物形成を低減、阻止、および/または阻害することによって、核酸負荷量の分解を低減、阻止、および/または阻害する。酸化防止剤の非限定的な例には、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸等といった金属キレート剤)等の親水性酸化防止剤、親油性酸化防止剤(例えば、ビタミンE異性体、ポリフェノール等)、それらの塩、およびそれらの混合物が挙げられる。必要に応じて、酸化防止剤は、典型的に、粒子中に存在するカチオン性脂質および/または活性剤の分解を阻止、阻害、および/または低減させるのに十分な量で存在し、例えば、少なくとも約20mMのEDTAもしくはその塩、または少なくとも約100mMのクエン酸もしくはその塩が存在する。EDTAおよび/またはクエン酸等の酸化防止剤は、節VIに記載される脂質粒子形成プロセス中のいずれかのステップまたは複数のステップで含まれ得る(例えば、脂質粒子形成の前、最中、および/または後)。
【0259】
脂質粒子中に存在するカチオン性脂質および/または活性剤(例えば、治療的核酸)の分解を阻止する方法、これらの方法によって安定化された脂質粒子を含む組成物、これらの脂質粒子を作製する方法、ならびにこれらの脂質粒子の送達および/または投与の方法に関連するさらなる実施形態は、2010年12月1日に出願された「SNALP Formulations Containing Antioxidants」と題される国際特許出願第PCT/CA2010/001919号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0260】
A. カチオン性脂質
本明細書に記載される新規な式Iのカチオン性脂質またはその塩のいずれも、単独または1つ以上の他のカチオン性脂質種もしくは非カチオン性脂質種との組み合わせのいずれかで、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)において使用することができる。
【0261】
同様に本発明の脂質粒子に含まれ得る他のカチオン性脂質またはその塩には、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-(N,N-ジメチル)-ブチル-4-アミン(C2-DLinDMA)、1,2-ジリノレオイルオキシ-(N,N-ジメチル)-ブチル-4-アミン(C2-DLinDAP)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA、「XTC2」または「C2K」としても知られる)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA、「C3K」)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA、「C4K」)、2,2-ジリノレイル-5-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキサン(DLin-K6-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-N-メチルペピアジノ(methylpepiazino)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-MPZ)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジオレオイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DO-K-DMA)、2,2-ジステアロイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DS-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-N-モルホリノ-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-MA)、2,2-ジリノレイル-4-トリメチルアミノ-[1,3]-ジオキソランクロリド(DLin-K-TMA.Cl)、2,2-ジリノレイル-4,5-ビス(ジメチルアミノメチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-メチルピペラジン(methylpiperzine)-[1,3]-ジオキソラン(D-Lin-K-N-メチルピペラジン)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-M-C3-DMA、「MC3」)、ジリノレイルメチル-3-ジメチルアミノプロピオネート(DLin-M-C2-DMA、DLin-M-K-DMAもしくはDLin-M-DMAとしても知られる)、1,2-ジオエイルカルバモイルオキシ(dioeylcarbamoyloxy)-3-ジメチルアミノプロパン(DO-C-DAP)、1,2-ジミリストレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DMDAP)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド(DOTAP.Cl)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ(dilinoleyoxy)-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト(cholest)-5-エン-3-β-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス,シス-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-β-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(シス,シス-9’,1-2’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、これらの類似体、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0262】
本明細書に記載の脂質粒子中に存在し得る追加のカチオン性脂質またはその塩には、CP-LenMC3、CP-γ-LenMC3、CP-MC3、CP-DLen-C2K-DMA、CP-γDLen-C2K-DMA、CP-C2K-DMA、CP-DODMA、CP-DPetroDMA、CP-DLinDMA、CP-DLenDMA、CP-γDLenDMA、これらの類似体、およびこれらの組み合わせといった、新規なカチオン性脂質が挙げられる。本明細書に記載の脂質粒子中に存在し得る追加のカチオン性脂質またはその塩には、LenMC3、γ-LenMC3、MC3MC、MC2C、MC2MC、MC3チオエーテル、MC3エーテル、MC4エーテル、MC3 アルキン、MC3アミド、Pan-MC3、Pan-MC4、Pan-MC5、およびこれらの類似体といった、MC3類似体が挙げられる。本明細書に記載の脂質粒子中に存在し得る追加のカチオン性脂質またはその塩には、2010年6月30日に出願された、「Improved Cationic Lipids and Methods for the Delivery of Nucleic Acids」と題される国際特許出願第PCT/CA2010/001029号に記載される新規なカチオン性脂質が挙げられる。本明細書に記載の脂質粒子中に存在し得る追加のカチオン性脂質またはその塩には、米国特許出願公開第2009/0023673号に記載のカチオン性脂質が挙げられる。これらの特許文書のそれぞれの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0263】
いくつかの実施形態において、追加のカチオン性脂質は、1つ以上のアニオンとともに塩(好ましくは結晶塩)を形成する。1つの特定の実施形態において、追加のカチオン性脂質は、そのシュウ酸(例えば、ヘミシュウ酸)塩であり、これは、好ましくは結晶塩である。
【0264】
DLinDMAおよびDLenDMA等のカチオン性脂質、ならびに追加のカチオン性脂質の合成は、米国特許出願公開第2006/0083780号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0265】
γ-DLenDMA、C2-DLinDMA、およびC2-DLinDAP等のカチオン性脂質、ならびに追加のカチオン性脂質の合成は、2010年6月30日に出願された「Improved Cationic Lipids and Methods for the Delivery of Nucleic Acids」と題される国際特許出願第PCT/CA2010/001029号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0266】
DLin-K-DMA等のカチオン性脂質、ならびに追加のカチオン性脂質の合成は、PCT公開第WO 09/086558号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0267】
DLin-K-C2-DMA、DLin-K-C3-DMA、DLin-K-C4-DMA、DLin-K6-DMA、DLin-K-MPZ、DO-K-DMA、DS-K-DMA、DLin-K-MA、DLin-K-TMA.Cl、DLin-K2-DMA、D-Lin-K-N-メチルピペラジン、DLin-M-C2-DMA、DO-C-DAP、DMDAP、およびDOTAP.Cl等のカチオン性脂質、ならびに追加のカチオン性脂質の合成は、2009年10月9日に出願された「Improved Amino Lipids and Methods for the Delivery of Nucleic Acids」と題されるPCT公開第WO 2010/042877号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0268】
DLin-M-C3-DMA、ならびに追加のカチオン性脂質の合成は、例えば、2010年9月17日に出願された「Novel Cationic Lipids and Methods of Use Thereof」と題される米国仮出願第61/384,050号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0269】
DLin-C-DAP、DLinDAC、DLinMA、DLinDAP、DLin-S-DMA、DLin-2-DMAP、DLinTMA.Cl、DLinTAP.Cl、DLinMPZ、DLinAP、DOAP、およびDLin-EG-DMA等のカチオン性脂質、ならびに追加のカチオン性脂質の合成は、PCT公開第WO 09/086558号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0270】
CLinDMA等のカチオン性脂質、ならびに追加のカチオン性脂質の合成は、米国特許出願公開第2006/0240554号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0271】
多数の他のカチオン性脂質および関連する類似体の合成は、米国特許第5,208,036号、同第5,264,618号、同第5,279,833号、同第5,283,185号、同第5,753,613号、および同第5,785,992号、ならびにPCT公開第WO 96/10390号に記載されており、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。加えて、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)、LIPOFECTAMINE(登録商標)(DOSPAおよびDOPEを含む、GIBCO/BRLから入手可能)、ならびにTRANSFECTAM(登録商標)(DOGS、Promega Corp.から入手可能)等の、多数の市販のカチオン性脂質調製物を使用してもよい。
【0272】
いくつかの実施形態において、カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約50mol%~約90mol%、約50mol%~約85mol%、約50mol%~約80mol%、約50mol%~約75mol%、約50mol%~約70mol%、約50mol%~約65mol%、約50mol%~約60mol%、約55mol%~約65mol%、または約55mol%~約70mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。特定の実施形態において、カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約50mol%、51mol%、52mol%、53mol%、54mol%、55mol%、56mol%、57mol%、58mol%、59mol%、60mol%、61mol%、62mol%、63mol%、64mol%、または65mol%(またはその任意の分率)を構成する。
【0273】
他の実施形態において、カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約2mol%~約60mol%、約5mol%~約50mol%、約10mol%~約50mol%、約20mol%~約50mol%、約20mol%~約40mol%、約30mol%~約40mol%、または約40mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。
【0274】
本発明の脂質粒子での使用に好適なカチオン性脂質のさらなる割合および範囲は、例えば、PCT公開第WO 09/127060号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0275】
本発明の脂質粒子中に存在するカチオン性脂質の割合は、目標量であり、製剤中に存在するカチオン性脂質の実際の量は、例えば、±5mol%で変動し得ることを理解されたい。例えば、1:57脂質粒子(例えば、LNP)製剤の場合、カチオン性脂質の目標量は、57.1mol%であるが、カチオン性脂質の実際の量は、目標量の±5mol%、±4mol%、±3mol%、±2mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%であり得、製剤の残りの部分は、他の脂質構成成分で構成される(粒子中に存在する総脂質の100mol%まで添加する)。
【0276】
B. 非カチオン性脂質
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)に使用される非カチオン性脂質は、安定な化合物を生成することができる、種々の中性非荷電、双性イオン性、またはアニオン性脂質のいずれかであり得る。
【0277】
非カチオン性脂質の非限定的な例には、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、ケファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレイオル-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、l-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、およびこれらの混合物等のリン脂質が挙げられる。他のジアシルホスファチジルコリンおよびジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質もまた使用可能である。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、C10-C24炭素鎖を有する脂肪酸を有するアシル基、例えば、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、またはオレオイルである。
【0278】
非カチオン性脂質のさらなる例には、コレステロールおよびその誘導体等のステロールが挙げられる。コレステロール誘導体の非限定的な例には、5α-コレスタノール、5β-コプロスタノール、コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテル、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル、および6-ケトコレスタノール等の極性類似体、5α-コレスタン、コレステノン、5α-コレスタノン、5β-コレスタノン、およびデカン酸コレステリル等の非極性類似体、ならびにこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態において、コレステロール誘導体は、コレステリル-(4’-ヒドロキシ)-ブチルエーテル等の極性類似体である。コレステリル-(2’-ヒドロキシ)-エチルエーテルの合成は、PCT公開第WO 09/127060号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0279】
いくつかの実施形態において、脂質粒子(例えば、LNP)中に存在する非カチオン性脂質は、1つ以上のリン脂質とコレステロールもしくはその誘導体との混合物を含むか、またはそれからなる。他の実施形態において、脂質粒子(例えば、LNP)中に存在する非カチオン性脂質は、1つ以上のリン脂質、例えば、コレステロール不含の脂質粒子製剤を含むか、またはそれからなる。さらに他の実施形態において、脂質粒子(例えば、LNP)中に存在する非カチオン性脂質は、コレステロールまたはその誘導体、例えば、リン脂質不含の脂質粒子製剤を含むか、またはそれからなる。
【0280】
本発明での使用に好適な非カチオン性脂質の他の例には、例えば、ステアリルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、アセチルパルミテート(acetyl palmitate)、グリセロールリシノレエート(glycerolricinoleate)、ヘキサデシルステレエート(hexadecyl stereate)、ミリスチン酸イソプロピル、良性アクリル系ポリマー、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキル-アリール硫酸ポリエチルオキシ化脂肪酸アミド、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム、セラミド、スフィンゴミエリン等といった、リンを含有しない脂質が挙げられる。
【0281】
いくつかの実施形態において、非カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約10mol%~約60mol%、約20mol%~約55mol%、約20mol%~約45mol%、約20mol%~約40mol%、約25mol%~約50mol%、約25mol%~約45mol%、約30mol%~約50mol%、約30mol%~約45mol%、約30mol%~約40mol%、約35mol%~約45mol%、約37mol%~約42mol%、または約35mol%、36mol%、37mol%、38mol%、39mol%、40mol%、41mol%、42mol%、43mol%、44mol%、もしくは45mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。
【0282】
脂質粒子が、リン脂質とコレステロールまたはコレステロール誘導体との混合物を含有する実施形態において、この混合物は、粒子中に存在する総脂質の最大約40mol%、45mol%、50mol%、55mol%、または60mol%を構成し得る。
【0283】
いくつかの実施形態において、混合物中のリン脂質成分は、粒子中に存在する総脂質の約2mol%~約20mol%、約2mol%~約15mol%、約2mol%~約12mol%、約4mol%~約15mol%、または約4mol%~約10mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成し得る。ある特定の好ましい実施形態において、混合物中のリン脂質成分は、粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約10mol%、約5mol%~約9mol%、約5mol%~約8mol%、約6mol%~約9mol%、約6mol%~約8mol%、または約5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、もしくは10mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。非限定的な例として、リン脂質とコレステロールとの混合物を含む1:57脂質粒子製剤は、例えば、粒子中に存在する総脂質の約34mol%(またはその任意の分率)のコレステロールまたはコレステロール誘導体との混合物として、約7mol%(またはその任意の分率)のDPPCまたはDSPC等のリン脂質を含み得る。別の非限定的な例として、リン脂質とコレステロールとの混合物を含む7:54脂質粒子製剤は、例えば、粒子中に存在する総脂質の約32mol%(またはその任意の分率)のコレステロールまたはコレステロール誘導体との混合物として、約7mol%(またはその任意の分率)のDPPCまたはDSPC等のリン脂質を含み得る。
【0284】
他の実施形態において、混合物中のコレステロール成分は、粒子中に存在する総脂質の約25mol%~約45mol%、約25mol%~約40mol%、約30mol%~約45mol%、約30mol%~約40mol%、約27mol%~約37mol%、約25mol%~約30mol%、または約35mol%~約40mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成し得る。ある特定の好ましい実施形態において、混合物中のコレステロール成分は、粒子中に存在する総脂質の約25mol%~約35mol%、約27mol%~約35mol%、約29mol%~約35mol%、約30mol%~約35mol%、約30mol%~約34mol%、約31mol%~約33mol%、または約30mol%、31mol%、32mol%、33mol%、34mol%、もしくは35mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。典型的に、リン脂質とコレステロールとの混合物を含む1:57脂質粒子製剤は、例えば、粒子中に存在する総脂質の約7mol%(またはその任意の分率)のDPPCまたはDSPC等のリン脂質との混合物として、約34mol%(またはその任意の分率)のコレステロールまたはコレステロール誘導体を含み得る。典型的に、リン脂質とコレステロールとの混合物を含む7:54脂質粒子製剤は、例えば、粒子中に存在する総脂質の約7mol%(またはその任意の分率)のDPPCまたはDSPC等のリン脂質との混合物として、約32mol%(またはその任意の分率)のコレステロールまたはコレステロール誘導体を含み得る。
【0285】
脂質粒子がリン脂質不含である実施形態において、コレステロールまたはその誘導体は、粒子中に存在する総脂質の最大約25mol%、30mol%、35mol%、40mol%、45mol%、50mol%、55mol%、または60mol%を構成し得る。
【0286】
いくつかの実施形態において、リン脂質不含の脂質粒子製剤中のコレステロールまたはその誘導体は、粒子中に存在する総脂質の約25mol%~約45mol%、約25mol%~約40mol%、約30mol%~約45mol%、約30mol%~約40mol%、約31mol%~約39mol%、約32mol%~約38mol%、約33mol%~約37mol%、約35mol%~約45mol%、約30mol%~約35mol%、約35mol%~約40mol%、または約30mol%、31mol%、32mol%、33mol%、34mol%、35mol%、36mol%、37mol%、38mol%、39mol%、もしくは40mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成し得る。非限定的な例として、1:62脂質粒子製剤は、粒子中に存在する総脂質の約37mol%(またはその任意の分率)のコレステロールを含み得る。別の非限定的な例として、7:58脂質粒子製剤は、粒子中に存在する総脂質の約35mol%(またはその任意の分率)のコレステロールを含み得る。
【0287】
他の実施形態において、非カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約5mol%~約90mol%、約10mol%~約85mol%、約20mol%~約80mol%、約10mol%(例えば、リン脂質のみ)、または約60mol%(例えば、リン脂質およびコレステロールまたはその誘導体)(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。
【0288】
本発明の脂質粒子での使用に好適な非カチオン性脂質のさらなる割合および範囲は、例えば、PCT公開第WO 09/127060号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0289】
本発明の脂質粒子中に存在する非カチオン性脂質の割合は、目標量であり、製剤中に存在する非カチオン性脂質の実際の量は、例えば、±5mol%で変動し得ることを理解されたい。例えば、1:57脂質粒子(例えば、LNP)製剤において、リン脂質の目標量は7.1mol%であり、コレステロールの目標量は34.3mol%であるが、リン脂質の実際の量は、その目標量の±2mol%、±1.5mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%であり得、コレステロールの実際の量は、その目標量の±3mol%、±2mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%であり得、製剤の残りの部分は、他の脂質成分で構成される(粒子中に存在する総脂質の100mol%まで添加する)。同様に、7:54脂質粒子(例えば、LNP)製剤において、リン脂質の目標量は6.75mol%であり、コレステロールの目標量は32.43mol%であるが、リン脂質の実際の量は、その目標量の±2mol%、±1.5mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%であり得、コレステロールの実際の量は、その目標量の±3mol%、±2mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%であり得、製剤の残りの部分は、他の脂質成分で構成される(粒子中に存在する総脂質の100mol%まで添加する)。
【0290】
C. 脂質複合体
カチオン性および非カチオン性脂質に加えて、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、脂質複合体をさらに含み得る。複合脂質は、それが粒子の凝集を阻止するという点で、有用である。好適な複合脂質には、PEG-脂質複合体、POZ-脂質複合体、ATTA-脂質複合体、カチオン性-ポリマー-脂質複合体(CPL)、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、粒子は、PEG-脂質複合体またはATTA-脂質複合体のいずれかを、CPLとともに含む。
【0291】
好ましい実施形態において、脂質複合体は、PEG-脂質である。PEG-脂質の例には、例えば、PCT公開第WO 05/026372号に記載されるジアルキルオキシプロピルと結合したPEG(PEG-DAA)、例えば、米国特許出願公開第2003/0077829号および同第2005/008689号に記載されるジアシルグリセロールと結合したPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミン等のリン脂質と結合したPEG(PEG-PE)、例えば、米国特許第5,885,613号に記載されるセラミドと複合体形成したPEG、コレステロールまたはその誘導体と複合体形成したPEG、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの特許文書の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明での使用に好適なさらなるPEG-脂質には、限定することなく、mPEG2000-1,2-ジ-O-アルキル-sn3-カルボモイルグリセリド(PEG-C-DOMG)が挙げられる。PEG-C-DOMGの合成は、PCT公開第WO 09/086558号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。なおもさらに好適なPEG-脂質複合体には、限定することなく、1-[8’-(1,2-ジミリストイル-3-プロパノキシ)-カルボキサミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-ω-メチル-ポリ(エチレングリコール)(2KPEG-DMG)が挙げられる。2KPEG-DMGの合成は、米国特許第7,404,969号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に
組み込まれる。
【0292】
PEGは、2つの末端ヒドロキシル基を有する、エチレンPEG反復単位の直鎖の水溶性ポリマーである。PEGは、その分子量によって分類され、例えば、PEG 2000は、約2,000ダルトンの平均分子量を有し、PEG 5000は、約5,000ダルトンの平均分子量を有する。PEGは、Sigma Chemical Co.および他の企業から市販入手可能であり、次のものが挙げられるがこれらに限定されない:モノメトキシポリエチレングリコール(MePEG-OH)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシネート(MePEG-S)、モノメトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルスクシネート(MePEG-S-NHS)、モノメトキシポリエチレングリコール-アミン(MePEG-NH2)、モノメトキシポリエチレングリコール-トレシレート(tresylate)(MePEG-TRES)、モノメトキシポリエチレングリコール-イミダゾリル-カルボニル(MePEG-IM)、ならびに末端メトキシ基の代わりに末端ヒドロキシル基を含有する化合物(例えば、HO-PEG-S、HO-PEG-S-NHS、HO-PEG-NH2等)。米国特許第6,774,180号および同第7,053,150号に記載のもの等の他のPEG(例えば、mPEG(20KDa)アミン)もまた、本発明のPEG-脂質複合体の調製に有用である。これらの特許の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。加えて、モノメトキシポリエチレングリコール-酢酸(MePEG-CH2COOH)は、例えば、PEG-DAA複合体を含むPEG-脂質複合体の調製に、特に有用である。
【0293】
本明細書に記載のPEG-脂質複合体のPEG部分は、約550ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の平均分子量を含み得る。ある特定の事例において、PEG部分は、約750ダルトン~約5,000ダルトン(例えば、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトン等)の平均分子量を有する。好ましい実施形態において、PEG部分は、約2,000ダルトンまたは約750ダルトンの平均分子量を有する。
【0294】
ある特定の事例において、PEGは、アルキル、アルコキシ、アシル、またはアリール基によって任意に置換され得る。PEGは、脂質に直接に複合体化されてもよく、またはリンカー部分を介して脂質に結合されてもよい。例えば、エステル不含リンカー部分およびエステル含有リンカー部分を含む、PEGと脂質との結合に好適な任意のリンカー部分を使用することができる。好ましい実施形態において、リンカー部分は、エステル不含リンカー部分である。本明細書に使用される際、「エステル不含リンカー部分」という用語は、カルボン酸エステル結合(-OC(O)-)を含有しないリンカー部分を指す。好適なエステル不含リンカー部分には、アミド(-C(O)NH-)、アミノ(-NR-)、カルボニル(-C(O)-)、カルバメート(-NHC(O)O-)、尿素(-NHC(O)NH-)、ジスルフィド(-S-S-)、エーテル(-O-)、スクシニル(-(O)CCH2CH2C(O)-)、スクシンアミジル(succinamidyl)(-NHC(O)CH2CH2C(O)NH-)、エーテル、ジスルフィド、ならびにこれらの組み合わせ(カルバメートリンカー部分およびアミドリンカー部分の両方を含有するリンカー等)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、カルバメートリンカーを使用して、PEGを脂質に結合させる。
【0295】
他の実施形態において、エステル含有リンカー部分を使用して、PEGを脂質に結合させる。好適なエステル含有リンカー部分には、例えば、炭酸塩(-OC(O)O-)、スクシノイル、リン酸エステル(-O-(O)POH-O-)、スルホン酸エステル、およびこれらの組み合わせが上げられる。
【0296】
鎖長および飽和の程度が多様である種々のアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンを、PEGに複合体化して、脂質複合体を形成することができる。このようなホスファチジルエタノールアミンは、市販入手可能であるか、または当業者に既知の従来的な技術を使用して単離もしくは合成することができる。C10~C20の範囲の炭素鎖長を有する飽和または不飽和脂肪酸を含有するホスファチジル-エタノールアミンが好ましい。モノまたはジ不飽和脂肪酸、ならびに飽和および不飽和脂肪酸の混合物を有するホスファチジルエタノールアミンもまた、使用可能である。好適なホスファチジルエタノールアミンには、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、およびジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0297】
「ATTA」または「ポリアミド」という用語には、限定することなく、米国特許第6,320,017号および同第6,586,559号に記載の化合物が含まれ、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの化合物には、式
【化6】
を有する化合物が含まれ、式中、Rは、水素、アルキル、およびアシルからなる群から選択されるメンバーであり、R1は、水素およびアルキルからなる群から選択されるメンバーであるか、または、場合によっては、RおよびR1、ならびにそれらが結合する窒素は、アジド部分を形成し、R2は、水素、任意置換アルキル、任意置換アリール、およびアミノ酸の側鎖から選択される群のメンバーであり、R3は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、ヒドラジノ、アミノ、およびNR4R5からなる群から選択されるメンバーであり、式中、R4およびR5は、独立して、水素またはアルキルであり、nは4~80であり、mは2~6であり、pは1~4であり、qは0または1である。他のポリアミドを、本発明の化合物に使用してもよいことが、当業者には明らかであろう。
【0298】
「ジアシルグリセロール」または「DAG」という用語には、2つの脂肪酸アシル鎖であるR1およびR2を有し、これらのいずれも、独立して、エステル結合によってグリセロールの1位および2位に結合される2~30個の炭素を有する、化合物が含まれる。アシル基は、飽和であってもよく、または多様な程度の不飽和を有してもよい。好適なアシル基には、ラウロイル(C12)、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)、ステアロイル(C18)、およびイコソイル(icosoyl)(C20)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R1およびR2は、同じである、すなわち、R1およびR2はいずれもミリストイルである(すなわち、ジミリストイル)、R1およびR2はいずれもステアロイルである(すなわち、ジステアロイル)等である。ジアシルグリセロールは、次の一般式を有する。
【化7】
【0299】
「ジアルキルオキシプロピル」または「DAA」という用語には、いずれも独立して2~30個の炭素を有する2つのアルキル鎖、R1およびR2を有する、化合物が含まれる。アルキル基は、飽和であってもよく、または様々な程度の不飽和を有してもよい。ジアルキルオキシプロピルは、次の一般式を有する。
【化8】
【0300】
好ましい実施形態において、PEG-脂質は、次の式を有するPEG-DAA複合体であり、
【化9】
式中、R1およびR2は、独立して選択され、約10~約22個の炭素原子を有する長鎖アルキル基であり、PEGはポリエチレングリコールであり、Lは上述のエステル不含リンカー部分またはエステル含有リンカー部分である。長鎖アルキル基は、飽和または不飽和であり得る。好適なアルキル基には、デシル(C10)、ラウリル(C12)、ミリスチル(C14)、パルミチル(C16)、ステアリル(C18)、およびイコシル(C20)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R1およびR2は、同じである、すなわち、R1およびR2はいずれもミリスチルである(すなわち、ジミリスチル)、R1およびR2はいずれもステアリルである(すなわち、ジステアリル)等である。
【0301】
上の式Vにおいて、PEGは、約550ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する。ある特定の事例において、PEGは、約750ダルトン~約5,000ダルトン(例えば、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約3,000ダルトン、約750ダルトン~約2,000ダルトン等)の平均分子量を有する。好ましい実施形態において、PEGは、約2,000ダルトンまたは約750ダルトンの平均分子量を有する。PEGは、アルキル、アルコキシ、アシル、またはアリール基で任意に置換され得る。ある特定の実施形態において、末端ヒドロキシル基は、メトキシまたはメチル基で置換される。
【0302】
好ましい実施形態において、「L」は、エステル不含リンカー部分である。好適なエステル不含リンカーには、アミドリンカー部分、アミノリンカー部分、カルボニルリンカー部分、カルバメートリンカー部分、尿素リンカー部分、エーテルリンカー部分、ジスルフィドリンカー部分、スクシンアミジルリンカー部分、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、エステル不含リンカー部分は、カルバメートリンカー部分である(すなわち、PEG-C-DAA複合体)。別の好ましい実施形態において、エステル不含リンカー部分は、アミドリンカー部分である(すなわち、PEG-A-DAA複合体)。さらに別の好ましい実施形態において、エステル不含リンカー部分は、スクシンイミジルリンカー部分である(すなわち、PEG-S-DAA複合体)。
【0303】
特定の実施形態において、PEG-脂質複合体は、
【化10】
【0304】
PEG-DAA複合体は、当業者に既知の標準的な技術および試薬を使用して合成される。PEG-DAA複合体は、種々のアミド、アミン、エーテル、チオ、カルバメート、および尿素結合を含有する。当業者であれば、これらの結合を形成するための方法および試薬が周知であり、容易に利用可能であることを理解するであろう。例えば、March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY(Wiley 1992)、Larock,COMPREHENSIVE ORGANIC TRANSFORMATIONS(VCH 1989)、およびFurniss,VOGEL’S TEXTBOOK OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY,5th ed.(Longman 1989)を参照されたい。存在する任意の官能基が、PEG-DAA複合体の合成の際、異なる点での保護および脱保護を要することもまた、理解される。当業者であれば、このような技術が周知であることを理解するであろう。例えば、Green and Wuts,PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS(Wiley 1991)を参照されたい。
【0305】
好ましくは、PEG-DAA複合体は、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)複合体、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)複合体、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)複合体、PEG-ジパルミトイルオキシプロピル(C16)複合体、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)複合体である。これらの実施形態において、PEGは、好ましくは、約750または約2,000ダルトンの平均分子量を有する。1つの特に好ましい実施形態において、PEG-脂質複合体は、PEG2000-C-DMAを含み、ここで、「2000」は、PEGの平均分子量を示し、「C」は、カルバメートリンカー部分を示し、「DMA」は、ジミリスチルオキシプロピルを示す。別の特に好ましい実施形態において、PEG-脂質複合体は、PEG750-C-DMAを含み、ここで、「750」は、PEGの平均分子量を示し、「C」は、カルバメートリンカー部分を示し、「DMA」は、ジミリスチルオキシプロピルを示す。特定の実施形態において、PEGの末端ヒドロキシル基は、メチル基で置換される。当業者であれば、他のジアルキルオキシプロピルを、本発明のPEG-DAA複合体に使用してもよいことを理解するであろう。
【0306】
前述のことに加えて、他の親水性ポリマーをPEGの代わりに用いてもよいことが、当業者には明らかであろう。PEGの代わりに使用され得る好適なポリマーの例には、ポリビニルピロリドン、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシオキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、およびポリジメチルアクリルアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ならびにヒドロキシメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロース等の誘導体化セルロースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0307】
前述の構成成分に加えて、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、カチオン性ポリ(エチレングリコール)(PEG)脂質またはCPLをさらに含み得る(例えば、Chen et al.,Bioconj.Chem.,11:433-437(2000)、米国特許第6,852,334号、PCT公開第WO 00/62813号を参照されたく、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0308】
好適なCPLには、式VIの化合物が含まれ、
【化11】
式中、A、W、およびYは、以下に記載の通りである。
【0309】
式VIに関して、「A」は、脂質アンカーとして作用する、両親媒性脂質、中性脂質、または疎水性脂質等の脂質部分である。好適な脂質には、ジアシルグリセロリル、ジアルキルグリセロリル、N-N-ジアルキルアミノ、1,2-ジアシルオキシ-3-アミノプロパン、および1,2-ジアルキル-3-アミノプロパンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0310】
「W」は、親水性ポリマーまたはオリゴマー等のポリマーまたはオリゴマーである。好ましくは、親水性ポリマーは、非免疫原性であるか、または生来の免疫原性が低い、生体適合性ポリマーである。あるいは、親水性ポリマーは、適切なアジュバントとともに使用した場合に、弱抗原性となり得る。好適な非免疫原性ポリマーには、PEG、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、ポリマーは、約250~約7,000ダルトンの分子量を有する。
【0311】
「Y」は、ポリカチオン性部分である。ポリカチオン性部分という用語は、選択されたpH、好ましくは生理的pHにおいて、正の電荷、好ましくは2の正の電荷を有する、化合物、誘導体、または官能基を指す。好適なポリカチオン性部分には、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、リジン、およびヒスチジン等の塩基性アミノ酸およびそれらの誘導体;スペルミン;スペルミジン;カチオン性デンドリマー;ポリアミン;ポリアミン糖類;ならびにアミノ多糖類が挙げられる。ポリカチオン性部分は、構造が、直鎖テトラリジン等の直鎖であってもよく、または分枝もしくは樹状であってもよい。ポリカチオン性部分は、選択されたpH値で、約2~約15の正の電荷を有し、好ましくは約2~約12の正の電荷を有し、より好ましくは約2~約8の正の電荷を有する。どのポリカチオン性部分を利用するかの選択は、所望される粒子の用途の種類によって決定され得る。
【0312】
ポリカチオン性部分の電荷は、粒子部分全体にわたって分布し得るか、または代替として、それらが、粒子部分の1つの特定の領域において異なる濃度の電荷密度、例えば、電荷スパイクであり得るか、のいずれかである。電荷密度が粒子上に分布している場合、電荷密度は、均一に分布するか、または不均一に分布し得る。ポリカチオン性部分の電荷分布の全ての変形が、本発明に包含される。
【0313】
脂質「A」および非免疫原性ポリマー「W」は、種々の方法によって、好ましくは共有結合によって、結合され得る。当業者に既知の方法を、「A」と「W」との共有結合に使用することができる。好適な結合には、アミド、アミン、カルボキシル、カーボネート、カルバメート、エステル、およびヒドラゾン結合が挙げられるが、これらに限定されない。「A」および「W」が、結合を生じさせるために相補的官能基を有する必要があることは、当業者には明らかであろう。一方は脂質上で他方はポリマー上でのこれらの2つの基の反応により、所望の結合をもたらす。例えば、脂質がジアシルグリセロールであり、末端ヒドロキシルが例としてNHSおよびDCCで活性化されて活性なエステルを形成し、次いでアミノ基を含有するポリマー、例えばポリアミドと反応する場合(例えば、米国特許第6,320,017号および同第6,586,559号を参照されたく、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、アミド結合が、2つの基の間に形成されるであろう。
【0314】
ある特定の事例において、ポリカチオン性部分は、標的リガンドまたはカルシウムと錯体形成するためのキレート部分といった、リガンドが結合されていてもよい。好ましくは、リガンドが結合した後、カチオン性部分は、正の電荷を維持する。ある特定の事例において、結合されたリガンドは、正の電荷を有する。好適なリガンドには、反応性官能基を有する化合物またはデバイスが挙げられるがこれらに限定されず、脂質、両親媒性脂質、担体化合物、生体親和性化合物、生体材料、バイオポリマー、生体医学的デバイス、分析的に検出可能な化合物、治療的に活性な化合物、酵素、ペプチド、タンパク質、抗体、免疫賦活剤、放射標識、蛍光物質、ビオチン、薬物、ヘプタン、DNA、RNA、多糖類、リポソーム、ビロゾーム、ミセル、免疫グロブリン、官能基、他の標的化部分、または毒素が挙げられる。
【0315】
いくつかの実施形態において、脂質複合体(例えば、PEG-脂質)は、粒子中に存在する総脂質の約0.1mol%~約2mol%、約0.5mol%~約2mol%、約1mol%~約2mol%、約0.6mol%~約1.9mol%、約0.7mol%~約1.8mol%、約0.8mol%~約1.7mol%、約0.9mol%~約1.6mol%、約0.9mol%~約1.8mol%、約1mol%~約1.8mol%、約1mol%~約1.7mol%、約1.2mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.7mol%、約1.3mol%~約1.6mol%、または約1.4mol%~約1.5mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。
【0316】
他の実施形態において、脂質複合体(例えば、PEG-脂質)は、粒子中に存在する脂質の約0mol%~約20mol%、約0.5mol%~約20mol%、約2mol%~約20mol%、約1.5mol%~約18mol%、約2mol%~約15mol%、約4mol%~約15mol%、約2mol%~約12mol%、約5mol%~約12mol%、または約2mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。
【0317】
さらなる実施形態において、脂質複合体(例えば、PEG-脂質)は、粒子中に存在する総脂質の約4mol%~約10mol%、約5mol%~約10mol%、約5mol%~約9mol%、約5mol%~約8mol%、約6mol%~約9mol%、約6mol%~約8mol%、または約5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、もしくは10mol%(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)を構成する。
【0318】
本発明の脂質粒子における使用に好適な脂質複合体のさらなる例、割合(%)、および/または範囲は、例えば、PCT公開第WO 09/127060号およびPCT公開第WO 2010/006282号に記載され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0319】
本発明の脂質粒子中に存在する脂質複合体(例えば、PEG-脂質)の割合(%)は、目標量であり、製剤中に存在する脂質複合体の実際の量は、例えば、±2mol%で変動し得ることを理解されたい。例えば、1:57脂質粒子(例えば、LNP)製剤では、脂質複合体の目標量は1.4mol%であるが、脂質複合体の実際の量は、目標量の±0.5mol%、±0.4mol%、±0.3mol%、±0.2mol%、±0.1mol%、または±0.05mol%であり得、製剤の残りの部分は、他の脂質成分で構成される(粒子中に存在する総脂質の100mol%まで添加する)。同様に、7:54脂質粒子(例えば、LNP)製剤では、脂質複合体の目標量は6.76mol%であるが、脂質複合体の実際の量は、目標量の±2mol%、±1.5mol%、±1mol%、±0.75mol%、±0.5mol%、±0.25mol%、または±0.1mol%であり得、製剤の残りの部分は、他の脂質成分で構成される(粒子中に存在する総脂質の100mol%まで添加する)。
【0320】
当業者であれば、脂質複合体の濃度を、用いられる脂質複合体および脂質粒子が融合性となる速度に応じて変化させ得ることを理解するであろう。
【0321】
脂質複合体の組成および濃度を制御することによって、脂質複合体が脂質粒子の外側に入れ替わる速度、および今度は脂質粒子が融合性となる速度を制御することができる。例えば、PEG-DAA複合体を脂質複合体として使用する場合、脂質粒子が融合性となる速度は、例えば、脂質複合体の濃度を変化させることによって、PEGの分子量を変化させることによって、またはPEG-DAA複合体上のアルキル基の鎖長および飽和の程度を変化させることによって、変化させることができる。加えて、例えば、pH、温度、イオン強度等を含む他の変数を使用して、脂質粒子が融合性となる速度を変化および/制御することができる。脂質粒子が融合性となる速度を制御するために使用することができる他の方法は、本開示を読むことで当業者には明らかとなろう。また、脂質複合体の組成及び濃度を制御することによって、脂質粒子(例えば、LNP)の寸法を制御することができる。
【0322】
VI. 脂質粒子の調製
干渉RNA(例えば、siRNA)等の活性剤または治療剤が粒子の脂質部分内に封入され、分解から保護される、本発明の脂質粒子、例えば、LNPは、連続混合方法、直接希釈プロセス、および直列(in-line)希釈プロセスを含むが、これらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の方法によって形成することができる。
【0323】
特定の実施形態において、カチオン性脂質は、式Iの脂質またはその塩を、単独でまたは他のカチオン性脂質と組み合わせて含んでもよい。他の実施形態において、非カチオン性脂質は、卵スフィンゴミエリン(ESM)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン(DPPC)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、14:0 PE(1,2-ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、16:0 PE(1,2-ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、18:0 PE(1,2-ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、18:1 PE(1,2-ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、18:1トランスPE(1,2-ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、18:0-18:1 PE(1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、16:0-18:1 PE(1-パルミトイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ポリエチレングリコール系ポリマー(例えば、PEG 2000、PEG 5000、PEG修飾ジアシルグリセロール、またはPEG修飾ジアルキルオキシプロピル)、コレステロール、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせである。
【0324】
ある特定の実施形態において、本発明は、連続混合方法、すなわち、例えば、第1のリザーバ中に核酸(例えば、干渉RNA)を含む水溶液を提供し、第2のリザーバ中に有機脂質溶液を提供し(ここで有機脂質溶液中に存在する脂質は、有機溶媒、例えば、エタノール等の低級アルカノール中に可溶化される)、脂質小胞内に核酸をカプセル封入する脂質小胞(例えば、リポソーム)を実質的に即座に生成するように有機脂質溶液が水溶液と混合するように、水溶液を有機脂質溶液と混合することを含むプロセスを介して生成される、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)を提供する。このプロセスおよびこのプロセスを行うための装置は、米国特許出願公開第2004/0142025号に詳述され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0325】
脂質および緩衝液を混合チャンバ等の混合する環境に連続的に導入する動作は、緩衝液での脂質溶液の連続希釈を引き起こし、それによって、混合すると実質的に即在に脂質小胞を生成する。本明細書に使用される際、「脂質溶液を緩衝液で連続希釈すること」(および変形)という表現は、概して、脂質溶液が水和プロセスにおいて、小胞生成を達成するのに十分な力を用いて、十分に迅速に希釈されることを意味する。核酸を含む水溶液を有機脂質溶液と混合することによって、有機脂質溶液は、緩衝液(すなわち、水溶液)の存在下で連続的な段階希釈を経て、核酸-脂質粒子をもたらす。
【0326】
連続混合方法を使用して形成される核酸-脂質粒子は、典型的に、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、約120nm未満、110nm未満、100nm未満、90nm未満、もしくは80nm未満、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、もしくは150nm(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)の寸法を有する。このようにして形成された粒子は凝集せず、任意に、均一な粒径を達成するように寸法調整される。
【0327】
別の実施形態において、本発明は、脂質小胞(例えば、リポソーム)溶液を形成し、脂質小胞溶液を、制御された量の希釈緩衝液を含有する収集容器に即座にかつ直接に導入することを含む、直接希釈プロセスを介して生成される、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)を提供する。好ましい態様において、収集容器は、希釈を促進するために収集容器の内容物を撹拌するように構成される、1つ以上の構成要素を含む。一態様において、収集容器中に存在する希釈緩衝液の量は、そこに導入された脂質小胞溶液の体積に実質的に等しい。非限定的な例として、等体積の希釈緩衝液を含有する収集容器に導入されたときの45%エタノール中の脂質小胞溶液は、より小さい粒子を有利にもたらすであろう。
【0328】
さらに別の実施形態において、本発明は、希釈緩衝液を含有する第3のリザーバが第2の混合領域に流体連結される、直列希釈プロセスを介して生成される、核酸-脂質粒子(例えば、LNP)を提供する。この実施形態において、第1の混合領域において形成された脂質小胞(例えば、リポソーム)溶液は、第2の混合領域において希釈緩衝液と即座にかつ直接に混合される。好ましい態様において、第2の混合領域は、脂質小胞溶液の流れと希釈緩衝液の流れとが対抗する180°の流れとして合流するように配置されるTコネクタを含むが、例えば、約27o~約180o(例えば、約90o)のより浅い角度を提供するコネクタを使用することができる。ポンプ機構は、緩衝液の制御可能な流れを第2の混合領域に送達する。一態様において、第2の混合領域に提供される希釈緩衝液の流量は、第1の混合領域からそこに導入される脂質小胞溶液の流量に実質的に等しくなるように制御される。この実施形態は、第2の混合領域における脂質小胞溶液と混合している希釈緩衝液の流れ、したがってまた、第2の混合プロセス全体にわたる緩衝液中の脂質小胞溶液の濃縮のさらなる制御を有利に可能にする。希釈緩衝液の流量のこのような制御は、低減された濃度での小さい粒径形成を有利に可能にする。
【0329】
これらのプロセスならびにこれらの直接希釈および直列希釈プロセスを行うための装置は、米国特許出願公開第2007/0042031号に詳述され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0330】
直接希釈および直列希釈プロセスを使用して形成される核酸-脂質粒子は、典型的に、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、約120nm未満、110nm未満、100nm未満、90nm未満、もしくは80nm未満、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、もしくは150nm(またはその任意の分率もしくはその中の範囲)の寸法を有する。このようにして形成された粒子は凝集せず、任意に、均一な粒径を達成するように寸法調整される。
【0331】
必要とされる場合、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、リポソームを寸法調整するために利用可能な方法のうちのいずれかによって寸法調整することができる。寸法調整は、所望の寸法範囲および比較的狭い粒径の分布を達成するために行われてもよい。
【0332】
粒子を所望の寸法に寸法調整するために複数の技法が利用可能である。リポソームのために使用され、本粒子にも同等に適用可能な1つの寸法調整方法は、米国特許第4,737,323号に記載され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。粒子懸濁液を液槽超音波処理またはプローブ超音波処理のいずれかによって超音波処理することにより、約50nm未満の寸法の粒子までの寸法漸減がもたらされる。均一化は、より大きい粒子をより小さい粒子へと断片化するためにせん断エネルギーに依存する、別の方法である。典型的な均一化手順において、粒子は、典型的に約60~約80nmの間の、選択される粒径が観察されるまで、標準の乳濁液ホモジナイザーを通じて再循環させられる。両方の方法において、粒径分布は、従来のレーザビーム粒径識別、またはQELSによって監視することができる。
【0333】
細孔ポリカーボネート膜または不均整のセラミック膜を通した粒子の押出しもまた、粒径を比較的明確な寸法分布へと低減するために有効な方法である。典型的に、懸濁液は、所望の粒径分布が達成されるまで、膜を通して1回以上循環させられる。粒子は、寸法の段階的低減を達成するために、順次に小さくなる細孔膜を通して押出しされてもよい。
【0334】
いくつかの実施形態において、粒子中に存在する核酸は、例えば、米国特許出願第09/744,103号に記載されるように予め凝縮され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0335】
他の実施形態において、方法は、本組成物を使用して細胞のリポフェクションを達成するのに有用である、非脂質ポリカチオンを添加することをさらに含んでもよい。好適な非脂質ポリカチオンの例としては、臭化ヘキサジメトリン(POLYBRENE(登録商標)の商標名の下に、Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wisconsin,USAから販売される)またはヘキサジメトリン他の塩が挙げられる。他の好適なポリカチオンには、例えば、ポリ-L-オルニチン、ポリ-L-アルギニン、ポリ-L-リジン、ポリ-D-リジン、ポリアリルアミン、およびポリエチレンイミンの塩が含まれる。これらの塩の添加は、好ましくは、粒子が形成された後である。
【0336】
いくつかの実施形態において、形成された核酸-脂質粒子(例えば、LNP)中の核酸対脂質比(質量/質量比)は、約0.01~約0.2、約0.05~約0.2、約0.02~約0.1、約0.03~約0.1、または約0.01~約0.08の範囲であろう。出発物質の比率(投入量)もまた、この範囲内となる。他の実施形態において、粒子調製は、10mgの総脂質当たり約400μgの核酸、または約0.01~約0.08の核酸対脂質の質量比、およびより好ましくは、50μgの核酸当たり1.25mgの総脂質に対応する約0.04の核酸対脂質の質量比を使用する。他の好ましい実施形態において、粒子は、約0.08の核酸:脂質の質量比を有する。
【0337】
他の実施形態において、形成された核酸-脂質粒子(例えば、LNP)中の脂質対核酸比(質量/質量比)は、約1(1:1)~約100(100:1)、約5(5:1)~約100(100:1)、約1(1:1)~約50(50:1)、約2(2:1)~約50(50:1)、約3(3:1)~約50(50:1)、約4(4:1)~約50(50:1)、約5(5:1)~約50(50:1)、約1(1:1)~約25(25:1)、約2(2:1)~約25(25:1)、約3(3:1)~約25(25:1)、約4(4:1)~約25(25:1)、約5(5:1)~約25(25:1)、約5(5:1)~約20(20:1)、約5(5:1)~約15(15:1)、約5(5:1)~約10(10:1)の範囲、または約5(5:1)、6(6:1)、7(7:1)、8(8:1)、9(9:1)、10(10:1)、11(11:1)、12(12:1)、13(13:1)、14(14:1)、15(15:1)、16(16:1)、17(17:1)、18(18:1)、19(19:1)、20(20:1)、21(21:1)、22(22:1)、23(23:1)、24(24:1)、もしくは25(25:1)、またはその任意の分率もしくはその中の範囲であろう。出発物質の比率(投入量)もまた、この範囲
内となる。
【0338】
前述のように、複合脂質は、CPLをさらに含んでもよい。LNP-CPL(CPL含有LNP)を作製するための多様な一般的方法が本明細書に考察される。2つの一般的技法としては、「後挿入(post-insertion)」技法、つまり、例えば、予め形成されたLNPへの、CPLの挿入、およびCPLが、例えば、LNP形成ステップ中に脂質混合物に含められる、「標準」技法が挙げられる。後挿入技法は、CPLを主にLNP二重層膜の外面に有するLNPをもたらすが、一方で標準技法は、CPLを内面および外面の両方に有するLNPを提供する。この方法は、リン脂質(コレステロールを含有し得る)から作製される小胞に、およびまたPEG-脂質(PEG-DAAおよびPEG-DAG等)を含有する小胞にも、特に有用である。LNP-CPLを作製する方法は、例えば、米国特許第5,705,385号、同第6,586,410号、同第5,981,501号、同第6,534,484号、および同第6,852,334号、米国特許出願公開第2002/0072121号、ならびにPCT公開第WO 00/62813号に教示され、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0339】
VII. キット
本発明はまた、キット形態での脂質粒子(例えば、LNP)も提供する。いくつかの実施形態において、キットは、脂質粒子の種々の要素(例えば、核酸等の活性剤または治療剤および粒子の個々の脂質構成成分)を保持するために区画化された容器を含む。好ましくは、キットは、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)を保持する容器(例えば、バイアルまたはアンプル)を含み、この粒子は、本明細書に記載されるプロセスのうちの1つによって生成される。ある特定の実施形態において、キットは、エンドソーム膜不安定化剤(例えば、カルシウムイオン)をさらに含んでもよい。キットは典型的に、本発明の粒子組成物を、薬学的に許容される担体中の懸濁液または脱水型でのいずれかとして、それらの再水和(凍結乾燥されている場合)および投与のための指示書とともに含有する。
【0340】
本発明の脂質粒子は、目的とする特定の組織、臓器、または腫瘍を優先的に標的とするように適合させることができる。いくつかの事例において、1:57脂質粒子(例えば、LNP)製剤を使用して、肝臓(例えば、正常な肝臓組織)を優先的に標的とすることができる。他の事例において、7:54脂質粒子(例えば、LNP)製剤を使用して、肝臓腫瘍および肝臓の外側の腫瘍等の固形腫瘍を優先的に標的とすることができる。好ましい実施形態において、本発明のキットは、これらの肝臓指向性および/または腫瘍指向性の脂質粒子を含み、この粒子は、懸濁液としてまたは脱水型で容器中に存在する。
【0341】
ある特定の他の事例において、粒子の標的化をさらに向上させるために、脂質粒子の表面に結合された標的化部分を有することが望ましい場合がある。標的化部分(例えば、抗体、タンパク質等)を脂質(本粒子において使用されるもの等)に結合する方法は、当業者に知られている。
【0342】
VIII. 脂質粒子の投与
一旦形成されると、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、活性剤または治療剤(例えば、干渉RNA等の核酸)の細胞内への導入に有用である。したがって、本発明はまた、核酸(例えば、干渉RNA)等の活性剤または治療剤を細胞内に導入するための方法も提供する。いくつかの事例において、細胞は、例えば、肝臓組織内に存在する肝細胞(hepatocyte)等の肝臓細胞(liver cell)である。他の事例において、細胞は、例えば、固形腫瘍中に存在する腫瘍細胞等の腫瘍細胞である。本方法は、上述のように粒子を形成し、次いで活性剤または治療剤の細胞への送達が生じるのに十分な一定期間にわたって粒子を細胞と接触させることによって、インビトロまたはインビボで行われる。
【0343】
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、それらが混合されるまたは接触させられる、ほぼいずれの細胞型にも吸着させることができる。一旦吸着させらせると、粒子は、細胞の一部分によって形質膜陥入され得るか、脂質を細胞膜と交換し得るか、または細胞と融合し得るかのいずれかである。粒子の活性剤または治療剤(例えば、核酸)部分の移入または組み込みは、これらの経路のうちのいずれか1つを介して起こり得る。特に、融合が起こるとき、粒子膜は、細胞膜内に組み込まれ、粒子の内容物は、細胞内液と組み合わさる。
【0344】
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、単独で、または投与経路および標準的な薬務に従って選択される薬学的に許容される担体(例えば、生理食塩水またはリン酸緩衝液)と混合してのいずれかで、投与することができる。概して、生理緩衝食塩水(例えば、135~150mM NaCl)が薬学的に許容される担体として用いられるであろう。他の好適な担体には、アルブミン、リポタンパク質、グロブリン等の安定性向上のための糖タンパク質を含む、例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシン等が含まれる。さらなる好適な担体は、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.(1985)に記載される。本明細書に使用される際、「担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド等が挙げられる。「薬学的に許容される」という表現は、ヒトに投与されるときにアレルギー性のまたは同様の不都合な反応をもたらさない、分子実体および組成物を指す。
【0345】
薬学的に許容される担体は、概して脂質粒子形成に次いで添加される。したがって、脂質粒子(例えば、LNP)が形成された後に、粒子は、生理緩衝食塩水等の薬学的に許容される担体中に希釈することができる。
【0346】
薬学的製剤中の粒子の濃度は、大幅に、すなわち、約0.05重量%未満、通常は約2~5重量%または少なくとも約2~5重量%から、最大約10~90重量%まで変動し得、主に流体の体積、粘度等によって、選択される特定の投与様式に従って、選択されるであろう。例えば、濃度は、治療に関連する流体負荷を低下させるために増加させられてもよい。これは、アテローム性動脈硬化症関連の鬱血性心不全または重度の高血圧を有する患者において特に望ましい場合がある。あるいは、刺激性の脂質から構成される粒子は、投与部位の炎症を軽減するために低濃度に希釈されてもよい。
【0347】
本発明の薬学的組成物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌されてもよい。水溶液は、使用のためにパッケージ化するか、または無菌条件下で濾過し、凍結乾燥することができ、この凍結乾燥された調製物が、投与前に滅菌水溶液と組み合わされる。組成物は、生理的条件に近づけるために必要に応じて、pH調整剤および緩衝剤、等張性調整剤等、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウム等の、薬学的に許容される補助材料を含有することができる。さらに、粒子懸濁液は、保管時に脂質をフリーラジカルおよび脂質過酸化損傷に対して保護する、脂質保護剤を含んでもよい。αトコフェロール等の親油性のフリーラジカル消去剤、およびフェリオキサミン等の水溶性の鉄特異的キレート剤が好適である。
【0348】
いくつかの実施形態において、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、干渉RNA配列(例えば、siRNA)を含む1つ以上の核酸の治療的送達ための方法において特に有用である。特に、目的とする1つ以上の標的核酸配列または遺伝子の転写および/または翻訳を下方制御またはサイレンシングすることによる、哺乳動物(例えば、マウス等の齧歯類またはヒト、チンパンジー、もしくはサル等の霊長類)における疾患または障害の治療のためのインビトロおよびインビボ方法を提供することが、本発明の目的である。非限定的な例として、本発明の方法は、干渉RNA(例えば、siRNA)の、哺乳類対象の肝臓および/または腫瘍へのインビボ送達に有用である。ある特定の実施形態において、疾患または障害は、遺伝子の発現および/または過剰発現に関連し、この遺伝子の発現または過剰発現が、干渉RNA(例えば、siRNA)によって低減される。ある特定の他の実施形態において、治療有効量の脂質粒子が哺乳動物に投与され得る。いくつかの事例において、干渉RNA(例えば、siRNA)は、LNPへと製剤化され、この粒子が、このような治療を必要とする患者に投与される。他の事例において、細胞が患者から取り出され、干渉RNAがインビトロで(例えば、本明細書に記載されるLNPを使用して)投与され、この細胞が患者に再注入される。
【0349】
A. インビボ投与
インビボ療法のための全身送達、例えば、循環等の身体のシステムを介した遠位の標的細胞への治療的核酸の送達は、PCT公開第WO 05/007196号、同第WO 05/121348号、同第WO 05/120152号、および同第WO 04/002453号に記載されるもの等の核酸-脂質粒子を使用して達成されてきており、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明はまた、核酸を血清中のヌクレアーゼ分解から保護し、非免疫原性であり、分包が小さく、かつ反復投薬に好適である、完全にカプセル封入された脂質粒子も提供する。
【0350】
インビボ投与のために、投与は、当該技術分野で既知の任意の様態、例えば、注射、経口投与、吸入(例えば、鼻腔内または気管内)、経皮適用、または直腸投与によるものであり得る。投与は、単回用量または分割用量を介して遂行することができる。薬学的組成物は、非経口で、すなわち、関節内に、静脈内に、腹腔内に、皮下に、または筋肉内に投与することができる。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、ボーラス注射によって静脈内にまたは腹腔内に投与される(例えば、米国特許第5,286,634号を参照されたい)。細胞内核酸送達はまた、Straubringer et al.,Methods Enzymol.,101:512(1983)、Mannino et al.,Biotechniques,6:682(1988)、Nicolau et al.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.,6:239(1989)、およびBehr,Acc.Chem.Res.,26:274(1993)にも考察されている。脂質に基づく治療薬を投与するさらに他の方法は、例えば、米国特許第3,993,754号、同第4,145,410号、同第4,235,871号、同第4,224,179号、同第4,522,803号、および同第4,588,578号に記載される。脂質粒子は、疾患部位での直接注射によって、または疾患部位から遠位の部位での注射によって、投与することができる(例えば、Culver,HUMAN GENE THERAPY,MaryAnn Liebert,Inc.,Publishers,New York.pp.70-71(1994)を参照されたい)。上述の参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0351】
本発明の脂質粒子(例えば、LNP)が静脈内に投与される場合の実施形態において、粒子の総注射量の少なくとも約5%、10%、15%、20%、または25%が、注射の約8、12、24、36、または48時間後に血漿中に存在する。他の実施形態において、脂質粒子の総注射量の約20%、30%、40%超、および最大約60%、70%、または80%が、注射の約8、12、24、36、または48時間後に血漿中に存在する。ある特定の事例において、複数の粒子の約10%超が、注射の約1時間後に哺乳動物の血漿中に存在する。ある特定の他の事例において、脂質粒子の存在は、粒子の投与の少なくとも約1時間後に検出可能である。ある特定の実施形態において、核酸等の治療剤の存在は、肺、肝臓、腫瘍の細胞内で、または炎症部位で、投与後の約8、12、24、36、48、60、72、または96時間時点で検出可能である。他の実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)の標的配列の発現の下方制御は、投与後の約8、12、24、36、48、60、72、または96時間時点で検出可能である。さらに他の実施形態において、干渉RNA(例えば、siRNA)の標的配列の発現の下方制御は、肝臓細胞(例えば、肝細胞)、腫瘍細胞内で、または炎症部位の細胞内で優先的に生じる。さらなる実施形態において、投与部位に近位もしくは遠位の部位の細胞内、または肺、肝臓、もしくは腫瘍の細胞内における干渉RNA(例えば、siRNA)の存在または効果は、投与後の約12、24、48、72、もしくは96時間時点で、または約6、8、10、12、14、16、18、19、20、22、24、26、もしくは28日時点で検出可能である。さらなる実施形態において、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、非経口でまたは腹腔内に投与される。
【0352】
本発明の組成物は、単独でまたは他の好適な構成成分と組み合わせてのいずれかで、吸入(例えば、鼻腔内にまたは気管内に)を介して投与されるエアロゾル製剤(すなわち、それらは「噴霧され」得る)へと作製することができる(Brigham et al.,Am.J.Sci.,298:278(1989)を参照されたい)。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の、加圧された許容される噴射剤中に配置することができる。
【0353】
ある特定の実施形態において、薬学的組成物は、鼻腔内スプレー、吸入、および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達されてもよい。鼻腔エアロゾルスプレーを介して核酸組成物を肺に直接送達するための方法は、例えば、米国特許第5,756,353号および同第5,804,212号に記載されている。同じく、鼻腔内微粒子樹脂およびリゾホスファチジル-グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号)を使用した薬物の送達もまた、薬学技術分野で周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroetheylene)支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達が、米国特許第5,780,045号に記載される。上述の特許の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0354】
例えば、関節内(intraarticular)(関節内(in the joints))、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、および皮下経路によるもの等の非経口投与に好適な製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を意図される受容者の血液と等張性にする溶質を含有し得る、水性および非水性の等張滅菌注射液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、および防腐剤を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。本発明の実施において、組成物は、好ましくは、例えば、静脈内注入によって、経口で、局所的に、腹腔内に、膀胱内に、または髄腔内に投与される。
【0355】
概して、静脈内に投与されるとき、脂質粒子製剤は、好適な薬学的担体とともに製剤化される。多くの薬学的に許容される担体が、本発明の組成物および方法において用いられてもよい。本発明において使用するための好適な製剤は、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,Mack Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.(1985)に見出される。例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシン等の、多様な水性担体が使用されてもよく、アルブミン、リポタンパク質、グロブリン等の安定性向上のための糖タンパク質を含んでもよい。概して、生理緩衝食塩水(135~150mM NaCl)が薬学的に許容される担体として用いられるであろうが、他の好適な担体でも十分であろう。これらの組成物は、濾過等の従来のリポソーム滅菌技法によって滅菌することができる。組成物は、生理的条件に近づけるために必要に応じて、pH調整剤および緩衝剤、等張性調整剤等、湿潤剤等、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン等の、薬学的に許容される補助材料を含有することができる。これらの組成物は、上に参照される技法を使用して滅菌することができるか、または代替的に、それらは滅菌条件下で生成することができる。結果として生じる水溶液は、使用のためにパッケージ化され得るか、または無菌条件下で濾過され、凍結乾燥させられ得、この凍結乾燥された調製物が、投与前に滅菌水溶液と組み合わせられる。
【0356】
ある特定に適用において、本明細書に開示される脂質粒子は、経口投与を介して個体に送達されてもよい。粒子は、賦形剤とともに組み込まれ、摂取できる錠剤(ingestible tablets)、口腔錠、トローチ、カプセル、丸薬、ロゼンジ、エリキシル、マウスウォッシュ、懸濁液、経口スプレー、シロップ、ウエハ等の形態で使用されてもよい(例えば、米国特許第5,641,515号、同第5,580,579号、および同第5,792,451号を参照されたく、これらの開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。これらの経口剤形はまた、次のものを含有してもよい:結合剤、ゼラチン;賦形剤、滑沢剤、および/または香味剤。単位剤形がカプセルであるとき、それは、上述の物質に加えて、液体担体を含有してもよい。種々の他の物質が、コーティング剤として、または投薬単位の物理的形態を他の方法で修正するために、存在してもよい。当然のことながら、いかなる単位剤形を調製する際に使用されるいかなる物質も、薬学的に純粋であり、用いられる量で実質的に非毒性であるべきである。
【0357】
典型的に、これらの経口製剤は、少なくとも約0.1%の脂質粒子またはそれよりも多い脂質粒子を含有してもよいが、粒子の割合は、当然のことながら多様であり得、好都合に、総製剤の重量または体積の約1%もしくは2%~約60%もしくは70%の間またはそれよりも多くてもよい。必然的に、各治療上有用な組成物中の粒子の量は、好適な投薬量が化合物の任意の所与の単位用量で得られるような方式で調製され得る。可溶性、バイオアベイラビリティ、生体半減期、投与経路、生成物の貯蔵寿命等の要因、ならびに他の薬理的考慮事項が、このような薬学的製剤を調製する技術分野の専門家によって企図されることになり、したがって、多様な投薬量および治療レジメンが望ましいことがある。
【0358】
経口投与に好適な製剤は、次のものからなることができる:(a)水、食塩水、またはPEG 400等の希釈剤中に懸濁させた核酸(例えば、干渉RNA)等の有効量のパッケージ化された治療剤等の、液体溶液、(b)それぞれが液体、固体、顆粒、またはゼラチンとして核酸(例えば、干渉RNA)等の既定量の治療剤を含有する、カプセル、小袋、または錠剤、(c)適切な液体中の懸濁液、および(d)好適な乳濁液。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ならびに他の賦形剤、着色剤、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤、色素、崩壊剤、および薬学的に適合性の担体のうちの1つ以上を含むことができる。ロゼンジ形態は、香味、例えば、スクロース中に核酸(例えば、干渉RNA)等の治療剤、ならびに治療剤に加えて、当該技術分野で既知の担体を含有するゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア乳濁液、ゲル等の、不活性基剤中に治療剤を含む香錠を含むことができる。
【0359】
脂質粒子は、それらの使用の別の例において、広範な局所剤形に組み込むことができる。例えば、LNP等の核酸-脂質粒子を含有する懸濁液は、ゲル、油、乳濁液、局所クリーム、ペースト、軟膏、ローション、泡状物質、ムースとして、製剤化し、投与することができる。
【0360】
本発明の脂質粒子の薬学的調製物を調製するとき、中空粒子または外部表面と会合した核酸等の治療剤を有する粒子を低減または除去するために精製された粒子の量を使用することが好ましい。
【0361】
本発明の方法は、多様な宿主において実施されてもよい。好ましい宿主には、霊長類(例えば、ヒトおよびチンパンジーならびに他の非ヒト霊長類)、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類(例えば、ラットおよびマウス)、ウサギ、およびブタ等の哺乳類種が含まれる。
【0362】
投与される粒子の量は、治療剤(例えば、核酸)対脂質の比率、使用される特定の治療剤(例えば、核酸)、治療されている疾患または障害、患者の年齢、体重、および病態、ならびに臨床医の判断に依存するであろうが、概して、体重1キログラム当たり約0.01~約50mgの間、好ましくは約0.1~約5mg/体重kg、または1投与(例えば、注射)当たり約108~1010粒子であろう。
【0363】
B. インビトロ投与
インビトロ適用のために、核酸(例えば、干渉RNA)等の治療剤の送達は、植物起源または動物起源の細胞、脊椎動物または無脊椎動物、および任意の組織または型の細胞にかかわらず、培養において成長させられる任意の細胞へと行うことができる。好ましい実施形態において、細胞は、動物細胞、より好ましくは哺乳類細胞、および最も好ましくはヒト細胞(例えば、腫瘍細胞または肝細胞)である。
【0364】
細胞と脂質粒子との間の接触は、インビトロで行われるとき、生物学的に適合性の培地中で起こる。粒子の濃度は、特定の適用に応じて大幅に異なるが、概して約1μmol~約10mmolであろう。脂質粒子での細胞の処理は、概して、生理的温度(約37oC)で、約1~48時間、好ましくは約2~4時間の一定期間にわたって、行われる。
【0365】
好ましい実施形態の1つの群において、脂質粒子懸濁液は、約103~約105細胞/mL、より好ましくは約2×104細胞/mLの細胞密度を有する、60~80%コンフルエントにプレートされた細胞に添加される。細胞に添加される懸濁液の濃度は、好ましくは約0.01~0.2μg/mL、より好ましくは約0.1μg/mLの濃度である。
【0366】
細胞の組織培養物が必要とされ得る範囲内で、それは当該技術分野で周知である。例えば、Freshney,Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,3rd Ed.,Wiley-Liss,New York(1994)、Kuchler et al.,Biochemical Methods in Cell Culture and Virology,Dowden,Hutchinson and Ross,Inc.(1977)、およびその中に引用される参考文献は、細胞の培養に対する一般的手引きを提供する。培養された細胞系は、しばしば、細胞の単層の形態となろうが、細胞懸濁液もまた使用される。
【0367】
Endosomal Release Parameter(ERP)アッセイを使用して、本発明のLNPまたは他の脂質粒子の送達効率を最適化することができる。ERPアッセイは、米国特許出願公開第2003/0077829号に詳述され、この開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。より詳細には、ERPアッセイの目的は、エンドソーム膜の結合/取り込みまたはエンドソーム膜との融合/その不安定化に対するそれらの相対的効果に基づいて、LNPの種々のカチオン性脂質およびヘルパー脂質構成成分または他の脂質粒子の効果を識別することである。このアッセイは、LNPまたは他の脂質粒子の各構成成分がどのように送達効率に影響を及ぼすかを定量的に決定して、それによってLNPまたは他の脂質粒子を最適化することを可能にする。通常、ERPアッセイは、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)等)の発現を測定し、いくつかの事例においては、発現プラスミドに対して最適化されたLNP製剤もまた、干渉RNAをカプセル封入するのに適切であろう。他の事例において、ERPアッセイは、干渉RNA(例えば、siRNA)の存在または不在下で標的配列の転写または翻訳の下方制御を測定するように適応させることができる。種々のLNPまたは他の脂質粒子の各々についてERPを比較することによって、最適化された系、例えば、細胞内の最大の取り込みを有するLNPまたは他の脂質粒子を容易に決定することができる。
【0368】
C. 脂質粒子の送達のための細胞
本発明の組成物および方法は、インビボおよびインビトロで、多種多様な細胞型を処理するために使用される。好適な細胞には、肝細胞、細網内皮細胞(例えば、単球、マクロファージ等)、線維芽細胞、内皮細胞、血小板細胞、ウイルスに感染したおよび/またはウイルスに感染しやすい他の細胞型、造血前駆(幹)細胞、角化細胞、骨格筋および平滑筋細胞、骨芽細胞、ニューロン、静止リンパ球、最終分化細胞、分裂速度が遅いまたは分裂していない(noncycling)初代細胞、実質細胞、リンパ系細胞、上皮細胞、骨細胞等が含まれるが、これらに限定されない。
【0369】
特定の実施形態において、核酸(例えば、干渉RNA)等の活性剤または治療剤は、肝臓癌細胞、肺癌細胞、結腸癌細胞、直腸癌細胞、肛門癌細胞、胆管癌細胞、小腸癌細胞、胃癌(stomach)(胃癌(gastric))細胞、食道癌細胞、胆嚢癌細胞、膵臓癌細胞、虫垂癌細胞、乳癌細胞、卵巣癌細胞、子宮頸癌細胞、前立腺癌細胞、腎臓癌細胞、中枢神経系の癌細胞、膠芽腫瘍細胞、皮膚癌細胞、リンパ腫細胞、絨毛腫瘍細胞、頭頸部癌細胞、骨肉腫腫瘍細胞、および血液癌細胞を含むが、これらに限定されない癌細胞(例えば、固形腫瘍の細胞)に送達される。
【0370】
核酸(例えば、干渉RNA)をカプセル封入するLNP等の脂質粒子のインビボ送達は、任意の細胞型の標的化細胞に適合される。本方法および組成物は、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類(例えば、マウス、ラット、およびモルモット)、ウサギ、ブタ、および霊長類(例えば、サル、チンパンジー、およびヒト)等の哺乳動物を含む、多種多様な脊椎動物の細胞とともに用いることができる。
【0371】
D. 脂質粒子の検出
いくつかの実施形態において、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、対象において、約1、2、3、4、5、6、7、8時間、またはそれを超える時間時点で検出可能である。他の実施形態において、本発明の脂質粒子(例えば、LNP)は、対象において、粒子の投与後の約8、12、24、48、60、72、もしくは96時間、または約6、8、10、12、14、16、18、19、22、24、25、もしくは28日時点で検出可能である。粒子の存在は、対象からの細胞、組織、または他の生体試料内で検出され得る。粒子は、例えば、粒子の直接検出、核酸(例えば、siRNA)配列等の治療的干渉RNAの検出、目的の標的配列の検出(すなわち、目的の配列の発現または低減された発現を検出することによって)、またはそれらの組み合わせによって、検出されてもよい。
【0372】
1. 粒子の検出
LNP等の本発明の脂質粒子は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して検出することができる。例えば、標識が、当該技術分野で既知の方法を使用して脂質粒子の構成成分に直接的または間接的に結合され得る。多種多様な標識を使用することができ、このうち標識の選定は、必要とされる感受性、脂質粒子構成成分との複合体化の容易さ、安定性要件、ならびに利用可能な器具類および自由に使用できる設備に依存する。好適な標識には、蛍光色素等のスペクトル標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびOregon Green(商標)等のフルオレセインおよび誘導体;テキサスレッド、テトラローダミン(tetrarhodimine)イソチオシアネート(TRITC)等のローダミンおよび誘導体、ジゴキシゲニン、ビオチン、フィコエリトリン、AMCA、CyDyes(商標)等;3H、125I、35S、14C、32P、33P等の放射標識;西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素;コロイド金もしくは着色ガラスまたはポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等のプラスチックビーズ等の分光測色スペクトル比色定量標識が含まれるが、これらに限定されない。標識は、当該技術分野で既知の任意の手段を使用して検出することができる。
【0373】
2. 核酸の検出
核酸(例えば、干渉RNA)は、本明細書において、当業者に周知の多数の手段によって検出および定量化される。核酸の検出は、サザン分析、ノーザン分析、ゲル電気泳動、PCR、放射標識、シンチレーション計数、および親和性クロマトグラフィーといった、周知の方法によって処理され得る。分光光度法、放射線撮影法、電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、および高拡散クロマトグラフィー(hyperdiffusion chromatography)といった追加の分析生化学法もまた、利用可能である。
【0374】
核酸ハイブリダイゼーション形式の選択は、重要ではない。種々の核酸ハイブリダイゼーション形式が、当業者に既知である。例えば、一般的な形式には、サンドイッチアッセイおよび競合または置換アッセイが挙げられる。ハイブリダイゼーション技術は、概して、例えば、“Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,”Eds.Hames and Higgins,IRL Press(1985)に記載されている。
【0375】
ハイブリダイゼーションアッセイの感受性は、検出される標的核酸を増やす、核酸増幅系の使用を通じて強化することができる。分子プローブとして使用するための配列の増幅または後続のサブクローニングのための核酸フラグメントの生成に好適なインビトロ増幅技術が、既知である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅、および他のRNAポリメラーゼに媒介される技術(例えば、NASBA(商標))を含む、このようなインビトロ増幅技術を通して当業者に示すのに十分な技術の例は、Sambrook et al.,In Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(2000)およびAusubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,eds.,Current Protocols,Greene Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.(2002)、ならびに米国特許第4,683,202号、PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications(Innis et al.eds.)Academic Press Inc.San Diego,CA(1990)、Arnheim&Levinson(October 1,1990),C&EN36、The Journal Of NIH Research,3:81(1991)、Kwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:1173(1989)、Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:1874(1990)、Lomell et al.,J.Clin.Chem.,35:1826(1989)、Landegren et al.,Science,241:1077(1988)、Van Brunt,Biotechnology,8:291(1990)、Wu and Wallace,Gene,4:560(1989)、Barringer et al.,Gene,89:117(1990)、およびSooknanan and Malek,Biotechnology,13:563(1995)に見出される。インビトロで増幅された核酸をクローニングする改善された方法は、米国特許第5,426,039号に記載されている。当該技術分野で説明されている他の技術は、核酸配列に基づく増幅(NASBA(商標),Cangene,Mississauga,Ontario)およびQβ-レプリカーゼ系である。これらの系は、PCRまたはLCRのプライマーが、選択配列が存在するときにのみ伸長または結合されるように設計される場合に、突然変異体を直接的に識別するために使用され得る。あるいは、選択配列は、一般に、例えば、非特異的PCRプライマーを使用して増幅し、その後で、増幅された標的領域を、突然変異を示す特定の配列についてプローブすることができる。上述の参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0376】
例えば、インビトロ増幅方法においてプローブとして使用するため、遺伝子プローブとして使用するため、または阻害性成分としての核酸は、典型的に、Beaucage et al.,Tetrahedron Letts.,22:1859 1862(1981)に記載される固相ホスホラミダイトトリエステル法に従って、例えば、Needham VanDevanter et al.,Nucleic Acids Res.,12:6159(1984)に記載のように、自動合成器を使用して、化学合成される。必要な場合、ポリヌクレオチドの精製は、典型的に、天然アクリルアミドゲル電気泳動またはPearson et al.,J.Chrom.,255:137 149(1983)に記載されるアニオン交換HPLCのいずれかによって行われる。合成ポリヌクレオチドの配列は、Maxam and Gilbert(1980)in Grossman and Moldave(eds.)Academic Press,New York,Methods in Enzymology,65:499の化学分解法を使用して検証することができる。
【0377】
転写のレベルを判定するための代替的な手段は、インサイツハイブリダイゼーションである。インサイツハイブリダイゼーションアッセイは、周知であり、概して、Angerer et al.,Methods Enzymol.,152:649(1987)に記載されている。インサイツハイブリダイゼーションアッセイにおいて、細胞は、固体支持体、典型的にはガラススライドに固定される。DNAをプローブする場合、細胞は、熱またはアルカリで変性させる。細胞を、次いで、中等度の温度でハイブリダイゼーション溶液と接触させて、標識化された特定のプローブのアニーリングを可能にする。プローブは、好ましくは、放射同位体または蛍光レポーターで標識化される。
【実施例0378】
IX. 実施例
本発明は、具体的な実施例を用いてより詳細に記載される。次の実施例は、例示説明の目的で提供され、本発明をいかなる様態でも限定することを意図されない。当業者であれば、変更または修正して本質的に同様の結果を得ることができる、多様な重要性の低いパラメータを容易に認識するであろう。
【0379】
一般的方法:別途定めのない限り、全ての反応を室温で、窒素の陽圧下で行った。全ての試薬を商業的供給源から購入し、さらに精製することなく使用した。反応進行をシリカゲル60 F254(0.25mm、E.Merck)上のTLCによって監視した。スポットをUV光下でまたはアニスアルデヒドでの炭化もしくは硫酸銅発色によって検出した。全てのカラムクロマトグラフィーをシリカゲル60(40~60μM)上で行った。シリカゲルと粗生成物との間の比率は、100~50:1の範囲であった。1H NMRスペクトルは、300MHzまたは400MHzで記録し、化学シフトには、残留プロトン性溶媒(7.27ppm CHCl3)を内部標準とした。有機溶液を真空下で、40℃未満で濃縮した。
(実施例1)
【0380】
この実施例は、本発明の例となるトリアルキルカチオン性脂質の合成を記載する。
化合物9のための合成スキーム
【化12】
化合物2の合成
【化13】
【0381】
無水ジクロロメタン(200mL)中の(Z)-デカ-4-エン-1-オール9(20g、128.0mmol)およびトリエチルアミン(26.7mL、191.9mmol)の冷却した溶液(0℃)に、メタンスルホニルクロリド(14.9mL、191.9mmol)を緩徐に添加した。溶液を室温で30分間撹拌し、次いでジクロロメタン(100mL)で希釈した。溶液を飽和炭酸水素ナトリウム(3×150mL)で洗浄し、次いで組み合わせた水性洗浄物質をジクロロメタン(150mL)で抽出した。組み合わせたジクロロメタン抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残渣をシリカのパッド(100%ジクロロメタン)に通して濾過して、黄色の油(28.5g、95%)として(Z)-デカ-4-エニルメタンスルホネート2を得た。Rf0.5(100%CH2Cl2)。
化合物3の合成
【化14】
【0382】
2-メチルテトラヒドロフラン(280mL)中の(Z)-デカ-4-エニルメタンスルホネート2(28.5g、121.1mmol)の溶液に、テトラブチルアンモニウムブロミド(48.8g、151.4mmol)を添加した。溶液を80℃で30分間、窒素下で撹拌し、次いでエーテル(150mL)で希釈し、水(75mL)およびブライン(75mL)で洗浄した。エーテル溶液を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。淡黄色の油をシリカのパッド(100%ヘキサン)に通して濾過して、無色の油(23.0g、87%)として(Z)-1-ブロモデカ-4-エン3を得た。
Rf0.9(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物4の合成
【化15】
【0383】
窒素下で無水THF(6mL)中の削り状マグネシウム(1.4g、55.1mmol)の懸濁液に、THF(12mL)中の(Z)-1-ブロモデカ-4-エン3(11.5g、52.5mmol)の溶液を緩徐に添加した。反応混合物を45℃で30分間、窒素下で撹拌した。溶液を0℃まで冷却し、THF(12mL)中のギ酸エチル(4.1g、55.1mmol)の溶液を5分間にわたって滴加した。溶液を室温で2時間撹拌し、次いで-15℃まで冷却し、水(10mL)、続いて5M塩酸(15mL)で緩徐に反応停止処理した。マグネシウムが完全に溶解した時点で、溶液を水(50mL)で希釈し、ヘキサン(3×75mL)で抽出した。組み合わせた抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。得られた残渣をエタノール(40mL)中に溶解させ、水酸化カリウム(4.4g、78.7mmol))の水溶液(10mL)を添加した。反応混合物を30分間激しく撹拌し、次いで真空下で濃縮して、エタノールを除去した。溶液を次いで5M塩酸(15mL)で酸性にし、ヘキサン(3×75mL)で抽出した。組み合わせたヘキサン抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(100%ヘキサン~ヘキサン中2.5%酢酸エチル)によって精製して、淡黄色の油(5.6g、35%)として(6Z,15Z)-ヘンイコサ-6,15-ジエン-11-オール4を得た。Rf0.4(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物5の合成
【化16】
【0384】
無水ジクロロメタン(50mL)中の(6Z,15Z)-ヘンイコサ-6,15-ジエン-11-オール4(5.6g、18.2mmol)およびトリエチルアミン(3.8mL、27.2mmol)の冷却した溶液(0℃)に、メタンスルホニルクロリド(2.1mL、27.2mmol)を緩徐に添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いでジクロロメタン(50mL)で希釈した。溶液を飽和炭酸水素ナトリウム(3×25mL)で洗浄し、次いで組み合わせた水性洗浄物質をジクロロメタン(50mL)で抽出した。組み合わせたジクロロメタン抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。淡黄色の油をシリカのパッド(100%DCM)に通して濾過して、粗製の無色の油(7.6g)として(6Z,15Z)-ヘンイコサ-6,15-ジエン-11-イルメタンスルホネート5を得た。Rf0.8(100%CH2Cl2)。
化合物6の合成
【化17】
【0385】
無水DMF(60mL)中の(6Z,15Z)-ヘンイコサ-6,15-ジエン-11-イルメタンスルホネート5(7.6g、19.6mmol)およびシアン化ナトリウム(4.8g、98.1mmol)の溶液を60℃まで一晩加熱した。完了すると、反応混合物を水(200mL)中に注ぎ、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。組み合わせた酢酸エチル抽出物をブライン(3×100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。生成物をカラムクロマトグラフィー(100%ヘキサン~ヘキサン中1%酢酸エチル)によって精製して、無色の油(6.6g、97%)として(Z)-2-((Z)-デカ-4-エニル)ドデカ-6-エンニトリル6を得た。Rf0.75(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物7の合成
【化18】
【0386】
無水ジクロロメタン(125mL)中の(Z)-2-((Z)-デカ-4-エニル)ドデカ-6-エンニトリル6(4.0g、12.6mmol)の冷却した溶液(-78℃)に、ヘキサン中の水素化ジイソブチルアルミニウムの1M溶液(5.6mL、31.5mmol)を緩徐に添加した。溶液を-15℃まで加温し、1時間撹拌した。完了すると、反応物を5%塩酸(30mL)で反応停止処理し、水素ガスの放散が終止するまで-15℃で撹拌した。溶液を次いでジクロロメタン(75mL)で希釈し、有機層を5M塩酸(100mL)で洗浄した。ジクロロメタン抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(100%ヘキサン~ヘキサン中2%酢酸エチル)によって精製して、無色の油(3.9g、97%)として(Z)-2-((Z)-デカ-4-エニル)ドデカ-6-エナール7を得た。Rf0.65(5%EtOAc-ヘキサン)。
化合物8の合成
【化19】
【0387】
テトラヒドロフラン(5mL)中の削り状マグネシウム(0.6g、23.9mmol)の懸濁液に、テトラヒドロフラン(5mL)中の(Z)-1-ブロモデカ-4-エン3(4.5g、20.5mmol)の溶液を緩徐に添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いでテトラヒドロフラン(5mL)中の(Z)-2-((Z)-デカ-4-エニル)ドデカ-6-エナール7の溶液を添加した。溶液を室温で15分間撹拌し、次いで5%塩酸(50mL)および氷(100mL)中に注いだ。溶液をエーテル(2×150mL)で抽出した。組み合わせたエーテル抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中1%酢酸エチル)によって精製して、無色の油(4.8g、76%)として(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8を得た。Rf0.45(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物9の合成
【化20】
【0388】
無水ジクロロメタン(10mL)中の(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8(0.4g、0.9mmol)、4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(0.2g、1.3mmol)、EDCI塩酸塩(0.25g、1.3mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.4mL、2.6mmol)の溶液に、ジメチルアミノピリジン(5mg)を添加した。溶液を2時間還流させ、次いで室温で2時間撹拌した。混合物を真空下で濃縮乾固し、カラムクロマトグラフィー(100%酢酸エチル)によって精製して、淡黄色の油として(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート9を得る。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.36(m、6H)、4.93(m、1H)、2.30(m、4H)、2.22(s、6H)、2.03(m、12H)、1.88(m、2H)、1.66~1.18(m、31H)、0.90(m、9H)。Rf0.3(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物11および13のための合成スキーム
【化21】
化合物10の合成
【化22】
【0389】
無水ジクロロメタン(25mL)中の(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8(2.4g、5.2mmol)、6-ブロモヘキサン酸(1.5g、7.8mmol)、EDCI塩酸塩(1.5g、7.8mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(2.0g、15.6mmol)の溶液に、ジメチルアミノピリジン(15mg)を添加した。溶液を2時間還流させ、室温まで冷却し真空下で濃縮乾固した。反応混合物をシリカゲル60(2インチ幅×10インチ長、5%EtOAc/Hexで溶出)上のカラムクロマトグラフィーによって精製して、無色の油(3.1g、94%)として(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-ブロモヘキサノエート10を得た。Rf0.5(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物11の合成
【化23】
【0390】
テフロン(登録商標)密封圧力容器中の(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-ブロモヘキサノエート10(3.1g、4.9mmol)に、エタノール中5.6Mジメチルアミン(20mL)を添加し、反応物を70°Cまで加熱し、一晩撹拌した。完了すると、反応を真空下で濃縮乾固した。残渣を酢酸エチル(100mL)中に溶解させ、炭酸水素ナトリウム溶液(2×50mL)で洗浄した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(100%EtOAc)によって精製して、淡黄色の油(2.0g、69%)として(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート11を得た、1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.36(m、6H)、4.93(m、1H)、2.27(m、10H)、2.00(m、12H)、1.63(m、6H)、1.51(m、6H)、1.28(m、25H)、0.90(m、9H)。Rf0.3(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物12の合成
【化24】
【0391】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-ブロモヘキサノエート10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル5-ブロモペンタノエート12を無色の油(3.3g、61%)として、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8(4.0g、8.7mmol)、6-ブロモ-n-吉草酸(2.4g、13.0mmol)、EDCI塩酸塩(2.5g、13.0mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(3.4g、26.0mmol)、およびジメチルアミノピリジン(10mg)から得た。Rf0.5(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物13の合成
【化25】
【0392】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート13を淡黄色の油(1.9g、62%)として、エタノール中5.6Mジメチルアミン(20mL)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.45~5.28(m、6H)、4.95~4.90(m、1H)、2.34~2.23(m、4H)、2.23~2.20(s、6H)、2.06~1.92(m、12H)、1.70~1.58(m、5H)、1.58~1.44(m、5H)、1.44~1.15(m、25H)、0.92~0.87(m、9H)。Rf0.4(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物14のための合成スキーム
【化26】
化合物14の合成
【化27】
【0393】
(6Z,16Z)-12-((Z)-ノナ-4-エン-1-イル)トリコサ-6,16-ジエン-11-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート13(200mg、0.34mmol)を含有するフラスコを排気し、窒素でバックフィルを行い(2回)、次いでPd/C(150mg、10w/w%)で処理し、その後EtOAc(10mL)中に懸濁させた。反応フラスコを次いで排気し、H2でバックフィルを行い(3回)、混合物を激しく撹拌した(18時間)。H2を次いで排気し、フラスコにN2でバックフィルを行った。反応混合物をセライトに通して濾過し、フィルターケーキをEtOAcですすぎ、濾液を濃縮した。粗物質をクロマトグラフィー(EtOAc)に供して、無色の油として12-ノニルトリコサン-11-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート14(100mg、50%)を得た。Rf0.35(10%CH3OH-CH2Cl2);1H NMR(400MHz、CDCl3、δH)4.95~4.90(m、1H)、2.31(t、2H)、2.27(t、2H)、2.21(s、6H)、1.68~1.60(m、3H)、1.58~1.42(m、5H)、1.38~1.16(m、54H)、0.88(t、6H)。
化合物19および21のための合成スキーム
【化28】
化合物15の合成
【化29】
【0394】
(Z)-デカ-4-エニルメタンスルホネート2の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-ノナ-3-エニルメタンスルホネート15を黄色の油(28.5g、92%)として、(Z)-ノナ-3-エン-1-オール(20.0g、128.0mmol)、トリエチルアミン(26.7mL、191.9mmol)、およびメタンスルホニルクロリド(14.9mL、191.9mmol)から得た。Rf0.15(30%酢酸エチル-ヘキサン)。
化合物16の合成
【化30】
【0395】
(Z)-1-ブロモデカ-4-エン3の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-1-ブロモノナ-3-エン16を無色の油(27.0g、定量)として、(Z)-デカ-4-エニルメタンスルホネート15(28.5g、129mmol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(52.0g、161.4mmol)から得た。Rf0.6(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物17の合成
【化31】
【0396】
100mL丸底フラスコに、削り状マグネシウム(0.6g、25.7mmol)および撹拌子を充填した。フラスコを熱線銃で5分間乾燥させた。フラスコにTHF(5mL)およびヨウ素上の単一粒子を充填した。THF(5mL)中の(Z)-1-ブロモノナ-3-エン(4.5g、22.0mmol)の溶液を混合物に緩徐に添加し、反応を窒素下で30分間還流させた。溶液を室温まで冷却し、THF(5mL)中の(Z)-2-((Z)-デカ-4-エニル)ドデカ-6-エナール7(4.7g、14.7mmol)の溶液を添加した。溶液を室温で一晩撹拌し、完了すると、混合物を5%HCl(50mL)および氷(100mL)中に注いだ。溶液をエーテル(2×150mL)で抽出し、組み合わせたエーテル抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(カラム:2インチ幅×8インチ長、100%ヘキサン~ヘキサン中5%酢酸エチルで溶出)によって精製して、無色の油(5.4g、82%)として(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-オール17を得た。Rf0.5(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物18の合成
【化32】
【0397】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-ブロモヘキサノエート10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-イル5-ブロモペンタノエート18を無色の油(0.9g、66%)として、(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-オール17(0.35g、0.7mmol)、5-ブロモ-n-吉草酸(0.60g、3.4mmol)、EDCI(0.60g、3.4mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.90g、6.7mmol)、およびDMAP(5mg、触媒)から得た。Rf0.5(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物19の合成
【化33】
【0398】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート19を無色の油(0.2g、24%)として、エタノール中5.6Mジメチルアミン(10mL)および(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-オール17(0.35g、0.7mmol)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.40~5.28(m、6H)、4.97~4.88(m、1H)、2.35~2.24(m、4H)、2.24~2.19(m、6H)、2.08~1.93(m、12H)、1.70~1.55(m、3H)、1.55~1.45(m、5H)、1.45~1.13(m、25H)、0.93~0.82(m、9H)。Rf0.4(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物20の合成
【化34】
【0399】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-ブロモヘキサノエート10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-イル6-ブロモヘキサノエート20を無色の油(1.4g、99%)として、(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-オール17(0.35g、0.7mmol)、6-ブロモ-n-カプロン酸(0.70g、3.4mmol)、EDCI(0.60g、3.4mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.90g、6.7mmol)、およびDMAP(5mg、触媒)から得た。Rf0.6(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物21の合成
【化35】
【0400】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-イル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート21を無色の油(1.2g、92%)として、エタノール中5.6Mジメチルアミン(15mL)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.44~5.28(m、6H)、4.95~4.88(m、1H)、2.33~2.19(m、10H)、2.08~1.90(m、12H)、1.70~1.23(m、9H)、1.23~1.14(m、26H)、0.93~0.85(m、9H)。Rf0.15(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物22のための合成スキーム
【化36】
化合物22の合成
【化37】
【0401】
無水ジクロロメタン(10mL)中の(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-オール17(0.5g、1.1mmol)、4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(0.3g、1.7mmol)、EDCI塩酸塩(0.3g、1.7mmol)、DIPEA(0.4g、3.4mmol)の溶液に、DMAP(5mg)を添加した。溶液を室温で一晩、窒素雰囲気下で撹拌した。混合物を真空下で濃縮乾固し、次いでDCM(150mL)中に取り込み、飽和炭酸水素ナトリウムで抽出する。反応混合物をシリカゲル60(1:1酢酸エチル/ヘキサン)上のカラムクロマトグラフィーによって精製して、無色の油(0.4g、67%)として(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート22を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.40~5.28(m、6H)、4.97~4.90(m、1H)、2.36~2.25(m、4H)、2.25~2.19(m、6H)、2.07~1.95(m、12H)、1.85~1.73(m、2H)、1.58~1.45(m、3H)、1.45~1.10(m、24H)、0.93~0.85(m、9H)。Rf0.4(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物23、24、および25のための合成スキーム
【化38】
化合物23の合成
【化39】
【0402】
無水ジエチルエーテル(10mL)中の(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8(0.5g、1.1mmol)の溶液を、無水ジエチルエーテル中のジホスゲン(0.2mL、1.8mmol)の溶液に緩徐に添加し、およそ-15℃まで冷却した。溶液を1時間撹拌し、次いでN,N,N’-トリメチル-1,3-プロパンジアミン(1.3mL、8.7mmol)を-15℃で添加した。溶液を室温まで加温し、1時間撹拌し、次いで濾過して、アンモニウム塩および尿素を除去した。ジエチルエーテル濾液を真空下で濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(100%酢酸エチル)によって精製して、無色の油(0.15g、23%)として(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル3-(ジメチルアミノ)プロピル(メチル)カルバメート23を得た、1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.41~5.29(m、6H)、4.85~4.77(m、1H)、3.35~3.21(m、2H)、2.93~2.81(m、3H)、2.31~2.17(m、8H)、2.08~1.92(m、12H)、1.75~1.64(m、2H)、1.64~1.15(m、31H)、0.92~0.85(m、9H)。Rf0.45(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物24の合成
【化40】
【0403】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル3-(ジメチルアミノ)プロピル(メチル)カルバメート23の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル3-(ジメチルアミノ)プロピルカルバメート24を無色の油(0.1g、17%)として、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8(0.5g、1.1mmol)、ジホスゲン(0.2mL、1.8mmol)、ピリジン、および3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン(0.9g、8.7mmol)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.44~5.28(m、6H)、4.81~4.72(bs、1H)、4.55~4.45(bs、1H)、3.34~3.15(m、3H)、2.45~2.13(m、7H)、2.10~1.86(m、12H)、1.75~1.57(m、3H)、1.57~1.03(m、30H)、0.93~0.85(m、9H)。Rf0.2(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物25の合成
【化41】
【0404】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル3-(ジメチルアミノ)プロピル(メチル)カルバメート23の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル2-(ジメチルアミノ)エチルカルバメート25を無色の油(0.20g、33%)として、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8(0.5g、1.1mmol)、ジホスゲン(0.2mL、1.8mmol)およびN,N-ジメチルエチレンジアミン(0.8g、8.7mmol)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.40~5.28(m、6H)、5.08~5.01(bs、1H)、4.82~4.73(bs、1H)、3.30~3.18(m、2H)、2.44~2.35(m、2H)、2.30~2.20(m、6H)、2.07~1.91(m、12H)、1.65~1.11(m、31H)、0.93~0.85(m、9H)。Rf0.4(10%MeOH-DCM)。
化合物26、27、および28のための合成スキーム
【化42】
化合物26の合成
【化43】
【0405】
無水Et2O(15mL)中の(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,15-ジエン-10-オール17(2.25g、5.036mmol)およびピリジン(611μL、7.6mmol)の溶液を、Et2O(15mL)中のジホスゲン(910μL、7.6mmol)の冷却した(0°C)溶液に添加した。撹拌した後(10分間)、反応混合物を濾過し、濃縮して、溶媒および残りのホスゲンガスを除去した。このクロロギ酸塩のうちの3分の1(0.879g、1.679mmol)を、Et2O(5mL)中に取り込み、無水Et2O(5mL)中のN,Nジメチルエチレンジアミン(dimethylehtylenediamine)(367μL、3.4mmol)の冷却した(0°C)溶液に添加した。撹拌した後(20分間)、混合物を濾過し、濃縮し、クロマトグラフィー(100%EtOAc)に供して、無色透明な油として(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,15-ジエン-10-イル(2-(ジメチルアミノ)エチル)カルバメート26(603mg、64%)を得た。Rf0.28(10%MeOH/CH2Cl2);1H NMR(400MHz、CDCl3、δH)5.45~5.36(m、6H)、5.30(br s、1H)、4.89~4.78(m、1H)、3.32~3.21(m、2H)、2.42(t、2H)、2.25(s、6H)、2.16~1.94(m、12H)、1.63~1.19(m、29H)、0.92(t、9H)。
化合物27の合成
【化44】
【0406】
クロロギ酸塩(0.88g、1.7mmol)((6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,15-ジエン-10-イル(2-(ジメチルアミノ)エチル)カルバメート26の合成において調製した)の冷却した(0℃)溶液を、無水Et2O(5mL)中に溶解させ、無水Et2O(5mL)中のN,Nジメチルプロピルジアミン(422μL、3.4mmol)の溶液に添加した。完了すると(20分間)、溶液を濾過し、濃縮し、次いで粗物質をカラムクロマトグラフィー(100%EtOAc)によって精製して、無色透明な油として(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,15-ジエン-10-イル(3-(ジメチルアミノ)プロピル)カルバメート27(675mg、70%)を得た。Rf0.32(10%MeOH/CH2Cl2);1H NMR(400MHz、CDCl3、δH)5.44~5.33(m、6H)、4.86~4.78(m、1H)、3.32~3.21(m、2H)、2.36(t、2H)、2.24(s、6H)、2.14~1.97(m、12H)、1.69(見かけ上p、2H)、1.61~1.50(m、3H)、1.50~1.20(m、27H)、0.91(t、9H)。
化合物28の合成
【化45】
【0407】
クロロギ酸塩(0.88g、1.7mmol)((6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,15-ジエン-10-イル(2-(ジメチルアミノ)エチル)カルバメート26の合成において調製した)の冷却した(0℃)溶液を、無水Et2O(5mL)中に溶解させ、無水Et2O(5mL)中のN,N,N’トリメチルプロピルジアミン(492μL、3.4mmol)の溶液に添加した。完了すると(20分間)、溶液を濾過し、濃縮し、次いで粗物質をカラムクロマトグラフィー(100%EtOAc)によって精製して、無色透明な油として(6Z,15Z)-11-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ヘンイコサ-6,15-ジエン-10-イル(3-(ジメチルアミノ)プロピル)(メチル)カルバメート28(672mg、68%)を得た。Rf0.44(10%MeOH/CH2Cl2);1H NMR(400MHz、CDCl3、δH)5.43~5.32(m、6H)、4.85(br.s、1H)、3.38~3.27(m、2H)、2.95~2.87(m、3H)、2.28(t、2H)、2.24(s、6H)、2.14~1.96(m、12H)、1.72(見かけ上p、2H)、1.67~1.49(m、3H)、1.49~1.20(m、26H)、0.91(t、9H)。
化合物30および31のための合成スキーム
【化46】
化合物29の合成
【化47】
【0408】
100mL丸底フラスコに、削り状マグネシウム(263mg、10.9mmol)および撹拌子を充填した。フラスコを熱線銃で5分間乾燥させ、窒素下で冷却した後、THF(5mL)およびヨウ素の小粒子を添加した。THF(5mL)中の(Z)-1-ブロモデカ-4-エン3(2g、9.1mmol)の溶液を緩徐に添加した。溶液を室温で2時間撹拌し、次いでグリオキサル酸エチル(0.375mL、1.82mmol、トルエン中50%溶液)を添加した。完了すると、溶液を飽和塩化アンモニウム溶液(5mL)で反応停止処理し、過剰のマグネシウムが溶解するまで撹拌した。溶液を水で希釈し、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。組み合わせた抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残渣をカラムクロマトグラフィー(100%ヘキサン~ヘキサン中20%EtOAc)によって精製して、無色の油(700mg、48%)として(6Z,16Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11,12-ジオール29を得た。
化合物30の合成
【化48】
【0409】
6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート9の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)-12-ヒドロキシドコサ-6,16-ジエン-11-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート30を無色の油(0.10g、25%)として、(6Z,16Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11,12-ジオール(0.35g、0.7mmol)、4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(0.20g、1.1mmol)、EDCI(0.20g、1.1mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.3g、2.2mmol)、およびDMAP(5mg、触媒)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.44~5.28(m、6H)、5.03~4.95(m、1H)、2.25~2.17(m、6H)、2.14~1.65(m、14H)、1.65~1.10(m、33H)、0.93~0.82(m、9H)。Rf0.2(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物31の合成
【化49】
【0410】
6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート9の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)-12-ヒドロキシドコサ-6,16-ジエン-11-イル3-(ジメチルアミノ)プロパノエート31を無色の油(0.4g、33%)として、(6Z,16Z)-11-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11,12-ジオール(1.0g、2.1mmol)、4-(ジメチルアミノ)ブタン酸塩酸塩(0.50g、3.1mmol)、EDCI(0.60g、3.1mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.80g、6.3mmol)、およびDMAP(5mg、触媒)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.40~5.28(m、6H)、5.12~5.07(m、1H)、4.75~4.55(bs、1H)、2.77~2.65(m、1H)、2.65~2.41(m、3H)、2.28~2.15(m、6H)、2.15~1.92(m、12H)、1.67~1.10(m、30H)、0.93~0.82(m、9H)。Rf0.5(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物40のための合成スキーム
【化50】
化合物33の合成
【化51】
【0411】
2の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-ノナ-3-エニルメタンスルホネート33を黄色の油(33g、85%)として、(Z)-ノナ-3-エン-1-オール32(25.0g、176mmol)、トリエチルアミン(25.0mL)、およびメタンスルホニルクロリド(27.2mL、352mmol)から得た。Rf0.68(CH2Cl2)。
化合物34の合成
【化52】
【0412】
3の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-ノナ-3-エニルブロミド34を黄色の油(20.2g、85%)として、(Z)-ノナ-3-エニルメタンスルホネート(25.7g、117mmol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(52.6g、163mmol)から得た。Rf0.73(ヘキサン)。
化合物35の合成
【化53】
【0413】
4の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,13Z)-ノナデカ-6,13-ジエン-10-オール35(9.11g、85%)を無色の油として、(Z)-ノナ-3-エニルブロミド(15.8g、76.8mmol)、削り状マグネシウム(2.0g、82mmol)、ギ酸エチル(6.36mL、79.1mmol)、および水酸化カリウム(3.88g、69.1mmol)から得た。Rf0.43(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物36の合成
【化54】
【0414】
5の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,13Z)-ノナデカ-6,13-ジエン-10-イルメタンスルホネート36(11.6g、99%)を無色の油として、(6Z,13Z)-ノナデカ-6,13-ジエン-10-オール(9.11g、32.5mmol)、トリエチルアミン(10mL)、およびメタンスルホニルクロリド(5.0mL、65mmol)から得た。Rf0.73(CH2Cl2)。
化合物37の合成
【化55】
【0415】
6の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-2-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)ウンデカ-5-エンニトリル37(7.2g、77%)を無色の油として、(6Z,13Z)-ノナデカ-6,13-ジエン-10-イルメタンスルホネート(11.6g、32.3mmol)およびシアン化ナトリウム(3.96g、80.9mmol)から得た。Rf0.75(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物38の合成
【化56】
【0416】
7の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-2-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)ウンデカ-5-エナール38(5.0g、69%)を無色の油として、(Z)-2-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)ウンデカ-5-エンニトリル(7.2g、24.9mmol)およびDIBAL(ヘキサン中1M溶液として49.7mL、49.7mmol)から得た。Rf0.69(10 EtOAc-ヘキサン)。
化合物39の合成
【化57】
【0417】
8の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,14Z)-11-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)イコサ-6,14-ジエン-10-オール39(1.64g、76%)を無色の油として、(Z)-2-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)ウンデカ-5-エナール(1.5g、5.1mmol)、(Z)-ノナ-3-エニルブロミド(1.58g、7.7mmol)および削り状マグネシウム(206mg、8.5mmol)から得た。Rf0.46(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物40の合成
【化58】
【0418】
9の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート40(483mg、76%)を無色の油として、(6Z,14Z)-11-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)イコサ-6,14-ジエン-10-オール(500mg、1.19mmol)、EDC(686mg、3.58mmol)、ヒューニッヒ塩基(726μL、4.17mmol)、およびN,Nジメチルアミノ酪酸塩酸塩(600mg、3.58mmol)から得た。Rf0.43(10%CH3OH-CH2Cl2)。
化合物42のための合成スキーム
【化59】
化合物41の合成
【化60】
【0419】
10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,14Z)-11-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)イコサ-6,14-ジエン-10-イル5-ブロモペンタノエート41(655mg、95%)を無色の油として、(6Z,14Z)-11-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)イコサ-6,14-ジエン-10-オール(500mg、1.19mmol)、EDC(686mg、3.58mmol)、および5-ブロモ吉草酸(649mg、3.58mmol)から得た。Rf0.54(5%EtOAc-ヘキサン)。
化合物42の合成
【化61】
【0420】
11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,14Z)-11-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)イコサ-6,14-ジエン-10-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート42(421mg、68%)を無色の油として、(6Z,14Z)-11-((Z)-ノナ-3-エン-1-イル)イコサ-6,14-ジエン-10-イル5-ブロモペンタノエート(655mg、1.13mmol)およびジメチルアミン(EtOH中5.6M溶液として25mL)から得た。Rf0.4(10%CH3OH-CH2Cl2)。
化合物50のための合成スキーム
【化62】
化合物44の合成
【化63】
【0421】
4の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、ヘンイコサン-11-オール44(7.06g、99%)を無色の油として、ブロモデカン(9.4mL、45.2mmol)、削り状(turinings)マグネシウム(1.18g、48.4mmol)、ギ酸エチル(3.74mL、46.6mmol)、および水酸化カリウム(2.28g、40.7mmol)から得た。Rf0.36(10%EtOAc-ヘキサン)、FW 312.57、C21H44O。
化合物45の合成
【化64】
【0422】
5の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、ヘンイコサン-11-イルメタンスルホネート45(6.87g、78%)を無色の油として、ヘンイコサン-11-オール(7.06g、22.6mmol)、トリエチルアミン(22mL)、およびメタンスルホニルクロリド(3.5mL、45mmol)から得た。Rf0.86(CH2Cl2)。
化合物46の合成
【化65】
【0423】
6の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、2-デシルドデカンニトリル46(2.25g、40%)を無色の油として、ヘンイコサン-11-イルメタンスルホネート(6.87g、17.6mmol)およびシアン化ナトリウム(4.31g、87.9mmol)から得た。Rf0.84(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物47の合成
【化66】
【0424】
7の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、2-デシルドデカナール47(1.91g、84%)を無色の油として、2-デシルドデカンニトリル(2.25g、7.0mmol)およびDIBAL(ヘキサン中1M溶液として14mL、14mmol)から得た。Rf0.51(5%EtOAc-ヘキサン)。
化合物48の合成
【化67】
【0425】
8の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-デシルドコサ-6-エン-11-オール48(1.08g、40%)を無色の油として、2-デシルドデカナール(1.91g、5.87mmol)、(Z)-デカ-4-エニルブロミド(1.45g、7.05mmol)、および削り状マグネシウム(183mg、7.54mmol)から得た。Rf0.26(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物49の合成
【化68】
【0426】
10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-デシルドコサ-6-エン-11-イル5-ブロモペンタノエート49(916mg、63%)を無色の油として、(Z)-12-デシルドコサ-6-エン-11-オール(1.08g、2.33mmol)、EDC(804mg、4.19mmol)、および5-ブロモ吉草酸(1.27g、6.99mmol)から得た。Rf0.29(5%EtOAc-ヘキサン)。
化合物50の合成
【化69】
【0427】
11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-デシルドコサ-6-エン-11-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート50(662mg、80%)を無色の油として、(Z)-12-デシルドコサ-6-エン-11-イル5-ブロモペンタノエート(916mg、1.16mmol)およびジメチルアミン(EtOH中5.6M溶液として27mL)から得た。Rf0.51(10%CH3OH-CH2Cl2)。
化合物53のための合成スキーム
【化70】
化合物51の合成
【化71】
【0428】
8の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-16-エン-11-オール51(3.37g、65%)を無色の油として、(Z)-2-((Z)-デカ-4-エニル)ドデカ-6-エナール7(3.6g、11.2mmol)、1-ブロモデカン(3.5mL、16.9mmol)、および削り状マグネシウム(438mg、18.0mmol)から得た。Rf0.31(5%EtOAc-ヘキサン)。
化合物52の合成
【化72】
【0429】
10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-16-エン-11-イル5-ブロモペンタノエート52(4.69g、99%)を無色の油として、(Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-16-エン-11-オール(3.37g、7.29mmol)、EDC(2.51g、13.1mmol)、および5-ブロモ吉草酸(3.96g、21.8mmol)から得た。Rf0.56(5%EtOAc-ヘキサン)。
化合物53の合成
【化73】
【0430】
11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-デシルドコサ-6-エン-11-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート53(943mg、99%)を無色の油として、(Z)-12-デシルドコサ-6-エン-11-イル5-ブロモペンタノエート(1.0g、1.6mmol)およびジメチルアミン(EtOH中5.6M溶液として30mL)から得た。Rf0.50(10%CH3OH-CH2Cl2)。
(実施例2)
【0431】
この実施例は、マウスApoB siRNA活性モデルにおいて、本発明の短鎖トリアルキル脂質の有効性を、より長いアルキル鎖を有するが、それ以外はこの短鎖トリアルキル脂質と構造的に同一である脂質と比較する。
【0432】
カチオン性脂質を含有する核酸-脂質粒子製剤を、7~9週齢のメスBALB/cマウスの肝臓においてApoB発現をノックダウンするそれらの能力について評価した。0.02、0.03、または0.05mg/kgのいずれかの3つの群においてマウスに静脈内(尾静脈)投与した。ApoBノックダウン(ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化)を、陰性対照としてのPBSと比べて測定した。各実験を投薬の48時間後に終了した。
【0433】
陽性対照との比較のために、本発明の短鎖トリアルキル脂質の性能を、インビボで核酸-脂質粒子における核酸送達を促進することが知られている、C2Kと称される強力なカチオン性脂質と比較した(Nature Biotech.,Vol 28(2),172(2010)。C2Kは、次の構造を有する:
【化74】
【0434】
表1に示されるように、0.02mg/kgの注射量で、本発明の11個のカチオン性脂質のうちの10個(化合物9、13、14、19、22、27、40、42、50、および53)が、C2Kよりも大きい活性を示した。
【表1】
【0435】
表2に示されるように、別個の実験において、0.03mg/kgの注射量で、本発明の7個のカチオン性脂質のうちの5個(化合物11、13、19、23、および25)が、C2Kよりも大きい活性を示した。
【表2】
【0436】
本発明のカチオン性脂質の活性をまた、アルキル鎖がより長いことを除いて本発明の脂質と構造的に同一である、対応するトリアルキルカチオン性脂質とも比較した。これらのより長鎖のトリアルキルカチオン性脂質(化合物54、55、56、57、58、59、および60として特定される)の構造が表3に示される。
【表3】
化合物54、55、56、57、58、59、および60を、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2011年9月16日に出願された米国特許出願第13/235,253号に記載される手順に従って調製した。
【0437】
表4に示されるように、より長鎖の脂質54、55、56、57、58、59、60を0.05mg/kg(表1に記載される用量の2.5倍)で投薬し、それはC2Kの60%と比較して+25%~-69%の範囲のApoBノックダウンを示した(すなわち、いくつかの化合物は、C2Kを上回る中程度の改善を示した)。
【表4】
【0438】
一般に、本発明のより短鎖の(C9~C10)トリアルキルカチオン性脂質の活性は、同等の脂質である、対応するより長鎖のトリリノレイル(C18)と比較したとき、大幅に改善された。例えば、化合物13と、そのトリリノレイル変形54との直接比較は、化合物13の用量が2.5倍低かったという事実にもかかわらず、ApoBノックダウンにおいて-6%(0.05mg/kg)~-80%(0.02mg/kg)の改善を示した。同じ傾向が、化合物55を11と、56を24と、および57を25と比較したときに観察された。
(実施例3)
【0439】
マウスApoBモデルにおけるさらなる実験は、陽性対照として異なるカチオン性脂質、すなわちDLin-MP-DMAを使用した。DLin-MP-DMAは、特許出願第WO 2011/141705号に記載され、次の構造を有する:
【化75】
【0440】
表5に示されるように、同じマウスApoBモデルにおいて、DLin-MP-DMAは、3つの別個の実験においてC2Kよりも有効であることが示されたことから、妥当な陽性対照である:
【表5-1】
【表5-2】
【0441】
別の実験において、本発明のさらに2つの脂質(化合物62および71)を、ApoBを標的とするsiRNAを含む脂質ナノ粒子へと製剤化した。マウスに静脈内(尾静脈)投与し、投薬の48時間後に屠殺した。肝臓を採取し、均質化し、ApoBサイレンシングのレベル(ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化)を次いで、QuantiGeneアッセイを介して測定した。結果が表6に示され、PBS処理陰性対照群に対する割合(%)として表される。この実験に使用されたsiRNA配列は異なり、実施例2に使用されたものよりも効力が低かった。実験間の比較はしたがって可能でない:
【表6】
【0442】
化合物71は、DLin-MP-DMA対照と同様の活性を有した。化合物62は、大幅により活性であった。これらのおよび他の化合物の合成が実施例4に記載される。
(実施例4)
【0443】
この実施例は、本発明のさらなる化合物の合成を記載する。
化合物62のための合成スキーム
【化76】
化合物61の合成
【化77】
5の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イルメタンスルホネート61(1.18g、90%)を無色の油として、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8(1.12g、2.43mmol)、トリエチルアミン(8mL)、およびメタンスルホニルクロリド(0.38mL、4.9mmol)から得た。Rf0.91(CH2Cl2)。
化合物62の合成
【化78】
トルエン(30mL)中のメシル酸塩61(1.09g、2.01mmol)の溶液を、N,N-ジメチルアミノブタノール(1.34mL、10.1mmol)およびNaH(60%の油中分散体として442mg、11.1mmol)で順次に処理した。ガス放散が終止した時点で、反応混合物を還流させ(115°C溶液槽温度)、撹拌した(50時間)。反応混合物を次いで冷却し(室温)、冷水中に注ぎ、次いでEtOAcで抽出した。組み合わせた有機物を水およびブラインで洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮し、クロマトグラフィー(100%EtOAc)を介して精製して、淡黄色の油として4-(((6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル)オキシ)-N,N-ジメチルブタン-1-アミン62(143mg、13%)を得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.41~5.30(m、6H)、3.46~3.35(m、2H)、3.19~3.14(m、1H)、2.34(t、2H)、2.24(s、6H)、2.10~1.93(m、12H)、1.60~1.09(m、35H)、0.90(t、9H)。Rf0.54(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物71のための合成スキーム
【化79】
化合物63の合成
【化80】
5の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、3,7-ジメチルオクチルメタンスルホネート63(7.47g、99%超)を無色の油として、3,7-ジメチルオクタン-1-オール(5.0g、31.6mmol)、トリエチルアミン(8mL)、およびメタンスルホニルクロリド(4.89mL、63.2mmol)から得た。Rf0.69(CH2Cl2)。
化合物64の合成
【化81】
3の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタン64を無色の油(6.0g、86%)として、3,7-ジメチルオクチルメタンスルホネート63(7.47g、31.6mmol)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(13.2g、41.1mmol)から得た。Rf0.92(ヘキサン)。
化合物65の合成
【化82】
4の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、2,6,12,16-テトラメチルヘプタデカン-9-オール65(7.0g、定量)を無色の油として、1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタン64(10g、45.2mmol)、削り状マグネシウム(1.21g、49.8mmol)、ギ酸エチル(3.8mL、47.5mmol)、および水酸化カリウム(3.8g、67.8mmol)から得た。Rf0.38(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物66の合成
【化83】
5の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、2,6,12,16-テトラメチルヘプタデカン-9-イルメタンスルホネート66(1.56g、87%)を無色の油として、2,6,12,16-テトラメチルヘプタデカン-9-オール65(1.39g、5.14mmol)、トリエチルアミン(3mL)、およびメタンスルホニルクロリド(0.8mL、10.3mmol)から得た。Rf0.8(CH2Cl2)。
化合物67の合成
【化84】
6の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、2-(3,7-ジメチルオクチル)-5,9-ジメチルデカンニトリル67(0.8g、56%)を無色の油として、2,6,12,16-テトラメチルヘプタデカン-9-イルメタンスルホネート66(1.56g、4.48mmol)およびシアン化ナトリウム(0.55g、11.2mmol)から得た。Rf0.8(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物68の合成
【化85】
7の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、2-(3,7-ジメチルオクチル)-5,9-ジメチルデカナール68(0.63g、78%)を無色の油として、2-(3,7-ジメチルオクチル)-5,9-ジメチルデカンニトリル67(0.8g、2.49mmol)およびDIBAL(ヘキサン中1M溶液として5.74mL、5.74mmol)から得た。Rf0.6(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物69の合成
【化86】
8の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、10-(3,7-ジメチルオクチル)-2,6,13,17-テトラメチルオクタデカン-9-オール69(0.53g、62%)を無色の油として、2-(3,7-ジメチルオクチル)-5,9-ジメチルデカナール68(0.6g、1.85mmol)、1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタン64(2.0g、9.0mmol)、および削り状マグネシウム(232mg、9.67mmol)から得た。Rf0.37(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物70の合成
【化87】
10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、10-(3,7-ジメチルオクチル)-2,6,13,17-テトラメチルオクタデカン-9-イル5-ブロモペンタノエート68(450mg、粗)を黄色の油として、10-(3,7-ジメチルオクチル)-2,6,13,17-テトラメチルオクタデカン-9-オール69(200mg、0.43mmol)、EDC(246mg、1.28mmol)、および5-ブロモ吉草酸(246mg、1.28mmol)から得た。Rf0.49(5%EtOAc-ヘキサン)。
化合物71の合成
【化88】
11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、10-(3,7-ジメチルオクチル)-2,6,13,17-テトラメチルオクタデカン-9-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート71(184mg、72%、2ステップ)を無色の油として、10-(3,7-ジメチルオクチル)-2,6,13,17-テトラメチルオクタデカン-9-イル5-ブロモペンタノエート68(450mg、粗)およびジメチルアミン(EtOH中2.0M溶液として10mL)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ4.95~4.87(m、1H)、2.33(t、2H)、2.28(t、2H)、2.23(s、6H)、1.74~1.60(m、4H)、1.58~0.99(m、37H)、0.93~0.79(m、27H)。Rf0.43(10%CH3OH-CH2Cl2)。
化合物74のための合成スキーム
【化89】
化合物72の合成
【化90】
8の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-10-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)-2,6-ジメチルイコサ-14-エン-9-オール72(0.62g、72%)を無色の油として、(Z)-2-((Z)-デカ-4-エニル)ドデカ-6-エナール7(0.6g、1.87mmol)、1-ブロモ-3,7-ジメチルオクタン64(3.9g、17.5mmol)、および削り状マグネシウム(454mg、18.7mmol)から得た。Rf0.61(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物73の合成
【化91】
10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-10-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)-2,6-ジメチルイコサ-14-エン-9-イル5-ブロモペンタノエート73(900mg、粗)を黄色の油として、(Z)-10-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)-2,6-ジメチルイコサ-14-エン-9-オール72(620mg、1.34mmol)、EDC(500mg、2.6mmol)、および5-ブロモ吉草酸(500mg、2.56mmol)から得た。Rf0.72(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物74の合成
【化92】
11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-10-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)-2,6-ジメチルイコサ-14-エン-9-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート74(466mg、58%、2ステップ)を無色の油として、(Z)-10-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)-2,6-ジメチルイコサ-14-エン-9-イル5-ブロモペンタノエート73(900mg、粗)およびジメチルアミン(EtOH中2.0M溶液として15mL)。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.43~5.29(m、4H)、4.94~4.88(m、1H)、2.32(t、2H)、2.26(t、2H)、2.15(s、6H)、2.08~1.93(m、8H)、1.70~1.00(m、43H)、0.95~0.83(m、15H)。Rf0.42(10%CH3OH-CH2Cl2)。
化合物76のための合成スキーム
【化93】
化合物75の合成
【化94】
5-ブロモペンタン-1-オール(1.0g、5.99mmol)の溶液を、密封容器中でジメチルアミン(EtOH中2M溶液として10mL)とともに調製し、加熱した(80°C)。撹拌した後(16時間)、ジメチルアミンおよびEtOHを減圧下で除去して、黄色がかったオレンジ色の固体として5-(ジメチルアミノ)ペンタン-1-オール臭化水素酸塩75(1.26g、定量)を得た。Rf0.25(10%CH3OH-CH2Cl2)。
化合物76の合成
【化95】
62の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、5-(((6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル)オキシ)-N,N-ジメチルペンタン-1-アミン76(864mg、37%)を淡黄色の油として、(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イルメタンスルホネート61(1.86g、3.45mmol)、5-(ジメチルアミノ)ペンタン-1-オール臭化水素酸塩75(1.26g、5.99mmol)、およびNaH(60%の油中分散体として288mg、7.2mmol)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.43~5.32(m、6H)、3.46~3.33(m、2H)、3.18~3.12(m、1H)、2.30~2.18(m、8H)、2.07~1.93(m、12H)、1.61~1.04(m、37H)、0.89(t、9H)。Rf0.47(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物79のための合成スキーム
【化96】
化合物77の合成
【化97】
無水ジクロロメタン(125mL)中の(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール8(5g、10.9mmol)の冷却した溶液(-15°C)に、ジエチル亜鉛(ヘキサン中1M、82mL、81.8mmol)を窒素下で20分間にわたって滴加した。溶液を0°Cで70分間撹拌し、次いでジヨードメタン(6.6mL、81.8mmol)を注意深く添加した。溶液を一晩撹拌して、室温まで温めさせた。完了すると、溶液を氷水(350mL)中に注ぎ、酢酸エチル(450mL)で希釈した。次いで5%HCl(350mL)を添加して、形成した乳濁液を軽減する一助とした。有機層をNaHCO3(飽和水溶液500mL)、水(500mL)、およびブライン(500mL)で洗浄した。組み合わせた水層を酢酸エチルで逆抽出した。組み合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固した。残渣をシリカゲル(ヘキサン中2.5%酢酸エチル)上のカラムクロマトグラフィーによって精製して、ピンク色の油を得た。この色(I2)を除去するために、精製した生成物をジクロロメタン(150mL)中に溶解させ、Na2S2O3(飽和水溶液2×40mL)で洗浄して、淡黄色の油(5.54g、96.5%)として1,8-ビス(2-ペンチルシクロプロピル)-5-(3-(2-ペンチルシクロプロピル)プロピル)オクタン-4-オール77を得た。
化合物78の合成
【化98】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6ブロモヘキサノエート10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、1,8-ビス(2-ペンチルシクロプロピル)-5-(3-(2-ペンチルシクロプロピル)プロピル)オクタン-4-イル6-ブロモヘキサノエートを粗製の油として、1,8-ビス(2-ペンチルシクロプロピル)-5-(3-(2-ペンチルシクロプロピル)プロピル)オクタン-4-イル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート(0.75g、1.5mmol)、無水ジクロロメタン(5.2ml)、6-ブロモヘキサン酸(0.88g、4.5mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.87g、4.5mmol)、および4-ジメチルアミノピリジン(5mg)から得た。生成物を次のステップで、さらに精製することなく使用した。
化合物79の合成
【化99】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-(ジメチルアミノ(dimethyamino))ヘキサノエート11の合成について記載する手順と類似した手順を使用して、油(0.56g、59%)として、1,8-ビス(2-ペンチルシクロプロピル)-5-(3-(2-ペンチルシクロプロピル)プロピル)オクタン-4-イル6-ブロモヘキサノエート(1.0g、1.5mmol)およびエタノール中2.0Mジメチルアミン(3.5mL)から得た。Rf0.50(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物83のための合成スキーム
【化100】
化合物80の合成
【化101】
無水ジクロロメタン(500mL)中の2-オクチルドデカン-1-オール(20g、67.0mmol)の溶液に、クロロクロム酸ピリジニウム(43.2g、200mmol)を添加した。溶液を室温で3時間撹拌し、次いでシリカのパッドに通して濾過し、ジクロロメタンで溶出して、無色の油(10.5g、50%)として2-オクチルドデカナール80を得た。
化合物81の合成
【化102】
(6Z,15Z)-ヘンイコサ-6,15-ジエン-11-オール4の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-オクチルドコサ-6-エン-11-オール81を無色の(cololess)油(0.67g、92%)として、2-オクチルドデカナール80(0.5g、1.6mmol)、(Z)-1-ブロモデセ-4-エン(0.7g、3.1mmol)、マグネシウム(80mg、3.4mmol)、無水テトラヒドロフラン(0.5mL)、水(2mL)、EtOH(2mL)、およびKOH(0.2g、2.8mmol)から得た。
化合物82の合成
【化103】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6ブロモヘキサノエート10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-オクチルドコサ-6-エン-11-イル6-ブロモヘキサノエート82を無色の油(0.78g、85%)として、(Z)-12-オクチルドコサ-6-エン-11-オール81(0.67g、1.5mmol)、無水ジクロロメタン(5mL)、6-ブロモヘキサン酸(0.80g、4.4mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.85g、4.4mmol)、および4-ジメチルアミノピリジン(5mg)から得た。生成物を次のステップで、さらに精製することなく使用した。
化合物83の合成
【化104】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-(ジメチルアミノ(dimethyamino))ヘキサノエート11の合成について記載する手順と類似した手順を使用して、(Z)-12-オクチルドコサ-6-エン-11-イル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート83を油(103mg、14%)として、(Z)-12-オクチルドコサ-6-エン-11-イル6-ブロモヘキサノエート82(0.78g、1.3mmol)およびエタノール中2.0Mジメチルアミン(3mL)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.43~5.26(m、2H)、4.96~4.91(m、1H)、2.33(t、4H)、2.26(s、6H)、2.08~1.93(m、4H)、1.70~1.60(m、2H)、1.57~1.43(m、4H)、1.40~1.15(m、43H)、0.94~0.85(m、9H)。
化合物89のための合成スキーム
【化105】
化合物84の合成
【化106】
無水ジエチルエーテル(350mL)中の(E)-エチルデカ-4-エノエート(20g、101mmol)の冷却した溶液(0℃)に、水素化アルミニウムリチウム(8.9g、212mmol)を窒素下で添加した。溶液を室温(at room)で1時間撹拌し、次いで0℃まで冷却し、5M NaOH(30mL)で緩徐に反応停止処理し、エチルエーテル(100mL)で希釈した。溶液を30分間撹拌し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮乾固して、油(16.1g、定量)として(E)-デカ-4-エン-1-オール84を得た。
化合物85の合成
【化107】
(Z)-デカ-4-エニルメタンスルホネート2の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(E)-デカ-4-エニルメタンスルホネート85をオレンジ色の油(32.7g)として、(E)-デカ-4-エン-1-オール(16.1g、94.7mmol)、トリエチルアミン(15.5mL、111.7mmol)、およびメタンスルホニルクロリド(15.6mL、201.7mmol)から得た。Rf0.65(100%CH2Cl2)。
化合物86の合成
【化107-2】
(Z)-1-ブロモデカ-4-エン3の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(E)-1-ブロモデカ-4-エン86を油(17.9g、81%)として、(E)-デカ-4-エニルメタンスルホネート85(23.5g、94.7mmol)、およびテトラブチルアンモニウムブロミド(40.0g、124.1mmol)から得た。
Rf0.85(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物87の合成
【化108】
(6Z,15Z)-ヘンイコサ-6,15-ジエン-11-オール4を得る合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6E,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール87を油(1.28g、71%)として、(E)-1-ブロモデカ-4-エン86(1.7g、7.8mmol)、削り状マグネシウム(0.19g、7.8mmol)、(Z)-2-((Z)-デカ-4-エニル)ドデカ-6-エナール7(1.25g、3.9mmol)、および水酸化カリウム(0.66g、11.7mmol)から得た。Rf0.43(10%EtOAc-ヘキサン)。
化合物88の合成
【化109】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-ブロモヘキサノエート10の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6E,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル5-ブロモペンタノエート88を油(1.36g、78%)として、(6E,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-オール87(1.28g、2.8mmol)、および5-ブロモ-n-吉草酸(1.00g、5.6mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.06g、5.6mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(1.1g、83.0mmol)、およびジメチルアミノピリジン(10mg)から得た。
化合物89の合成
【化110】
(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル6-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート11の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、(6E,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート89を油(0.45g、35%)として、(6E,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル5-ブロモペンタノエート88(1.36g、2.2mmol)、およびエタノール中2Mジメチルアミン(5mL)から得た。1H NMR(400MHz、CDCl3)δ5.45~5.28(m、6H)、4.96~4.91(m、1H)、2.34~2.25(m、2H)、2.06~1.90(m、12H)、1.68~1.61(m、2H)、1.55~1.45(m、5H)、1.45~1.16(m、28H)、0.95~0.84(m、9H)。Rf0.46(10%MeOH-CH2Cl2)。
化合物90のための合成スキーム
【化111】
化合物89の合成
【化112】
5の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、無色の油として1,8-ビス(2-ペンチルシクロプロピル)-5-(3-(2-ペンチルシクロプロピル)プロピル)オクタン-4-イルメタンスルホネート89を得た。
化合物90の合成
【化113】
62の合成について記載される手順と類似した手順を使用して、淡黄色の油として5-((1,8-ビス(2-ペンチルシクロプロピル)-5-(3-(2-ペンチルシクロプロピル)プロピル)オクタン-4-イル)オキシ)-N,N-ジメチルペンタン-1-アミン90(580mg)を得た。Rf0.48(10%MeOH-CH2Cl2)。
【0444】
上の説明は、例示説明となるように意図され、制限するようには意図されないことを理解されたい。上の説明を読むと、多くの実施形態が当業者に明らかとなろう。本発明の範囲は、したがって、上の説明を参照して決定されるべきではなく、代わりに添付の特許請求の範囲を参照して、かかる特許請求の範囲がそれらに対して権利を有する均等物の全範囲とともに決定されるべきである。特許出願、特許、PCT公開、ならびにGenbank受託番号およびその中に記載される配列を含む、全ての論文および参考文献の開示は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。