IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 島津メクテム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱処理装置 図1
  • 特開-熱処理装置 図2
  • 特開-熱処理装置 図3
  • 特開-熱処理装置 図4
  • 特開-熱処理装置 図5
  • 特開-熱処理装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140588
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 5/06 20060101AFI20220915BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20220915BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
F27B5/06
F27D17/00 104G
F27D7/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120252
(22)【出願日】2022-07-28
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2020-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】591159619
【氏名又は名称】島津産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】武田 直也
(57)【要約】
【課題】被処理物から放出された放出物で排気パイプが閉塞されることを防止できる熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置10は、圧力容器12と、前記圧力容器12の内部空間14に配置された第1断熱体16と、前記第1断熱体16の内部空間18に配置されたヒータ20と、前記第1断熱体16の内部空間18に配置され、被処理物22が収容される収容部24と、前記ポンプ32と、前記収容部24の内部空間28とポンプ32とをつなぐ排気パイプ34と、前記排気パイプ34の途中に設けられ、被処理物22から放出された放出物を捕捉するトラップ38と、前記収容部24とトラップ38の間において、排気パイプ34の少なくとも一部に配置された第2断熱体68とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器と、
前記圧力容器の内部空間に配置された第1断熱体と、
前記第1断熱体の内部空間に配置されたヒータと、
前記第1断熱体の内部空間に配置され、被処理物が収容される収容部と、
ポンプと、
前記収容部の内部空間とポンプとをつなぐ排気パイプと、
前記排気パイプの途中に設けられ、被処理物から放出された放出物を捕捉するトラップと、
前記収容部とトラップの間において、排気パイプの少なくとも一部に配置された第2断熱体と、
を備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記排気パイプは前記第1断熱体を貫通しており、
前記排気パイプが前記第1断熱体を貫通開始している位置から前記トラップの間において、前記排気パイプが前記第2断熱体を備えることを特徴とする請求項1の熱処理装置。
【請求項3】
前記排気パイプが内側配管と外側配管を含む請求項1または2の熱処理装置。
【請求項4】
前記トラップが放出物を冷却するフィンを含む請求項1から3のいずれかの熱処理装置。
【請求項5】
前記第1断熱体が筒状または箱状の断熱体本体と該断熱体本体の両端を開閉する断熱体蓋とを備え、
前記収容部が筒状または箱状のマッフル本体と該マッフル本体の両端を開閉するマッフル蓋とを備え、
前記断熱体蓋とマッフル蓋との間に隙間を備えた請求項1から4のいずれかの熱処理装置。
【請求項6】
前記マッフル蓋をマッフル本体に向けて押圧する押圧部材と、
前記押圧部材に対してマッフル蓋に向かう力を与える弾性体と、
を備えた請求項5の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属、磁性材料またはセラミックスなどからなる被処理物を真空または加圧環境下で熱処理している。たとえば、下記の特許文献1に開示される熱処理装置は、加熱室、ヒータおよびマッフル板を備える。加熱室の中にヒータとマッフル板が備えられる。マッフル板で被処理物の収容領域を形成している。その収容領域からガスを排気する排気パイプが備えられる。
【0003】
収容領域に被処理物が収容される。ヒータに電流が流されると、ヒータが発熱する。ヒータの熱がマッフル板を介して被処理物に伝熱される。被処理物は脱脂され、その後に所定の処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開番号 WO2016/006500
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被処理物を脱脂すると、被処理物からガス状のバインダー、微細な粉状または粒状のダスト、またはその両方を含む放出物が放出される。この放出物は排気パイプにトラップを設けて捕捉する。しかし、放出物がトラップに到達する前に排気パイプに堆積される場合がある。排気パイプが放出物によって閉塞され、ガスを排気ができなくなる。トラップで放出物を捕捉する必要がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、被処理物から放出された放出物で排気パイプが閉塞されることを防止できる熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決すべく、本発明に係る熱処理装置は、以下に述べるような構成を有する。
【0008】
本発明の熱処理装置は、圧力容器と、前記圧力容器の内部空間に配置された第1断熱体と、前記第1断熱体の内部空間に配置されたヒータと、前記第1断熱体の内部空間に配置され、被処理物が収容される収容部と、ポンプと、前記収容部の内部空間とポンプとをつなぐ排気パイプと、前記排気パイプの途中に設けられ、被処理物から放出された放出物を捕捉するトラップと、前記収容部とトラップの間において、排気パイプの少なくとも一部に配置された第2断熱体とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2断熱体によってマッフルから排気されたガスが冷却されにくい。ガスに含まれる放出物が液化されにくい。放出物が高温のままトラップまで流され、トラップで液体になったり、さらに固体になったりする。排気パイプの途中で液体、固体またはその両方にならず、排気パイプが閉塞することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願の熱処理装置の構成を示す図である。
図2】トラップの構成を示す図である。
図3】第1排気パイプからフィンおよびフィルターを取り外す図である。
図4】フィンと冷却液パイプのある部分の内径を第2断熱体のある部分の内径よりも大きくした構成の図である。
図5】マッフル蓋を押圧する押圧部材と弾性体の構成を示す図である。
図6】マッフル蓋を押圧する押圧部材と弾性体の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の熱処理装置について図面を参照して説明する。一の実施形態で説明した手段は、他の実施形態で同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0012】
[実施形態1]
図1に示す本願の熱処理装置10は、容器状の圧力容器12、その圧力容器12の内部空間14に配置された第1断熱体16、その第1断熱体16の内部空間18に配置されたヒータ20、被処理物22が収容されるマッフル(インナーケース)24、ガス源26、そのガス源26から圧力容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28をつなぐ供給パイプ30、ポンプ32、そのポンプ32とマッフル24の内部空間28をつなぐ第1排気パイプ34、ポンプ32と圧力容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18をつなぐ第2排気パイプ36、第1排気パイプ34の途中に設けられたトラップ38を備える。
【0013】
熱処理装置10は、焼結、半焼結、焼成、脱脂、脱ガス、ろう付け、メタライズ、焼き入れ、容体化処理、焼戻し、焼きなましまたは時効熱処理などをおこなうための装置である。
【0014】
[圧力容器]
圧力容器12は容器本体40および容器蓋42を備える。容器本体40は円筒形状になっており、その両端は開口になっている。容器蓋42は容器本体40の両端の開口を開閉するものである。容器本体40の両端を容器蓋42で閉じると、圧力容器12の内部空間14は気密にされた空間になる。圧力容器12の内部空間14はガス源26からガスが供給されると加圧され、ポンプ32でガスが排気されると減圧される。
【0015】
圧力容器12は内壁44と外壁46からなる二重構造になっている。内壁44と外壁46の間を冷却液が流れる。熱処理装置10は、内壁44と外壁46の間に冷却液を供給するためのポンプ(図示省略)を備えてもよい。
【0016】
[第1断熱体]
第1断熱体16は圧力容器12の内部空間14に配置されている。第1断熱体16は断熱体本体48および断熱体蓋50を備える。断熱体本体48は筒状または箱状になっていて、両端が開口になっている。断熱体本体48の両端の開口は断熱体蓋50で開閉される。断熱体蓋50の開閉装置(図示省略)が圧力容器12の内部空間14に備えられる。容器蓋42を閉じた状態で断熱体蓋50が開閉できる。第1断熱体16はグラファイトフェルトまたはグラファイトフォイルなどの耐熱性材料で構成される。
【0017】
[ヒータ]
第1断熱体16の内部空間18にヒータ20が配置されている。ヒータ20はグラファイト製のロッドヒータを使用することができ、他の種類のヒータであってもよい。ヒータ20は直線状になっており、ヒータ20の長さ方向はマッフル24の長さ方向を向いている。さらに、マッフル24の周囲に複数のヒータ20が配置されている。ヒータ20に電力供給する回路(図示省略)が備えられる。その回路からヒータ20に電力が供給され、ヒータ20が発熱する。ヒータ20の熱は第1断熱体16の内部空間18の中に閉じ込められる。
【0018】
[マッフル]
第1断熱体16の内部空間18の中にマッフル24が配置されている。マッフル24はグラファイトなどで構成されている。マッフル24はマッフル本体52とマッフル蓋54を備える。マッフル本体52は筒状または箱状になっていて、その両端は開口になっている。マッフル蓋54はマッフル本体52の両端の開口を開閉する。
【0019】
[被処理物]
マッフル24の内部空間28に被処理物22が配置される。すなわちマッフル24は被処理物22の収容部として機能する。被処理物22の材料は、超硬金属、鉄系金属、非鉄金属、磁性材料、セラミックス、グラファイト、ハイス鋼、ダイス鋼または低合金鋼などであり、金属は合金を含む。被処理物22は、粉体、粒体または所定形状を有した固体である。
【0020】
マッフル24の中に被処理物22が収容されることで、被処理物22を脱脂処理したときに被処理物22から放出される放出物がマッフル24の外に放出されることを防止または低減する。
【0021】
[ガス源]
ガス源26は窒素、アルゴン、水素、一酸化炭素、ヘリウム、メタンなどを貯蔵、生成またはその両方をおこなう。ガス源26と圧力容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28は供給パイプ30で接続されている。供給パイプ30は分岐しており、それぞれにバルブ56、58が設けられている。バルブ56、58の開閉によってガスの流量を制御できる。ガス源26から供給パイプ30を介して圧力容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28にガスが導入される。ガス源26を複数にして、複数種のガスを圧力容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28に供給してもよい。供給パイプ30を複数設け、複数種のガスが供給されるようにする。なお、断熱体16は完全に気密にされていないため、圧力容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18の一方にガスを導入することで、他方にもガスを導入することができる。
【0022】
[ポンプ]
ポンプ32とマッフル24の内部空間28は第1排気パイプ34で接続されている。ポンプ32と圧力容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18は第2排気パイプ36で接続されている。ポンプ32によって、圧力容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28からガスが排気される。第1排気パイプ34と第2排気パイプ36にはそれぞれバルブ60、62が備えられていて、バルブ60、62の開閉によっても排気を制御することができる。なお、断熱体16は完璧に気密にされていないため、圧力容器12の内部空間14または断熱体16の内部空間18の一方からガスを排気することで、他方もガスが排気される。
【0023】
[排気パイプ]
図2のように、第1排気パイプ34は圧力容器12の容器本体40、第1断熱体16の断熱体本体48およびマッフル24のマッフル本体52を通過してマッフル24の内部空間28につなげられている。第1排気パイプ34は内側配管64と外側配管66からなる二重配管になっている。図2では第1排気パイプ34の圧力容器12からトラップ38の一部までが内側配管64と外側配管66で構成されている。内側配管64と外側配管66の間を冷却液が流される。本願は内側配管64と外側配管66の間に冷却液を流すためのポンプ(図示省略)を備える。第1排気パイプ34の温度は上昇しすぎない。さらに、第1排気パイプ34と同様に、第2排気パイプ36の一部または全部が内側配管64と外側配管66で構成されてもよい。
【0024】
内側配管64と外側配管66の間の空間は圧力容器12の内壁44と外壁46の間につなげられていてもよい。圧力容器12と第1排気パイプ34が一緒に冷却される。
【0025】
[第2断熱体]
第1排気パイプ34の内側に第2断熱体68が備えられる(図2)。第2断熱体68はグラファイトフェルトまたはグラファイトフォイルなどの耐熱性材料で構成される。第2断熱体68は筒状になっており、その外周が第1排気パイプ34の内側配管64に接する。第2断熱体68は、第1排気パイプ34における第1断熱体16からトラップ38の直前までの間に備えられる。第2断熱体68は、第1排気パイプ34における第1断熱体16を貫通している位置からトラップ38までの間に備えられるのが好適である。なお、上記位置以外にも第1排気パイプ34に折り曲がり部がある場合は折り曲がり部の熱ロスが大きくなることが多いため、折り曲がり部に第2断熱体68を設けてもよい。
【0026】
ガスが第2断熱体68の中空部分を通過する。マッフル24から排気されるガスは第2断熱体68によって冷却されにくい。ガスは高温の状態でトラップ38に到達する。ガスに含まれる放出物はトラップ38に到達するまで液化および固化されにくい。第1排気パイプ34が放出物で閉塞することを防止できる。なお、第1断熱体16の内部空間18において、第2断熱体68の有無は任意である。トラップ38に高温のガスが到達できるのであれば、第1排気パイプ34の第1断熱体16を貫通開始している位置からトラップ38の間において、第2断熱体68が第1排気パイプ34のすべての位置にある必要はなく、第1排気パイプ34の少なくとも一部に第2断熱体68が備えれていてもよい。
【0027】
[トラップ]
被処理物22が脱脂された際に、被処理物22からガス状のバインダー、微細な粉状または粒状のダスト、またはそれら全てを含む放出物が放出される。放出物は第1排気パイプ34から排出される。第1排気パイプ34の途中に放出物を捕捉するトラップ38が備えられている。図2に示すように、トラップ38はフィン70およびフィルター72を含む。
【0028】
第1排気パイプ34の中に冷却液パイプ74が配置されている。フィン70は板状になっており、フィン70は冷却液パイプ74に取り付けられている。冷却液パイプ74の中を冷却液が流れる。冷却液によってフィン70が冷却される。第1排気パイプ34を流れるガスがフィン70に触れて冷却され、ガスに含まれる放出物がフィン70の表面で液体になる。液体になった放出物は、さらに冷却されることで固体になる場合もある。ガスが冷却液パイプ74に触れると、ガスに含まれる放出物が冷却液パイプ74の表面でも液体または固体になる。
【0029】
第1排気パイプ34において、第1断熱体16からトラップ38までの距離をできるだけ短くすることが好ましい。高温のガスがフィン70まで到達しやすくするためである。
【0030】
冷却液パイプ74は直線状になっていて、蓋体76に取り付けられている。第1排気パイプ34の途中に開口78が形成されており、その開口78から第1排気パイプ34の中に冷却液パイプ74が入れられている。第1排気パイプ34の開口78は蓋体76で閉じられている。第1排気パイプ34は折れ曲がった部分80で2方向を向いている。折れ曲がった部分80またはその近傍において、冷却液パイプ74はいずれか一方の方向を向いて第1排気パイプ34の中に差し込まれている。図3に示すように、フィン70と冷却液パイプ74は第1排気パイプ34から引き出すことができる。
【0031】
第1排気パイプ34はフィン70を備える場所に第2断熱体68は存在しない。第1排気パイプ34はフィン70を備える場所で内側配管64と外側配管66の二重構造になっている。さらに、内側配管64と外側配管66の間には冷却液が流れる。そのため、内側配管64の内側にガスが触れると、内側配管64の内側表面で放出物が液体になったり固体になったりする。図3のように、フィン70と冷却液パイプ74を引き出すときに、内側配管64の内側表面に付着している液体、固体またはその両方はフィン70によって掻き出される。
【0032】
フィルター72はフィン70の下流に配置されている。フィルター72には冷却されたガスが到達する。フィルター72は排気されるガスの中に含まれる微細な粉状、粒状またはその両方の放出物を集塵する。
【0033】
フィルター72は蓋体82に取り付けられている。第1排気パイプ34の途中に開口84が形成されており、その開口84から第1排気パイプ34の中にフィルター72が入れられている。蓋体82で開口84が閉じられている。フィン70と同様に、第1排気パイプ34に折れ曲がる部分86を設け、その部分86またはその近傍にフィルター72を配置する。図3に示すように、フィルター72を取り出すことができる。
【0034】
フィン70などによってガスが冷却されており、第1排気パイプ34のフィルター72のある部分は、内側配管64と外側配管66の二重構造にしなくてもよい。
【0035】
[その他]
圧力容器12の内部空間14にファン88が備えられる。ファン88を回転させるためのモーター90が容器蓋42に取り付けられている。ファン88は、容器蓋42が閉じられ、断熱体蓋50が開けられたときに回転する。圧力容器12の内部空間14および断熱体16の内部空間18をガスが循環する。ガスが循環するとき、マッフル蓋54が開けられる場合もある。
【0036】
断熱体本体48からファン88に向かうガイド92を設けてもよい。ガイド92によって循環するガスの方向を定める。ガスの方向を定められればガイド92の形状は限定されない。圧力容器12は二重構造になっており、その内部に冷却液が流れるため、その冷却液によって循環するガスが冷却される。ファン88と断熱体16の間に水冷式の熱交換器94aを配置し、その熱交換器94でもガスを冷却してもよい。ガスが循環する任意の位置にも熱交換機94b、94cを配置してもよい。
【0037】
[熱処理]
次に本願の熱処理装置10を使用した熱処理について説明する。なお、説明する熱処理は一例であり、被処理物22の種類および処理方法に応じて適宜変更される。
【0038】
(1)マッフル24の内部空間28に被処理物22を収容し、マッフル蓋54、断熱体蓋50および容器蓋42を閉じる。
【0039】
(2)ポンプ32を駆動させ、圧力容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28からガスを排気する。この排気と同時に、ガス源26から圧力容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28にガスを供給し、それらの空間14、18、28を所定のガスで満たす。ガスの供給量と排気量を調整することで、圧力容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28を所定圧力にする。
【0040】
(3)ヒータ20に電力供給し、ヒータを発熱させて断熱体16の内部空間18を昇温させる。断熱体16の内部空間18に配置されたマッフル24が加熱され、さらに被処理物22が加熱される。
【0041】
マッフル24の内部空間28にある被処理物22の温度が上昇し、被処理物22が脱脂される。脱脂するときに、ポンプ32を駆動させ、被処理物22から生じた放出物は第1排気パイプ34の途中にあるフィン70とフィルター72で捕捉される。必要に応じてガス源26からマッフル24の内部空間28にガスを供給する。吸気と排気によってマッフル24の内部空間28を所定の圧力にする。マッフル24の内部空間28以外に圧力容器12の内部空間14と断熱体16の内部空間18にもガス源26からガスを供給してもよい。
【0042】
ガスが第1排気パイプ34を流れるとき、第2断熱体68によってトラップ38まで高温のまま流れる。第2断熱体68の表面で放出物が液化、固化またはその両方が生じない。第1排気パイプ34が閉塞されない。特に被処理物22がセラミックス系の材料を含んでいる場合、放出物の気化温度が高いが、第2断熱体68によって高温のままトラップ38まで流れる。
【0043】
(4)被処理物22の脱脂が完了した後、ヒータ20に流す電流の値を変えて、断熱体16の内部空間18の温度を変える。ヒータ20に流れる電流を増加させ、被処理物22の温度を高める。たとえば、約1500℃以上で被処理物22を熱処理する。
【0044】
(5)被処理物22が熱処理された後、被処理物22を冷却する。断熱体蓋50とマッフル蓋54を開ける。ファン88を回転させてガスを循環させ、被処理物22を冷却させる。冷却する際、ガス源26から圧力容器12の内部空間14、断熱体16の内部空間18およびマッフル24の内部空間28にガスを導入してもよい。さらに、圧力容器12の内壁44と外壁46の間に冷却液を供給し圧力容器12を冷却してもよい。圧力容器12が冷却されることで、圧力容器12の内壁44に触れたガスが冷却される。熱交換器94a、94b、94cによって循環するガスを冷却してもよい。ガスが冷却されることで、被処理物22がガスに触れて冷却される。
【0045】
被処理物22が冷却されれば、容器蓋42、断熱体蓋50およびマッフル蓋54を開け、被処理物22を取り出す。
【0046】
トラップ38に大量の放出物が捕捉されれば、フィン70、フィルター72またはその両方を第1排気パイプ34から取り出し(図3)、放出物を除去する。第1排気パイプ34の内側に付いた放出物はフィン70を取り出すときにフィン70に接触して掻き出される。
【0047】
以上のように、マッフル24から排気されたガスは高温のままトラップ38まで流れる。そのため、トラップ38に到達するまでにガスに含まれる放出物が液体、固体またはその両方にならない。第1排気パイプ34が放出物で閉塞されない。第1排気パイプ34は二重配管を含み、第1排気パイプ34の表面温度を下げることで、第1排気パイプ34の周囲にある機器および人体への影響を低減している。また、第1排気パイプ34にフランジ接続部がある場合は、そのフランジ接続部にO(オー)リングなどの弾性体が使用され、その弾性体が熱によって劣化するのを防いでいる。
【0048】
[実施形態2]
図4に示すように、第1排気パイプ34におけるフィン90と冷却液パイプ92のある部分94の内径が第2断熱体68のある部分96の内径よりも大きくしてもよい。第2断熱体68によって高温のガスがフィン90に到達するため、フィン90と冷却液パイプ92を大きくして、冷却能力を高めている。
【0049】
第1排気パイプ34の上記部分94と部分96との境界で、内側配管64と外側配管66を仕切り98で分割してもよい。第1排気パイプ34の上記部分94と部分96で冷却液の流れ方を変えてもよい。たとえば、第1排気パイプ34の上記部分96に温度計を配置し、必要に応じて内側配管64と外側配管66の間に冷却液を流す。さらに、第1排気パイプ34の上記部分94は常に内側配管64と外側配管66の間に冷却液を流し、ガスを冷却する。
【0050】
第2断熱体68の外側表面の温度が高温にならなければ、第1排気パイプ34の上記部分96を二重配管にしなくてもよい。
【0051】
[実施形態3]
断熱体蓋50とマッフル蓋54は平行に配置されている。マッフル蓋54を断熱体蓋50に取り付ける構成は図5に示すように、押圧部材100と弾性体102を含んでもよい。押圧部材100は第1端部104と第2端部106を有する棒状になっている。押圧部材100はグラファイトフェルトまたはグラファイトフォイルなどの耐熱性材料で構成される。押圧部材100の第1端部104がマッフル蓋54に接する。押圧部材100の第1端部104はマッフル蓋54に固定されている。第1端部104の位置がずれないように、マッフル蓋54に凹部108を設け、その凹部108に第1端部104が挿入されてもよい。
【0052】
断熱体蓋50に貫通穴110を備え、その中を押圧部材100が通過している。押圧部材100は断熱体蓋50に固定されず、貫通穴110の中を移動できる。断熱体蓋50におけるマッフル蓋54の反対側に突起部材112を取り付け、その突起部材112に弾性体102が固定されている。弾性体102は板バネを用いる。押圧部材100の第2端部106が弾性体102に接し、または固定されている。
【0053】
弾性体102は押圧部材100に対して断熱体蓋50からマッフル蓋54に向かう方向の力を与える。押圧部材100がマッフル蓋54をマッフル本体52に向けて押圧する。マッフル24が熱膨張したとき、マッフル蓋54の位置が断熱体蓋50に向けて移動する。マッフル蓋54が弾性体102の弾性力によって押さえられており、マッフル蓋54が開かない。マッフル24の内部空間28から第1断熱体16の内部空間18に放出物が流れることを防止できる。第2排気パイプ36が放出物で閉塞されることを防止できる。さらに、断熱体蓋50とマッフル蓋54の間に隙間114が形成されていることで、マッフル蓋54が断熱体蓋50を押し開けることも防止できる。第1断熱体16の内部空間18から熱が逃げることを防止できる。
【0054】
弾性体102は板バネに限定されず、図6のようにコイルバネ116を用いてもよい。コイルバネ116は断熱体蓋50に取り付けられた固定部材118に取り付けられ、押圧部材100に対して断熱体蓋50からマッフル蓋54に向かう力を与える。押圧部材100がマッフル蓋54を押圧できれば、弾性体102およびその固定方法は限定されない。
【0055】
(第1項)一態様に係る熱処理装置は、圧力容器と、前記圧力容器の内部空間に配置された第1断熱体と、前記第1断熱体の内部空間に配置されたヒータと、前記第1断熱体の内部空間に配置され、被処理物が収容される収容部と、ポンプと、前記収容部の内部空間とポンプとをつなぐ排気パイプと、前記排気パイプの途中に設けられ、被処理物から放出された放出物を捕捉するトラップと、前記収容部とトラップの間において、排気パイプの少なくとも一部に配置された第2断熱体とを含む。
【0056】
第1項に記載の熱処理装置によれば、第2断熱体によって収容部から排気されるガスが高温のままトラップまで流れる。トラップで放出物が捕捉され、第1断熱体からトラップまでの間は放出部で閉塞されない。
【0057】
(第2項)前記排気パイプは前記第1断熱体を貫通しており、前記排気パイプが前記第1断熱体を貫通開始している位置から前記トラップの間において、前記排気パイプが前記第2断熱体を備える。
【0058】
第2項に記載の熱処理装置によれば、断熱体からトラップの間において、排気パイプ内を通過するガスの温度を維持できる。
【0059】
(第3項)前記排気パイプが内側配管と外側配管を含む。
【0060】
第3項に記載の熱処理装置によれば、排気パイプが二重配管になっていることで、二重配管の間に冷却液を流すことができ、排気パイプを冷却することができる。
【0061】
(第4項)前記トラップが放出物を冷却するフィンを含む。
【0062】
第4項に記載の熱処理装置によれば、放出物はフィンの表面で液体、固体またはその両方になり、放出物がポンプまで到達することを防止できる。
【0063】
(第5項)前記第1断熱体が筒状または箱状の断熱体本体と該断熱体本体の両端を開閉する断熱体蓋とを備え、前記収容部が筒状または箱状のマッフル本体と該マッフル本体の両端を開閉するマッフル蓋とを備え、前記断熱体蓋とマッフル蓋との間に隙間を備える。
【0064】
第5項に記載の熱処理装置によれば、マッフル蓋が断熱体蓋を押すことを防止できる。
【0065】
(第6項)前記マッフル蓋をマッフル本体に向けて押圧する押圧部材と、前記押圧部材に対してマッフル蓋に向かう力を与える弾性体とを備える。
【0066】
第6項に記載の熱処理装置によれば、マッフルが熱伸びした場合でも弾性体の弾性力によって断熱体蓋およびマッフル蓋を閉じたままにできる。
【0067】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。説明した各実施形態は独立したものではなく、当業者の知識に基づき適宜組み合わせて実施できるものである。
【符号の説明】
【0068】
10:熱処理装置
12:圧力容器
16:第1断熱体
20:ヒータ
22:被処理物
24:マッフル(収容部)
26:ガス源
32:ポンプ
34、36:排気パイプ
38:トラップ
40:容器本体
42:容器蓋
44:内壁
46:外壁
48:断熱体本体
50:断熱体蓋
52:マッフル本体
54:マッフル蓋
64:内側配管
66:外側配管
68:第2断熱体
70、90:フィン
72:フィルター
74、92:冷却液パイプ
76、82:蓋体
78、84:開口
80、86:第1排気パイプの折れ曲がり部分
100:押圧部材
102:弾性体
108:マッフル蓋の凹部
110:断熱体蓋の貫通穴
114:断熱体蓋とマッフル蓋との間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6