(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140634
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】温度センサの配管取付構造
(51)【国際特許分類】
G01K 13/02 20210101AFI20220915BHJP
G01K 1/08 20210101ALI20220915BHJP
【FI】
G01K13/02
G01K1/08 N
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123368
(22)【出願日】2022-08-02
(62)【分割の表示】P 2019106165の分割
【原出願日】2019-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2018124588
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 善文
(72)【発明者】
【氏名】大野 和幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】若杉 亮太
(72)【発明者】
【氏名】青木 文明
(57)【要約】
【課題】配管を流れる測定対象の温度を測定するように構成された温度センサの配管取付構造において、測定対象の温度検出応答遅れを改善すること。
【解決手段】ハウジング110は、管部113と、底部114と、管部113に設けられていると共に管部113の外部から内部に測定対象を流入させる第1開口部111aと、管部113に設けられていると共に管部113の内部から外部に測定対象を流出させる第2開口部111bと、が形成された有底管状の突出部111を有する。温度センサ100は、板部126を有する。板部126は、管部113の内部に配置され、管部113の内部に流れる測定対象の流速を向上させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の温度を検出する温度検出部(152)を有するセンサチップ(150)と、
一端部(141)と、前記一端部とは反対側の他端部(142)と、を有する柱状であって、前記センサチップのうち前記温度検出部に対応する部分が露出するように、前記センサチップを前記一端部側に封止したモールド樹脂部(140)と、
管部(113)と、底部(114)と、前記管部に設けられていると共に前記管部の外部から内部に前記測定対象を流入させる第1開口部(111a)と、前記管部に設けられていると共に前記管部の内部から外部に前記測定対象を流出させる第2開口部(111b)と、が形成された有底管状の突出部(111)を有し、前記センサチップの前記温度検出部が前記管部の内部に位置するように前記モールド樹脂部を保持し、前記管部の一部が取付対象である配管(200)に固定されることで前記突出部の前記底部側を前記配管の内部に位置させる保持部(110、120、130)と、
前記管部の内部に配置され、前記管部の内部に流れる前記測定対象の流速を向上させるための流速向上部(126、145)と、
を備えた温度センサ(100)と、
前記温度センサの前記管部の一部が固定される前記配管と、
を含んでいる温度センサの配管取付構造。
【請求項2】
前記流速向上部は、前記突出部の前記底部側の先端部(145)が前記突出部の突出方向に垂直な方向において前記第1開口部の少なくとも一部に重なっている前記モールド樹脂部である請求項1に記載の温度センサの配管取付構造。
【請求項3】
前記流速向上部は、前記保持部に形成され、前記モールド樹脂部よりも前記第2開口部側に位置し、前記モールド樹脂部のうち前記突出部の前記底部側の先端部(145)よりも前記底部側に突出し、少なくとも一部が前記突出部の突出方向に垂直な方向において前記第1開口部に重なっている板部(126)である請求項1に記載の温度センサの配管取付構造。
【請求項4】
前記突出部は、前記温度検出部が前記測定対象の上流側に向けられた状態で前記配管に固定される請求項1ないし3のいずれか1つに記載の温度センサの配管取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサの配管取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、測定対象の温度を検出するセンサが、例えば特許文献1で提案されている。測定対象は配管を流れる。センサは、配管の通路に突出する有底管状の突出部と、突出部に収容されたセンサ部と、を有する。突出部は、当該突出部の中に測定対象を流入させるための開口部を有する。開口部は、突出部が配管に取り付けられた際、測定対象の上流側に向けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、測定対象が開口部を介して突出部の中に流入するものの、測定対象が突出部内に滞留しているので、突出部内を流れにくい。このため、配管を流れる測定対象の温度と突出部内の測定対象の温度との乖離が大きくなり、温度検出応答遅れが発生してしまう。その結果、測定対象の温度を正確に測定できないという問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、配管を流れる測定対象の温度を測定するように構成された温度センサの配管取付構造において、測定対象の温度検出応答遅れを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、温度センサの配管取付構造は、温度センサ(100)及び配管(200)を含む。温度センサは、測定対象の温度を検出する温度検出部(152)を有するセンサチップ(150)を含んでいる。
【0007】
温度センサは、一端部(141)と、一端部とは反対側の他端部(142)と、を有する柱状であって、センサチップのうち温度検出部に対応する部分が露出するように、センサチップを一端部側に封止したモールド樹脂部(140)を含んでいる。
【0008】
温度センサは、管部(113)と、底部(114)と、管部に設けられていると共に管部の外部から内部に測定対象を流入させる第1開口部(111a)と、管部に設けられていると共に管部の内部から外部に測定対象を流出させる第2開口部(111b)と、が形成された有底管状の突出部(111)を有し、センサチップの温度検出部が管部の内部に位置するようにモールド樹脂部を保持し、管部の一部が取付対象である配管に固定されることで突出部の底部側を配管の内部に位置させる保持部(110、120、130)を含んでいる。
【0009】
温度センサは、管部の内部に配置され、管部の内部に流れる測定対象の流速を向上させるための流速向上部(126、145)を含んでいる。配管は、温度センサの管部の一部が固定される。
【0010】
これによると、測定対象が管部の内部に滞留しにくくなるので、配管に流れる測定対象の温度と管部の内部の測定対象の温度との乖離を小さくすることができる。したがって、測定対象の温度検出応答遅れを改善することができる。
【0011】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る温度センサの断面図である。
【
図2】管部の内部の測定対象の流速を比較するための図であり、(a)は従来品、(b)は第1開口部を設置壁面側に移動させた構造、(c)は突出部を配管内の対向壁面に近づけた構造、(d)は第1開口部を設置壁面側に移動させ、かつ、突出部を配管内の対向壁面に近づけた構造を示した図である。
【
図3】
図2(a)の従来品における温度検出応答遅れを示した図である。
【
図4】
図2に示された各構造において、センサチップの温度検出部を基準として上流側の流速と下流側の流速とを示した図である。
【
図5】温度検出部周囲の流速の最大値と、センサ出力と配管内の測定対象の温度との最大温度差と、の関係を示した図である。
【
図6】第2実施形態に係る温度センサの断面図であり、突出部の突出方向及び測定対象の流れ方向に平行な断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る温度センサの断面図であり、測定対象の流れ方向に垂直な断面図である。
【
図8】第3実施形態に係る温度センサの断面図である。
【
図9】第4実施形態に係る温度センサの断面図である。
【
図12】第4実施形態に係る温度センサに対する測定対象の流れを示した一部断面図である。
【
図13】測定対象の流れに対するセンサチップの温度検出部の向きと第4開口部及び第5開口部の向きを4パターンに変化させた場合の突出部の突出方向に垂直な方向における断面図である。
【
図14】
図13に示された4パターンにおけるセンサチップの温度検出部付近の測定対象の流速を示した図である。
【
図15】第4実施形態に係る温度センサの変形例を示した一部断面図である。
【
図16】第4実施形態に係る温度センサの変形例を示した一部断面図である。
【
図17】第4実施形態に係る温度センサの変形例を示した一部断面図である。
【
図18】第4実施形態に係る温度センサの変形例を示した一部断面図である。
【
図19】第5実施形態に係る温度センサの一部断面図である。
【
図20】中心間距離×Dとセンサチップの温度検出部付近の流速との関係を示した図である。
【
図21】第6実施形態に係る温度センサの一部断面図である。
【
図22】壁面距離×Dとセンサチップの温度検出部付近の流速との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態に係る温度センサは、測定対象の圧力及び温度の両方を検出可能に構成されたものである。温度センサは配管に固定され、配管内の測定対象の圧力及び温度を検出する。測定対象は、例えばオイルである。もちろん、測定対象は他の液体や気体等の他の流体の場合もある。
【0015】
図1に示されるように、温度センサ100は、ハウジング110、センサボディ120、ポッティング部130、モールド樹脂部140、及びセンサチップ150を備えている。
【0016】
ハウジング110は、SUS等の金属材料が切削等により加工された中空形状のケースである。ハウジング110は、一端側に突出部111を有し、他端側に開口部112を有している。突出部111は管部113及び底部114が形成された有底管状の部分であり、管部113は開口部112に連通している。突出部111のうちの開口部112側の外周面には、取付対象である配管200にネジ結合可能な雄ネジ部115が形成されている。
【0017】
ハウジング110の開口部112は周壁116に囲まれることで構成されている。ハウジング110は、管部113の一部が取付対象である配管200の肉厚部201に設けられた貫通ネジ穴202に固定される。これにより、突出部111の底部114側が配管200の内部に位置することになる。
【0018】
また、突出部111は、第1開口部111a、第2開口部111b、及び第3開口部111cを有する。第1開口部111aは、管部113に設けられていると共に、管部113の外部から内部に測定対象を流入させる部分である。第1開口部111aは、測定対象の上流側に向けられる。管部113の外部は配管200の内部である。
【0019】
第2開口部111bは、管部113に設けられていると共に、管部113の内部から外部に測定対象を流出させる部分である。管部113の内部から測定対象をスムーズに流出させるために、第2開口部111bは測定対象の下流側に向けられる。第2開口部111bは、第1開口部111aに対向する位置に形成されていても良い。
【0020】
第3開口部111cは、第1開口部111a及び第2開口部111b以外の測定対象を流出入させる部分である。第3開口部111cは管部113に複数形成されている。
【0021】
センサボディ120は、温度センサ100と外部装置とを電気的に接続するためのコネクタを構成する部品である。センサボディ120は、例えばPPS等の樹脂材料で形成されており、一端側がハウジング110の開口部112に固定される固定部121として形成され、他端側がコネクタ部122として形成されている。固定部121はコネクタ部122側に凹んだ凹部123を有している。
【0022】
また、センサボディ120は、ターミナル124がインサート成形されている。ターミナル124の一端側は固定部121に封止され、他端側はコネクタ部122の内側に露出するようにセンサボディ120にインサート成形されている。ターミナル124の一端側は、モールド樹脂部140の一部が凹部123に収容されることでモールド樹脂部140の電気的部品に接続される。
【0023】
そして、センサボディ120は、固定部121がOリング125を介してハウジング110の開口部112に嵌め込まれた状態で、ハウジング110の周壁116の端部が当該固定部121を押さえるようかしめ固定されている。
【0024】
ポッティング部130は、センサボディ120の凹部123とモールド樹脂部140との隙間に充填されたシール用の部品である。ポッティング部130は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料で形成されている。ポッティング部130は、測定対象であるオイルからモールド樹脂部140の一部やターミナル124の接合部等をシール及び保護する役割を果たす。
【0025】
モールド樹脂部140は、センサチップ150を保持する部品である。モールド樹脂部140は、一端部141と、一端部141とは反対側の他端部142と、を有する柱状に構成されている。モールド樹脂部140は、一端部141側にセンサチップ150を封止している。
【0026】
また、モールド樹脂部140は、リードフレーム143の一部及び回路チップ160を封止している。リードフレーム143は、センサチップ150及び回路チップ160が実装されるベースとなる部品である。リードフレーム143の一端側にはセンサチップ150が実装され、他端側には回路チップ160が実装されている。
【0027】
リードフレーム143の他端側の先端部分は、モールド樹脂部140の他端部142から露出していると共に、ターミナル124の一端側に接続されている。なお、リードフレーム143は、複数に分割されていても良い。この場合、ボンディングワイヤによって電気的接続を行えば良い。リードフレーム143とターミナル124ともボンディングワイヤで接続されていても良い。
【0028】
回路チップ160は、メモリ等の半導体集積回路が形成されたICチップである。回路チップ160は、半導体基板等を用いて形成されている。回路チップ160は、センサチップ150への電源として定電流の供給や、センサチップ150から圧力信号及び温度信号を入力して予め設定された信号処理値に基づいて各信号の信号処理を行う。信号処理値とは、各信号の信号値を増幅や演算等するための調整値である。回路チップ160は、図示しないボンディングワイヤによってリードフレーム143を介してセンサチップ150と電気的に接続されている。
【0029】
センサチップ150は、測定対象の温度を検出する電子部品である。センサチップ150は、例えば銀ペースト等でリードフレーム143に実装されている。図示しないが、センサチップ150は、複数の層が積層されて構成された板状の積層基板を有して構成されている。複数の層は、ウェハレベルパッケージとして複数のウェハが積層され、半導体プロセス等で加工された後、センサチップ150毎にダイシングカットされる。
【0030】
センサチップ150は、薄肉状のダイヤフラム151を有する。ダイヤフラム151には複数のゲージ抵抗152が形成されている。各ゲージ抵抗152は、半導体層に対するイオン注入により形成された拡散抵抗である。各ゲージ抵抗152はダイヤフラム151の上に形成された薄膜抵抗として構成されていても良い。なお、センサチップ150には、各ゲージ抵抗152に接続された図示しない配線部やパッド等も形成されている。
【0031】
各ゲージ抵抗152は、ダイヤフラム151の歪みに応じて抵抗値が変化する抵抗素子である。また、各ゲージ抵抗152は温度に応じて抵抗値が変化する素子である。各ゲージ抵抗152は、ホイートストンブリッジ回路を構成するように電気的に接続されている。ホイートストンブリッジ回路は、回路チップ160から定電流の電源が供給される。これにより、各ゲージ抵抗152のピエゾ抵抗効果を利用して、ダイヤフラム151の歪みや温度に応じた電圧をセンサ信号として検出することができる。
【0032】
具体的には、センサチップ150は、ダイヤフラム151の歪みに応じた複数のゲージ抵抗152の抵抗変化をホイートストンブリッジ回路の中点電圧の変化として検出し、当該中点電圧を圧力信号として出力する。一方、センサチップ150は、測定対象から受ける熱に応じた複数のゲージ抵抗152の抵抗変化をホイートストンブリッジ回路のブリッジ電圧として検出し、当該ブリッジ電圧を温度信号として出力する。
【0033】
したがって、本実施形態では、各ゲージ抵抗152は、圧力検出部及び温度検出部の両方の機能を有する。センサチップ150は、圧力検出部及び温度検出部に対応した部分が露出するように、モールド樹脂部140の一端部141側に封止されている。
【0034】
そして、モールド樹脂部140は、センサチップ150の圧力検出部及び温度検出部が管部113の内部に位置するように、センサボディ120及びポッティング部130に保持される。以上が、温度センサ100の全体構成である。
【0035】
次に、管部113の内部に流れる測定対象の流速を向上させるための具体的な手段及びその効果について説明する。まず、突出部111は、センサチップ150の温度検出部が測定対象の上流側に向けられた状態で配管200に固定される。これにより、温度検出部に測定対象を直接当てやすくすることができる。
【0036】
第1開口部111aは、突出部111の突出方向に垂直な方向において、配管200の内壁面203のうち突出部111が突出する設置壁面204に重なるように管部113に形成されている。「第1開口部111aと設置壁面204とが重なる」とは、設置壁面204と第1開口部111aの開口面とが交差することである。
【0037】
このような配置関係により、配管200から第1開口部111aを介して温度検出部に至るまでの経路が最短距離になるので、配管200の流れに影響されて温度検出部の周囲の測定対象が流動しやすくなる。また、配管200内のうち設置壁面204側を流れる測定対象が突出部111すなわち管部113に衝突することなく第1開口部111aを介して管部113の内部に流れ込むので、管部113の内部に流れ込む測定対象の流速が遅くなってしまうことはない。したがって、第1開口部111aを通過する測定対象の流速を確保することができる。
【0038】
そして、第1開口部111aを設置壁面204と重なる位置に配置させるために、ハウジング110はストッパ117を有している。ストッパ117は、配管200の内部における突出部111の底部114の位置を調整するための部品である。このストッパ117により、温度センサ100が規定トルク以上で配管200に取り付けられたとしても、第1開口部111aが設置壁面204から離れた位置に配置されないようにすることができる。
【0039】
発明者らは、
図2(a)~
図2(d)に示されるように、突出部111の突出長さ及び第1開口部111aの位置を変化させた4つの構造を用意し、各構造について温度検出応答遅れについて調べた。試験は、自動車のエンジンオイルを対象とした。
【0040】
図2(a)は、突出部111の突出長さが配管200の内径の4/5未満であり、かつ、第1開口部111aの位置が設置壁面204から底部114までの間に位置する従来品を示している。
図2(b)は、第1開口部111aが設置壁面204に重なる構造を示しており、
図1に対応している。
【0041】
図2(c)及び
図2(d)は、突出部111は、配管200の内壁面203のうち突出部111が突出する設置壁面204から当該設置壁面204に対向する対向壁面205までの長さの4/5以上の長さが設置壁面204から突出するように形成されたものである。
【0042】
配管200が円筒の場合、設置壁面204から対向壁面205までの長さは、配管200の内径に対応する。配管200が楕円筒の場合、設置壁面204から対向壁面205までの長さは、例えば、突出部111の中心軸を基準として、中心軸と設置壁面204との交点から中心軸と対向壁面205との交点までの長さである。突出部111の中心軸は突出部111の突出方向に平行な軸である。配管200が四角筒等の場合、設置壁面204から対向壁面205までの長さは、設置壁面204と対向壁面205との対向長さである。
【0043】
また、突出部111の底部114は、半球状になっている。ハウジング110はストッパ117を有しているので、温度センサ100が規定トルク以上で配管200に取り付けられたとしても、突出部111の底部114がストッパ117によって対向壁面205に接触しないようにすることができる。
【0044】
上記の構成によると、突出部111が配管200の一部を塞ぐことになるので、測定対象が第1開口部111aに入り込みやすくなる。言い換えると、突出部111の底部114と対向壁面205との隙間が狭いので、当該隙間を通過する測定対象の流速よりも、第1開口部111aを介して突出部111の管部113に流入する測定対象の流速が速くなる。
【0045】
さらに、上記の突出部111の突出長さに加え、
図2(c)では第1開口部111aの位置が設置壁面204から底部114までの間に位置する構造を示し、
図2(d)では第1開口部111aが設置壁面204に重なる構造を示している。
【0046】
まず、発明者らは、
図2(a)に示された従来品の温度検出応答遅れを調べた。その結果を
図3に示す。
図3に示されるように、エンジンの始動後、エンジン回転数は一定値になる。配管200内のエンジンオイルの温度は上昇していくが、センサチップ150の温度検出部で検出される温度は上昇しにくくなっている。すなわち、測定対象の実際の温度と測定温度とに乖離が生じている。これは、管部113の内部の測定対象が滞留しているからである。よって、温度検出応答遅れが発生している。
【0047】
続いて、発明者らは、
図2に示された各構造においてセンサチップ150の温度検出部を基準として上流側の流速と下流側の流速とを調べた。その結果を
図4に示す。配管200を流れるエンジンオイルの粘度を9.0Pa・s、流速を0.5m/sとした。
図4において、マイナスの距離はセンサチップ150の上流側に対応し、プラスの距離はセンサチップ150の下流側に対応する。
【0048】
図4に示されるように、
図2(a)の従来品におけるセンサチップ150の上流側及び下流側の流速は、4つの構造の中で最も小さい値であった。これに対し、
図2(b)~(d)に示された構造では、管部113の内部の測定対象の流速が向上した。
【0049】
具体的には、
図2(b)の第1開口部111aを移動させた構造では、センサチップ150の上流側の流速は、従来品に対して1.4倍になった。また、
図2(c)の突出部111の突出長さを長くした構造では、センサチップ150の上流側の流速は、従来品に対して18倍になった。さらに、
図2(d)の第1開口部111aを移動させて突出部111の突出長さを長くした構造では、センサチップ150の上流側の流速は、従来品に対して26倍になった。
【0050】
このように、第1開口部111aを移動させた構造や、突出部111の突出長さを長くした構造では、それぞれセンサチップ150の上流側の流速が向上したが、これらを組み合わせることで流速がさらに向上する結果になった。
【0051】
通常、突出部111が配管200に突き出ただけの状態では、突出部111が流路抵抗になるので、エンジンオイルは流路抵抗の少ない突出部111の底部114側や突出部111の側面を速い流速で通過する。しかし、突出部111の底部114を対向壁面205に近づけることで、突出部111の底部114側の流路抵抗が増加し、突出部111の底部114側よりも突出部111の側面や第1開口部111aでの流速が速まる。これに伴い、温度検出部周辺の流速もつられて速くなった。
【0052】
発明者らは、
図2(d)の構造において、温度検出部周囲の流速の最大値と、センサ出力と配管200内の測定対象の温度との最大温度差と、の関係を調べた。その結果を
図5に示す。
図5に示されるように、温度検出部周囲の流速の最大値が大きくなると、センサ出力と配管200内の測定対象の温度との最大温度差が小さくなるという結果になった。この結果からも、配管200内の測定対象の流速が向上したことで、温度検出応答遅れが改善されていると言える。なお、
図2(b)及び
図2(c)の構造においても、
図5と同じ結果が得られた。
【0053】
以上説明したように、第1開口部111aを設置壁面204側に移動させた構造とすることで、管部113の内部の測定対象の流速を向上させることができる。その結果、配管200に流れる測定対象の温度と管部113の内部の測定対象の温度との乖離を小さくすることができ、ひいては測定対象の温度検出応答遅れを改善することができる。
【0054】
また、管部113の内部の測定対象の流速が向上することで、センサチップ150を配管200の内部に位置させずに済む。これにより、センサチップ150の圧力検出部や温度検出部が測定対象の動圧を受けないようにすることができる。
【0055】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、ゲージ抵抗152が特許請求の範囲の「温度検出部」に対応する。また、ハウジング110、センサボディ120、及びポッティング部130が特許請求の範囲の「保持部」に対応する。
【0056】
上述のように、第1開口部111aを設置壁面204側に移動させた構造の他に、あるいは、突出部111の突出長さを長くした構造や、第1開口部111aを設置壁面204側に移動させ、かつ、突出部111の突出長さを長くした構造としても良い。この場合も、管部113の内部の測定対象の流速が向上している。したがって、変形例として、第1開口部111aを移動させずに突出部111の突出長さだけを延長しても良いし、第1開口部111aの移動と突出部111の突出長さの延長とを組み合わせても良い。
【0057】
別の変形例として、第2開口部111bは、第1開口部111aに対向する位置に形成されていても良い。これにより、管部113の内部の測定対象の流れをスムーズにすることができる。
【0058】
別の変形例として、突出部111の先端形状は半球状に限られず、例えば平面や台形状等の他の形状になっていても良い。
【0059】
(第2実施形態)
本実施形態では、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。
図6に示されるように、モールド樹脂部140は、突出部111の底部114側の先端部145が突出部111の突出方向すなわち中心軸に垂直な方向において第1開口部111aの少なくとも一部に重なっている。モールド樹脂部140の先端部145は、管部113の内部に配置されていると共に、センサチップ150よりも底部114側の部分である。
【0060】
図6及び
図7に示されるように、本実施形態では、突出部111の中心軸に垂直な方向すなわち測定対象の流れ方向に、第1開口部111aの開口部分の一部がモールド樹脂部140の先端部145に重なっている。これにより、第1開口部111aを介して管部113の内部に流入する測定対象は、モールド樹脂部140の先端部145に当たると共にセンサチップ150側に流れを変える。センサチップ150側に流れた測定対象はモールド樹脂部140の周囲を流れて下流側に移動し、管部113の内部を底部114側に流れ、第2開口部111bから配管200に流出する。
【0061】
このように、センサチップ150を保持するモールド樹脂部140の先端部145が突出部111の底部114まで延長されている。このため、第1開口部111aを介して管部113の内部に流入する測定対象の流れを強制的にセンサチップ150側の流れに変更させることができる。すなわち、測定対象の流れが垂直に変化する。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、モールド樹脂部140の先端部145が特許請求の範囲の「流速向上部」に対応する。
【0063】
変形例として、突出部111の中心軸に垂直な方向において、第1開口部111aの開口部分の全体がモールド樹脂部140の先端部145に重なっていても良い。また、本実施形態においても、ストッパ117を用いても良い。
【0064】
(第3実施形態)
本実施形態では、主に第2実施形態と異なる部分について説明する。
図8に示されるように、センサボディ120は、管部113の内部に配置された板部126を有する。板部126は、モールド樹脂部140よりも第2開口部111b側に位置する柱状に形成されている。つまり、板部126はモールド樹脂部140よりも測定対象の流れの下流側に位置する。
【0065】
また、板部126は、モールド樹脂部140の先端部145よりも底部114側に突出している。さらに、板部126の先端部分は、突出部111の中心軸に垂直な方向において第1開口部111aに重なっている。言い換えると、突出部111の中心軸に垂直な方向すなわち測定対象の流れ方向に、第1開口部111aの開口部分の一部が板部126の先端部分に重なっている。
【0066】
以上の構成により、第2実施形態と同様に、管部113の内部の測定対象の流れを強制的に変更することができる。したがって、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、板部126が特許請求の範囲の「流速向上部」に対応する。
【0068】
変形例として、第1開口部111aの開口部分の一部ではなく、第1開口部111aの開口部分の全体が、突出部111の中心軸に垂直な方向において板部126に重なっていても良い。
【0069】
(第4実施形態)
本実施形態では、主に上記各実施形態と異なる部分について説明する。
図9に示されるように、本実施形態に係る温度センサ100において、突出部111は、第4開口部111d及び第5開口部111eを有する。なお、本実施形態では、測定対象の流れが上記各実施形態とは逆方向になっている。すなわち、測定対象は紙面の右側から左側に流れるようになっている。
【0070】
図10に示されるように、第4開口部111dは、3個設けられている。また、
図11に示されるように、第5開口部111eは、3個設けられている。つまり、突出部111は、6個の開口部111d、111eを有する。
【0071】
各開口部111d、111eは、長軸が突出部111の突出方向に沿った楕円形状の貫通孔である。各開口部111d、111eは、全て同じ形状及びサイズである。測定対象は、各開口部111d、111e通過することで管部113に流入あるいは流出する。
【0072】
そして、各開口部111d、111eは、突出部111の突出方向において、隣同士の開口部111d、111eの開口中心の位置が異なっている。本実施形態では、第4開口部111dの開口中心が、隣の第5開口部111eの開口中心よりもセンサチップ150側に位置している。
【0073】
開口中心とは、開口部111d、111eの開口形状の中心位置である。各開口部111d、111eは楕円形状であるので、開口中心は長軸と短軸とが交差する楕円の中心位置である。例えば、各開口部111d、111eの開口形状が円形の場合、開口中心は円の中心位置である。
【0074】
本実施形態では、3個の第4開口部111dは、開口中心が突出部111の中心軸を中心とした周方向に120度の等間隔で配置されている。同様に、3個の第5開口部111eは、開口中心が突出部111の中心軸を中心とした周方向に120度の等間隔で配置されている。したがって、6個の開口部111d、111eは、突出部111の周方向に60度毎に配置されている。上述のように、隣同士の第4開口部111d及び第5開口部111eは、開口中心の位置が突出部111の突出方向において異なっているので、6個の開口部111d、111eは突出部111の周方向に千鳥状に配置されている。
【0075】
また、
図9に示されるように、各第4開口部111dは、突出部111の突出方向に垂直な方向において、配管200の内壁面203のうち突出部111が突出する設置壁面204に重なるように管部113に形成されている。
【0076】
上記の構成によると、
図12に示されるように、第4開口部111dから管部113の内部に流入した測定対象は、下流側の第5開口部111eから流出するように流れる。このとき、突出部111の突出方向において第4開口部111dと第5開口部111eとの位置が異なっているので、管部113の内部における測定対象の流れの方向を変化させやすくすることができる。このため、測定対象がセンサチップ150の温度検出部に流れやすくなり、管部113の内部に滞留しにくくなる。したがって、温度検出部の温度応答性を向上させることができる。
【0077】
発明者らは、
図9に示された温度センサ100において、センサチップ150の温度検出部に対応したゲージ抵抗152付近の測定対象の流速をシミュレーションによって調べた。測定対象をエンジンオイルとし、油温を-30℃、オイルの密度を876kg/m
3、オイルの粘度を9Pa・s、配管200を流れるオイルの流速を1.5m/sとした。
【0078】
また、
図13に示されるように、配管200におけるオイルの流れに対して各開口部111d、111eの位置を4パターンに変化させた。なお、
図13の各図では第4開口部111dに対応する位置の断面を示しているが、上述の通り、各第4開口部111dと各第5開口部111eとの位置関係から、第5開口部111eの位置も確定している。
【0079】
図13(a)は、センサチップ150の温度検出部と1個の第4開口部111dとが配管200の上流側に向けられた場合を示している。
図13(b)は、センサチップ150の温度検出部と1個の第5開口部111eとが配管200の上流側に向けられた場合を示している。
【0080】
図13(c)は、センサチップ150の温度検出部が測定対象の流れに対して45度傾けられ、2個の第4開口部111dが配管200の上流側に向けられた場合を示している。
図13(d)は、センサチップ150の温度検出部が測定対象の流れに対して90度傾けられ、1個の第5開口部111eが配管200の上流側に向けられた場合を示している。
【0081】
図13(a)~
図13(d)の各パターンに対するシミュレーション結果を
図14に示す。
図14に示されるように、4パターンのすべてについて、センサチップ150の温度検出部付近における測定対象の流速が充分とされる0.025m/s以上を確保することができた。また、測定対象の流れに対する各開口部111d、111eの位置による違いは無く、各開口部111d、111eの突出方向における位置関係によって流速の確保が可能になっていることがわかる。さらに、管部113の内部において、測定対象の流れに対するセンサチップ150の温度検出部の向きの違いが流速に影響ないこともわかった。
【0082】
以上説明したように、突出部111の突出方向において、各開口部111d、111eの隣同士の開口中心の位置を異ならせることで、管部113の内部における測定対象の流速を確保することができる。
【0083】
変形例として、突出部111に設けられる各開口部111d、111eの数は6個に限られない。例えば、第4開口部111dが1個、第5開口部111eが1個でも構わない。つまり、突出部111には少なくとも2個の開口部111d、111eが設けられていれば良い。突出部111の突出方向において、各開口部111d、111eの隣同士の開口中心の位置が異なっていれば良いので、各開口部111d、111eは3個等の奇数個でも構わない。突出部111には、4個~6個の開口部111d、111eが設けられていることが望ましい。
【0084】
変形例として、各開口部111d、111eのサイズは、全て同じでなくても良い。例えば、3個の第4開口部111dは全て同じサイズであり、3個の第5開口部111eは第4開口部111dのサイズとは異なるが全て同じサイズとしても良い。各開口部111d、111eは全て異なるサイズでも構わない。
【0085】
変形例として、
図15に示されるように、各第4開口部111dは、突出部111の突出方向に垂直な方向において、配管200の内壁面203のうち突出部111が突出する設置壁面204に重ならないように管部113に形成されていても良い。すなわち、突出部111の突出方向において、第4開口部111dの全体が設置壁面204よりも底部114側に位置していても良い。
【0086】
変形例として、
図16に示されるように、各開口部111d、111eは四角形状でも良い。この場合、各開口部111d、111eの開口中心は、四角形の中心位置である。もちろん、各開口部111d、111eは四角形以外の多角形状でも良い。
【0087】
また、
図17に示されるように、各第4開口部111dのうちの少なくとも1つと各第5開口部111eのうちの少なくとも1つとが、突出部111の周方向において重なるように設けられていても良い。各第4開口部111dが突出部111において異なる位置に配置されていても良い。
【0088】
さらに、
図18に示されるように、各開口部111d、111eは、突出部111の突出方向に沿って設けられた切り欠き部111fを有していても良い。切り欠き部111fは、例えばセンサチップ150側に設けられている。切り欠き部111fは、全ての開口部111d、111eに設けられていても良い。切り欠き部111fは、1個の開口部111d、111eに複数設けられていても良い。各開口部111d、111eにおいて、切り欠き部111fの形状や個数が異なっていても構わない。各開口部111d、111eに切り欠き部111fが設けられている場合、開口中心は切り欠き部111fの形状を含んだ全体の形状の中心位置である。
図18に示された例では、突出部111の突出方向において、開口中心は切り欠き部111fのうちのセンサチップ150側の端から開口部111d、111eのうちの底部114側の端までの長さの中央の位置となる。
【0089】
図示しないが、第4開口部111dと第5開口部111eとは、開口形状が異なっていても構わない。複数の第4開口部111dの開口形状が異なっていても構わないし、複数の第5開口部111eの開口形状が異なっていても構わない。
【0090】
なお、発明者らは、
図16~
図18に示された各開口部111d、111eを持つものや、各開口部111d、111eが異なる形状を持つものについて、上記と同様にセンサチップ150の温度検出部付近の流速をシミュレーションによって調べた。それによると、
図14に示された結果と同様に、充分な流速を得ることができた。この結果から、各開口部111d、111eの隣同士の配置関係が流速に与える影響は大きく、各開口部111d、111eの形状の違いが流速に与える影響は小さいと言える。
【0091】
(第5実施形態)
本実施形態では、主に第4実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、突出部111の突出方向における各開口部111d、111eの位置関係を具体的に規定する。まず、各開口部111d、111eは、突出部111の突出方向における開口長さが同じであるとする。また、開口長さをDと定義する。
【0092】
そして、発明者らは、
図19に示されるように、各開口部111d、111eの中心間距離を変化させたときのセンサチップ150の温度検出部付近の流速を第4実施形態と同じ条件でシミュレーションによって調べた。中心間距離とは、具体的には、隣同士の開口部111d、111eのうちの一方の開口中心と、隣同士の開口部111d、111eのうちの他方の開口中心と、の突出部111の突出方向における距離である。
【0093】
図20のシミュレーション結果に示されるように、中心間距離×Dが0.6D以上の場合、センサチップ150の温度検出部付近における測定対象の流速が充分とされる0.025m/s以上を確保することができることがわかった。したがって、中心間距離×Dが0.6D以上となるように、各開口部111d、111eを管部113に設けることで、管部113の内部における測定対象の流速を確保することができる。
【0094】
なお、発明者らは、第4実施形態と同様に、各開口部111d、111eが様々な形状を持つものについて、上記と同様に中心間距離×Dとセンサチップ150の温度検出部付近の流速との関係をシミュレーションによって調べた。その結果、
図20に示された結果と同様に、各開口部111d、111eの形状の違いにかかわらず、充分な流速を得ることができた。
【0095】
(第6実施形態)
本実施形態では、主に第4、第5実施形態と異なる部分について説明する。本実施形態では、突出部111の突出方向におけるセンサチップ150側の第4開口部111dの位置を具体的に規定する。
【0096】
まず、第5実施形態と同様に開口長さをDと定義する。また、配管200の内壁面203のうち突出部111が突出する設置壁面204を基準として突出部111の突出方向における底部114側の距離をLと定義する。距離Lがマイナスの場合は、第4開口部111dの開口中心が設置壁面204よりもセンサチップ150側に位置することを意味している。
【0097】
そして、発明者らは、
図21に示されるように、設置壁面204から第4開口部111dまでの壁面距離Lを変化させたときのセンサチップ150の温度検出部付近の流速を第4実施形態と同じ条件でシミュレーションによって調べた。その結果を
図22に示す。
【0098】
図22に示されるように、壁面距離Lが-0.3Dよりも大きい場合、及び、壁面距離Lが0.4Dよりも小さい場合、センサチップ150の温度検出部付近における測定対象の流速が充分とされる0.025m/s以上を確保することができることがわかった。言い換えると、第4開口部111dがセンサチップ150に近づきすぎては流速を確保できないし、センサチップ150から離れてしまっても流速を確保できないと言える。つまり、壁面距離Lが-0.3D<L<0.4Dを満たすように、第4開口部111dの位置を調整すれば良い。
【0099】
以上のように、突出部111の突出方向において、隣同士の開口部111d、111eのうちセンサチップ150に近い第4開口部111dを、-0.3D<L<0.4Dを満たすように、管部113に設けることが望ましい。これにより、管部113の内部における測定対象の流速を確保することができる。
【0100】
なお、発明者らは、第4実施形態と同様に、各開口部111d、111eが様々な形状を持つものについて、上記と同様に壁面距離Lとセンサチップ150の温度検出部付近の流速との関係をシミュレーションによって調べた。その結果、
図22に示された結果と同様に、各開口部111d、111eの形状の違いにかかわらず、-0.3D<L<0.4Dの範囲において充分な流速を得ることができた。
【0101】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された温度センサ100の構成は一例であり、上記で示した構成に限定されることなく、本発明を実現できる他の構成とすることもできる。例えば、複数のゲージ抵抗152が圧力と温度の両方を検出するように構成されているが、圧力を検出する素子と温度を検出する素子とは別々に構成されていても良い。つまり、圧力検出部と温度検出部とがセンサチップ150に別々に設けられていても良い。また、温度センサ100は、圧力検出部を有していなくても良い。
【0102】
回路チップ160とセンサチップ150との電気接続部品はリードフレーム143に限られない。例えば、回路チップ160及びセンサチップ150はプリント基板に実装されていても構わない。
【0103】
各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の実施形態を適用することができる。例えば、第4実施形態に係る温度センサ100について、第1実施形態に係るストッパ117を採用することができる。このように、各実施形態で示された構成の組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
110 ハウジング、111 突出部、111a 第1開口部、111b 第2開口部、111d 第4開口部、111e 第5開口部、113 管部、114 底部、120 センサボディ、126 板部、130 ポッティング部、140 モールド樹脂部、141 一端部、142 他端部、145 先端部、150 センサチップ、152 ゲージ抵抗