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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140635
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20220915BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
E03D11/08
E03D11/13
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123387
(22)【出願日】2022-08-02
(62)【分割の表示】P 2018020010の分割
【原出願日】2018-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】塩原 英司
(72)【発明者】
【氏名】中津 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】高野 聡士
(57)【要約】
【課題】リム吐水における気泡混入の抑制と水勢の向上との両立を実現することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、便器本体2と、タンク供給部16bを備えた洗浄水タンク装置16と、を有し、便器本体は、ボウル10と、後方側導水路4と、リムのみに設けられてボウル内に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水部20,22と、後方側導水路内の洗浄水を吐水部に導くリム導水路6,8と、を備えており、後方側導水路は、タンク供給部が接続される入口4aと、この入口の下方に設けられてタンク供給部から入口を経て供給された洗浄水を整流化する整流部30と、この整流部の下流側に形成されてリム導水路と連通するように下方に傾斜する傾斜部32と、を備え、整流部は、その流路断面積A2が傾斜部の流路断面積A3よりも小さくなるように設定されていると共に、その流路がほぼ水平になるように形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
便器本体と、
上記洗浄水源として上記便器本体の上面後方側に設けられ、洗浄水を貯水する洗浄水タンクであって、その底面の排水口を含む流路を形成するタンク供給部を備え、このタンク供給部から上記便器本体に洗浄水を供給する上記洗浄水タンクと、を有し、
上記便器本体は、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成されたリムと、を備えたボウルと、
上記ボウルの後方に形成され、上記タンク供給部から供給された洗浄水を上記ボウルの後方に導く後方側導水路と、
上記リムのみに設けられて上記ボウル内に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水部と、
上記後方側導水路の下流側に形成され、上記後方側導水路内の洗浄水を上記吐水部に導くリム導水路と、
上記ボウルの下方に接続されて汚物を排出する排水路と、を備えており、
上記後方側導水路は、上記タンク供給部が接続される入口部と、この入口部の下方に設けられて上記タンク供給部から上記入口部を経て供給された洗浄水を整流化する整流部と、この整流部の下流側に形成されて上記リム導水路と連通するように下方に傾斜する傾斜部と、を備え、
上記整流部は、その流路断面積が上記傾斜部の流路断面積よりも小さくなるように設定されていると共に、その流路がほぼ水平になるように形成されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記後方側導水路の整流部の流路断面積は、上記タンク供給部の流路断面積よりも小さくなるように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記後方側導水路の傾斜部の底面の最低位置から上記整流部の上面までの鉛直方向直線上の距離(H1)に対する同一鉛直方向直線上の上記整流部における底面から上面までの距離(H2)の比(H2/H1)は、上記傾斜部における底面の最低位置から上面までの鉛直方向直線上の距離(H3)に対する同一鉛直方向直線上の上記傾斜部における底面から上面までの鉛直方向の距離(H4)の比(H4/H3)よりも小さくなるように設定されている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記後方側導水路の傾斜部は、上記整流部に接続される入口から上記リム導水路に接続される出口に向かって下方に傾斜しており、上記傾斜部の底面が水平面に対して下方に傾斜する傾斜角度は、上記傾斜部の上面が水平面に対して下方に傾斜する傾斜角度よりも大きくなるように設定されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記吐水部は、上記ボウルの前後方向の中心よりも前方側領域の上記リムに配置されて前方へ吐水し、上記後方側導水路の整流部及び傾斜部は、平面視において互いに前後方向に直線状に設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記リム導水路は、その入口部の流路断面積が上記吐水部の流路断面積よりも小さくなるように設定され、上記リム導水路の底面は、上記リム導水路の入口部から上記吐水部に向って下方に傾斜するように形成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記吐水部は、上記ボウルの前後方向及び左右方向の中心に対して左右方向の一方側且つ前方側の上記リムに配置されると共に上記ボウルの前方へ向けて洗浄水を吐水して旋回流を形成する第1リム吐水部と、上記ボウルの前後方向及び左右方向の中心に対して左右方向の他方側且つ後方側の上記リムに配置されると共に上記第1リム吐水部からの旋回流と同一方向の旋回流を形成する第2リム吐水部と、を備え、
上記リム導水路は、上記後方側導水路内の洗浄水を上記第1リム吐水部及び上記第2リム吐水部のそれぞれに導く第1リム導水路及び第2リム導水路をそれぞれ備え、
上記整流部の流路断面積は、上記第1リム吐水部の流路断面積と上記第2リム吐水部の流路断面積との合計よりも小さくなるように設定されている請求項1乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する従来の水洗大便器として、例えば、特許文献1に記載されているように、洗浄水タンク内の洗浄水を便器本体の導水路に供給した後、この導水路の下流側の便器本体のリムにそれぞれ設けられた2つのリム吐水口のみから洗浄水を吐水する、いわゆる、タンク式の水洗大便器が知られている。
このような従来の水洗大便器においては、リム吐水口以外のゼット吐水口から吐水されるゼット吐水によってボウル内の汚物を押し込む水洗大便器とは異なり、リム吐水口のみから吐水されるリム吐水によってボウル面の洗浄と汚物の押し込みを行う必要があるため、いかにリム吐水の水勢を高めるかが課題の一つとなっている。
また、近年のタンク式の水洗大便器においては、節水化や意匠性の向上の観点からも、洗浄水タンクの上端位置が比較的低い位置に設定されている、いわゆる、ローシルエットタイプの洗浄水タンクが好まれる傾向にある。このため、洗浄水タンクにおいては、その内部の最高水位が比較的低く設定され、洗浄水タンクの底面に作用する水頭圧(ヘッド圧)が低くなる、いわゆる、ロータンク化についてもなされてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-190245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したロータンクタイプの洗浄水タンクにおいては、最高水位が低く設定されて、洗浄水タンクの底面に作用する水頭圧(ヘッド圧)が低く設定される程、洗浄水タンクから便器本体の導水路に供給される洗浄水の水勢が弱められてしまうという問題がある。
したがって、リム吐水についても水勢が弱められてしまうため、洗浄水タンクとして、ロータンクを適用した場合であっても、いかにリム吐水の水勢を高めて維持するかが要請された課題となっている。
また、リム吐水の水勢を高めるために、洗浄水タンクから大量の洗浄水を供給することにより、水勢を確保することも考えられるが、その分、便器本体の導水路の流路断面積や内部空間(容積)を大きくする必要がある。
しかしながら、このように導水路の内部空間を大きく設定した場合には、特に、洗浄水タンクから導水路内に洗浄水が流入する際に導水路内の空気と混ざり合い、気泡が生成してしまうおそれがあるという問題がある。
また、このように導水路内で気泡が含まれた状態の洗浄水がリム吐水口からボウル面に吐水されてしまうと、ボウル面で洗浄水が飛び散ってしまい、ボウル面外に飛散してしまうおそれがあるという問題がある。
特に、気泡が含まれた状態の洗浄水が、ボウル面の曲率半径が比較的小さいボウル面の前端付近を流れる際には、洗浄水の流れが前方から後方に大きく方向転換を強いられるため、ボウル面外への飛散が顕著となるという問題がある。
さらに、気泡が洗浄水に混入されている状態では、異音が発生するおそれがあるという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や要請された課題を解決するためになされたものであり、リム吐水における気泡混入の抑制と水勢の向上との両立を実現することができる水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、便器本体と、上記洗浄水源として上記便器本体の上面後方側に設けられ、洗浄水を貯水する洗浄水タンクであって、その底面の排水口を含む流路を形成するタンク供給部を備え、このタンク供給部から上記便器本体に洗浄水を供給する上記洗浄水タンクと、を有し、上記便器本体は、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成されたリムと、を備えたボウルと、上記ボウルの後方に形成され、上記タンク供給部から供給された洗浄水を上記ボウルの後方に導く後方側導水路と、上記リムのみに設けられて上記ボウル内に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水部と、上記後方側導水路の下流側に形成され、上記後方側導水路内の洗浄水を上記吐水部に導くリム導水路と、上記ボウルの下方に接続されて汚物を排出する排水路と、を備えており、上記後方側導水路は、上記タンク供給部が接続される入口部と、この入口部の下方に設けられて上記タンク供給部から上記入口部を経て供給された洗浄水を整流化する整流部と、この整流部の下流側に形成されて上記リム導水路と連通するように下方に傾斜する傾斜部と、を備え、上記整流部は、その流路断面積が上記傾斜部の流路断面積よりも小さくなるように設定されていると共に、その流路がほぼ水平になるように形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、タンク供給部から便器本体の後方側導水路の入口部に供給された洗浄水は、後方側導水路の整流部に流入する。この際、整流部については、その流路断面積が傾斜部の流路断面積よりも小さくなるように設定されていると共に、その流路がほぼ水平になるように形成されているため、タンク供給部から便器本体の後方側導水路の入口部を経て整流部に流入した洗浄水は、一気に整流部内全体に広がることになる。
これにより、便器本体の後方側導水路の整流部内の容積空間全体が洗浄水によって占有されるため、洗浄水タンク内の洗浄水がタンク供給部の排水口から流出して便器本体の後方側導水路内に供給される際に、後方側導水路の整流部内に気泡が生成されることを抑制することができる。
さらに、便器本体の後方側導水路の整流部の下流側には、リム導水路に向って下方に傾斜している傾斜部が形成されているため、整流部から傾斜部に流入した洗浄水は、傾斜部を流れる際に、洗浄水の流速を増大させることができる。
したがって、例えば、洗浄水タンクとして、その内部の最高水位が比較的低く、洗浄水タンクの底面に作用する水頭圧(ヘッド圧)が低い、いわゆる、ロータンクを適用した場合であっても、便器本体の後方側導水路内において、気泡の混入を抑制することができると共に、後方側導水路からリム導水路を経て吐水部から吐水される洗浄水(リム吐水)の水勢を維持することができる。
これらの結果、リム吐水における気泡混入の抑制と水勢の向上との両立を実現することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記後方側導水路の整流部の流路断面積は、上記タンク供給部の流路断面積よりも小さくなるように設定されている。
このように構成された本発明においては、後方側導水路の整流部の流路断面積がタンク供給部の流路断面積よりも小さくなるように設定されているため、洗浄水タンクから便器本体の後方側導水路の整流部に流入した洗浄水を早期に満水させることができる。
したがって、便器本体の後方側導水路の整流部内において、気泡の混入を抑制することができるため、整流効果を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記後方側導水路の傾斜部の底面の最低位置から上記整流部の上面までの鉛直方向直線上の距離(H1)に対する同一鉛直方向直線上の上記整流部における底面から上面までの距離(H2)の比(H2/H1)は、上記傾斜部における底面の最低位置から上面までの鉛直方向直線上の距離(H3)に対する同一鉛直方向直線上の上記傾斜部における底面から上面までの鉛直方向の距離(H4)の比(H4/H3)よりも小さくなるように設定されている。
このように構成された本発明においては、便器本体の後方側導水路の整流部の流路内の高さ寸法を傾斜部の流路内の高さ寸法よりも小さく設定することができるため、整流部内の流路断面積を比較的小さく設定しながら、傾斜部内の流路断面積を比較的大きく設定することができる。
また、整流部における下流端よりも上流側の部分について、傾斜部よりも高い位置に設定することができるため、整流部内で気泡の混入が抑制されて位置エネルギーが比較的高く維持された洗浄水が傾斜部を流れることにより、水勢が付与される。
したがって、便器本体の後方側導水路の整流部と傾斜部において、気泡の混入の抑制と水勢付与の両立を実現することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記後方側導水路の傾斜部は、上記整流部に接続される入口から上記リム導水路に接続される出口に向かって下方に傾斜しており、上記傾斜部の底面が水平面に対して下方に傾斜する傾斜角度は、上記傾斜部の上面が水平面に対して下方に傾斜する傾斜角度よりも大きくなるように設定されている。
このように構成された本発明においては、後方側導水路の傾斜部の底面の傾斜角度を傾斜部の上面の傾斜角度に比べて大きくすることにより、傾斜部の流路断面積を下流側程大きく設定することができる。
したがって、後方側導水路の傾斜部の流路内における圧力損失を抑制することができるため、傾斜部内を流れる洗浄水について、十分な水勢を付与することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記吐水部は、上記ボウルの前後方向の中心よりも前方側領域の上記リムに配置されて前方へ吐水し、上記後方側導水路の整流部及び傾斜部は、平面視において互いに前後方向に直線状に設けられている。
このように構成された本発明とは異なる一般的な水洗大便器においては、吐水部がボウルの前後方向の中心よりも前方側領域に位置するリムに配置されている場合、吐水部から前方に吐水された洗浄水は、ボウル内の前端付近に強い水勢で流入した後、ボウル内の前端を通過して後方側に急激に折り返される。
この際、特に、吐水部の位置がボウルの前端側に近づく程、タンク供給部から後方側導水路及びリム導水路を経て吐水部までの経路が長くなるため、この経路内で気泡が発生した場合には、気泡を含む洗浄水が吐水部から吐水され、ボウル内の前端付近に到達してしまうことになる。
さらに、一般的には、タンク供給部から後方側導水路及びリム導水路を経て吐水部までの経路が長くなる程、その流路内における圧力損失が増大し、水勢の低下や洗浄水の供給遅れ(又は無駄水)を招く要因となってしまう。
これらに対し、本発明においては、後方側導水路の整流部及び傾斜部が平面視において互いに前後方向に直線状に設けられているため、少なくとも後方側導水路の区間の流路距離を最短に設定することができる。
したがって、吐水部がボウルの前後方向の中心よりも前方側領域のリムに配置されていても、タンク供給部から後方側導水路及びリム導水路を経て吐水部までの経路を比較的短く設定することができるため、この経路内における気泡の混入や水勢低下を抑制することができる。また、洗浄水の供給遅れ(又は無駄水)を抑制することもできる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記リム導水路は、その入口部の流路断面積が上記吐水部の流路断面積よりも小さくなるように設定され、上記リム導水路の底面は、上記リム導水路の入口部から上記吐水部に向って下方に傾斜するように形成されている。
このように構成された本発明においては、リム導水路の入口部の流路断面積が吐水部の流路断面積よりも小さくなるように設定されているため、後方側導水路の傾斜部からリム導水路に流入する洗浄水は、吐水部の流路断面積よりも小さい流路断面積のリム導水路の入口部を通過することにより整流化される。そして、リム導水路内の洗浄水は、リム導水路の入口部から吐水部に向って下方に傾斜するリム導水路の底面に沿って流れることにより、水勢が付与されて流速が増大する。
したがって、後方側導水路の下流側のリム導水路内の洗浄水においても、気泡の混入を抑制しながら、水勢を付与することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記吐水部は、上記ボウルの前後方向及び左右方向の中心に対して左右方向の一方側且つ前方側の上記リムに配置されると共に上記ボウルの前方へ向けて洗浄水を吐水して旋回流を形成する第1リム吐水部と、上記ボウルの前後方向及び左右方向の中心に対して左右方向の他方側且つ後方側の上記リムに配置されると共に上記第1リム吐水部からの旋回流と同一方向の旋回流を形成する第2リム吐水部と、を備え、上記リム導水路は、上記後方側導水路内の洗浄水を上記第1リム吐水部及び上記第2リム吐水部のそれぞれに導く第1リム導水路及び第2リム導水路をそれぞれ備え、上記整流部の流路断面積は、上記第1リム吐水部の流路断面積と上記第2リム吐水部の流路断面積との合計よりも小さくなるように設定されている。
このように構成された本発明においては、便器本体の後方側導水路の整流部の流路断面積が、第1リム吐水部の流路断面積と第2リム吐水部の流路断面積との合計よりも小さくなるように設定されているため、タンク供給部から後方側導水路内に供給された洗浄水は、整流部内で十分に整流化され、傾斜部内で水勢が付与された後、第1リム導水路及び第2リム導水路のそれぞれを経て、第1リム吐水部及び第2リム吐水部のそれぞれに供給される。
したがって、気泡の混入が抑制されて水勢が付与された状態の洗浄水を第1リム吐水部及び第2リム吐水部のそれぞれから吐水することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、リム吐水における気泡混入の抑制と水勢の向上との両立を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器において、便器本体の後方側導水路の部分を拡大した部分拡大図である。
図5図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器において、便器本体のリムの内周面の部分を拡大した部分拡大図である。
図6図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器における各流路断面A~Hを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、図1図6を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。また、図2は、図1のII-II線に沿った断面図であり、図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。
図1図3に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2を備えている。この便器本体2は、上流側から下流側に向かって、後方側導水路4(詳細は後述する)、第1リム導水路6、第2リム導水路8、ボウル10、及び、排水トラップ管路12をそれぞれ備えている。
なお、便器本体2については、陶器製以外の樹脂製等であってもよい。
【0016】
つぎに、図1に示す本実施形態の水洗大便器1の便器本体2の上面においては、便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)等が設けられているが、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
また、便器本体2の上面においては、便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)の後方側には、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄部(図示せず)や便器本体2への給水機能に関与する給水系機能部等の機能部(図示せず)も設けられていてもよいが、これらについても、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
【0017】
つぎに、図1図3に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、便器本体2のボウル10の後方且つ上方に設けられた洗浄水源である洗浄水タンク装置14を備えている。
この洗浄水タンク装置14は、洗浄水を貯水する洗浄水タンクとして、貯水した洗浄水について重力を利用して便器本体2の後方側導水路4に供給可能にする、いわゆる、重力給水式の貯水タンク16を備えている。この貯水タンク16内の底面には、洗浄水を供給するタンク供給部として、排水口16aが形成されていると共に、この排水口16aから下方に差し向けられたタンク供給路16bが形成されている。
なお、貯水タンク16の内部には、代表的には、貯水タンク16内に洗浄水を給水する給水装置(図示せず)や、貯水タンク16の排水口16aを開閉する排水弁装置(図示せず)等が設けられているが、これらの装置は、従来と同様であるため、具体的な説明については省略する。
また、本実施形態では、例えば、貯水タンク16として、貯水タンク16内の最高水位が比較的低く、貯水タンク16の底面に作用する水頭圧(ヘッド圧)が低い、いわゆる、ロータンクが採用されており、便器洗浄時には、例えば、貯水タンク16から便器本体2に約3.6[L]~約4.8[L]程度の洗浄水量が供給可能となっている。
【0018】
つぎに、図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル10の平面視において、ボウル10を前後方向に二等分するように水平左右方向に延びる中心軸線を「X」で示し、ボウル10を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線を「Y」で示している。
また、図1では、中心軸線X,Yの互いの交点を平面視のボウル10の中心Oとし、この中心Oを通る鉛直方向に延びる中心軸線を「Z」で示している。
これらにより、図2及び図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル10の側面視において、ボウル10を前後方向に二等分するように鉛直方向に延びる中心軸線を「Z」で示している。
さらに、図1図3に示すように、水洗大便器1の前後左右の方向については、「前」、「後」、「左」、「右」でそれぞれ示している。
そして、図1図3に示すように、水洗大便器1のボウル10における中心O、水平左右方向に延びる中心軸線X、及び、鉛直方向に延びる中心軸線Zに対して、前方側、後方側のそれぞれの領域について、「前方側領域F」、「後方側領域B」とそれぞれ定義している。
さらに、図1に示すように、水洗大便器1のボウル10における中心O、水平前後方向に延びる中心軸線Yに対して、前方から見て左側、右側のそれぞれの領域について、「左側領域L」、「右側領域R」とそれぞれ定義している。
【0019】
まず、図1図3に示すように、便器本体2の上流側に位置する後方側導水路4は、詳細については後述するが、便器本体2の上面後方側に設けられた入口4aから前方のボウル10の背面側近傍まで延びており、ボウル10の後方側に形成されている。
また、後方側導水路4の入口4aには、貯水タンク16のタンク供給路16bの下端の出口(下流端)が接続されるようになっている。
【0020】
つぎに、図1及び図2に示すように、第1リム導水路6は、ボウル10の背面側近傍の後方側導水路4の前端の出口(下流端)からボウル10の一方側(図1に示すボウル10の前方から見て左側)に分岐した後、ボウル10の一方側(図1に示すボウル10の前方から見て左側)の上縁に形成されたリム18の内部においてボウル10の外周面を迂回するように前方に延びている。
また、第1リム導水路6の前端(下流端)は、図1に示すように、ボウル10の前方側領域F且つ左側領域Lのリム18に第1リム吐水部として設けられた第1リム吐水口20となっている。
ここで、図1に示すように、第1リム吐水口20が配置されるボウル10の前方側領域Fのボウル面Sについては、ボウル10内の前端10a付近において平面視の曲率半径が最小(曲率が最大)となっている。
さらに、図1に示すように、便器本体2の第1リム吐水口20の前後方向の位置については、図1の平面視及び図2の側面視において、ボウル10のリム18の内周面18aの前端18bよりも後方で且つ凹部24の前側壁面の前端24aよりも前方のボウル10の前方側領域F且つ左側領域Lに位置している。
例えば、ボウル10内の前端10a(リム18の内周面18aの前端18b)から第1リム吐水口20までの前後方向の距離Y1とボウル10内の前端10aから後端10bまでの距離Y2との比(Y1/Y2)が15%~35%(Y1/Y2=15%~35%)になるように設定されている。
なお、この第1リム吐水口20については、ボウル10の前方側領域F且つ右側領域Rのリム18に第1リム吐水部として設けられていてもよい。
【0021】
さらに、図1及び図3に示すように、第2リム導水路8は、ボウル10の背面側近傍の後方側導水路4の前端の出口(下流端)からボウル10の他方側(図1に示すボウル10の前方から見て右側)に分岐した後、ボウル10の他方側(図1に示すボウル10の前方から見て右側)の上縁に形成されたリム18の内部においてボウル10の外周面を迂回するように前方に延びている。
その後、第2リム導水路8は、図1に示すように、ボウル10の右側方付近で後方側にUターンするように形成されている。そして、この第2リム導水路8の下流端である後端は、図1に示すように、ボウル10の後方側領域B且つ右側領域Rのリム18に第2リム吐水部として設けられた第2リム吐水口22となっている。
すなわち、便器本体2の第2リム吐水口22の前後方向の位置については、図1の平面視及び図3の側面視において、ボウル10の水平左右方向の中心軸線Xよりも後方で且つ凹部24の後側壁面の後端24bよりも前方のボウル10の後方側領域B且つ右側領域Rに位置している。
【0022】
つぎに、図1図3に示すように、便器本体2のボウル10は、下方から上方に向かって、凹部24、汚物受け面26、棚28、及び、リム18をそれぞれ備えている。
まず、ボウル10の凹部24は、ボウル10の下方に凹状に形成されており、溜水W0が収容される溜水部にようになっている。
つぎに、ボウル10の汚物受け面26は、凹部24の上縁からボウル状に形成されており、汚物を受ける面となっている。
また、ボウル10の棚28は、汚物受け面26の外縁とリム18の下端との間に形成されている。便器本体2の後方側導水路4内の洗浄水は、その下流側の第1リム導水路6及び第2リム導水路8を経てそれぞれの第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22に導かれるようになっている。
そして、第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれから吐水された洗浄水は、棚28上に沿って周方向下流側に導かれ、互いに同一方向の旋回流を形成するようになっている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、リム18以外の箇所には吐水部(例えば、ゼット吐水口等)が設けられておらず、リム18のみに設けられた第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22の2つの吐水部からリム吐水のみを行う形態について説明するが、第2リム吐水口22については省略してもよい。
【0023】
つぎに、図1図3に示すように、便器本体2の下流側に位置する排水トラップ管路12は、ボウル10の凹部24の下方から後方に形成され、ボウル10内の汚物を排出する排水路である。
また、本実施形態の水洗大便器1は、便器本体2のボウル10内の水の落差による流水作用で汚物を排水トラップ管路12へ押し流す、いわゆる、「洗い落し式の水洗大便器」である。
しかしながら、本実施形態の水洗大便器1においては、サイホン作用を利用してボウル内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、「サイホン式の水洗大便器」等、洗い落し式の水洗大便器以外の形態の水洗大便器に対しても適用可能である。
【0024】
つぎに、図1図6を参照して、本実施形態の水洗大便器1の便器本体2における後方側導水路4、及び、その下流側の第1リム導水路6の第1リム吐水口20までの流路の詳細について説明する。
まず、図4は、図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器において、便器本体の後方側導水路の部分を拡大した部分拡大図である。また、図5は、図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器において、便器本体のリムの内周面の部分を拡大した部分拡大図である。さらに、図6は、図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器における各流路断面A~Hを示す図である。
ここで、図4及び図6においては、後方側導水路4の上流側のタンク供給路16bから下流側の各リム吐水口20,22まで流路の各流路断面積[mm2]をA1~A9で示している。
【0025】
図4に示すように、後方側導水路4は、上流側から下流側に向って、入口4a、整流部30、及び、傾斜部32をそれぞれ備えている。
まず、図1及び図4に示すように、後方側導水路4の入口4aは、便器本体2の上面の後方側の位置で上方に向けて開口しており、この入口4aには、貯水タンク16のタンク供給路16bの下端の出口(下流端)が上方からシール部材(図示せず)等を介して水密に接続されるようになっている。
つぎに、図1及び図4に示すように、後方側導水路4の整流部30は、後方側導水路4の下方に形成された後、前方に向ってほぼ水平に延びるように形成されている。タンク供給路16bから後方側導水路4の入口4aを経て供給された洗浄水は、この整流部30に流入した後、整流部30内を前方に向って流れることにより、整流化されるようになっている。
また、図1及び図4に示すように、後方側導水路4の傾斜部32は、整流部30の下流側(整流部30の前方且つ下方側)に形成されている。この傾斜部32は、その前端が第1リム導水路6の入口6aと連通するように、後方から前方に向って下方に傾斜している。
【0026】
つぎに、図4及び図6に示すように、タンク供給路16b及び後方側導水路4の整流部30のそれぞれの流路断面積A1,A2については、後方側導水路4の整流部30の流路断面積A2が、タンク供給路16bの流路断面積A1よりも小さくなるように設定されている。
【0027】
つぎに、図4に示すように、後方側導水路4内において、傾斜部32の底面32aの最低高さ位置P0から整流部30の上面30aの高さ位置P1までの鉛直方向直線上の距離をH1[mm]とし、その同一鉛直方向直線上の整流部30における底面30bの高さ位置P2から上面30aの位置P1までの距離をH2[mm]とする。
また、図4及び図6に示すように、傾斜部32における底面32aの最低高さ位置P0から上面32bの高さ位置P3までの鉛直方向直線上の距離をH3[mm]とし、傾斜部32における底面32aの高さ位置P4から上面32bの高さ位置P3までの鉛直方向の距離をH4[mm]とする。
これらにより、図4に示すように、後方側導水路4の整流部30及び傾斜部32内の流路においては、距離H1に対する距離H2の比(H2/H1)は、距離H3に対する距離H4の比(H4/H3)よりも小さくなるように設定されている((H2/H1)<(H4/H3))。
したがって、図4に示すように、後方側導水路4の整流部30における出口(傾斜部32の入口)よりも上流側の流路内の高さ寸法H2は、傾斜部32における入口(整流部30の出口)よりも下流側の流路内の高さ寸法H4よりも小さく設定されている(H2<H4)。
【0028】
さらに、図1及び図6に示すように、後方側導水路4の整流部30及び傾斜部32の各流路については、平面視において互いに前後方向に直線状に設けられており、後方側導水路4の整流部30及び傾斜部32のそれぞれの左右方向の最大幅寸法は、互いに同一の幅寸法W1に設定されている。
したがって、図4及び図6に示すように、これらの後方側導水路4の整流部30の流路内の幅寸法W1と高さ寸法H2とにより形成される整流部30の流路断面積A2は、傾斜部32の流路内の幅寸法W1と高さ寸法H4とにより形成される傾斜部32の流路断面積A3よりも小さくなるように設定されている(A2<A3)。
【0029】
つぎに、図4に示すように、後方側導水路4の傾斜部32は、整流部30に接続される後方の入口32cから第1リム導水路6の入口6aに接続される出口32dに向かって下方に傾斜している。
また、傾斜部32の底面32aが水平面に対して下方に傾斜する傾斜角度αは、傾斜部32の上面32bが水平面に対して下方に傾斜する傾斜角度βよりも大きくなるように設定されている(α>β)。
これにより、傾斜部32の流路断面積A3については、下流側程大きくなるように設定されている。
【0030】
つぎに、図1及び図4図6に示すように、第1リム導水路6の入口6a付近(図1のC断面)の流路断面積A4(図4及び図6参照)は、第1リム吐水口20の流路断面積A8(図6参照)よりも小さくなるように設定されている。
また、図1図5及び図6に示すように、リム18の内周面18aの外側に形成される第1リム導水路6の底面6bは、第1リム導水路6の入口6aから第1リム吐水口20に向って下方に傾斜するように形成されている。
さらに、図6に示すように、第1リム導水路6における入口6aから第1リム吐水口20までの各流路断面積A4~A8は、下流側程大きくなるように設定されている(A4<A5<A6<A7<A8)。
一方、第2リム導水路8についても、第1リム導水路6と同様に、図3に示すように、第2リム導水路8の底面8bが第2リム導水路8の入口8aから第2リム吐水口22に向って下流側程下方に傾斜するように形成されている。また、第2リム導水路8における入口8aから第2リム吐水口22までの流路断面積についても、下流側程大きくなるように設定されている。
【0031】
つぎに、図6に示すように、後方側導水路4の整流部30の流路断面積A2は、第1リム吐水口20の流路断面積A8と第2リム吐水口22の流路断面積A9との合計(A8+A9)よりも小さくなるように設定されている(A2<A8+A9)。
【0032】
つぎに、図1図6を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、図1及び図4に示すように、タンク供給路16bから便器本体2の後方側導水路4の入口4aに供給された洗浄水Wは、後方側導水路4の整流部30内に流入する。
この際、図4に示すように、整流部30については、その流路断面積A2が傾斜部32の流路断面積A3よりも小さくなる(A2<A3)ように設定されていると共に、整流部30内の流路がほぼ水平になるように形成されている。このため、タンク供給路16bから便器本体2の後方側導水路4の入口4aを経て整流部30内に流入した洗浄水は、一気に整流部30内全体に広がることになる。
これにより、便器本体2の後方側導水路4の整流部30内の容積空間全体が洗浄水によって占有されるため、貯水タンク16内の洗浄水が排水口16aから流出してタンク供給路16bから便器本体2の後方側導水路4内に供給される際に、後方側導水路4の整流部30内に気泡が生成されることを抑制することができる。
さらに、便器本体2の後方側導水路4の整流部30の下流側には、第1リム導水路6に向って下方に傾斜している傾斜部32が形成されているため、整流部30から傾斜部32に流入した洗浄水は、傾斜部32を流れる際に、洗浄水の流速を増大させることができる。
したがって、例えば、洗浄水タンク装置14の貯水タンク16として、その内部の最高水位が比較的低く、洗浄水タンクの底面に作用する水頭圧(ヘッド圧)が低い、いわゆる、ロータンクを適用した場合であっても、便器本体2の後方側導水路4内において、気泡の混入を抑制することができると共に、後方側導水路4から第1リム導水路6及び第2リム導水路8を経て第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれから吐水される洗浄水(リム吐水)の水勢を維持することができる。
これらの結果、第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれのリム吐水における気泡混入の抑制と水勢の向上との両立を実現することができる。
【0033】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、図4及び図6に示すように、便器本体2の後方側導水路4の整流部30の流路断面積A2がタンク供給路16bの流路断面積A1よりも小さくなるように設定されている。これにより、貯水タンク16から便器本体2の後方側導水路4の整流部30内に流入した洗浄水Wを早期に満水させることができる。
したがって、便器本体2の後方側導水路4の整流部30内において、気泡の混入を抑制することができるため、整流効果を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、図4に示すように、後方側導水路4の整流部30及び傾斜部32内の流路において、傾斜部32の底面32aの最低高さ位置P0から整流部30の上面30aの高さ位置P1までの鉛直方向直線上の距離H1に対する、その同一鉛直方向直線上の整流部30における底面30bの高さ位置P2から上面30aの位置P1までの距離H2の比(H2/H1)が、傾斜部32における底面32aの最低高さ位置P0から上面32bの高さ位置P3までの鉛直方向直線上の距離H3に対する、傾斜部32における底面32aの高さ位置P4から上面32bの高さ位置P3までの鉛直方向の距離H4の比(H4/H3)よりも小さくなるように設定されている((H2/H1)<(H4/H3))。
したがって、図4に示すように、便器本体2の後方側導水路4の整流部30の流路内の高さ寸法H2を傾斜部32の流路内の高さ寸法H4よりも小さく設定することができるため、整流部30内の流路断面積A2を比較的小さく設定しながら、傾斜部32内の流路断面積A3を比較的大きく設定することができる。
また、図4に示すように、整流部30における下流端よりも上流側の部分について、傾斜部32よりも高い位置に設定することができるため、整流部30内で気泡の混入が抑制されて位置エネルギーが比較的高く維持された洗浄水が傾斜部32を流れることにより、水勢が付与される。
したがって、便器本体2の後方側導水路4の整流部30と傾斜部32において、気泡の混入の抑制と水勢付与の両立を実現することができる。
【0035】
さらに、本実施形態の水洗大便器1によれば、図4に示すように、便器本体2の後方側導水路4の傾斜部32の底面32aの傾斜角度αを傾斜部32の上面32bの傾斜角度βに比べて大きくすることにより、傾斜部32の流路断面積A3を下流側程大きく設定することができる。
したがって、後方側導水路4の傾斜部32の流路内における圧力損失を抑制することができるため、傾斜部32内を流れる洗浄水について、十分な水勢を付与することができる。
【0036】
また、本実施形態による水洗大便器1以外の一般的な水洗大便器においては、便器本体の吐水部が、ボウルの前後方向の中心よりも前方側領域に位置するリムに配置されている場合、吐水部から前方に吐水された洗浄水は、ボウル内の前端付近に強い水勢で流入した後、ボウル内の前端を通過して後方側に急激に折り返される。
この際、特に、吐水部の位置がボウルの前端側に近づく程、タンク供給路16bから後方側導水路及びリム導水路を経て吐水部までの経路が長くなるため、この経路内で気泡が発生した場合には、気泡を含む洗浄水が吐水部から吐水され、ボウル内の前端付近に到達してしまうことになる。
さらに、本実施形態による水洗大便器1以外の一般的な水洗大便器においては、タンク供給路16bから後方側導水路及びリム導水路を経て吐水部までの経路が長くなる程、その流路内における圧力損失が増大し、水勢の低下や洗浄水の供給遅れ(又は無駄水)を招く要因となってしまう。
これらに対し、本実施形態による水洗大便器1においては、図1に示すように、便器本体2の後方側導水路4の整流部30及び傾斜部32が平面視において互いに前後方向に直線状に設けられているため、少なくとも後方側導水路4の区間の前後方向の流路距離を最短に設定することができる。
したがって、第1リム吐水口20がボウル10の前後方向の中心Oよりも前方側領域Fのリム18に配置されていても、タンク供給路16bから後方側導水路4及び第1リム導水路6を経て第1リム吐水口20までの経路を比較的短く設定することができるため、この経路内における気泡の混入や水勢低下を抑制することができる。また、洗浄水の供給遅れ(又は無駄水)を抑制することもできる。
ことができる。
【0037】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、図1及び図4図6に示すように、第1リム導水路6の入口6aの流路断面積A4が第1リム吐水口20の流路断面積A8よりも小さくなるように設定されている。
また、図1図5及び図6に示すように、リム18の内周面18aの外側に形成される第1リム導水路6の底面6bは、第1リム導水路6の入口6aから第1リム吐水口20に向って下方に傾斜するように形成されている。
さらに、図6に示すように、第1リム導水路6における入口6aから第1リム吐水口20までの各流路断面積A4~A8は、下流側程大きくなるように設定されている(A4<A5<A6<A7<A8)。
これらにより、後方側導水路4の傾斜部32から第1リム導水路6に流入する洗浄水は、第1リム吐水口20の流路断面積A8よりも小さい流路断面積A4の第1リム導水路6の入口6aを通過することにより整流化される。そして、第1リム導水路6内の洗浄水は、第1リム導水路6の入口6aから第1リム吐水口20に向って下方に傾斜するリム導水路の底面に沿って流れることにより、水勢が付与されて流速が増大する。
したがって、後方側導水路4の下流側の第1リム導水路6内の洗浄水においても、気泡の混入を抑制しながら、水勢を付与することができる。
同様に、第2リム導水路8についても、図3に示すように、第2リム導水路8の底面8bが第2リム導水路8の入口8aから第2リム吐水口22に向って下流側程下方に傾斜するように形成されている。また、第2リム導水路8における入口8aから第2リム吐水口22までの流路断面積についても、下流側程大きくなるように設定されている。
したがって、後方側導水路4の下流側の第2リム導水路8内の洗浄水においても、気泡の混入を抑制しながら、水勢を付与することができる。
【0038】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、図6に示すように、便器本体2の後方側導水路4の整流部30の流路断面積A2が、第1リム吐水口20の流路断面積A8と第2リム吐水口22の流路断面積A9との合計(A8+A9)よりも小さくなるように設定されている(A2<A8+A9)。
これにより、図4に示すように、タンク供給路16bから後方側導水路4内に供給された洗浄水Wは、整流部30内で十分に整流化され、傾斜部32内で水勢が付与された後、第1リム導水路6及び第2リム導水路8のそれぞれを経て、第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれに供給される。
したがって、気泡の混入が抑制されて水勢が付与された状態の洗浄水を第1リム吐水口6及び第2リム吐水口22のそれぞれから吐水することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 後方側導水路
4a 後方側導水路の入口(後方側導水路の入口部)
6 第1リム導水路
6a 第1リム導水路の入口(リム導水路の入口部)
6b 第1リム導水路の底面(リム導水路の入口部)
8 第2リム導水路
8a 第2リム導水路の入口(リム導水路の入口部)
8b 第2リム導水路の底面(リム導水路の入口部)
10 ボウル
10a ボウル内の前端
10b ボウル内の後端
12 排水トラップ管路(排水路)
14 洗浄水タンク装置(洗浄水源、洗浄水タンク)
16 貯水タンク(洗浄水源、洗浄水タンク)
16a 排水口(タンク供給部)
16b タンク供給路(タンク供給部)
18 リム
18a リムの内周面
18b リムの内周面の前端
20 第1リム吐水口(吐水部、第1リム吐水部)
22 第2リム吐水口(吐水部、第2リム吐水部)
24 凹部
24a 凹部の前側壁面の前端
24b 凹部の後側壁面の後端
26 汚物受け面
28 棚
30 後方側導水路の整流部
30a 整流部の上面
30b 整流部の底面
32 後方側導水路の傾斜部
32a 傾斜部の底面
32b 傾斜部の上面
32c 傾斜部の入口
32d 傾斜部の出口
A1 タンク供給路のA断面の流路断面積
A2 後方側リム導水路の整流部のB断面の流路断面積
A3 後方側リム導水路の傾斜部の流路断面積
A4 第1リム導水路の入口付近(C断面)の流路断面積
A5 第1リム導水路のD断面の流路断面積
A6 第1リム導水路のE断面の流路断面積
A7 第1リム導水路のF断面の流路断面積
A8 第1リム導水路のG断面の流路断面積
A8 第1リム導水路の第1リム吐水口(H断面)の流路断面積
B ボウルの後方側領域
L ボウルの左側領域
F ボウルの前方側領域
H1 後方側リム導水路の傾斜部の底面の最低高さ位置から整流部の上面の高さ位置までの鉛直方向直線上の距離
H2 後方側リム導水路の整流部における底面の高さ位置から上面の位置までの距離及び高さ寸法
H3 後方側リム導水路の傾斜部における底面の最低高さ位置から上面の高さ位置
H4 後方側リム導水路の傾斜部における底面の高さ位置から上面の高さ位置までの鉛直方向の距離及び高さ寸法
O ボウルの中心
P0 後方側導水路の傾斜部の底面の最低高さ位置
P1 後方側導水路の整流部の上面の高さ位置
P2 後方側導水路の整流部の底面の高さ位置
P3 後方側導水路の傾斜部の上面の高さ位置
P4 後方側導水路の傾斜部の底面の高さ位置
R ボウルの右側領域
S ボウル面
W 洗浄水
W0 溜水
W1 後方側導水路の整流部及び傾斜部の左右方向の最大幅寸法
X ボウルの水平左右方向の中心軸線
Y ボウルの水平前後方向の中心軸線
Y1 ボウル内の前端から第1リム吐水口までの前後方向の距離
Y2 ボウル内の前端から後端までの距離
Z ボウルの中心を通る鉛直方向の中心軸線
α 後方側導水路の底面の水平面に対する傾斜角度
β 後方側導水路の上面の水平面に対する傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
便器本体と、
上記洗浄水源として上記便器本体の上面後方側に設けられ、洗浄水を貯水する洗浄水タンクであって、その底面の排水口を含む流路を形成するタンク供給部を備え、このタンク供給部から上記便器本体に洗浄水を供給する上記洗浄水タンクと、を有し、
上記便器本体は、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上縁に形成されたリムと、を備えたボウルと、
上記ボウルの後方に形成され、上記タンク供給部から供給された洗浄水を上記ボウルの後方に導く後方側導水路と、
上記リムのみに設けられて上記ボウル内に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水部と、
上記後方側導水路の下流側に形成され、上記後方側導水路内の洗浄水を上記吐水部に導くリム導水路と、
上記ボウルの下方に接続されて汚物を排出する排水路と、を備えており、
上記後方側導水路は、上記タンク供給部が接続される入口部と、この入口部の下方に設けられて上記タンク供給部から上記入口部を経て供給された洗浄水を整流化する整流部と、この整流部の下流側に形成されて上記リム導水路と連通するように下方に傾斜する傾斜部と、を備え、
上記整流部は、その流路断面積が上記傾斜部の流路断面積よりも小さくなるように設定されていると共に、その流路がほぼ水平になるように形成されており、
上記リム導水路は、その入口部の流路断面積が上記吐水部の流路断面積よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記後方側導水路の整流部の流路断面積は、上記タンク供給部の流路断面積よりも小さくなるように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記後方側導水路の傾斜部の底面の最低位置から上記整流部の上面までの鉛直方向直線上の距離(H1)に対する同一鉛直方向直線上の上記整流部における底面から上面までの距離(H2)の比(H2/H1)は、上記傾斜部における底面の最低位置から上面までの鉛直方向直線上の距離(H3)に対する同一鉛直方向直線上の上記傾斜部における底面から上面までの鉛直方向の距離(H4)の比(H4/H3)よりも小さくなるように設定されている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記後方側導水路の傾斜部は、上記整流部に接続される入口から上記リム導水路に接続される出口に向かって下方に傾斜しており、上記傾斜部の底面が水平面に対して下方に傾斜する傾斜角度は、上記傾斜部の上面が水平面に対して下方に傾斜する傾斜角度よりも大きくなるように設定されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記吐水部は、上記ボウルの前後方向の中心よりも前方側領域の上記リムに配置されて前方へ吐水し、上記後方側導水路の整流部及び傾斜部は、平面視において互いに前後方向に直線状に設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記リム導水路の底面は、上記リム導水路の入口部から上記吐水部に向って下方に傾斜するように形成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項7】
上記吐水部は、上記リムのみに設けられた第1リム吐水部及び第2リム吐水部をそれぞれ備えている請求項1乃至6の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項8】
上記第1リム吐水部は、上記ボウルの前後方向及び左右方向の中心に対して左右方向の一方側且つ前方側の上記リムに配置されると共に上記ボウルの前方へ向けて洗浄水を吐水して旋回流を形成するように構成され上記第2リム吐水部は、上記ボウルの前後方向及び左右方向の中心に対して左右方向の他方側且つ後方側の上記リムに配置されると共に上記第1リム吐水部からの旋回流と同一方向の旋回流を形成するように構成されており
上記リム導水路は、上記後方側導水路内の洗浄水を上記第1リム吐水部及び上記第2リム吐水部のそれぞれに導く第1リム導水路及び第2リム導水路をそれぞれ備え、
上記整流部の流路断面積は、上記第1リム吐水部の流路断面積と上記第2リム吐水部の流路断面積との合計よりも小さくなるように設定されている請求項記載の水洗大便器。