(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140650
(43)【公開日】2022-09-26
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20220915BHJP
A41B 11/10 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A41B11/00 J
A41B11/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123669
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2018158962の分割
【原出願日】2018-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原崎 真悟
(57)【要約】
【課題】シリコーン樹脂による足の皮膚のかぶれを抑制しつつ、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止する。
【解決手段】このフットカバー100は、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、爪先部102A、足底部104、側辺部102Bおよび踵部106で形成され、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が設けられ、踵部106の肌当接側に、繰り返し形状のシリコーン樹脂を含むシリコーン滑り止め部116を備え、繰り返し形状は、閉じた図形を構成する曲線状または直線状のシリコーン樹脂により形成されるとともに、閉じた図形の内側にシリコーン樹脂を備えない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足甲および足底を被覆するとともに足首を露出するフットカバーであって、足底部と踵部と足甲部とで形成され、
前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、
前記踵部の肌当接側に、繰り返し形状のシリコーン樹脂を含むシリコーン滑り止め部を備え、
前記繰り返し形状は、閉じた図形を構成する曲線状または直線状のシリコーン樹脂により形成されるとともに、前記閉じた図形の内側にシリコーン樹脂を備えないことを特徴とするフットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用するとパンプス(履き口である甲部分が大きく開いている主として婦人用の靴)等の靴の内側に隠れて見えなくなるフットカバーに関し、特に、履きやすく歩行等の動作によっても脱げたり位置ずれすることが少なく特定の化学物質(より詳しくは後述するシリコーン樹脂に代表される)に対する耐性が弱い人にも好ましいフットカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
素足にパンプス等の靴を履くことが、ファッションとして定着している。この場合、パンプスと足裏とが直接接していると、足に発生した汗により靴の中が蒸れてしまい不快感がある。
そこで、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口が大きくカットされた薄手のフットカバーが提案されている。このフットカバーを着用してパンプスを履けば、外観上、素足にパンプスを履いているように見え、足裏とパンプスとの間にはフットカバーが介しているため、汗によって靴の中が蒸れてしまうことを防止することができる。
【0003】
なお、このような足装着具を、本明細書ではフットカバーと記載するが、ソックスカバー、インナーソックス、ヌードソックス、カバーソックス等と記載される場合もある。
このようなフットカバーはパンプスから露出しないよう履き口が大きくカットされているため、歩行中の摩擦等によって履き位置がずれたり、脱げたりすすることがある。一方、履き口を小さくしてしまうとパンプスから露出してしまう。このような問題点に鑑みて開発されたフットカバーが、以下の先行技術文献に開示されている。
【0004】
特開平10-292206号公報(特許文献1)は、歩行時におけるパンプスとフットカバーとの摩擦によってフットカバーが素足から脱げてしまったり、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止するために、踵当接部内面に摩擦付与体を取り付けたフットカバーを開示する。
実用新案登録第3165733号公報(特許文献2)は、特許文献1に開示されたフットカバーの開口部の周縁に沿ってゴム紐を設けたのでは、ゴム紐が足に食い込むため、足にゴム紐の型が付いてしまったり、痛みを感じたり、履き心地が良くないという問題があったことに鑑み、開口部の周縁に沿って平ゴムを設けて一面が足に接するようにした帯状伸縮部を形成したフットカバーを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-292206号公報
【特許文献2】実用新案登録第3165733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に開示されたフットカバーの摩擦付与体だけでは十分でない場合があり、この場合には、歩行時、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする。特許文献2に開示された平ゴムでは、開口部の周縁の全体に亘って平ゴムを設けているため(平ゴムの伸縮性にもよるが)、フットカバーを履くときに開口部が十分に開かないで履きにくい場合があることに加えて、特許文献1に開示されたフットカバーと同じく、パンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまった
り履き位置がずれてしまったりする問題もある。
【0007】
さらに、摩擦付与体として特定の化学物質であるシリコーン樹脂が好適に採用されることが多く、このシリコーン自体の密着する特性を用いて足の皮膚とシリコーン樹脂とを直接密着させることにより、フットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題を解決する。
しかしながら、このような問題を解決するためにシリコーン樹脂は好適である一方、(このようなフットカバーは素足には履くために)特定の化学物質であるシリコーン樹脂に対する耐性が弱い(足の皮膚が特定の化学物質に対して弱い)等の理由によりシリコーン樹脂に密着する足の皮膚が化学物質であるシリコーン樹脂にかぶれてしまう(まけてしまう)可能性がある。フットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりする問題を解決するためにはシリコーン樹脂を多く設けて足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積が大きい方が好ましいが、このように密着面積を大きくすると足の皮膚がより多く(よりひどく)シリコーン樹脂にかぶれてしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがなく、シリコーン樹脂による足の皮膚のかぶれを抑制することのできるフットカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るフットカバーは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るフットカバーは、足甲および足底を被覆するとともに足首を露出するフットカバーであって、足底部と踵部と足甲部とで形成され、前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、前記踵部の肌当接側に、繰り返し形状のシリコーン樹脂を含むシリコーン滑り止め部を備え、前記繰り返し形状は、閉じた図形を構成する曲線状または直線状のシリコーン樹脂により形成されるとともに、前記閉じた図形の内側にシリコーン樹脂を備えないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフットカバーによれば、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることがなく、シリコーン樹脂による足の皮膚のかぶれを抑制することのできるフットカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るフットカバーについての(A)全体斜視図、(B)踵が上がった状態の背面側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るフットカバーの踵部の肌当接側に設けられるシリコーン滑り止め部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るフットカバーを、図面に基づき詳しく説明する。なお、フットカバーの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する特徴を備えたものであれば、どのようなフットカバーの構造であっても、フットカバーを形成する生地の種類、生地の型紙およびその生地の接合方法がどのようなものであっても基本的には構わない。そのため、以下に示すフットカバーの構造自体は単なる例示でしかない。
【0013】
なお、このフットカバーを形成する生地は、ベア天(ベア天竺:ポリウレタン糸を軸に
して他の素材の糸(綿、ウール等)を巻きつけた糸(カバード・ヤーン等)を用いて編んだ平編みの生地)、トリコット(経編み機の一種であるトリコット機で編んだ経編みの生地)、パンティストッキング用の生地(ポリウレタン糸とナイロン糸とを含む編地)等が好ましく用いられる。特に、これらの中でもベア天は、(1)伸縮性にすぐれている点、(2)形状安定性がよく洗濯後の形状変化が少ない点、(3)風合いが柔らかくフィット感にすぐれている点、(4)シワや折り目がつきにくい点、(5)多孔性の構造なので通気性がある点、(6)綿を含む場合には肌触りおよび吸湿性がよい点、でフットカバーに好ましい。
【0014】
さらに、本実施の形態に係るフットカバーは、爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および爪先を覆う爪先部で形成される。また、限定されるものではないが、以下に示すフットカバーは左右共用であって、左右共用であるために左右を履き間違いすることがない点で好ましい。なお、フットカバーが左右共用でない場合には、左足用と右足用とは左右対称の形状を備える。
【0015】
そして、特徴的であるのは、踵部の肌当接側に、繰り返し形状のシリコーン樹脂を含むシリコーン滑り止め部を備え、この繰り返し形状は、閉じた図形を構成する曲線状または直線状のシリコーン樹脂により形成されるとともに、閉じた図形の内側にシリコーン樹脂を備えない点である。なお、本実施の形態に係るフットカバーは複数の生地(爪先部102Aおよび側辺部102Bを形成する生地(側部102を形成する生地)、足底部104を形成する生地ならびに踵部106を形成する生地の3つの生地)により構成されているが、これらの生地どうしの接合については限定されるものではない。たとえば、縫合により生地どうしを接合するものであっても構わないし、帯状部材の一面に接着材が塗布された接着テープを用いて加熱することにより接着材が溶融して生地を熱接着して生地どうしを接合するものであっても構わない。ここで、この接合には、熱圧着によるもの、熱溶着によるもの、熱融着によるもの等を含む。
【0016】
図1(A)に本発明の実施の形態に係るフットカバー100の全体斜視図を
図1(B)に踵が上がった状態のフットカバー100を背面側から見た斜視図を、それぞれ示す。また、
図2はフットカバー100の踵部の肌当接側に設けられるシリコーン滑り止め部を説明するための図であって、
図2(A)にシリコーン滑り止め部116の全体を示す図を、
図2(B)に繰り返し形状116B1を説明するための拡大図を、
図2(C)に(シリコーン滑り止め部116とは別の)シリコーン滑り止め部216の全体を示す図を、
図2(D)に(繰り返し形状116B1とは別の)繰り返し形状216B1を説明するための拡大図を、それぞれ示す。
図2(A)および
図2(B)と
図2(C)および
図2(D)とでは、繰り返し形状である閉じた図形を構成する曲線(曲線状の図形を意味する)または直線(直線状の図形を意味する)が異なるが、閉じた図形の内側にシリコーン樹脂を備えない点は共通する。ここで、
図1(A)および
図1(B)は、着用者の足Fにフットカバー100を着用している状態を想定している。すなわち、本発明の実施の形態に係るフットカバー100は、トリコット等の伸縮性生地で形成されているために、このように想定して図示しない場合には縮んだ状態となり、形状を理解することが困難なため、上述のように想定している。
【0017】
これらの図に示すように、このフットカバー100は、着用者の足Fの爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーである。このフットカバー100は、着用時にパンプスから露出することのないよう履き口である開口部が大きくカットされた薄手の伸縮性生地(トリコット等の生地)で形成されている。ここで、着用時にパンプスから露出することのないとは、フットカバー100がパンプスに隠れて、見えなくなることも、見えにくくなることも含む。
【0018】
フットカバー100は、爪先部102A、足底部104、側辺部102Bおよび踵部106で形成されている。上述したように、フットカバー100は、爪先部102Aおよび側辺部102Bを形成する生地(側部102を形成する生地)、足底部104を形成する生地ならびに踵部106を形成する生地の3つの生地が、縫合されて接合されている。より詳しくは、爪先部102Aおよび側辺部102Bを形成する生地と踵部106を形成する生地とが左右2ヶ所の縦方向の縫合線110により、爪先部102Aおよび側辺部102Bを形成する生地および踵部106を形成する生地と足底部104を形成する生地とが足底外周に沿った縫合線112により、それぞれ縫合されている。
【0019】
そして、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が設けられている。この開口部の上縁の全周に亘ってフットカバー100の内側(足Fが接する側:肌側)に伸縮性細幅生地114が設けられている。このフットカバー100を履くときに伸縮性細幅生地114を伸張させると開口部が大きく開くために履きやすく、かつ、このフットカバー100を履いた後は伸縮性細幅生地114を収縮して開口部が小さくなるために歩行時にフットカバー100が脱げることがない。なお、この開口部の上縁の全周に亘ってフットカバー100の外側(足Fが接する側とは逆側:靴側)に伸縮性細幅生地114を設けるようにしても構わない。なお、この伸縮性細幅生地114は、開口部の上縁の全周ではなく上縁の一部に設けるようにしても構わないし、連続的ではなく断続的に設けるようにしても構わないし、開口部に設けなくても構わない。いずれであっても、この伸縮性細幅生地114を設けると、このフットカバー100が履きやすく、フットカバー100は歩行等の動作によっても脱げたり位置ずれすることが少ない。この伸縮性細幅生地114の一例として、ナイロン製テープを挙げることができる。
【0020】
そして、このフットカバー100の特徴は、踵部106の上縁におけるフットカバー100の内側(足Fが接する側:肌側)には、繰り返し形状のシリコーン樹脂を含む踵部滑り止め116が設けられている点である。これにより、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることを防止することができるとともに、シリコーン樹脂により足の皮膚がかぶれることを抑制することができる。
【0021】
この踵部滑り止め116について、
図2(A)および
図2(B)を参照して、詳しく説明する。
この踵部滑り止め116は、台紙となる伸縮性生地116Aに、後述する繰り返し形状を備えるように、シリコーン樹脂を塗布したり、裏面に接着剤が塗布されたシリコーンテープを貼付したりすることにより形成される。なお、台紙となる伸縮性生地116Aを備えないで、踵部106を形成する生地に直接シリコーン樹脂を設けるようにしても構わない。
【0022】
この踵部滑り止め116における繰り返し形状は、直線状のシリコーン樹脂により閉じた図形として形成されるとともに、閉じた図形の内側にシリコーン樹脂を備えない。より詳しくは、
図2(B)に示すように、シリコーン樹脂Sが、直線状で、かつ、繰り返し形状を備えるように形成され、閉じた図形の内側の領域Zにシリコーン樹脂を備えない。なお、この直線状には、屈曲点Pで連続性を維持するために曲線状(R形状)になっているものを含む。
【0023】
このような繰り返し形状(波形状、ジグザグ形状)を備えるシリコーン樹脂を、踵の上方から踵の下方へ従ってその繰り返し長さが短くなるように、かつ、その繰り返し方向が略左右方向(略横方向)になるように、シリコーン樹脂116B1、シリコーン樹脂116B2およびシリコーン樹脂116B3が設けられている。さらに、踵の側方にはその繰り返し方向が略上下方向(略縦方向)になるようにシリコーン樹脂116B4が設けられ
ている。
【0024】
このような略左右方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂116B1、シリコーン樹脂116B2およびシリコーン樹脂116B3は、踵の上下方向の動きに対して強いグリップ力を発生する。さらに、これに加えて、このような略上下方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂116B4は、踵の上下方向の動きに対してさらに強いグリップ力を発生することができる。その結果、これらの、略左右方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂116B1、シリコーン樹脂116B2およびシリコーン樹脂116B3、ならびに、略上下方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂116B4により、踵全体を包み込むようにホールドして、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることを防止することができる。
【0025】
そして、シリコーン樹脂Sが、直線状で、かつ、繰り返し形状を備えるように形成され、閉じた図形の内側の領域Zにシリコーン樹脂を備えないために、足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積を少なくすることができるので、足の皮膚がシリコーン樹脂にかぶれてしまうことを抑制することができる。この場合において、上述したように、略左右方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂116B1、シリコーン樹脂116B2およびシリコーン樹脂116B3、ならびに、略上下方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂116B4により、踵が踵全体を包み込むようにホールドされるので、たとえ、足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積を少なくても、その硬いホールド能力によりフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることを防止することができる。
【0026】
その結果、このような踵部滑り止め116を備えたフットカバー100によると、シリコーン樹脂による足の皮膚のかぶれを抑制しつつ、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止することができる。
次に、繰り返し形状が異なるシリコーン樹脂から形成される踵部滑り止め216について、
図2(C)および
図2(D)を参照して、詳しく説明する。
図2(C)が
図2(A)に対応し、
図2(D)が
図2(B)に、それぞれ対応する。
【0027】
この踵部滑り止め216は、踵部滑り止め116と同様に、台紙となる伸縮性生地216Aに、後述する繰り返し形状を備えるように、シリコーン樹脂を塗布したり、裏面に接着剤が塗布されたシリコーンテープを貼付したりすることにより形成される。なお、台紙となる伸縮性生地216Aを備えないで、踵部106を形成する生地に直接シリコーン樹脂を設けるようにしても構わない点も踵部滑り止め116と同様である。
【0028】
この踵部滑り止め216における繰り返し形状は、曲線状のシリコーン樹脂により閉じた図形として形成されるとともに、閉じた図形の内側にシリコーン樹脂を備えない。より詳しくは、
図2(D)に示すように、シリコーン樹脂Sが、曲線状で、かつ、繰り返し形状を備えるように形成され、閉じた図形の内側の領域Zにシリコーン樹脂を備えない。
踵部滑り止め116と同様に、このような繰り返し形状(ドーナツ形状、連続楕円形状)を備えるシリコーン樹脂を、踵の上方から踵の下方へ従ってその繰り返し長さが短くなるように、かつ、その繰り返し方向が略左右方向(略横方向)になるように、シリコーン樹脂216B1、シリコーン樹脂216B2およびシリコーン樹脂216B3が設けられている。さらに、踵の側方にはその繰り返し方向が略上下方向(略縦方向)になるようにシリコーン樹脂216B4が設けられている。
【0029】
このような略左右方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂216B1
、シリコーン樹脂216B2およびシリコーン樹脂216B3は、踵の上下方向の動きに対して強いグリップ力を発生する。さらに、これに加えて、このような略上下方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂216B4は、踵の上下方向の動きに対してさらに強いグリップ力を発生することができる。その結果、これらの、略左右方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂216B1、シリコーン樹脂216B2およびシリコーン樹脂216B3、ならびに、略上下方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂216B4により、踵全体を包み込むようにホールドして、足Fの踵との密着性を高めてフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることを防止することができる。
【0030】
そして、踵部滑り止め116と同様に、シリコーン樹脂Sが、直線状で、かつ、繰り返し形状を備えるように形成され、閉じた図形の内側の領域Zにシリコーン樹脂を備えないために、足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積を少なくすることができるので、足の皮膚がシリコーン樹脂にかぶれてしまうことを抑制することができる。この場合において、上述したように、略左右方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂216B1、シリコーン樹脂216B2およびシリコーン樹脂216B3、ならびに、略上下方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂216B4により、踵が踵全体を包み込むようにホールドされるので、たとえ、足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積を少なくても、その硬いホールド能力によりフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることを防止することができる。
【0031】
その結果、このような踵部滑り止め216を備えたフットカバー100によると、踵部滑り止め116を備えたフットカバー100と同様に、シリコーン樹脂による足の皮膚のかぶれを抑制しつつ、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止することができる。
また、繰り返し形状は、曲線状または直線状のシリコーン樹脂により閉じた図形として形成されるために、シリコーン樹脂216B1のように曲線状のみのシリコーン樹脂により形成されるものも、シリコーン樹脂116B1のように直線状のみのシリコーン樹脂により形成されるものも、例示しないが曲線状および直線状を組み合わせたシリコーン樹脂により形成されるものも、含まれる。
【0032】
なお、このフットカバー100において、このフットカバー100を形成する、足底部104以外の生地(側部102を形成する生地および踵部106を形成する生地)が同じ共生地で形成されていても構わない。すなわち、足底部104を形成するメッシュ生地を除いて、このフットカバー100は、全て同じ伸縮性生地(トリコット等)で形成されていても構わない。なお、このフットカバー100において、伸縮性細幅生地114は、生地に、熱プレス装置により加熱することにより伸縮性細幅生地114に塗布された接着材が溶融して生地と熱接着して接合されている。また、フットカバー100において、このフットカバー100を形成する足底部104以外の生地と伸縮性細幅生地114とが同じ生地で形成されていても構わない。
【0033】
以上のようにして、本実施の形態に係るフットカバー100によると、シリコーン樹脂による足の皮膚のかぶれを抑制しつつ、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時にフットカバーが脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、歩行時やパンプスの脱ぎ履き時に脱げてしまったり履き位置がずれてしまったりすることを防止できるフットカバーに好適であり、シリコーン樹脂による足の皮膚のかぶれを抑制できる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0035】
100 フットカバー
102 側部
102A 爪先部
102B 側辺部
104 足底部
106 踵部
114 伸縮性細幅生地
116、216 踵部滑り止め
F 足
【手続補正書】
【提出日】2022-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および爪先を覆う爪先部で形成され、
前記踵部の肌当接側に、円形以外の同じ図形を繰り返した繰り返し形状のシリコーン樹脂を含むシリコーン滑り止め部を備え、
前記繰り返し形状は、
1つの閉じた図形を構成する1本の曲線状または直線状のシリコーン樹脂により一筆書きで形成されるとともに、前記1つの閉じた図形の内側にシリコーン樹脂を備えない、
または、
1つの閉じた図形を構成する1本の曲線状または直線状のシリコーン樹脂により一筆書きで形成されるとともに、前記1つの閉じた図形の内側に前記円形以外の同じ図形を構成するシリコーン樹脂以外にシリコーン樹脂を備えず、
前記シリコーン滑り止め部は、複数の前記繰り返し形状が互いに離隔して配置されて形成され、繰り返し方向が略左右方向に設けられた第1の図形と前記第1の図形とは繰り返し方向が異なる略上下方向になるように設けられた第2の図形とを含むことを特徴とするフットカバー。
【請求項2】
爪先と踵を含む足底とを被覆するとともに足甲および足首を露出するフットカバーであって、足底部、側辺部、踵部および爪先を覆う爪先部で形成され、
前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、
前記踵部の肌当接側に、円形以外の閉じた同じ図形を、連結させた位置において互いの閉じた図形を開いて前記同じ図形を連結させた閉じた繰り返し形状のシリコーン樹脂を含むシリコーン滑り止め部を備え、
前記閉じた繰り返し形状は、曲線状または直線状のシリコーン樹脂により形成されるとともに、前記繰り返し形状の最外形線よりも内側に前記繰り返し形状の部分を構成する曲線状または直線状のシリコーン樹脂以外にシリコーン樹脂を備えず、
前記シリコーン滑り止め部は、複数の前記繰り返し形状が互いに離隔して配置されて形成され、繰り返し方向が略左右方向に設けられた第1の図形と、前記第1の図形とは繰り返し方向が異なる略上下方向になるように設けられた第2の図形とを含むことを特徴とするフットカバー。
【請求項3】
前記第1の図形は、踵の上方から踵の下方へ従って繰り返し長さが短くなるように設けられ、
前記第2の図形は、踵の側方に設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフットカバー。
【請求項4】
前記繰り返し形状は、波形状、ジグザク形状、連続ドーナツ形状および連続楕円形状のいずれかであることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載のフットカバー。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
そして、シリコーン樹脂Sが、直線状で、かつ、繰り返し形状を備えるように形成され、閉じた図形の内側の領域Zにシリコーン樹脂を備えないために、足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積を少なくすることができるので、足の皮膚がシリコーン樹脂にかぶれてしまうことを抑制することができる。この場合において、上述したように、略左右方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂116B1、シリコーン樹脂116B2およびシリコーン樹脂116B3、ならびに、略上下方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂116B4により、踵全体を包み込むようにホールドされるので、たとえ、足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積を少なくても、その高いホールド能力によりフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることを防止することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
そして、踵部滑り止め116と同様に、シリコーン樹脂Sが、直線状で、かつ、繰り返し形状を備えるように形成され、閉じた図形の内側の領域Zにシリコーン樹脂を備えないために、足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積を少なくすることができるので、足の皮膚がシリコーン樹脂にかぶれてしまうことを抑制することができる。この場合において、上述したように、略左右方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂216B1、シリコーン樹脂216B2およびシリコーン樹脂216B3、ならびに、略上下方向に繰り返される繰り返し形状を備えるシリコーン樹脂216B4により、踵全体を包み込むようにホールドされるので、たとえ、足の皮膚とシリコーン樹脂との密着面積を少なくても、その高いホールド能力によりフットカバー100が足Fの踵の部分からずれることを防止することができる。