(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140751
(43)【公開日】2022-09-27
(54)【発明の名称】塩薬物のin situでの塩から中性の薬物変換による、低溶解度または不安定非イオン化中性薬物の経皮配合物および送達方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20220915BHJP
A61K 31/451 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/663 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20220915BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20220915BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220915BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220915BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220915BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220915BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20220915BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20220915BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220915BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220915BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220915BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220915BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K31/451
A61K31/27
A61K31/13
A61K31/137
A61K31/18
A61K31/663
A61K31/19
A61K31/192
A61K31/196
A61P13/08
A61P13/02
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/36
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/00
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/04
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/20
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022124683
(22)【出願日】2022-08-04
(62)【分割の表示】P 2019503974の分割
【原出願日】2017-07-26
(31)【優先権主張番号】62/367,542
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/367,502
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/423,133
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/444,745
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/444,763
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/457,794
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/504,408
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/504,391
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503360296
【氏名又は名称】コリウム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウン ス リ
(72)【発明者】
【氏名】アミット ケー. ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】パーミンダー シン
(72)【発明者】
【氏名】アパラ サギ
(57)【要約】
【課題】中性形態ではなく、塩形態で提供される活性剤の経皮投与のための、組成物、デバイス、および方法を提供すること。
【解決手段】一態様では、経皮送達のための組成物が提供される。組成物は、塩形態の活性剤と、プロトン受容体および/またはプロトン供与体とを含む薬物リザーバを含む。一態様では、経皮送達のための組成物が提供される。組成物は、アミン塩形態の活性剤と、プロトン受容体とを含む薬物リザーバを含む。一実施形態では、活性剤は、ドネペジル、リバスチグミン、メマンチン、フィンゴリモド、またはタムスロシンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、米国仮出願第62/504,408号(2017年5月10日出願);米国仮出願第62/504,391号(2017年5月10日出願);米国仮出願第62/457,794号(2017年2月10日出願);米国仮出願第62/444,763号(2017年1月10日出願);米国仮出願第62/444,745号(2017年1月10日出願);米国仮出願第62/423,133号(2016年11月16日出願);米国仮出願第62/367,542号(2016年7月27日出願);および米国仮出願第62/367,502号(2016年7月27日出願)の利益を主張する。各々は、その全体が本明細書中に参照により援用される。
【0002】
技術分野
本明細書に記載される主題は、中性形態ではなく、塩形態で提供される活性剤の経皮投与のための、組成物、デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
経皮送達のための活性剤は、典型的には、それらの中性形態で提供される。これは、中性形態が、典型的には、対応する塩形態よりもはるかに皮膚透過性であるためである。従来の経皮配合物では、中性形態の活性剤が、薬物リザーバ(粘着剤マトリックスと呼ばれる場合もある)において可溶化され、活性剤は、薬物リザーバから皮膚内へと拡散する。したがって、経皮パッチは、典型的には、構成成分における23~30の薬剤の溶解度が許容する限り多量の活性剤を、薬物リザーバに溶解させて、多くの場合、その溶解度を向上するための可溶化剤と一緒に、含有する。あるいは、活性剤の中性の固体粒子が薬物リザーバ内に分散される場合もあるが、これは、それらの粒子の溶解速度が、溶解した活性剤の一定の供給がもたらされるようなものであることを条件とする。
【0004】
しかしながら、多くの活性剤にとって、中性形態は、可溶化、配合、および/または患者もしくは対象への投与が困難である。ある薬物が、薬物リザーバ内で非イオン化中性形態として低い溶解度を有する場合、複数日にわたって治療レベルで送達するのに十分な量を、可溶化形態で組み込むことは困難である。また、溶解した活性剤が、溶媒和、コーティング、および乾燥のプロセス中に、大型結晶として再結晶する場合もある。さらに、多くの活性剤は、塩形態よりも中性形態において安定性がより低い。
【0005】
当該技術分野では、これらの欠点に対処する、活性剤の経皮送達のための改善された組成物、デバイス、パッチ、システム、および方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡単な要旨
下に記載され例証される、以下の態様およびその実施形態は、例示的かつ例証的であることを意図したものであり、範囲に関して限定的なものではない。
【0007】
一態様では、経皮送達のための組成物が提供される。組成物は、塩形態の活性剤と、プロトン受容体および/またはプロトン供与体とを含む薬物リザーバを含む。
【0008】
一態様では、経皮送達のための組成物が提供される。組成物は、アミン塩形態の活性剤と、プロトン受容体とを含む薬物リザーバを含む。
【0009】
一実施形態では、活性剤は、ドネペジル、リバスチグミン、メマンチン、フィンゴリモド、またはタムスロシンである。
【0010】
一実施形態では、薬物リザーバは、約1~70%w/wの活性剤を含む。
【0011】
別の実施形態では、プロトン受容体は、プロトン受容型ポリマーである。
【0012】
さらに別の実施形態では、プロトン受容体は、アミン官能化ポリスチレンミクロスフェアまたはジメチルアミノエチルメタクリレート系アクリレートである。
【0013】
なおも別の実施形態では、プロトン受容体は、炭酸水素ナトリウムである。他の実施形態では、プロトン受容体は、炭酸水素ナトリウムを除外する。
【0014】
別の実施形態では、薬物リザーバは、約0.5~35%w/wのプロトン受容体を含む。
【0015】
別の態様では、経皮送達のための組成物は、酸塩形態の活性剤と、プロトン供与型ポリマーとを含む薬物リザーバを含む。
【0016】
一実施形態では、活性剤は、アレンドロン酸ナトリウム、トレプロスチニルナトリウム(tresprostinil sodium)、ジクロフェナクナトリウム、ナプロキセンナトリウム、お
よびケトプロフェンナトリウムからなる群から選択される酸塩薬物である。
【0017】
一実施形態では、薬物リザーバは、約5~35%w/wの活性剤を含む。
【0018】
別の実施形態では、プロトン供与型ポリマーは、メタクリル酸に基づくアニオン性コポリマーまたはカルボキシル化ポリスチレンミクロスフェアである。
【0019】
なおも別の実施形態では、薬物リザーバは、約0.5~35%w/wのプロトン供与型ポリマーを含む。
【0020】
さらに別の実施形態では、組成物は、水、アルコール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、およびN-メチルピロリドンからなる群から選択される塩形態可溶化剤をさらに含んでもよい。
【0021】
一実施形態では、薬物リザーバは、15%w/wまでの塩形態可溶化剤を含む。
【0022】
一実施形態では、組成物は、脂肪酸エステル、ジカルボン酸エステル、グリセロールエステル、ラクテート、脂肪アルコール、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、乳酸ラウリル、プロピレングリコールモノラウレート、コハク酸ジメチル、ラウリルアルコール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される中性形態可溶化剤をさらに含んでもよい。
【0023】
別の実施形態では、薬物リザーバは、15%w/wまでの中性形態可溶化剤を含む。
【0024】
なおも別の実施形態では、組成物は、ジカルボン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステル、トリカルボン酸エステル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、グリセロールエステル、およびトリアセチンからなる群から選択される可塑剤を含んでもよい。
【0025】
さらに別の実施形態では、薬物リザーバは、20%w/wまでの可塑剤を含む。
【0026】
別の実施形態では、組成物は、クロスポビドンおよびコロイド状二酸化ケイ素からなる群から選択される添加剤を含む。
【0027】
別の実施形態では、薬物リザーバは、25%w/wまでの添加剤を含む。
【0028】
別の実施形態では、薬物リザーバは、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、およびスチレンブロックコポリマー系粘着剤からなる群から選択される粘着剤を含む。
【0029】
一実施形態では、薬物リザーバは、65%w/wまでの粘着剤を含む。
【0030】
別の態様では、本明細書に記載されるような薬物リザーバ層と、バッキング層と、接触用粘着剤層とを含む経皮パッチが提供される。
【0031】
一実施形態では、バッキング層は、閉塞性ポリマーフィルムである。
【0032】
一実施形態では、接触用粘着剤層は、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、およびスチレンブロックコポリマー系粘着剤からなる群から選択される粘着剤を含む。
【0033】
一実施形態では、経皮パッチは、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に、不織タイ層をさらに含む。
【0034】
一実施形態では、経皮パッチは、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に、速度制御膜をさらに含む。
【0035】
一実施形態では、経皮パッチは、少なくとも2つの薬物リザーバ層を含む。
【0036】
別の実施形態では、少なくとも2つの薬物リザーバ層は、不織タイ層によって分離されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1~3は、経皮パッチ構成の例示的実施形態の例証である。
【
図2】
図1~3は、経皮パッチ構成の例示的実施形態の例証である。
【
図3】
図1~3は、経皮パッチ構成の例示的実施形態の例証である。
【0038】
【
図4】
図4は、実施例1(四角)、実施例2(三角)、および実施例7(丸)による配合物を有するデバイスに関するin vitro皮膚透過試験における、時間(時間単位)の関数としてのドネペジル経皮送達デバイスのin vitroでの平均皮膚フラックス(μg/cm
2・時間単位)のグラフである。
【0039】
【
図5】
図5は、実施例4による配合物を有するデバイスに関するin vitro皮膚透過試験における、時間(時間単位)の関数としてのメマンチン経皮送達デバイスのin vitroでの平均皮膚フラックス(μg/cm
2・時間単位)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
I.定義
これより、以下において、様々な態様についてより完全に説明する。しかしながら、そのような態様は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ完全であり、当業者にその範囲を完全に伝えることができるように提供されるものである。
【0041】
本明細書に記載される組成物、デバイス、および方法は、本明細書に記載される特定のポリマー、賦形剤、架橋剤、添加剤、製造プロセス、または粘着剤製品に限定されるものではない。本明細書において使用される特定の専門用語は、特定の実施形態について説明することを目的としており、限定的であることを意図するものではないことが理解されるであろう。
【0042】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれの介在値、および明言された範囲内の任意の他の明言された値または介在値が、本開示内に包括されることが意図される。例えば、1μm~8μmの範囲が明言された場合、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、および7μm、ならびに1μmに等しいまたはそれよりも大きい値の範囲および8μmに等しいまたはそれ未満の値の範囲もまた明示的に開示されていることが意図される。
【0043】
文脈が別途明確に規定しない限り、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、お
よび「その(the)」という単数形は、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば
、「ポリマー」に対する言及は、単一のポリマー、および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なるポリマーを包含し、「溶媒」に対する言及は、単一の溶媒、および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なる溶媒を包含する、などである。
【0044】
「第1の」および「第2の」を含む、順序または重要性の用語の使用は、個別の要素を区別および特定するためのものであり、文脈によって明確に示されない限り、特定の順序または重要性を表したり、または暗示したりするものではない。
【0045】
本明細書において使用される場合、「活性剤」という用語は、局所投与または経皮投与にとって好適であり、所望される効果を誘発する化学材料または化合物を指す。これらの用語には、治療的に有効である薬剤、予防的に有効である薬剤、および美容的に有効である薬剤である薬剤が包含される。「活性剤」、「薬物」、および「治療剤」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0046】
本明細書に記載されるような「粘着剤マトリックス」には、一体で作製されたマトリックス、例えば、溶液流延法または押出法を介して作製されたマトリックスだけでなく、2つまたはそれよりも多くの部分で形成され、その後一緒にプレスまたは合体されたマトリックスも包含される。
【0047】
本明細書において使用される場合、「皮膚」という用語は、粘膜内壁を有する体腔の内面を含む、皮膚または粘膜組織を指す。「皮膚」という用語は、「粘膜組織」を包含するものとして解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0048】
本明細書において使用される場合、「治療有効量」という用語は、無毒性であるが、所望される治療効果をもたらすには十分である活性剤の量を指す。「有効」である量は、当業者には公知であるように、個体の年齢および全身状態、具体的な活性剤(複数可)、ならびに同類のものに応じて、対象毎に異なることになる。
【0049】
本明細書において使用される場合、「経皮」または「経皮送達」という用語は、薬剤が体表面を通過して(例えば、皮膚を通じて)個体の血流中に入るように、個体の体表面に対して活性剤を投与することを指す。「経皮」という用語は、経粘膜投与、すなわち、薬剤が粘膜組織を通過して個体の血流中に入るように、個体の粘膜(例えば、舌下、口腔、膣、直腸など)表面に対して薬物を投与することを包含することが意図される。
【0050】
II.組成物/デバイス
活性剤の経皮投与のための組成物および/またはデバイスが、提供される。組成物は、1種または複数種の活性剤の経皮送達のためのデバイス、パッチ、および/またはシステムにおいて使用することができる。本明細書に記載される組成物は、本明細書に記載されるような経皮送達システム、デバイス、パッチ、および/または方法における使用のために企図される。
【0051】
経皮送達のための活性剤は、典型的には、それらの中性形態で提供される。これは、中性形態が、典型的には、対応する塩形態よりもはるかに皮膚透過性であるためである。しかしながら、多くの活性剤は、中性形態において十分な量で可溶化することが困難であり、複数日にわたって定常速度において中性形態で投与することが困難であり、かつ/または塩形態よりも中性形態において安定性がより低い。したがって、本発明は、ある特定の活性剤が、それらの塩形態での投与により良好に適しているという認識を包括する。
【0052】
概して、本明細書に記載される組成物は、その塩形態の活性剤と、少なくとも1種のプロトン供与体またはプロトン受容体とを提供する。プロトン供与体またはプロトン受容体は、塩からその中性形態への活性剤の変換を促進して、活性剤の皮膚透過性を改善する。一部の実施形態では、組成物は、1種または複数種の追加的な成分(例えば、可溶化剤、可塑剤、マトリックス改質性添加剤、および/または粘着剤)を含有する。一部の実施形態では、本明細書に記載される活性剤組成物は、パッチなどの経皮薬物送達デバイスの形態で提供されてもよい。
【0053】
A.活性剤の経皮送達のための組成物
第1の態様では、粘着剤と、塩形態の少なくとも1種の活性剤と、少なくとも1種のプロトン受容体またはプロトン供与体とを含む層またはマトリックスから構成される組成物が提供される。概して、塩形態の提供される活性剤は、塩形態よりも皮膚透過性である中性形態の活性剤を生成するために、提供されるプロトン受容体またはプロトン供与体と反応することになる。一部の実施形態では、粘着剤組成物は、中性形態の活性剤を指定されかつ/または所望される速度で生成させる、1種または複数種の追加的な成分を含んでもよい。そのような組成物は、一部の実施形態では、活性剤の比較的一定の活性をもたらすことができる。
【0054】
組成物は、以下のうちの1つまたは複数をさらに含んでもよい:1種の塩形態可溶化剤(合計で0~50%w/w)、1種の中性形態可溶化剤(合計で0~50%w/w)、プロトン受容体および/またはプロトン供与体のための1種の可塑剤(合計で0~50%w/w)、マトリックス改質性添加剤(合計で0~50%w/w)、ならびに粘着剤ポリマー(合計で0~95%w/w)。
【0055】
本明細書に記載されるすべてのw/w%または重量%は、組成物の湿潤重量を指したり、または乾燥重量を指したりする場合があることが理解されるであろう。
【0056】
一部の実施形態では、組成物は、粘着剤マトリックスまたは薬物リザーバ内に分散された、塩形態の1種または複数種の活性剤の微粒子化粒子を含む。一部の実施形態では、塩形態の少なくとも1種の活性剤は、薬物リザーバ内に、約1~70重量%、約1~50重量%、約1~35重量%、約1~25重量%、約2~70重量%、約2~50重量%、約2~35重量%、約5~70重量%、約5~50重量%、約5~35重量%、約5~30重量%、約5~25重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、約10~35重量%、約10~30重量%、約10~25重量%、約10~20重量%、約10~15重量%、約20~35重量%、約20~30重量%、約20~25重量%、約25~35重量%、約25~30重量%、または約30~35重量%の間の量で存在する。
【0057】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、塩形態の活性剤に対して限られた溶解度を有する可溶化剤(「塩形態可溶化剤」)をさらに含む。一部の実施形態では、塩形態の活性剤の微粒子化粒子は、塩形態可溶化剤中でイオン化する。一部の実施形態では、微粒子化塩形態粒子は、溶解したイオン化塩形態と、平衡状態で維持されることになる。一部の実施形態では、塩形態可溶化剤は、溶解したイオン化塩形態よりも微粒子化塩粒子に平衡が傾くように、微粒子化塩粒子に対して限られた程度の溶解度しか有しない。
【0058】
一部の実施形態では、塩形態可溶化剤は、塩に対して、少なくとも約0.1%w/w、少なくとも約0.2%w/w、少なくとも約0.3%w/w、少なくとも約0.4%w/w、少なくとも約0.5%w/w、または少なくとも約1.0%w/wの溶解度を有する。一部の実施形態では、塩形態可溶化剤は、塩に対して、約30%w/w未満もしくは約25%w/w未満、または20%w/wの溶解度を有する。
【0059】
一部の実施形態では、塩形態可溶化剤は、プロトン性溶媒(例えば、(例えば、ヒドロキシル基のように)酸素に結合した水素原子を有する溶媒もしくは(例えば、アミン基のように)窒素に結合した水素原子を有する溶媒、および/または不安定なプロトンを含有する任意の溶媒)である。例示的な塩形態可溶化剤としては、限定されるものではないが、水、アルコール(例えばエタノール、メタノールなど)、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0060】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、約0~50重量%、約0~20重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、約1~50重量%、約1~20重量%、約2~50重量%、約2~20重量%、約5~50重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、または約10~15重量%の、少なくとも1種の塩形態可溶化剤を含む。
【0061】
一部の実施形態では、溶解したイオン化塩形態は、同様にマトリックス内に提供されているプロトン受容体(アミン薬物塩の場合)またはプロトン供与体(カルボン酸薬物塩の場合)と反応することになる。概して、プロトン受容体は、第一級、第二級、または第三級アミン基を有する。概して、プロトン供与体は、カルボン酸基を有する。一部の実施形態では、プロトン受容体および/またはプロトン供与体は、溶解され、薬物リザーバと混合されている。一部の実施形態では、プロトン受容体および/またはプロトン供与体は、微粒子として分散されている。一部の実施形態では、プロトン受容体および/またはプロトン供与体は、可塑化されている。
【0062】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、約0.5~30重量%、約1~30重量%、約5~30重量%、約10~30重量%、約15~30重量%、約20~30重量%、約25~30重量%、約0.5~25重量%、約1~25重量%、約5~25重量%、約10~25重量%、約15~25重量%、約20~25重量%、約0.5~20重量%、約1~20重量%、約5~20重量%、約10~20重量%、約15~20重量%、約0.5~15重量%、約1~15重量%、約5~15重量%、約10~15重量%、約0.5~10重量%、約1~10重量%、約5~10重量%、約0.5~5重量%、または約1~5重量%の、少なくとも1種のプロトン受容体または少なくとも1種のプロトン供与体を含む。
【0063】
一部の実施形態では、プロトン受容体またはプロトン供与体は、ポリマーである。一部の実施形態では、プロトン受容体は、アミン官能性ポリマーである。例示的なプロトン受容型ポリマーとしては、限定されるものではないが、アミン官能化ポリスチレンミクロスフェア、ジメチルアミノエチルメタクリレート系アクリレート(例えば、EUDRAGIT(登録商標)EPOもしくはEUDRAGIT(登録商標)E100)、および/またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、プロトン供与体は、カルボン酸官能性ポリマーである。例示的なプロトン供与型ポリマーとしては、限定されるものではないが、メタクリル酸およびポリアクリル酸に基づくアニオン性コポリマー(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L100、EUDRAGIT(登録商標)L100-55、EUDRAGIT(登録商標)S100)、カルボキシル化ポリスチレンミクロスフェア、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0064】
一部の実施形態では、塩形態の活性剤の、プロトン受容型ポリマーまたはプロトン供与型ポリマーとの反応は、皮膚透過性の、中性形態の活性剤および固体ポリマーを生成することになる。中性活性剤が枯渇し(皮膚への拡散によって)、ポリマーがマトリックスにおいて固相として分離され始めると、反応は進行し続け、中性形態の比較的定常な濃度および/または活性が維持される。
【0065】
一部の実施形態では、アミン薬物塩のためのプロトン受容体は、塩基性度が穏やかであり、アミン薬物塩のものよりもpKaが低い無機塩である。例えば、炭酸水素ナトリウムは、大部分のアミン塩薬物よりも低いpKa=6.4を有する。一部の実施形態では、アミン薬物塩のためのプロトン受容体は、炭酸水素ナトリウムである。そのような実施形態では、反応生成物は、皮膚透過性の、中性形態の活性剤、水、および二酸化炭素を含む。中性活性剤およびCO2が枯渇すると(それぞれ、皮膚への拡散およびガスの漏出によって)、反応は進行し続け、中性形態の比較的定常な濃度および/または活性が維持される。
【0066】
一部の実施形態では、組成物は、中性形態の活性剤のための1種または複数種の可溶化剤(「中性形態可溶化剤」)をさらに含む。一部の実施形態では、中性形態可溶化剤は、中性活性剤がいったん形成されると、皮膚中に拡散するのに十分なほど長く存続し得ることを確実にするのに役立つ。
【0067】
一部の実施形態では、中性形態可溶化剤は、中性形態の活性剤に対して、少なくとも約0.1%w/wの溶解度を有する。一部の実施形態では、中性形態可溶化剤は、中性形態の活性剤に対して、約30%w/w未満の溶解度を有する。
【0068】
一部の実施形態では、例示的な中性形態可溶化剤としては、一般に、限定されるものではないが、脂肪酸エステル、乳酸エステル、ジカルボン酸エステル、クエン酸エステル、グリセロールエステル、脂肪アルコール、および/またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、例示的な中性形態可溶化剤としては、限定されるものではないが、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20)、プロピレングリコールモノラウレート、乳酸ラウリル、コハク酸ジメチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0069】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、約0~40重量%、約0~30重量%、約0~20重量%、約0~15重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、約1~40重量%、約1~30重量%、約1~20重量%、約2~40重量%、約2~30重量%、約2~20重量%、約5~20重量%、約1~15重量%、約2~15重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、または約10~15重量%の、少なくとも1種の中性形態可溶化剤を含む。
【0070】
一部の実施形態では、活性剤は、アミン塩薬物または酸塩薬物を含む。
【0071】
一部の実施形態では、活性剤は、アミン塩薬物である。一部の実施形態では、アミン塩薬物は、薬物リザーバにおいて、少なくとも約0.1mg/g、少なくとも約0.2mg/g、少なくとも約0.3mg/g、少なくとも約0.4mg/g、少なくとも約0.5mg/g、または少なくとも約1.0mg/gの溶解度を有する。一部の実施形態では、アミン塩薬物は、薬物リザーバにおいて、約100mg/g未満の溶解度を有する。例示的なアミン塩薬物としては、限定されるものではないが、ドネペジル、リバスチグミン、メマンチン、タムスロシン、ロチゴチン、フェンタニル、エスシタロプラム、ロピニロール、プラミペキソール、ブプレノルフィン、フィンゴリモド、およびリドカインが挙げられる。
【0072】
一部の実施形態では、微粒子化アミン塩形態の活性剤が、少なくとも1種の塩形態可溶化剤をさらに含むマトリックス内に分散される。塩形態の活性剤(「DHCl」)は、式1に示されているように、部分的に溶解およびイオン化する:
【化1】
【0073】
一部の実施形態では、溶解し、イオン化した活性剤(「DH
+」)は、式2に示されているように、プロトンアクセプターアミンポリマー(「ポリマーN」)と相互作用する。中性形態の活性剤(「D」)が拡散によって枯渇すると、反応はDの継続的な形成に向かって進行する。
【化2】
【0074】
一部の実施形態では、反応副生成物(「ポリマーNHCl」)は、マトリックスにおいて固相として隔離される。一部の実施形態では、中性形態の活性剤(「D」)は、皮膚への拡散によって枯渇する。
【0075】
平衡反応(2)において、溶解し、イオン化した活性剤であるDH
+からプロトンが隔離されるため、平衡定数は、式3のように表される:
【化3】
【0076】
一部の実施形態では、アミン塩薬物よりもpKaが低い塩基性無機塩を、中性形態の薬物を生成するために使用することもできる。例えば、炭酸/炭酸水素ナトリウムは、pKa=6.4を有する。一部の実施形態では、炭酸水素ナトリウムを、アミン塩薬物のためのプロトン受容体として使用することができる。一実施形態では、亜硫酸水素ナトリウムが、アミン塩薬物のためのプロテイン受容体(protein accepting entity)である。
【0077】
炭酸水素ナトリウムのイオン化が、式5に示されており、ここでは、ナトリウムイオンおよび炭酸水素イオンが生成される:
【化4】
【0078】
塩形態の活性剤(「DHCl」)は、式6に示されているように、部分的に溶解およびイオン化する:
【化5】
【0079】
一部の実施形態では、炭酸水素イオンは、アミン塩薬物からプロトンを受容して、炭酸を形成する。炭酸は、水および二酸化炭素へと分解され、二酸化炭素はパッチから漏出する。二酸化炭素が漏出し、中性活性剤「D」が皮膚への拡散によって枯渇すると、式(8)の平衡は右(中性薬物「D」の継続的な形成)に向かって進行する。
【化6】
【0080】
一部の実施形態では、活性剤は、酸塩薬物である。一部の実施形態では、酸塩薬物は、薬物リザーバにおいて、少なくとも約0.1mg/g、少なくとも約0.2mg/g、少なくとも約0.3mg/g、少なくとも約0.4mg/g、少なくとも約0.5mg/g、または少なくとも約1.0mg/gの溶解度を有する。一部の実施形態では、酸塩薬物は、薬物リザーバにおいて、約100mg/g未満の溶解度を有する。例示的な酸塩薬物としては、限定されるものではないが、アレンドロン酸ナトリウム、トレプロスチニルナトリウム(tresprostinyl sodium)、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェンナト
リウムなどが挙げられる。
【0081】
一部の実施形態では、微粒子化酸塩形態の活性剤が、少なくとも1種の塩形態可溶化剤をさらに含むマトリックス内に分散される。塩形態の活性剤(「ANa」)は、式9に示されているように、部分的に溶解およびイオン化する:
【化7】
【0082】
一部の実施形態では、溶解し、イオン化した活性剤(「A
-」)は、式10に示されているように、プロトンドナーポリマー(「ポリマーCOOH」)と相互作用する。中性形態の活性剤(「AH」)が拡散によって枯渇すると、反応はAHの継続的な形成に向かって進行する。
【化8】
【0083】
一部の実施形態では、反応副生成物(「ポリマーCOONa」)は、マトリックスにおいて固相として隔離される。一部の実施形態では、中性形態の活性剤(「AH」)は、皮膚への拡散によって枯渇する。
【0084】
式10において、反応副生成物は固相として隔離されるため、平衡定数は、式11のように表される:
【化9】
【0085】
一部の実施形態では、活性剤を経皮送達するための組成物は、プロトン受容体またはプロトン供与体のための1種または複数種の可塑剤をさらに含む。一部の実施形態では、組成物中に既に存在している塩形態可溶化剤および/または中性形態可溶化剤はまた、プロトン受容体またはプロトン供与体のための可塑剤としても働くことができる。一部の実施形態では、塩形態および/または中性形態可溶化剤としても働くわけではない可塑剤が、組成物中に含まれる。例示的な可塑剤としては、限定されるものではないが、ジカルボン酸エステル(例えば、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステルなど)、トリカルボン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチルなど)、グリセロールのエステル(例えば、トリアセチンなど)、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0086】
一部の実施形態では、粘着剤マトリックスまたは薬物リザーバは、約0~20重量%、約0~15重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、約10~20重量%、約10~15重量%、または約15~20重量%の、少なくとも1種の可塑剤を含む。
【0087】
一部の実施形態では、活性剤を経皮送達するための組成物は、マトリックス改質性添加剤とも呼ばれる、少なくとも1種の添加剤をさらに含む。一部の実施形態では、マトリックス改質性添加剤は、記載される活性剤組成物の凝集力および/または拡散率を変更する。一部の実施形態では、マトリックス改質性添加剤は、閉塞された皮膚から発散される湿分および/または水を吸収することができ、これにより、皮膚への接着性が改善される。一部の実施形態では、マトリックス改質性添加剤は、薬物リザーバの均質化を助長する。例示的なマトリックス改質性添加剤としては、限定されるものではないが、クロスポビドン(KOLLIDON(登録商標)CL-Mなど)、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒュームドシリカ、コロイド状二酸化ケイ素、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、クレイ(例えば、カオリン、ベントナイトなど)、ヒュームドシリカ、および/またはそれらの組合せが挙げられる。例示的な市販のヒュームドシリカ製品は、非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素である、AEROSIL(登録商標)200P(Evonik Industries)である。別の例示的なヒュームドシリカ製品は、Cab-O-Sil(登録商標)(Cabot Corporation、Boston、Mass.)である。
【0088】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、約0~25重量%、約0~20重量%、約0~15重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、約5~25重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、約10~25重量%、約10~20重量%、約10~15重量%、約15~25重量%、約15~20重量%、または約20~25重量%の、少なくとも1種のマトリックス改質性添加剤を含む。
【0089】
一部の実施形態では、活性剤を経皮送達するための組成物は、粘着剤または粘着剤ポリマーをさらに含む。例示的な粘着剤および粘着剤ポリマーとしては、限定されるものではないが、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、スチレンブロックコポリマー系粘着剤、および/またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、プロトン受容型および/またはプロトン供与型ポリマーは、塩形態および/または中性形態可溶化剤の存在下において、フィルム形成性である。そのような実施形態では、組成物は、別個の粘着剤ポリマーを必要としない場合がある。
【0090】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、約0~65重量%、約0~60重量%、約0~55重量%、約0~50重量%、約0~45重量%、約0~40重量%、約0~35重量%、約0~30重量%、約0~25重量%、約0~20重量%、約0~15重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、5~65重量%、約5~60重量%、約5~55重量%、約5~50重量%、約5~45重量%、約5~40重量%、約5~35重量%、約5~30重量%、約5~25重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、10~65重量%、約10~60重量%、約10~55重量%、約10~50重量%、約10~45重量%、約10~40重量%、約10~35重量%、約10~30重量%、約10~25重量%、約10~20重量%、約10~15重量%、15~65重量%、約15~60重量%、約15~55重量%、約15~50重量%、約15~45重量%、約15~40重量%、約15~35重量%、約15~30重量%、約15~25重量%、約15~20重量%、20~65重量%、約20~60重量%、約20~55重量%、約20~50重量%、約20~45重量%、約20~40重量%、約20~35重量%、約20~30重量%、約20~25重量%、25~65重量%、約25~60重量%、約25~55重量%、約25~50重量%、約25~45重量%、約25~40重量%、約25~35重量%、約25~30重量%、30~65重量%、約30~60重量%、約30~55重量%、約30~50重量%、約30~45重量%、約30~40重量%、約30~35重量%、35~65重量%、約35~60重量%、約35~55重量%、約35~50重量%、約35~45重量%、約35~40重量%、40~65重量%、約40~60重量%、約40~55重量%、約40~50重量%、約40~45重量%、45~65重量%、約45~60重量%、約45~55重量%、約45~50重量%、50~65重量%、約50~60重量%、約50~55重量%、55~65重量%、約55~60重量%、または約60~65重量%の、少なくとも1種の粘着剤ポリマーを含む。
【0091】
組成物はまた、当該技術分野において公知であるような、他の従来の添加剤、例えば粘着剤、抗酸化剤、架橋剤、硬化剤、pH調節剤、顔料、染料、屈折粒子、伝導性種、抗微生物剤、乳白剤、ゲル化剤、粘度調整剤、増粘剤、安定化剤、および同類のものなどを含んでもよい。また、接着性を低減するまたは除く必要があるような実施形態では、従来の減粘剤を使用することもできる。一部の実施形態では、保管中の変質を防止するため、例えば、酵母菌およびカビなどの微生物の増殖を阻害するために、抗微生物剤などの薬剤が含まれる。好適な抗微生物剤は、典型的には、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステルおよびプロピルエステル(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、ならびに/またはそれらの組合せからなる群から選択される。これらの添加剤およびそれらの量については、それらが粘着剤および/または活性剤の所望される化学的特性および物理的特性に対して有意に干渉しないようなやり方で選択される。
【0092】
また、組成物は、活性剤、プロトン供与体もしくはプロトン受容体、塩形態可溶化剤、中性形態可溶化剤、可塑剤、マトリックス改質性添加剤、粘着剤、および/または組成物の他の構成成分に起因する皮膚刺激および/または皮膚損傷の可能性を最小化または排除するために、刺激軽減添加剤を含有してもよい。好適な刺激軽減添加剤としては、例えば、コルチコステロイド、α-トコフェロール、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、特に2-フェニル-1-エタノールなどのフェニルアルコール、グリセリン、サリチル酸およびサリチレート、アスコルビン酸およびアスコルベート、モネンシンなどのイオノフォア、両親媒性アミン、塩化アンモニウム、N-アセチルシステイン、シス-ウロカニン酸、カプサイシン、およびクロロキン、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0093】
また、活性剤組成物を調製または製造するための方法も提供される。例示的な方法は、実施例のセクションにおいて示される。活性剤組成物を調製するための方法は、一般に、5~35%w/wの活性剤を、0.5~30%w/wのプロトン受容体またはプロトン供与体と、必要に応じて、0~15%w/wの塩形態可溶化剤、0~15%w/wの中性形態可溶化剤、0~25%w/wのマトリックス改質性添加剤、0~20%w/wの可塑剤、0~65%w/wの粘着剤ポリマー、および/またはそれらの組合せとともに混合することを伴う。
【0094】
B.経皮デバイス
ある特定の態様では、本明細書に記載される組成物は、経皮デバイス(例えば、パッチ)において提供される。概して、経皮パッチは、バッキング層、少なくとも1つの薬物リザーバ、および接触用粘着剤層を含む。薬物リザーバおよび接触用粘着剤層は、単一層の形態であってもよく、粘着剤および薬物から構成されるマトリックスの形態であってもよいことが理解されるであろう。一部の実施形態では、経皮パッチは、1つまたは複数の、剥離ライナー、タイ層、速度制御膜、および/または前述のものの様々な組合せをさらに含む。
【0095】
一部の実施形態では、経皮パッチは、以下の構成成分:バッキング層、薬物リザーバ、接触用粘着剤層、剥離ライナー、タイ層、速度制御膜、および/または前述のものの様々な組合せのうちの1つまたは複数を含む。
【0096】
例示的な経皮パッチを、
図1~3に示す。
図1は、バッキング層12、不織タイ層または速度制御膜18によって分離された複数の薬物リザーバ14、16、接触用粘着剤層20、および剥離ライナー22を含む、例示的経皮パッチ10を示している。この特定の例では、タイ層または速度制御膜18によって分離された複数の薬物リザーバが提示されているが、一部の実施形態では、複数の粘着剤層が、必要に応じてのタイ層19などのタイ層を伴わずに、互いと直接接触していてもよい。経皮パッチが複数の薬物リザーバを含んでいるような実施形態では、それぞれの薬物リザーバは、同じ活性剤を含んでいてもよく、または異なる活性剤を含んでいてもよい。経皮パッチが複数の薬物リザーバを含んでいるような実施形態では、それぞれの薬物リザーバは、異なる濃度の同じ活性剤を含んでいてもよい。
【0097】
図2は、バッキング層32、薬物リザーバ34、タイ層または速度制御膜36、接触用粘着剤層38、および剥離ライナー39を含む、例示的経皮パッチ30を示している。
【0098】
図3は、バッキング層42、薬物リザーバ44、接触用粘着剤層46、および剥離ライナー48を含む、例示的経皮パッチ40を示している。
【0099】
一部の実施形態では、バッキング層は、粘着剤層を保持または支持するための構造要素を提供する。バッキング層は、当該技術分野において公知であるような任意の好適な材料で形成されていてもよい。一部の実施形態では、バッキング層は、閉塞性である。一部の実施形態では、バッキング層は、好ましくは、湿分に対して不透過性または実質的に不透過性である。例示的な一実施形態では、バリア層は、約50g/m2・日未満のMVTR(水蒸気通気率)を有する。一部の実施形態では、バッキング層は、好ましくは、不活性であり、かつ/または活性剤を含めた、粘着剤層の構成成分を吸収しない。一部の実施形態では、バッキング層は、好ましくは、バッキング層を通じた粘着剤層の構成成分の放出を防止する。バッキング層は、可撓性であってもよく、または非可撓性であってもよい。バッキング層は、好ましくは、パッチが適用される皮膚の形状に対してバッキング層が少なくとも部分的に適合することができるように、少なくとも部分的に可撓性である。一部の実施形態では、バッキング層は、パッチが適用される皮膚の形状に対してバッキング層が適合するように、可撓性である。一部の実施形態では、バッキング層は、運動、例えば皮膚の運動を伴う適用部位において接触を維持するのに十分なほど可撓性である。典型的には、バッキング層のために使用される材料は、デバイスが、皮膚または他の適用部位の外形をなぞり、かつ関節または他の屈曲点などの、機械的歪みに通常供される皮膚の領域において快適に着用することができ、皮膚とデバイスとの可撓性または弾力性における差異に起因してデバイスが皮膚から脱落する可能性がほとんどないか、またはまったくないようなものであるべきである。
【0100】
一部の実施形態では、バッキング層は、フィルム、不織布、織布、積層体、およびそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、フィルムは、1種または複数種のポリマーから構成されるポリマーフィルムである。好適なポリマーは、当該技術分野において公知であり、限定されるものではないが、エラストマー、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、および/またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、バッキング層は、ポリエチレンテレフタレート、様々なナイロン、ポリプロピレン、金属化ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデン、アルミニウム箔、および/またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、バッキング層は、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、および/またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される布である。特定の、非限定的な一実施形態では、バッキング層は、ポリエステルフィルム積層体で形成される。例示的な特定のポリエステルフィルム積層体としては、限定されるものではないが、ポリエチレンおよび/またはポリエステル積層体、例えばScotchpak(商標)#9723、Scotchpak(商標)#1012の名称で販売されているようなもの、および同類のものが挙げられる。
【0101】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、一般に、塩形態の活性成分(複数可)(合計で5~35%w/w)、少なくとも1種の塩形態可溶化剤(合計で0~20%w/w)、少なくとも1種の中性形態可溶化剤(合計で0~20%w/w)、少なくとも1種のプロトン受容体および/またはプロトン供与体(合計で0.5~30%w/w)、必要に応じて、プロトン受容体および/またはプロトン供与体のための少なくとも1種の可塑剤(合計で0~20%w/w)、マトリックス改質性添加剤(合計で0~25%w/w)、ならびに必要に応じて、粘着剤ポリマー(合計で0~65%w/w)を含む。一部の実施形態では、薬物リザーバは、本明細書、例えば実施例およびセクションII.Aに記載される経皮送達のための組成物のうちのいずれかを含む。
【0102】
概して、タイ層は、不織布および/または速度制御ポリマー膜を含む。
【0103】
一部の実施形態では、デバイスは、薬物リザーバ層の内部またはその間に、1つまたは複数の布またはタイ層をさらに含む。タイ層が、層のうちの1つ、一部、またはすべての間に含まれてもよいことが理解されるであろう。一部の実施形態では、タイ層は、デバイスの層間における結合を増加させるのに有用である。タイ層は、ポリマーが結合するための化学基を提供することによって、結合を増加させることができる。一部の実施形態では、タイ層は、粘着剤マトリックス層のためのセパレーションとして有用である。
【0104】
一部の実施形態では、タイ層は、粘着剤層からの活性剤の放出速度に影響を及ぼさない。一部の実施形態では、タイ層は、不織フィルムを含んでもよく、この不織フィルムとしては、限定されるものではないが、不織ポリエステル(例えば、REEMAY(登録商標))、多孔質ポリエチレンフィルム(DELNET(登録商標))、ナイロン、綿、および同類のもの、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0105】
一部の実施形態では、タイ層は、速度制御ポリマー膜を含んでもよい。例示的な速度制御ポリマー膜としては、限定されるものではないが、微多孔質ポリマーフィルム、例えばCELGARD(登録商標)2400(微多孔質ポリプロピレン)、ポリエチレン(例えば、微多孔質ポリエチレン)、酢酸ビニルポリマーおよびコポリマー、ならびに同類のもの、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。概して、速度制御ポリマー膜は、薬物リザーバ層からの薬物の速度制御放出を可能にさせる。
【0106】
一部の実施形態では、タイ層は、不織布を含み、速度制御ポリマー膜を含まない。一部の実施形態では、タイ層は、速度制御ポリマー膜を含み、不織布を含まない。一部の実施形態では、タイ層は、不織布および速度制御ポリマー膜を両方とも含む。例を1つだけ挙げると、不織布および速度制御ポリマー膜は、薬物リザーバの凝集力を改善するのに役立つようにタイ層が薬物リザーバ内に埋め込まれている場合に、両方とも使用され得る(例えば、
図1を参照されたい)。
【0107】
デバイスは、少なくとも1つの粘着剤層を含む。複数の実施形態では、粘着剤層のうちの少なくとも1つは、下に記載されるように、1種または複数種の活性剤を含む粘着剤マトリックスである。粘着剤層は、薬物リザーバ、隣接する粘着剤層、タイ層、剥離ライナー、および/または投与部位の皮膚に対して接着する。一部の実施形態では、粘着剤層は、皮膚に対して活性剤を放出するように働く。一部の実施形態では、薬物リザーバ粘着剤および/または接触層粘着剤のうちの1つまたは複数が、粘着剤マトリックスで形成される。例示的な粘着剤としては、限定されるものではないが、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、スチレンブロックコポリマー系粘着剤、もしくは同類のもの、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0108】
一部の実施形態では、送達システムの薬物リザーバは、少なくとも約2日間の期間にわたって、約0.5~30μg/cm2・時間の間の、活性剤のin vitro皮膚フラックスを提供する。
【0109】
複数の実施形態では、剥離ライナーが、適用前に粘着剤層(複数可)を保護するために、粘着剤層のうちの少なくとも1つと少なくとも部分的に接触する。剥離ライナーは、典型的には、処置部位に対してデバイスを適用する前に取り外される、使い捨ての層である。一部の実施形態では、剥離ライナーは、活性剤を含めた、粘着剤層(複数可)の構成成分を吸収しない。一部の実施形態では、剥離ライナーは、粘着剤層(複数可)の構成成分(活性剤を含む)に対して不透過性であり、粘着剤層(複数可)の構成成分が剥離ライナーを通じて放出されることを防止する。一部の実施形態では、剥離ライナーは、フィルム、不織布、織布、積層体、および/またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、剥離ライナーは、シリコーンでコーティングされたポリマーフィルムまたは紙である。一部の非限定的実施形態では、剥離ライナーは、シリコーンでコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、フルオロカーボンフィルム、フルオロカーボンでコーティングされたPETフィルム、および/またはそれらの組合せである。
【0110】
経皮デバイスおよびシステム(例えばパッチ)は、当該技術分野において公知であるような、任意の好適な方法によって調製することができる。一部の一般的実施形態では、経皮デバイスは、適当な量の粘着剤ポリマー組成物(活性剤を伴うまたは伴わない)を、剥離ライナーまたはバッキング層などの基材上にコーティングすることによって調製される。一部の実施形態では、粘着剤ポリマー組成物は、剥離ライナー上にコーティングされる。一部の実施形態では、粘着剤ポリマー組成物は、所望される厚さまで、基材またはライナー上にコーティングされる。デバイスおよび/または薬物リザーバの厚さおよび/またはサイズは、当業者であれば、少なくとも着用性および/または必要とされる用量の検討に基づいて決定することができる。デバイスの投与部位が、その投与部位の利用可能なサイズおよび投与部位の使用(例えば、運動を支持するための可撓性の必要性)に起因して、着用性の検討に影響を及ぼすことが理解されるであろう。一部の実施形態では、デバイスおよび/または薬物リザーバは、約25~500μmの間の厚さを有する。粘着剤ポリマー組成物および基材は、あらゆる溶媒を除去するために、少なくとも部分的に乾燥される。剥離ライナーまたはバッキング層が、基材の反対側に適用される。基材が剥離ライナーでもバッキング層でもない場合、基材は、適当な剥離ライナーまたは基材と置き換えられる。複数の粘着剤ポリマー層を含む実施形態では、第1の粘着剤ポリマー組成物が、基材上に適用またはコーティングされ、タイ層材料が、その配合物に対して適用され、第2の粘着剤ポリマー組成物が、タイ層材料に対して適用される。粘着剤ポリマー組成物およびタイ層は、当該技術分野において公知である任意の好適な方法を使用して積層される。一部の実施形態では、粘着剤層を別個の基材またはライナー上にコーティングした後、それらを合体させて、経皮送達デバイスが形成される。送達デバイスがリザーバ粘着剤層および接触用粘着剤層を含む場合、粘着剤ポリマー組成物は、基材またはライナー上にコーティングされ、積層され得る。粘着剤ポリマー組成物層のいずれかまたはすべてが、それらの層を積層する前に乾燥されてもよいことが理解されるであろう。
【0111】
III.処置の方法
別の態様では、本明細書に記載される経皮組成物、デバイス、および/またはシステムにより、少なくとも1種の活性剤を経皮投与することによって、疾患、状態、および/または障害を処置する方法が提供され、いくつかの非限定的な例示的実施形態が示される。
【0112】
一部の実施形態では、組成物は、活性剤としてメチルフェニデート(RITALIN(登録商標))を含み、例えば経皮パッチによるメチルフェニデートの投与を通じて、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ナルコレプシー、および/またはうつ病を処置するために使用される。FDAは、2.5mg、5mg、10mg、15mg、18mg、20mg、27mg、30mg、36mg、40mg、50mg、54mg、および60mgの、メチルフェニデートの用量について認可している。
【0113】
他の実施形態では、活性剤としてドネペジル(ARICEPT(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるドネペジルの投与を通じて、アルツハイマー病を処置するために使用される。FDAは、5mg、7mg、10mg、14mg、および23mgの、ドネペジルの用量について認可している。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、FDAが認可した用量に対応する用量の投与を可能にさせる。
【0114】
一部の実施形態では、活性剤としてリバスチグミン(Exelon(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるリバスチグミンの投与を通じて、アルツハイマー病および/またはパーキンソン病認知症を処置するために使用される。FDAは、1.5mg、2.0mg、3.0mg、4.5mg、4.6mg、6.0mg、9.0mg、9.5mg、および13.3mgの、リバスチグミンの日用量について認可している。一部の実施形態では、活性剤としてメマンチンを含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるメマンチンの投与を通じて、アルツハイマー病、強迫性障害、不安障害、ADHD、およびオピオイド依存を処置するために使用される。FDAは、2mg、5mg、7mg、10mg、14mg、21mg、および28mgの、メマンチンの用量について認可している。
【0115】
一部の実施形態では、活性剤としてタムスロシンを含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるタムスロシンの投与を通じて、良性前立腺肥大症および/または急性尿閉を処置するために使用される。FDAは、0.4mgおよび0.5mgの、タムスロシンの用量について認可している。
【0116】
本明細書に記載される経皮組成物、デバイス、および/またはシステムは、長期の使用および/または少なくとも1種の活性剤の継続投与のために設計することができる。経皮デバイス当たりの活性剤の総用量は、活性剤(複数可)の性質、デバイスのサイズ、および/または薬物リザーバ内の活性剤の装填量によって決定されることが理解されるであろう。一部の実施形態では、経皮デバイスの適用期間は、約1~10日、1~7日、1~5日、1~2日、1~3日、1~4日、3~10日、3~7日、3~5日、5~10日、および5~7日の間(両端を含む)である。一部の実施形態では、活性剤は、適用期間にわたって、薬物リザーバから継続放出および/または持続放出として放出される。
【実施例0117】
IV.実施例
以下の実施例は、本質的に例証的なものであり、決して限定的であることを意図するものではない。
【0118】
別途指定されない限り、以下の材料を下に記載される実施例において使用した。バッキング層は、SCOTCHPAK(商標)9723であった。剥離ライナーは、シリコーンでコーティングされたポリエステル(PET)フィルムであった。不織タイ層は、REEMAY(登録商標)2250であった。速度制御膜は、CELGARD(登録商標)2400微多孔質ポリプロピレンであった。接触用粘着剤層は、アクリレート、ポリイソブテン(PIB)、および/またはシリコーン粘着剤であった。
【0119】
(実施例1)
ドネペジル経皮配合物
薬物リザーバの調製
9グラムの量のEUDRAGIT(登録商標)EPO(プロトン受容型ポリマー)を、74.71グラムの酢酸エチルに溶解した。結果として得られた溶液に、6グラムのトリアセチン、6グラムのグリセリン、および3グラムのSPAN(登録商標)20(ソルビタンモノラウレート)を添加し、混合した。この混合物に、12.6グラムのドネペジル塩酸塩粉末を分散させた。この薬物が分散された溶液に、7.8グラムのKOLLIDON(登録商標)CL-Mを添加した後、混合物をよく均質化した。この均質化された薬物分散体に、30.89グラムのDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、ラボコーター(Werner Mathisコーター)を使用することで乾燥させて、10mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0120】
接触用粘着剤の調製
4.00グラムの量のトリアセチンを、2.00グラムのソルビタンモノラウレートおよび34.52グラムの酢酸エチルと混合した。8グラムのKOLLIDON(登録商標)CL-Mを添加した後、結果として得られた混合物を均質化した。この均質化された混合物に、51.48グラムのDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0121】
積層およびダイカット
CELGARD(登録商標)2400速度制御膜またはREEMAY(登録商標)2250を、薬物リザーバの粘着剤側の上に積層した。次いで、接触用粘着剤を、薬物リザーバと積層されたCELGARD(登録商標)2400膜の上に積層した。薬物リザーバ側の剥離ライナーを、バッキングフィルムで置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
【0122】
in vitro皮膚フラックス試験
デルマトーム処理されたヒト死体皮膚を、皮膚バンクから入手し、使用の準備ができるまで凍結しておいた。解凍した後、この皮膚を60℃の水中に1~2分間入れ、表皮を真皮から慎重に分離した。表皮は、直ぐに使用したか、または後で使用するために包装し、凍結しておいた。
【0123】
in vitro皮膚フラックス研究を、0.64cm2の有効拡散面積を有するFranz型拡散セルを使用することで実施した。表皮を、拡散セルのドナー区画とレセプター区画との間に固定した。経皮送達システムを皮膚の上に置き、2つの区画を一緒にきつく締め付けた。
【0124】
レセプター区画には、0.01%のゲンタマイシンを含有する、0.01Mのリン酸緩衝液、pH6.5を充填した。レセプター区画内の溶液は、レセプター区画内の磁気撹拌子を使用することで絶えず撹拌した。温度は、32±0.5℃に維持した。定期的な間隔を置いて、レセプター溶液から試料を抜き取り、レセプター溶液を新鮮なリン酸緩衝溶液で置き換えた。試料中の薬物含有量を、ドネペジルに関してHPLCを使用することで分析した。
【0125】
単位時間当たりで、cm
2当たりの表皮を通じて拡散した薬物の量に関して、結果を計算した。それぞれのデータ点は、拡散セルの4つの複製物の平均である。
図4は、実施例1に従って配合されたドネペジルのin vitro皮膚フラックスプロファイル(四角)を示している。
【0126】
(実施例2)
ドネペジル経皮配合物
薬物リザーバの調製
1.20グラムの量のSPAN(登録商標)20を、6.00gのクエン酸トリエチルの混合物に溶解し、1.80グラムの乳酸ラウリルおよび89.69グラムの酢酸エチルと混合した。6.00グラムのグリセリンを添加し、SPAN(登録商標)20溶液と混合した。この混合物に、9.00グラムのドネペジル塩酸塩および1.82グラムの炭酸水素ナトリウムを分散させた。この薬物が分散された溶液に、12.00グラムのKOLLIDON(登録商標)CL-Mを添加した後、混合物をよく均質化した。この均質化された薬物分散体に、43.93グラムのDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、ラボコーター(Werner Mathisコーター)を使用することで乾燥させて、12mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0127】
接触用粘着剤の調製
0.60グラムの量のSPAN(登録商標)20(ソルビタンモノラウレート)を、3.00グラムのクエン酸トリエチルに溶解し、0.9グラムの乳酸ラウリル、25.45グラムの酢酸エチル、および1.34グラムのイソプロピルアルコールと混合した。6.00グラムのKOLLIDON(登録商標)CL-Mを添加した後、混合物を均質化した。この均質化された混合物に、38.61グラムの量のDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0128】
積層およびダイカット
CELGARD(登録商標)2400速度制御膜またはREEMAY(登録商標)2250を、薬物リザーバの粘着剤側に積層した。次いで、接触用粘着剤を、薬物リザーバと積層されたCELGARD(登録商標)2400膜の上に積層した。薬物リザーバ側の剥離ライナーを、バッキングフィルムで置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
【0129】
in vitro皮膚フラックス試験
経皮システムからのドネペジルのin vitro皮膚フラックスを、実施例1に記載されているように測定した。
図4は、ドネペジルのin vitro皮膚フラックスプロファイル(三角)を示している。
【0130】
(実施例3)
タムスロシン経皮配合物
薬物リザーバの調製
3.00グラムの量のEUDRAGIT(登録商標)EPOを、24.51gの酢酸エチルに溶解した。結果として得られた溶液に、2.00グラムのクエン酸トリエチル、2.00グラムのグリセリン、および1.00グラムのSPAN(登録商標)20(ソルビタンモノラウレート)を添加/混合した。この混合物に、4.00グラムのタムスロシン塩酸塩粉末を分散させた。この薬物が分散された溶液に、2.4グラムのKOLLIDON(登録商標)CL-Mを添加した後、混合物をよく均質化した。この均質化された薬物分散体に、11.09グラムのDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、ラボコーター(Werner Mathisコーター)を使用することで乾燥させて、10mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0131】
接触用粘着剤の調製
3.00グラムの量のクエン酸トリエチルを、1.50グラムのソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)および25.89グラムの酢酸エチルと混合した。6.00グラムのKOLLIDON(登録商標)CL-Mを添加した後、混合物を均質化した。この均質化された混合物に、38.61グラムの量のDURO-TAK 387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0132】
積層およびダイカット
CELGARD(登録商標)2400速度制御膜またはREEMAY(登録商標)2250を、薬物リザーバの粘着剤側に積層した。次いで、接触用粘着剤を、薬物リザーバと積層されたCELGARD(登録商標)2400膜の上に積層した。薬物リザーバ側の剥離ライナーを、バッキングフィルムで置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
【0133】
(実施例4)
メマンチン経皮配合物
薬物リザーバの調製
18.00グラムの量のEUDRAGIT(登録商標)EPOを、14.53gの酢酸エチルに溶解した。結果として得られた溶液に、5.00グラムのクエン酸トリエチルを添加し、混合した。結果として得られた溶液に、5.25グラムのメマンチン塩酸塩粉末を添加し、均質化することによってよく分散させた後、2.50グラムのグリセリンを添加し、混合した。この薬物が分散された溶液に、1.75グラムのAEROSIL(登録商標)200Pを添加した後、分散混合物をよく均質化した。この均質化された分散体に、2.97グラムのDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、ラボコーター(Werner Mathisコーター)を使用することで乾燥させて、15mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0134】
接触用粘着剤の調製
3.00グラムの量のクエン酸トリエチルを、17.26グラムの酢酸エチルと混合した。4.00グラムのKOLLIDON(登録商標)CL-Mを添加した後、混合物を均質化した。この均質化された混合物に、25.74グラムの量のDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0135】
積層およびダイカット
CELGARD(登録商標)2400速度制御膜を、薬物リザーバに対して積層した。次いで、接触用粘着剤を、薬物リザーバと積層されたCELGARD(登録商標)2400膜の他方の側に対して積層した。薬物リザーバ上の剥離ライナーを、バッキングフィルムで置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
【0136】
in vitro皮膚フラックス試験
経皮システムからのメマンチンのin vitro皮膚フラックスを、実施例1に記載されているように測定した。ここでは、レセプター溶液から抜き取った試料中のメマンチン含有量を、メマンチンに関してLCMSを使用することで分析した。
図5は、メマンチンのin vitro皮膚フラックスプロファイルを示している。
【0137】
(実施例5~8)
追加的な経皮配合物
追加的な配合物を、表1に示した成分および量、ならびに実施例1に示した一般的方法に従って調製した。
図4は、下の表1において実施例番号7として特定される配合物に従って配合したドネペジルのフラックスプロファイル(丸)を示している。
【表1】
【0138】
多くの例示的態様および実施形態について上で考察してきたが、当業者であれば、ある特定の修正、並べ替え、追加、およびそれらの部分的組合せを認識するであろう。したがって、以下に添付される特許請求の範囲および下文にて導入される請求項は、すべてのそのような修正、並べ替え、追加、および部分的組合せを、それらの本来の趣旨および範囲内にあるものとして包含するように解釈されることが意図される。
【0139】
本明細書において言及されるすべての特許、特許出願、特許公開、および他の刊行物は、それらの全体がここに参照により援用される。特許、出願、または刊行物が特別な定義を含んでいる場合、別途指示のない限り、それらの定義は、それらが見出される援用される特許、出願、または刊行物に対して当てはまるものであり、本出願に対して当てはまるものではないことが理解されるべきである。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
経皮送達のための組成物であって、
塩形態の活性剤と、プロトン受容体および/またはプロトン供与体とを含む薬物リザーバ
を含む、組成物。
(項目2)
経皮送達のための組成物であって、
アミン塩形態の活性剤と、プロトン受容体とを含む薬物リザーバ
を含む、組成物。
(項目3)
前記活性剤が、ドネペジル、リバスチグミン、メマンチン、フィンゴリモド、またはタムスロシンである、項目1または項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記薬物リザーバが、約1%~約70%w/wの前記活性剤を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目5)
前記プロトン受容体が、プロトン受容型ポリマーである、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
前記プロトン受容体が、アミン官能化ポリスチレンミクロスフェアまたはジメチルアミノエチルメタクリレート系アクリレートである、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
前記薬物リザーバが、約0.5%~約35%w/wの前記プロトン受容体を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
経皮送達のための組成物であって、
酸塩形態の活性剤と、プロトン供与型ポリマーとを含む薬物リザーバ
を含む、組成物。
(項目9)
前記活性剤が、アレンドロン酸ナトリウム、トレプロスチニルナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ナプロキセンナトリウム、およびケトプロフェンナトリウムからなる群から選択される酸塩薬物である、項目8に記載の組成物。
(項目10)
前記薬物リザーバが、約5%~約35%w/wの前記活性剤を含む、項目8または項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記プロトン供与型ポリマーが、メタクリル酸に基づくアニオン性コポリマーまたはカルボキシル化ポリスチレンミクロスフェアである、項目8から10のいずれかに記載の組成物。
(項目12)
前記薬物リザーバが、約0.5%~約35%w/wの前記プロトン供与型ポリマーを含む、項目8から11のいずれかに記載の組成物。
(項目13)
水、アルコール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、およびN-メチルピロリドンからなる群から選択される塩形態可溶化剤をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目14)
前記薬物リザーバが、15%w/wまでの前記塩形態可溶化剤を含む、項目13に記載の組成物。
(項目15)
脂肪酸エステル、ジカルボン酸エステル、グリセロールエステル、ラクテート、脂肪アルコール、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、乳酸ラウリル、プロピレングリコールモノラウレート、コハク酸ジメチル、ラウリルアルコール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される中性形態可溶化剤をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目16)
前記薬物リザーバが、15%w/wまでの前記中性形態可溶化剤を含む、項目15に記載の組成物。
(項目17)
ジカルボン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステル、トリカルボン酸エステル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、グリセロールエステル、およびトリアセチンからなる群から選択される可塑剤をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目18)
前記薬物リザーバが、20%w/wまでの前記可塑剤を含む、項目17に記載の組成物。
(項目19)
クロスポビドンおよびコロイド状二酸化ケイ素からなる群から選択される添加剤をさらに含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目20)
前記薬物リザーバが、25%w/wまでの前記添加剤を含む、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記薬物リザーバが、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、およびスチレンブロックコポリマー系粘着剤からなる群から選択される粘着剤を含む、先行する項目のいずれかに記載の組成物。
(項目22)
薬物リザーバが、65%w/wまでの前記粘着剤を含む、項目21に記載の組成物。
(項目23)
先行する項目のいずれか一項に記載の組成物を含む薬物リザーバ層と、バッキング層と、接触用粘着剤層とを含む経皮パッチ。
(項目24)
前記バッキング層が、閉塞性ポリマーフィルムである、項目23に記載の経皮パッチ。(項目25)
前記接触用粘着剤層が、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、およびスチレンブロックコポリマー系粘着剤からなる群から選択される粘着剤を含む、項目23または項目24に記載の経皮パッチ。
(項目26)
前記薬物リザーバと前記接触用粘着剤層との間に、不織タイ層をさらに含む、項目23から25のいずれかに記載の経皮パッチ。
(項目27)
前記薬物リザーバ層と前記接触用粘着剤層との間に、速度制御膜をさらに含む、項目23から25のいずれかに記載の経皮パッチ。
(項目28)
前記パッチが、少なくとも2つの薬物リザーバ層を含む、項目23から27のいずれかに記載の経皮パッチ。
(項目29)
少なくとも2つの薬物リザーバ層が、不織タイ層によって分離されている、項目28に記載の経皮パッチ。
(項目30)
少なくとも2つの薬物リザーバ層が、速度制御膜によって分離されている、項目28または項目29に記載の経皮パッチ。
(項目31)
活性剤を経皮投与することを必要とする患者に対して活性剤を経皮投与する方法であって、それを必要とする患者に対して、項目1から22のいずれかに記載の組成物または項目23から30のいずれかに記載の経皮パッチを提供することを含む、方法。
(項目32)
アルツハイマー病、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害、ナルコレプシー、うつ病、不安障害、強迫性障害、オピオイド依存、良性前立腺肥大症、または急性尿閉を処置するための方法であって、それを必要とする患者に対して、項目1から22のいずれかに記載の組成物または項目23から30のいずれかに記載の経皮パッチを提供することを含む、方法。
(項目33)
前記患者の皮膚に対して、前記組成物または経皮パッチを投与することまたはそれを投与するように指示することをさらに含む、項目31または32に記載の方法。
(項目34)
前記投与することが、前記活性剤の治療有効血中濃度を達成する、項目31から33のいずれかに記載の方法。