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特開2022-140791感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置
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  • 特開-感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置 図1
  • 特開-感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置 図2
  • 特開-感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140791
(43)【公開日】2022-09-27
(54)【発明の名称】感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220915BHJP
【FI】
G01N33/53 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125453
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2020067922の分割
【原出願日】2016-06-06
(31)【優先権主張番号】201510398509.0
(32)【優先日】2015-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518006318
【氏名又は名称】シャンハイ イーブロット フォトエレクトリック テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI E-BLOT PHOTOELECTRIC TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room 708, Building 25, Lane 3399, Kangxin Road, Pudong New Area Shanghai 201318 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン インハオ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ヂーハオ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン クェァトゥァン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジャ
(57)【要約】
【課題】感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置を提供する。
【解決手段】対象光信号保有膜の発光面を感光性チップ(101)に密接させ、対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを暗室(102)に放置し、前記暗室内において感光性チップで光信号(103)を収集し、収集された光信号に対し信号処理を行い出力する(104)。感光性チップによる信号収集の方法と装置は、接触感光性チップで信号の収集を行い、光信号をデジタル信号に変換することにより、定量分析を確実に行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させ、
対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを暗室に放置し、前記暗室が外光からの影響を受けず、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集し、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力し、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するに当たって、
光信号を収集し、
コンピュータ画面で露出の程度をリアルタイムに観察し、
信号が予め設定された強度に蓄積されたとき露出を停止し、
露出で生成された画像を取得・保存し、
前記感光性チップで収集された信号がイムノブロットシグナルである場合、
まず、測定用タンパク質に電気泳動を行い、
ゲルにある測定用タンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜に移入し、
移入完了したポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜にブロッキングを行い、測定タンパク質を抗体として添加する一次抗体反応及びHRP添加の二次抗体反応を行わせ、
反応完了したポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜に化学発光溶液処理を行うことを通して、前記対象光信号保有膜を得るものであり、
前記感光性チップが0.5mm未満の厚さの透明保護層によって覆われており、
前記感光性チップで光信号を収集するに当たって全体の画像を同時に取得することを特徴とする感光性チップによる信号収集の方法。
【請求項2】
前記感光性チップがCMOS感光性チップ及びCCD感光性チップを含むことを特徴とする請求項1に記載の感光性チップによる信号収集の方法。
【請求項3】
対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させるための貼合モジュール、
対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを外光からの影響を受けない暗室に放置するためのセットモジュール、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するための信号収集モジュール、及び、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力するための信号処理モジュールを備えており、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するに当たって、
光信号を収集し、
コンピュータ画面で露出の程度をリアルタイムに観察し、
信号が予め設定された強度に蓄積されたとき露出を停止し、
露出で生成された画像を取得・保存し、
前記感光性チップで収集された信号がイムノブロットシグナルである場合、
まず、測定用タンパク質に電気泳動を行い、
ゲルにある測定用タンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜に移入し、
移入完了したポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜にブロッキングを行い、測定タンパク質を抗体として添加する一次抗体反応及びHRP添加の二次抗体反応を行わせ、
反応完了したポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜に化学発光溶液処理を行うことを通して、前記対象光信号保有膜を得るものであり、
前記感光性チップが0.5mm未満の厚さの透明保護層によって覆われており、
前記感光性チップで光信号を収集するに当たって全体の画像を同時に取得することを特徴とする感光性チップによる信号収集の装置。
【請求項4】
ルシフェラーゼ保有細胞を感光性チップに載置し、
ルシフェラーゼ保有細胞が載置された感光性チップを暗室に放置し、前記暗室が外光からの影響を受けず、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集し、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力することを特徴とする感光性チップによる細胞追跡の方法。
【請求項5】
ルシフェラーゼ保有細胞を感光性チップに載置するための載置モジュール、
ルシフェラーゼ保有細胞が載置された感光性チップを外光からの影響を受けない暗室に放置するためのセットモジュール、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するための信号収集モジュール、及び、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力するための信号処理モジュールを備えることを特徴とする感光性チップによる細胞追跡の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報収集技術分野に関し、特に感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェスタンブロッティング(Western blotting)は高解像度ゲル電気泳動と免疫化学分析技術とを組み合わせたハイブリダイゼーション技術である。ウェスタンブロッティングは、大容量分析や高感度、強い特異性などの利点があり、タンパク質の特徴、発現及び分布を検出するために最も一般的に使用される方法の1つである。例えば、組織抗原の定性的・定量的検出やポリペプチド分子量測定、ウイルス抗体または抗原の検出などが挙げられる。
【0003】
従来のウェスタンブロッティング(Western blotting)信号を収集するための装置と方法は次のようなものがある。
【0004】
方法一:感光性フィルムとNC膜を密接にし、一定の時間露出してから、現像・定着を行う。画像は膜に表示される。利点は高感度、高解像度であるが、次の欠点がある。
1.広いスペース:専用暗室(部屋)やシンク、下水道を必要とする。
2.高いコスト:現像機、暗箱を購入する必要があるだけでなく、大量の感光性フィルムや現像液、定着液などの消耗品を必要とする。また、現像のために水資源の無駄も生じる。
3.環境汚染:現像のために大量の現像液、定着液を必要とする。不適格な品質により廃棄された膜も発生する。これらのものは重金属や芳香族化合物などの汚染につながる。
4.安定していない画質:暗室内において、研究者はリアルタイムで露出を監視できなく、多くの場合、良い画像を得るためにいくつかの試みを行えざるを得ない。露出アンダーや露出オーバーがしばしば起こり、時間と労力を要する。
5.時間を費やすこと:現在、データの保存、送信、公表は一般的にデジタル化となるので、フィルム画像の場合、スキャンでデジタル画像に変換する必要がある。
6.不正確な定量:ほとんどの場合、研究者が目視で良いと判断した画像は、グレースケールで過飽和状態であったため、グレースケールスキャンで正確に定量化するのが難しい。
【0005】
方法二:CCDなどの感光装置で直接サンプルの写真を撮る。利点:方法一のすべての欠点を克服できる。欠点:膜による収集の利点がなくなり、即ち、感度が著しく低下した。原因:現在、市場にあるすべてのこのような機器は、NC膜から所定の距離離れたところでCCDデジタルカメラを設置し写真を撮る。光放射による光エネルギーが、ある小さな角度に収まる光しかカメラによって収集されない。90%以上のエネルギーが損失した。従って、このような機器は一般的に高照度撮影に使用される。WBの低照度撮影に使用可能と宣伝するブランドがほんの一握りである。しかし、膜に比べて、その露出時間が大幅に延長した。また、ビニングという方法で感度を高めるために、解像度を下げることにより、膜と同じ感度に達したブランドもあるが、画像を少し拡大するとモザイクが現れ、幅広いニーズに応えることが難しい。
【0006】
方法三:線状に配列されたCCD感光ユニットで微光信号をスキャン・収集する。利点:光信号の収集率を向上させることにより、感度を高めた。欠点:リニアスキャンで光信号を収集するので、画像全体を同時に収集することができなく、異なる領域でのスキャンに時間差がある。また、時間が経つにつれて光源が絶えず減衰しているので、異なる時点で収集された信号強度は比較可能性もない。従って、多くの対照試験では比較を行えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当業者には当面の急務として、従来技術の問題を解決し実際の使用における多くのニーズを満たすために、効果的な対策を革新的に提案する。
【0008】
本発明が解決しようとする技術的な問題は、測定する光信号をデジタル信号に変換することにより、すばやく定量分析を行う感光性チップによる信号収集の方法及び細胞追跡の方法を提供することである。また、上記の方法の実現と応用のために、本発明の実施形態で感光性チップによる信号収集の装置及び細胞追跡の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る感光性チップによる信号収集の方法は、対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させ、
対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを暗室に放置し、前記暗室が外光からの影響を受けず、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集し、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力する方法である。
【0010】
好ましくは、前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するに当たって、
光信号を収集し、
コンピュータ画面で露出の程度をリアルタイムに観察し、
信号が予め設定された強度に蓄積されたとき露出を停止し、
露出で生成された画像を取得・保存する。
【0011】
好ましくは、前記感光性チップで収集された信号がイムノブロットシグナルである場合、
まず、測定用タンパク質に電気泳動を行い、
電気泳動を行ったゲルにタンパク質移入を行い、
ゲルにある測定用タンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜に移入し、
移入完了したポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜にブロッキングを行い、測定タンパク質を抗体として添加する一次抗体反応及びHRP添加の二次抗体反応を行わせ、
反応完了したポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜に化学発光溶液処理を行うことを通して、前記対象光信号保有膜を得る。
【0012】
好ましくは、前記膜がニトロセルロース膜及び/又はポリビニリデンジフルオリド膜を含む。
【0013】
好ましくは、前記感光性チップがCMOS感光性チップ及びCCD感光性チップを含む。
【0014】
本発明に係る感光性チップによる信号収集の装置は、対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させるための貼合モジュール、
及び対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを外光からの影響を受けない暗室に放置するためのセットモジュール、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するための信号収集モジュール、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力するための信号処理モジュールを備える。
【0015】
本発明に係る感光性チップによる細胞追跡の方法は、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を感光性チップに植え付け(載置し:なお、以下の記載において「植え付け」は載置することを意味する)、ルシフェラーゼ保有細胞または動物が植え付けられた感光性チップを暗室に放置し、前記暗室が外光からの影響を受けず、前記暗室内において感光性チップで光信号を収集し、収集された光信号に対し信号処理を行い出力する方法である。
【0016】
好ましくは、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を感光性チップに植え付ける前に、感光性チップにガラス層を追加することにより、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を感光性チップのガラス層に植え付ける。
【0017】
好ましくは、標的プロモーターの特異的断片をルシフェラーゼ発現配列の前に挿入するレポーター遺伝子プラスミドを構築し、
調節配列とルシフェラーゼ遺伝子プラスミドを細胞または動物の受精卵内に同時トランスフェクションし、
ルシフェリンを細胞培地に添加することを通して、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を得る。
【0018】
本発明に係る感光性チップによる細胞追跡の装置は、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を感光性チップに植え付けるための植付けモジュール、
及びルシフェラーゼ保有細胞または動物が植え付けられた感光性チップを外光からの影響を受けない暗室に放置するためのセットモジュール、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するための信号収集モジュール、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力するための信号処理モジュールを備える。
【発明の効果】
【0019】
従来技術に比べて、本発明の良好な効果として、本発明は対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させ、対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを暗室に放置し、前記暗室が外光からの影響を受けず、前記暗室内において感光性チップで光信号を収集し、収集された光信号に対し信号処理を行い出力することを通して、感光性チップと直接接触し信号収集を行い、画像全体を同時に収集でき、光信号の損失を最小限に抑え、解像度を下げることなくても感度を高めることを実現できる。このように、背景技術における3つの方法のすべての利点を保持するだけでなく、それぞれの欠点を避ける。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の実施例または従来技術の技術的な解決策をより明確に説明するために、以下実施例または従来技術の説明において使用される図面について簡単な説明を行う。明らかにこれらの添付図面は本発明の実施例に過ぎなく、当業者には、創造的な努力なしに、当然本発明のこれらの添付図面に基づいて、他の図面を得ることができる。
図1】本発明に係る感光性チップによる信号収集の方法の流れ概要図である。
図2】本発明に係る感光性チップによる信号収集の装置の構造概要図である。
図3】本発明に係る感光性チップによる細胞追跡の方法の流れ概要図である。
図4】本発明に係る感光性チップによる細胞追跡の装置の構造概要図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、以下、添付する図面を参照し本発明の実施形態についてさらに説明する。明らかに、記載された実施形態は、本発明の実施形態の一部であり、そのすべてではない。本発明の実施形態に基づいて、創作努力をしないで当業者によって得られる他の全ての実施形態は、本発明の保護範囲内に入るものとする。
【0022】
実施形態一
本発明の実施形態で提供する感光性チップによる信号収集の方法について詳しく説明する。
【0023】
図1に示すように、本発明に係る感光性チップによる信号収集の方法の実施形態は、以下の手順が含まれてもよい。
【0024】
手順101は、対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させる。
【0025】
実際の応用では、感光性チップで収集された信号がイムノブロットシグナルである場合、
まず、測定用タンパク質に電気泳動を行い、
電気泳動を行ったゲルにタンパク質移入を行い、
ゲルにある測定用タンパク質をポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜に移入し、
移入完了したポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜にブロッキングを行い、測定タンパク質を抗体として添加する一次抗体反応及びHRP添加の二次抗体反応を行わせ、
反応完了したポリビニリデンジフルオリド膜またはニトロセルロース膜に化学発光溶液処理を行うことを通して、前記対象光信号保有膜を得る。
【0026】
応用において、使用される膜は主にニトロセルロース膜(NC膜)及び/又はポリビニリデンジフルオリド膜(PVDF膜)である。使用される感光性チップはCMOS感光性チップ及びCCD感光性チップなどを含む。大きいサイズの感光性チップは製造コストが高いことに鑑みて、実際の応用ではチップスプライシング技術を使用すると、より良い結果が得られ、コストも大幅に削減されるので、CMOS光感受性チップアレイまたはCCD光感受性チップアレイであってもよい。
【0027】
手順102は、対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを外光からの影響を受けない暗室に放置する。
【0028】
外光からの影響を受けないために、対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを暗い環境に放置する必要があるが、条件に応じて実施することもでき、容易に実現できる。例えば、遮光蓋を掛けてもよい。
【0029】
手順103は、前記暗室内において感光性チップで光信号を収集する。
【0030】
実際の応用では、前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するに当たって、
光信号を収集し、
コンピュータ画面で露出の程度をリアルタイムに観察し、
信号が予め設定された強度に蓄積されたとき露出を停止し、
露出で生成された画像を取得・保存する。
【0031】
手順104は、収集された光信号に対し信号処理を行い出力する。
【0032】
応用において、ワンチップコンピュータやFPGA、CPUなどのプロセッサで収集された光信号に対し信号処理を行い出力してもよい。現在、信号処理の方法は非常に成熟しており、それに、いずれの方法で本実施形態における信号処理に対応できるので、いちいちくどくどと述べる必要はない。
【0033】
以下、実際の応用を踏まえて、感光性チップによるイムノブロットシグナル(WB信号)の収集について詳しく説明する。
【0034】
1.電界で細胞または組織抽出物をポリプロピレンゲル上で縦方向に分離する(左図に示すように。下図はこの手順の流れである)。
2.電解でタンパク質バンドを横方向にニトロセルロース膜(NC膜)に移入し、バンドの相対位置が変化しない。これはブロットと呼ばれる(Blot)。
3.ブロッキング。ブロットした膜を、ウシ血清アルブミン(BSA)溶液に浸漬し、BSAでタンパク質バンドの非占有領域を占有することにより、その後の抗体がこれらの領域に吸着されるのを避け、抗体がその抗原にのみ結合するようになる。
4.抗体インキュベーション。抗体は、予め西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とヒンジする。抗体とNC膜を一緒に浸漬しインキュベーションをする。抗体とその抗原が特異的に結合する。
5.信号収集。NC膜をHRP基質を含む液体に浸漬する。HRPは基質を触媒するときに蛍光を放出する。感光性フィルムまたは電子光感受性システムで蛍光信号を収集する。
【0035】
WB光信号を収集するまでの手順:
(1)タンパク質サンプルの調製:細菌の発現誘導後、プロテインゲルローディングバッファーで細胞を直接溶解し、真核細胞に均質化緩衝液を加え、室温で機械的または超音波により0.5~1min均質化を行う。そして、4℃で、13,000gに15min遠心分離を行う。上澄み液をサンプルとする。
(2)電気泳動:電気泳動ゲルを調製し、SDS-PAGEを行う。
(3)移入:(1)電気泳動後、ゲルバンドを適切なサイズに切断し、ブロッティングバッファーで平衡化し、5min×3回繰り返す。(2)膜処理:予めゲルバンドと同じサイズの濾紙とNC膜を用意し、ブロッティングバッファーに10min浸漬する。(3)ブロッティング:ブロッティング装置は下から上へ陽極炭素板、24層の濾紙、NC膜、ゲル、24層の濾紙、陰極炭素板の順番に配置し、濾紙、ゲル、NC膜を正確に位置合わせし、ステップごとに気泡を除去し、上から500gの重りをかけて、炭素板にある余分な液体を乾かす。電源を入れ、1mA/cm2の定電流で1.5hr移入する。移入終了後、電源を切り、膜を取り出し、測定する膜バンドをカットしウェスタンブロッティングをする。タンパク質標準のあるバンドを染色し、膜染色液に50s浸漬してから、背景がはっきりするまで繰り返し50%メタノールで脱色する。そして、二重蒸留水で洗浄し、風乾してから2枚の濾紙の間に挟んで、呈色との比較に使用する。
(4)免疫反応:膜を0.01M PBSTで洗浄し、5min×3回繰り返す。
ブロッキング液を加え、スムーズに振り、室温で1hr静置する。
コーティング液を捨て、膜を0.01M PBSTで洗浄し、5min×3回繰り返す。
一次抗体(適切な希釈比で0.01M PBSで希釈し、液体は膜全体をカバーする必要がある)を加え、4℃で12hr以上静置する。ネガティブコントロールを行い、一次抗体を1%BSAに置換し、その他の手順は実験グループと同じである。
一次抗体と1%BSAを捨て、それぞれ0.01M PBSで膜を洗浄し、5min×4回繰り返す。
西洋ワサビペルオキシダーゼ結合の二次抗体(適切な希釈比で0.01M PBSTで希釈する)を加え、スムーズに振り、室温で2hr静置する。
二次抗体を捨て、0.01M PBSTで膜を洗浄し、5min×4回繰り返す。
化学発光溶液で膜を処理し、HRPは液体中の化学基質を触媒し蛍光を放出する。
【0036】
デジタル感光性チップを直接膜に貼り付ける方法で蛍光信号を収集する手順:
化学発光溶液に浸漬されている膜を取出し、吸収紙で余分な液体を吸収してから、膜の発光面をデジタル感光性チップに貼り付ける。
平らな物体で膜を押さえつけ、デジタル感光性チップに密接させる。
蓋を締め、デジタル感光性チップと膜を暗い環境に放置し、外光による汚染を避ける。
コンピュータで感光性チップを制御し、化学発光信号を収集し始める。コンピュータ画面で露出の程度をリアルタイムに観察し、信号が適切な強度に蓄積されたとき露出を停止する。
露出で生成された画像を取得・保存し、その画像を定性的・定量的分析に使用することができる。
【0037】
本実施形態では、接触感光性チップで信号の収集を行い、光信号をデジタル信号に変換することにより、定量分析を確実に行う。
【0038】
実施形態二
本発明の実施形態で提供する感光性チップによる信号収集の装置について詳しく説明する。
【0039】
図2に示すように、本発明に係る感光性チップによる信号収集の装置は、対象光信号保有膜の発光面を感光性チップに密接させるための貼合モジュール201、
及び対象光信号保有膜が貼り付けられた感光性チップを外光からの影響を受けない暗室に放置するためのセットモジュール202、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するための信号収集モジュール203、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力するための信号処理モジュール204を備える。
【0040】
装置の実施形態について、方法の実施形態に類似するので、説明は比較的簡単であり、関連する部分については、方法の実施形態の説明を参照すればよい。
【0041】
実施形態三
本発明の実施形態で提供する感光性チップによる細胞追跡の方法について詳しく説明する。
【0042】
図3に示すように、本発明に係る感光性チップによる細胞追跡の方法の実施形態は、以下の手順が含まれてもよい。
【0043】
手順301は、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を感光性チップに植え付ける。
【0044】
通常、感光性チップには透明保護層またはガラス層または樹脂層またはその他の材料で覆われ、保護層の厚さが通常、0.5mm未満である。
【0045】
実際の応用では、追跡の効果及び感光性チップの再利用に鑑みて、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を感光性チップに植え付ける前に、感光性チップにガラス層を追加することにより、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を感光性チップのガラス層に植え付けることができる。このように、ポストクリーニングがより便利になる。
【0046】
感光性チップを使用したが発光モジュールを備えていない機器について、通常、自己発光能力のある細胞や小動物(線虫やショウジョウバエなど)を作ろうとする。ルシフェラーゼ遺伝子の移入で、細胞や動植物が自己発光能力を生み出す方法は一般的に用いられている。
【0047】
ルシフェラーゼ(Luciferase)はホタルの尾で発生するタンパク質であり、ATPの存在下で、ルシフェリン(luciferin)と酸素との反応を触媒し蛍光を放出することができる。バイオエンジニアリングの手法で、ルシフェラーゼの遺伝子及び転写を調節するためのDNA配列をともに細胞や動植物の体内に移入し、宿主の染色体に組み込む。宿主により発現される、特別な構造、及び遺伝子発現を調節する機能を持つタンパク質分子を、転写を調節するDNA配列に特異的に結合することにより、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を増強する役割を果たす。
【0048】
ルシフェラーゼ保有細胞または動物を得る手順:
標的プロモーターの特異的断片をルシフェラーゼ発現配列の前に挿入するレポーター遺伝子プラスミドを構築し、例えば、pGL3-basicなど、
調節配列とルシフェラーゼ遺伝子プラスミドを細胞または動物の受精卵内(トランスジェニック動物)に同時トランスフェクションし、
ルシフェリンを細胞培地に添加し、ルシフェラーゼは、細胞内のATPでエネルギーを提供し、ルシフェリンと酸素との反応を触媒し蛍光を放出する。このように、機器で細胞または動物の移動軌跡を追跡できる。この方法は動物行動学の実験に適用できる。
【0049】
手順302は、ルシフェラーゼ保有細胞または動物が植え付けられた感光性チップを外光からの影響を受けない暗室に放置する。
【0050】
手順303は、前記暗室内において感光性チップで光信号を収集する。
【0051】
手順304は、収集された光信号に対し信号処理を行い出力する。
【0052】
実施形態四
本発明の実施形態で提供する感光性チップによる細胞追跡の装置について詳しく説明する。
【0053】
図4に示すように、本発明に係る感光性チップによる細胞追跡の装置は、ルシフェラーゼ保有細胞または動物を感光性チップに植え付けるための植付けモジュール401、
及びルシフェラーゼ保有細胞または動物が植え付けられた感光性チップを外光からの影響を受けない暗室に放置するためのセットモジュール402、
前記暗室内において感光性チップで光信号を収集するための信号収集モジュール403、
収集された光信号に対し信号処理を行い出力するための信号処理モジュール404を備える。
【0054】
本発明の解決策は、イムノブロットシグナルの収集、液滴アレイにおける微光の強度の監視・比較、感光性チップに植え付けられた細胞の移動・分裂の観察、及び分子発現の動的プロセスの観察などに広く使用することができる。
【0055】
説明する必要があるのは、方法の実施形態について、説明を容易にするために一連の操作の組み合わせとして記述されているが、当業者であれば、本発明の実施形態は、記載された操作の順序によって限定されていないことを理解すべきである。それは本発明の実施形態によれば、一部の手順は、他の順序で、または同時に実行されてもよい。また、当業者であれば、本明細書に記載された実施形態は、好ましい実施形態に属し、関連する操作が本発明の実施形態では必ずしも必要ではないことも理解すべきである。
【0056】
装置の実施形態について、方法の実施形態に類似するので、説明は比較的簡単であり、関連する部分については、方法の実施形態の説明を参照すればよい。
【0057】
本明細書の各実施形態は、漸進的に記載されており、他の実施形態との相違点に焦点を合わせ、各実施形態間で同じまたは類似の部分について、互いに参照すればよい。
【0058】
以上は本発明に係る感光性チップによる信号収集の方法と装置、及び細胞追跡の方法と装置について詳しく説明し、本発明の原理および実施形態を説明するために、特定の例をあげたが、単に本発明の方法およびコアアイデアを理解するのに役立つものである。当業者には、本発明の概念に基づいて、具体的な実施形態および適用範囲においては変化があるので、本明細書は本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4