(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140887
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】セルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法及び減圧ベルト乾燥機
(51)【国際特許分類】
C08B 15/00 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
C08B15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040933
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】小野木 晋一
(72)【発明者】
【氏名】村松 利一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健
【テーマコード(参考)】
4C090
【Fターム(参考)】
4C090AA04
4C090AA06
4C090BA24
4C090BB02
4C090BB12
4C090BB33
4C090BB36
4C090BB52
4C090BC01
4C090BC15
4C090BC27
4C090BD19
4C090CA04
4C090CA19
4C090CA33
4C090DA26
4C090DA27
4C090DA31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セルロースナノファイバーの分散液を乾燥してセルロースナノファイバーの濃縮・乾燥品を製造する方法、及びこの製造方法に使用する減圧ベルト乾燥機を提供する。
【解決手段】減圧槽4内に、無端搬送ベルト6と、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って加熱領域および冷却領域を順次配設してなり、セルロースナノファイバー分散液7を低温乾燥して濃縮・乾燥品を得るための減圧ベルト乾燥機2を用いて実行されるセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧槽内に、無端搬送ベルトと、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って加熱領域および冷却領域を順次配設してなり、セルロースナノファイバー分散液を低温乾燥して濃縮・乾燥品を得るための減圧ベルト乾燥機を用いて実行されるセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法であって、
前記減圧ベルト乾燥機は、前記無端搬送ベルトの前記加熱領域の上流側に設けられた、前記セルロースナノファイバー分散液を供給する直径1mm以上、8mm以下のノズルと、前記減圧槽内を減圧雰囲気にする減圧装置とを備え、
前記加熱領域は、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って、加熱プレートを備え、
直径1mm以上、8mm以下の前記ノズルから、定速で移動する前記無端搬送ベルト上に、前記セルロースナノファイバー分散液をストランド状又は粒状に供給する供給工程と、
前記無端搬送ベルト上に供給された前記セルロースナノファイバー分散液を、前記加熱領域で乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥した濃縮・乾燥品を、前記冷却領域で冷却する冷却工程とを含むセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
【請求項2】
前記セルロースナノファイバー分散液は、固形分100重量部の内、セルロースナノファイバーを固形分で99.9重量部以上含み、
前記乾燥工程は、前記加熱プレートを温度80~130℃として前記セルロースナノファイバー分散液を固形分濃度10~20重量%まで乾燥させる請求項1記載のセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
【請求項3】
前記供給工程において供給する前記セルロースナノファイバー分散液のpHを9~11に調整する工程を含み、
前記セルロースナノファイバー分散液は、セルロースナノファイバーの固形分100重量部に対して水溶性高分子を固形分で5~300重量部含み、
前記乾燥工程は、前記加熱プレートを温度80~130℃として前記セルロースナノファイバー分散液を乾燥固形物となるまで乾燥させる請求項1記載のセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
【請求項4】
減圧槽内に、無端搬送ベルトと、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って加熱領域および冷却領域を順次配設してなり、セルロースナノファイバー分散液を低温乾燥して濃縮・乾燥品を得るための減圧ベルト乾燥機を用いて実行されるセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法であって、
前記減圧ベルト乾燥機は、前記無端搬送ベルトの前記加熱領域の上流側に設けられた、前記セルロースナノファイバー分散液を供給する直径1mm以上、8mm以下のノズルと、前記減圧槽内を減圧雰囲気にする減圧装置とを備え、
前記加熱領域は、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って、マイクロ波発生装置を備え、
直径1mm以上、8mm以下の前記ノズルから、定速で移動する前記無端搬送ベルト上に、前記セルロースナノファイバー分散液をストランド状又は粒状に供給する供給工程と、
前記無端搬送ベルト上に供給された前記セルロースナノファイバー分散液を、前記加熱領域で乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥した濃縮・乾燥品を、前記冷却領域で冷却する冷却工程とを含むセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
【請求項5】
減圧槽内に、無端搬送ベルトと、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って加熱領域および冷却領域を順次配設してなり、セルロースナノファイバー分散液を低温乾燥して濃縮・乾燥品を得るための減圧ベルト乾燥機であって、
前記無端搬送ベルトの前記加熱領域の上流側に設けられた、前記セルロースナノファイバー分散液を供給する直径1mm以上、8mm以下のノズルと、
前記減圧槽内を減圧雰囲気にする減圧装置とを備え、
前記加熱領域は、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って、加熱手段を備える減圧ベルト乾燥機。
【請求項6】
前記加熱手段は、加熱プレートである請求項5記載の減圧ベルト乾燥機。
【請求項7】
前記加熱手段は、マイクロ波発生装置である請求項5記載の減圧ベルト乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースナノファイバー(以下「CNF」ともいう)の分散液を乾燥してセルロースナノファイバーの濃縮・乾燥品を製造する方法、及びこの製造方法に使用する減圧ベルト乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にCNFは水に安定的に分散させた状態で製造され、通常は製造された所定濃度のCNF分散液のまま工業材料あるいは食品や化粧品の添加物材料として各種用途に使用されている。
そして、このCNFの状態を安定的に保つためには、CNFの数十倍程度の水分が必要になり、この水分の多さがCNFの包装、保管、輸送等のコストアップにつながるため、該水分の減少(濃縮)と除去(乾燥)がCNFの普及を図る上で欠かすことのできない技術とされていた。
【0003】
一方、CNF分散液を濃縮・乾燥して得られたCNF濃縮・乾燥品を使用するには、水に再分散させて再び使用に適した所定濃度のCNF再分散液に調製しなければならないが、調製したCNF再分散液が濃縮・乾燥前のCNF分散液の透明度や粘度特性(チキソトロピー性)を大きく下回るようでは、上記各種用途にCNF再分散液を使用できなくなってしまう。
【0004】
そこで、上記CNF再分散液の透明度および粘度特性を乾燥前のCNF分散液の透明度および粘度特性と同等程度まで高めるための技術について、下記の特許文献1で検討がされている。
【0005】
具体的には、特許文献1にはCNF分散液を、ドラム乾燥機を用いて乾燥固形物とする技術が開示されている。また、この技術を実行することにより、水に再分散させて得られた再分散液の透明度や粘度などの物性が、乾燥前のCNF分散液と比較して変化が少ない特性(再分散性)を有するCNF乾燥固形物が得られたとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1で得られたCNF乾燥固形物を水に再分散して得られた再分散液の透明度や粘度などの物性は、乾燥前のCNF分散液の透明度や粘度などの物性と比較して変化が大きく、再分散性は十分ではなかった。したがって、CNF濃縮・乾燥品を水に再分散したCNF分散液の透明度や粘度などの物性が、乾燥前のCNF分散液と比較して、より変化が少ない特性(再分散性)を有するCNF濃縮・乾燥品を得ることができる乾燥装置および製造方法が求められていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、CNF分散液を濃縮・乾燥してCNF濃縮・乾燥品を製造し、その後再分散させてCNF再分散液を生成するに際して、濃縮・乾燥前のCNF分散液と同等程度の透明度および粘度特性を有する再分散液を生成することが可能なCNF濃縮・乾燥品を得ることができるセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法を提供すること、及び、この製造方法に適した減圧ベルト乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、減圧下でCNF分散液を低温乾燥させることが可能な減圧ベルト乾燥機であって、特定の直径を有するノズルを備えるものを用いることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、以下を提供する。
(1) 減圧槽内に、無端搬送ベルトと、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って加熱領域および冷却領域を順次配設してなり、セルロースナノファイバー分散液を低温乾燥して濃縮・乾燥品を得るための減圧ベルト乾燥機を用いて実行されるセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法であって、前記減圧ベルト乾燥機は、前記無端搬送ベルトの前記加熱領域の上流側に設けられた、前記セルロースナノファイバー分散液を供給する直径1mm以上、8mm以下のノズルと、前記減圧槽内を減圧雰囲気にする減圧装置とを備え、前記加熱領域は、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って、加熱プレートを備え、直径1mm以上、8mm以下の前記ノズルから、定速で移動する前記無端搬送ベルト上に、前記セルロースナノファイバー分散液をストランド状又は粒状に供給する供給工程と、前記無端搬送ベルト上に供給された前記セルロースナノファイバー分散液を、前記加熱領域で乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥した濃縮・乾燥品を、前記冷却領域で冷却する冷却工程とを含むセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
(2) 前記セルロースナノファイバー分散液は、固形分100重量部の内、セルロースナノファイバーを固形分で99.9重量部以上含み、前記乾燥工程は、前記加熱プレートを温度80~130℃として前記セルロースナノファイバー分散液を固形分濃度10~20重量%まで乾燥させる(1)記載のセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
(3) 前記供給工程において供給する前記セルロースナノファイバー分散液のpHを9~11に調整する工程を含み、前記セルロースナノファイバー分散液は、セルロースナノファイバーの固形分100重量部に対して水溶性高分子を固形分で5~300重量部含み、前記乾燥工程は、前記加熱プレートを温度80~130℃として前記セルロースナノファイバー分散液を乾燥固形物となるまで乾燥させる(1)記載のセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
(4) 減圧槽内に、無端搬送ベルトと、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って加熱領域および冷却領域を順次配設してなり、セルロースナノファイバー分散液を低温乾燥して濃縮・乾燥品を得るための減圧ベルト乾燥機を用いて実行されるセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法であって、前記減圧ベルト乾燥機は、前記無端搬送ベルトの前記加熱領域の上流側に設けられた、前記セルロースナノファイバー分散液を供給する直径1mm以上、8mm以下のノズルと、前記減圧槽内を減圧雰囲気にする減圧装置とを備え、前記加熱領域は、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って、マイクロ波発生装置を備え、直径1mm以上、8mm以下の前記ノズルから、定速で移動する前記無端搬送ベルト上に、前記セルロースナノファイバー分散液をストランド状又は粒状に供給する供給工程と、前記無端搬送ベルト上に供給された前記セルロースナノファイバー分散液を、前記加熱領域で乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥した濃縮・乾燥品を、前記冷却領域で冷却する冷却工程とを含むセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法。
(5) 減圧槽内に、無端搬送ベルトと、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って加熱領域および冷却領域を順次配設してなり、セルロースナノファイバー分散液を低温乾燥して濃縮・乾燥品を得るための減圧ベルト乾燥機であって、前記無端搬送ベルトの前記加熱領域の上流側に設けられた、前記セルロースナノファイバー分散液を供給する直径1mm以上、8mm以下のノズルと、前記減圧槽内を減圧雰囲気にする減圧装置とを備え、前記加熱領域は、前記無端搬送ベルトの移動方向に沿って、加熱手段を備える減圧ベルト乾燥機。
(6) 前記加熱手段は、加熱プレートである(5)記載の減圧ベルト乾燥機。
(7) 前記加熱手段は、マイクロ波発生装置である(5)記載の減圧ベルト乾燥機。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、濃縮・乾燥前のCNF分散液と同等程度の透明度および粘度特性を有する再分散液を生成することが可能なCNF濃縮・乾燥品を得ることができるセルロースナノファイバー濃縮・乾燥品の製造方法、及びこの製造方法に適した減圧ベルト乾燥機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の減圧ベルト乾燥機の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の減圧ベルト乾燥機について説明する。なお、本発明の減圧ベルト乾燥機は、
図1に示すものに限られるものではない。また、本発明において「~」は端値を含む。すなわち「X~Y」はその両端の値XおよびYを含む。
【0014】
図1に示す減圧ベルト乾燥機2は、内部を減圧することが可能な減圧槽4、減圧槽4内に設置された無端搬送ベルト6、無端搬送ベルト6上に設置されたセルロースナノファイバー(CNF)分散液7を供給するノズル8、CNF分散液7を加熱する加熱手段であって、無端搬送ベルト6の下面にその移動方向に沿って配設された第1加熱プレート10a、第2加熱プレート10b、第3加熱プレート10c、さらにその下流に配設され、チラーユニット12から供給される冷水によって濃縮・乾燥品を冷却する冷却プレート14、冷却された濃縮・乾燥品を受け入れる受入部16、受入部16から払い出された濃縮・乾燥品を回収する回収部18を備えている。ここで、加熱プレート10a、10b、10cは、膨張タンク20、ポンプ22、熱交換器24からなる熱水発生装置26から送られた熱水を熱媒としている。減圧槽4内は、コールドトラップ28aおよび真空ポンプ28bからなる真空発生装置28によって、運転中は減圧されている。
【0015】
ノズル8の直径としては、均一に十分に乾燥する観点から、直径1mm以上8mm以下、好ましくは直径1mm以上4mm以下、より好ましくは直径1mm以上2.5mm以下である。
【0016】
ノズル8から無端搬送ベルト6上に供給されたCNF分散液7は、無端搬送ベルト6の移動に伴って、加熱領域を構成する第1加熱プレート10a、第2加熱プレート10b、第3加熱プレート10c、ならびに冷却領域を構成する冷却プレート14上を順次通過し、所定の乾燥処理を施される。なお、加熱プレートの温度は、個別に設定可能であり、加熱プレート10a、10b、10cをすべて同じ温度となるように設定しても良いし、第1加熱プレート10a、第2加熱プレート10b、第3加熱プレート10cの順に温度を低下させるように設定しても良い。
【0017】
所定の乾燥処理を施された結果、得られたCNF濃縮・乾燥品は、無端搬送ベルト6の下流端まで到達すると、下方に落下し、受入部16に受け入れられる。受入部16に受け入れられた濃縮・乾燥品は、ダブルダンパ機構により減圧状態が解除され、回収部18に払い出される。
【0018】
無端搬送ベルト6の表面は、濃縮・乾燥品がベルトから剥離しやすくなる観点から、CNF分散液7が接する面に対して、フッ素樹脂加工を施したものであってもよい。
【0019】
なお、受入部16は、得られた濃縮・乾燥品を粉砕する機構を有するものであってもよい。
【0020】
また、上述の実施形態では、加熱手段が第1から第3までの複数個の加熱プレートにより構成される例として説明したが、加熱手段が、単独の加熱プレートにより構成されるものであってもよい。
【0021】
さらに、上述の実施形態では、加熱手段として加熱プレートを用いているが、本発明の減圧ベルト乾燥機は、加熱手段として加熱プレートに代えて、単独または複数個のマイクロ波発生装置を用いたものであってもよい。
【0022】
次に、本発明の減圧ベルト乾燥機を用いたCNF濃縮・乾燥品の製造方法について説明する。
【0023】
本発明の減圧ベルト乾燥機を用いて実行されるCNF濃縮・乾燥品の製造方法は、直径1mm以上、8mm以下のノズル8から、定速で移動する無端搬送ベルト6上に、CNF分散液7をストランド状又は粒状に供給する供給工程と、無端搬送ベルト6上に供給されたCNF分散液7を、加熱領域で乾燥する乾燥工程と、乾燥工程で乾燥した濃縮・乾燥品を、冷却領域で冷却する冷却工程とを含む。
【0024】
(供給工程)
供給工程では、直径1mm以上、8mm以下のノズル8から、減圧槽4内に設置された、定速で移動する無端搬送ベルト6上に、CNF分散液7をストランド状又は粒状に供給する。無端搬送ベルト6の移動速度は、特に限定されないが、乾燥効率の観点から5~30cm/分、より好ましくは9~24cm/分である。また減圧槽4の気圧は、真空発生装置28により、例えば、好ましくは0~20kPa、より好ましくは1.5~10kPa減圧されている。CNF分散液7の供給形態は、ムラなく乾燥できる観点からストランド状又は粒状が好ましく、効率の観点からストランド状がより好ましい。
【0025】
(乾燥工程)
乾燥工程における乾燥温度は、乾燥効率の観点から、加熱プレートの温度を80~130℃とすることが好ましく、80~100℃とすることがより好ましく、80~90℃とすることがさらに好ましい。また、乾燥工程においては、CNF分散液7がCNFを固形分で99.9重量%以上含む場合は、CNF分散液7の固形分濃度が10~20重量%となるまで乾燥させることが好ましく、10~15重量%となるまで乾燥させることがより好ましい。
【0026】
また、CNF分散液7が水溶性高分子を含む場合は、乾燥固形物となるまで乾燥させることができる。CNF分散液7が水溶性高分子を含む場合は、水溶性高分子の配合量が、CNFの絶乾固形分100重量部に対して、5~300重量部であることが好ましく、20~300重量部がより好ましい。水溶性高分子の配合量が5重量部未満であると十分な再分散性の効果が発現せず、300重量部を超えるとCNFの特徴であるチキソトロピー性などの粘度特性、分散安定性の低下などの問題が生じる。
【0027】
水溶性高分子の配合量が、CNFの絶乾固形分100重量部に対して、25重量部以上であると、特に優れた再分散性を得ることができるので好ましい。また、チキソトロピー性を考慮すると200重量部以下であることが好ましく、60重量部以下が特に好ましい。
【0028】
ここで、本発明においてCNFの乾燥固形物とは、水分量が12重量%以下になるように脱水・乾燥したCNFを意味する。
【0029】
(pHを調整する工程)
CNF分散液7が水溶性高分子を含む場合は、再分散性の観点から、供給工程において供給するCNF分散液7のpHを好ましくは9~11、より好ましくは9~10に調整する工程をさらに含むことが好ましい。
【0030】
CNF分散液7のpHを9~11に調整するために用いる薬品は特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、アンモニア、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムから選ばれた塩基性無機化合物、あるいはアルギニン、リジン、ヒスチジン及びオルニチンから選ばれた塩基性有機化合物などを例示することができる。
【0031】
(冷却工程)
冷却工程では、濃縮・乾燥品が冷却され、温度が下がり、硬化することにより、無端搬送ベルト6から剥離しやすくなる。
【0032】
(セルロースナノファイバー)
本発明においてセルロースナノファイバー(CNF)とは、繊維径が3~500nm程度、アスペクト比が100以上の微細繊維である。
セルロース原料は、グルコース単位あたり3つのヒドロキシル基を有しており、各種の化学変性を行うことが可能である。本発明では、化学変性がなされたセルロース原料およびなされていないセルロース原料のいずれも使用できる。しかしながら、化学変性されたセルロース原料を用いると繊維の微細化が十分に進んで均一な繊維長および繊維径のセルロースナノファイバーが得られるので化学変性がなされたセルロース原料が好ましい。化学変性としては、例えば、酸化、エーテル化、リン酸化、亜リン酸化、エステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化などが挙げられる。エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化などが挙げられる。中でも、酸化(カルボキシル化)、エーテル化、カチオン化、エステル化が好ましい。
本発明に用いるセルロースナノファイバーの平均繊維長は、特に限定されないが、好ましくは100nm~1μm、より好ましくは100nm~400nmである。また、本発明に用いるセルロースナノファイバーの平均繊維径は3nm~10nm、好ましくは3nm~8nmである。
【0033】
なお、セルロースナノファイバーの平均繊維長及び平均繊維径は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、各繊維を観察した結果から得られる繊維長及び繊維径を平均することによって得ることができる。
セルロースナノファイバーの平均アスペクト比は、通常50以上である。上限は特に限定されないが、通常は1000以下である。平均アスペクト比は、下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0034】
(セルロース原料)
セルロースナノファイバーの原料であるセルロース原料の由来は、特に限定されないが、例えば、植物(例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農地残廃物、布、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙等)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等が挙げられる。本発明で用いるセルロース原料は、これらのいずれかであってもよいし2種類以上の組み合わせであってもよいが、好ましくは植物又は微生物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)であり、より好ましくは植物由来のセルロース原料(例えば、セルロース繊維)である。
【0035】
セルロース原料の数平均繊維径は特に制限されないが、一般的なパルプである針葉樹クラフトパルプの場合は30~60μm程度、広葉樹クラフトパルプの場合は10~30μm程度である。その他のパルプの場合、一般的な精製を経たものは50μm程度である。例えばチップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナー、ビーター等の離解機で機械的処理を行い、50μm程度に調整することが好ましい。
【0036】
(酸化)
酸化によりセルロース原料を変性して得られる酸化セルロース又はセルロースナノファイバーの絶乾重量に対するカルボキシル基の量は、0.5mmol/g以上、好ましくは0.8mmol/g以上、より好ましくは1.0mmol/g以上である。上限は、3.0mmol/g以下、好ましくは2.5mmol/g以下、より好ましくは2.0mmol/g以下である。すなわち、本発明に用いる酸化セルロースナノファイバーは、カルボキシル基の量が0.5mmol/g~3.0mmol/gであり、0.8mmol/g~2.5mmol/gが好ましく、1.0mmol/g~2.0mmol/gがより好ましい。
【0037】
本発明においては、酸化する方法として、N-オキシル化合物、及び、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群より選択される物質の存在下で酸化剤を用いて水中でセルロース原料を酸化する。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、及びカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。反応時のセルロース原料の濃度は特に限定されないが、5重量%以下が好ましい。
【0038】
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。ニトロキシルラジカルとしては例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル(TEMPO)が挙げられる。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。
N-オキシル化合物の使用量は、原料となるセルロースを酸化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロースに対して、0.01mmol以上が好ましく、0.02mmol以上がより好ましい。上限は、10mmol以下が好ましく、1mmol以下がより好ましく、0.5mmol以下が更に好ましい。従って、N-オキシル化合物の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.01~10mmolが好ましく、0.01~1mmolがより好ましく、0.02~0.5mmolがさらに好ましい。
【0039】
臭化物とは臭素を含む化合物であり、例えば、臭化ナトリウム等の、水中で解離してイオン化可能な臭化アルカリ金属が挙げられる。また、ヨウ化物とはヨウ素を含む化合物であり、例えば、ヨウ化アルカリ金属が挙げられる。臭化物又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択すればよい。臭化物及びヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1mmol以上が好ましく、0.5mmol以上がより好ましい。上限は、100mmol以下が好ましく、10mmol以下がより好ましく、5mmol以下が更に好ましい。従って、臭化物及びヨウ化物の合計量は絶乾1gのセルロースに対して、0.1~100mmolが好ましく、0.1~10mmolがより好ましく、0.5~5mmolがさらに好ましい。
【0040】
酸化剤は、特に限定されないが例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸、それらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物などが挙げられる。中でも、安価で環境負荷が少ないことから、次亜ハロゲン酸又はその塩が好ましく、次亜塩素酸又はその塩がより好ましく、次亜塩素酸ナトリウムが更に好ましい。酸化剤の使用量は、絶乾1gのセルロースに対して、0.5mmol以上が好ましく、1mmol以上がより好ましく、3mmol以上が更に好ましい。上限は、500mmol以下が好ましく、50mmol以下がより好ましく、25mmol以下が更に好ましい。従って、酸化剤の使用量は絶乾1gのセルロースに対して、0.5~500mmolが好ましく、0.5~50mmolがより好ましく、1~25mmolがさらに好ましく、3~25mmolが最も好ましい。N-オキシル化合物を用いる場合、酸化剤の使用量はN-オキシル化合物1molに対して1mol以上が好ましい。上限は、40molが好ましい。従って、酸化剤の使用量はN-オキシル化合物1molに対して1~40molが好ましい。
【0041】
酸化反応時のpH、温度等の条件は特に限定されず、一般に、比較的温和な条件であっても酸化反応は効率よく進行する。反応温度は4℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。上限は40℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。従って、温度は4~40℃が好ましく、15~30℃程度、すなわち室温であってもよい。反応液のpHは、8以上が好ましく、10以上がより好ましい。上限は、12以下が好ましく、11以下がより好ましい。従って、反応液のpHは、好ましくは8~12、より好ましくは10~11程度である。通常、酸化反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成するため、反応液のpHは低下する傾向にある。そのため、酸化反応を効率よく進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加して、反応液のpHを上記の範囲に維持することが好ましい。酸化の際の反応媒体は、取扱い性の容易さや、副反応が生じにくいこと等の理由から、水が好ましい。
【0042】
酸化反応における反応時間は、酸化の進行の程度に従って適宜設定することができ、通常は0.5時間以上である。上限は通常は6時間以下、好ましくは4時間以下である。従って、酸化における反応時間は通常0.5~6時間、例えば0.5~4時間程度である。
【0043】
酸化は、2段階以上の反応に分けて実施してもよい。例えば、1段目の反応終了後に濾別して得られた酸化セルロースを、再度、同一又は異なる反応条件で酸化させることにより、1段目の反応で副生する食塩による反応阻害を受けることなく、効率よく酸化させることができる。
【0044】
(カルボキシメチル化)
本発明において、セルロース原料のカルボキシメチル化は公知の方法を用いて行うことができ、特に限定されるものではないが、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.01~0.50となるように調整することが好ましい。その一例として次のような製造方法を挙げることができるが、従来公知の方法で合成してもよく、市販品を使用してもよい。セルロースを発底原料にし、溶媒に3~20重量倍の水及び/又は低級アルコール、具体的にはメタノール、エタノール、N-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N-ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等の単独、又は2種以上の混合媒体を使用する。なお、低級アルコールの混合割合は、60~95重量%である。マーセル化剤としては、発底原料の無水グルコース残基当たり0.5~20倍モルの水酸化アルカリ金属、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを使用する。発底原料と溶媒、マーセル化剤を混合し、反応温度0~70℃、好ましくは10~60℃、かつ反応時間15分~8時間、好ましくは30分~7時間、マーセル化処理を行う。その後、カルボキシメチル化剤をグルコース残基当たり0.05~10.0倍モル添加し、反応温度30~90℃、好ましくは40~80℃、かつ反応時間30分~10時間、好ましくは1時間~4時間、エーテル化反応を行う。
【0045】
(解繊)
セルロース原料の解繊は、セルロース原料に変性処理を施す前に行ってもよいし、後に行ってもよい。また、解繊は、一度に行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回の場合それぞれの解繊の時期はいつでもよい。
解繊に用いる装置は特に限定されないが、例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧又は超高圧ホモジナイザーが好ましく、湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーがより好ましい。装置は、セルロース原料又は変性セルロース(通常は分散液)に強力なせん断力を印加できることが好ましい。装置が印加できる圧力は、9MPa以上が好ましく、50MPa以上がより好ましく、さらに好ましくは100MPa以上であり、特に好ましくは140MPa以上である。これらの圧力を印加することができる湿式の高圧又は超高圧ホモジナイザーを用いることにより、解繊を効率的に行うことができる。
【0046】
セルロース原料の分散体に対して解繊を行う場合、分散体中のセルロース原料の固形分濃度は、通常は0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。これにより、セルロース繊維原料の量に対する液量が適量となり効率的である。上限は通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下である。これにより流動性を保持することができる。
解繊(好ましくは高圧ホモジナイザーでの解繊)、又は必要に応じて解繊前に行う分散処理に先立ち、必要に応じて予備処理を行ってもよい。予備処理は、高速せん断ミキサーなどの混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて行えばよい。
【0047】
(水溶性高分子)
本発明において、水溶性高分子としては、例えば、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース)、キサンタンガム、キシログルカン、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、プルラン、澱粉、かたくり粉、クズ粉、加工澱粉(カチオン化澱粉、燐酸化澱粉、燐酸架橋澱粉、燐酸モノエステル化燐酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化燐酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化燐酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉)、コーンスターチ、アラビアガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ポリデキストロース、ペクチン、キチン、水溶性キチン、キトサン、カゼイン、アルブミン、大豆蛋白溶解物、ペプトン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミノ酸、ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリグリセリン、ラテックス、ロジン系サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド・ポリアミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミン、植物ガム、ポリエチレンオキサイド、親水性架橋ポリマー、ポリアクリル酸塩、でんぷんポリアクリル酸共重合体、タマリンドガム、グァーガム及びコロイダルシリカ並びにそれら1つ以上の混合物が挙げられる。この中でも、セルロース誘導体は、セルロースナノファイバーとの相溶性の点から好ましく、カルボキシメチルセルロース及びその塩は特に好ましい。カルボキシメチルセルロース及びその塩のような水溶性高分子は、セルロースナノファイバー同士の間に入りこみ、CNF間の距離を広げることで、再分散性を向上させると考えられる。
【0048】
水溶性高分子として、カルボキシメチルセルロース又はその塩を用いる場合には、無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基置換度が0.55~1.6のカルボキシメチルセルロースを用いることが好ましく、0.55~1.1のものがより好ましく、0.65~1.1のものがさらに好ましい。また、分子が長い(粘度が高い)ものの方が、CNF間の距離を広げる効果が高いので好ましく、カルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液における25℃、600rpmでのB型粘度は、3~14000mPa・sが好ましく、7~14000mPa・sがより好ましく、1000~8000mPa・sがさらに好ましい。
【0049】
本発明の減圧ベルト乾燥機によれば、ドラム型乾燥機と比較して、ゆっくりとした乾燥を行うことができる。したがって、この減圧ベルト乾燥機を用いたCNF分散液の濃縮・乾燥品の製造方法によれば、過度の熱がCNF分散液に加わらず、得られる濃縮・乾燥品は、透明度および粘度の復元率に優れる。また、本発明の減圧ベルト乾燥機は、濃縮品と乾燥固形品とを作り分けることができる。
【実施例0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
(分散性)
実施例、比較例で得られた固形分濃度1%のCNF再分散液1gに墨滴(株式会社呉竹製、固形分10%)を2適垂らし、ボルテックスミキサー(IUCHI社製、機器名:Automatic Lab-mixer HM-10H)の回転数の目盛りを最大に設定して1分間撹拌した。次に、墨滴を含有するCNF分散液の膜厚が0.15mmになるように二枚のガラス板に挟み、光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープKH-8700(株式会社ハイロックス製))を用いて倍率100倍で観察した。下記の基準で評価した。得られた画像中に見られる白い塊(ゲル粒)が少ないほど、分散性がよいといえる。結果を表1及び2に示した。
A:ゲル粒はほとんど観察されなかった。
B:ゲル粒が若干観察された。
C:ゲル粒が多く観察された。
【0052】
(透明度の測定)
実施例、比較例で得られた固形分濃度1%のCNF再分散液に対して、可視光光度計ASV11D(アズワン株式会社製)を用い、透明度(660nm光の透過率)を測定した。なお、透明度復元率は以下の式で算出した。結果を表1及び2に示した。
透明度復元率(%)=(乾燥前の透明度)/(再分散後の透明度)×100
【0053】
(B型粘度の測定)
実施例、比較例で得られた固形分濃度1%のCNF再分散液300mLをプライミクス社製撹拌機にて3000rpmで1分撹拌直後に、B型粘度計(英弘精機社製)を用いて、25℃の条件にて、回転数60rpmで3分後の粘度を測定した。なお、粘度復元率は以下の式で算出した。結果を表1及び2に示した。
粘度復元率(%)=(乾燥前の粘度)/(再分散後の粘度)×100
【0054】
(製造例1)
(TEMPO酸化CNFの調製)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)780mgと臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
【0055】
上記の工程で得られた酸化パルプを水で3.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150Mpa)で3回処理して、TEMPO酸化セルロースナノファイバー(CNF)水分散液を得た。得られた繊維は、平均繊維径が40nm、アスペクト比が150であった。
【0056】
(カルボキシル基量の測定方法)
カルボキシル化セルロースの0.5重量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:
カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/カルボキシル化セルロース重量〔g〕。
【0057】
(実施例1)
(濃縮・乾燥)
製造例1で得られた固形分濃度3%のTEMPO酸化CNFの水分散液10g(サンプル)を、直径2.5mmのノズルから、表面をテフロン(登録商標)でライニングしたバットの上に、重なる部分が無いようストランド状に載置した。
サンプルが載置されたバットを静置型減圧乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-200V)に投入し、バットの表面が80~90℃となる温度で、乾燥機内の気圧が10kPa以下になるように減圧し、10分間処理することにより、固形分濃度が10.6%の濃縮・乾燥TEMPO酸化CNFを得た。
【0058】
(再分散)
上記で得られた濃縮・乾燥TEMPO酸化CNFに水を加え、ホモディスパー(PRIMIX社製)を使用して3000rpmの条件で30分間撹拌することにより固形分濃度1%まで希釈した。
【0059】
(実施例2)
処理時間を12分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が15.5%の濃縮・乾燥TEMPO酸化CNFを得た。また、実施例1と同様に1%まで希釈し、再分散させてCNF再分散液を得た。
【0060】
(実施例3)
処理時間を14分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が20.4%の濃縮・乾燥TEMPO酸化CNFを得た。また、実施例1と同様に1%まで希釈し、再分散させてCNF再分散液を得た。
【0061】
(比較例1)
処理時間を16分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が26.5%の濃縮・乾燥TEMPO酸化CNFを得た。また、実施例1と同様に1%まで希釈し、再分散させてCNF再分散液を得た。
【0062】
(比較例2)
処理時間を17分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度が33.3%の濃縮・乾燥TEMPO酸化CNFを得た。また、実施例1と同様に1%まで希釈し、再分散させてCNF再分散液を得た。
【0063】
【0064】
(実施例4)
(TEMPO酸化CNFとCMCの分散液の調製)
製造例1で得られた固形分濃度3%のTEMPO酸化CNF水分散液に、カルボキシメチルセルロース(CMC)(日本製紙株式会社製、商品名:F350HC-4、粘度(1%、25℃)約3000mPa・s、カルボキシメチル置換度約0.9)を、TEMPO酸化CNFの固形分100重量部に対して30重量部となるように添加し、TKホモミキサー(12,000rpm)で60分間撹拌することにより、CMC含有TEMPO酸化CNF水分散液を得た。この水分散液のpHは7~8程度であった。得られた分散液に水酸化ナトリウム水溶液0.5%を加えpHを9に調整し、固形分濃度2.3%の水分散液を得た。
【0065】
(濃縮・乾燥)
上記で得られた固形分濃度2.3%のCMC含有TEMPO酸化CNF水分散液10g(サンプル)を、直径2.5mmのノズルから、表面をテフロン(登録商標)でライニングしたバットの上に、重なる部分が無いようストランド状に載置した。
サンプルが載置されたバットを静置型減圧乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-200V)に投入し、バットの表面が80~90℃となる温度で、乾燥機内の気圧が10kPa以下になるように減圧し、75分間処理することにより、ほぼ絶乾(固形分濃度96%)のCMC含有TEMPO酸化CNFの乾燥固形物を得た。
【0066】
(再分散)
上記で得られたCMC含有TEMPO酸化CNFの乾燥固形物に水を加え、ホモディスパー(PRIMIX社製)を使用して3000rpmの条件で30分間撹拌することにより固形分濃度1%まで希釈した。
【0067】
(比較例3)
実施例4で得られたpH調整前のCMC含有TEMPO酸化CNF水分散液に、水を加えることにより、pH6.9、固形分濃度1.0%の水分散液を得た。この分散液を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、75分間処理することにより、ほぼ絶乾(固形分濃度96%)のCMC含有TEMPO酸化CNFの乾燥固形物を得た。また、実施例4と同様に1%まで希釈し、再分散させてCNF再分散液を得た。
【0068】
2…減圧ベルト乾燥機、4…減圧槽、6…無端搬送ベルト、7…セルロースナノファイバー分散液、8…ノズル、10a、10b、10c…加熱プレート、12…チラーユニット、14…冷却プレート、16…受入部、18…回収部、20…膨張タンク、22…ポンプ、24…熱交換器、26…熱水発生装置、28…真空発生装置