(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140909
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】電力制御システム、電力供給方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20220921BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220921BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 180
H02J7/00 302C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040968
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA11
5G066HA15
5G066HB05
5G066HB09
5G066JA02
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA05
5G503GD02
(57)【要約】
【課題】停電時などにおいて、複数の装置それぞれを安全に動作させることのできる技術を提供する。
【解決手段】電源から電力を供給され、それぞれがモータを有する複数の電力供給ユニットを制御する電力制御システムは、前記複数の電力供給ユニットのそれぞれには、蓄電池が設けられており、前記電源から前記複数の電力供給ユニットへの電力供給が停止している所定の場合には、各電力供給ユニットが制御するモータの運転パターンに基づき、前記複数の電力供給ユニット間における蓄電池の電力の供給および受給を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力供給ユニットと、前記複数の電力供給ユニットに電力を供給する電源と前記複数の電力供給ユニットを電気的に接続する第1の電力供給路と、を有し、
前記複数の電力供給ユニットのそれぞれは、
一又は複数のモータと、
供給される電力を前記一又は複数のモータのそれぞれの負荷電力として変換し供給する一又は複数の電力供給装置と、
前記第1の電力供給路から独立して構成され、前記電源からの電力を前記複数の電力供給装置に供給する第2の電力供給路と、
前記第2の電力供給路に接続され、かつ、前記電源からの電力を蓄電する蓄電池と、
を一体的に有し、
前記電源から前記複数の電力供給ユニットへの電力の供給が停止している所定の場合には、各電力供給ユニットにおける前記一又は複数のモータの運転パターンに基づき、前記第1の電力供給路を介する前記複数の電力供給ユニット間における蓄電池の電力の供給および受給を行う、
ことを特徴とする電力制御システム。
【請求項2】
所定の期間ごとに、各電力供給ユニットにおける、前記運転パターンに基づく第1の電力と蓄電池が供給可能な第2の電力とを比較した結果に応じて、前記複数の電力供給ユニット間における蓄電池の電力の供給および受給を行い、
前記第1の電力は、電力供給ユニットの稼働に必要な電力である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記所定の場合に、前記複数の電力供給ユニットのうち第1の電力供給ユニットにおいて前記第1の電力が前記第2の電力より大きい期間では、前記第1の電力供給ユニットが、前記複数の電力供給ユニットのうち他の電力供給ユニットに設けられた蓄電池から電力を受け取る、
ことを特徴とする請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記第1の電力は、前記一または複数のモータが安全に停止するために用いる電力である、
ことを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記所定の場合に、前記複数の電力供給ユニットのうち第2の電力供給ユニットにおける前記第2の電力が前記第1の電力よりも大きい期間では、前記第2の電力供給ユニットの蓄電池から、前記複数の電力供給ユニットのうち前記第1の電力が前記第2の電力よりも大きい電力供給ユニットに電力を供給する、
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記所定の場合に、前記複数の電力供給ユニットのうち第2の電力供給ユニットが制御するモータが停止している期間では、前記第2の電力供給ユニットの蓄電池から、前記複数の電力供給ユニットのうち前記第1の電力が前記第2の電力よりも大きい電力供給ユニットに電力を供給する、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記蓄電池は、さらに、前記一又は複数の電力供給装置から供給される電力を蓄電することが可能である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の電力制御システム。
【請求項8】
複数の電力供給ユニットと、前記複数の電力供給ユニットに電力を供給する電源と前記複数の電力供給ユニットを電気的に接続する第1の電力供給路と、を有する電力制御システムにおける電力供給方法であって、
前記複数の電力供給ユニットのそれぞれは、
一又は複数のモータと、
供給される電力を前記一又は複数のモータのそれぞれの負荷電力として変換し供給する一又は複数の電力供給装置と、
前記第1の電力供給路から独立して構成され、前記電源からの電力を前記複数の電力供給装置に供給する第2の電力供給路と、
前記第2の電力供給路に接続され、かつ、前記電源からの電力を蓄電する蓄電池と、
を一体的に有し、
前記電力供給方法は、
前記電源から前記複数の電力供給ユニットへの電力の供給が停止している所定の場合には、各電力供給ユニットにおける前記一又は複数のモータの運転パターンに基づき、前記第1の電力供給路を介する前記複数の電力供給ユニット間における蓄電池の電力の供給および受給を行うステップを有することを特徴とする電力供給方法。
【請求項9】
複数の電力供給ユニットと、前記複数の電力供給ユニットに電力を供給する電源と前記複数の電力供給ユニットを電気的に接続する第1の電力供給路と、を有する電力制御システムの制御装置を制御するプログラムであって、
前記複数の電力供給ユニットのそれぞれは、
一又は複数のモータと、
供給される電力を前記一又は複数のモータのそれぞれの負荷電力として変換し供給する一又は複数の電力供給装置と、
前記第1の電力供給路から独立して構成され、前記電源からの電力を前記複数の電力供給装置に供給する第2の電力供給路と、
前記第2の電力供給路に接続され、かつ、前記電源からの電力を蓄電する蓄電池と、
を一体的に有し、
前記プログラムは、前記電力制御システムの制御装置に、
前記電源から前記複数の電力供給ユニットへの電力の供給が停止している所定の場合には、各電力供給ユニットにおける前記一又は複数のモータの運転パターンに基づき、前記第1の電力供給路を介する前記複数の電力供給ユニット間における蓄電池の電力の供給および受給を行うように制御するステップを実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システム、電力供給方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、停電時における装置(ユニット)の動作を保障するために、非常用の電力を装置に供給可能なUPS(無停電電源装置)が用いられることがある。特許文献1では、装置ごとにUPSが設けられ、停電時に、USPの電力の供給および受給を互いに行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、各UPSのバッテリ残量に応じて電力の供給および受給を行っている。このため、特許文献1では、例えば、装置のUPSのバッテリ残量は十分にある一方で、当該装置が一時的に多くの電力を必要とする場合などに、当該装置に対して電力を十分に供給することができない。つまり、電動機(モータ)を駆動する装置(ユニット)であって、装置が要する電力が時間経過に応じて変化するような場合には、当該装置を安全に動作させる(停止させる)ことができなかった。
【0005】
本発明は、停電時などにおいて、モータを駆動する複数のユニットそれぞれを安全に動作させることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。
【0007】
すなわち、本発明の一側面に係る電力制御システムは、複数の電力供給ユニットと、前記複数の電力供給ユニットに電力を供給する電源と前記複数の電力供給ユニットを電気的に接続する第1の電力供給路と、を有し、前記複数の電力供給ユニットのそれぞれは、一又は複数のモータと、供給される電力を前記一又は複数のモータのそれぞれの負荷電力として変換し供給する一又は複数の電力供給装置と、前記第1の電力供給路から独立して構成され、前記電源からの電力を前記複数の電力供給装置に供給する第2の電力供給路と、
前記第2の電力供給路に接続され、かつ、前記電源からの電力を蓄電する蓄電池と、
を一体的に有し、前記電源から前記複数の電力供給ユニットへの電力の供給が停止している所定の場合には、各電力供給ユニットにおける前記一又は複数のモータの運転パターンに基づき、前記第1の電力供給路を介する前記複数の電力供給ユニット間における蓄電池の電力の供給および受給を行うことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、一又は複数のモータの運転パターンに基づき複数の電力供給ユニット間における蓄電池の電力の供給および受給を行うことから、時間変化に応じて必要な電力が変化するような装置(ユニット)においても、安全に動作(停止)するために十分な電力を供給することができる。従って、停電時などにおいて、複数の電力供給ユニットそれぞれにおいて電動機(および、電動機に接続された負荷装置)を安全に動作させることができる。
【0009】
上記電力制御システムにおいて、所定の期間ごとに、各電力供給ユニットにおける、前記運転パターンに基づく第1の電力と蓄電池が供給可能な第2の電力とを比較した結果に応じて、前記複数の電力供給ユニット間における蓄電池の電力の供給および受給を行い、前記第1の電力は、電力供給ユニットの稼働に必要な電力であってもよい。これによれば、一時的に電力が不足する電力供給ユニットや、電力に余裕のある電力供給ユニットを容易に判断できるため、複数の電力供給ユニット間の電力のやり取りを適切に制御することができる。
【0010】
上記電力制御システムにおいて、前記所定の場合に、前記複数の電力供給ユニットのうち第1の電力供給ユニットにおいて前記第1の電力が前記第2の電力より大きい期間では、前記第1の電力供給ユニットが、前記複数の電力供給ユニットのうち他の電力供給ユニットに設けられた蓄電池から電力を受け取ってもよい。これによれば、一時的に電力が不足する電力供給ユニットにも電力が供給可能であるため、当該電力供給ユニットを安全に稼働(停止)することができる。
【0011】
上記電力制御システムにおいて、前記第1の電力は、前記一または複数のモータが安全に停止するために用いる電力であってもよい。これによれば、或る電力供給ユニットにおいて一または複数のモータが安全に停止するために必要な電力が不足する場合に、当該或る電力供給ユニットは、他の電力供給ユニットから電力を受給できる。
【0012】
上記電力制御システムにおいて、前記所定の場合に、前記複数の電力供給ユニットのうち第2の電力供給ユニットにおける前記第2の電力が前記第1の電力よりも大きい期間では、前記第2の電力供給ユニットの蓄電池から、前記複数の電力供給ユニットのうち前記第1の電力が前記第2の電力よりも大きい電力供給ユニットに電力を供給してもよい。これによれば、自身が必要とする電力に余裕がある電力供給ユニットから、適切に、電力を必要とする電力供給ユニットに電力を供給することが可能になる。
【0013】
上記電力制御システムにおいて、前記所定の場合に、前記複数の電力供給ユニットのうち第2の電力供給ユニットが制御するモータが停止している期間では、前記第2の電力供給ユニットの蓄電池から、前記複数の電力供給ユニットのうち前記第1の電力が前記第2の電力よりも大きい電力供給ユニットに電力を供給してもよい。これによれば、適切に、電力を必要としない電力供給ユニットから、電力を必要とする電力供給ユニットに電力を供給することが可能になる。
【0014】
前記蓄電池は、さらに、前記一又は複数の電力供給装置から供給される電力を蓄電することが可能であってもよい。これによれば、電源から蓄電池への電力の供給が停止している場合にも、一又は複数の電力供給装置からの電力を蓄電池は蓄電できるので、停電時などでも、蓄電池は長い時間、安定して電力を供給できる。
【0015】
本発明は、上記構成の少なくとも一部を有する装置として捉えてもよいし、電子機器や制御システム、電力供給システム、情報処理システム、情報処理装置、電力制御装置として捉えてもよい。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む制御方法、電力供給方法、電力制御方法として捉えてもよい。また、本発明は、かかる方法を実現するためのプログラムやそのプログラムを非一時的に記録した記録媒体(記憶媒体)として捉えることもできる。なお、上記構成および処理の各々は可能な限り互いに組み合せて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、停電時などにおいて、モータを駆動する複数のユニットそれぞれを安全に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図2は、モータ駆動システムの構成図である。
【
図3】
図3は、複数の電力供給ユニット間の電力の流れを説明する図である。
【
図4】
図4は、電力の供給および受給の制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、電動機の運転パターンおよび電力供給ユニットが要する電力の時間変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
<適用例>
以下では、それぞれが蓄電池を有し、かつ一又は複数の電動機(モータ)を駆動する電力供給ユニット20の電力を制御する電力制御システム1について説明する。電力制御システム1は、所定の期間ごとに、電動機(モータ)の運転パターンに基づく電力であり、かつ、電力供給ユニット20が稼働に要する電力に基づき、複数の電力供給ユニット20間での電力の供給および受給(電力のやり取り)を制御する。これによれば、所定の期間ごとの、電力供給ユニット20が要する電力の量を、モータの運転パターンによって適切に判断でき、その電力に応じて適切に電力供給ユニット20間の電力の供給および受給ができる。このため、電力供給ユニット20のような、時間変化に応じて必要な電力が変化するような装置(ユニット)においても、安全に動作(停止)するために十分な電力を供給することができる。従って、停電時などにおいて、複数の電力供給ユニット20それぞれにおいて電動機(および、電動機に接続された負荷装置)を安全に動作させることができる。
【0020】
[電力制御システムの構成]
図1を参照して、電力制御システム1の構成を説明する。電力制御システム1は、モータ駆動システム2と制御装置10とを備える。
【0021】
モータ駆動システム2は、電動機(モータ)を駆動するためのシステムである。モータ駆動システム2は、電力供給ユニット20A~20Cと、電源30と、電力供給路40を備える。なお、電力供給ユニットの数は、3つである必要はなく、2以上の任意の数であってよい。
【0022】
電力供給ユニット20A~20Cはそれぞれ、電源30からの電力または蓄電池からの電力を用いて、複数の電動機(モータ)の駆動を制御する。電源30は、電力供給路40を介して、電力供給ユニット20A~20Cに交流電力を供給する。なお、電源30が供給する電力は、交流電力である必要はなく、直流電力であってもよい。また、電力供給ユニット20A~20Cは、電力供給路40を介して、互いに電力を供給し合うこともできる。それぞれの電力供給ユニット20A~20Cに含まれるコンバータ210A,210B,210Cが、順に電力供給路40を介してデイジーチェーン接続されている。なお、電力供給ユニット20A~20Cは、電力供給路40を介して、互いに電力を供給し合うことができれば、コンバータ210A,210B,210Cがデイジーチェーン接続されている必要はなく、任意の接続方法によって接続されていてもよい。
【0023】
制御装置10は、電力供給ユニット20A~20C間の電力の受給電(送受信)を制御する。制御装置10は、電力の受給電を制御するためのプログラムを実行するためのCPU(プロセッサ)や、当該プログラムを非一時的に記憶する記憶媒体(記録媒体)を含む。
【0024】
次に、
図2を参照して、電力供給ユニット20A~20Cの詳細な構成について説明する。以下では、電力供給ユニット20Aの構成について説明するが、電力供給ユニット20B,20Cも、電力供給ユニット20Aと同様の構成を有する。電力供給ユニット20Aは、コンバータ210A、蓄電池220A、インバータ231A~238A、電動機241A~248A、遮断器251A~253Aを備える。また、電力供給ユニット20Aは、電力供給ユニット20Aの内部において、電力供給路40から独立して構成され、各構成要素(各素子)間の送電をする負荷用電力供給路260Aを備える。なお、このように、蓄電池220Aにおける”A”など符号の最後にアルファベットを付して、いずれの電源供給ユニットの構成であるかを示す。一方、このようなアルファベットが付されていない構成については、いずれの電源供給ユニットが有する構成でもよいものを示す。
【0025】
なお、インバータと電動機の数は、8個である必要はなく、1以上の任意の個数であってもよい。また、
図2は、電力供給ユニット20A~20Cの一例であり、電力供給ユニット20A~20Cは他の素子を有していてもよい。
【0026】
コンバータ210Aは、電源30(電力供給路40)からの電力を好適な電圧に変圧して、負荷用電力供給路260Aに出力する。このような構成を採用することで、インバータ231A~238Aを駆動するための電力供給の安定化を図ることができる。
【0027】
蓄電池220Aは、負荷用電力供給路260Aに接続されており、かつ、電源30(コンバータ210A)からの電力を蓄電することができる。蓄電池220Aは、インバータ231A~238Aのそれぞれに対して電力を供給することができる。また、蓄電池220Aは、電力供給ユニット20B,20Cに対しても電力を供給することができる。さらに、蓄電池220Aは、インバータ231A~238Aから回生電力を受け取り、蓄電に用いることもできる。そして、蓄電池220Aは、負荷用電力供給路260Aを介して供給される任意の電力(すなわち、負荷用電力供給路260Aから供給される電力)を蓄電することができる。
【0028】
インバータ231A~238Aは、それぞれ入力された電力から電動機241A~248Aが用いる周波数の交流の電力を生成することにより、電動機241A~248Aを制御する電力供給装置である。電動機(モータ)241A~248Aは、それぞれ電力(電気エネルギー)を力学的エネルギーに変換する(トルクを得る)ことにより、それぞれの運転パターンに従って負荷装置を駆動する。このため、インバータ231A~238Aは、複数の負荷装置のそれぞれの負荷電力を電動機241A~248Aに供給している。
【0029】
遮断器251A~253Aは、それぞれが接続される配線(負荷用電力供給路260Aの一部分)において通電を遮断することができる。ここで、遮断器251A~253Aは、制御装置10によって制御されることによって、電力供給ユニット20Aにおける通電(供受電)を制御する。遮断器251Aは、コンバータ210Aと電力供給ユニット20Aの外部との通電を制御する。遮断器252Aは、コンバータ210Aおよび蓄電池220Aと、インバータ231A~238Aとの通電を制御する。遮断器253Aは、蓄電池220Aと、コンバータ210Aおよびインバータ231A~238Aとの通電を制御する。
【0030】
このように、負荷用電力供給路260Aを含めて、コンバータ210Aとインバータ231A~238Aは、電力供給ユニット20Aとして一体的にユニット化されている。このようにコンバータ210Aからインバータ231A~238Aまでの間をユニット化することで、コンバータ210A、負荷用電力供給路260A、インバータ231A~238Aの取り扱いを容易にすることができる。特に
図2に示すようにインバータの数が多く
(8台)なると、インバータ231A~238Aそれぞれとコンバータ210Aとを接続する電源ケーブルの数が増えることになるため、ユニット化することで電力制御装置1での電源の配線作業が極めて容易となる。このことは、敷設作業の負担軽減や敷設作業のミスなどを可及的に抑制することができ、極めて有用な効果である。
【0031】
[電力の供給および受給の流れ]
ここで、
図3を参照して、電源30からの電力の供給が停止した場合(停電時)における、電力の供給および受給の流れの例を説明する。
【0032】
電源30からの電力の供給が停止すると、後述する
図4のフローチャートが示す処理によって、制御装置10は、電力供給ユニット20A~20Cが稼働するために必要な電力と、蓄電池220A~220Cの供給能力とに応じて、電力の供給および受給を制御する。以下では、電力供給ユニット20Aから電力供給ユニット20Cに電力を供給する場合の電力の流れを説明する。
【0033】
まず、
図3に示すように、遮断器252Aが、蓄電池220Aからインバータ231A~238Aへ電力が供給されないようにするために、通電を遮断する。そして、蓄電池220Aから電力供給ユニット20Bへ電力が供給されないようにするために、遮断器251Bが通電を遮断する。さらに、蓄電池220Aから蓄電池220Cへ電力が供給されないようにするために、遮断器253Cは通電を遮断する。これによって、蓄電池220Aからの電力を、電力供給路40を介して、インバータ231C~238Cへ供給することができる。
【0034】
[電力の供給および受給の制御]
次に、
図4のフローチャートと、
図5Aおよび
図5Bのタイミングチャートを用いて、制御装置10による電力の供給および受給(電力のやり取り)の制御処理について説明する。
図5Aおよび
図5Bは、時刻t1において電源30からの電力の供給が停止した場合の、電動機241~248の運転パターンおよび電力供給ユニット20が要する電力P1の時間変化を表す。以下では、電力供給ユニット20A~20Cから電力を供給するユニットと、電力を受給するユニットとを決定する処理について説明する。
【0035】
ここで、
図4のフローチャートに係る処理は、電源30からの電力の供給が停止した場合に、電力供給ユニット20A~20Cのそれぞれについて、所定の期間ごとに実行される。具体的には、時刻t1~t2の期間、時刻t2~t3の期間、時刻t3~t4の期間、・・・、時刻t9~t10の期間のそれぞれにおいて
図4のフローチャートに係る処理が実行される。また、以下では、制御装置10が電力供給ユニット20Aを制御する場合についてのみ説明するが、制御装置10が電力供給ユニット20B,20Cを制御する場合についても同様である。
【0036】
ステップS1001において、制御装置10は、電力供給ユニット20Aが要する電力P1を算出する。ここで、電力P1は、電力供給ユニット20Aの稼働に必要な電力であり得る。具体的には、電力P1は、電動機241A~248Aが安全に停止するために必要な電力であり得る。
【0037】
制御装置10は、電力P1を、電力供給ユニット20Aの電動機241A~248Aの運転パターン(安全に停止するまでの運転パターン)に応じて算出できる。ここで、電動機241A~248Aのそれぞれが必要とする電力は、その電動機がどのように動く必要があるかによって決定できる。例えば、電動機241Aの回転量が増加する必要があれば、回転の速度や加速度に応じた電力が必要になる。一方、電動機241Aの回転量を保つ必要があれば、理想的には電力は不要である。
【0038】
そこで、制御装置10は、電動機241A~248Aのそれぞれについて、
図5Aに示すような運転パターンに従って、安全に停止するために必要な電力を算出する。ここでは、例えば、電動機の加速度と電力との関係を示すテーブルを予め作成しておき、当該テーブルを参照することによって、運転パターンに現れる電動機の加速度からその電動機が要する電力を算出できる。そして、制御装置10は、電動機241A~248Aのそれぞれに必要な電力を合計することによって、電力供給ユニット20Aが要する電力P1を算出することができる。
【0039】
なお、制御装置10は、電力供給ユニット20Aが要する電力P1を算出するにあたって、負荷用電力供給路260Aにおいて消費される電力や、他の素子(遮断器など)において消費される電力を、電動機241A~248Aのそれぞれに必要な電力に加算して電力P1を算出してもよい。また、電動機241A~248Aの運転パターンは、電源30からの電力の供給の停止前に予め定まっているため、
図5Aおよび
図5Bに示す電力P1の時間変化も、電源30からの電力の供給の停止前に予め算出可能である。従って、制御装置10は、
図5Aおよび
図5Bに示す電力P1の時間変化の情報を予め記憶装置などに記憶しておいてもよい。
【0040】
ステップS1002において、制御装置10は、
図5Aにおいて一点破線によって表されるような、蓄電池220Aの供給能力P2(供給可能な電力;出力電力)の大きさを算出する。例えば、制御装置10は、蓄電池220Aの電力を管理する電力供給ユニット20A内の管理部と通信をすることによって、蓄電池220Aの供給能力P2(供給可能な電力)の大きさを算出する。また、制御装置10は、蓄電池220Aの設計仕様と稼働時間(経年劣化度合い)に基づき、供給能力P2を算出してもよい。
【0041】
ステップS1003において、制御装置10は、電力供給ユニット20Aが要する電力P1と蓄電池220Aの供給能力P2とを比較する。電力P1が供給能力P2よりも大きい場合にはステップS1004に進み、電力P1が供給能力P2以下である場合にはステップS1005に進む。例えば、
図5Aに示す時刻t4~t5の期間では、電力供給ユニット20Aにおいて、電力P1が供給能力P2よりも大きい。一方、
図5Aに示す時刻t2~t3の期間、および、時刻t5以降の期間では、電力供給ユニット20Aにおいて、電力P1が供給能力P2以下である。
【0042】
ステップS1004において、制御装置10は、電力供給ユニット20Aを他の電力供給ユニット20から電力を受け取るユニットとして決定する。この場合には、制御装置10は、
図3に示す電力供給ユニット20Cと同様に、遮断器253Aにおける通電を遮断する。これによって、電力供給ユニット20Aのインバータ231A~238Aには、他の電力供給ユニット20からの電力が供給可能な状態になる。なお、制御装置10は、必ずしも遮断器253Aにおける通電を遮断する必要はなく、当該通電を遮断することなく、蓄電池220Aおよび他の電力供給ユニット20からの電力をインバータ231A~238Aに供給するようにしてもよい。
【0043】
ステップS1005において、制御装置10は、電力供給ユニット20Aが要する電力P1が0であるか否かを判定する。電力P1が0である場合にはステップS1006に進み、そうでない場合にはステップS1007に進む。
図5Aに示す時刻t5以降の期間では、電力供給ユニット20Aにおいて、電力P1が0である。
【0044】
なお、ステップS1005では、制御装置10は、電力供給ユニット20Aが他の電力供給ユニット20に電力を供給できる余裕があるか否かを判定できればよい。そのため、例えば、制御装置10は、電力供給ユニット20Aが要する電力P1が0であることの代
わりに、供給能力P2が電力P1よりも所定値以上大きいこと、供給能力P2が電力P1の所定倍(例えば、1.5倍や2倍)以上あることなどを用いた判定を行ってもよい。さらには、供給能力P2が電力P1(電力供給ユニット20Aが要する電力)より大きいか否かが判定され、供給能力P2が電力P1より大きい場合にはステップS1006に進み、そうでない場合にはステップS1007に進んでもよい。
【0045】
ステップS1006において、制御装置10は、電力供給ユニット20Aを、他の電力供給ユニット20(電力P1が供給能力P2よりも大きいユニット)に電力を供給するユニットとして決定する。この場合には、制御装置10は、
図3に示す電力供給ユニット20Aと同様に、遮断器252Aにおける通電を遮断する。なお、制御装置10は、必ずしも遮断器252Aにおける通電を遮断する必要はなく、当該通電を遮断することなく、蓄電池220Aからの電力をインバータ231A~238Aに供給し、その残部の電力を他の電力供給ユニット20に供給するようにしてもよい。
【0046】
ステップS1007において、制御装置10は、電力供給ユニット20Aを自身のインバータ231A~238Aに電力を供給するユニットとして決定する。この場合には、制御装置10は、
図3に示す電力供給ユニット20Bと同様に、遮断器251Aにおける通電を遮断する。これによって、蓄電池220からの電力は全て、インバータ231A~238Aに供給される。
【0047】
図4に示すような制御処理が行われれば、例えば、時刻t8~t9の期間では、
図5Aに示すように、電力供給ユニット20Aの電力P1が供給能力P2以下であり、かつ電力P1が0であるため、電力供給ユニット20Aは他の電力供給ユニット20に電力を供給する。一方、
図5Cに示すように、時刻t8~t9の期間では、電力供給ユニット20Cの電力P1が供給能力P2より大きいため、電力供給ユニット20Cは他の電力供給ユニット20から電力を受け取る。従って、時刻t8~t9では、
図3に示すように、電力供給ユニット20Aから電力供給ユニット20Cに電力が供給される。従って、停電時などにも、複数の電力供給ユニット20を安全に動作させることができる。
【0048】
なお、複数の電力供給ユニット20が他のユニットから受電するユニットとして決定され、または/かつ、複数の電力供給ユニット20が他のユニットに給電するユニットとして決定される場合がある。この場合には、制御装置10は、例えば、他のユニットから電力が供給されてもなお電力が不足する電力供給ユニット20の数が最も少なくなるように、電力を供給する電力供給ユニット20とその電力を受給する電力供給ユニット20との組み合わせを決定する。そして、制御装置10は、このように組み合わされた2つの電力供給ユニット20間において、電力の供給および受給がされるようにする。ここでは、既知の組み合わせ最適化アルゴリズムを用いることができる。
【0049】
なお、上述のように、電動機241~248の運転パターンは、予め設定されているものであるから、電力P1の時間変化は、当該運転パターン応じて、電源30からの電力の供給停止前に把握できる。また、蓄電池220の供給能力も機種(設計仕様)に応じて、電源30からの電力の供給停止前に把握できる。このため、或る期間における、複数の電力供給ユニット20での、他のユニットに給電するユニットや他のユニットから給電を受けるユニット、これらの組み合わせなどの情報は、電源30からの電力の供給停止前に事前に設定されていてもよい。なお、これらの情報の設定は、制御装置10が、例えば、他のユニットから電力が供給されてもなお電力が不足する電力供給ユニット20の数が最も少なくなるように設定する。
【0050】
本実施形態によれば、制御装置10は、所定の期間ごとに、運転パターンに基づく電力P1と蓄電池220の供給能力P2とに基づき、各電力供給ユニット20間の電力の供給
および受給を制御する。このため、期間ごとに異なる動作をする電動機を制御するために、期間ごとに必要な電力が変化する複数の電力供給ユニット間においても、適切に蓄電池の電力の供給および受給をすることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、電力供給ユニット20が要する電力P1が0である電力供給ユニット20が他の電力供給ユニット20に電力を供給したが、全ての電動機が既に停止している電力供給ユニット20が他の電力供給ユニット20に電力を供給するようにしてもよい。これは、瞬断などの一時的な電源30からの電力供給停止が繰り返されている場合に、既に全ての電動機が止まっているのであれば、それらの電動機を運転パターンに従って再度運転させる必要はないためである。このため、全ての電動機が既に停止している電力供給ユニット20は、自分のインバータに電力を供給する必要がないため、他の電力供給ユニット20よりも優先的に、電力を供給するユニットに決定されてもよい。
【0052】
また、制御装置10は、蓄電池220の供給能力P2を考慮せずに、電動機の運転パターンに基づく電力P1のみに基づき、複数の電力供給ユニット20間の電力の供給および受給を制御してもよい。例えば、制御装置10は、停電時に、所定の期間ごとに、最も電力P1が少ない電力供給ユニット20の蓄電池220から、最も電力P1が多い電力供給ユニット20に電力が供給されるように制御してもよい。
【0053】
なお、実施形態に記載された事項のみによって特許請求の範囲の記載の解釈が限定されるものではない。特許請求の範囲の記載の解釈には、出願時の技術常識を考慮した、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲も含む。
【0054】
(付記1)
複数の電力供給ユニット(20)と、前記複数の電力供給ユニット(20)に電力を供給する電源(30)と前記複数の電力供給ユニット(20)を電気的に接続する第1の電力供給路(40)と、を有し、
前記複数の電力供給ユニット(20)のそれぞれは、
一又は複数のモータ(241~248)と、
供給される電力を前記一又は複数のモータ(241~248)のそれぞれの負荷電力として変換し供給する一又は複数の電力供給装置(231~238)と、
前記第1の電力供給路(40)から独立して構成され、前記電源(30)からの電力を前記複数の電力供給装置(231~238)に供給する第2の電力供給路(260)と、
前記第2の電力供給路(260)に接続され、かつ、前記電源(30)からの電力を蓄電する蓄電池(220)と、
を一体的に有し、
前記電源(30)から前記複数の電力供給ユニット(20)への電力の供給が停止している所定の場合には、各電力供給ユニット(20)における前記一又は複数のモータ(241~248)の運転パターンに基づき、前記第1の電力供給路(40)を介する前記複数の電力供給ユニット(20)間における蓄電池(220)の電力の供給および受給を行う、
ことを特徴とする電力制御システム(1)。
【0055】
(付記2)
複数の電力供給ユニット(20)と、前記複数の電力供給ユニット(20)に電力を供給する電源(30)と前記複数の電力供給ユニット(20)を電気的に接続する第1の電力供給路(40)と、を有する電力制御システムにおける電力供給方法であって、
前記複数の電力供給ユニット(20)のそれぞれは、
一又は複数のモータ(241~248)と、
供給される電力を前記一又は複数のモータ(241~248)のそれぞれの負荷電力と
して変換し供給する一又は複数の電力供給装置(231~238)と、
前記第1の電力供給路(40)から独立して構成され、前記電源(30)からの電力を前記複数の電力供給装置(231~238)に供給する第2の電力供給路(260)と、
前記第2の電力供給路(260)に接続され、かつ、前記電源(30)からの電力を蓄電する蓄電池(220)と、
を一体的に有し、
前記電力供給方法は、
前記電源(30)から前記複数の電力供給ユニット(20)への電力の供給が停止している所定の場合には、各電力供給ユニット(20)における前記一又は複数のモータ(241~248)の運転パターンに基づき、前記第1の電力供給路(40)を介する前記複数の電力供給ユニット(20)間における蓄電池(220)の電力の供給および受給を行うステップを有することを特徴とする電力供給方法。
【0056】
(付記3)
複数の電力供給ユニット(20)と、前記複数の電力供給ユニット(20)に電力を供給する電源(30)と前記複数の電力供給ユニット(20)を電気的に接続する第1の電力供給路(40)と、を有する電力制御システム(1)の制御装置(10)を制御するプログラムであって、
前記複数の電力供給ユニット(20)のそれぞれは、
一又は複数のモータ(241~248)と、
供給される電力を前記一又は複数のモータ(241~248)のそれぞれの負荷電力として変換し供給する一又は複数の電力供給装置(231~238)と、
前記第1の電力供給路(40)から独立して構成され、前記電源(30)からの電力を前記複数の電力供給装置(231~238)に供給する第2の電力供給路(260)と、
前記第2の電力供給路(260)に接続され、かつ、前記電源(30)からの電力を蓄電する蓄電池(220)と、
を一体的に有し、
前記プログラムは、前記電力制御システム(1)の制御装置(10)に、
前記電源(30)から前記複数の電力供給ユニット(20)への電力の供給が停止している所定の場合には、各電力供給ユニット(20)における前記一又は複数のモータ(241~248)の運転パターンに基づき、前記第1の電力供給路(40)を介する前記複数の電力供給ユニット(20)間における蓄電池(220)の電力の供給および受給を行うように制御するステップを実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0057】
1:電力制御システム、2:モータ駆動システム、10:制御装置、
20A~20C:電力供給ユニット、30:電源、
40:電力供給路、
210A,210B,210C:コンバータ、
220A,220B、220C:蓄電池、
231A~238A,231B~238B,231C~238C:インバータ、
241A~248A,241B~248B,241C~248C:電動機、
251A~253A,251B~253B,251C~253C:遮断器、
260A,260B,260C:負荷用電力供給路