IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特開-排気処理装置 図1
  • 特開-排気処理装置 図2
  • 特開-排気処理装置 図3
  • 特開-排気処理装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140939
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】排気処理装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
F01N3/20 K ZAB
F01N3/20 F
F01N3/20 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041028
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 卓央
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB13
3G091BA02
3G091CA03
3G091CA17
3G091EA01
3G091EA05
3G091EA08
3G091EA18
3G091EA39
3G091FA04
3G091FA06
3G091HA15
3G091HB03
(57)【要約】
【課題】エンジンの排気を浄化する浄化装置を高効率で、かつ、応答性良く加熱する。
【解決手段】制御装置は、触媒の暖機が完了しておらず(S100にてNO)、エンジン停止中の場合(S102にてYES)、バルブを開状態にするステップ(S104)と、ファンを駆動するステップ(S106)と、ヒータをオンするステップ(S108)と、停止条件が成立する場合に(S110にてYES)、バルブを閉状態にするステップ(S112)と、ファンの駆動を停止するステップ(S114)と、ヒータをオフ状態にするステップ(S116)と、エンジン停止中でない場合(S102にてNO)、ヒータをオンするステップ(S118)と、停止条件が成立する場合に(S120にてYES)、ヒータをオフするステップ(S122)とを含む、処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に設けられる排気処理装置であって、
前記排気通路に設けられ、所定温度以上で活性化して前記エンジンの排気を浄化する浄化装置と、
前記排気通路における前記浄化装置よりも上流の位置に設けられ、前記浄化装置に流通する気体を加熱するヒータと、
前記排気通路における前記ヒータよりも上流の第1の位置と、前記排気通路における前記浄化装置よりも下流の第2の位置とを接続するバイパス通路と、
前記バイパス通路に設けられ、前記第2の位置から前記第1の位置に向けて送風可能に構成される送風装置と、
前記バイパス通路において気体の流通を遮断する遮断状態と、前記バイパス通路において前記気体の流通を可能とする流通状態との間で切り替え可能に構成される切替装置とを備える、排気処理装置。
【請求項2】
前記排気処理装置において、前記バイパス通路と、前記ヒータおよび前記浄化装置が設けられる排気通路とによって構成される循環通路を気体が流通するときの圧力損失は、前記第1の位置よりも上流側の前記排気通路の圧力損失および前記第2の位置よりも下流側の前記排気通路の圧力損失のいずれよりも小さい、請求項1に記載の排気処理装置。
【請求項3】
前記排気処理装置は、前記ヒータと前記送風装置と前記切替装置とを制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記浄化装置の温度が前記所定温度よりも低く、かつ、前記エンジンが停止中である場合に、前記流通状態になるように前記切替装置を制御するとともに前記送風装置と前記ヒータとを動作させる、請求項1または2に記載の排気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関には、排気に含まれる特定の成分を浄化するための排気処理装置が設けられる。この排気処理装置には、たとえば、排気に含まれる窒素酸化物を浄化するSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒等の浄化装置が含まれる。エンジンの始動直後において、この浄化装置の温度が低いと、浄化能力を十分に発揮できないため、たとえば、排気ガスをヒータで加熱し、高温ガスによって浄化装置の温度を上昇させる技術が公知である。
【0003】
このようなヒータが設けられるエンジンに関して、たとえば、特開2020-45781号公報(特許文献1)には、エンジンの排気の排出路において触媒の上流に配置されたヒータにより排気を加熱して、触媒を活性化温度まで暖める技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-45781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の公報に開示されたエンジンにおいては、浄化装置を暖めるためには排気を流通させることが求められるため、排気が流通しないエンジンの停止中において浄化装置を暖めることができない。そのため、エンジンの始動後に速やかに浄化装置を活性化温度まで上昇させることができない場合がある。さらに、エンジンの停止中に外気を取り込み、ヒータで加熱して浄化装置に送り込むことも考えられるが外気温が低い場合には浄化装置を活性化温度まで上昇させると電力消費量が増加する場合がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エンジンの排気を浄化する浄化装置を高効率で、かつ、応答性良く加熱する排気処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に係る排気処理装置は、エンジンの排気通路に設けられる排気処理装置である。この排気処理装置は、排気通路に設けられ、所定温度以上で活性化してエンジンの排気を浄化する浄化装置と、排気通路における浄化装置よりも上流の位置に設けられ、浄化装置に流通する気体を加熱するヒータと、排気通路におけるヒータよりも上流の第1の位置と、排気通路における浄化装置よりも下流の第2の位置とを接続するバイパス通路と、バイパス通路に設けられ、第2の位置から第1の位置に向けて送風可能に構成される送風装置と、バイパス通路において気体の流通を遮断する遮断状態と、バイパス通路において気体の流通を可能とする流通状態との間で切り替え可能に構成される切替装置とを備える。
【0008】
このようにすると、たとえば、流通状態になるように切替装置を制御しつつ、送風装置およびヒータを動作させることにより、バイパス通路とヒータと浄化装置とで形成される循環通路内で気体を循環させることができる。気体は循環通路内を循環中にヒータによって繰り返し加熱され、加熱された気体によって浄化装置を暖機することができる。そのため、エンジンの停止中においても浄化装置の暖機を行なうことができるとともに、高効率で、かつ、応答性良く浄化装置の温度を所定温度以上に上昇させることができる。
【0009】
ある実施の形態においては、排気処理装置において、バイパス通路と、ヒータおよび浄化装置が設けられる排気通路とによって構成される循環通路を気体が流通するときの圧力損失は、第1の位置よりも上流側の排気通路の圧力損失および第2の位置よりも下流側の排気通路の圧力損失のいずれよりも小さい。
【0010】
このようにすると、バイパス通路とヒータと触媒とを循環する気体の一部が、排気通路における第1の位置よりも上流に流通したり、排気通路における第2の位置よりも下流に流通したりすることを抑制することができる。そのため、循環通路内を循環する気体はヒータによって繰り返し加熱される。これにより、浄化装置を高効率で、かつ、応答性良く加熱することができる。
【0011】
さらにある実施の形態においては、排気処理装置は、ヒータと送風装置と切替装置とを制御する制御装置をさらに備える。制御装置は、浄化装置の温度が所定温度よりも低く、かつ、エンジンが停止中である場合に、流通状態になるように切替装置を制御するとともに送風装置とヒータとを動作させる。
【0012】
このようにすると、エンジンの停止中においては流通状態になるように切替装置が制御されるので、バイパス通路とヒータと浄化装置とで形成される循環通路内で気体を循環させることができる。そのため、ヒータによって気体を繰り返し加熱することにより、浄化装置を高効率で、かつ、応答性良く加熱することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、エンジンの排気を浄化する浄化装置を高効率で、かつ、応答性良く加熱する排気処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係る排気処理装置を含むエンジンシステムの概略構成の一例を示す図である。
図2】制御装置で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図3】ヒータの前後における気体の温度変化の一例を示すタイミングチャートである。
図4】第1SCR触媒の温度変化の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る排気処理装置80を含むエンジンシステム1の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、エンジンシステム1は、エンジン本体2と、インテークマニホールド10と、吸気管12,16,18と、インタークーラ14と、排気再循環装置(以下、EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置と記載する)20と、エアクリーナ40と、エキゾーストマニホールド50と、排気管52,56と、ターボチャージャ60と、酸化触媒70と、PM除去フィルタ72と、排気処理装置80と、第2SCR触媒90と、消音マフラ92と、制御装置100とを備える。このエンジンシステム1は、たとえば、車両等の移動体に搭載される。
【0017】
エンジン本体2は、気筒4と燃料噴射装置(図示せず)とを含むディーゼルエンジンあるいはガソリンエンジン等の内燃機関である。
【0018】
エンジン本体2の気筒4の頂部には、吸気ポートと排気ポート(いずれも図示せず)とが接続され、吸気ポートにインテークマニホールド10が接続される。エンジン本体2には、たとえば、複数(たとえば、4つ)の気筒4が設けられ、複数の気筒4の各々に接続される吸気ポートにインテークマニホールド10が接続される。
【0019】
燃料噴射装置は、制御装置100からの制御信号に応じて気筒4内に燃料を供給する。燃料噴射装置は、たとえば、気筒4の頂部に設けられ、気筒4内に直接的に燃料を噴射する。なお、エンジン本体2が火花点火式のガソリンエンジンである場合には、燃料噴射装置は、たとえば、吸気ポートに燃料を供給するように構成されてもよい。
【0020】
インテークマニホールド10には、吸気管12の一方端が接続される。吸気管12の他方端には、インタークーラ14が接続される。インタークーラ14は、熱交換器を含み、後述するターボチャージャ60のコンプレッサ62から供給される吸気を冷却する。
【0021】
インタークーラ14には、吸気管16の一方端が接続される。吸気管16の他方端には、ターボチャージャ60のコンプレッサ62の吸気流出口に接続される。コンプレッサ62の吸気流入口には、吸気管18の一方端が接続される。吸気管18の他方端には、エアクリーナ40が接続される。エンジンシステム1の動作時においては、エアクリーナ40から吸引された空気(吸入空気)が吸気管18、コンプレッサ62、吸気管16、インタークーラ14および吸気管12を経由してインテークマニホールド10に流通する。エアクリーナ40からインテークマニホールド10までの構成によってエンジンシステム1の「吸気通路」が構成される。
【0022】
エンジン本体2の複数の気筒4の各々に接続される排気ポートに、エキゾーストマニホールド50が接続される。
【0023】
エキゾーストマニホールド50には、ターボチャージャ60のタービン64の排気流入口が接続される。タービン64の排気流出口には、排気管52の一方端が接続される。排気管52には、酸化触媒70と、PM除去フィルタ72とが設けられる。排気管52の他方端には、排気管54が接続される。
【0024】
ターボチャージャ60は、吸気管16と吸気管18との間に設けられるコンプレッサ62と、エキゾーストマニホールド50と排気管52の一方端との間に設けられるタービン64とを含む。コンプレッサ62には、回転自在に支持されるコンプレッサブレード(図示せず)が設けられる。タービン64には、回転自在に支持され、コンプレッサブレードとシャフト(図示せず)を介して連結されるタービンブレード(図示せず)が設けられる。そのため、エンジン本体2からエキゾーストマニホールド50を介してタービン64に供給される排気エネルギーによってタービンブレードが回転させられると、シャフトを介してコンプレッサブレードが回転し、吸入空気がコンプレッサ62によって圧縮される。このようにして圧縮(過給)された吸入空気は、吸気管12と吸気管16との間に設けられるインタークーラ14において冷却されてインテークマニホールド10を経由してエンジン本体2に供給される。
【0025】
エンジン本体2においては、インテークマニホールド10から吸入される吸入空気と、燃料噴射装置から気筒4内に供給される燃料との混合気が気筒4内で燃焼する。気筒4内での混合気の燃焼によって燃焼圧力が生じて、気筒4内に収納されるピストンが動作し、クランク機構を介して出力軸(いずれも図示せず)が回転する。気筒4内での混合気の燃焼により生じた排気は、エキゾーストマニホールド50を介してタービン64に供給される。
【0026】
EGR装置20は、エキゾーストマニホールド50を流通する排気の一部(以下、EGRガスと記載する)をインテークマニホールド10に戻すように構成される。EGRガスは、吸入空気とともにインテークマニホールド10から気筒4に流通する。EGRガスが気筒4に導入されることによって燃焼温度が下がり、窒素酸化物(NOx)の低減が図られる。また、吸気損失や冷却損失の低減から燃費向上が図られる。
【0027】
EGR装置20は、第1循環通路22と、EGRバルブ24と、第2循環通路26と、第3循環通路28と、EGRクーラ30とを含む。
【0028】
第1循環通路22の一方端は、インテークマニホールド10に接続される。第1循環通路22の他方端は、EGRバルブ24に接続される。
【0029】
EGRバルブ24は、制御装置100からの制御信号に応じて開度が調整されることによってEGR装置20内を流通するEGRガスの流量を調整する調整弁である。
【0030】
第2循環通路26の一方端は、EGRバルブ24に接続される。第2循環通路26の他方端は、EGRクーラ30に接続される。
【0031】
EGRクーラ30は、内部に収納される熱交換器(図示せず)を含む。熱交換器は、たとえば、エンジン本体2内を流通する冷却水が流通するように構成される。そのため、熱交換器においては、EGRクーラ30内を流通するEGRガスの温度が低下される。EGRクーラ30におけるEGRガスの冷却により第1循環通路22を流通するEGRガスのガス体積を縮小させることができ、多くのEGRガスを吸気通路に戻すことが可能となる。
【0032】
第3循環通路28の一方端は、EGRクーラ30に接続される。第3循環通路28の他方端は、エキゾーストマニホールド50に接続される。
【0033】
このように構成されるEGR装置20には、エキゾーストマニホールド50を流通する排気の一部がEGRガスとして流入され、流入されたEGRガスは、EGRクーラ30において冷却され、EGRバルブ24によって流量が調整されてインテークマニホールド10に戻される。
【0034】
エキゾーストマニホールド50からタービン64を介して排気管52に流通する排気は、酸化触媒70に流通する。酸化触媒70は、たとえば、排気に含まれる炭素酸化物(COx)などを酸化(浄化)したり、後述するPM除去フィルタ72の再生時において、排気管52を流通する排気中に燃料添加装置(図示せず)により添加される燃料が含まれる場合や、燃料噴射装置におけるポスト噴射等によって排気中に未燃燃料が含まれる場合には、燃料を酸化したりする。PM除去フィルタ72は、排気管52を流通する排気に含まれるPM(Particulate Matter)を捕集する。
【0035】
PM除去フィルタ72の下流には、排気処理装置80が設けられる。排気処理装置80は、排気管54と、バイパス通路81と、ヒータ82と、第1SCR触媒84と、ファン86と、バルブ88とを含む。
【0036】
排気管54の一方端は、PM除去フィルタ72に接続される。排気管54の他方端には、排気管56の一方端に接続される。排気管54には、ヒータ82と、第1SCR触媒84とが設けられる。さらに、バイパス通路81は、排気管54における、ヒータ82よりも上流の第1の位置Aと、第1SCR触媒84よりも下流の第2の位置Bとを接続する。バイパス通路81には、ファン86と、バルブ88とが設けられる。
【0037】
ヒータ82は、第1の位置Aから排気管54に沿って流通する気体を加熱する。ヒータ82は、制御装置100からの制御信号に応じて動作する。ヒータ82には、図示しないバッテリ等から電力の供給を受けて動作する。ヒータ82は、たとえば、排気管54内において排気の流通方向に対して交差直交する平面上に所定形状(たとえば、メッシュ状あるいはらせん状)に配置される電熱線によって構成されてもよいし、あるいは、排気管54の外周面に設けられる電熱線によって構成されてもよい。さらにヒータ82は、ヒータとしての構成に加えて触媒としての構成を有していてもよい。ヒータ82が動作すると、ヒータ82の温度は、所定の温度(たとえば、250℃から300℃程度の温度)まで上昇する。
【0038】
第1SCR触媒84は、たとえば、尿素水等の還元剤の供給を受けて活性化し、排気中のNOxを選択的に還元することにより、排気に含まれる窒素酸化物を浄化する。還元剤の供給は、たとえば、第1SCR触媒84よりも上流に設けられる添加弁(図示せず)により行なわれる。第1SCR触媒84は、所定温度(たとえば、200℃~400℃)以上で活性化してエンジンシステム1の排気の浄化を可能とする。
【0039】
ファン86は、バイパス通路81に設けられる。ファン86は、第2の位置Bから第1の位置Aに向けて送風を可能に構成される送風装置である。ファン86は、たとえば、制御装置100からの制御信号に応じて予め定められた風量で送風が行なわれるように動作する。
【0040】
バルブ88は、弁体の開状態と閉状態とのうちのいずれか一方の状態から他方の状態に切替可能とする切替弁である。バルブ88は、制御装置100からの制御信号に応じて動作する。バルブ88の弁体が閉状態になると、バイパス通路81においては、気体の流通が遮断される遮断状態になる。また、バルブ88の弁体が開状態になると、バイパス通路81においては、気体の流通が可能となる流通状態になる。すなわち、バルブ88は、遮断状態と流通状態との間で切り替え可能に構成される切替装置に相当する。
【0041】
排気管56には、第2SCR触媒90と、消音マフラ92とが設けられる。第2SCR触媒90は、たとえば、第1SCR触媒84と同様に、排気に含まれる窒素酸化物を浄化する。そのため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0042】
制御装置100には、エアフローメータ102と、エンジン回転数センサ104とが接続される。
【0043】
エアフローメータ102は、吸気管18に設けられ、吸気管18を流通する吸入空気の流量(以下、吸入空気量と記載する)Qを検出する。エアフローメータ102は、検出した吸入空気量Qを示す信号を制御装置100に送信する。
【0044】
エンジン回転数センサ104は、エンジン本体2に設けられ、エンジン本体2の出力軸の回転数(以下、エンジン回転数と記載する)Neを検出する。エンジン回転数センサ104は、検出したエンジン回転数Neを示す信号を制御装置100に送信する。
【0045】
制御装置100は、各種処理を行なうCPU(Central Processing Unit)と、プラグラムおよびデータを記憶するROM(Read Only Memory)およびCPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)等を含むメモリとを含む。
【0046】
制御装置100は、各種センサ(たとえば、上述したエアフローメータ102およびエンジン回転数センサ104など)からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジンシステム1が所望の運転状態になるように各種機器(たとえば、燃料噴射装置、EGRバルブ24、ヒータ82、ファン86あるいはバルブ88など)を制御する。なお、制御装置100が実行する各種処理については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0047】
以上のようなエンジンシステム1において、冷間時の始動直後には、第1SCR触媒84や第2SCR触媒90などの浄化装置の温度が低いと、浄化能力を十分に発揮できないため、排気ガスをヒータ82で加熱し、加熱された高温ガスによって浄化装置の温度を上昇させることが考えられる。
【0048】
しかしながら、浄化装置を暖めるためには排気を流通させることが求められるため、排気が流通しないエンジンシステム1の停止中において浄化装置を暖めることができない。そのため、エンジンシステム1の冷間時の始動後に速やかに浄化装置を活性化する温度まで上昇させることができない場合がある。さらに、エンジンシステム1の停止中に外気を取り込み、ヒータで加熱して浄化装置に送り込むことも考えられるが外気温が低い場合には浄化装置を活性化する温度まで上昇させると電力消費量が増加する場合がある。
【0049】
そこで、本実施の形態においては、エンジンシステム1は、上述したとおり、排気処理装置80を備えるものとする。
【0050】
さらに、排気処理装置80において、バイパス通路81と、ヒータ82および第1SCR触媒84が設けられる排気管54とによって構成される循環通路を気体が流通するときの第1圧力損失が、第1の位置Aよりも上流側の排気通路の第2圧力損失および第2の位置Bよりも下流側の排気通路の第3圧力損失のいずれよりも小さいものとする。
【0051】
より具体的には、上述の第1圧力損失が第2圧力損失および第3圧力損失のいずれよりも小さくなるようにバイパス通路81の通路断面積、バイパス通路81の通路長さ、あるいは、バイパス通路81の通路形状が設定される。バイパス通路81の通路断面積、通路長さあるいは通路形状は、たとえば、実験的あるいは設計的に適合される。
【0052】
このようにすると、流通状態になるようにバルブ88を制御しつつ、ファン86およびヒータ82を動作させることにより、バイパス通路81とヒータ82と第1SCR触媒84とで形成される循環通路内で気体を循環させることができる。気体は循環通路内を循環中にヒータ82によって繰り返し加熱され、加熱された気体によって第1SCR触媒84を暖機することができる。そのため、エンジンシステム1の停止中においても第1SCR触媒84の暖機を行なうことができるとともに、高効率で、かつ、応答性良く第1SCR触媒84の温度を所定温度以上に上昇させることができる。
【0053】
以下、図2を参照して、制御装置100で実行される処理の一例について説明する。図2は、制御装置100で実行される処理の一例を示すフローチャートである。なお、図2のフローチャートに示される処理は、たとえば、エンジンシステム1の停止期間を有するアイドリングストップ制御中に実行される。
【0054】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御装置100は、第1SCR触媒84の暖機が完了しているか否かを判定する。制御装置100は、たとえば、第1SCR触媒84の温度がしきい値よりも高い温度である場合に第1SCR触媒84の暖機が完了していると判定する。しきい値は、たとえば、第1SCR触媒84が活性化する所定温度である。
【0055】
制御装置100は、たとえば、エンジンシステム1が作動中である場合には、エンジンシステム1の運転状態に基づいて第1SCR触媒84の温度を推定してもよい。具体的には、制御装置100は、たとえば、吸入空気量や燃料噴射量の指令値等から排気温度を推定し、推定された排気温度を用いて第1SCR触媒84の温度を推定してもよい。
【0056】
あるいは、制御装置100は、排気管54に設けられる図示しない温度センサを用いて検出される排気温度を用いて第1SCR触媒84の温度を推定してもよいし、第1SCR触媒84に設けられる図示しない温度センサを用いて第1SCR触媒84の温度を取得してもよい。
【0057】
第1SCR触媒84の暖機が完了していると判定される場合(S100にてYES)、この処理は終了される。一方、第1SCR触媒84の暖機が完了していないと判定される場合(S100にてNO)、処理はS102に移される。
【0058】
S102にて、制御装置100は、エンジンシステム1が停止中であるか否かを判定する。制御装置100は、たとえば、エンジン回転数Neがしきい値以下である場合にエンジンシステム1が停止中であると判定してもよいし、あるいは、燃料噴射装置に対する噴射指令値が噴射停止を示す値である場合にエンジンシステム1が停止中であると判定してもよい。エンジンシステム1が停止中であると判定される場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。
【0059】
S104にて、制御装置100は、開状態になるように(すなわち、バイパス通路81が流通状態になるように)バルブ88を制御する。
【0060】
S106にて、制御装置100は、ファン86を駆動する。制御装置100は、予め定められた風量で送風が行なわれるようにファン86を制御する。S108にて、制御装置100は、ヒータ82をオン状態にする。
【0061】
S110にて、制御装置100は、停止条件が成立するか否かを判定する。停止条件は、たとえば、第1SCR触媒84の暖機が完了したという条件を含む。第1SCR触媒84の暖機が完了したか否かの判定方法については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。停止条件が成立すると判定される場合(S110にてYES)、処理はS112に移される。一方、停止条件が成立しないと判定される場合(S110にてNO)、処理はS110に戻される。
【0062】
S112にて、制御装置100は、閉状態になるように(すなわち、バイパス通路81が遮断状態になるように)バルブ88を制御する。
【0063】
S114にて、制御装置100は、ファン86の駆動を停止する。S116にて、制御装置100は、ヒータ82をオフ状態にする。なお、エンジンシステム1が停止中でないと判定される場合(S102にてNO)、処理はS118に移される。
【0064】
S118にて、制御装置100は、ヒータ82をオン状態にする。S120にて、制御装置100は、停止条件が成立するか否かを判定する。停止条件については、上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。停止条件が成立すると判定される場合(S120にてYES)、処理はS122に移される。一方、停止条件が成立しないと判定される場合(S120にてNO)、処理はS120に戻される。S122にて、制御装置100は、ヒータ82をオフ状態にする。
【0065】
以上のような構造およびフローチャートに基づく制御装置100の動作および排気処理装置80の作用について説明する。
【0066】
たとえば、エンジンシステム1の冷間時の停止状態であって、かつ、第1SCR触媒84の温度がしきい値よりも低い暖機が完了していない場合を想定する。
【0067】
暖機が完了しておらず(S100にてNO)、エンジンシステム1が停止状態であると判定されるため(S102にてYES)、バルブ88が開状態になるように制御され(S104)、ファン86が駆動状態になるように制御されるとともに(S106)、ヒータ82がオン状態にされる(S108)。
【0068】
これにより、バイパス通路81において第1の位置Aと第2の位置Bとの間が流通状態になるため、バイパス通路81と、排気管54とによって循環通路が形成される。この場合において、バイパス通路81と排気管54とで形成される循環通路を気体が流通する場合の第1圧力損失が、エンジンシステム1の吸気通路の入口と第1の位置Aとの間で気体が流通する場合の第2圧力損失および第2の位置Bとエンジンシステム1の排気通路の出口との間で気体が流通する場合の第3圧力損失のいずれよりも小さい。そのため、ファン86が駆動状態になることで生じる気体の流れは、第1の位置Aよりも上流側や第2の位置Bよりも下流側に流れることなく、形成された循環通路内を循環する。その結果、循環通路内を循環する気体の温度は、ヒータ82を通過する毎に加熱されるため、時間の経過とともに増加していく。
【0069】
図3は、ヒータ82の前後における気体の温度変化の一例を示すタイミングチャートである。図3の縦軸は、気体の温度を示す。図3の横軸は、時間を示す。エンジンシステム1は、停止状態である場合を想定する。
【0070】
図3のLN1(実線)は、バルブ88を開状態にしつつ、ファン86を駆動し、ヒータ82をオン状態にした場合(以下、循環状態と記載する)におけるヒータ82よりも前(第1の位置A側)の気体の温度変化の一例を示す。図3のLN2(実線)は、循環状態におけるヒータ82よりも後(第2の位置B側)の気体の温度変化の一例を示す。
【0071】
図3のLN3(破線)は、比較例として、バイパス通路81およびバルブ88を省略し、排気管52にヒータ82とファン86とを設け、ファン86を駆動し、ヒータ82をオン状態にした場合のヒータ82よりも前の気体の温度変化の一例を示す。図3のLN4(破線)は、上述の比較例において、ファン86を駆動し、ヒータ82をオン状態にした場合のヒータ82よりも後の気体の温度変化の一例を示す。
【0072】
上述の循環状態においては、上述したとおり、バイパス通路81と排気管54とによって循環通路が形成されるため、ヒータ82で加熱された気体は、ファン86の動作により第2の位置Bから第1の位置Aに向けてバイパス通路81に沿って流通し、ヒータ82に循環する。そのため、気体が循環する毎にヒータ82に高い温度の気体が供給されることとなる。そのため、図3のLN1に示すように、時間が経過していくとともに、ヒータ82よりも前の気体の温度は、増加していく。そして、ヒータ82に流入する気体は、ヒータ82によって発生する熱によって一定の温度幅の温度上昇が発生する。そのため、図3のLN2に示すように、ヒータ82よりも後の気体の温度は、ヒータ82よりも前の気体の温度に対して一定の温度幅だけ高い状態を維持しつつ、時間が経過していくとともに増加していく。
【0073】
一方、比較例においては、ヒータ82に供給される気体は、ヒータ82から循環した気体ではないため、図3のLN3に示すように、ヒータ82に供給される気体の温度は、一定の温度で維持される。そのため、ヒータ82の熱によって一定の温度幅の温度上昇が発生した後の気体の温度についても、図3のLN4に示すように、一定の温度で維持される。
【0074】
その結果、循環状態における第1SCR触媒84の温度(触媒温度)は、時間が経過するほど上昇し、その上昇量は、比較例よりも大きくなる。
【0075】
図4は、第1SCR触媒84の温度変化の一例を示すタイミングチャートである。図4の縦軸は、第1SCR触媒84の温度を示す。図4の横軸は、時間を示す。図4のLN5(実線)は、循環状態における第1SCR触媒84の温度の変化の一例を示す。図4のLN6(破線)は、比較例における第1SCR触媒84の温度の変化の一例を示す。
【0076】
図3のLN1およびLN2を用いて説明したとおり、循環状態においては、時間が経過するとともに排気管54を流通する気体の温度が増加していくため、図4のLN5に示すように、時間が経過するとともに経過時間に比例して第1SCR触媒84の温度が増加していく。
【0077】
一方、図3のLN3およびLN4を用いて説明したとおり、比較例においては、気体の温度は、一定の温度が維持される。そのため、第1SCR触媒84の温度は、図4のLN6に示すように、一定の温度に収束するように増加していく。その結果、循環状態における第1SCR触媒84の温度は、時間が経過するほど上昇し、その上昇量は、比較例よりも大きくなる。
【0078】
第1SCR触媒84の温度がしきい値を超えるなどして、第1SCR触媒84の暖機が完了すると、停止条件が成立したと判定され(S110にてYES)、バルブ88が閉状態になり(S112)、ファン86の駆動が停止され(S114)、ヒータ82がオフ状態にされる(S116)。
【0079】
次に、エンジンシステム1が作動状態であって、第1SCR触媒84の温度がしきい値よりも低い暖機が完了していない場合を想定する。
【0080】
暖機が完了していないと判定されると(S100にてYES)、エンジンシステム1が作動状態であるため(S102にてNO)、ヒータ82がオン状態になる(S118)。そのため、排気管54に流通するエンジン本体2からの排気がヒータ82により加熱される。ヒータ82により加熱された排気は、第1SCR触媒84に流通し、第1SCR触媒84の温度を上昇させる。そして、第1SCR触媒84の温度がしきい値を超えることにより第1SCR触媒84の暖機が完了すると、停止条件が成立したと判定され(S120にてYES)、ヒータ82がオフ状態にされる(S122)。
【0081】
以上のようにして、本実施の形態に係る排気処理装置によると、たとえば、流通状態になるようにバルブ88を制御しつつ、ファン86およびヒータ82を動作させることにより、バイパス通路81とヒータ82と第1SCR触媒84とで形成される循環通路内で気体を循環させることができる。気体は循環通路内を循環中にヒータ82によって繰り返し加熱され、加熱された気体によって第1SCR触媒84を暖機することができる。そのため、エンジンシステム1の停止中においても第1SCR触媒84の暖機を行なうことができるとともに、高効率で、かつ、応答性良く第1SCR触媒84の温度を所定温度以上に上昇させることができる。したがって、エンジンの排気を浄化する浄化装置を高効率で、かつ、応答性良く加熱する排気処理装置を提供することができる。
【0082】
さらに、排気処理装置80において、第1圧力損失が、第2圧力損失および第3圧力損失のいずれよりも小さくなるようにバイパス通路81の通路断面積、通路長さあるいは通路形状が設定されるため、バイパス通路81とヒータ82と第1SCR触媒84とを循環する気体の一部が、第1の位置Aよりも上流に流通したり、第2の位置Bよりも下流に流通したりすることを抑制することができる。そのため、循環通路内を循環する気体はヒータ82によって繰り返し加熱される。これにより、第1SCR触媒84を高効率で、かつ、応答性良く加熱することができる。
【0083】
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、排気処理装置80が第1SCR触媒84を含む構成を一例として説明したが、所定温度以上で活性化してエンジン本体2から排出される排気を浄化する浄化装置を含む構成であればよく、第1SCR触媒84に代えてまたは加えて第2SCR触媒90を含むようにしてもよいし、酸化触媒70を含むようにしてもよいし、あるいは、PM除去フィルタ72を含むようにしてもよいし、その他図示しない各種触媒を含むようにしてもよい。また、エンジンシステム1がガソリンエンジンを含むエンジンシステムである場合には、浄化装置は、ガソリン用三元触媒であってもよい。
【0084】
さらに上述の実施の形態では、一定の送風量でファン86が駆動する場合を一例として説明したが、第1SCR触媒84の温度が低いほど送風量を大きくしたり、第1SCR触媒84の温度が高いほど送風量を小さくしたりしてもよい。このようにすると、たとえば、第1SCR触媒84の温度が高い暖機完了直前にファン86による駆動音の増加を抑制することができる。
【0085】
さらに上述の実施の形態では、ヒータ82は、オン状態とオフ状態との間で切り替えられる場合を一例として説明したが、第1SCR触媒84の温度が低いほどヒータ82において生じる熱量を増加させたり、第1SCR触媒84の温度が高いほどヒータ82において生じる熱量を減少させたりしてもよい。このようにすると、たとえば、第1SCR触媒84の温度が高い暖機完了直前にヒータ82による電力消費量の増加を抑制することができる。
【0086】
さらに上述の実施の形態では、バルブ88を開状態にした後に、ファン86を駆動し、その後、ヒータ82をオン状態にする場合を一例として説明したが、バルブ88を開状態にする処理と、ファン86を駆動する処理と、ヒータ82をオン状態にする処理との実施順序は、特に上述の順序に限定されるものではない。
【0087】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 エンジンシステム、2 エンジン本体、4 気筒、10 インテークマニホールド、12,16,18 吸気管、14 インタークーラ、20 EGR装置、22 第1循環通路、24 EGRバルブ、26 第2循環通路、28 第3循環通路、30 EGRクーラ、40 エアクリーナ、50 エキゾーストマニホールド、52,54,56 排気管、60 ターボチャージャ、62 コンプレッサ、64 タービン、70 酸化触媒、72 PM除去フィルタ、80 排気処理装置、81 バイパス通路、82 ヒータ、84 第1SCR触媒、86 ファン、88 バルブ、90 第2SCR触媒、92 消音マフラ、100 制御装置、102 エアフローメータ、104 エンジン回転数センサ。
図1
図2
図3
図4