(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022140950
(43)【公開日】2022-09-29
(54)【発明の名称】電磁ソレノイド及び電磁ソレノイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 33/02 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
H02K33/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021041047
(22)【出願日】2021-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 学
(72)【発明者】
【氏名】長田 啓亮
(72)【発明者】
【氏名】松山 理恵
【テーマコード(参考)】
5H633
【Fターム(参考)】
5H633BB07
5H633BB09
5H633BB10
5H633GG02
5H633GG04
5H633GG09
5H633HH14
5H633JA02
(57)【要約】
【課題】電磁ソレノイドにおいて、そのストローク領域にわたって、電磁的吸引力特性を向上させるとともに、磁性弾性混合材の付勢力により機械的特性を向上させる、電磁ソレノイド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】固定子鉄心からなる固定子1と、固定子鉄心に通電により電磁的吸引力を発生させるコイル5と、固定子鉄心に磁気的に吸引されかつかかる電磁的吸引力の作用する方向と反対方向に付勢力を与える弾性体により釈放されて往復動可能な可動子11と、を有する電磁ソレノイドAにおいて、固定子1及び可動子11は、前記可動子11が前記コイル5に通電されて一側に電磁的に吸引されたときの第1の末端位置と前記コイル5の通電が停止されて電磁的に釈放されて他側にあるときの第2の末端位置との間に、軟磁性及び弾性を有する樹脂材料からなり可動子11と固定子1の接触面が離れることなく弾性変形な材料からなる磁性弾性混合材21を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心からなる固定子、前記固定子鉄心に通電により電磁的吸引力を発生させるコイル、前記固定子鉄心に磁気的に吸引され、かつかかる電磁的吸引力の作用する方向と反対方向に付勢力を与える弾性体により釈放されて往復動可能な可動子と、を有する電磁ソレノイドにおいて、
前記固定子及び前記可動子は、前記可動子が前記コイルに通電されて一側に電磁的に吸引されたときの第1の末端位置と前記コイルの通電が停止されて電磁的に釈放されて他側にあるときの第2の末端位置との間で、軟磁性及び弾性を有する樹脂材料からなる磁性弾性混合材を備え、
前記磁性弾性混合材は、
前記可動子と前記固定子の接触面が離れることなく弾性変形な材料からなるものである電磁ソレノイド。
【請求項2】
前記磁性弾性混合材は、
樹脂材に、弾性を有する樹脂バインダと軟磁性の磁性粉末とを混合又は混錬させた軟磁性弾性混合材により形成されたものである請求項1記載の電磁ソレノイド。
【請求項3】
前記固定子及び前記可動子とは環状に形成され、さらに前記可動子はプレート形状をなす、請求項1~2のいずれか1項に記載の電磁ソレノイド。
【請求項4】
前記固定子及び前記可動子に付勢力を与える前記弾性体は、コイルばね、皿ばね又はバルク弾性材からなるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁ソレノイド。
【請求項5】
固定子鉄心からなる固定子、前記固定子鉄心に通電により電磁的吸引力を発生させるコイル、前記固定子鉄心に磁気的に吸引され、かつかかる電磁的吸引力の作用する方向と反対方向に付勢力を与える弾性体により釈放されて往復動可能な可動子と、を有する電磁ソレノイドであって、
前記固定子及び前記可動子が、前記可動子が前記コイルに通電されて一側に電磁的に吸引されたときの第1の末端位置と前記コイルの通電が停止されて電磁的に釈放されて他側にあるときの第2の末端位置との間で、軟磁性及び弾性を有する樹脂材料からなる磁性弾性混合材を常時接触するように保持している電磁ソレノイドの製造方法において、
前記磁性弾性混合材を、
硬度の高い樹脂と硬度の低いゴム状の樹脂にそれぞれ磁性粉を混合する工程と、
両樹脂を2色成型する工程と
から形成することを特徴とする電磁ソレノイドの製造方法。
【請求項6】
前記磁性弾性混合材を、
弾性を有する樹脂バインダと軟磁性の磁性粉末とを混錬させて形成するものである
請求項5に記載の電磁ソレノイドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子及び可動子を備える電磁ソレノイドにおいて、電磁的吸引力特性を向上させるとともに機械的特性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁ソレノイドに関しては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
特許文献1には、コイルと、コイルに流れる励磁電流により磁化制御される固定子鉄心(固定子)と、磁化制御される固定子と対向し固定子より磁気的引力を受けて固定子に向けて移動するとともに、固定子と可動子との間の電磁的吸引力に対抗して固定子と可動子とを釈放方向に付勢する弾性体により固定子から離間する方向に移動する可動子を備え、電磁ソレノイドのコイルへの通電の有無によって可動子と固定子との間で可動子が往復動可能な電磁ソレノイドにおいて、固定子と可動子との対向接極面間の固定子側に磁性部材として磁性ゴムからなる緩衝材を配設するようにしたものが記載されている。
【0004】
この緩衝材は、緩衝材と磁性材の両方の特性を有するもので、磁性粉末の磁気的特性や量によって透磁率を数倍から数十倍に高めることが可能となるとともに、硬度も調整することが可能であるので、固定子と可動子とが吸着する時の固定子と可動子との衝撃を和らげることが可能となる。また、磁束の磁路を磁性ゴムにより確保することができるので、磁気抵抗率を下げることができ、電磁的吸引力の低下を小さくすることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の電磁ソレノイド(以下、「従来型電磁ソレノイドX」と称する。)には以下のような問題があった。
【0007】
図1は、可動子を有する従来型電磁ソレノイドXの基本的な構造を示す断面図である。
図1に示すように、電磁ソレノイドXは、電磁力を発生する基本構成として、固定子鉄心101、固定子鉄心101に電磁的吸引力を発生させるコイル105、固定子鉄心101に磁気的に吸引され、かつかかる電磁的吸引力の作用する方向と反対方向に力を付勢する弾性体(ばね等)により釈放されるように両者間を往復動可能な可動子(プランジャ)103の3要素を、可動子103が突出する面を除いたソレノイドのほぼ全体を覆うフレーム111、可動子103が突出する面に可動子103が貫通する穴以外を塞ぐフロントフレーム113、フロントフレーム113と反対側のフレーム111側面側に固定された固定子鉄心101及び往復動する可動子103の一部を収容可能なガイドパイプ115などの構造体で包囲するよう固定してなるものである。
【0008】
このとき、可動子-固定子間の空隙(以下、「磁気ギャップG」と称する。)を画成する両電機子の相対峙する部分の形状(以下、「磁気ギャップ形成形状」と称する。また、可動子103の固定子鉄心101側の先端形状によって表現する。)によって可動子103のストロークに対する電磁的吸引力の特性が変化することは一般的に知られている。なお、磁気ギャップGの内部は、電磁気学的には、空気等の気体層として取り扱われる。
【0009】
図2は、従来型電磁ソレノイドXの上述の磁気ギャップ形成形状の様々な例を示す図である。
図3は、電磁ソレノイドの磁気吸引力のストローク依存性を示す図であって、
図2に示す各磁気ギャップ形成形状についてそれぞれ電磁的吸引力特性を示した図である。
【0010】
図2に示す磁気ギャップ形成形状の4つの例1)から4)について説明すると、
図2の1)は、磁気ギャップ形成形状が先細りの円錐台形状になっており、その頂点の頂角が鋭角すなわち約50度の場合である。
図2の2)は、1)と同様であるが、その頂点の頂角がより鈍角すなわち約90度の場合である。
図2の3)は、磁気ギャップ形成形状が平面形状(その頂角が180度であると観念してもよい。)になっている。
図2の4)は、1)や2)等の円錐台形状の底面をやや小径の円としたものと3)の平面形状とのハイブリッド形状である。
【0011】
図3に示すように、
図2の1)から4)までに示す従来型電磁ソレノイドXにおいて、それぞれの磁気ギャップ形成形状に応じて、ストロークに対する電磁的吸引力の特性が異なることがわかる。
【0012】
図2の3)のような磁気ギャップ形成形状が平面形状である場合は、
図3に3)の曲線で示されるように、ストロークがかなり小さいところで電磁的吸引力が最大となる。一方、ストロークが大きくなるにつれて、電磁的吸引力が幾何級数的に急激に減少する特性となることがわかる。
【0013】
また、
図2の1)のように、電磁ソレノイドの磁気ギャップ形成形状の頂点の頂角を鋭角とした場合には、ストロークが小さいところでは、
図2の3)に比べて電磁的吸引力が小さくなってしまうが、ストロークが大きくなっていっても、相対的に電磁的吸引力の低下する割合(低下率)が小さくなることがわかる。
【0014】
このように、電磁ソレノイドのストロークに応じた電磁的吸引力は磁気ギャップ形成形状に依存し、ストロークの小さいところでの電磁的吸引力の大きさとストロークが大きくなっていくにつれて低下する電磁的吸引力の低下率がトレードオフの関係にあることがわかる。
【0015】
なお、
図2の4)のように、1)又は2)のような形状と3)のような形状を組み合わせたハイブリッド形状(中間的な形状であるともいえる。)は、ストロークに応じた電磁的吸引力の低下率への影響は比較的小さいものとなっている。
【0016】
このような磁気ギャップ形成形状を様々な形状にすることにより、ある程度のストロークと電磁的吸引力との関係を調整することはできるが、そのためには、磁気ギャップ形成形状を構成するための可動子と固定子の機械的加工が煩雑となり、そこには限界がある。
【0017】
本発明は、上述のようなストロークに応じて急激に減少する電磁的吸引力を可能な限りなだらかな変化となるようにするとともに、さらにばね性を付与することで釈放方向の応答性等の機械的特性を向上させ、電機子の機械的加工も容易となる電磁ソレノイド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は、固定子鉄心からなる固定子、前記固定子鉄心に通電により電磁的吸引力を発生させるコイル、前記固定子鉄心に磁気的に吸引され、かつかかる電磁的吸引力の作用する方向と反対方向に付勢力を与える弾性体により釈放されて往復動可能な可動子とを、を有する電磁ソレノイドであって、
前記固定子及び前記可動子は、前記可動子が前記コイルに通電されて一側に電磁的に吸引されたときの第1の末端位置と前記コイルの通電が停止されて電磁的に釈放されて他側にあるときの第2の末端位置との間で、軟磁性及び弾性を有する樹脂材料からなる磁性弾性混合材を備え、
前記磁性弾性混合材は、前記可動子と前記固定子の接触面が離れることなく(常時接続されている)弾性変形な材料からなるものとしたものである。
【0019】
前記磁性弾性混合材は、樹脂材に、弾性を有する樹脂バインダと軟磁性の磁性粉末とを混合又は混錬させた軟磁性弾性混合材により形成されたものであることも好ましい。
【0020】
前記固定子及び前記可動子とは環状に形成され、さらに前記可動子はプレート形状をなすことも好ましい。
【0021】
前記固定子及び前記可動子に付勢力を与える前記弾性体は、コイルばね、皿ばね又はバルク弾性材からなるものであることも好ましい。
【0022】
また、本発明は、固定子鉄心からなる固定子、前記固定子鉄心に通電により電磁的吸引力を発生させるコイル、前記固定子鉄心に磁気的に吸引され、かつかかる電磁的吸引力の作用する方向と反対方向に付勢力を与える弾性体により釈放されて往復動可能な可動子とを、を有する電磁ソレノイドであって、
前記固定子及び前記可動子は、前記可動子が前記コイルに通電されて一側に電磁的に吸引されたときの第1の末端位置と前記コイルの通電が停止されて電磁的に釈放されて他側にあるときの第2の末端位置との間で、軟磁性及び弾性を有する樹脂材料からなる磁性弾性混合材を常時接触するように保持している電磁ソレノイドの製造方法において、
前記磁性弾性混合材を、
硬度の高い樹脂と硬度の低いゴム状の樹脂にそれぞれ磁性粉を混合する工程と、
両樹脂を2色成型する工程と
から形成することを特徴とする電磁ソレノイドの製造方法を提供する。
【0023】
前記磁性弾性混合材を、弾性を有する樹脂バインダと軟磁性の磁性粉末とを混錬させて形成することも好ましい。
【0024】
本発明のその他の形態は、後述する発明の形態の説明から明らかである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、前記した電磁ソレノイドの構成を採用することにより、電磁ソレノイドのストローク領域の全域にわたって、磁気抵抗が低下し、電磁的吸引力特性を向上させることができる。また、磁性弾性混合材の付勢力により機械的特性を向上させることができる。さらに、機械的加工を簡素化することができる。
【0026】
本発明のその他の効果は、後述の発明を実施する形態における詳細な説明においてより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】電磁ソレノイドの構成例を示す軸線Cを通り同軸線Cに平行する断面図
【
図2】電磁ソレノイドの磁気ギャップ形成形状の例を示す
図1と同様に視た断面図
【
図3】
図2における各磁気ギャップ形成形状の電磁的吸引力Fのストローク依存性を示す概略図
【
図4】本発明の一形態の電磁ソレノイドの基本構造の全体を俯瞰する斜視図(1/4切断図)
【
図5】本発明の一形態の電磁ソレノイドの基本構造の要部を示す斜視図(3/4切断図)
【
図6】本発明の一形態の電磁ソレノイドを適用した要部の詳細を示す斜視図(3/4切断図)
【
図7】本形態の電磁ソレノイドと従来技術の電磁的吸引力Fのストローク依存性を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書では、特に断らない限り、場合に応じて、固定子鉄心1を固定子と称することがある。本明細書において、コイルに通電されて一側に電磁的に吸引されたときの可動子の位置を「第1の末端位置」と称し、コイルの通電が停止されて電磁的に釈放されて(弾性力より他側に付勢された)他側にある時の可動子の位置を「第2の末端位置」と定義する。
【0029】
添付図面に基づいて本発明の実施の一形態を詳細に説明するが、最初に本発明の一形態の概要を説明する。
【0030】
電磁ソレノイドAそれ自体は、周知のものであって、詳述しないが、前述したように、例えば、基本構造として、固定子鉄心、固定子鉄心に電磁的吸引力Fを発生させるコイル、固定子鉄心に磁気的に吸引され、かつかかる電磁的吸引力Fの作用する方向と反対方向に力を付勢する弾性体により釈放されて釈放状態が維持されるように両者間を往復動可能な可動子の3要素を、可動子が突出する面を除いたソレノイドのほぼ全体を覆うフレーム、可動子が突出する面に可動子が貫通する穴以外を塞ぐフロントフレーム、フロントフレームと反対側のフレーム側面側に固定された固定子及び往復動する可動子の一部を収容可能なガイドパイプなどの構造体で包囲するよう固定してなるものがあげられる。なお、前述したが、以下、便宜上、固定子鉄心を固定子と称して、説明を行う。
【0031】
そして、固定子と可動子との間に磁気ギャップGを有するものである。なお、磁気ギャップGは実質的に電磁ソレノイドAの可動子11のストロークを規律することとなる。
【0032】
また、前述したとおり、電磁ソレノイドのストロークに応じた電磁的吸引力Fとの関係は磁気ギャップ形成形状に依存し、ストロークの小さいところでの電磁的吸引力Fの大きさとストロークが大きくなるにつれて低下する電磁的吸引力Fの低下率がトレードオフの関係にある。
【0033】
そこで、本発明の一形態では、高分子等の樹脂材であってゴム状の弾性を有する樹脂バインダ及び軟磁性の磁性粉末を混錬させて磁性弾性混合材21を形成し、電磁ソレノイドAの可動子11と固定子1との間の磁気ギャップGに、可動子11及び固定子1に常時接触するように連設された磁性弾性混合材21を挟持し、電磁力特性を大幅に向上させるとともにさらに磁性弾性混合材21のばね力による応答性等機械的効率を向上させることとした。
【0034】
磁性弾性混合材21は、上述のとおり、弾性を有する樹脂バインダと軟磁性の磁性粉末とを混錬させた軟磁性弾性混合材であるが、その製造工程は、可動子11を、成型後の硬度が高い樹脂と、成型後に弾性を発揮する樹脂とのそれぞれに磁性粉を混合する工程と、これらの複数種類の樹脂を2色成型する工程と、から構成することもできる。
【0035】
製造工程としては、上述の工程に限定されるものではなく、成型後に軟磁性を有し、弾性をも発揮する樹脂混合材を成型できるものであれば如何なる工程や方法であってもよい。
【0036】
以下、添付図面に基づいてさらに詳述する。
図4は、本発明の電磁ソレノイドの基本構造の全体を示す図である。
図4に示す構造は、電磁ソレノイドの基本的な原理は
図1に示すものと同じではあるが、固定子鉄心1は円環状とされ、同様に円環状に形成されかつプレート形状をなす可動子11(可動プレート)及び磁気吸引力を発生するための円環状のコイル5を有する。ここには示していないが、固定子1のコイル5への通電をオフとした時の可動プレート11を釈放し、その状態を維持するために別途弾性体を設けることも行われている。
【0037】
図5は、
図4の電磁ソレノイドAの基本構造の要部をA1の矢印方向に視た断面を示す斜視図である(細部は省略している。)。
図5に示すように、円環状の固定子1と円環状の可動プレート11との間に磁気ギャップGが生じており、可動プレート11はこの磁気ギャップGの空間において固定子1の方向を向く軸線Cに沿って往復動することが可能となっている。この基本構造を本発明の一形態の電磁ソレノイドとした例の要部を
図6に示す。
図6は
図5と同じく3/4切断図の切断部を断面側から視た斜視図である。
図6に示すように、本形態では、
図5の磁気ギャップGに前述の磁性弾性混合材21を挟持固定して連接している。
【0038】
この磁性弾性混合材21は、電磁ソレノイドAにおいて、可動子11が、コイル5が通電されて一側に電磁的に吸引されたときの位置、すなわち、電磁的吸引力Fにより固定子1に最も近接する位置である第1の末端位置と、コイル5の通電が停止されて電磁的に釈放されて他側にあるときの位置、すなわち、図示しない弾性体及び磁性弾性混合材21の付勢力により固定子1と可動プレート11が最も離間する位置を第2の末端位置との間で、可動プレート11と固定子1の接触面と離れることなく(常時接触するように)弾性変形することが可能である。なお、磁性弾性混合材は、可動プレート11と固定子1の接触面に固定されているものであっても良いし、磁性弾性混合材のばね力により離間することなく接触面に接触し続けるものであっても良い。そして、そのことにより、磁気ギャップGには、空気等の気体のみからなる層は介在せず、軟磁性材が介在することとなるのでいずれのストローク位置においても磁気抵抗の低下を抑えることが可能となる。
【0039】
以上説明した本発明の形態において、電磁界解析により電磁的吸引力Fのシミュレーションを行った。
図7は、
図6の構造の電磁ソレノイドAの電磁的吸引力F(ここでは磁力(N)を指標とした。)のストローク依存性を示す。
【0040】
図7の■をつなぐ点線が従来型の電磁ソレノイドXのストローク依存性を示している。
図4の本発明の基本構造のまま、すなわち従来型電磁ソレノイド技術であると、
図2の3)の電磁ソレノイドAの可動子(可動プレート)11の磁気ギャップ形成形状が平面である例と等価のものとなる。このときの電磁的吸引力特性は、
図2の3)のような平面形状である磁気ギャップ形成形状である場合と同様に、
図3に3)の曲線で示されるように、ストロークがかなり小さいところで電磁的吸引力Fが最大となる一方、ストロークが大きくなるにつれて、電磁的吸引力Fが幾何級数的に急激に減少する特性となり、ストロークが大きいところでは電磁的吸引力Fはかなり小さなものとなることになる。
【0041】
しかし、
図7の〇をつなぐ実線が示す本発明の一形態の電磁ソレノイドAを適用した場合のストローク依存性は、従来型電磁ソレノイドXと異なり、ストロークの短い領域における磁気吸引力はほぼ同等でありながら、ストロークが大きくなっても電磁力の大幅な低下が生じていない。前述の
図3の電磁ソレノイドのストロークに応じた電磁的吸引力Fとの関係が磁気ギャップ形成形状に依存し、ストロークの小さいところでの電磁的吸引力Fの大きさとストロークが大きくなっていくにつれて低下する電磁的吸引力Fの低下率がトレードオフとなっている関係が断たれており、磁気的性能が向上している。
【0042】
本形態のさらなる利点として、磁気ギャップGに磁性弾性混合材21を挟持することにより、磁気ギャップGにばね力Fを生ずることにある。電磁ソレノイドAのコイル5への通電をオフした時の可動プレート11の釈放及び触法状態の維持は、コイルばね、皿ばね、バルク弾性体などが使用されているが、本形態では、挟み込まれた磁性弾性混合材21のばね力Fも、この釈放及び触法状態を維持するための付勢力として作用させることができ、釈放時の応答性の向上等機械的性能の向上が可能となっている。
【0043】
以上、具体的な形態で説明してきたとおり、本発明は、固定子及び可動子を有する電磁ソレノイドAにおいて、固定子及び可動子が、可動子が前記コイルに通電されて一側に電磁的に吸引されたときの第1の末端位置と前記コイルの通電が停止されて電磁的に釈放されて他側にあるときの第2の末端位置との間で、軟磁性及び弾性を有する樹脂材料からなる磁性弾性混合材を備え、前記磁性弾性混合材は、前記可動子と前記固定子の接触面が離れることなく弾性変形な材料からなるものであり、また、その製造方法を開示するものであるので、それを具現化するものであれば、上記実施の形態に限られることなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、任意のものに変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
電磁ソレノイド A
電磁ソレノイドの軸線 C
電磁的吸引力 F
磁気ギャップ G
固定子 1
コイル 5
可動子(可動子プレート) 11
磁性弾性混合材 21